上述したように、従来法では、検査装置の光学系の解像限界よりも微細な繰り返しパターンが形成されたテンプレートを検査する際、まず、予備検査を行って適当な欠陥を検出し、次いで、その欠陥でフォーカスオフセットを調節して、最適なフォーカスオフセットを見極めてから本検査を行っていた。しかし、この方法では、予備検査で欠陥が検出されないと、フォーカスオフセットの調節ができない。
また、フォーカスオフセットの最適位置は、次に述べるように、被検査パターンの繰り返しの方向性に依存する。このため、予備検査でフォーカスオフセットが適切に調節された場合であっても、調節の際の繰り返しパターンの向きと、本検査で光学画像を撮像する際の繰り返しパターンの向きとが異なると、最適な焦点位置で光学画像が撮像されないことになる。この問題について、以下に詳述する。
テンプレートに形成された繰り返しパターンの光学画像は、テンプレートを保持するテーブルが移動しながら所定領域毎に順次撮像される。例えば、繰り返しパターンが形成された領域は、ストライプと称される短冊状の小領域に仮想的に分割される。各ストライプは、例えば、長さが被検査領域のX方向の全長に等しくてY方向に整列している。テーブルが−X方向に移動すると、1つのストライプの光学画像がX方向に順次撮像される。ストライプの端に到達すると、テーブルは−Y方向にステップ移動する。そして、テーブルがX方向に移動すると、Y方向に隣接するストライプの光学画像が−X方向に順次撮像される。このような工程を繰り返すことによって、全てのストライプの光学画像が撮像される。
ここで、テンプレートに形成された繰り返しパターンとして、Y方向に2つのエッジが伸びるラインパターンがX方向に繰り返しているライン・アンド・スペースパターンを考える。上記の通り、1つのストライプを撮像する際のテーブルの移動方向はX軸に平行であるので、パターンの繰り返しの方向にも平行である。また、この場合、合焦点位置にフォーカスオフセットの分を補正した位置が最適な焦点位置とされる。
フォーカスオフセットの最適値は予備検査によって求められ、本検査をするときの適切な焦点位置の決定に用いられる。しかしながら、予備検査と本検査における被検査パターンが同一であっても、光学画像を撮像するときのパターンの方向、詳しくは、テーブルの移動方向に対するパターンの繰り返しの方向が予備検査と本検査とで異なると、フォーカスオフセットの最適値も異なるようになる。上記例であれば、テンプレートの向きを90度回転させて、ラインパターンの2つのエッジがX方向に伸びて、パターンの繰り返しの方向がY方向になるようにすると、フォーカスオフセットの最適値は、上記で求めた値とは異なるようになる。しかしながら、被検査パターンは検査装置の光学系の解像限界より微細であるので、予備検査時と本検査時とでパターンの繰り返しの方向が同じでなかったとしても、それを把握することができず、結果として、最適な焦点位置で光学画像が撮像されなくなる。
以上の点に鑑み、本実施の形態では、テンプレートに予め模擬欠陥を形成しておき、この模擬欠陥を用いてフォーカスオフセットの調節を行う。このようにすることで、被検査パターンに欠陥があるか否かに関わらず、常に最適なフォーカスオフセットで検査が行えるようになる。また、被検査パターンの向きを反映する形状と、検査装置の光学系の解像限界以上の寸法とを有するパターンをテンプレートに設ける。これにより、フォーカスオフセットの最適値を求めたときの被検査パターンの方向を容易に把握できるので、光学画像を撮像する際のパターンの方向をこれと一致させれば、最適な焦点位置で光学画像を撮像できるようになる。
具体的には、テンプレートの被検査パターンとして、検査装置の光学系の解像限界より微細な繰り返しパターンからなる第1のパターンを考える。尚、この第1のパターンとしては、レジストを介してウェハに転写される機能素子を構成するライン・アンド・スペースパターンやコンタクトホールパターンなどの繰り返しパターンが想定される。
また、このテンプレートの第1のパターンと同一面であり、且つ第1のパターンが形成された領域の外周部に、上記解像限界より微細な繰り返しパターンからなる第2のパターンを配置する。第2のパターンの向きは、第1のパターンの向きと同じとする。例えば、第1のパターンが、Y方向に2つのエッジ(長辺)が伸びるラインパターンがX方向に繰り返しているライン・アンド・スペースパターンであれば、第2のパターンも、Y方向に2つのエッジ(長辺)が伸びるラインパターンがX方向に繰り返しているライン・アンド・スペースパターンである。また、第1のパターンがコンタクトホールパターンであり、X方向のホール間距離Wxの方が、Y方向のホール間距離Wyより大きい場合には、第2のパターンも、X方向のホール間距離Wxの方が、Y方向のホール間距離Wyより大きいコンタクトホールパターンである。
また、この第2のパターンに上記解像限界より微細な模擬欠陥を設ける。さらに、第1のパターンと同一面であり、且つ第1のパターンが形成された領域の外周部に、光学系の解像限界以上の寸法であって第1のパターンの方向を反映した形状の第3のパターンを設ける。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。実施の形態1では、模擬欠陥が配置された第2のパターンおよび被検査パターンの方向を検知する第3のパターンを、テンプレートの転写面でアライメントマーク領域を除いたスクライブライン領域に設ける例について述べる。実施の形態2では、スクライブライン領域に配置されたアライメントマーク領域が、模擬欠陥を有する第2のパターンと、第2のパターンが配置されていない領域であって、第2のパターンが配置された領域とのコントラストの差によって被検査パターンの方向を検知するための第3のパターンとを有し、この第3のパターンがアライメントのためのアライメントマークを兼ねる例について述べる。
そして、実施の形態3では、実施の形態1と同様に、上述の第2のパターンおよび上述の第3のパターンを上述のスクライブライン領域に設ける例であって、それらを使用するテンプレートの検査方法が、実施の形態1と異なる例について述べる。
実施の形態1.
本実施の形態のテンプレートは、ガラス基板に回路パターンが掘り込まれたものであり、転写に必要な面積に相当する部分を凸状に残してその周囲が掘り下げられた台地(メサ)構造を有する。図1は、検査装置のテーブルにテンプレートが配置された状態を模式的に示す平面図である。尚、この図では、テンプレートを符号Tで表しており、符号T1が凸状部、符号T2が掘り下げられた部分である。この凸状部T1が転写面になる。
回路パターンは、転写面に形成されてウェハに転写される。テンプレートの検査では、この回路パターンが被検査パターンとなる。回路パターンは、ライン・アンド・スペースパターンやコンタクトホールパターンなどの繰り返しパターン、すなわち、周期性を持って繰り返される規則的なパターンからなる。
図2は、本実施の形態におけるテンプレートの転写面の平面模式図である。この図に示すように、転写面Sf1において、被検査パターンが配置されるパターン領域P1には、検査装置の光学系の解像限界より微細な寸法の第1のパターンP1−1が形成されている。第1のパターンP1−1は、ライン・アンド・スペースパターンであり、この図では、ラインパターンの2つのエッジがY方向に伸びていて、X方向にこのラインパターンが繰り返す形状となっている。第1のパターンP1−1としては、例えば、半導体チップのメモリマット部に形成されるパターンなどが挙げられる。第1のパターンP1−1は、ガラス基板を例えば10nm以上100nm以下の深さで掘り込むことによって形成される。尚、パターン領域P1には、第1のパターンP1−1の他に、光学系の解像限界以上の寸法を有するパターンが形成されていてもよい。
図3は、図2のテンプレートの転写面Sf1と、その周囲に転写される他の転写面との関係を示す図である。図3において、点線で示された領域(Sf2〜Sf5)が、転写面Sf1の周囲に転写される他の転写面である。この図から分かるように、転写面の輪郭線は、入り組んだ凹凸形状をしている。これは、隣接して転写される転写面同士が重ならないように嵌め合わすための形状である。
図4は、図3の転写面Sf1,Sf2を拡大して示したものである。パターン領域P1,P2と、転写面Sf1,Sf2の外縁の間の領域は、スクライブライン領域Sc1,Sc2である。スクライブライン領域Sc1,Sc2は、スクライブラインとなる領域であって、転写の際にパターン領域P1,P2が互いに重ならないようにするために設けられる重ね代の領域である。スクライブライン領域Sc1,Sc2の幅は、例えば、50μmから100μm程度とすることができる。
図2に戻り、本実施の形態では、パターン領域P1の外周部に設けられたスクライブライン領域Sc1にフォーカスオフセット調節パターン領域FA1が設けられている。このフォーカスオフセット調節パターン領域FA1には、第1のパターンP1−1に倣ったパターン、すなわち、第1のパターンと形状および寸法が同等で、第1のパターンと同じ方向性を持つ第2のパターンP1−2が設けられている。詳しくは、第2のパターンP1−2は、第1のパターンP1−1と同様に、検査装置の光学系の解像限界より微細な寸法のライン・アンド・スペースパターンであり、ラインパターンの2つのエッジがY方向に伸びていて、X方向にこのラインパターンが繰り返す形状となっている。第2のパターンP1−2は、ガラス基板を例えば10nm以上100nm以下の深さで掘り込むことによって形成される。また、図2において、第1のパターンP1−1を90度回転させると、ラインパターンの2つのエッジがX方向に伸びていて、Y方向にこのラインパターンが繰り返す形状となる。第2のパターンP1−2も、第1のパターンP1−1と同様に、90度回転させると、ラインパターンの2つのエッジがX方向に伸びていて、Y方向にこのラインパターンが繰り返す形状となる。
図2に示すように、第2のパターンP1−2には、模擬欠陥D1が設けられている。模擬欠陥D1も、第1のパターンや第2のパターンと同様に、検査装置の光学系の解像限界より微細である。
本実施の形態における模擬欠陥の例としては、図6や図7に示すものが挙げられる。これらの図において、模擬欠陥の背景となるパターンは、本実施の形態における第2のパターンである。図6の領域a1に示す模擬欠陥は、図2の模擬欠陥D1と同様であり、パターンが短絡したショート欠陥を模擬している。一方、図7の領域a2に示す模擬欠陥は、パターンが断線したオープン欠陥を模擬した例である。
模擬欠陥は、図6や図7の例に限られない。他の種類の欠陥を模擬してもよく、また、寸法、形状、個数などが異なる模擬欠陥を設けてもよい。さらに、これらの少なくとも1つが異なる模擬欠陥を複数設けてもよい。
フォーカスオフセットの最適値は、欠陥の種類、寸法、形状などによって変化するので、これらが異なる複数の模擬欠陥を設けることで、欠陥全体として最適なフォーカスオフセットを見出すことができるようになる。
例えば、図6および図7における欠陥の寸法は、第2のパターンの線幅と同程度であるが、欠陥の寸法を第2のパターンの半分程度や2倍程度としてもよい。
また、オープン欠陥やショート欠陥に限らず、エッジラフネスや、ラインパターンの線幅が局所的に太くなった欠陥、局所的に細くなった欠陥などを模擬してもよい。
さらに、欠陥を隣接して2つ以上設けてもよい。種類が同じで寸法の異なる欠陥を複数設けることで、検査装置の欠陥検出感度が変化しているか否かを判断する目安に模擬欠陥を用いることができる。
例えば、検査装置で模擬欠陥の光学画像を撮像したとき、模擬欠陥の信号がその寸法に依存して経時的に変化しているとする。この場合、本検査を行わずに、予備検査の段階で検査工程を停止することが好ましい。一例として、検査装置が、最初は全ての模擬欠陥を検出できたのに、検出感度が変化し、図22の領域b1に示すようなパターンの短絡が隣接して3つ生じている模擬欠陥を検出することはできるが、図23の領域b2に示すようなパターンの短絡が隣接して2つ生じている模擬欠陥を検出することができなくなった場合が挙げられる。尚、図22は、パターンの短絡が3つ隣接して生じたショート欠陥を模擬した例であり、図23は、パターンの短絡が2つ隣接して生じたショート欠陥を模擬した例である。欠陥検出感度が低下する原因としては、例えば、光源の光量が低下していたり、テーブルに振動が生じていたりすることが考えられる。そこで、こうした場合には、フォーカスオフセットの調整段階で一連の検査工程を停止して、検査装置のステータス異常の有無を調べることが好ましい。
図24〜図27に、検査装置の感度が変化することによって検出されなくなる模擬欠陥の他の例を示す。
図24の領域b3は、パターンが断線したオープン欠陥が隣接して3つ生じた例であり、図25の領域b4は、同様のオープン欠陥が隣接して2つ生じた例である。また、図26は、ラインパターンで線幅が局所的に太くなっている欠陥を模擬した例であり、領域b5に示すように欠陥が孤立して発生している場合と、領域b6に示すように欠陥が2つ隣接して発生している場合とを一緒に設けたものである。一方、図27は、ラインパターンで線幅が局所的に細くなっている欠陥を模擬した例であり、領域b7に示すように欠陥が孤立して発生している場合と、領域b8に示すように欠陥が2つ隣接して発生している場合とを一緒に設けたものである。
検査装置の検出感度が低下すると、図24の領域b3、図26の領域b6、図27の領域b8に示すような大きな欠陥を検出することはできるが、図25の領域b4、図26の領域b5、図27の領域b7に示すような小さな欠陥を検出することはできなくなる。
図2に戻り、フォーカスオフセット調節パターン領域FA1には、第2のパターンP1−2の他に、第3のパターンP1−3が設けられている。第3のパターンも、ガラス基板を例えば10nm以上100nm以下の深さで掘り込むことによって形成される。
この第3のパターンP1−3は、検査装置の光学系の解像限界以上の寸法であって、第1のパターンP1−1や第2のパターンP1−2と同じ方向、すなわち、Y方向に2つのエッジが伸びたラインパターンである。したがって、第3のパターンが検知できれば、被検査対象である第1のパターンP1−1の向きを容易に知ることができる。
第3のパターンP1−3の形状は、ラインパターンに限られるものではなく、第1のパターンP1−1と第2のパターンP1−2の方向性を示せるものであればよい。例えば、異なる幅または長さの2つの直線を組み合わせた十字形状として、直線の幅または長さと、第1のパターンP1−1および第2のパターンP1−2の方向性が関連付くようにしてもよい。これらの直線は、例えば、線幅が2μm以上10μm以下、長さが10μm以上50μm以下とすることができる。
例えば、十字形状を構成する2つの直線の長さを変え、長い方の直線の方向と、第1のパターンP1−1や第2のパターンP1−2でエッジが伸びる方向とを一致させる。この場合、長い方の直線がテーブルのY軸と平行であれば、第1のパターンP1−1や第2のパターンP1−2では、ラインパターンの2つのエッジがY方向に伸びていて、X方向にこのラインパターンが繰り返す形状となっていることが分かる。
また、第3のパターンP1−3は、L字形状、T字形状またはF字形状などであってもよい。これらの形状であれば、正立状態と横転状態とが区別できるので、いずれか一方の位置を、第1のパターンP1−1や第2のパターンP1−2の方向性と関連付けることで、第3のパターンP1−3を見れば、被検査対象である第1のパターンP1−1の向きが容易に分かるようになる。
図5は、テンプレートの転写面に設けられたアライメントマーク領域とフォーカスオフセット調節パターン領域とを示す図である。尚、図2と同じ符号を用いた部分は、図2と同様であるので説明を省略する。
図5において、パターン領域P1の外周部に配置されたスクライブライン領域Sc1には、アライメントマーク領域(AM101〜AM108)と、フォーカスオフセット調節パターン領域(FA1〜FA4)とが設けられている。
アライメントマーク領域(AM101〜AM108)には、半導体集積回路の製造工程における位置や回転の調整などの種々のアライメントに用いられるアライメントマークが設けられる。アライメントマーク領域(AM101〜AM108)は、転写面Sf1の四隅(または四隅の周辺)のスクライブライン領域Sc1に配置される。
フォーカスオフセット調節パターン領域FA1は、図2で説明した通りである。図5の例では、転写面Sf1に、これと同様の構成を備えたフォーカスオフセット調節パターン領域(FA1〜FA4)が設けられている。これらのフォーカスオフセット調節パターン領域(FA1〜FA4)が配置される領域は、転写面Sf1の四隅やその周辺に限定されず、アライメントマーク領域(AM101〜AM108)を除いたスクライブライン領域Sc1であればよい。
本実施の形態のテンプレートによれば、転写面に設けられた第1のパターンと、第1のパターンが設けられた領域の外周部に設けられたアライメントマーク領域と、アライメントマーク領域を除いた外周部に設けられた第2のパターンおよび第3のパターンと、第2のパターンに設けられた模擬欠陥とを有するので、フォーカスオフセットを適切に調節して、検査装置の光学系の解像限界より微細なパターンの欠陥を精度よく検出することができる。
本実施の形態では、図5の例のように、テンプレートの転写面に複数のフォーカスオフセット調節パターン領域を設けることが好ましい。これにより、例えば、転写面に汚れが付着して、一部のフォーカスオフセット調節パターン領域がフォーカスオフセットの調整に適当でなくなった場合であっても、他のフォーカスオフセット調節パターン領域を使用することで、問題なく検査工程を進めることができる。
次に、本実施の形態によるテンプレートの検査方法について説明する。
図8は、本実施の形態の検査方法を示すフローチャートである。この図において、被検査対象の光学画像を基に欠陥の有無を判定する本検査工程はS5およびS6に対応し、S1〜S4は本検査工程に先立って行われる予備検査工程に対応する。
また、図9は、本実施の形態の検査装置の構成図である。図8の各工程は、図9の検査装置100を用いて実施される。そこで、まず、検査装置100について説明する。
検査装置100は、光学画像取得部を構成する構成部Aと、構成部Aで取得された光学画像を用いて検査に必要な処理などを行う構成部Bとを有する。
構成部Aにおいて、テンプレート2はテーブル1に載置される。テーブル1は、(図示されない)水平方向およびθ方向に移動可能なXYθテーブルと垂直方向に移動可能なZテーブルとを有する。
一方、構成部Bでは、検査装置100を制御する制御計算機110が、データ伝送路となるバス120を介して、位置回路107、画像処理回路108、角度制御回路14、欠陥検出回路134、オートローダ制御回路113、XYθテーブル制御回路114a、Zテーブル制御回路114b、記憶装置の一例となる磁気ディスク装置109、磁気テープ装置115、フレキシブルディスク装置116、ディスプレイ117、パターンモニタ118およびプリンタ119に接続されている。
構成部Aにおけるテーブル1は、XYθテーブル制御回路114aによって制御されたXYθ駆動機構16により、水平方向とθ方向に駆動される。また、Zテーブル制御回路114bによって制御されたZ駆動機構15により、垂直方向に駆動される。テーブル1の移動位置は、レーザ測長システム122により測定されて位置回路107に送られる。テンプレート2は、オートローダ制御回路113により駆動されるオートローダ130からテーブル1まで自動的に搬送され、検査終了後には自動的に搬出される。
被検査対象となるテンプレート2のパターンの光学画像は、構成部Aで取得される。具体的には、次の通りである。
光源201から出射された光は、偏光ビームスプリッタ202で反射し、2分の1波長板203を透過した後、ファラデー回転子204に入射する。ファラデー回転子204を透過した光は、対物レンズ205によってテンプレート2の検査領域に結像する。次いで、テンプレート2で反射した光は、対物レンズ205を透過した後、ファラデー回転子204、2分の1波長板203、偏光ビームスプリッタ202を透過し、センサ207に入射する。センサ207は、テンプレート2のパターンの光学画像を撮像する。
センサ207は、テンプレート2の微弱な拡大光学像を電気的に蓄積し、画像電気信号に変換して出力する。センサ207には、例えば、TDI(Time Delay Integration)センサが用いられる。TDIセンサは、電荷が蓄積される積算方向にN段の露光エリアが配置されたエリアセンサである。テンプレート2の光学像を撮像する際には、テーブル1の移動方向とTDIセンサの積算方向を一致させて、テンプレート2を走査する度に、積算方向に電荷を1段ずつ転送し、積算段数分の電荷を蓄積して出力する。これにより、1ラインでは微弱な電荷であっても、複数回の加算によって、加算しない場合と同じ走査時間でその数十倍の光量に匹敵する出力が得られる。また、同一点を複数回加算することでノイズが低減され、画像信号の信号/ノイズ(S/N)比が向上する。
本実施の形態の検査方法では、まず、テンプレート2がテーブル1上に載置されて、プレートアライメントが行われる(S1)。プレートアライメントは、テンプレート2の転写面のXY座標軸と、テーブル1の走行軸との平行および直角度を合わせる行為である。これにより、テンプレート2の被検査パターンの回転や伸縮誤差が検査装置100の光学系に対して正規化される。具体的には、次の様にして行われる。
テーブル1上の所定位置にテンプレート2が載置されると、検査装置100は、テンプレート2の所定位置からの回転角度(θ)や、温度などによるパターンの全体伸縮を自動で計算して補正計算を行う。このとき、回転角度や伸縮は、アライメントマークを用いて算出される。
まず、テンプレート2に設けられた設計上は水平または垂直の位置関係になる2つのアライメントマークのX軸およびY軸を、テーブルの走行軸に対して水平および垂直となるようにする。例えば、図5において、アライメントマーク領域AM102,AM103に配置されたアライメントマークの各X座標が一致したところで、テンプレート2のパターンとテーブル1の各Y座標を合わせる。また、アライメントマーク領域AM101,AM108に配置されたアライメントマークの各Y座標が一致したところで、テンプレート2のパターンとテーブル1の各X座標を合わせる。
また、アライメントマークを基準にテーブル1のθ軸を回転させて、テンプレート2が所定位置となるように調整したうえで、2つのアライメントマーク間の距離を測定する。そして、この測定値を、予め検査装置100に与えられている理論上のアライメントマーク間の距離に照らしてテンプレートの伸縮率を算出する。得られた値を検査工程で測定されるパターンの位置や寸法の補正計算に反映させることで、検査結果の精度を高めることができる。
次に、テンプレート2の光学画像を取得するセンサ207の光量振幅を最適化する(S2)。具体的には、センサ207の各画素の信号振幅が均等になるよう、各画素のアンプのゲインを調整する。また、テンプレート2の光学画像の白黒振幅のダイナミックレンジを最大限に活用して、欠陥信号をできるだけ高く検出できるように、輝度のオフセットと振幅を調整する。
次に、テンプレート2のフォーカスオフセット調節パターン領域に設けられた模擬欠陥を利用して、フォーカスオフセットを調節する(S3)。
具体的には、テンプレート2の転写面と対物レンズ205の焦点距離を変えて模擬欠陥の光学画像を撮像し、この模擬欠陥を検出するのに最適な焦点距離、すなわち、画像信号の信号/ノイズ(S/N)比が最大となる焦点距離を求める。かかる焦点距離は、合焦点位置からフォーカスオフセットの分だけずれた位置になる。尚、焦点距離は、テーブル1の高さを変えることによって調節できる。
ここで、模擬欠陥は第2のパターンに設けられているので、模擬欠陥の光学画像とは、詳しくは、第2のパターンに設けられた模擬欠陥の光学画像になる。第2のパターンは、第1のパターンと同様の繰り返しパターンであるので、模擬欠陥の光学画像を撮像する際のテーブル1の移動方向が、第1および第2のパターンの繰り返しの方向に対し平行および垂直のいずれとなっているのかを第3のパターンの方向で把握しておく。
一例として、テンプレート2の一部分または全体に同一の構成を有する複数のチップパターンが配置されている場合を考える。より具体的には、ウェハに転写される同じ集積回路の繰り返しパターンが配置されている場合である。ここで、繰り返し単位は、同じ大きさの矩形を呈しており、互いに切り離されるとダイ(Die)と称される。1つのダイには、通常、1単位の集積回路が形成されている。ダイ−トゥ−ダイ(Die to Die)比較方式によってこの繰り返しパターンを検査する際には、異なるチップにおける同一パターンの光学画像同士が比較される。
例えば、n番目のチップの光学画像を被検査対象とすると、(n−1)番目のチップの光学画像が比較されるべき基準画像になる。このとき、繰り返しパターンが、検査装置の光源の波長で解像できないパターンであると、検査領域のほとんどでは、一様な灰色階調の光学画像同士を比較することになる。しかしながら、パターンに欠陥を有する光学画像では、欠陥箇所がその種類や形状に応じて白い輝点や黒点となって観察される。
例えば、テンプレート2に光を照射し、その反射光をセンサ207に入射させることによって、繰り返しパターンの光学画像を取得する場合において、隣接するパターン同士が繋がり短絡していると、その欠陥箇所では光が他より広い面積で反射するため、欠陥は白い輝点となって観察される。一方、パターンに断線が生じていると、その部分でパターンが欠けているため、光の反射面積が小さくなり、欠陥は黒点となって観察される。これらの例において、フォーカスオフセットを変化させると、欠陥箇所の輝点や黒点の形状が変化したり、欠陥信号の極大および極小の信号振幅が変化したりする。
フォーカスオフセットの調節工程では、欠陥を検出するのに最適なフォーカスオフセットが探索される。具体的には、上述したように、フォーカスオフセットを変えながら、すなわち、テンプレート2の転写面と、対物レンズ205との焦点距離を変えながら、フォーカスオフセット調節パターン領域に設けられた模擬欠陥の光学画像を撮像し、ベースとなる灰色階調に対して欠陥信号が最も強く得られるフォーカスオフセットを探索する。例えば、灰色階調の信号レベルに対する欠陥の輝度信号レベルを所定のアルゴリズムで算出する方法が採れる。
フォーカスオフセットに影響する因子としては、欠陥の種類、形状、大きさの他にも、テンプレート2に形成されたウェハに転写されるパターンの寸法、転写面における掘り込みの深さ、テンプレート2の表面のコーティングの条件などが挙げられる。さらに、検査装置100において、光源201からの光をテンプレート2に照明する照明光学系や、テンプレート2を透過または反射した光を結像してセンサ207に入射させる結像光学系の状態によっては、断線のような欠陥に対するフォーカスオフセットの最適位置と、短絡のような欠陥に対するフォーカスオフセットの最適位置とが異なることがあり得る。そこで、こうした場合には、例えば、断線に対して最適なフォーカスオフセットで検査を行い、続いて、短絡に対して最適なフォーカスオフセットで検査を行うというように、それぞれのフォーカスオフセットで2回検査を行うことが好ましい。
探索の結果、最適なフォーカスオフセットが定まると、そのフォーカスオフセットとなるよう、テンプレート2の転写面と対物レンズ205の焦点距離を調節する。
フォーカスオフセットの調節を行った後は、図8に示すS4〜S6の各工程を行う。すなわち、ファラデー回転子204による光の偏向面の回転角度を決定し(S4)、次いで、検査のための光学画像を取得し(S5)、そして、S5で取得した光学画像を基に欠陥判定を行う(S6)。
ファラデー回転子204は、ファラデー効果によって光の偏光面を回転させるものである。尚、ファラデー効果とは、光学材料に直線偏光を入射させ、光の進行方向と同一の方向に磁場を加えると、直線偏光の2つの成分(右回りの円偏光と左回りの円偏光)の位相速度にずれが生じ、その結果、出口での位相差によって、光学材料から出てくる光(直線偏光)の偏光面が回転する現象を言う。
パターン欠陥の中で、ライン同士が短絡するショート欠陥や、ラインが断線するオープン欠陥は、テンプレートの性能に深刻な影響を与える。これに対して、図10の領域D1に見られるようなエッジラフネスについては、テンプレートに与える影響がショート欠陥やオープン欠陥に比較して限定的であるため、検査で必ずしも検出される必要はない。
しかしながら、ショート欠陥、オープン欠陥、エッジラフネスのいずれもが光学系の解像限界より小さく、さらにこれらが同じパターン、具体的には、解像限界より微細な周期の同じ繰り返しパターンに混在する場合、この光学系による観察では、ショート欠陥やオープン欠陥による明暗と、エッジラフネスによる明暗との区別がつかない。その理由として、パターンの光学画像においては、ショート欠陥、オープン欠陥、エッジラフネスのいずれもが、同じサイズ、つまり、解像限界程度のサイズに拡がってしまうことが挙げられる。
図11は、テンプレートに設けられたライン・アンド・スペースパターンを模式的に示したものである。尚、図11において、パターンの寸法は、光学系の解像限界より小さいとする。この図の領域D2では、ラインパターンの一部が欠けており、オープン欠陥となっている。また、領域D3では、パターンのエッジラフネスが大きくなっている。
オープン欠陥とエッジラフネスによる欠陥は、図11に示すように、テンプレート上では相違が明らかであるので明確に区別することができる。しかしながら、検査装置の光学系を介して観察すると区別が困難となる。これは、光学系が、光源の光の波長λと、開口係数NAとで決まる空間周波数フィルタとして振る舞うためである。
図12は、図11のパターンに空間周波数フィルタをかけたものである。図12からは、領域D2における欠陥と、領域D3における欠陥とが、同程度のサイズに拡がってしまい、形状の違いが判別し難くなっていることが分かる。このように、解像限界より小さいサイズのオープン欠陥とエッジラフネスを光学系によって区別するのは、原理的に困難である。こうしたことは、ショート欠陥とエッジラフネスによる欠陥との間でも同じである。
ところで、ショート欠陥やオープン欠陥のサイズは、エッジラフネスによる欠陥に比較すると大きい。それ故、ショート欠陥やオープン欠陥では、照明光の偏光状態に与える影響がエッジラフネスによる欠陥よりも大きい。例えば、ショート欠陥の場合、照明光の電場成分に対する感受性が縦方向と横方向で異なる。具体的には、次の通りである。
テンプレートに直線偏光を垂直に入射させる場合を考える。直線偏光の偏光方向が、ライン・アンド・スペースパターンのエッジに沿う方向に対して45度であるとき、入射光の電場は、縦成分と横成分で等しいのに対し、ショート欠陥による反射光の電場は、縦成分より横成分の方が大きくなる。その結果、ショート欠陥で反射した光の偏光方向は、ライン・アンド・スペースパターンのエッジに沿う方向と直交する方向に傾くようになる。また、同じ例で、オープン欠陥の場合は、ライン・アンド・スペースパターンのエッジに沿う方向に傾くようになる。
これに対して、エッジラフネスによる欠陥の場合、欠陥の大きさ、すなわち、エッジラフネスにおける凹凸のサイズは、ショート欠陥やオープン欠陥よりも微細である。それ故、照明光の電場成分の横方向と縦方向に対する感受性の差はそれほど大きくない。したがって、テンプレートに直線偏光を垂直に入射させる場合において、直線偏光の偏光方向がライン・アンド・スペースパターンのエッジに沿う方向に対して45度であるとき、エッジラフネスにより散乱した光の偏光方向は、入射光の偏光方向である45度に近い値となる。但し、周期的な繰り返しを有するベースパターンの影響を受けることにより、偏光方向は完全には45度とならず、45度から僅かにずれた値をとる。
上記の通り、テンプレート2上に形成された繰り返しパターンの繰り返しの方向に対して45度の偏光面を有する光が照射されると、ショート欠陥やオープン欠陥のような大きな欠陥と、エッジラフネスのような小さな欠陥との間で、光の電場成分に対する感受性に違いが現れる。一方、光の偏光面がテンプレート2上に形成された繰り返しパターンの繰り返しの方向に対して0度や90度であると、光の感受性は欠陥間で同じとなるため区別できない。つまり、光の偏光面は、パターンの繰り返しの方向に対して必ずしも45度である必要はないが、0度や90度でないことが重要である。換言すると、テンプレート2に入射する光の偏光面は、−5度以上5度以下と、85度以上95度以下の各範囲にある角度以外の角度とすることが好ましい。
このように、ショート欠陥やオープン欠陥と、エッジラフネスによる欠陥とでは、照明光の偏光状態に与える影響が異なる。したがって、この違いを利用することにより、光学系の解像限界より微細なパターンであっても、欠陥を分類することが可能である。具体的には、照明光の偏光状態と、テンプレートで反射した光を結像する光学系における偏光制御素子、すなわち、本実施の形態のファラデー回転子204の条件とを制御することで、エッジラフネスによる明暗のムラを偏光制御素子で除去し、ショート欠陥やオープン欠陥による振幅変化のみを抽出することができる。
本実施の形態では、図8のS4で、ファラデー回転子の回転角度を決定する。S4の工程は、所定の要件で撮像されたテンプレート2のパターンの光学画像について画素毎の階調値を求めて階調値の標準偏差を最小にするファラデー回転子による光の偏光面の回転角度を決定する工程である。あるいは、場合に応じて、ファラデー回転子による光の偏光面の回転角度を変えて取得した複数の光学画像における階調値の標準偏差を、階調値から求められる平均階調値の平方根で割った値が最小になるときの回転角度を取得する工程とすることができる。いずれにおいても、光学画像は、テンプレート2に設けられた模擬欠陥の光学画像とすることが好ましい。
S4では、検査装置100において、光源201から出射してテンプレート2を照明した光のうち、センサ207に入射するエッジラフネスで散乱した光の量が最小になるときの、ファラデー回転子204による光の偏光面の回転角度(ファラデー回転角θ)を決定する。フォーカスオフセット調節パターン領域にエッジラフネスを模擬した欠陥を設ければ、その光学画像から、エッジラフネスで散乱した明暗のムラが除かれる条件、すなわち、センサ207に入射するエッジラフネスで散乱した光の量が最小になるファラデー回転角θを求めることができる。上記の光学画像には、S3のフォーカスオフセットの調節工程で用いた光学画像を適用することができる。
検査装置100において、テンプレート2のエッジラフネスで散乱した光がセンサ207に入射するのが妨げられるように、ファラデー回転子204による光の偏光面の回転角度(ファラデー回転角θ)が変えられると、ショート欠陥やオープン欠陥で散乱した光が、エッジラフネスで散乱した光と分離されて2分の1波長板203と偏光ビームスプリッタ202を透過し、センサ207に入射する。すると、センサ207で撮像される光学画像は、エッジラフネスによる明暗のムラが除かれる一方、ショート欠陥やオープン欠陥は残された状態のものとなる。したがって、この光学画像によれば、ショート欠陥やオープン欠陥の検査が容易となる。つまり、センサ207で撮像された光学画像を用いて、光学系の解像限界より微細なパターンを検査することができるようになる。
図13および図14は、検査装置100の光学系によって、光の偏光面が回転する様子を説明する図である。
図13や図14に示すように、ファラデー回転子204は、光を透過する光学材料204aと、その周りに巻装したコイル204bとを有する。光学材料204aには、光源201からの光に対して高い透過率を有する材料を用いる。例えば、光源201としてDUV光を出射するものを用いた場合、DUV光に対して高い透過率を有するSiO2、CaF2またはMgF2などの磁気光学結晶が光学材料204aとして用いられる。コイル204bは、電流を流すことによって、光学材料204aに、光の進行方向に沿って平行な方向に磁場が加えられるよう巻装されている。
ファラデー回転子204では、コイル204bに流れる電流が変わると、光学材料204aに印加される磁場の強さが変わる。したがって、この磁場の強さを制御することで、ファラデー回転子204を透過する光の偏光面の回転角度(ファラデー回転角θ)を変えることができる。
ファラデー回転角θは、式(3)で表される。尚、Hは磁場の強さを表し、lは、偏光が通過する物質の長さを表す。また、Vは、物質の種類、偏光の波長および温度に依存する定数であり、ベルデ定数と称される。
上記で光学材料204aとして例示したSiO2、CaF2またはMgF2などは、いずれも自発磁化を持たないため、所望とするファラデー回転角θを得るには、これらに大きな磁界を印加する必要がある。
ところで、ショート欠陥やオープン欠陥で散乱した光を、エッジラフネスで散乱した光と分離するのに適当なファラデー回転角θは、パターンの構造によって異なる。このため、検査装置100では、テンプレート2のパターンに応じて、ファラデー回転角θが変えられるようになっている。具体的には、角度制御回路14でファラデー回転子204のコイルに流れる電流の大きさを変え、それによって、光学材料204aに印加される磁場の強さを変化させて、パターンの種類に応じたファラデー回転角θとなるようにしている。
ファラデー回転子204に永久磁石を使用する場合、磁界の強さの異なる複数の永久磁石を用意しておくことが好ましい。そして、パターンの種類に応じたファラデー回転角θとなるような永久磁石を選択して、光学材料に必要な磁界が印加されるようにする。
また、ファラデー回転角θは、光学材料の厚みを変えることによっても変化する。したがって、厚みの異なる光学材料を複数用意しておき、この中から、パターンの種類に応じたファラデー回転角θを実現可能な光学材料を選択するようにしてもよい。この場合、光学材料に印加する磁界の大きさは、光学材料によらず同一にできる。
上記の通り、テンプレート2に入射する光の偏光面は、−5度以上5度以下と、85度以上95度以下の各範囲にある角度以外の角度とすることが好ましい。また、本実施の形態では、光がファラデー回転子204を2回透過することで、その偏光面が往復で90度回転することが好ましい。つまり、光学材料へは、光が往復で90度回転するように磁界が印加されることが好ましい。
図13に示すように、直線偏光Lの偏光面は、2分の1波長板203を透過することによって45度回転する。続いて、ファラデー回転子204を透過することによって、この直線偏光Lの偏光面はさらに45度回転する。その後、直線偏光Lは、対物レンズ205を介して、(図13では図示されない)テンプレート上に結像する。
次に、図14において、(図14では図示されない)テンプレートで反射した直線偏光Lは、対物レンズ205を透過し、続いて、ファラデー回転子204に入射する。ファラデー回転子204を透過することによって、直線偏光Lの偏光面は45度回転する。次いで、2分の1波長板203を透過することによって、直線偏光Lの偏光面は−45度回転する。
このように、ファラデー回転子204を2回透過することで、光の偏光方向は90度回転する。これにより、図9において、光源201から出射された光は、偏光ビームスプリッタ202で反射されて、テンプレート2へ向かうが、テンプレート2で反射された光は、偏光方向が90度回転することで、偏光ビームスプリッタ202を透過するようになり、光源201ではなく、センサ207へ向かう。そして、センサ207に光が入射することで、センサ207は、テンプレート2の光学画像を撮像する。
次に、図8のS4において、ファラデー回転子204の回転角度を決定する方法を述べる。これにより、エッジラフネスによる明暗のムラを除去する条件が見出される。
一般に、検査対象となるテンプレートにおいて、ショート欠陥やオープン欠陥は極僅かしか存在しないのに対し、エッジラフネスは全面に渡って多く存在する。例えば、100μm×100μmの領域の光学画像を取得したとき、この領域にショート欠陥やオープン欠陥が含まれる可能性は低く、また、含まれたとしても領域内での欠陥の数は僅かである。つまり、この領域内における光学画像の殆どは、エッジラフネスに起因するものである。よって、エッジラフネスによる欠陥を排除する条件は、100μm×100μm程度の大きさの光学画像1つから求められる。
既に述べたように、光学画像におけるエッジラフネスによる階調値の変化は、センサ207に入射する光の偏光方向を制御することで除くことができる。具体的には、ファラデー回転子204によるファラデー回転角θを制御することで、センサ207に入射するエッジラフネスによる散乱光の光量を変化させて、光学画像における明暗の振幅を変えることができる。
光学画像における明暗の振幅は、画素毎の階調値の標準偏差で表される。例えば、検査装置の光学系の画素分解能が50nmであるとき、100μm×100μmの領域の光学画像は400万画素で表現される。つまり、この光学画像1つから400万個の階調値の標本が得られる。
暗視野照明系では、上記標本について標準偏差を求め、得られた値をエッジラフネスに起因する散乱光の程度と定義し、この値が最小になるように結像光学系側の偏光状態、すなわち、ファラデー回転角θを調整する。このようにすることで、センサ207に入射する、エッジラフネスに起因する散乱光の光量を最小限にすることができる。
一方、明視野照明系における光学画像の場合、エッジラフネスによる明暗の程度は、0次光の影響を受ける。この理由は、次の通りである。検査対象には、解像限界以下の微細な周期パターンがあるため、構造性複屈折による位相差の効果によって、0次光の偏光状態が変化する。それ故、エッジラフネスに起因する反射光を除去する目的でファラデー回転角θを変えると、ベースとなる光量も変化する。明視野像は、ショート欠陥やオープン欠陥、エッジラフネスからの散乱光の電場振幅と、0次光の電場振幅との積であるので、エッジラフネスによる明暗の程度が0次光の強度の影響を受ける結果となる。
エッジラフネスに起因する散乱光の影響を除いて、ショート欠陥やオープン欠陥を検出する感度を向上させるには、0次光に起因する関数(具体的には、0次光の電場振幅を表す関数)が極小になる条件ではなく、エッジラフネスに起因する関数(具体的には、エッジラフネスによる散乱光の電場振幅を表す関数)が極小になる条件を見出す必要がある。0次光に起因する関数が極小になるのは、単にベース光量が最小になる条件に過ぎず、エッジラフネスによる影響を排除しきれないためである。
エッジラフネスに起因する関数が極小になる条件は、光学画像の階調値の標準偏差σと、平均階調値Aとを用いた演算により求められる。ここで、標準偏差σは、様々なノイズ要因からなるが、特にエッジラフネスによる明暗の影響を大きく受ける。また、光学画像の平均階調値Aは、ベース光量、つまり、0次光の強度である。そして、エッジラフネスに起因する散乱光の電場振幅は、光学画像の標準偏差σを平均階調値Aの平方根で割った値に比例する。エッジラフネスに起因する明暗の振幅を最小にする条件を見出すには、ファラデー回転角θを変えて光学画像を取得し、得られた光学画像における階調値の標準偏差を平均階調値の平方根で割った値
を算出する。そして、この値が最小になるファラデー回転角θを求めればよい。
上述したように、ショート欠陥やオープン欠陥のように大きな欠陥は、照明光の電場成分に対する感受性が縦方向と横方向で異なる。したがって、こうした欠陥に起因する散乱光の電場振幅が極小になるときのファラデー回転角θは、エッジラフネスに起因する散乱光の場合とは異なる。すなわち、エッジラフネスに起因する散乱光の電場振幅が極小になるときのファラデー回転角θを適用しても、ショート欠陥やオープン欠陥に起因する散乱光の電場振幅が極小になることはない。したがって、エッジラフネスに起因する明暗の振幅に埋もれることなく、ショート欠陥やオープン欠陥を検出することが可能となる。
尚、ショート欠陥やオープン欠陥で散乱した光を、エッジラフネスで散乱した光と分離するのに適当なファラデー回転角θがパターンの構造によって異なることについては、既に述べたが、これはさらに次のように詳述される。
エッジラフネスに起因する散乱光の電場振幅が極小になるときのファラデー回転角θは、検査対象に形成されたパターンの構造によって異なる。例えば、パターンのピッチ、掘り込みの深さ、ラインとスペースの比率などが変化すると、電場振幅が極小になるファラデー回転角θも変化する。したがって、被検査パターンの構造に応じてファラデー回転角θを求める必要がある。つまり、テンプレートに同じ被検査パターンが設けられている場合には、予め求めたファラデー回転角θを検査工程で使い続けることができるがテンプレートに構造の異なる複数の被検査パターンが設けられている場合には、パターン毎にファラデー回転角θを変える必要がある。また、設計上は同じパターンであっても、様々な誤差要因によって、掘り込みの深さや、ラインとスペースの比率が微少に変化し、散乱光の電場振幅を最小にするファラデー回転角θがテンプレート上でばらつくことがある。このため、こうしたばらつきにも追従させて、ファラデー回転角θを変化させる必要がある。
エッジラフネスによる明暗のムラを除去するようなファラデー回転子204の回転角度は、図9の検査装置100で次のようにして求められる。
まず、ファラデー回転角θを変えながら、テンプレート2のフォーカスオフセット調節パターン領域に配置された模擬欠陥の光学画像をセンサ207で撮像する。具体的には、角度制御回路14でファラデー回転子204のコイルに流れる電流の大きさを変え、それによって、光学材料に印加される磁場の強さを変化させて、所定のファラデー回転角θとなるようにする。この場合、所定のファラデー回転角θの値毎に、100μm×100μm程度の大きさの光学画像が1つずつ得られればよい。取得された光学画像のデータは、センサ回路106を通じて画像処理回路108に送られる。
画像処理回路108では、光学画像が画素毎の階調値で表されるので、暗視野照明系の場合には、例えば、1つの光学画像について標準偏差を求め、得られた値をエッジラフネスに起因する散乱光の程度と定義し、この値が最小になるときのファラデー回転角θを求める。一方、明視野照明系の場合には、ファラデー回転角θを変えて光学画像を取得し、得られた各光学画像における階調値の標準偏差σを平均階調値Aの平方根で割った値を算出する。そして、この値が最小になるときのファラデー回転角θを求める。以上のようにして求めたファラデー回転角θによれば、テンプレート2からの光のうち、エッジラフネスで散乱した光がセンサ207に入射するのを妨げることができる。
画像処理回路108で求められたファラデー回転角θに関する情報は、角度制御回路14へ送られる。角度制御回路14は、画像処理回路108からの情報にしたがって、ファラデー回転子204のコイルに流れる電流の大きさを制御する。これにより、ファラデー回転子204の光学材料に印加される磁場の強さが変化し、ファラデー回転角θを画像処理回路108で求められた値とすることができる。
以上のようにしてファラデー回転子の回転角度を決定した後は、テンプレート2の光学画像を取得し(S5)、それを基に欠陥の有無を判定する(S6)。
まず、角度制御回路14が、画像処理回路108からの情報にしたがって、ファラデー回転子204のコイルに流れる電流の大きさを制御して、ファラデー回転角θがS4で求めた値となるようにする。この状態で、テンプレート2の転写面に設けられた被検査パターン、すなわち、ウェハに転写される第1のパターン(図示せず)の光学画像を取得する(S5)。
S5の工程における光学画像の取得は、具体的には、次のようにして行われる。
検査装置100において、光源201から出射された光は、偏光ビームスプリッタ202で反射されて、テンプレート2へ向かうが、テンプレート2で反射された光は、偏光方向が90度回転することで、偏光ビームスプリッタ202を透過するようになり、光源201ではなく、センサ207へ向かう。そして、センサ207に光が入射することで、センサ207は、テンプレート2の光学画像を撮像する。
テンプレート2の被検査領域は、複数のストライプに仮想的に分割される。各ストライプは、例えば、幅が数百μmであって、長さが被検査領域のX方向の全長に対応する100mm程度の領域とすることができる。さらに、各ストライプには、格子状に分割された複数の被撮像単位(以下、個々の被撮像単位を「フレーム」と表記する。)が仮想的に設定される。個々のフレームのサイズは、ストライプの幅、または、ストライプの幅を4分割した程度の正方形とするのが適当である。
図15は、テンプレート2の被検査領域と、ストライプおよびフレームとの関係を説明するための概念図である。この例では、被検査領域は、4つのストライプSt1〜St4によって仮想的に分割されており、さらに、個々のストライプSt1〜St4には、45個のフレームFが仮想的に設定されている。
各ストライプSt1〜St4は、X方向に長い短冊状であってY方向に整列している。一方、各フレームは、例えば十数μm□程度の矩形を呈する。ここで、撮像漏れを防ぐため、隣り合う2つのフレーム間においては、一方のフレームの縁部と他方のフレームの縁部とが所定の幅で重なるように設定される。所定の幅は、例えば、TDIセンサの画素サイズを基準とすると、その20画素分程度の幅とすることができる。尚、ストライプも同様であり、隣り合うストライプの縁部が互いに重なるように設定される。
テンプレート2の光学画像は、ストライプ毎に撮像される。すなわち、図15の例で光学画像を撮像する際には、各ストライプSt1,St2,St3,St4が連続的に走査されるように、テーブル1の動作が制御される。具体的には、まず、テーブル1が図15の−X方向に移動しながら、ストライプSt1の光学画像がX方向に順に撮像され、TDIセンサに光学画像が連続的に入力される。ストライプSt1の光学画像の撮像を終えると、ストライプSt2の光学画像が撮像される。このとき、テーブル1は、−Y方向にステップ移動した後、ストライプSt1における光学画像の撮像時の方向(−X方向)とは逆方向(X方向)に移動していく。撮像されたストライプSt2の光学画像も、TDIセンサに連続的に入力される。ストライプSt3の光学画像を撮像する場合には、テーブル1が−Y方向にステップ移動した後、ストライプSt2の光学画像を撮像する方向(X方向)とは逆方向、すなわち、ストライプSt1の光学画像を撮像した方向(−X方向)に、テーブル1が移動する。同様にしてストライプSt4の光学画像も撮像される。
S5の光学画像の撮像工程では、S3のフォーカスオフセットの調節工程で光学画像を撮像したときの、テーブル1の移動方向と第1および第2のパターンの繰り返しの方向との関係が保持されるようにする。第1および第2のパターンの繰り返しの方向は、第3のパターンの方向から容易に把握される。これにより、フォーカスオフセットの最適値を求めたときの第1のパターンの方向と、本検査で光学画像を撮像する際の第1のパターンの方向とを一致させて、最適な焦点位置で光学画像を撮像できる。
センサ207で撮像されたテンプレート2のパターンの像は、光学画像データに変換されて検査に利用される。この過程は、具体的には次のようになる。
センサ207に入射したパターンの光学像は、光電変換された後、さらにセンサ回路106によってA/D(アナログデジタル)変換されて光学画像データになる。その後、この光学画像データは、画像処理回路108へ送られる。この光学画像は、エッジラフネスによる明暗のムラが除かれているので、ショート欠陥やオープン欠陥の有無が判定しやすいものとなっている。
画像処理回路108では、光学画像データが画素毎の階調値で表される。例えば、256段階の階調値を有するグレースケールより、0階調から255階調のいずれかの値が、各画素に与えられる。また、テンプレート2の検査領域は、所定の単位領域に分割され、各単位領域について平均階調値が求められる。所定の単位領域は、例えば、1mm×1mmの領域とすることができる。
画像処理回路108で得られた階調値に関する情報は、欠陥検出回路134へ送られる。欠陥検出回路134は、テンプレート2における被検査パターンの欠陥判定を行う(図8のS6)。
欠陥検出回路134は、例えば、平均階調値を中心として上下に閾値を持ち、画像処理回路108から送られた階調値がこの閾値を超えたときにその箇所を欠陥として認識する。ここで、閾値レベルは、検査の前に予め設定される。そして、欠陥検出回路134で得られた欠陥情報は、例えば、磁気ディスク装置109に保存される。
尚、検査装置100は、検査機能に加えてレビュー機能を有することも可能である。ここで、レビューとは、オペレータによって、検出された欠陥が実用上問題となるものであるかどうかを判断する動作である。
例えば、欠陥検出回路134で欠陥と判定された箇所の座標と、その光学画像がレビュー装置(図示せず)に送られる。オペレータは、この光学画像を手本となる基準画像と見比べてレビューする。レビューによって判別された欠陥情報は、欠陥情報リストとして、磁気ディスク装置109に保存することができる。尚、基準画像としては、例えば、被検査対象のパターンの設計データから作成された参照画像が用いられる。
以上述べたように、本実施の形態によれば、テンプレートに予め模擬欠陥を形成しておき、この模擬欠陥を用いてフォーカスオフセットの調節を行うので、常に最適なフォーカスオフセットの状態で検査をすることができる。また、その結果として検査結果の信頼性を高めることができる。
また、本実施の形態では、被検査パターンの向きを反映する形状と、検査装置の光学系の解像限界以上の寸法とを有するパターンをテンプレートに設ける。これにより、フォーカスオフセットの最適値を求めたときの被検査パターンの方向を容易に把握できるので、光学画像を撮像する際のパターンの方向をこれと一致させることで、最適な焦点位置で光学画像を撮像できるようになる。
さらに、本実施の形態では、テンプレートに形成された模擬欠陥を用いて、エッジラフネスで散乱した明暗のムラが除かれる条件、すなわち、センサに入射するエッジラフネスで散乱した光の量が最小になるファラデー回転角θを見出す。これにより、光学系の解像限界より微細なパターンの検査を精度よく行うことができる。より詳細には、エッジラフネスによる明暗のムラが除かれた光学画像を取得して、ショート欠陥やオープン欠陥の検査を行うことが可能となる。
実施の形態2.
実施の形態1では、フォーカスオフセット調節パターン領域に第2および第3のパターンを設けて被検査パターンの方向を把握したうえでフォーカスオフセットの調節を行うことを述べた。これに対し、本実施の形態では、アライメントマーク領域(アライメントマークとその周辺領域)にフォーカスオフセット調節の機能を持たせる。本実施の形態において、アライメントマークが目的とするアライメントの種類は特に限定されない。例えば、ウェハとテンプレートの位置合わせ、多層配線形成時の下層膜と上層膜の位置合わせ、検査工程でのプレートアライメントなどに使用されるものなどが挙げられる。
本実施の形態の被検査パターンは、テンプレートの転写面に設けられた回路パターンである。回路パターンは、ライン・アンド・スペースパターンなどの繰り返しパターン、すなわち、周期性を持って繰り返される規則的なパターンからなる。このパターンの少なくとも一部は、検査装置の光源の波長では解像できないパターン、すなわち、検査装置の光学系の解像限界より微細なパターン(第1のパターン)である。第1のパターンとしては、例えば、半導体チップのメモリマット部に形成されるパターンなどが挙げられる。
アライメントマーク領域は、回路パターンのレイアウトを妨げないようスクライブライン領域に配置されることが好ましい。尚、スクライブライン領域は、テンプレートの被検査パターン領域と転写面の外縁との間の領域であり、詳しくは、実施の形態1で図4を用いて説明した通りである。
アライメントマークを検査工程でのプレートアライメントに使用する場合、各アライメントマークのX座標は、他のアライメントマークのX座標のいずれか1つと一致し、各アライメントマークのY座標も、他のアライメントマークのY座標のいずれか1つと一致していることが好ましい。しかしながら、転写面の輪郭線は入り組んだ凹凸形状をしているので、スクライブライン領域の形状も入り組んだものとなる。したがって、アライメントマークがこうした理想的な配置となるようアライメントマーク領域を設けるのは困難である。そこで、例えば、転写面の外周に近い四隅(または四隅の周辺)のスクライブライン領域に、それぞれ複数のアライメントマーク領域を配置し、このうちの2つのアライメントマーク領域におけるアライメントマークの各Y座標が一致したところで、テンプレートのパターンと検査装置のテーブルの各X座標を合わせるようにする。また、他の2つのアライメントマーク領域におけるアライメントマークの各X座標が一致したところで、テンプレートのパターンと検査装置のテーブルの各Y座標を合わせるようにする。
図16は、テンプレートの転写面Sf1の平面模式図である。また、図16において、点線で示された領域Sf3は、転写面Sf1に隣接してウェハに転写される他の転写面である。
アライメントマーク領域AM1,AM2,AM5,AM6,AM9,AM10,AM12,AM13は、転写面Sf1に設けられたものである。一方、アライメントマーク領域AM3,AM4,AM7,AM8,AM11,AM14,AM15,AM16は、転写面Sf3に設けられたものである。
転写面Sf1については、アライメントマーク領域AM1,AM2に配置されたアライメントマークの各Y座標、または、アライメントマーク領域AM5,AM6に配置されたアライメントマークの各Y座標が一致したところで、テンプレートのパターンと検査装置のテーブルの各X座標を合わせる。また、アライメントマーク領域AM9,AM10に配置されたアライメントマークの各X座標、または、アライメントマーク領域AM12,AM13に配置されたアライメントマークの各X座標が一致したところで、テンプレートのパターンと検査装置のテーブルの各Y座標を合わせる。
転写面Sf3については、アライメントマーク領域AM3,AM4に配置されたアライメントマークの各Y座標、または、アライメントマーク領域AM7,AM8に配置されたアライメントマークの各Y座標が一致したところで、テンプレートのパターンと検査装置のテーブルの各X座標を合わせる。また、アライメントマーク領域AM11,AM14に配置されたアライメントマークの各X座標、または、アライメントマーク領域AM15,AM16に配置されたアライメントマークの各X座標が一致したところで、テンプレートのパターンと検査装置のテーブルの各Y座標を合わせる。
図17は、テンプレートに形成されるアライメントマーク領域の一例である。また、図18は、図17に示す領域85を拡大した図である。テンプレートは、ガラス基板に回路パターンが掘り込まれたものであり、マスクに見られるような遮光膜がない。したがって、テンプレートにおけるアライメントのためのアライメントマークは、ガラス基板上でのパターンの有無によるコントラストの差を利用して形成される。図17や図18の例においては、微細なライン・アンド・スペースパターン84が配置された領域(白色)と、ライン・アンド・スペースパターン84が配置されていないことによってテンプレートの地83が見える領域(黒色)とのコントラストの差を利用して、アライメントマークとして使用される十字形状のマーク86が形成されている。
ライン・アンド・スペースパターン84は、本実施の形態における第2のパターンである。第2のパターンは、被検査パターンとしての第1のパターン(図示せず)に倣ったパターンであり、第1のパターンと同等の形状および寸法を有する。すなわち、第2のパターンも、検査装置の光学系の解像限界より微細なパターンである。
また、第2のパターンの方向は、第1のパターンと同じである。図17のライン・アンド・スペースパターン84では、ラインパターンの2つの長辺(エッジ)がY方向に伸びていて、X方向にこのラインパターンが繰り返している。したがって、第1のパターンも、Y方向に2つの長辺(エッジ)が伸びたラインパターンがX方向に繰り返したライン・アンド・スペースパターンとなっている。かかる第1のパターンを90度回転させると、ラインパターンの2つのエッジがX方向に伸びていて、Y方向にこのラインパターンが繰り返した形状となる。第2のパターンも、第1のパターンと同じように、90度回転させると、ラインパターンの2つのエッジがX方向に伸びていて、Y方向にこのラインパターンが繰り返した形状となる。第1のパターンや第2のパターンは、ガラス基板を例えば10nm以上100nm以下の深さで掘り込むことによって形成される。
第1のパターンおよび第2のパターンは、検査装置の光学系の解像限界より微細であるため解像されない。本実施の形態では、これらの方向性が容易に把握できるよう、アライメントマークに、第1のパターンと第2のパターンの向きを反映する形状を持たせる。図17では、十字形状のマーク86がアライメントマークである。マーク86を構成する2つの直線は、いずれも検査装置の光学系の解像限界以上の寸法である。また、これらは長さが異なっており、長い方の直線は、Y軸に平行である。つまり、長い方の直線の方向は、第1のパターンおよび第2のパターンでエッジが伸びる方向と一致している。したがって、マーク86を見れば、第1のパターンや第2のパターンの向きを容易に把握することができる。
本実施の形態において、アライメントマークの形状は、十字に限られるものではなく、第1のパターンと第2のパターンの方向性を示せるものであればよい。例えば、異なる幅の2つの直線を組み合わせた十字形状として、直線の幅と、第1のパターンおよび第2のパターンの方向性とが関連付くようにしてもよい。図19では、十字形状のマーク87を構成する2つの直線の幅が異なっている。太い方の直線はX軸に平行である。つまり、太い方の直線の方向は、第1のパターンおよび第2のパターンでエッジが伸びる方向に対して垂直である。尚、細い方の直線で見れば、その方向は、第1のパターンおよび第2のパターンでエッジが伸びる方向と平行である。したがって、マーク87によっても、第1のパターンや第2のパターンの向きを容易に把握することができる。
図20は、本実施の形態におけるアライメントマーク領域の一例であり、その一部を拡大した平面図である。図20では、第2のパターンとしてのライン・アンド・スペースパターン91が配置された領域(白色)と、ライン・アンド・スペースパターン91が配置されていないことによってテンプレートの地が見える領域(黒色)とのコントラストの差を利用して、アライメントマークとして使用される十字形状のマーク92が形成されている。そして、マーク92の十字形状を構成する2つの直線のうち、Y軸に平行な直線の方がX軸に平行な直線より長くなっている。
第2のパターン91には、模擬欠陥93、94、95、96が設けられている。図20において、模擬欠陥93、95はパターンの短絡によるショート欠陥を、模擬欠陥94、96はパターンの断線によるオープン欠陥を、それぞれ模擬している。また、模擬欠陥93、94は、いずれも第1のパターンの線幅と同等程度である。一方、模擬欠陥95、96は、いずれも第1のパターンの線幅の半分程度である。このように、種類、形状、寸法などの異なる複数の模擬欠陥を設けることが好ましい。フォーカスオフセットの最適値は、欠陥の種類、形状、寸法などによって変化するので、1つのアライメントマーク領域に複数の模擬欠陥を設けることで、欠陥全体として最適なフォーカスオフセットを見出して、検査の精度を高めることができる。
本実施の形態の検査方法は、フォーカスオフセットの調節にアライメントマーク領域に形成された模擬欠陥を使用し、また、アライメントマークで被検査パターンの方向を把握する以外は、実施の形態1で説明したのと同様である。すなわち、この検査方法は、図8に示すS1〜S6の工程にしたがって行われ、これらの工程は、図9の検査装置100を用いて実施される。例えば、S4では、検査装置100の光源201から出射してテンプレート2を照明した光のうち、センサ207に入射するエッジラフネスで散乱した光の量が最小になるときの、ファラデー回転子204による光の偏光面の回転角度(ファラデー回転角θ)を決定する。本実施の形態において、アライメントマーク領域にエッジラフネスを模擬した欠陥を設ければ、その光学画像から、エッジラフネスで散乱した明暗のムラが除かれる条件、すなわち、センサ207に入射するエッジラフネスで散乱した光の量が最小になるファラデー回転角θを求めることができる。尚、上記の光学画像には、S3のフォーカスオフセットの調節工程で用いた光学画像を適用することができる。
以上述べたように、本実施の形態では、アライメントマーク領域に模擬欠陥を設け、さらに、アライメントマークに、被検査パターンの向きを反映した特徴を持たせる。つまり、本実施の形態では、実施の形態1のフォーカスオフセット調節パターン領域の機能をアライメントマーク領域が有するので、フォーカスオフセット調節パターン領域を設ける必要がない。したがって、テンプレートのスクライブライン領域を有効に活用することができる。
また、アライメントマーク領域に設けた第2のパターンと第3のパターンと模擬欠陥とを用いてフォーカスオフセットの調節を行うことで、常に最適なフォーカスオフセットの状態で検査をすることができる。また、その結果として検査結果の信頼性を高めることができる。
さらに、アライメントマークが、被検査パターンの向きを反映する形状を有するので、フォーカスオフセットの最適値を求めたときの被検査パターンの方向を容易に把握できる。したがって、光学画像を撮像する際のパターンの方向をこれと一致させることで、最適な焦点位置で光学画像を撮像できるようになる。
実施の形態3.
実施の形態1では、フォーカスオフセット調節パターン領域に模擬欠陥が配置された第2および被検査パターンの方向を検知する第3のパターンを設けることを述べた。そして、被検査パターンの方向を把握したうえで、フォーカスオフセットの調節を行う工程を設け、その後、ファラデー回転子の回転角度を決定する工程を設けて検査を行う検査方法について述べた。
実施の形態1の検査方法では、画像信号の信号/ノイズ(S/N)比が最大となって欠陥を検出するのに最適となるようにフォーカスオフセットの調節を行う。その後、エッジラフネスによる明暗のムラを除去するようにファラデー回転子の回転角度を決定した。
これに対して、実施の形態3の検査方法では、予備検査工程において、欠陥信号の強度とエッジラフネスに起因する背景ノイズの強度とを併せて考慮した新たな評価尺度を導入する。そして、この新しい評価尺度にしたがって、模擬欠陥を含む被検査対象の光学画像を評価する。これにより、予備検査工程において最適なフォーカスオフセットの調節とファラデー回転子の回転角度の決定とを併せて行うことができる。そして、続く本検査工程で、実施の形態1と同様に、被検査対象の光学画像を基に欠陥の有無を判定する。
本実施の形態の検査対象は、例えば、図1〜図7等に示した実施の形態1の被検査対象と同様とする。すなわち、本実施の形態の検査対象は、第1のパターンが設けられた領域の外周部に配置されたスクライブラインとなるスクライブライン領域にアライメントマーク領域を有し、第2のパターンおよび第3のパターンは、アライメントマーク領域を除いたスクライブライン領域に設けられている。
尚、本実施の形態では、図16〜図20等に示した実施の形態2の被検査対象を、同様に、被検査対象とすることもできる。すなわち、本実施の形態の検査対象は、第1のパターンが設けられた領域の外周部に配置されたスクライブラインとなるスクライブライン領域にアライメントマーク領域を有し、アライメントマーク領域は、第2のパターンと、その第2のパターンが配置されていない領域であって、その第2のパターンが配置された領域とのコントラストの差によってアライメントのためのアライメントマークを形成する領域とを有し、第3のパターンは、前記アライメントマークを兼ねるようにすることも可能である。
したがって、本実施の形態の検査対象においては、実施の形態1および実施の形態2と同様に、種類が同じであって寸法の異なる欠陥が複数あってもよい。
また、使用する検査装置については、実施の形態1と同様に、図9に示した検査装置100を用いることができる。
すなわち、本実施の形態で使用する検査装置100の光学系は、偏光ビームスプリッタ202と2分の1波長板203とファラデー回転子204と対物レンズ205とを有する。そして、上述したように、フォーカスオフセットを調節した後に、光源201から出射した光を用い、偏光ビームスプリッタ202で反射させ、2分の1波長板203とファラデー回転子204と対物レンズ205とを透過させる。その結果、光源201からの光を、上述した第1のパターンの繰り返し方向に対し、例えば、−5度以上5度以下と85度以上95度以下の各範囲にある角度以外の角度の偏光面を有する光にしてテンプレート2を照明する。そして、テンプレート2で反射した光を、対物レンズ205と2分の1波長板203とファラデー回転子204と偏光ビームスプリッタ202を透過させてからセンサ207に入射させて、模擬欠陥の光学画像を得るように構成されている。
以下、本実施の形態について、検査装置100を使用して実施の形態1と同様のテンプレート2を被検査対象とする例を説明する。したがって、実施の形態1と共通する被検査対象や検査装置等の要素については、同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図28は、本実施の形態の検査方法を示すフローチャートである。この図において、被検査対象の光学画像を基に欠陥の有無を判定する本検査工程はS18およびS19に対応し、S11〜S17は本検査工程に先立って行われる予備検査工程に対応する。
そして、本実施の形態の検査方法では、図28に示すように、実施の形態1の図8に示された検査方法のS1と同様に、まず、テンプレート2が検査装置100のテーブル1上に載置されて、プレートアライメントが行われる(S11)。
次に、図28に示すように、実施の形態1の図8に示された検査方法のS2と同様に、テンプレート2の光学画像を取得するセンサ207の光量振幅を最適化する(S12)。
次に、本実施の形態の検査方法では、図28に示すように、模擬欠陥の光学画像を撮像するためのフォーカスオフセットの条件範囲を設定する(S13)。
具体的には、最適なフォーカスオフセットが解として含まれると推定される条件範囲を決める。例えば、−0.5μm以上+0.5μm以下を変動範囲として決める。そして、合焦点位置を中心として、−0.5μm以上+0.5μm以下までの範囲をフォーカスオフセットの条件範囲として設定することができる。
次に、図28に示すように、模擬欠陥の光学画像を撮像するためのファラデー回転子204の回転角度の条件範囲を設定する。その結果、ファラデー回転子204の回転角度に対応して、ファラデー回転子204を透過する光の偏光面の回転角度(ファラデー回転角θ)の条件範囲を設定することができる(S14)。
具体的には、図9に示した検査装置100のファラデー回転子204に対し、最適な回転角度が解として含まれると推定される条件範囲を決める。例えば、−5度以上+5度以下を変動範囲として決める。そして、テンプレート2上に形成された繰り返しパターンの繰り返しの方向に対して45度となる角度を中心の値として、−5度以上+5度以下の範囲を、ファラデー回転子204の回転角度の条件範囲として設定することができる。すなわち、上述の繰り返しの方向に対して40度以上50度以下の範囲を、ファラデー回転子204の回転角度の条件範囲として設定することができる。その結果、ファラデー回転子204の回転角度の条件範囲に対応して、同様にファラデー回転角θの条件範囲を設定することができる。
次に、図28に示すように、フォーカスオフセットおよびファラデー回転子204の回転角度の条件を、S13およびS14で設定されたそれぞれの設定範囲内で変えながら、第2のパターンに設けられた模擬欠陥の光学画像を取得する(S15)。
すなわち、フォーカスオフセットについては、合焦点位置を中心として、例えば、−0.5μm以上+0.5μm以下までの範囲内でフォーカスオフセットの条件を変化させる。このとき、テンプレート2の転写面と対物レンズ205の焦点距離を変えることによりフォーカスオフセットの条件を変化させることができる。
また、ファラデー回転子204の回転角度については、上述したテンプレート2の繰り返しパターンの繰り返しの方向に対して45度となる角度を中心の値として、−5度以上+5度以下の範囲内でファラデー回転子204の回転角度を変化させる。すなわち、上述の繰り返しの方向に対して40度以上50度以下の範囲でファラデー回転子204の回転角度を変化させる。このとき、ファラデー回転子204への印加磁場の強さを制御することで、ファラデー回転子204の回転角度を変化させることができる。そして、ファラデー回転子204の回転角度の変化に対応し、ファラデー回転子204を透過する光の偏光面の回転角度(ファラデー回転角θ)を変えることができる。その結果、ファラデー回転角の条件を変化させることができる。
図28のS15での模擬欠陥の光学画像の撮像については、例えば、フォーカスオフセットの条件を上述の設定範囲内で複数選択し、併せて、ファラデー回転角の条件を上述の設定範囲内で複数選択する。このとき、例えば、フォーカスオフセットの条件を5条件とし、また、ファラデー回転角の条件を5条件とすることができる。
そして、図28のS15の模擬欠陥の光学画像の撮像では、全条件の模擬欠陥の光学画像を取得する。すなわち、上述の場合、フォーカスオフセットの5条件、および、ファラデー回転角の5条件にしたがって、25条件(5条件×5条件)の全条件で、テンプレート2の第2のパターンに設けられた模擬欠陥の光学画像を撮像することができる。
このとき、フォーカスオフセットに関する5条件の選択方法としては、例えば、(合焦点位置−0.5μm)、(合焦点位置−0.25μm)、(合焦点位置)、(合焦点位置+0.25μm)および(合焦点位置+0.5μm)の5条件のように、5条件が等間隔となるように設定することができる。
また、ファラデー回転子の回転角度に関する5条件の選択方法としては、例えば、(繰り返しの方向に対して40度となる角度)、(繰り返しの方向に対して42.5度となる角度)、(繰り返しの方向に対して45度となる角度)、(繰り返しの方向に対して47.5度となる角度)および(繰り返しの方向に対して50度となる角度)の5条件のように、5条件が等間隔となるように設定することができる。
尚、上述の模擬欠陥の光学画像を撮像条件は、フォーカスオフセットの5条件およびファラデー回転子204の回転角度の5条件による25条件のみに限られるわけではない。例えば、フォーカスオフセットの3条件およびファラデー回転子204の回転角度の3条件による9条件(3条件×3条件)とすることも可能である。また、フォーカスオフセットの4条件およびファラデー回転子204の回転角度の5条件による20条件(4条件×5条件)とすること等も可能である。すなわち、フォーカスオフセットの条件数およびファラデー回転子204の回転角度の条件数をそれぞれ別に、異なる数として設定することも可能である。
次に、図28に示すように、それぞれ異なる条件で撮像された全画像をそれぞれ解析し、互いの比較を行って、欠陥の有無を判定する本検査工程のための条件を抽出する(S16)。すなわち、S16では、撮像された全画像をそれぞれ解析し、その解析結果にしたがって、新たな評価尺度として、信号/ノイズ(S/N)比を算出する。このとき、このS16で算出される信号/ノイズ(S/N)比は、上述した実施の形態1の検査方法のS3等で最適な焦点距離を求める尺度に利用されたものとは異なる。したがって、以下、便宜的に第2の信号/ノイズ(S/N)比と称する。そして、算出された第2の信号/ノイズ(S/N)比に基づいて、後の本検査工程の条件を抽出する。
画像の解析と、上述の第2の信号/ノイズ(S/N)比の算出については、検査装置100の画像処理回路108を用いて以下のように行うことができる。
例えば、上述したテンプレート2の第2のパターンに設けられた模擬欠陥の光学画像を撮像する工程(S15)では、フォーカスオフセット3条件およびファラデー回転子204の回転角度3条件の9条件で光学画像の撮像が行われるものとする。そして、撮像された9条件全画像において、第2のパターンに設けられた模擬欠陥は、例えば、図12の領域D2における欠陥のように、光学画像中で白い輝点として見えるものとする。また、フォーカスオフセットの条件およびファラデー回転角の条件次第では、模擬欠陥に起因する白い輝点とともに、例えば、図12の領域D3における欠陥のように、グレーレベルがばらついて濃い灰色領域と淡い灰色領域が混在した明暗のムラとして、エッジラフネスに起因する背景ノイズが見られるものとする。
そして、上述の9条件の全画像の中から、模擬欠陥に起因する白い輝点と背景とのコントラストが高く、また、エッジラフネス起因の背景ノイズが抑制された欠陥画像を、最良の撮像条件による欠陥画像として抽出する。そして、抽出された欠陥画像の撮像条件として、フォーカスオフセットの条件、および、ファラデー回転角としてのファラデー回転子の回転角度の条件を、後の本検査工程における光学画像の取得の条件として決定する。
この本検査工程のための光学画像の取得条件の抽出は、撮像された9条件の全画像を解析し、上述の第2の画像信号の信号/ノイズ(S/N)比を算出して行うが、具体的には以下のように行うことができる。
まず、撮像された全画像のそれぞれについて解析を行い、上述したように、テンプレート2の第2のパターンに設けられて白い輝点として見える模擬欠陥の信号強度を算出する。
図29は、信号強度の算出結果を比較して示すグラフである。
図29に示すように、グラフの縦軸は、白い輝点に見える模擬欠陥の信号強度を示し、横軸は、フォーカスオフセットの条件範囲を示す。そして、フォーカスオフセットの具体的な条件を3条件(F1、F2、F3)とし、ファラデー回転子204の回転角度を3条件(P1、P2、P3)として、得られる9条件の模擬欠陥の信号強度をグラフ上にプロットする。それによって、ファラデー回転子204の回転角度の3条件(P1、P2、P3)に対応し、9条件の全画像の評価結果を含む3種の折れ線グラフが得られる。
図29において、各プロットの信号強度は、模擬欠陥に基づく白い輝点の輝度がどれほど高いのかを示している。このとき、ファラデー回転子204の回転角度がP3である条件において、欠陥信号の強度が高く、模擬欠陥に基づく白い輝点は最も高輝度で見えやすいことが分かる。
次に、撮像された9種の全画像のそれぞれについて解析を行い、エッジラフネスに起因する背景ノイズの強度を算出する。このとき、エッジラフネスに起因する背景ノイズの強度は、模擬欠陥に基づく白い輝点を除く周囲の領域のグレーレベルのばらつきの程度を算出したものである。
図30は、エッジラフネスに起因する背景ノイズの信号強度の算出結果を比較して示すグラフである。
図30に示すように、グラフの縦軸は、背景ノイズの強度を示し、横軸は、フォーカスオフセットの条件範囲を示す。そして、フォーカスオフセットの具体的な条件を3条件(F1、F2、F3)とし、ファラデー回転子204の回転角度を3条件(P1、P2、P3)として得られる9条件の模擬欠陥の信号強度をグラフ上にプロットする。それによって、ファラデー回転子204の回転角度の3条件(P1、P2、P3)に対応し、9条件の全画像の評価結果を含む3種の折れ線グラフが得られる。
このとき、図30に示す背景ノイズの強度は、エッジラフネスに起因する背景ノイズがどれほど高い強度であるのかを示している。したがって、ファラデー回転子204の回転角度がP3である条件において、最も背景ノイズの強度が高いことがわかる。一方、ファラデー回転子204の回転角度がP2である条件において、最も背景ノイズの強度が低いことが分かる。
図29に示す算出結果からは、ファラデー回転子204の回転角度をP3とする条件が、模擬欠陥に基づく白い輝点を最も高輝度とすることができ、最も有効な条件と解される。しかしながら、図30に示す算出結果も併せて考慮すると、ファラデー回転子204の回転角度がP3である条件は、背景ノイズの強度が強いため、実際には、真の欠陥を判別する事が難しい条件であることが分かる。
そこで、本実施の形態においては、欠陥信号の強度とエッジラフネスに起因する背景ノイズとを併せて考慮する新たな評価尺度を算出して使用する。そして、模擬欠陥を含む被検査対象に対し、より有効な光学画像の評価を行う。
すなわち、例えば、図29に示した模擬欠陥の信号強度を、図30に示したエッジラフネスに起因する背景ノイズの信号強度で除した第2の信号/ノイズ(S/N)比を算出する。そして、この第2の信号/ノイズ(S/N)比を新たな評価尺度として用い、被検査対象の第2のパターンに設けられた模擬欠陥の光学画像を評価する。
図31は、第2の信号/ノイズ(S/N)比の算出結果を比較して示すグラフである。
図31に示すように、グラフの縦軸は、上述した第2の信号/ノイズ(S/N)比を示し、横軸は、フォーカスオフセットの条件範囲を示す。そして、フォーカスオフセットの具体的な条件を3条件(F1、F2、F3)とし、ファラデー回転子204の回転角度を3条件(P1、P2、P3)として得られる9条件の第2の信号/ノイズ(S/N)比をグラフ上にプロットする。それによって、ファラデー回転子204の回転角度の3条件(P1、P2、P3)に対応し、9条件の全画像の評価結果を含む3種の折れ線グラフが得られる。
図31に示す第2の信号/ノイズ(S/N)比は、模擬欠陥に基づく白い輝点がどれほど見えやすいのかを示している。そして、ファラデー回転子204の回転角度がP2である条件において、第2の信号/ノイズ(S/N)比が高いことがわかる。併せて、フォーカスオフセットの条件がF2である条件において、第2の信号/ノイズ(S/N)比が高いことが分かる。
以上より、模擬欠陥の光学画像の評価においては、欠陥信号の強度の高さと併せて、エッジラフネスに起因する背景ノイズが少ないことが有効に作用する。その結果、ファラデー回転子の回転角度がP2であり、フォーカスオフセットの条件がF2である条件が、模擬欠陥に起因する白い輝点と背景とのコントラストが高く、また、エッジラフネス起因の背景ノイズが抑制された、好ましい撮像条件となる。すなわち、被検査対象の欠陥検出に最も有効な条件と判断することができる。
次に、本実施の形態の検査方法では、図28に示すように、フォーカスオフセットの条件、および、ファラデー回転子204の回転角度としてのファラデー回転角について、上述の好ましい撮像条件を、被検査対象の欠陥検出に最も有効な条件として決定する(S17)。
すなわち、図31に示す、ファラデー回転子204の回転角度がP2であり、フォーカスオフセットの条件がF2である撮像の条件が、本検査工程の光学画像の取得条件として確定される。
次に、図28に示すように、実施の形態1の図8の検査方法のS5と同様に、テンプレート2の光学画像を取得する(S18)。その後、実施の形態1の検査方法のS6と同様に、テンプレート2の光学画像を基に、欠陥の有無を判定する(S19)。
以上述べたように、本実施の形態によれば、テンプレートに予め模擬欠陥を形成しておく。そしてさらに、欠陥信号の強度とエッジラフネスに起因する背景ノイズの強度とを併せて考慮した新たな評価の尺度を導入し、模擬欠陥を含む被検査対象の光学画像の取得条件をより好ましい条件とする。
本実施の形態の検査方法は、上述の模擬欠陥を用いてフォーカスオフセットの調節を行うので、常に好ましいフォーカスオフセットの状態で検査をすることができる。また、その結果として検査結果の信頼性を高めることができる。
さらに、模擬欠陥を用いて、エッジラフネスで散乱した明暗のムラが除かれる条件、すなわち、センサに入射するエッジラフネスで散乱した光の量が最小になるファラデー回転角θを見出す。これにより、光学系の解像限界より微細なパターンの検査を精度よく行うことができる。より詳細には、エッジラフネスによる明暗のムラが除かれた光学画像を取得して、ショート欠陥やオープン欠陥の検査を行うことが可能となる。
尚、以上で説明した本実施の形態の例では、検査装置100を使用して実施の形態1と同様のテンプレート2を被検査対象としたが、上述したように、検査装置100を使用して実施の形態2と同様の被検査対象とすることも可能である。
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
例えば、上記実施の形態では、第1のパターンと第2のパターンが、ライン・アンド・スペースパターンである例について述べたが、ライン・アンド・スペースパターン以外のパターン、例えば、矩形パターンやホールパターンとすることもできる。この場合、ショート欠陥は、矩形同士またはホール同士が短絡する欠陥であり、オープン欠陥は、矩形またはホールが欠落する欠陥である。
矩形パターンやホールパターンにおいて、隣接する矩形またはホール間の寸法が、X軸に平行な方向とY軸に平行な方向とで異なる場合には、フォーカスオフセットを調整したときの被検査パターンの方向と、本検査で光学画像を取得するときの被検査パターンの方向とを一致させる必要がある。
図21は、第2のパターン97がホールパターンであり、アライメントマークが十字形状の例である。領域a3では、ホールが欠落したオープン欠陥が模擬された模擬欠陥98が設けられている。
また、ホールパターンは、X方向のホール間距離Wxと、Y方向のホール間距離Wyとが異なるので、フォーカスオフセットの最適値は、ホールパターンの方向によって異なる。すなわち、X方向のホール間距離Wxの方が、Y方向のホール間距離Wyより大きくなるように、テンプレートがテーブル上に載置されたときのフォーカスオフセットの最適値と、Y方向のホール間距離Wyの方が、X方向のホール間距離Wxより大きくなるように、テンプレートがテーブル上に載置されたときのフォーカスオフセットの最適値とは異なる。そこで、例えば、図21のように、十字形状のマークを構成する2つの直線の幅を変え、太い方の直線の方向と、第2のパターン97において、Y方向のホール間距離WyがX方向のホール間距離Wxより大きくなる方向とが一致するようにする。これにより、フォーカスオフセットの最適値を求めたときの被検査パターンの方向を容易に把握できるので、光学画像を撮像する際のパターンの方向と一致させることで、最適な焦点位置で光学画像を撮像できるようになる。
また、実施の形態1、2および3では、第2のパターンの形状や寸法を第1のパターンと同等とした。しかしながら、第2のパターンは、これに限られるものではない。第1のパターンと第2のパターンの寸法が異なる場合においては、(第2のパターンを背景パターンとする)模擬欠陥を用いて求めたフォーカスオフセットの最適値やファラデー回転角θの最適値が、第1のパターンの欠陥における最適値と一致しないことがあり得る。具体的には、ライン・アンド・スペースパターンにおける線幅や線間距離が異なる場合、ホールパターンにおけるホール径やホール間距離が異なる場合、ライン・アンド・スペースパターンにおける各ラインの幅寸法とピッチとによって規定されるデューティ比が、フォーカスオフセット調節パターン領域やアライメントマーク領域と被検査領域とで異なる場合などである。こうした場合には、第2のパターンにおける最適値を第1のパターンにおける最適値に換算または補正する係数を用意しておくことが好ましい。
さらに、本発明は、テンプレート基板以外の基板、例えば、マスク基板にも適用することが可能である。実施の形態1および2では、テンプレートに設けられたパターンを被検査対象とし、このテンプレートに模擬欠陥や被検査パターンの向きを反映する形状を有するパターンを設けたが、マスクに設けられたパターンを被検査対象とする場合、この被検査パターンと同一面に、模擬欠陥や被検査パターンの向きを反映する形状を有するパターンを配置する。このとき、模擬欠陥は、実施の形態1や2と同様に、被検査パターンに倣ったパターンに設けられる。尚、模擬欠陥や被検査パターンの向きを反映する形状を有するパターンは、実施の形態1のようにフォーカスオフセット調節パターン領域に設けてもよく、また、実施の形態2のようにアライメントマーク領域に設けてもよい。このような構成によれば、フォーカスオフセットを適切に調節して、検査装置の光学系の解像限界より微細なマスクのパターンの欠陥を精度よく検出することが可能となる。
また、実施の形態1、2および3では、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要としない部分についての記載を省略したが、検査装置や検査方法に必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができることは言うまでもない。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての検査方法は、本発明の範囲に包含される。
以下に、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
光源から出射した光を光学系を介して基板に照射し、前記基板で反射した光を前記光学系を介してセンサに入射させて得た光学画像を用いて欠陥の有無を検査する検査方法であって、
前記基板は、前記光学系の解像限界より微細な繰り返しパターンからなる第1のパターンと、前記第1のパターンと同一面に配置されて前記第1のパターンと向きが同じであって前記光学系の解像限界より微細な繰り返しパターンからなる第2のパターンと、前記第2のパターンに設けられて前記光学系の解像限界より微細な模擬欠陥と、前記第1のパターンと同一面に配置されて前記第1のパターンの方向を反映した形状を有し前記光学系の解像限界以上の寸法の第3のパターンとを備えており、前記第1のパターンが設けられた面と前記光学系との焦点距離を変えながら前記模擬欠陥の光学画像を撮像し、該光学画像でベースとなる階調値に対して前記模擬欠陥の信号が最も強く得られるフォーカスオフセットに調節する工程と、
前記フォーカスオフセットに調節した後に前記第1のパターンの光学画像を取得して前記第1のパターンの欠陥の有無を検査する工程とを有することを特徴とする検査方法。
[C2]
前記基板は、前記第1のパターンが設けられた領域の外周部に配置されたスクライブラインとなるスクライブライン領域にアライメントマーク領域を有し、
前記第2のパターンおよび前記第3のパターンは、前記アライメントマーク領域を除いた前記スクライブライン領域に設けられていることを特徴とする[C1]に記載の検査方法。
[C3]
前記基板は、前記第1のパターンが設けられた領域の外周部に配置されたスクライブラインとなるスクライブライン領域にアライメントマーク領域を有し、
前記アライメントマーク領域は、前記第2のパターンと、前記第2のパターンが配置されていない領域であって、前記第2のパターンが配置された領域とのコントラストの差によってアライメントのためのアライメントマークを形成する領域とを有し、
前記第3のパターンは、前記アライメントマークを兼ねることを特徴とする[C1]に記載の検査方法。
[C4]
前記模擬欠陥には、種類が同じであって寸法の異なる欠陥が複数あることを特徴とする[C1]に記載の検査方法。
[C5]
前記第1のパターンと前記第2のパターンとに寸法差がある場合、または、前記第1のパターンおよび前記第2のパターンがいずれもライン・アンド・スペースパターンであって、各ラインの幅寸法とピッチとによって規定されるデューティ比に前記第1のパターンと前記第2のパターンで差がある場合に、前記第2のパターンに設けられた模擬欠陥の光学画像から求めたフォーカスオフセットが前記第1のパターンで最適となるよう換算する工程を有することを特徴とする[C1]〜[C4]のいずれか1項に記載の検査方法。
[C6]
前記光学系は、偏光ビームスプリッタと2分の1波長板とファラデー回転子と対物レンズとを有し、前記フォーカスオフセットを調節した後に、前記光源から出射した光を、前記偏光ビームスプリッタで反射させ、前記2分の1波長板と前記ファラデー回転子と前記対物レンズを透過させて、前記第1のパターンの繰り返し方向に対し−5度以上5度以下と85度以上95度以下の各範囲にある角度以外の角度の偏光面を有する光にして前記基板を照明し、
前記基板で反射した光を、前記対物レンズと前記2分の1波長板と前記ファラデー回転子と前記偏光ビームスプリッタを透過させてから前記センサに入射させて、前記模擬欠陥の光学画像を得る工程と、 前記模擬欠陥の光学画像から画素毎の階調値を求め、
(1)前記階調値の標準偏差を最小にする前記ファラデー回転子による光の偏光面の回転角度、または、
(2)前記回転角度を変えて取得した複数の模擬欠陥の光学画像における前記階調値の標準偏差を、前記階調値から求められる平均階調値の平方根で割った値が最小になるときの回転角度を取得する工程と、
前記取得した回転角度となるように、前記ファラデー回転子に磁界を印加する工程と、
前記ファラデー回転子に前記磁界が印加された状態で、前記第1のパターンの光学画像を得る工程と、
前記第1のパターンの光学画像を用いて前記第1のパターンの欠陥の有無を検査する工程とを有し、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンは、ライン・アンド・スペースパターンであって、
前記模擬欠陥には、ライン同士が短絡するショート欠陥およびラインが断線するオープン欠陥の少なくとも一方と、エッジラフネスによる欠陥とがあることを特徴とする[C1]〜[C5]のいずれか1項に記載の検査方法。
[C7]
光源から出射した光を光学系を介して基板に照射し、前記基板で反射した光を前記光学系を介してセンサに入射させて得た光学画像を用いて欠陥の有無を検査する検査方法であって、
前記基板は、前記光学系の解像限界より微細な繰り返しパターンからなる第1のパターンと、前記第1のパターンと同一面に配置されて前記第1のパターンと向きが同じであって前記光学系の解像限界より微細な繰り返しパターンからなる第2のパターンと、前記第2のパターンに設けられて前記光学系の解像限界より微細な模擬欠陥と、前記第1のパターンと同一面に配置されて前記第1のパターンの方向を反映した形状を有し前記光学系の解像限界以上の寸法の第3のパターンとを備えており、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンは、ライン・アンド・スペースパターンであって、前記模擬欠陥には、ライン同士が短絡するショート欠陥およびラインが断線するオープン欠陥の少なくとも一方と、エッジラフネスによる欠陥とがあり、
前記光学系は、偏光ビームスプリッタと2分の1波長板とファラデー回転子と対物レンズとを有し、前記フォーカスオフセットを調節した後に、前記光源から出射した光を用い、前記偏光ビームスプリッタで反射させ、前記2分の1波長板と前記ファラデー回転子と前記対物レンズを透過させて、前記第1のパターンの繰り返し方向に対し−5度以上5度以下と85度以上95度以下の各範囲にある角度以外の角度の偏光面を有する光にして前記基板を照明し、前記基板で反射した光を、前記対物レンズと前記2分の1波長板と前記ファラデー回転子と前記偏光ビームスプリッタを透過させてから前記センサに入射させて、前記模擬欠陥の光学画像を得るように構成されており、
前記フォーカスオフセットの調節のためにフォーカスオフセットの条件範囲を設定する工程と、
前記基板を照明する前記光の偏光面の、前記第1のパターンの繰り返し方向に対する角度を調節するために、前記ファラデー回転子の角度の条件範囲を設定する工程と、
前記フォーカスオフセットの条件範囲および前記ファラデー回転子の角度の条件範囲のそれぞれの範囲内で、前記フォーカスオフセットの条件および前記ファラデー回転子の角度の条件を変えながら複数条件の前記模擬欠陥の光学画像を撮像する工程と、
前記撮像された複数の光学画像を解析し、それぞれについて、前記模擬欠陥の前記ショート欠陥およびオープン欠陥の一方の信号強度を、前記エッジラフネスに起因するノイズの信号強度で除して評価尺度を算出する工程と、
前記評価尺度を用い、前記模擬欠陥の光学画像を得るための前記フォーカスオフセットの条件および前記ファラデー回転子の角度の条件を抽出し、前記第1のパターンの欠陥の有無を検査するための前記フォーカスオフセットの検査条件および前記ファラデー回転子の角度の検査条件を決める工程と、
前記フォーカスオフセットの検査条件および前記ファラデー回転子の角度の検査条件にしたがって、前記第1のパターンの光学画像を取得して前記第1のパターンの欠陥の有無を検査する工程とを有することを特徴とする検査方法。
[C8]
前記基板は、前記第1のパターンが設けられた領域の外周部に配置されたスクライブラインとなるスクライブライン領域にアライメントマーク領域を有し、
前記第2のパターンおよび前記第3のパターンは、前記アライメントマーク領域を除いた前記スクライブライン領域に設けられていることを特徴とする[C7]に記載の検査方法。
[C9]
前記基板は、前記第1のパターンが設けられた領域の外周部に配置されたスクライブラインとなるスクライブライン領域にアライメントマーク領域を有し、
前記アライメントマーク領域は、前記第2のパターンと、前記第2のパターンが配置されていない領域であって、前記第2のパターンが配置された領域とのコントラストの差によってアライメントのためのアライメントマークを形成する領域とを有し、
前記第3のパターンは、前記アライメントマークを兼ねることを特徴とする[C7]に記載の検査方法。
[C10]
前記模擬欠陥には、種類が同じであって寸法の異なる欠陥が複数あることを特徴とする[C7]に記載の検査方法。
[C11]
第1のパターンが設けられたパターン領域と該パターン領域の周囲に設けられたスクライブラインとなるスクライブライン領域とを転写面に有し、
前記スクライブライン領域は、
アライメントマークが配置されたアライメントマーク領域と、
前記アライメントマーク領域以外の領域に設けられた第2のパターンおよび第3のパターンと、
前記第2のパターンに設けられた模擬欠陥とを有し、
前記第1のパターンは、該第1のパターンの光学画像を取得して欠陥の有無を検査する検査装置の光学系の解像限界より微細な繰り返しパターンであり、
前記第2のパターンは、前記第1のパターンと向きが同じであって、前記光学系の解像限界より微細な繰り返しパターンであり、
前記模擬欠陥は、前記光学系の解像限界より微細であり、
前記第3のパターンは、前記第1のパターンの方向を反映した形状を有し、前記光学系の解像限界以上の寸法であることを特徴とするテンプレート。
[C12]
第1のパターンが設けられたパターン領域および該パターン領域の周囲に設けられたスクライブラインとなるスクライブライン領域を転写面に有し、
前記スクライブライン領域には、アライメントマーク領域が設けられ、
前記アライメントマーク領域は、前記第1のパターンと向きが同じであって、前記光学系の解像限界より微細な繰り返しパターンからなる第2のパターンと、
前記第2のパターンに設けられて前記光学系の解像限界より微細な模擬欠陥と、
前記第2のパターンが配置されていない領域であって、前記第2のパターンが配置された領域とのコントラストの差によってアライメントのためのアライメントマークを形成する領域とを有し、
前記アライメントマークは、前記光学系の解像限界以上の寸法であって、前記第1のパターンの方向を反映した形状を有することを特徴とするテンプレート。