JP6422050B2 - X線光学系基材、及びその製造方法 - Google Patents

X線光学系基材、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、X線光学系基材、及びその製造方法に関するものである。
天体から放射されるX線の観測は、X線天文学、宇宙探査等の分野で重要である。天体から放射されるX線は地球の大気によって吸収される。このため、天体から放射されるX線の観測は、X線の観測装置を地球の大気より高い高度へ運んで行われており、例えば、X線の観測装置を人工衛星に搭載するなどして行われている。
また、X線は、可視光とは異なり、直入射光学系の利用が困難である。このため、X線の光学系は、物質のX線に対する屈折率が1よりも小さいことを利用した全反射による斜入射光学系が用いられており、斜入射光学系を用いるX線光学系基材が種々提案されている。
代表的な斜入射光学系を用いるX線光学系基材の例としては、反射面の有効面積を大きくとるために、直径の異なる金属製の円筒状の反射鏡を、同軸状に多数配置するX線光学系基材が知られている。
本願発明者らは、特許文献1において、軽量かつ比較的容易に製造できるX線光学系基材として、異方性エッチングによるシリコンウエハ断面をX線反射鏡として利用するX線光学系基材を提案している。これは、薄いウエハに微細な穴を開けるため、従来よりも軽い鏡となる。また一度のエッチングで鏡を大量に製作できるという利点もある。
さらに、本願発明者らは、特許文献2において、軽量性を保ちつつ結像性能向上を目指した新たなX線光学系基材として、シリコンドライエッチングもしくはX線LIGAで製作した微細曲面穴構造体の断面をX線光学系として用いるX線光学系基材を提案している。
特開2006−194758号公報 特開2010−085304号公報
しかしながら、直径の異なる金属製の円筒状の反射鏡を、同軸状に多数配置するX線光学系基材の場合、鏡を一枚一枚作る手間がかかり、有効面積1mあたり1トン以上の重量となり、重量が増大するため、宇宙空間で利用する場合に地上からの輸送に支障を来すという問題がある。
また、特許文献1にかかるX線光学系基材は、重量の問題は解決しているものの、異方性エッチングでは、直線の鏡しか作れないので理想曲面を直線で近似することになり結像性能は制限され。また、多数の鏡を曲面に沿って極めて高精度に配置する必要があるという問題がある。
また、特許文献2にかかるX線光学系基材は、1枚1枚の基板に対し高温塑性変形もしくは弾性変形を施す必要があり、またそれらの変形基板を最終的に並進・回転方向にミクロン・秒角精度で位置合わせしなければならないという問題がある。
すなわち、従来提案されているX線光学系基材は、変形や位置合わせの調整が高精度に必要なため、光学部材の構成が理想的な構成からほんの少しでもずれると、光学系の分解能および有効面積が大きく劣化するという問題がある。さらに、複数枚の基板を正確に位置合わせするためには高価な専用装置が必要であるためコストがかかり、また、時間・労力もかかることに加え、複数枚の基板を非常に近接させて位置合わせしなければならないため、接触させて破損させる等取り扱い性に劣るという問題もある。
このため、軽量で、変形や位置合わせの調整が不要で簡易且つ簡便に製造でき、取り扱い性に優れ、光学性能に優れるX線光学系基材の開発が望まれている。
したがって、本発明の目的は、軽量で、変形や位置合わせの調整が不要で簡易、簡便に製造でき、取り扱い性に優れ、光学性能に優れるX線光学系基材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、基板に設けられるX線を集光するための貫通穴を特定の配列状態で設けることにより、軽量で、簡便に製造可能で、光学性能が高くなることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各発明を提供するものである。
1.平板状の基板からなり、
該基板の厚さ方向に対して所定角度をもって該基板を貫通するように且つ該基板の平面方向において同心円状となるように形成された貫通穴を、該基板の中心から放射線状に複数配設してなり、
該貫通穴は上記中心から外方に向かうに従って上記所定角度が大きくなるように形成されている
ことを特徴とするX線光学系基材。
このように本発明は、貫通穴の側面をX線の全反射面として用いて広い波長のX線を反射させる、もしくは該側面に多層膜を形成して該多層膜により特定の波長のX線を反射させる。そのため、側面の面粗さおよび多層膜の厚さに要求がある。本発明のX線光学系基材は、このような要求を解消しつつ、塑性変形などを要せず、フラットな基板でも効率よく特定の波長のX線を反射させることができるものである。
2.上記貫通穴における上記所定角度は、上記基板の一面から該基板の厚さ方向所定位置までにかけての第1の所定角度と、該所定位置から他面までにかけての該第1の所定角度とは異なる第2の所定角度とからなる
ことを特徴とする1記載のX線光学系基材。
3.上記貫通穴の表面に、重金属を含む薄膜が形成されている
ことを特徴とする1又は2に記載のX線光学系基材。
4.ビーム加工法により上記貫通穴を形成する1記載のX線光学系基材の製造方法。
5.ビーム加工法により上記貫通穴を形成する請求項2記載のX線光学系基材の製造方法であって、
基板の一面側に該基板の厚さ方向に対して所定角度をもってビームを照射して、該基板の厚さ方向ほぼ半分を穿孔し、所定角度をもって有底穴を形成する一面側穿孔工程、
及び
他面側に上記所定角度とは異なる角度で且つ該有底穴と連通するようにビームを照射して、該基板の厚さ方向に開口が連通された貫通穴を形成する他面側穿孔工程
を具備する製造方法。
本発明のX線光学系基材は、軽量で、変形や位置合わせの調整が不要で簡易且つ簡便に製造でき、取り扱い性に優れ、光学性能に優れるものである。
本発明の製造方法によれば、簡易、簡便且つ高精度に本発明のX線光学系基材を製造することができる。
図1は、本発明のX線光学系基材の第1の実施形態の上面の模式図である。 図2は、図1のA−A端面の模式図である。 図3は、図2の点線部分の拡大図である。 図4は、図2の貫通穴の説明するための模式図である。 図5は、本発明のX線光学系基材の第2の実施形態における、基板の厚さ方向の端面の模式図である。 図6は、図5の点線部分の拡大図である。
1:X線光学系基材、10:基板、20:貫通穴、21:壁面
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態の例を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
(全体構成)
第1の実施形態におけるX線光学系基材1は、図1及び2に示すように、平板状の基板10からなり、複数の貫通穴20を、基板10の中心から放射線状に複数配設してなるものである。
(基板)
本実施形態において用いられる基板10は、図1〜3に示すように、形状が円形で、平板状である。本実施形態のようにそりや湾曲のないフラットな板状体であるのが好ましい。基板10の大きさは、特に制限されないが、直径100 〜300 mm程度であるのが、宇宙での使用における移動重量の軽減、本発明のX線光学系基材を用いて製造する装置の小型化が可能となるので好ましい。本実施形態における基板10は、後述するように微細な貫通孔の周方向外側の側壁を反射面として用いることで、光学性能を保持しながら小型化されている。なお、本実施形態において基板10の重量は、有効面積(基板の表面積)1mあたりの重量で10g以下であるのが好ましい。
基板10の形状は、特に制限されず、例えば、矩形状、六角形状などの形状であってもよい。本実施形態のように円形状であると、基板10の単位面積当たりにおける光学部材として機能する面積を大きくすることができ、光学部材として好ましい。
また、基板10の厚さは、特に制限はないが、重量、強度、加工性の観点から、100 〜 1000μm程度であるのが好ましい。
本実施形態における基板10の形成材料は、シリコンウエハであるが、特に制限されず、例えば、ニッケル、アルミニウム、炭素、などを用いることもできる。本実施形態のように基板の形成材料がシリコンウエハなどのシリコン材料である場合は、軽量で高強度である点、加工がしやすい点、基板が比較的安価である点から、好ましい。また、基板の形成材料が、ニッケルなどの金属材料である場合は、シリコン材料の場合よりも高いエネルギーのX線の反射が可能になるという利点がある。
また、本実施形態において、基板10の表面は、平滑化処理、薄膜形成処理が施されており、平滑で反射率が高くなるようになされている。なお、これらの処理の詳細については、後述する。
(貫通穴)
本実施形態における貫通穴20は、図1〜3に示すように、基板10の厚さ方向に対して所定角度をもって基板10を貫通するように、且つ基板10の平面方向において同心円状となるように形成され、基板10の中心から放射線状に複数配設されている。具体的には、各貫通穴は、それぞれ線状の穴を円弧状に設けて形成されている。
そして、本実施形態において、上記所定角度は、上記中心から外方に向かうに従って大きくなるようになされている。ここで、「所定角度」とは、基板10の厚さ方向の軸と、貫通穴20に形成される2つの壁面のうち上記中心からの距離が遠い壁面との角度である。例えば、図3において矢印で示す貫通穴20における所定角度は上記軸と壁面21aとの間の角度θである。なお、壁面21aと壁面21bとはほぼ平行である。
本実施形態において、上記所定角度は、上記中心から外方に向かうに従って大きくなるようになされている。具体的には、図3に示すように、θ<θ<θ<θ<θ<θとなるようになされている。これにより、図2に示すように、各貫通穴20の入射光を、上記の壁面21aで反射させ、集光・結像させることができ、基板の変形や他の光学部材との組み合わせによる位置合わせの調整が不要になるため、光学性能に優れるだけではなく、構成が簡単で簡易且つ簡便な製造が可能になる。
また、上記所定角度をこのようにすることにより、基板10における光学部材として機能する面積を増加させることができ、重量あたりの光学性能がより優れるものになる。
本実施形態において、上記所定角度は上述のように上記中心から外方に向かうに従って大きくなるようになされていればよいが、図4に示すように、中心からの距離が遠い壁面21aの距離をrとした場合における所定角度をθとした場合、反射角はθ、反射光は2θで反射するため、下記式を満たすものであるのがさらに好ましい。
式:Ltan2θ=r
(式中、Lは、焦点距離を、rは基板中心から穴までの距離を意味する。)
なお、上記所定角度は、反射材質とエネルギーによって決定されるため、これらの条件により適宜修正されうるものである。一般的には、反射材質を一定にし、エネルギーを変化させた場合、反射できる角度範囲はエネルギーにほぼ反比例する。
本実施形態においては、貫通穴20と貫通穴20との間隔は、特に制限されないが、5 〜 20μm程度とするのが大面積化、軽量化、機械的強度の点で好ましい。なお、上記間隔とは、図4に示すように、一つの貫通穴20と、該貫通穴20の隣に存在する貫通穴20との間隔dを意味する。また、本発明においては、この間隔dは、光学性能の観点から、基板の中心から外方に向かうにしたがって広くなるようになされているのが好ましい。
本実施形態において、各貫通穴20の幅は、特に制限されないが、20μm以下とするのが結像をより正確に表示でき解像度に優れる点で好ましい。ここで、貫通穴20の幅wは、図4に示すように基板の中心からの経線方向における貫通穴の内部空間の間隔である。また、上記幅は、光学性能の観点から、基板の中心から外方に向かうにしたがって広くなるようになされているのが好ましい。
また、各貫通穴20における幅wは、基板の厚みtや反射角θとの関係で最適な値を設定することができ、その一例としてθ≒tan(w/t)とすることもできるが、入射の状況に応じてこの式をさらに変更する必要も生じるなど入射及び反射の角度範囲に応じて種主設定することが可能である。また、各貫通穴においては、厚さ方向及び平面方向のいずれについてもほぼ一定であるのが好ましい。
本実施形態においては、各貫通穴20の壁面21は、特開2010−085304号公報に開示されるような磁性流体と研磨材とを用いる研磨処理、磁性流体による研磨処理の際に水素アニール処理を併せて行う処理による平滑化処理がなされており、壁面21における二乗平均粗さ(RMS)が1nm以下であるのが好ましい。貫通穴20の壁面21の表面処理は、特になくてもよいが、本実施形態のように平滑化処理がなされていると、反射面である壁面21の表面の凹凸により生じる反射角度のばらつきが抑制され、X線の全反射効率をより高くすることができる点、反射光の焦点ボケをより抑制することができる点などの光学性能を向上させる観点から、好ましい。なお、本実施形態における面粗さは、走査電子顕微鏡による観察により求めた値である。
壁面21の表面の平滑化処理は、上述の処理に制限されず、例えば、研磨処理、アニール処理、コーティング処理、酸化膜付けとエッチングの繰り返し等の方法が挙げられるが、上述の特開2010−085304号公報に開示されるような磁性流体と研磨材とを用いる研磨処理、磁性流体による研磨処理の際に水素アニール処理を併せて行う処理であるのが好ましい。
また、壁面21の表面は、その他の処理を行ってもよい。その他の処理としては、例えば、重金属を含む反射膜を形成する処理、多層膜を形成させブラッグの法則に基づく多層光学系にする処理などの処理が挙げられる。中でも、重金属を含む反射膜を形成するのが好ましく、具体的には、特開2012−037440号公報に開示される原子層堆積法を用いて酸化ハフニウム及び酸化アルミニウムの反射膜を形成する処理であるのがより好ましい。これにより、平滑化、反射率及びエネルギー帯域が、より優れるものになる。
上記重金属の反射膜を形成する上記重金属としては、酸化物としては、酸化ハフニウム、酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化チタニウム、酸化ランタン、酸化亜鉛等が挙げられ、窒化物としては、窒化チタン、窒化タンタル、窒化ハフニウム等が挙げられ、金属では、ルビジウム、銅、タングステン、モリブデン等が挙げられる。
上記反射膜は、単層膜でもよいが、多層膜であるのが好ましい。また、上記反射膜が多層膜である場合は、上記重金属からなる多層膜と軽金属から成る多層膜であるのがより好ましい。これにより、平滑化、反射率及びエネルギー帯域が、より優れるものになる。
上記反射膜を多層膜とする場合は、上述の重金属の以外の物質による膜を形成してもよく、例えば、酸化アルミニウムのような軽金属、また、酸化ケイ素等を用い、重金属からなる層と軽金属からなる層とからなる多層膜等とすることができる。
上記反射膜における膜厚は、特に制限されず、入射及び反射の状況に応じて上述の幅wと同様に種々設定できるが、例えば多層膜とする場合には特開2012−037440号公報の0033に記載されるような成分からなる膜を積層してなる多層膜とし、膜厚も当該公報記載の範囲(たとえば重金属からなる層5〜10nm、軽金属からなる層1〜5nm)とすることができる。
上記反射膜の形成は、上述の原子層堆積法などの方法により形成することができ、中でも、原子層堆積法であるのが好ましい。原子層体積法を用いる場合は、膜厚均一性、膜厚制御性、段差被覆性に優れた膜を作製することが可能である。
また、上記反射膜の形成のタイミングは、特に制限されないが、平滑化処理の後に行うのが好ましい。
なお、上記壁面の「平滑化処理」、「その他の処理」については、上記基板においても同様に施すことができる。
(特性)
本実施形態のX線光学系基材1における角度分解能は、原理的に 20 μm の穴幅であれば、1 keV のX線に対して、15 秒角以下とすることが可能であり、優れた光学性能を有する。
また、本実施形態のX線光学系基材1における焦点距離は、原理的に0.01 〜10 m程度が可能であり、優れた光学性能を有する。
一般的に、重量当たりの光学性能は、角度分解能(秒角)と基板の有効面積(基板におけるX線光学系としての有効面積)1mあたりの重量(kg)の二つで評価され、表すことができる。
本実施形態のX線光学系基材1において、上記の光学性能は、原理的に15(秒角)以下とすることが可能であり、同程度の角度分解能を有する過去のX線天文衛星XMM―Newton搭載の望遠鏡などに比べて、基板の単位有効面積当たりの質量効率が2桁程度良い。
<製造方法(第1の実施形態)>
本発明のX線光学系基材の製造方法について、説明する。
本発明のX線光学系基材は、下記本発明の製造方法により、簡易、簡便且つ高精度に製造することができる。
以下、上述の第1の実施形態を例に説明した本発明のX線光学系基材の製造方法を説明する。
本発明の製造方法は、上記の第1の実施形態のX線光学系基材における上記貫通穴をビーム加工法により形成することにより実施できる。本発明の製造方法で用いられる上記ビーム加工法は、単なる平板状の基材にビームを用いて所望の形状の貫通穴を形成する方法であり、例えば、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)、電子ビームなどのビームを用いる加工法を用いることができる。中でも、集束イオンビームによるビーム加工法は、集束イオンビームを数100nmから数nmまで絞ることができ、ナノメートル領域での加工が可能な点、ライン加工が可能である点、側壁が平坦・平滑である点などの点で好ましい。
上記ビーム加工法において、照射するビームは、集束イオンビームを用いる場合、例えば、ガリウム(Ga)イオンのビームなどのビームを用いることができる。
上記ビーム加工法は、公知のビーム照射装置等により実施することができ、例えば、上記収束イオンビームによる加工法は、集束イオン/電子ビーム加工観察装置(型名:NB5000、日立製作所社製)などにより行うことができる。
また、上記ビーム加工法における照射するビームの条件は、目的、基板の材料、使用するビーム照射装置などの条件により変わりうるものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特に制限されるものではない。たとえば、上述の幅や基板の厚さ、基板の材質に応じてビームの強度や照射回数等を制御する必要があり、これらの制御は通常のビーム照射と素材ごとの穿孔程度との関係により適宜選択される。
上記ビーム加工法による貫通穴の形成の例を以下に説明する。
上記ビーム加工法による貫通穴の形成は、上記ビームを上記基板に対して上記所定角度をもって照射し、基板を穿孔し貫通させる。基板が貫通した後、ビームの照射角度を保持した状態で、基板を回転させ、ビーム照射を行い、基板を穿孔し貫通させる。これを繰り返すことにより、同一の同心円状の貫通穴の形成することができる。同一の同心円状の貫通穴を形成した後、他の同心円状の貫通穴を同様に形成して、すべての貫通穴を形成することで、本発明のX線光学系基材を得ることができる。また、特開2010−085304号公報の〔0021〕〜〔0023〕に記載の方法による表面処理、特開2012−037440号公報の〔0029〕〜〔0030〕に記載の方法による重金属を含む反射膜を形成する処理を行ってもよい。
なお、本発明の製造方法は、上述の例で説明したが、上記ビーム加工法により貫通穴の形成がなされていれば、特に制限されず、例えば、形成する貫通穴の順番などは、任意である。また、上述の例では、ビームの照射角度を上記所定の角度で照射しているが、貫通穴が基板に対して上記所定の角度で形成されていれば、ビームの照射角度は特に制限されない。また、上記ビームの照射角度の制御、上記基板の回転の制御などは、公知の方法で実施できる。
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態の例を説明する。なお、以下の説明においては上述の第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。特に説明しない点については上述の第1の実施形態における説明が適宜適用される。
第2の実施形態におけるX線光学系基材1’は、図5及び6に示すように、貫通穴20’における上記所定角度が、基板10’の一面から該基板10’の厚さ方向所定位置までにかけての第1の所定角度と、該所定位置から他面までにかけての該第1の所定角度とは異なる第2の所定角度とからなるものである。
これにより、図5に示すように、入射X線を反射面としての上記壁面21a’で2回反射させ、集光、結像させることができる。このように、入射X線を2回反射させることで、焦点距離を1回反射の場合より短くすることができ、より高い精度で入射Xを焦点に就航させることができる。また、焦点距離を短くすることができることで、本実施形態のX線光学系基材を用いる装置の小型化も可能になり、重量の軽減となる。また、本実施形態におけるX線光学基材1’も、基板の変形や他の光学部材との組み合わせによる位置合わせの調整が不要になるため、光学性能に優れるだけではなく、構成が簡単で簡易且つ簡便な製造が可能になる。
(所定角度、所定位置)
上記第1の所定角度とは、基板10’の厚さ方向の軸と、上記所定位置から基板10’の厚さ方向の壁面21a’のとの角度であり、例えば、図6においてはθ’である。
上記所定位置とは、基板設計の着目点に応じて任意であるが、本実施形態においては、基板の厚さ方向のほぼ中央部である。
また、上記第2の所定角度とは、基板10’の厚さ方向の軸と、上記所定位置から基板10’の厚さ方向の他面までの壁面21a’のとの角度であり、例えば、図6においてはθ’’である。
本実施形態において、上記第1の所定角度と、上記第2の所定角度は、異なるものであり、図6に示すように、第1の所定角度が第2の所定角度より小さく、θ’<θ’’、θ’<θ’’、θ’<θ’’、θ’<θ’’、θ’<θ’’、θ’<θ’’になるようになされている。
上記第1の所定角度と、上記第2の所定角度とは、上述のように異なっていればよいが、本実施形態のように下記式を満たすものであるのがさらに好ましい。これは、上記第1の所定角度と、上記第2の所定角度とが、上記式の関係にある場合、入射した光は第1の所定角度θ’で反射し、該反射光が2θ’で入射し、その反射角が、上記第2の所定角度が3θ’の場合、第1の所定角度と同じθ’となるためである。
式:θ’=1/3θ’’
(式中、θ’は上記第1の所定角度を意味し、θ’’は上記第2の所定角度を意味する。)
また、上記第1の所定角度及び第2の所定角度は、何れも、中心から外方に向かうに従って上記所定角度が大きくなるようになされており、図6に示すように、第1の所定角度はθ’<θ’<θ’<θ’<θ’<θ’、また第2の所定角度はθ’’<θ’’<θ’’<θ’’<θ’’<θ’’になるようになされている。
(特性)
本実施形態のX線光学系基材1’における角度分解能は、原理的に 20 μm の穴幅であれば、1 keV のX線に対して、15秒角以下とすることが可能であり、優れた光学性能を有する。
また、本実施形態のX線光学系基材1’における焦点距離は、原理的に0.01〜10m程度が可能であり、優れた光学性能を有する。
本実施形態のX線光学系基材1において、上記の光学性能は、原理的に15(秒角)以下とすることが可能であり、同程度の角度分解能を有する過去のX線天文衛星XMM―Newton搭載の望遠鏡などに比べて、基板の有効面積あたりの重量は2桁程度高い。
次に、上述の第2の実施形態を例に説明した本発明のX線光学系基材の製造方法を説明する。以下の説明においては上述の第1の実施形態と異なる部分を主として説明する。特に説明しない点については上述の第1の実施形態の製造方法においてした説明が適宜適用される。
(製造方法(第2の実施形態))
本発明の製造方法は、上記ビーム加工法により上記貫通穴を形成する製造方法であって、
上記基板の一面側に該基板の厚さ方向に対して所定角度をもってビームを照射して、該基板の厚さ方向ほぼ半分を穿孔し、所定角度をもって有底穴を形成する一面側穿孔工程、
及び
他面側に上記所定角度とは異なる角度で且つ該有底穴と連通するようにビームを照射して、該基板の厚さ方向に開口が連通された貫通穴を形成する他面側穿孔工程、
を行うことにより実施できる。
これにより、本発明のX線光学系基材を、簡易且つ簡便に、また、高精度に製造することができる。
本製造方法において、用いることができるビームは、上述のビーム加工法と同様のビームを用いることができる。
以下、本実施形態の製造方法を詳述するが、特に詳述しない点については上述の第1の実施形態の製造方法と同様であり、上述の説明が適宜適用される。
(一面側穿孔工程)
上記一面側穿孔工程は、上記基板の一面側に該基板の厚さ方向に対して所定角度をもってビームを照射して、該基板の厚さ方向ほぼ半分を穿孔し、所定角度をもって有底穴を形成する工程である。
なお、上記所定角度は、上述の第1の所定角度、または第2の所定角度であり、本工程により有底穴の形成を行う基板の面により上述の第1の所定角度、または第2の所定角度を選択することができる。
上記有底穴の形成は、上記ビームを上記基板に対して上記所定角度で照射して行い、基板を穿孔し、穿孔は、該基板の厚さ方向ほぼ半分まで行う。上記基板を穿孔は、穿孔の深さを除いては、上記ビーム加工法による貫通穴の形成と同様にして行う。なお、上記穿孔の深さについては、ビームの照射量や時間などを変えることにより制御することができる。すなわち、ビームの取捨条件については上述の第1の実施形態と同様にして行えばよいが、この際、完全に貫通せず、ほぼ基板の厚さ方向中央部分で穿孔が停止するビーム強度を選択する必要がある。
なお、上記「厚さ方向ほぼ半分」とは、第2の実施形態部分で説明した上述の所定位置を意味する。
上記一面側穿孔工程を行うことにより、全貫通孔における基板の一面側から上記所定位置までの有底孔が形成される。
(他面側穿孔工程)
上記他面側穿孔工程は、上記一面側穿孔工程の後に行う工程であり、他面側に上記所定角度とは異なる角度で且つ該有底穴と連通するようにビームを照射して、該基板の厚さ方向に開口が連通された貫通穴を形成する工程である。
本工程において用いることができるビームも、上記一面側穿孔工程と同様であり、強度も穿孔深さに応じて適宜選択される。なお、穿孔しすぎないように上記一面穿孔工程により穿孔された穴の底部に近づいた状態ではビーム強度を弱める、またはビームの照射時間を短くする等して穿孔の程度を調整するのが好ましい。
また、ビーム照射における位置合わせは、上記一面穿孔工程で穿孔された穴の底部と本工程で穿孔する穴の角度とからビーム照射位置を計算により算出し、算出された当該照射位置に上述の選択された強度で且つ角度でビームを照射するように照準を合わせることで行うことができる。
上記「上記所定角度とは異なる角度」とは、上述の第1の所定角度、または第2の所定角度であり、上記一面側穿孔工程で選択した角度とは異なる角度であることを意味し、例えば、上記一面側穿孔工程で、上述の第1の所定角度を選択した場合、上記所定角度とは異なる角度は、第2の所定角度である。
本工程における上記基板の穿孔も、上記ビーム加工法による貫通穴の形成と同様にして行い、厚さ方向に開口が連通するように行う。
上記一面側穿孔工程を行うことにより、全貫通孔が形成され、本発明のX線光学系基材を製造することができる。
なお、本発明の製造方法は、上述の例で説明したが、上記一面側穿孔工程加工法と上記他面側穿孔工程と、を具備する製造方法により貫通穴の形成がなされていれば、特に制限されず、形成する貫通穴の順番などは任意であり、例えば、貫通穴をひとつずつ上記一面側穿孔工程加工法と上記他面側穿孔工程とにより形成するなどしてもよい。
(用途・使用方法)
本発明のX線光学系基材は、上述の性質・特性を有し、すなわち、軽量で、簡易且つ簡便に製造でき、一体成型のため組立誤差がなく、光学性能が高いという特性を有し、宇宙等で用いるX線望遠鏡などX線光学系基材として好適に利用することができる。
また、本発明のX線光学系基材は、X線以外にも、中性子などの光学系基材としても用いることができる。
本発明のX線光学系基材は、また、微量分析装置、レントゲン写真を必要とする地上装置(手荷物検査、歯の治療、医療全般)の光学系基材などに応用することができる。
本発明は上述した実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、上記貫通穴の形状は、特に制限されず、例えば、ドット状、直線状等種々形状にすることができる。
本発明のX線光学系基材において用いられる薄い基板に微細穴を開けて製作する軽量X線光学系は、微量分析や医療用装置などへの地上応用のみならず、次世代宇宙X線光学系として今まさに注目され、日米欧を中心として開発が進められている(例えば、Bavdazら著、X-ray Optics and Instrumentation、2010、295095)。
本発明のX線光学系基材は、軽量X線光学系の中でも、原理的に最も軽いX線光学系の製作工程がよりシンプルであり、かつ組み合わせ工程におけるコスト・労力・時間を圧倒的に簡略化するもので、光学的性能も高く、国内外問わずその利用価値は高いと考えられる。

Claims (3)

  1. 平板状の基板からなり、
    該基板の厚さ方向に対して所定角度をもって該基板を貫通するように且つ該基板の平面方向において同心円状となるように形成された貫通穴を、該基板の中心から放射線状に複数配設してなり、
    該貫通穴は上記中心から外方に向かうに従って上記所定角度が大きくなるように形成されており、
    上記貫通穴における上記所定角度は、上記基板の一面から該基板の厚さ方向所定位置までにかけての第1の所定角度と、該所定位置から他面までにかけての該第1の所定角度とは異なる第2の所定角度とからなる
    ことを特徴とするX線光学系基材。
  2. 上記貫通穴の表面に、重金属を含む薄膜が形成されている
    ことを特徴とする請求項に記載のX線光学系基材。
  3. ビーム加工法により上記貫通穴を形成する請求項記載のX線光学系基材の製造方法であって、
    基板の一面側に該基板の厚さ方向に対して所定角度をもってビームを照射して、該基板の厚さ方向ほぼ半分を穿孔し、所定角度をもって有底穴を形成する一面側穿孔工程、
    及び他面側に上記所定角度とは異なる角度で且つ該有底穴と連通するようにビームを照射して、該基板の厚さ方向に開口が連通された貫通穴を形成する他面側穿孔工程
    を具備する製造方法。
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