JP6420508B2 - 化学的な安定性が改善された、メマンチン塩酸塩を含有する製剤 - Google Patents
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しかし、メマンチン塩酸塩を含有する製剤についてメマンチン塩酸塩の化学的な安定性(特に過酷な保存条件下におけるもの)を改善する技術は、先行文献において十分な情報が開示されていない。原薬の化学的な安定性の改善は、高品質な錠剤を医療現場に提供する上で重要な課題である。
そこで本発明者は、製剤中のメマンチン塩酸塩の化学的な安定性を顕著に改善することが可能な新たな技術的手段の開発を目指した。
(1)メマンチン塩酸塩を含み、核粒子の周囲が第一のコーティング層で被覆されている、顆粒。
(2)メマンチン塩酸塩が第一のコーティング層に含まれる、前記(1)に記載の顆粒。
(3)核粒子100.0重量部に対して第一のコーティング層が20.0重量部以上含まれる、前記(1)又は(2)に記載の顆粒。
(4)核粒子が部分アルファー化デンプン又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである、前記(1)〜(3)のいずれかに記載の顆粒。
(5)第一のコーティング層で被覆されたメマンチン塩酸塩を含む顆粒の周囲が、第二のコーティング層で更に被覆されている、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の顆粒。
(6)第一のコーティング層で被覆されたメマンチン塩酸塩を含む顆粒100.0重量部に対して第二のコーティング層が20.0重量部以上含まれる、前記(5)に記載の顆粒。
(7)第二のコーティング層が腸溶性コーティング剤を含み、腸溶性コーティング剤がセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース及びメタクリル酸コポリマーから選ばれる、前記(5)又は(6)に記載の顆粒。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の顆粒を含有する素錠。
(9)普通錠である、前記(8)に記載の素錠。
(10)結晶セルロース、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト、マルチトール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、部分アルファー化デンプン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる賦形剤を錠剤全重量に対して60.0〜95.0重量%含有する、前記(8)又は(9)に記載の素錠。
(11)還元糖を含まない、前記(8)〜(10)のいずれかに記載の素錠。
(12)前記(8)〜(11)のいずれかに記載の素錠の周囲にフィルムコーティング層が施された錠剤。
(13)メマンチン塩酸塩及び結合剤を溶解又は懸濁させたコーティング液を、流動化された核粒子に噴霧して湿式造粒(例:微粒子コーティング法)する工程を介する、固形製剤の製造方法。
(14)腸溶性高分子を溶解したコーティング液を、流動化されたメマンチン塩酸塩を含有する顆粒に噴霧して湿式造粒(例:微粒子コーティング法)する工程を介する、前記(13)に記載の固形製剤の製造方法。
口腔内崩壊錠は口腔内で迅速に崩壊する錠剤として普通錠と区別して提供されるもので、口腔内崩壊時間が60秒未満のものであり、40秒未満であるものが特に好ましい。本発明の錠剤の形状は特に限定されず、円形錠{円形平錠(隅角錠等含む。)、円形R錠(隅角錠、2段R錠等含む。)等}や異形錠等のいずれの形状でもよいが、円形錠であることが特に好ましい。尚、本発明の錠剤を打錠により圧縮成形する際の打圧は、300〜1500kgfの範囲内にあることが好ましい。
本発明に係る1次被覆顆粒においては、原薬は核粒子100.0重量部に対して10.0重量部以上、好ましくは20.0重量部以上、より好ましくは50.0〜200.0重量部、更により好ましくは75.0〜125.0重量部の範囲で含まれる。核粒子は賦形剤であることが好ましく、より好ましくは部分アルファー化デンプン又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースであり、更により好ましくは低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである。核粒子のメディアン径(d50)は100.0μm以下、好ましくは30.0〜80.0μmであり、累積10%粒子径(d10)が10.0μm以上、好ましくは16.0μm以上であり、累積90%粒子径(d90)が150.0μm以下、好ましくは120.0μm以下である。本発明に係る1次被覆顆粒は、素錠全重量に対して5.0〜60.0重量%、好ましくは10.0〜30.0重量%の範囲で素錠中に含有される。また第一のコーティング層においては、結合剤を含むことが好ましく、結合剤は原薬100.0重量部に対して2.0重量部以上、好ましくは8.0重量部以上の範囲で含有される。本発明に係る1次被覆顆粒は表面の凹凸が少ない方が本発明においてより好ましいものとなる。
第二のコーティング層は腸溶性高分子であるコーティング剤(望ましくは可塑剤と併せて)を含むことが好ましく、腸溶性高分子は、本発明に係る1次被覆顆粒100.0重量部に対して、好ましくは10.0重量部以上、より好ましくは20.0〜150.0重量部の範囲で本発明に係る2次被覆顆粒中に含有される。第二のコーティング層は、本発明に係る1次被覆顆粒100.0重量部に対して、好ましくは15.0重量部以上、より好ましくは30.0〜200.0重量部の範囲で本発明に係る2次被覆顆粒中に含まれる。
本発明に係る腸溶性高分子は、pH値6.0以上を示す水溶液溶媒に対して良好な溶解性を示すことを特徴とする、平均分子量が10000以上の高分子であることが望ましい。具体的に使用可能な腸溶性高分子としては、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒプロメロースフタル酸エステル、ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル、カルボキシメチルエチルセルロース及びメタクリル酸コポリマー(メタクリル酸コポリマーL、LD、S)等を挙げることができ、好ましくはメタクリル酸コポリマーである。
上記で得られた顆粒(1次被覆顆粒)6.3g、乳糖水和物(フロイント産業社製:ダイラクトーズF)35.4gをポリエチレン製の袋にて混合した後、更にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製)0.3gを加えて混合して混合物を得た。この混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所社製:Vera5)を用いて打圧500kgfで圧縮成型し、1錠質量が140.0mg、直径7.5mm、厚さ3.3mmの素錠(円形R錠)を得た。
*SmartExTMは、マンニトール、ポリビニルアルコール及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから成る添加剤である。
上記で得られた顆粒(2次被覆顆粒A)8.82g、SmartExTM(信越化学工業社製:SMARTEXQD50)32.88gをポリエチレン製の袋にて混合した後、更にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製)0.3gを加えて混合して混合物を得た。この混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所社製:Vera5)を用いて打圧700kgfで圧縮成型し、1錠質量が140.0mg、直径7.5mm、厚さ3.2mmの素錠(円形R錠)を得た。
上記で得られた顆粒(2次被覆顆粒B)11.37g、SmartExTM(信越化学工業社製:SMARTEXQD50)30.33gをポリエチレン製の袋にて混合した後、更にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製)0.3gを加えて混合して混合物を得た。この混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所社製:Vera5)を用いて打圧700kgfで圧縮成型し、1錠質量が140.0mg、直径7.5mm、厚さ3.2mmの素錠(円形R錠)を得た。
上記で得られた顆粒(2次被覆顆粒C)13.83g、SmartExTM(信越化学工業社製:SMARTEXQD50)27.87gをポリエチレン製の袋にて混合した後、更にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製)0.3gを加えて混合して混合物を得た。この混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所社製:Vera5)を用いて打圧700kgfで圧縮成型し、1錠質量が140.0mg、直径7.5mm、厚さ3.2mmの素錠(円形R錠)を得た。
上記で得られた顆粒(2次被覆顆粒D)16.38g、SmartExTM(信越化学工業社製:SMARTEXQD50)25.32gをポリエチレン製の袋にて混合した後、更にステアリン酸マグネシウム(太平化学産業社製)0.3gを加えて混合して混合物を得た。この混合物をロータリー式打錠機(菊水製作所社製:Vera5)を用いて打圧700kgfで圧縮成型し、1錠質量が140.0mg、直径7.5mm、厚さ3.2mmの素錠(円形R錠)を得た。
*PEARLITOL(登録商標)Flashは、マンニトールとトウモロコシデンプンから成る添加剤である。
実施例1〜9にて得られる錠剤、及び比較対象として適当な市販錠剤(フィルムコーティング錠)について、保存開始時及び、温度60℃の密封条件下又は温度60℃相対湿度75%の開放条件下で3週間保存後に、総類縁体並びに下記式の原薬由来の類縁体Eの生成量を測定した。其の測定はガスクロマトグラフィー法(定量方法は面積百分率法を使用した。)によって行った。上記の測定結果は、総類縁体については下記の表2に、類縁体Eについては下記の表3に示す。
実施例の錠剤の製造に使用されるメマンチン塩酸塩(A)及び製造直後の実施例1に記載の顆粒(1次被覆顆粒)中に含まれるメマンチン塩酸塩(B)の結晶形態について、粉末X線回折測定法によって解析した。其の解析結果は図1に示す。
また表2、3の結果より、賦形剤としてラクトースを含む実施例1にて得られる錠剤に比べて、賦形剤としてラクトースを含まない実施例2〜4にて得られる錠剤の方が総類縁体並びに類縁体Eの生成量が低いこと(特に開放条件下で保存後の場合において)も示された。よって、本発明に使用される賦形剤は乳糖等の還元糖でないもの(D−マンニトール、イソマルト、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等)である方が上記の効果上望ましいことが示唆される。
さらに表2、3の結果より、2次被覆顆粒を含有しない実施例1〜4にて得られる錠剤に比べて、2次被覆顆粒を含有する実施例5〜9にて得られる錠剤の方が開放条件下で保存後の場合において総類縁体並びに類縁体Eの生成量が低いことも示された。よって、本発明の錠剤は、本発明に係る2次被覆顆粒を含有するものである方が上記の効果上望ましいことが示唆される。
Claims (10)
- 核粒子の周囲がメマンチン塩酸塩を含む第一のコーティング層で被覆された、顆粒、を含有する素錠であって、還元糖を含まない、素錠。
- 核粒子100.0重量部に対して第一のコーティング層が20.0重量部以上含まれる、請求項1に記載の素錠。
- 核粒子が部分アルファー化デンプン又は低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1又は2に記載の素錠。
- 第一のコーティング層で被覆されたメマンチン塩酸塩を含む顆粒の周囲が、第二のコーティング層で更に被覆され、第一のコーティング層で被覆されたメマンチン塩酸塩を含む顆粒100.0重量部に対して第二のコーティング層が20.0重量部以上含まれる、請求項1〜3のいずれかに記載の素錠。
- 第二のコーティング層が腸溶性コーティング剤を含み、腸溶性コーティング剤がセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース及びメタクリル酸コポリマーから選ばれる、請求項4に記載の素錠。
- 結晶セルロース、D-マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト、マルチトール、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コメデンプン、コムギデンプン、部分アルファー化デンプン及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースから選ばれる賦形剤を錠剤全重量に対して60.0〜95.0重量%含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の素錠。
- 賦形剤がD−マンニトールである、請求項6に記載の素錠。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の素錠の周囲にフィルムコーティング層が施された錠剤。
- メマンチン塩酸塩及び結合剤を溶解又は懸濁させたコーティング液を、流動化された核粒子に噴霧して湿式造粒する工程を介する、固形製剤の製造方法であって、固形製剤は還元糖を含まない、方法。
- 腸溶性高分子を溶解したコーティング液を、流動化されたメマンチン塩酸塩を含有する顆粒に噴霧して湿式造粒する工程を介する、請求項9に記載の固形製剤の製造方法。
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