JP6420102B2 - ロキソプロフェン含有外用固形剤及び該外用固形剤の保存安定化剤 - Google Patents
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Description
上記塗布剤には、外用固形剤(チック剤)、外用液剤(リニメント剤、ローション剤)、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤等があり、これらの中でも、外用固形剤は、適当な容器に収納すれば手や指等を汚さずに薬物を皮膚に塗布することができるため使用に際し不快感を与えにくい形態とされている。
しかしながら、種々の薬物を用いて外用固形剤に製剤化する際、製剤の硬さや保形性に問題が生じることが多く、これまで種々の検討がなされているものの(特許文献1〜6)、いずれも製剤の硬さや保形性が十分満足できるものではなかった。
また、本発明が解決しようとする課題は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する外用固形剤を安定化するための保存安定化剤を提供することにある。
(A)ロキソプロフェン又はその塩
(B)飽和高級脂肪酸塩
(C)テルペン類
また、本発明は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する外用固形剤を安定化するための保存安定化剤であって、テルペン類を含有する保存安定化剤を提供するものである。
さらに、本発明は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する外用固形剤中のロキソプロフェン又はその塩の含量低下を抑制する含量低下抑制剤であって、テルペン類を含有する含量低下抑制剤を提供するものである。
本発明の保存安定化剤は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する外用固形剤中のロキソプロフェン又はその塩の含量低下を抑制する作用、及び該外用固形剤の澄明性の低下を抑える作用を有する。
<成分(A)>
本発明の外用固形剤に含まれるロキソプロフェン又はその塩には、ロキソプロフェンそのもののほか、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらにはこれらと水やアルコール等との溶媒和物も含まれる。本発明においては、ロキソプロフェンナトリウム水和物(化学名:Monosodium 2-[4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl]propanoate dihydrate)が好ましい。
ロキソプロフェン又はその塩は公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。
本発明の外用固形剤に含まれる飽和高級脂肪酸塩は、石けんゲル基剤として機能する。
飽和高級脂肪酸塩としては、炭素数12〜22のものが好ましい。例えば、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、ペンタデカン酸塩、パルミチン酸塩、マルガリン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩、アラキジン酸塩、ベヘン酸塩等が挙げられ、これらを単独で用いてもよく2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、炭素数14〜22のものが好ましく、好適な具体例としては、パルミチン酸塩、ミリスチン酸塩、ステアリン酸塩、イソステアリン酸塩が挙げられ、より好ましくはステアリン酸塩、イソステアリン酸塩である。
また、斯様な塩としては、アルミニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩等の無機塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
また、飽和高級脂肪酸塩の好適な具体例としては、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、イソステアリン酸ナトリウム等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸ナトリウムである。
また、(A)ロキソプロフェン又はその塩(ロキソプロフェンナトリウム無水和物換算)と(B)飽和高級脂肪酸塩との含有量の質量比率〔(B)/(A)〕としては、適度な硬さを付与する観点から、1〜25が好ましく、3〜15がより好ましく、5〜10がさらに好ましい。
本発明の外用固形剤に含まれるテルペン類は特に限定されるものでなく、モノテルペン、セスキテルペン等が挙げられる。
斯様なテルペン類としては、例えば、イソボルネオール、イロン、オシメン、カルベオール、カルボタナセトン、カルボメントン、カルボン、カレン、カロン、カンフェン、カンフル、ゲラニオール、サビネン、サフラナール、シクロシトラール、シトラール、シトロネラール、シトロネル酸、シトロネロール、シネオール、シメン、シルベストレン、イソツジョール、ツジョン、テルピネオール、テルピネン、テルピノレン、トリシクレン、ネロール、ピネン、ピノカンフェオール、ピノール、ピペリテノン、フェランドラール、フェランドレン、フェンチェン、フェンチルアルコール、ペリリルアルコール、ペリリルアルデヒド、ボルネオール、ミルセン、メントール、メントン、ヨノール、ヨノン、リナロール、リモネン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、保形性や澄明性の観点、ロキソプロフェン又はその塩の含量低下を抑制する観点から、カンフル、ゲラニオール、シトロネラール、テルピネオール、ボルネオール、メントール、リモネン等が好ましく、カンフル、メントールがより好ましく、dl−カンフル、l−メントール、dl−メントールが特に好ましい。
斯様な精油としては、例えば、アニス油、イランイラン油、イリス油、ウイキョウ油、オレンジ油、カナンガ油、カミツレ油、カヤプト油、カラウェー油、クベブ油、グレープフルーツ油、ケイヒ油、コリアンダー油、サフラン油、サンショウ油、シソ油、シトリオドラ油、シトロネラ油、ショウキョウ油、ショウズク油、樟脳油、ジンジャーグラス油、スペアミント油、セイヨウハッカ油、ゼラニウム油、ダイウイキョウ油、チョウジ油、テレビン油、トウヒ油、ネロリ油、バジル油、ハッカ油、パルマローザ油、ピメント油、プチグレン油、ベイ油、ペニローヤル油、ヘノポジ油、ベルガモット油、ボアドローズ油、ホウショウ油、マジョラン油、マンダリン油、メリッサ油、ユーカリ油、ライム油、ラベンダー油、リナロエ油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、イランイラン油、ウイキョウ油、オレンジ油、カミツレ油、ケイヒ油、シソ油、シトロネラ油、ショウキョウ油、樟脳油、セイヨウハッカ油、ゼラニウム油、チョウジ油、テレビン油、トウヒ油、ネロリ油、ハッカ油、パルマローザ油、ベルガモット油、ユーカリ油、ラベンダー油、リナロエ油、レモン油、ローズ油、ローズマリー油、ローマカミツレ油等が好ましく、樟脳油、セイヨウハッカ油、ハッカ油がより好ましく、ハッカ油が特に好ましい。
また、(A)ロキソプロフェン又はその塩(ロキソプロフェンナトリウム無水和物換算)と(C)テルペン類との含有量の質量比率〔(C)/(A)〕としては、保形性の観点から、0.01〜15が好ましく、0.1〜10がより好ましく、0.5〜7が更に好ましい。
上記他のアルコールとしては、外用固形剤の基剤として機能するものであればよいが、1価アルコール、多価アルコールが挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、他のアルコールからは、アルコール性水酸基を有するテルペン類は除かれる。
1価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ゲラニオール変性アルコール、メタノール変性アルコール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、八アセチルしょ糖変性アルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルアルコール変性アルコール等が挙げられる。これらの中でも、エタノール、ゲラニオール変性アルコール、メタノール変性アルコール、イソプロパノール、八アセチルしょ糖変性アルコール、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルアルコール変性アルコール等が好ましい。
なお、他のアルコールとしてグリセリン及び/又は濃グリセリンを用いる場合、外観変化抑制の観点で、さらに1,3−ブチレングリコールを組み合わせて用いるのが好ましい。
一価アルコールを含有せしめる場合、その含有量としては、外用固形剤100質量部中、5〜70質量部が好ましく、7〜60質量部がより好ましく、10〜50質量部がさらに好ましい。また、多価アルコールを含有せしめる場合、その含有量としては、外用固形剤100質量部中、5〜80質量部が好ましく、10〜70質量部がより好ましく、20〜60質量部がさらに好ましく、20〜40質量部が特に好ましい。
上記その他製剤添加物としては、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、クロタミトン、スクワラン、スクワレン、セバシン酸ジエチル、ヒマシ油、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル等の油分;ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エスエル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴール、ポリオキシエチレンセチルエーテル等の界面活性剤;オレイルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール;塩酸、酢酸ナトリウム水和物、酒石酸、酒石酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、乳酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム等のpH調節剤;抗酸化剤等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の外用固形剤に抗酸化剤を含有せしめる場合、その含有量は、抗酸化剤の種類等に応じて適宜検討すればよいが、外用固形剤100質量部中、0.01〜50質量部が好ましく、0.02〜10質量部がより好ましく、0.03〜2質量部がさらに好ましい。
鎮痛成分としては、例えば、サリチル酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル等が挙げられる。
抗炎症成分としては、例えば、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム等が挙げられる。
殺菌・消毒成分としては、例えば、チモール等が挙げられる。収れん・保護成分としては、例えば、酸化亜鉛等が挙げられる。
血行促進成分としては、例えば、ニコチン酸ベンジル、ヘパリン類似物質、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
生薬類としては、例えば、アルニカ、鬱金、黄柏、黄連、乾姜、桂皮、紅花、山梔子、セイヨウトチノミ、蕃椒、木天蓼、楊梅皮等及びこれらの抽出物(エキスやチンキ等)が挙げられる。
また、ロキソプロフェン又はその塩は、フェニルプロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤としての消炎鎮痛効果を発揮し、テルペン類は局所刺激作用による鎮痛鎮痒効果を発揮するので、本発明の外用固形剤は医療用医薬品やOTC医薬品として用いることができ、経皮吸収型の鎮痛・抗炎症剤として極めて有用である。対象となる症状、疾患としては、変形性関節症、肩関節周囲炎、腱・腱鞘炎、腱周囲炎、上腕骨上顆炎、筋肉痛、外傷後の腫脹・疼痛、肩こり、肩こりに伴う肩の痛み、腰痛、関節痛、腱鞘炎、肘の痛み、打撲、捻挫、骨折痛、筋肉疲労等が挙げられる。
そして、本発明の保存安定化剤は、ロキソプロフェン又はその塩を含有する外用固形剤中のロキソプロフェン又はその塩の含量低下を抑制する作用、及び該外用固形剤の澄明性の低下を抑える作用を有し、保存安定化効果に優れる。
更に、ロキソプロフェン又はその塩を含有する外用固形剤の保形性を高める作用も有する。したがって、上記外用固形剤の形状保持剤として使用することもできる。
ブリトン−ロビンソン広域緩衝液(pH7)と無水エタノールを1:1で混合して混液を調製し、表1に示す濃度になるように、ロキソプロフェンナトリウム水和物、l−メントール及びステアリン酸ナトリウムを上記混液に溶解させ、pHを8に調整して外用固形剤用液を得た。
得られた外用固形剤用液10mLを透明な10Kガラス瓶に充填し室温で固化させ、ガラス瓶に充填した外用固形剤を得た。
これを室温で保存して、1ヶ月後の外用固形剤の外観(やせの有無)を肉眼で確認した。「やせ」は外用固形剤とガラス瓶の内壁における間隙の発生の有無により評価した。結果を表1に示した。
一方、斯かる処方においてl−メントールをさらに含有する外用固形剤(実施例1)は、1ヶ月間保存しても、間隙の発生がみられず、やせは認められなかった。
また、この結果より、l−メントールは揮発性の成分であるものの、外用固形剤の保形性を高めるものであり、テルペン類はロキソプロフェン又はその塩を含有する外用固形剤の形状保持剤としての作用を有することがわかる。
表2に示す各成分を混合して溶解し、外用固形剤用液を得た。得られた外用固形剤用液100gを透明なガラス瓶に充填し室温で固化させ、ガラス瓶に充填された外用固形剤を得た。
得られた外用固形剤を60℃で保存し、1ヶ月後、外用固形剤中のロキソプロフェンナトリウム水和物の含有量をHPLC法により測定した。保存開始時の含有量を100%とした1ヶ月後のロキソプロフェンナトリウム水和物の含有率を表2に示した。
この結果から、l−メントールは揮発性の成分であるものの、外用固形剤中のロキソプロフェンナトリウム水和物の保存安定性を高めることがわかる。
表3に示す各成分を混合して溶解し、外用固形剤用液を得た。得られた外用固形剤用液100gを透明なガラス瓶に充填し室温で固化させ、ガラス瓶に充填された澄明な外用固形剤を得た。
得られた外用固形剤を50℃と60℃で保存して、保存後の外観(澄明性)の変化について肉眼で観察し、以下の基準に従い評価した。結果を表3に示した。
○:変化なし
×:固形剤が澄明層と白濁層に分離し、白濁層が全体の半分以上を占める
ブリトン−ロビンソン広域緩衝液(pH7)と無水エタノールを1:1で混合して得た混液を調製し、表4に示す濃度になるように、ロキソプロフェンナトリウム水和物、l−メントール、ステアリン酸ナトリウム及び水を上記混液に溶解させ、pHを8に調整して外用固形剤用液を得た。
得られた外用固形剤用液10mLを透明な10Kガラス瓶に充填し室温で固化させた後、外用固形剤を切り出し(8mm×8mm×8mm)レオメーター(FUDOH製)を用いて硬度(g/cm2)を測定した。結果を表4に示した。
試験例4と同様にして、表5に示す濃度になるように、ロキソプロフェンナトリウム水和物、濃グリセリン、ステアリン酸ナトリウム及び水を混液に溶解させ、pHを8に調整して外用固形剤用液を得た。
得られた外用固形剤用液10mLを透明なガラス瓶に充填し室温で固化させた後、そのまま室温で3日間保存し、外用固形剤の保存前後の減少率を測定した。減少率は、保存前後の外用固形剤の体積を測定することにより求めた。結果を表5に示した。
表6に示す濃度になるように、各成分を所望により加熱して溶解し、容器に充填後室温に冷却して、処方1〜8の外用固形剤を製造した。
Claims (6)
- 以下の成分(A)、(B)及び(C)を含有する外用固形剤。
(A)ロキソプロフェン又はその塩
(B)飽和高級脂肪酸塩
(C)メントール - 成分(A)が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である請求項1に記載の外用固形剤。
- 成分(B)が、炭素数12〜22の飽和高級脂肪酸塩である請求項1又は2に記載の外用固形剤。
- 成分(A)の含有量が、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、外用固形剤100質量部中、0.01〜15質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の外用固形剤。
- ロキソプロフェン又はその塩を含有する外用固形剤を安定化するための保存安定化剤であって、メントールを含有する保存安定化剤。
- ロキソプロフェン又はその塩を含有する外用固形剤中のロキソプロフェン又はその塩の含量低下を抑制する含量低下抑制剤であって、メントールを含有する含量低下抑制剤。
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