以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係るハンドルスイッチシステムをスクータタイプの自動二輪車に適用した例について説明するが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく適宜変更可能である。例えば、本発明に係るハンドルスイッチシステムは、ハンドル把持部を有する他のタイプの自動二輪車(鞍乗型車両)や、自動四輪車などの車両に適用することができる。
図1、図2及び図3を参照してハンドルスイッチシステムを搭載する本実施の形態に係る自動二輪車全体の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るハンドルスイッチシステムが適用される自動二輪車の斜視図である。図2は、上記自動二輪車の左ハンドル部周辺の拡大図である。図3は、上記自動二輪車が有するハンドルスイッチを操作する際の運転者の操作方法の一例を示す図である。なお、以下の図においては、説明の便宜上、車体前方を矢印FR、車体後方を矢印RE、車両右側を矢印R、車両左側を矢印Lでそれぞれ示す。
図1に示すように、スクータタイプの自動二輪車101は、車両フレーム(不図示)に車両外装としての保護カバーを装着して構成されている。この自動二輪車101は、前方に運転者の足回りを保護するレッグシールド111が設けられている。レッグシールドの後方には、センターフレームカバー112が設けられている。センターフレームカバー112の後方には、サイドフレームカバー113が設けられている。
車両前方には、ステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク(不図示)が揺動可能に支持されている。フロントフォークの上方には、前輪102を操舵するための車体右側のハンドル120、車体左側のハンドル121が設けられている。車体右側のハンドル120には、スロットル(アクセル)122と、ブレーキバー123とが設けられている。また、右側のハンドル120の車両中央側には、スターターボタン124が設けられている。右側のハンドル120及び左側のハンドル121の車両前方側には、左右一対のサイドミラー125が設けられている。また、車体最前方の中央にはヘッドランプ(不図示)が設けられている。ヘッドランプの側方には、左右一対のウィンカー140が設けられている。
車体左側のハンドル121には、ハンドルグリップ131が設けられている。ハンドルグリップ131の車体前方側にはブレーキレバー126が設けられている。左側のハンドル121の車両中央側には、ランプスイッチ132、ウィンカースイッチ133、ホーンスイッチ134が設けられ、ハンドルスイッチ130を構成している(図2参照)。これらのスイッチよりも車体中央側はハンドルカバー114で覆われている。
サイドフレームカバー113の上側には、座席シート104が設けられている。サイドフレームカバー113の後部にはテールランプ141、テールランプ141を挟んで左右対称に左右テールウィンカー142(右側は不図示)が設けられ、テールランプ141と左右テールウィンカー142の下方にはリヤフェンダ115が設けられている。サイドフレームカバー113の内側であって、座席シート104の下方には燃料タンク(不図示)が配置されている。
サイドフレームカバー113の下側には、エンジン150と一体的に設けられ、後輪103を支持するスイングアーム116が上下方向に揺動可能に支持されている。このスイングアームと車体フレームとの間にはサスペンション105が取り付けられている。また、スイングアーム116の前方側には、車両を支持するサイドスタンド106が設けられている。
図2に示すように、左側のハンドル121には、ウィンカースイッチ133が配置されており、これを操作することで車両前方の左右のウィンカー140及び車両後方の左右のテールウィンカー142が点滅する。ウィンカースイッチ133の操作により、左前ウィンカー140と左後ウィンカー142とが同期し、右前ウィンカー140と右後ウィンカー142とが同期して点滅する。また、ここには図示しないが、制御装置201が、ウィンカースイッチ133と電気的に通信可能に設置されている。
図3に示すように、ランプスイッチ132、ウィンカースイッチ133及びホーンスイッチ134(図3では不図示)は、ハンドルグリップ131を左手で握った場合に親指で操作可能な位置に配置される。すなわち、運転者は、親指以外の指を用いてハンドルグリップを握り、親指を用いてランプスイッチ132、ウィンカースイッチ133、ホーンスイッチ134を操作することができる。
ここで、図4を参照してウィンカースイッチ133の構成について説明する。図4は、本実施の形態に係る自動二輪車101が有するウィンカースイッチ133の構成の説明図である。図4Aはウィンカースイッチ133の上面図であり、図4Bはウィンカースイッチ133の内部構造の説明図であり、図4Cは図4Bのa−a線に沿う断面図である。図4では、図中の紙面の上下方向が自動二輪車101の前後方向を示している。なお、図4Aでは、ウィンカースイッチ133を構成する上部ケース2を省略している。また、図4Bでは、ウィンカースイッチ133を側方から示している。
図4A、4Bに示すように、ウィンカースイッチ133は、上方側に開口した下部ケース1と、下方側に開口した上部ケース2とが組み合わされた筐体を有する。この筐体は、長手方向を車幅方向に配置した直方体形状を有し、その内部に空間が形成される。また、ウィンカースイッチ133は、筐体内の空間に一部が収容された操作体3を有する。ウィンカースイッチ133においては、筐体から露出する操作体3の一部で運転者のウィンカー操作を受け付け可能に構成されている。
下部ケース1は、例えば、絶縁性の樹脂材料で成形される。下部ケース1は、平面視にて概して長方形状を有する底面部を有している。下部ケース1の底面部には、樹脂等の絶縁材料により構成される3つの絶縁スペーサ11a〜11cが設けられている。絶縁スペーサ11aは、車両の前方側部分に配置され、絶縁スペーサ11b、11cは、それぞれ車両の後方側部分に車幅方向に離間して配置されている。これらの絶縁スペーサ11aと、絶縁スペーサ11b、11cとは、車両の前後方向に離間して配置されている。なお、これらの絶縁スペーサ11a〜11cは、例えば、下部ケース1と別に作成され固定されたものでもよいし、下部ケース1と一体に形成されたものでもよい。
絶縁スペーサ11aは、絶縁スペーサ11b、11cより大きい寸法に構成されている。絶縁スペーサ11aは、長方形状を有し、下部ケース1の底面部の前方側に、長手方向が下部ケース1底面の長辺と略平行になるように配置される。また、絶縁スペーサ11b、11cは、長方形状を有し、概して車両の前後方向にその長辺部分を沿わせるように配置され、前方側ほど後述する操作体3に近い位置に配置され、後方側ほど操作体3から遠い位置に配置されている。また、絶縁スペーサ11b、11cは、それぞれ下部ケース1の左方側、右方側であって、下部ケース1の中心線を挟んで略線対称となるように配置される。
上述した絶縁スペーサ11b、11c上には、それぞれ長方形状の導電性を有する固定端子12L、12Rが設けられている。固定端子12L、12Rは、平面視にて概して長手方向を車両の前後方向に配置した長方形状を有する。固定端子12L、12Rは、それぞれ平面視にて後述する突起13b、13cにより前後方向に2つの領域に分割されている。以下においては、固定端子12Lが分割された部分を固定端子12a、12bと呼び、固定端子12Rが分割された部分を固定端子12c、12dと呼ぶものとする。この時、固定端子12a、12cは、絶縁スペーサ11b、11c上で、中心からみて前方側に配置される。なお、これらの固定端子12a〜12dは、特許請求の範囲における固定端子を構成する。
これらの固定端子12L、12R上には、非導電体(絶縁体)である突起13b、13cが設けられている。これらの突起13b、13cは、それぞれ固定端子12L、12Rの表面から上方側に突出する凸状形状を有している。また、突起13b、13cは、それぞれ固定端子12L、12Rと直交する方向に長手方向を配置した細長い長方形状を有する。これらの突起13b、13cは、後述する可動端子34a、34bが固定端子12L、12R上を移動する際に、これらの可動端子12L、12Rを固定端子12L、12Rから離間させる役割を果たす。なお、これらの突起13b、13cは、特許請求の範囲における非導電部材を構成する。
また、絶縁スペーサ11aには、車幅方向に離間して一対の固定端子12e、12fが配置される。これらの固定端子12e、12fは、絶縁スペーサ11aの中心に対して対称になるように、絶縁スペーサ11aの両端付近に配置される。絶縁スペーサ11aの後方には、突起13aが設けられている。この突起13aは、車幅方向に延在する長尺形状を有し、絶縁スペーサ11aの長手方向と平行に配置されている。なお、これらの固定端子12e、12fは、特許請求の範囲における別の固定端子を構成する。
さらに、下部ケース1の底面部には、その後方側に、後述する操作体3を支持するための支持部14が設けられている。支持部14は、概して円筒形状を有しており、後述する固定ネジ15が挿入可能に構成されている。
上部ケース2は、下部ケース1と同様に、絶縁性の樹脂材料で成形される。上部ケース2の後面部中央には、図4Bに示すように、開口部2aが形成されている。この開口部2aを介して、操作体3の一部が筐体から後方側に露出する。また、図4Cに示すように、上部ケース2には、後方側にガイド溝21が形成されている。このガイド溝21は、後述するリブ33を収容し、リブ33を前後方向及び左右方向に揺動可能に案内する役割を果たす。ガイド溝21は、前後方向に直線状に延在する凹部21aと、この凹部21aの後端部に連続して設けられた半円弧状の凹部21bとを有し、平面視にて概してY字状に設けられている。
ガイド溝21を構成する凹部21aには、バネ22aが配置され、凹部21bには、一対のバネ22b、22cが配置されている。これらのバネ22a〜22cは、一端が凹部21a、21bの端部に固定され、他端が後述するリブ33近傍に配置されたスペーサ部材23に固定されている。これらのスペーサ23は、ガイド溝21の所定位置に設けられた図示しない規制片により、図4Cに示す中心方向への移動が規制されている。リブ33に力がかかっていない状態(初期状態)においては、ガイド21の中心部にリブ33が位置する。一方、リブ33に対して外部から力を加え、中心から移動させると、中心からの変位に比例する大きさであって、変位方向とは逆向きの復元力がリブ33に働く。このため、初期位置からの変位があったとしても、初期位置に戻る復元力が働く。なお、これらのバネ22a〜22cは、特許請求の範囲における付勢手段を構成する。
操作体3は、例えば、金属板材に打ち抜き加工を施すことで形成される。操作体3は、前後方向に延在する基部3aと、この基部3aの前端部に設けられた一対の腕部3bとから構成され、平面視にて概してT字形状を有する。基部3aの中央付近には、長穴32が形成されている。この操作体3の上面であって、長穴32より前方側の位置には、上方側に延出するリブ33が設けられている。このリブ33は、概して円柱形状を有し、基部3aと腕部3bとの接続部分近傍に配置されている。操作体3が筐体に取り付けられた状態において、リブ33は、上部ケース2のガイド溝21にその上端部が収容される長さを有している。
また、腕部3bの下面であって、両端部近傍には、下方側に延出する可動端子34a、34bが設けられている。これらの可動端子34a、34bは、概して円柱形状を有し、基部3aの中心線を挟んで対称となる位置に配置されている。また、これらの可動端子34a、34bは、導電性を有する。さらに、可動端子34a、34bには、可塑性があり外部から力を加えられると変形する。操作体3が筐体に取り付けられた状態において、可動端子34a、34bは、下部ケース1の固定端子12L、12R等に接触する長さを有している。なお、これらの可動端子34a、34bは、特許請求の範囲における可動端子を構成する。
基部3aの後端部には、操作ノブ31が設けられている。操作ノブ31は、例えば、絶縁性の樹脂材料で形成され、概して直方体が全体的に丸みを帯びた形状を有する。
操作体3は、長穴32に挿入された固定ネジ15によって支持部14に取り付けられている。操作体3は、基部3aの上下に配置される一対の緩衝部材16を介して支持部14に取り付けられる。支持部14に取り付けられた状態において、操作体3は、前後方向にスライド移動が可能であると共に、固定ネジ15の軸心を中心に揺動(回動)可能に支持される。
ここで、図4A、Bを参照して、固定端子12a〜12f、可動端子34a、34b及び突起13a〜13cの関係について述べる。上述のように、固定ネジ15により筐体に取り付けられると、操作体3は、上部ケース2のガイド溝21に収容されたバネ22a〜22cの付勢力により図4Aに示す初期位置に配置される。初期位置において、操作体3は、一対の腕部3bが平面視にて突起13aの僅かに後方側の位置に配置される。また、これらの腕部3bの下面に設けられた可動端子34a、34bは、それぞれ突起13aと、固定端子12a、12cとの間に配置されている。操作体3の上面に設けられたリブ33の上端部は、上部ケース2に設けられたガイド溝21に収容されている。一方、操作体3の下面に設けられた可動端子34a、34bの下端部は、側面視にて固定端子12a〜12fの表面近傍に配置されている。
図4Aにおける点線は、操作体3が揺動した場合における可動端子34a、34bの移動経路を示している。これは、図4Cにおけるガイド溝21の凹部21bをリブ33が移動する際に、可動端子34a、34bが描く軌跡となっている。したがって、図4Cに示すガイド溝21の凹部21bの形状が、図4Aにおける可動端子34a、34bの固定端子12a〜12d上での移動位置を決定する。この場合において、操作ノブ31を図4Aに示す右方側に動かすと操作体3上の可動端子34aが固定端子12a側に移動し、操作ノブ31を同図に示す左方側に動かすと操作体3上の可動端子34bが固定端子12c側に移動する。
操作ノブ31に力を加えることにより実現される揺動動作において、可動端子34a、34bは固定端子12a〜12d上を摺動する。一方、可動端子34a、34bが突起13b、13cを乗り越える際は変形を起こし突起13b、13cの上に乗り上げる。さらに、可動端子34a、34bが突起13b、13cを乗り越えると、可動端子34a、34bの変形が元に戻り、再び固定端子12a〜12dと接触し摺動する。これらの揺動動作に対応する反応は、揺動方向以外は左右で同じものとなる。
このように突起13b、13c上を可動端子34a、34bが移動する際に、操作ノブ31を操作する運転者はクリック感を受ける。このクリック感は可動端子34a、34bが固定端子上12a〜12dを移動する際の感覚とは明らかに異なる。したがって、このクリック感により突起13b、13c(すなわち、通電が遮断される部材)上を移動していることが判断できる。また、こうした振動であれば、運転中であっても操作ノブ2を操作する運転者に明確なフィードバックを与えることができる。
ここで、操作ノブ31に力を加え、固定ネジ15を支点とした揺動動作によって、可動端子34bを絶縁スペーサ11cの方向に移動させた場合を例として示す。まず、操作体3が移動し始めても、可動端子34bが固定端子12cと接触するまでは、固定端子12cには電気信号は入力されない。一方、可動端子34bが固定端子12cと接触すると、接触継続中は固定端子12cに電気信号が入力され続ける。しばらくして可動端子34bが絶縁体である突起13cと接触すると、固定端子12cに対する電気信号の入力が止まる。その後、可動端子34bと固定端子12dが接触すると、固定端子12dに電気信号が入力される。この状態で外部からの操作をやめると、前述したリブ33に働く復元力により、可動端子34bは初期位置に戻る。初期位置に戻る過程では、前述と反対の過程で電気信号の入力が発生する。すなわち、操作ノブ31に力を加えクリック感を感じた後に入力をやめることにより、電気信号は(無接触)切→入→切(クリック感)→入→切→入→切(無接触)という一連の流れで後述する外部端子204bを通して外部に出力される。
ここで、電気信号の動作のうち、接触を伴わない最初と最後の切を除外して考えると、入→切→入→切→入のうち、入→切→入の動作において、突起13cを乗り越える際の、可動端子34bの変形に伴う振動が運転者にクリック感としてフィードバックされる。ここで、突起13cとの接触による切の継続時間は、接触を伴わない無信号状態の継続時間とは明らかに異なっているため、突起による無信号状態と、接触を伴わない無信号状態とを区別することが可能である。
一方、可動端子34bを固定端子12cまで動かした後に、操作ノブ31に対する操作をやめ、初期位置に戻した場合には、信号は(無接触)切→入→切(無接触)となる。前述したように、突起13bによる無接触か否かは、その切信号の継続時間を基準に区別可能である。したがって、可動端子34bが突起13cと接触したか否かにより、出力する信号を異ならせることが可能である。
また、運転者にとっては、突起13cを乗り越えるかどうかで、操作ノブ31を介して受けるフィードバックが異なる。このため、運転中であったとしても、手ごたえの有無により、2つの操作の区別が可能となる。
以下においては、説明の便宜上、上述の揺動操作のうち、可動端子34bが突起13cを乗り越える操作を「長操作」と呼び、可動端子34bが突起13cを乗り越える操作をしない操作を「短操作」と呼ぶものとする。本実施の形態に係るウィンカースイッチにおいては、この長操作を車両の右左折に伴う点灯パターンの出力制御に割当て、この短操作を車両の車線変更に伴う点灯パターンの出力制御に割当てている。ここでは、例として可動端子34bが、固定端子12c、12dの方向に揺動する場合について検討したが、可動端子34aが、固定端子12a、12bの方向に揺動する場合についても同様である。
次に、操作ノブ31に対して、前後方向に力を加え、押し込み操作をする場合について説明する。この場合、操作体3は、前方側に力を受けて移動し、可動端子34a、34bは同時に突起13aに接触する。可動端子34a、34bが同時に突起13aに乗り上げることで、運転者にクリック感がフィードバックされる。その後、可動端子34a、34bが固定端子12e、12fに接触すると電気信号が固定端子12e、12fに入力される。可動端子34a、34bと固定端子12e、12fがそれぞれ接触している間は電気信号が入力され続ける。この状態で外部からの操作をやめると、前述したリブ33に働く復元力により、可動端子34a、34bは突起13aを乗り越えて、初期位置に復帰する。
この場合の電気信号は、(突起)→切→入→切→(突起)となり、長操作の特徴である、入→切→入の信号が入力されることがない。一方、入信号は、2つの固定端子12e、12fに同時に信号が入力されるという点で、前述した短操作に伴う入信号と区別することができる。以下においては、2つの可動端子34a、34bに対して切→入の信号が同時に流れる操作を、「手動キャンセル操作」と呼ぶものとする。本実施の形態に係るウィンカースイッチにおいては、この手動キャンセル操作をウィンカー140の点灯の停止出力制御に割当てている。
このように下部ケース1においては、固定端子12a〜12dが操作体3に対する揺動操作に応じた可動端子34a、34bの移動経路上に配置され、固定端子12e、12fが操作体3に対する押し込み操作に応じた可動端子34a、34bの移動経路上に配置されている。このため、操作体3の揺動動作に応じて可動端子34a、34bを固定端子12a〜12dに接触させることができる一方、押し込み操作に応じて固定端子12e、12fに接触させることができる。これにより、操作体3の操作状態に応じて揺動操作と押込み操作とを明確に識別することができるものとなっている。
以上の短操作、長操作及び手動キャンセル操作において操作を終了し、外部からの操作から解放されると、操作体3には復元力が働くため自動的に初期位置に戻る。すなわち、操作体3は、非操作状態において、同一の物理的状態とされる。このため、操作開始時における運転者の操作感触を常に一定とすることができる。
上述したように、短操作、長操作、手動キャンセル操作において、固定端子12a〜12fと可動端子34a、34bとの接触により生じる電気信号は、異なる固有の特徴(信号パターン)を有している。このため、異なる電気信号を目印に各々の操作を判別し制御することが可能である。このことについて、以下、図6、図7の説明部分で言及する。
次に、図5を用いてウィンカースイッチ133に係るシステム構成について説明する。本願発明のハンドルスイッチシステムは、ウィンカースイッチ133と、入出力する信号を制御する制御装置201、車体の速度を計測するための車輪速センサ202、車体の傾き状態を把握するための傾斜センサ203、ウィンカーランプ左205a、ウィンカーランプ右205b、車両電源206、これらを電気的に結ぶ電装装備(ワイヤーハーネス)を含む。また、制御装置201は、CPU207を備える。なお、制御装置201は、特許請求の範囲における制御部を構成する。
図4で説明したウィンカースイッチ133には、3つの外部端子204a〜204cが配置されている。外部端子204aには、前述した可動端子34a、34bが接続され、外部端子204bには、前述した固定端子12c、12d、12fが接続され、外部端子204cには、前述した固定端子12a、12b、12eが接続されている。ここで、外部端子204aは地絡(アース)されており、外部端子204b、外部端子204cは、それぞれ制御装置201と接続されている。また、外部端子204bは第2汎用入力部208aを介してCPU207と接続され、外部端子204cは第1汎用入力部208bを介してCPU207と接続されている。さらに、外部端子204bと第2汎用入力部208aの間にはプルアップ抵抗210が配置され、外部端子204cと第1汎用入力部208bの間にも同様にプルアップ抵抗210が配置される。
制御装置201は、制御に必要なデータを取得するために、車輪速センサ202と、傾斜センサ203とを具備している。車輪速センサ202は、例えば、磁気センサなどを備え、自動二輪車の走行速度に応じた信号を出力する。傾斜センサ203は、例えば、ある時点においてセンサに対して働く重力の大きさを図るバネ装置を備え、重力の方向と車体の向きとの位置関係を把握することにより、車体の傾斜状態に応じた信号を出力する。他の例としては、コンデンサを用いた静電容量の変化を捉える装置とすることもできるし、ホール素子を用いて、変化を測定する装置とすることもできる。ここで、車輪速センサ202のデータはPLS(パルス)入力部211を介してCPU207に入力される。また、傾斜センサ203のデータはシリアル入力部212を介してCPU207に入力される。
また、制御装置201は、上述した手動キャンセル機能とは別に、予め規定された基準や、状況に応じて決定される基準を用い、車輪速センサ202、傾斜センサ203によって求められた情報や、自身の制御内容データなどに基づき、ウィンカーの点滅を適宜キャンセルするオートキャンセル機能を有してもよい。
また、制御装置201からは、ウィンカーランプ点灯制御信号として、ウィンカーランプ左205aを制御する信号と、ウィンカーランプ右205bを制御する信号との2系統が出力されており、これらの出力は、例えば図7に示すような波形によって示される電気信号である。ウィンカー左205aの制御信号は、車両前部の左ウィンカー140と、車両後部の左テールウィンカー142を制御し、ウィンカー右205bの制御信号は、車両前部の右ウィンカー140と、車両後部の右テールウィンカー142を制御する。これらの電気信号は、車体外部に設置された各ウィンカーランプに点灯、消灯のタイミングを指示する。また、各ウィンカーランプは、車体内部に設置された車両電源206などからDC(Direct Current)12Vで電力を供給されてもよい。
制御装置201は、例えば図6に示す表のように入力される信号に対して出力する信号を決定する。この表では、ウィンカースイッチ操作による6種類の信号入力に対して、制御装置201に入力される信号と、入力する信号に対応して制御装置201が出力する信号によってウィンカーが示す動作とが記載される。
図6において、Hiは可動端子34a、34bと固定端子12a〜12fが接触していないこと(オープン)によって、接続検出用のプルアップ電圧209が制御装置の第1、第2汎用入力部208b、208aにかかっている状態を示し、Loは可動端子34a、34bと、対象とする固定端子12a〜12fが接触していること(ショート)によって、地絡された外部端子204aを経由して、アース電圧が制御装置の第1、第2汎用入力部208b、208aにかかっている状態を示す。これにより可動端子34a、34bと固定端子12a〜12fとの接触の有無を判定することが可能となる。
例えば、操作ノブ31を図4Aに示す左方側に揺動させて、ウィンカースイッチ133を左に短操作した場合(すなわち、運転者から車両の左方側への車線変更が指示された場合)を考える。可動端子34bと固定端子12cとは、最初接触していない状態にあり、暫くして接触する状態となる。このとき外部端子204bは、接続される固定端子12c、12d,12fのうちの固定端子12cと、可動端子34bとを経由して外部端子204aと導通して地絡されるため、制御装置201にて対応する第2汎用入力部208aにはアース電圧がかかり、外部端子204bから制御装置201に入力される信号はHi→Loとなる。一方、外部端子204cは、接続される固定端子12a、12b、12eの何れも可動端子34aと接触していないため、外部端子204aと導通せず、制御装置201にて対応する第1汎用入力部208bにはプルアップ電圧209がかかり、外部端子204cから制御装置201に入力される信号はHiとなる。制御装置201は、この入力信号を受信すると、ウィンカーランプ左205aを3回点滅させる信号を出力する。一方、ウィンカーランプ右205bは動作させない。
他の例として、操作ノブ31を左方側に揺動させて、ウィンカースイッチ133を左に長操作した場合(すなわち、運転者から車両の左折が指示された場合)を考える。この場合、前の例と同様に可動端子34bと固定端子12cとは、最初接触していない状態にあり、暫くしてから接触する。その後、可動端子34bは、絶縁体である突起13cと接触し、さらに固定端子12dと接触する。この場合、外部端子204bから制御装置201に入力される信号は、(Hi)→Lo→Hi→Loとなる。一方、外部端子204cについては、接続される固定端子12a、12b、12eの何れも可動端子34aと接触しておらず、外部端子204cから制御装置201に入力される信号はHiとなる。制御装置201は、この入力信号を受信すると、ウィンカーランプ左205aを継続的に点滅させ続ける信号を出力する。一方、ウィンカーランプ右205bは動作させない。
このように本実施の形態に係るウィンカースイッチ133においては、操作体3に対する短操作と、長操作とで異なる信号パターンが生成される。このため、操作体3に対する運転者からの各操作に応じて異なる点灯パターンを識別することができる。特に、本実施の形態においては、短操作が車線変更操作に割り当てられ、長操作が右左折操作に割り当てられている。このため、操作体3に対する運転者からの各操作に応じて右左折用の点灯パターンと、車線変更用の点灯パターンとを識別することができる。
他の例として、ウィンカースイッチ133を奥に押しこむ操作をした場合(すなわち、運転者からウィンカー140の点灯の手動キャンセルが指示された場合)を考える。この場合、可動端子34aと可動端子34bとは、まず同時に突起13aと接触する。その後、突起13aをそれぞれ乗り越え、可動端子34aは固定端子12eと、可動端子34bは固定端子12fと同時に接触する。この場合、外部端子204bは固定端子12fと可動端子34bとを経由して外部端子204aと導通して地絡され、同時に、外部端子204cは固定端子12eと可動端子34aとを経由して外部端子204aと導通して地絡される。このとき制御装置201への入力信号は、外部端子204bからのものと外部端子204cからのものとがともにHi→Loとなる。制御装置201はこの入力信号を受信すると、点滅させているウィンカーを消灯させる信号を出力する。
このように本実施の形態に係るハンドルスイッチシステムにおいては、固定端子12e、12fに可動端子34a、34bが接触した場合にウィンカー140の点灯を停止する。このため、固定端子12a〜12dに対する可動端子34a、34bの接離状況とは無関係にウィンカー140の点灯を停止できることから、現在のウィンカー140の点灯状態に依存せずに、ウィンカー140の点灯を停止することができる。
また、固定端子12eと固定端子12fから制御装置201に対してHiの信号のみが入力される場合(信号が入力されない場合)には、前の状態を継続する信号が制御装置201から出力される。
次に図7を参照して、制御装置201が信号を判別する条件を説明する。ここでは例として上記で述べた左の短操作・長操作について検討する。図7Aは左の短操作に伴う信号を説明したグラフ、図7Bは左の長操作に伴う信号を説明したグラフ、図7Cは、押し操作(手動キャンセル操作)に伴う信号を説明したグラフである。各々について、上には制御装置201に入力される電気信号の電圧のグラフが記載され、下にはウィンカーの消灯及び点灯のタイミングについて記載されている。全てのグラフにおいて横軸は時間を表しており、更に時間に関しては図7A、図7B、図7Cのそれぞれで同期されている。また、図7において、外部端子204a〜204cを経由した信号入力については、オープン(Hi)状態と、ショート(Lo)状態とを信号として検出する。
図7Aを参照して短操作を説明する。この場合、信号はHi→Loの順で制御装置201に入力される。ここで、運転者の意図した操作が、短操作、長操作のいずれの場合であってもこの短操作部分は共通操作部分である。そのため、制御装置201はショート信号が一定時間T2以上継続して入力された時点で、短操作と判断する。この場合、ウィンカーは3回点滅を開始する。その後、後述する長操作に移行するための条件に合致しなかった場合は、3回点滅が終了した後は信号の出力はない。
また、T2の設定時間を適切なものにすることにより、運転者が操作ノブ31を保持することなく、短操作を行うことが可能となる。これにより、運転者が運転中にウィンカーの操作に気をとられてしまう危険性を低減することが可能になる。
図7Bを参照して長操作を説明する。この場合、信号はオープン→ショート→オープン→ショート→オープン→ショート→オープンの順で制御装置201に入力される。ここで、前述したように、最初のオープン→ショートは、短操作と共通である。その後のショート→オープン→ショートの操作に要した時間が規定値T1以下である場合に、制御装置201は、この操作を長操作として判断する。この場合、ウィンカーは短操作による3回点滅と同じタイミングで点滅を継続する。
長操作においては、以上のようにT1を設定することにより、突起13b、13cを乗り越える動作をした時に生じる信号と、それ以外の動作によって生じる信号とを確実に区別することが可能となる。
また、上記における、T1、及びT2は操作環境や装置状態等の条件を加味した上で適宜決定されるものである。
図7Cを参照して、手動キャンセル操作について説明する。この場合、入力される信号は短操作と類似するが、手動キャンセル操作の場合は、外部端子204bと外部端子204cが同時にオープン→ショートの信号を制御装置201に入力するという点によって判断される。制御装置201は、この信号が入力されると、ウィンカーが次の点滅周期に移行することをやめさせる。具体的には、手動キャンセル信号が入力された後、点滅パターンにおいて最初に消灯になった時点で消灯状態を継続させる。この後は、別の操作が無い限りウィンカーは消灯状態を継続する。
ここで、図7A、図7B、図7Cに記載したように、各操作によって、制御装置201に入力される信号の強さ(電圧)は一定である。また、それによって出力されるウィンカーの点灯時の出力の大きさも(明るさ)も時間に依らず一定である。さらにウィンカーを3回点滅させる場合と、継続的に点滅させ続ける場合とにおいて、ウィンカーランプ左205bの点滅周期は一定である。
以上に示した通り、制御装置201は、外部端子204b、外部端子204cから入力された信号がともにHiである場合には前の状態を継続する信号を出力し、信号がともにHi→Loである場合には、ウィンカーを消灯する信号を出力する。ある外部端子(例えば、外部端子204b)からの入力信号がHiである場合において、別の外部端子(例えば、外部端子204c)からの入力信号が、Hi→Loである場合には、対応するウィンカーを3回点滅させる。ある外部端子(例えば、外部端子204b)からの入力信号がHiである場合において、別の外部端子(例えば、外部端子204c)からの入力信号がLo→Hi→Loである場合には、対応するウィンカーについて区間を区切らず点滅させる。
また、本実施形態においては、短操作と手動キャンセル操作とは、直感的に区別できる異なった操作であるため、運転者が運転中に操作を行う場合においても、2つを混同してしまう危険性を排除することができる。
このように本実施の形態に係るハンドルスイッチシステムにおいては、予め定めた異なる期間(T1、T2)内における固定端子12a〜12dに対する可動端子34a、34bの接離状況に応じた所定の信号パターンに基づいて運転者からの複数の操作内容を識別可能としている。したがって、運転者からの複数の操作内容を識別するために複数のスイッチ等の構成を備える必要がない。これにより、複雑な構成を必要とすることなく運転者からの複数の操作内容を識別することが可能となる。
特に、本実施の形態に係るハンドルスイッチシステムにおいては、固定端子12L、12Rにおける可動端子34a、34bの移動経路上に非導電部材からなる突起13b、13cを配置している。これにより、固定端子12L、12R上の一部で可動端子34a、34bの接触に伴う通電を遮断することができることから、簡単な構成で可動端子34a、34bと固定端子12L、12Rとの接離状況を変化させることができる。この結果、操作体3の操作に伴う所定の信号パターンを容易に生成することが可能となる。
図7A、図7Bにおいては左方向に操作する場合について説明されており、説明に際しては例として左方向のウィンカーが点滅する場合を示したが、当然右方向についても同様の操作を行うことができる。なお、本実施の形態においては、入力電圧は一定である例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、入力電圧を固定端子ごとによって異なるものにすることによって、信号を区別するようにしてもよい。
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱することなく修正および変更態様として実施することができる。本明細書の記述は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
例えば、上記実施の形態に係るウィンカースイッチ133では、下部ケース1に操作体3が固定され、上部ケース2にリブ33用のガイド21が設けられる場合について示している。しかしながら、ウィンカースイッチ133の構成についてはこれに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、下部ケース1にリブ33用のガイド21が設けられ、上部ケース2に操作体3が固定されてももちろんよい。
また、可動端子34a、34bが可塑性のある素材である必要はなく、固定端子12a〜12fに可塑性を持たせることや、バネ等により、固定端子12a〜12f全体が沈み込む構造とすること、または可動端子34a、34bが設けられる腕部3bに可撓性を持たせることで上記実施例と同様の機能を実現することも可能である。可動端子34a、34bが固定端子12a〜12fと接触する場合と、突起13a〜13cと接触する場合とにおいて異なる感触(クリック感)を得ることで、運転者が判別することが可能な構造であれば、これらの構成は特に限定されない。
また、上記実施の形態に係るウィンカースイッチ133では、可塑性を有する接触式の端子である可動端子34a、34bを用いて信号の検出を行う場合について示している。しかしながら、信号の検出が可能であれば接触式に限られず、例えば非接触式のホールセンサと磁石とによって近接した場合に信号を検出するような構成としてもよい。この場合、上記各可動端子34a、34bは磁石となり、各固定端子12a〜12fはホールセンサとなる。
さらに、上記実施の形態に係るウィンカースイッチ133では、左右方向の移動には揺動運動を用いたが、左右に移動することができるのであれば揺動運動に限られるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、左右方向の移動にスライド移動の構造を用いてもよい。
さらに、上記実施の形態では、上部ケース2にガイド溝21を形成することでリブ33の移動範囲を制限したが、ガイド21を設ける位置は上部ケース2に限らず、下部ケース1に設けるようにしてもよい。この場合は、下部ケース1のみに構造を形成するため、上部ケース2の構造を簡略化できるとともに、下部ケース1の上下方向に必要なスペースの削減が可能となるため、装置全体のコンパクト化が可能となる。