以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、所定面内の一方向をX軸方向、所定面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向として、各部の位置関係を適宜説明する。また、重力の作用方向を下方、重力の作用方向とは反対方向を上方という。
鉱山の生産性は、採掘する鉱石の単位重量当たりの採掘コスト($/t)、及び単位時間当たりの鉱石の採掘量(t/h)を含む。tは採掘量、hは時間、$はコストである。
<採掘現場の概要>
図1は、本実施形態に係る運搬機械10及び積込機械30が稼働する現場の一例を示す模式図である。運搬機械10及び積込機械30は、地下から鉱石を採掘する坑内採掘に使用される。運搬機械10は、坑道Rにおいて積荷を運搬する作業機械の一種であり、積込機械30は、運搬機械10に積荷を積み込む作業機械の一種である。本実施形態においては、ブロックケービング工法により鉱石が採掘される。
ブロックケービング工法とは、鉱山Mの鉱体(鉱脈)MGに鉱石MRの採掘場所(ドローポイント)DPと、採掘された鉱石MRを搬送するための坑道Rとを設置し、ドローポイントDPの上部をアンダーカットして発破し、鉱石MRを自然崩落させることによって、ドローポイントDPから鉱石MRを採掘する工法をいう。ドローポイントDPは、鉱体MGの内部又は鉱体MGの下方に設置される。ブロックケービング工法は、岩盤又は鉱体の下部をアンダーカットすると脆弱な岩が自然崩壊を始める性質を利用した工法である。鉱体MGの内部又は下方から鉱石MRが採掘されると、崩落が上部まで伝播する。このため、ブロックケービング工法を用いると、鉱体MGの鉱石MRを効率良く採掘することができる。ブロックケービング工法において、ドローポイントDPは複数設けられる場合が多い。
本実施形態においては、地上に管理装置3が配置される。管理装置3は、地上の管理施設に設置される。管理装置3は、原則として移動を考慮していないものである。管理装置3は、採掘現場を管理する。管理装置3は、無線通信装置4及びアンテナ4Aを備える通信システムを介して、運搬機械10及び積込機械30を含む坑内の作業機械と通信可能である。本実施形態において、運搬機械10及び積込機械30は、無人で稼働する作業機械である。なお、運搬機械10及び積込機械30は、オペレータの操作により稼働する有人の作業機械でもよい。
<坑内について>
図2は、本実施形態に係る坑内MI及び鉱山の管理システム1の一例を示す模式図である。図3は、図2の一部を拡大した図である。図2及び図3に示すように、鉱脈MGの下方に設置された坑道Rは、第1坑道DRと、第2坑道CRとを含む。坑道Rは、例えば、鉱体MGの内部又は鉱体Mの下方に設置される。坑内MIにおいて、第1坑道DR及び第2坑道CRは、それぞれ複数存在する。第2坑道CRは、それぞれのドローポイントDPと第1坑道DRとを接続する。積込機械30は、第2坑道CRを通ってドローポイントDPに接近することができる。本実施形態において、坑道Rは第3坑道TRを含む。本実施形態において、複数(この例では2本)の第3坑道TRが、複数の第1坑道DRと接続されている。以下の説明において、第1坑道DRを適宜、ドリフトDR、と称し、第2坑道CRを適宜、クロスカットCR、と称し、第3坑道TRを適宜、外周路TR、と称する。
図2に示すように、坑内MIには、2本の外周路TRが設置されている。クロスカットCRはドローポイントDPによって分断される。それぞれの外周路TRは、ドローポイントDPによって分断されない。1本の外周路TRは、複数のドリフトDRのそれぞれの一端部を接続し、もう1本の外周路TRは、複数のドリフトDRのそれぞれの他端部を接続する。このように、すべてのドリフトDRは、2本の外周路TRと接続されている。本実施形態においては、運搬機械10及び積込機械30は、いずれのドリフトDRであっても一方の外周路TRから進入することができる。図3に示す例において、運搬機械10及び積込機械30は、ドリフトDR内を矢印FCの方向に進行する。
図2及び図3に示すように、運搬機械10に対する積込機械30による積込作業が行われる積込位置LPは、クロスカットCR又はその近傍に定められる。以下の説明においては、ドローポイントDP及び積込位置LPを含む領域を適宜、積込場所LA、と称する。
図2に示すように、坑内MIには、運搬機械10によって運搬された積荷としての鉱石MRが排出される排土場所(オアパス)OPが設けられる。運搬機械10は、ドローポイントDP近傍の積込場所LAにおいて積込機械30により積荷としての鉱石MRを積み込まれた後、ドリフトDRを走行して、オアパスOPまで移動する。運搬機械10は、到着したオアパスOPに積荷としての鉱石MRを排出する。
本実施形態において、運搬機械10は、走行用の電動機と、電動機に電力を供給する蓄電器とを有する。外周路TRには、空間SPが接続されている。空間SPには、運搬機械10に搭載された蓄電器を交換する蓄電器交換装置EXが設置される。
以下の説明においては、便宜上、運搬機械10が走行する坑道Rの路面とXY平面とが実質的に平行であることとする。なお、実際には、坑道Rの路面は、凹凸を有していたり、上り坂及び下り坂を有していたりする場合が多い。
図2に示すように、鉱山の管理システム1は、管理装置3と、無線通信用のアンテナ4Aとを有する。管理装置3は、例えば、坑内MIで稼働する運搬機械10及び積込機械30の運行を管理する。運行の管理には、運搬機械10及び積込機械30の配車、運搬機械10及び積込機械30の稼働状態に関する情報(稼働情報)の収集、及びその管理が含まれる。稼働情報は、例えば、運搬機械10及び積込機械30の稼働時間、走行距離、走行速度、蓄電器の残量、異常の有無、異常の箇所、及び積載量が含まれる。稼働情報は、主として運搬機械10及び積込機械30の運転評価、予防保全、及び異常診断に用いられる。したがって、稼働情報は、鉱山Mの生産性向上又は鉱山のオペレーションの改善といったニーズに応えるために有用である。
管理装置3は、通信装置を備えている。アンテナ4Aを備えた無線通信装置4は、管理装置3の通信装置と接続されている。管理装置3は、通信装置、無線通信装置4及びアンテナ4Aを介して、坑内MIで稼働する運搬機械10及び積込機械30との間で情報を伝達することができる。
本実施形態において、積込機械30は、走行用の電動機によって走行し、電動機によって掻き込み装置を駆動して鉱石MRを掘削する。図3に示すように、これらの電動機に積込機械30の外部から電力を供給する給電ケーブル5が坑内MIの坑道Rに設けられている。積込機械30は、例えば、積込場所LAに設けられた電力供給装置としての給電用のコネクタ6及び積込機械30からの電力ケーブル7を介して、給電ケーブル5からの電力の供給を受ける。電力供給装置は、ドリフトDR又はクロスカットCRのいずれか一方に設けられていればよい。本実施形態において、積込機械30は、外部から供給される電力によって走行及び掘削の少なくとも一方を行ってもよい。また、積込機械30は、蓄電器を搭載し、この蓄電器から電力の供給を受けて走行及び掘削の少なくとも一方を行ってもよい。また、積込機械30は、蓄電器を搭載し、この蓄電器から電力の供給を受けて走行及び掘削の少なくとも一方を行ってもよい。すなわち、積込機械30は、外部から供給される電力及び蓄電器から供給される電力の少なくとも一方によって、走行及び掘削の少なくとも一方を行う。例えば、積込機械30は、外部から供給される電力によって掘削を行い、蓄電器から供給される電力によって走行することができる。また、積込機械30は、クロスカットCR内を走行する場合は、外部から供給される電力により走行してもよい。本実施形態において、積込機械30は、電動機によって油圧ポンプを駆動して油圧を発生させ、この油圧によって油圧モータを駆動することにより、鉱石MRを掘削してもよい。また、積込機械30は、蓄電器を備え、この蓄電器から供給される電力により走行し、掘削してもよい。
給電ケーブル5と積込機械30からの電力ケーブル7との接続は、コネクタ6に限定されるものではない。例えば、坑道R側に設けられ、かつ給電ケーブル5と接続された電極と、積込機械30側からの電力ケーブル7に接続された電極とを電力供給装置として用い、両方の電極を接触させて、給電ケーブル5から積込機械30に電力を供給してもよい。このようにすると、両方の電極の位置決め精度が低くても両者を接触させて電力を積込機械30に供給することができる。本実施形態では、積込機械30は電力で動作するものとしたが、このようなものには限定されない。積込機械30は、例えば、内燃機関によって走行したり鉱石MRを掘削したりするものであってもよい。この場合、積込機械30は、内燃機関によって油圧ポンプを駆動し、油圧ポンプから吐出される作動油によって、例えば、油圧モータ又は油圧シリンダ等を駆動することにより走行したり、鉱石MRを掘削したりしてもよい。
<鉱石の掘削及び運搬>
図4及び図5は、積込機械30による地山RMの鉱石MRの掘削及び運搬機械10への鉱石MRの積込を示す図である。積込場所LAのドローポイントDPにおいて、鉱石MRの地山RMが形成される。図4及び図5に示すように、積込機械30は、積込場所LAのクロスカットCR内に設置されて、先端部が鉱石MRの地山RMに貫入してこれを掘削する。積込機械30は、掘削した鉱石MRを、地山RMとは反対側であって、ドリフトDR内に待機している運搬機械10に積載する。ドリフトDR内には、積込機械30に電力を供給する給電ケーブル5が設けられている。
図4及び図5に示すように、積込機械30は、車体30Bと、搬送装置としてのフィーダー31と、掘削装置としての回転ローラー33と、回転ローラー33を支持する支持機構32と、走行装置34とを含む。回転ローラー33と支持機構32とは、鉱石MRを掘削してフィーダー31に送り込む掻き込み装置として機能する。
支持機構32は、車体30Bに取り付けられるブーム32aと、これに連結されて揺動し、かつ回転ローラー33を回転可能に支持するアーム32bとを有する。積込機械30の車体30Bは、鉱石MRの地山RMに貫入する貫入部材35と、回転体36と、岩石ガード37とを備える。貫入部材35は、鉱石MRの掘削時に地山RMに貫入する。回転体36は、積込機械30の貫入部材35が地山RMに貫入するときに回転して、貫入を補助する。
運搬機械10は、車体10Bと、ベッセル11とを含む。ベッセル11は、車体10Bに搭載される。ベッセル11は、鉱石MRを積荷として積載する。本実施形態において、ベッセル11は、図4及び図5に示すように、車体10Bの幅方向W、すなわち車軸と平行な方向に移動する。ベッセル11は、運搬機械10の走行時には車体10Bの幅方向中央に設置される。また、ベッセル11は、鉱石MRの積載時において、車体10Bの幅方向外側に移動する。その結果、運搬機械10は、ベッセル11を積込機械30のフィーダー31の下方Dに接近させることができるので、フィーダー31によって搬送された鉱石MRがベッセル11外に落下する可能性を低減し、鉱石MRをベッセル11内に確実に落下させることができる。
本実施形態では、積込機械30は、鉱山Mの坑内MIのドローポイント(採掘場所)DPにおいて鉱石MRを掘削し、そのドローポイントDPで採掘された鉱石MRを運搬機械10に搬送して積み込む。運搬機械10は、ドローポイントDPから坑内MIのオアパス(排土場所)OPまで鉱石MRを積載して走行する。運搬機械10は、オアパスOPまで鉱石MRを運搬した後、オアパスOPに排出する。このとき、積込機械30は、運搬機械10が走行する空間をドリフトDR内に残した状態でクロスカットCRに留まって、ドローポイントDPで鉱石MRを掘削する。そして、積込機械30は、掘削した鉱石MRをドローポイントDPから離れる方向に搬送して、運搬機械10に積み込む。積込機械30は、掘削した鉱石MRを積載した状態では移動しない。運搬機械10は、ドローポイントDPで採掘された鉱石MRを積載し、ドリフトDRを走行して図2に示すオアパスOPまで運搬する。
このように、本実施形態において、鉱山の管理システム1は、積込機械30には鉱石MRの掘削及び積込のみを行わせ、運搬機械10には鉱石MRの運搬のみを行わせるようにして、両者の機能を分離している。このため、積込機械30は掘削作業及び搬送作業に専念でき、運搬機械10は運搬作業に専念できる。すなわち、積込機械30は鉱石MRを運搬する機能を有していなくてもよく、運搬機械10は鉱石MRの掘削及び搬送する機能を有していなくてもよい。積込機械30は、掘削及び搬送の機能に特化でき、運搬機械10は鉱石MRの運搬の機能に特化できるので、それぞれの機能を最大限発揮させることができる。結果として、鉱山の管理システム1は、鉱山Mの生産性を向上させることができる。
<管理装置>
図6は、本実施形態に係る管理装置3の一例を示す機能ブロック図である。管理装置3は、処理装置3Cと、記憶装置3Mと、入出力部(I/O)3IOとを有する。管理装置3の入出力部3IOに、出力装置としての表示装置8と、入力装置9と、通信装置3Rとが接続されている。管理装置3は、例えば、コンピュータである。処理装置3Cは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。記憶装置3Mは、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ若しくはハードディスクドライブ等又はこれらを組み合わせたものである。入出力部3IOは、処理装置3Cと、処理装置3Cの外部に接続する表示装置8、入力装置9及び通信装置3Rとの情報の入出力(インターフェース)に用いられる。
処理装置3Cは、運搬機械10及び積込機械30の配車並びにこれらの稼働情報の収集等といった管理装置3の処理を実行する。配車及び稼働情報の収集等の処理は、処理装置3Cがそれぞれに対応するコンピュータプログラムを記憶装置3Mから読み込んで実行することにより実現される。
本実施形態において、処理装置3Cは、入力装置9の操作により生成された入力信号に基づいて、坑内MIの作業モードを設定する。管理装置3は、その設定した作業モードに基づいて、運搬機械10の作業パラメータ及び積込機械30の作業パラメータの両方を変更する。
記憶装置3Mは、処理装置3Cに各種の処理を実行させるための各種のコンピュータプログラムを記憶している。本実施形態において、記憶装置3Mが記憶しているコンピュータプログラムは、例えば、運搬機械10及び積込機械30の配車をするためのコンピュータプログラム、運搬機械10及び積込機械30の稼働情報を収集するためのコンピュータプログラム、稼働情報等に基づいて各種解析を実現するコンピュータプログラム等である。
表示装置8は、例えば、液晶ディスプレイ等であり、運搬機械10及び積込機械30の配車をしたり、稼働情報を収集したりする際に必要な情報を表示する。入力装置9は、例えば、キーボード、タッチパネル又はマウス等であり、運搬機械10及び積込機械30の配車をしたり、これらの稼働情報を収集したりする際に必要な情報を入力する。通信装置3Rは、アンテナ4Aを備えた無線通信装置4と接続されている。前述したように、無線通信装置4及びアンテナ4Aは坑内MIに設置される。通信装置3Rと無線通信装置4とは有線で接続される。通信装置3Rと坑内MIの運搬機械10及び積込機械30とは、例えば、無線LAN(Local Aria Network)によって通信することができる。次に、運搬機械10について、より詳細に説明する。
<運搬機械>
図7は、本実施形態に係る運搬機械10の一例を示す斜視図である。図8は、本実施形態に係る運搬機械10の側面図である。運搬機械10は、車体10Bと、ベッセル11と、車輪12A、12Bとを含む。さらに、運搬機械10は、蓄電器としての蓄電器14と、アンテナ15と、撮像装置16A、16Bと、非接触センサ17A、17Bとを有している。車輪12A、12Bは、車体10Bの前後にそれぞれ取り付けられる。本実施形態において、車輪12A、12Bは、図8に示す、車体10B内に搭載された電動機13A、13Bによって駆動される。このように、運搬機械10は、すべての車輪12A、12Bが駆動輪となる。また、本実施形態において、車輪12A、12Bは、それぞれ操舵輪となる。本実施形態において、車輪12A、12Bは、例えば、ソリッドタイヤである。このようにすることで、車輪12A、12Bが小径となるので、運搬機械10の高さが抑制される。運搬機械10は、車輪12Aから車輪12Bの方向及び車輪12Bから車輪12Aの方向のいずれにも走行することができる。車輪12A、12Bは、ソリッドタイヤに限定されるものではなく、例えば、空気入りタイヤ等であってもよい。また、車輪12A、12Bのうち、一方のみが駆動輪であってもよい。
なお、車輪12A及び車輪12Bの両方が操舵輪として機能可能な場合において、車輪12Aが前輪で車輪12Bが後輪となるように運搬機械10が進行する場合、車輪12A(前輪)だけが操舵され車輪12B(後輪)は操舵されなくてもよいし、車輪12B(後輪)だけが操舵され車輪12A(前輪)は操舵されなくてもよいし、車輪12A(前輪)及び車輪12B(後輪)の両方が操舵されてもよい。車輪12A及び車輪12Bの両方が操舵される場合、車輪12Aと車輪12Bとが同位相方向に操舵されてもよいし、車輪12Aと車輪12Bとが逆位相方向に操舵されてもよい。車輪12Aと車輪12Bとが同位相方向に操舵されることにより、例えば高速旋回時において安定して走行することができる。車輪12Aと車輪12Bとが逆位相方向に操舵されることにより、旋回半径を小さくすることができる。車輪12Bが前輪で車輪12Aが後輪となるように運搬機械10が進行する場合も同様である。
ベッセル11は、車体10Bの上方に搭載されて、車体10Bに支持される。車体10Bには、電動機13A、13Bに電力を供給するための蓄電器14が搭載される。本実施形態において、蓄電器14の外形は、直方体状である。蓄電器14は、車体10Bの前後にそれぞれ1個ずつ搭載される。このようにすることで、運搬機械10は、前後の質量のバランスが均等に近くなるので、安定して走行することができる。蓄電器14は、車体10Bに対して着脱可能に搭載される。蓄電器14から供給される電力によって、運搬機械10が有する電動機13A、13B及び電子機器が作動する。本実施形態においては、運搬機械10は電動としているが、内燃機関が動力源であってもよい。
車体10Bには、アンテナ15と、撮像装置16A、16Bと、非接触センサ17A、17Bとが取り付けられる。アンテナ15は、図6に示すアンテナ4A及び通信装置3Rを介して、管理装置3と無線通信する。撮像装置16A、16Bは、ベッセル11に積載された積荷、本実施形態では図3及び図4等に示す鉱石MRの状態(荷姿)を撮影する。撮像装置16A、16Bは、例えば、可視光を撮像するカメラであってもよいし、赤外線を撮像する赤外線カメラであってもよい。撮像装置16A、16Bは、それぞれ車体10Bの上面に取り付けられた支持柱16AS、16BSの先端に取り付けられる。このような構造により、それぞれの撮像装置16A、16Bは、ベッセル11の全体を上方から撮像することができるので、ベッセル11に積載された鉱石MRの状態を確実に撮像することができる。
非接触センサ17A、17Bは、車体10Bの前後にそれぞれ取り付けられる。非接触センサ17A、17Bは、運搬機械10の周囲、特に進行方向側に存在する物体を非接触で検出する。非接触センサ17A、17Bは、例えば、レーダー装置が用いられる。非接触センサ17A、17Bは、電波又は超音波等を発射して、物体で反射した電波を受信して、物体との相対的な距離及び方位を検出可能である。非接触センサ17A、17Bは、レーダー装置に限定されるものではない。非接触センサ17A、17Bは、例えば、レーザスキャナー、及び3次元距離センサの少なくとも1つを含んでもよい。
運搬機械10は、車体10Bの前後に、それぞれ撮像装置としての周辺監視カメラ17CA、17CBを備えている。周辺監視カメラ17CA、17CBは、車体10Bの周囲、特に前方を撮像して、車体10Bの周囲に存在する物体の形状を検出する。
車体10Bは、前後の間に凹部10BUを有している。凹部10BUは、車輪12Aと車輪12Bとの間に配置される。ベッセル11は、積込機械30によって積荷としての鉱石MRが積み込まれる部材である。ベッセル11の少なくとも一部は、凹部10BUに配置される。
本実施形態において、車体10Bの前後方向において車体10Bの中心部AXの一方側に配置される車体10Bの一部分と他方側に配置される車体10Bの一部分とは対称(前後対称)である。また、車体10Bの前後方向において車体10Bの中心部AXの一方側に配置されるベッセル11の一部分と他方側に配置されるベッセル11の一部分とは対称(前後対象)である。また、車体10B及びベッセル11は、平面視において、車体10Bの前後方向の中心軸に対して対称(左右対称)である。
ベッセル11は、底面11Bと、底面11Bと接続する4個の側面11SF、11SR、11SA、11SBとを含む。側面11SA、11SBは、底面11Bから垂直に立ち上がっている。側面11SF、11SRは、底面11Bに対してそれぞれ車輪12A、12B側に傾斜している。底面11Bと、4個の側面11SF、11SR、11SA、11SBとによって凹部11Uが形成される。凹部11Uには、積荷としての鉱石MRが積載される。車体10Bの凹部10BUは、ベッセル11の外形に沿った形状を有する。
図9は、本実施形態に係る運搬機械10が備えるベッセル11の支持構造を示す図である。図10は、本実施形態に係る運搬機械10の上面図である。図11は、本実施形態に係る運搬機械10がベッセルを傾斜させた状態を示す図である。ベッセル11は、テーブル11Tの上面に、ベッセル11を昇降させるアクチュエータとしての油圧シリンダ(ホイストシリンダ)11Cbを介して載置されている。
テーブル11Tは、車体10Bの凹部10BUの上面に設けられた一対の支持体11R、11Rを介して車体10Bに支持されている。支持体11Rは、車体10Bの幅方向に延在する棒状の部材である。それぞれの支持体11R、11Rは、テーブル11Tの車体10Bと対向する部分に設けられた一対の溝11TU、11TUに嵌め合わされている。溝11TU、11TUは、支持体11Rが延在する方向、すなわち、車体10Bの幅方向に向かって設けられている。このような構造により、テーブル11Tは、支持体11R、11Rに沿って移動する。すなわち、テーブル11Tは、運搬機械10の車体10Bの幅方向に向かって移動することができる。
テーブル11Tと車体10Bとの間には、テーブル11Tを車体10Bの幅方向に移動させるためのアクチュエータとして、油圧シリンダ(スライド用シリンダ)11Caが取り付けられている。油圧シリンダ11Caが伸縮することにより、テーブル11Tは、車体10Bの幅方向の両側に移動する。テーブル11Tにはベッセル11が取り付けられているので、図10に示すように、ベッセル11も、テーブル11Tとともに車体10Bの幅方向Wの両側に移動することができる。
積込機械30から鉱石MRがベッセル11に積載されるときには、図5に示すように、ベッセル11が積込機械30側に移動する。このようにすることで、運搬機械10は、鉱石MRを確実にベッセル11に積載することができる。また、ベッセル11の一方に鉱石MRが偏って積載された場合、運搬機械10は、ベッセル11を車体10Bの幅方向に往復運動させることにより、鉱石MRをベッセル11の全体に分散させ、鉱石MRの偏りを抑制することができる。
ベッセル11は、油圧シリンダ11Cbが伸縮することにより昇降する。図11は、油圧シリンダ11Cbが伸びてベッセル11が傾いた状態を示している。ベッセル11は、図11に示すように、車体10Bの幅方向Wの一方側の軸線Zbを中心として揺動する。軸線Zbは、テーブル11Tに含まれており、かつ車体10Bの前後方向と平行である。油圧シリンダ11Cbが伸びると、ベッセル11は、軸線Zbとは反対側が高くなり、車体10Bの凹部10BUから突出する。その結果、ベッセル11が傾斜し、軸線Zb側の蓋11CVが開いて、軸線Zb側から鉱石MRが排出される。油圧シリンダ11Cbが縮むと、ベッセル11は車体10Bの凹部10BUに収まる。蓋11CVは、図示しないリンク機構により、ベッセル11が昇降する動作に連動する。
本実施形態では、ベッセル11は車体10Bの幅方向Wの一方側に存在する軸線Zbのみを中心として揺動するが、これに限定されない。例えば、ベッセル11は、車体10Bの一方側の軸線Zbに加え、他方側に存在し、かつ車体10Bの前後方向と平行なもう1つの軸線を中心として揺動してもよい。このようにすれば、運搬機械10は、車体10Bの幅方向Wの両側から鉱石MRを排出することができる。
図12は、運搬機械10が備える制御装置70を示すブロック図の一例である。運搬機械10が備える制御装置70は、運搬機械10の走行及びベッセル11の幅方向における移動及び昇降を制御する。制御装置70は、処理装置71と記憶装置72とを備える。処理装置71には、撮像装置16A、16B、非接触センサ17A、17B、周辺監視カメラ17CA、17CB、質量センサ18、読取装置19、測域センサ20、ジャイロセンサ21、速度センサ22、加速度センサ23、駆動制御装置24、通信装置25及び記憶装置72等が接続されている。
撮像装置16A、16B及び周辺監視カメラ17CA、17CBは、CCD又はCMOSのような撮像素子を含み、物体の光学像を取得して、その物体の外形を検出可能である。本実施形態において、撮像装置16A、16B及び周辺監視カメラ17CA、17CBの少なくとも一方は、ステレオカメラを含み、物体の3次元の外形データを取得可能である。撮像装置16A、16B及び周辺監視カメラ17CA、17CBは、撮像した結果を処理装置71に出力する。処理装置71は、撮像装置16A、16Bの検出結果を取得し、これに基づいて、ベッセル11における鉱石MRの状態に関する情報を取得する。本実施形態において、ベッセル11に積載された鉱石MRの外形は、レーザスキャナー及び3次元距離センサの少なくとも1つを用いて検出されてもよい。
非接触センサ17A、17Bは、処理装置71と接続され、検出結果を処理装置71に出力する。非接触センサ17A、17Bは、取得した結果を処理装置71に出力する。質量センサ18は、ベッセル11及びベッセル11に積載された鉱石MRの質量を検出する。ベッセル11の質量は予め分かっているので、質量センサ18の検出結果からベッセル11の質量を減算すれば、ベッセル11に積載された鉱石MRの質量が得られる。質量センサ18は、処理装置71と接続されており、検出結果を処理装置71に出力する。処理装置71は、質量センサ18の検出結果に基づいて、ベッセル11に積み込まれた鉱石MRの質量及びベッセル11に鉱石MRが積載されているか否かに関する情報を求める。質量センサ18は、例えば、ベッセル11とテーブル11Tとの間に設けられるひずみゲージ式ロードセルでもよいし、油圧シリンダ11Cbの油圧を検出する圧力センサであってもよい。
読取装置19は、ドリフトDRに設けられたマークの識別情報(固有情報)を検出する。マークは、ドリフトDRに沿って複数配置されている。マークは、バーコード及び2次元コードのような識別子(コード)でもよいし、ICタグ又はRFIDのような識別子(タグ)でもよい。読取装置19は、処理装置71と接続され、検出結果を処理装置71に出力する。
測域センサ20は、運搬機械10の車体10Bの外側、例えば、前方及び後方に取り付けられて、運搬機械10の周囲における空間の物理的な形状データを取得して出力する。ジャイロセンサ21は、運搬機械10の方位(方位変化量)を検出し、検出結果を処理装置71に出力する。速度センサ22は、運搬機械10の走行速度を検出し、検出結果を処理装置71に出力する。加速度センサ23は、運搬機械10の加速度を検出し、検出結果を処理装置71に出力する。駆動制御装置24は、例えば、マイクロコンピュータである。駆動制御装置24は、処理装置71からの指令に基づき、走行用の電動機13A、13B、制動システム13BS、操舵システム13SS及び油圧ポンプ13Pを駆動する電動機13Cの動作を制御する。油圧ポンプ13Pは、油圧シリンダ11Ca、11Cbに作動油を供給する装置である。本実施形態において、運搬機械10は、走行用の電動機13A、13Bによって走行するが、これに限定されない。例えば、運搬機械10は、油圧ポンプ13Pから吐出される作動油によって駆動する油圧モータによって走行してもよい。制動システム13BS及び操舵システム13SSも、電動であってもよいし、油圧を利用して動作するものであってもよい。
本実施形態において、ドリフトDRにおいてマークが配置されている位置(絶対位置)に関する情報は、事前に測定された既知な情報である。マークの絶対位置に関する情報は、記憶装置72に記憶されている。処理装置71は、運搬機械10に設けられている読取装置19で検出したマークの検出結果(マークの識別情報)と、記憶装置72の記憶情報とに基づいて、ドリフトDRにおける運搬機械10の絶対位置を求めることができる。
測域センサ20は、空間の物理的な形状データを出力可能な走査型の光波距離計を含む。測域センサ20は、例えば、レーザスキャナー及び3次元距離センサの少なくとも1つを含み、2次元又は3次元の空間データを取得し、出力することができる。測域センサ20は、積込機械30及びドリフトDRの壁面の少なくとも一方を検出する。本実施形態において、測域センサ20は、積込機械30の形状データ、ドリフトDRの壁面の形状データ及びベッセル11の積荷の形状データの少なくとも1つを取得可能である。また、測域センサ20は、積込機械30との相対位置(相対的な距離及び方位)及びドリフトDRの壁面との相対位置の少なくとも一方を検出可能である。測域センサ20は、検出した情報を処理装置71に出力する。
本実施形態において、ドリフトDRの壁面に関する情報が予め求められており、記憶装置72に記憶されている。すなわち、ドリフトDRの壁面に関する情報は、事前に測定された既知の情報である。ドリフトDRの壁面に関する情報は、壁面の複数の部分におけるそれぞれの形状に関する情報及びそれら壁面の部分それぞれの絶対位置に関する情報を含む。記憶装置72には、壁面の複数の部分の形状と、その形状を有する壁面の部分におけるそれぞれの絶対位置との関係が記憶されている。処理装置71は、運搬機械10に設けられている測域センサ20が検出したドリフトDRの壁面の検出結果(壁面の形状データ)と、記憶装置72の記憶情報とに基づいて、ドリフトDRにおける運搬機械10の絶対位置及び方位を求めることができる。
処理装置71は、読取装置19及び測域センサ20の少なくとも一方を用いて導出された運搬機械10の現在位置(絶対位置)に基づいて、坑内MIの決められた経路(目標経路)にしたがって運搬機械10が走行するように、ドリフトDRを走行する運搬機械10を制御する。
処理装置71は、例えば、CPUを含むマイクロコンピュータである。処理装置71は、非接触センサ17A、17B、読取装置19及び測域センサ20等の検出結果に基づいて、駆動制御装置24を介して走行用の電動機13A、13B、制動システム13BS及び車輪12A、12Bの操舵システム13SSを制御する。そして、処理装置71は、所定の走行速度及び加速度で、前述した目標経路にしたがって運搬機械10を走行させる。
記憶装置72は、RAM、ROM、フラッシュメモリ及びハードディスクドライブの少なくとも1つを含み、処理装置71と接続される。記憶装置72は、処理装置71が運搬機械10を自律走行させるために必要なコンピュータプログラム及び各種の情報を記憶している。通信装置25は、処理装置71と接続され、積込機械30に搭載された通信装置及び管理装置3の少なくとも一方との間でデータ通信する。
本実施形態において、運搬機械10は、無人車両であり、自律走行が可能である。通信装置25は、管理装置3及び積込機械30の少なくとも一方から送信された情報(指令信号を含む)を受信可能である。また、通信装置25は、撮像装置16A、16B、周辺監視カメラ17CA、17CB、速度センサ22及び加速度センサ23等が検出した情報を管理装置3及び積込機械30の少なくとも一方に送信可能である。運搬機械10は、周辺監視カメラ17CA、17CB及び非接触センサ17A、17Bの少なくとも一方が取得した運搬機械10の周辺の情報を管理装置3に送信し、この周辺の情報を基に、オペレータが運搬機械10を遠隔操作することもできる。このように、運搬機械10は、自律走行のみならず、オペレータの操作によっても走行し、ベッセル11をスライド及び昇降させることができる。
例えば、速度センサ22及び加速度センサ23等が検出した情報を取得した管理装置3は、この情報を運搬機械10の稼働情報として、例えば、記憶装置3Mに蓄積する。また、周辺監視カメラ17CA、17CBが撮像した情報を管理装置3が取得した場合、オペレータは、周辺監視カメラ17CA、17CBが撮像した運搬機械10の周辺の画像を視認しながら、運搬機械10を操作することもできる。さらに、質量センサ18が検出したベッセル11の鉱石MRの質量に関する情報を取得した積込機械30は、この情報に基づいて、ベッセル11への鉱石MRの積載量を制御することもできる。次に、積込機械30について説明する。
<積込機械>
図13は、本実施形態に係る積込機械30の側面図である。図14は、本実施形態に係る積込機械30の上面図である。図15は、本実施形態に係る積込機械30の正面図である。図13は、積込機械30が地山RMの鉱石MRを掘削し、掘削した鉱石MRを搬送する状態を示している。積込機械30は、クロスカットCR内で鉱石MRの地山RMを掘削し、掘削した鉱石MRを図7及び図8等に示す運搬機械10のベッセル11に積載する。積込機械30の車体30Bには、フィーダー31と、支持機構32と、走行装置34と、貫入部材35と、回転体36と、岩石ガード37とが取り付けられる。貫入部材35が取り付けられている側が積込機械30の前方であり、貫入部材35が取り付けられている側とは反対側が積込機械30の後方である。なお、積込機械30は、回転体36及び岩石ガード37を備えていなくてもよい。
フィーダー31は、地山RMから鉱石MRを積み込んで、ドローポイントDPの地山RMから離れる方向に搬送した後、排出する。すなわち、フィーダー31は、積込機械30の前方で積み込まれた鉱石MRを後方に向かって搬送し、後方から排出する。フィーダー31は、例えば、無端の搬送体として搬送ベルトを用い、これを一対のローラーに掛け回して回転させることにより、積込側31Fから排出側31Eに鉱石MRを搬送する。積込側31Fは、地山RM側であり、排出側31Eは積込側31Fとは反対側である。図14に示すように、フィーダー31は、幅方向Wの両側に、一対のガイド31G、31Gが設けられている。一対のガイド31G、31Gは、フィーダー31から搬送途中の鉱石MRが脱落することを抑制する。幅方向Wは、フィーダー31が鉱石MRを搬送する方向Fと直交する方向であり、フィーダー31が備える一対のローラーの回転中心軸と平行な方向である。フィーダー31の幅方向Wは、車体30Bの幅方向でもある。フィーダー31は、排出側31Eに、鉱石MRを運搬機械10のベッセル11内に導くためのガイド39を備えている。フィーダー31は、車体30Bの前方、すなわちフィーダー31の積込側31Fの軸線を中心として揺動する。フィーダー31は、地面Gに対する角度αを変更することができる。角度αは、フィーダー31が備える一対のローラーの回転中心軸を結ぶ直線LCと、地面Gとのなす角度である。
フィーダー31に鉱石MRを積み込むのは、回転ローラー33である。回転ローラー33は、フィーダー31の積込側31F、すなわちフィーダー31の前方で回転しながら鉱石MRをフィーダー31に送り込む。このため、鉱石の掘削時において、回転ローラー33は、ブーム32aとアーム32bとを備える支持機構32によってフィーダー31の積込側31Fに設置される。回転ローラー33は、所定の軸線Zrの周りを回転する回転部材33D及び回転部材33Dの外周部に設けられて鉱石MRと接触して掘削する接触部材33Bとを有する。本実施形態において、接触部材33Bは、回転部材33Dからその径方向外側に突出し、かつ回転部材33Dの周方向に沿って所定の間隔で設けられた複数の板状部材である。接触部材33Bの板面と平行な平面は、軸線Zrとは直交しない。本実施形態において、接触部材33Bの板面と平行な平面は、軸線Zrと平行になっている。接触部材33Bは、先端部、すなわち回転部材33D側とは反対側の端部が、掘削対象である地山RMに食い込むように曲げられていてもよい。
回転ローラー33が回転することにより、接触部材33Bは、上方Uに位置する場合にフィーダー31から遠ざかり、下方Dに位置する場合にフィーダー31に近づく。この動きによって、複数の接触部材33Bは、地山RMから鉱石MRを掘削してフィーダー31に送り込む。複数の接触部材33Bは、回転部材33Dとともに回転しているので、連続して鉱石MRを掘削して、フィーダー31に送り込むことができる。
回転ローラー33を回転可能に支持する支持機構32は、車体30Bに取り付けられるブーム32aと、ブーム32aに連結されるアーム32bとを有する。ブーム32aは、例えば、シャフト38Aを介して積込機械30の車体30Bに取り付けられて、シャフト38Aを中心として車体30Bに対して揺動する。アーム32bは、例えば、シャフト38Bを介してブーム32aの車体30Bとは反対側の端部と連結されて、ブーム32aに対してシャフト38Bを中心として揺動する。アーム32bは、ブーム32aと連結されている端部とは反対側の端部で、回転ローラー33を回転可能に支持する。ブーム32a及びアーム32bは、例えば、アクチュエータとしての油圧シリンダによって駆動されて揺動してもよいし、電動機又は油圧モータによって駆動されて揺動してもよい。
ブーム32aは、車体30Bに対して第1の軸線Zaの周りを揺動し、アーム32bは、第1の軸線Zaと平行な軸線Za’の周りを揺動する。第1の軸線Zaは、ブーム32aと車体30Bとを連結するシャフト38Aの中心軸であり、第1の軸線Zaと平行な軸線Za’は、ブーム32aとアーム32bとを連結するシャフト38Bの中心軸である。本実施形態において、アーム32bは、さらに、第1の軸線Zaと直交する第2の軸線と平行な軸線の周りを揺動してもよい。このようにすると、回転ローラー33が移動できる範囲が大きくなるので、掘削作業の自由度が向上する。
ブーム32aは、車体30Bの幅方向Wの両側、本実施形態においてはフィーダー31の幅方向Wの両側に設けられた一対の棒状部材(第1棒状部材)である。アーム32bは、それぞれのブーム32aに連結された一対の棒状部材(第2棒状部材)である。図14に示すように、一対のアーム32bは、両者の間に回転ローラー33を支持している。本実施形態において、一対のブーム32aは、梁32Jによって連結されている。このような構造により、支持機構32の剛性が向上するので、鉱石MRの掘削時には、支持機構32が回転ローラー33を確実に地山RMに押し付けることができるので、鉱石MRの掘削効率の低下が抑制される。また、一対のアーム32bを棒状又は板状の部材で連結してもよい。このようにすれば、支持機構32の剛性がさらに向上するのでより好ましい。
支持機構32は、ブーム32aが車体30Bに対して揺動し、アーム32bがブーム32aに対して揺動することにより、回転ローラー33が移動する。支持機構32は、回転ローラー33を移動させることにより、回転ローラー33とフィーダー31及び車体30Bとの相対的な位置関係を変更することができる。また、支持機構32は、回転ローラー33を移動させることによって、地山RMの異なる位置を掘削したり、回転ローラー33を地山RMからフィーダー31に向かって移動させることにより地山RMから鉱石MRをフィーダー31側に掻き込んだりすることができる。また、例えば、積込機械30の走行中、前方に物体が存在して走行の妨げとなっている場合において、支持機構32は、回転ローラー33を用いて物体をフィーダー31に向かって掻き込んでからフィーダー31に送り込むことにより、積込機械30の進行方向前方の物体を取り除くこともできる。
本実施形態において、回転ローラー33は、図14に示すように、アーム32bの先端部に取り付けられた電動機33Mによって回転する。回転ローラー33を駆動させる装置は電動機33Mに限定されるものではなく、例えば、油圧モータであってもよい。また、電動機33Mが取り付けられる箇所はアーム32bの先端部に限定されるものではない。
車体30Bには、これを走行させる走行装置34が取り付けられている。走行装置34は、車体30Bの幅方向両側に設けられた一対の履帯34Cと、車体30Bの幅方向両側に設けられた一対の駆動輪34Dと、車体30Bの幅方向両側に設けられた一対の従動輪34Sとを含む。駆動輪34Dと従動輪34Sとに履帯34Cが掛け回されている。それぞれの駆動輪34Dは、別個に独立して駆動される。本実施形態において、積込機械30は、それぞれの駆動輪34Dに走行用の電動機を備えている。このような構造により、一対の履帯34C、34Cは、別個独立に駆動される。
車体30Bには、貫入部材35が取り付けられる。貫入部材35は、車体30Bのフィーダー31の積込側31Fに配置される。貫入部材35は、錐体の形状をした部材であり、本実施形態では四角錐の形状である。貫入部材35の形状は、四角錐の形状に限定されるものではなく、例えば、三角錐の形状であってもよい。貫入部材35は、錐体の頂部が車体30Bの前方になるように、車体30Bに取り付けられる。このようにすることで、積込機械30が地山RMに貫入するときには、貫入部材35が頂部から地山RMに貫入する。
貫入部材35は、積込機械30の掘削時において、錐体の頂部から地山RMに貫入して、地山RMを突き崩す。貫入部材35が地山RMに貫入する場合、走行装置34は、フィーダー31及び貫入部材35が取り付けられた車体30Bを前方に走行させ、かつフィーダー31を動作させながら貫入部材35を地山RMに貫入させる。このとき、フィーダー31は、上方の搬送ベルトが積込側31Fから排出側31Eに向かって移動する。積込機械30は、貫入時において、このようにフィーダー31を動作させることで、フィーダー31の駆動力を貫入に利用できるので、地山RMにより深く貫入することができる。
車体30Bの幅方向両側、すなわち、フィーダー31の搬送方向と直交する方向における両側には、一対の回転体36が設けられる。一対の回転体36は、走行装置34の前方であってフィーダー31の積込側31Fに配置される。回転体36は、所定の軸線周りを回転するドラム36Dの周囲に複数の羽根36Bが所定の間隔で設けられた構造体である。回転体36は、例えば、電動機によって駆動される。回転体36は、フィーダー31を駆動する電動機によって駆動されてもよい。この場合、フィーダー31の駆動と回転体36の駆動とをクラッチ等で切り替えられるようにしてもよい。例えば、クラッチを係合させた場合にはフィーダー31と回転体36とが同時に回転し、クラッチを開放するとフィーダー31のみが回転するようにすることができる。
回転体36は、貫入部材35が地山RMに貫入するときには、積込機械30の車体30Bを地面Gに押し付ける方向に回転する。具体的には、回転体36は、地山RM側の羽根36Bが下方Dから上方Uに向かうように、また、走行装置34側の羽根36Bが上方Uから下方Dに向かうように回転する。このようにすることで、回転体36は、地山RM側の羽根36Bが地山RMに接触すると、車体30Bの前方を下方Dに向かって押し下げるので、走行装置34の履帯34Cが地面Gに対してより強く押し付けられる。その結果、履帯34Cと地面Gとの間の摩擦力が増加するので、走行装置34は、貫入部材35を地山RMに貫入させやすくなる。積込機械30の地山RMへの貫入が終了し、回転ローラー33による掘削及びフィーダー31による積み込みが開始されるときには、回転体36の回転は停止する。
回転体36と走行装置34の履帯34Cとの間には、岩石ガード37が設けられる。本実施形態において、岩石ガード37は、車体30Bに取り付けられている。岩石ガード37は、例えば、掘削中に回転ローラー33から飛来する鉱石MRから走行装置34を保護したり、積込機械30の走行時において坑道内に存在する岩石等から走行装置34を保護したりする。岩石ガード37によって、走行装置34の耐久性低下が抑制される。
本実施形態において、車体30Bは、車体30Bの幅方向外側に向かって伸びて、ドローポイントDPにつながるクロスカットCRの壁面CRWに押し付けられる固定装置30Fを有する。本実施形態では、固定装置30Fを車体30Bの幅方向両側にそれぞれ1個ずつ、対向するように設けてあるが、固定装置30Fの数及び設置箇所はこれに限定されるものではない。例えば、固定装置30Fは、車体30Bの上方に設けられていてもよい。本実施形態において、固定装置30Fは、例えば、油圧シリンダ30FCと、油圧シリンダ30FCのピストンの先端に設けられた押付部材30FPとを有する。積込機械30の掘削時及び鉱石MRの搬送時において、固定装置30Fは、積込機械30をクロスカットCR内に固定する。具体的には、固定装置30Fは、油圧シリンダ30FCを伸ばして押付部材30FPを壁面CRWに押し付けることにより、これらを介してクロスカットCR内に積込機械30の車体30Bを固定する。このようにすることで、積込機械30が地山RMを掘削するときに発生する反力は、固定装置30Fを介してクロスカットCRが受けることができる。その結果、積込機械30は、姿勢が安定するので、安定して地山RMを掘削することができる。固定装置30Fと車体30Bとの間に油圧シリンダを設け、固定装置30FをクロスカットCRの壁面CRWに固定した後に、油圧シリンダの駆動力を利用して車体を貫入させてもよい。
車体30Bの幅方向両側又は上方に固定装置30Fを設ける場合、積込機械30の貫入時には、固定装置30Fによる固定は解除される。本実施形態では、油圧シリンダ30FCが縮んだ状態となり、押付部材30FPが壁面CRWを押さないようになる。積込機械30の掘削時において、固定装置30Fが動作して、積込機械30をクロスカットCR内に固定する。掘削中、積込機械30が地山RMに対してさらに貫入したり、地山RMから遠ざかったりする場合には、固定装置30Fによる固定が解除された後に、走行装置34が積込機械30を移動させる。
図13に示すように、固定装置30Fを車体30Bの後方、すなわち、フィーダー31の排出側31Eに設け、クロスカットCR内の地面Gから突出させた反力受けTGと車体30Bとの間に固定装置30Fを介在させて、前述した反力を受けてもよい。掘削時においては、積込機械30の前後方向の反力が大きいが、このような構造にすることにより、より効果的に掘削時の反力を受けることができる。また、積込機械30は、固定装置30Fを伸ばすことにより、掘削時における積込機械30の位置の調整をすることもできる。なお、積込機械30は、固定装置30Fを備えていなくてもよい。
本実施形態において、積込機械30は、フィーダー31に鉱石MRが積み込まれる部分(積込側31F)と、フィーダー31から鉱石MRが排出される部分(排出側31E)との間に、鉱石MRの排出と排出の停止とを切り替える切替機構80が設けられる。切替機構80は、支持体81と、蓋82と、蓋82を開閉するアクチュエータとしての油圧シリンダ83とを含む。支持体81は、図15に示すように、一端部が車体30Bの幅方向両側、具体的にはフィーダー31の幅方向両側に取り付けられる2本の脚部81Rと、2本の脚部81Rの他端部でこれらを連結する連結部81Cとを含む、門型の部材である。2本の脚部81Rと連結部81Cとで囲まれる部分を、鉱石MRが通過する。
蓋82は、板状の部材であり、2本の脚部81Rと連結部81Cとで囲まれる部分に設けられる。蓋82は、支持体81の連結部81C側に存在する所定の軸線Zg周りを回動する。蓋82と支持体81の連結部81Cとの間には、油圧シリンダ83が設けられる。油圧シリンダ83が伸縮することにより、蓋82は、2本の脚部81Rと連結部81Cとで囲まれる部分を開閉する。蓋82が開くことによって、2本の脚部81Rと連結部81Cとで囲まれる部分を鉱石MRが通過する。蓋82が閉じることによって、鉱石MRは、2本の脚部81Rと連結部81Cとで囲まれる部分を通過しない。このようにすることで、積込機械30は、フィーダー31からの鉱石MRの排出量を調整することができる。
本実施形態において、積込機械30は、情報収集装置40を備える。情報収集装置40は、車体30Bの積込側31F、すなわち前方に取り付けられる。より具体的には、情報収集装置40が情報を収集する部分が、車体30Bの積込側31F、すなわち前方を向いて取り付けられる。情報収集装置40は、3次元の空間データを取得し、出力する装置である。情報収集装置40は、地山RMの鉱石MRの状態に関する情報としての鉱石情報を取得する。鉱石情報は、地山RMの3次元の空間データである。
情報収集装置40は、例えばカメラ、ステレオカメラ、レーザスキャナー又は3次元距離センサ等である。情報収集装置40が情報を収集する部分は、カメラ又はステレオカメラの場合はレンズ、レーザスキャナー及び3次元距離センサの場合は受光部である。本実施形態において、情報収集装置40としては、ステレオカメラが用いられる。本実施形態において、積込機械30は、3個の情報収集装置40を支持機構32の梁32Jに取り付けている。すなわち、複数の情報収集装置40は、車体30Bの幅方向において複数箇所に設置される。このようにすることで、積込機械30は、1つの情報収集装置40の撮像対象がアーム32bに隠れる場合でも、他の情報収集装置40によって撮像対象の鉱石情報を得ることができる。
本実施形態において、積込機械30が備える制御装置は、情報収集装置40が収集した鉱石情報を用いて積込機械30の動作を制御する。例えば、前述した制御装置は、情報収集装置40が取得した鉱石情報に基づいて、フィーダー31、回転ローラー33、支持機構32及び走行装置34の少なくとも1つを制御する。このようにすることで、積込機械30は、地山RM及び鉱石MRの状態に応じて柔軟に動作することができるので、例えば、鉱山Mの生産効率が向上する。
本実施形態において、積込機械30は、車体30Bの排出側31E、すなわち後方に情報収集装置41を備える。より具体的には情報収集装置41が情報を収集する部分が、車体30Bの排出側31E、すなわち後方を向いて取り付けられる。情報収集装置41は、前述した情報収集装置40と同様に、3次元の空間データを取得し、出力する装置である。情報収集装置41は、図4及び図5に示す運搬機械10のベッセル11に積載された鉱石MRの状態に関する情報としての積荷情報を取得する。積荷情報は、鉱石MRの3次元の空間データである。
情報収集装置41は、前述した情報収集装置40と同様に、例えばカメラ、ステレオカメラ、レーザスキャナー又は3次元距離センサ等である。情報収集装置41が情報を収集する部分は、カメラ又はステレオカメラの場合はレンズ、レーザスキャナー及び3次元距離センサの場合は受光部である。本実施形態において、情報収集装置41としては、ステレオカメラが用いられる。本実施形態において、積込機械30は、2個の情報収集装置41をフィーダー31の幅方向両側に取り付けている。すなわち、複数の情報収集装置41は、車体30Bの幅方向において複数箇所に設置される。このようにすることで、積込機械30は、1つの情報収集装置41の撮像対象が坑道の影等に隠れる場合でも、他の情報収集装置41によって撮像対象の鉱石情報を得ることができる。
本実施形態において、積込機械30が備える制御装置は、情報収集装置41が収集した積荷情報を用いて積込機械30及び運搬機械10の少なくとも一方を制御する。例えば、前述した制御装置は、情報収集装置41が取得した積荷情報に基づいて、回転ローラー33、フィーダー31又は切替機構80等の動作を制御したり、運搬機械10が備えるベッセル11の位置又はベッセル11の運動を制御したりする。このようにすることで、積込機械30は、運搬機械10のベッセル11に積載された鉱石MRの状態に応じて、鉱石MRの搬送量を変更したり、ベッセル11の位置を調整したりすることができるので、例えば、鉱山Mの生産効率が向上する。
図16は、本実施形態に係る積込機械30が走行するときの姿勢を示す図である。積込機械30が走行する場合、フィーダー31地面Gに対する角度αは、積込機械30が鉱石MRを掘削及び搬送する場合(図13参照)と比較して小さくなる。すなわち、フィーダー31が備える一対のローラーの回転中心軸を結ぶ直線LCは、地面Gに対してより平行に近くなる。このようにすると、積込機械30の前方、すなわち進行方向側に配置されるフィーダー31の積込側31Fが地面と離れるので、積込機械30の走行時にフィーダー31と地面Gとが干渉する可能性を低減できる。
図16に示すように、積込機械30が走行する場合、支持機構32は折り畳まれる。そして、回転ローラー33は、積込機械30が鉱石MRを掘削及び搬送する場合(図13参照)と比較して、よりフィーダー31に近い位置に移動する。このため、積込機械30は、重心から車体30Bの前後方向に離れた位置に存在していた回転ローラー33が、より重心に近い位置に移動することになるので、前後の質量のバランスが向上する。その結果、積込機械30は、安定して走行することができる。
図17は、本実施形態に係る積込機械30が備える制御装置75を示すブロック図の一例である。積込機械30が備える制御装置75は、フィーダー31、支持機構32、回転ローラー33、走行装置34、回転体36及び切替機構80を制御する。制御装置70は、処理装置76と記憶装置77とを備える。処理装置76には、情報収集装置40に対応する前方撮像装置40C、情報収集装置41に対応する後方撮像装置41C、非接触センサ42、読取装置43、測域センサ44、ジャイロセンサ45、速度センサ46、加速度センサ47、駆動制御装置48、通信装置52及び記憶装置77等が接続されている。非接触センサ42、読取装置43、測域センサ44は、積込機械30の車体30Bの外部に取り付けられる。
前方撮像装置40C及び後方撮像装置41Cは、CCD又はCMOSのような撮像素子を含み、物体の光学像を取得して、その物体の外形を検出可能である。本実施形態において、前方撮像装置40C及び後方撮像装置41Cは、ステレオカメラを含み、物体の3次元の外形データを取得可能である。前方撮像装置40C及び後方撮像装置41Cは、撮像した結果を処理装置76に出力する。処理装置76は、前方撮像装置40Cの検出結果を取得し、これに基づいて前述した鉱石情報を得る。また、処理装置76は、後方撮像装置41Cの検出結果を取得し、これに基づいて前述した積荷情報を得る。本実施形態において、地山RMの鉱石MRの外形及びベッセル11に積載された鉱石MRの外形は、レーザスキャナー及び3次元距離センサの少なくとも1つを用いて検出されてもよい。
非接触センサ42は、積込機械30の周囲に存在する物体を検出する。非接触センサ42は、処理装置76と接続され、検出結果を処理装置76に出力する。非接触センサ42は、取得した結果を処理装置76に出力する。読取装置43は、ドリフトDR又はクロスカットCRに設けられたマークの識別情報(固有情報)を検出する。マークは、ドリフトDR又はクロスカットCRに沿って複数配置されている。読取装置43は、処理装置76と接続され、検出結果を処理装置76に出力する。マークは、バーコード及び2次元コードのような識別子(コード)でもよいし、ICタグ又はRFIDのような識別子(タグ)でもよい。
本実施形態において、ドリフトDR又はクロスカットCRにおいてマークが配置されている位置(絶対位置)に関する情報は、事前に測定された既知な情報である。マークの絶対位置に関する情報は、記憶装置77に記憶されている。処理装置76は、積込機械30に設けられている読取装置43で検出したマークの検出結果(マークの識別情報)と、記憶装置77の記憶情報とに基づいて、ドリフトDR又はクロスカットCRにおける積込機械30の絶対位置を求めることができる。
測域センサ44は、空間の物理的な形状データを取得して出力する。ジャイロセンサ45は、積込機械30の方位(方位変化量)を検出し、検出結果を処理装置76に出力する。速度センサ46は、積込機械30の走行速度を検出し、検出結果を処理装置76に出力する。加速度センサ47は、積込機械30の加速度を検出し、検出結果を処理装置76に出力する。駆動制御装置48は、例えば、マイクロコンピュータである。駆動制御装置48は、処理装置76からの指令に基づき、図13に示す回転ローラー33を駆動する電動機33M、走行装置34が備える電動機48L、48R、支持機構32のブーム32aを揺動させる電動機49、アーム32bを揺動させる電動機50、フィーダー31を駆動する電動機51F、回転体36を回転させる電動機51R、油圧ポンプ85を駆動する電動機86の動作を制御する。油圧ポンプ85は、切替機構80が備える油圧シリンダ83、フィーダー31の姿勢を変更するアクチュエータとしての油圧シリンダ87及び固定装置30Fの油圧シリンダ30FCに作動油を供給する装置である。ブーム32a及びアーム32bは、油圧シリンダによって揺動させられてもよい。この場合、ブーム32aを揺動させるブームシリンダ及びアーム32bを揺動させるアームシリンダには、油圧ポンプ85から作動油が供給される。電動機48Lは、図14に示す一方の履帯34Cを駆動し、電動機48Rは、他方の履帯34Cを駆動する。電動機48Lは、図14に示す一方の履帯34Cを駆動し、電動機48Rは、他方の履帯34Cを駆動する。
本実施形態において、積込機械30は、走行装置34が備える電動機48L、48Rによって走行するが、これに限定されない。例えば、積込機械30は、油圧ポンプ85から吐出される作動油によって駆動する油圧モータによって走行してもよい。また、支持機構32のブーム32a及びアーム32b、回転ローター33及び回転体36並びにフィーダー31も、油圧ポンプ85から吐出される作動油によって駆動する油圧シリンダ又は油圧モータによって駆動されてもよい。
測域センサ44は、空間の物理的な形状データを出力可能な走査型の光波距離計を含む。測域センサ44は、例えば、レーザレンジファインダ、レーザスキャナー及び3次元スキャナの少なくとも1つを含み、3次元の空間データを取得し、出力することができる。測域センサ44は、運搬機械10、ドリフトDR及びクロスカットCRの壁面の少なくとも1つを検出する。本実施形態において、測域センサ44は、運搬機械10の形状データ、ドリフトDR又はクロスカットCRの壁面の形状データ及び運搬機械10が備えるベッセル11の積荷の形状データの少なくとも1つを取得可能である。また、測域センサ44は、運搬機械10との相対位置(相対的な距離及び方位)及びドリフトDR又はクロスカットCRの壁面との相対位置の少なくとも一方を検出可能である。測域センサ44は、検出した情報を処理装置76に出力する。
本実施形態において、ドリフトDR及びクロスカットCRの壁面に関する情報が予め求められており、記憶装置77に記憶されている。すなわち、ドリフトDRの壁面に関する情報は、事前に測定された既知の情報である。ドリフトDRの壁面に関する情報は、壁面の複数の部分におけるそれぞれの形状に関する情報及びそれら壁面の部分それぞれの絶対位置に関する情報を含む。記憶装置77には、壁面の複数の部分の形状と、その形状を有する壁面の部分におけるそれぞれの絶対位置との関係が記憶されている。処理装置76は、積込機械30に設けられている測域センサ20が検出したドリフトDRの壁面の検出結果(壁面の形状データ)と、記憶装置77の記憶情報とに基づいて、ドリフトDRにおける積込機械30の絶対位置及び方位を求めることができる。
処理装置76は、読取装置43及び測域センサ44の少なくとも一方を用いて導出された積込機械30の現在位置(絶対位置)に基づいて、坑内MIの決められた経路(目標経路)にしたがって積込機械30が走行するように、ドリフトDR又はクロスカットCRを走行する積込機械30を制御する。このとき、処理装置76は、積込機械30が指定されたドローポイントDPに配置されるように、これを制御する。
処理装置76は、例えば、CPUを含むマイクロコンピュータである。処理装置76は、前方撮像装置40C、後方撮像装置41C、非接触センサ42、読取装置43等の検出結果に基づいて、駆動制御装置48を介して走行装置34が備える電動機48L、48Rを制御する。そして、処理装置76は、所定の走行速度及び加速度で、前述した目標経路にしたがって積込機械30を走行させる。
記憶装置77は、RAM、ROM、フラッシュメモリ及びハードディスクドライブの少なくとも1つを含み、処理装置76と接続される。記憶装置77は、処理装置76が積込機械30を自律走行させるために必要なコンピュータプログラム及び各種の情報を記憶している。通信装置52は、処理装置76と接続され、運搬機械10に搭載された通信装置及び管理装置3の少なくとも一方との間でデータ通信する。
本実施形態において、積込機械30は、無人車両であり、自律走行が可能である。通信装置52は、管理装置3及び運搬機械10の少なくとも一方から送信された情報(指令信号を含む)を、アンテナ53を介して受信可能である。また、通信装置52は、前方撮像装置40C、後方撮像装置41C、非接触センサ42、読取装置43、測域センサ44、ジャイロセンサ45、速度センサ46及び加速度センサ47等が検出した情報を管理装置3及び運搬機械10の少なくとも一方に、アンテナ53を介して送信可能である。積込機械30は、自律走行が可能な無人車両に限定されない。例えば、管理装置3が、前方撮像装置40Cが撮像した画像を取得して図6に示す表示装置8に表示し、オペレータは、表示された画像を視認しながら積込機械30の掘削、積込及び走行を遠隔操作により制御してもよい。また、管理装置3が、後方撮像装置41Cが撮像した画像を取得して図6に示す表示装置8に表示し、オペレータは、表示された画像を視認しながら積込機械30の掘削及び積込並びに運搬機械10のベッセル11の動作を遠隔操作により制御してもよい。
例えば、速度センサ46及び加速度センサ47等が検出した情報を取得した管理装置3は、この情報を積込機械30の稼働情報として、例えば、記憶装置3Mに蓄積する。また、前方撮像装置40C又は後方撮像装置41Cが撮像した情報を管理装置3が取得した場合、オペレータは、前方撮像装置40C又は後方撮像装置41Cが撮像した積込機械30の周辺の画像を視認しながら、積込機械30を操作することもできる。さらに、後方撮像装置41Cが検出したベッセル11の鉱石MRの状態に関する情報を取得した運搬機械10は、この情報に基づいて、ベッセル11への鉱石MRの積載量又はベッセル11の位置を制御することもできる。本実施形態において、積込機械30は、電動であるが、内燃機関が動力源であってもよい。
図18は、本実施形態に係る鉱山の管理システム1が備える蓄電器交換装置EXの一例を示す図である。蓄電器交換装置EXは、空間SP内に設置されている。本実施形態において、空間SPには、運搬機械10及び積込機械30を整備するための整備スペースMSが設けられている。蓄電器交換装置EXは、蓄電器保持装置90と、この両側に設置された一対のガイド91a、91bと、それぞれのガイド91a、91bに案内される交換用の台車92a、92bとを備える。蓄電器保持装置90は、交換用の蓄電器14を複数保持している。蓄電器保持装置90は、放電された蓄電器14を充電する充電器としての機能を有している。ガイド91aは蓄電器保持装置90の一方に設けられ、ガイド91bは蓄電器保持装置90の他方に設けられる。ガイド91aは、蓄電器保持装置90から空間SPの出入口SPGに向かって延在した2本のレールである。ガイド91bもガイド91aと同様である。台車92aは、ガイド91aに取り付けられて、ガイド91aに沿って移動し、台車92bは、ガイド91bに取り付けられて、ガイド91bに沿って移動する。
蓄電器14を交換するために空間SPに進入した運搬機械10は、ガイド91aとガイド91bとの間に停車する。このとき、運搬機械10は、一方の蓄電器14をガイド91aに向けて、他方の蓄電器14をガイド91bに向けて停車する。台車92a及び台車92bは、充電済みの蓄電池14を蓄電器保持装置90から受け取り、運搬機械10に向かって移動する。台車92a及び台車92bは、運搬機械10と対向する位置に移動したら、運搬機械10に搭載されている放電された蓄電器14を運搬機械10から自身の上部に移動させる。次に、台車92a及び台車92bは、それぞれに積載されている充電済みの蓄電器14が運搬機械10と対向する位置まで移動する。その後、台車92a及び台車92bは、充電済みの蓄電池14を運搬機械10に積み込む。台車92a及び台車92bは、蓄電器保持装置90の位置まで戻り、運搬機械10から回収した蓄電器14を蓄電器保持装置90に移動させる。蓄電器保持装置90は、この蓄電器を充電する。このようにして、運搬機械10の蓄電器14が交換される。
運搬機械10が備える蓄電器14は、着脱可能でなくてもよい。この場合、蓄電器取扱装置EXは、運搬機械10が備える蓄電器14を充電するものであってもよい。
本実施形態において、運搬機械10は蓄電器14によって走行するため、空間SP内の蓄電器交換装置EXを用いて放電された蓄電器14が充電済みの蓄電器14と交換される。積込機械30は、前述したように、図3等に示す給電ケーブル5から電力を供給されて回転ローラー33及びフィーダー31等が動作する。積込機械30は、自身が坑内を移動するため、例えば、異なるドローポイントDPに移動するために走行するが、この場合、給電ケーブル5から切り離される。このため、積込機械30は、図17に示す走行用の電動機48L、48Rを駆動するための蓄電器を備えている。この蓄電器は、積込機械30がドローポイントDPで掘削及び鉱石MRを搬送しているときに、給電ケーブル5から供給される電力によって充電される。積込機械30の蓄電器は、例えば、使用により性能が許容値よりも低下したような場合に、例えば、空間SP内の整備スペースMSで交換される。
<運搬機械が走行する経路>
図19は、本実施形態に係る鉱山の管理システム1において、運搬機械10が坑内MIのドリフトDRを進行する方向を示す図である。以下の説明において、坑内MIに設けられた複数のドリフトDR、複数の外周路TR、複数のドローポイントDP又は複数のオアパスOPを区別する場合には、符号DR、符号TR、符号DP又は符号OPに符号a、b等を付す。複数のドリフトDR、複数の外周路TR、複数のドローポイントDP及び複数のオアパスOPを区別しない場合、符号a、b等は付さない。
図19に示す鉱山の採掘システム1では、坑内に、6本のドリフトDRa、DRb、DRc、DRd、DRe、DRfと2本の外周路TRa、TRbとが形成されている。本実施形態において、ドリフトDRと、外周路TRとで周回路CDが形成される。具体的には、複数本のドリフトDRと、複数本の外周路TRとが接続されて、1つの周回路CDが形成される。例えば、2本のドリフトDRb、DRdと2本の外周路TRa、TRbとで周回路CDaが形成される。また、2本のドリフトDRc、DReと2本の外周路TRa、TRbとで周回路CDbが形成される。このように、本実施形態では、2本のドリフトDRと、2本の外周路TRとで、1つの周回路CDが形成される。この場合、1つの周回路CDは、2本のドリフトDRと、2本の外周路TRとによって形成されるが、1つの周回路CDが有する2本のドリフトDRは、走行可能な方向が互いに異なっている。
1本のドリフトDRに1台の積込機械30が配置される。なお、生産量を増大するために、1本のドリフトDRに複数台の積込機械30が配置されてもよい。
運搬機械10がドローポイントDPで採掘された鉱石MRを積載し、オアパスOPで排出する場合、この運搬機械10が走行する周回路CDは、オアパスOPa及びオアパスOPbの少なくとも一方を含むように形成されることが好ましい。鉱石MRを積載せず、図7及び図8に示す蓄電器14を交換するため、空間SPに設置された蓄電器交換装置EXに向かう運搬機械10が走行する周回路CDは、オアパスOPa及びオアパスOPbを含まなくてもよい。管理装置3は、運搬機械10毎に、周回路CDを任意に生成することができる。例えば、管理装置3は、運搬機械10の状態に応じて周回路CDを生成してもよい。一例として、管理装置3は、運搬機械10が備える蓄電器14の容量が所定の閾値を下回り、かつ運搬機械10がベッセル11に鉱石MRを積載していな場合は、運搬機械10が蓄電器交換装置EXで蓄電器14を交換するものとして、現在位置から空間SPまでの最短の周回路CDを生成することができる。
ドリフトDRを走行する運搬機械10は、周回路CDを同一方向に走行する。本実施形態では、周回路CDを右回りに走行する。その過程で、運搬機械10は、ドローポイントDPで積込機械30から鉱石MRを積載される。そして、運搬機械10は、積載された鉱石MRをオアパスOPa又はオアパスOPbで排出する。例えば、周回路CDaを走行する運搬機械10は、ドリフトDRbにつながっているドローポイントDPbで、積込機械30から鉱石MRの積載を受ける。その後、運搬機械10は、ドリフトDRb及び外周路TRaを走行し、外周路TRaに隣接して設けられたオアパスOPaに鉱石MRを排出する。鉱石MRを排出した運搬機械10は、ドリフトDRdを走行して、ドリフトDRdにつながっているドローポイントDPdで、積込機械30から鉱石MRの積載を受ける。その後、運搬機械10は、ドリフトDRd及び外周路TRbを走行し、外周路TRbに隣接して設けられたオアパスOPbに鉱石MRを排出する。
周回路CDbを走行する運搬機械10は、ドリフトDRcにつながっているドローポイントDPcで、積込機械30から鉱石MRの積載を受ける。その後、運搬機械10は、ドリフトDRc及び外周路TRaを走行し、外周路TRaに隣接して設けられたオアパスOPaに鉱石MRを排出する。鉱石MRを排出した運搬機械10は、ドリフトDReを走行して、ドリフトDReにつながっているドローポイントDPeで、積込機械30から鉱石MRの積載を受ける。その後、運搬機械10は、ドリフトDRe及び外周路TRbを走行し、外周路TRbに隣接して設けられたオアパスOPbに鉱石MRを排出する。
このように、運搬機械10が周回路CDを一方向に走行することにより、ドローポイントDPからオアパスOPの間を往復する場合と比較して、運搬機械10のすれ違いを最小限に抑制できる。また、周回路CDがオアパスOPaとオアパスOPbとの両方を含むようにすると、運搬機械10が周回路CDを1周する間に鉱石MRの積込と排出とを2回行うことができるので、鉱石MRの搬送量を大きくすることができる。その結果、鉱山の管理システム1は、サイクルタイムを改善し、鉱山の生産性を向上させることができる。また、運搬機械10が周回路CDを一方向に走行することにより、運搬機械10のすれ違いを抑制できるので、すれ違いに要する箇所を少なくすることができ、また、すれ違いが不要であればすれ違いに要する箇所を設けなくてもよい。その結果、坑道の幅を無闇に大きくする必要がなくなるので、坑道を掘削する手間、時間及び費用を抑制できる。
本実施形態において、それぞれのドリフトDRにおいて、運搬機械10等が走行する方向は、ドリフトDR毎に一方の方向(一方通行)に決められている。すなわち、それぞれのドリフトDRは、一方向のみ走行可能である。運搬機械10等が周回路CDを右回りに走行する場合、例えば、周回路CDaに含まれるドリフトDRbの走行方向は、オアパスOPbからオアパスOPaに向かう方向である。この場合、運搬機械10は、オアパスOPaからオアパスOPbに向かうようにドリフトDRbを走行することはできない。
運搬機械10等が周回路CDを一方向に走行する場合、管理装置3は、それぞれのドリフトDRにおいて、運搬機械10が他の運搬機械又は積込機械30とすれ違わないように、周回路CDを生成する。例えば、管理装置3は、周回路CDを生成する場合、既に生成されている周回路CDに含まれる結果、走行する方向が一方向に定められているドリフトDRを逆走するような周回路CDは生成することができない。管理装置3は、既に生成されている周回路CDに含まれるドリフトDRを用いて、新たな周回路CDを生成する場合、新たな周回路CDの走行方向が、既に生成されている周回路CDに含まれるドリフトDRの走行方向と一致するようにする。このようにすることで、周回路CDでの運搬機械10のすれ違いが低減又は回避される。
鉱山の管理システム1において、オアパスOPaが設けられている外周路TRaには6本のドリフトDRが接続されており、オアパスOPbが設けられている外周路TRbにも6本のドリフトDRが接続されている。外周路TRaが延びる方向において、オアパスOPaを基準としていずれの方向においても同数(本実施形態では3本)のドリフトDRが外周路TRaに接続されている。同様に、外周路TRbが延びる方向において、オアパスOPbを基準としていずれの方向においても同数(本実施形態では3本)のドリフトDRが外周路TRbに接続されている。このようなドリフトDR及び外周路TRを有する鉱山の管理システム1において、オアパスOPaとオアパスOPbとの両方を含むようにする周回路CDは、
(1)パターン1:ドリフトDRa、外周路TRa、ドリフトDRf、外周路TRb、
(2)パターン2:ドリフトDRa、外周路TRa、ドリフトDRe、外周路TRb、
(3)パターン3:ドリフトDRa、外周路TRa、ドリフトDRd、外周路TRb、
(4)パターン4:ドリフトDRb、外周路TRa、ドリフトDRf、外周路TRb、
(5)パターン5:ドリフトDRb、外周路TRa、ドリフトDRe、外周路TRb、
(6)パターン6:ドリフトDRb、外周路TRa、ドリフトDRd、外周路TRb、
(7)パターン7:ドリフトDRc、外周路TRa、ドリフトDRf、外周路TRb、
(8)パターン8:ドリフトDRc、外周路TRa、ドリフトDRe、外周路TRb、
(9)パターン9:ドリフトDRc、外周路TRa、ドリフトDRd、外周路TRb、
の9パターンある。
鉱山の管理システム1において、運搬機械10が、これらの周回路CDをいずれも一方向(例えば右回り)に走行することにより、運搬機械10のすれ違いを最小限に抑制でき、かつ運搬機械10が周回路CDを1周する間に鉱石MRの積込と排出とを2回行うことができるようになる。本実施形態において、それぞれの外周路TRに設けられるオアパスOPの位置及び数は限定されるものではない。一対の外周路TRに複数のドリフトDRが接続され、かつそれぞれの外周路TRに1個ずつオアパスOPが設けられている場合、オアパスOPを基準として外周路TRが延びる方向にそれぞれ同数のドリフトDRが接続されるようにすると、周回路CDのパターンを多くできるので好ましい。
<坑内の作業モードの設定>
次に、本実施形態に係る管理システム1による鉱山Mの管理方法について説明する。鉱山においては、様々な指標を基準とする生産体制で作業を行いたいという要望がある。例えば、単位時間当たりの鉱石MRの採掘量(生産量)の指標を重視して作業を行いたい場合がある。運搬機械10及び積込機械30のエネルギー消費量の指標を重視して作業を行いたい場合がある。坑内MIの路面、積込機械30、及び運搬機械10のメンテナンス費用の指標を重視して作業を行いたい場合がある。
本実施形態においては、上述の指標を重視する作業モードが複数定められている。それら作業モードは、鉱石MRの単位重量当たりの採掘コスト($/t)、及び単位時間当たりの鉱石MRの採掘量(t/h)を考慮して複数定められている。
本実施形態においては、単位時間当たりの鉱石MRの採掘量(生産量)を優先する生産量重視モードと、運搬機械10及び積込機械30のエネルギー消費量の抑制を優先する省エネルギーモードと、坑内MIの路面、積込機械30、及び運搬機械10のメンテナンス費用の抑制を優先する省メンテナンス費モードとが定められている。
また、本実施形態においては、生産量重視モードとして、単位時間当たりの鉱石MRの採掘量を最大にする生産量最大モードと、鉱石MRの採掘量の変動を抑制する生産量平滑モードとが定められている。
すなわち、本実施形態においては、
(p1)生産量最大モード(生産量重視モード)、
(p2)生産量平準モード(生産量重視モード)、
(e)省エネルギーモード、
(m1)路面の省メンテナンス費モード、
(m2)運搬機械10及び積込機械30の省メンテナンス費モード、
の5つの作業モードが用意されている。
生産量最大モード(p1)は、積込機械30の積込性能及び運搬機械10の運搬性能を最大にするとともに、配車効率を向上させて、生産量を最大化するモードである。生産量は、「積込機械30の処理能力[t/h]×積込機械30の台数×積込効率」、及び「運搬機械10の処理能力[t/h]×運搬機械10の台数×運搬効率(配車効率)」の関数である。
生産量平準モード(p2)は、[t/h]の変動を抑制するモードである。[t/h]のピークを抑えて変動を抑制することにより、後工程の設備及び人員配置をピークに合わせる必要が無くなる。生産量平準モード(p2)においては、複数の運搬機械10が正常に稼働可能な正常時において、それぞれの運搬機械10の処理能力(運搬能力)が抑制される。これにより、坑内MIにおける生産量は抑制される。運搬機械10の故障のような異常時又は運搬機械10のメンテナンス時において、正常に稼動可能な運搬機械10が減少した場合、正常に稼動可能な運搬機械10の処理能力が高められる。これにより、生産量の低下が抑制され、生産量が平準化される。
省エネルギーモード(e)は、目標の生産量及び目標の稼動時間を達成しつつ、エネルギー消費量を抑制するモードである。省エネルギーモードにおいては、運搬機械10の加速度及び減速度の抑制、積込機械30の作業機の動作の抑制等により、採掘量当たりのエネルギーコストの抑制を図る。
省メンテナンス費モード(m1、m2)は、目標の生産量及び目標の稼動時間を達成しつつ、メンテナンス費を抑制するモードである。坑内MIの路面の省メンテナンス費モード(m1)においては、例えば、特定の路面を走行する運搬機械10の総走行距離(のべ走行距離)の低減、複数のドリフトDRのそれぞれにおける運搬機械10の通過回数の平均化等により、特定の路面が著しく劣化することを抑制して、路面のメンテナンス費の抑制を図る。積込機械30の省メンテナンス費モード(m2)においては、例えば、掘削力の制限により、積込機械30の部材の摩耗を抑制して、積込機械30のメンテナンス費の抑制を図る。運搬機械10の省メンテナンス費モード(m2)においては、例えば、ベッセル4の積載量の制限により、車輪12A、12Bにかかる負荷を抑制して、運搬機械10のメンテナンス費の抑制を図る。
図20は、鉱石MRの単位重量当たりの採掘コスト($/t)と、単位時間当たりの鉱石MRの採掘量(t/h)と、上述の複数の作業モード(p1、p2、e、m1、m2)との関係の一例を示す図である。
図20に示すグラフにおいて、横軸は、鉱石MRの単位重量当たりの採掘コスト($/t)を示す。縦軸は、単位時間当たりの鉱石MRの採掘量(t/h)を示す。
図20に示すグラフにおいて、生産量最大モードを点p1で示す。生産量平準モードを点p2で示す。省エネルギーモードを点eで示す。路面の省メンテナンス費モードを点m1で示す。運搬機械10及び積込機械30の省メンテナンス費モードを点m2で示す。図20において、生産量最大モードp1の鉱石MRの単位重量当たりの採掘コスト($/t)、及び単位時間当たりの鉱石MRの採掘量(t/h)をそれぞれ1とする。
複数の作業モード(p1、p2、e、m1、m2)は、鉱石MRの単位重量当たりの採掘コスト($/t)及び単位時間当たりの鉱石MRの採掘量(t/h)を考慮して定められる。各作業モードについて、「$/t」の目標値、及び「t/h」の目標値が予め決定され、記憶装置3Mに記憶されている。図20に示すそれぞれの点(p1、p2、e、m1、m2)は、「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値に基づいてプロットされている。
これらの作業モードは、オペレータ(管理者)により選択される。管理者は、上述の複数の作業モードのうち、1つの作業モードが選択されるように、管理装置3の入力装置9を操作する。入力装置9は、選択された作業モードに応じた入力信号を生成する。管理装置3の処理装置3Cは、その入力信号に基づいて、坑内MIの作業モードを設定する。
本実施形態においては、5つの作業モードのうち、選択された作業モードに基づいて、「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値が達成されるように、運搬機械10の作業パラメータ、及び積込機械30の作業パラメータが決定される。管理装置3は、入力装置9からの入力信号に基づいて、複数の作業モードから1つの作業モードを設定するとともに、その設定(選択)された作業モードに基づいて、「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値が達成されるように、運搬機械10の作業パラメータ及び積込機械30の作業パラメータを決定する。
本実施形態においては、作業モードは、鉱石MRの単位重量当たりの採掘コスト($/t)、及び単位時間当たりの鉱石MRの採掘量(t/h)を考慮して複数定められている。作業パラメータは、選択された作業モードに対応した「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値が達成されるように予め決定され、記憶装置3Mに記憶されている。したがって、管理装置3は、記憶装置3Mの記憶情報と設定(選択)された作業モードとに基づいて、「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値が達成されるように、運搬機械10の作業パラメータ及び積込機械30の作業パラメータを決定することができる。管理装置3は、その決定した運搬機械10の作業パラメータ及び積込機械30の作業パラメータに基づいて、運搬機械10の作業パラメータ及び積込機械30の作業パラメータの両方を変更する。本実施形態において、管理装置3は、運搬機械10の作業パラメータ及び積込機械30の作業パラメータを同時に変更する。
作業パラメータは、積込機械30の性能に関するパラメータ、運搬機械10の性能に関するパラメータ、運搬機械10の台数に関するパラメータ、及び運搬機械10の配車に関するパラメータを含む。これらパラメータが変更される。
運搬機械10の作業パラメータは、坑内MIにおける運搬機械10の走行速度(車速)、加速度(減速度)、及びベッセル11における鉱石MRの積載量を含む。また、運搬機械10の作業パラメータは、配車パラメータを含む。配車パラメータは、運搬機械10がドローポイントDP及び積込位置LPを含む積込場所LAに移動するまでの坑道Rにおける移動経路、及び運搬機械10がオアパスOPに移動するまでの坑道Rにおける移動経路を含む。移動経路は、上述の(1)〜(9)の周回路の9パターン、及び周回方向(右回り又は左回りのいずれか一方向)を含む。また、配車パラメータは、複数のオアパスOPa及びオアパスOPbのうち、運搬機械10を向かわせるオアパスの選択を含む。また、配車パラメータは、複数の積込場所LAのうち、運搬機械10を向かわせる積込場所LAの選択を含む。また、配車パラメータは、1つのドリフトについて運搬機械10が通過する回数を含む。
積込機械30の作業パラメータは、坑内MIにおける積込機械30(走行装置34)の走行速度(車速)、運搬機械10に対する鉱石MIの積み込み速度、及び掘削力の少なくとも一つを含む。積み込み速度は、フィーダー31の速度(回転ローラー33の回転速度を含む)を含む。掘削力は、貫入部材35による貫入力、及び回転体34の回転力を含む。また、積込機械30の作業パラメータは、配車パラメータを含む。配車パラメータは、1本のドリフトDRに配置される積込機械30の台数、複数のドローポイントDPのうち、積込機械30を向かわせるドローポイントDPの選択、及び積込機械30があるドローポイントDPから別のドローポイントDPに移動するまでの坑道Rにおける移動経路を含む。移動経路は、上述の(1)〜(9)の周回路の9パターン、及び周回方向(右回り又は左回りのいずれか一方向)を含む。
図21は、運搬機械10の作業パラメータの一例を説明するための図である。図21に示すグラフにおいて、横軸は、積込場所LAから排土場所OPまでの運搬機械10による鉱石MRの運搬時間(時間:h)を示す。縦軸は、運搬機械10の消費電力(キロワットアワー:kwh)を示す。
生産量最大モード(p1)が選択された場合、生産量最大モード(p1)における「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値が達成されるように、運搬機械10の走行速度、加速度(減速度)、及び積載量などの作業パラメータが決定される。その決定された作業パラメータに基づいて運搬機械10が作業を行うことによって、図21の点p1で示すように、短い運搬時間で「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値を達成することができる。
省エネルギーモード(e)が選択された場合、省エネルギーモード(e)における「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値が達成されるように、運搬機械10の走行速度、加速度(減速度)、及び積載量などの作業パラメータが決定される。その決定された作業パラメータに基づいて運搬機械10が作業を行うことによって、図21の点eで示すように、低い消費電力で「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値を達成することができる。
生産量最大モード(p1)においては、走行速度が高い値に設定され、加速度及び減速度も高い値に設定され、積載量も高い(多い)値に設定される。これにより、高い生産量が得られる。一方、走行速度、加速度、減速度、及び積載量が高まると、消費電力は大きくなる。すなわち、生産量最大モード(p1)においては、高い生産量が達成されるものの、消費電力は高い値となる。
省エネルギーモード(e)においては、走行速度が低い値に設定され、加速度及び減速度も低い値に設定され、積載量も低い(少ない)値に設定される。これにより、消費電力を抑制することができる。一方、走行速度、加速度、減速度、及び積載量が低くなると、生産量は低くなる。すなわち、省エネルギーモード(e)においては、低い消費電力が達成されるものの、生産量は低い値となる。
図22は、運搬機械10の作業パラメータの一例を説明するための図である。図22に示すグラフにおいて、横軸は、運搬機械10による鉱石MRの運搬時間(時間:h)を示す。縦軸は、運搬機械10の走行速度(時速:m/h)を示す。
図22に示すラインp1は、生産量最大モード(p1)における運搬機械10の速度プロファイルである。図22に示すラインeは、省エネルギーモード(e)における運搬機械10の速度プロファイルである。速度プロファイルとは、ある時点からの経過時間に対応付けられた走行速度データをいう。
図22に示すように、生産量最大モード(p1)及び省エネルギーモード(e)のそれぞれにおいて、運搬機械10の走行速度の最大値(最高速度)は等しいものの、生産量最大モード(p1)における運搬機械10の加速度及び減速度は、省エネルギーモード(e)における運搬機械10の加速度及び減速度よりも大きい。そのため、生産量最大モード(p1)においては、運搬機械10が所定の距離を走行するのに要する時間は短くて済む。したがって、生産量は高くなる。省エネルギーモード(e)における運搬機械10の加速度及び減速度は、生産量最大モード(p1)における運搬機械10の加速度及び減速度よりも小さい。そのため、省エネルギーモード(e)においては、運搬機械10が所定の距離を走行するのに要する時間は長くなってしまうものの、消費電力は抑制される。
図23は、運搬機械10の作業パラメータの一例を説明するための図である。図23に示すグラフにおいて、横軸は、運搬機械10の車輪12A、12Bのタイヤ、車輪12A、12Bを回転可能に支持するベアリング、及び車輪12A、12Bのタイヤと接触する坑内MIの路面のそれぞれにかかる負荷を示す。縦軸は、それらタイヤ、ベアリング、及び路面の被害量を示す。被害量とは、摩耗量又は劣化の度合いを意味する。被害量が大きいほど、製品寿命が短くなった状態を意味する。
タイヤ、ベアリング、及び路面にかかる負荷は、運搬機械10の走行速度、加速度、減速度、及び積載量に応じて変化する。走行速度、加速度、及び減速度が高いほど、タイヤ、ベアリング、及び路面にかかる負荷は大きくなる。また、積載量が多いほど、タイヤ、ベアリング、及び路面にかかる負荷は大きくなる。負荷が大きくなると、被害量が増大する。タイヤ及びベアリングの被害量が増大すると、タイヤ及びベアリングを交換する頻度が高くなり、タイヤ及びベアリングを含む運搬機械10のメンテナンス費が高くなる。路面の被害量が大きくなると、路面を補修する頻度が高くなり、路面のメンテナンス費が高くなる。
生産量最大モード(p1)が選択された場合、走行速度、加速度、減速度、及び積載量を含む運搬機械10の作業パラメータは、高い値に設定される。これにより、生産量最大モード(p1)においては、高い生産量が得られる。一方、生産量最大モード(p1)においては、被害量が大きくなり、メンテナンス費は高くなる。
路面の省メンテナンス費モード(m1)が選択された場合、走行速度、加速度、減速度、及び積載量を含む運搬機械10の作業パラメータは、低い値に設定される。これにより、路面の省メンテナンス費モード(m1)においては、路面の被害量が抑制され、路面のメンテナンス費が抑制される。一方、路面の省メンテナンス費モード(m1)においては、生産量は低くなる。
運搬機械10の省メンテナンス費モード(m2)が選択された場合、走行速度、加速度、減速度、及び積載量を含む運搬機械10の作業パラメータは、低い値に設定される。これにより、運搬機械10の省メンテナンス費モード(m2)においては、タイヤ及びベアリングの被害量が抑制され、運搬機械10のメンテナンス費が抑制される。一方、運搬機械10の省メンテナンス費モード(m2)においては、生産量は低くなる。
図24は、生産量最大モード(p1)及び生産量平準モード(p2)における運搬機械10の作業パラメータの一例を示す。生産量最大モード(p1)では、例えば、4つのドリフトDRのそれぞれにおける生産量(ドリフトDRにおける運搬機械10の走行速度、加速度、減速度、及び積載量)が最大になるように、作業パラメータが設定される。
生産量平準モード(p2)では、例えば、4つのドリフトDRのそれぞれにおける生産量が最大とはならず、ドリフトDRにおける最大生産能力に対して余裕を持たせて、ドリフトDRにおける運搬機械10の走行速度、加速度、減速度、及び積載量などが設定される。
生産量最大モード(p1)で作業しているときに、何らかの原因で、4つのドリフトDRのうち、1つのドリフトDR(そのドリフトDRの積込機械30)が稼動不可能になる可能性がある。その場合、坑内MI全体の生産量の減少量(変動量)は大きくなる。
生産量平準モード(p2)で作業しているときに、4つのドリフトDRのうち、1つのドリフトDR(そのドリフトDRの積込機械30)が稼動不可能になった場合、坑内MI全体の生産量の変動量が抑制されるように、残り3つのドリフトの生産量が上昇される。上述のように、生産量平準モード(p2)では、ドリフトDRにおける生産量は最大とはならず、最大生産能力に対して余裕を持たせて、ドリフトDRにおける運搬機械10の走行速度、加速度、減速度、及び積載量などが設定される。そのため、4つのドリフトのうち、1つのドリフトDRが稼動不可能となった場合、残り3つのドリフトDRの生産量が上昇されることによって、坑内MI全体の生産量の変動量が抑制される。
生産量が平準化されることにより、採掘の後工程(例えばクラッシャー機による粉砕工程)において、クラッシャー機の仕事量を平準化できる。平準化されていないと、最大生産能力に対応したクラッシャー機を用意する必要がある。上述のように、1つのドリフトDRが稼動不可能になると、最大生産能力の生産量が得られず、クラッシャー機は遊んでしまうこととなり、無駄が生じる。平準化されることにより、無駄が生じなくて済む。
配車パラメータによっても、生産量が変動する。例えば、1つのオアパスOPに複数の運搬機械10が一度に到着してしまうと、渋滞を引き起こし、その結果、生産量が低下する可能性がある。また、1つの積込場所LAに複数の運搬機械10が一度に到着してしまうと、渋滞を引き起こし、その結果、生産性が低下する可能性がある。そこで、渋滞などの発生が抑制されるように、複数の運搬機械10それぞれの移動経路が調整されたり、複数のオアパスOP(OPa、OPb)のうち、1つのオアパス(例えばオアパスOPa)に複数の運搬機械10が殺到したりしないように、複数の運搬機械10のそれぞれが向かうオアパスOPの選択が実行される。また、1つの積込場所LAに複数の運搬機械10が殺到しないように、複数の運搬機械10のそれぞれが向かう積込場所LAの選択が実行される。また、周回方向(右回り又は左回り)が調整されることによっても、渋滞などの発生が抑制される。また、複数の運搬機械10それぞれの走行速度、加速度、及び減速度が調整されることによっても、渋滞などの発生が抑制される。
また、配車パラメータによって、路面のメンテナンス費が変動する。例えば、1つのドリフトDRを運搬機械10が何回も通過すると、そのドリフトDRの被害量が大きくなる。そのため、路面の省メンテナンス費モード(m1)が選択された場合、1つのドリフトDRに運搬機械10が集中して通過せず、4つのドリフトDRについて運搬機械10の通過回数が平均化されるように、配車パラメータが決定される。一方、4つのドリフトDRについて運搬機械10の通過回数が平均化されると、生産量が低下する可能性がある。そのため、生産量最大モード(p1)が選択された場合、生産量向上のために、運搬機械10の通過回数の平均化を考慮することなく、配車パラメータが決定される。
また、配車パラメータによって、運搬機械10及び積込機械30のメンテナンス費が変動する。例えば、運搬機械10及び積込機械30の稼動率が最大になるように配車が行われると、運搬機械10及び積込機械30の移動距離が長くなる。そのため、運搬機械10及び積込機械30の省メンテナンス費モード(m2)が選択された場合、運搬機械10及び積込機械30の移動距離が短くなるように、配車パラメータが決定される。一方、運搬機械10及び積込機械30の移動距離が短くなると、生産量が低下する可能性がある。そのため、生産量最大モード(p1)が選択された場合、生産量向上のために、運搬機械10及び積込機械30の移動距離が長くなるように、配車パラメータが決定される。
表1は、作業パラメータと、積込機械30の作業パラメータ及び運搬機械10の作業パラメータとの関係を示す。
本実施形態において、管理システム1は、選択された作業モード(p1、p2、e、m1、m2)に基づいて、運搬機械10の作業パラメータと積込機械30の作業パラメータとの両方を変更する。本実施形態において、管理システム1は、運搬機械10の作業パラメータと積込機械30の作業パラメータとを同時に変更する。例えば、生産量最大モード(p1)で作業中の坑内MIについて、入力装置9を介して省エネルギーモード(e)を示す入力信号が入力された場合、管理装置3は、運搬機械10の作業パラメータである走行速度を低減すると同時に、積込機械30の作業パラメータであるフィーダー速度を低減する。
次に、本実施形態に係る作業モードの設定及び作業パラメータの変更の手順の一例について、図25のフローチャートを参照して説明する。
作業モードの設定のために、管理者により入力装置9が操作される。作業モードの設定は、新規設定、再設定、及び変更のための設定の少なくとも一つを含む。例えば、生産量最大モード(p1)で作業中の坑内MIについて、入力装置9を介して、省エネルギーモード(e)を示す入力信号が処理装置3Cに入力される(ステップSP1)。
処理装置3Cは、入力信号に基づいて、坑内MIの作業モードを、省エネルギーモード(e)に設定する(ステップSP2)。
処理装置3Cは、省エネルギーモード(e)に対応して事前に決定されている「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値が達成されるように、運搬機械10の作業パラメータ及び積込機械30の作業パラメータを決定する(ステップSP3)。
管理装置3は、処理装置3Cで決定された作業パラメータを、無線通信装置4を介して、坑内MIの複数の積込機械30及び複数の運搬機械10のそれぞれに一斉送信する(ステップSP4)。
積込機械30の制御装置75(図17等参照)は、送信された作業パラメータを受信する。制御装置75は、受信前に使用していた作業パラメータを、受信した新規の作業パラメータに変更する。制御装置75は、その変更された新規の作業パラメータで積込機械30を制御する(ステップSP5)。例えば、新規の作業パラメータの受信前においては第1のフィーダー速度で駆動していたフィーダー31が、省エネルギーのために、第1のフィーダー速度よりも遅い第2のフィーダー速度に変更される。
同様に、運搬機械10の制御装置70(図12等参照)は、送信された作業パラメータを受信する。制御装置70は、受信前に使用していた作業パラメータを、受信した新規の作業パラメータに変更する。制御装置70は、その変更された新規の作業パラメータで運搬機械10を制御する。例えば、新規の作業パラメータの受信前においては第1の走行速度で駆動していた運搬機械10は、省エネルギーのために、第1の走行速度よりも遅い第2の走行速度に変更される。
以上説明したように、本実施形態によれば、複数の作業モードを事前に用意しておき、管理者の要望に応じて作業モードが選択できるようにしたので、その要望に応じて、鉱山において様々な指標を優先した生産体制で円滑に作業を行うことができる。例えば、管理者の要望に応じて、生産量を抑えるかわりに、費用(エネルギー消費量やメンテナンスコスト)を低減するモードを設定することができる。
上述のように、本実施形態において、管理システム1は、積込機械30に鉱石MRの掘削及び積込のみを行わせ、運搬機械10に鉱石MRの運搬のみを行わせるようにして、両者の機能を分離している。このため、積込機械30は掘削作業及び搬送作業に専念でき、運搬機械10は運搬作業に専念できる。すなわち、積込機械30は鉱石MRを運搬する機能を有していなくてもよく、運搬機械10は鉱石MRの掘削及び搬送する機能を有していなくてもよい。積込機械30は、掘削及び搬送の機能に特化でき、運搬機械10は鉱石MRの運搬の機能に特化できるので、それぞれの機能を最大限発揮させることができる。結果として、鉱山の管理システム1は、鉱山Mの生産性を向上させることができる。
それら機能が分離されている運搬機械10及び積込機械30について、作業モードを設定する場合、運搬機械10の作業パラメータと積込機械30の作業パラメータとの両方を変更するようにしたので、生産性が急激に低下してしまう事態が回避される。また、運搬機械10及び積込機械30は、管理者の要望に応じた作業モードに基づいて適切に作業することができる。
また、本実施形態においては、作業モードは、鉱石MRの単位重量当たりの採掘コスト($/t)、及び単位時間当たりの鉱石MRの採掘量(t/h)を考慮して複数定められている。作業パラメータは、選択された作業モードに対応した「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値が達成されるように予め決定され、記憶装置3Mに記憶されている。したがって、管理装置3は、選択された作業モード及び記憶装置3Mの記憶情報に基づいて、選択された作業モードに対応した「$/t」の目標値及び「t/h」の目標値が達成されるように、適切な作業パラメータを決定することができる。
また、本実施形態においては、作業パラメータとして、生産性重視モード及び省エネルギーモードといった、専ら運搬機械10及び積込機械30に関わる作業モードと、省メンテナンスモードといった、路面(インフラ)にも関わる作業モードとが用意される。これにより、鉱山全体のコストを抑制しつつ、高い生産性を得ることができる。
なお、上述の実施形態においては、作業モードの設定において、運搬機械10の作業パラメータと積込機械30の作業パラメータとが同時に変更されることとした。運搬機械10の作業パラメータと積込機械30の作業パラメータとは同時に変更されなくてもよい。例えば、運搬機械10の作業パラメータが変更された後、積込機械30の作業パラメータが変更されてもよい。例えば、積込機械30が積荷の積込作業を行っているときに、積込機械30の作業パラメータが変更されてしまうと、積込作業の効率が低下する可能性がある。そのため、積込機械30が積荷の積込作業を行っているときに、作業パラメータの設定のために入力装置9が操作された場合、管理装置3は、運搬機械10の作業パラメータを変更し、積込機械30の積込作業が完了した後、積込機械30の作業パラメータを変更してもよい。
また、管理装置3から、運搬機械10及び積込機械30のそれぞれに、作業パラメータを変更するための指令信号が同時に送信された場合、運搬機械10の制御装置70及び積込機械30の制御装置75は、同時に作業パラメータを変更してもよいし、異なるタイミングで作業パラメータを変更してもよい。例えば、積込機械30が積荷の積込作業を行っているときに、管理装置3から積込機械30に作業パラメータを変更するための指令信号が送信された場合、積込機械30の制御装置75は、指令信号を受信した後、直ちに作業パラメータを変更してもよいし、指令信号を受信して積込作業が終了した後、作業パラメータを変更してもよい。管理装置3から運搬機械10に作業パラメータを変更するための指令信号が送信された場合、運搬機械10の制御装置70は、指令信号を受信した後、直ちに作業パラメータを変更してもよいし、指令信号を受信してから所定時間が経過した後、作業パラメータを変更してもよい。
なお、上述の実施形態においては、積込機械30の掘削装置として回転ローラー33が使用される例について説明した。積込機械30は、刃先を有するバケットを用いて掘削を行ってもよいし、積込を行ってもよい。
なお、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、本実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。