第1の実施の形態.
<画像センサの全体構成>
図1は、画像センサ300の構成の一例を概略的に示す図である。図1の例示では、画像センサ300は複数の信号線320(以下、列線320とも呼ぶ)および複数の信号線322(以下、行線322とも呼ぶ)を有している。複数の信号線320は互いに並行して延在し、複数の信号線322は、信号線320と交差して延在しつつ、互いに並行して延在している。図1の例示では、信号線320,322は互いに直交している。
信号線320,322の交点に形成される各領域には、画素310が設けられる。図1の例示では、信号線320,322は互いに直交するので、複数の画素310はマトリックス状に配置されることとなる。画素310の具体的な内部構成については、後に詳述する。
各信号線322は、同じ行に属する画素310に接続されるとともに、行選択部332にも接続されている。例えば行選択部332は、画素310を行ごとに選択する画素選択信号を、信号線322に順次に出力する。
各信号線320は、同じ列に属する画素310に接続されるとともに、信号読出部330にも接続されている。画素310が行ごとに選択されると、選択された画素310は、後に詳述するように、受光した光の量に応じた電圧を信号線320に印加する。信号読出部330は、この電圧をそれぞれ画素値(画素信号)として読み出す。
以上のように、例えば画素310が行ごとに順次に選択されることによって、信号読出部330は行ごとに画素信号を読み出すことができる。そして、全ての画素310の画素信号を読み出すことで、画像センサ300で撮像された画像を生成できる。この画像は、全ての画素310の画素信号によって構成される画像であり、例えば1枚の画面を形成する。また、この画像を所定時間ごとに繰り返し生成することで、動画像を生成することもできる。
<画素の構成>
図2は、画像センサ300のうち、所定の1列の構成を概略的に例示している。図2に例示するように、一つの列線320には複数の画素310が接続される。また図2の例示では、代表的に一つの画素310のみの内部構成が等価回路で示されているものの、他の画素310の内部構成も同様の構成を有している。図3は画素310の断面の一例を概略的に示す図である。
図3の例示では、画素310は、半導体層11,12,121,122,111〜113と、絶縁層13〜15と、ゲート電極16〜18とを有している。
半導体層11は、例えばキャリアとして正孔が使われるP型の半導体層である。このようなP型の半導体層は、例えば4価元素(例えばシリコン)の半導体に、3価元素(例えばホウ素、アルミニウムなど)を添加することで形成される。半導体層11には第1電源電位(例えば接地電位)が印加される。
半導体層12は半導体層11の上部に形成されている。半導体層12は、半導体層11とは異なる型の半導体層であり、例えばキャリアとして自由電子が使われるN型の半導体層である。このような半導体層は、例えば4価元素の半導体に、5価元素(例えばリン、ヒ素など)を添加することで形成できる。
半導体層11,12の境界(接合部)は、光を受けて電流を発生するフォトダイオードPD1(図2)として機能する。
半導体層12の上部には、半導体層12の型とは異なるP型の半導体層121およびP型の半導体層122とが形成されている。半導体層121,122は、例えば紙面左右方向において互いに間隔を空けて形成されている。半導体層121には、第1電源電位とは異なる第2電源電位が印加される。例えば半導体層121には、直流電源E1の高電位端が接続され、半導体層11には、直流電源E1の低電位端が接続される。第1電源電位として接地電位を採用すると、第2電源電位は直流電源E1の直流電圧と一致する。
半導体層12の上には、少なくとも半導体層121,122の間において、絶縁層13が形成されている。絶縁層13は例えば酸化シリコンなどである。
ゲート電極16は絶縁層13の上に形成され、絶縁層13を介して半導体層121,122の間の領域に対向する。ゲート電極16は例えば半導体(P型またはN型の半導体)である。このような半導体は、キャリア用の不純物の濃度を高めることで実質的に導体と同様の機能を発揮する。ゲート電極16は後述するリセット信号線324に接続される。
半導体層12,121,122、絶縁層13およびゲート電極16を含む構造は、いわゆるP型のMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)電界効果トランジスタを形成し、図2のリセット用スイッチRS1として機能する。またこのとき、半導体層121,122はそれぞれソース領域およびドレイン領域として機能する。
半導体層11の上部のうち、半導体層12とは別の領域には、半導体層11の型とは異なるN型の半導体層111〜113が例えば紙面左右方向において互いに間隔を空けて形成されている。半導体層11の上には、少なくとも半導体層111,112の間において、絶縁層14が形成されている。絶縁層14は例えば酸化シリコンなどである。ゲート電極17は絶縁層14の上に形成され、絶縁層14を介して半導体層111,112の間の領域に対向する。ゲート電極17はゲート電極16と同様に例えば半導体である。
半導体層11,111,112、絶縁層14およびゲート電極17を含む構造は、いわゆるN型のMOS電界効果トランジスタを形成し、図2の画素信号用トランジスタTr1として機能する。このとき、半導体層111,112はそれぞれドレイン領域およびソース領域として機能する。
半導体層111には、半導体層11の第1電源電位(例えば接地電位)とは異なる第3電源電位が印加される。例えば半導体層111には、直流電源E2の高電位端が接続され、半導体層11には、直流電源E2の低電位端が接続される。第1電源電位として接地電位を採用すると、第3電源電位は直流電源E2の直流電圧と一致する。なお直流電源E1,E2は互いに同じであってもよい。つまり半導体層121に印加される第2電源電位と、半導体層111に印加される第3電源電位とは、互いに同じであってもよい。
ゲート電極17は配線を介して半導体層12,122に接続されている。なお図3の例示では、半導体層12の上部には、半導体層12と同じ型のN型の半導体層123が形成されており、この半導体層123がゲート電極17に接続されることで、半導体層12がゲート電極17に接続されている。半導体層123は、半導体層12のN型の不純物の濃度よりも高い濃度でN型の不純物を含んでいる。これにより、低抵抗でゲート電極17を半導体層12に接続できる。
また上述のように、半導体層12(123),122が互いに接続される。よって、半導体層12,121〜123からなる部分は、特にリセット用スイッチRS1がオフした状態において、半導体層121,12の接合部によるダイオード(図2のダイオードD1)として機能することとなる。
図3の例示では、半導体層11の上には、少なくとも半導体層112,113の間において、絶縁層15が形成されている。絶縁層15は例えば酸化シリコンなどである。ゲート電極18は絶縁層15の上に形成され、絶縁層15を介して半導体層112,113の間の領域に対向する。ゲート電極18はゲート電極17と同様に例えば半導体である。ゲート電極18は行線322に接続され、半導体層113は列線320に接続される。
半導体層11,112,113、絶縁層15およびゲート電極18を含む構造は、いわゆるN型のMOS電界効果トランジスタを形成し、図2の画素選択用スイッチPS1として機能する。このとき、半導体層112,113はそれぞれドレイン領域およびソース領域として機能する。
次に図2の等価回路の一例について説明する。図2の例示では、画素310は、リセット用スイッチRS1と、フォトダイオードPD1と、画素信号用トランジスタTr1と、ダイオードD1と、画素選択用スイッチPS1とを備えている。
リセット用スイッチRS1の一端(半導体層121)は、直流電源E1の高電位端(第2電源電位が印加される端子)に接続されている。フォトダイオードPD1のカソードは、リセット用スイッチRS1の他端(半導体層122)およびバイアス基板(半導体層12)、ならびに、画素信号用トランジスタTr1の制御電極(ゲート電極17)に共通して接続される。フォトダイオードPD1のアノードは、直流電源E1,E2の低電位端(第1電源電位が印加される端子)に接続される。図2の例示では、当該アノードは接地されている。このフォトダイオードPD1は光を受けて電流を発生させる。
ダイオードD1のアノードはリセット用スイッチRS1の一端に接続され、そのカソードは、フォトダイオードPD1のカソードに接続される。ダイオードD1は主としてリセット用スイッチRS1がオフしたとき機能する。
リセット用スイッチRS1の制御電極(ゲート電極16)はリセット信号線324に接続される。リセット信号線324は例えば行線322に並行して延在しており、同じ行に属する画素310のリセット用スイッチRS1の制御電極に共通して接続される。この場合、リセット用スイッチRS1は行ごとに制御される。なお、リセット信号線324は例えばリセット制御部(不図示)に接続され、このリセット制御部がリセット用スイッチRS1を制御するとよい。
リセット用スイッチRS1は、フォトダイオードPD1のカソードの電位(即ち、半導体層12の電位VFD、ひいてはゲート電極17のゲート電位VG)を初期化するためのスイッチである。なお電位VFDとゲート電位VGとは互いに略等しいと考えることができるので、以下では、ゲート電位VGを用いて説明する。リセット用スイッチRS1がオンすると、ゲート電位VGは例えば第2電源電位(直流電源E1の直流電圧PVDD)に初期化される。なおゲート電位VGは、リセット用スイッチRS1は光電流を供給しなければならず、実際には第2電源電位よりも小さな値に初期化される。
画素信号用トランジスタTr1の一端(半導体層111)は、直流電源E2の高電位端(第3電源電位が印加される端子)に接続される。
画素選択用スイッチPS1は、画素信号用トランジスタTr1の他端と列線320との間に接続されている。
画素選択用スイッチPS1は画素310を選択するためのスイッチであり、その制御電極(ゲート電極18)は行線322に接続される。この画素選択用スイッチPS1がオンすることで、画素310が選択される。
画素信号用トランジスタTr1は後に詳述するように、画素選択用スイッチPS1がオンした状態で、ゲート電位VGに応じた電圧Vを列線320に出力する。この電圧Vは後に詳述するように、フォトダイオードPD1が受光する光の量に依存する。
列線320には電流源CS1が接続されている。電流源CS1の一端は、例えば画素選択用スイッチPS1を介して、画素信号用トランジスタTr1の他端(半導体層112)に接続される。電流源CS1の他端は直流電源E1,E2の低電位端(第1電源電位が印加される端子)に接続される。図2の例示では、電流源CS1の他端は接地される。電流源CS1は列線320に略一定の電流を流す。
電流源CS1の一端の電圧(第1電源電位に対する電位)Vは、信号読出部330によって検出される。信号読出部330は例えば電圧Vを増幅する増幅器311と、増幅した電圧をアナログデータからデジタルデータに変換するAD変換部312とを有している。
<画素310の動作>
図4は、一つの画素310のタイミングチャートの一例を概略的に示す図である。図4では、画素選択信号PS2と、リセット信号RS2と、ゲート電位VGとが示されている。画素選択信号PS2は、行線322を流れる信号であり、画素選択用スイッチPS1のオン/オフを制御する信号である。リセット信号RS2は、リセット信号線324を流れる信号であり、リセット用スイッチRS1のオン/オフを制御する信号である。
図4の例示では、時点t1において、画素選択信号PS2が低電位から高電位へと遷移する。これに伴って、画素選択用スイッチPS1がターンオンする。また図4の例示では、時点t1において、リセット信号RS2も低電位から高電位へと遷移している。これに伴って、リセット用スイッチRS1はターンオフする。
図5は、画素選択用スイッチPS1がオンし、リセット用スイッチRS1がオフしたときの等価回路の一例を概略的に示している。リセット用スイッチRS1はオフしているので、図5では示されておらず、画素選択用スイッチPS1はオンしているので、図5では短絡して示されている。
この状態で、半導体層11,12の接合部(フォトダイオードPD1)に、不図示のレンズ等を経由して光が入射すると、フォトダイオードPD1は、光起電力効果によって自由電子および正孔を発生する。発生した正孔は半導体層11へと移動し、電子は半導体層12に移動する。このように半導体層12に電子が蓄積されることによって、図4に例示するように、半導体層12の電位VFD(ゲート電位VG)は低下する。そして、このゲート電位VGの低下に伴って、ダイオードD1の順方向電圧降下が大きくなる。これにより、フォトダイオードPD1によって発生する電流IPDが、直流電源E1、ダイオードD1およびフォトダイオードPD1を経由して流れることになる。よって、定常したゲート電位VGは、ダイオードD1の電圧VFに依存する。より具体的には、ゲート電位VGは、定常状態(時間の経過によらずゲート電位VGが略一定値を採る状態)において、直流電源E1の直流電圧PVDDをも用いて以下の式で表される。
VG=PVDD−VF ・・・(1)。
電圧VFは、ダイオードD1の電流−電圧特性にしたがって、電流IPDによって決定される。この特性は周知であり、以下の式で表される。
IPD=I0・[exp{q・VF/(n・K・T)}−1] ・・・(2)。
ここで、I0,q,K,T,nは、それぞれ飽和電流、電子1個の電荷量、ボルツマン定数、絶対温度、および、プロセスにより決まる定数をそれぞれ示し、exp(X)はXの指数関数を示す。
式(2)から理解できるように、電流IPDは、電圧VFを指数とした値に比例して増大する。言い換えれば、電圧VFは電流IPDの対数に比例して増大する。式(1)も考慮すると、定常したゲート電位VGは電流IPDの対数に比例して低減する。さらに、電流IPDが光量に比例することに鑑みると、このゲート電位VGは光量の対数に比例して低減することになる。図6は光量と、定常したゲート電位VGとの関係の一例を概略的に示すグラフであり、横軸が光量を示し、縦軸がゲート電位VGを示す。図6の例示では横軸が対数で表示されており、定常したゲート電位VGが光量の対数に比例して低減している。
以上のように、定常したゲート電位VGは、ダイオードD1の電流−電圧特性に起因して、光量の対数に比例して低減することになる。このダイオードD1の電流−電圧特性はたとえ電流IPDが大きくなっても成立する。したがって、たとえ光量が大きく、電流IPDが大きくなったとしても、定常したゲート電位VGは電流IPDの対数に比例、ひいては光量の対数に比例するのである。
画素信号用トランジスタTr1は、ゲート電位VGに応じた電圧Vを列線320に印加する。この電圧Vは、画素信号用トランジスタTr1の電流源CS1側の一端(半導体層112)の電圧であり、簡単には、電流源CS1の電圧とも把握することができる。この電圧Vは以下の式で表すことができる。
V=VG−VGS ・・・(3)。
ここで、VGSは画素信号用トランジスタTr1の制御電極(ゲート電極17)と、電流源CS1側の一端(半導体層112)との間の電圧である。なおここでは、簡単のために、画素選択用スイッチPS1の両端電圧を無視している。また電圧VGSは、以下の式で表すことができる。
ICS=W・Cox・μ・(VGS−Vth)^2/L ・・・(4)。
ここで、ICS,W,L,Cox,μ,Vthはそれぞれ、電流源CS1による電流、ゲート幅、ゲート長、ゲート容量、電子の移動度および画素信号用トランジスタTr1の閾値電圧を示す。またA^BはBを指数としたAのべき乗を示す。電流ICSは電流源CS1による電流であるので、定数として考えることができ、またゲート長L、ゲート幅W、ゲート容量Cox、電子の移動度μおよび閾値電圧Vthも定数と考えることができる。式(4)から理解できるように、電圧VGSがこれらの定数で求まるので、電圧VGSも定数と考えることができる。
他方、定常したゲート電位VGは上述のとおり、光量の対数に比例して低減する。よって、式(3)から理解できるように、定常した電圧Vも光量の対数に比例して低減することとなる。
図4を再び参照して、信号読出部330は、時点t1から予め定められた所定時間が経過した後の電圧Vを画素信号として検出する。例えばリセット信号RS2が高電位から低電位へと遷移する時点t2の直前の電圧Vを検出する。このような所定タイミングでの電圧検出は、例えば周知のサンプルホールド回路を用いて行うことができる。
定常した電圧Vは上述のように光量の対数に比例するので、広いダイナミックレンジで画素信号を取得することができる。
しかも電流IPDが大きくても、定常したゲート電位VGは上述のように光量の対数に比例する。よって、電流IPDが大きくても、定常した電圧Vは光量の対数に比例する。よって、たとえ光量が大きいときであっても適切にダイナミックレンジを向上することができるのである。
なお上記説明では、電圧VGSを定数として考慮した。しかしながら、電圧VGSに影響を与える各種パラメータ(式(4)参照)は、複数の画素310の間で互いに相違し得る。特に、閾値電圧Vthは複数の画素310間において相違しやすい。またこれらの各種パラメータは温度によっても変動し得る。特に閾値電圧Vthは温度によって変動しやすい。そこで、本実施の形態では、これらのパラメータのばらつき、または、温度に起因する変動を吸収して、画素信号を得ることを企図する。
図4を参照して、時点t1の後の時点t2において、リセット信号RS2が高電位から低電位へと遷移する。これに伴って、リセット用スイッチRS1がターンオンする。図7は、画素選択用スイッチPS1およびリセット用スイッチRS1の両方がオンしたときの等価回路の一例を概略的に示している。図7の例示では、ダイオードD1が示されておらず、リセット用スイッチRS1および画素選択用スイッチPS1が、いずれも短絡して示されている。
リセット用スイッチRS1のオンによって、ゲート電位VGは直流電源E1の高電位端の第2電源電位(=PVDD、初期値)に初期化される。よってこのとき、電圧Vは以下の式で表される。なお以下では、初期化された電圧Vを電圧Vconfと表現する。
Vconf=PVDD−VGS ・・・(5)。
信号読出部330は電圧Vconfを検出する。そして、信号読出部330は、リセット用スイッチRS1がオフしたときに検出した電圧Vから、電圧Vconfを減算して補正電圧V’を算出する。よって補正電圧V’は以下の式で表される。
V’=V−Vconf ・・・(6)。
このような演算は、電圧Vを保持する周知のメモリと、周知の減算器とを用いて行うことができる。
式(3)および式(5)を式(6)に代入すると以下の式を導くことができる。
V’=(VG−VGS)−(PVDD−VGS)
=VG−PVDD ・・・(7)。
したがって、補正電圧V’は、光量に応じたゲート電位VGと、直流電圧PVDDとによって決まることが分かる。つまり、補正電圧V’は閾値電圧Vthには依存しない。また直流電圧PVDDは直流電源E1の直流電圧であり、これは複数の画素310に対して共通して与えることができ、しかも、温度に対する変動も非常に小さい。よって、画素間のばらつき、または、温度に依存する変動の影響を抑制しつつ、光量に依存した補正電圧V’を算出することができる。そして信号読出部330はこの補正電圧V’を画素信号として取り扱う。例えばこの補正電圧V’に対して画像処理(例えばγ補正等)が施される。
なお電圧Vから電圧Vconfを減算する補正して画素信号を得る方法は、後に説明する他の実施の形態においても適用可能であるので、後述する他の実施の形態では繰り返しの説明は省略する。
図4の例示するタイミングチャートによれば、画素選択用スイッチPS1がオンする期間(時点t1,t3の間の期間)のうち、前半においてリセット用スイッチRS1がオフし、後半においてリセット用スイッチRS1がオンする。つまり、前半において光量に応じた電圧Vを検出し、後半において電圧Vconfを検出する。これは、いわゆるローリングシャッタ方式で画素信号を得る場合に好適である。以下に説明する。
図8はタイミングチャートの一例を示しており、第1行目および第2行目の画素310についての動作が示されている。画素選択信号PS2_1,PS2_2はそれぞれ第1行目および第2行目の画素選択信号PS2であり、リセット信号RS2_1,RS2_2はそれぞれ第1行目および第2行目のリセット信号RS2であり、ゲート電位VG_1は第1行目の画素310の一つのゲート電位VGであり、ゲート電位VG_2は第2行目の画素310の一つのゲート電位VGである。
ローリングシャッタ方式とは、複数の画素310を行単位で順次に選択し、画素310の画素信号を行ごとに読み出す方式である。図8の例示によれば、第1行目の画素選択用スイッチPS1は、時点t20でターンオンし、その後の時点t22でターンオフする。よって、この時点t20,t22の間の期間T10において、第1行目の画素310の画素信号が読み出される。第2行行目の画素選択用スイッチPS1は時点t22でターンオンし、その後の時点t24でターンオフする。よって、この時点t22,t24の間の期間T20において、第2行目の画素310の画素信号が読み出される。つまり、第1行目の画素310の画素信号が読み出された後に、第2行目の画素310が選択されて、第2行目の画素310の画素信号が読み出される。
同様にして、第3行目から最終行目までの画素310の画素信号が順次に読み出される(不図示)。これにより、1フレーム目の画像を得ることができる。1フレーム目の画像を取得した後には、2フレーム目の画像を取得すべく、再び第1行目の画素310の画素信号が読み出される。よって図8の例示では、時点t25において画素選択信号PS2_1が低電位から高電位へと遷移している。
また図8によれば、期間T10の前半(時点t20,t21の間の期間)および期間T20の前半(時点t22,t23の間の期間)において、それぞれ第1行目および第2行目のリセット用スイッチRS1がオフしている。つまり、この前半において、定常したゲート電位VG(ひいては電圧V)は光量に応じた値を採る。そして、後半(時点t21,t22の間の期間、および、時点t23,t24の間に期間)においては、リセット用スイッチRS1がオンして、ゲート電位VG_1,VG_2がそれぞれ初期値(直流電圧PVDD)に初期化される。
また図8の例示では、第1行目および第2行目の画素選択用スイッチPS1がそれぞれターンオフする時点t22,t24において、第1行目および第2行目のリセット用スイッチRS1をターンオフしている。よって、ゲート電位VG_1は時点t22において光量に応じた値へと変化し始め、ゲート電位VG_2は時点t24において光量に応じた値へと変化し始めている。
さて、図8の例示では、定常状態において、ゲート電位VG_1はゲート電位VG_2よりも大きい。つまり、図8では、第1行目の画素310の一つに入射される光の量が、第2行目の画素310の一つに入射される光の量よりも小さい場合が例示されている。
このとき、図8に示すように、ゲート電位VG_1が変化を開始してから光量に応じた値を採るまでの移行期間は、ゲート電位VG_2が変化を開始してから光量に応じた値を採るまでの移行期間よりも長い。これは、以下で説明するように、光量が大きいほどゲート電位VGの移行期間が短いからである。
さて、半導体層11,12の間の接合部(図3)は、より正確には、フォトダイオードPD1と接合容量との並列接続を含んでいると考えることができる。ゲート電位VGが初期化された状態では、半導体層12に直流電圧PVDDが印加されるので、この接合容量には直流電圧PVDDが充電されているとともに、フォトダイオードPD1には直流電圧PVDDが逆バイアス電圧として印加される。そして、フォトダイオードPD1が光量に応じた電流IPDを流すと、この電流IPDによって接合容量が放電し、ゲート電位VGが時間の経過と共に低減する。そして、ゲート電位VGが光量に応じた値を採ると、接合容量の放電が終了して、ゲート電位VGが定常する。このとき式(1)および式(2)が成立する。
以上のように、移行期間とは接合容量の放電時間と把握することができる。さて、過渡状態では、簡単には、電流IPDは接合容量の放電電流と把握することができるので、放電時間は電流IPDが大きいほど短い。またゲート電位VGの低減量は、接合容量の電圧についての放電量と把握できるので、この低減量が大きいほど移行期間は長い。しかるに、定常したゲート電位VGは上述のように電流IPDの対数に比例して低減する。つまり電流IPDが大きくなっても、電流IPDの増大量に比べてゲート電位VGの低減量は小さい。よって、電流IPDが大きくなることによる移行期間の短縮効果が、ゲート電位VGの低減量が大きくなることによる移行期間の拡大効果よりも高い。結果として、電流IPDが大きいほど移行期間は短くなるのである。逆に言えば、電流IPDが小さいほど移行期間は長い。つまり光量が小さいほど移行期間は長い。
以上のように、電流IPDが小さいほど移行期間が長いところ、図8の例示では、期間T10,T20の前半においてリセット用スイッチRS1をオフして電圧Vを検出し、後半においてリセット用スイッチRS1をオンして電圧Vconfを検出している。しかも、画素選択用スイッチPS1をターンオフした時点(時点t22,t24)においてリセット用スイッチRS1をターンオフしている。したがって、例えば、ゲート電位VG_1は、次に画素選択用スイッチPS1がオンする期間T11のうち前半の終期まで(即ち時点t26まで)に定常していればよい。つまり、約1フレーム周期を、ゲート電位VGが定常するための期間として用いることができる。
図8の例示とは異なって、期間T10,T20のうち前半において、それぞれリセット用スイッチRS1をオンして電圧Vconfを検出し、後半において、それぞれリセット用スイッチRS1をオフして電圧Vを検出する場合について考察する。このとき、図8の例示とは異なって、期間T10の前半(図8でいう時点t20,t21の間の期間に相当)において、ゲート電位VG_1は初期値(電圧PVDD)を採る。このゲート電位VG_1は、リセット用スイッチRS1がターンオフする時点(即ち後半の始期、図8でいう時点t21に相当)において、変化し始める。この場合、ゲート電位VG_1は期間T10の終期(図8でいう時点t22に相当)には定常している必要がある。
以上のように、期間T10,T20のうち、前半においてリセット用スイッチRS1をオフして電圧Vを検出し、後半においてリセット用スイッチRS1をオンして電圧Vconfを検出すれば、その逆の場合に比べて、ゲート電位VGの定常を待つための期間を長くすることができる。
なお第1行目のリセット用スイッチRS1のターンオフは、時点t22よりも後であって、時点t25よりも前に行ってもよい。これにより、ゲート電位VG_1が定常するための期間を長くすることができるからである。
第2の実施の形態.
図9は第2の実施の形態にかかる画素310の構造の一例を概略的に示す断面図であり、図10は第2の実施の形態にかかる画素310の等価回路の一例を概略的に示す図である。第1の実施の形態と相違する点として、リセット用スイッチRS1がN型のMOS電界効果トランジスタで構成されている。そのため、図9の例示では、図3と比較して、半導体層122の替わりに、半導体層114が形成されている。半導体層114は、半導体層11の上部のうち、半導体層12とは異なる領域に設けられており、半導体層111〜113と例えば紙面左右方向において間隔を空けて設けられている。また絶縁層13は半導体層11の上の、少なくとも半導体層111,114の間において形成される。ゲート電極16は絶縁層13の上に形成されており、絶縁層13を介して半導体層111,114の間の領域と対面する。
半導体層11,111,114、絶縁層13およびゲート電極16を含む構成は、いわゆるN型のMOS電界効果トランジスタを形成し、図10のリセット用スイッチRS1として機能する。
画素信号用トランジスタTr1の制御電極(ゲート電極17)は配線を介して、半導体層12(より具体的には半導体層123)と、半導体層114とに接続されている。よってリセット用スイッチRS1がオンすると、ゲート電位VGは直流電源E2の直流電圧に初期化される。なおここではリセット用スイッチRS1の両端電圧は無視している。
半導体層12,121の接合部はダイオードD1として機能し、半導体層11,12の接合部はフォトダイオードPD1として機能する。半導体層12は、第1の実施の形態とは異なって、リセット用スイッチRS1のバイアス基板として機能しないので、図10においてダイオードD1のアノードは、リセット用スイッチRS1のバイアス基板に接続されていない。ダイオードD1のアノードは、リセット用スイッチRS1の直流電源E2とは反対側の一端(半導体層114)と、フォトダイオードPD1のアノードと、画素信号用トランジスタTr1の制御電極とに共通して接続される。
図11は、一つの画素310の動作の一例を示すタイミングチャートである。リセット用スイッチRS1の型が第1の実施の形態と相違するので、リセット信号RS2は、図4のリセット信号RS2とは反対に動作する。その他の動作については、第1の実施の形態と同一であるので詳細な説明を省略する。
さて、第2の実施の形態では、N型の半導体層12の上部に形成されるP型の半導体層は、半導体層121であり、第1の実施の形態の半導体層122は設けられない。
ところで、P型の半導体層11とP型の半導体層121とは、半導体層12によって互いに十分に分離している必要がある。第1の実施の形態では、P型の半導体層122が設けられているので、半導体層11は半導体層122とも十分に分離する必要がある。よって第1の実施の形態では、半導体層12は比較的大きく形成する必要がある。一方で、第2の実施の形態では、半導体層122が設けられていないので、半導体層12を小さく形成することができ、回路面積を図3の構造に比して約20%低減することができる。
或いは、次の点でも第2の実施の形態は好適である。即ち、半導体層12は、この半導体層12の型と同じN型の半導体層111〜114に比べて、より深く形成される必要がある。そして半導体層12を大きく形成するほど、必要な不純物の量が大きくなる。第2の実施の形態では、より深い半導体層12を小さく形成できるので、不純物の量を効果的に低減できる。
なお、図9および図10の例示では、直流電源E2の高電位端は、リセット用スイッチRS1の一端および画素信号用トランジスタTr1の一端に共通して接続されているものの、これらに接続される直流電源を異ならせても構わない。また直流電源E1,E2として、同じ直流電源を採用してもよい。
第3の実施の形態.
第3の実施の形態では、例えば図9および図10において、リセット用スイッチRS1のフォトダイオードPD1とは反対側の一端(半導体層111)に印加される第4電源電位を、半導体層121に印加される第2電源電位よりも高く設定する。例えば、直流電源E2の直流電圧VRSTを直流電源E1の直流電圧PVDDよりも高くする。
図12は一つの画素310の動作を示すタイミングチャートの一例を示している。図12の例示では、時点t11において、画素選択信号PS2およびリセット信号RS2が低電位から高電位へと遷移している。これに伴って、画素選択用スイッチPS1およびリセット用スイッチRS1がターンオンする。リセット用スイッチRS1がオンすると、半導体層12には、直流電源E2の直流電圧VRSTが印加される。これにより、半導体層12の電位(ゲート電位VG)は半導体層121の電位(直流電圧PVDD)よりも高くなる。
このとき、半導体層12,121の接合部には逆バイアス電圧が印加されるので、この接合部はダイオードD1ではなく、接合容量で考慮される。なおこのとき半導体層12,121の接合部はフォトダイオードとしても機能するものの、この半導体層12,121の接合部の面積は、半導体層11,12の接合部の面積に比べて小さいので、フォトダイオードとしての機能は小さい。よってここでは当該フォトダイオードを無視する。
次に時点t12においてリセット信号RS2が高電位から低電位へと遷移する。これに伴ってリセット用スイッチRS1がターンオフする。図13は、リセット用スイッチRS1がオフしたときの等価回路の一例を概略的に示している。図13の例示では、図5と比較してダイオードD1は示されず、半導体層12,121の接合部として、コンデンサC1が示されている。
フォトダイオードPD1は光量に比例して電流IPDを発生させるところ、この電流IPDは直流電源E2、コンデンサC1およびフォトダイオードPD1を流れる。よって当該電流IPDによってコンデンサC1が放電することになり、ゲート電位VGは図12に示すように、初期的には時間に比例して低減する。なお図13では、光量が異なる場合のゲート電位VGの変化がそれぞれ実線、破線、一点鎖線および二点鎖線で示されている。光量が大きいほど、即ち電流IPDが大きいほど、ゲート電位VGの低下速度は速い。
そして、ゲート電位VGが直流電圧PVDDを下回ると、半導体層12,121の接合部はダイオードD1として機能するので、ゲート電位VGは、第1および第2の実施の形態と同様に、電流IPDとダイオードD1の電流−電圧特性とに応じて決まる値(式(1)および式(2))まで低減する。
以上のように、ゲート電位VGが直流電圧PVDDよりも大きいときには、ゲート電位VGは時間に比例して低減する。よってこのとき、電圧Vも時間に比例して低減する(式(3)参照)。またこのとき、ゲート電位VGの低下速度は光量が大きいほど高いので、電圧Vの低下速度も光量が大きいほど高くなる。
そこで、電圧Vが時間に比例して低減する領域において、この電圧Vを画素信号として検出すべく、露光時間を導入する。信号読出部330は、時点t12から露光時間T1が経過したときの時点t13における電圧Vを検出する。時点t13におけるゲート電位VGが直流電圧PVDDよりも大きいときには、つまり時点t13における電圧Vが、直流電圧PVDDと電圧VGSとの差(式(3)参照、以下、第1電圧基準値と呼ぶ)よりも大きいときには、当該時点t13における電圧Vは光量に比例して低減する。よってこの電圧Vを画素信号として検出すれば、光量が小さいときのコントラストを向上できる。
一方で、光量が大きいときには、電流IPDが大きいので、ゲート電位VGが比較的早期に直流電圧PVDDよりも小さくなる。そして時点t13におけるゲート電位VGが直流電圧PVDDよりも小さいときには、つまり時点t13における電圧Vが第1電圧基準値よりも小さいときには、電圧Vは光量に比例しない。
そこで信号読出部330は、時点t13における電圧Vと第1電圧基準値とを比較する。このような比較は周知の比較器を用いて行うことができる。そして、電圧Vが第1電圧基準値よりも大きいときには、上述のとおり、時点t13における電圧Vを画素信号として検出する。一方で電圧Vが第1電圧基準値よりも小さいときには、露光時間T1よりも長い時間T2が時点t12から経過した時点における電圧Vを、画素信号として検出する。この時間T2は、光量が大きいときに電圧Vが定常するのに十分な時間である。また時間T2が経過した時点は、図12に例示するように、例えば画素選択信号PS2が高電位から低電位へと遷移する時点t14(より厳密には時点t14の直前の時点)であってもよい。
以上のように、光量が小さいときには、光量に比例する時点t13での電圧Vを画素信号として検出する。また光量が大きいときには、光量の対数に比例する時点t14での電圧Vを画素信号として検出する。したがって、ダイナミックレンジを向上しつつも、光量が小さいときのコントラストを向上できるのである。
ところで、ゲート電位VGが直流電圧PVDDよりも小さい領域においては、第1の実施の形態で述べたように、電流IPDが大きいほど早くゲート電位VGは定常する。よって、光量が大きい場合には、時点t13において電圧Vが定常している場合がある(図12の二点鎖線)。この場合も、時点t13における電圧Vを画素信号として検出してもよい。つまり、時点t14での電圧Vを再度検出する必要はない。光量が大きいほど、時点t13における電圧Vが小さいことも考慮すると、時点t13における電圧Vが定常しているか否かは、時点t13における電圧Vの値に基づいて判別できる。
よって信号読出部330は、時点t13での電圧Vが第1電圧基準値よりも大きいときのみならず、次で説明する第2電圧基準値(<第1電圧基準値)よりも小さいときにも、時点t13での電圧Vを画素信号として検出してもよい。この第2電圧基準値は、時点t13での電圧Vが定常するときの最小値であり、例えばシミュレーションまたは実験により予め設定することができる。
なお、上述の説明から理解できるように、時点t13における電圧Vが第2電圧基準値よりも大きく第1電圧基準値よりも小さい場合には、時点t13における電圧Vは定常していない。しかるに、その場合であっても、時点t13における電圧Vは光量が大きいほど小さく、その光量と電圧Vとの関係はシミュレーションまたは実験によって把握することができる。
よって、信号読出部330は、時点t13における電圧Vの値に依らずに、常に、時点t13における電圧Vを画素信号として検出しても構わない。この場合であっても、時点t13における電圧Vが第1電圧基準値よりも大きいときには、時点t13における電圧Vは光量に比例するので、光量が小さいときのコントラストを向上でき、時点t13における電圧Vが第2電圧基準値よりも小さいときには、時点t13における電圧Vは光量の対数に比例するので、ダイナミックレンジを向上できる。
この場合、図14に示すように、例えば時点t13にて画素選択信号PS2を高電位から低電位へと遷移させてもよい。そして、信号読出部330は時点t13(より厳密には時点t13の直前)の電圧Vを画素信号として取り扱う。
或いは、図15に例示するように、露光時間を規定するための露光時間用スイッチES1を設けてもよい。露光時間用スイッチES1は例えばトランジスタ(例えばMOS電界効果トランジスタ)であり、例えばフォトダイオードPD1のアノードと、画素信号用トランジスタTr1の制御電極との間に設けられる。この露光時間用スイッチES1は、図12において、時点t12においてターンオンし、時点t12から露光時間T1が経過した時点t13においてターンオフする。露光時間用スイッチES1のオフによってフォトダイオードPD1が切り離される。これにより、ゲート電位VGは、時点t14にてリセット用スイッチRS1がターンオンするまで、時点t13における値を維持する。信号読出部330は時点t13から時点t14までの所定の時点における電圧Vを画素信号として検出する。
なお図12の例示では、画素選択用スイッチPS1がオンする期間T10の前半(時点t11,t12の間の期間)においてリセット用スイッチRS1をオンし、後半(時点t12,t14の間の期間)においてリセット用スイッチRS1をオフしている。つまり、まず、ゲート電位VGを直流電圧PVDDよりも高い直流電圧VRSTに初期化し、その後に、ゲート電位VGを光量に応じて変化させている。これにより、ゲート電位VGが直流電圧PVDDよりも高い線形領域を設けることができるのである。
しかるに、同じ画素310の画素信号を所定のフレーム周期ごとに繰り返し読み出す場合には、これに限らない。即ち、1フレーム周期前にゲート電位VGを直流電圧VRSTに初期化し、本フレーム周期までゲート電位VGが直流電圧VRSTを維持すれば、本フレーム周期の期間T10の前半において、リセット用スイッチRS1をオフしてもよい。なぜなら、本フレーム周期の期間T10の始期においてゲート電位VGが直流電圧VRSTを採るので、線形領域を設けることができるからである。
言い換えれば、期間T10の前半において、リセット用スイッチRS1をオフして電圧Vを検出し、後半においてリセット用スイッチRS1をオンして、ゲート電位VGを初期化してもよい。このゲート電位VGの初期化は次のフレーム周期のための初期化である。
これによっても、光量が小さいときにコントラストを向上しつつ、ダイナミックレンジを向上できる。
ただし、この場合には、1フレーム目では画素信号を適切に取得できない。なぜなら、リセット用スイッチRS1がオンする前には、ゲート電位VGが直流電圧VRSTに初期化されていないからである。よって、この場合には、1フレーム目の電圧Vを画素信号としては検出せずに、2フレーム目からの電圧Vを画素信号として検出する。
逆にいえば、期間T10の前半においてリセット用スイッチRS1をオフし、後半においてオンする態様(図12)を採用すれば、1フレーム目から画素信号を取得することができる。
なお第3の実施の形態では、画素選択用スイッチPS1およびリセット用スイッチRS1の両方がオンする期間(例えば図12の時点t11,t12の間の期間)が存在する。これは、第1の実施の形態で説明したように、リセット用スイッチRS1がオンしているときの電圧Vconfを検出するためである。しかしながら、電圧VGSのばらつき、または、温度に起因する変動などが小さい場合には、電圧Vconfの検出は不要である。この点は、第1及び第2の実施の形態にも適用される。
一方で、第3の実施の形態では、リセット用スイッチRS1は、ゲート電位VGを直流電圧VRST(>直流電圧PVDD)に初期化するためにも必要である。しかしながら、電圧Vconfを検出しない場合には、画素選択用スイッチPS1とリセット用スイッチRS1の両方がオンする必要はない。そこで、画素選択用スイッチPS1は図12において、時点t12〜t14の期間のみにおいてオンしても構わない。言い換えれば、画素選択用スイッチPS1はリセット用スイッチRS1に対して排他的にオンしてもよい。
第4の実施の形態.
光量が小さい場合には、電流IPDが小さくなり、一方でノイズ量はほぼ一定であるため、結果的としてS/N比が劣化する。よってS/N比が例えば許容値よりも小さくなる場合には、電流IPDの増大が望まれる。一方で、光量が大きい場合には、画像に白抜き、あるいは、ホワイトアウトが生じ得る。よってこの場合には、電流IPDの低減が望まれる。そこで、第4の実施の形態では、画像の全体的な明るさに応じて、電流IPDを調整する構成を提案する。
さて、光量が同じ場合には、半導体層11,12の接合部(フォトダイオードPD1)が発生する電流IPDは、この接合部の空乏層が厚いほど大きい。そしてこの空乏層は、当該接合部に印加される逆バイアス電圧が大きいほど厚い。よって、半導体層12に印加する電源電位を用いて、電流IPDを調整することができる。
図16は画像センサ300の構成の一例を概略的に示す図である。第4の実施の形態では、電圧出力部400と電圧制御部410とが設けられている。電圧出力部400は可制御の直流電圧を出力し、第1〜第3の実施の形態の直流電源E1として機能する。換言すると、第3電源電位(リセット用スイッチRS1の一端の電位)の直流電圧を出力する。図16の例示では、電圧出力部400は増幅器411とDA変換部412とを有している。DA変換部412には、電圧出力部400が出力する直流電圧の値を指定する指定値が電圧制御部410から入力される。DA変換部412に入力される当該指定値はデジタル信号である。DA変換部412はこの指定値をアナログ信号(電圧)に変換して、これを増幅器411へと出力する。増幅器411は所定の増幅率でこのアナログ信号を増幅し、増幅した直流電圧を、リセット用スイッチRS1の一端に出力する。
なお図16では、複数の画素310を含む部分を画素アレイ340として示している。また図16の例示では、列線320の各々には列選択用スイッチPS3が設けられており、増幅器311およびAD変換部312の一組が複数の列線320に対して共通して設けられている。そして、一つの列選択用スイッチPS3がオンすると、その一つの列選択用スイッチPS3が設けられた列線320に印加された電圧Vが、増幅器311へと入力される。列選択用スイッチPS3は列ごとに順次にオンすることで、列線320に印加される電圧Vが列ごとに順次に増幅器312に入力される。
電圧制御部410には、信号読出部330から画素信号(電圧Vまたは補正電圧V’)が順次に入力される。電圧制御部410は、複数(例えば全て)の画素310の画素信号の平均値を算出する。画素信号の平均値は、画素310の全ての画素信号の総和を、画素310の個数で除算することで算出される。このような算出は周知の加算器および除算器を用いて行うことができる。
電圧制御部410は、算出した平均値に基づいて電圧出力部400の直流電圧を制御する。より具体的には、算出した平均値が所定の所定値よりも大きいときには、電圧出力部400の直流電圧として第1値を採用させ、算出した平均値が所定値よりも小さいときには、電圧出力部400の直流電圧として、第1値よりも大きい第2値を採用させる。
例えば電圧制御部410は、画素信号の平均値Dと基準値Drefとの差(=Dref−D)を計算する。この基準値Drefは例えば所定の記憶媒体に予め記憶される。そして、電圧制御部410はこの差を指定値として電圧出力部400に出力する。電圧出力部400のDA変換部412は指定値をアナログ信号に変換し、増幅器411は当該アナログ信号を所定の増幅率で増幅する。これにより、算出した平均値が大きくなるにつれ、発生される直流電圧は低くなる。これによっても、平均値が所定値よりも大きいときの直流電圧は、平均値が所定値よりも小さいときの直流電圧よりも小さくなる。なお電圧出力部400が出力する直流電圧は、例えば画素信号の平均値に比例して低減するように生成されてもよい。上述の例では、直流電圧は、増幅器411の増幅率を比例係数として画素信号の平均値に比例して低減する。
あるいは、電圧制御部410は例えば次のように動作してもよい。まず、画素信号の平均値が所定の基準値よりも大きいか否かを判定する。このような判定は周知の比較器を用いて行うことができる。そして当該平均値が基準値よりも大きいときには、例えば第1指定値を電圧出力部400へと出力し、当該平均値が基準値よりも小さいときには、第1指定値よりも大きい第2指定値を電圧出力部400へと出力する。これにより、平均値が平均基準値よりも小さいときの電圧出力部の直流電圧を、平均値が平均基準値よりも大きいときの直流電圧よりも大きくできる。第1指定値、第2指定値、および、基準値は例えば所定の記憶媒体に予め記憶される。
これにより、光量が小さいときのS/N比を向上しつつも、光量が大きいときの白抜きまたはホワイトアウトを回避または抑制できる。
なお、上述の例では、画素選択用スイッチPS1およびリセット用スイッチRS1はMOS電界効果トランジスタであるものの、これに限らず、任意のスイッチを採用してもよい。また上述の例では、画素信号用トランジスタTr1はMOS電界効果トランジスタであるものの、これに限らず、例えば絶縁ゲート型の他のトランジスタを採用することもできる。
以上のように、画像センサ300は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。