JP6411272B2 - 油圧緩衝器 - Google Patents

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Description

本発明は油圧緩衝器に関する。
特許文献1に記載の油圧緩衝器では、減衰力発生装置がバルブユニットに小組され、ダンパケースに設けられたバルブ収容孔に挿入されている。このバルブユニットは、減衰力を調整するためのアジャスタを有しており、当該アジャスタを保持するアジャスタホルダをダンパケースに対して回転させることができる。そのため、ダンパケースに対するアジャスタホルダの取付け方向を自由に設定できる。
特開2011−174594号公報(2011年9月8日公開)
しかしながら、特許文献1に記載の油圧緩衝器では、ダンパケースの一方の側からしかバルブユニットを挿入できず、バルブユニットを挿入する向きは1通りである。すなわち、ダンパケースの開口部の側に、バルブユニットのアジャスタ側の端部が位置するように配置するしかない。このバルブユニットの配置は、作業者が減衰力を調整するためにアジャスタに対し、一方向のみに手を入れ、作業するしかない。そのため、油圧緩衝器の周囲の構造物の形状によっては、減衰力の調整を行いにくいことがある。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、減衰力を調整するための調整部に対する操作を容易にすることができる油圧緩衝器を提供することにある。
上記の課題を解決するために、本発明の一実施形態の油圧緩衝器は、減衰力を調整するための調整部を一方側に有するバルブユニットと、第1側部と、前記第1側部と対向する第2側部と、を有し、前記バルブユニットの前記調整部を前記第1側部側に配置する第1配置と、前記バルブユニットの前記調整部を前記第2側部側に配置する第2配置のいずれかにバルブユニットの位置調整が可能である収納部と、を備えていることを特徴としている。
上記の構成によれば、バルブユニットは、減衰力を調整するための調整部を一方側に有している。このバルブユニットを収納する収納部は、第1側部と、前記第1側部と対向する第2側部と、を有しており、バルブユニットの調整部を前記第1側部側に配置する第1配置と、バルブユニットの調整部を前記第2側部側に配置する第2配置のいずれかにバルブユニットの位置調整が可能である。
そのため、前記第1配置と、前記第2配置とのうち、調整部に手を伸ばして操作を行うことが容易な配置を作業者が選択することができ、バルブユニットの調整部に対する操作を容易にすることができる。
また、前記収納部は、前記バルブユニットを挿入することが可能な第1開口部と第2開口部とを有し、前記第1開口部を前記第1側部側に有し、前記第2開口部を前記第2側部側に有することが好ましい。
上記の構成により、収納部が有する第1側部側の第1開口部および第2側部側の第2開口部のそれぞれからバルブユニットを挿入することができる。
また、上記バルブユニットは、更に、油を貯留するシリンダと、上記シリンダ内に出入りするロッドとをさらに備え、上記バルブユニットは、上記ロッドが上記シリンダ内に進行する工程において減衰力を発生させる第1減衰バルブと、上記ロッドが上記シリンダ内から退行する工程において減衰力を発生させる第2減衰バルブとを備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、第1減衰バルブは、ロッド(例えば、ピストンロッド)がシリンダ内に進行する圧側工程において減衰力を発生させる。第2減衰バルブは、上記ロッドがシリンダ内から退行する伸側工程において減衰力を発生させる。第1減衰バルブおよび第2減衰バルブを組み合わせ、1つのバルブユニットとして実現することにより、コンパクトで取り付けおよび取り替えが容易な減衰力発生装置を実現できる。
また、前記バルブユニットは、前記第1減衰バルブと、当該第1減衰バルブへ前記油を導く第1流路を規定する第1流路規定部材とを含む第1サブユニットと、前記第2減衰バルブと、当該第2減衰バルブへ前記油を導く第2流路を規定する第2流路規定部材とを含む第2サブユニットとが、面対称となる位置関係にあることが好ましい。
上記の構成により、バルブユニットの配置を第1配置から第2配置に変更した場合でも、バルブユニットによって規定される圧側工程の流路および伸側工程の流路と、収納部に形成された流路とが適切につながるバルブユニットの形状を実現することができる。なお、第1サブユニットの形状と第2サブユニットの形状とが完全に面対称の関係にある必要はない。
また、上記バルブユニットには、上記第1減衰バルブへ上記油が導かれる流路を迂回する第1バイパス流路と、上記第2減衰バルブへ上記油が導かれる流路を迂回する第2バイパス流路とが形成されており、上記調整部は、上記第1バイパス流路の開口面積を調整する第1調整弁と、上記第2バイパス流路の開口面積を調整する第2調整弁とを備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、第1バイパス流路の開口面積を第1調整弁によって調整することによって、第1バイパス流路を油が流れるときに発生する減衰力を調整することができる。また、第2バイパス流路の開口面積を第2調整弁によって調整することによって、第2バイパス流路を油が流れるときに発生する減衰力を調整することができる。そのため、圧側工程および伸側工程において発生する減衰力をそれぞれ独立に調整することができる。
また、前記第1バイパス流路の第1最大開口面積と、前記第2バイパス流路の第2最大開口面積とは異なっていることが好ましい。
上記の構成によれば、最大開口面積が第1バイパス流路と第2バイパス流路とで異なることにより、第1調整弁による第1バイパス流路の開口制御の特性と、第2調整弁による第2バイパス流路の開口制御の特性とが異なる。
バルブユニットの第2配置では、第1配置とは逆に、第1調整弁によって伸側工程の減衰力が調節され、第2調整弁によって圧側工程の減衰力が調節される。そのため、バルブユニットを第1配置にした場合と、第2配置にした場合とで減衰力の調整特性が異なる。
この構成を利用し、バルブユニットの配置を変更することにより、減衰力の好ましい調整特性を作業者に選択させることができる。
また、前記第1調整弁の第1テーパー角と、前記第2調整弁の第2テーパー角とは異なっていることが好ましい。
上記の構成により、第1調整弁を所定の単位操作量だけ移動させたときの第1バイパス流路の開口面積の変化量と、第2調整弁を所定の単位操作量だけ移動させたときの第2バイパス流路の開口面積の変化量とが異なる。そのため、第1調整弁の減衰力の調整特性と、第2調整弁の減衰力の調整特性とは異なるものとなる。
それゆえ、バルブユニットを第1配置にするか第2配置にするかによって、第1調整弁および第2調整弁のいずれを圧側工程(または伸側工程)の減衰力調整に用いるかを、調整特性の観点から作業者に選択させることができる。
本発明は、バルブユニットの向きを複数選択でき、減衰力を調整するための調整部に対する操作を容易にすることができる。
(a)は、本実施形態に係る油圧緩衝器の外観を示す図であり、(b)は、(a)のA−A線矢視断面図である。 上記油圧緩衝器が備えるシリンダの構成を示す断面図である。 上記油圧緩衝器が備えるサブタンクの構成を示す断面図である。 上記油圧緩衝器が備えるバルブユニットの構成を示す断面図である。 (a)および(b)は、バルブ収納部に対して、互いに異なる向きでバルブユニットを配置した状態を示す断面図である。 圧側減衰力調整弁および伸側減衰力調整弁の調整能力を比較した結果を示すグラフである。
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施形態の油圧緩衝器1は、減衰力を発生させるバルブユニット5をバルブ収納部7に対して、第1配置および第2配置の2通りの配置で収納できるものである(図5参照)。油圧緩衝器1は、各種の車両に搭載されるショックアブソーバーであり、油圧緩衝器1が搭載される車両は、特に限定されず、二輪車であっても四輪車であってもよい。
(油圧緩衝器1の概要)
図1の(a)は、本実施形態の油圧緩衝器1の外観を示す図である。図1の(b)は、(a)のA−A線矢視断面図であり、図1の(a)におけるA−A線を含む平面でバルブ収納部7を切断したときの断面を示している。ただし、バルブ収納部7の内部に収納されているバルブユニット5については図示していない。図2は、油圧緩衝器1が備えるシリンダ2の構成を示す断面図である。
図1の(a)に示すように、油圧緩衝器1は、車体側取付部2Aを介して車体側に取付けられるシリンダ(ダンパシリンダ)2、車軸側取付部3Aを介して車軸側に取付けられるピストンロッド3、シリンダ2の外周部に配された懸架スプリング4、減衰力発生装置としてのバルブユニット5、サブタンク6およびバルブ収納部7を備えている。
図2に示すように、シリンダ2は、外筒21と内筒22とからなる2重管であり、この内筒22の内部にピストンロッド3が出入りする。内筒22の内部空間には油が貯留されており、当該内部空間は、ピストンロッド3の先端部に配されたピストン8により、ピストン側油室22Aとロッド側油室22Bとに区画される。外筒21と内筒22との間には外側流路23が形成されており、この外側流路23は、バルブユニット5が装填されているバルブ収納部7の内部空間と、ロッド側油室22Bとを連通する流路である。
車両が路面から衝撃力を受けると、懸架スプリング4が縮むことにより、当該衝撃力を吸収する。このとき、ピストンロッド3が内筒22の内部に押し込まれることにより、ピストン8は、ピストン側油室22Aの油を押し出し、押し出された油は、バルブユニット5へ流入する。この油がバルブユニット5に設けられた流路を通過することにより、懸架スプリング4の運動エネルギーを減衰させる力が発生する(圧側工程)。ピストンロッド3が内筒22から退くときにも(圧側行程と)逆方向の油の流れが生じ、減衰力が発生する(伸側工程)。バルブユニット5の詳細については後述する。
図3は、サブタンク6の構成を示す断面図である。図3に示すように、サブタンク6は、シリンダ2の内筒22に出入りするピストンロッド3の容積を補償するための油を蓄えるタンクであり、バルブユニット5を介して内筒22の内部に通じる連通路74と接続されている。このサブタンク6は、当該サブタンク6の内部空間をエア室61と油溜室62とに分離するブラダ63を備えている。エア室61には、高圧化されたガスが充填されており、エア室61の圧力によって油溜室62が加圧される。
ピストンロッド3の進入によって内筒22の内部空間の容積が減少したときには、過剰となった油が油溜室62に流入し、エア室61の体積が減少する。一方、ピストンロッド3の退行によってシリンダ2の内部空間の容積が増加したときには、不足した油を補填するために油が油溜室62から内筒22の内部へ流出する。このとき、エア室61は膨張する。このようにして、ピストンロッド3の容積が補償される。油の温度変化に伴う体積変化についても同様に補償される。
図1の(b)に示すように、バルブ収納部7は、バルブユニット5を収納するためのハウジングであり、バルブユニット5の収納空間を規定する内部壁面7Aを有している。このバルブ収納部7は、概ね筒状形状を有しており、バルブユニット5を挿入するための第1開口部7Bおよび第2開口部7Cを有している。すなわち、バルブ収納部7は、貫通した空洞空間を規定するハウジングである。第1開口部7Bが形成されている側の、バルブ収納部7の側部を第1側部と称し、第2開口部7Cが形成されている側の、バルブ収納部7の側部を第2側部と称する。
(バルブユニット5の詳細)
図4は、バルブユニット5の構成を示す断面図である。図4に示す構成は、あくまで一例であり、バルブユニット5の細部の構造については、適宜変更可能である。
図4に示すように、バルブ収納部7には、第1伸圧共用流路71および第3伸圧共用流路73が形成されている。第1伸圧共用流路71は、圧側工程においてピストン側油室22Aの油が流入する流路である。第3伸圧共用流路73は、伸側工程においてロッド側油室22Bの油が流入する流路である。図4に示すバルブユニット5の配置は、図5の(a)に示す第1配置に相当する。図5の(b)に示す第2配置では、バルブユニット5の各部の機能が逆転する。すなわち、第1配置では圧側工程において機能した部材は、第2配置では伸側工程において機能する(詳細については、後述する「バルブユニットの配置方向」において、詳述する)。
バルブユニット5は、小径部51Aおよび大径部51Bを有するバルブピース51を中心に有するユニットである。小径部51Aの端部には小径側バルブホルダ50が、大径部51Bの端部にはアジャスタホルダ59がそれぞれ外側から嵌合されている。アジャスタホルダ59の外周面にはキャップ60が配されている。
バルブピース51の小径部51Aの軸方向における中央にセンタープレート52が設けられており、このセンタープレート52から小径部51Aの先端部へ向かう方向に沿って、伸側減衰バルブ(第2減衰バルブ)53、伸側ピストン(第2流路規定部材)31、圧側積層バルブ(第2流路規定部材)32が設けられている。また、センタープレート52から大径部51Bへ向かう方向に沿って、圧側減衰バルブ(第1減衰バルブ)54、圧側ピストン(第1流路規定部材)41、伸側積層バルブ(第1流路規定部材)42が設けられている。
これら小径部51Aに配された部材は、小径部51Aの外周面と嵌合する開口部を有する部材であり、小径部51Aと大径部51Bとの段差面と、小径側バルブホルダ50との間においてセンタープレート52とともに挟圧固定されている。センタープレート52には、複数の半径方向流路52Aが形成されている。
伸側減衰バルブ53、伸側ピストン31および圧側積層バルブ32の組(第2サブユニット)と、圧側減衰バルブ54、圧側ピストン41および伸側積層バルブ42の組(第1サブユニット)とは、センタープレート52を基準として左右対称に(面対称に)配置されている。換言すれは、バルブユニット5は、当該バルブユニット5の中心軸510に沿って面対称の位置関係で配列された一対の減衰力発生用バルブ(伸側減衰バルブ53および圧側減衰バルブ54)を備えている。上記面対称とは、中心軸510に対して垂直な平面(センタープレート52の中心を含む平面)を対称面とするものである。
伸側減衰バルブ53および圧側減衰バルブ54は、小径部51Aを通す開口部を有する円盤状の部材(シム)の集合である。このシムは、可撓性を有しており、油が流れるときの圧力により撓むことができる。油の流圧によってシムが撓むことにより減衰力が発生する。
圧側減衰バルブ54は、ピストンロッド3が、シリンダ2内に進行する(すなわち、図2に示す進行方向310の方向へ移動する)圧側工程において減衰力を発生させる。伸側減衰バルブ53は、ピストンロッド3がシリンダ2内から退行する(すなわち、図2に示す退行方向320の方向へ移動する)伸側工程において減衰力を発生させる。
圧側ピストン41は、圧側減衰バルブ54へ油を導く圧側工程の流路を規定する部材であり、圧側ピストン41の内部に第2圧側流路(第2流路)41Aが形成されている。伸側ピストン31は、伸側減衰バルブ53へ油を導く伸側工程の流路を規定する部材であり、伸側ピストン31の内部に第1伸側流路(第1流路)31Bが形成されている。
圧側積層バルブ32は、板バルブの積層体からなり、圧側の流れのみを許容するチェック機能とともに、圧側減衰力発生機能も果たす。伸側積層バルブ42は、板バルブの積層体からなり、伸側の流れのみを許容するチェック機能とともに、伸側減衰力発生機能も果たす。ただし、圧側積層バルブ32および伸側積層バルブ42は、単なるチェックバルブであってもよい。
バルブピース51の内部には、減衰力を調整するための弁である伸側減衰力調整弁(第2調整弁)55および圧側減衰力調整弁(第1調整弁)56が配されている。
伸側減衰力調整弁55は、バルブピース51の中心軸510に沿って配されており、この伸側減衰力調整弁55により伸側バイパス流路(第2バイパス流路)75の開口部75Aの開口面積を調整することで、伸側バイパス流路75へ流れる油の量を調節でき、その結果、伸側減衰力を調整できる。伸側減衰力調整弁55の位置は、伸側アジャスタ(調整部)57によって調整することができる。
伸側バイパス流路75は、伸側減衰バルブ53へ油が導かれる流路を迂回するバイパス流路である。この伸側バイパス流路75は、第3伸圧共用流路73に連通しているとともに、バルブピース51に設けた孔51C、センタープレート52に設けた半径方向流路52Aを介して第2伸圧共用流路72に連通している。
圧側減衰力調整弁56は、伸側減衰力調整弁55のロッドの外周面と嵌合する開口部を有し、圧側バイパス流路(第1バイパス流路)76の開口部76Aを塞ぐ先端部56Aを有している。この先端部56Aは、所定のテーパー角を有しており、ニードル弁として機能する。開口部76Aは、小径部51Aの内部空間と大径部51Bの内部空間との境目に位置している。圧側減衰力調整弁56は、先端部56Aを開口部76Aに対して進退させることにより、圧側バイパス流路76へ流れる油の量を調節でき、その結果、圧側減衰力を調整することができる。圧側減衰力調整弁56の位置は、圧側アジャスタ(調整部)58によって調整することができる。
圧側バイパス流路76は、圧側減衰バルブ54へ油が導かれる流路を迂回するバイパス流路である。この圧側バイパス流路76は、第1伸圧共用流路71に連通しているとともに、バルブピース51に設けた孔51C、センタープレート52に設けた半径方向流路52Aを介して第2伸圧共用流路72に連通している。圧側バイパス流路76の開口部76Aの第2最大開口面積は、伸側バイパス流路75の開口部75Aの第1最大開口面積よりも大きい。
伸側アジャスタ57は、圧側工程における減衰力をユーザが調整するための操作部であり、伸側アジャスタ57の端部がアジャスタホルダ59の外側表面において露出している。伸側アジャスタ57のおねじ部にスライダ77が螺合されており、伸側アジャスタ57の回転によってスライダ77が移動し、この移動に伴い伸側減衰力調整弁55が移動する。
圧側アジャスタ58は、伸側工程における減衰力をユーザが調整するための操作部であり、圧側アジャスタ58の端部がアジャスタホルダ59の外側表面において露出している。圧側減衰力調整弁56のフランジ部には、圧側アジャスタ58のおねじ部が螺合されており、圧側アジャスタ58を回転させることよって圧側減衰力調整弁56が移動する。
なお、バルブ収納部7は貫通型でなくてもよい。バルブ収納部7の一方の端部にバルブユニット5を挿入するための第1開口部を設け、他方の端部には、伸側アジャスタ57および圧側アジャスタ58の端部を露出させるための第2開口部を設ける構成としてもよい。この構成では、第1開口部のみからバルブユニット5を挿入する。伸側アジャスタ57および圧側アジャスタ58の端部が第2開口部側に配置された場合には、当該第2開口部から露出している伸側アジャスタ57および圧側アジャスタ58の端部に対して作業者が操作できる。
(油圧緩衝器1における油の流れ)
油圧緩衝器1における油の流れについて、図4を参照しつつ説明する。図4では、圧側工程における油の流れを実線で示し、伸側工程における油の流れを破線で示している。
(圧側工程)
ピストンロッド3が内筒22の内部に押し込まれると、ピストン側油室22Aの油は、バルブ収納部7に形成された第1伸圧共用流路71を通って、バルブユニット5が配された空間へ流入する。そして、当該油は、圧側ピストン41に形成された第2圧側流路41Aを通り、油が圧側減衰バルブ54を押し開くことにより圧側減衰力が発生する。
圧側減衰バルブ54を通過した油は、第2伸圧共用流路72に流入し、ここで分岐される。その一部は、伸側ピストン31に形成された第1圧側流路(第2流路)31Aを通り、圧側積層バルブ32を通過した後、第3伸圧共用流路73、およびシリンダ2の外側流路23を通ってロッド側油室22Bに流入する。他方の油は、連通路74を通り、サブタンク6の油溜室62に排出される。
(伸側工程)
ピストンロッド3が内筒22から退行すると、ロッド側油室22Bの油は、内筒22に形成された開口部を通って外側流路23に流入した後、第3伸圧共用流路73を通って、バルブユニット5が配された空間へ流入する。そして、当該油は、伸側ピストン31に形成された第1伸側流路31Bを通り、油が伸側減衰バルブ53を押し開くことにより伸側減衰力が発生する。
伸側減衰バルブ53を通過した油は、第2伸圧共用流路72に流入し、ここで油溜室62から補給された油と合流する。合流した油は、圧側ピストン41に形成された第2伸側流路(第1流路)41Bを通り、伸側積層バルブ42を通過した後、第1伸圧共用流路71を経て、ピストン側油室22Aに流入する。
(減衰力調整方法)
作業者が、圧側アジャスタ58を操作することにより圧側減衰力調整弁56を退行させると、圧側工程において圧側バイパス流路76へ油が流入する。油が圧側バイパス流路76の開口部76Aを通過するとき、二乗孔特性(オリフィス特性)により減衰力が発生する。そのため、圧側アジャスタ58を操作することにより、圧側バイパス流路76を通過する油の量を調整でき、ピストンロッド3が低速度で作動するときの圧側工程における減衰力を調整できる。
一方、作業者が、伸側アジャスタ57を操作することにより伸側減衰力調整弁55を退行させると、油が伸側バイパス流路75を通過するようになる。油が伸側バイパス流路75の開口部75Aを通過するとき、二乗孔特性により減衰力が発生する。そのため、伸側アジャスタ57を操作することにより、伸側バイパス流路75を通過する油の量を調整でき、ピストンロッド3が低速度で作動するときの伸側工程における減衰力を調整できる。
(バルブユニット5の配置方向)
図5の(a)および(b)は、バルブ収納部7に対して、互いに異なる向きにバルブユニット5を配置した状態を示す断面図であり、図1に示した油圧緩衝器1をXZ平面によって切断したときのバルブユニット5およびバルブ収納部7の断面図である。孔7Dは、内筒22へ通じる孔であり、孔7Eは、外側流路23へ通じる孔である。
図5の(a)では、バルブユニット5の、圧側アジャスタ58および伸側アジャスタ57が配された側の端部(アジャスタ側端部(一方側の端部)81)が図面左側に配置されている(第1配置)。一方、図5の(b)では、アジャスタ側端部81が図面右側に配置されている(第2配置)。
バルブ収納部7は、互いに対向する位置にある第1側部(第1開口部7B側の側部)および第2側部(第2開口部7C側の側部)を有し、第1開口部7Bとアジャスタ側端部81とが近接する第1配置、および第2開口部7Cとアジャスタ側端部81とが近接する第2配置の2通りの配置でバルブユニット5の位置調整が可能な形状を有している。
図5の(a)および(b)に示すように、バルブユニット5の、アジャスタ側端部81とは反対側の端部(小径側端部82)が位置する側には、キャップ91が嵌め込まれている。第1配置、第2配置のいずれでも、バルブ収納部7に対するセンタープレート52の位置はほとんど変化していない。
この構成により、第1配置および第2配置のいずれにおいても、バルブ収納部7に形成された第1伸圧共用流路71、第2伸圧共用流路72、第3伸圧共用流路73および連通路74の入り口と、バルブユニット5の形状によって規定された各流路の入り口との相対位置がほとんどずれない。そのため、第1配置および第2配置のいずれにおいても、油の流路が好ましい状態でつながっている。
なお、第1配置および第2配置において、バルブユニット5の形状によって規定される流路の入り口と、バルブ収納部7に形成された流路の入り口とが完全に一致する必要は必ずしもない。バルブユニット5が減衰力発生装置として機能できる程度の量の油が流れる一連の流路が第1配置および第2配置において形成されればよい。
(油圧緩衝器1の効果)
油圧緩衝器1では、バルブユニット5を2通りの配置で収納することができる。そのため、油圧緩衝器1の周囲の構造物の形状に応じて、アジャスタ側端部81を、作業者の手が届きやすい側に配置することができ、減衰力の調整を容易にすることができる。
また、バルブユニット5の配置を変えることによって、圧側減衰力の調整能力と伸側減衰力の調整能力とを逆転させることができる。図6は、圧側減衰力調整弁56および伸側減衰力調整弁55の調整能力を比較した結果を示す図である。図6のグラフの横軸は、圧側アジャスタ58または伸側アジャスタ57を回転させたときのクリック数を示し、縦軸は、圧側バイパス流路76または伸側バイパス流路75の開口面積を示している。
図6には、図4および図5の(a)に示す第1配置において、圧側減衰力調整弁56の先端部56Aのテーパー角がX°である場合とY°である場合との圧側バイパス流路76の開口面積の変化量の差が矢印100で示されている。また、上記配置において、伸側減衰力調整弁55の先端部のテーパー角がX°である場合とY°である場合との伸側バイパス流路75の開口面積の変化量の差が矢印200で示されている。
図6に示すように、伸側減衰力調整弁55は、圧側減衰力調整弁56よりもバイパス流路の開口面積を絞ることができる。これは、伸側減衰力調整弁55が、圧側減衰力調整弁56の先端部55Aよりも先細った先端形状を有している(テーパー角が小さい)ためである。
第1配置では、圧側工程においてピストン側油室22Aからバルブユニット5に流入する油の量は、伸側工程においてロッド側油室22Bからバルブユニット5に流入する油の量よりも多い。なぜなら、伸側工程では、ピストンロッド3の体積分だけバルブユニット5へ流入する油量が減るからである。そのため、第1配置では、開口面積を絞りにくい圧側減衰力調整弁56の調整対象となる油の量が多くなり、圧側減衰力調整弁56による減衰力調整の可変幅を広げることができる。
一方、図5の(b)に示す第2配置では、伸側減衰力調整弁55が圧側減衰力調整弁として機能し、圧側減衰力調整弁56が伸側減衰力調整弁として機能する。そのため、伸側減衰力調整弁55および圧側減衰力調整弁56の調整対象となる油の量は、第1配置における量と逆になり、開口面積を絞り易い、ニードル角の小さい調整弁(伸側減衰力調整弁55)によって圧側減衰力を精度高く調整することができる。
また、伸側バイパス流路75の第1最大開口面積は、圧側バイパス流路76の第2最大開口面積よりも小さい。このような第1最大開口面積と第2最大開口面積との違いも減衰力の調整幅に影響を及ぼしている。
このように、ユーザのニーズに応じてバルブユニット5の配置を前記第1配置と前記第2配置とのいずれかに変えることによって、減衰力の調整幅(可変幅)を変化させることができる。このような圧側および伸側減衰力の調整幅を変更できる従来技術は、本発明者らが知る限りにおいて存在せず、当該調整幅を変更することは、本発明の第2の課題であると言える。
〔変更例〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、上述の構成では、バルブユニット5に、圧側工程において減衰力を発生させる圧側減衰バルブ54と、伸側工程において減衰力を発生させる伸側減衰バルブ53とが備えられていたが、伸側減衰バルブ53および圧側減衰バルブ54の一方がピストン8に設けられていてもよい。例えば、圧側減衰バルブ54、圧側減衰力調整弁56および圧側アジャスタ58がバルブユニット5に設けられており、伸側減衰バルブ53がピストン8に設けられていてもよい。
この構成では、ピストン側油室22Aとロッド側油室22Bとを連通する流路がピストン8に形成されており、伸側工程において当該流路を油が流れるときに伸側減衰バルブ53が開かれ、減衰力が発生する。圧側工程では、ピストンロッド3の体積分の油がバルブユニット5に流入し、圧側減衰バルブ54が開かれることにより減衰力が発生する。
この構成においても、バルブユニット5の配置を2通り可能にすることにより、圧側アジャスタ58が作業者の手が届きやすい側に位置するようにバルブユニット5の向きを作業者に選択させることができる。
本発明は、各種の車両に搭載される油圧緩衝器に適用することができる。
1 油圧緩衝器
2 シリンダ
3 ピストンロッド
5 バルブユニット
7 バルブ収納部(収納部)
7B 第1開口部(第1側部)
7C 第2開口部(第2側部)
31 伸側ピストン(第2流路規定部材、第2サブユニット)
31A 第1圧側流路(第2流路)
31B 第1伸側流路(第1流路)
32 圧側積層バルブ(第2流路規定部材、第2サブユニット)
41 圧側ピストン(第1流路規定部材、第1サブユニット)
41A 第2圧側流路(第2流路)
41B 第2伸側流路(第1流路)
42 伸側積層バルブ(第1流路規定部材、第1サブユニット)
53 伸側減衰バルブ(第2減衰バルブ、第2サブユニット)
54 圧側減衰バルブ(第1減衰バルブ、第1サブユニット)
55 伸側減衰力調整弁(調整部、第2調整弁)
56 圧側減衰力調整弁(調整部、第1調整弁)
57 伸側アジャスタ(調整部)
58 圧側アジャスタ(調整部)
75 伸側バイパス流路(第2バイパス流路)
76 圧側バイパス流路(第1バイパス流路)
81 アジャスタ側端部
82 小径側端部

Claims (7)

  1. 減衰力を調整するための調整部を一方側に有するバルブユニットと、
    第1側部と、前記第1側部と対向する第2側部と、を有し、
    前記バルブユニットの前記調整部を前記第1側部側に配置する第1配置と、前記バルブユニットの前記調整部を前記第2側部側に配置する第2配置のいずれかにバルブユニットの位置調整が可能である収納部と、
    を備えていることを特徴とする油圧緩衝器。
  2. 前記収納部は、前記バルブユニットを挿入することが可能な第1開口部と第2開口部とを有し、
    前記第1開口部を前記第1側部側に有し、前記第2開口部を前記第2側部側に有することを特徴とする請求項1に記載の油圧緩衝器。
  3. 更に、
    油を貯留するシリンダと、
    前記シリンダ内に出入りするロッドとを備え、
    前記バルブユニットは、
    前記ロッドが前記シリンダ内に進行する工程において減衰力を発生させる第1減衰バルブと、
    前記ロッドが前記シリンダ内から退行する工程において減衰力を発生させる第2減衰バルブとを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の油圧緩衝器。
  4. 前記バルブユニットは、
    前記第1減衰バルブと、当該第1減衰バルブへ前記油を導く第1流路を規定する第1流路規定部材とを含む第1サブユニットと、
    前記第2減衰バルブと、当該第2減衰バルブへ前記油を導く第2流路を規定する第2流路規定部材とを含む第2サブユニットとが、面対称となる位置関係にあることを特徴とする請求項3に記載の油圧緩衝器。
  5. 前記バルブユニットには、
    前記第1減衰バルブへ前記油が導かれる流路を迂回する第1バイパス流路と、
    前記第2減衰バルブへ前記油が導かれる流路を迂回する第2バイパス流路とが形成されており、
    前記調整部は、
    前記第1バイパス流路の開口面積を調整する第1調整弁と、
    前記第2バイパス流路の開口面積を調整する第2調整弁とを備えていることを特徴とする請求項3または4に記載の油圧緩衝器。
  6. 前記第1バイパス流路の第1最大開口面積と、前記第2バイパス流路の第2最大開口面積とは異なっていることを特徴とする請求項5に記載の油圧緩衝器。
  7. 前記第1調整弁の第1テーパー角と、前記第2調整弁の第2テーパー角とは異なっていることを特徴とする請求項5または6に記載の油圧緩衝器。
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