以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の配管検査システムの構成を示す概略図である。
本実施形態の配管検査システムは、電磁超音波発振子(以下「EMAT」と呼ぶ)1aおよび光ファイバセンサ1bを備える超音波光プローブ1と、光源2a、光干渉計2b、波形信号発生器2c、および増幅器2dを備える配管検査装置2と、コンピュータ3とを備えている。超音波光プローブ1は、配管4の表面に取り付けられている。本実施形態の配管4は例えば、原子力発電プラント、火力発電プラント、または地熱発電プラント内の配管や、パイプラインまたは水道管を構成する配管などである。
EMAT1aは、光ファイバセンサ1bを介して配管4に取り付けられており、電磁力の作用により配管4内に超音波を励起する。光ファイバセンサ1bは、線状の光ファイバが渦巻状(蚊取り線香状)に巻かれて円形平板になっており、励起された超音波の共振波をレーザ光により検出するために使用される。この円形平板は、例えば、5円玉硬貨と同程度のサイズを有している。
波形信号発生器2cと増幅器2dは、コンピュータ3による制御のもと、高周波電流を発生および増幅させ、EMAT1aに供給する。光源2aは、基準レーザ光を発生させ、光ファイバセンサ1bに供給する。光干渉計2bは、光ファイバセンサ1b中を透過した基準レーザ光の変動を検出する。
コンピュータ3は、配管4の腐食や減肉など、配管4の劣化に関する判定閾値が格納された診断データベースを有している。コンピュータ3は、光干渉計2bから受信した原波形の検出結果や、この原波形に信号処理を施した処理結果を、診断データベース内のデータと照合して、配管4の劣化度を判定する。
図2は、第1実施形態の超音波光プローブ1の構成を示す概略図である。
EMAT1aは、永久磁石A1と電気コイルA2とを備えている。永久磁石A1と電気コイルA2は、樹脂シート1cを介して一体化されている。
永久磁石A1の耐熱性や耐久性を支配する要素としては、永久磁石A1の材質がある。耐熱性のよい永久磁石A1の材質の例としては、サマリウムコバルトが挙げられる。サマリウムコバルトの減磁点は350〜400℃の間にあるため、サマリウムコバルトの永久磁石A1を高温で使用する場合には、350℃以下で使用することが望ましい。
また、コバルトを希少金属と考える観点から、コバルトの代替材料を使用した永久磁石A1も開発され始めている。例えば、サマリウム鉄系(Sm−Fe−N系など)の永久磁石A1が、ボンド磁石として商品化されている。高温アプリケーションである光ファイバEMAT法を実行するために、永久磁石A1としてサマリウム鉄系の焼結磁石を使用すれば、より安価で環境にやさしい超音波光プローブ1を実現することができる。
電気コイルA2には、増幅器2dから高周波電流が供給される。その結果、電気コイルA2内の電磁誘導で発生するローレンツ力や磁歪により、配管4の内部に超音波が励起される。なお、高周波電流は、コンピュータ3による波形信号発生器2cおよび増幅器2dの制御により、所定の周波数および振幅を有するように調整される。
光ファイバセンサ1bは、樹脂シート1cと接着剤1dにより、EMAT1aと一体化されている。また、超音波光プローブ1は、接着剤1dにより、測定対象の配管4に接着されている。
EMAT1aから配管4に超音波を入力すると、この超音波の一部が光ファイバセンサ1bに到達する。ここで、光源2aからの基準レーザ光が光ファイバセンサ1bに入力されている状態で、光ファイバセンサ1bに超音波が到達すると、光ファイバセンサ1bが超音波の影響で微小に伸縮し、基準レーザ光にドップラー周波数のシフトや偏波面の変動が生じる。
光干渉計2bは、この光ファイバセンサ1b中を透過してきた基準レーザ光を光電変換して計測することで、この変動を検出する。このように、光干渉計2bは、超音波の肉厚方向の共振状態を、基準レーザ光の検出を通して検出することができる。コンピュータ3は、光干渉計2bによる基準レーザ光の検出結果に基づいて、配管4の状態を判定することができる。
超音波光プローブ1は、EMAT1aの形状を図2のような単純な形状としても、肉厚計測上は十分な信号強度が得られる。肉厚計測の精度や感度を左右する要因としては、EMAT1aの発振パワーと、光ファイバセンサ1bの配管4への密着度が挙げられる。そのため、高温下での永久磁石A1の磁力と、光ファイバセンサ1bと配管4との接合部の信頼性(耐久性)が重要となる。
永久磁石A1の磁力に関しては、高温用の耐熱性の永久磁石A1を使いこれを鍍金することにより、永久磁石A1の酸化を防ぐ方法がある。鍍金した高温用の永久磁石A1と、ポリイミドコーティングの電気コイルA2とを使うことで、EMAT1aの発振パワーを高温下でも保持することができる。
一方、光ファイバセンサ1bと配管4との接合方法の例としては、高温接着剤による接着や、溶射などが挙げられる。光ファイバセンサ1bは、配管4の表面形状や曲率などに合わせて配管4の表面に密着させるように配置し、接着や溶射により配管4の表面に固定することが望ましい。この際、光ファイバセンサ1bと配管4は、直接密着させてもよいし、フレキシブルシートなどの間接材を介して密着させてもよい。後者の場合、接合強度が高くなることで耐熱性や耐久性などの信頼性を長期に渡って向上させることや、施工が容易なため安価な材料で接合を行うことが可能となる。
ポリイミドコーティングの光ファイバセンサ1bを接着する場合には、ポリイミド系の接着剤が長期信頼性がよく、エポキシ系やシリコン系の接着剤は比較的劣化が早い傾向がある。ポリイミドコーティングの光ファイバセンサ1bを金属製の配管4に接合する際には、ポリイミド系の接着剤を使用して真空含浸法にて接着することが望ましい。
真空含浸法ではまず、光ファイバセンサ1bを、接着剤を含浸させたガラスクロスで挟む。次に、これを面状ヒーターまたはラバーヒーターと一緒に配管4の表面に真空パックして大気圧で押し付けつつ、ヒーターの温度調整により所定の加熱硬化を行う。次に、硬化および接着後に、リリースフィルム、ブリーザー、ヒーター、パックフィルムなどを、ガラスクロスの表面から取り外す。
また、光ファイバセンサ1bは、次の手順で作製可能である。まず、耐熱性コーティングファイバを渦巻状に巻く。次に、渦巻状に巻いた耐熱性コーティングファイバを、ポリイミドなどの耐熱材からなるフレキシブルシート上に、ポリイミドワニスを用いて固定する。なお、光ファイバセンサ1bは、このフレキシブルシートと一緒に接着剤を含浸したガラスクロスに挟んでもよいし、直接ガラスクロスに挟んでもよい。
また、ポリイミド系の接着剤の代わりに、金属粉を配合したセラミックス系の接着剤を使用してもよい。金属粉を配合したセラミックス系の接着剤には、施工性と耐久性の良いものあることが確認されている。このような接着剤を用いる場合、光ファイバセンサ1bを配管4の表面において単純に接着剤を塗布して保持し、接着剤を室温硬化させることにより、十分な接合強度を得られる。この場合、光ファイバセンサ1bと配管4の間にガラスクロスを介在させてもよいし、介在させなくてもよい。
図3は、第1実施形態の超音波光プローブ1の配管4への取り付け例を示す概略図である。
本実施形態では、複数の超音波光プローブ1を配管4の外面に取り付け、配管4の内面と外面から多重反射した共振超音波信号をコンピュータ3により解析することで、配管4の肉厚を測定する。配管4の材質は、例えば炭素鋼である。本実施形態では、超音波光プローブ1をあらかじめ配管4と断熱材(保温材)5との間に埋め込んでおくことで、肉厚測定(劣化度判定)をオンラインで行うことが可能となる。本実施形態によれば、肉厚測定のたびに断熱材5を解体、復旧する必要がないため、発電プラントの安全性や設備稼働率を高めることができる。
配管減肉管理規格では、配管4の肉厚測定点の位置が、配管4の径に応じて決められている。配管4のサイズが150A(外径:約165mm)以上の場合は、配管4の周方向に8箇所(45°間隔)と決められている。また、配管4のサイズが150A未満の場合は、配管4の周方向に4箇所(90°間隔)と決められている。図3は、前者の場合の例を示している。なお、配管4の軸方向については、配管4の外径長さ以下の間隔で配管4の肉厚測定点を設定することが決められている。
これらの超音波光プローブ1を用いて配管4の肉厚を測定する方法を説明する。
EMAT1aの電気コイルA2は、高周波電流が流れると、配管4を振動させ、配管4内に超音波を発生させる。この際、コンピュータ3は、波形信号発生器2cを通じて高周波電流の周波数を変化させることにより、超音波の周波数を所望の周波数帯域でスイープさせる。
配管4内の超音波は、光ファイバセンサ1bに伝播する。光ファイバセンサ1bに基準レーザ光が入力されている状態で光ファイバセンサ1bに超音波が到達すると、基準レーザ光にドップラー周波数のシフトや偏波面の変動が生じる。この変動値(伸縮速度)を光干渉計2bが光電変換により電圧値に変換することで、配管4内を伝播する超音波の周波数を計測することが可能となる。
配管4の肉厚dと、配管4内の超音波の波長λとの間に、λ=2dの関係が成り立つとき、超音波の入射波と反射波とが共振し、これらの合成波の振幅が大きくなる。この関係は、配管4内の超音波の周波数fと音速vを用いて、f=v/2dと表すことができる。よって、共振発生時の超音波の周波数fと音速vとが得られれば、配管4の肉厚dを求めることができる。
そこで、本実施形態では、配管4の肉厚dを測定する際、超音波の周波数を所望の周波数帯域でスイープさせ、共振周波数fを測定する。一方、音速vは、配管4の材質から算出可能である。よって、本実施形態では、測定された共振周波数fと、算出された音速vとを用いて、配管4の肉厚dを導出することができる。
例えば、肉厚15mmの鋼製の配管4の場合、200kHzの超音波を入力すると共振が生じる。本実施形態によれば、配管4が鋼製であることと、共振周波数fが200kHzであることが分かれば、配管4の肉厚dが15mmであることを決定できる。
本実施形態の超音波光プローブ1は、原子力発電所や火力発電所の配管4のエルボ部やオリフィス部の下流側など、統計的に減肉しやすいと考えられる箇所や、地熱発電所配管や水道管を構成する配管4の閉塞を起こしやすい箇所等に取り付けることが望ましい。また、本実施形態の波形信号発生器2cは、配管4内に発生させる振動の周波数を、配管4の厚さに応じて1Hz〜10MHzの任意の周波数に設定可能なように構成することが望ましい。また、本実施形態のコンピュータ3は、光干渉計2bを介して、周波数20kHz〜10MHzの超音波振動だけでなく、周波数1Hz〜20kHzの非超音波振動も検出可能なように構成することが望ましい。
図3に示す符号11、12はそれぞれ、超音波光プローブ1、配管検査装置2(光干渉計2b)に接続された光ファイバを示す。これらの光ファイバ11、12は、表面が露出していてもよいし、樹脂シートやフレキシブルシート材などの部材で挟まれていてもよいし、これらの組み合わせで構成されていてもよい。また、光ファイバ11、12とこれらを挟む部材との間の隙間には、接着剤が充填されていてもよい。光ファイバ11、12の詳細については、後述する。
(1)第1実施形態における電力供給および信号入出力
図4は、第1実施形態の配管検査システムの構成を示す概略図である。
図4は、光ファイバセンサ1bの一方の端部に光ファイバ11を介して接続されたプローブ用レーザ発光端21と、光干渉計2bに光ファイバ12を介して接続されたレーザ受光端22と、光源2aに光ファイバ13を介して接続されたレーザ発光端23と、光ファイバセンサ1bの他方の端部に光ファイバ14を介して接続されたプローブ用レーザ受光端24とを示している。
図4はさらに、超音波光プローブ1と離間して配置されたワイヤレス給電発信回路25と、超音波光プローブ1に接続されたワイヤレス給電受信回路26およびチャープ波発信回路27とを示している。ワイヤレス給電発信回路25は、例えば、配管検査装置2内に配置されている。
光源2aから発生した基準レーザ光は、レーザ発光端23から発信され、プローブ用レーザ受光端24により受信されることで、光ファイバセンサ1bに入力される。また、配管4から超音波が到達した光ファイバセンサ1b中を透過した基準レーザ光は、プローブ用レーザ発光端21から発信され、レーザ受光端22により受信されることで、光干渉計2bへと出力される。コンピュータ3は、この基準レーザ光に基づいて、配管4の状態を判定する。
このように、本実施形態では、超音波光プローブ1と配管検査装置2との間の信号(基準レーザ光)の送受信が、ワイヤレス通信を利用して行われる。よって、本実施形態によれば、発電プラントの施工時や運用時に信号線(光ファイバケーブル)の配線ボリュームが現地で多量になることを抑制することができる。よって、本実施形態によれば、現地での信号線の取り回しを容易にすることができると共に、現地での不慮の事故で信号線が断線される確率を低減することができる。
また、ワイヤレス給電発信回路25は、ワイヤレス給電によりワイヤレス給電受信回路26に電力を供給する。この電力は、EMAT1aに供給され、超音波を発振するために用いられる。ワイヤレス給電発信回路25とワイヤレス給電受信回路26との間の電力の授受は、例えば、マイクロ波送電またはレーザ送電により行われる。
このように、本実施形態では、超音波光プローブ1への電力供給が、ワイヤレス給電を利用して行われる。よって、本実施形態によれば、発電プラントの施工時や運用時に電源線(EMATケーブル)の配線ボリュームが現地で多量になることを抑制することができる。よって、本実施形態によれば、現地での電源線の取り回しを容易にすることができると共に、現地での不慮の事故で電源線が断線される確率を低減することができる。
図5は、第1実施形態のプローブ用レーザ発光端21とレーザ受光端22の構成を示す概略図である。
プローブ用レーザ発光端21は、レンズ21aと、光ファイバ11の端部に接続され、レーザ光を増幅する光増幅器21bとを備えている。レーザ受光端22は、レンズ22bと、光ファイバ12の端部付近に配置され、レーザ光の導波路を制御する制御装置22bとを備えている。このようなプローブ用レーザ発光端21とレーザ受光端22により、超音波光プローブ1から配管検査装置2にレーザ光を供給することができる。
なお、レーザ発光端23とプローブ用レーザ受光端24はそれぞれ、プローブ用レーザ発光端21とレーザ受光端22と同一の構造を有している。
図6は、第1実施形態の端子台31の構成を示す概略図である。
図6は、配管4に取り付けられた複数の超音波光プローブ1と、これらの超音波光プローブ1に光ファイバ14を介して接続された複数のプローブ用レーザ受光端24と、これらのプローブ用レーザ受光端24が取り付けられた端子台31とを示している。
図6はさらに、不図示の配管検査装置2に光ファイバ13を介して接続されたレーザ発光端23を示している。本実施形態では、1つのレーザ発光端23が、複数のプローブ用レーザ受光端24と対応している。
配管検査装置2は、ある超音波光プローブ1にレーザ光を供給する際、レーザ発光端23から、その超音波光プローブ1に接続されたプローブ用レーザ受光端24に、レーザ光を照射する。これにより、この超音波光プローブ1を利用した配管検査を行うことが可能となる。
なお、ワイヤレス給電発信回路25からワイヤレス給電受信回路26に電力を供給する機構は、端子台31を用いて構成してもよいし、端子台31を用いずに構成してもよい。ワイヤレス給電発信回路25からワイヤレス給電受信回路26への電力供給は、例えば、マイクロ波送電やレーザ送電により行われる。マイクロ波やレーザ光を用いることには、複数のワイヤレス給電受信回路26のうちの特定のワイヤレス給電受信回路26に電力を供給する際に、このワイヤレス給電受信回路26にねらいを定めて電磁波を照射しやすいという利点がある。なお、本実施形態では、超音波光プローブ1の電気コイルA2にマイクロ波やレーザ光を直接照射することで、超音波光プローブ1に電力を供給してもよい。
図7は、第1実施形態のワイヤレス給電の例を説明するための図である。
本実施形態のワイヤレス給電は、例えば、図7(a)〜図7(d)に示す給電方式により行うことが可能である。
図7(a)は、1次コイルに電流を流して生じる磁束を媒介として、これに隣接した2次コイルに起電力が発生する電磁誘導を利用した「電磁誘導方式」を示す。
図7(b)は、1次コイルと2次コイルとの間での磁界の共鳴現象を利用した「磁界共鳴方式」を示す。
図7(c)は、電極間の電界結合を利用した「電界結合方式」を示す。
図7(d)は、電流を電磁波に変換してアンテナを介して送受信する「電波受信方式」を示す。
なお、本実施形態の超音波光プローブ1は、スパイラルコイルの形状の電気コイルA2を備えているため、ワイヤレス給電の受信デバイスとして使用可能である。この場合、電気コイルA2に電磁波(例えば、マイクロ波やレーザ光)を直接照射することで、ワイヤレス給電を行ってもよい。
図8は、第1実施形態の環境発電(エネルギーハーベスティング)の例を説明するための図である。
本実施形態では、超音波光プローブ1への電源供給を、環境発電素子を利用して行ってもよい。
図8の領域Aは、熱電変換素子41と、熱電変換素子41に接続された熱交換用デバイス42と、熱電変換素子41に接続された蓄電・昇圧回路43とを示している。
熱電変換素子41は、配管4に取り付けられており、配管4と周囲とに温度差がある場合に、配管4からの熱エネルギーを電気に変換することで発電する。また、熱交換用デバイス42は、発電プラント内の空気、蒸気、水、地中熱などの熱を熱電変換素子41に供給する。この場合、熱電変換素子41は、熱交換用デバイス42からの熱エネルギーを電気に変換することで発電する(なお、このように熱電変換素子41を利用する場合、熱電変換素子41は配管4以外の場所に取り付けられていてもよい)。本実施形態では、熱電変換素子41の代わりにMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)タービンを利用してもよい。
蓄電・昇圧回路43は、熱電変換素子41により得られた電力を蓄電したり、その電圧を昇圧する。蓄電・昇圧回路43は、超音波光プローブ1に接続されており、超音波光プローブ1に有線で電力を供給する。なお、蓄電・昇圧回路43は、ワイヤレス給電を利用して超音波光プローブ1に電力を供給してもよい。
図8の領域Bは、振動発電素子51と、振動発電素子51に接続された蓄電・昇圧回路52とを示している。
振動発電素子51は、配管4に取り付けられており、プラント稼動中の配管4の振動エネルギーを電気に変換することで発電する。振動発電素子51の例としては、圧電素子や静電素子などが挙げられる。蓄電・昇圧回路52の構成は、蓄電・昇圧回路43と同様である。
図8の領域Cは、光電変換素子61と、光電変換素子61に接続された蓄電・昇圧回路62とを示している。
光電変換素子61は、現地の太陽光や室内光のエネルギーを電気に変換することで発電する。光電変換素子61の例としては、太陽電池が挙げられる。光電変換素子61は、配管4に取り付けられていてもよいし、配管4以外の場所に取り付けられていてもよい。蓄電・昇圧回路62の構成は、蓄電・昇圧回路43と同様である。
このように、本実施形態では、超音波光プローブ1への電力供給を、環境発電を利用して行ってもよい。この場合、本実施形態によれば、超音波光プローブ1と環境発電素子を近距離に配置することで、発電プラントの施工時や運用時に電源線の配線ボリュームが現地で多量になることを抑制することができる。よって、本実施形態によれば、現地での電源線の取り回しを容易にすることができると共に、現地での不慮の事故で電源線が断線される確率を低減することができる。
(2)第1実施形態の光ファイバセンサ1b
図9は、第1実施形態の光ファイバセンサ1bの構成例を説明するための図である。
図9(a)は、図4の構造と同一の構造を有する光ファイバセンサ1bを示す。図9(a)は、光ファイバ11、14がまとめて包囲されたチューブ部71と、光ファイバ11、14が別々に包囲された保護被膜付きファイバ部72とを示している。
一方、図9(b)は、この変形例に相当する光ファイバセンサ1bを示す。図9(b)の符号B1、B2はそれぞれ、光ファイバセンサ1bの第1、第2の端部を示している。第1の端部B1は、基準レーザ光の入力線と出力線とを兼ねた光ファイバ74を介して、発光端と受光端とを兼ねたプローブ用レーザ発光・受光端75に接続されている。また、第2の端部B2は、基準レーザ光を反射可能な反射面を有する反射端73に接続されている。
図9(b)の光ファイバセンサ1bでは、光源2aからの基準レーザ光が、プローブ用レーザ発光・受光端75を介して第1の端部B1に入力される。このとき、光ファイバセンサ1bに基準レーザ光が入力されている状態で光ファイバセンサ1bに超音波が到達すると、基準レーザ光にドップラー周波数のシフトや偏波面の変動が生じる。
この基準レーザ光は、光ファイバセンサ1b中を第2の端部B2に向かって進み、反射端73の反射面で反射され、光ファイバセンサ1b中を第1の端部B1に向かって戻っていく。そして、この基準レーザ光は、第1の端部B1から出力され、プローブ用レーザ発光・受光端75を介して光干渉計2bに供給される。コンピュータ3は、光干渉計2bによる基準レーザ光の検出結果に基づいて、配管4の状態を判定することができる。
図9(b)の構造の光ファイバセンサ1bによれば、各超音波光プローブ1用の2本の光ファイバ11、14を1本の光ファイバ74に減らし、発電プラント内の信号線の配線ボリュームを低減することができる。
なお、図9(b)の構造は、光ファイバセンサ1bと配管検査装置2とが無線接続されている場合だけでなく、光ファイバセンサ1bと配管検査装置2とが有線接続されている場合にも適用可能である。
図10は、図9(a)および図9(b)の場合における基準レーザ光の強度測定の実験結果を示したグラフである。
曲線C1は、図9(a)の場合に光干渉計2bにより検出された基準レーザ光の検出強度を示す。曲線C2は、図9(b)の場合に光干渉計2bにより検出された基準レーザ光の検出強度を示す。図10の実験における試験供試体は、肉厚5mm、サイズ150×150mmの炭素鋼SS400とした。
図9(b)の場合には、共振周波数スペクトルにベースノイズ時間変動によるスパイク状ノイズが重なっているが、図9(a)の場合と同じ卓越共振周波数が得られる。よって、図9(b)の場合には、図9(a)の場合と同様に、配管4の肉厚測定が可能である。
また、図10に示すように、図9(b)の場合の基準レーザ光の振動強度は、図9(a)の場合の約4倍となっている。よって、図9(b)の場合の基準レーザ光の測定波形振幅は、図9(a)の場合の約2倍となる。これは、図9(b)の基準レーザ光が光ファイバセンサ1b中を往復し、行きと戻りの基準レーザ光が重なり合うことにより、図9(b)の基準レーザ光の振幅が2倍に増加するためである。
よって、図9(b)の構造によれば、基準レーザ光の検出強度を増大させることができ、配管4の検査の精度を向上させることができる。
図11は、第1実施形態の光ファイバセンサ1b同士の第1の接続例を示す図である。
図11は、同じ配管4に取り付けられた複数(ここでは4つ)の超音波光プローブ1を示している。これらの超音波光プローブ1の光ファイバセンサ1b同士は、光ファイバ76により互いに直列に接続されている。各光ファイバ76は、互いに隣接する光ファイバセンサ1b同士を単線接続しており、一方の光ファイバセンサ1bの第1の端部B1と、他方の光ファイバセンサ1bの第2の端部B2とに接続されている。符号[A]〜[D]は、これらの超音波光プローブ1同士を区別するために付されている。
これらの光ファイバセンサ1bのうち、一方の端部(以下「前端部」と呼ぶ)に位置する光ファイバセンサ1bの第1の端部B1は、光ファイバ74を介してプローブ用レーザ発光・受光端75に接続されている。また、他方の端部(以下「後端部」と呼ぶ)に位置する光ファイバセンサ1bの第2の端部B2は、反射端73に接続されている。図11の反射端73、光ファイバ74、プローブ用レーザ発光・受光端75の構造は、図9(b)と同様である。
図11では、光源2aからの基準レーザ光が、プローブ用レーザ発光・受光端75を介して、前端部の光ファイバセンサ1bの第1の端部B1に入力される。この基準レーザ光は、光ファイバ76を介して、その他の光ファイバセンサ1bの第1の端部B1にも入力される。このとき、これらの光ファイバセンサ1bに基準レーザ光が入力されている状態でこれらの光ファイバセンサ1bに超音波が到達すると、基準レーザ光にドップラー周波数のシフトや偏波面の変動が生じる。
この基準レーザ光は、後端部の光ファイバセンサ1bの第2の端部B2に向かって進み、反射端73の反射面で反射され、前端部の光ファイバセンサ1bの第1の端部B1に向かって戻っていく。そして、この基準レーザ光は、前端部の光ファイバセンサ1bの第1の端部B1から出力され、プローブ用レーザ発光・受光端75を介して光干渉計2bに供給される。コンピュータ3は、光干渉計2bによる基準レーザ光の検出結果に基づいて、配管4の状態を判定することができる。
図11の接続例によれば、4つの超音波光プローブ1用の8本の光ファイバ11、14を1本の光ファイバ74と3本の光ファイバ76とに減らし、発電プラント内の信号線の配線ボリュームを低減することができる。
一般に、光ファイバ76の長さは、光ファイバ74の長さよりも短い。よって、図11の接続例によれば、直列接続を採用せずに4つの超音波光プローブ1に4本の光ファイバ74を接続する場合と比べても配線ボリュームを低減することができる。図11の接続例における配線ボリュームの低減効果は、直列接続される超音波光プローブ1の個数が増えるほど増大する。
次に、図11の接続例における配管検査方法の詳細について説明する。
図11の接続例では、4つの超音波光プローブ1に同じ基準レーザ光を使用する。そのため、4つの超音波光プローブ1が設置された4箇所に配管4の劣化があるか否かは判定できるが、4つの超音波光プローブ1が同じ仕様の場合には、4箇所のうちのどの箇所に配管4の劣化があるかは一般に特定できない。例えば、4箇所における配管4の減肉量の最大値は計測できるが、どの箇所の減肉量が最大値であるかは一般に特定できない。
しかしながら、配管検査の現場では、配管4のどの箇所が劣化しているかは解らなくても、配管4のどの範囲が劣化しているかが解れば十分である場合も多い。そのような場合には、図11の接続例に対するニーズが大きいものと考えられる。
また、図11の接続例において配管4の劣化箇所を特定したい場合には、4つの超音波光プローブ1の振動出力を互いに異ならせて、4つの超音波光プローブ1の振動出力を互いに差別化してもよい。これは例えば、これらの超音波光プローブ1のコイルの巻き数、コイルの巻く方向、および電磁石の加振力の組合せを、各超音波光プローブ1に固有の組合せとすることで実現可能である。この場合、基準レーザ光の検出データを分析することで、配管4が劣化している超音波光プローブ1の位置を把握することができる。
図12は、第1実施形態の光ファイバセンサ1b同士の第1の接続例の詳細を示す断面図と側面図である。
図12(a)および図12(b)は、JSMEの発電用火力設備規格(JSME S CA1-2009年)に従い、150A以上のサイズを有する配管4に4列の超音波光プローブ1を設置した例を示している。各列は、8つの超音波光プローブ1を等間隔に含んでいる。これらの列間の距離は、配管4の直径(外径)φと同じ値に設定されている。図12(a)は、1列の超音波光プローブ1を示す断面図である。図12(b)は、4列の超音波光プローブ1を示す側面図である。
図12においては、1列を構成する8つの超音波光プローブ1の光ファイバセンサ1b同士が、光ファイバ76により互いに直列に接続されている。このような構成によれば、配管4の劣化の有無を列単位(周単位)で把握することが可能となる。
図13は、第1実施形態の光ファイバセンサ1b同士の第2の接続例を示す図である。
図13の接続例では、図11の接続例と同様に、4つの超音波光プローブ1の光ファイバセンサ1b同士が互いに直列に接続されている。ただし、図13の接続例では、チューブ部71が図11と同様の構造を有しているのに対し、保護被膜付きファイバ部72が図9(a)と同様の構造を有している。
図13の接続例では、チューブ部71と保護被膜付きファイバ部72との間にサーキュレータ77が設置されている。サーキュレータ77は、行きと戻りの基準レーザ光を区別するために設置されている。サーキュレータ77の例は、偏光板である。
例えば、受光端24側の保護被膜付きファイバ部72からサーキュレータ77に到達した行きの基準レーザ光は、チューブ部71には透過するが、発光端21側の保護被膜付きファイバ部72には透過しない。
また、チューブ部71からサーキュレータ77に到達した戻りの基準レーザ光は、発光端21側の保護被膜付きファイバ部72には透過するが、受光端24側の保護被膜付きファイバ部72には透過しない。
図13の接続例によれば、行きの基準レーザ光が発光端21に伝播することや、戻りの基準レーザ光が受光端24に伝播することを抑制することが可能となる。
図14は、第1実施形態の光ファイバセンサ1b同士の第3の接続例を示す図である。
図14の接続例では、光ファイバ74が分配器78の地点で光ファイバ74a、74bに分岐している。そして、2つの超音波光プローブ1の光ファイバセンサ1b同士が、光ファイバ74a、74bにより互いに並列に接続されている。各光ファイバセンサ1bの第1の端部B1は、光ファイバ74a、74bの一方に接続されている。各光ファイバセンサ1bの第2の端部B2は、2つの反射端73の一方に接続されている。図14の反射端73やプローブ用レーザ発光・受光端75の構造は、図9(b)と同様である。
図14では、光源2aからの基準レーザ光が、プローブ用レーザ発光・受光端75を介して分配器78に入力され、分配器78で分割される。分割された基準レーザ光は、2つの光ファイバセンサ1bの第1の端部B1に入力される。このとき、これらの光ファイバセンサ1bに基準レーザ光が入力されている状態でこれらの光ファイバセンサ1bに超音波が到達すると、基準レーザ光にドップラー周波数のシフトや偏波面の変動が生じる。
この基準レーザ光は、2つの光ファイバセンサ1bの第2の端部B2に向かって進み、反射端73の反射面で反射され、2つの光ファイバセンサ1bの第1の端部B1に向かって戻っていく。そして、この基準レーザ光は、これらの光ファイバセンサ1bの第1の端部B1から出力され、分配器78とプローブ用レーザ発光・受光端75とを介して光干渉計2bに供給される。コンピュータ3は、光干渉計2bによる基準レーザ光の検出結果に基づいて、配管4の状態を判定することができる。
図14の接続例によれば、2つの超音波光プローブ1用の4本の光ファイバ11、14を、光ファイバ74a、74bに分岐した1本の光ファイバ74に減らし、発電プラント内の信号線の配線ボリュームを低減することができる。
なお、図14の接続例においては、3つ以上の超音波光プローブ1の光ファイバセンサ1b同士を互いに並列に接続してもよい。また、図14の接続例における配管検査方法の詳細は、図11の接続例と同様である。
なお、図11〜図14の構造は、光ファイバセンサ1bと配管検査装置2とが無線接続されている場合だけでなく、光ファイバセンサ1bと配管検査装置2とが有線接続されている場合にも適用可能である。
(3)第1実施形態のEMAT1a
図15は、第1実施形態のEMAT1a同士の第1の接続例を示す図である。
図15は、同じ配管4に取り付けられた複数(ここでは4つ)の超音波光プローブ1を示している。これらの超音波光プローブ1のEMAT1a同士は、電源線16により互いに直列に接続されている。各電源線16は、互いに隣接するEMAT1a同士を単線接続している。符号[A]〜[D]は、これらの超音波光プローブ1同士を区別するために付されている。
これらのEMAT1aのうち、一方の端部(以下「前端部」と呼ぶ)に位置するEMAT1aは、電源線15を介してチャープ波発信回路27(図4)の第1端子27aに接続されている。また、他方の端部(以下「後端部」と呼ぶ)に位置するEMAT1aは、電源線15を介してチャープ波発信回路27の第2端子27bに接続されている。図15では、第1端子27aから電源線15、16を介して第2端子27bに高周波電流が流れることで、4つのEMAT1aに電力が供給される。
図15の接続例によれば、4つの超音波光プローブ1用の8本の電源線15を2本の電源線15と3本の電源線16とに減らし、発電プラント内の電源線の配線ボリュームを低減することができる。
一般に、電源線16の長さは、電源線15の長さよりも短い。よって、図15の接続例における配線ボリュームの低減効果は、直列接続される超音波光プローブ1の個数が増えるほど増大する。
次に、図15の接続例における配管検査方法の詳細について説明する。
4つのEMAT1aは、配管4に一定の加振を与えるために設置されている。図15の第1端子27aから第2端子27bに電流が流れると、これらのEMAT1aが配管4を同時に加振する。その結果、4つの光ファイバセンサ1bが微小に伸縮し、これらの光ファイバセンサ1b中の基準レーザ光にドップラー周波数のシフトや偏波面の変動が生じる。コンピュータ3は、この基準レーザ光の検出結果に基づいて、配管4の状態を判定する。
図15の4つの光ファイバセンサ1bは、互いに直列にも並列にも接続されておらず、個々に光ファイバ11、14に接続されている。よって、図15の接続例によれば、どの光ファイバセンサ1bの基準レーザ光が変化したか検出することで、どの箇所に配管4の劣化があるかを特定することができる。
ただし、4つの光ファイバセンサ1bは、図11から図14のように互いに直列または並列に接続してもよい。この場合、これらの光ファイバセンサ1bを透過した基準レーザ光の変化を検出することで、これらの光ファイバセンサ1bの設置範囲に配管4の劣化があることを判定することができる。また、この場合には、4つのEMAT1aの振動出力を互いに差別化することで、配管4が劣化している超音波光プローブ1の位置を把握することが可能となる。
図16は、第1実施形態のEMAT1a同士の第2の接続例を示す図である。
図16の接続例では、図15の接続例と同様に、4つの超音波光プローブ1のEMAT1a同士が互いに直列に接続されている。ただし、図16の接続例では、互いに隣接するEMAT1a同士が2本の電源線16により接続されている。一方の電源線16の例は、Vcc配線であり、他方の電源線16の例は、Vss配線である。
これらのEMAT1aのうち、前端部に位置するEMAT1aは、2本の電源線15を介してチャープ波発信回路27の第1、第3端子27a、27cに接続されている。また、後端部に位置するEMAT1aは、2本の電源線15を介してチャープ波発信回路27の第2、第4端子27b、27dに接続されている。これらの電源線15の例は、Vcc配線とVss配線である。
図17は、第1実施形態のEMAT1a同士の第3の接続例を示す図である。
図17の接続例では、各電源線15が電源線15a、15bに分岐している。そして、2つの超音波光プローブ1のEMAT1a同士が、電源線15a、15bにより互いに並列に接続されている。図17では、第1端子27aから電源線15を介して第2端子27bに高周波電流が流れることで、2つのEMAT1aに電力が供給される。
図17の接続例によれば、2つの超音波光プローブ1用の4本の電源線15を、電源線15a、15bに分岐した2本の光ファイバ74に減らし、発電プラント内の電源線の配線ボリュームを低減することができる。
なお、図17の接続例においては、3つ以上の超音波光プローブ1のEMAT1a同士を互いに並列に接続してもよい。また、図17の接続例においては、光ファイバセンサ1b同士を互いに直列または並列に接続してもよい。また、図17の接続例における配管検査方法の詳細は、図15の接続例と同様である。
なお、図15〜図17の構造は、EMAT1aとワイヤレス給電発信回路25とが無線接続されている場合だけでなく、EMAT1aとワイヤレス給電発信回路25とが有線接続されている場合にも適用可能である。また、このワイヤレス給電発信回路25は、図8の環境発電素子に置き換えてもよい。
(4)第1実施形態の超音波光プローブ1の変形例
本実施形態の超音波光プローブ1は、加振源として機能するEMAT1aと、センサとして機能する光ファイバセンサ1bとを備えている。しかしながら、本実施形態においては、超音波光プローブ1から加振源の機能を分離してもよい。この場合、超音波光プローブ1は、光ファイバセンサ1bのみを備え、EMAT1aは備えない。以下、このような超音波光プローブ1の例を、図18および図19を参照して説明する。
図18は、第1実施形態の超音波光プローブ1の第1変形例を示す断面図である。
図18は、配管4と、断熱材(保温材)5と、配管4と断熱材5との間に埋め込まれた8つの光ファイバセンサ1bとを示している。これらの光ファイバセンサ1bは、互いに直列または並列に接続されていてもよい。また、これらの光ファイバセンサ1bは、反射端73に接続されていてよい。
図18はさらに、配管4の外部に配置された大型電磁超音波発振子(以下「大型EMAT」と呼ぶ)6を示している。大型EMAT6は、前述のEMAT1aとは異なり、光ファイバセンサ1bと分離されている。大型EMAT6の例は、ピエゾ素子である。本変形例では、大型EMAT6を断熱材5に当接させるまたは断熱材5の付近に設置することにより、矢印Aで示すように配管4を大型EMAT6により加振することができる。
大型EMAT6が振動すると、大型EMAT6からの超音波が配管4を介して光ファイバセンサ1bに到達する。このとき、光源2aからの基準レーザ光が光ファイバセンサ1bに入力されている状態で光ファイバセンサ1bに超音波が到達すると、基準レーザ光にドップラー周波数のシフトや偏波面の変動が生じる。この基準レーザ光は、光ファイバセンサ1bから出力され、光干渉計2bに供給される。コンピュータ3は、光干渉計2bによる基準レーザ光の検出結果に基づいて、配管4の状態を判定することができる。
本変形例によれば、EMAT1aと光ファイバセンサ1bとを備える超音波光プローブ1を配管4に取り付ける必要はなく、配管4に光ファイバセンサ1bを取り付ければ十分であるため、配管4への超音波光プローブ1(光ファイバセンサ1b)の取り付け作業を省力化することが可能となる。
図19は、第1実施形態の超音波光プローブ1の第2変形例を示す断面図である。
図19は、図18と同様に、配管4と、断熱材5と、8つの光ファイバセンサ1bとを示している。図19はさらに、配管4内を流通する作動流体7を示している。作動流体7の例は、水等の液体である。配管4内を流通する作動流体7の流速、種類、状態等によっては、配管4が作動流体7の影響により高周波で振動する。本変形例では、作動流体7の流れが配管4を振動させる現象を配管検査に利用する。図19(b)の符号B、Cはそれぞれ、作動流体7の流れと配管4の振動を示す。
作動流体7が配管4内を流れると、作動流体7の影響で配管4内に発生した超音波が光ファイバセンサ1bに到達する。このとき、光源2aからの基準レーザ光が光ファイバセンサ1bに入力されている状態で光ファイバセンサ1bに超音波が到達すると、基準レーザ光にドップラー周波数のシフトや偏波面の変動が生じる。この基準レーザ光は、光ファイバセンサ1bから出力され、光干渉計2bに供給される。コンピュータ3は、光干渉計2bによる基準レーザ光の検出結果に基づいて、配管4の状態を判定することができる。
本変形例によれば、EMAT1aと光ファイバセンサ1bとを備える超音波光プローブ1を配管4に取り付ける必要はなく、配管4に光ファイバセンサ1bを取り付ければ十分であるため、配管4への超音波光プローブ1(光ファイバセンサ1b)の取り付け作業を省力化することが可能となる。
さらに、本変形例によれば、大型EMAT6を用意する必要もなくなるため、配管検査の作業をさらに省力化することが可能となる。
(5)第1実施形態のチャープ波発信回路27
次に、図4のチャープ波発信回路27について説明する。
本実施形態では、配管4の肉厚方向の共振を得るために、EMAT1aの発振周波数を分解能に応じてスイープ(掃引)させる。この掃引処理には、分解能に応じた一定の掃引時間がかかる。掃引時間が長いと、配管検査に要する時間が長くなってしまう。
そこで、本実施形態では、ある周波数からある周波数までの所望の周波数帯域を含むチャープ波が発振できるように、EMAT1aに対しチャープ波発信回路27が接続されている。よって、本実施形態によれば、EMAT1aが超音波としてチャープ波を発振することで、チャープ波による微小共振で共振周波数を短時間に検出し、配管検査時間を短縮することが可能となる。
(6)第1実施形態の配管検査方法
図20は、第1実施形態の配管検査方法を説明するための図である。
図20(a)は、配管母材4aのみからなる配管4を示す。符号d1、E1、ρ1は、配管母材4aの肉厚、縦弾性係数、密度を示す。
図20(b)は、配管母材4aの内面に、配管母材4aと異種の材料である配管付着物4bが付着した配管4を示す。符号d2、E2、ρ2は、配管付着物4bの肉厚、縦弾性係数、密度を示す。配管付着物4の例としては、配管母材4aの内面に付着したスケール、配管母材4aの内面のコーティング、配管母材4aの内面に発生したさび等が挙げられる。
図20(c)は、図20(b)の配管4を、配管部材4aの材料と配管付着物4bの材料との混合材料4cで形成されているとみなした配管4を示す。符号d3は、この配管4の肉厚を示し、配管母材4aと配管付着物4bの合計肉厚に相当する(d3=d1+d2)。また、符号Eequ、ρequは、この配管4の等価縦弾性係数、等価密度を示す。
以下、発電プラント内の配管4について実際に行われた配管検査の結果をもとに、第1実施形態の配管検査方法を説明する。
まず、配管4の測定結果を図20(a)のモデルで分析した分析結果を説明する。
配管母材4aの肉厚d1は、マイクロメーターによる測定結果から、9.873mmであった。また、配管母材4a内の音速は、マイクロメーターと光ファイバEMAT法による測定結果から、5419m/secであった。これらの値をもとに、配管4が配管母材4aのみからなる場合の共振周波数を計算すると、274.4kHzとなり、光ファイバEMAT法による測定結果である269.9kHzとは異なる結果となった。
この結果から、共振周波数の測定結果は、配管母材4aの内面に配管付着物4bが付着したことを反映して、配管4が配管母材4aのみからなる場合の共振周波数からずれてしまったことが確認できる。
次に、配管4の測定結果を図20(b)のモデルで分析した分析結果を説明する。ただし、この分析では、配管付着物4bは、配管部材4aと同じ材料からなると想定した。
配管4の肉厚d1+d2は、マイクロメーターによる測定結果から、10.96mmであった。また、配管4内の音速は、配管母材4a内の音速と同じと想定して、5419m/secとした。これらの値をもとに、配管母材4aの内面に配管付着物4bが付着した場合の共振周波数を計算すると、247.2kHzとなり、光ファイバEMAT法による測定結果である269.9kHzとは異なる結果となった。これは、逆に配管母材4aが配管付着物4bと同じ材料からなると想定した場合にも同様であった。
この結果から、配管母材4aの内面に配管付着物4bが付着した配管4の共振周波数を分析する際、配管付着物4bが配管部材4aと同じ材料からなると想定することは、分析結果の精度を低下させることが確認できる。
そこで、本実施形態では、配管母材4aの内面に配管付着物4bが付着した配管4を分析する際、配管付着物4bが配管部材4aと異なる材料からなると想定する。さらに、本実施形態では、配管4が、配管部材4aの材料と配管付着物4bの材料との混合材料4cからなると想定する。すなわち、本実施形態では、図20(c)のモデルを使用する。
以下、図20(c)のモデルの等価縦弾性係数Eequ、等価密度ρequについて説明し、さらには、図20(c)のモデルにおける共振周波数について説明する。
配管4が単一材料からなる場合において、配管4に荷重Pが付与されたときの配管4の伸びλは、次の式(1)で与えられる。
ただし、符号d、Eは、配管4の肉厚、縦弾性係数を示し、符号Sは、荷重Pが付与される面積を示す。
また、配管4に荷重Pが付与されたときの配管4のひずみエネルギーUは、式(1)を用いた計算により、次の式(2)で与えられる。
ここで、図20(b)のモデルにおける配管4のひずみエネルギーU
compは、配管母材4aのひずみエネルギーU
1と、配管付着物4bのひずみエネルギーU
2との合計と考えることができる。よって、図20(b)の配管4のひずみエネルギーU
compは、次の式(3)で与えられる。
また、図20(c)のモデルにおける配管4のひずみエネルギーU
equは、式(2)にd=d
1+d
2やE=E
equを代入することにより、次の式(4)で与えられる。
ここで、図20(c)のモデルにおける配管4内の等価音速v
equは、等価縦弾性係数E
equと等価密度ρ
equとを用いて、次の式(5)で与えられる。
式(5)に含まれる等価縦弾性係数E
equと等価密度ρ
equに関し、等価縦弾性係数E
equは、U
comp=U
equという関係式に式(3)、式(4)を代入することで算出可能である。また、等価密度ρ
equは、図20(c)の配管4の質量が、配管母材4aと配管付着物4bの合計質量に等しいという次の式(6)により算出可能である。
ここで、配管4が単一材料からなる場合において、配管4のN次の共振周波数f(N)は、配管4の肉厚dと配管4内の音速vとを用いて、次の式(7)で与えられる。
ただし、Nは正の整数である。なお、本明細書中のここより以前の説明中における共振周波数は、1次の共振周波数であったことに留意されたい。
図20(c)のモデルにおける配管4のN次の共振周波数は、式(7)に式(5)を代入することにより、次の式(8)のように与えられる。
よって、配管付着物4bの肉厚d
2は、配管母材4aの肉厚d
1、配管母材4aの物性値E
1、ρ
1、配管付着物4bの物性値E
2、ρ
2が分かれば、配管4のいずれか1つの次数の共振周波数f(N)を計測することで算出できる。
しかしながら、配管母材4aの肉厚d1、配管母材4aの物性値E1、ρ1、配管付着物4bの物性値E2、ρ2のいずれかが分からない事態も想定される。例えば、配管付着物4bの物性値E2、ρ2は不明な場合が多いと考えられる。
以下、このような事態においても配管母材4aの肉厚d1を算出可能な、第1実施形態の配管検査方法の第1〜第4の例について説明する。なお、配管4の物性値の例には、縦弾性係数(E1、E2)や密度(ρ1、ρ2)の他に、ポアソン比などが含まれる。
[第1の例]
図21と図22は、第1実施形態の配管検査方法の第1の例を説明するためのグラフである。
図21において、曲線C1のピークは、配管母材4aに配管付着物4bが付着する前の配管4の共振周波数を示し、曲線C2のピークは、配管母材4aに配管付着物4bが付着した後の配管4の共振周波数を示す。このように、配管母材4aに配管付着物4bが付着すると、配管4の共振周波数が低周波側へシフトする。
配管母材4aに配管付着物4bが付着している場合の共振周波数の測定では、曲線C1のピークに基づき配管母材4aの共振周波数が測定され、曲線C2のピークに基づき配管4全体の共振周波数(以下、単に「配管4の共振周波数」と呼ぶ)が測定される。配管4の共振周波数は、上述の式(8)の共振周波数に相当する。
そこで、本実施形態では、配管母材4aの肉厚d1、配管母材4aの物性値E1、ρ1、配管付着物4bの物性値E2、ρ2のうちのK個の値が不明な場合(Kは正の整数)、配管4の共振周波数をK+1個の次数について測定する。例えば、配管4の1次〜K+1次の共振周波数を測定する。
次に、K+1個の共振周波数の測定結果を式(8)に代入する。その結果、配管付着物4aの肉厚d2と、その他のK個の変数とを含むK+1個の方程式が得られる。すなわち、K+1個の変数を含むK+1個の方程式が得られる。
次に、これらK+1個の方程式を連立方程式として解き、配管付着物4aの肉厚d2を算出する。この際、肉厚d2以外のK個の変数の値も算出してもよい。
図22(a)は、式(8)から計算されるd2とf(N)との関係を示し、図22(b)は、式(8)から計算されるE2とf(N)との関係を示す。
このように、配管付着物4bの縦弾性係数E2は、共振周波数f(N)に非線形に依存している。すなわち、縦弾性係数E2は、共振主端数f(N)の非線形関数である。これにより、縦弾性係数E2を含む上記K+1個の方程式は、互いに線形独立となる。よって、上記K+1個の方程式を連立方程式として解くことが可能となっており、配管付着物4aの肉厚d2等を算出することができる。
[第2の例]
図23は、第1実施形態の配管検査方法の第2の例を説明するための図である。
図23は、配管母材4aの内面に、配管母材4aと異種の材料である配管付着物4bが付着した配管4を示す。図23は、配管母材4aの肉厚d1と、配管付着物4bの肉厚d2と、配管部材4aと配管付着物4bの合計肉厚d3とを示している(d3=d1+d2)。
図23の配管4の肉厚測定を行うと、第1〜第3の共振周波数f1〜f3が検出されると推定される。
第1の共振周波数f1は、配管母材4a内で生じる共振の共振周波数であり、配管母材4aの肉厚d1と、配管母材4a内の音速v1から、f1=v1/2d1で与えられる。
第2の共振周波数f2は、配管付着物4b内で生じる共振の共振周波数であり、配管付着物4bの肉厚d2と、配管付着物4b内の音速v2から、f2=v2/2d2で与えられる。
第3の共振周波数f3は、配管4内全体で生じる共振の共振周波数であり、配管母材4aおよび配管付着物4bの合計肉厚d3と、配管母材4aおよび配管付着物4b内の平均音速v3から、f3=v3/2d3で与えられる。
なお、本実施形態の第1〜第3の共振周波数f1〜f3の次数は、いずれも1次としているが、2次以上であっても構わない。
ここで、配管母材4a内での超音波の伝播時間d
1/v
1と、配管付着物4b内での超音波の伝播時間d
2/v
2との合計は、配管4内での超音波の合計伝播時間d
3/v
3に等しいため、次の式(9)が得られる。
式(9)にd
3=d
1+d
2を代入すると、平均音速v
3は、次の式(10)のように与えられる。
また、式(10)をf
3=v
3/2d
3に代入すると、第3の共振周波数f
3は、次の式(11)のように与えられる。
一般に、配管母材4aの材質は既知であるため、配管母材4aの材質から音速v
1を算出可能である。よって、第1の共振周波数f
1を測定できれば、f
1=v
1/2d
1の式を用いて、肉厚d
1を導出することができる。
一方、配管付着物4bの材質は通常知ることができないため、音速v2を算出することはできない。しかしながら、第2および第3の共振周波数f2、f3を測定できれば、f2=v2/2d2の式と、f3=v1v2/(v2d1+v1d2)/2の式と、肉厚d1の導出結果とを用いて、肉厚d2を導出することができる。
よって、本実施形態の第2の例では、配管4の肉厚測定時に超音波の周波数をスイープする場合、超音波の周波数帯域を、第1の共振周波数f1、第2の共振周波数f2、および第3の共振周波数f3を検出するように設定する。すなわち、周波数のスイープを、第1〜第3の共振周波数f1〜f3の3つが検出されるまで継続する。これにより、本実施形態によれば、第1〜第3の共振周波数f1〜f3のスペクトル形状や強度から、配管付着物4bの付着状態を判定することが可能となる。
なお、第1〜第3の共振周波数f1〜f3を検出して配管付着物4bの付着状態を判定する処理は、超音波としてチャープ波を使用する場合にも適用可能である。
[第3の例]
図24は、第1実施形態の配管検査方法の第3の例を説明するための図である。
本実施形態の第3の例においては、図24に示すシミュレーションモデルを用いた数値計算により、事前にd1、E1、ρ1、E2、ρ2とf(N)との関係を導出して、この関係を示す関数やテーブルをコンピュータ3内に保存しておく。このような数値計算の例としては、モーダル解析や周波数応答解析などが挙げられる。図24は、配管4に荷重Pを付与して、共振モードを引き起こすシミュレーションの様子を示している。
本実施形態の第3の例によれば、第1の例と同様に、配管4の共振周波数を複数個の次数について測定することで、配管付着物4bの肉厚d2を算出することができる。なお、d1、E1、ρ1、E2、ρ2とf(N)との関係が関数で保持されている場合には、第1の例と同様に複数の方程式を連立方程式として解くことで、配管付着物4aの肉厚d2が算出される。これらの方程式は、上記の関数に複数個の次数のf(N)の測定結果を代入することで導出可能である。
なお、上記の関数は、本実施形態の第3の例のようなシミュレーションにより取得する代わりに、配管4の共振周波数を実際に測定する実験により取得してもよい。取得された関数は、配管4の肉厚測定の前にコンピュータ3内に事前に保存しておく。
[第4の例]
図25は、第1実施形態の配管検査方法の第4の例を説明するためのフローチャートである。
図25は、配管4のN次の共振周波数f(N)と変数(例えばd1、E1、ρ1、E2、ρ2)との関係を表す関数を取得するためのシミュレーションのフローを示す。これは、第3の例のシミュレーションの具体例に相当する。第4の例のシミュレーションは、大型コンピュータなどの情報処理装置により実行される。
まず、配管4の数値解析モデルを構築する(ステップS1)。具体的には、図23や図24に示すように、配管母材4aの内面に配管付着物4bが付着した配管4のモデルを構築する。以下、このモデルを「配管モデル」と呼ぶ。配管モデルの構築には例えば、有限要素法を用いた数値解析ツールが使用される。
次に、配管モデルの境界条件、物性値、寸法等の変数の値を設定する(ステップS2)。この際、これらの変数の値は、現実の配管4に即応したシミュレーションモデルを構築するために、実際的な値に設定することが望ましい。
次に、配管モデルを用いた超音波解析を行う(ステップS3〜S6)。具体的には、有限要素法を用いた数値解析により、この配管モデルに特有の超音波特性を計算する。
超音波解析ではまず、配管モデルのモードを計算するモーダル解析を実行する(ステップS3)。図26は、第4の例のモーダル解析について説明するための断面図である。モーダル解析では、配管モデルの様々な振動モードが計算される。図26は、このような振動モードの例として、配管4の肉厚方向に伝搬する超音波W1の共振モードと、配管4の外面に沿って伝搬する超音波W2の共振モードとを示している。モーダル解析によれば、配管モデルにどのような共振モードが生じるかを視覚的に確認することができ、共振モードの共振周波数をおおまかに算出することができる。
次に、配管モデルの周波数応答を計算する周波数応答解析を実行する(ステップS4)。図27は、第4の例の周波数応答解析について説明するための断面図である。周波数応答解析では、配管モデルを一定の周波数で振動させ続けた場合に、配管モデルに生じる定常波が計算される。図27は、配管4の外面に加振力Fを与えて、配管4を一定の周波数で肉厚方向に振動させ続ける様子を示している。その結果、配管4の肉厚方向に伝搬する定常波Wが生じている。
本実施形態の周波数応答解析は、図27の定常波Wのように、肉厚方向に伝搬する定常波を計算するために実行される。そこで、周波数応答解析を効率的に実行するため、加振力Fの振動周波数は、モーダル解析で計算された肉厚方向に伝搬する共振モードの共振周波数に近い周波数帯で小刻みにスイープされる。これにより、肉厚方向に伝搬する定常波を短時間で計算することが可能となる。
次に、配管モデルの時刻歴応答を計算する時刻歴応答解析を実行する(ステップS5)。時刻歴応答解析では、配管モデルを一定の周波数で振動させ続けて超音波(定常波)を生じさせた後において配管モデルの加振を停止した場合に、この超音波が時間変化する過程が計算される。
図28は、第4の例の時刻歴応答解析について説明するためのグラフである。
図28の横軸は、時間を示す。図28の縦軸は、図27の加振力Fの作用点に超音波光プローブ1が設置されていると想定した場合の、EMAT1aの駆動電圧V1と、光ファイバセンサ1bの出力電圧V2とを示す。図28では、加振力FはEMAT1aにより印加され、超音波は光ファイバセンサ1bにより測定されると想定されている。
図28の時刻歴応答解析では、EMAT1aの駆動電圧V1が、一定の周波数を有するバースト波となっている。このバースト波の印加は、時間t1に開始され、時間t2に停止されている。時間t1〜t2には、配管モデルが一定の周波数で振動し、配管モデル内に定常波が生じる。よって、時間t1〜t2には、光ファイバセンサ1bの出力電圧V2が大きく振動している。図28の時間t1〜t2の値は、1msである。
バースト波の印加が時間t2に停止されると、符号Rで示すように、光ファイバセンサ1bの出力電圧V2が減衰していく。符号Rは、定常波の残響に相当する。図28の時刻歴超音波応答解析では、バースト波の印加停止後の時間t3から時間t4までこの残響Rの振動振幅を測定し、振動振幅の二乗の積分値(総和)を算出する。図28の時間t2〜t3の値は、10μsである。図28の時間t3〜t4の値は、200μsである。
残響Rの積分値を算出する処理は、バースト波の周波数を様々な値に変更して繰り返し実行される。例えば、1回の処理ごとに周波数を0.2kHzだけ増加(または減少)させて、積分値の算出処理を繰り返す。その結果、図29のように、残響Rの積分値を信号強度とする周波数スペクトルが得られる(ステップS6)。
図29は、第4の例の時刻歴応答解析により得られる周波数スペクトルを示したグラフである。
図29の横軸は、バースト波の周波数を示す。図29の縦軸は、残響Rの積分値(信号強度)を示す。この周波数スペクトルにおけるピーク周波数fは、配管モデルの肉厚方向の共振周波数に相当する。図29の共振周波数fは、300kHzである。
本実施形態の時刻歴応答解析は、肉厚方向に伝搬する超音波に関し、様々な次数の共振周波数を計算するために実行される。そこで、時刻歴応答解析を効率的に実行するため、バースト波の周波数は、周波数応答解析で計算された定常波の周波数に近い周波数帯で小刻みにスイープされる。これにより、様々な次数の共振周波数を短時間で計算することが可能となる。なお、これらの共振周波数を短時間で計算するために、時刻歴応答解析ではバースト波の代わりにチャープ波を使用してもよい。
また、ステップS2〜S6の処理は、配管モデルの変数を様々な値に設定して繰り返し実行される。その結果、配管モデルの様々な次数の共振周波数と変数との関係が、解析的に求められる。すなわち、配管モデルのN次の共振周波数f(N)と変数との関係を表す関数が求められる。
その後、この関数は所定のデータベース内に保存される(ステップS7)。実際の配管4の肉厚測定が実行される際には、この関数が事前にコンピュータ3内に保存される。
なお、本実施形態の第4の例では、時刻歴応答解析を実行する前に、時刻歴応答解析を適用する周波数帯を限定するためにモーダル解析と周波数応答解析の両方を実行しているが、モーダル解析と周波数応答解析の片方のみを実行してもよい。一般に、モーダル解析には、短時間で実行できるという利点があり、周波数応答解析には、計算の正確性が高いという利点がある。これらの両方を実行する場合、これらの片方のみを実行する場合に比べて周波数帯の限定処理に長時間を要するが、これらの片方のみを実行する場合に比べて正確な計算結果が得られる。なお、本実施形態の第4の例では、可能であれば、モーダル解析および周波数応答解析を実行せずに時刻歴応答解析を実行してもよい。
本実施形態の第4の例によれば、配管4のN次の共振周波数f(N)と変数との関係を表す関数を、シミュレーションにより取得することが可能となる。本実施形態の第4の例のように共振周波数をシミュレーションで算出することには、振動振幅が小さく実験では測定しにくい高次の共振周波数も特定しやすいという利点がある。
以上のように、本実施形態では、超音波光プローブ1への電力供給が、ワイヤレス給電または環境発電を利用して行われる。よって、本実施形態によれば、配管検査用の電源線の配線ボリュームを抑制することが可能となる。その結果、本実施形態によれば、電源線の取り回しの困難性や電源線の断線の可能性を低減し、配管検査の利便性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、超音波光プローブ1と配管検査装置2との間のレーザ光の送受信が、ワイヤレス通信を利用して行われる。よって、本実施形態によれば、配管検査用の信号線の配線ボリュームを抑制することが可能となる。その結果、本実施形態によれば、信号線の取り回しの困難性や信号線の断線の可能性を低減し、配管検査の利便性を向上させることが可能となる。
また、本実施形態によれば、光ファイバセンサ1bに反射端73を接続することで、配管検査用の信号線の配線ボリュームを抑制することが可能となる。
また、本実施形態によれば、EMAT1a同士および光ファイバセンサ1b同士の少なくともいずれかを互いに直列または並列に接続することで、配管検査用の信号線や電源線の配線ボリュームを抑制することが可能となる。
また、本実施形態によれば、EMAT1aの振動の代わりに、大型EMAT6の振動や作動流体7に起因する振動を配管検査に利用することにより、配管4への超音波光プローブ1(光ファイバセンサ1b)の取り付け作業を省力化することが可能となる。
また、本実施形態では、複数の共振周波数の測定結果から、配管母材4aに付着した配管付着物4bの肉厚を算出する。よって、本実施形態によれば、配管付着物4bの肉厚の算出に利用可能なデータが限られている場合にも、配管付着物4bの肉厚を算出することが可能となる。その結果、本実施形態によれば、配管検査により検出したい様々な現象の検出が可能となることで、配管検査の利便性を向上させることが可能となる。例えば、本実施形態によれば、熱交配管の内面へのスケールの付着や、腐食性流体が流れる配管の内面のコーティングのはがれや、上下水道配管の内面でのさびの発生などを、管理者が必要なときに非破壊かつオンラインで検出することが可能となる。
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。