JP5902980B2 - 超音波板厚測定装置及び超音波板厚測定方法 - Google Patents

超音波板厚測定装置及び超音波板厚測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、原子力発電プラントの配管等の材料の板厚を電磁超音波共鳴法(以下、「EMAR」と略称する)を用いて測定するための装置及び方法に関し、特に、減肉の測定に適用可能な装置及び方法に関する。
原子力発電プラントには、液体を流通させる多数の配管が設けられている。これら配管は、その内壁面が液体により削られる等して、経時と共に内壁側から減肉していく。原子力発電プラントでは、配管の破断を防ぐために、配管の延在方向に沿って配管に設定された数千の測定箇所で減肉の有無又は程度が定期的に測定され、それにより減肉の早期発見を試みている。
この測定を人手に頼ると、種々の問題が生ずる。まず、測定箇所が膨大であるので、多くの作業員を必要とし、原子力発電プラントの保守コストが非常に高くなる。配管には、高温(例えば、摂氏250度以上)の液体を流通させる箇所が存在し、そのため、プラント稼働中には人手に頼って測定することが非常に困難である。更に、温度を保って液体を流通させるために配管の外周は分厚い断熱材で覆われ、また、配管の大部分が人の目線よりも高所に配置される。すると、測定前に足場を設置して断熱材を取り外す必要があり、測定後に断熱材を取り付け直して足場を撤去する必要がある。人手に頼ると、これら付帯作業に要するコストも非常に高くなる。そこで従来、測定の自動化及び付帯作業の省略を実現すべく、配管の減肉を自動的に測定する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示された測定装置は、円形管の各測定箇所に設けられたEMAT(Electro-Magnetic Acoustic Transducer:電磁超音波探触子)を備え、EMATは、配管の外面に配置されて断熱材内に埋め込まれる。EMATは、横波送受信器及び縦波送受信器を有しており、横波送受信器は、横波を配管へと送信し、配管と液面との界面で反射された反射波を受信する。縦波送受信器もこれと同様に動作する。この測定装置によれば、反射波の共鳴周波数に基づき、EMARを用いて配管の板厚を測定することができる。測定された板厚を初期板厚と比較することで、減肉量が測定される。
特開2010−25812号公報
特許文献1に開示された測定装置によると、配管の周方向においてEMATを配置している箇所付近では、配管の板厚を精度良く測定することができる。しかしながら、配管の減肉は、周方向に一様に生じるとは限らない。このため、配管の減肉が、配管の周方向においてEMATを配置していない箇所付近で局所的に進行している場合には、特許文献1に開示された測定装置を用いてもこれを検知することができないおそれがある。特許文献1で教示された方法で局所的な減肉を見過ごさないようにするためには、周方向に離れたEMATの個数を増やす又はEMATを周方向に可動にするといった対策が必要になる。すると、測定装置の製造コストが非常に高くなる。この技術的課題は、原子力発電プラントの配管の減肉を測定する場面だけでなく、その他プラントの配管又は容器の減肉を測定する場面においても同様に生ずる。
そこで本発明は、配管等材料の減肉を低コストで自動的に測定可能にし、また、減肉が局所的に生じていてもこれを検知可能にすることを目的としている。
本発明は上記目的を達成すべくなされたものである。本発明に係る超音波板厚測定方法は、材料内を伝播した電磁超音波信号の共鳴周波数に基づき、電磁超音波共鳴法を用いて当該材料の板厚を測定するための超音波板厚測定方法であって、材料の表面上の送信位置にて、異なる周波数の電磁超音波信号を時間的に変えながら又は重畳して同時に前記材料内へと送信する送信ステップと、材料の表面上で前記送信位置から離れた1以上の受信位置それぞれにて、前記材料内を伝播し電磁超音波信号を受信する受信ステップと、受信された電磁超音波信号の波形ピークの間隔、又は受信された電磁超音波信号の波形ピークを示す共鳴周波数に基づいて、前記送信位置と前記受信位置との間で減肉した箇所の板厚を算出する減肉検出ステップと、を備える。
前記方法によれば、電磁超音波信号が送信される送信位置と、電磁超音波信号を受信する受信位置とが離れている。受信位置では、送信位置から材料内を伝播した電磁超音波信号が受信される。送信位置と受信位置との間に減肉が生じていなければ、受信された電磁超音波信号のピークの間隔は、初期状態の材料の板厚に応じた或る基準間隔となるし、ピークを示すn次共鳴周波数も、初期状態の材料の板厚に応じた或る基準周波数となる。一方、送信位置と受信位置との間の一部に局所的な減肉が生じていると、減肉した箇所を通過した電磁超音波信号が受信位置で受信される。すると、電磁超音波共鳴法の原理から、受信された電磁超音波信号のピークの間隔は、基準間隔よりも長くなるし、ピークを示すn次共鳴周波数は基準周波数よりも大きくなる。このようにピークが初期状態から変化することに基づいて、送信位置と受信位置との間で減肉が生じていることを検知することができる。このように、送信位置が受信位置から離れていることで、送信位置と受信位置との間の広い範囲で減肉の有無を測定することができるようになり、局所的な減肉が進行していたとしても、少ない送信位置及び受信位置でこれを精度良く検知可能になる。なお、送信位置と受信位置との距離は、電磁超音波信号が受信位置にて受信され得ないほど減衰することのない距離であればよい。
前記減肉検出ステップにおいて、受信された電磁超音波信号の波形ピーク値に基づいて、前記送信位置と前記受信位置との間の減肉範囲を算出してもよい。これにより、減肉の程度を精度良く評価することができる。
本発明に係る超音波板厚測定装置は、材料内を伝播した電磁超音波信号の共鳴周波数に基づき、電磁超音波共鳴法を用いて当該材料の板厚を測定するための超音波板厚測定装置であって、前記材料の表面上の送信位置にて、異なる周波数の電磁超音波信号を時間的に変えながら又は重畳して同時に前記材料内へと送信する送信用EMATと、前記材料の表面上で前記送信位置から離れた1以上の受信位置それぞれにて、前記材料内を伝播した電磁超音波信号を受信する1以上の受信用EMATと、を備える。
前記構成によれば、電磁超音波信号を送信する送信用EMATが、電磁超音波信号を受信する受信用EMATと別個であり、それにより、電磁超音波信号が送信される送信位置と、電磁超音波信号を受信する受信位置とを離すことができる。受信用EMATは、送信位置から材料内を伝播した電磁超音波信号を受信する。送信位置と受信位置との間に減肉が生じていなければ、受信された電磁超音波信号のピークの間隔は、初期状態の材料の板厚に応じた或る基準間隔となるし、ピークを示すn次共鳴周波数も、初期状態の材料の板厚に応じた或る基準周波数となる。一方、送信位置と受信位置との間の一部に局所的な減肉が生じていると、減肉した箇所を通過した電磁超音波信号が受信位置で受信される。すると、電磁超音波共鳴法の原理から、受信された電磁超音波信号のピークの間隔は、基準間隔よりも長くなるし、ピークを示すn次共鳴周波数は基準周波数よりも大きくなる。このように波形ピークが初期状態から変化することに基づいて、送信位置と受信位置との間で減肉が生じていることを検知することができる。このように、送信位置が受信位置から離れていることで、送信位置と受信位置との間の広い範囲で減肉の有無を測定することができるようになり、局所的な減肉が進行していたとしても、少ないEMATでこれを精度良く検知可能になる。また、EMATは材料と非接触であっても電磁超音波信号を材料内で伝播させることができる。このため、材料が高温であっても、送信用EMAT及び受信用EMATを当該材料から若干離して配置することができ、送信用EMAT及び受信用EMATが材料から受ける熱的影響を低減することができる。
前記送信用EMATが前記材料の表面上の前記送信位置に設置され、前記1以上の受信用EMATが前記材料の表面上の前記1以上の受信位置それぞれに設置されていてもよい。このように送信用EMAT及び受信用EMATを固定していても、上記のように材料の減肉を自動的に測定することができ、測定装置の低コスト化に資する。
前記材料が円筒部材であってもよい。また、前記受信用EMATが1つであり、前記送信位置と前記受信位置とが前記円筒部材の中心に対して対向配置されていてもよい。これにより、減肉が、送信位置から見て時計回り側に生じている場合と反時計回り側に生じている場合のどちらであっても、その減肉を測定することができる。
前記円筒部材が発電プラント内に設けられた配管であり、前記配管の外周側に断熱材が設けられていてもよい。本発明に係る測定装置は、このような用途に好適に適用可能である。
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、配管等材料の減肉を低コストで自動的に測定することができ、また、減肉が局所的に生じていてもこれを検知することができる。
本発明の実施形態に係る超音波板厚測定装置の全体構成を示す概念図である。 図1に示す送信用EMATの構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る超音波板厚測定方法の手順を示すフローチャートである。 図1に示す超音波板厚測定装置で用いられる電磁超音波信号の信号波形の一例を示す波形図である。 図1に示す超音波板厚測定装置で用いられる電磁超音波信号の信号波形の別例を示す波形図である。 図1に示す受信用EMATで受信された電磁超音波信号の共鳴周波数と強度の関係を減肉の有無に照らして説明するグラフである。 本発明の実施形態の第1変形例に係る超音波板厚測定装置の全体構成を示す概念図である。 本発明の実施形態の第2変形例に係る超音波板厚測定装置の全体構成を示す概念図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、同一の又は相当する要素には全ての図を通じて同一の符号を付し、重複する詳細な説明を省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る超音波板厚測定装置10の全体構成を示す概念図である。図1に示す超音波板厚測定装置10(以下、単に「測定装置10」と称する)は、材料内を伝播した電磁超音波信号の共鳴周波数に基づいて、EMAR(Electro-magnetic Acoustic Resonance:電磁超音波共鳴法)を用いて当該材料の板厚を測定するための装置である。測定装置10は、本発明の実施形態に係る超音波板厚測定方法(以下、単に「測定方法」と称する)の手順の全部又は一部を実行する装置でもある。
本実施形態に係る測定装置10及び測定方法は、例えば、原子力発電プラント等の大型プラントに適用され、大型プラント内の配管や圧力容器や反応容器等材料の板厚を測定する。電磁超音波信号を材料内で伝播させる必要があるので、材料は、磁性体であることが望ましい。以下では、特段断らない限り、原子力発電プラントの配管50の板厚を測定するものとして説明し、当該配管50が円鋼管であるものとして説明する。
原子力発電プラントの配管50は、高温の液体を流通させる。温度を高温に保って液体を流通させるため、配管50の周囲は所定の厚さの断熱材55で覆われる。なお、断熱材55は、電磁超音波信号が伝播する媒体として利用されない。配管50内の液体も同様である。よって、電磁超音波信号は、配管50内を伝播する過程で、配管50と断熱材55との界面で反射し、配管50と液体との界面で反射する。
原子力発電プラントでは、配管50の破断を防ぐため、配管50の延在方向に沿って多数の測定箇所が設定されており、各測定箇所の断面内で板厚を定期的に測定し、それにより減肉の早期発見が試みられる。減肉の発生要因は様々であり、減肉は配管50の円周方向に一様に進行しない。逆に言えば、減肉の進行が、或る1つの測定箇所の断面の一部分で局所的に速い場合がある。以下、減肉が最も速く進行し、それにより或る測定箇所の断面において最も板厚が小さくなっている部分を、「最減肉部52」と称する場合もある。なお、図1は、或る1つの測定箇所の断面を概念的に示している。
配管50の破断を防ぐためには、最減肉部52の板厚を検知又は測定し、その板厚が健全であるか否かを適正に評価することが肝要である。また、最減肉部52の広がり(周方向長さ)を検知し、その広がりが健全であるか否かを評価することができれば望ましい。本実施形態に係る測定装置10及び測定方法によれば、減肉の進行が局所的に速くなっていても、最減肉部52の板厚を自動的に検知することができる。しかも、この自動検知を低コストで実現することができる。以下、測定装置10及び測定方法について具体的に説明する。
図1に示すように、或る1つの測定箇所にて配管50の板厚を測定するため、測定装置10が、送信用の電磁超音波探触子11(以下、「送信用EMAT11」と称する)と、受信用の電磁超音波探触子12(以下、「受信用EMAT12」と称する)と、パルサ/レシーバ16と、制御装置17とを備えている。本実施形態では、1つの送信用EMAT11と1つの受信用EMAT12とにより1つのEMAT群が構成され、EMAT群が、1つの測定箇所に1群ずつ設けられている。パルサ/レシーバ16は、全ての測定箇所に対して1つ設けられていてもよいし、多数の測定箇所のうちの一部分に対して1つ設けられていてもよいし、1つの測定箇所に1つずつ設けられていてもよい。制御装置17の個数と測定箇所数との関係性も、これと同様である。
パルサ/レシーバ16は、送信用EMAT11、受信用EMAT12及び制御装置17と通信可能に接続されている。制御装置17は、パルサ/レシーバ16を制御し、送信用EMAT11に電磁超音波信号を送信させる。送信用EMAT11は、配管50の外面上の送信位置21にて、ある期間、電磁超音波信号を配管50へと送信する。受信用EMAT12は、配管50の外面上の受信位置22にて、配管50内を伝播した電磁超音波信号を受信する。受信された電磁超音波信号は、パルサ/レシーバ16に供給される。パルサ/レシーバ16は、受信用EMAT12から供給された信号データを制御装置17に出力する。より具体的には、制御装置17は、送信用EMAT11から発生される電磁超音波の波形データ列を生成する。パルサ/レシーバ16は、波形データ列に基づく任意波形のパルス電流を発生し、このパルス電流を送信用EMAT17に供給する。パルサ/レシーバ16は、受信用EMAT12で受信した信号を増幅する差動増幅器としての機能と、増幅された信号の波形をストアしながら積算するオシロスコープとしての機能とを有し、このように積算された信号が制御装置に取り込まれる。
本実施形態では、パルサ/レシーバ16が、電磁超音波信号を送信用EMAT11に発生させる機能と、受信用EMAT12により受信された信号の供給を受ける機能とを両方有するが、前者機能を有する装置と後者機能を有する装置とが別個であってもよい。制御装置17は、例えば、マンマシンインタフェースを備えたパーソナルコンピュータであってもよい。この場合、原子力発電プラントの作業員は、制御装置17を操作して、パルサ/レシーバ16を起動及び停止させたり、送信用EMAT11から送信される電磁超音波信号の仕様を変更したり、パルサ/レシーバ16からの信号データを処理したりすることができる。
送信位置21及び受信位置22は、いずれも配管50の外面上に設定される。本実施形態では、1群のEMAT群が1つの受信用EMAT12を含んでおり、1つの受信位置22が1つの測定箇所に設定される。本実施形態では、送信位置21が、受信位置22と周方向に180度離れている。なお、送信位置21と受信位置22との間の距離は、電磁超音波信号が受信位置22にて受信し得ないほどに減衰しない距離であればよい。後述のとおり、本実施形態に係る測定装置及び測定方法は、共鳴現象を利用しており、共鳴周波数での信号ピークに着目して減肉の有無等を測定する。よって、高い強度を示す共鳴周波数での信号を受信位置22で受信可能である限りは、共鳴周波数領域以外の周波数の信号が減衰により受信及び測定不能であっても、減肉の有無等を測定することができる。
送信用EMAT11は、送信位置21の付近で、配管50の外面上に設置される。受信用EMAT12は、受信位置22の付近で、配管50の外面上に設置される。前述のとおり、配管50の外面は断熱材55で覆われている。送信用EMAT11及び受信用EMAT12は、いずれも断熱材55に埋め込まれている。送信用EMAT11は、ケーブル26を介してパルサ/レシーバ16と機械的且つ電気的に接続され、受信用EMAT12は、ケーブル27を介してパルサ/レシーバ16と機械的且つ電気的に接続される。これらケーブル26,27は、例えば送信用EMAT11及び受信用EMAT12それぞれから断熱材55内で径方向に延び、断熱材55の外部に引き出され、配管50及び断熱材55の外部に設置されたパルサ/レシーバ16へと接続されている。
図2は、図1に示す送信用EMAT11の構成を示す模式図である。図2に示すように、送信用EMAT11は、永久磁石31,32及びコイル33を備え、コイル33は、微視的に見れば、配管50の外面と僅かに離間しており、パルサ/レシーバ16と電気的に接続されている。永久磁石31,32は静磁場を発生する。パルサ/レシーバ16がコイル33にパルス電流(パルス信号)を流すと、配管50内に誘起される渦電流と磁界との相互作用によってローレンツ力が発生し、このローレンツ力が音源となって配管50内に超音波を発生させる。なお、図2中、丸内中央に点を付してなる記号は、紙面裏側から紙面表側への電流の流れを示しており、丸内に×を付してなる記号は、紙面表側から紙面裏側への電流の流れを示している。永久磁石31は、S極が裏側から表側に電流を流すコイル部分(丸及び点から成る記号を参照)に対向するようにして配置され、永久磁石32は、N極が表側から裏側に電流を流すコイル部分(丸及び×から成る記号を参照)に対向するようにして配置されている。
送信用EMAT11は、永久磁石の構造及び配置とコイルの構造の適切な組み合わせにより、縦波、横波、表面波、SH波等、各種モードの超音波を送信することができる。本実施形態に係る電磁超音波信号には、配管50の周方向に信号を伝播させながらEMARを用いて板厚を測定するという測定装置10及び測定方法の特性に照らし、適当なモードが適用される。
受信用EMAT12も、これと同様の構成であり、配管50内を伝播した超音波信号が、送信用EMAT11のコイルとは逆の原理により、受信用EMAT12のコイルで検出される。受信用EMAT12のコイルはパルサ/レシーバ16に電気的に接続され、パルサ/レシーバ16は当該コイルで検出された超音波を増幅して積算することができる。
このように送信用EMAT11及び受信用EMAT12は、配管50と非接触で配置することが可能である。このため、測定箇所付近で高温の流体が流れていても、送信用EMAT11及び受信用EMAT12を高温の配管50から離して配置することができる。よって、送信用EMAT11及び受信用EMAT12が配管50から受ける熱的影響を低減することができる。更に、送信用EMAT11及び/又は受信用EMAT12と配管50の外面との間に形成される僅かなクリアランスに、薄い断熱層(図示せず)を配置してもよく、これによりEMAT11,12が配管50から受ける熱的影響を更に低減することができる。このような利点に照らして、本実施形態に係る測定装置10は、高温機器を対象とした測定に好適に利用可能であり、また、高温機器を対象としていながらセンサ(送信用EMAT11及び受信用EMAT12)を常設可能になる。原子力発電プラントでは、配管の周囲に分厚い断熱材が設けられる。この断熱材にセンサを埋め込むようにしてセンサを常設可能になるので、測定作業を行うたびに断熱材を取り外したり取り付けなおしたりする必要もなくなる。
図3は、本発明の実施形態に係る超音波板厚測定方法の手順を示すフローチャートである図3に示すように、まず、制御装置17がパルサ/レシーバ16を作動させ、パルサ/レシーバ16から送信用EMAT11のコイル33にパルス電流が供給される。これにより、電磁超音波信号が送信位置にて配管50内に送信される(S1:送信工程)。電磁超音波信号は、ある期間が経過するまでの間、配管50内に送信され続ける。
送信用EMAT11は、周波数を変えながら電磁超音波信号を送信し、又は異なる周波数の電磁超音波信号を重畳してなる重畳信号を送信する。例えば、狭帯域の電磁超音波信号を、その帯域を時間的に変化させながら配管50内に送信してもよい。この場合、パルサ/レシーバ16からサインバースト波41(図4参照)のパルス電流をコイル33に供給してもよい。また、広帯域の電磁超音波信号を、帯域を一定にして又は帯域を時間的に変化させながら配管50内に送信してもよく、このとき重畳信号が用いられる。この場合、パルサ/レシーバ16から矩形波42(図5参照)のパルス電流をコイル33に供給してもよい。なお、図4及び図5は、パルサ/レシーバ16から送信用EMAT11に供給されるパルス電流の波形の例を示すグラフであり、図4及び図5において横軸は時間、縦軸は信号強度を示す。
次に、受信用EMAT12が、配管50内を伝播した電磁超音波信号を受信し、受信された電磁超音波信号がパルサ/レシーバ16に供給される(S2:受信工程)。パルサ/レシーバ16は、供給された電磁超音波信号の信号データを制御装置17に出力する。パルサ/レシーバ16は、電磁超音波信号を増幅し、増幅された信号に基づく信号データを制御信号17に出力してもよいし、増幅された信号を積算することにより得られた信号データを制御信号17に出力してもよい。次に、制御装置17に内蔵されたプログラムが自動で又はマンマシンインタフェースを介して制御装置17を操作する作業員が制御装置17を用いて、制御信号17に入力された信号データに基づき、受信位置で受信された電磁超音波信号の周波数と強度の関係性を導出する(S3:関係導出工程)。
図6は、受信用EMAT12で受信された電磁超音波信号の周波数と強度の関係性を減肉の有無に照らして示すグラフである。横軸及び縦軸は、周波数及び信号強度(例えば、時間積分値)をそれぞれ示している。実線及び破線は、減肉が生じていない場合及び局所的な減肉が生じている場合をそれぞれ表している。
電磁超音波共鳴法(EMAR)の原理によれば、定在波が得られる周波数で電磁超音波が共鳴し、受信された電磁超音波信号のうち該周波数に対応する信号強度が増大する。したがって、図6に示すように、周波数を横軸にとって信号強度を縦軸にとって線図を描くと明らかとなるように、定在波が得られると考察される周波数(以下、「共鳴周波数」と称する)において、電磁超音波信号の強度が顕著に高くなる。以下、信号強度が顕著に高くなっている部分を「信号ピーク」と称し、強度ピークにおける信号強度の最大値を「信号ピーク値」と称する。図6に示すように、複数の信号ピークが、n次の共鳴周波数(nは自然数)に対応して表れる。大略的に、低次の共鳴周波数に対応する信号ピーク値は、高次の共鳴周波数に対応する信号ピーク値よりも大きい。
前述のとおり、配管50内を伝播する電磁超音波信号は、配管50の外表面及び配管50の内表面で反射する。このため、共鳴周波数は、送信位置21から受信位置22に至るまで電磁超音波信号が伝播した領域内における配管50の板厚に依存する。
或る測定箇所における配管50の断面に減肉が全く生じていない場合、n次の共鳴周波数fA(以下、「基準n次共鳴周波数fA」と称する)は、EMARの原理に従って、下記式(1)を用いて表すことができる。
fA=n(CA/2DA) …(1)
式(1)において、nは、基準n次共鳴周波数の次数(n:自然数)、CAは、基準温度の配管50内を伝播する電磁超音波信号の音速、DAは、配管50に減肉が生じていない場合における配管50の板厚(以下、「基準板厚DA」と称する)。隣接する2つの信号ピークの横軸方向の間隔ΔfAは、ある次数の基準共鳴周波数と、それよりも1つ次数が大きい基準共鳴周波数との差分絶対値であり、式(1)から明らかなとおり基準1次共鳴周波数fAの値と等しい。
一方、配管50に減肉が生じている場合には、電磁超音波信号が送信位置21から受信位置22に至るまでの間で、減肉によって基準板厚DAよりも板厚が小さくなっている部分を通過する。このとき、最も減肉が進行している部分の板厚(すなわち、送信位置21と受信位置22との間で最小の板厚)に対応した共鳴周波数fB,fB,fB,…を得ることができる。この共鳴周波数におけるfB,fB,fB,…の信号強度も周辺の周波数に対応した信号強度と比較して高くなる。このため、減肉が生じている場合、電磁超音波信号の周波数と強度との関係性を導出することにより、共鳴周波数fB,fB,fB,…の存在を検知することができる。
図3に戻り、このようにして電磁超音波信号の周波数と強度との関係性が導出された後、制御装置17が内蔵のプログラムを実行して又はマンマシンインタフェースを介して作業員が制御装置17を操作して、測定箇所における配管の断面に減肉が存在するか否かが測定される。また、減肉が存在しているとすれば、最も減肉が進行している部分の減肉の程度がどの程度であるのか(すなわち、当該最減肉部52の板厚DB)が測定される(S4:板厚算出工程)。
その手法の一例としては、信号ピークを示す1次共鳴周波数fBが、基準1次共鳴周波数fAと比較され、その差分が許容誤差の範囲内に収まっているか否かが判断される。許容誤差の範囲内に収まっていれば、減肉が無い又は無視可能であると評価してもよい。許容誤差の範囲外であれば、減肉が存在すると評価してもよい。減肉が存在すると評価する場合には、信号ピークを示すn次共鳴周波数fBから下記式(2)を用いて、最減肉部52の板厚DBを算出することができる。
DB=n(CB/2fB) …(2)
式(2)において、nは共鳴周波数fBの次数、CBは、測定時の電磁超音波信号の音速である。最減肉部52が周方向に大きいと、定在波を得やすくなり、それにより共鳴が発生して信号ピーク値が大きくなる。この傾向は、低次の共鳴周波数であるほど顕著に現れる。そこで、1次共鳴周波数に対応する信号ピーク値YBに応じて、最減肉部52の周方向長さを測定することもでき、その周方向長さ又は信号ピーク値YBそのものに応じて、減肉の程度を評価することが可能になる。
このように、本実施形態に係る測定装置10及び測定方法によれば、電磁超音波信号が送信される送信位置21と、電磁超音波信号を受信する受信位置22とが配管50の周方向に離れている。受信位置22では、送信位置21から配管50内を周方向に伝播した電磁超音波信号が受信される。送信位置21と受信位置22との間に減肉が生じていなければ、受信された電磁超音波信号の信号ピークの間隔ΔfAは、基準板厚DAに応じた或る値となるし、信号ピークを示す基準共鳴周波数も、基準板厚DAに応じた値となる。一方、送信位置21と受信位置22との間の一部に局所的な減肉が生じていれば、減肉した箇所を通過した電磁超音波信号が受信位置22で受信され、受信された電磁超音波信号に、基準共鳴周波数よりも大きい周波数で信号ピークが現れる。これは、減肉した箇所を通過した電磁超音波信号の定在波が共鳴するところ、当該共鳴周波数が、減肉した箇所の板厚に依存した値となるためである。このようにして、受信された電磁超音波信号の信号ピークの間隔ΔfBは、減肉がない場合の間隔ΔfAよりも大きくなるし、信号ピークを示す共鳴周波数fBは基準共鳴周波数fAよりも大きくなる。
信号ピークが初期状態から変化することに基づき、送信位置21と受信位置22との間で減肉が生じていることを検知することができる。このように、送信位置21が受信位置22と周方向に離れていることで、送信位置21と受信位置22との間の広い範囲で減肉の有無を測定することができるようになり、局所的な減肉が進行していたとしても、少ない送信位置21及び受信位置22でこれを検知可能になる。
本実施形態では、送信位置21と受信位置22とが180度離れて配置されている。電磁超音波信号は、送信位置21から見て時計回りに受信位置22へと伝播するし、送信位置21から見て反時計回りにも受信位置22へと伝播する。このため、図1では例として、送信位置21から見て時計回り側に最減肉部52が存在し、図6ではこの最減肉部52の測定が可能である旨示しているが、送信位置21から見て反時計回り側に最減肉部52が存在していても、同様にしてその測定を行うことができる。すなわち、或る一つの測定箇所における配管50の断面内で局所的な減肉がどの位置に発生していても、その有無及び程度を自動的に測定することができる。しかも、配管50上に固定された2つのEMATによりこのように自動測定可能であるので、測定装置10の低コスト化を実現することができる。
図7は、本発明の実施形態の第1変形例に係る超音波板厚測定装置60の構成を示す概念図である。図7も、図1と同様、或る1つの測定箇所における配管50の断面を模式的に示している。図7に示すように、第1変形例に係る測定装置60は、1つの測定箇所にて配管50の板厚を測定するために、前述同様にして、1群のEMAT群と、パルサ/レシーバ66と、制御装置67とを備えている。第1変形例に係るEMAT群には、1つの送信用EMAT61と、2つの受信用EMAT62,63とが含まれる。このように、受信用EMAT62,63は1つに限定されず、2つ又はそれ以上であってもよい。
第1変形例では、受信用EMAT62,63が2つであるので、これら2つの受信用EMAT62,63それぞれに対応する2つの受信位置72,73が、配管50の外面上であって送信位置71から周方向に離れた位置に設定されている。第1変形例では、第1の受信位置72が、上記実施形態と同様にして送信位置71から周方向に180度離れており、第2受信位置73が、送信位置71から周方向に90度離れているが、その配置は特に限定されず、適宜変更可能である。この第1変形例においては、2つの受信信号を比較し、減肉の評価を高精度で行うことができる。また、2つの受信信号の信号ピーク値を画することにより、減肉位置を測定することも可能になる。
図8は、本発明の実施形態の第2変形例に係る超音波板厚測定装置110の構成を示す概念図である。図8も、図1と同様、或る1つの測定箇所における配管50の断面を模式的に示している。図8に示すように、第2変形例に係る測定装置110は、1つの測定箇所にて配管50の板厚を測定するために、前述同様にして、1つの送信用EMAT111及び1つの受信用EMAT112からなる1群のEMAT群と、パルサ/レシーバ116と、制御装置117とを備えている。第2変形例では、送信用EMAT111及び受信用EMAT112が、断熱材55の外部に配置されている。送信位置121と受信位置122とは、上記の実施形態と同様にして配管50の外面上に設定されている。そこで第2変形例に係る測定装置110は、配管50に取り付けられた2つの探触子取付部材145を備えている。
送信用の探触子取付部材145は、送信位置121から断熱材55を径方向に延びて断熱材の外側へと延びるロッド146と、ロッド146の先端に固定された探触子テーブル147とを備えている。受信用の探触子取付部材145は、受信位置122から断熱材55を径方向に延びて断熱材の外部へと突出するロッド146と、ロッド146の先端に固定された探触子テーブル147とを備えており、この探触子テーブル147は、送信用の探触子テーブル147と周方向に180度離れて配置されている。送信用EMAT111及び受信用EMAT112は、対応する探触子テーブル147それぞれに着脱可能に装着される。探触子取付部材145は、磁性体からなり、電磁超音波信号は探触子取付部材145内を伝播することができる。送信用EMAT111から送信された電磁超音波信号は、送信用の探触子取付部材145を伝播し、送信位置121から配管50内に送信され、配管50内を周方向に伝播し、受信位置122から受信用の探触子取付部材145へと伝播し、受信用EMAT112にて受信される。第2変形例によっても、上記実施形態と同様にして配管50の減肉を測定することができる。また、第2変形例においては、送信用EMAT111及び受信用EMAT112の保守作業を簡便に行うことができる。
なお、上記実施形態及び変形例においては、材料を円形の配管とし、送信位置と受信位置とが当該配管の周方向に離れている場合を例示したが、材料は必ずしも円形管でなくてもよく、その場合送信位置と受信位置とが離隔する方向も適宜変更可能である。
本発明は、配管等材料の減肉を低コストで自動的に測定することができ、また、減肉が局所的に生じていてもこれを検知することができるとの作用効果を奏し、例えば原子力発電プラントの配管の減肉の評価に利用すると有益である。
10,60,110 超音波板厚測定装置
11,61,111 送信用電磁超音波探触子
12,62,63,112 受信用電磁超音波探触子
16,66,116 パルサ/レシーバ
17,67,117 制御装置
21,71,121 送信位置
22,72,73,122 受信位置
41 サインバースト波
42 矩形波
145 探触子取付部材
50 配管
52 最減肉部
55 断熱材

Claims (6)

  1. 円筒状の材料内を伝播した電磁超音波信号の共鳴周波数に基づき、電磁超音波共鳴法を用いて当該材料の板厚を測定するための超音波板厚測定方法であって、
    材料の表面上の送信位置にて、異なる周波数の電磁超音波信号を時間的に変えながら又は重畳して同時に前記材料内へと送信する送信ステップと、
    材料の表面上で前記送信位置から前記材料の周方向に離れた1以上の受信位置それぞれにて、前記材料内を伝播し電磁超音波信号を受信する受信ステップと、
    受信された電磁超音波信号の波形ピークの間隔、又は受信された電磁超音波信号のピークを示す共鳴周波数に基づいて、前記送信位置と前記受信位置との間で減肉した箇所の板厚を算出する減肉検出ステップと、
    を備える、超音波板厚測定方法。
  2. 前記減肉検出ステップにおいて、受信された電磁超音波信号のピーク値に基づいて、前記送信位置と前記受信位置との間の減肉範囲を算出する、請求項1に記載の超音波板厚測定方法。
  3. 円筒状の材料内を伝播した電磁超音波信号の共鳴周波数に基づき、電磁超音波共鳴法を用いて当該材料の板厚を測定するための超音波板厚測定装置であって、
    前記材料の表面上の送信位置にて、異なる周波数の電磁超音波信号を時間的に変えながら又は重畳して同時に前記材料内へと送信する送信用EMATと、
    前記材料の表面上で前記送信位置から前記材料の周方向に離れた1以上の受信位置それぞれにて、前記材料内を伝播した電磁超音波信号を受信する1以上の受信用EMATと、を備える、超音波板厚測定装置。
  4. 前記送信用EMATが前記材料の表面上の前記送信位置に設置され、前記1以上の受信用EMATが前記材料の表面上の前記1以上の受信位置それぞれに設置されている、請求項3に記載の超音波板厚測定装置。
  5. 前記受信用EMATが1つであり、前記送信位置と前記受信位置とが前記材料周方向に180度離れて配置されている、請求項に記載の超音波板厚測定装置。
  6. 前記材料が発電プラント内に設けられた配管であり、前記配管の外周側に断熱材が設けられている、請求項に記載の超音波板厚測定装置。
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