JP6409892B2 - 植物の生長促進又は抑制方法並びに植物の花芽と結実数の増加促進方法 - Google Patents
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また、前述の様に、珪藻土やパーライトは有機物の濾過にも使われるので、これら操作を経て廃棄されたものを炭化させれば、珪藻土やパーライトと炭の複合体となる。
以上のことから、本技術の実施例で行った実験は、珪藻土で代表させて行った。
この公知技術は、各種植物を植えている容器内土壌表面又は栽培地の土壌表面に珪藻土を単体若しくは主成分として塗布又は散布、或いは敷設することで各種病害虫の発生や侵入を防止することを可能とした病害虫並びに木材腐朽菌の防除方法である。
この公知技術は、建築物の屋上に敷き詰めた土壌の下層に敷設した板状の基部と平面視多角形の筒体をハニカム状に成型して構成する保水部とを備える緑化用排水基盤であって、前記筒体により形成される第一保水部と第二保水部に保水作用が高い珪藻土が充填可能とされている緑化用保水排水基盤である。
本発明の植物の花芽と結実数及び収穫量の増加促進方法は、植物の根元に珪藻土他を敷設して、土中の湿度・栄養状態・温度を適正に保ち、細根の発達を促すことにより、花芽や結実数及び収穫量の増加促進を行うものである。
一方、敷設した珪藻土他を露出させた場合、珪藻土他からの水分の蒸散効果が大きくなるため、土中水分がさらに少なくなり、細根の発達に時間がかかり、植物の生長の一時的抑制効果が発現する。しかしながら、この場合でも細根の発達は起きるため、その後は生長促進に代わる。
本発明の植物の花芽と結実数の増加促進方法は、土壌中の水分・栄養状態・温度を適正に保つことにより花芽の増加を促し、結実数及び収穫量を増やすことができる。
珪藻の殻には小孔が多数空いているため、珪藻土は体積あたりの重さが非常に小さい。そのため、珪藻土の最大の用途は濾過助剤である。イオン等溶質に対する吸着能力は低く、溶液中に溶解している成分はそのまま通し、不溶物だけを捕捉する性質があり、珪藻土単独で濾過することは稀で、フィルターに微細粉末が目詰まりしてしまうのを防ぐために使用される。
また、珪藻土は、小孔が多数空いているので水分や油分を大量に保持することが出来る。
冒頭で述べた様に、パーライトやゼオライトも多孔質材料で、珪藻土と近い性質を示すが、その由来が火山岩であることが珪藻土と異なる。ゼオライトの場合、孔の大きさに違いがあり、ナノメートルサイズの孔が主体を占める。
また、前述の様に、珪藻土やパーライトは有機物の濾過にも使われるので、これら過程を経て廃棄されたものを炭化させれば、珪藻土やパーライトと炭の複合体となり、本技術の様な農業資材として使用することができる。
本発明は、珪藻土他の保水力・保肥力・保温力を利用して、植物の生長をコントロールすることや、植物の花芽と結実数や根菜類の収穫量を増加させたりすることができるものである。
<樹木の生長の促進を遅らせる場合>
図1の概略説明図に示すように、(a)植え付け時;樹木の周りを所定半径、深さ(共に成木の根が及ぶ範囲以内)で掘り起こし、この掘り起こされた空間に珪藻土を敷設する。したがって、樹木の周りの地表は、珪藻土で囲まれる。(b)晴天時;珪藻土の表面から水分が蒸発し、周辺の水分と共に水溶性養分の珪藻土への濃縮が行われる。したがって、土壌中の水分量が珪藻土からの蒸発で減少されるため、樹木の生長促進が抑制される。(なお、この処理により植物の細根発達は遅れるが、最終的には発達するため、翌年度以降は生長促進に転ずる。)(c)雨天時;雨水により珪藻土から濃縮した養分を土壌へ徐々に放出する。
図2の概略説明図に示すように、(a)植え付け時;樹木の周りを所定半径、深さ(共に成木の根が及ぶ範囲以内)で掘り起こし、この掘り起こされた空間に珪藻土を埋設し、さらに珪藻土の表面を土壌で被覆する。したがって、樹木の周りの地表は、土壌で囲まれる。(b)晴天時;珪藻土の表面が土壌により覆われているので水分蒸発が抑制され、周辺の水分と共に水溶性養分の珪藻土への濃縮が行われる。したがって、土壌中の水分が適度に一定に保たれるため、樹木の生長が促進される。具体的には、この時に細根の発達が起きるため、生長促進に繋がる。(c)雨天時;雨水により珪藻土から濃縮した養分を土壌へ徐々に放出する。
図3の概略説明図に示すように、(a)植え付け時;樹木の周りを所定半径、深さ(共に成木の根が及ぶ範囲以内)で掘り起こし、さらに掘り起こした周囲を円筒状に掘り起こし、これらの掘り起こされた空間に珪藻土を埋設し、さらに珪藻土の表面を土壌で被覆する。したがって、樹木の周りの地表は、土壌で囲まれる。(b)晴天時;珪藻土の表面が土壌により覆われているので水分蒸発が抑制され、周辺の水分と共に水溶性養分の珪藻土への濃縮が行われる。したがって、土壌中の水分が一定に保たれるため、樹木の生長が促進される。(c)雨天時;雨水により珪藻土から濃縮した養分を土壌へ徐々に放出する。
対照区〔比較例1〕
果樹園に直径50cm、深さ50cmの穴を掘り、前記穴の中心に支柱を立てる。最初に肥料(有限会社北秋田市有機センターの商品名「ゆうき」)30リットルを投入し十分に踏み固める。前記肥料の上に土を被せ、苗木を植えつける。その際、苗木の茎が埋まらないように高さ調整をし、苗木の根に土を被せる。そして、苗木を前記支柱に結びつける。その後の苗木の成長度合いを観察した。観察に使用した苗木は、接ぎ木をしてから3年経過のもので、大きさ(生長の度合い)が同じものを準備し、リンゴの王林と紅玉をそれぞれ2本ずつ植えた(平成22年4月22日実施)。以下の実施例1と2でも同じ苗木を使用した。
果樹園に直径50cm、深さ50cmの穴を掘り、前記穴の中心に支柱を立てる。最初に珪藻土を10cmの厚さで敷き詰め、その後、肥料(有限会社北秋田市有機センターの商品名「ゆうき」)30リットルを投入し十分に踏み固める。前記肥料の上に土を被せ、苗木を植えつける。その際、苗木の茎が埋まらないように高さ調整をし、苗木の根に土を被せる。そして、苗木を前記支柱に結びつける。再び珪藻土を10cmの厚さで被せ、珪藻土の周りを土で堤を形成して風による飛散を防ぐ(平成22年4月22日実施)。その後の苗木の成長度合いを観察した。観察に使用した苗木は、りんごの王林と紅玉をそれぞれ2本ずつ植えた。
果樹園に直径50cm、深さ50cmの穴を掘り、前記穴の中心に支柱を立てる。最初に珪藻土を10cmの厚さで敷き詰め、その後、肥料(有限会社北秋田市有機センターの商品名「ゆうき」)30リットルを投入し十分に踏み固める。前記肥料の上に土を被せ、苗木を植えつける。その際、苗木の茎が埋まらないように高さ調整をし、苗木の根に土を被せる。そして、苗木を前記支柱に結びつける。再び珪藻土を10cmの厚さで被せ、更に珪藻土の表面を土で覆う。その後の苗木の成長度合いを観察した。観察に使用した苗木は、りんごの王林と紅玉をそれぞれ2本ずつ植えた(平成22年4月22日実施)。
△:基準 ○:基準に対して10cm+ ◎:基準に対して20cm+
例:◎◎=基準に対して40cm+、◎◎◎◎○=基準に対して90cm+
(表2)王林の生長の様子(平成24年9月28日計測)
△:基準 ○:10cm+ ◎:20cm+ 例:○=10cm+、◎◎○=50cm+
王林の対照区〔実験例1〕の本数が一本なのは、途中で枯れてしまったためである。
比較例1と実験例1の樹の高さを比較した場合、実験例の1の方が若干生長が速い(紅玉の場合0cmから48cm、王林では3cmから11cm)が、王林、紅玉共に大きな生長差は認められない。
比較例1と実験例2の樹の高さを比較した場合、王林、紅玉共に珪藻土埋設区〔実験例2〕の方が樹の生長速度が速い。紅玉の場合は、対照区と比較して、18cmから93cmも樹の高さに違いが出ている。王林でも51cmの生長差が確認できる。
したがって、樹木の周りに珪藻土を埋設し、土壌中の水分を一定に保つことにより樹木の生長を制御可能とすることが実証できた。
2012年春に、ジャガイモの苗を植え付ける際に根元に厚さ5cmで畝全体を覆うように珪藻土を敷設した。選択した品種は、ダンシャク、メークイン、キタアカリである。実験区は、ハウス内、ハウス外、露地に設定し、さらに、比較のためそれぞれに対して珪藻土敷設区と非敷設区を設けた。
秋に収穫を行い、品種ごとの品質を分類した結果が表3である。収穫物総計を見ると、ジャガイモ一個当たりの重量は、珪藻土区の方が高い。また、3週間後の商品価値のあるものの総計を見ると、ハウス外のダンシャク以外の全てにおいて、珪藻土区の方が良い成績を示している。
以上のことから、ジャガイモに対して、珪藻土敷設が有効であることが実証できた。
図4に示す様に、2011年12月の降雪前に紅あかり(リンゴの樹)の根元に厚さ5cm、直径1mで珪藻土を敷設した。実験の精度を高めるため、この様な珪藻土敷設を行った樹を3本、敷設をしない樹を2本用意し、翌年(2012年)の収穫量の比較を行った。
実験の結果、珪藻土敷設を行ったリンゴの樹では、大幅な花芽の数の増加が起こり、その結果、図5に示す様な大幅な結実数の差が表れた。
したがって、樹木の根元に珪藻土を敷設するだけで、やはり土壌中の水分が一定に保たれ、細根の発達が促され、それにより花芽の数が増加し、結実数も増加することが実証できた。
実施例1で記載した紅玉が平成24年度から安定して結実する様になったので、平成24年と25年の違いを図6a〜fに示す。また、生長と結実に対する珪藻土の効果をまとめたのが表4である。
(表4) 紅玉の生長と結実数に対する珪藻土敷設の効果
樹の高さでは、珪藻土埋設区Aが最も良い。但し、樹の高さの増加量では対照区Aと珪藻土埋設区Aの成績が良い。幹の太さ及び実の数は、全て珪藻土敷設区A,Bが良い成績を示している。
したがって、珪藻土の敷設がリンゴの木の生長と結実数に効果的であることが改めて証明でき、特に珪藻土を埋設すると、その効果が顕著になることが明らかになった。
図7a〜dは山形県真室川町の真室川公園に植樹されている染井吉野で、3本のうち、中央の樹の根元に珪藻土を敷設してある。
平成25年5月6日:両側の樹と比較して、中央の樹は、写真の上の方を中心に、桜の花芽が大きく膨らんでいるのが確認できる。
5月10日:左側の樹と比較すると、中央の樹の桜が良く咲いているのが確認できる。
5月17日:両側の樹の花は既に散っているが、中央の樹の花はまだ咲いている。
5月25日:中央の樹には、花のついていた花柄が沢山残っており、この多くが実へと変わっている。
したがって、珪藻土の敷設が染井吉野の開花と結実にも効果があることが明らかになった。
実施例5と同じ山形県真室川町の真室川公園に植樹されている庄内節田梅である。表5に珪藻土敷設区の生長の様子を、表6に珪藻土未敷設区(対照区)の生長の様子をそれぞれ示す。また、珪藻土敷設区の生長の様子を図8a〜eに示す。珪藻土敷設区は、真室川町役場の方の指示に従い、特に樹勢が弱く、うさぎ等野生動物による食害を受けている梅の樹に対して試験を行った。
生長率を見ると、珪藻土敷設から僅か6ヶ月で大きな差がでている。未敷設区では15本中、半数近い7本で樹勢が弱く、そのうち3本が枯死している。また伸長率の最大は24%である。一方、珪藻土敷設区では、樹勢が弱い樹が10本中2本で、そのうち1本が枯死してしまったものの、全体的に生長が良く、伸長率の最大は73%に達する。
したがって、珪藻土の敷設が梅の生長及び樹勢回復にも効果的があることが明らかになった。
(表5) 庄内節田梅(珪藻土敷設区 平成25年4月27日敷設)
(表6) 庄内節田梅(珪藻土未敷設区)
果樹への珪藻土他の敷設は半永久的なので、特に問題はないが、根菜類に対して本手法を実施する場合は次の工夫が必要になる。畑は毎年耕すので、その都度珪藻土他を敷設すると、土壌中の珪藻土他の割合が高くなりすぎ、バランスが悪くなってしまう。これを解決するため、珪藻土他をポリエステルの様な吸水性素材でできた袋に封入して使用する。これにより、珪藻土の移動や廃棄が容易になる。
以上の様に本発明による貢献度は極めて高いと言える。
Claims (4)
- 植物の周りに、珪藻土、パーライト若しくはゼオライト、或いは前記素材を組み合わせたものの何れかを植物の生長を促す場合は埋設又は植物の生長を促進させない場合は敷設して土壌中の水分を吸収させることにより、根の付近の土壌含水量を周囲の土壌よりも低く保つことで根の発生と成長を促進し、植物の生長を制御可能とすることを特徴とする、植物の生長促進又は抑制方法。
- 植物の根元周囲に、珪藻土、パーライト若しくはゼオライト、或いは前記素材を組み合わせたものの何れかを植物の生長を促す場合は埋設又は植物の生長を促進させない場合は敷設して土壌中の水分を吸収させることにより、根の付近の土壌含水量を周囲の土壌よりも低く保つことで根の発生と成長を促進し、植物の花芽や結実数を増加させることを特徴とする、植物の花芽及び結実数の増加促進方法。
- 前記珪藻土、パーライト若しくはゼオライト、或いは前記素材を組み合わせたものを吸水性素材の袋に充填し、袋ごと植物の根に沿って植物の生長を促す場合は埋設又は植物の生長を促進させない場合は敷設することで、前記素材が不要になった際の撤去を容易にすることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記吸収性素材の袋の上面と下面を白と黒に塗り分けることにより、目的により上面と下面を使い分けることを可能とする、請求項3に記載の方法。
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