JP5808098B2 - 植生制御緑化工法 - Google Patents
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Description
(2)植生基盤材に日本芝の苗芝を混合する工程をさらに含む、(1)に記載の緑化工法。
(3)前記苗芝を混合する工程の前に、苗芝に付着した苗芝栽培地の植栽土を除去する工程をさらに含む、(2)に記載の緑化工法。
本発明の緑化工法は、施工面における施工後初期の草本植生を制御する工法である。本発明は、造成地周辺で採取した表土をシートで覆う等して、巻出しまでの期間、採取した表土を非低温下及び非加水下で保存することによって、表土に混在する雑草の種子を休眠状態に維持することで、その発芽を制御し、施工面を施工地周辺の在来植物を主体とする植物種で緑化することを特徴とする。
本発明の緑化工法は、(1)表土採取工程、(2)保存工程、(3)植生基盤材作製工程及び(4)巻出し工程を含む。各工程は、通常、上記順番に行われるが、(4)巻出し工程を最後に行うことを除けば、他の工程は、必ずしも上記順序でなくてもよい。例えば、(1)表土採取工程の前に(2)保存工程を行うこともできる。これらの詳細については、後述する。さらに、必要に応じて、(5)苗芝混合工程、(6)苗芝植栽土除去工程を含むこともできる。以下、それぞれの工程について具体的に説明をする。
「表土採取工程」とは、施工地及び/又はその周辺の表土を採取する工程である。
本発明において、「施工地」とは、施工を行う場所をいう。例えば、造成地、道路、線路、河岸、河川区域、海岸、ダム等が該当する。「その周辺」とは、施工地近辺の区域をいう。本発明の目的を鑑みれば、施工地と同様の植生を有する地域であれば、施工地からの距離は特に制限しない。
「保存工程」とは、前記表土採取工程で採取した表土を巻出しまでの期間、非低温下及び非加水下で保存する工程をいう。本工程は、雑草種子の休眠覚醒に必要な低温暴露と発芽時に必要な水分の供給を断つことによって雑草の発芽を抑制する工程である。
「植生基盤材作製工程」とは、前記表土を植栽土として植生基盤材を作製する工程をいう。「植生基盤材」とは、施工面に巻出す緑化用土砂をいう。具体的には、植栽土に緑化用植物の種子及び/又は苗、肥料を混合したものであり、必要に応じてルナゾール(登録商標)(日本合成化学工業)のような接合材、ルナゾールパウダ(日本合成化学工業)のような養生材、吸水促進剤のような浸透材、及び/又はスカイジェル(登録商標)(メビオール)のような保水材等の各資材を配合することができる。本発明では、主たる植栽土として、前記施工地及び/又はその周辺で採取した表土を用いる。この表土には、原則として地域性種苗の埋土種子が含まれている。保存工程後、植生基盤材作製前の表土の表面に植物が繁茂していた場合には、ふるい目約2cmのメッシュでふるい分けて植物体を除去して使用することが望ましい。
「巻出し工程」とは、植生基盤材を客土として施工面に巻出す工程をいう。上記のように本発明での巻出しは、植生基盤材を施工面に敷き広げる全ての作業を含む。したがって、河川敷のような施工面が平地の場合には、作製した植生基盤材をブルドーザー等の建設機械によって敷き広げればよい。この場合の、客土厚は、3cm以上、5cm以上、又は10cm以上あればよい。なお、平地に施工する場合には、植生基盤材に接合材や養生材、浸透材などの資材を混合しなくてもよい。また、法面のように施工面が斜面の場合には、作製した植生基盤材を客土吹付け工に使用する吹付け機で吹付ければよい。この場合、客土厚は2cm以上、又は3cm以上あればよい。後述する苗芝混合工程を本発明の工法に追加する場合、客土厚が2cm以上あれば、日本芝の裁断苗が客土表面に露出してしまうことはなく、施工初期における日本芝の苗芝を効率的に活着させることができる。
「苗芝混合工程」とは、植生基盤材に日本芝の苗芝を混合する工程をいう。日本芝は、日本在来の芝であり、施工地の生物多様性に与える影響も小さく、また低茎で生育速度も遅いことから地域性種苗の生育を抑圧しにくい。さらに、植生基盤材に配合することで、施工面の早期緑化や表土に混在する地域性種苗の埋土種子の流出を防止することができるため、法面等の緑化に古くから利用されてきた。本発明においても植生基盤材に日本芝を混合することは好ましい。しかしながら、日本芝の種子発芽率は低いことから、早期緑化を図ることはできない。そこで、本工程では、日本芝の苗芝を前記植生基盤材の資材として混合して、日本芝の利点を享受することを目的とする。なお、本工程は、本発明の任意の工程であって、必要に応じて選択すればよい。
「苗芝植栽土除去工程」とは、前記苗芝混合工程前に、植生基盤材に混合する苗芝に付着した苗芝栽培地の植栽土を除去する工程をいう。上記で説明したように、日本芝の苗芝を植生基盤材に混合することは、早期緑化や埋土種子の流出を防止の点からも好ましいが、同時に苗芝に付着した苗芝産地の植栽土を植生基盤材に混入させる可能性がある。この場合、苗芝産地が施工地周辺でなければ、施工地及び/又はその周辺表土以外の土に含まれる地域性種苗の埋土種子を持ち込むことにもなり得る。そこで、本工程は、苗芝混合工程において苗芝を植生基盤材に混合する前に、苗芝に付着した苗芝産地の植栽土を可能な限り除去し、それによって当該植栽土に混入した雑草又はその産地の地域性種苗の埋土種子を除くことを目的とする。本工程も任意の工程であって、前記苗芝混合工程を行う場合に、必要に応じて選択すればよい。
施工地の表土を植栽土(客土)として吹付ける際、表土に含まれる埋土種子の判別を行い、表土の保存方法が巻出し後に出現する植生に及ぼす影響について検証した。
1−1.表土の採取及び保存
2008年12月に、試験施工を実施した富士山南陵工業団地造成工事内で地域固有の草本類が優占していた鉄塔下の草地表土を約30cmの深さでブルドーザーによって剥ぎ取り、表土A及びBの2群に分けて1m程度の高さで盛土した。表土Aは単に盛土しただけで、表土Bはブルーシートで覆って、2009年3月まで保存した。表土Bは、保存期間中、シート養生によって低温に晒されず、また降雨による加水もされていない点が表土Aと異なる。4月に入って、土壌Bを覆っていたブルーシートを外し、表土A及びB共に盛土していた表土を薄く敷き均し、試験施工を実施した6月末まで保存した。
表土の保存方法、及び植生基盤材に日本芝の苗芝の混合が、吹付け後に出現する植生に及ぼす影響について検証した。まず、表土A及びBを網目10mmのメッシュでふるい分けし、それぞれ植生基盤材の植栽土とした。植生基盤材の配合は、表土500kg、バーク堆肥1000L、接合材10kg、養生材0.5kg、浸透材0.1kg、保水材1kg、化成肥料1.5kgとした。さらに、表土A及びBのそれぞれについて、日本芝の裁断苗を苗芝としてそれぞれ混合したものを作製した。その結果、盛土して保存しただけの表土を含む植生基盤材(A1群)、盛土して保存しただけの表土に、さらに苗芝を混合した植生基盤材(A2群)、盛土した上に養生シートで覆って保存した表土を含む植生基盤材(B1群)、盛土した上に養生シートで覆って保存した表土に、さらに苗芝を混合した植生基盤材(B2群)の4群が作製された。
吹付けは、各試験区にてt=20mmで行った。吹付けは、2009年6月29日に開始し、8月5日(吹付け1ヶ月後)、9月29日(3ヶ月後)、12月15日(6ヶ月後)、2010年3月30日(9ヶ月後)に、各試験区にて植生調査を実施した。調査方法は、各試験区の上端、中間、下端にて任意に1m2のコドラートを設置し、そこに出現している植物種を可能な限り分類し、その出現数を計量した。なお、3月30日調査時には、有資格者(生物分類技能検定2級)の立会いのもと、出現している植物種の詳細な分類を行った。
結果を図1、図2Aおよび図2Bに示す。
吹付け1ヶ月後に各試験区にて出現株数を計量したところ、試験区間で双子葉植物とイネ科植物の株数に有意な差が認められた(図1)。表土Aを植栽土に用いた試験区A1及びA2における双子葉植物の出現株数は、表土Bを用いた試験区B1及びB2に比べて有意に高かった。また、イネ科植物については試験区A1に出現した株数が他の試験区に比べて有意に高かった。なお、試験区A1にて確認されたイネ科植物のほとんどは、ヌカキビ等の高茎性雑草種であった。
表土を保存中に低温に晒さないことの効果を室内にて検証した。
1−1.表土の採取及び保存
実施例1で採取後、野外で保存する前の表土A及びBより各々6L×6袋分の表土を採取した。技術センターに持ち帰った表土のうち、3袋は温室(22〜30℃)(温室区)で、残り3袋は4℃に設定した低温庫(低温区)で、それぞれ保存した。各試験区の構成を表3に示す。
2ヶ月後、各表土を取り出し、6Lの土壌に対して肥料入り人工軽量土壌(商品名:メトロミックス)を2L混合した後、育苗トレー(25×40cm)に3〜4cm厚で敷き均した。これにより、2(土壌数)×2(保存区)×3(反復数;袋)の計12トレーで構成された試験を実施した。2ヶ月間、散水しながら温室内で養生し、各育苗トレーに出現した植物を可能な限り分類し,その出現株数を計量した。
結果を表4に示す。
植生基盤材への日本芝の苗芝の混合の効果を検証した。
1−1.表土の採取及び保存
実施例1の実験を引き続き行ったものであり、実施例1と同一である。
吹付け後1年3ヶ月が経過した2010年10月1日に、各試験区の植生調査を行った。各試験区で確認された植物のうち、吹付けに添加した日本芝と、帰化種及び高茎性のイネ科植物からなる雑草、並びにそれら以外の植物からなる地域性種苗の3群にグループ分けし、各々が1m2のコドラート内で占める面積の割合を被覆率として記録した。
結果を図3に示す。当然ながら、日本芝の苗芝を混合した試験区A2及びB2における植物全体の被覆率は、試験区A1及びB1に比べて高く、苗芝を混合して吹付けた試験区A2及びB2では、試験区B2における被覆率がA2に比べて高かった。また、試験区B2では雑草に比べて地域性種苗が占める割合が高かった。試験区A1及びB1においても、シート養生して保管した表土を吹付けた試験区B1における地域性種苗の割合が試験区A1に比べて若干高かった。
Claims (3)
- 施工地及び/又はその周辺の表土を採取する工程、
採取した表土を巻出しまでの期間、10℃を超える温度下にて、新たな加水が行われない条件下で保存する工程、
前記表土を植栽土として植生基盤材を作製する工程、
植生基盤材を施工面に巻出す工程
を含む、施工面における施工後初期の草本植生を制御する緑化工法。 - 植生基盤材に日本芝の苗芝を混合する工程をさらに含む、請求項1に記載の緑化工法。
- 前記苗芝を混合する工程の前に、苗芝に付着した苗芝栽培地の植栽土を除去する工程をさらに含む、請求項2に記載の緑化工法。
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