JP6409396B2 - H形鋼梁 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリートスラブを支えるH形鋼梁に関し、耐火被覆の範囲を改善することで火災時のたわみ量を低減したH形鋼梁に関する。
図16に示すように、鋼材の強度と剛性は、高温になると急激に低下するため、建築物の構造部材に鋼材を使用する場合は、居住者や利用者等が避難する間に建築物が崩壊しないよう耐火性能を確保する必要がある。そのため、従来、図17に示すように、構造部材として梁にH形鋼などを使用する場合は、H形鋼の外表面を耐火被覆材で被覆している。
H形鋼の外表面を被覆する耐火被覆材としては、一般には、単位面積あたりの材料費及び施工費が安価で断熱性能に優れた無機繊維からなるロックウールが用いられており、このロックウールをH形鋼の外表面に吹付けてセメント等で固める、湿式工法の吹付けロックウールによる耐火被覆が主流となっている。しかし、この吹付けロックウールには、風などが入ってこないように建物開口部を封鎖した高温環境下で、防塵マスクやゴーグル,長袖衣類等を着用しつつ施工を強いられることや、吹付け後に養生期間等が必要であるため工期が長期間に及ぶなどの問題がある。
また、巻付けロックウール、耐火塗料、耐火シートなど他の耐火被覆材は、単位面積あたりの材料費及び施工費が吹付けロックウールに比べて高いという問題がある。そのため、耐火被覆範囲の削減に対するニーズは非常に高いものがあった。
一方、H形鋼を構造部材である床梁として使用する場合の耐火認定試験における主な評価項目は、梁直上に設置される床のたわみ量であり、床下から火炎により加熱を行って、1時間、2時間等の所定時間、たわみ量が制限値を超えないことが要求される。そのため、積載荷重が大きい場合や大スパン条件下ではたわみ量が過大となり、制限値を超えて耐火認定を得られないケースがあった。そこで、本願の発明者らは、たわみ量を低減することができれば床梁として使用されるH形鋼の耐火性能を確実に向上できると考えた。
床下から火災加熱を受けるH形鋼梁にたわみが生じる要因は、2つ挙げられる。一つ目は、鋼材が高温で材料劣化し、H形鋼梁の耐力と剛性が低下することである。二つ目は、熱容量の大きい床スラブが接合される上フランジ温度が下フランジ温度よりも低くなり、梁せい方向に温度差が生じるため、加熱面側である下方に凸に変形することである。特に、加熱初期においては、温度差によるたわみ量が全体に占める割合が大きく、温度差を小さくすることでたわみ量を低減できると考えられる。さらにこの考えを進めると、上フランジ温度を下フランジ温度より高くできれば、H形鋼梁が加熱裏面側である上方に凸に変形してたわみ量をより低減できると考えられる。
また、特許文献1には、鉄骨構造体1を構成する鉄骨柱21が両側に接合されるH形鉄骨梁11の耐火被覆構造において、H形鉄骨梁11は、略鉛直に向けられたウェブ12の上下端に上部フランジ13と下部フランジ14がそれぞれ形成され、上部フランジ13は、上記H形鉄骨梁11の軸線方向に沿って耐火被覆材2が被覆されており、火災時における梁の伸び出し量を大幅に低減することにより柱の部材角を抑制して鉄骨構造体の層崩壊を防ぐH形鉄骨梁の耐火被覆構造が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落0024〜0031、図面の図2等参照)。
しかし、特許文献1に記載されているH形鉄骨梁の耐火被覆構造は、火災時における梁の伸び出し量を大幅に低減することで柱の部材角を抑制することができるが、火災時において上部フランジと下部フランジとの間で温度勾配を大きくするため、その結果、H形鉄骨梁が下に凸となるように変形、即ち、撓んでしまい、床梁として所定時間耐火性能を発揮できないという問題があった。
そして、特許文献2には、H形鋼を耐火被覆する耐火被覆材14において、H形鋼の断面内の温度上昇率に応じて耐火被覆材14の被覆厚を調整し、各断面における温度分布を均一にすることで、H形鋼10の撓みによる床22等の区画部材の損傷を無くし、区画部材との取合いにおいて、隙間が生じないようにした鉄骨材の表面を耐火被覆する方法、及びH形鋼梁が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落0072〜0076、図面の図3等参照)。
しかし、特許文献2に記載のH形鋼梁は、H形鋼の断面内の温度上昇率に応じて耐火被覆材14の被覆厚を調整するものであり、耐火被覆材として一般的な吹付けロックウールでは、H鋼材の部位ごとに被覆厚を調整する作業が困難であるという問題があった。また、他の耐火被覆材でも、被覆厚を調整することで材料費は多少安くなるが、施工面積は変わらないため、施工工数を省略して施工費を削減することはできないという問題があった。そのうえ、H形鋼10の撓みによる床22等の区画部材の損傷を無くし、区画部材との取合いにおいて、隙間が生じることを無くすことはできても、熱膨張差を利用して火災時におけるH形鋼梁のたわみ量を積極的に低減することはできないという問題があった。
特開2006−283431号公報 特開2002−173995号公報
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、熱膨張差を利用して火災時におけるH形鋼梁のたわみ量を低減して、耐火性能を向上させるとともに、耐火被覆の材料費及び施工費を削減できるH形鋼梁を提供することにある。
第1発明に係るH形鋼梁は、上フランジと、下フランジと、ウェブとを備え、上方のコンクリートスラブを支えるH形鋼梁であって、前記下フランジのみ、又は前記下フランジ、及び前記ウェブの一部あるいは全部だけが耐火被覆材で被覆されており、前記上フランジは、支持スパン全長に亘り耐火被覆材で被覆されておらず、火災時において前記下フランジ及び前記ウェブに対する相対的な熱膨張差により上に凸となるように変形することを特徴とする。
第2発明に係るH形鋼梁は、第1発明に係るH形鋼梁において、前記下フランジとともに、前記ウェブが、前記ウェブの下端を起点として、前記ウェブの設計用せん断力を伝達可能な高さにおいて前記耐火被覆材で被覆されていることを特徴とする。
第3発明に係るH形鋼梁は、第1発明又は第2発明に係るH形鋼梁において、前記ウェブには、貫通孔が穿設され、前記ウェブの下端から前記貫通孔の下端付近まで前記耐火被覆材で被覆されていることを特徴とする。
第4発明に係るH形鋼梁は、第1発明〜第3発明の何れかに係るH形鋼梁において、前記下フランジを被覆する前記耐火被覆材の厚さは、耐火試験において加熱開始30分後の下フランジ温度が上フランジ温度より100℃以上低くなる厚さ以上であることを特徴とする。
第5発明に係るH形鋼梁は、第1発明〜第4発明の何れかに係るH形鋼梁において、前記下フランジを被覆する前記耐火被覆材の厚さは、耐火試験において加熱開始60分後の下フランジの温度が上フランジの温度より100℃以上低くなる厚さ以上であることを特徴とする。
第6発明に係るH形鋼梁は、第1発明〜第5発明の何れかに係るH形鋼梁において、前記下フランジを被覆する前記耐火被覆材の厚さは、100mm以下であることを特徴とする。
第7発明に係るH形鋼梁は、第1発明〜第6発明の何れかに係るH形鋼梁において、前記耐火被覆材は、石膏ボードや巻付けロックウールなどの乾式耐火被覆材であるか、又は、耐火塗料や耐火シートなどの熱膨張式耐火被覆材であることを特徴とする。
第1発明〜第7発明によれば、下前記下フランジのみ、又は前記下フランジ、及び前記ウェブの一部あるいは全部だけが耐火被覆材で被覆されており、前記上フランジは、支持スパン全長に亘り耐火被覆材で被覆されておらず、火災時において前記下フランジ及び前記ウェブに対する相対的な熱膨張差により上に凸となるように変形するので、H形鋼梁のたわみ量を低減することができる。それに加え、第1発明〜第7発明によれば、コンクリートスラブを支えるH形鋼梁として、2時間耐火程度の耐火性能を発揮することができるとともに、耐火被覆材を被覆する範囲が、下フランジのみ、又は下フランジ、及びウェブの一部あるいは全部だけで前記上フランジは、支持スパン全長に亘り耐火被覆材で被覆されていないので、耐火被覆の材料費及び施工費を削減できる。特に、吹付けロックウールに比べて、単位面積あたりの材料費及び施工費が高い耐火塗料や耐火シートを耐火被覆材に使用した場合には、被覆範囲を限定することで材料費及び施工費を大幅に削減できる。このため、第1発明〜第7発明によれば、H形鋼梁の耐火性能に対する費用対効果を大きくすることができる。
特に、第2発明によれば、前記ウェブが、前記ウェブの下端を起点として、前記ウェブの設計用せん断力を伝達可能な高さにおいて前記耐火被覆材で被覆されているので、火災時においても、所定時間、H形鋼梁がせん断力を伝達することができる。このため、第2発明によれば、より一層H形鋼梁の耐火性能を向上させることができる。
特に、第3発明によれば、前記ウェブには、貫通孔が穿設され、前記ウェブの下端から前記貫通孔の下端付近まで前記耐火被覆材で被覆されているので、従来のように、耐火被覆で貫通孔の有効径が小さくなり、電気ケーブルや空調配管などが貫通孔を通らなくなるおそれがない。また、第3発明によれば、耐火被覆の範囲が明確であり、施工管理がし易いため、耐火性能の高いH形鋼梁を安定して提供することができる。
特に、第4発明によれば、前記下フランジを被覆する前記耐火被覆材の厚さは、耐火試験において加熱開始30分後の下フランジ温度が上フランジ温度より100℃以上低くなる厚さ以上であるで、火災時における上フランジと下フランジの熱膨張差を利用して、載荷重により発生した初期たわみの1/2までたわみ量を低減することができる。このため、H形鋼梁の耐火性能を向上させることができる。
特に、第5発明によれば、前記下フランジを被覆する前記耐火被覆材の厚さは、耐火試験において加熱開始60分後の下フランジ温度が上フランジ温度より100℃以上低くなる厚さ以上であるで、火災発生から60分経過した時点でも、上フランジと下フランジの熱膨張差を利用してH形鋼梁のたわみ量を低減することができる。このため、H形鋼梁の耐火性能を向上させることができる。
特に、第6発明によれば、前記下フランジを被覆する前記耐火被覆材の厚さは、100mm以下であるので、天井材の設置位置を変更することなく下フランジに耐火被覆材を被覆することができる。
特に、第7発明によれば、前記耐火被覆材は、石膏ボードや巻付けロックウールなどの乾式耐火被覆材であるか、又は、耐火塗料や耐火シートなどの熱膨張式耐火被覆材であるので、耐火被覆材が吹付けロックウールである場合などと違って、風などが入ってこないように建物開口部を封鎖したり、耐火被覆作業以外に従事する作業者の出入りを制限したりする必要がなく、作業時間及び作業期間を短縮して耐火被覆の施工費を削減することができる。
本発明の第1実施形態に係るH形鋼梁の一部を鉛直断面で示す斜視図である。 同上のH形鋼梁を示す鉛直断面図である。 本発明の第2実施形態に係るH形鋼梁の一部を鉛直断面で示す斜視図である。 同上のH形鋼梁を示す鉛直断面図である。 同上のH形鋼梁において耐火被覆範囲が異なる例を示す鉛直断面図である。 同上のH形鋼梁において耐火被覆範囲が異なる別の例を示す鉛直断面図である。 本発明の第3実施形態に係るH形鋼梁の一部を鉛直断面で示す斜視図である。 同上のH形鋼梁を示す鉛直断面図である。 H形鋼梁に貫通孔がある場合における従来の耐火被覆状況を示す鉛直断面図である。 熱伝導解析より得られる、加熱開始30分時における断面内温度分布を示す断面内温度分布図である。 熱伝導解析より得られる、H形鋼全体を耐火被覆した場合と下フランジのみを耐火被覆した場合を対比させて上下フランジ温度差の履歴を表した折れ線グラフである。 熱応力解析に用いた解析モデルを示す模式図である。 H形鋼全体を耐火被覆した場合と下フランジのみを耐火被覆した場合のたわみ履歴解析結果を示す折れ線グラフである。 耐火被覆材厚さが上下フランジ温度差に与える影響を示す棒グラフである。 H形鋼梁と天井材との間隔を模式的に示す鉛直断面図である。 鋼材の1.0%歪時応力と温度の関係を示す折れ線グラフである。 従来のH形鋼梁に対する耐火被覆の概要を示す模式図である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
先ず、図1、図2を用いて、本発明の一実施形態である第1実施形態に係るH形鋼梁について説明する。符号H1が、第1実施形態に係るH形鋼梁であり、このH形鋼梁H1は、圧延鋼材からなる所定寸法(例えば、梁せい400mm×梁幅200mm(H−400×200×8×13))のH形鋼であり、上フランジ2、下フランジ3、ウェブ4を有している。なお、図中のX方向が、H形鋼梁H1の長手方向、Y方向が、H形鋼梁H1の幅方向、Z方向が、上下方向である。
また、このH形鋼梁H1には、上フランジ2の上方に、所定のスラブ厚(例えば、スラブ厚100mm〜300mm程度)を有するコンクリートスラブ5が接続されており、H形鋼梁H1は、このコンクリートスラブ5を支える構造部材である床梁として用いられている。このコンクリートスラブ5は、所定の設計基準強度となるようにセメント、細骨材、粗骨材、水、混和材、添加剤などを調合した後、床梁の上方に打設され硬化したスラブ状の部材である。
そして、このH形鋼梁H1は、図1、図2に示すように、下フランジ3のみが耐火被覆材6で被覆されている。この耐火被覆材6は、一般的な耐火被覆材で構わないが、本実施形態では、巻付けロックウール60が採用されている。巻付けロックウール60は、乾式耐火被覆材の一種であり、鉄鋼スラグや玄武岩などの無機物を高温で溶融させ、遠心力で吹き飛ばして繊維状にしたロックウールに、粉塵飛散防止のため不織布を貼り合わせて2層構造とした部材である。この巻付けロックウール60は、端部付近に溶接ピン61が設置され、この溶接ピン61をH形鋼梁H1にスタッド溶接することによりH形鋼梁H1に止め付けられている。なお、耐火被覆材の厚さについては、後で詳述する。
勿論、耐火被覆材としては、他の乾式耐火被覆材である石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、ALC、セメント板等、無機系の板状材を採用することができる他、熱膨張式耐火被覆材である耐火塗料や耐火シートを採用することもできる。また、湿式耐火被覆材である吹付けロックウールを採用することも可能である。但し、乾式耐火被覆材(耐火シートを含む。以下同じ。)を採用した場合は、乾燥期間や養生期間が不要となるうえ作業スペースを占有することがなく、施工期間を短縮することができるため好ましい。また、湿式でも熱膨張式耐火被覆材である耐火塗料などを採用した場合は、吹付けロックウールと比べて、養生期間等が短いうえ作業スペースを占有することがなく、同様に施工期間を短縮することができるため好ましい。
以上説明した第1実施形態に係るH形鋼梁H1によれば、下フランジ3のみが耐火被覆材6で被覆されているので、火災時において耐火被覆材で被覆されていない上フランジ2の温度が下フランジ3の温度より高くなり、熱膨張差により上に凸となるように変形しようとすることで、H形鋼梁H1のたわみ量を低減することができる。
また、上フランジ2は、熱容量の大きなコンクリートスラブ5に接続しており、上フランジ2が耐火被覆材で被覆されていなくても、H形鋼梁H1とコンクリートスラブ5が、所定時間、固定荷重と積載荷重を支えることができるため、火災時であっても避難に要する2時間程度は、崩壊には至らないと考えられる。即ち、H形鋼梁H1によれば、コンクリートスラブを支えるH形鋼梁として、2時間耐火程度の耐火性能を発揮することができる。
そのうえ、H形鋼梁H1では、耐火被覆材6を被覆する範囲が、下フランジ3のみであるため、耐火被覆に掛かる材料費及び施工費を削減することができる。このため、H形鋼梁の耐火性能に対する費用対効果を大きくすることができる。また、吹付けロックウールに比べて単位面積あたりの材料費及び施工費が高い耐火被覆材を採用したとしても、被覆範囲が限定されているため採算が取れるので、施工期間が短く作業性の良い他の耐火被覆材を採用し易くなる。特に、吹付けロックウールに比べて、単位面積あたりの材料費及び施工費が高い、巻付けロックウールや耐火塗料又は耐火シートを耐火被覆材に使用した場合には、被覆範囲を限定することで材料費及び施工費を大幅に削減できる。
[第2実施形態]
次に、図3、図4を用いて、本発明の一実施形態である第2実施形態に係るH形鋼梁H2について説明する。第1実施形態に係るH形鋼梁H1と相違する点は、H形鋼の被覆範囲なので、その点について主に説明し、同一構成は、同一符号を付し、説明を省略する。
第2実施形態に係るH形鋼梁H2は、H1と同様のH形鋼であり、上フランジ2、下フランジ3、ウェブ4を有しており、上方のコンクリートスラブ5を支える床梁として用いられている。
このH形鋼梁H2は、図3、図4に示すように、下フランジ3及びウェブ4の一部が耐火被覆材6’で被覆されている。本実施形態に係る耐火被覆材6’も、巻付けロックウール60が採用されているが、ウェブ4の一部も被覆されている点でH形鋼梁H1とは相違している。
H形鋼梁H2のウェブ4は、ウェブ4の下端を起点として、ウェブ4の設計用せん断力を伝達可能な高さにおいて、その両側面が耐火被覆材6’で被覆されている。図3、図4は、ウェブ4の設計用せん断力を伝達可能な高さが、梁せいの半分である場合を例示している。勿論、図5に示すように、設計用せん断力が小さい場合には梁せいの1/4においてウェブ4を被覆すれば良い場合もあり得るし、図6に示すように、設計用せん断力が大きい場合にはウェブ4の全部を被覆しなければならない場合もあり得る。
以上説明した第2実施形態に係るH形鋼梁H2によれば、下フランジ3とともに、ウェブ4が、ウェブ4の下端を起点として、ウェブ4の設計用せん断力を伝達可能な高さにおいて、その両側面が耐火被覆材6’で被覆されているので、火災時において熱膨張差を利用してH形鋼梁H2のたわみ量を低減できるうえ、火災時においても、曲げモーメント及びせん断力を伝達できるため、崩壊の危険性がより低くなり、耐火性能が向上する。
[第3実施形態]
次に、図7、図8を用いて、本発明の一実施形態である第3実施形態に係るH形鋼梁H3について説明する。第1実施形態に係るH形鋼梁H1と相違する点は、H形鋼に電気ケーブルや空調配管等を設置するための貫通孔が設けられる点と、H形鋼の被覆範囲なので、その点について主に説明し、同一構成は、同一符号を付し、説明を省略する。
第3実施形態に係るH形鋼梁H3は、H1と同様のH形鋼であり、上フランジ2、下フランジ3、ウェブを有しており、上方のコンクリートスラブ5を支える床梁として用いられている。しかし、ウェブが、前述のウェブ4に貫通孔4a”が穿設されたウェブ4”となっている点においてウェブ4と相違する。
そして、このH形鋼梁H3は、図7、図8に示すように、下フランジ3及びウェブ4”の一部が耐火被覆材6”で被覆されている。本実施形態に係る耐火被覆材6”も、巻付けロックウール60が採用されているが、ウェブ4”の被覆されている範囲が、ウェブ4”の下端から貫通孔4a”の下端付近までである点で、H形鋼梁H1及びH形鋼梁H2とは相違している。なお、ウェブ4”の設計用せん断力を伝達可能な高さは、ウェブ4”の下端から貫通孔4a”の下端付近までの高さより低い。
一方、H形鋼梁のウェブに電気ケーブルや空調配管等を設置するための貫通孔が設けられる場合、従来は、図9に示すように、貫通孔の内周面部分にも所定の耐火被覆厚さを確保して耐火被覆する必要があるため、耐火被覆の施工効率が低下するだけでなく、有効径が小さくなり、電気ケーブルや空調配管等が貫通孔を通らなくなるという問題があった。
しかし、以上説明した第3実施形態に係るH形鋼梁H3によれば、ウェブ4”の被覆されている範囲が、ウェブ4”の下端から貫通孔4a”の下端付近までであるので、火災時において熱膨張差を利用してH形鋼梁H3のたわみ量を低減できるうえ、施工効率を損なわずに実際の孔径を大きくできるので、耐火被覆で貫通孔の有効径が小さくなり、電気ケーブルや空調配管などが貫通孔を通らなくなるおそれがない。そのうえH形鋼梁H3によれば、耐火被覆の範囲が明確であり、施工管理がし易いため、耐火性能の高いH形鋼梁を安定して提供することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。特に、H形鋼やコンクリートスラブの断面寸法や材質(配合)などは、前述又は図示した形態に限られず、適宜設定すれば良いことは云うまでもない。
[耐火被覆材を下フランジのみに設置した場合の効果の検証]
次に、図10、図11を用いて、耐火被覆材を下フランジのみに設置した場合の効果について検証する。本願の発明者らは、耐火被覆材を下フランジのみに設置した場合の効果について検証するために、H形鋼梁の耐火認定試験を対象とした熱伝導解析を実施した。
解析断面のH形鋼梁寸法は、耐火認定試験の標準断面であるH−400×200×8×13とし、梁直上に設置されるコンクリート床の厚さは100mmとした。また、耐火被覆材として石膏ボードを下フランジのみに設置した。
解析における加熱条件は、ISO834標準加熱曲線に準拠した2時間加熱とし、解析変数は、耐火被覆材の厚さと設置範囲の2つに設定した。なお、解析に使用した各材料の熱物性値は、鋼構造耐火設計指針に掲載の値を使用した。
図10は、加熱開始30分時における断面内温度分布を示す断面内温度分布図であり、(a)が、H形鋼全体を耐火被覆した場合、(b)が、下フランジのみを耐火被覆した場合である。図10に示すように、下フランジに耐火被覆材を設置することで、狙い通り下フランジ温度を低減できることが分かる。
また、図11が、H形鋼全体を耐火被覆した場合と下フランジのみを耐火被覆した場合を対比させて上下フランジ温度差の履歴を表した折れ線グラフである。縦軸は、下フランジに対する上フランジの温度差であり、横軸は時間である。図11に示すように、下フランジのみに耐火被覆材を設置すると、例えば、加熱開始30分時において、上下フランジ温度差は−156℃から131℃に変化することが分かる。即ち、加熱開始30分時において、H形鋼全体を耐火被覆した場合は、火炎に近い下フランジの方が156℃高いが、下フランジのみを耐火被覆した場合は、逆に上フランジの方が131℃高くなることを示している。
次に、このような検証結果に基づき、H形鋼梁の耐火認定試験を対象とした熱応力解析を実施し、たわみ履歴を比較した。解析対象のH形鋼寸法及び断面分割状況は前述の熱伝導解析と同様である。本解析では、H形鋼梁に緊結されたコンクリート床及び耐火被覆材は応力を負担しないと仮定し、H形鋼梁のみを図12に示すように線材にモデル化した。梁部材の支持スパンは5400mmであり、支持スパンの3等分点に位置する2箇所に長期荷重相当の215kN、215kNをそれぞれ載荷した状態で、部材要素温度が時間の経過とともに上昇する状況を模擬して解析した。解析に使用した鋼材の応力―歪関係は、前述の図16に示す実勢値である。
図13が、H形鋼全体を耐火被覆した場合と下フランジのみを耐火被覆した場合のたわみ履歴解析結果である。縦軸はスパン中央位置におけるたわみ量、横軸は時間である。図13に示すように、下フランジのみを耐火被覆すると、加熱初期においてはたわみを10mm程度低減できることが分かる。なお、本解析は、加熱開始後15分までしか数値計算を行っていないが、図11に示したように温度差が維持されていることから、加熱開始後60分、120分でも上フランジと下フランジの温度差を利用してたわみ量を低減できると考えられる。また、数値計算を簡略化するため、コンクリート床は応力を負担しないと仮定して解析を行っているが、実際はコンクリート床も応力を負担するので、実際のたわみ量は解析値より小さくなると考えられる。
以上説明した熱伝導解析及び熱応力解析により、本発明のように、H形鋼梁において、下フランジのみを耐火被覆材で被覆することにより、上フランジと下フランジの熱膨張差を利用して、H形鋼梁のたわみ量を低減できることを確認した。また、直接解析は行っていないが、下フランジだけでなく、ウェブの一部あるいは全部を耐火被覆した場合も、上フランジに耐火被覆がなく下フランジに耐火被覆がある状態は変わらないため、同様に、H形鋼梁のたわみ量を低減できると考えられる。
[耐火被覆材厚さが上下フランジの温度差に与える影響]
次に、図14を用いて、耐火被覆材厚さが上下フランジの温度差に与える影響について考察する。本願の発明者らは、耐火被覆材厚さが上下フランジの温度差に与える影響を考察するため、前述と同様の熱伝導解析を実施した。なお、耐火被覆材は、前解析と同様、石膏ボードとした。
図14は、耐火被覆材厚さが上下フランジ温度差に与える影響を示す棒グラフであり、縦軸が上下フランジ温度差、横軸が耐火被覆材厚さである。また、(a)が加熱開始30分後、(b)が、加熱開始後60分後の解析結果を示している。図中の破線は、載荷重により発生した初期たわみの1/2までたわみ量を低減するために必要な上下フランジ温度差の目安である100℃を示している。これは、図13において、載荷重により発生した初期たわみの1/2までたわみ量が小さくなる時刻を求めると加熱開始10分後であり、図11において、加熱開始10分後の上限フランジ温度差を求めると100℃程度であることによる。
図14の(a)に示すように、耐火被覆材厚さを12.5mm以上とすることで、加熱開始30分時における上下フランジ温度差を100℃以上とすることができる。また、図14の(b)に示すように、耐火被覆材厚さを25.0mm以上とすることで、加熱開始60分時における上下フランジ温度差を100℃以上とすることができる。
即ち、耐火被覆材が石膏ボードである場合、厚さを12.5mm以上とすることで、加熱開始30分時において、上下フランジの熱膨張差を利用して、載荷重により発生した初期たわみの1/2までたわみ量を低減することができ、厚さを25.0mm以上とすることで、加熱開始60分時において、載荷重により発生した初期たわみの1/2までたわみ量を低減することができる。
要するに、耐火被覆材の種類に応じて、その厚さを耐火試験において加熱開始30分後の下フランジ温度が上フランジ温度より100℃以上低くなる厚さ以上とすることで、火災時において、上フランジと下フランジの熱膨張差を利用して載荷重により発生した初期たわみの1/2までたわみ量を低減することができ、H形鋼梁の耐火性能を向上させることができる。但し、上フランジの温度が、図16に示すように、鋼材の1.0%歪時応力実勢値が常温時の2/3まで低下して長期荷重を支持できないおそれのある500℃を超えないことが条件となる。
また、耐火被覆材の種類に応じて、その厚さを耐火試験において加熱開始60分後の下フランジの温度が上フランジの温度より100℃以上低くなる厚さ以上とすることで、火災時において、上フランジと下フランジの熱膨張差を利用して載荷重により発生した初期たわみの1/2までたわみ量を低減することができ、H形鋼梁の耐火性能を向上させることができる。
[耐火被覆材厚さの上限値]
次に、図15を用いて、耐火被覆材厚さの上限値について考察する。図15は、H形鋼梁と天井材との間隔を模式的に示す鉛直断面図である。図15に示すように、事務所ビルなどを想定した場合、通常、H形鋼梁の下方には天井材が設置される。天井裏には電気ケーブルや空調配管等が設置されるため、天井材はH形鋼梁の下フランジと間隔をあけて設置され、この間隔の値としては、100.0〜350.0mm程度である。即ち、従来の天井材設置位置を変更することなく下フランジに耐火被覆材を設置するために好ましい耐火被覆材の厚さは100.0mm以下であると考えられる。
H1,H2,H3 :H形鋼梁
2 :上フランジ
3 :下フランジ
4,4” :ウェブ
4a” :貫通孔
5 :コンクリートスラブ
6,6’,6” :耐火被覆材
60 :巻付けロックウール
61 :溶接ピン

Claims (7)

  1. 上フランジと、下フランジと、ウェブとを備え、上方のコンクリートスラブを支えるH形鋼梁であって、
    前記下フランジのみ、又は前記下フランジ、及び前記ウェブの一部あるいは全部だけが耐火被覆材で被覆されており、
    前記上フランジは、支持スパン全長に亘り耐火被覆材で被覆されておらず、火災時において前記下フランジ及び前記ウェブに対する相対的な熱膨張差により上に凸となるように変形すること
    を特徴とするH形鋼梁。
  2. 前記下フランジとともに、前記ウェブが、前記ウェブの下端を起点として、前記ウェブの設計用せん断力を伝達可能な高さにおいて前記耐火被覆材で被覆されていること
    を特徴とする請求項1に記載のH形鋼梁。
  3. 前記ウェブには、貫通孔が穿設され、前記ウェブの下端から前記貫通孔の下端付近まで前記耐火被覆材で被覆されていること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のH形鋼梁。
  4. 前記下フランジを被覆する前記耐火被覆材の厚さは、耐火試験において加熱開始30分後の下フランジ温度が上フランジ温度より100℃以上低くなる厚さ以上であること
    を特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のH形鋼梁。
  5. 前記下フランジを被覆する前記耐火被覆材の厚さは、耐火試験において加熱開始60分後の下フランジ温度が上フランジ温度より100℃以上低くなる厚さ以上であること
    を特徴とする請求項1〜4に記載のH形鋼梁。
  6. 前記下フランジを被覆する前記耐火被覆材の厚さは、100mm以下であること
    を特徴とする請求項1〜5に記載のH形鋼梁。
  7. 前記耐火被覆材は、石膏ボードや巻付けロックウールなどの乾式耐火被覆材であるか、又は、耐火塗料や耐火シートなどの熱膨張式耐火被覆材であること
    を特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のH形鋼梁。
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