JP6408863B2 - ガスセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、ガスセンサおよびガスセンサの製造方法に関する。
本技術分野の背景技術として、特開2009−300297号公報(特許文献1)および国際特許公開WO 11/055605号(特許文献2)がある。
特開2009−300297号公報(特許文献1)には、「ゲート構造において、Pt微結晶間の結晶粒界に酸素をドープした非晶質のTi、Pt−Ti拡散層からなるPt−Ti−O領域を形成した構造のSi−MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)型水素ガスセンサ」が記載されている。
また、国際特許公開WO 11/055605号(特許文献2)には、SOI基板のSi基板をくり貫いたMEMS領域に、センサ用FETを形成し、センサ用FETのPt−Ti−Oゲートとソース電極との間およびPt−Ti-Oゲートとドレイン電極との間にそれぞれヒータ配線を折り曲げて配置したMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)型水素ガスセンサが記載されている。
特開2009−300297号公報 国際特許公開WO 11/055605号
近年、ガスセンサを用いた水素ガス濃度の測定は、放射線環境下においても行われている。しかし、放射線の影響により水素ガス濃度の正確な測定ができず、放射線の影響を補正した正確な水素ガス濃度の測定が望まれている。また、水素ガス濃度の測定と併せて、2〜5MGy程度の高い放射線積算線量の測定も望まれているが、水素ガス雰囲気中において、簡便な手法により放射線積算線量を測定することが難しい。
上記課題を解決するために、本発明によるガスセンサは、センサSi−MISFETのしきい値電圧と参照Si−MISFETのしきい値電圧との差分とその時間変化を求め、上記差分の初期値、上記差分の時間経過、および上記差分の時間変化の微分信号から、水素ガスに由来するしきい値電圧の差分と、放射線に由来するしきい値電圧の差分とを分離することにより、水素ガス濃度を測定する。
また、本発明によるガスセンサは、センサSi−MISFET、参照Si−MISFET、または同種のゲート構造を持つSi−MISFET(S値測定用参照型FET)において測定したサブスレッショルド領域のS値を、放射線積算線量(G)とS値との関係式(1+(G/G0)η=A×μ0×S)に代入することにより、放射線を照射した後の放射線積算線量(G)を求める。
本発明によれば、放射線の影響を補正して、水素ガス濃度を正確に測定できるガスセンサを提供することができる。
また、本発明によれば、水素ガス濃度の測定と併せて、簡便に2〜5MGy程度の高い放射線積算線量を求めることのできるガスセンサを提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
集積回路用のSi−MISFETのゲート領域のエネルギーバンド図である。 集積回路用のSi−MISFETの放射線効果を概念的に説明するI−V特性を示すグラフ図である。 (a)は、種々のPt/Ti膜厚を有する試料の室温および115℃におけるnチャネル実効電子移動度(μ)を示すグラフ図である。(b)は、室温でのnチャネル実効電子移動度(μ)と115℃でのnチャネル実効電子移動度(μ)との比(μ(115℃)/μ(室温))を示すグラフ図である。 試料の一例である水素センサチップの写真である。 Pt−Ti−Oゲート構造のSi−MISFET型ガスセンサに対して、放射光X線(39MGy)の照射前後におけるI−V特性を示すグラフ図である。 Pt−Ti−Oゲート構造のSi−MISFET型ガスセンサに対して、γ線(60Co;1.33/1.17MeV)の照射前後におけるI−V特性を示すグラフ図である。 Si−MISFET型ガスセンサの温度特性を示すグラフ図である。縦軸は、ソース・ドレイン電流(Ids)であり、横軸は、ゲート電圧(Vg)である。 nチャネル型MISFET(#24(n))およびpチャネル型MISFET(#2C(p)、#24C(p))に対するソース・ドレイン電流(Ids)を3種類(1μA、10μA、100μA)で固定して、水素応答強度(ΔVg)を測定した実験結果を示すグラフ図である。 数10MGyの放射光X線(フォトンエネルギー10keV)の照射前後におけるセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETの室温でのI−V特性の一例を示すグラフ図である。縦軸は、ソース・ドレイン電流の平方根(√Ids)であり、横軸は、ゲート電圧(Vg)である。 数10MGyの放射光X線(フォトンエネルギー10keV)の照射前後におけるセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETの室温でのI−V特性の他の例を示すグラフ図である。縦軸は、ソース・ドレイン電流(Ids)であり、横軸は、ゲート電圧(Vg)である。 センサSi−MISFETのゲート電極近傍の断面概略図である。 センサSi−MISFETのゲート電極の断面模式図である。 センサSi−MISFETのゲート領域のエネルギーバンド図である。 格納容器内での水素ガスの相対濃度および格納容器内での放射線積算線量の過酷事故発生時からの経時変化の典型的パターンを示すグラフ図である。パターン(S)およびパターン(D)はそれぞれBWR方式原発のサプレションチャンバおよびドライウェルを模擬している。さらに、放射線積算線量が2MGyの場合と5MGyの場合の2つのケースを示す。放射線積算線量を示す縦軸は、2MGyの場合は7日間程度で2MGyが0.1に、5MGyの場合は3日間で5MGyが0.45に対応する。 γ線(60Co;1.33/1.17MeV)または放射光X線(フォトンエネルギー115keV,10keV)を照射した後の移動度(μ)と初期値(μ0)との比(μ/μ0)と、フォトンドーズ量との関係を示すグラフ図である。 各種Pt−Ti−Oゲート構造のSi−MISFET型ガスセンサの移動度(1000/μ)とS値との関係を示すグラフ図である。 (a)および(b)はそれぞれ、同一の基板上の互いに異なる領域に形成された水素ガスセンサを構成するSi−MISFETおよび参照Si−MISFETを示した断面図である。 S値測定用参照型FETをセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETと同一基板に形成した平面図である。 水素ガス応答特性を抽出し、水素ガス濃度を求める手法の一例を説明する概念図である。 2MGy(7日程度)の放射線積算線量下の環境における格納容器内での水素ガスの相対濃度および格納容器内での放射線積算線量の過酷事故発生時からの経時変化を示すグラフ図である。 2MGy(7日程度)の放射線積算線量下の環境で、過酷事故時を模擬した格納容器内で水素ガス照射および放射線照射が発生した場合のセンサSi−MISFETのしきい値電圧と参照Si−MISFETのしきい値電圧との差分(ΔVth)の初期値(ΔVth0)、上記差分(ΔVth)の時間経過、および上記差分(ΔVth)の経過時間に対する時間微分を示すグラフ図である。 (a)は、水素ガス応答特性を抽出し、放射線積算線量を求める手法の一例を説明する概念図である。(b)は、S値を測定して放射線積算線量(G)を推定する手法を説明する概念図である。 (a)は、参照Si−MISFETのソース・ドレイン電圧(Vds)を一定にして測定した、ゲート電圧(Vg)とソース・ドレイン電流(Ids)のI−V特性を示すグラフ図である。(b)は、S値測定用参照型FETのソース・ドレイン電圧(Vds)を一定にして測定した、ゲート電圧(Vg)とソース・ドレイン電流(Ids)のI−V特性を示すグラフ図である。 同一の基板上の互いに異なる領域に形成された水素ガスセンサを構成するSiC−MISFETおよび参照SiC−MISFETを示した断面図である。 5MGy(3日)の放射線積算線量下の環境における格納容器内での水素ガスの相対濃度および格納容器内での放射線積算線量の過酷事故発生時からの経時変化を示すグラフ図である。 5MGy(3日)の放射線積算線量下の環境で、過酷事故時を模擬した格納容器内で水素ガス照射および放射線照射が発生した場合のセンサSi−MISFETのしきい値電圧と参照Si−MISFETのしきい値電圧との差分(ΔVth)の初期値(ΔVth0)、上記差分(ΔVth)の時間経過、および上記差分(ΔVth)の経過時間に対する時間微分を示すグラフ図である。
以下の実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
また、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、以下の実施の形態において、Siと記載しているときは、シリコンの窒化物で類似組成の絶縁膜を含み、また、SiOと記載しているときは、シリコンの酸化物で類似組成の絶縁膜を含むものとする。
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。また、以下の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
まず、本実施の形態によるガスセンサを用いた水素ガス濃度および放射線積算線量の測定方法がより明確になると思われるため、これまでに検討されたSi−MISFET型ガスセンサおよび集積回路用のSi−MISFETに及ぼす放射線の影響などについて詳細に説明する。
なお、本実施の形態では、サブスレッショルド領域でのソース・ドレイン電流がゲート電圧に対する指数関数の傾きを表すため、ソース・ドレイン電流が1桁増加するゲート電圧の増加分をmVの単位で表した値をサブスレッショルド領域のS値と定義する。
<Si−MISFET型ガスセンサ>
近年、原子炉の高度な安全性技術として、過酷事故時に発生が予測される格納容器内での水素ガス濃度の監視または原発建屋内の水素ガス漏れに伴う水素ガス爆発の防止、あるいは宇宙ビジネスでの複数回使用する宇宙船を運ぶロケットの水素燃料爆発の監視等を目的に水素ガスセンサへのニーズが高まっている。これらの環境での大きな課題は、高い放射線積算線量下(大略2〜5MGy:Gy(グレイ)は放射線線量を測る単位。人体への影響を見積もる時に使うSy(シーベルト)単位と多くの場合ほぼ同一である。)で放射線の影響を補正しつつ、水素ガスセンサを動作させて正しい水素ガス濃度を計測することである。特に、原子炉の場合、過酷環境は3日または1〜2週間程度であり、過酷環境はその後徐々に弱まっていくという特徴がある。ロケットの場合でも、1回当たりのセンシングに必要な時間は1時間にも満たない。
一方、水素ガスセンサとしては、MOS(金属−酸化物−半導体)構造の金属に触媒金属としてPt−Ti−O構造を用いるPt−Ti−Oゲート構造のSi−MISFET型ガスセンサ(例えば特許文献1参照)がある。ここで、MISとは金属−絶縁物−半導体の略号で、MOSの上位概念である。
その原理は、以下の通りである。すなわち、触媒金属であるPtの表面で水素分子がその触媒作用により解離され、触媒ゲート金属とゲート絶縁物との界面に水素原子(または陽子)が拡散により移動する。そして、双極子モーメントを持つ形で陽子と電子との対が分極(陽子の重心と電子の重心とが分離する状態)して、触媒ゲート金属とゲート絶縁物との界面近傍に形成され、Si−MISFETのしきい値電圧(Vth)がシフトする。この現象を利用して水素ガス濃度が検出される。
現在では、水素ガスの場合、しきい値電圧(Vth)のシフト量の絶対値をΔVgと表すと、触媒ゲート金属の表面における水素分子の解離吸着を反映して、Langmuir解離吸着の考え方から、しきい値電圧(Vth)のシフト量の絶対値(ΔVg)は、
ΔVg=ΔVgmax・√(C/C)/(1+√(C/C)) 式(1)
と表される。ここで、ΔVgmaxはしきい値電圧(Vth)のシフト量の絶対値(ΔVg)の最大値、Cは水素ガスセンサ近傍の水素ガス濃度、Cは水素ガスセンサの水素吸着サイトの半分を埋める時の水素ガス濃度である(例えばT. Usagawa et al., IEEE Sensors Journal 12(2012)2243-2248 参照)。以下、しきい値電圧(Vth)のシフト量の絶対値(ΔVg)をセンサ強度と呼ぶ場合もある。
水素ガスのセンシングの原理で重要なのは、環境に水素ガスが存在した場合に、水素ガス濃度に応じたセンサ強度(ΔVg)がゲート電圧(Vg)に付加的に加わり、Si−MISFET型ガスセンサのI−V特性が実効的に(Vg+ΔVg)のゲート電圧が印加したのと同じI−V特性になることである。つまり、ゲート電圧(Vg)軸の中でセンサ強度(ΔVg)だけ負の側にシフトするだけで、I−V特性の関数形自身は変化しないことが特徴である。なお、特に断らなければ、ソース・ドレイン電圧を一定にした場合、ソース・ドレイン電流(Ids)のゲート電圧(Vg)依存性をI−V特性と呼ぶ。
<Si−MISFET型ガスセンサと集積回路用のSi−MISFETとの違い>
集積回路用のSi−MISFETの放射線環境下でのI−V特性の評価は、1950年代から始まり、現在でもマイコン等は100Gy程度、撮像デバイスは10,000Gy程度が使用限界であると考えられている。その理由は、多数のSi−MISFETを所望のしきい値電圧(Vth)および飽和電流(Idss)を設計値の範囲内で動作させる必要があるためである。すなわち、放射線積算線量が増加するにつれて、しきい値電圧(Vth)がシフトし、放射線被爆の特長が確率現象であるため、しきい値電圧(Vth)の設計値からのバラツキが必然的に大きくなる。そして、しきい値電圧(Vth)のバラツキがしきい値電圧(Vth)の設計値の範囲を逸脱すると、Si−MISFETは集積回路として動かなくなる。これまでにも集積回路用のSi−MISFETに及ぼす放射線の効果については多くの蓄積された知識があり、集積回路またはイメージセンサに対する放射線対策はなされてきた。
このような集積回路またはイメージセンサでは、Si−MISFETのチャネル層から上のゲート絶縁膜、ゲート電極、およびゲート保護膜等は、1枚のウェーハ上において同じ条件で形成されており、Si−MISFETのチャネル層およびゲート絶縁膜中に形成される欠陥は、少なくとも同一チップ内の1つのSi−MISFETの周辺にあるSi−MISFETでは、殆ど同じと考えられる。その典型的な証拠としては、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等が数メガビット〜数ギガビットの集積度であるにもかかわらず信頼性良く動くのは、Si−MISFETのしきい値電圧(Vth)の同一チップ内のバラツキが大略10mV以内であるからである。
しかし、水素ガスセンサへの適用を考えた場合、Si−MISFETのゲート電極は触媒ゲート金属であり、外気に接触している必要があり、集積回路用のSi−MISFETの様に、ゲート電極を保護するゲート保護膜がない。このようにゲート電極が外気に対してむき出しの構造で使用するSi−MISFETに及ぼす放射線の影響に関する知見は皆無であった。さらに、2〜5MGy程度の高い放射線積算線量下での、Si−MISFETに及ぼす放射線の影響は、ほぼ未踏の領域であった。そのため、高い放射線積算線量下でのSi−MISFET型水素ガスセンサの適用は全く考えられていなかった。なお、本願においてSi−MISFETと記述した場合にはnチャネル型MISFETを念頭に説明するが、pチャネル型MISFETにおいても、通例の置き換えで理解することができる。
質量のある電子線、陽子線、およびアルファ線等の粒子線は、適当な遮蔽等で除去できるので、粒子線による固体中の原子を弾き飛ばしてダメージを与える結晶欠陥生成に伴う効果は本願では対象としない。本願で対象とする放射線は、質量のないγ線またはX線であり、放射線と記述している場合、断りのない限り本願ではγ線と大略10keV以上のエネルギーのX線をさしている。その理由は、10keVより低いエネルギーの放射線は、比較的容易に遮蔽構造で除去できるからである。特に、10keV領域の低いエネルギーの放射線とγ線(60Co;1.33/1.17MeV)とでは、物質に対する照射効果(物質が受け取る吸収エネルギーまたは損傷量)がほぼ同じであるので、本実施の形態では、γ線(60Co;1.33/1.17MeV)、並びに10keVおよび115keVのエネルギーのX線を用いた場合について明示する。
集積回路用のSi−MISFETへのこれまでのγ線の影響の研究の殆どは、放射線積算線量としては10kGy程度までの評価がほとんどであり、ごく少数例として、〜100kGyでの評価がある。また、集積回路の高集積化に伴い、Si−MISFETが急激に縮小されてきたため、ゲート長が10〜50μm程度のSi−MISFETへの放射線影響の評価は意外に少ない。また、ゲート絶縁膜の厚さは100〜500nmと厚かった。例えば1978年当時の集積回路の放射線劣化が、例えばB. L. Buchanan et al., IEEE Trans. ED-25, No. 8(1978)959-970 において議論されているが、放射線積算線量は100kGy(10rad)程度、ゲート絶縁膜の厚さは50〜200nm程度、ドレイン電圧は10〜15V程度が想定されており、当時のリソグラフィーのレベルでは大略数μm程度のゲート長である。
放射線によるしきい値電圧(Vth)の劣化、すなわち、しきい値電圧(Vth)のシフト(ΔVth)は、ゲート絶縁膜の厚さ(d)の1.5〜2.0乗(d1.5〜2.0)に比例することが知られており、
ΔVth∝d1.5〜2.0 式(2)
ゲート絶縁膜の厚さ(d)が厚い場合、しきい値電圧(Vth)のシフト(ΔVth)は非常に大きくなる。
しかし、水素ガスセンサに使用するゲート絶縁膜の厚さ(d)は3〜72nm程度であり、しきい値電圧(Vth)のシフト(ΔVth)は小さい。また、集積回路用のSi−MISFETの場合、集積回路への放射線の影響が主たる関心事であったので、多くの放射線実験の対象はゲート長が2〜3μm以下のSi−MISFETであり、Si−MISFETの寸法が非常に小さくなった時に、放射線照射による特有な劣化が見え始める。
<集積回路用のSi−MISFETへ及ぼすγ線照射による影響>
これまでに集積回路用のSi−MISFETで得られた知見、特にnチャネル型MISFETに及ぼすγ線照射による影響を表1にまとめる。
しきい値電圧(Vth)のシフト(ΔVth)は、ゲート絶縁膜の膜さ(d)の1.5〜2.0乗に比例するので、本実施の形態において典型的なゲート絶縁膜(SiO)の厚さ(d)である18nmでは、16kGy程度の放射線積算線量ではしきい値電圧(Vth)のシフト(ΔVth)は見られず、160kGy程度の放射線積算線量からしきい値電圧(Vth)のシフト(ΔVth)が見え始める。
表1に示す移動度とは、ホール効果から求めた集積回路用のSi−MISFETのキャリア移動度ではなく、所謂飽和領域のI−V特性に現れる実効移動度である。具体的には、nチャネル型MISFETの飽和領域のI−V特性は、
Ids=β(Vgs−Vth)/2 式(3)
β=μCoxWg/Lg 式(4)
で表される。ここで、Idsはソース・ドレイン電流、Vgsはソース・ゲート電圧、Vthはしきい値電圧、μはnチャネル実効電子移動度、Coxは単位面積当たりのゲート容量、Wgはゲート幅、Lgはゲート長である。このnチャネル実効電子移動度(μ)が表1に示す移動度である。
Si−MISFET型ガスセンサでは、ゲート長(Lg)は10〜50μm、ゲート絶縁膜の厚さ(d)は5〜50nmであり、I−V特性はgradual近似でよく記述できることから、反転層が形成される(Vgs−Vth=1.5V)での移動度を標準として採用している。
放射線を照射する前の室温における移動度の初期値(μ0)は、例えば329cm/Vsであり、水素ガスセンサの標準動作温度である115℃における移動度の初期値(μ0)は、例えば230cm/Vsである。なお、移動度の初期値(μ0)は、集積回路用のSi−MISFETの作製条件および動作温度により変わることは周知である。
<集積回路用のSi−MISFETに対する放射線照射の影響(トータルドーズ効果)>
次に、これまでに理解されていた、集積回路用のSi−MISFETに対する放射線照射の影響(トータルドーズ効果)について、図1を用いて説明する。図1は、集積回路用のSi−MISFETのゲート領域のエネルギーバンド図である。
集積回路用のSi−MISFETでは、例えばSiからなる半導体基板3上に、SiOからなるゲート絶縁膜4を介して多結晶Siからなるゲート電極80が形成されており、ゲート電極80上に、ゲート保護膜として絶縁膜81が形成されている。図1には、このMIS構造に放射線が照射されたときに、エネルギー(hν)の放射線60がゲート絶縁膜4に入射した場合に起こる現象をまとめている。放射線60のエネルギー(hν)がゲート絶縁膜4中で電子・正孔対61を発生させ、MIS構造の電気的性質に影響を与える。MIS構造では、その製造過程において、ゲート絶縁膜4中に固有欠陥6が発生し、ゲート絶縁膜4と半導体基板3との界面に界面準位7が発生している。但し、固有欠陥6は、そのままでは中性であり、しきい値電圧(Vth)に影響を与えない。以下の説明では、固有欠陥密度をNot、界面準位密度をNitと記載する。
集積回路用のSi−MISFETでは、チャネル層から上のゲート絶縁膜4、ゲート電極80、ゲート保護膜等は1枚のウェーハ上において同じ条件で形成されており、チャネル層およびゲート絶縁膜4中に形成される欠陥(固有欠陥6および界面準位7)は、少なくとも同一チップ内の1つのSi−MISFETの周辺にあるSi−MISFETでは、殆ど同じと考えられる。現在では、集積回路用のSi−MISFETの場合、半導体プロセス技術の向上により欠陥密度は減少している。
放射線60をMIS構造に照射すると、ゲート絶縁膜4中に入射した放射線60は、電子・正孔対61を発生させ、電子は早急に逸出する。しかし、ゲート絶縁膜4中での正孔移動度は電子移動度に比べて5桁程度小さく、ホッピング伝導により正孔移動が起こり、ゲート絶縁膜4と半導体基板3との界面付近のゲート絶縁膜4中に正孔は捕獲されて、プラスにチャージアップする。このチャージアップにより集積回路用のSi−MISFETでは、しきい値電圧(Vth)はマイナス側にシフトする(つまり電流が流れやすくなる)。ゲート絶縁膜4中での放射線60に由来した正孔トラップとして働く固有欠陥6の固有欠陥密度(Not)の増加分をδNotと記載する。すなわち、固有欠陥密度(Not)の増加分(δNot)は、放射線60に由来したゲート絶縁膜4中でのプラスチャージ増加分(チャージアップ分)である。但し、放射線60が固有欠陥密度(Not)を増加させる訳ではないと理解されている。
さらに、ゲート絶縁膜4中にあるSi原子と結合している水素が放射線60により乖離して、ゲート絶縁膜4と半導体基板3との界面に移動し、半導体基板3の表面の弱い結合を切断して未結合のSiを作り、界面準位7を増加させる。界面準位7自身は、固有欠陥6と異なり、ゲート電圧を高くしていくとマイナスにチャージアップし、集積回路用のSi−MISFETでは、しきい値電圧(Vth)はプラス側にシフトする。放射線60に由来した界面準位7の界面準位密度(Nit)の増加分をδNitと記載する。固有欠陥密度(Not)のチャージアップ分(δNot)および界面準位密度(Nit)の増加分(δNit)は、放射線積算線量の増加とともに増加することから、トータルドーズ効果と呼ばれている。
<集積回路用のSi−MISFETの放射線照射前後でのI−V特性の変化>
次に、これまでに理解されていた、集積回路用のSi−MISFETの放射線照射前後でのI−V特性の変化について、図2を用いて説明する。図2は、集積回路用のSi−MISFETの放射線効果を概念的に説明するI−V特性を示すグラフ図である。図中(a)は、放射線照射前のI−V特性、図中(b)は、放射線照射後のゲート絶縁膜中に正孔トラップ準位(正孔トラップとして働く固有欠陥;チャージアップ分)が形成された場合のI−V特性、図中(c)は、放射線照射後のゲート絶縁膜と半導体基板との界面に界面準位が形成された場合のI−V特性を概念的に示したものである。現実には、図中(b)に示した正孔トラップ準位と図中(c)に示した界面準位とは、同時に起きると考えてよい。
正孔トラップ準位が形成された場合は、ゲート絶縁膜がプラスにチャージアップするだけなので、しきい値電圧(Vth)の変化としては、I−V特性がマイナス側にシフトするだけである。一方、界面準位が形成された場合は、ゲート電圧(Vg)が高くなるに従い、ゲート絶縁膜と半導体基板との界面のシリコンバンドが曲がり、徐々に界面準位に負のチャージが見えるようになり、I−V特性はプラス側にゲート電圧(Vg)に応じてシフトする。そのため、サブスレッショルド領域でのI−V特性の立ち上がりは傾き、しきい値電圧(Vth)はプラス方向にずれてしまう。
サブスレッショルド領域でのI−V特性は、一般的に指数関数Exp(qVg/kT)からのズレを表すn値を用いて、式(5)で記述することができる。
Ids∝Exp(qVg/nkT) 式(5)
ここで、Vgはゲート電圧、Tは絶対温度、kはボルツマン定数、qは単位電荷である。
ソース・ドレイン電流(Ids)はゲート電圧(Vg)に対する指数関数の傾きを表すため、ソース・ドレイン電流(Ids)が1桁増加するゲート電圧(Vg)の増加分(ΔVg)をmVの単位で表してS因子と呼ぶ。すなわち、S因子は式(6)で定義するΔVg(mV)である。
Exp(qΔVg(mV)/nkT)=10 式(6)
つまり、サブスレッショルド領域におけるI−V特性のソース・ドレイン電流(Ids)の立ち上がりを式(7)で定義するS値で評価することできる。
S=ΔVg(mV)=(nkTLn10)/q 式(7)
ここで、Lnは自然対数である。
<放射線線量の測定の必要性>
原子炉の格納容器内や原発建屋内の放射線積算線量は、過酷事故時にも計測している。しかし、原子炉の格納容器内や原発建屋内は非常に体積が大きく、放射線源が局在しているため、放射線積算線量は、場所により大きく異なることが経験的に知られている。そのため、水素ガスセンサの設置場所において放射線積算線量(できれば放射線積算線量率)が大まかにでも測定できれば、放射線に関する有益な情報を得るとともに、水素ガス以外の要因に起因するしきい値電圧(Vth)の変動の補正が正しいか否かの判断材料を提供することができる。さらに、Si−MISFET型ガスセンサを構成するセンサSi−MISFET、参照Si−MISFET、または同種のゲート構造を持つSi−MISFET(以下、S値測定用参照型FETと呼ぶ)を用いて高い放射線積算線量が測定できれば、水素ガス濃度の測定と併せて放射線積算線量を測定することができる。
本実施の形態による水素ガスセンサでは、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとのしきい値電圧(Vth)の差分を用いて水素ガス濃度を評価するので、参照Si−MISFETのゲート構造は触媒ゲート電極上の積層膜(例えばゲート保護膜およびSi膜)を残していること以外には、センサSi−MISFETのゲート構造と同じにする(加工バラツキやプロセスバラツキによる誤差は除く)。また、S値を計測するため、参照Si−MISFETを用いて計測することもできるが、S値を測定する専用のS値測定用参照型FETを水素センサチップ内に形成することが望ましく、放射線環境下でのS値を精度よく計測することができる。
原発事故時の2〜5MGy程度の放射線を計測する以外に、例えば宇宙または資源探査などへの応用には、より低い0.1〜5MGy程度の放射線を計測する場合、より高い5〜250MGy程度の放射線を計測する場合がある。このような場合には、式(2)に示すように、放射線効果をゲート絶縁膜の厚さに敏感にするため、ゲート絶縁膜の厚さを最適範囲に変更することができる。具体例は後述する。
ところで、Si−MISFET型ガスセンサでは、開発初期時から、しきい値電圧(Vth)がドリフトする現象が問題点として指摘されていた(例えばS. Y. Choi et al., Sensors and Actuators, 9(1986)353-361 参照)。このしきい値電圧(Vth)のドリフトの問題は、今日でも未解決だと考えられており、議論がされる場合がある。開発初期のSi−MISFET型ガスセンサまたは今日でも実験室で作製されたSi−MISFET型ガスセンサでは、半導体製造工程が十分に管理されていない環境下で作製された可能性が高く、しきい値電圧(Vth)のドリフト現象が実験室内での1,000時間動作で400mVも発生することが報告されている。
このドリフト現象の解決手段としては、差動回路が有効であると考えられている。例えばガス応答しない参照Si−MISFETを用意して、ボルテージフォロワー回路(例えばS. Y. Choi et al., Sensors and Actuators, 9(1986)353-361 参照)を用いて回路出力とSi−MISFET型ガスセンサの出力ΔVgとの差分をとることで、水素ガスに由来したしきい値電圧(Vth)のドリフト以外をキャンセルする差動回路方式が提案されている。
本発明者らも、クリーンルームでゲート絶縁膜を形成した後、一般の実験室で触媒ゲート金属を形成したSi−MISFET型ガスセンサでは、ゲート絶縁膜またはチャネル層にダメージが発生して電子トラップの原因になり、しきい値電圧(Vth)がドリフトする現象が見られることを経験している。このしきい値電圧(Vth)のドリフトは、図1に示す様に、ゲート電極80の近傍に電子・正孔のトラップ準位が存在して、各種電流がこの準位に出入りすることにより発生していると推定される。
本実施例1では、放射線積算線量が2〜5MGy程度でのセンサSi−MISFETへの放射線の影響を調べる過程において、本発明者らによって新たに見出された幾つかの知見に基づいて得られた本発明の内容について、以下に詳細に説明する。
第1に、放射線積算線量の増加の時間経過が水素ガス濃度の時間変化に比べてゆっくり動き、単調増加である点を利用して、水素ガス以外の原因が引き起こすセンサSi−MISFETのしきい値電圧(Vth)の変化を差し引き、水素ガス濃度を正確に測定する方法を提供する。
第2に、S値測定用参照型FETのサブスレッショルド領域のS値を測定することにより、それまでに浴びた放射線積算線量を求める方法を提供する。
1.水素ガス濃度の正確な検出方法
<移動度に関する新たな知見>
図3(a)に、式(4)に示す移動度(μ)の室温での値および115℃での値を種々のPt/Ti膜厚を有する試料について評価した結果を示す。Pt/Ti膜厚は、Pt/Ti=15nm/3nm、15nm/5nm、30nm/5nm、45nm/5nm、90nm/5nm、90nm/15nmおよび90nm/45nmである。
Pt/Ti=15nm/5nmの試料では、バラツキはあるものの室温での移動度(μ)は329cm/Vs程度、115℃での移動度(μ)は230cm/Vs程度である。しかし、Pt膜厚が45nm、90nmと厚くなるに従い、移動度(μ)は36%程度大きくなる。移動度(μ)は式(3)および式(4)において(Vgs−Vth=1.5V)で測定しており、試料のMIS構造のバンドの曲がりは同じはずであり、チャネル層のドーピング仕様は同じであることから、この差異の理由は定かではない。
しかし、素子を作製する時に行うゲート電極の酸化工程またはゲート保護膜の除去工程において、Pt膜厚が薄い方が、ゲート絶縁膜と半導体基板との界面にダメージを与えやすくその差が出ていると考えられる。
しかし、図3(b)に示すように、室温での移動度(μ)と115℃での移動度(μ)との比(μ(115℃)/μ(室温))を調べると、Pt膜厚およびTi膜厚によらず、その比(μ(115℃)/μ(室温))は平均的に0.699程度となり、ほぼ一定となる。
μ(115℃)/μ(室温)=0.699 式(8)
移動度(μ)は、半導体物理の理論では、伝導キャリアの平均衝突時間(τ)、単位電荷(q)、有効質量(m)を用いて、
μ=qτ/m 式(9)
と記述でき、1/τはキャリア間の衝突確率を与えている。キャリア間の衝突要因はいくつも存在するが、その要因ごとにキャリアの平均衝突時間(τi)があり、形式的には、1/τ=Σ1/τi(各要因ごとに1/τiの和をとる)で決定される。
最も短い平均衝突時間(τi)が実際の移動度(μ)を主として決めている。室温以上の温度領域では格子振動に起因する衝突が支配的であると予想される。半導体物理の理論によれば、格子振動に起因する移動度(μ)は、絶対温度(T)に対して−3/2乗に比例する。
μ∝T−3/2 式(10)
つまり、
μ(115℃)/μ(室温)=0.670 式(11)
となり、式(8)の実験結果と非常に良く一致する。すなわち、ゲート絶縁膜と半導体基板との界面の移動度(μ)は室温以上の高温では、格子振動に起因する移動度(μ)と同じ温度特性になることが分かった。実際の使用環境では、室温以上の温度領域で使用することが多いので、格子振動起因および放射線由来の界面準位が移動度を主として決めていることになる。
<放射線照射による第1の実験結果>
次に、本発明者らにより行われた放射線照射による第1の実験結果を、図4〜図8を用いて以下に説明する。
図4は、実験に用いた試料の一例である水素センサチップの写真である。ゲート長がLg=10〜50μm、ゲート幅がWg=150μm、300μmのセンサSi−MISFETと参照Si−MISFETとを用いている。チップ内は左右対称にセンサSi−MISFETと参照Si−MISFETとが配置されており、センサSi−MISFETの中心から半径300μmの円領域に入射したフォトン数を計測し、放射線カウンターからの計測結果と比較することにより、フォトンドーズ量と放射線積算線量(単位Gy)との換算関係を求めることができる。
図5は、Pt−Ti−Oゲート構造のSi−MISFET型ガスセンサ(例えば特許文献1参照)に対して、放射光X線の照射前後におけるI−V特性を示すグラフ図である。縦軸は、ソース・ドレイン電流(Ids)であり、横軸は、ゲート電圧(Vg)であり、ソース・ドレイン電圧(Vds)は1.5Vである。放射線積算線量は39MGy(SR(synchrotron radiation)−X線:フォトンエネルギー10keV、フォトンドーズ量2×1016/cm、半径300μmの円領域換算(図4参照))であり、放射光X線は室温で照射した。
まず、Si-MISFET型ガスセンサの原理を、照射前I−V特性を用いて簡単に説明する。
ソース・ドレイン電流(Ids)が急激に立ち上がるサブスレッショルド領域でのIds=10μAを一定にして、水素ガスが暴露されると、このIds=10μAを保つようにゲート電圧(Vg)がマイナス側にシフトする。このシフト量の絶対値をΔVgと記載し、水素応答強度の目安としてきた。図5において特に注目すべきは、大量の放射線を浴びた前後で、ゲート電圧(Vg)が負の領域のソース・ドレイン電流(以後、リーク電流と呼ぶ)の値が数nAであり、変化していないことである。
図6は、Pt−Ti−Oゲート構造のSi−MISFET型ガスセンサ(例えば特許文献1参照)に対して、γ線(60Co;1.33/1.17MeV)の照射前後におけるI−V特性を示すグラフ図である。放射線積算線量は1.785MGyである。
この場合も、照射前のS値(ソース・ドレイン電流(Ids)が1桁高くなるゲート電圧(Vg)を測った時の値:式(7)参照)はS=116.2、照射後のS値はS=164.8であり、S値は変化しているが、ソース・ドレイン間のリーク電流の値に変化はみられない。初期値のS値(S=116.2)が非常に大きいのは、ゲート電極の酸素アニール処理の影響である可能性が高い。
Si−MISFET型ガスセンサの場合、ゲート長(Lg)およびゲート幅(Wg)は非常に大きく、素子間分離も基本的にはpn接合分離である。このため、ソース・ドレイン間のリーク電流は、ゲート電圧(Vg)が負の領域では、ソース(n型)→p型に蓄積した正孔2次元層(ゲート絶縁膜直下)→ドレイン(n型)につながる電流経路で、放射線によるキャリアキラーセンタの形成が、正孔2次元層の厚さが薄いため小さく、また、ソース(n型)およびドレイン(n型)と、p型ウェルとが逆バイアスになっているので、リーク電流は元々小さい。
Si−MISFET型ガスセンサは、例えば図5に示したように、39MGyの高い放射線積算線量を照射してもリーク電流はほぼ変わらず、サブスレッショルド領域でのソース・ドレイン電流(Ids)曲線の傾きであるS値が非常に大きく変化する。照射前のS値はS=108.5、照射後のS値はS=467.5である。高い放射線積算線量を照射して、I−V特性の関数形は大きく変化しても、リーク電流が殆ど増加しないので、水素ガス照射において、水素ガス濃度を知ることができる可能性が残されている。
図7は、Si−MISFET型ガスセンサの温度特性を示すグラフ図である。縦軸は、ソース・ドレイン電流(Ids)であり、横軸は、ゲート電圧(Vg)である。
200℃を超えたあたりから急速にリーク電流が増えて、270℃以上では、水素ガスに対して応答が難しくなる(リーク電流が邪魔して、測定精度が急激に落ちる)。これは、Siのバンドギャップが1.1eV程度であるための制限である。
一方、図5に示した39MGyの高い放射線積算線量を照射しても、リーク電流にほとんど影響がないことは驚くべき実験事実であり、上記電流経路に殆ど放射線によるキャリアキラーセンタの形成がないことになる。ここで、放射線積算線量に依存したリーク電流が発生すれば、図7に示す温度特性のように、水素ガスセンサとして動作できる放射線積算線量の上限が決まることになる。現状、高い放射線積算線量の照射において、リーク電流が急増する放射線積算線量を決める物理は見出されていないが、少なくとも今回問題にする2〜5MGyのレベルでは、問題ないことが分かる。
一方、図8は、nチャネル型MISFET(#24(n))およびpチャネル型MISFET(#2C(p)、#24C(p))に対するソース・ドレイン電流(Ids)を3種類(1μA、10μA、100μA)で固定して、水素応答強度(ΔVg)を測定した実験結果を示すグラフ図である。
水素応答強度(ΔVg)はソース・ドレイン電流(Ids)に依存せず、動作温度が変わらなければ、水素ガス照射でnチャネル型MISFETおよびpチャネル型MISFETともにI−V特性の関数形は変わらないことを示している。つまり、水素ガス照射に対して、単純にI−V特性が負側にシフトするだけである(例えばT. Usagawa et al., IEEE Sensors Journal 12(2012)2243-2248 参照)。
<放射線照射による第2の実験結果>
次に、本発明者らにより行われた放射線照射による第2の実験結果を、図9〜図13を用いて以下に説明する。
図9は、数10MGyの放射光X線(フォトンエネルギー10keV)の照射前後におけるセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETの室温でのI−V特性の一例を示すグラフ図である。縦軸は、ソース・ドレイン電流の平方根(√Ids)であり、横軸は、ゲート電圧(Vg)である。図中、センサSi−MISFETをS−FET、参照Si−MISFETをRef−FETと記している。
この特性から得られた、移動度(μ)、しきい値電圧(Vth)、およびS値の解析結果を表2にまとめる。但し、移動度(μ)は室温での参照Si−MISFETの移動度である329(cm/Vs)を基準として、その相対値を記載している。
図10は、数10MGyの放射光X線(フォトンエネルギー10keV)の照射前後におけるセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETの室温でのI−V特性の他の例を示すグラフ図である。縦軸は、ソース・ドレイン電流(Ids)であり、横軸は、ゲート電圧(Vg)である。図中、センサSi−MISFETをS−FET、参照Si−MISFETをRef−FETと記している。
図9、図10および表2の実験データを中心に解析した結果について、以下にまとめる。
放射線照射前のセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETのI−V特性から、放射線照射前にはセンサSi−MISFETのしきい値電圧(Vth)は参照Si−MISFETのしきい値電圧(Vth)に比べて94mV(表2参照)から一般には200mV程度高い(後述の表3に示すNit(damage)が増加)。一方、放射線照射後のセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETのI−V特性から、放射線照射後にはセンサSi−MISFETのしきい値電圧(Vth)は参照Si−MISFETのしきい値電圧(Vth)に比べて261mV(表2参照)から一般には500mV程度低い(後述の表3に示すδNot(damage)が増加)。
センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとの違いは、センサSi−MISFETの場合には、ゲート電極を外気に晒す必要性があり、ゲート電極上のゲート保護膜、例えばPSG(Phosphorus Silicon Glass)膜とSi膜との積層膜を除去するプロセス(以下、ゲート孔開けプロセスと言う)があることのみである。このゲート孔開けプロセス以外のプロセスでは、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとが同一チップ内に形成され、両者の距離が最大1mm程度である。このことを考えれば、センサSi−MISFETのしきい値電圧(Vth)と参照Si−MISFETとのしきい値電圧(Vth)との違いは、ゲート絶縁膜の形成を由来とする、半導体基板近傍のゲート絶縁膜中の固有欠陥密度(Not)またはゲート絶縁膜と半導体基板との界面における界面準位密度(Nit)の違いに起因するとは考えにくい。
次に、図11、図12および図13を用いて、新たに見出した現象について説明する。図11は、センサSi−MISFETのゲート電極近傍の断面概略図、図12は、センサSi−MISFETのゲート電極の断面模式図、図13は、センサSi−MISFETのゲート領域のエネルギーバンド図である。
触媒ゲート金属は、外気に触れる必要があるので、Pt−Ti−O構造上に形成しているゲート保護膜、例えばPSG膜とSi膜との積層膜を除去する必要がある。そのため、図11に示すように、典型的な構造では、Si層5上にゲート絶縁膜4、Ti改質層(TiOxナノ結晶と酸素ドープTiとの混合層)2、ゲート電極(Pt触媒層)20があり、その上部にPSG膜24およびSi膜23からなるゲート保護膜が形成され、ゲート電極20の主要部上のPSG膜24およびSi膜23は除去されている。ゲート電極20の表面を露出させるためのPSG膜24とSi膜23との積層膜の除去はドライエッチングとウェットエッチングを用いて行われるが、このゲート孔開けプロセスにおいて、加工ダメージのため、ゲート絶縁膜4中に固有欠陥9および界面準位10が形成される。以下の説明では、加工ダメージにより形成された固有欠陥密度をNot(damage)、加工ダメージにより形成された界面準位密度をNit(damage)と記載する。
この場合、放射線照射前には、固有欠陥9は中性であり、電荷は持たないが、界面準位10はゲート電圧を高くしているマイナスにチャージアップする。固有欠陥密度(Not(damage))および界面準位密度(Nit(damage))は、ゲート孔開けプロセスに起因して発生する増加分である。一方、ゲート孔開けプロセス後に、放射線に由来した正孔トラップとして働く固有欠陥の固有欠陥密度(Not(damage))の増加分はチャージアップ分して、δNot(damage)と記載し、放射線に由来した界面準位の界面準位密度(Nit(damage))の増加分をδNit(damage)と記載する。固有欠陥密度(Not)の増加分(δNot,δNot(damage))および界面準位密度(Nit)の増加分(δNit、δNit(damage))は、放射線積算線量の増加とともに増加することから、トータルドーズ効果と呼ばれている。
集積回路用のSi−MISFETでは、放射線に由来した正孔トラップとして働く固有欠陥の固有欠陥密度の増加分(δNot)および界面準位密度の増加分(δNit)の影響は、ゲート絶縁膜中の固有欠陥密度(Not)および界面準位密度(Nit)がほぼ同じ密度に形成できるので、しきい値電圧(Vth)が一様にずれて、放射線効果が確率現象であるため、しきい値電圧(Vth)バラツキが大きくなるだけであった。
センサSi−MISFETの固有欠陥密度(Not)および界面準位密度(Nit)と参照Si−MISFETの固有欠陥密度(Not)および界面準位密度(Nit)とをそれぞれほぼ同じ密度に形成できれば、センサSi−MISFETのしきい値電圧(Vth)と参照Si−MISFETのしきい値電圧(Vth)との差分をとることにより、放射線効果もある程度相殺はできる。この方法は、例えばしきい値電圧(Vth)の温度変動をキャンセルする信号処理技術の手法として知られている。しかし、ゲート孔開けプロセスなどでセンサSi−MISFETの固有欠陥密度(Not)および界面準位密度(Nit)と参照Si−MISFETの固有欠陥密度(Not)および界面準位密度(Nit)とがそれぞれ異なると、相殺はできなくなる。これは、固有欠陥密度の増加分(δNot)および界面準位密度の増加分(δNit)が放射線積算線量とともに増加するので、初期値の差が、放射線積算線量の増加とともに増えて、2〜5MGy程度の高い放射線積算線量の領域では問題になるからである。
さらに、半導体プロセスでは、ゲート絶縁膜内に放射線の影響を受けない固定チャージが僅かではあるが存在し、同一チップ内のセンサSi−MISFETと参照Si−MISFETとでは、厳密にはその数は異なる。
センサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETに現れる放射線照射前後のそれぞれの固有欠陥密度および界面準位密度等のパラメータをを表3にまとめる。表3に示す(s)はセンサSi−MISFET、(r)は参照Si−MISFETに関するパラメータである。
ここで、センサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETに関する差分量について、ゲート絶縁膜中の固有欠陥密度(Not)を例にとって説明する。差分量は次式(12)により定義される。
ΔNot=Not(r)−Not(s) 式(12)
表3では、他の物理量の差分記号も同様に定義している。
センサSi−MISFETのしきい値電圧(Vth(s))と参照Si−MISFETのしきい値電圧(Vth(ref))との差分を、
ΔVth(ref−s)=Vth(ref)−Vth(s) 式(13)
と定義すると、図9では、放射線照射前のしきい値電圧(Vth)の差分はΔVth(ref−s)before=−94mV、放射線照射後のしきい値電圧(Vth)の差分はΔVth(ref−s)after=261mVとなる(表2参照)。
上記考察から放射線照射前のしきい値電圧(Vth)の差分(ΔVth(ref−s)before)は、固有欠陥密度(Not)および界面準位密度(Nit)と放射線に依存しないゲート絶縁膜中の固定電荷密度(No(s),No(r))とが同じであると仮定し、センサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETの単位面積当たりのゲート容量をCoxとすると、
ΔVth(ref−s)before=−q[Nit(damage)]/Cox 式(14)
となる。
また、同様に、放射線照射後のしきい値電圧(Vth)の差分(ΔVth(ref−s)after)は、
ΔVth(ref−s)after=−q[Nit(damage)+δNit(damage)
−δNot(damage)]/Cox 式(15)
となる。
但し、固有欠陥密度(Not)および界面準位密度(Nit)と放射線積算線量に依存しないゲート絶縁膜中の固定電荷密度(No(s),No(r))とが異なる場合、式(14)および式(15)にはそれぞれΔVth補正beforeの項とΔVth補正afterの項が付加される。具体的には、
ΔVth補正before=q[ΔNo−ΔNit]/Cox 式(16)
ΔVth補正after=q[ΔNo−ΔNit−ΔδNit+ΔδNot]/Cox
式(17)
となる。
式(16)および式(17)では、放射線照射に依存する項(ΔδNot−ΔδNit)と放射線照射に依存しない項(ΔNo−ΔNit)とに分けられる。放射線照射に依存する項(ΔδNot−ΔδNit)では、式(15)のδNot(damage)にΔδNotを繰り入れて、δNit(damage)にΔδNitを繰り入れて解釈することで、式(15)によって現象論的には代用することができる。一方、放射線照射に依存しない項(ΔNo−ΔNit)は、初期値として最後まで残る項である。つまり、式(16)は、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとの差分を取っても初期値(ΔVth0)の中に最後まで残る項である。
ΔVth0=q[ΔNo−ΔNit−Nit(damage)]/Cox 式(18)
そこで、放射線照射に依存しない項(ΔNo−ΔNit)は、半導体プロセス技術の進歩から、加工ダメージに由来するNit(damage)に比べて小さいと考えられるので、加工ダメージで形成される界面準位密度(Nit(damage))を次式(19)から、求めることができる。
Nit(damage)=abs[ΔVth(ref−s)]Cox/q 式(19)
ここで、absは絶対値をとる演算である。
そこで、ここでは、簡単のため、上記のように解釈して初期値をゼロと仮定し、表2の値から大凡の値を見積もる。具体的には、ゲート絶縁膜(SiO)の比誘電率を3.9、その厚さを18nmとすると、q/Coxの値は、83.5mV×10−11cmとなり、放射線照射前のしきい値電圧(Vth)の差分(ΔVth(ref−s)before)が−94mV(表2参照)であることから、ダメージにより形成された界面準位密度(Nit(damage))は1.13×1011cm-2と推定することができる。
同様に、放射線照射後のしきい値電圧(Vth)の差分(ΔVth(ref−s)after)が261mV(表2参照)であることから、(δNit(damage)−δNot(damage))の値も式(14)〜式(19)から求めることができる。同様に求めると、355mV(=261mV−(−94mV))が[δNot(damage)−δNit(damage)]Cox/qになるので、(δNit(damage)−δNot(damage))は−4.25×1011cm-2と推定することができる。この結果から、この試料では、界面準位密度の増加分(δNit(damage))に比べて固有欠陥密度のチャージアップ分(δNot(damage))が支配的と考えられる。ゲート保護膜の除去工程におけるエッチングダメージも、放射線照射に伴うダメージの増加分については、Si−MISFETの電子反転層のシート濃度、数因子×1012cm-2から考えても合理的な値になっている。
水素照射なしの場合の放射線照射前後のしきい値電圧の差分(ΔVth(ref−s))の変化は非常に示唆に富む。
第1は、しきい値電圧の差分(ΔVth(ref−s))が負の値−94mVから正の値261mVに変化しており、数10MGyの放射線照射後は、放射線由来による固有欠陥密度のチャージアップ分(δNot(damage))が界面準位密度の増加分(δNit(damage))に比べてより多く増加した点である。これは、センサSi−MISFETのゲート孔開けプロセスなどで形成された固有欠陥密度(Not)の方が界面準位密度(Nit)より非常に多く形成されたためと考えられる。
第2は、水素がないのに放射線効果でしきい値電圧(Vth)のシフト(ΔVth(ref−s))が正の方向に動き、あたかも水素が存在するかのような偽信号を与える可能性が出てくる点である。これは、固有欠陥密度のチャージアップ分(δNot(damage))が界面準位密度の増加分(δNit(damage))より大きいということは、水素ガスセンサの応答の方向(水素はしきい値電圧の差分(ΔVth(ref−s))が正方向にシフトする)と同じように、しきい値電圧の差分(ΔVth(ref−s))が正になるためである。
そのため、図9および図10では、加工ダメージが比較的大きくでているが、この種のプロセス起因の加工ダメージに関しては、幾つかの改善により、加工ダメージ、すなわち、ダメージにより形成された固有欠陥密度(Not(damage))および界面準位密度(Nit(damage))を減らすことが可能であり、さらに放射線効果を低減することができる。
Si−MISFET型ガスセンサの場合、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとの水素応答強度の測定では、センサSi−MISFETのしきい値電圧(Vth)と参照Si−MISFETのしきい値電圧(Vth)との差分をとる方法が一般的である(例えばS. Y. Choi et al., Sensors and Actuators, 9(1986)353-361 参照)。この方法は、しきい値電圧(Vth)の温度特性またはしきい値電圧(Vth)のドリフトを相殺する手法として用いられている。
この場合、しきい値電圧(Vth)の温度特性またはしきい値電圧(Vth)のドリフトの様に、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとでほぼ同じ場合(同位相)には、有効なセンサ信号の注出手法である。特に、同一チップ内にセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETを形成する場合には、特に有効である。
一方、放射線がMIS構造に入射した時に起きる事象は、確率事象であり、非常に近接した場所に設置したセンサSi−MISFETと参照Si−MISFETとであっても、放射線の影響にはバラツキが発生する。しかし、本発明者らは、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとのしきい値電圧(Vth)の差分をとる手法を用いることにより、放射線の影響を、かなりの確度で取り除ける手法を見出したので、以下具体例を示しながら説明する。
<放射線の影響を補正する手法>
単調に増加するという放射線積算線量の特徴的な振る舞いを利用して、センサSi−MISFETのしきい値電圧(Vth(s))と参照Si−MISFETのしきい値電圧(Vth(ref))との差分の時間変化を求め、その差分の初期値、その差分の時間経過、およびその差分の時間変化の一次微分信号から、水素ガスに由来するしきい値電圧(Vth)のシフト量と放射線に由来するしきい値電圧(Vth)のシフト量とを分離する。これにより、水素ガス濃度を正確に導きだすことができる。以下具体的に説明する。
図14に、格納容器内での水素ガスの相対濃度の過酷事故発生時からの経時変化の典型的パターンを2種類、パターン(S)およびパターン(D)に示す。パターン(S)およびパターン(D)はBWR(Boiling Water Reactor)方式原発のサプレションチャンバおよびドライウェルをそれぞれ模擬している。さらに、格納容器内での放射線積算線量の過酷事故発生時からの経時変化を2MGyの場合と5MGyの場合の2つのケースを示す。放射線積算線量を示す縦軸は、2MGyの場合は7日間程度で2MGyが0.1に、5MGyの場合は3日間で5MGyが0.45に対応する様に記載されている。
放射線積算線量は単調増加であり、2MGyの場合は14日間程度で飽和し、5MGyの場合は7日間で飽和する。一方、水素ガス濃度は上昇したり、下降したりする挙動であり、放射線積算線量の様に単調増加ではない。事実、2MGyの場合、168時間で2.2MGy、4時間5.4分で0.1MGy程度の放射線積算線量になっており、時間(t)後の放射線積算線量(M(t))は、近似曲線式(20)で近似的に記述できる。
M(t)=At0.831 式(20)
但し、Aは29.4KGyであり、時間(t)は時間(hour)を単位とする。
この性質を用いると、Si−MISFET型ガスセンサの場合、センサ強度(ΔVg)は、式(13)を用いて、
ΔVg=Vth(ref)−Vth(s) 式(21)
と定義することができる。従って、センサ強度(ΔVg)は、過酷事故時の始まりを初期値(ΔVg(0))、つまり式(18)とし、その後の経時変化を追跡することで、放射線由来のセンサ強度(ΔVg(rad))と、水素ガス由来のセンサ強度(ΔVg(H))と、初期値(ΔVth0)とに分けることができる。
ΔVg=ΔVg(H)+ΔVg(rad)+ΔVth0 式(22)
ここで、式(17)から式(18)の間に記述したように、放射線由来のセンサ強度(ΔVg(rad))は、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとの各種ダメージの差を繰りこんだ値とみなすと、
ΔVg(rad)=−q[δNit(damage)−δNot(damage)]/Cox
式(23)
と記述される。つまり、式(23)のNit(damage)の項およびNot(damage)の項にセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFET以外から来る差分を繰りこんでいると再定義されているとみなせばよい。
式(22)のセンサ強度(ΔVg)は直接観測できる量であり、式(18)の初期値(ΔVth0)も直接観測できるので、水素ガス由来のセンサ強度(ΔVg(H))と放射線由来のセンサ強度(ΔVg(rad))とを上手く分離できると、本来要求される水素ガス由来のセンサ強度(ΔVg(H))を抽出することができる。
以下に、水素ガス由来のセンサ強度(ΔVg(H))と放射線由来のセンサ強度(ΔVg(rad))との分離を如何にして行うかについて具体的に説明する。
一般的に言って、センサ強度(ΔVg)の速い時間変化は、ほぼ水素ガス由来であり、センサ強度(ΔVg)の大きさが減少するのも水素ガス由来である。一方、放射線由来のセンサ強度(ΔVg(rad))の時間変化は、非常にゆっくりしたものである。従って、センサ強度(ΔVg)の絶対値の時間変化、特にセンサ強度(ΔVg)の時間に対する一次微分信号をモニターすることで、ガス由来のセンサ強度(ΔVg(H))と放射線由来のセンサ強度(ΔVg(rad))とを分離することができる。
放射線由来のセンサ強度(ΔVg(rad))は、式(23)に示す様に、δNit(damage)よりδNot(damage)が大きいと正の方向に動き、水素ガス濃度が増加することに由来するシフトと同じ方向(同位相)であり、δNit(damage)よりδNot(damage)が小さいと負の方向に動き、水素ガス濃度が減少することに由来するシフトと同じ方向(同位相)である。δNit(damage)およびδNot(damage)の値は放射線ドーズ量に比例する量と考えられているが、比例係数は両者で異なることもある。従って、放射線由来のセンサ強度(ΔVg(rad))の時間変化の可能性は、単調増加、単調減少、一度だけ単調増加から単調減少、または一度だけ単調減少から単調増加の4パターンだけであるが、以下に説明するように低濃度の水素ガス濃度の場合には、時間変化等の解析が必要となる。
前述した<放射線照射による第2の実験結果において>の項で説明したように、水素を印加しない状態で数10MGyの放射線を照射した前後では、ΔVth0≒−94mV、ΔVg(rad;10MGy後)=261mVの実験値が得られている。つまり、本実験例では、数10MGyの照射でΔVg(rad)=355mV(=261mV−(−94mV))のセンサ強度(Vthシフト量)が見出されている。
本実験例は、放射光X線(10keV)を短時間に照射したものであるが、γ線では、5MGy相当の事故時のケースでも3日間を有しているので、数10MGyでは7日間程度と想定される。つまり、放射線由来のしきい値電圧(Vth)は7日間で355mVの変化を起こし、単位時間換算では2.1mV/hの非常に遅い単調増加によるセンサ強度(ΔVg(rad))であり、24時間でも50.7mVの変化しかない。従って、水素換算では、例えば70ppmの水素ガス濃度になり(例えば、特許文献1など参照)、殆ど無視することができる。
但し、7日で数10MGyを照射した場合ならば、放射線由来のセンサ強度(ΔVg(rad))は355mVの変化を起こすので、数日後からは、水素ガス濃度の検出に影響を与え始める。この場合、過去からの(ΔVg−ΔVth0)の時間変化の履歴を解析することで、水素ガス濃度を推定することになる。例えば式(20)のように放射線積算線量でフィッティングを行い、水素との違いを明らかにする。何れにしても過酷事故時には、放射線積算線量がMGy程度を超える前後から、放射線補正が必要になる。抜本的には、センサSi−MISFETのゲート保護膜の除去工程でのエッチングダメージをできるだけ小さくすることが最も簡単な対策となる。
本実施例によるガスセンサでは、事故時以来のセンサ強度(ΔVg)の記録が0.1秒程度の間隔で蓄積できており、この記録と、その時々の時点でのセンサ強度(ΔVg)の値の時間変化から、水素由来のセンサ強度か、放射線由来のセンサ強度かはかなりの確度で分離することができる。時間変化は通例、センサ強度(ΔVg)の一次微分情報で十分であるが、さらに詳しく検証するには二次微分などの高次の微分を加えていくこともできる。一次微分がゼロの点は、水素ガス濃度の極大値および極小値をほぼ表わし、格納容器内の状態の変化を如実に表している。二次微分がゼロの点の前後で応答強度の時間依存性で凹凸が変われば、格納容器内の水素の増加傾向が減少傾向に変化し始める兆候を捕まえることができる。
2.放射線積算線量の計測方法
(i)室温における移動度のフォトンドーズ量依存性の詳しい分析と、(ii)同一温度でサブスレッショルド領域でのI−V特性を支配するS値と1/μとの相関関係について説明し、S値測定用参照型FETを用いて、2〜5MGy程度の高い放射線積算線量を導出する手法について説明する。
(i)室温における移動度のフォトンドーズ量依存性
図15は、γ線(60Co;1.33/1.17MeV)または放射光X線(フォトンエネルギー115keV,10keV)を照射した後の移動度(μ)と初期値(μ0)との移動度比(μ/μ0)と、フォトンドーズ量との関係を示すグラフ図である。ここで、フォトンドーズ量とは、図4に示すセンサSi−MISFETの中心から半径300μmの円領域に照射したフォトンドーズ量である。
初期値(μ0)は室温での値であり、試料により、例えば図3(a)の様に変化する。白丸(○)で示すγ線(60Co;1.33/1.17MeV)と、黒三角(▲)で示すX線(フォトンエネルギー10keV)は平均的にみて、黒丸(●)で示すX線(フォトンエネルギー115keV)に比べて、移動度の劣化が激しい。この理由は、先に説明したように、放射線に特有な吸収率のエネルギー依存性で説明することができる。
これまでのγ線照射では、表1の項目1にコメントした様に、0〜10kGyの放射線積算線量では、移動度の劣化はあまり見られない。実際の原発事故で問題になるγ線を中心に移動度劣化の実験データを式(24a)および式(24b)にフィッティングする。フォトンドーズ量(dose)がdose=1012でμ/μ0=1になり、それ以下のフォトンドーズ量では、誤差範囲でμ/μ0=1とみなせる。実験結果は、dose=1016でμ/μ0=0.3になり、μ/μ0=0.0になるフォトンドーズ量は、フィッティング上はdose=5.18×1017である。
μ/μ0=1.0 0≦dose≦dT 式(24a)
=3.1−0.175Log(dose) dT≦dose≦dTX 式(24b)
但し、dT=1012、dTX=5.18×1017である。
一方、実用的には、γ線では線量率(Gy/h)を放射線カウンターで計測するので、γ線のフォトンドーズ量(フォトン数)との関係が導出され、dT=1012から、
1012dose=0.5154×10Gy 式(25)
と表される。放射線による劣化が見られる式(24b)の範囲dT≦dose≦dTXを線量の単位Gyで表わすと式(26)を用いて、
1,940Gy≦dose≦10Gy 式(26)
となる。1,940Gyと10Gyの幾何平均G0(=√1,940Gy×10Gy)を導入すると、G0=1.3928MGyとなり、規格化された移動度比(μ/μ0)は、
μ/μ0=1.0 0≦G≦1940Gy 式(27a)
μ/μ0=0.5−0.175Log(G/G0)
1940Gy≦G≦10Gy 式(27b)
と表される。
ところで、一般にXの常用対数LogXは、Xが0.1から10の範囲で、式(28)で良く近似される(例えばT.Usagawa et al., IEEE Sensor Journal, Vol.12、No.6, (2012)2243-2248 参照)。特に、X=0.1,1,10では両者は一致する。
LogX=[2Xη/(1+Xη)−1]/γη 0.1≦X≦10 式(28)
但し、
γη=(10η−1)/(10η+1) 式(29)
である。
このように、変換する時には、式(27b)に示す様に、放射線積算線量(G)の測定範囲の両端の幾何平均(G0)を用いて、式(28)のXをG/G0に置き換えることで、式(27b)を式(30)に変換することができる。
μ/μ0=0.5−0.175/γη+0.35/(1+Xη)/γη 式(30)
ここで、γη=0.35と置くと、式(29)からη=0.3174となり、1/η=3.15となる。
このとき、
μ/μ0=1/(1+Xη) 式(31)
となる。
MIS構造のデバイス性能を支配する移動度(μ)は、放射線照射がない時に室温より高温領域の初期値(μ0)では、式(8)と式(11)から、格子振動(フォノン)起因の散乱で支配される移動度(μ(T))で支配されることが確認されている。そのため、以後、初期値(μ0)は移動度(μL(T))と同一視して考える。放射線が照射されると、その放射線積算線量に依存して移動度(μ)が劣化するので、放射線由来の移動度(μ)をμradと表わすと、放射線照射下の移動度(μ)は、
1/μ=1/μ0+1/μrad 式(32)
と表すことができ、さらに、式(33)に変形される。
μ/μ0=1/(1+μ0/μrad) 式(33)
X=G/G0であることから、式(31)を用いて、放射線由来の移動度(μrad)と放射線積算線量(G)との間に、式(34)に示す非常に簡単な関係が得られる。
μ0/μrad=Xη 式(34)
このような評価法については、表2のセンサSi−MISFETの場合、放射線照射後のμ/μ0は0.162であるが、式(31)および式(34)がら放射線積算線量(G)を見積もると、72MGyと非常に大きい値となる。本方式の放射線積算線量(G)の見積もり精度はあまり期待できないが、傾向と目安を簡便に求める、あるいは格納容器内での放射線量計またはガスセンサの設定値の放射線積算線量(G)と比較して、水素応答の解釈と矛盾しないかなどを知るには、有益なツールとなりうる。
(ii)S値と1/μとの相関関係
図16は、各種Pt−Ti−Oゲート構造のSi−MISFET型ガスセンサの移動度(単位はcm/Vs)の逆数(1/μ)と式(5)〜式(7)で定義されるS値(単位はmV)のそれぞれの実測値をプロットしたグラフ図である。これまでに移動度μとS値とを関係づけたデータは存在しなかったが、図16に示すように、種々のPt−Ti−Oゲート構造のSi−MISFETガスセンサにおいては、移動度(1/μ)とS値との間には強い相関関係があることを本発明者らは見出した。それぞれの単位を用いると、以下のような現象論的な式(35)でフィッティングすることができる。温度は室温である。
1000/μ=0.3103+0.0222×S 式(35)
図16のフィッティングを注視すると、データの分散が大きいため、式(35)の右辺第1項の定数項は、理論的にはないものとみなせる。つまり、移動度(1/μ)とS値とは比例関係にあり、物理的には次式(36)で近似されていると考えられる。両者の比例係数は放射線照射前の移動度(μ)が329cm/VsのセンサSi−MISFETのS値が123mVであった例を参考に暫定的に決めている。この場合、図5の実験データでは、S値は467.5mVであり、式(36)では、対応する移動度(μ)は86.6cm/Vsとなり、実測値の93.5cm/Vsと多少異なるが、以下の議論には殆ど影響は与えない。
1/μ=A×S 式(36)
但し、Aは2.47×10−5、μはcm/Vs単位で測り、SはmV単位で測る。
水素ガス濃度計に設置したSi−MISFET型ガスセンサの移動度を各時刻で計測することは多大な困難があるが、S値の測定を通して、移動度の劣化と放射線積算線量の相関から、その時刻の放射線積算線量の値を簡便に推測することができる。以下に、その技術を提示する。
放射線積算線量下でのセンサSi−MISFETの移動度(μ)は式(33)において、
μ=μ0/(1+α(δNit+δNit(damage)) 式(37)
と表わすデバイスモデルが知られている(例えばK. F. Galloway et al., IEEE Transactions on Nuclear Science, Vol. NS-31, No.6, 1984 pp.1497-1501にSi−MOSFETの簡単な照射放射線の影響に関する現象論的移動度モデルが検討されている)。参照Si−MISFETでは、当然ながら増加分(δNit(damage))の項はない。ここでは、パラメータ(α)の物理的意味および放射線による界面準位密度(Nit)の変化の次数(増加分(δNit)の何乗かなど、ここでは1乗だが根拠はない)はアドフホック的に導入されているのみで、物理的意味は考慮されていない。
一方、移動度(μ)とS値とに相関があることが見出されたことはないが、図2の(c)に示すゲート絶縁膜と半導体基板との界面の界面準位の効果を表現する曲線は、放射線由来であり、サブスレッシュホールド領域においてI−V特性が傾くことが知られている。その影響が、界面準位の増加に起因する事は認識されている。式(15)に示す様に、しきい値電圧(Vth)への放射線の影響には、界面準位の増加(δNit+δNit(damage))に直接関係していること、S値の増加が直接サブスレッシュホールド領域においてI−V特性の傾きに反映することを併せて考えると、実験的に見出された移動度(μ)とS値との相関(式(35)および式(36))は、以下のように説明することができる。なお、増加分(δNit(damage))については、これまで議論したように形式的には増加分(δNit)に繰り込めることができるので、以後の議論には、増加分(δNit(damage))を顕には記載しないことがある。
ここで想定する移動度(μ)は、式(32)に示す様に分割することができる。放射線由来の項には、界面準位の放射線照射による増加分(δNit)があるが、放射線に由来しない項にも元々存在した界面準位(Nit)があるので、一般的には式(38)で記述することができる。
1/μ=1/μ0+α(Nit+δNit)/μ0 式(38)
つまり、式(33)、式(34)、および式(36)から、放射線積算線量(G)とS値との間には、
1+(G/G0)η=A×μ0×S 式(39)
の関係がある。
放射線照射がない場合または放射線エージングした場合には、μ0/(1+αNit)を初期値(μ0)に使用することができる。基本的には、式(36)に示す様に、1/μはS値に比例するので、式(36)を通じて界面準位に直結する。
次に、本モデルの妥当性について物理モデルを見出したので、以下に説明する。
ゲート絶縁膜と半導体基板との界面には、界面準位密度(Nit)が存在すると、準位間の平均距離(L)は1/√Nitで表される。
L=1/√Nit 式(40)
つまりゲート絶縁膜と半導体基板との界面内に2次元的に平均距離(L)で界面準位を形成する原子構造(欠陥)が正方格子上に並んだ状態をイメージする。
一方、今回問題にする移動度(μ)は式(4)で定義されたデバイス特性に直結した移動度であり、通例、(Vgs−Vth=1.5V)で計測しているので、伝導電子はゲート絶縁膜と半導体基板との界面にへばりついて、謂わば2次元的に面内を運動している。動作温度は室温からの高温を問題にしているので、二次元のボルツマン統計の議論が適用できる領域である。そのため電子の平均速度(v)は、電子の有効質量を(m)とすると1/2m×v2=kTから、
v=√(2kT/m) 式(41)
で求めることができる。但し、kはボルツマン定数、Tは動作温度である。
ゲート絶縁膜と半導体基板との界面内を電子が動きまわる時、界面準位の散乱断面積の幅(電子が衝突する時の的の幅)をσeと定義すると電子が平均的に界面準位を形成する原子構造(欠陥)に衝突する時間(τ)は、
τ=1/(v√Nit) 式(42)
で記述される。電子が平均的に平均距離(L)だけ進んだ時、電子が界面準位を形成する原子構造(欠陥)に衝突する確率はσe/Lであるので、結局電子が界面準位に衝突する単位時間当たりの確率(1/τe)は、平均衝突時間(τe)を用いて、
τe=L/v×L/σe=1/(v×σe×Nit) 式(43)
τe=√(m/2k)/(σe×√T×Nit) 式(44)
となり、放射線由来の移動度(μ(rad))は式(9)から、
μ(rad)=qτe/m 式(45)
となる。つまり、放射線由来の移動度(μ(rad))は、
μ(rad)=q/√(2mk)/(σe×√T×Nit) 式(46)
と求めることができ、式(37)および式(38)の物理的理解のバックグラウンドを見出すことができる。
特に、放射線由来の移動度(μ(rad))の分母には界面準位密度(Nit)がそのまま出され、これまで見出していなかった温度因子(√T)を見出した。放射線由来の移動度(μ(rad))の温度特性は、μ(rad)∝T−1/2であり、また、式(10)から、これまで議論してきたように、初期値(μ0)の温度特性はμ0∝T−3/2である。
式(38)から、
1/μ(rad)=αδNit/μ0 式(47)
であるので、μ0=μ0−3/2から、式(46)および式(47)から、
α=μ0×σe×√(2mk)/q×T−1 式(48)
となる。すなわち、パラメータ(α)の温度変化はT−1に比例する。但し、μ0は初期値(μ0)の温度変化しない部分を表わしている。
通例では、αNit≪1であり、αδNit=1の時、図15のμ/μ0=0.5の点を表わし、室温においては、この点は、1.3928MGyの放射線積算線量(G)に対応している。
前述したように、詳細実験のフィッティングでは、1/η=3.15となったが、実験誤差の範囲で1/η=3であると考えられる。つまり、移動度の劣化は放射線積算線量の立方根に比例する。つまり、物理モデルとして、式(34)は、
μ0/μrad=(G/G0)1/3 式(49)
となる。
この物理的理由は、エネルギーの非常に高い放射線の場合、放射線フォトンの大きさというべきドブロイ波長は非常に小さい。MIS構造を形成する原子からみた場合、放射線積算線量は、単位体積に流し込まれた放射線フォトンの総数であり、その体積での放射線フォトン数密度の立方根は、放射線フォトンの間隔を表わすので、その間隔に反比例して欠陥生成および界面準位密度が形成されることを意味している。事実、フォトンのドブロイ波長λ(λ=h/p;hはプランク定数、pはフォトンの運動量)は、1MeVのフォトンの場合、λは1.24pm(ピコメータ)、10keVのフォトンの場合、λは0.124nm(ナノメータ)であり、MIS構造を形成する原子の原子間隔に比べて、数分の1から数百の1小さい値である。
室温においてS値が計測できれば、この解析を基に、それまでの放射線積算線量(G)の値を推定できることを説明する。
S値が計測できれば、式(35)または式(36)を用いて、移動度(μ)を推定することができる。初期値(μ0)は既知であるので、式(33)から放射線由来の移動度(μ(rad))を推定することができ、式(34)または式(49)から、X=G/G0の値を推定することができる。室温の場合、幾何平均(G0)は1.3928MGyなので、放射線積算線量(G)の値を推定できることになる。
前述した<放射線線量の測定の必要性>の項で説明したように、放射線積算線量を測定するS値計測参照型FETのゲート絶縁膜の厚さと、センサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETのゲート絶縁膜の厚さとの最適値は異なり、対象とする放射線積算線量の領域にも依存する。なお、水素ガスセンサの点からは、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとのゲート絶縁膜の厚さは同じであることが、しきい値電圧(Vth)の差分を取る関係で望ましい。また、式(2)に示す様に、放射線積算線量の効果はゲート構造(ゲート絶縁膜の厚さ)に敏感であることから、ゲート絶縁膜の厚さは、対象とする放射線積算線量の範囲により異なる。
そこで、今回原発事故時に想定される2〜5MGyの範囲と、それ以下の領域(例えば打ち上げ用ロケットの水素エンジン監視用)と、それ以上の領域(例えば長期滞在宇宙船の水素エンジン監視用)との3ケースで、各種FETのゲート絶縁膜(SiO)の厚さと放射線積算線量との関係の一例を表4にまとめる。表4中、ゲート絶縁膜(SiO)の厚さの下限は、電源によるゲート耐圧、ドレイン耐圧が律測して決まる値である。
現行のセンサSi−MISFETおよび参照Si−MISFETのゲート絶縁膜(SiO)の厚さは18nmと薄いので、2〜5MGy領域より低い放射線積算線量の領域では、放射線の影響は受け難い。しかし、僅かではあるが影響を受けているので、水素ガス濃度の計測には、さらに薄い厚さのゲート絶縁膜がよい。また、S値測定用参照型FETでは、さらに厚い厚さのゲート絶縁膜を用いることにより、放射線の影響を受けやすくして、S値の計測を容易にすることもできる。これは、設計の問題であり、広い設計の自由度がある。表4では、式(2)に示す様に、ゲート絶縁膜の厚さの2乗に比例して、しきい値電圧(Vth)が変わることを参考にして、ゲート絶縁膜の厚さの範囲を決めている。
ここでは、室温周辺でのデータを議論したが、式(32)と式(7)に示す様に、移動度の初期値(μ0)および放射線由来の移動度(μ(rad))の温度特性、並びに値の温度依存性は理解されているので、115〜250℃程度の温度範囲においても、補正をかけて放射線積算線量を見積もることができる。
実際の水素ガスセンサの環境温度で放射線積算線量を推定するには、移動度の初期値(μ0)とS値の温度依存性をセンサSi−MISFET、参照Si−MISFET、または同種のゲート構造を持つSi−MISFET(S値測定用参照型FET)において先ず取得しておく。この場合、FETを放射線エージングによって、予備的に10〜100kGy程度の積算放射線を照射して、初期値(μ0(T))にすることで、プロセス終了後の素子の初期不良を取り除き、ガスセンサのキャリブレーション工程を円滑にできる。このような放射線エージングを行うことで、素子の初期不良を取り除くことができる。
何れにしても、最初室温から250℃程度までのI−V特性を取り、移動度とS値の温度特性を明らかにする。すなわち、μ0(T)およびS(T)を確定させる。センサSi−MISFETではゲート保護膜の除去工程でゲート領域にダメージができる可能性があること、実際の環境下では水素ガスも存在するので、これらの影響を受けなる心配のないS値測定用参照型FETを用いて放射線積算線量を推定する方が良い。
放射線環境下で計測中にチップ温度(T)とS値を測定する。これによりμ/μ0が分かるので、式(34)から放射線由来の移動度(μ(rad))が分かり、μ0/μ(rad)からG/G0も導出することができる。問題は幾何平均(G0)の温度特性である。
μ(rad)∝T−1/2、かつμ0∝T−3/2であるので、μ0/μrad=(G/G0)1/3∝T−1となり、
G0∝T 式(50)
になる。
これでは、高温での放射線被爆効果が高い放射線積算線量により発生することになる。例えば250℃では、室温時のG0=1.3928MGyよりも5.3倍高い放射線積算線量からμ0/2の劣化が起こることになる。
実際には、放射線照射による界面準位密度の増加分(δNit)は、照射放射線が当たる試料のチップ温度(T)にも依存する。その場合、所謂アレニウス型に振る舞うことが報告されている。室温から250℃程度の変化であれば、その増加分はそれほど多くはない。
δNit(T)=δNit(0)×Exp(−Eth/kT) 式(51)
ここで、Ethはアレニウスギャップ、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。
この効果を取り入れると、上記議論に補正が入り、以下のように表わされる。
μ(rad)∝T−1/2Exp(Eth/kT) 式(52)
G0∝TExp(3Eth/kT) 式(53)
の項だけでは、幾何平均(G0)が大きくなりすぎて不自然であったが、幾何平均(G0)は、高温状態では値を大きくするTと値を小さくするExp(3Eth/kT)の積になるので、アレニウスギャップ(Eth)を正確に求めておくことが必要になる。
何れにしても、S値測定用参照型FETのアレニウスギャップ(Eth)を求めておけば、幾何平均(G0)の温度特性から、放射線積算線量(G)を求めることができる。
また、移動度について、1,940Gyまでは、放射線の影響がほとんどないので、〜100kGy程度までの放射線エージングをセンサチップに施し、少し移動度を劣化させてから、これをμ0に用いることで、データの再現性および信頼性を上げることができる。
このように、S値測定用参照型FETのサブスレッショルド領域の放射線照射後のS値をそれぞれ測定することにより、それまでに浴びた放射線積算線量を求めることができる。
3.水素ガスセンサの基本構成
本実施例1によるSi−MISFETを用いた水素ガスセンサについて図17Aを用いて説明する。図17A(a)および(b)はそれぞれ、同一の基板上の互いに異なる領域に形成された水素ガスセンサを構成するSi−MISFETおよび参照Si−MISFETを示した断面図である。Si−MISFETおよび参照Si−MISFETは、ゲート長(Lg)が20μm、ゲート幅(Wg)が300μmのnチャネル型MISFETであるが、ゲート電極を覆う保護膜の有無が相違する。ここでは、水素ガスセンサの主要部分であるPtゲート構造を作製する部分を中心に説明する。
S値の計測に、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETを用いるのは、水素センシングとバッチティングする点があるので、同一チップ内にS値測定用参照型FETを別途作製する。例えば図4に示した水素センサチップでいえば、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとの間にあるPN接合ダイオード部分を止めて、図17Bに示すように、S値測定用参照型FET84を形成する。
S値の測定用には、参照Si−MISFET83と同種構造のS値測定用参照型FET84をセンサチップ内に形成することで、放射線環境下でのS値を精度よく計測することができる。図17B中、符号85はヒータ配線部を示す。
センサSi−MISFET82のゲート絶縁膜(SiO)の厚さは18nmと薄いので、2〜5MGy領域より低い放射線線量領域では、影響は受けにくい。そこで、2〜5MGy領域の放射線積算線量を測るS値測定用参照型FET84の場合は、式(2)に示す様に放射線効果はゲート構造に敏感にするため、ゲート絶縁膜(SiO)の厚さをセンサSi−MISFETと同じ18nm、またはそれ以上に厚くする。18〜72nm程度に厚くすることにより、2〜5MGy程度の放射線に対して敏感になる。一方、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETのゲート絶縁膜(SiO)の厚さは、2〜5MGy領域に敏感な厚さである18nmになっているので、式(2)等の傾向からさらに薄く、例えば3〜18nm程度の厚さにしておけば、2〜5MGy領域の放射線の影響はさらに受けにくくなる。
次に、水素ガスセンサの製造プロセスについて説明する。Si基板上に形成されたp型の半導体層43内にゲート電極の領域を定義するため、局所酸化を行い、SiOからなる局所酸化膜28を形成する。次に、p型の半導体層43にイオン注入を行い、しきい値電圧調整用のイオン注入層47を形成する。
センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとで、通例イオン注入層47は同じイオン注入条件により形成され、しきい値電圧(Vth)はエンハンスメント型FETにするため、nチャネル型MISFETでは、しきい値電圧(Vth)は1.0〜2.0Vの範囲としている。イオン注入条件を同じにするのは、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとで、放射線効果以外の表3に示すMIS構造の界面準位密度およびゲート絶縁膜中の固有欠陥密度を同じにしたいからである。一般には、イオン注入層47のイオン注入条件を同じにする必要はないが、その場合には式(13)および式(22)の初期値(ΔVth0)にイオン注入条件が異なることに起因する固有の差が発生する。
さらに、イオン注入を行い、n型のソース、ドレイン領域27を形成する。
次に、前処理を実施した後、酸素雰囲気中の熱酸化により、厚さが18nmのゲート絶縁膜25を形成する。上記説明通り、通例、ゲート絶縁膜25は3〜30nmの厚さの中から目的とする放射線積算線量により選んで使用している。素子間を分離する、250nm程度の厚さのSiOからなる局所酸化膜40を形成する。次に、リフトオフ法により、厚さ1〜7nm程度のTi膜、厚さ7〜150nm程度のPt膜を連続して成膜して、ゲート電極20を形成する。このとき、ゲート電極20はゲート絶縁膜25上だけでなく、局所酸化膜28の淵上をかぶるように形成し、ソース・ドレイン領域27の端上に位置するように形成する。これは、ゲート電極20に対して自己整合的にソース・ドレイン領域27を形成することができないからである。ゲート電極20は電子線照射蒸着法で形成し、成膜速度は、例えば0.1nm/sである。次に、高純度空気中において、400℃、2時間〜60日間のアニール処理を行うことにより、ゲート構造を実現する。
次に、PSG膜26を形成し、このPSG膜26にコンタクトを形成する。その後、表面処理などを経て、例えばSiがドープされたAl膜からなるソース・ドレイン電極21および半導体層43に接続する引き出し電極29を形成する。ソース・ドレイン電極21および引き出し電極29の厚さは、例えば500nm程度である。なお、図示は省略するが、ゲート電極20の引き出し線およびチップを加熱するヒータとして、このソース・ドレイン電極21と同じSiがドープされたAl膜からなる配線を形成する。配線幅は、例えば20μm、配線長は、例えば29,000μmである。
次に、ソース・ドレイン電極21および引き出し電極29を覆うようにパッシベーション膜として機能するPSG膜24およびSi膜23を形成する。Si膜23は、例えば低温プラズマCVD法により形成され、その厚さは、例えば700nm程度である。
最後に、ボンディングワイヤを接続するための電極パッドの穴あけと、センサ部分のゲート電極20を露出するための穴あけを行い、開口部19を形成する。この工程では、RIE(Reactive ion etching)によるSi膜23のドライエッチングと、それに続くオーバエッチング、さらにバッファーフッ酸溶液によるPSG膜24のウェットエッチングが行われて、センサSi−MISFETのゲート電極20上のPSG膜24とSi膜23が除去される。この場合、図9に示すI−V特性を実現したが、前述したように、センサSi−MISFETのゲート領域にダメージが発生し、放射線由来のしきい値電圧(Vth)のシフトが生じる。S値測定用参照型FETの形成では、参照Si−MISFETとゲート絶縁膜の厚さが異なり、また、ゲート幅が異なる場合もある。
式(9)から前述した<放射線照射による第2の実験結果>の項で指摘したように、センサSi−MISFETのゲート構造に加工ダメージが存在すると、2〜5MGy程度の放射線照射においても、水素応答以外の効果が見えてくるので、この加工ダメージを殆どなくすには適当なウェットエッチング技術が必要である。
このようなプロセス起因のダメージは、ドライエッチングのオーバエッチングを少なくすることでも改善効果はあるが、熱リン酸などによりSi膜23を除去した後、バッファーフッ酸溶液によりPSG膜24を除去するなどの化学処理により大幅にゲート領域のダメージを抑制することができる。この場合には、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとのしきい値電圧の差分を取るので、放射線の影響に伴う項は、非常に小さくなる。
具体的なプロセスとしては、Si膜23を形成後、熱リン酸にエッチされない保護膜(たとえばPSG膜)をSi膜23上に200nm程度形成し、ゲート孔開けホトレジストをマスクとして、フッ酸系エッチング液(バッファフッ酸)により保護膜を加工する。その後、ゲート孔開けホトレジストを除去し、保護膜をマスクとして、熱リン酸(例えば140〜150℃)でSi膜23をエッチング除去する。PSG膜24が完全に露出するまでオーバした後、Si膜23をマスクにして、フッ酸系エッチング液(バッファフッ酸)により保護膜およびPSG膜24を除去する。
この過程では、ドライエッチングと異なり、ゲート絶縁膜の周辺にダメージが入りにくく、固有欠陥密度(Not)および界面準位密度(Nit)が非常に少なく、数1010cm-2程度とドライエッチより1桁以上少なくなる。また、これらは、センサSi−MISFETと参照SI−MISFETとの差分をとる方式(ΔVg=Vth(ref)−Vth(s)(式(21))では、さらに1桁小さい10cm-2程度になるまで、水素照射しない時のセンサ強度(ΔVg)の絶対値が30mV以内に大略収まる。
これは、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとで、通例イオン注入層47を同じイオン注入条件により形成した場合である。しきい値電圧(Vth)はエンハンスメント型FETにするため、nチャネル型MISFETでは、しきい値電圧(Vth)は1.0〜2.0Vの範囲としている。
イオン注入層47のイオン注入条件を同じにしない場合には、式(13)および式(22)の初期値(ΔVth0)にイオン注入条件が異なることに起因する固有の差が発生するので、放射線照射環境下での時間変化には、この差分は残る。しかし、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとで、放射線効果以外の表3に示すMIS構造の界面準位密度およびゲート絶縁膜中の固有欠陥密度の差異に寄与するセンサSi−MISFETと参照Si−MISFETとのしきい値電圧(Vth)の差分の絶対値が30mV以内に収まれば、放射線効果は少なくなるので、水素ガス由来のしきい値電圧(Vth)の変化と区別できるので問題はない。
この場合、高い放射線積算線量に由来するセンサ強度(ΔVg)でも100mV以下であり、水素ガス濃度が非常に低い数100ppm程度の水素ガス濃度の正確な測定に影響が出る程度である。
このように、ゲート孔開け加工をウェットエッチングに変更することで、放射線影響は劇的に改善される。
本実施例1では、ゲート絶縁膜25にSiO膜を用いたが、SiO膜上にTa膜、Al膜、またはSi膜などの絶縁膜を形成した後、Ti層およびPt層を順次積層し、前述した製造工程と同様にして、ゲート電極20を形成してもよい。Ta膜を形成することで、水素ガス照射を切った後、水素ガスセンサから水素が抜ける過程において、SiO膜中に存在する遅い時定数をもつ水素トラップに由来する長時間での水素応答のテール残りを除去できる効果がある。
高純度空気中において、400℃、2時間のアニール処理は、製造工程の途中で行わなずに、製造工程終了後に行うこともできる。しかし、製造工程終了後に、400℃、2時間のアニール処理を行うと、電極パッドの表面を酸化するまたは電極パッド自身が酸化物と反応して、ワイヤボンディングの接着性などに不具合が生じる。また、Si膜23にクラックが発生し、信頼性を損なうおそれがあるので、アニール処理は、本実施例1で示す工程で行うことが望ましい。
このようにして、水素ガスセンサを作製し、例えば図18に示す様に、ソースフォロワー回路をセンサSi−MISFETと参照Si−MISFETに適用し、減算回路72により、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとのしきい値電圧の差分(ΔVth(ref−s)=Vth(ref)−Vth(s))を出力信号端子76に取り出す。図中、符号70はセンサSi−MISFETのソースフォロワー回路、符号71は参照Si−MISFETのソースフォロワー回路である。ここでは、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとで独立に直流電流源を設置する形式で示しているが、両者を直列接続して1つの直流電流源で構成することもできる。
本実施例1では、例えば図19に示す環境条件における出力電圧を取り出した。
図20は、2MGy(7日間程度)の放射線積算線量下の環境で、過酷事故時を模擬した格納容器内で発生した水素ガス照射および放射線照射の条件で、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとのしきい値電圧の差分(ΔVth(ref−s)=Vth(ref)−Vth(s))の初期値(ΔVth0)および上記差分(ΔVth(ref−s))の時間経過を示したグラフ図である。さらに、図20には、上記差分(ΔVth(ref−s))の経過時間に対する時間微分(∂ΔVth(ref−s)/∂t)を示している。図中、微分信号基準値を示しているが、原点は上側にずらしている。微分信号基準値から水素以外の放射線効果までの距離が放射線照射に伴う放射線由来のしきい値電圧(Vth)のシフト量を表わしている。
差分(ΔVth(ref−s))の初期値(ΔVth0)、差分(ΔVth(ref−s))の時間経過(ゆっくりした時間経過とそれに比べると早い時間変化)、および一次微分の微分信号基準値からの差位を考慮して、差分(ΔVth(ref−s))の値の補正を行い、水素ガス由来のしきい値電圧(Vth)のシフトと放射線由来のしきい値電圧(Vth)のシフトとを切り分けることができる。これにより、水素ガス濃度を正確に導き出すことができる。
例えば本実施例1では、90時間以降では、差分(ΔVth(ref−s))は非常にゆっくりと増加するが、その時間微分項(傾き)は、図20において水素以外の放射線効果の所に現れるので、この成分を取り除くことで、残留水素ガス濃度を推測することができる。
先に議論したように、放射線由来のしきい値電圧(Vth)のシフトが時間とともに増加する場合には、水素ガス濃度が増加する方向と同じであり、逆に放射線由来のしきい値電圧(Vth)のシフトが時間とともに減少する場合には、水素ガス濃度が減少する方向と同じである。放射線由来のしきい値電圧(Vth)のシフトが時間とともに減少する場合は、放射線由来による界面準位の増加分(δNit(damage))の方が固有欠陥密度のチャージアップ分(δNot(damage))に比べてより多く存在する場合に対応する。放射線由来の差分(ΔVth(ref−s))の変動は、水素ガス濃度が高い場合には、対応が容易である。水素ガス濃度が0.1%以下の低濃度では、上記の様に差分(ΔVth(ref−s))の時間軸での振る舞いを詳細に検討することで、放射線由来の効果と水素ガス由来の効果とを選別することができる。
次にS値の計測手法について、図21および図22を用いて説明する。図21(a)はセンサ信号を取り出す回路にS値を評価する回路を付加した概念図である。放射線線量は時々モニターすれば良いので、放射線を計測する僅かな時間では、水素ガスの測定はせず、切り替えスイッチ78を介して用意された、参照Si−MISFETに接続した直流電流源2および別の直流電流源77を用いてそれぞれソース・ドレイン電流(I,I)を設定して参照Si−MISFETの出力端子79からソース・ドレイン電流(I,I)にそれぞれ対応したゲート電圧(V,V)を測定する。図21(a)の回路構成では、参照Si−MISFETに出力端子79を設け、差動回路とは独立に参照Si−MISFETのゲート電圧を計測する。
図22(a)に、参照Si−MISFETのソース・ドレイン電圧(Vds(通例1.5V))を一定にして測定した、ゲート電圧(Vg)とソース・ドレイン電流(Ids)のI−V特性を示している。サブスレッショルド領域のある電流ポイントを2点、ソース・ドレイン電流(I,I)を設けて(例えば1μAと5μA、参照Si−MISFETのゲート幅Wgに依存して設定を変えられる)、それぞれに対応するゲート電圧(V,V)を測定する。式(5)〜式(7)を用いて式(54)によりS値を計算する。
S(mV)=Ln10/Ln(I/I)×(V−V) 式(54)
例えば試験素子ではあるが、表2の参照Si−MISFETの数10MGy放射線照射後のS値(364.5mV)は、I=11.34nA、I=75.47nA、V=−0.5V、V=−0.2Vから求めている。
一方、水素ガス濃度を計測する場合、計測しない時間が許されない場合もある。この場合は、図21(b)に示すように、センサSi−MISFETと対をなす参照Si−MISFETを使わずに、センサチップ上に、水素に応答しない参照Si−MISFETと断面形状がほぼ同じであるS値測定専用の図17Bに示すS値測定用参照型FETを別途形成して、直接測定してもよい。
S値の計測において、式(54)を用いる場合には、測定データの演算を施す必要があるので、信号出力段79に演算回路と記憶装置86とを設けて、信号処理装置87からS値を出力する。さらに、S値から式(39)を用いて放射線積算線量(G)を求めるにも記憶装置86からのデータを用いて信号処理装置87から放射線積算線量(G)を推定する。S値から放射線積算線量(G)を求めるには、このような手続きが必要になるが、演算処理装置の高速処理が可能であり、また、格納容器内の水素ガス濃度および放射線積算線量の変化が演算速度に比べて遅いので、ほぼリアルタイムで放射線積算線量(G)を得ることができる。これは、センサ強度(ΔVg)の値から水素ガス濃度を換算する時にも当てはまる。
この場合、さらに図22(b)に示す様に、S値測定用参照型FETのサブスレッショルド領域のある電流ポイント(通例10μA程度)に定電流源で固定するが、非常に小さい振幅を持つことから、交流源から振幅(I)の交流信号を入力して、ゲート電圧の交流振幅(V)を測定することでS値を求めることができる。これにより、2〜5MGyの高い放射線積算線量を測定することができる。本実施例1では、ゲート幅(Wg)が300μmの例を示したが、S値の計測を容易にするために、ゲート幅(Wg)が3〜30mm程度の幅広なFETに変更すれば、測定回路の信頼性は向上する。
その理由は、これまでのソース・ドレイン電流の値は、ゲート長(Lg)が10〜50μm、ゲート幅(Wg)が150μmまたは300μmのセンサSi−MISFETと参照Si−MISFETとを用いていることに起因している。すなわち、ゲート幅(Wg)を3〜30mm程度に広げることで、ソース・ドレイン電流(Ids)の値を1〜10mA等の大きい電流を用いても、FET特性から見れば、サブスレッショルド領域でのソース・ドレイン電流(Ids)をデバイス原理としては用いており、最もソース・ドレイン電流(Ids)が急激に変化する感度の良い領域をセンサ信号取り出しに使用することができる。
センサSi−MISFET、参照Si−MISFET、およびS値測定用参照型FETのゲート幅(Wg)は、通例、100μm〜30mmの範囲で用いている。
本実施例2によるSiC−MISFETを用いた水素ガスセンサについて図23を用いて説明する。図23は、同一の基板上の互いに異なる領域に形成された水素ガスセンサを構成するSiC−MISFETおよび参照SiC−MISFETを示した断面図である。
前述の実施例1では、Si基板を用いたので、216〜270℃での水素応答では、ソース・ドレイン間のリーク電流の増加に伴い、温度補正が必要になる。この温度領域において、リーク電流の効果が見えないセンサSiC−MISFETと参照SiC−MISFETとを同一チップ内に形成した水素ガスセンサの一例について説明する。
4度オフn型のSiC基板39上に、8μm程度の厚さのn型のエピタキシャル層38を形成した後、センサSiC−MISFET62と参照SiC−MISFET63のそれぞれのp型ウェル43a,43bを形成し、p型ウェル43a,43bのウェル電位固定のためのp型インプラ層49と制御電極46a,46bを形成する。さらに、SiC基板39およびn型エピタキシャル層38の電位を固定するためのn型インプラ層42と制御電極48を形成する。
センサSiC−MISFET62と参照SiC−MISFET63のソース層45aおよびドレイン層45bをそれぞれ形成した後、200℃前後におけるしきい値電圧が1.5〜2.5Vになる様に、チャネルインプラ層47a,47bを形成する。
前述の実施例1と同様に、チャネルインプラ層47a,47bのイオン注入条件を同じにしない場合には、式(13)および式(22)の初期値(ΔVth0)にイオン注入条件が異なることに起因する固有の差が発生するので、放射線照射環境下での時間変化には、この差分は残る。しかし、センサSi−MISFETと参照Si−MISFETとで、放射線効果以外の表3に示すMIS構造の界面準位密度およびゲート絶縁膜中の固有欠陥密度の差異に寄与するセンサSi−MISFETと参照Si−MISFETとのしきい値電圧(Vth)の差分の絶対値が30mV以内に収まれば、放射線効果は少なくなるので、水素ガス由来のしきい値電圧(Vth)の変化と区別できるので問題はない。
センサSiC−MISFET62のソース層45aにはソース電極31aが接続され、ドレイン層45bにはドレイン電極32aが接続されている。また、参照SiC−MISFET63のソース層45aにはソース電極31bが接続され、ドレイン層45bにはドレイン電極32bが接続されている。センサSiC−MISFET62と参照SiC−MISFET63のゲート絶縁膜35aはそれぞれ、18〜50nmの範囲で選択している。ゲート絶縁膜35aは、例えばSiOからなる。
ソース45aおよびドレイン層45b上に形成したSiO膜35bは、所謂増殖酸化ほどには膜厚が厚くないが、ゲート絶縁膜35aに比べるとやや厚い。パッシベーション膜は、例えばTEOS(Tetraethyl orthosilicate)36、37およびSi膜34であり、TEOS36の厚さは、例えば200nm、TEOS37の厚さは、例えば400nmである。
ゲート電極30a,30bは、ゲート絶縁膜35a上に、Ti膜およびPt膜をEB(Electron Beam)蒸着法およびリフトオフ法により形成される。Ti膜の厚さは、例えば1〜7nm、Pt膜の厚さは、例えば15〜150nm程度である。センサSiC−MISFET62と参照SiC−MISFET63との相違点は、センサSiC−MISFET62では、ゲート電極30a上のTEOS膜36,37およびSi膜34を除去して、開口部33を形成している点である。ゲート電極30a,30b以外のオーミック電極および配線は、Al膜などの金属を用いている。
本実施例2では、250℃においてもソース・ドレイン間のリーク電流はnAのレベルであり、Si−MISFETの様に、リーク電流の補正をする必要がないことが最大のメリットである。
図24は、過酷事故時を模擬した格納容器内での水素ガスの相対濃度および放射線積算線量の過酷事故発生時からの経時変化を示すグラフ図である。放射線積算線量を示す縦軸は、3日間で5MGyが0.45に対応する様に記載されている。
図25は、5MGy(3日)の放射線積算線量下の環境で、過酷事故時を模擬した格納容器内で発生した水素ガス照射および放射線照射の条件で、センサSiC−MISFETと参照SiC−MISFETのしきい値電圧の差分(ΔVth(ref-s)=Vth(ref)−Vth(s))の初期値(ΔVth0)および上記差分(ΔVth(ref−s))の時間経過を示したグラフ図である。さらに、図25には、上記差分(ΔVth(ref−s)の経過時間に対する時間微分(∂ΔVth(ref−s)/∂t)を示している。図中、微分信号基準値を示しているが、原点は上側にずらしている。微分信号基準値から水素以外の放射線効果までの距離が放射線照射に伴う放射線由来のしきい値電圧(Vth)のシフト量を表わしている。
差分(ΔVth(ref−s))の初期値(ΔVth0)、差分(ΔVth(ref−s))の時間経過(ゆっくりした時間経過とそれに比べると早い時間変化)、一次微分の微分信号基準値からの差位を考慮して、差分(ΔVth(ref−s))の値の補正を行い、水素ガス由来のしきい値電圧(Vth)のシフトと放射線由来のしきい値電圧(Vth)のシフトとを切り分けることができる。これにより、水素ガス濃度を正確に導き出すことができる。
さらに、センサSiC−MISFETと参照SiC−MISFETのサブスレッショルド領域のある電流ポイント(通例10μA程度)に定電流源で固定するが、図18に示す2つの直流電流源に、非常に小さい振幅を持つ交流源を付加することで、サブスレッショルド領域のI−V特性の傾き、すなわち、S値を式(4)〜式(6)を用いて計測することができる。また、図22(a)に示すように、サブスレッショルド領域のある電流ポイントを2点設けて(通例10μAと50μA)、その時のゲート電圧とソース・ドレイン電流をそれぞれ測定することで、同様にS値を式(4)〜式(6)を用いて計測することができる。これにより、2〜5MGyの高い放射線積算線量を測定することができる。
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。特に、表4に示した様に、各種FETのゲート絶縁膜の厚さは、具体的な放射線量の環境に応じて設計することが望ましい。
例えば、Pt−Ti−Oゲート構造では、Tiの代わりに、W、Mo、Ta、Nb、Crを用いてもよく、Ptの代わりにIrを用いても良く、同様な手法により、ガスセンサを形成できることは言うまでもない。
また、半導体材料としてはSi以外に、SiC半導体、ダイヤモンド半導体、GaN半導体など、あるいはガラス基板上の薄膜トランジスタ(特許文献2参照)へも適用することができる。MISFET以外の素子構造としては、MISキャパシタ(金属−絶縁体−半導体コンデンサ)にも原理的には適用することができる。
2 Ti改質層
3 半導体基板
4 ゲート絶縁膜
5 Si層
6 固有欠陥
7 界面準位
9 固有欠陥
10 界面準位
19 開口部
20 ゲート電極
21 ソース・ドレイン電極
23 Si
24 PSG膜
25 ゲート絶縁膜
26 PSG膜
27 ソース・ドレイン領域
28 局所酸化膜
29 引き出し電極
30a,30b ゲート電極
31a,31b ソース電極
32a,32b ドレイン電極
33 開口部
34 Si
35a ゲート絶縁膜
35b SiO
36,37 TEOS膜
38 n型エピタキシャル層
39 SiC基板
40 局所酸化膜
42 n型インプラ層
43 半導体層
43a,43b p型ウェル
45a ソース層
45b ドレイン層
46a,46b 制御電極
47 しきい値電圧調整用のイオン注入層
47a,47b チャネルインプラ層
48 制御電極
49 p型インプラ層
60 放射線
61 電子・正孔対
62 センサSiC−MISFET
63 参照SiC−MISFET
70,71 ソースフォロワー回路
72 減算回路
76 出力信号端子
77 直流電流源
78 切り替えスイッチ
79 出力端子
80 ゲート電極
81 絶縁膜
82 センサSi−MISFET
83 参照Si−MISFET
84 S値測定用参照型FET
85 ヒータ配線部
86 記憶装置
87 信号処理装置

Claims (4)

  1. 基板上の互いに異なる領域に、第1センサ部と、第2センサ部と、濃度測定部とを有し、
    前記第1センサ部は、
    (a1)半導体層、
    (b1)前記半導体層上に形成された第1ゲート絶縁膜、
    (c1)前記第1ゲート絶縁膜上に形成された第1結晶膜、
    (d1)前記第1結晶膜上に形成され、その表面が露出した第1触媒ゲート電極、
    を備え、
    前記第2センサ部は、
    (a2)前記半導体層、
    (b2)前記半導体層上に形成された第2ゲート絶縁膜、
    (c2)前記第2ゲート絶縁膜上に形成された第2結晶膜、
    (d2)前記第2結晶膜上に形成され、その表面が露出していない第2触媒ゲート電極、
    を備え、
    前記濃度測定部において、
    (i)前記第1センサ部のしきい値電圧と前記第2センサ部のしきい値電圧との第1差分の時間変化を求め、
    (ii)前記第1差分の初期値、および前記第1差分の時間変化の微分信号から、ガス濃度に由来する第1微分信号と、前記ガス濃度以外に由来する第2微分信号とを分離し、
    (iii)前記第1微分信号から、前記ガス濃度に由来する前記第1センサ部のしきい値電圧と前記第2センサ部のしきい値電圧との第2差分の時間変化を求め、
    (iv)前記第2差分から、前記ガス濃度を求めて、
    前記ガス濃度を測定する、ガスセンサ。
  2. 請求項1記載のガスセンサにおいて、
    前記第1結晶膜および前記第2結晶膜は、TiOxナノ結晶と酸素ドープTiとの混合層からなり、
    前記第1触媒ゲート電極および前記第2触媒ゲート電極は、Ptからなる、ガスセンサ。
  3. 請求項1記載のガスセンサにおいて、
    前記第1ゲート絶縁膜および前記第2ゲート絶縁膜の厚さが、3nmから72nmである、ガスセンサ。
  4. 請求項1記載のガスセンサにおいて、
    前記第1触媒ゲート電極および前記第2触媒ゲート電極の幅が、150μmから30mmである、ガスセンサ。
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