JP6408741B2 - 管状構造物の付加的機械的成長を行う方法および装置 - Google Patents

Description

[001] 付加製造および３Ｄ印刷の方法およびデバイスは発展している。使用される材料、送出システム、および応用分野で革新が起きている。

[002] 最も普及している３Ｄプリンタは、電子レンジほどのサイズの器具である。これらの３Ｄプリンタには、いくつかの制限がある。通常、これらの３Ｄプリンタは、一度に１種類の材料しか印刷することができず、構築されるサイズも小さく、１立方フィート未満である。

[003] いくつかの付加製造技術は、より大きな物体を構築することを可能にするガントリシステムまたは機械アームを利用している。しかし、これらも依然として、送出システムのサイズおよび運動性、ガントリシステム下方の容積、または機械アームのリーチに制限されている。

[004] 付加製造技術を利用してさらに大きな物体を構築することが求められている。これらの物体を構築するだけでなく、サイズが大きくなったことにより大きくなった力を支持するのに十分な強度をこれらの物体に持たせるために、新たな方法およびデバイスが必要とされている。

[005] 以下の説明では、本開示の特定の態様および実施形態が明らかになる。本開示は、その最も広い意味では、それらの態様および実施形態の１つまたは複数の特徴がなくても実施することができることを理解されたい。また、それらの態様および実施形態は、単なる例示に過ぎないことも理解されたい。

[006] 添付するのは、管状物体を押し出す新たな方法および装置の説明である。これは、支持のための製品を利用して、外部の位置決めシステムを不要にすることにより、無制限の構築領域を有する大規模な物体を構築することを可能にする。

[007] 特定の実施形態は、付加製造の押出し方法を利用する。例えば、特定の実施形態では、押出し機を、硬化した押出し材料を支持体として利用する可動印刷ヘッド内に配置する。印刷ヘッドは、少なくとも１つの材料源に連結することができる。例えば、印刷ヘッドとこの少なくとも１つの材料源との間の連結装置は、ホースとすることができる。ホースの長さにより、印刷ヘッドのレンジをより大きくすることができる可能性がある。ホースの長さは数インチから数百フィートの範囲とすることができ、これによりサイズおよび適用分野の柔軟性が得られる。

[008] 特定の実施形態では、ベースステーション（base station）を、ホースの一端に位置することができる。ベースステーションは、例えば、ホストコンピュータ、電源、および物体を構築するための押出し材料を含むことができる。

[009] 特定の実施形態では、印刷ヘッドは、ホースの一端に位置付けることができる。印刷ヘッドは、ベースステーションとは反対側のホースの端部に位置することができる。印刷ヘッドは、少なくとも１つの材料を押し出す１つまたは複数のノズルと、安定化／推進手段とを含むことができる。

[010] 押出し材料は、ホースを通って印刷ヘッドまで進み、そこから複数のノズルを通って押し出される。本開示の特定の実施形態は、複数のノズルを有し、これらのノズルは、例えば円形配列に構成されることがある。円形だけでなく、ノズルは、長方形、八角形、または正方形を形成するように配置されることもある。任意の多角形ノズル配列が考えられる。少なくとも１つの材料をノズルから押し出して、押出しチューブと呼ばれる管状物体を形成する。印刷ヘッドが押出しとは反対の方向に移動しながら材料の押出しを続ける間、このチューブの長さが成長する。

[011] 印刷ヘッドは、押出しチューブに対する安定化／推進手段を含む。ガントリシステムまたは機械アームなどの外部手段に頼るのではなく、印刷ヘッドは、押出しチューブを利用して、安定性および推進のための土台を提供する。モータおよび硬化した押出しチューブの内側を把持する一連のホイールなど、いくつかの方法が利用可能である。ホイールは、材料を押し出して押出しチューブを作成する間に、印刷ヘッドを推進させることができる。

[012] 印刷ヘッドは、１つまたは複数のノズルを通して同じ速度で押出しを行って、直線状の押出しチューブを形成することができる。ただし、特定の実施形態では、印刷ヘッドは、例えば円弧、転回、および複雑な物体を生じるために、各ノズルの押出し速度を変化させる。押し出された材料は、さらなる強度を与える連続的な複合材を含んで、押出しチューブが重力に対向して自由空間中に成長できるようにすることができる。これにより、横向きの押出しチューブ、倒立した押出しチューブ、および複雑な形状の押出しチューブが可能になる。

[013]ホースによってベースステーションに接続された印刷ヘッドを示す斜視図である。 [014]ホイールシステムを備えた印刷ヘッドを示す斜視図である。 [015]ホイールシステムを備えた印刷ヘッドを示す底面図である。 [016]追加の回転モジュールを備えた印刷ヘッドを示す斜視図である。 [017]いくつかの安定化／推進手段を示す斜視図である。 [018]直線状押出しチューブおよびメッシュ状半チューブを示す斜視図および断面図である。 [019]１２個のアンカ、および押出しチューブを印刷する１０個の印刷ヘッドを備えたスタータピースを示す斜視図である。 [020]３つの代替の押出しチューブの形状を示す斜視図である。 [021]代替のノズル構成から得られる３つの押出しチューブを示す斜視図である。 [022]トラスの詳細を示す斜視図、および３つの長方形押出しチューブからなるトラスを示す正面図である。 [023]船の艇体を示す斜視図である。 [024]船の艇体を示す正面図である。 [025]インフラストラクチャとして機能する２本の押出しチューブを示す斜視図である。 [026]ベースステーションの代替の実施形態を示す斜視図である。 [027]スタータピースから６本の押出しチューブを押し出すベースステーションの代替の実施形態を示す斜視図である。

[028] 添付するのは、付加製造を行う新たな方法および装置の実施形態である。図１を参照されたい。この装置の基本構成要素は、例えば、印刷ヘッド１０１、ホース１０２、およびベースステーション１０３を含むことができる。

[029] 図２Ａおよび図２Ｂは、例示的な印刷ヘッドを示す図である。印刷ヘッドの外周部は、硬化性マトリックス材料を押し出す、１つまたは複数の個別ノズル２０１を含むことができる。硬化性マトリックス材料は、ベースステーションの貯蔵器またはスプール内に入っていることがある。この硬化性材料は、例えば、固体のストランド補強材料と硬化性の液体マトリックス材料とで構成された複合材を含み得る。補強された複合材を備えない一様な硬化性マトリックス材料も考えられる。各ノズルは、硬化性マトリックス材料を押し出して、個々の経路を形成する。複合経路では、固体ストランド材料は、硬化性マトリックス材料の中に完全に封入され、経路と同軸に位置決めされる。１つまたは複数のノズルから全ての経路をまとめて押し出すことで、押出しチューブと呼ばれる硬化した管状形状を形成する。

[030] 特定の実施形態では、印刷ヘッドは、一定の方向に位置するノズルを含む。ただし、さらに別の実施形態では、印刷ヘッドは、押出しチューブの直径を増大または減小させること、および横に移動して半チューブを形成することができる、連接ノズルを含むこともある。

[031] 本開示の特定の実施形態は、硬化性マトリックス材料を硬化させる手段も有する。本願の目的では、「硬化」とは、材料が固くなることを意味する。これは、例えば、液体から固体への相変化、固体の粉末粒子の結合、または複数の固体材料が１つに融合することなどである可能性がある。「硬化」の意味が、硬化性材料の組成に応じて変化することもある。いくつかの例では、「硬化」の意味が、時間または周囲温度によって決まる固有のものであることもある。特定の実施形態では、紫外線によって硬化することができるフォトポリマー樹脂を利用することもある。それらの実施形態では、印刷ヘッドは、押し出される経路を１つまたは複数のＬＥＤライト２０２によって照明するＵＶ光源を含むことがある。この紫外線により、経路は、１つまたは複数のノズルから押し出された後すぐに硬化する。硬化手段の代替の実施形態では、熱可塑性材料の場合に、熱を利用することがある。他の代替の硬化手段は、例えば、化学硬化剤、冷却、高出力レーザ、および音波を使用する音波処理を含み得る。

[032] 硬化性マトリックス材料内に封入された固体ストランド材料を含む複合材料を押し出す実施形態では、印刷ヘッドは、固体ストランド材料を送出する速度が硬化性マトリックス材料を押し出す速度に合わせて調整されるように固体ストランド材料を送出する手段を含むこともある。

[033] 印刷ヘッドは、安定化／推進手段を含む。特定の実施形態では、印刷ヘッドは、例えば、回転するホイールベース２０３と、引張り荷重ヒンジ上の一連のホイール２０４とを備えたホイールシステムを含むことがある。印刷ヘッドのさらなる構成要素は、例えば、ホイールベースを回転させ、個々のホイールを回転させ、ホイールベースと印刷ヘッドの筐体との間で多方向ヒンジ２０５を操作する１つまたは複数のモータを含み得る。ボールジョイントは、多方向ヒンジの一例である。印刷ヘッドのいくつかの実施形態は、例えば約９０度間隔を開けた４つのホイールのセットを含む。他の実施形態では、必要に応じてホイールの数がこれより多くても少なくてもよい。

[034] 印刷ヘッドの代替の実施形態は、動作を監視するセンサを含むことがある。例えば、印刷ヘッドは、配向を測定するための加速度計またはジャイロスコープ、温度を測定するための温度計、最適な材料流を維持するための圧力センサを含むことがある。

[035] 印刷ヘッドの筐体２０６は、押出しチューブの外径と等しい、またはそれよりわずかに小さい、直径を有することができる。この構成により、既存の表面およびその他の押出しチューブに隣接してチューブを押し出すことが可能になる。印刷ヘッドは、例えば６インチの直径を有することがあるが、当業者なら、別法として他の直径を実施することができることも理解するであろう。印刷ヘッドの外周部は、１つのリング状ノズルを備えることもできるし、あるいはリングを形成する複数のノズルを備えることもできる。

[036] ホース１０２は、印刷ヘッド１０１の上部から延び、ベースステーション１０３に接続することができる。このホースは、例えばロータ継手によって印刷ヘッドおよびベースステーションに接続することができる。この接続により、ホースは、動作中に必要に応じて捻れることができる。

[037] ホースは、例えば、印刷ヘッドとベースステーションの間の複数のライン、すなわち電源と、硬化性マトリックス材料を供給する内部ホースと、固体ストランド材料を送出する内部ホース、ホストコンピュータにフィードバックを提供して、ホストコンピュータが印刷ヘッドの各構成要素を動作させることができるようにする電子通信ラインとで構成することができる。

[038] 印刷ヘッドの代替の実施形態は、印刷ヘッドの上部から出るのではなく、印刷ヘッドの底部にまで至るホースを有することがある。この実施形態では、ホースの長さは、押出しチューブを通って印刷ヘッドまでの長さになる。

[039] いくつかの実施形態では、ホースの必要性が限定的であることがある。材料をベースステーションの貯蔵器またはスプールに入れておく代わりに、印刷ヘッド、または印刷ヘッドに接続された筐体に材料を収容することができる。代替の実施形態を、図３に示す。この印刷ヘッド３０１は、印刷ヘッドに取り付けられた２つの回転モジュール３０２、３０３を示す。これらのモジュールは、硬化性マトリックス材料の貯蔵器と、固体ストランド材料のスプールと、電源と、遠隔制御無線通信機能を備えたホストコンピュータとを収容することができる。これらの実施形態では、ホースは必要なく、装置を完全に自律的に動作させることができる。

[040] ベースステーション１０３は、電源を提供することができ、ホストコンピュータと、硬化性マトリックス材料の貯蔵器と、この材料をホースを通して印刷ヘッドまで移動させる１つまたは複数のポンプとを収容することができる。複合材料を押し出す実施形態では、ベースステーションは、固体ストランド材料の供給源、および固体ストランド材料をホースを通して送出するためのモータも含むことがある。いくつかの実施形態では、ベースステーションは、押出しチューブ内に圧力を提供する空気圧縮機または水圧縮機を含むこともある。

[041] ベースステーションは、可動であるように設計されるので、装置の操作者は、押出しチューブを現場で構築することができる。いくつかの実施形態では、さらなる可動性が望ましいこともあり、その場合には、ベースステーションは、それ自体の可動性手段を備えることができる。キャタピラトラック１２０１を備えたベースステーションの例を示す図１２Ａを参照されたい。

[042] ホストコンピュータは、例えば材料の押出し速度、固体材料の送出速度、硬化手段、および印刷ヘッドの推進など、様々な動作を制御する。

[043] ホストコンピュータは、印刷ヘッド上の利用可能なセンサからのフィードバックを援用して、高品質の押出しチューブを製造するように、これらのアクティビティを調整する。いくつかの実施形態では、ホストコンピュータは、複数の印刷ヘッドを同時に制御することもできる。

[044] 本開示は、印刷ヘッドを位置決めする従来の手段を不要にする。上記で説明したように、印刷ヘッドを位置決めする既知のシステムは、通常はガントリシステムまたは機械アームを使用する。本開示の印刷ヘッドは、ガントリシステムまたは機械アームを使用する代わりに、安定化／推進手段を含む。この手段は、印刷ヘッドを前方に推進させながら、印刷ヘッドを押出しを行う位置に安定させる。ホイール、ピッグ、キャタピラ、インチワーム手段、ねじ、歩行手段、ウォールプレス手段、または磁石など、安定化／推進手段を提供するいくつかの代替のシステムが可能である。図４を参照されたい。

[045] 図２Ａに示すように、ホイールシステムは、印刷ヘッドの底部から延びることがある。複数セットのホイールを、多方向ヒンジを備えたシャフトを介して印刷ヘッドに接続することができる。これらのホイールを押出しチューブの内側に押し付けて、印刷ヘッドを適所に固定することができる。これらのホイールが協調して回転して、押出しを行うときに印刷ヘッドを推進させることができる。

[046] 図４は、ホイールシステム４０１の実施形態を示す図である。キャタピラシステム４０２は、ホイールシステムと同様に機能するものであり、単純にホイールをキャタピラトラックで置き換えたものである。

[047] いくつかの実施形態では、印刷ヘッドをより良好に安定させ、推進するために、ホイールシステムの強度を高めることが望ましいことがある。複数セットのホイールを、第１のセットの後方に連続して追加することができる。図３は、２つの追加の回転モジュール３０２、３０３を備えた印刷ヘッドを示している。これらのモジュールが上述のように基地局の構成要素を代表するのでなく、各モジュールが、安定のために押出しチューブの内側を押圧し、協調して印刷ヘッドを前方に推進させることができる、機能するホイールシステムであることもある。

[048] ピッグシステム４０３は、気圧または油圧を利用して、印刷ヘッドを前方に推進させることができる。ピッグは、多方向ヒンジによって印刷ヘッドに取り付けることができる。ピッグは、押出しチューブ内の締まり嵌めプラグと機能することができる。気体または液体を押出しチューブ内にポンプ注入して、印刷ヘッドを前方に推進させる圧力を生み出すことができる。この実施形態では、圧縮機およびポンプと、気体または液体を押出しチューブの空洞に供給するホースとを追加する必要がある。この供給は、例えば、印刷ヘッドバルブ、ベースステーション、または押出しチューブ上のいずれかの部分で開くバルブを介して行うことができる。押出しチューブが成長するにつれて、圧力がチューブ内で制御されながら高まり、印刷ヘッドを押出しの速度と同じ速度で移動させる。ピッグシステムは、大きな直線状のチューブの場合に望ましいことがある。

[049] 代替の安定化／推進手段は、特定の適用分野のための強化された機能性を提供する。インチワームシステム４０４は、ホイールシステムまたはその他の移動部品には直径が実用的でない可能性がある、非常に小さなチューブに有効である。ねじシステム４０５は、印刷ヘッドが前進するときに印刷ヘッドに回転を与え、それにより螺旋状の押出しチューブを生じる。ウォールプレスシステム４０７は、安定性が高められた手段であり、押出しチューブを垂直方向におよび重力に逆らって印刷するときに有用であることがある。歩行型システム４０６は、複雑な押出しチューブをより良好にナビゲートする可能性がある連接脚部を提供する。磁石システム４０８は、押出しチューブ内に磁石を配置し、押出しチューブに沿って移動する外部源から電磁場を導入することによって印刷ヘッドを前方に推進させる。磁石システムは、高速の適用分野では最良に動作する可能性がある。

[050] これらの推進手段は、一般に、パイプクローラと呼ばれ、既存のパイプを検査する、またはトンネルを穿孔するために使用される。これらのパイプクローラに検査用センサまたはドリルビットを備え付ける代わりに、連接ジョイントによって印刷ヘッドを取り付けて、印刷ヘッドを安定させ、それ自体がその内部を這い進むパイプを印刷するパイプクローラを生じることができる。

[051] 直線状の押出しチューブ５０１の例については、図５を参照されたい。押出しチューブを作成するために、印刷ヘッドは、調整した速度で１つまたは複数のノズルのそれぞれを通して硬化性マトリックス材料を押し出すことができる。押出しチューブは、ノズルと安定化／推進手段の間の点で、押出し後すぐに硬化する。印刷ヘッドの詰まりを防止するために、ノズルを離れたところで硬化が起こることが重要である。ホイール２０４は、印刷ヘッドを安定させるのに十分な力で、硬化した押出しチューブの内側を押圧する。チューブが押し出されるにつれて、ホイールはそれと同じ速度で回転して、印刷ヘッドを持ち上げる。この手順は、印刷ヘッドが押出しの速度と協調して移動し、押出しチューブの最も新しく硬化した部分を把持し続けるようにして、押出しチューブの全長にわたって続く。

[052] 押出しチューブを印刷する方法は、押出しチューブと同様のサイズおよび形状を有するアンカ上で開始する。図６は、押出しチューブを垂直方向および水平方向にアンカリングするスタータピース６０１を示している。この例示的なスタータピースは、１２個のアンカ６０２を有し、１０個の印刷ヘッド６０３が、これらのアンカのうちの１０個を利用している。印刷ヘッドの安定化／推進手段は、アンカ内に配置され、これらのアンカが、印刷ヘッドの外周部がアンカの縁部と一致するように、印刷ヘッドを適所に保持する。最初に押し出された硬化性マトリックス材料は、それが硬化するアンカの縁部に直接取り付けることができる。この印刷プロセスは、アンカが単に押出しチューブの延長部であるかのように続く。

[053] 図６のアンカは、最終製品に組み込まれることになるスタータピース６０１に取り付けることができる。アンカは、別の既存の押出しチューブの端部であることもある。いくつかの実施形態では、仮アンカが、押出しチューブの起点となる働きをすることができ、その後、押出しプロセスが完了した後で押出しチューブを手作業で切り離す。

[054] 本開示は、硬化性マトリックス材料を含む押出しチューブ、ならびに硬化性マトリックス材料および固体ストランド補強材料を含む複合材料の押出しチューブの作成を対象としている。硬化性マトリックス材料は、ベースステーションの貯蔵器に格納することができる。いくつかの実施形態では、硬化性マトリックス材料は、印刷ヘッドに直接取り付けられた貯蔵器に格納することができる。考えられる硬化性マトリックス材料は、例えば、紫外線フォトポリマーまたは熱可塑性樹脂を含み得るが、当業者なら、さらに他の硬化性マトリックス材料を使用することもできることを理解するであろう。

[055] 紫外線フォトポリマーは、紫外線で硬化するように独自に配合される。フォトポリマーは、例えば、アクリル樹脂、モノマー、オリゴマー、ビスマレイミド、および熱硬化性エポキシを含む。

[056] 熱可塑性樹脂は、押出しの前に加熱して溶融させる固体のプラスチックである。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリ乳酸（ＰＬＡ）、アクリロニトリルブタジエンスチレン（ＡＢＳ）、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン（ＰＥＥＫ）、ポリエーテルイミド（ＰＥＩ）、ポリエチレンテレフタレート（ＰＥＴ）、およびナイロンを含む。熱可塑性樹脂は、貯蔵器の代わりに材料のスプールを必要とし、印刷ヘッドの代替の実施形態は、押出しの前に材料を溶融させるための熱源を含むことがある。特定の実施形態では、熱可塑性樹脂を充填材と結合して、不均一複合材を形成することができる。考えられる充填材は、例えば、セラミック粉末、金属粉末、砂、ガラス粉末、および細断ファイバを含む。

[057] 代替の実施形態は、レーザ焼結プロセスを利用することがあり、この場合、硬化性マトリックス材料は、ノズルから噴霧される粉末である。粉末は、上記に挙げたフォトポリマーおよび熱可塑性樹脂の他に、金属、合金、セラミックも含む、広範囲の材料となる。

[058] 本開示の特定の実施形態は、少なくとも２種類の材料、すなわち固体のストランド材料、およびその周囲の液体の硬化性材料のマトリックスを利用する複合材経路を押し出す。これらの実施形態では、固体材料は、ベースステーション内にある、または印刷ヘッドに取り付けられた、スプールに格納される。固体ストランド材料の例は、綿、麻、黄麻、亜麻、カラムシ、ゴム、サイザルバガス、砕木、サーモメカニカルパルプ、晒クラフト、未晒クラフト、亜硫酸塩、シルクウール、ファー、スピドロイン、クリソタイル、アモサイト、クロシドライト、透角閃石、直閃石、陽起石、金属、金属合金、アラミド、炭素繊維、カーボンナノチューブファイバ、炭化ケイ素、ガラス繊維、石油化学材、またはポリマーを含む。当業者なら、任意の固体ストランド材料を使用することができ、任意の固体ストランド材料は、管状ストランド、メッシュ、または繊維トウを含み得ることを理解するであろう。

[059] 複合材は、フォトポリマーまたは熱可塑性樹脂と固体ストランドの任意の組合せとすることができる。例えば、１つの可能な複合材は、２インチごとに捻れた３ｋ炭素繊維トウの固体ストランドと組み合わせたモノマーを含む紫外線フォトポリマーである。フォトポリマーは、押出し中にカーボントウに付着するのに適当な粘性を有していなければならない。いくつかの適用分野では、いくつかの経路をフォトポリマーで印刷し、他の経路を熱可塑性樹脂で印刷することが望ましいこともある。上述の材料の任意の組合せが考えられる。

[060] 本開示のいくつかの実施形態では、複合材経路を印刷する速度は、毎分４５０インチであるが、適用分野に応じて、これより速い速度が望ましいことも、これより遅い速度が望ましいこともある。

[061] 複合材押出しチューブ５０１の例示的な一部分、およびその断面５０２については、図５を参照されたい。固体ストランド材料５０５は、経路内に完全に封入することができる。複合材経路は、完成製品に強度を与え、製造プロセス中に安定性を与えることができるので、望ましいことがある。

[062] 経路は、材料のいくつかの組合せで構成されることがある。例えば、一部の経路は、炭素繊維の固体ストランド材料と、硬化性マトリックス材料としてのフォトポリマー樹脂であることがある。この組合せは、各経路にも、また押出しチューブ全体にも、強度を与える。経路の組成の別の実施形態は、ガラス繊維に封入された導電性金属の固体ストランド材料を有することがある。この経路の組成では、導電性を有する押出しチューブを作成することができる。当業者なら、他の機能性経路も実装することができることを理解するであろう。

[063] 本開示は、螺旋、湾曲、および屈曲を含む幅広い様々な管状形状を作成することを可能にする。図７を参照されたい。

[064] 押出しプロセスは、螺旋経路７０１を作成するときにも同様に行われるが、さらに推進手段と印刷ヘッドとを協調して回転させることが追加される。推進にホイールシステムを使用するときには、ホイールシステムを印刷ヘッドに接続するシャフト２０３が、押出しプロセス全体を通じて継続的に回転することがある。螺旋状押出しチューブは、さらに高い強度を与えることができる。

[065] 複合材押出しチューブは、直線状経路および螺旋状経路を垂直方向に、またはその他の方向に印刷することを可能にするのに十分な強度がある。印刷ヘッドは、ホイールシステムを使用して、配向に関わりなく、すなわち縦向きでも、横向きでも、倒立していても、またはその他の任意の３次元の向きでも、重力に対向してチューブを安定させるのに十分な力で、チューブの内側を把持することができる。

[066] 押出しチューブは、弧を描くことも、曲がることもできる。簡単な例は、直角に曲がるチューブ７０２の印刷である。印刷ヘッドは、垂直に移動した後に９０度転回する。この転回中に、各ノズルは、様々な協調した速度で押出しを行って、この転回を実施する。例えば、左転回を行うときには、右側のノズルが左側のノズルより大きな速度で押出しを行う。押出しチューブの角度が方向を変えるとき、多方向ヒンジが調節を行って、印刷ヘッドがわずかに変化した方向に押出しを行う間、ホイールはチューブの直前の部分を把持することができるようにする。多方向ヒンジは、それに応じて調節を行って様々な角度を生み出し、Ｓ字カーブ７０３など複雑な押出し経路を生じることができる。

[067] 図８は、様々なノズル構成による異なる押出しチューブを示す図である。円形の他に、ノズルは、長方形８０１、八角形８０２、または正方形８０３を形成するように配列することもできる。任意の多角形ノズル配列が考えられる。

[068] いくつかの適用分野では、アクセスホールまたはメッシュを形成するために、押出しチューブの形成中に一部のノズルの押出しを停止すると有益であることがある。他のノズルで押出しを続けながら、個々のノズル、または隣接する複数のノズルのグループによる押出しを停止して再開すると、押出しチューブに穴が形成される。これらの穴は、チューブの内部へのアクセス部として働くことができる。様々なノズルを協調して停止および開始させることにより、構築に必要な材料が大幅に少ないメッシュチューブを形成することができる。

[069] 代替の実施形態では、印刷ヘッドは、移動することができ、かつ３６０度回転することができる、連接ノズルで構成されることがある。これにより、１つの印刷ヘッドで、様々な直径の、または非円形チューブの様々な断面領域のチューブを押し出すことが可能になる。ノズルが印刷ヘッドの中央アクセス部に近づく、またはそこから遠ざかるにつれて、チューブの直径が減少または増大することになる。

[070] さらに、ノズルは、印刷ヘッドの外周部に沿って横に移動することができる。この機能性は、ノズルの一部のみが押出しを行うときに最もよく用いることができる。印刷ヘッドのノズルの一部のみを利用した断面５０４の例については、図５を参照されたい。これにより、各経路の間に隙間がある半チューブが作成される。ノズルが横方向に交互になっている場合には、経路どうしが接続して、メッシュ状の半チューブ５０３を形成する。この実施形態では、より少ない材料でより高い強度を有する押出しチューブを印刷することが可能になることがある。

[071] 押出しチューブの機械的成長には多数の実用的な適用分野がある。押出しチューブの機械的成長は、従来の付加製造用位置決めシステムでは届かない領域または範囲で、比較的低い機器要件で、現場で印刷を行うことを可能にする。この方法および装置は、建築物、橋、インフラストラクチャ、ならびに水容器および無重力下の衛星の大規模な構築に特に有用である。いくつかの実用的な適用分野を以下に挙げるが、当業者なら、無数の他の適用分野を理解するであろう。

[072] 図９は、３本の長方形押出しチューブ９０２を含むトラスの正面図、およびこのトラスを形成するために３本のチューブがどのように接続されるかを示す詳細図９０１である。複数の押出しチューブを用いて、複雑な協調させた形状を構築することができる。これらの形状は、現場で構築して建築物に追加することもできるし、あるいは建築物自体の内部に埋め込むこともできる。

[073] 図１０Ａおよび図１０Ｂは、複数の押出しチューブから作成した船の艇体を示す図である。遠隔位置決めシステムがないので、大きなサイズの船殻が可能である。中空のチューブは、追加の浮力手段を船艇に与える。

[074] 図１１は、都市のインフラストラクチャの適用分野を示す図である。特定用途のサイズおよび形状の押出しチューブが、水管、下水管、ガス管、または配電管として機能することができる。

[075] 図１２Ａは、ベースステーションの代替の実施形態を示す図である。この例示的なベースステーションは、ベースステーションが所望の製品の必要に応じて移動可能にし得る可動性手段、すなわちキャタピラトラック１２０１を備える。さらに、図１２Ａは、取り付けられた２つの印刷ヘッド１２０２も示しているが、このベースステーションは、６個の印刷ヘッドを利用して、複数の押出しチューブの同時印刷を可能にすることができる。このベースステーションは、押出しチューブの起点となるアンカ１２０３も備えることがある。

[076] 図１２Ｂは、この代替の実施形態の可能な適用分野を示す図である。スタータピース１２０４は、６本の隣接した押出しチューブの起点となる６個のアンカを提供する。チューブが成長するにつれて、ベースステーションもチューブと共に移動して、比較的小型の機械で可能性としては無限の構築スペースを実現する。

[077] 特許請求の範囲は、特許請求の範囲で用いられる表現に基づいて広範に解釈すべきものであり、非排他的なものとして解釈される本明細書に記載する例に限定されることはない。さらに、開示する方法の工程は、工程の順序を変更し、および／または工程を挿入する、もしくは工程を省略するなど、任意の方法で修正することができる。したがって、開示する実施形態は、上述の例に限定されず、添付の特許請求の範囲の均等物の全範囲に照らして、添付の特許請求の範囲によって定義される。

Claims (18)

1. 管状製品の軸方向に少なくとも１つのノズルから管状製品を吐出する少なくとも１つのノズルを有するヘッドと、
   前記管状製品によって支持され、前記管状製品の吐出中に前記ヘッドを推進させるように構成された、推進システムと
   を含む、付加製造システム。
2. 前記管状製品が、
   硬化性マトリックス材料と、
   前記硬化性マトリックス材料内に少なくとも部分的に封入される固体ストランド材料と
   から付加製造される、請求項１に記載の付加製造システム。
3. 前記ヘッドが、前記管状製品が前記ヘッドから吐出されるときに前記管状製品内の前記硬化性マトリックス材料を硬化させるように構成された少なくとも１つの硬化デバイスを含む、請求項２に記載の付加製造システム。
4. 前記硬化性マトリックス材料が、ＵＶ硬化性液体樹脂であり、前記少なくとも１つの硬化デバイスが、少なくとも１つのＬＥＤを含む、
   または、
   前記硬化性マトリックス材料が、粉末状金属を含み、前記少なくとも１つの硬化デバイスが、前記粉末状金属を焼結するように構成されたエネルギー源を含む、
   請求項３に記載の付加製造システム。
5. 前記推進システムが、
   モータと、
   前記管状製品の壁面に押し付けられる少なくとも１つの把持デバイスと
   を含み、
   前記少なくとも１つの把持デバイスが、ホイール、トラック、脚部、ねじ、水圧式ピッグ、磁石、または水圧式インチワームのうちの少なくとも１つを含む、請求項１に記載の付加製造システム。
6. 前記推進システムが、前記管状製品の内側で支持されるように構成される、請求項１に記載の付加製造システム。
7. 前記ヘッドが、前記推進システムから、電力、制御通信、および材料のうちの少なくとも１つを受け取る、請求項１に記載の付加製造システム。
8. 前記ヘッドを前記推進システムに接続するシャフトをさらに含み、前記ヘッドが、前記シャフトの周りで前記推進システムに対して相対的に回転可能である、請求項１に記載の付加製造システム。
9. 前記ヘッドおよび前記推進システムのうちの少なくとも１つに接続されたベースステーションをさらに含み、前記ベースステーションが、電力、制御通信、および材料のうちの少なくとも１つを、前記ヘッドおよび前記推進システムのうちの前記少なくとも１つに供給するように構成され、
   前記ベースステーションが、可動である、請求項１に記載の付加製造システム。
10. 前記ヘッドが、前記ベースステーションから、電力、制御通信、および材料のうちの前記少なくとも１つを受け取るように構成された第１のヘッドであり、
    前記付加製造システムが、前記ベースステーションから、電力、制御通信、および材料のうちの前記少なくとも１つを受け取るように構成された第２のヘッドをさらに含む、請求項９に記載の付加製造システム。
11. 前記ベースステーションが、前記ヘッドの動作を制御するように構成された制御装置を含む、請求項９に記載の付加製造システム。
12. 管状製品を吐出するように構成された少なくとも１つのノズルを有するヘッドと、
    前記管状製品によって支持され、前記管状製品の吐出中に前記ヘッドを推進させるように構成された、推進システムと、
    前記ヘッドおよび前記推進システムのうちの少なくとも１つに接続されたベースステーションであって、電力、制御通信、および材料のうちの少なくとも１つを、前記ヘッドおよび前記推進システムのうちの前記少なくとも１つに供給するように構成された前記ベースステーションと、を含み、
    前記ベースステーションが、前記ヘッドの動作を制御するように構成された制御装置を含み、
    前記ヘッドが、外周部の周りに配列された複数のノズルを含み、
    前記制御装置が、前記管状製品を現在の軌跡からそらすように、前記複数のノズルのうちの少なくとも１つからの吐出を選択的に調節するように構成される、付加製造システム。
13. 前記ヘッドが、外周部の周りに配列された複数のノズルを含み、
    前記制御装置が、アクセス穴およびメッシュのうちの少なくとも１つが前記管状製品内で作製されるように、前記複数のノズルのうちの少なくとも１つからの吐出を選択的に抑制するように構成される、請求項１１に記載の付加製造システム。
14. 前記ヘッドの動作を監視するように構成された加速度計、ジャイロスコープ、温度計、および圧力センサのうちの少なくとも１つをさらに含み、前記制御装置が、前記監視した動作に基づいて前記ヘッドの動作を制御するように構成される、請求項１１に記載の付加製造システム。
15. 前記ヘッドが、外周部の周りに配列された複数のノズルを含み、
    前記複数のノズルのうちの少なくとも１つが、吐出中に前記ヘッドに対して相対的に移動し、前記管状製品の直径およびパターンのうちの少なくとも１つを調節するように構成される、請求項１に記載の付加製造システム。
16. 前記推進システムによって牽引される、前記ヘッドおよび前記推進システムのうちの前記少なくとも１つに、電力、制御通信、および材料のうちの少なくとも１つを供給するように構成された、少なくとも１つの回転モジュールをさらに含む、請求項１に記載の付加製造システム。
17. 新たな管状構造の開始中に前記推進システムを支持するように構成されたアンカをさらに含む、請求項１に記載の付加製造システム。
18. 管状製品の軸方向に少なくとも１つのノズルから管状製品を吐出するように構成された少なくとも１つのノズルを有するヘッドと、
    前記管状製品の壁面と係合し、吐出中に前記ヘッドを推進させるように構成された、少なくとも１つの把持デバイスと、
    前記少なくとも１つの把持デバイスの反対側で前記ヘッドに接続されたベースステーションであって、電力、制御通信、および材料のうちの少なくとも１つを、前記ヘッドに供給するように構成された前記ベースステーションと
    を含む、付加製造システム。