本発明のアルコキシド化合物は、上記一般式(I)で表されるものであり、CVD法等の気化工程を有する薄膜製造方法のプレカーサとして好適なものであり、熱安定性が高いことから特にALD法に用いられるプレカーサとして好適なものである。
本発明の上記一般式(I)において、R1〜R3は各々独立に水素、炭素原子数1〜12の炭化水素基又は上記一般式(X−1)〜(X−8)で表される基を表す。
上記R1〜R3で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基としては、例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、シクロペンタジエニル等が使用できる。
上記アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル等が挙げられる。
上記アルケニルとしては、例えば、ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル等が挙げられる。
上記シクロアルキルとしては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル等が挙げられる。
上記アリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−ターシャリーブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル等が挙げられる。
上記シクロペンタジエニルとしては、例えば、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、プロピルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、ブチルシクロペンタジエニル、第2ブチルシクロペンタジエニル、イソブチルシクロペンタジエニル、第3ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル等が挙げられる。
発明の上記一般式(I)において、R4は炭素原子数1〜12の炭化水素基又は上記一般式(X−1)〜(X−8)で表される基を表す。
上記のR4で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基の具体例としては、上述のR1〜R3で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基として例示した基と同じ例を挙げることができる。
上記一般式(X−1)〜(X−8)において、RX1〜RX12は各々独立に水素又は炭素原子数1〜12の炭化水素基を表し、A1〜A3は炭素原子数1〜6のアルカンジイル基を表す。
上記RX1〜RX12で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基の具体例としては、R1〜R3で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基として例示した基と同じ例を挙げることができる。
上記A1〜A3で表される炭素原子数1〜6のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。
上記一般式(X−1)で表される基としては、例えば、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、エチルメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
上記一般式(X−2)で表される基としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、第2ブチルアミノ、第3ブチルアミノ、イソブチルアミノ等が挙げられる。
上記一般式(X−3)で表される基としては、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジ第2ブチルアミノ、ジ第3ブチルアミノ、エチルメチルアミノ、プロピルメチルアミノ、イソプロピルメチルアミノ等が挙げられる。
上記一般式(X−4)で表される基を与える化合物としては、エチレンジアミノ、ヘキサメチレンジアミノ、N,N−ジメチルエチレンジアミノ等が挙げられる。
上記一般式(X−5)で表される基としては、例えば、ジ(トリメチルシリル)アミノ、ジ(トリエチルシリル)アミノ等が挙げられる。
上記一般式(X−6)で表される基としては、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル等が挙げられる。
上記一般式(X−7)で表される基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第2ブトキシ、イソブトキシ、第3ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、第3ペントキシ等が挙げられる。
上記一般式(X−8)で表される基としては、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソプロピル、ヒドロキシブチル等が挙げられる。
上記一般式(I)において、R1がメチル基であり、R2がメチル基又はエチル基であり、R4がメチル基である場合、R3は水素、炭素原子数4〜12の炭化水素基又は上記一般式(X−1)〜(X−8)で表される基を表す。
上記炭素原子数4〜12の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数4〜12のアルキル、炭素原子数4〜12のアルケニル、炭素原子数6〜12のシクロアルキル、炭素原子数6〜12のアリール等が使用できる。
上記炭素原子数4〜12のアルキルとしては、例えば、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル等が挙げられる。
上記炭素原子数4〜12のアルケニルとしては、例えば、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル等が挙げられる。
上記炭素原子数6〜12のシクロアルキルとしては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル等が挙げられる。
上記炭素原子数6〜12のアリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−ターシャリーブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル等が挙げられる。
上記一般式(I)において、R1、R2、R3及びR4は、化合物を気化させる工程を有する薄膜の製造方法に用いられる場合は、蒸気圧が大きく、熱分解温度が高いものが好ましい。具体的には、R1及びR2は各々独立に水素、炭素原子数1〜12の炭化水素基又は(X−5)で表される基である場合は蒸気圧が高いことから好ましく、なかでも、R1及びR2のうち少なくとも1つが炭素原子数1〜5のアルキル、ジ(トリメチルシリル)アミノ又はジ(トリエチルシリル)アミノである場合は蒸気圧が特に高く好ましく、R1及びR2のうち少なくとも1つが炭素原子数1〜5のアルキル、ジ(トリメチルシリル)アミノ又はジ(トリエチルシリル)アミノであり且つR3及びR4のうち少なくとも1つが炭素原子数1〜5のアルキル、ジ(トリメチルシリル)アミノ又はジ(トリエチルシリル)アミノである場合は蒸気圧が特に高く最も好ましい。また、R4が炭素原子数1〜12の炭化水素基、(X−3)で表される基又は(X−5)で表される基である場合は熱安定性が高いことから好ましく、なかでも、R4がアルケニル基、アルキル、ジ(トリメチルシリル)アミノ又はジ(トリエチルシリル)アミノである場合は特に熱安定性が高いことから好ましい。また、気化工程を伴わないMOD法による薄膜の製造方法の場合は、R1、R2、R3及びR4は、使用される溶媒に対する溶解性、薄膜形成反応等によって任意に選択することができる。
本発明の上記一般式(I)において、Lは水素、ハロゲン、水酸基、アミノ基、アジ基、ホスフィド基、ニトリル基、カルボニル基、炭素原子数1〜12の炭化水素基又は上記一般式(L−1)〜(L−13)で表される基を表す。上記一般式(L−1)〜(L−13)におけるRL1〜RL31は各々独立に水素又は炭素原子数1〜12の炭化水素基を表し、A4〜A7は炭素原子数1〜6のアルカンジイル基を表す。上記一般式(L−1)〜(L−13)におけるRL1〜RL31が炭素原子数1〜12の炭化水素基である場合、炭化水素基中の水素原子はハロゲン原子又はアミノ基によって置換されていてもよい。
上記RL1〜RL31で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基の具体例としては、R1〜R3で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基として例示した基と同じ例を挙げることができる。
上記A4〜A7で表される炭素原子数1〜6のアルカンジイル基の具体例としては、上述のA1〜A3で表される炭素原子数1〜6のアルカンジイル基として例示した基と同じ例を挙げることができる。
上記一般式(L−1)で表される基としては、例えば、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、エチルメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
上記一般式(L−2)で表される基としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、第2ブチルアミノ、第3ブチルアミノ、イソブチルアミノ等が挙げられる。
上記一般式(L−3)で表される基としては、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジ第2ブチルアミノ、ジ第3ブチルアミノ、エチルメチルアミノ、プロピルメチルアミノ、イソプロピルメチルアミノ等が挙げられる。
上記一般式(L−4)で表される基を与える化合物としては、エチレンジアミノ、ヘキサメチレンジアミノ、N,N−ジメチルエチレンジアミノ等が挙げられる。
上記一般式(L−5)で表される基としては、例えば、ジ(トリメチルシリル)アミノ、ジ(トリエチルシリル)アミノ等が挙げられる。
上記一般式(L−6)で表される基としては、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル等が挙げられる。
上記一般式(L−7)で表される基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第2ブトキシ、イソブトキシ、第3ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、第3ペントキシ等が挙げられる。
上記一般式(L−8)で表される基としては、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソプロピル、ヒドロキシブチル等が挙げられる。
上記一般式(L−9)で表される基としては、例えば、ジメチルアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、ジメチルアミノプロポキシ、エチルメチルアミノプロポキシ及びジエチルアミノプロポキシ等が挙げられる。
上記一般式(L−10)で表される基としては、例えば、下記化学式No.(L−10−1)〜(L−10−5)で表される基が挙げられる。なお、下記化学式No.(L−10−1)〜(L−10−5)において「Me」はメチルを表し、「Et」はエチルを表し、「iPr」はイソプロピルを表し、「tBu」は第3ブチルを表す。
上記一般式(L−10)で表される基を与える有機化合物としては、アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、2−メチルヘプタン−3,5−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、1,1,1−トリフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,3−ジパーフルオロヘキシルプロパン−1,3−ジオン、1,1,5,5−テトラメチル−1−メトキシヘキサン−2,4−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−(2−メトキシエトキシ)ヘプタン−3,5−ジオン、1,1,1−トリフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,3−ジパーフルオロヘキシルプロパン−1,3−ジオン、1,1,5,5−テトラメチル−1−メトキシヘキサン−2,4−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−(2−メトキシエトキシ)ヘプタン−3,5−ジオン等が挙げられる。
上記一般式(L−11)で表される基としては、例えば、下記化学式No.(L−11−1)〜(L−11−3)で表される基が挙げられる。なお、下記化学式No.(L−11−1)〜(L−11−3)において「Me」はメチルを表し、「iPr」はイソプロピルを表し、「tBu」は第3ブチルを表す。
上記一般式(L−11)で表される基を与える有機化合物としては、例えば、N,N’−ジイソプロピルアセトアミジナート、N,N’−ジ−t−ブチルアセトアミジナート、N,N’−ジイソプロピル−2−t−ブチルアミジナート等が挙げられる。
上記一般式(L−12)で表される基としては、例えば、下記化学式No.(L−12−1)〜(L−12−8)で表される基が挙げられる。なお、下記化学式No.(L−12−1)〜(L−12−8)において「Me」はメチルを表し、「iPr」はイソプロピルを表し、「tBu」は第3ブチルを表す。
上記一般式(L−12)で表される基を与える有機化合物としては、例えば、アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、2−メチルヘプタン−3,5−ジオン、2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオン、1,1,1−トリフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,1,1−トリフルオロ−5,5−ジメチルヘキサン−2,4−ジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロペンタン−2,4−ジオン、1,3−ジパーフルオロヘキシルプロパン−1,3−ジオン、1,1,5,5−テトラメチル−1−メトキシヘキサン−2,4−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシヘプタン−3,5−ジオン、2,2,6,6−テトラメチル−1−(2−メトキシエトキシ)ヘプタン−3,5−ジオン等に代表されるジケトン化合物と、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、第2ブチルアミン、第3ブチルアミン、イソブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、プロピルメチルアミン、イソプロピルメチルアミン、エチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミンに代表される有機アミン化合物との反応物が挙げられる。
上記一般式(L−13)で表される基としては、例えば、下記化学式No.(L−13−1)〜(L−13−8)で表される基が挙げられる。なお、下記化学式No.(L−13−1)〜(L−13−8)において「Me」はメチルを表し、「iPr」はイソプロピルを表し、「tBu」は第3ブチルを表す。
上記一般式(L−13)で表される基を与える有機化合物としては、例えば、N−イソプロピル−4−(イソプロピルイミノ)ペント−2−エン−2−アミン、N−イソプロピル−4−(イソプロピルイミノ)−3−メチルペント−2−エン−2−アミン、N−(tert−ブチル)−4−(tert−ブチルイミノ)ペント−2−エン−2−アミン、N−(tert−ブチル)−4−(tert−ブチルイミノ)−3−メチルペント−2−エン−2−アミン、N−イソプロピル−5−(イソプロピルイミノ)−2,6−ジメチルヘプト−3−エン−3−アミン、N−イソプロピル−5−(イソプロピルイミノ)−2,4,6−トリメチルヘプト−3−エン−3−アミン、N−(tert−ブチル)−5−(tert−ブチルイミノ)−2,2,6,6−テトラメチルヘプト−3−エン−3−アミン、N−(tert−ブチル)−5−(tert−ブチルイミノ)−2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプト−3−エン−3−アミン等が挙げられる。
一般式(I)において、mが1以上である場合、Lがシクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル及びペンタメチルシクロペンタジエニルに代表されるシクロペンタジエニル基である場合や、(L−11)で表される基である場合は、熱安定性が高く、さらに蒸気圧が高いことから特に好ましい。また、本発明の上記一般式(I)においてmが2以上である場合、Lは同じであっても、異なっていてもよい。
上記一般式(I)において、Mは金属原子又はケイ素原子を表す。該金属原子としては、特に限定されるものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムが挙げられる。なかでも、Mが銅、鉄、ニッケル、コバルト、マンガンである場合は、熱安定性が特に高いことから特に好ましい。
本発明の上記一般式(I)において、nは1以上の整数を表し、mは0以上の整数を表し、n+mは金属原子又はケイ素原子の価数を表す。
上記一般式(I)で表されるアルコキシド化合物は光学活性を有する場合があるが、本発明のアルコキシド化合物は特にR体、S体により区別されるものではなく、そのどちらでもよく、R体とS体との任意の割合の混合物でもよい。ラセミ体は、製造コストが安価である。
配位子中の末端ドナー基が金属原子又はケイ素原子に配位して環構造を形成した場合を下記一般式(I−A)に表す。本発明のアルコキシド化合物は、上記一般式(I)で代表して表しているが、下記一般式(I−A)と区別されるものではなく、両方を含む概念である。
(式中、R1〜R3は各々独立に水素、炭素原子数1〜12の炭化水素基又は下記一般式(X−1)〜(X−8)で表される基を表す。R4は炭素原子数1〜12の炭化水素基又は下記一般式(X−1)〜(X−8)で表される基を表す。ただし、R1がメチル基であり、R2がメチル基又はエチル基であり、R4がメチル基である場合、R3は水素、炭素原子数4〜12の炭化水素基又は下記一般式(X−1)〜(X−8)で表される基を表す。Lは水素、ハロゲン、水酸基、アミノ基、アジ基、ホスフィド基、ニトリル基、カルボニル基、炭素原子数1〜12の炭化水素基又は下記一般式(L−1)〜(L−13)で表される基を表す。Mは金属原子又はケイ素原子を表し、nは1以上の整数を表し、mは0以上の整数を表し、n+mは金属原子又はケイ素原子の価数を表す。)
(式中、RX1〜RX12は各々独立に水素又は炭素原子数1〜12の炭化水素基を表し、A1〜A3は炭素原子数1〜6のアルカンジイル基を表す。)
(式中、RL1〜RL31は各々独立に水素又は炭素原子数1〜12の炭化水素基を表し、A4〜A7は炭素原子数1〜6のアルカンジイル基を表す。RL1〜RL31が炭素原子数1〜12の炭化水素基である場合、炭化水素基中の水素原子はハロゲン原子又はアミノ基によって置換されていてもよい。)
一般式(I)で表されるアルコキシド化合物の好ましい具体例としては、例えば、Mがコバルトの場合には下記化学式No.1〜No.300で表される化合物が挙げられる。なお、下記化学式No.1〜No.300において「Me」はメチルを表し、「Et」はエチルを表し、「iPr」はイソプロピルを表し、「Cp」はシクロペンタジエニルを表し、「MeCp」はメチルシクロペンタジエニルを表し、「sCp」はペンタメチルシクロペンタジエニルを表し、「AMD」はN,N’−ジイソプロピルアセトアミジナートを表す。
本発明のアルコキシド化合物は、その製造方法により特に制限されることはなく、周知の反応を応用して製造される。一般式(I)におけるmが0であるアルコキシド化合物の製造方法としては、該当するアルコールを用いた周知一般のアルコキシド化合物の合成方法を応用することができ、例えばコバルトアルコキシド化合物を製造する場合には、例えば、コバルトのハロゲン化物、硝酸塩等の無機塩又はその水和物と、該当するアルコール化合物とを、ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラート、アンモニア、アミン等の塩基の存在下で反応させる方法、コバルトのハロゲン化物、硝酸塩等の無機塩又はその水和物と、該当するアルコール化合物のナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等のアルカリ金属アルコキシドとを反応させる方法、コバルトのメトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等の低分子アルコールのアルコキシド化合物と、該当するアルコール化合物とを交換反応させる方法、コバルトのハロゲン化物、硝酸塩等の無機塩と反応性中間体を与える誘導体とを反応させて、反応性中間体を得てから、これと該当するアルコール化合物とを反応させる方法が挙げられる。反応性中間体としては、ビス(ジアルキルアミノ)コバルト、ビス(ビス(トリメチルシリル)アミノ)コバルト、コバルトのアミド化合物などが挙げられる。また、一般式(I)におけるmが1以上であるアルコキシド化合物の製造方法としては、一般式(I)におけるmが0であるアルコキシド化合物と所望の配位子を与える有機化合物又はそのアルカリ金属塩とを反応させる方法が挙げられる。
本発明の薄膜形成用原料とは、上記で説明した本発明のアルコキシド化合物を薄膜のプレカーサとしたものであり、その形態は、該薄膜形成用原料が適用される製造プロセスによって異なる。たとえば、1種類の金属又はケイ素のみを含む薄膜を製造する場合、本発明の薄膜形成用原料は、上記アルコキシド化合物以外の金属化合物及び半金属化合物を非含有である。一方、2種類以上の金属及び/又は半金属を含む薄膜を製造する場合、本発明の薄膜形成用原料は、上記アルコキシド化合物に加えて、所望の金属を含む化合物及び/又は半金属を含む化合物(以下、他のプレカーサともいう)を含有する。本発明の薄膜形成用原料は、後述するように、更に、有機溶剤及び/又は求核性試薬を含有してもよい。本発明の薄膜形成用原料は、上記説明のとおり、プレカーサであるアルコキシド化合物の物性がCVD法、ALD法に好適であるので、特に化学気相成長用原料(以下、CVD用原料ということもある)として有用である。
本発明の薄膜形成用原料が化学気相成長用原料である場合、その形態は使用されるCVD法の輸送供給方法等の手法により適宜選択されるものである。
上記の輸送供給方法としては、CVD用原料を該原料が貯蔵される容器(以下、単に原料容器と記載することもある)中で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気とし、必要に応じて用いられるアルゴン、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと共に、該蒸気を基体が設置された成膜チャンバー内(以下、堆積反応部と記載することもある)へと導入する気体輸送法、CVD用原料を液体又は溶液の状態で気化室まで輸送し、気化室で加熱及び/又は減圧することにより気化させて蒸気とし、該蒸気を成膜チャンバー内へと導入する液体輸送法がある。気体輸送法の場合は、上記一般式(I)で表されるアルコキシド化合物そのものをCVD用原料とすることができる。液体輸送法の場合は、上記一般式(I)で表されるアルコキシド化合物そのもの又は該化合物を有機溶剤に溶かした溶液をCVD用原料とすることができる。これらのCVD用原料は更に他のプレカーサや求核性試薬等を含んでいてもよい。
また、多成分系のCVD法においては、CVD用原料を各成分独立で気化、供給する方法(以下、シングルソース法と記載することもある)と、多成分原料を予め所望の組成で混合した混合原料を気化、供給する方法(以下、カクテルソース法と記載することもある)がある。カクテルソース法の場合、本発明のアルコキシド化合物と他のプレカーサとの混合物若しくは該混合物を有機溶剤に溶かした混合溶液をCVD用原料とすることができる。この混合物や混合溶液は更に求核性試薬等を含んでいてもよい。尚、プレカーサとして本発明のアルコキシド化合物のみを用い、R体とS体とを併用する場合には、R体を含むCVD用原料とS体を含むCVD用原料とを別個に気化させてもよく、或いはR体及びS体の混合物を含むCVD用原料を気化させてもよい。
上記の有機溶剤としては、特に制限を受けることはなく周知一般の有機溶剤を用いることができる。該有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等の酢酸エステル類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;1−シアノプロパン、1−シアノブタン、1−シアノヘキサン、シアノシクロヘキサン、シアノベンゼン、1,3−ジシアノプロパン、1,4−ジシアノブタン、1,6−ジシアノヘキサン、1,4−ジシアノシクロヘキサン、1,4−ジシアノベンゼン等のシアノ基を有する炭化水素類;ピリジン、ルチジン等が挙げられ、これらは、溶質の溶解性、使用温度と沸点、引火点の関係等により、単独又は二種類以上の混合溶媒として用いられる。これらの有機溶剤を使用する場合、プレカーサを有機溶剤に溶かした溶液であるCVD用原料中におけるプレカーサ全体の量が0.01〜2.0モル/リットル、特に0.05〜1.0モル/リットルとなるようにするのが好ましい。プレカーサ全体の量とは、本発明の薄膜形成用原料が、本発明のアルコキシド化合物以外の金属化合物及び半金属化合物を非含有である場合、本発明のアルコキシド化合物の量であり、本発明の薄膜形成用原料が、該アルコキシド化合物に加えて他の金属を含む化合物及び/又は半金属を含む化合物を含有する場合、本発明のアルコキシド化合物及び他のプレカーサの合計量である。
また、多成分系のCVD法の場合において、本発明のアルコキシド化合物と共に用いられる他のプレカーサとしては、特に制限を受けず、CVD用原料に用いられている周知一般のプレカーサを用いることができる。
上記の他のプレカーサとしては、水素化物、水酸化物、ハロゲン化物、アジ化物、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、アルキニル、アミノ、ジアルキルアミノアルキル、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ジアミン、ジ(シリル−アルキル)アミノ、ジ(アルキル−シリル)アミノ、ジシリルアミノ、アルコキシ、アルコキシアルキル、ヒドラジド、ホスフィド、ニトリル、ジアルキルアミノアルコキシ、アルコキシアルキルジアルキルアミノ、シロキシ、ジケトナート、シクロペンタジエニル、シリル、ピラゾレート、グアニジネート、ホスホグアニジネート、アミジナート、ホスホアミジナート、ケトイミナート、ジケチミナート、カルボニル及びホスホアミジナートを配位子として有する化合物からなる群から選択される一種類又は二種類以上のケイ素や金属の化合物が挙げられる。
プレカーサの金属種としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウム、スカンジウム、イットリウム、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムが挙げられる。
上記の他のプレカーサは、当該技術分野において公知のものであり、その製造方法も公知である。製造方法の一例を挙げれば、例えば、有機配位子としてアルコール化合物を用いた場合には、先に述べた金属の無機塩又はその水和物と、該アルコール化合物のアルカリ金属アルコキシドとを反応させることによって、プレカーサを製造することができる。ここで、金属の無機塩又はその水和物としては、金属のハロゲン化物、硝酸塩等を挙げることができ、アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムアルコキシド、リチウムアルコキシド、カリウムアルコキシド等を挙げることができる。
上記の他のプレカーサは、シングルソース法の場合は、本発明のアルコキシド化合物と、熱及び/又は酸化分解の挙動が類似している化合物が好ましく、カクテルソース法の場合は、熱及び/又は酸化分解の挙動が類似していることに加え、混合時に化学反応等による変質を起こさないものが好ましい。
上記の他のプレカーサのうち、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを含むプレカーサとしては、下記式(II−1)〜(II−5)で表される化合物が挙げられる。
(式中、M1は、チタニウム、ジルコニウム又はハフニウムを表し、Ra及びRbは各々独立に、ハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rcは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Rdは炭素数2〜18の分岐してもよいアルキレン基を表し、Re及びRfは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rg、Rh、Rk及びRjは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、pは0〜4の整数を表し、qは0又は2を表し、rは0〜3の整数を表し、sは0〜4の整数を表し、tは1〜4の整数を表す。)
上記式(II−1)〜(II−5)において、Ra及びRbで表される、ハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第2アミル、第3アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、3−ヘプチル、イソヘプチル、第3ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第3オクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル、パーフルオロヘキシル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、2−ブトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、1−メトキシ−1,1−ジメチルメチル、2−メトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−エトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−イソプロポキシ−1,1−ジメチルエチル、2−ブトキシ−1,1−ジメチルエチル、2−(2−メトキシエトキシ)−1,1−ジメチルエチル等が挙げられる。また、Rcで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第2アミル、第3アミル、ヘキシル、1−エチルペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第3ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第3オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。また、Rdで表される炭素数2〜18の分岐してもよいアルキレン基とは、グリコールにより与えられる基であり、該グリコールとしては、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−ブタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1−メチル−2,4−ペンタンジオール等が挙げられる。また、Re及びRfで表される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル等が挙げられ、Rg、Rh、Rj及びRkで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第2ブチル、第3ブチル、イソブチル等が挙げられる。
具体的にはチタニウムを含むプレカーサとして、テトラキス(エトキシ)チタニウム、テトラキス(2−プロポキシ)チタニウム、テトラキス(ブトキシ)チタニウム、テトラキス(第2ブトキシ)チタニウム、テトラキス(イソブトキシ)チタニウム、テトラキス(第3ブトキシ)チタニウム、テトラキス(第3アミル)チタニウム、テトラキス(1−メトキシ−2−メチル−2−プロポキシ)チタニウム等のテトラキスアルコキシチタニウム類;テトラキス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム等のテトラキスβ−ジケトナトチタニウム類;ビス(メトキシ)ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、ビス(第3ブトキシ)ビス(ペンタン−2,4−ジオナト)チタニウム、ビス(メトキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(2−プロポキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第3ブトキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第3アミロキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(メトキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(エトキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(2−プロポキシ)ビス(2,6,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第3ブトキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、ビス(第3アミロキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム等のビス(アルコキシ)ビス(βジケトナト)チタニウム類;(2−メチルペンタンジオキシ)ビス(2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム、(2−メチルペンタンジオキシ)ビス(2,6−ジメチルヘプタン−3,5−ジオナト)チタニウム等のグリコキシビス(βジケトナト)チタニウム類;(メチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、(シクロペンタジエニル)トリス(ジメチルアミノ)チタニウム、(メチルシクロペンタジエニル)トリス(エチルメチルアミノ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(エチルメチルアミノ)チタニウム、(シクロペンタジエニル)トリス(エチルメチルアミノ)チタニウム、(メチルシクロペンタジエニル)トリス(ジエチルアミノ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(ジエチルアミノ)チタニウム、(シクロペンタジエニル)トリス(ジエチルアミノ)チタニウム等の(シクロペンタジエニル)トリス(ジアルキルアミノ)チタニウム類;(シクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(メチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(エチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(プロピルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(イソプロピルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(ブチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(イソブチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、第3ブチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリス(メトキシ)チタニウム等の(シクロペンタジエニル)トリス(アルコキシ)チタニウム類等が挙げられ、ジルコニウムを含むプレカーサ又はハフニウムを含むプレカーサとしては、上記チタニウムを含むプレカーサとして例示した化合物におけるチタニウムを、ジルコニウム又はハフニウムに置き換えた化合物が挙げられる。
希土類元素を含むプレカーサとしては、下記式(III−1)〜(III〜3)で表される化合物が挙げられる。
(式中、M2は、希土類原子を表し、Ra及びRbは各々独立に、ハロゲン原子で置換されてもよく、鎖中に酸素原子を含んでもよい炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rcは炭素数1〜8のアルキル基を表し、Re及びRfは各々独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rg及びRjは各々独立に、炭素数1〜4のアルキル基を表し、p’は0〜3の整数を表し、r’は0〜2の整数を表す。)
上記の希土類元素を含むプレカーサにおいて、M2で表される希土類原子としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムが挙げられ、Ra、Rb、Rc、Re、Rf、Rg及びRjで表される基としては、前記のチタニウムプレカーサで例示した基が挙げられる。
また、本発明の薄膜形成用原料には、必要に応じて、本発明のアルコキシド化合物及び他のプレカーサの安定性を付与するため、求核性試薬を含有してもよい。該求核性試薬としては、グライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のエチレングリコールエーテル類、18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、24−クラウン−8、ジシクロヘキシル−24−クラウン−8、ジベンゾ−24−クラウン−8等のクラウンエーテル類、エチレンジアミン、N,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1,4,7,7−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,1,4,7,10,10−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、トリエトキシトリエチレンアミン等のポリアミン類、サイクラム、サイクレン等の環状ポリアミン類、ピリジン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、オキサゾール、チアゾール、オキサチオラン等の複素環化合物類、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−2−メトキシエチル等のβ−ケトエステル類又はアセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、ジピバロイルメタン等のβ−ジケトン類が挙げられ、これら求核性試薬の使用量は、プレカーサ全体の量1モルに対して0.1モル〜10モルの範囲が好ましく、より好ましくは1〜4モルである。
本発明の薄膜形成用原料には、これを構成する成分以外の不純物金属元素分、不純物塩素などの不純物ハロゲン分、及び不純物有機分が極力含まれないようにする。不純物金属元素分は、元素毎では100ppb以下が好ましく、10ppb以下がより好ましく、総量では、1ppm以下が好ましく、100ppb以下がより好ましい。特に、LSIのゲート絶縁膜、ゲート膜、バリア層として用いる場合は、得られる薄膜の電気的特性に影響のあるアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の含有量を少なくすることが必要である。不純物ハロゲン分は、100ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、1ppm以下が最も好ましい。不純物有機分は、総量で500ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましく、10ppm以下が最も好ましい。また、水分は、化学気相成長用原料中でのパーティクル発生や、薄膜形成中におけるパーティクル発生の原因となるので、金属化合物、有機溶剤及び求核性試薬については、それぞれの水分の低減のために、使用の際にあらかじめできる限り水分を取り除いた方がよい。金属化合物、有機溶剤及び求核性試薬それぞれの水分量は、10ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましい。
また、本発明の薄膜形成用原料は、形成される薄膜のパーティクル汚染を低減又は防止するために、パーティクルが極力含まれないようにするのが好ましい。具体的には、液相での光散乱式液中粒子検出器によるパーティクル測定において、0.3μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に1000個以下であることがより好ましく、0.2μmより大きい粒子の数が液相1ml中に100個以下であることが最も好ましい。
本発明の薄膜形成用原料を用いて薄膜を製造する本発明の薄膜の製造方法としては、本発明の薄膜形成用原料を気化させた蒸気、及び必要に応じて用いられる反応性ガスを、基体が設置された成膜チャンバー内に導入し、次いで、プレカーサを基体上で分解及び/又は化学反応させて金属を含有する薄膜を基体表面に成長、堆積させるCVD法によるものである。原料の輸送供給方法、堆積方法、製造条件、製造装置等については、特に制限を受けるものではなく、周知一般の条件及び方法を用いることができる。
上記の必要に応じて用いられる反応性ガスとしては、例えば、酸化性のものとしては酸素、オゾン、二酸化窒素、一酸化窒素、水蒸気、過酸化水素、ギ酸、酢酸、無水酢酸等が挙げられ、還元性のものとしては水素が挙げられ、また、窒化物を製造するものとしては、モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、アルキレンジアミン等の有機アミン化合物、ヒドラジン、アンモニア等が挙げられ、これらは1種類又は2種類以上使用することができる。
また、上記の輸送供給方法としては、前述した気体輸送法、液体輸送法、シングルソース法、カクテルソース法等が挙げられる。
また、上記の堆積方法としては、原料ガス又は原料ガスと反応性ガスを熱のみにより反応させ薄膜を堆積させる熱CVD、熱とプラズマを使用するプラズマCVD、熱と光を使用する光CVD、熱、光及びプラズマを使用する光プラズマCVD、CVDの堆積反応を素過程に分け、分子レベルで段階的に堆積を行うALDが挙げられる。
上記基体の材質としては、例えばシリコン;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化タンタル、酸化チタン、窒化チタン、酸化ルテニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ランタン等のセラミックス;ガラス;金属ルテニウム等の金属が挙げられる。基体の形状としては、板状、球状、繊維状、鱗片状が挙げられ、基体表面は、平面であってもよく、トレンチ構造等の三次元構造となっていてもよい。
また、上記の製造条件としては、反応温度(基体温度)、反応圧力、堆積速度等が挙げられる。反応温度については、本発明のアルコキシド化合物が充分に反応する温度である100℃以上が好ましく、150℃〜400℃がより好ましい。また、反応圧力は、熱CVD又は光CVDの場合、大気圧〜10Paが好ましく、プラズマを使用する場合、2000Pa〜10Paが好ましい。
また、堆積速度は、原料の供給条件(気化温度、気化圧力)、反応温度、反応圧力によりコントロールすることができる。堆積速度は、大きいと得られる薄膜の特性が悪化する場合があり、小さいと生産性に問題を生じる場合があるので、0.01〜100nm/分が好ましく、1〜50nm/分がより好ましい。また、ALD法の場合は、所望の膜厚が得られるようにサイクルの回数でコントロールされる。
上記の製造条件として更に、薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする際の温度や圧力が挙げられる。薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする工程は、原料容器内で行ってもよく、気化室内で行ってもよい。いずれの場合においても、本発明の薄膜形成用原料は0〜150℃で蒸発させることが好ましい。また、原料容器内又は気化室内で薄膜形成用原料を気化させて蒸気とする場合に原料容器内の圧力及び気化室内の圧力はいずれも1〜10000Paであることが好ましい。
本発明の薄膜の製造方法は、ALD法を採用して、上記の輸送供給方法により、薄膜形成用原料を気化させて蒸気とし、該蒸気を成膜チャンバー内へ導入する原料導入工程のほか、該蒸気中の上記アルコキシド化合物により上記基体の表面に前駆体薄膜を形成する前駆体薄膜成膜工程、未反応のアルコキシド化合物ガスを排気する排気工程、及び、該前駆体薄膜を反応性ガスと化学反応させて、該基体の表面に上記金属を含有する薄膜を形成する金属含有薄膜形成工程を有していてもよい。
以下では、上記の各工程について、金属酸化物薄膜を形成する場合を例に詳しく説明する。金属酸化物薄膜をALD法により形成する場合は、まず、前記で説明した原料導入工程を行う。薄膜形成用原料を蒸気とする際の好ましい温度や圧力は上記で説明したものと同様である。次に、堆積反応部に導入したアルコキシド化合物により、基体表面に前駆体薄膜を成膜させる(前駆体薄膜成膜工程)。このときに、基体を加熱するか、堆積反応部を加熱して、熱を加えてもよい。この工程で成膜される前駆体薄膜は、金属酸化物薄膜、又は、アルコキシド化合物の一部が分解及び/又は反応して生成した薄膜であり、目的の金属酸化物薄膜とは異なる組成を有する。本工程が行われる際の基体温度は、室温〜500℃が好ましく、150〜350℃がより好ましい。本工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1〜10000Paが好ましく、10〜1000Paがより好ましい。
次に、堆積反応部から、未反応のアルコキシド化合物ガスや副生したガスを排気する(排気工程)。未反応のアルコキシド化合物ガスや副生したガスは、堆積反応部から完全に排気されるのが理想的であるが、必ずしも完全に排気される必要はない。排気方法としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスにより系内をパージする方法、系内を減圧することで排気する方法、これらを組み合わせた方法などが挙げられる。減圧する場合の減圧度は、0.01〜300Paが好ましく、0.01〜100Paがより好ましい。
次に、堆積反応部に酸化性ガスを導入し、該酸化性ガスの作用又は酸化性ガス及び熱の作用により、先の前駆体薄膜成膜工程で得た前駆体薄膜から金属酸化物薄膜を形成する(金属酸化物含有薄膜形成工程)。本工程において熱を作用させる場合の温度は、室温〜500℃が好ましく、150〜350℃がより好ましい。本工程が行われる際の系(成膜チャンバー内)の圧力は1〜10000Paが好ましく、10〜1000Paがより好ましい。本発明のアルコキシド化合物は、酸化性ガスとの反応性が良好であり、金属酸化物薄膜を得ることができる。
本発明の薄膜の製造方法において、上記のようにALD法を採用した場合、上記の原料導入工程、前駆体薄膜成膜工程、排気工程、及び、金属酸化物含有薄膜形成工程からなる一連の操作による薄膜堆積を1サイクルとし、このサイクルを必要な膜厚の薄膜が得られるまで複数回繰り返してもよい。この場合、1サイクル行った後、上記排気工程と同様にして、堆積反応部から未反応のアルコキシド化合物ガス及び反応性ガス(金属酸化物薄膜を形成する場合は酸化性ガス)、更に副成したガスを排気した後、次の1サイクルを行うことが好ましい。
また、金属酸化物薄膜のALD法による形成においては、プラズマ、光、電圧などのエネルギーを印加してもよく、触媒を用いてもよい。該エネルギーを印加する時期及び触媒を用いる時期は、特には限定されず、例えば、原料導入工程におけるアルコキシド化合物ガス導入時、前駆体薄膜成膜工程又は金属酸化物含有薄膜形成工程における加温時、排気工程における系内の排気時、金属酸化物含有薄膜形成工程における酸化性ガス導入時でもよく、上記の各工程の間でもよい。
また、本発明の薄膜の製造方法においては、薄膜堆積の後に、より良好な電気特性を得るために不活性雰囲気下、酸化性雰囲気下又は還元性雰囲気下でアニール処理を行ってもよく、段差埋め込みが必要な場合には、リフロー工程を設けてもよい。この場合の温度は、200〜1000℃であり、250〜500℃が好ましい。
本発明の薄膜形成用原料を用いて薄膜を製造する装置は、周知な化学気相成長法用装置を用いることができる。具体的な装置の例としては図1のようなプレカーサをバブリング供給で行うことのできる装置や、図2のように気化室を有する装置が挙げられる。また、図3及び図4のように反応性ガスに対してプラズマ処理を行うことのできる装置が挙げられる。図1〜図4のような枚葉式装置に限らず、バッチ炉を用いた多数枚同時処理可能な装置を用いることもできる。
本発明の薄膜形成用原料を用いて製造される薄膜は、他のプレカーサ、反応性ガス及び製造条件を適宜選択することにより、メタル、酸化物セラミックス、窒化物セラミックス、ガラス等の所望の種類の薄膜とすることができる。該薄膜は種々の電気特性及び光学特性等を示すことが知られており、種々の用途に応用されている。例えば、銅及び銅含有薄膜は、高い導電性、高エレクトロマイグレーション耐性、高融点という特性から、LSIの配線材料として応用されている。また、ニッケル及びニッケル含有薄膜は、主に抵抗膜、バリア膜等の電子部品の部材や、磁性膜等の記録メディア用の部材や、電極等の薄膜太陽電池用部材等に用いられている。また、コバルト及びコバルト含有薄膜は、電極膜、抵抗膜、接着膜、磁気テープ、超硬工具部材等に用いられている。
本発明のアルコール化合物は、下記一般式(II)で表されるものであり、CVD法等の気化工程を有する薄膜製造方法のプレカーサとして好適な化合物に用いられる配位子として特に好適な化合物である。
(式中、R5〜R7は各々独立に水素、炭素原子数1〜12の炭化水素基又は下記一般式(Y−1)〜(Y−8)で表される基を表す。R8は炭素原子数1〜12の炭化水素基又は下記一般式(Y−1)〜(Y−8)で表される基を表す。ただし、R5がメチル基であり、R6がメチル基又はエチル基であり、R8がメチル基である場合、R7は水素、炭素原子数4〜12の炭化水素基、下記一般式(Y−1)〜(Y−8)で表される基を表す。)
(式中、RY1〜RY12は各々独立に水素又は炭素原子数1〜12の炭化水素基を表し、A8〜A10は炭素原子数1〜6のアルカンジイル基を表す。)
本発明の上記一般式(II)において、R5〜R7は各々独立に水素、炭素原子数1〜12の炭化水素基又は下記一般式(Y−1)〜(Y−8)で表される基を表す。
上記R5〜R7で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基としては、例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、シクロペンタジエニル等が使用できる。
上記アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル等が挙げられる。
上記アルケニルとしては、例えば、ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル等が挙げられる。
上記シクロアルキルとしては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル等が挙げられる。
上記アリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−ターシャリーブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル等が挙げられる。
上記シクロペンタジエニルとしては、例えば、シクロペンタジエニル、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、プロピルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、ブチルシクロペンタジエニル、第2ブチルシクロペンタジエニル、イソブチルシクロペンタジエニル、第3ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル等が挙げられる。
本発明の上記一般式(II)において、R8は炭素原子数1〜12の炭化水素基又は上記一般式(Y−1)〜(Y−8)で表される基を表す。
上記のR8で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基の具体例としては、上述のR5〜R7で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基として例示した基と同じ例を挙げることができる。
本発明の上記一般式(II)において、R5がメチル基であり、R6がメチル基又はエチル基であり、R8がメチル基である場合、R7は水素、炭素原子数4〜12の炭化水素基又は上記一般式(Y−1)〜(Y−8)で表される基を表す。
上記炭素原子数4〜12の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数4〜12のアルキル、炭素原子数4〜12のアルケニル、炭素原子数6〜12のシクロアルキル、炭素原子数6〜12のアリール等が使用できる。
上記炭素原子数4〜12のアルキルとしては、例えば、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル等が挙げられる。
上記炭素原子数4〜12のアルケニルとしては、例えば、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル等が挙げられる。
上記炭素原子数6〜12のシクロアルキルとしては、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、メチルシクロペンテニル、メチルシクロヘキセニル、メチルシクロヘプテニル等が挙げられる。
上記炭素原子数6〜12のアリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−ターシャリーブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル等が挙げられる。
上記RY1〜RY12で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基の具体例としては、R5〜R7で表される炭素原子数1〜12の炭化水素基として例示した基と同じ例を挙げることができる。
上記A8〜A10で表される炭素原子数1〜6のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。
上記一般式(Y−1)で表される基としては、例えば、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、エチルメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
上記一般式(Y−2)で表される基としては、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、第2ブチルアミノ、第3ブチルアミノ、イソブチルアミノ等が挙げられる。
上記一般式(Y−3)で表される基としては、例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジ第2ブチルアミノ、ジ第3ブチルアミノ、エチルメチルアミノ、プロピルメチルアミノ、イソプロピルメチルアミノ等が挙げられる。
上記一般式(Y−4)で表される基を与える化合物としては、エチレンジアミノ、ヘキサメチレンジアミノ、N,N−ジメチルエチレンジアミノ等が挙げられる。
上記一般式(Y−5)で表される基としては、例えば、ジ(トリメチルシリル)アミノ、ジ(トリエチルシリル)アミノ等が挙げられる。
上記一般式(Y−6)で表される基としては、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル等が挙げられる。
上記一般式(Y−7)で表される基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第2ブトキシ、イソブトキシ、第3ブトキシ、ペントキシ、イソペントキシ、第3ペントキシ等が挙げられる。
上記一般式(Y−8)で表される基としては、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシイソプロピル、ヒドロキシブチル等が挙げられる。
本発明のアルコール化合物は、光学異性体を有する場合もあるが、その光学異性により区別されるものではない。
一般式(II)で表されるアルコール化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記化学式No.301〜No.588で表される化合物が挙げられる。なお、下記化学式中の「Me」はメチルを表し、「Et」はエチルを表し、「iPr」はイソプロピルを表す。
本発明のアルコール化合物は、その製造方法により特に限定されることはなく、周知の反応を応用することで製造することができる。
たとえば、下記反応式(1)のようにマグネシウムを触媒として、アルキル化合物とアルコキシカルボン酸アルキル化合物とをグリニャール反応させ、さらにアルキルアミンを反応させたものを適切な溶媒で抽出し、脱水処理することで得る方法や、下記反応式(2)のように、マグネシウムを触媒として、アルキル化合物とアルコキシケトンアルキル化合物とをグリニャール反応させ、さらにアルキルアミンを反応させたものを適切な溶媒で抽出し、脱水処理することで得る方法や、下記反応式(3)のように、マグネシウムを触媒として、アルキル化合物とジアルキルジケトン化合物とをグリニャール反応させ、さらにアルキルアミンを反応させたものを適切な溶媒で抽出し、脱水処理することで得る方法が挙げられる。
(上記反応式(1)及び反応式(2)において、Rzはアルキル基を表す。)
本発明のアルコール化合物は、薄膜形成用原料等に用いられる金属化合物の配位子として用いることができる。また、本発明のアルコール化合物は、溶媒、香料、農薬、医薬、各種ポリマー等の合成原料等の用途にも用いることができる。
以下、実施例及び評価例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
〔実施例1 化合物No.343の合成〕
反応フラスコにマグネシウム8.69g及びテトラヒドロフラン253gを加え、室温にて撹拌した。この溶液にブロモエタン40.45gを1時間で滴下し、2時間攪拌した。その後、この溶液を氷冷し、2,2−ジメトキシプロピオン酸メチル25.04gを30分で滴下し、グリニャール反応を行った。その後室温に戻して15時間反応を行った。反応液を氷冷して、23%塩酸溶液119gを滴下して3時間撹拌した。有機層のみ分液・回収した後、これに40%メチルアミン水溶液68.73gを室温下滴下し、24時間反応させた。この時の反応液のpH10〜11であった。トルエン119gを加え、有機層を抽出・分液し、硫酸マグネシウムを加えて脱水・ろ過を行った。減圧下オイルバス90℃にて脱溶媒を行い、溶媒留去後、蒸留を行うことで無色透明液体の目的物(3−エチル−2−メチルイミノ−3−ペンタノール)を得た。収量は17.32g、収率は65%であった。
(分析値)
(1)GC−MS m/z: 143(M+)
(2)1NMR(溶媒:重ベンゼン)(ケミカルシフト:多重度:H数)
(5.65:s:1)(2.78:s:3)(1.63〜1.72:m:2)(1.35〜1.44:m:2)(1.21:s:3)(0.79〜0.83:t:6)
(3)元素分析 C:66.9質量%、H:12.3質量%、O:11.5質量%、N:9.9質量%(理論値;C:67.1質量%、H:11.9質量%、O:11.1質量%、N:9.8質量%)
〔実施例2 化合物No.349の合成〕
反応フラスコにマグネシウム8.62g及びテトラヒドロフラン244gを加え、室温にて撹拌した。この溶液にブロモエタン41.4gを1時間で滴下し、3時間攪拌した。その後、この溶液を氷冷し、2,2−ジメトキシプロピオン酸メチル25.03gを30分で滴下し、グリニャール反応を行った。その後室温に戻して20時間反応を行った。反応液を氷冷して、22%塩酸溶液103gを滴下して2時間撹拌した。有機層のみ分液・回収した後、これに33%エチルアミン水溶液107.64gを室温下滴下し、48時間反応させた。この時の反応液のpH10〜11であった。トルエン104gを加え、有機層を抽出・分液し、硫酸マグネシウムを加えて脱水・ろ過を行った。減圧下オイルバス80℃にて脱溶媒を行い、溶媒留去後、蒸留を行うことで無色透明液体の目的物(2−エチルイミノ−3−エチル−3−ペンタノール)を得た。収量は9.30g、収率は33%であった。
(分析値)
(1)GC−MS m/z:157(M+)
(3)元素分析 C:69.4質量%、H:12.5質量%、O:10.5質量%、N:8.2質量%(理論値;C:68.8質量%、H:12.1質量%、O:10.2質量%、N:8.9質量%)
〔実施例3 化合物No.43の合成〕
200ml4つ口フラスコに塩化コバルト(II)7.01g及びテトラヒドロフラン25.5gを仕込み、室温下で撹拌した。その中に、実施例1で合成したアルコール(3−エチル−2−メチルイミノ−3−ペンタノール)より調製して得たナトリウムアルコキシド17.3gをテトラヒドロフラン20.7gで希釈した溶液を氷冷下で滴下した。滴下終了後、室温下で15時間撹拌し、ろ過を行った。得られたろ液からテトラヒドロフランを除去し、残渣を46Pa、100℃の条件下で昇華して、目的物を収量8.22g、収率37.8%で得た。
(分析値)
(1)常圧TG−DTA
質量50%減少温度:214℃(Ar流量:100ml/分、昇温10℃/分)
(2)減圧TG−DTA
質量50%減少温度:135℃(10Torr、Ar流量:50ml/分、昇温10℃/分)
(3)元素分析 Co:17.5質量%、C:55.7質量%、H:9.0質量%、O:8.9質量%、N:8.2質量%(理論値;Co:17.2質量%、C:56.0質量%、H:9.3質量%、O:9.3質量%、N:8.1質量%)
〔実施例4 化合物No.49の合成〕
100ml3つ口フラスコに塩化コバルト(II)3.65g及びテトラヒドロフラン13.7gを仕込み、室温下で撹拌した。その中に、実施例2で合成したアルコール(2−エチルイミノ−3−エチル−3−ペンタノール)より調製して得たナトリウムアルコキシド9.86gをテトラヒドロフラン19.4gで希釈した溶液を氷冷下で滴下した。滴下終了後、室温下で15時間撹拌し、ろ過を行った。得られたろ液からテトラヒドロフランを除去し、残渣を58Pa、バス温度150℃、塔頂温度108℃の条件下で蒸留して、目的物を収量7.05g、収率68.4%で得た。
(分析値)
(1)常圧TG−DTA
質量50%減少温度:215℃(Ar流量:100ml/分、昇温10℃/分)
(2)減圧TG−DTA
質量50%減少温度:137℃(10Torr、Ar流量:50ml/分、昇温10℃/分)
(3)元素分析 Co:16.1質量%、C:58.7質量%、H:9.2質量%、O:8.4質量%、N:7.1質量%(理論値;Co:15.9質量%、C:58.2%、H:9.7%、O:8.6%、N:7.5%)
〔自然発火性評価〕
化合物No.43及び49並びに以下に示す比較化合物1〜3について、大気中で放置することで自然発火性の有無を確認した。結果を表1に示す。
〔熱安定性評価〕
化合物No.43及び49並びに以下に示す比較化合物1〜3について、DSC測定装置を用いて発熱ピークが観測された温度を熱分解発生温度として測定することで、各化合物の熱安定性を確認した。結果を表2に示す。薄膜形成用原料の熱安定性が高い場合は、より高温で成膜することができる。より高温で成膜することができるということは、得られる薄膜中の炭素残渣などの不純物少なくすることができる。よって、薄膜形成用原料の熱安定性は得られる薄膜の品質に影響するものである。
表2の結果より、化合物No.43及び49と比較化合物1〜3とを比べると、化合物No.43及び49は比較化合物1〜3よりも熱安定性が高いということがわかった。また、化合物No.43及び49は、常圧TG−DTA測定結果より、質量50%減少温度がそれぞれ214℃及び215℃であることから、CVD用原料として充分な揮発性を示しているといえる。
〔実施例5 ALD法による金属コバルト薄膜の製造〕
化合物No.43を化学気相成長用原料とし、図2に示す装置を用いて以下の条件のALD法により、シリコンウエハ上に金属コバルト薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は4〜7nmであり、膜組成は金属コバルト(XPS分析によるCo2pピークで確認)であり、炭素含有量は検出下限である0.1atom%よりも少なかった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、0.08〜0.14nmであった。
(条件)
反応温度(基板温度);300〜350℃、反応性ガス;水素ガス
(工程)
下記(1)〜(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、50サイクル繰り返した。
(1)気化室温度:140℃、気化室圧力100Paの条件で気化させた化学気相成長用原料の蒸気を導入し、系圧100Paで30秒間堆積させる。
(2)5秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
(3)反応性ガスを導入し、系圧力100Paで30秒間反応させる。
(4)5秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
〔実施例6 ALD法による金属コバルト薄膜の製造〕
化合物No.49を化学気相成長用原料とし、図1に示す装置を用いて以下の条件のALD法により、シリコンウエハ上に金属コバルト薄膜を製造した。得られた薄膜について、X線反射率法による膜厚測定、X線回折法及びX線光電子分光法による薄膜構造及び薄膜組成の確認を行ったところ、膜厚は2〜5nmであり、膜組成は金属コバルト(XPS分析によるCo2pピークで確認)であり、炭素含有量は検出下限である0.1atom%よりも少なかった。1サイクル当たりに得られる膜厚は、0.04〜0.1nmであった。
(条件)
反応温度(基板温度);300〜350℃、反応性ガス;水素ガス
(工程)
下記(1)〜(4)からなる一連の工程を1サイクルとして、50サイクル繰り返した。
(1)原料容器加熱温度:100℃、原料容器内圧力100Paの条件で気化させた化学気相成長用原料の蒸気を導入し、系圧100Paで30秒間堆積させる。
(2)5秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。
(3)反応性ガスを導入し、系圧力100Paで30秒間反応させる。
(4)5秒間のアルゴンパージにより、未反応原料を除去する。