本発明は、抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物の提供方法および抗CD20抗体を含み、かつ1%〜10%の範囲の残留水分含量を有する抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物に関する。更に、本発明は、本明細書に記載される方法によって得られる再構成された配合物、前記抗体配合物の医薬品としての使用、前記凍結乾燥された配合物の医薬品の製造のための使用および患者の処置方法に関する。
背景
治療活性を有するタンパク質の薬物としての規制承認手続においては、例えば安定性、投与および濃度に関する多くの基準が重要である。例えば、製造、貯蔵および輸送の間に、治療用タンパク質、例えば抗体の化学的および/または物理的な分解が生ずることがあり、それは、その医薬効力の損失をもたらし、かつ副作用、例えば不所望な免疫応答の危険性を高めることがある。
更に、多くの治療活性を有するタンパク質は、それらの所望な治療効果を達成するために高用量で投与する必要がある。治療用タンパク質の高濃度配合物は、患者に対する該治療用タンパク質のより適切な投与様式を可能にしうるため好ましいこともある。
特に、高濃度の、例えば少なくとも100mg/mLの高濃度の治療用タンパク質は、治療用量の投与に必要な容量が濃度の増加に伴い低下するため望ましいことがある。より少ない容量は、それらが侵襲性の低い経路(例えば静脈内注入の代わりに皮下注射)を介して注射されうるという利点をもたらし、それは患者にとってより簡便であり、点滴反応等の副作用についての潜在的に関連するリスクがより低くなる。高濃度配合物によって提供される更なる利点は、それらが該治療用タンパク質を患者に投与する頻度を下げることができることである。
しかしながら、治療活性を有するタンパク質、例えばモノクローナル抗体の高濃縮液体配合物の提供は挑戦的なことである。それというのも、該液体配合物の粘度と、同様にタンパク質の凝集物形成傾向は、より高い濃度では劇的に高まりうるからである。凝集物は、該タンパク質の分解産物を含有することがあり、不所望な副作用、例えば不所望な免疫応答の惹起に導くことがある。凝集物の形成等の安定性上の問題を避けるために、タンパク質または抗体配合物は凍結乾燥することができる。
しかしながら、様々な方法によって製造される凍結乾燥された抗体配合物は、貯蔵後に様々な安定性を示す。従って、安定な凍結乾燥された抗体を提供するための種々の方法および配合物が記載されてきている。
WO03/009817は、IgG抗体の凍結乾燥された配合物を記載しており、前記配合物は、ヒスチジン緩衝液(5〜25mM)中に50mg/mLより多くの抗体を含み、更にポリソルベートおよびスクロースを含む。
US2011/0236383は、凍結保護剤、例えばスクロースまたはトレハロースを使用することによって安定な凍結乾燥されたタンパク質、特に抗体配合物が提供できることを開示している。
WO2008/157409は、抗体の安定な凍結乾燥された配合物、特に抗α4インテグリン抗体であるナタリズマブの安定な凍結乾燥された配合物であって、水性配合物の凍結乾燥によって製造された配合物を記載している。凍結乾燥に供された水性配合物は、緩衝液ならびにポリソルベートおよびスクロース中に40mg/mL〜50mg/mLの免疫グロブリンを含む。
凍結乾燥後に再構成されうる高濃度の抗体組成物は、WO2011/017070に開示されている。前記文献に記載される組成物は、70〜250mg/mLの抗体、スクロース、ヒスチジン、アルギニンおよびマンニトールを含む。
WO2010/017296は、凍結乾燥を崩壊温度、すなわちその温度でまたはその温度を上回ると凍結乾燥されたケークが無損傷構造を失うか、または本来の構造を変える温度を上回って行う凍結乾燥法を記載している。
しかしながら、安定な凍結乾燥された抗体配合物および該配合物の提供方法が依然として必要とされている。
発明の概要
本発明の一態様は、抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物の提供方法であって、
I)抗CD20抗体を含む溶液を提供するステップ、
II)前記抗体溶液を凍結させるステップ、
III)前記抗体溶液を、−10℃〜30℃のシェルフ温度で少なくとも1回の乾燥ステップに供することで、凍結乾燥された配合物を得るステップ、
を含み、前記凍結乾燥された配合物において、得られた残留水分含量が、1%〜10%の範囲であり、場合により1%〜5%の範囲である前記方法に関する。
本明細書に記載される方法の一実施形態においては、前記抗体溶液は、1回の乾燥ステップに供される。
本明細書に記載される方法のもう一つの実施形態は、更に、前記抗体溶液を、第二の乾燥ステップに供することを含み、その際、第二の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、第一の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度よりも低い。
本明細書に記載される方法の一実施形態によれば、前記第二の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、前記第一の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度よりも、少なくとも2℃低く、場合により少なくとも3℃低い。
本明細書に記載される抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物の提供のための方法の更なる一実施形態においては、第一の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、8℃であり、および/または第二の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、5℃である。
本明細書に記載される方法の一実施形態においては、ステップ(I)で提供される溶液は、緩衝剤、場合によりヒスチジンまたはリン酸塩を含む緩衝剤を含む。
本明細書に記載される方法のもう一つの実施形態においては、ステップ(I)で提供される溶液は、浸透圧調整剤、場合によりスクロースを含む。
本明細書に記載される方法の更なる一実施形態においては、ステップ(I)で提供される溶液は、界面活性剤、場合により非イオン性界面活性剤を含む。
本明細書に記載される方法の一実施形態においては、ステップ(I)で提供される溶液は、5.0〜7.0の範囲のpH値、場合により5.5±0.3のpH値を有する。
本明細書に記載される方法の更なる一実施形態においては、ステップ(I)で提供される溶液は、
a)少なくとも40mg/gの抗CD20抗体と、
b)5〜15mMのヒスチジンと、
c)100〜150mMのスクロースと、
d)0.05〜0.5mg/gのポリソルベート20と、
を含み、かつステップ(I)で提供される溶液は、5.5±0.3のpH値を有する。
本明細書に記載される方法のもう一つの実施形態においては、前記抗CD20抗体は、ベルツズマブまたはそのフラグメントである。
本発明の更なる一態様は、抗CD20抗体の液体配合物を提供する方法であって、本明細書に記載される方法により凍結乾燥された配合物を提供し、引き続き、該凍結乾燥された配合物を再構成するステップIV)を実施することを含む前記方法に関する。
抗CD20抗体の液体配合物を提供する方法の一実施形態においては、ステップIV)で得られた液体配合物は、
a)少なくとも80mg/mLの抗CD20抗体、
b)10〜40mMの緩衝剤、場合によりヒスチジンを含む緩衝剤、
c)200〜400mMの浸透圧調整剤、場合によりスクロース、
d)0.2〜0.5mg/mLの界面活性剤、場合によりポリソルベート20
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する。
本発明の更なる一態様は、本明細書に記載される液体配合物を提供する方法によって得られる再構成された配合物に関する。
本発明のもう一つの態様は、抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物であって、抗CD20抗体、場合によりベルツズマブまたはそのフラグメントを含み、かつ1%〜10%の範囲の、場合により1%〜5%の範囲の残留水分含量を有する配合物に関する。
一実施形態においては、本明細書に開示される凍結乾燥された配合物は、更に、緩衝剤、場合によりヒスチジンまたはリン酸塩を含む緩衝剤を含む。
もう一つの実施形態においては、本明細書に開示される凍結乾燥された配合物は、更に、浸透圧調整剤、場合によりスクロースを含む。
更なる一実施形態においては、本明細書に開示される凍結乾燥された配合物は、更に、界面活性剤、場合により非イオン性界面活性剤を含む。
もう一つの実施形態は、本明細書に開示される凍結乾燥された配合物であって、前記凍結乾燥された配合物が、本明細書に記載される抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物の提供方法により製造される配合物に関する。
本発明の更なる一態様は、本明細書に記載される凍結乾燥された配合物の、医薬品の製造のための使用に関する。
医薬品の製造のための凍結乾燥された配合物の使用の一実施形態においては、前記医薬品は、非経口投与用の医薬品、場合により皮下投与用の医薬品である。
本発明の更なる一態様は、医薬品としての使用のための、本明細書に記載される凍結乾燥または再構成された配合物に関する。
一実施形態においては、前記医薬品は、非経口投与用の医薬品、特に皮下投与用の医薬品である。
もう一つの実施形態においては、前記医薬品は、癌または非悪性疾患の処置に使用するための医薬品である。
更なる一実施形態においては、前記医薬品は、バーキットリンパ腫、エプスタイン・バールウイルス感染症、B細胞性白血病、慢性リンパ球性B細胞性白血病、急性リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病、多発性骨髄腫、B細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、免疫芽細胞性大細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、形質細胞腫瘍、前駆リンパ芽球性白血病リンパ腫、腫瘍ウイルス感染症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、免疫増殖疾患、前リンパ球性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、免疫芽細胞性大細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ増殖性疾患、パラプロテイン血症、前駆リンパ芽球性白血病リンパ腫、突発性血小板減少症、血小板減少性紫斑病、突発性血小板減少性紫斑病、血液凝固障害、血小板異常、血液蛋白障害、血液学的疾患、出血性疾患、止血障害、リンパ系疾患、紫斑病、血小板減少症、血栓性細小血管障害、止血障害、血管障害、リウマチ様関節炎、リウマチ病、結合組織病、天疱瘡、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、ヘルペスウイルス感染症、および/またはDNAウイルス感染症からなる群から選択される疾患の処置において使用される医薬品である。
もう一つの実施形態においては、前記医薬品は、自己免疫疾患、例えばリウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデスおよび/または天疱瘡、場合により全身性エリテマトーデスの処置において使用するための医薬品である。
本発明の更なる一態様は、患者の処置方法であって、
(i)本明細書に記載される方法により抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物を提供すること、
(ii)前記凍結乾燥された配合物を再構成すること、および
(iii)前記再構成された配合物を患者に投与すること、
を含む前記方法に関する。
本明細書に記載される患者の処置方法の前記実施形態の一つにおいては、前記患者は、癌または非悪性疾患、場合により自己免疫疾患を有する。
本明細書に記載される患者の処置方法の前記実施形態の一つにおいては、前記自己免疫疾患は、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデスおよび/または天疱瘡、場合により全身性エリテマトーデスである。
図1は、例1で記載される方法により製造された試料であって、二次乾燥ステップが0℃で行われた1つの試料のDSC分析を示している。上方の線と下方の線は、加熱曲線と冷却曲線を示している。交点は、ガラス転移点の中点を示している。
図2は、例1で記載される方法により製造された試料であって、二次乾燥ステップが20℃で行われた1つの試料のDSC分析を示している。上方の線と下方の線は、加熱曲線と冷却曲線を示している。交点は、ガラス転移点の中点を示している。
図3は、例1で記載される方法により製造された試料であって、二次乾燥ステップが40℃で行われた1つの試料のDSC分析を示している。上方の線と下方の線は、加熱曲線と冷却曲線を示している。交点は、ガラス転移点の中点を示している。
図4は、例3による凍結乾燥プロセスで得られたベルツズマブ凍結乾燥物の外側中間部の形態のREM像(300倍)を示す。
図5は、例3による凍結乾燥プロセスで得られたベルツズマブ凍結乾燥物の内側中間部の形態のREM像(300倍)を示す。図4および図5から導き出せるように、前記組織および細孔構造は、凍結乾燥物の内側部と外側部でそれほど大きく異ならない。
本発明の詳細な説明
用語「含む」または「含んでいる」が本明細書で使用される場合に、それは、他の構成要素またはステップを排除するものではない。本発明の目的のためには、用語「からなる」は、用語「を含んでいる」の任意の一実施形態であると思われる。この後に、群が、少なくともある特定数の実施形態を含む場合に、これは、任意にこれらの実施形態のみからなる群を開示しているものとも理解されるべきである。
不定冠詞または定冠詞が単数名詞を指す場合に使用されるとき、例えば「a」もしくは「an」、「the」は、特段の記載がない限り、その名詞の複数形を含む。その反対に、名詞の複数形が使用されるときに、それは単数形も指す。例えば、複数の抗CD20抗体が挙げられているときに、これは単数の抗CD20抗体とも理解されるべきである。
更に、明細書および特許請求の範囲における、第一の、第二の、第三の、または(a)、(b)、(c)、または(I)、(II)、(III)、(i)、(ii)、(iii)等の用語は、類似の構成要素の間の区別をするために使用されるものであって、必ずしも配列的順序または時系列的順序を記載するために使用されるものではない。こうして使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、かつ本明細書に記載される発明の実施形態は、本明細書に記載または説明されるのとは別の順序で作業することができると理解されるべきである。しかしながら、本発明の特定の一実施形態においては、方法ステップ(I)、(II)、(III)および(IV)は、場合により本明細書に定義される任意の中間ステップを含めて、時系列的な順序で行われる。もう一つの特定の実施形態においては処理ステップ(i)、(ii)および(iii)の方法は、場合により本明細書に定義される任意の中間ステップを含めて、時系列的な順序で行われる。
本発明の文脈においては、示される任意の数値は、一般に、当業者が該当する特徴の技術的効果を依然として確保すると解する精度の幅と関連している。本明細書で使用される場合に、示された数値からのずれは、±10%の範囲、好ましくは±5%の範囲にある。上述の±10%の、好ましくは±5%の示された数値幅からのずれは、数値に関しては、本明細書で使用される用語「約」および「ほぼ」によっても示される。
本発明の文脈においては、用語「抗体」は、全長抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、遺伝子操作された抗体(例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、組み換え抗体)および多重特異抗体ならびに全長抗体の特徴的な特性を保っているかかる抗体のフラグメントに関する。一実施形態においては、抗体はヒト化抗体である。「ヒト化抗体」は、ヒトで産生される抗体に対する高められた類似性が与えられるように、例えばマウスCDRをヒト抗体のフレームワーク領域に移植することによって改変された抗体である。
用語「抗体フラグメント」は、全長抗体と同じ抗原と結合する全長抗体の一部に関する。特に、その用語は、抗体の医薬活性フラグメントに関する。全長抗体のこの部分は、少なくとも抗原結合部または少なくともその可変領域であってよい。抗体と同様に作用する遺伝子操作されたタンパク質も、本明細書で使用される抗体フラグメントの意味に含まれる。かかる遺伝子操作された抗体は、scFv、すなわち、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とのペプチドリンカーによって連結された融合タンパク質であってよい。更なる例示的な抗体フラグメントは、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvである。本明細書では、抗体への全ての引用は、そのフラグメントへの引用、例えばベルツズマブへの引用を含み、また前記CD20抗体に特異的に結合するベルツズマブ抗体のフラグメントへの引用も含むと解される。
本明細書で定義される抗体CD20抗体またはそのフラグメントは、CD20抗原(CD20、Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球性表面抗原B1、Leu−16またはBp35としても知られる)に特異的に結合する、任意の抗体またはそのフラグメントである。これは、販売承認を有する抗CD20抗体、現在臨床試験で調べられている抗CD20抗体、および/またはCD20抗原に特異的に結合する任意の他の化合物を含む。本明細書で使用されるCD20抗原は、ヒトCD20の任意の変異体、アイソフォームおよび種ホモログ(species homolog)に関する。本明細書で使用される抗CD20抗体は、CD20結合の様式および生物学的活性の点で異なる、タイプI抗CD20抗体ならびにタイプII抗CD20抗体に関する。抗CD20抗体の例は、ベルツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、Y90イブリツモマブ・チウキセタン、I131トシツマブ、TRU−015、AME−133v、ヒト化PRO131921、GA101、1F5 IgG2a、HI47 IgG3、2C6 IgG1、2H7 IgG1、AT80 IgG1、11B8 IgG1、ヒト化B−Ly1抗体IgG1およびアフツズマブ(HuMab<CD20>)である。特に、前記抗CD20抗体は、ベルツズマブまたはそのフラグメントである。
ベルツズマブは、それぞれ451アミノ酸残基および213アミノ酸残基の成熟重鎖および軽鎖から構成されるクラスIgG1/κのモノクローナルヒト化抗CD20抗体である。ベルツズマブの重鎖と軽鎖のアミノ酸配列を以下に示す(それぞれ配列番号1および配列番号2):
重鎖(配列番号1)
軽鎖(配列番号2)
本発明による抗CD20抗体は、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体であってよい。モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の製造方法は当該技術分野で公知であり、例えばハイブリドーマ技術および組み換えDNA法を含む。本発明の一実施形態において、前記抗CD20抗体は、モノクローナル抗体である。
本発明によれば、用語「IgG抗体」は、抗体のIgGクラス(アイソタイプ)に含まれ、かつガンマ型(γ)重鎖を有する治療に有用な抗体またはそのフラグメントに関する。これは、当該技術分野において公知のIgGクラスの任意のサブタイプ、すなわちIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4の抗体を含む。一実施形態においては、抗体は、IgG1抗体である。本明細書では、IgG抗体は、CD20抗原に特異的に結合する抗体を含み、その逆も同じであると解される。本発明の一つの例示的なIgG抗体は、ベルツズマブである。
「特異的に結合する」または「特異的に結合している」は、本明細書に定義されるCD20抗原に対して、10-9モル/l以下の、特に10-10モル/l以下の結合親和性を有する抗体に関する。抗体の抗原に対する結合親和性の測定方法は当該技術分野で公知であり、かつ例えば表面プラズモン共鳴の使用を含む。
本明細書で使用される「界面活性剤」は、製剤学的に認容性の表面活性剤に関する。界面活性剤は、治療活性を有するタンパク質(例えば本明細書に定義される抗体)を、2つの液体間のまたは液体と固体間の界面張力等のストレスから保護でき、および/または凝集傾向または粒状物の形成を減らしうる。製剤学的に認容性の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベートおよびポロキサマーを含むが、それらに制限されるものではない。本発明において有用な例示的な界面活性剤は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(例えばポロキサマー188)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリソルベート(例えばポリソルベート20、ポリソルベート80)およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含む。また、界面活性剤の組合せも、例えば上述の界面活性剤の組み合わせも使用できると解される。
本発明の文脈において、「製剤学的に認容性の」は、医薬組成物において、該組成物が投与される患者に何らかの不所望な作用(例えば不利益な副作用)を引き起こすことなく使用されうる任意の化合物に関する。
本明細書で使用される「浸透圧調整剤(Tonicity modifying agent)」は、等張性配合物を得るのに適した任意の製剤学的に認容性の剤を指す。等張性の配合物は、比較される配合物(例えば全血、血清または生理食塩溶液)と同じ浸透圧(すなわち溶質濃度)を有する配合物である。本発明の意味の範囲内の適切な浸透圧調整剤は、NaCl、塩化カリウム、グリシン、グリセロール、塩、アミノ酸、糖アルコール(例えばソルビトールおよびマンニトール)ならびに糖類(例えばグルコース、スクロース、トレハロース、ラフィノースおよびグルコース)を含む。場合により、前記浸透圧調整剤は、糖または糖アルコールである。特定の一実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、糖、例えばグルコース、スクロース、トレハロース、ラフィノースおよびグルコース、特にスクロースである。浸透圧調整剤の組み合わせ、特に上述の浸透圧調整剤の組み合わせを使用できると解される。特に、前記浸透圧調整剤は、配合物に生理学的浸透圧、すなわち、ヒトの血液と本質的に同じ浸透圧を有する配合物を与えるために使用できると解される。かかる配合物は、一般に、約300mOsm/kg、特に310mOsm/kgの重量オスモル濃度を有する。
本明細書で使用される場合に、用語「ヒスチジン」は、具体的には、特段の記載がない限りは、L−ヒスチジンを含む。
本明細書で使用される「患者」は、本明細書で言及される疾患または状態のいずれかを患っているか、本明細書で言及される疾患および/または状態のいずれかと診断されているか、本明細書で言及される疾患および/または状態のいずれかに罹患しやすくなっているか、または本明細書で言及される疾患および/または状態のいずれかにかかりやすい任意の哺乳動物、特にヒトに関する。
本発明によれば、「処置」または「治療」は、本明細書に定義される患者の治療的処置および/または予防的処置に関する。
本明細書で使用される場合に、本発明の抗体配合物に関しての「安定な」または「安定化された」は、抗体配合物が、その化学的安定性および/または物理的安定性を貯蔵の間に保持することに関連している。抗体配合物の安定性の測定方法は、当該技術分野で公知である。特に、安定なまたは安定化された抗体配合物は、その化学的安定性および/または物理的安定性を、室温での貯蔵に際し、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月または少なくとも9ヶ月にわたり維持する。本明細書で使用される「室温」は、18℃〜25℃の範囲の温度を、特に約19℃〜約22℃の範囲の温度を指す。具体的には、室温は、約20℃を指す。一実施形態においては、本明細書で使用される安定な/安定化された抗体配合物は、その化学的安定性および/または物理的安定性を、25℃での貯蔵後、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月または少なくとも9ヶ月にわたり維持する。2〜8℃で貯蔵した場合に、本明細書に記載される安定な/安定化された抗体配合物は、その化学的安定性および/または物理的安定性を、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、または少なくとも12ヶ月にわたり保持する。本明細書に開示される安定な/安定化された抗体配合物は、更に、その化学的安定性および/または物理的安定性を、加速貯蔵条件下で、すなわち約40℃で貯蔵した場合に、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、または少なくとも3ヶ月にわたり保持しうる。
本明細書で使用される「残留水分含量」は、乾燥が完了した後に凍結乾燥されたケーク中に残留している水分含量に関する。例えば前記残留水分含量は、本明細書に記載される抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物の提供方法における、単独の乾燥ステップの後に、または第二の乾燥ステップが完了した後に測定される。特に、本明細書で使用される用語「残留水分含量」は、本明細書に記載される凍結乾燥された配合物の提供方法の前またはその間の抗CD20抗体を含む溶液中に存在する任意の水分含量に関するものではない。残留水分含量の測定方法は、当業者に公知であり、熱重量測定およびカール・フィッシャー法を含む。後者は、2つの方法、すなわち容積測定的な、および比色的なカール・フィッシャー滴定を含む。比色的なカール・フィッシャー滴定においては、アノード溶液と、分析物と、該分析物に浸されたカソードとを含む滴定セルが使用され、そして滴定の間に電気化学的にヨウ素が生成される。存在する水の量は、ヨウ素の発生に用いられた電流の量によって決定される。この方法は、試料中に微量に存在する水の検出に使用することができる。容積測定的なカール・フィッシャー滴定においては、滴定の間にヨウ素が添加される。この方法は、主として、水がより多量に存在する試料の場合に適している。一実施形態においては、残留水分含量は、カール・フィッシャー滴定によって測定される。本明細書で残留水分含量について示されるパーセンテージは、凍結乾燥された配合物中の平均含水量に関する。
本明細書で使用される用語「再構成時間」は、凍結乾燥された配合物を粒子を含まない澄明な溶液へと再水和するために必要な時間、すなわち凍結乾燥された配合物を溶剤に添加してから、視覚的に澄明な溶液を得るまでの間の時間に関する。
用語「凍結乾燥された」および「フリーズドライされた」は、本明細書の文脈においては同義に使用される。本明細書で使用される場合に、用語「凍結乾燥された配合物」とは、凍結乾燥物を意味し、一般的に、凍結乾燥が完了した後に得られる、乾燥粉末またはケーク様物質、いわゆる凍結乾燥ケークに関する。本明細書に記載される凍結乾燥された配合物の医薬への使用の文脈において、乾燥粉末またはケーク様物質は、例えば非経口投与、特に皮下投与または静脈内投与を可能にするために、投与前に製剤学的に認容性の再構成媒体(希釈剤)中で再構成することを適用できる。本明細書で本発明による配合物に関連して使用される用語「再構成された配合物」は、凍結乾燥され、そして再構成媒体の添加により再溶解された配合物を指す。配合の文脈においては、用語「予備凍結乾燥される配合物」は、凍結乾燥/フリーズドライプロセスに供する予定の配合物のために使用される。
本明細書で使用される「シェルフ温度」は、凍結乾燥が行われる装置中の温度を指す。例えば該用語「シェルフ温度」は、凍結乾燥が行われる装置中のシェルフであって、予備凍結乾燥される配合物を収容する容器が置かれるシェルフの温度を指す。前記シェルフ温度は、生成物温度、すなわち凍結乾燥に供される溶液が事実上有する温度とは区別する必要がある。
本明細書で使用される場合に、用語「透析濾過」は、タンパク質、ペプチド、核酸または他の生体分子、特に抗体を含む組成物から、溶媒を除去するため、溶媒を置き換えるため、または溶媒濃度を低下させるための限外濾過膜を用いた方法に関連している。透析濾過によって、精製、濃縮および、必要に応じて緩衝液交換は、単独の作業ユニットにおいて行うことができる。透析濾過デバイスは、当該技術分野で公知であり、かつ例えばPall社の供給のタンジェンシャルフロー濾過(TFF)ユニットMinim IIを含む。
本明細書で使用される場合に、「限外濾過」は、巨大分子溶液を精製および/または濃縮するための任意の膜濾過法を示してよく、その際、液体を適切な化学特性および物理特性を有する半透膜を通じて濾過するために静水圧が使用される。一実施形態においては、限外濾過は、巨大分子溶液の濃縮のために使用される。かかる限外濾過膜は、一般的に、膜によって保持される分子のサイズによって特徴付けられ、それは本明細書で使用される場合に、0.2kDa〜200kDaの範囲である。一実施形態においては、分子量カットオフ10kDa〜50kDa、特に30kDaを有する膜が使用される。
本明細書で使用される場合には、「透析」は、複数の分子が、半透膜を通じたその異なる拡散速度によって精製される任意の方法に関連している。透析による適切な精製法は、当業者に公知である。
前記用語の更なる定義は、以下に、それらの用語が使用される文脈において示される。
前記のように、抗体の安定な凍結乾燥された配合物が必要とされている。ここで、本明細書に記載される特定の残留水分含量および組成を有する凍結乾燥物は安定であり、かつ凝集物形成の傾向が低いことが判明した。更に、かかる凍結乾燥物は、本明細書に開示される方法で提供できることが判明した。従って、本発明は、安定な凍結乾燥された配合物および該配合物の提供方法に関する。
凍結乾燥またはフリーズドライは、医薬組成物の製造において使用できる方法である。前記方法の間に、医薬品有効成分を含有する液体組成物は凍結され、引き続き真空にかけられ、水が氷の形で除去され、残りの含分は低い残留水分含量を有する粉末またはケーク様物質の形で残留する。
かかる凍結乾燥プロセスの間に、前記有効成分を含有する液体組成物は、一般的に、3つの主要ステップ、すなわち凍結、一次乾燥および二次乾燥に供される。本明細書に記載される凍結乾燥法は、第一の乾燥ステップで使用される温度と比較して高められた温度での第二の乾燥ステップ(脱着ステップとも呼ばれる)を必ずしも必要としない。本明細書に記載される方法は、凍結乾燥された抗体配合物によって通常示される約0.5%の残留水分含量よりも高い特定の残留水分含量を有する凍結乾燥された配合物を提供する。前記方法によって得られる凍結乾燥された配合物は、高められた安定性と、低減された凝集物形成傾向を示し、両者の特徴は患者に投与されるべき抗体配合物に有用であると思われる。
本発明による抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物の提供方法は、
I)抗CD20抗体を含む溶液を提供するステップ、
II)前記抗体溶液を凍結させるステップ、
III)前記抗体溶液を、−10℃〜30℃のシェルフ温度で少なくとも1回の乾燥ステップに供することで、凍結乾燥された配合物を得るステップ、
を含み、前記凍結乾燥された配合物は、1%〜10%の範囲であり、場合により1%〜5%の範囲である残留水分含量を有する。
前記方法のステップI)は、「予備凍結乾燥される溶液」の提供に関連する、すなわち凍結乾燥に供される抗CD20抗体を含む溶液の提供に関連する。
前記抗CD20抗体を含有する溶液は、当業者に公知の任意の方法によって提供されうる。
一実施形態においては、本明細書に定義される抗体またはそのフラグメントを含むバルク原薬は、前記抗体を含有する組成物を提供するために出発材料として使用される。バルク原薬は、例えば産業供給元によって提供される、抗CD20抗体のベルツズマブを含むバルク原薬を含む。この出発材料は、不所望な成分を除去し、かつ抗体またはそのフラグメントを所望の出発濃度に規定するために精製してよい。精製および/または濃度調節は、それぞれ濾過または遠心分離等の当該技術分野で公知の任意の方法によって行ってよい。濾過は、静的濾過(例えば真空濾過)および/または動的濾過(例えばタンジェンシャルフロー濾過、透析濾過)のための任意の慣用の濾過法を含む。本発明による方法の一実施形態においては、精製および/または濃度調節は、透析濾過(DF)、限外濾過(UF)または透析によって行われる。
ステップI)で提供される予備凍結乾燥される溶液中に存在する抗CD20抗体は、本明細書に定義される任意の抗CD20抗体であってよい。特に前記抗CD20抗体は、ベルツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、Y90イブリツモマブ・チウキセタン、I131トシツマブ、TRU−015、AME−133v、ヒト化PRO131921、GA101、1F5 IgG2a、HI47 IgG3、2C6 IgG1、2H7 IgG1、AT80 IgG1、11B8 IgG1、ヒト化B−Ly1抗体IgG1およびアフツズマブ(HuMab<CD20>)からなる群から選択される抗CD20抗体であってよい。特に、前記抗CD20抗体は、ベルツズマブまたはそのフラグメントである。
予備凍結乾燥される溶液の提供のために使用される溶媒は、当業者により好適であると見なされ、かつ製剤学的に認容性のいかなる溶媒であってよい。一実施形態においては、ステップI)で提供される溶液は、水溶液、すなわち溶媒が水の溶液である。もう一つの実施形態においては、ステップI)で提供される溶液は、水溶液とt−buOHとの混合物である。ステップI)で提供される予備凍結乾燥される溶液中に存在する抗CD20抗体の量は、投与容量と投与様式に依存しうる所望の最終濃度を考慮して決定される。従って、予備凍結乾燥される溶液中の抗CD20抗体の量は、少なくとも20mg/g、少なくとも30mg/g、少なくとも40mg/g、少なくとも50mg/g、少なくとも60mg/g、少なくとも70mg/g、少なくとも80mg/g、少なくとも90mg/g、または少なくとも100mg/gであってよい。一実施形態においては、前記予備乾燥される配合物中の抗CD20抗体の量は、少なくとも40mg/gである。もう一つの実施形態においては、前記予備乾燥される配合物中の抗CD20抗体の量は、50mg/gである。抗CD20抗体の適切な量は、また20〜100mg/g、30〜70mg/g、または40〜60mg/gの範囲内である。
ステップI)で提供される予備凍結乾燥される配合物は、pH緩衝された溶液、すなわち緩衝剤を含む溶液であってよい。本明細書で使用される場合に、緩衝剤は、溶液中のpH値をほぼ一定レベルに維持することを可能にする弱酸または弱塩基、例えばリン酸塩、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、Tris、他の有機酸緩衝液およびアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等のアミノ酸、特にヒスチジンを示す。アミノ酸を含む緩衝剤は、当業者に公知であり、それらの望まれる緩衝特性に応じて選択できる。例示的なヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン、塩酸ヒスチジン、塩酸ヒスチジン一水和物、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンおよびそれらの混合物である。本明細書で言及されるどの緩衝剤も、単独で、または当業者によって好適であると思われる別の緩衝剤と組み合わせて使用できると解される。一実施形態においては、前記予備凍結乾燥される配合物中に存在する緩衝剤は、ヒスチジンまたはリン酸塩である。もう一つの実施形態においては、前記緩衝剤は、ヒスチジンおよび/または塩酸ヒスチジン一水和物である。
本明細書に定義される緩衝剤は、5〜50mMの範囲の、場合により5〜15mMまたは20〜40mMの範囲の濃度で存在してよい。幾つかの実施形態においては、場合によりヒスチジンまたはリン酸塩である前記緩衝剤は、5mMの、10mMの、15mMの、20mMの、25mMの、27mMの、30mMの、35mMの、40mMの、45mMの、または50mMの濃度で存在する。一実施形態においては、前記緩衝剤、場合によりヒスチジンまたはリン酸塩は、ステップI)で提供される予備凍結乾燥される溶液中に10mMの濃度で存在する。
ステップI)で提供される予備凍結乾燥される溶液のpHは、4.0〜8.0の範囲、場合により5.0〜7.0の範囲、特に5.0〜6.0の範囲であってよい。幾つかの実施形態においては、前記予備凍結乾燥される溶液は、5.5±0.3の、5.5±0.2の、または5.5±0.1のpH値を有する。
ステップI)で提供される予備凍結乾燥される溶液は、更に本明細書に定義される浸透圧調整剤を含んでよい。当業者には、前記予備凍結乾燥される溶液は、本明細書に定義される1種の浸透圧調整剤を含んでよいだけでなく、2種以上の浸透圧調整剤の組み合わせ、例えばスクロースとラフィノースの組み合わせを含んでもよいと解される。一実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、糖または糖アルコールである。特定の一実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロースおよびグルコースからなる群から選択される糖、特にスクロースである。もう一つの実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、ソルビトールおよびマンニトールから選択される糖アルコール、特にマンニトールである。
前記浸透圧調整剤は、100〜200mMの範囲の、特に100〜150mMの範囲の濃度で存在してよい。本発明の一実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、100mMの、120mMの、140mMの、160mMの、180mMの、または200mMの濃度で、特に120mMの濃度で存在する。
前記予備凍結乾燥される溶液中の抗CD20抗体と浸透圧調整剤との特定の質量比を有することが有用なことがある。そのような質量比は、それぞれの抗CD20抗体と浸透圧調整剤との組み合わせについて個別に選択できる。抗CD20抗体と浸透圧調整剤としての糖(例えばスクロース、トレハロースおよびグルコース)との組合せの場合においては、前記質量比は、1〜2部の抗CD20抗体対1〜2部の浸透圧調整剤であってよい。一実施形態においては、抗CD20抗体、場合によりベルツズマブの、浸透圧調整剤として作用する糖、場合によりスクロースに対する質量比は、1.5対1である。
ある特定の実施形態においては、ステップI)で提供される溶液は、更に、本明細書に記載される界面活性剤、例えばポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(例えばポロキサマー188)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリソルベート(例えばポリソルベート20、ポリソルベート80)およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含んでよい。特に、前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンからなる群から選択することができる。一実施形態においては、前記予備凍結乾燥される溶液中に存在する界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート20またはポリソルベート80、場合によりポリソルベート20である。
前記予備凍結乾燥される溶液に添加される界面活性剤の量は、当業者によって好適であると思われる任意の量、例えば抗CD20抗体の表面誘導分解を、該抗体を以下のストレス:撹拌ストレス、凍結・融解ストレスおよび/または温度ストレスのうち1つ以上の影響から保護またはそれを減らすことによって最小限にするのに適した量であってよい。例えば、使用される界面活性剤の量は、0.01mg/g〜2.5mg/gの範囲であってよい。ある特定の実施形態においては、前記予備凍結乾燥される配合物中に存在する界面活性剤の量は、0.05mg/g〜1mg/g、特に0.05mg/g〜0.5mg/gである。ある特定の実施形態においては、前記予備凍結乾燥される溶液中の界面活性剤、場合によりポリソルベート20またはポリソルベート80の量は、約0.01mg/g、0.05mg/g、0.1mg/g、0.2mg/g、0.3mg/g、0.4mg/gまたは0.5mg/g、特に0.1mg/gであってよい。
一実施形態においては、ステップI)で提供される溶液は、
a)少なくとも40mg/gの抗CD20抗体、
b)5〜15mMの緩衝剤、
c)100〜200mMの浸透圧調整剤、
d)0.05〜0.5mg/gの界面活性剤
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する。
もう一つの実施形態においては、ステップa)で提供される溶液は、
a)少なくとも40mg/gの抗CD20抗体、
b)5〜15mMの、ヒスチジン、場合によりヒスチジンおよび/または塩酸ヒスチジン、特にヒスチジンと塩酸ヒスチジンとの組み合わせを含む緩衝剤、
c)100〜200mMの浸透圧調整剤、
d)0.05〜0.5mg/gの界面活性剤
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する。
もう一つの実施形態においては、ステップI)で提供される溶液は、
a)少なくとも40mg/gの抗CD20抗体、
b)5〜15mMの、ヒスチジン、場合によりヒスチジンおよび/または塩酸ヒスチジン、特にヒスチジンと塩酸ヒスチジンとの組み合わせを含む緩衝剤、
c)100〜200mMの、本明細書で浸透圧調整剤として記載される糖、場合によりスクロース、
d)0.05〜0.5mg/gの界面活性剤
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する。
もう一つの実施形態においては、ステップI)で提供される溶液は、
a)少なくとも40mg/gの抗CD20抗体、
b)5〜15mMの、ヒスチジン、場合によりヒスチジンおよび/または塩酸ヒスチジン、特にヒスチジンと塩酸ヒスチジンとの組み合わせを含む緩衝剤、
c)100〜200mMの、本明細書で浸透圧調整剤として記載される糖、場合によりスクロース、
d)0.05〜0.5mg/gの非イオン性界面活性剤、場合によりポリソルベート20および/またはポリソルベート80、特にポリソルベート20
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する。
更なる一実施形態においては、ステップI)で提供される溶液は、
a)少なくとも40mg/gの抗CD20抗体、場合によりベルツズマブ、
b)5〜15mMのヒスチジン、
c)100〜200mMのスクロース、
d)0.05〜0.5mg/gのポリソルベート20
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する。
他の一実施形態においては、ステップI)で提供される溶液は、
a)少なくとも40mg/gの抗CD20抗体、場合によりベルツズマブ、
b)5〜15mMのヒスチジンと塩酸ヒスチジンとの組み合わせ、
c)100〜200mMのスクロース、
d)0.05〜0.5mg/gのポリソルベート20
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する。
ステップI)で提供される予備凍結乾燥される溶液は、更に当業者により適切と思われる、任意の追加成分を含んでよい。例示される追加成分は、凍結保護剤および増量剤である。
本明細書で使用される「凍結保護剤」は、凍結乾燥に供されるときに抗CD20抗体の化学的不安定性および/または物理的不安定性を防ぐまたは減らすことができる任意の分子を指す。かかる凍結保護剤は、糖類、アミノ酸類、メチルアミン類、ポリオール類およびそれらの組み合わせを含みうる。しかしながら、一実施形態においては、前記予備凍結乾燥される溶液には追加の凍結保護剤は添加しない。
本明細書で使用される「増量剤」は、凍結乾燥後に得られる乾燥粉末またはケーク様物質の物理的構造に影響する任意の剤を指す。例示される増量剤は、グリシン、ポリエチレングリコールおよびマンニトールである。しかしながら、一実施形態においては、前記予備凍結乾燥される溶液には追加の増量剤は添加しない。
本明細書に記載される方法は、更にステップI)で提供される抗体溶液を凍結させるステップII)を含む。一般的には、この凍結ステップは、該溶液の凍結温度を下回る温度で行われる。一実施形態においては、前記凍結ステップは、−30℃〜−60℃の範囲の、場合により−30℃〜−45℃の範囲のシェルフ温度で行われる。一実施形態においては、凍結ステップで使用されるシェルフ温度は、約−40℃である。前記シェルフ温度は、液体が固体状態に変換されるのに十分な時間にわたり適用される。必要な時間範囲は、凍結乾燥に供される容量、使用される配合物および該配合物を収容する容器に依存しうる。本明細書に記載される方法においては、前記凍結ステップの長さは、少なくとも1時間、少なくとも2時間、または少なくとも3時間であってよい。一般的に、ステップI)で得られる溶液は、前記温度に、45〜180分間にわたり、特に90〜180分間にわたりさらされうる。一実施形態においては、ステップI)で得られる溶液は、前記温度に、約170分間にわたりさらされる。本明細書で凍結について述べられる時間範囲は、温度が所望の温度へと一定の速度でもたらされるランプ段階、場合により実際の凍結前の凍結へのランプ段階および実際の凍結後の排気のためのランプ段階を含む。一般的に、ステップII)で使用されるランプ速度は、約1℃/分である。
既に前記のように、凍結乾燥された抗体配合物であって、凍結乾燥プロセスの完了後に得られる乾燥粉末またはケーク様物質が前記定義の残留水分含量を有する前記配合物は、本明細書に記載される方法によって提供できることが判明した。この方法は、また、ロットを通じて安定した残留水分含量を提供することも可能にしうる。特に、本明細書に記載される方法は、高められた温度での二次乾燥ステップを必ずしも必要としない。本明細書で第二の乾燥ステップに関して使用される高められた温度は、第一の乾燥ステップで使用される温度よりも高い任意の温度を示す。特に、本明細書に記載される方法は、前記抗体溶液を、−10℃〜30℃のシェルフ温度での少なくとも1回の乾燥ステップに供する更なるステップIII)を含む。
以下に示される条件は、本明細書に記載される方法であって、前記抗体溶液を、1回だけの乾燥ステップに供する前記方法に関する。抗体溶液が1回より多くの乾燥ステップに供される場合には、以下に示される条件は、第一の(すなわち一次)乾燥ステップに関する。任意の更なる乾燥ステップのための条件は、個別に定められる。
上述のように、一次乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、−10℃〜30℃である。一実施形態においては、前記シェルフ温度は、−10℃〜20℃の範囲、特に−5℃〜10℃の範囲である。幾つかの実施形態においては、一次乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、約5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃、例えば約8℃である。
凍結された水または結合されていない水の昇華を可能にするために、適切な圧力を選択する必要があり、前記圧力は、一般的に約0.06ミリバール〜約0.3ミリバールの範囲である。一次乾燥ステップおよび任意の更なる乾燥ステップで使用される適切な圧力は、0.1〜0.3ミリバールの範囲であってよい。本明細書に記載される方法の一実施形態においては、一次乾燥ステップおよび/または任意の更なる乾燥ステップで使用される圧力は、約0.19ミリバールである。
抗体溶液が一次乾燥ステップおよび/または任意の更なる乾燥ステップに供される時間範囲は、凍結乾燥に供される容量、使用される配合物および該配合物を収容する容器に依存しうる。このように、乾燥に必要な時間は、数時間から数日の範囲であってよい。一般的に、抗体配合物が一次乾燥に供される時間範囲は、30〜60時間の範囲、場合により30〜45時間の範囲である。本明細書に記載される方法の一実施形態においては、前記抗体配合物は、約37時間にわたる一次乾燥に供される。本明細書で述べられる時間範囲は、温度が所望の温度へと一定の速度でもたらされるランプ段階、場合により実際の乾燥ステップ前の一次乾燥までのランプ段階を含む。一般的に、ステップIII)で使用される一次乾燥のためのランプ速度は、約1℃/分である。そのような一次乾燥ステップまでのランプ段階は、一般的に、数分の期間を有する、場合により約50分の期間を有する。そのようなランプ段階の期間は、使用されるランプ速度と、凍結ステップで使用される温度と乾燥ステップで使用される温度との差異に依存しうる。
本明細書に記載される方法の一実施形態によれば、前記抗体溶液は、第二の乾燥ステップに供され、その際に、前記第二の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、前記第一の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度よりも、少なくとも2℃〜10℃低い、場合により少なくとも3℃〜7℃低い。一実施形態においては、前記第二の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、前記第一の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度よりも、少なくとも2℃低い、場合により少なくとも3℃低い。
本明細書に記載される方法の一実施形態においては、第一の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、−5℃〜10℃であり、かつ第二の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、−8℃〜7℃であるが、但し、第二の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、第一の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度よりも低いものとする。特に、前記第二の乾燥ステップでのシェルフ温度は、前記第一の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度よりも、少なくとも3℃低い。本明細書に開示される方法の特定の一実施形態においては、第一の乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、8℃であり、および/または乾燥ステップで使用されるシェルフ温度は、5℃である。
抗体溶液が第二の乾燥ステップに供される時間範囲は、凍結乾燥に供される容量、使用される配合物および/または該配合物を収容する容器の種類に依存しうる。このように、第二の乾燥に必要な時間は、数分から数時間の範囲であってよい。一般的に、抗体配合物が第二の乾燥ステップに供される時間範囲は、10〜20時間の範囲、場合により3〜7時間の範囲である。本明細書に記載される方法の一実施形態においては、前記抗体配合物は、約5時間にわたる一次乾燥に供される。本明細書で第二の乾燥ステップについて述べられる時間範囲は、温度が所望の温度へと一定の速度でもたらされる1つ以上のランプ段階、場合により実際の第二の乾燥ステップ前の第二の乾燥までのランプ段階を含む。一般的に、第二の乾燥の前にステップIII)で使用されるランプ速度は、約1℃/分である。そのようなランプ段階は、一般的に、数分の期間を有し、場合により約3分の期間を有する。そのようなランプ段階の期間は、使用されるランプ速度と、2つの乾燥ステップで使用される温度の差異に依存しうる。前記ランプ段階は、更に、前記凍結乾燥された抗体配合物を収容する容器を排気するステップおよび/または栓をするステップを含んでよい。この排気および/または栓をするステップは、数分、特に約15分かかってよい。
凍結された水または結合されていない水の昇華を可能にするために、第二の乾燥ステップのために、適切な圧力を選択する必要があり、前記圧力は、一般的に約0.06ミリバール〜約0.3ミリバールの範囲である。第二の乾燥ステップで使用される適切な圧力は、0.1〜0.3ミリバールの範囲であってよい。本明細書に記載される方法の一実施形態においては、第二の乾燥ステップで使用される圧力は、約0.19ミリバールである。第二の乾燥ステップで使用される圧力は、第一の乾燥ステップの間に使用されるのと同じであってよい。
本明細書に記載される方法は、追加のステップ、例えば最終生成物、例えば販売準備のできた製品を提供するのに必要な第二の乾燥ステップ後のステップを含んでよい。かかるステップは、凍結乾燥のために使用される容器に栓をすること、および/または得られた凍結乾燥物を包装することを含んでよい。
前記方法によって得られた乾燥粉末またはケーク様物質(すなわち凍結乾燥物)は、1%〜10%の範囲の残留水分含量を有する。一実施形態においては、凍結乾燥物の残留水分含量は、1%〜5%の範囲、場合により1.5%〜3%の範囲、特に1.5%〜2.5%の範囲である。既に述べられたように、公知の凍結乾燥された抗体配合物のために使用される残留水分含量(例えば1%未満、特に0.5%未満)よりも高い前記特定の残留水分含量を示す凍結乾燥物は、安定であり、かつ凝集物を形成する傾向が低い。上記の方法は、ロット全体を通じて所望の水分含量を示すかかる凍結乾燥物の提供を可能にする。
前記方法によって得られる乾燥粉末またはケーク様物質は、所望の時点で、例えば患者に投与する前に再構成することができる。従って、本発明は、また、前記定義の抗CD20抗体の液体配合物を提供する方法であって、第一ステップにおいて、凍結乾燥された配合物を前記記載の方法のステップI)〜III)によって提供し、そして引き続いてのステップIV)で、凍結乾燥された配合物を再構成する前記方法に関する。再構成に必要とされる時間は、通常短く、例えば20分以内、10分以内または5分以内である。再構成された配合物の組成は、出発物として使用される凍結乾燥された配合物の組成に依存すると解される。再構成の間、および/または再構成の後に、前記溶液に、更なる物質が、例えば本明細書で言及される物質、例えば浸透圧調整剤、緩衝物質および/または更なる抗体が添加されてもよい。
再構成のために使用される希釈媒体または再構成媒体は、当業者によって好適であると思われる任意の製剤学的に認容性の希釈剤であってよい。本発明の文脈で使用できる例示される希釈剤は、滅菌水、注射用の静菌水、pH緩衝された溶液、例えばリン酸緩衝生理食塩水、滅菌生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、塩化ナトリウム溶液(例えば0.9質量/容量%、NaCl)、グルコース溶液(例えば5%グルコース)、界面活性剤含有溶液(例えば0.01%のポリソルベート20)およびそれらの組み合わせである。前記希釈剤は、当業者によって好適および/または必要と思われる任意の更なる成分、例えば保存剤、緩衝剤、浸透圧調整剤および/または更なる有効成分を含んでよい。
前記希釈剤中に存在してよい緩衝剤および浸透圧調整剤は、明らかに、本明細書で挙げられる緩衝剤および浸透圧調整剤のいずれも、特に本明細書に記載される濃度のいずれかで含む。前記希釈剤中に存在する保存剤は、本質的に微生物増殖、特に細菌増殖を減らす、および/または抑制する、および/またはそれどころか再構成後に得られる組成物の貯蔵時間を延ばす任意の化合物を含む。例示される保存剤は、抗生物質、抗真菌剤および抗ウイルス性化合物を含む。
前記希釈剤中に存在する更なる有効成分は、当業者によって好適と思われる任意の有効成分、例えば本明細書で言及される有効成分を含む。
使用される希釈剤の容量は、意図される投与様式に依存し、その容量は、例えば静脈内投与の場合には、抗CD20抗体配合物の皮下投与の場合よりも大きい。更に、使用される希釈剤の容量は、投与されるべき配合物中の抗CD20抗体の所望の最終濃度に依存する。例えば抗体配合物の皮下投与の場合に、前記希釈剤の容量は、通常は、ほぼ2mlまたは2ml未満の容量に制限される。これは、粘弾性組織の抵抗と注射後に発生する背圧ならびに患者によって知覚される痛みによるものである。それ故に、むしろほんの少量の抗体配合物しか単独の皮下注射で与えられないので、ベルツズマブ等の抗CD20抗体を高濃度に含む配合物を有することが有利なことがある。これは、皮下注射に適した少ない液体用量で高用量の抗体を投与することを可能にしうる。
このように、一実施形態においては、ステップIV)で得られる液体配合物、すなわち前記再構成された配合物は、少なくとも80mg/mLの抗CD20抗体を含む。もう一つの実施形態においては、ステップIV)で得られる液体配合物は、少なくとも90mg/mLの、少なくとも100mg/mLの、少なくとも110mg/mLの、少なくとも120mg/mLの、少なくとも130mg/mLの、少なくとも140mg/mLの、少なくとも150mg/mLの、または少なくとも160mg/mLの抗CD20抗体、場合により少なくとも160mg/mLの抗CD20抗体を含む。本明細書に記載される方法の更なる一実施形態においては、ステップIV)で得られる液体配合物は、約110mg/mLの、約120mg/mLの、約130mg/mLの、約140mg/mLの、約150mg/mLの、または約160mg/mLの抗CD20抗体を含む。
特定の一実施形態においては、本明細書に記載される方法のステップIV)で得られる液体配合物は、ベルツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、Y90イブリツモマブ・チウキセタン、I131トシツマブ、TRU−015、AME−133v、ヒト化PRO131921、GA101、1F5 IgG2a、HI47 IgG3、2C6 IgG1、2H7 IgG1、AT80 IgG1、11B8 IgG1、ヒト化B−Ly1抗体IgG1およびアフツズマブ(HuMab<CD20>)からなる群から選択される抗CD20抗体の配合物である。特に、前記液体抗CD20抗体配合物は、ベルツズマブまたはそのフラグメントの配合物である。再構成の間に、および/または再構成の後に、抗CD20抗体を、例えば本明細書で言及される抗体のいずれかを、単独でかまたは混合物のいずれかで前記溶液へと添加することができる。前記抗体は、溶液で、または乾燥粉末もしくはケーク様状態で添加することができる。
前記再構成された配合物は、更に、本明細書に定義される緩衝剤、例えばリン酸塩、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、Tris、他の有機酸緩衝液、およびアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等のアミノ酸、特にヒスチジンを含有しうる。アミノ酸を含む緩衝剤は、当業者に公知であり、それらの望まれる緩衝特性に応じて選択できる。例示的なヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン、塩酸ヒスチジン、塩酸ヒスチジン一水和物、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンおよびそれらの混合物である。本明細書で言及されるどの緩衝剤も、単独で、または当業者によって好適であると思われる別の緩衝剤と組み合わせて使用できると解される。一実施形態においては、前記再構成された配合物中に存在する緩衝剤は、ヒスチジンまたはリン酸塩を含む緩衝剤である。もう一つの実施形態においては、前記緩衝剤は、ヒスチジンおよび/または塩酸ヒスチジン一水和物である。
本明細書に定義される緩衝剤は、前記再構成された配合物中に、10〜40mMの範囲の、場合により20〜30mMの範囲の濃度で存在してよい。幾つかの実施形態においては、場合によりヒスチジンまたはリン酸塩である前記緩衝剤は、約15mMの、約20mMの、約25mMの、約30mMの、約35mMの、または約40mMの濃度で存在する。一実施形態においては、前記緩衝剤、場合によりヒスチジンまたはリン酸塩は、ステップIV)で提供される再構成された配合物中に約30mMの濃度で存在する。もう一つの実施形態においては、前記緩衝剤、場合によりヒスチジンまたはリン酸塩は、再構成された配合物中に27mMの濃度で存在する。
ステップIV)で提供される再構成された配合物のpHは、4.0〜8.0の範囲、場合により5.0〜7.0の範囲、特に5.0〜6.0の範囲であってよい。幾つかの実施形態においては、前記再構成された溶液は、5.5±0.3の、5.5±0.2の、または5.5±0.1の、場合により5.5±0.1のpH値を有する。
前記再構成された配合物は、更に本明細書に定義される浸透圧調整剤を含んでよい。当業者には、前記再構成された配合物は、本明細書に定義される1種の浸透圧調整剤を含んでよいだけでなく、2種以上の浸透圧調整剤の組み合わせ、例えばスクロースとラフィノースの組み合わせを含んでもよいと解される。一実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、糖または糖アルコールである。特定の一実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロースおよびグルコースからなる群から選択される糖、特にスクロースである。もう一つの実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、ソルビトールおよびマンニトールから選択される糖アルコール、特にマンニトールである。
前記浸透圧調整剤は、前記再構成された配合物中に、200〜400mMの範囲の、特に300〜350mMの範囲の濃度で存在してよい。本発明の一実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、約300mMの、約320mMの、約340mMの、または約350mMの、特に約320mMの濃度で存在する。
前記再構成された配合物中の抗CD20抗体と浸透圧調整剤との特定の質量比を有することが有用なことがある。そのような質量比は、それぞれの抗CD20抗体と浸透圧調整剤との組み合わせについて個別に選択できる。抗CD20抗体と浸透圧調整剤としての糖(例えばスクロース、トレハロースおよびグルコース)との組合せの場合においては、前記質量比は、1〜2部の抗CD20抗体対1〜2部の浸透圧調整剤であってよい。一実施形態においては、抗CD20抗体、場合によりベルツズマブの、浸透圧調整剤として作用する糖、場合によりスクロースに対する質量比は、1.5対1である。
ある特定の実施形態においては、ステップIV)で提供される溶液は、更に、本明細書に記載される界面活性剤、例えばポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(例えばポロキサマー188)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリソルベート(例えばポリソルベート20、ポリソルベート80)およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含んでよい。特に、前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンからなる群から選択することができる。一実施形態においては、前記予備凍結乾燥される溶液中に存在する界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート20またはポリソルベート80、場合によりポリソルベート20である。
前記再構成された配合物中の界面活性剤の量は、当業者によって好適であると思われる任意の量、例えば抗CD20抗体の表面誘導分解を、該抗体を以下のストレス:撹拌ストレス、凍結・融解ストレスおよび/または温度ストレスのうち1つ以上の影響から保護またはそれを減らすことによって最小限にするのに適した量であってよい。例えば、使用される界面活性剤の量は、0.2mg/mL〜0.5mg/mLの範囲であってよい。ある特定の実施形態においては、前記予備凍結乾燥される溶液中の界面活性剤、場合によりポリソルベート20またはポリソルベート80の量は、約0.2mg/mL、0.25mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mLまたは0.5mg/mL、特に約0.3mg/mLであってよい。
一実施形態は、本明細書に記載される方法であって、ステップIV)で得られる液体配合物が、
a)少なくとも80mg/mLの抗CD20抗体、
b)10〜40mMの緩衝剤、
c)200〜400mMの浸透圧調整剤、
d)0.2〜0.5mg/mLの界面活性剤
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する前記方法に関する。
もう一つの実施形態は、本明細書に記載の方法であって、ステップIV)で得られる液体配合物が、
a)少なくとも80mg/mLの抗CD20抗体、
b)10〜40mMの、ヒスチジン、場合によりヒスチジンおよび/または塩酸ヒスチジン、特にヒスチジンと塩酸ヒスチジンとの組み合わせを含む緩衝剤、
c)200〜400mMの浸透圧調整剤、
d)0.2〜0.5mg/mLの界面活性剤
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する前記方法に関する。
もう一つの実施形態は、本明細書に記載の方法であって、ステップIV)で得られる液体配合物が、
a)少なくとも80mg/mLの抗CD20抗体、
b)10〜40mMの、ヒスチジン、場合によりヒスチジンおよび/または塩酸ヒスチジン、特にヒスチジンと塩酸ヒスチジンとの組み合わせを含む緩衝剤、
c)200〜400mMの、本明細書に浸透圧調整剤として記載される糖、場合によりスクロース、
d)0.2〜0.5mg/mLの界面活性剤
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する前記方法に関する。
もう一つの実施形態は、本明細書に記載される方法であって、ステップIV)で得られる液体配合物が、
a)少なくとも80mg/mLの抗CD20抗体、
b)10〜40mMの、ヒスチジン、場合によりヒスチジンおよび/または塩酸ヒスチジン、特にヒスチジンと塩酸ヒスチジンとの組み合わせを含む緩衝剤、
c)200〜400mMの、本明細書で浸透圧調整剤として記載される糖、場合によりスクロース、
d)0.2〜0.5mg/mLの非イオン性界面活性剤、場合によりポリソルベート20および/またはポリソルベート80、特にポリソルベート20
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する前記方法に関する。
もう一つの実施形態は、本明細書に記載される方法であって、ステップIV)で得られる液体配合物が、
a)少なくとも80mg/mLの抗CD20抗体、場合によりベルツズマブ、
b)10〜40mMのヒスチジン、
c)200〜400mMのスクロース、
d)0.2〜0.5mg/mLのポリソルベート20
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する前記方法に関する。
他の一実施形態は、本明細書に記載される方法であって、ステップIV)で得られる液体配合物が、
a)少なくとも80mg/mLの抗CD20抗体、場合によりベルツズマブ、
b)10〜40mMのヒスチジンと塩酸ヒスチジンとの組み合わせ、
c)200〜400mMのスクロース、
d)0.2〜0.5mg/mLのポリソルベート20
を含み、かつ5.5±0.3のpH値を有する前記方法に関する。
ステップIV)で得られる液体配合物は、追加的に凍結保護剤および/または増量剤を含んでよい。しかしながら、一実施形態においては、前記液体配合物は、追加の凍結保護剤および/または増量剤を含まない。
一実施形態においては、再構成された配合物は、240mOsm/kg以上の重量オスモル濃度を有する。一定の実施形態においては、再構成された配合物は、240mOsm/kg〜700mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有する。
そのもう一つの態様においては、本発明はまた、本明細書に記載される方法により得られる再構成された配合物に関する。本明細書に記載された方法により得られた再構成された配合物は、本明細書に記載される方法のステップIV)で得られる再構成された配合物に関して記載された任意の再構成された配合物であってよい。
既に上記の通り、抗体凍結乾燥物で一般的に使用される水分含量よりも高い特定の残留水分含量を有する凍結乾燥された配合物は、低減された凝集物形成傾向を有し、かつ貯蔵に際して高められた安定性を有することが判明した。
従って、本発明はまた、抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物であって、抗CD20抗体、場合によりベルツズマブを含み、かつ1%〜10%の範囲の残留水分含量を有する配合物に関する。一実施形態においては、凍結乾燥された配合物の残留水分含量は、1%〜5%の範囲、場合により1.5%〜3%の範囲、特に1.5%〜2.5%の範囲である。
凍結乾燥された配合物の組成は、それが得られる予備凍結乾燥される溶液の組成に依存しうると解される。特に、凍結乾燥された配合物中に存在するそれぞれの化合物の量は、それが得られる予備凍結乾燥される配合物中のそれぞれの化合物の存在量に依存しうる。
凍結乾燥された配合物中に存在する抗CD20抗体は、本明細書に定義される任意の抗CD20抗体であってよい。特に前記抗CD20抗体は、ベルツズマブ、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、Y90イブリツモマブ・チウキセタン、I131トシツマブ、TRU−015、AME−133v、ヒト化PRO131921、GA101、1F5 IgG2a、HI47 IgG3、2C6 IgG1、2H7 IgG1、AT80 IgG1、11B8 IgG1、ヒト化B−Ly1抗体IgG1およびアフツズマブ(HuMab<CD20>)からなる群から選択される抗CD20抗体であってよい。特に、前記抗CD20抗体は、ベルツズマブまたはそのフラグメントである。
凍結乾燥された配合物中に存在する抗CD20抗体の量は、予備凍結乾燥液体中に存在する抗CD20抗体の量であって、また所望の最終濃度を考慮して規定される量に依存する。所望の最終濃度は、投与容量と投与様式に依存しうる。従って、凍結乾燥された配合物中の抗CD20抗体の量は、少なくとも40質量%の、少なくとも50質量%の、少なくとも60質量%の、または少なくとも70質量%の凍結乾燥された配合物、特に約50質量%の凍結乾燥された配合物であってよい。
更なる一実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物は、更に緩衝剤を含む。本明細書で使用される場合に、緩衝剤は、溶液中のpH値をほぼ一定レベルに維持することを可能にする弱酸または弱塩基、例えばリン酸塩、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えばコハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、クエン酸塩、Tris、他の有機酸緩衝液、およびアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等のアミノ酸、特にヒスチジンを示す。アミノ酸を含む緩衝剤は、当業者に公知であり、それらの望まれる緩衝特性に応じて選択できる。例示的なヒスチジン緩衝剤は、ヒスチジン、塩酸ヒスチジン、塩酸ヒスチジン一水和物、酢酸ヒスチジン、リン酸ヒスチジン、硫酸ヒスチジンおよびそれらの混合物である。本明細書で言及されるどの緩衝剤も、単独で、または当業者によって好適であると思われる別の緩衝剤と組み合わせて使用できると解される。一実施形態においては、凍結乾燥された配合物中に存在する緩衝剤は、ヒスチジンまたはリン酸塩である。もう一つの実施形態においては、前記緩衝剤は、ヒスチジンおよび/または塩酸ヒスチジン一水和物である。凍結乾燥された配合物中に存在する緩衝剤の量は、それが得られる予備凍結乾燥される配合物中に存在する緩衝剤の量に依存すると解される。
凍結乾燥された配合物について本明細書で定義された緩衝剤は、前記予備凍結乾燥される配合物中に存在する緩衝剤の濃度に相関する量で存在してよい。従って、一実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物中には、約2質量%の緩衝剤、特にヒスチジンおよび塩酸ヒスチジンが存在する。
もう一つの実施形態は、本明細書で定義される浸透圧調整剤を更に含む凍結乾燥された配合物に関する。前記凍結乾燥された配合物中に存在する浸透圧調整剤の量は、凍結乾燥に供される配合物中に存在する浸透圧調整剤の量に依存する。当業者には、前記凍結乾燥された配合物は、本明細書に定義される1種の浸透圧調整剤を含んでよいだけでなく、2種以上の浸透圧調整剤の組み合わせ、例えばスクロースとラフィノースの組み合わせを含んでもよいと解される。一実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、糖または糖アルコールである。特定の一実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、スクロース、トレハロースおよびグルコースからなる群から選択される糖、特にスクロースである。もう一つの実施形態においては、前記浸透圧調整剤は、ソルビトールおよびマンニトールから選択される糖アルコール、特にマンニトールである。
前記浸透圧調整剤は、前記定義の範囲にある予備凍結乾燥される配合物中に存在する濃度に相関する量で存在してよい。
ある特定の実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物は、更に、本明細書に記載される界面活性剤、例えばポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー(例えばポロキサマー188)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリソルベート(例えばポリソルベート20、ポリソルベート80)およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを含んでよい。改めて、どれほどの量の界面活性剤が凍結乾燥された配合物中に存在するかは、凍結乾燥に供される配合物の組成に依存する。特に、前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンからなる群から選択することができる。一実施形態においては、前記予備凍結乾燥される溶液中に存在する界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート20またはポリソルベート80、場合によりポリソルベート20である。
前記凍結乾燥された配合物中の界面活性剤の量は、当業者によって好適であると思われる任意の量、例えば抗CD20抗体の表面誘導分解を、該抗体を以下のストレス:撹拌ストレス、凍結・融解ストレスおよび/または温度ストレスのうち1つ以上の影響から保護またはそれを減らすことによって最小限にするのに適した量であってよく、前記量は、凍結乾燥に供される配合物中の界面活性剤の量に依存する。例えば、使用される界面活性剤の量は、0.1mg/g〜2.0mg/gの範囲であってよい。ある特定の実施形態においては、前記予備凍結乾燥される配合物中に存在する界面活性剤の量は、1.0mg/g〜2.0mg/g、特に約1.0mg/gである。
一実施形態においては、本明細書に記載される凍結乾燥された配合物は、本明細書に記載される抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物の提供方法により製造される。
本発明の一態様は、本明細書に記載される凍結乾燥された配合物の、医薬品の製造のための使用に関する。
医薬品の製造のために使用される場合に、本明細書に記載される凍結乾燥された配合物を、患者に投与するのを可能にするために、本明細書に記載される再構成媒体で再構成することができる。前記患者は、本明細書に記載の疾患および/または症状の1つ以上に罹患した患者であってよい。一実施形態においては、前記患者は、非悪性疾患および/または自己免疫疾患、例えばリウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、血小板減少性紫斑病および/または天疱瘡に罹患している。特に、前記患者は、全身性エリテマトーデスに罹患している。
一実施形態においては、医薬品の製造のために使用される凍結乾燥された配合物は、本明細書に記載される抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物の提供方法によって得ることができると解される。
もう一つの実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物は、非経口投与、例えば皮下、静脈内、皮内、筋内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼球後、肺内の投与および/または特定部位での外科的移植のための医薬品の製造のために使用できる。特に、本明細書に記載される凍結乾燥された配合物および/または本明細書に記載の方法によって得られる凍結乾燥された配合物は、皮下投与のための医薬品の製造のために使用される。
本発明のもう一つの態様は、医薬品としての使用のための本明細書に記載される凍結乾燥された配合物に関する。
既に上述のように、本明細書では、その医薬的使用の文脈において使用される場合に、用語「凍結乾燥された配合物」は、また本明細書に開示される希釈剤中で凍結乾燥物を溶解させることによって得られる再構成された配合物を含み、前記配合物は引き続き、例えば静注または皮下注射を介して患者に投与できる。従って、前記の再構成された配合物について定められたあらゆる特徴は、医薬品として使用される場合に凍結乾燥された配合物について適用することもできる。
前記医薬品は、抗CD20抗体での処置を必要とする患者に、当業者によって好適と思われる任意の投与経路を介して投与される。例えば、前記医薬品は、患者へと皮下的にまたは他の非経口経路を介して投与されうる。他の非経口経路は、静脈内、皮内、筋内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼球後、肺内の注射および/または特定部位での外科的移植を含む。
特定の一実施形態においては、前記医薬品は、皮下投与によって使用するための医薬品である。皮下注入は、短時間で、特に静脈内注射と比べて短時間で行われうる(例えば、静脈内点滴の場合に約1時間であるのに比して、皮下投与の場合には約10分)。更に、静脈内投与は訓練された作業者によってなされる必要がある静脈への到達を必要とする一方で、皮下注射は、患者自身によってさえも、例えば自動注射デバイスを使用することによって行うことができ、こうして患者にとって治療がより簡便になる。
皮下(SC)投与は、注射器、場合により薬剤充填済み注射器、ペン型インジェクター(injector pen)、例えばペン型オートインジェクター、注入デバイスまたは輸液ポンプまたは適切な針無しデバイスを介して行ってよい。皮下投与は、身体の単独の部位で、または身体の種々の部位で、例えば互いに隣接した部位で行ってよい。皮下的投与に適した部位は、当業者に公知であり、例えば大腿部または上腕部を含む。
通常は、皮下注射は、ほぼ2mlの容量または2ml未満の容量に限られる。これは、粘弾性組織の抵抗と注射の際に発生する背圧ならびに患者によって知覚される痛みによるものである。それ故に、ほんの少量の抗体配合物しか単独の皮下注射により与えられないので、高濃度のベルツズマブ等の抗CD20抗体を含み、特に必要とされる少ない量で再構成されうる凍結乾燥された配合物を有することが有利であることがある。これは、皮下注射に適した少ない液体用量で高用量の抗体を投与することを可能にしうる。
一実施形態において、本明細書に記載される凍結乾燥された配合物は、癌または非悪性疾患、場合により炎症性もしくは自己免疫性疾患の処置において使用されうる。
本明細書で使用される「癌」は、調節されない細胞増殖を伴う任意の悪性疾患、例えばエプスタイン・バールウイルス感染症、白血病、リンパ腫、形質細胞腫瘍、腫瘍ウイルス感染症、免疫増殖疾患、リンパ増殖性疾患、パラプロテイン血症、ヘルペスウイルス感染症、DNAウイルス感染症に関連してよい。
特に、本明細書に記載される凍結乾燥された配合物は、任意のCD20陽性の癌、すなわち細胞表面上にCD20を発現する細胞、特にT細胞またはB細胞の異常な増殖を示す癌の処置のために有用である。細胞表面上のCD20の発現を測定する方法は、当該技術分野で公知であり、例えばFACSまたはPCRを含む。本発明による凍結乾燥された配合物で処置できる例示的なCD20陽性の癌は、B細胞性リンパ腫および白血病である。
リンパ腫および白血病は、バーキットリンパ腫、B細胞性白血病、慢性リンパ球性B細胞性白血病、急性リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病、多発性骨髄腫、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、HIV関連リンパ腫、中枢神経原発リンパ腫、B細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、免疫芽細胞性大細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(例えば濾胞性リンパ腫)、リンパ腫様肉芽腫症、前駆リンパ芽球性白血病リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、前リンパ球性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、免疫芽細胞性大細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症および前駆リンパ芽球性白血病リンパ腫を含む。場合により、前記CD20陽性の癌は、B細胞性非ホジキンリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性B細胞性白血病、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、多発性骨髄腫、辺縁帯B細胞性リンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、HIV関連リンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症またはヴァルデンストレームマクログロブリン血症からなる群から選択される疾患である。特に、前記CD20陽性の癌は、B細胞性非ホジキンリンパ腫である。
本発明は、前記癌のいずれかを患うものの治療的処置だけでなく、これらの癌の再発の処置と、予防的処置、例えば前記疾患に罹患しやすいまたはかかりやすい患者の処置にも関連する。
本明細書で使用される「非悪性疾患」は、癌について示される前記定義に含まれない任意の疾患に関連する。本発明の凍結乾燥された配合物で処置されうる非悪性疾患は、自己免疫性疾患、血液凝固障害、血小板異常、血液蛋白障害、血液学的疾患、出血性疾患、止血障害、リンパ系疾患、紫斑病、血小板減少症、血栓性細小血管障害、止血障害、血管障害、リウマチ病、結合組織病、ヘルペスウイルス感染症、およびDNAウイルス感染症からなる群から選択される疾患を含む。特に、本発明の凍結乾燥された配合物は、自己免疫性疾患の処置のために使用されうる。
本明細書で使用される「自己免疫性疾患」または「自己免疫関連状態」は、体内に天然に存在する組織および/または物質に対する身体の不適切な免疫応答を伴う任意の疾患に関連するものである。自己免疫性疾患または自己免疫関連状態は、関節炎(リウマチ様関節炎、若年性リウマチ様関節炎、骨関節症、乾癬の関節炎)、乾癬、皮膚炎(アトピー性皮膚炎)、慢性自己免疫性蕁麻疹、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮性表皮壊死症、全身性硬皮症および硬化症、炎症性腸疾患(例えばクローン病、潰瘍性大腸炎)、小児呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、アレルギー性鼻炎、脳炎、ブドウ膜炎、大腸炎、糸球体腎炎、アレルギー状態、湿疹、喘息、T細胞の浸潤および慢性の炎症性応答を伴う状態、アテローム性動脈硬化症、自己免疫心筋炎、白血球癒着不全、全身性エリテマトーデス(SLE)、狼瘡(例えば腎炎、非腎臓、円板状、脱毛)、若年発症糖尿病、多発性硬化症(例えば再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、進行性再発型多発性硬化症および/または臨床分離症候群)、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカインおよびTリンパ球により媒介される急性および遅延型の過敏症に関連する免疫反応、結核、類肉腫症、ヴェゲナーの肉芽腫症を含む肉芽腫症、無顆粒球症、脈管炎(ANCAを含む)、無形成性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド ブラックファン貧血症、脈管炎(ANCAを含む)、再生不良性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む免疫性溶血性貧血、悪性貧血、赤芽球ろう(PRCA)、第VIII因子欠乏、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出を伴う疾患、中枢神経系(CNS)炎症性疾患、多臓器損傷症候群、重症筋無力症、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、カースルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート−イートン筋無力症症候群、レーノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンスジョンソン症候群、固体臓器移植拒絶反応(高パネル反応性抗体力価、組織内IgA被着等についての予備治療を含めた)、移植片対宿主病(GVHD)、水疱性類天疱瘡、天疱瘡(尋常性、落葉状の全てを含む)、自己免疫性多腺性内分泌障害、ライター症候群、スティフマン症候群、巨細胞動脈炎、免疫複合体腎炎、IgAネフロパシー、IgM多発神経障害もしくはIgM媒介性神経障害、血小板減少性紫斑病(例えば突発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓症血小板減少性紫斑病、(TTP))、自己免疫性血小板減少、睾丸炎および卵巣炎、一次甲状腺機能低下を含む精巣と卵巣の自己免疫性疾患、自己免疫性甲状腺炎、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性の甲状腺炎、突発性の甲状腺機能低下、アジソン病、グレーブ病、自己免疫性多腺性症候群(もしくは多腺性内分泌障害症候群)、インシュリン依存性真性糖尿病(IDDM)とも呼称されるI型糖尿病およびシーアン症候群を含む自己免疫内分泌疾患、自己免疫性肝炎、リンパ系の間質性肺臓炎(HIV)、閉塞性細気管支炎(非移植)対NSIP、ギランバレー症候群、大血管性脈管炎(リウマチ性多発性筋痛および巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中血管性脈管炎(川崎病および結節性多発性動脈炎を含む)、強直性脊椎炎、ベルガー疾患(IgAネフロパシー)、急速進行性糸球体腎炎、原発性胆汁性肝硬変、セリアック病(グルテン性腸炎)、クリオグロブリン血症、ALS、冠状動脈疾患を含む。
特に、前記凍結乾燥された配合物は、関節炎、多発性硬化症、突発性血球減少症、天疱瘡、特に尋常性天疱瘡および/または落葉状天疱瘡、血小板減少性紫斑病および/または全身性エリテマトーデスからなる群から選択される疾患の処置のために使用される。
一実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物は、関節炎、場合によりリウマチ様関節炎の処置のために使用される。
特定の一実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物は、天疱瘡、特に尋常性天疱瘡および/または落葉状天疱瘡の処置のために使用される。
もう一つの実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物は、血小板減少性紫斑病の処置のために使用される。
更なる一実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物は、全身性エリテマトーデスの処置のために使用される。
もう一つの実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物は、突発性血球減少症、特に突発性血小板減少性紫斑病の処置のために使用される。
もう一つの実施形態においては、前記凍結乾燥された配合物は、多発性硬化症の処置のために、場合により再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、進行性再発型多発性硬化症および/または臨床分離症候群の処置のために使用される。
本明細書で使用される「炎症性疾患」は、急性または慢性の炎症を伴う任意の疾患、例えばアレルギー、喘息、癌および自己免疫性疾患等の炎症性疾患を含む疾患を示す。
一実施形態においては、凍結乾燥された配合物は、白血病、リンパ腫および/または自己免疫性疾患からなる群から選択される疾患の処置において使用するためのものであってよい。
もう一つの実施形態においては、本発明の凍結乾燥された配合物は、バーキットリンパ腫、エプスタイン・バールウイルス感染症、B細胞性白血病、慢性リンパ球性B細胞性白血病、急性リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、前リンパ球性白血病、毛様細胞性白血病、多発性骨髄腫、B細胞性リンパ腫、辺縁帯B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、免疫芽細胞性大細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、形質細胞腫瘍、前駆リンパ芽球性白血病リンパ腫、腫瘍ウイルス感染症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、免疫増殖疾患、前リンパ球性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、免疫芽細胞性大細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ増殖性疾患、パラプロテイン血症、前駆リンパ芽球性白血病リンパ腫、多発性硬化症、場合により再発寛解型多発性硬化症、二次進行型多発性硬化症、一次進行型多発性硬化症、進行性再発型多発性硬化症および/または臨床分離症候群、突発性血球減少症、血小板減少性紫斑病、突発性血小板減少性紫斑病、血液凝固障害、血小板異常、血液蛋白障害、血液学的疾患、出血性疾患、止血障害、リンパ系疾患、紫斑病、血小板減少症、血栓性細小血管障害、止血障害、血管障害、リウマチ様関節炎、リウマチ病、結合組織病、天疱瘡、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、ヘルペスウイルス感染症、および/またはDNAウイルス感染症からなる群から選択される疾患の処置において使用されるものであってよい。
本発明の凍結乾燥された配合物は、単位投与形で(例えば容器、瓶、バイアルまたは注射器において)、または複数投与形で(multiple dosage form)(例えば複数回投与用の容器で)提供できる。適切な容器およびかかる容器をもたらす材料(例えばガラス)は当業者に公知である。凍結乾燥された配合物を収容する容器は、該凍結乾燥された配合物だけを含んでも、または更に凍結乾燥された配合物を再構成するための希釈剤を収容する第二の区画を含んでもよい。
本発明の凍結乾燥された配合物は、単独で、または上述の疾患のいずれかの処置のために当業者により適切と思われる任意の更なる治療剤と組み合わせて投与されうる。前記更なる治療剤は、別々に、同時に、または連続的に、本発明による配合物とともに投与してよい。かかる更なる治療剤の例は、例えば細胞毒性剤、抗脈管形成剤、コルチコステロイド類、抗体、化学療法剤、ホルモン類、抗炎症剤および免疫調節剤である。
本発明の更なる一態様は、患者の処置方法であって、以下のステップ
(i)本明細書に記載される方法により抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物を提供するステップ、
(ii)前記凍結乾燥された配合物を再構成するステップ、および
(iii)前記再構成された配合物を患者に投与するステップ、
を含む前記方法に関する。
患者の処置方法のステップ(i)は、抗CD20抗体の凍結乾燥された配合物を提供する方法に関して本明細書に記載される任意のステップを含んでよいと理解される。一実施形態においては、患者の処置方法のステップ(i)で提供される凍結乾燥された配合物は、ベルツズマブまたはそのフラグメントの凍結乾燥された配合物である。
患者の処置方法のステップ(ii)においては、前記凍結乾燥された配合物は、当業者によって好適と思われる本明細書に記載される任意の再構成媒体で再構成することができる。
患者の処置方法のステップ(iii)は、一実施形態においては、非経口投与、例えば皮下、静脈内、皮内、筋内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼球後、肺内の投与および/または特定部位での外科的移植に関連しうる。患者の処置方法の一実施形態においては、ステップ(iii)は、再構成された配合物の皮下投与に関連している。しかしながら、本明細書に記載される任意の投与様式および投与方法を、本明細書に記載される処置方法のステップ(iii)で使用することもできる。
本明細書に記載される方法によって処置される患者は、本明細書に記載の疾患および/または症状の1つ以上に罹患した患者であってよい。本明細書に記載される患者の処置方法の一実施形態においては、前記患者は、癌および/または非悪性疾患、場合により自己免疫疾患に罹患している。一実施形態においては、本明細書に記載される処置方法によって処置されるべき患者は、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、突発性血球減少症、突発性血小板減少性紫斑病および/または天疱瘡、特に全身性エリテマトーデスに罹患している患者である。
本発明を、更に以下の実施例において説明するが、それらは単に、本発明の特定の実施形態を例証することを目的とするものであって、本発明の範囲をいかようにも制限するものと解釈されるべきでもない。
実施例
例1
Tg、再構成および凝集に対する残留水分含量の影響
貯蔵の間の安定性を改善するレベルの残留水分が凍結乾燥された配合物中に存在するかどうかを決定するために、ガラス転移温度(Tg)、凍結乾燥された配合物の再構成時間および凝集に対する残留水分の影響を調べた。
このために、以下の成分を含む組成物を凍結乾燥させた:
ベルツズマブ 50.0mg/g
スクロース 41.0mg/g(約120mM)
L−ヒスチジン 0.270mg/g
L−ヒスチジン塩酸塩・H2O 1.733mg/g(約10mMの全ヒスチジン)
ポリソルベート20 0.10mg/g
pH 5.5±0.2
重量オスモル濃度 150mOsm/kg
前記溶液を濾過滅菌し、バイアル中に充填し、凍結乾燥用の栓で部分的に封じ、凍結乾燥機中に入れた。凍結乾燥物中の様々な残留水分を得るために、第二の乾燥ステップにおける乾燥温度を変動させた。すなわち試料を、0℃、20℃または40℃で4時間にわたり第二の乾燥ステップに供した。二次乾燥ステップにおける例示温度として20℃を示している実施された凍結乾燥プロセスを第1表に記載する。
前記プロセスから得られた、残留水分含量2.02%、1.25%および0.80%を有する試料を、引き続き40℃で12週間にわたり貯蔵した。前記残留水分含量は、カール・フィッシャー滴定によって複電流滴定による終点検出で、ultra turraxを備えたカール・フィッシャー(KF)滴定装置784 Titrino(Metrohm)において測定した。このために、前記バイアルを開封し、凍結乾燥物をへらで砕いた。引き続き、200mgの粉末を受容器に移した。凍結乾燥物を、ultra-turraxを用いて8000rpmで30秒間にわたり均質化した。次いで、前記粉末を、調整されたカール・フィッシャー試薬(Riedel de Haenから得られるハイドラナールコンポジット5)を用いて滴定した。
更に、ガラス転移温度は、貯蔵前に示差走査熱量測定によって測定し、その際、以下のパラメータを使用した:
システム:TA Instruments Q 2000
パン型:Tzeroアルミニウム密閉型
平衡 −20℃で5分間
調節 90秒毎に±0.6℃
ランプ 2.5℃/分で160℃まで
図1〜3は、それぞれ0℃、20℃および40℃にさらされた試料の1つのDSC曲線を例示している。
また、凝集は、貯蔵前と貯蔵後のサイズ排除クロマトグラフィーによって測定し、その際、凝集のための出発値は、全ての試料において1.1%であった。貯蔵後の凝集値は、以下の第2表に示されている。
更に、得られた凍結乾燥物の再構成時間は、貯蔵後に測定した。
第2表に、種々の残留水分含量を有する試料における、ガラス転移温度、再構成挙動および凝集について得られた値をまとめる。
第2表:貯蔵後のTg、再構成および凝集(2つの試料の平均値)
上記第2表から導き出せるように、残留水分含量の増加は、貯蔵後の凝集レベルを低下させ、こうしてより安定な凍結乾燥物をもたらす。
例2
凍結乾燥プロセス
更に、ロット全体を通じて1.5%と2.5%の間の残留水分含量を示すベルツズマブの凍結乾燥物の製造が可能となる、第3表に示される凍結乾燥プロセスを開発した。
この凍結乾燥プロセスは、第一の乾燥ステップで使用される温度と比較して高められた温度での二次乾燥ステップを要しない。
前記方法によって得られた凍結乾燥物の特性を測定した。残留水分含量を、シェルフの種々の位置に分配された8個の個々のバイアル(すなわちエッジバイアルとセンターバイアル)から測定した。第4表から導き出せるように、所望の残留水分含量を有し、40℃での貯蔵の際に安定な凍結乾燥物を得ることができた。
第4表:第3表による凍結乾燥プロセスによって得られた凍結乾燥物の特性
例3
凍結乾燥された配合物の製造および再構成
以下の成分を有する予備凍結乾燥組成物を凍結乾燥させた:
ベルツズマブ 50.0mg/g
スクロース 41.0mg/g(約120mM)
L−ヒスチジン 0.270mg/g
L−ヒスチジン塩酸塩・H2O 1.733mg/g(約10mMの全ヒスチジン)
ポリソルベート20 0.10mg/g
pH 5.5±0.2
重量オスモル濃度 150mOsm/kg
7.10gの予備凍結乾燥組成物をバイアル(10Rバイアルタイプ1、Schott)中に充填し、そして第3表に記載される凍結乾燥プロセスに供した。
凍結乾燥物を、引き続き栓をしたガラスバイアル中で+5℃で12ヶ月にわたり貯蔵した。第3表に示される結果から、こうして得られた凍結乾燥物が5℃での貯蔵の間に+5℃で安定であることを導き出すことができる。
注射用の水2.2mLで前記凍結乾燥物を再構成(該凍結乾燥物が完全に溶けるまでの5分の再構成時間)した後に、以下の組成物が得られる:
ベルツズマブ 133mg/mL
スクロース 109mg/mL(約320mM)
L−ヒスチジン 0.718mg/mL
L−ヒスチジン塩酸塩・H2O 4.610mg/g(約27mMの全ヒスチジン)
ポリソルベート20 0.27mg/mL
pH 5.5±0.2
重量オスモル濃度 約450mOsm/kg