本発明は、選択されたヒトドナー集団から得られる配列情報に基づいて作製され、ポリオーマウイルスおよび/またはその抗原に対して、具体的にはJCVまたはBKVおよび/またはそれらのVP1タンパク質に対して結合することができるヒトモノクローナル抗体および組換えヒト由来モノクローナル抗体ならびにそれらの抗原結合フラグメントに関連する。本発明の抗体は好都合に、本発明の抗体が、上記ウイルスを標的化するために、ならびに、体液(例えば、血液)に放出されるウイルスタンパク質を診断するために、それらの両方で好適にされる上記ウイルスおよび/または単離されたウイルスタンパク質に特異的に結合することによって特徴づけられる。そのうえ、本発明の抗体は典型的には、関係のないタンパク質(例えば、血清アルブミンなど、具体的にはウシ血清アルブミン、すなわち、医薬品の配合または研究室使用において一般に使用されるタンパク質)との交差活性を何ら示さない。したがって、本発明の抗体は、ヒト起源であること、および親和性成熟であること故に、治療剤として安全であり、かつ、ポリオーマウイルスを、偽陽性を与えることなく検出するための研究室試薬として特異的であることが合理的に予想され得る。
加えて、そのポリオーマウイルス中和活性のために、本発明の抗体、ならびに、その誘導体は、例えば、免疫抑制薬物により処置されることになる疾患に罹患し、かつ、日和見的なポリオーマウイルス感染およびポリオーマウイルス複製の活性化の危険性を有する患者(例えば、本明細書中前記の背景の節で記載される患者など)の併用療法のために使用することができる。したがって、具体的な好都合な実施形態として、本発明は、例えば、臓器移植を受けている免疫低下患者の処置において、単独で、または、免疫抑制薬物(例えば、背景の節で記載される免疫抑制薬物など)を受けている患者の処置のどちらでも使用されるための、本明細書中に記載されるヒトモノクローナル抗体およびそのどのような誘導体にも関連し、ただし、この場合、本発明の抗体およびその誘導体のいずれもが、免疫抑制薬物と同時に投与されるために、あるいは、免疫抑制薬物の投与の前または後において連続して投与されるために設計される。本発明の1つの実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体、または、その任意の誘導体と、1つまたは複数の免疫抑制薬物との両方を含む医薬組成物が提供される。
I.定義
別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂および2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。
用語「a」または「an」を伴う実体はそのような実体の1つまたは複数を示すことに留意しなければならない;例えば、「an antibody」(抗体)は1つまたは複数の抗体を表すことが理解される。そのようなものとして、用語「a」(または「an」)、 「one or more」(1つまたは複数)および 「at least one」(少なくとも1つ)は、本明細書中では交換可能に使用され得る。
具体的に別途示されないならば、用語「ポリオーマウイルス」、「JCV」および「BKV」は、生来型の単量体形態、二量体形態およびオリゴマー形態のポリオーマウイルスペプチド、JCVペプチドおよびBKVペプチドを具体的に示すために交換可能に使用される。これらの用語はまた、上記ペプチドの他の形態、例えば、オリゴマーおよび/または凝集物、VP1タンパク質、VP2タンパク質およびVP3タンパク質を一般に特定するために使用され、しかも、また、すべてのタイプおよび形態をまとめて示すために使用される。
本明細書中に開示されるヒト抗ポリオーマウイルス抗体、好ましくは抗JCV抗体および抗BKV抗体は、ポリオーマウイルス(好ましくはJCVおよび/またはBKV)、ポリオーマウイルスVP1タンパク質(好ましくは、JCVのVP1タンパク質および/またはBKVのVP1タンパク質)およびそれらのエピトープ、ならびに、ポリオーマウイルス(好ましくはJCVおよび/またはBKV)の様々な変化体およびそれらのエピトープと特異的に結合する。Ferenczy他、Clinical Microbiology Reviews、25(3)(2012)、471〜506、および、Gorelik他、The Journal of Infectious Diseases、204(2011)、103〜114を参照のこと。本明細書中で使用される場合、ポリオーマウイルス、JCVおよび/またはBKV、ポリオーマウイルスVP1タンパク質(好ましくはJCVのVP1および/またはBKVのVP1)と「特異的に結合する」、「選択的に結合する」、または「好ましくは結合する」抗体に対する言及は、関係のない他のタンパク質と結合しない抗体を示す。1つの実施形態において、本明細書中に開示されるポリオーマウイルス抗体、JCV抗体および/またはBKV抗体は、ポリオーマウイルス(好ましくはJCVおよび/またはBKV)、ポリオーマウイルスVP1タンパク質(好ましくはJCVのVP1タンパク質および/またはBKVのVP1タンパク質)、および、ポリオーマウイルスVP1ウイルス様粒子(VLP)(好ましくは、JCV VP1 VLP、および/または、BKV VP1 VLP)またはそれらのエピトープと結合することができ、BSAおよび他のタンパク質に対する結合を何ら示さない。本発明のヒトポリオーマウイルス抗体、JCV抗体および/またはBKV抗体は、健康なヒト対象のプールから、あるいは、ポリオーマウイルス(好ましくはJCVおよび/またはBKV)特異的免疫応答を示すPML−IRIS患者のプールから作製されているので、本発明のポリオーマウイルス抗体、好ましくはJCV抗体および/またはBKV抗体はまた、それらの抗体が、対象によって発現される抗体に実際に由来したものであり、かつ、例えば、ヒト免疫グロブリン発現ファージライブラリー(これは、ヒト様抗体を提供しようとするための一般的な方法を表す)からは単離されていないことを強調するために「ヒト由来抗体」と呼ばれることがある。
ペプチド:
本明細書中で使用される場合、用語「ペプチド」は、その意味の範囲内において、(時には本明細書中では交換可能に使用されることがある)用語「ポリペプチド」および用語「タンパク質」を包含することが理解される。同様に、タンパク質およびポリペプチドのフラグメントもまた包含され、タンパク質およびポリペプチドのフラグメントは本明細書中では「ペプチド」と称される場合がある。それにもかかわらず、用語「ペプチド」は好ましくは、少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、好ましくは少なくとも10個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、より好ましくは少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、さらにより好ましくは少なくとも20個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、特に好ましくは少なくとも25個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味する。加えて、本発明によるペプチドは典型的には、最大でも100個の連続するアミノ酸を有し、好ましくは80個未満の連続するアミノ酸を有し、より好ましくは50個未満の連続するアミノ酸を有する。
ポリペプチド:
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、1つだけの「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直鎖状に連結されるモノマー(アミノ酸)から構成される分子を示す。用語「ポリペプチド」は、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(1つまたは複数)を示し、生成物の特定の長さを示さない。したがって、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「オリゴペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または、2個以上のアミノ酸の鎖(1つまたは複数)を示すために使用される任意の他の用語が、「ポリペプチド」の定義の範囲に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、または、これらの用語のどれとも交換可能に使用される場合がある。
用語「ポリペプチド」はまた、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、および、知られている保護基/ブロック基、タンパク質分解的切断による誘導体化、または、天然に存在しないアミノ酸による修飾を含めて、当該ポリペプチドの発現後修飾の産物を示すことが意図される。ポリペプチドは天然の生物学的供給源に由来してもよく、または、組換え技術によって産生されてもよいが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されない。ポリペプチドは、化学合成による様式を含めて、どのような様式において作製されてもよい。
本発明のポリペプチドは、約3個以上のアミノ酸のサイズ、5個以上のアミノ酸のサイズ、10個以上のアミノ酸のサイズ、20個以上のアミノ酸のサイズ、25個以上のアミノ酸のサイズ、50個以上のアミノ酸のサイズ、75個以上のアミノ酸のサイズ、100個以上のアミノ酸のサイズ、200個以上のアミノ酸のサイズ、500個以上のアミノ酸のサイズ、1,000個以上のアミノ酸、または、2,000個以上のアミノ酸のサイズである場合がある。ポリペプチドは、規定された三次元構造を有する場合があるが、ポリペプチドはそのような構造を必ずしも有さない。規定された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれたとして示される。規定された三次元構造を有するのではなく、むしろ、非常に多数の異なる立体配座を取ることができるポリペプチドは、折り畳まれていないとして示される。本明細書中で使用される場合、糖タンパク質という用語は、アミノ酸残基(例えば、セリン残基またはアスパラギン残基)の酸素含有側鎖または窒素含有側鎖を介して当該タンパク質に結合する少なくとも1つの炭水化物成分に連結されるタンパク質を示す。
「単離された」ポリペプチドあるいはそのフラグメント、変異体または誘導体によって、その天然の環境に存在していないポリペプチドが意図される。特定の精製レベルは何ら要求されない。例えば、単離されたポリペプチドはその生来的な環境または天然の環境から取り出され得る。宿主細胞において発現される組換え産生されたポリペプチドおよびタンパク質は、任意の好適な技術によって分離されているか、分画されているか、あるいは、部分的または実質的に精製されている生来的ポリペプチドまたは組換えポリペプチドのように、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。
「組換え(の)ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質」は、組換えDNA技術によって産生される、すなわち、所望されるペプチドを含む融合タンパク質をコードする外因性の組換えDNA発現構築物によって形質転換される細胞(微生物細胞または哺乳動物細胞)から産生される、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を示す。ほとんどの細菌培養物において発現されるタンパク質またはペプチドは典型的にはグリカンを含まないであろう。酵母において発現されるタンパク質またはペプチドは、哺乳動物細胞において発現されるものとは異なるグリコシル化パターンを有する場合がある。
本発明のポリペプチドとして、前記ポリペプチドのフラグメント、誘導体、アナログまたは変異体、および、それらの任意の組合せも含まれる。用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」および「アナログ」には、天然ペプチドのアミノ酸配列に十分に類似するアミノ酸配列を有するペプチドおよびポリペプチドが含まれる。用語「十分に類似する」は、第1のアミノ酸配列および第2のアミノ酸配列が共通の構造的ドメインおよび/または共通の機能的活性を有するように、第2のアミノ酸配列に対する十分な数または最小数の同一アミノ酸残基または等価なアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列を意味する。例えば、共通の構造的ドメインを含むアミノ酸配列で、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または少なくとも約100%が同一であるアミノ酸配列は、十分に類似するとして本明細書中では定義される。好ましくは、変異体は、本発明の好ましいペプチドのアミノ酸配列に、特に、ポリオーマウイルス、好ましくはJCV及び又はBKV、ポリオーマウイルスVP1タンパク質、好ましくはJCV VP1及び/又はBKV VP1タンパク質、ポリオーマウイルスVP1様粒子(VLPs)、好ましくはJCV VP1 VLPs及び/又はBKV VP1 VLPs、あるいは、それらのどちらかのフラグメント、変異体、誘導体またはアナログのアミノ酸配列に十分に類似しているであろう。そのような変異体は一般に、本発明のペプチドの機能的活性を保持する。変異体には、1つまたは複数のアミノ酸欠失、アミノ酸付加および/またはアミノ酸置換によって生来型ペプチドおよびwt型ペプチドとはアミノ酸配列においてそれぞれ異なるペプチドが含まれる。これらは、天然に存在する変異体、ならびに、人為的に設計された変異体である場合がある。
さらに、用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」および「アナログ」は、本発明の抗体または抗体ポリペプチドに言及するときには、対応する生来型の結合性分子、抗体またはポリペプチドの抗原結合特性の少なくとも一部を保持するどのようなポリペプチドも含まれる。本発明のポリペプチドのフラグメントには、本明細書中の他のところで議論される具体的な抗体フラグメントに加えて、タンパク質分解的フラグメント、ならびに、欠失フラグメントが含まれる。本発明の抗体および抗体ポリペプチドの変異体には、上記で記載されるようなフラグメント、および、アミノ酸の置換、欠失または挿入に起因する変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。変異体は天然に存在している場合があり、または、天然に存在していない場合がある。天然に存在していない変異体は、この技術分野において知られている変異誘発技術を使用して作製される場合がある。変異体ポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸置換、アミノ酸欠失またはアミノ酸付加を含む場合がある。ポリオーマウイルス、好ましくはJCV及び/又はBKV特異的な結合性分子の誘導体、例えば、本発明の抗体および抗体ポリペプチドの誘導体は、生来型ポリペプチドに対して見出されないさらなる特徴を示すように変化させられているポリペプチドである。例には、融合タンパク質が挙げられる。変異体ポリペプチドは、本明細書中では「ポリペプチドアナログ」として示される場合もある。本明細書中で使用される場合、結合性分子もしくはそのフラグメント、抗体または抗体ポリペプチドの「誘導体」は、官能側鎖基の反応によって化学的に誘導体化される1つまたは複数の残基を有する当該ポリペプチドを示す。また、「誘導体」として、20個の標準的アミノ酸の1つまたは複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するそのようなペプチドも含まれる。例えば、4−ヒドロキシプロリンがプロリンの代わりに使用されてもよい;5−ヒドロキシリシンがリシンの代わりに使用されてもよい;3−メチルヒスチジンがヒスチジンの代わりに使用されてもよい;ホモセリンがセリンの代わりに使用されてもよい;また、オルニチンがリシンの代わりに使用されてもよい。
分子の類似性および/または同一性の決定:
2つのペプチドの間における「類似性」が、一方のペプチドのアミノ酸配列を第2のペプチドの配列に対して比較することによって求められる。一方のペプチドのアミノ酸が同一であるか、または、保存的なアミノ酸置換であるならば、一方のペプチドのアミノ酸は第2のペプチドの対応するアミノ酸と類似している。保存的な置換には、Dayhoff,M.O.編、The Atlas of Protein Sequence and Structure 5(National Biomedical Research Foundation、Washington,D.C.(1978))に記載される置換、および、Argos、EMBO J.8(1989)、779〜785に記載される置換が含まれる。例えば、下記の群の1つに属するアミノ酸は、保存的な変化または置換を表す:−Ala、Pro、Gly、Gln、Asn、Ser、Thr;−Cys、Ser、Tyr、Thr;−Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;−Lys、Arg、His;−Phe、Tyr、Trp、His;および、−Asp、Glu。
2つのポリヌクレオチドの間における「類似性」が、一方のポリヌクレオチドの核酸配列を所与のポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。一方の核酸が同一であるならば、または、核酸がコード配列の一部である場合、当該核酸を含むそれぞれのトリプレットが、同じアミノ酸または保存的なアミノ酸置換をコードするならば、一方のポリヌクレオチドの核酸は第2のポリヌクレオチドの対応する核酸と類似している。
2つの配列の間におけるパーセント同一性またはパーセント類似性の決定が好ましくは、KarlinおよびAltschul(1993)(Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873〜5877)の数学的アルゴリズムを使用して達成される。そのようなアルゴリズムが、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cge)において利用可能なAltschul他(1990)(J.Mol.Biol.215:403〜410)のBLASTnプログラムおよびBLASTpプログラムに組み込まれる。
パーセント同一性またはパーセント類似性の決定が、NCBIのウエブページで推奨されるような、また、特定の長さおよび組成の配列に関しての「BLAST Program Selection Guide」に記載されるようなBLASTnプログラムおよびBLASTpプログラムの標準的なパラメーターを用いて行われる。
BLASTポリヌクレオチド検索が、BLASTnプログラムを用いて行われる。
一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが1000に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが7に設定される場合があり、これらはNCBIのウエブページにおいて短い配列(20塩基未満)について推奨される通りである。より長い配列については、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが11に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Match/mismatch Scores」が、1、−2に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが直線に設定される場合がある。フィルターおよびマスキングパラメーターについては、「Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Species−specific repeats」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「DUST Filter Settings」にチェックが入れられる場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。一般に、「Search for short nearly exact matches」がこの点に関して使用される場合があり、これにより、上記で示された設定のほとんどが提供される。この点に関してのさらなる情報は、NCBIのウエブページで公開される「BLAST Program Selection Guide」に見出される場合がある。
BLASTタンパク質検索は、BLASTpプログラムを用いて行われる。一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが「3」に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Matrix」ボックスが「BLOSUM62」に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが「Existence:11 Extension:1」に設定される場合があり、「Compositional adjustments”ボックスが“Conditional compositional score matrix adjustment”に設定される場合がある。フィルターおよびマスキングパラメーターについては、“Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。
両方のプログラムの改変、例えば、検索された配列の長さに関しての改変は、NCBIのウエブページにおいてHTML版およびPDF版で公開される「BLAST Program Selection Guide」における推奨に従って行われる。
ポリヌクレオチド:
用語「ポリヌクレオチド」は、1つだけの核酸ならびに複数の核酸を包含することが意図され、単離された核酸分子または核酸構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはプラスミドDNA(pDNA)を示す。ポリヌクレオチドは、従来型のホスホジエステル結合または非従来型の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)に見出されるアミド結合など)を含む場合がある。用語「核酸」は、ポリヌクレオチドに存在するいずれかの1つまたは複数の核酸セグメント(例えば、DNAフラグメントまたはRNAフラグメント)を示す。「単離された」核酸またはポリヌクレオチドによって、その生来的環境から取り出されている核酸分子(DNAまたはRNA)が意図される。例えば、ベクターに含有される、抗体をコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種の宿主細胞において維持される組換えポリヌクレオチド、または、溶液における(部分的または実質的に)精製されたポリペプチドが含まれる。単離されたRNA分子には、本発明のポリヌクレオチドのインビボRNA転写物またはインビトロRNA転写物が含まれる。本発明による単離されたポリヌクレオチドまたは核酸にはさらに、合成的に作製されるそのような分子が含まれる。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーターなどである場合があり、あるいは、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーターなどを包含する場合がある。
本明細書中で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「終止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)はアミノ酸に翻訳されないにもかかわらず、コード領域の一部であると見なされる場合があるが、近接配列はどれも、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコード領域の一部ではない。本発明の2つ以上のコード領域を、1つのポリヌクレオチド構築物において、例えば、1つのベクターに存在させることができ、または、別個のポリヌクレオチド構築物において、例えば、別個の(異なる)ベクターに存在させることができる。さらには、ベクターはどれも、1つだけのコード領域を含有する場合があり、または、2つ以上のコード領域を含む場合があり、例えば、1つのベクターが免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域を別々にコードする場合がある。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチドまたは核酸は、結合性分子、抗体、あるいは、そのフラグメント、変異体または誘導体をコードする核酸に融合されて、または融合されずに、異種のコード領域をコードする場合がある。異種のコード領域には、限定されないが、特殊化されたエレメントまたはモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチドまたは異種の機能的ドメインなどが含まれる。
特定の実施形態において、ポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは通常、1つまたは複数のコード領域と操作可能に連係させられるプロモーターならびに/あるいは他の転写制御エレメントまたは翻訳制御エレメントを含む場合がある。操作可能連係は、遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)のためのコード領域が、当該遺伝子産物の発現を当該調節配列の影響下または制御下に置くような様式で1つまたは複数の調節配列と連係させられるときにおいてである。2つのDNAフラグメント(例えば、ポリペプチドコード領域およびそれと連係させられるプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導により、所望される遺伝子産物をコードするmRNAの転写が生じるならば、また、これら2つのDNAフラグメントの間における連結の性質が、遺伝子産物の発現を導く発現調節配列の能力を妨げないか、または、転写されるDNAテンプレートの能力を妨げないならば、「操作可能に連係させられる」または「操作可能に連結される」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写を達成することができたならば、ポリペプチドをコードする核酸と操作可能に連係させられているであろう。プロモーターは、DNAの実質的な転写を所定の細胞においてのみ導く細胞特異的なプロモーターである場合がある。プロモーターのほかに、他の転写制御エレメントを、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終結シグナルを、細胞特異的な転写を導くためにポリヌクレオチドと操作可能に連係させることができる。好適なプロモーターおよび他の転写制御領域が本明細書中に開示される。
様々な転写制御領域が当業者に知られている。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、サイトメガロウイルス由来のプロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメント(前初期プロモーター、イントロンAとの併用で)、シミアンウイルス40由来のプロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメント(初期プロモーター)、ならびに、レトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメントなど(これらに限定されない)が含まれる。他の転写制御領域には、脊椎動物の遺伝子(例えば、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ−グロビンなど)に由来する転写制御領域ならびに遺伝子発現を真核生物細胞において制御することができる他の配列が含まれる。さらなる好適な転写制御領域には、組織特異的なプロモーターおよびエンハンサー、ならびに、リンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能であるプロモーター)が含まれる。
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に知られている。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始コドンおよび翻訳終結コドン、ならびに、ピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位、すなわち、IRES、これはまたCITE配列とも称する)が含まれるが、これらに限定されない。
他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドはRNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。
本発明のポリヌクレオチドおよび核酸コード領域は、分泌ペプチドまたはシグナルペプチドをコードし、これにより、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を導くさらなるコード領域と連係させられる場合がある。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、粗面小胞体を横断する成長途中のタンパク質鎖の移行が開始されると、成熟型タンパク質から切断されるシグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドは一般に、当該ポリペプチドのN末端に融合されるシグナルペプチドで、当該ポリペプチドの分泌型形態または「成熟型」形態をもたらすために、完全なポリペプチドまたは「全長」のポリペプチドから切断されるシグナルペプチドを有することを承知している。特定の実施形態において、生来型のシグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖または免疫グロブリン軽鎖のシグナルペプチドが使用されるか、または、操作可能に連係させられるポリペプチドの分泌を導く能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。代替では、異種の哺乳動物シグナルペプチドまたはその機能的誘導体が使用されてもよい。例えば、野生型のリーダー配列がヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ−グルクロニダーゼのリーダー配列により置き換えられる場合がある。
「結合性分子」は、本発明に関連して使用される場合、主として抗体およびそのフラグメントに関し、しかし、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1タンパク質又はポリオーマウイルスVP1様粒子(VLPs)、好ましくはJCV及び/又はBKVの型に結合する他の非抗体分子を示す場合もあり、これらには、ホルモン、受容体、リガンド、主要組織適合複合体(MHC)分子、シャペロン(例えば、熱ショックタンパク質(HSP)など)、ならびに、細胞・細胞接着分子(例えば、カドヘリンスーパーファミリー、インテグリンスーパーファミリー、C型レクチンスーパーファミリーおよび免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーなど)が含まれるが、これらに限定されない。したがって、明瞭性だけのために、また、本発明の範囲を限定することなく、下記の実施形態のほとんどが、治療剤および診断剤を開発するための好ましい結合性分子を代表する抗体および抗体様分子に関して議論される。
抗体:
用語「抗体」および用語「免疫グロブリン」は本明細書中では交換可能に使用される。本明細書で使用する場合、抗体または免疫グロブリンは、重鎖の可変ドメインを少なくとも含み、かつ、通常の場合には重鎖および軽鎖の可変ドメインを少なくとも含む、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1タンパク質及び/又はポリオーマウイルスVP1様粒子(VLPs)、好ましくはJCV及び/又はBKVの型、に対する結合性分子である。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は比較的よく理解されている(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)を参照のこと)。
より詳しく下記で議論されるように、用語「免疫グロブリン」は、生化学的に識別することができる様々な幅広いクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、それらの中のいくつかのサブクラス(例えば、γ1〜γ4)を伴って分類されることを理解するであろう。抗体の「クラス」を、IgG、IgM、IgA、IgGまたはIgEとしてそれぞれ決定するのが、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などが十分に特徴づけられており、また、機能的な特殊化を与えることが知られている。これらのクラスおよびアイソタイプのそれぞれの改変された型が、本開示を考慮して当業者には容易に認識可能であり、従って、本発明の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが明らかに本発明の範囲内であり、下記の議論は一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関する。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量がおよそ23,000ダルトンである2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量が53,000〜70,000である2つの同一の重鎖ポリペプチドとを含む。これら4つの鎖は典型的には、軽鎖が、「Y」字型の口部から始まり、可変領域の終わりまで続く腕木として重鎖を支える「Y」字型の立体配置でジスルフィド結合によって結合される。
軽鎖はカッパまたはラムダ(κ、λ)のどちらかとして分類される。それぞれの重鎖クラスがカッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のどちらかと結合し得る。一般には、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞、または、遺伝子操作された宿主細胞のどれかによって生じるとき、軽鎖および重鎖は互いに共有結合により結合し、2つの重鎖の「テール」部分が共有結合性のジスルフィド連結または非共有結合性の連結によって互いに結合する。重鎖において、アミノ酸配列が、Y字型の立体配置の二叉末端におけるN末端から、それぞれの鎖の底部におけるC末端にまで延びる。
軽鎖および重鎖はともに、構造的および機能的に相同的である領域に分けられる。用語「定常」および「可変」が機能的に使用される。これに関連して、軽鎖部分および重鎖部分の両方の可変ドメイン(VLおよびVH)により、抗原認識および特異性が決定されることが理解されるであろう。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2またはCH3)により、様々な重要な生物学的性質、例えば、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合および補体結合などが与えられる。慣例によって、定常領域ドメインの番号づけは、これらのドメインが抗体の抗原結合部位またはアミノ末端からより遠位になるにつれて大きくなる。N末端部分が可変領域であり、C末端部分が定常領域である;CH3ドメインおよびCLドメインが実際に、重鎖および軽鎖のカルボキシ末端をそれぞれ含む。
上記で示されるように、可変領域により、抗体は抗原上のエピトープを選択的に認識し、かつ、このエピトープと特異的に結合することができる。すなわち、抗体のVLドメインおよびVHドメイン、または、抗体の相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさって、三次元の抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この四元抗体構造が、Y字型のそれぞれのアームの端部に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位がVH鎖およびVL鎖のそれぞれにおける3つのCDRによって規定される。ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1タンパク質又はポリオーマウイルスVP1様粒子(VLPs)、好ましくはJCV及び又はBKVの型、に特異的に結合するための十分な構造を含有する抗体または免疫グロブリンフラグメントはどれも、本明細書中では交換可能に、「結合フラグメント」または「免疫特異性フラグメント」として示される。
抗体において、抗体は、抗体がその三次元立体配置を水性環境において取るような抗原結合ドメインを形成するために特異的に配置されるアミノ酸の短い不連続な配列である6つの超可変領域(これらは時には、それぞれの抗原結合ドメインに存在する「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる)を含む。「CDR」には、分子間の変動性をそれほど示さない4つの比較的保存された「フレームワーク」領域または「FR」が近接する。これらのフレームワーク領域は主としてβ−シートの立体配座を取り、CDRにより、このβ−シート構造をつなぐ、また、時にはこのβ−シート構造の一部を形成するループが形成される。したがって、フレームワーク領域は、CDRを鎖間の非共有結合性の相互作用によって正しい配向で配置することを提供する足場を形成するように作用する。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインにより、免疫反応性抗原におけるエピトープに対して相補的な表面が規定される。この相補的な表面は、抗体がその同種エピトープに非共有結合的に結合することを促進させる。CDRおよびフレームワーク領域を構成するアミノ酸が、それらは正確に規定されているので、当業者によっていずれかの所与の重鎖可変領域または軽鎖可変領域についてそれぞれ容易に特定され得る;「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、Kabat,E.他編、U.S.Department of Health and Human Services(1983)、および、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917を参照のこと(これらはその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
この技術分野において使用される、および/または受け入れられる用語の2つ以上の定義が存在する場合には、本明細書中で使用されるような当該用語の定義は、反するようなことが明示的に言及される場合を除き、すべてのそのような意味を包含することが意図される。具体的な一例が、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域の中に見出される不連続な抗原結合部位を記述するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域が、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって、また、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917によって記載されており(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)、この場合、それらの定義は、互いに比較されたときにはアミノ酸残基の重複またはサブセットを包含する。それにもかかわらず、抗体またはその変異体のCDRを示すためのどちらかの定義の適用は、本明細書中で定義され、かつ使用されるようなこの用語の範囲内であることが意図される。上記で引用された参考文献のそれぞれによって定義されるようなCDRを包含する適切なアミノ酸残基が、比較として下記において表1に示される。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列およびサイズに依存して変わる。当業者は、どの残基が、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられる抗体のヒトIgGサブタイプの特定の超可変領域またはCDRを含むかを常法により決定することができる。
表1:CDRの定義
1
1表1におけるすべてのCDR定義の番号表記は、Kabat他によって示される番号表記慣例に従う(下記を参照のこと)。
Kabat他はまた、どのような抗体に対しても適用可能である可変ドメイン配列のための番号表記システムを定義した。当業者は、「Kabat番号表記」のこのシステムを、配列そのものを超える実験的データに何ら頼ることなく、どのような可変ドメイン配列に対してでも一義的に割り当てることができる。本明細書中で使用される場合、「Kabat番号表記」は、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって示される番号表記システムを示す。別途指定される場合を除き、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体における具体的なアミノ酸残基位置の番号表記に対する言及は、Kabat番号表記システムに従っており、しかしながら、Kabat番号表記システムは理論的であり、本発明のどの抗体にも等しく適用されない場合がある。例えば、最初のCDRの位置に依存して、その後のCDRはどちらかの方向でずれる場合がある。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、免疫特異性フラグメント、変異体または誘導体には、ポリクローナル性、モノクローナル性、多特異性、ヒト型、ヒト化型、霊長類化型、マウス化型またはキメラ型の抗体、単鎖抗体、エピトープ結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’およびF(ab’)2)、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VLドメインまたはVHドメインのどちらかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーによって作製されるフラグメント、ならびに、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書中に開示される抗体に対する抗Id抗体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。scFV分子がこの技術分野では知られており、例えば、米国特許第5,892,019号に記載される。本発明の免疫グロブリン分子または抗体分子は、免疫グロブリン分子のどのようなタイプのものも(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、どのようなクラスのものも(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはどのようなサブクラスのものも可能である。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、五価構造を有するIgMまたはその誘導体ではない。特に、本発明の具体的な適用において、とりわけ治療的使用において、IgMはIgGおよび他の二価抗体または対応する結合性分子よりも有用でない。これは、IgMは、その五価構造のために、また、親和性成熟化の欠如のために、非特異的な交差反応性および非常に低い親和性を示すことが多いからである。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体はポリクローナル抗体でない。すなわち、本発明の抗体は、血漿の免疫グロブリンサンプルから得られる混合物ではなく、むしろ、1つの特定の抗体種から実質的になる。
単鎖抗体を含めて、抗体フラグメントは、可変領域(1つまたは複数)を単独で、あるいは、下記の全体または一部分との組合せで含む場合がある:ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメイン。また、本発明には、可変領域(1つまたは複数)と、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインとのどのような組合せをも含む、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1タンパク質及び/又はポリオーマウイルスVP1様粒子(VLP)、好ましくはJCV及び/又はBKVの型、を認識する、抗体及び抗体様結合分子が含まれる。本発明の抗体またはその免疫特異性フラグメントは、鳥類および哺乳動物を含めて、どのような動物起源に由来してもよい。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマまたはニワトリの抗体である。別の実施形態において、可変領域が起源において(例えば、サメからの)コンドリクトイド(condricthoid)である場合がある。
1つの態様において、本発明の抗体は、ヒトから単離されるヒトモノクローナル抗体である。場合により、ヒト抗体のフレームワーク領域がデータベースにおける該当するヒト生殖系列可変領域配列に一致させてアライメントされ、適合化される;例えば、MRC Centre for Protein Engineering(Cambridge、英国)によって提供されるVbase(http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)を参照のこと。例えば、真の生殖系列配列から潜在的に逸脱すると見なされるアミノ酸は、クローニング過程の期間中に組み込まれるPCRプライマー配列に起因し得ると思われる。人為的に作製されたヒト様抗体、例えば、ファージディスプレーされた抗体ライブラリーまたは異種マウスに由来する単鎖抗体フラグメント(scFv)などと比較した場合、本発明のヒトモノクローナル抗体は、(i)代理動物の免疫応答ではなく、ヒトの免疫応答を使用して得られること、すなわち、抗体が、ヒト体内におけるその関連する立体配座におけるポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP(好ましくは、JCVおよび/またはBKVのタイプのもの)に対する応答で作製されていること、(ii)ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP(好ましくは、JCVおよび/またはBKVのタイプのもの)の存在について少なくとも有意であること、そして、(iii)抗体がヒト起源であるので、自己抗原に対する交差反応性の危険性が最小限に抑えられることによって特徴づけられる。したがって、本発明によれば、用語「ヒトモノクローナル抗体」、用語「ヒトモノクローナル自己抗体」および用語「ヒト抗体」などは、ヒト起源であるポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子、および/または、ポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子(好ましくは、JCVおよび/またはBKVのタイプのもの)を示すために、すなわち、ヒト細胞(例えば、B細胞またはそのハイブリドーマなど)から単離されているか、あるいは、cDNAがヒト細胞(例えば、ヒトメモリーB細胞)のmRNAから直接にクローン化されているポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子、および/または、ポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子(好ましくは、JCVおよび/またはBKVのタイプのもの)を示すために使用される。ヒト抗体は、アミノ酸置換が、例えば、結合特性を改善するために、当該抗体においてたとえ行われるにしても、依然として「ヒト」である。
ヒト免疫グロブリンライブラリーに由来する抗体、あるいは、1つまたは複数のヒト免疫グロブリンについて遺伝子組換えであり、かつ、内因性免疫グロブリンを発現しない動物に由来する抗体(下記において、また、例えば、米国特許第5,939,598号(Kucherlapati他)に記載されるような抗体)は、本発明の真のヒト抗体から区別するためにヒト様抗体として示される。
例えば、ヒト様抗体の重鎖および軽鎖の対形成、例えば、ファージディスプレーから典型的には単離される合成抗体および半合成抗体などは、その対形成が元々のヒトB細胞において生じていたような元の対形成を必ずしも反映していない。したがって、先行技術において一般に使用されるような組換え発現ライブラリーから得られるFabフラグメントおよびscFvフラグメントは、免疫原性および安定性に対するすべての可能な関連した影響に関して人為的であると見なされる。
対照的には、本発明は、その治療的有用性およびヒトにおけるその寛容性によって特徴づけられる、選択されたヒト対象から得られる単離された親和性成熟している抗体を提供する。
本明細書中で使用される場合、用語「齧歯類化(された)抗体」または「齧歯類化(された)免疫グロブリン」は、本発明のヒト抗体に由来する1つまたは複数のCDRと、齧歯類抗体配列に基づくアミノ酸の置換および/または欠失および/または挿入を含有するヒトフレームワーク領域とを含む抗体を示す。齧歯類を示すとき、好ましくは、マウスおよびラットに起源を有する配列が使用され、この場合、そのような配列を含む抗体は、「マウス化された」または「ラット化された」としてそれぞれ示される。CDRを提供するヒト免疫グロブリンは「親」または「アクセプター」と呼ばれ、フレームワークの変化を提供する齧歯類抗体は「ドナー」と呼ばれる。定常領域は存在している必要はないが、定常領域が存在するならば、定常領域は通常、齧歯類抗体の定常領域と実質的に同一であり、すなわち、少なくとも約85%〜90%が同一であり、好ましくは約95%以上が同一である。したがって、いくつかの実施形態において、全長のマウス化されたヒト重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリンは、マウスの定常領域、ヒトのCDR、および、いくつかの「マウス化する」アミノ酸置換を有する実質的にはヒトのフレームワークを含有する。典型的には、「マウス化抗体」は、マウス化された可変軽鎖および/またはマウス化された可変重鎖を含む抗体である。例えば、マウス化抗体は、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非マウス性であるので、典型的なキメラ抗体を包含しないであろう。「マウス化」のプロセスによって「マウス化」されている改変された抗体は、CDRを提供する親抗体と同じ抗原に結合し、かつ、通常の場合、マウスにおける免疫原性が、親抗体と比較してより低い。「マウス化」抗体に関しての上記説明は、他の「齧歯類化」抗体について、例えば、ラットの配列がマウスの代わりに使用される「ラット化抗体」などについて同様に当てはまる。
本明細書中で使用される場合、用語「重鎖部分」には、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央および/または下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインあるいはそれらの変異体またはフラグメントのうちの少なくとも1つを含む。例えば、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、および、CH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、および、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖;または、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む場合がある。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部分(例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部)を欠く場合がある。上記で示されるように、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)は、天然に存在する免疫グロブリン分子からアミノ酸配列において異なるように改変され得ることが、当業者によって理解されるであろう。
本明細書中に開示されるある特定の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、マルチマーの1つのポリペプチド鎖の重鎖部分が、当該マルチマーの第2のポリペプチド鎖における重鎖部分と同一である。代替では、本発明の重鎖部分を含有するモノマーは同一でない。例えば、それぞれのモノマーが、異なる標的結合部位を含む場合があり、これにより、例えば、二重特異性抗体またはディアボディを形成する。
別の実施形態において、本明細書中に開示される抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、ただ1つのポリペプチド鎖から構成され(例えば、scFv)、潜在的なインビボ治療適用および診断適用のために細胞内で発現させられることになる(細胞内抗体)。
本明細書中に開示される診断方法および処置方法において使用されるための結合性ポリペプチドの重鎖部分が、異なる免疫グロブリン分子に由来してもよい。例えば、ポリペプチドの重鎖部分が、IgG1分子に由来するCH1ドメインと、IgG3分子に由来するヒンジ領域とを含む場合がある。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG4分子に由来するキメラなヒンジを含むことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「軽鎖部分」には、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。好ましくは、軽鎖部分はVLドメインまたはCLドメインの少なくとも一方を含む。
抗体のためのペプチドまたはポリペプチドのエピトープの最小サイズは約4個〜5個のアミノ酸であると考えられる。ペプチドまたはポリペプチドのエピトープは好ましくは、少なくとも7個、より好ましくは少なくとも9個、最も好ましくは少なくとも約15個〜約30個のアミノ酸を含有する。CDRが抗原性のペプチドまたはポリペプチドをその三次形態で認識できるので、エピトープを構成するアミノ酸は連続している必要はなく、場合によっては、同じペプチド鎖に存在していなくてもよい。本発明において、本発明の抗体によって認識されるペプチドまたはポリペプチドのエピトープは、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP、好ましくはJCV及び/又はBKVの型、の少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、より好ましくは少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、または、約15個〜約30個の連続するアミノ酸または非連続なアミノ酸の配列を含有する。
「特異的に結合する」または「特異的に認識する」によって、これらは本明細書中では交換可能に使用されており、結合性分子、例えば、抗体が、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、および、この結合は、抗原結合ドメインとエピトープとの間における何らかの相補性を伴うことが一般に意味される。この定義によれば、抗体は、抗体がランダムな無関係なエピトープに結合するであろうよりも容易にその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合するとき、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的な親和性を限定するために本明細書中では使用される。例えば、抗体「A」は、所与のエピトープについて、抗体「B」よりも大きい親和性を有すると見なされる場合があり、または、抗体「A」は、関連したエピトープ「D」について有するよりも大きい特異性によりエピトープ「C」に結合すると言われる場合がある。
存在する場合、抗原との抗体の用語「免疫学的結合特性」または他の結合特性はその文法的形態のすべてで、抗体の特異性、親和性、交差反応性および他の結合特性を示す。
「優先的に結合する」によって、結合性分子、例えば、抗体が、関連したエピトープ、類似したエピトープ、相同的なエピトープまたは類似的なエピトープに結合するであろうよりも容易にエピトープに特異的に結合することが意味される。したがって、所与のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、そのような抗体が関連のエピトープと交差反応することがあるとしても、関連のエピトープよりもそのエピトープに結合する可能性が大きいであろう。
非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも小さい解離定数(KD)により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1の抗原と優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
別の非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも小さいオフ速度(k(off))により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、5×10−2sec−1以下、10−2sec−1以下、5×10−3sec−1以下または10−3sec−1以下であるオフ速度(k(off))によりポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1タンパク質及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP、あるいはそのフラグメント又は変異体、好ましくはJCV及び/又はBKVの型、と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、5×10−4sec−1以下、10−4sec−1以下、5×10−5sec−1以下または10−5sec−1以下、5×10−6sec−1以下、10−6sec−1以下、5×10−7sec−1以下または10−7sec−1以下であるオフ速度(k(off))によりポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1タンパク質及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP、あるいはそのフラグメント又は変異体、好ましくはJCV及び/又はBKVの型、と結合すると言われる場合がある。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、103M−1sec−1以上、5×103M−1sec−1以上、104M−1sec−1以上または5×104M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1タンパク質及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP、あるいはそのフラグメント又は変異体、好ましくはJCV及び/又はBKVの型、と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、105M−1sec−1以上、5×105M−1sec−1以上、106M−1sec−1以上または5x106M−1sec−1以上または107M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1タンパク質及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP、あるいはそのフラグメント又は変異体、好ましくはJCV及び/又はBKVの型、と結合すると言われる場合がある。
結合性分子、例えば、抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合をある程度阻止する程度にそのエピトープに優先的に結合するならば、そのエピトープに対する参照抗体の結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害が、この技術分野において知られているいずれかの方法によって、例えば、競合的ELISAアッセイによって求められてもよい。抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%または少なくとも50%競合的に阻害すると言われる場合がある。
本明細書中で使用される場合、用語「親和性」は、結合性分子(例えば、免疫グロブリン分子)のCDRとの個々のエピトープの結合の強さの尺度を示す(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988)、27頁〜28頁を参照のこと)。本明細書中で使用される場合、用語「アビディティー」は、免疫グロブリンの集合と抗原との複合体の全般的な安定性、すなわち、抗原との免疫グロブリン混合物の機能的結合強度を示す(例えば、Harlow、29頁〜34頁を参照のこと)。アビディティーは、特異的なエピトープとの集団内の個々の免疫グロブリン分子の親和性に、およびまた、免疫グロブリンおよび抗原の結合価の両方に関連づけられる。例えば、二価のモノクローナル抗体と、高度に反復するエピトープ構造を有する抗原(例えば、ポリマーなど)との間における相互作用が、高いアビディティーの1つであろう。抗原についての抗体の親和性またはアビディティーを、いずれかの好適な方法(例えば、Berzofsky他、「Antibody−Antigen Interactions」、Fundamental Immunology、Paul,W.E.編、Raven Press New York、NY(1984);Kuby,Janis Immunology、W.H.Freeman and Company、New York、NY(1992)を参照のこと)および本明細書中に記載される方法を使用して実験的に求めることができる。抗原についての抗体の親和性を測定するための一般的な技術には、ELISA、RIAおよび表面プラズモン共鳴が含まれる。特定の抗体−抗原相互作用の測定された親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)のもとで測定されるならば異なる可能性がある。したがって、親和性および他の抗原結合パラメーター(例えば、KD、IC50)の測定は好ましくは、抗体および抗原の標準化された溶液ならびに標準化された緩衝液を用いて行われる。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、それらの交差反応性に関して記載または指定される場合がある。本明細書中で使用される場合、用語「交差反応性」は、抗体(これは1つの抗原について特異的である)が第2の抗原と反応する能力、すなわち、2つの異なる抗原性物質の間における関連度の度合いを示す。したがって、抗体は、その形成を誘導したエピトープとは異なるエピトープに結合するならば、交差反応性である。交差反応性エピトープは一般に、誘導用エピトープと同じ相補的な構造的特徴の多くを含有しており、また、場合により、実際には元のエピトープよりも良好にはまる場合がある。
例えば、ある種の抗体は、関連しているが、同一でないエピトープと結合するという点で、例えば、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法および本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%および少なくとも50%の同一性を有するエピトープと結合するという点で、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法および本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満および50%未満の同一性を有するエピトープと結合しないならば、交差反応性をほとんど有していないか、または全く有していないと言われる場合がある。抗体は、ある特定のエピトープのどのような他のアナログ、オルソログまたはホモログとも結合しないならば、そのエピトープについて「非常に特異的」であると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP、好ましくはJCV及び/又はBKVの型、に対するそれらの結合親和性に関して記載または指定される場合がある。好ましい結合親和性には、解離定数つまりKdが5×10−2M未満、10−2M未満、5×10−3M未満、10−3M未満、5×10−4M未満、10−4M未満、5×10−5M未満、10−5M未満、5×10−6M未満、10−6M未満、5×10−7M未満、10−7M未満、5×10−8M未満、10−8M未満、5×10−9M未満、10−9M未満、5×10−10M未満、10−10M未満、5×10−11M未満、10−11M未満、5×10−12M未満、10−12M未満、5×10−13M未満、10−13M未満、5×10−14M未満、10−14M未満、5×10−15M未満または10−15M未満である結合親和性が含まれる。
上記で示されたように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造および三次元立体配置が広く知られている。本明細書中で使用される場合、用語「VHドメイン」には、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインが含まれ、用語「CH1ドメイン」には、免疫グロブリン重鎖の第1の(最もアミノ末端側の)定常領域ドメインが含まれる。CH1ドメインはVHドメインに隣接しており、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端側である。
本明細書中で使用される場合、用語「CH2ドメイン」には、従来の番号表記スキームを使用して、例えば、抗体のおよそ残基244から残基360にまで広がる重鎖分子の一部分が含まれる(残基244〜残基360、Kabat番号表記システム;残基231〜残基340、EU番号表記システム;Kabat EA他(前掲書中)を参照のこと)。CH2ドメインは、別のドメインと密に対形成しないという点で独特である。むしろ、2つのN−連結している分岐した炭水化物鎖が、無傷の生来型IgG分子の2つのCH2ドメインの間に置かれる。CH3ドメインがIgG分子のCH2ドメインからC末端にまで広がり、およそ108残基を含むこともまた広く記録されている。
本明細書中で使用される場合、用語「ヒンジ領域」には、CH1ドメインをCH2ドメインにつなぐ重鎖分子の一部分が含まれる。このヒンジ領域はおよそ25残基を含み、かつ、柔軟であり、したがって、2つのN末端の抗原結合領域が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は3つの異なったドメイン(上部、中央および下部のヒンジドメイン)に細分化することができる(Roux他、J.Immunol.161(1998)、4083〜4090を参照のこと)。
本明細書中で使用される場合、用語「ジスルフィド結合」には、2つのイオウ原子の間に形成される共有結合性の結合が含まれる。アミノ酸のシステインは、ジスルフィド結合を形成することができるか、または、第2のチオール基と架橋することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子において、CH1領域およびCL領域がジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖が、Kabat番号表記システムを使用して239位および242位(226位または229位、EU番号表記システム)に対応する位置での2つのスルフィド結合によって連結される。
本明細書中で使用される場合、用語「連結される」、「融合される」または「融合」は交換可能に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲート化または組換え手段を含むどのような手段によってでも、2つ以上の要素または成分を一緒につなぐことを示す。「インフレーム融合」は、2つ以上のポリヌクレオチド・オープンリーディングフレーム(ORF)を、これらの元々のORFの正しい翻訳読み枠を維持する様式で、連続したより長いORFを形成するためにつなぐことを示す。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含有する単一タンパク質である(そのようなセグメントは通常、自然界ではそのようにつながれない)。したがって、読み枠が、融合されたセグメントの全体にわたって連続にされるにもかかわらず、これらのセグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的または空間的に隔てられる場合がある。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドが、インフレーム融合される場合があり、しかし、「融合された」CDRが、連続したポリペプチドの一部として共翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域またはさらなるCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって隔てられる場合がある。
用語「発現」は、本明細書中で使用される場合、遺伝子が生化学物質(例えば、RNAまたはポリペプチド)をもたらすプロセスを示す。このプロセスには、限定されないが、遺伝子ノックダウンならびに一過性発現および安定的発現の両方を含めて、細胞内における遺伝子の機能的な存在のどのような顕在化も含まれる。このプロセスには、限定されないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、小さいヘアピンRNA(shRNA)、小さい干渉性RNA(siRNA)または何らかの他のRNA産物への遺伝子の転写、および、ポリペプチドへのmRNAの翻訳が含まれる。最終的な所望される産物が生化学物質であるならば、発現には、そのような生化学物質および何らかの前駆体を生じさせることが含まれる。遺伝子の発現により、「遺伝子産物」がもたらされる。本明細書中で使用される場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、または、転写物から翻訳されるポリペプチドのどちらもが可能である。本明細書中に記載される遺伝子産物にはさらに、転写後修飾(例えば、ポリアデニル化)を伴う核酸、または、翻訳後修飾(例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、および、タンパク質分解的切断など)を伴うポリペプチドが含まれる。
本明細書中で使用される場合、用語「サンプル」は、対象または患者から得られる任意の生物学的材料を示す。1つの態様において、サンプルは、血液、腹腔液、CSF、唾液または尿を含むことができる。別の態様において、サンプルは、全血、血漿、血清、血液サンプルから富化されるB細胞、および、培養された細胞(例えば、対象からのB細胞)を含むことができる。サンプルにはまた、神経組織を含む生検サンプルまたは組織サンプルが含まれ得る。さらに他の態様において、サンプルは、細胞全体および/または細胞の溶解物を含むことができる。血液サンプルをこの技術分野において知られている方法によって集めることができる。1つの態様において、ペレットを、200μlの緩衝液(20mMのTris(pH.7.5)、0.5%のNonidet、1mMのEDTA、1mMのPMSF、0.1MのNaCl、IXのSigmaプロテアーゼ阻害剤、ならびに、IXのSigmaホスファターゼ阻害剤1および2)において4℃でボルテックス処理することによって再懸濁することができる。懸濁物は、断続的なボルテックス処理を行いながら20分間、氷上に保つことができる。15,000×gにおいて5分間、約4℃で遠心分離した後、上清のアリコートを約−70℃で貯蔵することができる。
疾患:
別途言及される場合を除き、用語「障害」および「疾患」は本明細書中では交換可能に使用され、対象、動物、単離された器官、組織または細胞/細胞培養物における望まれない任意の生理学的変化を含む。
ポリオーマウイルスの様々な感染により、いくつかの疾患の発症が免疫抑制患者においてポリオーマウイルスの再活性化の後で引き起こされる。伝染様式は広範囲であり、ほとんどが、ヒトとヒトとの間における直接的な汚染を介して生じる。それにもかかわらず、汚染された水もまた、ポリオーマウイルスについての最も重要な貯留所の1つである。JCVおよび/またはBKVのタイプのポリオーマウイルスによる一次感染はほとんどの場合に幼児期に起こり、その一方で、ポリオーマウイルスは、例えば、免疫抑制状態が発症するような特定の病理学的状態および/または生理学的状態の期間中に再活性化されるまでは潜伏状態で留まっている。JCVまたはBKVのようなポリオーマウイルスに伴う様々な疾患は広範囲である。JCVの最も一般的な疾患が、免疫機能における欠損を引き起こすヒト脳の誘発された脱髄疾患、すなわち、進行性多巣性白質脳症(PML)である。PMLが免疫調節療法の副作用として発症することが、多発性硬化症(MS)およびクローン病、ホジキンリンパ腫、関節リウマチ、自己免疫性血液学的障害、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、B細胞リンパ腫、尋常性乾癬、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、ならびに、臓器移植拒絶の抑制のために処置される患者における致死的PML症例の報告により、高い関心事となっている(Frenchy他、Clin.Microbiol.Rev.、25(2012)、471〜506)。さらには、JCVはまた、他の神経学的障害およびヒトガンにも伴っていた。JCVのほかに、BKVはまた、呼吸樹を標的とし、これにより、上気道感染症および肺炎を引き起こし、ならびに、出血性膀胱炎を膀胱への感染によって引き起こし、または、腎臓、中枢神経系(CNS)、眼、消化管および内皮への感染により、ポリオーマウイルスに関連づけられる間質性腎臓疾患、尿管狭窄、移植片の喪失、髄膜炎、脳炎、網膜炎、大腸炎および血管炎のような疾患を引き起こす。本発明は、ポリオーマウイルス感染症に対する処置またはワクチン接種のための、健康者ドナーまたはPML−IRIS患者のプールからのいくつかのヒト由来抗体(これらは、より詳しくは本明細書中下記で記載されるようにクローン化および組換え産生された)を提供する。
本発明の1つの実施形態において、本発明の抗体、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は、PML、顆粒ニューロンの感染、高色素性核、顆粒細胞神経症、脳オートトロフィー、脳症、髄膜炎、ポリオーマウイルス誘発腫瘍、免疫再構築炎症反応症候群(IRIS)、出血性膀胱炎、肺炎、網膜炎、大腸炎、血管炎、間質性腎臓疾患、気道の感染症からなる群からの疾患の予防的処置および/または治療的処置、また、そのような疾患の進行あるいはその処置に対する応答および/または診断をモニターするための医薬組成物または診断組成物を調製するために使用される。
さらには、本発明の抗体、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は、ポリオーマウイルスの感染、例えば、JCVおよび/またはBKVの感染を検出するための組成物を調製するために使用される。
PMLなどの障害が、中枢神経系(CNS)の脱髄を引き起こし、また、重篤な場合には死を引き起こす可能性がある免疫抑制患者におけるJCV感染症の症状として多くの場合に認められる。
多くの障害がポリオーマウイルス感染に伴うことが知られている。したがって、1つの実施形態において、本発明の様々な抗体、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞は、ポリオーマウイルス感染後における一群の障害の予防的処置および/または治療的処置のため、そのような疾患を改善するため、そのような疾患の進行またはそのような疾患の処置に対する応答をモニターするため、および/または、そのような疾患を診断するための医薬組成物または診断組成物を調製するために、使用される。
処置:
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」または「処置」は治療的処置および予防的または防止的な対策の両方を示し、この場合、その目的が、望まれない生理学的変化または障害を防止することまたは抑制すること(緩和すること)である。有益な臨床結果または所望される臨床結果には、検出可能であるか、または検出不能であるかにかかわりなく、症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延または緩速化、疾患状態の改善または緩和、および、寛解(部分的または全体的を問わず)が含まれるが、これに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合の予想された生存と比較して、生存を延ばすことを意味することができる。処置を必要としている人々には、状態または障害を既に有する人々ならびに状態または障害を有する傾向がある人々、あるいは、状態または障害の発現が防止されなければならない人々が含まれる。
別途言及される場合を除き、用語「薬物」、「医薬」または「医薬品」は本明細書中では交換可能に使用され、下記のすべてを包含するものとするが、それに限定されない:(A)体内使用または体外使用のための物品、医薬および調製物、ならびに、ヒトまたは他の動物のどちらかの疾患の診断、治療、緩和、処置または防止のために使用されることが意図されるあらゆる物質または物質の混合物;ならびに、(B)ヒトまたは他の動物の身体の構造またはどのような機能に対してでも影響を及ぼすことが意図される(食物以外)の物品、医薬および調製物;ならびに(C)条項(A)および条項(B)において指定されるあらゆる物品の成分としての使用のために意図される物品。用語「薬物」、「医薬」または「医薬品」は、1つまたは複数の「薬剤」、「化合物」、「物質」または「(化学的)組成物」をフィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして、また、何らかの他の関連では、他の医薬的に不活性な賦形剤もまた、フィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして含有するか、あるいは、「薬物」、「医薬」または「医薬品」の容易な輸送、崩壊、解離、溶解および生物学的利用性を、ヒトまたは他の動物の体内の意図された標的場所(例えば、皮膚、胃内または腸内)において保証する、ヒトまたは他の動物のどちらかでの使用のために意図される調製物の完全な処方を包含するものとする。用語「薬剤」、「化合物」または「物質」は本明細書中では交換可能に使用され、より具体的な関連では、すべての薬理学的に活性な薬剤、すなわち、本発明の方法によって所望の生物学的または薬理学的な効果を誘発するか、あるいは、そのような可能な薬理学的効果を誘発することができることについて研究または試験される薬剤を包含するものとするが、これらに限定されない。
「対象」または「個体」または「動物」または「患者」または「哺乳動物」によって、診断、予後、防止または治療が望まれるあらゆる対象、特に哺乳動物対象、例えば、ヒト患者が意味される。
医薬用キャリア:
医薬的に許容されるキャリアおよび投与経路を、当業者に知られている対応する文献から選ぶことができる。本発明の医薬組成物は、この技術分野において広く知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0−683−306472);Vaccine Protocols、第2版(Robinson他、Humana Press、Totowa、New Jersey、米国、2003);Banga、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems、第2版(Taylor and Francis(2006)、ISBN:0−8493−1630−8)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野では広く知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、広く知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与を種々の方式によって行うことができる。例には、医薬的に許容されるキャリアを含有する組成物を、経口方法、鼻腔内方法、直腸方法、局所的方法、腹腔内方法、静脈内方法、筋肉内方法、皮下方法、真皮下方法、経皮的方法、クモ膜下腔内方法および頭蓋内方法を介して投与することが含まれる。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤および等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液または他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpHおよび等張性状態に調節される。経口投与用の医薬組成物、例えば、単一ドメイン抗体分子(例えば、「ナノボディー(商標)」)などもまた、本発明において想定される。そのような経口配合物は、錠剤、カプセル、粉末、液体または半固体の形態である場合がある。錠剤は、固体のキャリア、例えば、ゼラチンまたはアジュバントなどを含む場合がある。直腸投与または膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある(O’Hagan他、Nature Reviews,Drug Discovery 2(9)(2003)、727〜735もまた参照のこと)。様々なタイプの投与のために好適である配合物に関するさらなる指針を、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mace Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版(1985)および対応する更新版)において見出すことができる。薬物送達のための方法の簡単な総説については、Langer、Science 249(1990)、1527〜1533を参照のこと。
II.本発明の抗体
本発明は一般には、ヒト抗ポリオーマウイルス抗体、抗ポリオーマウイルスVP1抗体、および、抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体、ならびに、それらの抗原結合フラグメントに関連し、この場合、これらは好ましくは、実施例において例示される抗体について概略されるような免疫学的結合特性および/または生物学的性質を示す。本発明によれば、ポリオーマウイルスに対して特異的なヒトモノクローナル抗体、好ましくは、JCVおよび/またはBKVのタイプのポリオーマウイルスに対して特異的なヒトモノクローナル抗体が、HLAタイピングおよび抗JCV力価が不明である健康な高齢のヒト対象のプール、堅固なJCV特異的抗体産生を示したHLA−DRB1*04:01+の健康なドナーのプール、ならびに、多発性硬化症(MS)を処置するためにモノクローナル抗体治療を受け、かつ、PMLおよびPML−IRISの症状を発症した患者のプールからクローン化された。
本発明に従って行われた実験の過程において、ヒトメモリーB細胞レパートリーの抗体が、ポリオーマウイルスVPタンパク質特異的結合についてハイスループット分析によってスクリーニングされた。ポリオーマウイルスVP1タンパク質について陽性であり、しかし、BSAについては陽性でないB細胞培養物のみが抗体クローニングに供された。
この手段によって、いくつかの抗体を単離することができた。選択された抗体をさらに、クラス決定および軽鎖サブクラス決定のために分析した。メモリーB細胞の培養物から得られる選択された関連する抗体メッセージをその後、RT−PCRによって転写し、クローン化し、組換え産生のための発現ベクターの中に一緒にすることができた。HEK293細胞またはCHO細胞におけるヒト抗体の組換え発現、および、ポリオーマウイルスのVP1タンパク質に対する、好ましくは、ヒトJCV VP1タンパク質および/またはヒトBKV VP1タンパク質に対するそれらの結合特異性のその後の特徴づけ(図2〜図4および図7;実施例2〜実施例4および実施例10)により、JCVおよび/またはBKV、ならびに、JCV VP1タンパク質および/またはBKV VP1タンパク質に対して非常に特異的である様々なヒト抗体が初めてクローン化されていることが確認された。
さらには、それらの抗体を、異なるポリオーマウイルスVP1タンパク質に対するそれらの結合特異性および結合効率、ならびに、ウイルス様粒子(VLP)に対する結合について試験した。
したがって、本発明は一般には、ヒト由来のモノクローナルな抗ポリオーマウイルス抗体、抗ポリオーマウイルスVP1タンパク質抗体、および/または、抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体、ならびに、それらの結合フラグメント、誘導体および変化体、好ましくは、JCVおよび/またはBKVのタイプのものに関連する。
本発明の1つの実施形態において、抗体はヒトポリオーマウイルスおよび/またはその抗原と結合することができ、好ましくはJCVおよび/またはBKVと結合することができる。
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、変異したヒトポリオーマウイルスおよび/またはその抗原、ポリオーマウイルスVP1タンパク質、および/または、ポリオーマウイルスVP1 VLPに結合することができ、好ましくは、JCVタイプおよび/またはBKVタイプのものに結合することができる。言い換えれば、好ましくは、本発明のヒト由来抗ポリオーマウイルス抗体の結合親和性はウイルスタンパク質における変異によって実質的に影響されない;実施例12および図11を参照のこと。このことは、特にウイルス粒子またはVLPにおいて示されるときにはウイルス抗原のアミノ酸配列における個々のアミノ酸置換によって影響を受けないかもしれない不連続なエピトープまたは立体配座的なエピトープを認識するそれらの抗体については特に当てはまるかもしれない。
1つの実施形態において、本発明は、ポリオーマウイルス抗体、あるいは、その抗原結合フラグメント、変化体または誘導体に関し、ただし、この場合、抗体は、下記の抗体からなる群から選択される参照抗体と同じポリオーマウイルスのエピトープに特異的に結合する:(A)NI−307.13G4、(B)NI−307.18E12、(C)NI−307.19F8、(D)NI−307.20F5、(E)NI−307.61D11、(F)NI−307.3G4、(G)NI−307.6A2、(H)NI−307.11G6、(I)NI−307.19F10、(J)NI−307.24F3、(K)NI−307.25G10、(L)NI−307.43A11、(M)NI−307.57D5、(N)NI−307.78C3、(O)NI−307.1E1、(P)NI−307.5H3、(Q)NI−307.24C6、(R)NI−307.26E10、(S)NI−307.11G6、(T)NI−307.13G4、(U)NI−307.61D11、(V)NI−307.98D3、(W)NI−307.72F7、(X)NI−307.45E10、(Y)NI−307.72F10、(Z)NI−307.56A8、(A2)NI−307.27C11、(B2)NI−307.47B11、(C2)NI−307.26A3、(D2)NI−307.27C2、(E2)NI−307.57D4、(F2)NI−307.50H4、(G2)NI−307.53B11、(H2)NI−307.7J3、(I2)NI−307.59A7、(J2)NI−307.105A6、(K2)NI−307.29B1、(L2)NI−307.44F6B、(M2)NI−307.98H1、(N2)NI−307.43E8、(O2)NI−307.18F4A。エピトープマッピングにより、aa333−LPGDPDM−339を含むヒトポリオーマウイルス内の配列が、本発明の抗体NI−307.11G6によって認識される特異な線状エピトープとして特定され、また、aa124−SQATHDN−130を含むヒトポリオーマウイルスJCV内の配列が、本発明の抗体NI−307.13G4によって認識される特異な線状エピトープとして特定された(図8および実施例7を参照のこと)。したがって、1つの実施形態において、LPGDPDM(配列番号85)、GQATHDN(配列番号86)、MRYVDKYGQLQT(配列番号87)またはRVFEGTEELPG(配列番号88)のアミノ酸配列を含むか、あるいは、そのようなアミノ酸配列からなるポリオーマウイルスエピトープと特異的に結合する本発明の抗体が提供される。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、GQATHDN(配列番号86)、MRYVDKYGQLQT(配列番号87)を含むエピトープと結合する。
そのうえ、実施例4〜実施例7および実施例10において明らかにされるような、また、図2〜図4および図7に示されるような最初の実験観察によってとらわれることを意図しないが、本発明のヒトモノクローナル抗体の(A)NI−307.13G4、(B)NI−307.19F10、(C)NI−307.19F8、(D)NI−307.11G6、(E)NI−307.17F12、(F)NI−307.6A2、(G)NI−307.5H3、(H)NI−307.25G10、(I)NI−307.26E10、(J)NI−307.1E1、(K)NI−307.24C6、(L)NI−307.78C3、(M)NI−307.57D5、(N)NI−307.43A11、(O)NI−307.3G4、(P)NI−307.61D11、(Q)NI−307.24F3、(R)NI−307.18E12、(S)NI−307.20F5、(T)NI−307.58C7、(U)NI−307.105C7、(V)NI−307.98D3、(W)NI−307.72F7、(X)NI−307.45E10、(Y)NI−307.72F10、(Z)NI−307.56A8、(A2)NI−307.27C11、(B2)NI−307.47B11、(C2)NI−307.26A3、(D2)NI−307.27C2、(E2)NI−307.57D4、(F2)NI−307.50H4、(G2)NI−307.53B11、(H2)NI−307.7J3、(I2)NI−307.59A7、(J2)NI−307.105A6、(K2)NI−307.29B1、(L2)NI−307.44F6B、(M2)NI−307.98H1、(N2)NI−307.43E8および(O2)NI−307.18F4Aは好ましくは、ポリオーマウイルスVP1タンパク質およびVP1 VLPタンパク質に特異的に結合し、かつ、BSAを実質的に認識しないことにおいて特徴づけられる;実施例4〜実施例6および実施例10を参照のこと。したがって、本発明は、様々な結合特異性を有し、したがって、診断目的および治療目的のために特に有用であるヒト抗ポリオーマウイルス抗体、抗JCV抗体および/または抗BKV抗体の一組を提供する。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、実施例2において記載されるように、JCVのVP1に特異的に結合し、かつ、BKVのVP1には結合しないか、または弱く結合する例示的な組換えヒト抗体のNI−307.13G4、NI−307.18E12、NI−307.19F8、NI−307.20F5およびNI−307.61D11の結合特性を示す。この関連において、結合特異性は、図2における例示的抗体のNI−307.13G4、NI−307.18E12、NI−307.18F4A、NI−307.19F8、NI−307.20F5およびNI−307.61D11について示されるような範囲である場合があり、すなわち、50%最大有効濃度(EC50)が、NI−307.13G4、NI−307.18E12、NI−307.18F4A、NI−307.19F8、NI−307.20F5およびNI−307.61D11について示されるように、JCVのVP1については約1pM〜100nMであり、好ましくはEC50が約10pM〜50nMであり、最も好ましくはEC50が約100pM〜5nMである。
加えて、または、代替において、本発明の抗ポリオーマウイルス抗体は、JCVのVP1およびBKVのVP1に特異的に結合する。この関連において、結合特異性は、実施例5および図3における例示的抗体のNI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.24F3、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3について示されるような範囲である場合があり、50%最大有効濃度(EC50)が、JCVのVP1については約1pM〜500nMであり、好ましくはEC50が約10pM〜100nMであり、最も好ましくはEC50が約500pM〜80nMであり、かつ、VP1 VLPについてはEC50が約1pM〜500nMであり、好ましくはEC50が約5pM〜100nMであり、最も好ましくはEC50が約10pM〜30nMである。それぞれで、組換えヒト由来抗体のNI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.24F3、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3は、BKVのVP1に対する大きい親和性を伴って、EC50が、BKVのVP1については約1pM〜500nMであり、好ましくはEC50が約5pM〜100nMであり、最も好ましくはEC50が約10pM〜50nMであり、かつ、BKV VP1 VLPについてはEC50が約1pM〜500nMであり、好ましくはEC50が約10pM〜200nMであり、最も好ましくはEC50が約30pM〜120nMである。加えて、または、代替において、本発明の抗ポリオーマウイルス抗体は、実施例6および図4において記載されるように、BKVのVP1に特異的に結合する。1つの実施形態において、本発明の抗体は、BKV由来のVP1には強く結合し、かつ、JCVのVP1には弱く結合する下記の例示的な組換えヒト抗体の結合特性を示す:NI−307.1E1、NI−307.5H3、NI−307.24C6およびNI−307.26E10。この関連において、結合特異性は、実施例6およびそれぞれの図4における例示的なNI−307.1E1、NI−307.5H3、NI−307.24C6およびNI−307.26E10について示されるような範囲である場合があり、すなわち、50%最大有効濃度(EC50)が、BKVのVP1については約1pM〜500nMであり、好ましくはEC50が約10pM〜100nMであり、最も好ましくはEC50が約800pM〜5nMであり、かつ、BKV VP1 VLPについてはEC50が約1pM〜500nMであり、好ましくはEC50が約10pM〜100nMであり、最も好ましくはEC50が約200pM〜20nMであり、かつ、JCVのVP1についてはEC50が約1pM〜500nMであり、好ましくはEC50が約10pM〜300nMであり、最も好ましくはEC50が約1pM〜200nMであり、かつ、JCV VP1 VLPについてはEC50が約1pM〜500nMであり、好ましくはEC50が約100pM〜300nMであり、最も好ましくはEC50が約1pM〜300nMである。
好ましい実施形態において、本発明の抗体は、実施例10において記載されるように、JCV VP1 VLPに強く結合する下記の例示的な組換えヒト抗体の結合特性を示す:NI−307.7J3、NI−307.26A3、NI−307.27C2、NI−307.27C11、NI−307.29B1、NI−307.43E8、NI−307.45E10、NI−307.47B11、NI−307.50H4、NI−307.53B11、NI−307.56A8、NI−307.57D4、NI−307.58C7、NI−307.59A7、NI−307.72F7、NI−307.72F10、NI−307.98D3、NI−307.98H1、NI−307.105A6およびNI−307.105C7。この関連において、結合特異性は、図7における例示的抗体のNI−307.7J3、NI−307.26A3、NI−307.27C2、NI−307.27C11、NI−307.29B1、NI−307.43E8、NI−307.45E10、NI−307.47B11、NI−307.50H4、NI−307.53B11、NI−307.56A8、NI−307.57D4、NI−307.58C7、NI−307.59A7、NI−307.72F7、NI−307.72F10、NI−307.98D3、NI−307.98H1、NI−307.105A6およびNI−307.105C7について示されるような範囲である場合があり、すなわち、50%最大有効濃度(EC50)が、NI−307.7J3、NI−307.26A3、NI−307.27C2、NI−307.27C11、NI−307.29B1、NI−307.43E8、NI−307.45E10、NI−307.47B11、NI−307.50H4、NI−307.53B11、NI−307.56A8、NI−307.57D4、NI−307.58C7、NI−307.59A7、NI−307.72F7、NI−307.72F10、NI−307.98D3、NI−307.98H1、NI−307.105A6およびNI−307.105C7について示されるように、JCV VP1 VLPについては約0.1pM〜1nMであり、好ましくはEC50が1nM未満である。
1つの実施形態において、本発明の抗ポリオーマウイルス抗体は好ましくは、BKVのVP1よりもJCVのVP1と優先的に結合する下記の例示的抗体の結合特性を示す:NI−307.13G4、NI−307.18E12、NI−307.18F4A、NI−307.19F8、NI−307.20F5およびNI−307.61D11。
加えて、または、代替において、本発明の抗体は好ましくは、JCVのVP1タンパク質およびBKVのVP1タンパク質の両方と結合する下記の例示的抗体の結合特性を示す:NI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.24F3、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3。
別の実施形態において、本発明の抗体は、加えて、または、代替において、JCVのVP1よりもBKVのVP1と優先的に結合する下記の例示的抗体の結合特性を示す:NI−307.1E1、NI−307.5H3、NI−307.24C6およびNI−307.26E10。
それでもなおさらなる実施形態において、本発明の抗体は好ましくは、JCV VP1 VLPに対して大きい親和性で結合する下記の例示的抗体の結合特性を示す:NI−307.7J3、NI−307.26A3、NI−307.27C2、NI−307.27C11、NI−307.29B1、NI−307.43E8、NI−307.45E10、NI−307.47B11、NI−307.50H4、NI−307.53B11、NI−307.56A8、NI−307.57D4、NI−307.58C7、NI−307.59A7、NI−307.72F7、NI−307.72F10、NI−307.98D3、NI−307.98H1、NI−307.105A6およびNI−307.105C7。
本発明はまた、抗体、あるいは、その抗原結合フラグメント、変化体または誘導体に関し、ただし、この場合、抗体は、下記の抗体からなる群から選択される抗体の抗原結合ドメインと同一の抗原結合ドメインを含む:(A)NI−307.13G4、(B)NI−307.18E12、(C)NI−307.19F8、(D)NI−307.20F5、(E)NI−307.61D11、(F)NI−307.3G4、(G)NI−307.6A2、(H)NI−307.11G6、(I)NI−307.19F10、(J)NI−307.24F3、(K)NI−307.25G10、(L)NI−307.43A11、(M)NI−307.57D5、(N)NI−307.78C3、(O)NI−307.1E1、(P)NI−307.5H3、(Q)NI−307.24C6、(R)NI−307.26E10、(S)NI−307.11G6、(T)NI−307.13G4、(U)NI−307.61D11、(V)NI−307.98D3、(W)NI−307.72F7、(X)NI−307.45E10、(Y)NI−307.72F10、(Z)NI−307.56A8、(A2)NI−307.27C11、(B2)NI−307.47B11、(C2)NI−307.26A3、(D2)NI−307.27C2、(E2)NI−307.57D4、(F2)NI−307.50H4、(G2)NI−307.53B11、(H2)NI−307.7J3、(I2)NI−307.59A7、(J2)NI−307.105A6、(K2)NI−307.29B1、(L2)NI−307.44F6B、(M2)NI−307.98H1、(N2)NI−307.43E8および(O2)NI−307.18F4A。
本発明ではさらに、その可変領域において、例えば、結合ドメインにおいて、図8に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを含むVH可変領域および/またはVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴づけられることがあるいくつかのそのような結合性分子、例えば、抗体およびその結合フラグメントが例示される。上記で特定された可変領域をコードする対応するヌクレオチド配列が、下記において表II、表IIIにそれぞれ示される。VH領域および/またはVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例示的な組が図8に示される。しかしながら、下記で議論されるように、当業者は、加えて、または、代替において、様々なCDRが使用されることがあり、ただし、この場合、これらのCDRが、それらのアミノ酸配列において、図8に示されるアミノ酸配列から、CDR2およびCDR3の場合には1つ、2つ、3つ、または、それ以上のアミノ酸によって異なるという事実を十分に承知している。したがって、1つの実施形態において、図8に示されるような少なくとも1つのCDR、および/または、1つまたは複数のアミノ酸置換を含むその1つまたは複数のCDRをその可変領域に含む本発明の抗体あるいはそのポリオーマウイルス結合フラグメントおよび/またはポリオーマウイルスVP1結合フラグメントが提供される。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、図8に示されるようなVH領域および/またはVL領域、あるいは、1つまたは複数のアミノ酸置換を含むそのVH領域および/またはVL領域のアミノ酸配列を含む抗体のいずれか1つである。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトB細胞には存在したような重鎖および軽鎖の同族性の対形成の保存によって特徴づけられる。
代替では、本発明の抗体は、ポリオーマウイルスおよび/またはポリオーマウイルスVP1タンパク質に対する結合について、図8に示されるようなVH領域および/またはVL領域を有する抗体の少なくとも1つと競合する抗体あるいはその抗原結合フラグメント、誘導体または変化体である。
前記で既に示されたように、本発明の抗体のいくつかは、ポリオーマウイルスのJCVおよびBKVの両方と結合することができることが示されている。
したがって、上記の代替において、または、上記に加えて、1つの実施形態において、図8に示されるような少なくとも1つのCDR、および/または、1つまたは複数のアミノ酸置換を含むその1つまたは複数のCDRをその可変領域に含む本発明の抗体あるいはそのポリオーマウイルスVP1結合フラグメント、JCV VP1結合フラグメント、および/または、BKV VP1結合フラグメントが提供される。
代替では、本発明の抗体は、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLPに対する結合について、好ましくは、JCV VP1、JCV VP1 VLP、および/または、BKV VLP1、BKV VP1 VLPに対する結合について、図8に示されるようなVH領域および/またはVL領域を有する抗体の少なくとも1つと競合する抗体あるいはその抗原結合フラグメント、誘導体または変化体である。
本発明の抗体は、特に治療適用のためには、ヒトである場合がある。
代替では、本発明の抗体は、動物における診断方法および研究のために特に有用である齧歯類抗体、齧歯類化抗体または齧歯類−ヒトのキメラ抗体、好ましくは、マウス抗体、マウス化抗体またはマウス−ヒトのキメラ抗体、あるいは、ラット抗体、ラット化抗体またはラット−ヒトのキメラ抗体である。1つの実施形態において、本発明の抗体は齧歯類−ヒトのキメラ抗体または齧歯類化抗体である。
上記で述べられるように、ヒト免疫応答でのその生成のために、本発明のヒトモノクローナル抗体は、特定の病理学的関連性を有し、かつ、例えば、マウスモノクローナル抗体の作製のための免疫化プロセス、および、ファージディスプレーライブラリーのインビトロスクリーニングの場合には接近可能でないかもしれないか、またはそれほど免疫原性でないかもしれないエピトープをそれぞれ認識するであろう。したがって、本発明のヒト抗ポリオーマウイルス抗体、抗ポリオーマウイルスVP1抗体および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP抗体のエピトープは独特であること、ならびに、本発明のヒトモノクローナル抗体によって認識されるエピトープに結合することができる他の抗体が存在しないことを明記することは賢明である。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも1つ、または、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列またはVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VHのVH−CDR1領域、VH−CDR2領域およびVH−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列またはVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図8にそれぞれ示される群に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列およびVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。図8は、Kabatシステムによって定義されるVH−CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVH−CDRもまた本発明に含まれ、これらは、図8に示されるデータを使用して当業者によって容易に特定され得る。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域およびVH−CDR3領域が、図8にそれぞれ示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群およびVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域およびVH−CDR3領域が、いずれか1つのVH−CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのアミノ酸置換を除いて、図8にそれぞれ示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群およびVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
更なる実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも1つ、または、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列またはVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VLのVL−CDR1領域、VL−CDR2領域およびVL−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列またはVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図8にそれぞれ示されるポリペプチドに関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列およびVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。図8は、Kabatシステムによって定義されるVL−CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVL−CDRもまた本発明に含まれる。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL−CDR1領域、VL−CDR2領域およびVL−CDR3領域が、図8にそれぞれ示されるVL−CDR1群、VL−CDR2群およびVL−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、または、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL−CDR1領域、VL−CDR2領域およびVL−CDR3領域が、いずれか1つのVL−CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのアミノ酸置換を除いて、図8にそれぞれ示されるVL−CDR1群、VL−CDR2群およびVL−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
免疫グロブリンまたはそのコードcDNAがさらに改変される場合がある。したがって、さらなる実施形態において、本発明の方法は、キメラ抗体、マウス化抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、二重特異性抗体、融合抗体、標識化抗体、または、それらのいずれか1つのアナログを製造する工程のいずれか1つを含む。対応する様々な方法が当業者には知られており、例えば、Harlow and Lane、「Antibodies,A Laboratory Manual」、CSH Press、Cold Spring Harbor(1988)に記載される。前記抗体の誘導体がファージディスプレー技術によって得られるとき、BIAcoreシステムにおいて用いられるような表面プラズモン共鳴を、本明細書中に記載される抗体のいずれか1つのエピトープと同じエピトープに結合するファージ抗体の効率を増大させるために使用することができる(Schier、Human Antibodies Hybridomas 7(1996)、97〜105;Malmborg、J.Immunol.Methods 183(1995)、7〜13)。キメラ抗体の製造が、例えば、国際特許出願公開WO89/09622に記載される。ヒト化抗体を製造するための方法が、例えば、欧州特許出願EP−A10239400および国際特許出願公開WO90/07861に記載される。本発明に従って利用されるための抗体のさらなる供給源は、いわゆる異種抗体である。異種抗体(例えば、ヒト様抗体)をマウスにおいて製造するための一般的原理が、例えば、国際特許出願公開WO91/10741、WO94/02602、WO96/34096およびWO96/33735に記載される。上記で議論されたように、本発明の抗体は、例えば、Fv、FabおよびF(ab)2を含めて、完全な抗体のほかに様々な形態で、ならびに、単鎖で存在する場合がある(例えば、国際特許出願公開WO88/09344を参照のこと)。したがって、1つの実施形態において、単鎖Fvフラグメント(scFv)、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメントおよびF(ab’)2フラグメントからなる群から選択される本発明の抗体が提供される。
本発明の様々な抗体またはそれらの対応する免疫グロブリン鎖はさらに、この技術分野において知られている従来からの技術を使用して、例えば、この技術分野において知られているアミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、アミノ酸付加および/または組換えならびに/あるいはいずれかの他の改変を単独または組合せでのどちらかで使用することによって改変することができる。そのような改変を免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の根底にあるDNA配列に導入するための方法が、当業者には広く知られている;例えば、Sambrook、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)、N.Y.、および、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1994)を参照のこと。本発明の抗体の修飾には、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、および、炭水化物成分または脂質成分および補因子などの連結を含む側鎖修飾、骨格修飾、ならびに、N末端修飾およびC末端修飾を含めて、1つまたは複数の構成アミノ酸における化学的および/または酵素的な誘導体化が含まれる。同様に、本発明は、記載された抗体またはその何らかのフラグメントを異種分子(例えば、カルボキシル末端での免疫刺激リガンドなど)に融合されてアミノ末端において含むキメラなタンパク質の製造を包含する;対応する技術的詳細については、例えば、国際特許出願公開WO00/30680を参照のこと。
加えて、重鎖CDR3(HCDR3)は、より大きい度合いの可変性と、抗原−抗体相互作用における支配的な関与とを有する領域であることがしばしば認められているので、本発明は、上記で記載されるような結合性分子を含有するペプチド、例えば、述べられた抗体のいずれか1つの可変領域のCDR3領域(特に、重鎖のCDR3)を含有するペプチドを含むペプチドを包含する。そのようなペプチドが、本発明に従って有用である結合剤を製造するために容易に合成される場合があり、または、組換え手段によって製造される場合がある。そのような方法は当業者にはよく知られている。ペプチドを、例えば、市販されている自動化されたペプチド合成機を使用して合成することができる。ペプチドはまた、ペプチドを発現するDNAを発現ベクターに組み込むこと、および、細胞を、ペプチドを産生させるために発現ベクターにより形質転換することによる組換え技術によって製造することができる。
したがって、本発明は、本発明のヒト抗ポリオーマウイルス抗体、ヒト抗ポリオーマウイルスVP1抗体および/またはヒト抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体に向けられ、かつ、述べられた性質を呈示する、すなわち、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLPを特異的に認識するどのような結合性分子(例えば、抗体またはその結合フラグメント)にも関連する。そのような抗体および結合性分子は、本明細書中に記載されるようなELISAおよび免疫組織化学によってそれらの結合特異性および結合親和性について試験することができる(例えば、実施例2〜実施例4および実施例10を参照のこと)。抗体および結合性分子のこれらの特性はウエスタンブロットによって同様に試験することができる。
免疫グロブリンをB細胞またはBメモリー細胞の培養から直接に得ることの代替として、これらの細胞を、その後の発現および/または遺伝子操作のための、再編成された重鎖遺伝子座および軽鎖遺伝子座の供給源として使用することができる。再編成された抗体遺伝子を、cDNAを作製するために、適切なmRNAから逆転写することができる。所望されるならば、重鎖定常領域を異なるアイソタイプの重鎖定常領域に交換することができ、または、完全に除くことができる。可変領域を、単鎖のFv領域をコードするために連結することができる。多数のFv領域を、2つ以上の標的に対する結合能を与えるために連結することができ、または、重鎖および軽鎖のキメラな組合せを用いることができる。遺伝物質が入手可能であると、所望の標的と結合するそれらの能力をともに保持する上記で記載されるようなアナログの設計は簡単である。抗体可変領域のクローニングおよび組換え抗体の作製のための方法が当業者には知られており、例えば、Gilliland他、Tissue Antigens 47(1996)、1〜20;Doenecke他、Leukemia 11(1997)、1787〜1792に記載される。
適切な遺伝物質が得られ、かつ、所望されるならば、アナログをコードするために改変されると、コード配列(これは、最低でも重鎖および軽鎖の可変領域をコードする配列を含む)を、標準的な組換え宿主細胞にトランスフェクションされ得るベクターにおいて含有される発現系に挿入することができる。様々なそのような宿主細胞が使用してよい;しかしながら、効率的なプロセシングのためには、哺乳動物細胞が好ましい。この目的のために有用である典型的な哺乳動物細胞株には、CHO細胞、HEK293細胞またはNSO細胞が含まれるが、これらに限定されない。
抗体またはアナログの製造はその後、改変された組換え宿主を、宿主細胞の成長およびコード配列の発現のために適切である培養条件のもとで培養することによって着手される。その後、抗体が、抗体を培養物から単離することによって回収される。発現系は好ましくは、シグナルペプチドを含み、その結果、生じた抗体が培地中に分泌されるように設計される。しかしながら、細胞内産生もまた可能である。
上記によれば、本発明はまた、本発明の抗体または同等な結合性分子をコードするポリヌクレオチドに関連し、抗体の場合には、好ましくは、上で記載される抗体の免疫グロブリン鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。典型的には、ポリヌクレオチドによってコードされる前記可変領域は、前記抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
当業者は、上記の可変ドメインを有する抗体の可変ドメインが、所望される特異性および生物学的機能の他のポリペプチドまたは抗体を構築するために使用され得ることを容易に理解するであろう。したがって、本発明はまた、上で記載された可変ドメインの少なくとも1つのCDRを含み、かつ、添付された実施例において記載される抗体と実質的に同じまたは類似する結合性質を好都合には有するポリペプチドおよび抗体を包含する。当業者は、結合親和性が、アミノ酸置換をCDR内において、または、Kabatによって定義されるようなCDRと部分的に重なる超可変ループ(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917)の内部において行うことによって強化され得ることを理解している(例えば、Riechmann他、Nature 332(1988)、323〜327を参照のこと)。したがって、本発明はまた、述べられたCDRの1つまたは複数が1つまたは複数の、好ましくは2つ以下のアミノ酸置換を含む抗体に関連する。好ましくは、本発明の抗体は、その免疫グロブリン鎖の一方または両方において、図8示されるような可変領域の2つのCDRまたは3つすべてのCDRを含む。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、当業者によって知られているように、1つまたは複数のエフェクター機能を媒介する定常領域を含むことができる。例えば、補体のC1成分が抗体の定常領域に結合することにより、補体系が活性化される場合がある。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化および溶解において重要である。補体の活性化は炎症応答をも刺激し、自己免疫の過敏性に関与することもある。さらに、抗体は、Fc領域を介して、すなわち、抗体のFc領域におけるFc受容体結合部位が細胞上のFc受容体(FcR)に結合することにより様々な細胞における受容体に結合する。IgG(ガンマ受容体)、IgE(イプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)およびIgM(ミュー受容体)を含めて、異なるクラスの抗体について特異的であるいくつかのFc受容体が存在する。抗体が細胞表面のFc受容体に結合することにより、抗体被覆粒子の貪食および破壊、免疫複合体の排除、キラー細胞による抗体被覆された標的細胞の溶解(これは抗体依存性細胞媒介性細胞傷害またはADCCと呼ばれる)、炎症性媒介因子の放出、胎盤移行および免疫グロブリン産生の制御を含む多数の重要かつ多様な生物学的応答が誘発される。
したがって、本発明の特定の実施形態には、少なくとも定常領域ドメインの1つまたは複数の一部が欠失されているか、さもなければ変化させられており、その結果、所望される生化学的特性を提供する、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体が含まれる。例えば、本明細書中に記載される診断方法および処置方法において使用されるためのある種の抗体は、免疫グロブリン重鎖に類似するポリペプチド鎖を含むが、1つまたは複数の重鎖ドメインの少なくとも一部を欠くドメイン欠失抗体である。例えば、ある種の抗体では、改変された抗体の定常領域の1つのドメイン全体が欠失されるであろう。例えば、CH2ドメインのすべてまたは一部が欠失されるであろう。他の実施形態において、本明細書中に記載される診断方法および処置方法において使用されるためのある種の抗体は、グリコシル化を排除するために変化させられる定常領域(例えば、IgG重鎖定常領域)を有しており、これは、本明細書中の他のところでは、非グルコシル化抗体または「agly」抗体として示される。そのような「agly」抗体は、酵素学的に、ならびに、定常領域におけるコンセンサスなグリコシル化部位を操作することによって調製されてもよい。理論によって拘束されることはないが、「agly」抗体は生体内での安全性および安定性の改善されたプロフィールを有する場合があると考えられる。所望されるエフェクター機能を有する非グリコシル化抗体を製造する方法が、例えば、国際特許出願公開WO2005/018572に見出される(その全体が参照によって組み込まれる)。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変化体または誘導体において、Fc部分が、この技術分野において知られている技術を使用して、エフェクター機能を低下させるために変異させられる場合がある。他の場合には、本発明と一致する定常領域改変は補体結合を和らげ、したがって、抱合された細胞毒素の血清半減期および非特異的会合を低下させることがあるかもしれない。定常領域のさらに他の改変が、増大した抗原特異性または抗体柔軟性に起因する高まった局在化を可能にするジスルフィド連結またはオリゴ糖成分を改変するために使用される場合がある。得られた生理学的プロフィール、生物学的利用能およびそのような改変の他の生化学的影響、生体分布および血清半減期が、過度な実験を行うことなく、広く知られている免疫学的技術を使用して容易に測定および定量化される場合がある。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、Fc部分が、例として、Fcγ受容体、LRPまたはThy1受容体を介する抗体の受容体媒介性エンドサイトーシスを高めることによって、あるいは、「SuperAntibody Technology」(これは、抗体が、生細胞を傷つけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる)(Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237〜241)によって抗体の細胞取り込みを増大させるために変異させられる場合があり、または、代わりのタンパク質配列に交換される場合がある。例えば、抗体結合領域と、細胞表面受容体の同族タンパク質リガンドとの融合タンパク質、あるいは、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP、ならびに細胞表面受容体に結合する特異的な配列を有する二重特異性抗体または多特異性抗体の作製が、この技術分野において知られている技術を使用して設計される場合がある。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体において、Fc部分が、その血液脳関門透過を増大させるために変異させられる場合があり、または、代わりのタンパク質配列に交換される場合があり、あるいは、抗体が化学的に改変される場合がある。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体の改変された形態を、この技術分野において知られている技術を使用して完全な前駆体または親抗体から作製することができる。例示的な技術が本明細書中により詳しく議論される。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、この技術分野において知られている技術を使用して作製または製造することができる。特定の実施形態において、抗体分子またはそのフラグメントが「組換え製造され」、すなわち、組換えDNA技術を使用して製造される。抗体分子またはそのフラグメントを作製するための例示的な技術が本明細書中の他のところでより詳しく議論される。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体にはまた、例えば、共有結合による結合により、抗体がその同族エピトープに特異的に結合することが妨げられないように、どのようなタイプの分子でも抗体に共有結合により結合させることによって改変される誘導体が含まれる。例えば、しかし、限定としてではなく、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、知られている保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への連結などによって改変されている抗体が含まれる。数多くの化学的修飾のどれもが、知られている技術によって行われる場合があり、これらには、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などが含まれるが、これらに限定されない。加えて、誘導体は1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有する場合がある。
別の実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、有害な免疫応答を処置されるべき動物において、例えば、ヒトにおいて誘発しないであろう。特定の実施形態において、結合性分子、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントは患者、例えば、ヒト患者に由来し、続いて、抗体またはその抗原結合フラグメントが由来する同じ種、例えば、ヒトにおいて使用され、これにより、有害な免疫応答の出現を緩和するか、または最小限に抑える。
脱免疫化もまた、抗体の免疫原性を低下させるために使用することができる。本明細書中で使用される場合、用語「脱免疫化」は、T細胞エピトープを改変するための抗体の変化を包含する(例えば、国際特許出願公開WO98/52976および同WO00/34317を参照のこと)。例えば、出発抗体からのVH配列およびVL配列が分析され、そして、CDRsとの関連でのエピトープの所在位置、および、配列内の他の重要な残基を示すそれぞれのV領域からのヒトT細胞エピトープ「マップ」が分析される。T細胞エピトープマップからの個々のT細胞エピトープが、最終的な抗体の活性を変化させる危険性が低い代わりのアミノ酸置換を特定するために分析される。アミノ酸置換の組合せを含む様々な代替的なVH配列およびVL配列が設計され、これらの配列が続いて、本明細書中に開示される診断方法および処置方法における使用のために様々な結合性ポリペプチド(例えば、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP特異的抗体あるいはそれらの免疫特異性フラグメント)に組み込まれ、その後、これらは機能について試験される。典型的には、12個〜24個の間の変化型抗体が作製され、試験される。改変されたV領域およびヒトC領域を含む完全な重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子がその後、発現ベクターにクローン化され、それに続くプラスミドが、完全な抗体の産生のために細胞株に導入される。その後、抗体が、適切な生化学的アッセイおよび生物学的アッセイにおいて比較され、最適な変異体が特定される。
モノクローナル抗体を、ハイブリドーマ技術、組換え技術およびファージディスプレー技術またはそれらの組合せの使用を含むこの技術分野において知られている広範囲の様々な技術を使用して調製することができる。例えば、モノクローナル抗体を、この技術分野において知られているハイブリドーマ技術、および、例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988);Hammerling他、Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas、Elsevier、N.Y.、563〜681(1981)に教示されるハイブリドーマ技術を含む様々なハイブリドーマ技術を使用して製造することができる(前記参考文献はそれらの全体が参照によって組み込まれる)。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、真核生物クローン、原核生物クローンまたはファージクローンのどのようなものも含めて、ただ1つのクローンに由来する抗体を示し、モノクローナル抗体が製造される方法に由来する抗体を示さない。したがって、用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。特定の実施形態において、本発明の抗体は、エプスタイン・バールウイルスによる形質転換により不死化されているヒトB細胞に由来する。
広く知られているハイブリドーマプロセス(Kohler他、Nature 256(1975)、495)では、哺乳動物から得られる比較的短命の、すなわち、いつかは死滅するリンパ球、例えば、本明細書中に記載されるようなヒト対象に由来するB細胞が、不死性の腫瘍細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)と融合され、このようにして、不死性であり、かつ、B細胞の遺伝子コードされた抗体を産生することができるハイブリッド細胞、すなわち、「ハイブリドーマ」がもたらされる。得られたハイブリッドは、選抜、希釈および再成長によって単一の遺伝的形質に分離され、それぞれの個々の株が単一抗体の形成のための特定の遺伝子を含む。それらにより、所望の抗原に対して均質であり、そして、それらの純粋な遺伝的起源に関連して、「モノクローナル」と呼ばれる抗体が産生される。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、融合されていない元の骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つまたは複数の物質を好ましくは含有する好適な培養培地において播種され、成長させられる。当業者は、ハイブリドーマの形成、選抜および成長のための試薬、細胞株および培地がいくつかの供給源から市販されており、また、標準化されたプロトコルが十分に確立されていることを理解するであろう。一般に、ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地が、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、インビトロアッセイによって、例えば、本明細書中に記載されるような免疫沈殿、放射免疫アッセイ(RIA)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などによって求められる。所望される特異性、親和性および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、当該クローンは限界希釈手法によってサブクローン化され、標準的な方法によって成長させられる場合がある(例えば、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、59頁〜103頁(1986)を参照のこと)。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体が、従来からの精製手段によって、例えば、プロテインA、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーなどによって、培養培地、腹水または血清から分離され得ることがさらに理解されるであろう。
別の実施形態において、リンパ球を顕微操作によって選択することができ、可変性遺伝子を単離することができる。例えば、末梢血単核細胞を、免疫化された哺乳動物または生まれつき免疫性の哺乳動物(例えば、ヒト)から単離し、約7日間にわたってインビトロ培養することができる。培養物を、スクリーニング基準を満たす特異的なIgGについてスクリーニングすることができる。陽性のウェルからの細胞を単離することができる。個々のIg産生B細胞を、FACSによって、または、Ig産生B細胞を補体媒介溶血プラークアッセイで特定することによって単離することができる。Ig産生B細胞をチューブの中に顕微操作することができ、VH遺伝子およびVL遺伝子を、例えば、RT−PCRを使用して増幅することができる。VH遺伝子およびVL遺伝子を抗体発現ベクターにクローン化し、発現のための細胞(例えば、真核生物細胞または原核生物細胞)にトランスフェクションすることができる。
代替では、抗体産生の細胞株が、当業者に広く知られている技術を使用して選択および培養される場合がある。そのような技術が様々な実験室マニュアルおよび一次刊行物に記載されている。これに関連して、下で記載されるような本発明における使用のために好適である技術が、Current Protocols in Immunology、Coligan他編、Green Publishing Associates and Wiley−Interscience、John Wiley and Sons、New York(1991)に記載される(これは、増刊を含めて、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
特異的なエピトープを認識する抗体フラグメントが、知られている技術によって作製され得る。例えば、FabフラグメントおよびF(ab’)2フラグメントが、組換えによって、あるいは、例えば、パパイン(Fabフラグメントを製造するために)またはペプシン(F(ab’)2フラグメントを製造するために)などの酵素を使用する免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって製造され得る。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域および重鎖のCH1ドメインを含有する。そのようなフラグメントは、例えば、免疫グロブリンの免疫特異性部分を検出用試薬(例えば、放射性同位体など)に連結することを伴う免疫診断手順における使用のために十分である。
ヒト抗体、例えば、本明細書中に記載されるヒト抗体などは、ヒト患者における治療的使用のために特に望ましい。本発明のヒト抗体が、例えば、HLAタイピングおよび抗JCV力価が不明である健康な高齢のヒト対象、堅固なJCV特異的抗体産生を示すHLA−DRB1*04:01+の健康なドナー、および、MSを処置するためにモノクローナル抗体治療を受け、かつ、PMLおよびPML−IRISの症状を発症した患者から単離される。
1つの実施形態において、本発明の抗体は抗体分子の少なくとも1つの重鎖CDRまたは軽鎖CDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも2つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも3つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも4つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも5つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つまたは複数の抗体分子からの少なくとも6つのCDRを含む。主題となるこれらの抗体に含まれ得る少なくとも1つのCDRを含む例示的な抗体分子が本明細書中に記載される。
本発明の抗体は、抗体を合成するためにこの技術分野において知られているいずれかの方法によって、特に、化学合成によって、または、好ましくは、本明細書中に記載されるような組換え発現技術によって製造することができる。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、1つまたは複数のドメインが部分的または完全に欠失される合成された定常領域を含む(「ドメイン欠失抗体」)。特定の実施形態において、適合し得る改変された抗体は、CH2ドメイン全体が除かれているドメイン欠失の構築物または変異体(ΔCH2構築物)を含むであろう。他の実施形態については、短い連結ペプチドが、動きの柔軟性および自由を可変領域に与えるために欠失ドメインの代わりに使用される場合がある。当業者は、そのような構築物が抗体の異化速度に対するCH2ドメインの調節的特性のために特に好ましいことを理解するであろう。ドメイン欠失された構築物を、IgG1ヒト定常ドメインをコードするベクターを使用して得ることができる(例えば、国際特許出願公開WO02/060955および同WO02/096948A2を参照のこと)。このベクターは、CH2ドメインを欠失し、かつ、ドメイン欠失されたIgG1定常領域を発現する合成ベクターを提供するために操作される。
特定の実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はミニボディ(minibody)である。ミニボディを、この技術分野において記載される方法を使用して作製することができる(例えば、米国特許第5,837,821号または国際特許出願公開WO94/09817を参照のこと)。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、モノマーサブユニット間の会合を可能にする限り、数個のアミノ酸の欠失もしくは置換、または、1個だけのアミノ酸の欠失もしくは置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。例えば、CH2ドメインの選択された領域における1個だけのアミノ酸の変異が、Fc結合を実質的に低下させるために十分である場合がある。同様に、調節されるべきエフェクター機能(例えば、補体結合)を制御する1つまたは複数の定常領域ドメインのその部分を単に欠失することが望ましい場合がある。定常領域のそのような部分的欠失は抗体の選択された特性(血清半減期)を改善し、一方で、当該定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能を損なわないままにし得る。そのうえ、上記において暗に示されるように、開示された抗体の定常領域は、生じた構築物のプロフィールを高める1つまたは複数のアミノ酸の変異または置換により合成物である場合がある。これに関連して、改変された抗体の立体配置および免疫原性プロフィールを実質的に維持しながら、保存されている結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を妨げることが可能である場合がある。さらに他の実施形態は、1つまたは複数のアミノ酸を、望ましい特性(例えば、エフェクター機能など)を高めるために、あるいは、細胞毒素または炭水化物のより多くの結合を提供するために定常領域に付加することを含む。そのような実施形態では、選択された定常領域ドメインに由来する特異的な配列を挿入すること、または複製することが望ましい場合がある。
本発明はまた、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)を含む抗体、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)から本質的になる抗体、あるいは、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域および/またはVL領域)の変異体(誘導体を含む)からなる抗体を提供し、そのような抗体またはそのフラグメントはポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLPに免疫特異的に結合する。当業者に知られている様々な標準的技術を、抗体をコードするヌクレオチド配列に変異を導入するために使用することができ、そのような技術には、アミノ酸置換をもたらす部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、変異体(誘導体を含む)は、基準となるVH領域、VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL領域、VL−CDR1、VL−CDR2またはVL−CDR3に対して50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換または2未満のアミノ酸置換をコードする。「保存的(な)アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換である。類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーがこの技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分岐した側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。代替において、変異を、例えば、飽和変異誘発などによってコード配列の全体または一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた変異体を、活性を保持する変異体を特定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。
例えば、変異を抗体分子のフレームワーク領域においてのみに、または、抗体分子のCDR領域においてのみに導入することが可能である。導入された変異はサイレント変異または中立のミスセンス変異である場合があり、例えば、抗体の抗原結合能に対する影響を全く有しないか、またはほとんど有しない場合があり、実際、いくつかのそのような変異はアミノ酸配列を全く変化させない。これらのタイプの変異は、コドン使用を最適化するために、または、ハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用である場合がある。本発明の抗体をコードするコドン最適化コード領域が本明細書中の他のところで開示される。代替において、非中立的なミスセンス変異により、抗体の抗原結合能が変化する場合がある。ほとんどのサイレント変異および中立的ミスセンス変異の位置はフレームワーク領域内である可能性が高く、一方、ほとんどの非中立的ミスセンス変異の位置はCDR内である可能性が高く、だが、このことは絶対的要件でない。当業者であれば、所望される性質、例えば、抗原結合活性における変化がないことまたは結合活性における変化(例えば、抗原結合活性における改善または抗体特異性における変化)などを有する変異体分子を設計し、試験することができるであろう。変異誘発後、コードされたタンパク質が常法により発現させられる場合があり、そして、コードされたタンパク質の機能的活性および/または生物学的活性を、本明細書中に記載される技術を使用して、または、この技術分野において知られている技術を常法により改変することによって求めることができる。
III.抗体をコードするポリヌクレオチド
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドは、どのようなポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチド(これらは非修飾のRNAまたはDNAあるいは修飾されたRNAまたはDNAである場合がある)からでも構成され得る。例えば、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドは、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖および二本鎖のRNA、ならびに、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖である場合がある、あるいは、より典型的には、二本鎖である場合があるか、または、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物である場合があるDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。加えて、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNAまたはDNA、あるいは、RNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域から構成され得る。抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドはまた、安定性または他の理由のために改変される1つまたは複数の修飾された塩基あるいはDNA骨格またはRNA骨格を含有してもよい。「修飾(改変)(された)」塩基には、例えば、トリチル化塩基および非通常的塩基(例えば、イノシンなど)が含まれる。様々な修飾をDNAおよびRNAに対して行うことができる;したがって、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的または代謝的に改変された形態を包含する。
免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンの重鎖部分または軽鎖部分)に由来するポリペプチドの非天然型変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドを、1つまたは複数のアミノ酸置換、アミノ酸付加またはアミノ酸欠失が、コードされたタンパク質に導入されるように、1つまたは複数のヌクレオチド置換、ヌクレオチド付加またはヌクレオチド欠失を免疫グロブリンのヌクレオチド配列に導入することによって作出することができる。変異は、標準的な技術によって、例えば、部位特異的変異誘発およびPCR媒介変異誘発などによって導入される場合がある。好ましくは、保存的なアミノ酸置換が1つまたは複数の非必須アミノ酸残基において行われる。
よく知られているように、RNAが、標準的な技術、例えば、イソチオシアン酸グアニジウム抽出および沈殿化、その後、遠心分離またはクロマトグラフィーなどによって、元のB細胞、ハイブリドーマ細胞または他の形質転換細胞から単離される場合がある。望ましい場合、mRNAが、標準的な技術、例えば、オリゴdTセルロースでのクロマトグラフィーなどによって総RNAから単離される場合がある。好適な技術がこの技術分野では熟知されている。1つの実施形態において、抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAが、逆転写酵素およびDNAポリメラーゼをよく知られている方法に従って使用して、同時または別個に作製される場合がある。PCRが、コンセンサスな定常領域プライマーによって、または、公開された重鎖および軽鎖のDNA配列およびアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって開始される場合がある。上記で議論されるように、PCRはまた、抗体の軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用される場合がある。この場合、ライブラリーが、コンセンサスなプライマーまたはより大きい相同的プローブ(例えば、ヒト定常領域プローブなど)によってスクリーニングされる場合がある。
DNA、典型的にはプラスミドDNAが、この技術分野において知られている技術を使用して細胞から単離され、そして、例えば、組換えDNA技術に関連する前記の参考文献に詳しく示される標準的なよく知られている技術に従って制限酵素マッピングおよび配列決定に供される場合がある。当然のことながら、DNAは、単離プロセスまたはその後の分析の期間中のどの時点であっても、本発明に従う合成物である場合がある。
この関連において、本発明はまた、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメインまたは可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。1つの実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、または、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、重鎖可変領域のCDRの少なくとも1つ、または、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列またはVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VHのVH−CDR1領域、VH−CDR2領域またはVH−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列またはVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図8に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列またはVH−CDR3ポリペプチド配列を有し、あるいは、それぞれ、図8に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列またはVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、または、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも1つ、または、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列またはVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VLのVL−CDR1領域、VL−CDR2領域またはVL−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列またはVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%または95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図8に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列またはVL−CDR3ポリペプチド配列を有し、あるいは、それぞれ、図8に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列またはVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、または、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域およびVH−CDR3領域が、図8に示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群およびVH−CDR3群と同一であるか、または、それぞれ、図8に示されるようなVH−CDR1群、VH−CDR2群およびVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。
この技術分野において知られているように、2つのポリペプチドまたは2つのポリヌクレオチドの間における「配列同一性」が、一方のポリペプチドまたはポリヌクレオチドのアミノ酸配列または核酸配列を第2のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。本明細書中で議論されるとき、任意の特定のポリペプチドが別のポリペプチドと少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%同一であるかどうかを、この技術分野において知られている方法およびコンピュータープログラム/ソフトウェア(例えば、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、WI、53711)(これに限定されない)など)を使用して決定することができる。BESTFITでは、Smith and Waterman(Advances in Applied Mathematics 2(1981)、482〜489)の局所的相同性アルゴリズムを、2つの配列の間における相同性の最も良いセグメントを見出すために使用する。BESTFITまたはいずれかの他の配列アライメントプログラムを使用して、特定の配列が、例えば、本発明による参照配列と95%同一であるかどうかを決定するときには、当然のことながら、同一性の百分率が参照ポリペプチド配列の全長にわたって計算され、かつ、参照配列におけるアミノ酸の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように、パラメーターが設定される。
本発明の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、表IIに示されるような抗ポリオーマウイルス抗体、抗ポリオーマウイルスVP1抗体および/または抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体のVH領域またはVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、あるいは、そのような核酸から本質的になるか、あるいは、そのような核酸からなる。これに関連して、当業者は、軽鎖および/または重鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドは両方の免疫グロブリン鎖または一方の免疫グロブリン鎖のみの可変ドメインをコードし得ることを容易に理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表IIまたは表IIIに示されるような抗ポリオーマウイルス抗体、抗ポリオーマウイルスVP1抗体および/または抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体のVH領域およびVL領域のポリヌクレオチド配列、好ましくは、抗JCV VP1抗体または抗JCV VLP抗体、あるいは、抗BKV VP1抗体または抗BKV VLP抗体のVH領域およびVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、あるいは、そのような核酸から本質的になるか、あるいは、そのような核酸からなる。
表II:例示的なポリオーマウイルス抗体、ポリオーマウイルスVP1抗体およびポリオーマウイルスVP1 VLP抗体のV
H領域およびV
L領域のヌクレオチド配列
表III:例示的なポリオーマウイルス抗体、ポリオーマウイルスVP1抗体およびポリオーマウイルスVP1 VLP抗体のVH領域およびVL領域のアミノ酸配列(CDRには下線が付される)
本発明にはまた、他のところで記載されるように、本発明のポリヌクレオチドのフラグメントが含まれる。加えて、本明細書中に記載されるように、融合ポリヌクレオチド、Fabフラグメントおよび他の誘導体をコードするポリヌクレオチドも本発明によって包含される。
ポリヌクレオチドは、この技術分野において知られているいずれかの方法によって作製または製造される場合がある。例えば、抗体のヌクレオチド配列が知られているならば、当該抗体をコードするポリヌクレオチドが、例えば、Kutmeier他、BioTechniques 17(1994)、242に記載されるように、化学合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てられる場合があり、これには、簡単に記載すると、抗体をコードする配列の一部分を含有する重複するオリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリングおよび連結、ならびに、連結されたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を伴う。
代替において、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードするポリヌクレオチドが、好適な供給源から得られる核酸から作製される場合がある。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンが入手できず、しかし、抗体分子の配列が知られているならば、当該抗体をコードする核酸が化学合成される場合があるか、あるいは、好適な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、あるいは、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP特異的抗体を発現するいずれかの組織もしくは細胞(例えば、抗体を発現させるために選択されるハイブリドーマ細胞など)から作製されるcDNAライブラリー、または、そのようなものから単離される核酸、好ましくはポリA+RNA)から、配列の3’末端および5’末端にハイブリダイゼーション可能である合成プライマーを使用するPCR増幅によって得られる場合があり、または、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを特定するために特定の遺伝子配列について特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得られる場合がある。PCRによって生じる増幅された核酸がその後、この技術分野において広く知られているいずれかの方法を使用して、複製可能なクローニングベクターにクローン化される場合がある。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体のヌクレオチド配列および対応するアミノ酸配列が決定されると、そのヌクレオチド配列が、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製するために、例えば、アミノ酸の置換、欠失および/または挿入をもたらすために、ヌクレオチド配列の操作についてこの技術分野においてよく知られている方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなどを使用して操作される場合がある(例えば、Sambrook他、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)、および、Ausubel他編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1998)に記載される技術を参照のこと。これらはともに、それらの全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
IV.抗体ポリペプチドの発現
単離された遺伝物質が、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を提供するために操作された後、抗体をコードするポリヌクレオチドは典型的には、所望される量の抗体を産生させるために使用されることがある宿主細胞への導入のために発現ベクターに挿入される。抗体あるいはそのフラグメント、誘導体またはアナログ(例えば、標的分子に結合する抗体の重鎖または軽鎖)の組換え発現が本明細書中に記載される。本発明の抗体分子または抗体の重鎖もしくは軽鎖あるいはその一部分(好ましくは重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインを含有するその一部分)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子を産生させるためのベクターが、この技術分野においてよく知られている技術を使用する組換えDNA技術によって作製される場合がある。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製するための方法が本明細書中に記載される。当業者によく知られている方法を、抗体コード配列ならびに適切な転写制御シグナルおよび翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術およびインビボ遺伝子組換えが含まれる。したがって、本発明は、本発明の抗体分子あるいはその重鎖または軽鎖あるいは重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列をプロモーターに機能的に連結されて含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む場合があり(例えば、国際特許出願公開WO86/05807およびWO89/01036、ならびに、米国特許第5,122,464号を参照のこと)、また、抗体の可変ドメインが、重鎖全体または軽鎖全体を発現させるためにそのようなベクターにクローン化される場合がある。
用語「ベクター」または「発現ベクター」は、所望される遺伝子を宿主細胞に導入し、その遺伝子をその宿主細胞において発現させるためのビヒクルとして本発明に従って使用されるベクターを意味するために本明細書中では使用される。当業者には知られているように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルスおよびレトロウイルスからなる群から容易に選択される場合がある。一般に、本発明と適合し得るベクターは、選択マーカー、所望される遺伝子のクローニングを容易にするための適切な制限部位、ならびに、真核生物細胞または原核生物細胞における進入能および/または複製能を含む。本発明の目的のために、数多くの発現ベクター系が用いられる場合がある。例えば、1つのクラスのベクターでは、動物ウイルス、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)またはSV40ウイルスなどに由来するDNAエレメントが利用される。他では、内部リボソーム結合部位を伴う多シストロン系の使用を伴う。加えて、DNAをその染色体に組み込んでいる細胞が、トランスフェクションされた宿主細胞の選択を可能にする1つまたは複数のマーカーを導入することによって選択される場合がある。マーカーにより、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤抵抗性(例えば、抗生物質)、または、重金属(例えば、銅など)に対する抵抗性が与えられる場合がある。選択マーカー遺伝子は、発現させられるDNA配列に直接に連結することができるか、または、共形質転換によって同じ細胞に導入することができる。さらなるエレメントがまた、mRNAの最適な合成のために必要となる場合がある。これらのエレメントには、シグナル配列、スプライス信号ならびに転写プロモーター、エンハンサーおよび終結シグナルが含まれる場合がある。
特に好ましい実施形態において、クローン化された可変領域遺伝子が、上記で議論されるような重鎖定常領域遺伝子および軽鎖定常領域遺伝子(好ましくはヒトの遺伝子)と一緒に発現ベクターに挿入される。1つの実施形態において、このことが、Biogen IDEC,Inc.の独自開発による発現ベクター(これはNEOSPLAと称し、米国特許第6,159,730号に開示される)を使用して達成される。このベクターは、サイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサー、マウスのベータグロビン主要プロモーター、SV40の複製起点、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼのエキソン1およびエキソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼの遺伝子およびリーダー配列を含有する。このベクターは、可変領域遺伝子および定常領域遺伝子の取り込み、CHO細胞におけるトランスフェクション、それに続く、G418含有培地における選択、および、メトトレキサート増幅を行ったとき、抗体の非常に高いレベルの発現をもたらすことが見出されている。当然のことながら、発現を真核生物細胞において誘発することができる発現ベクターはどれも、本発明において使用される場合がある。好適なベクターの例には、プラスミドのpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAX1およびpZeoSV2(これらはInvitrogen(San Diego、CA)から入手可能である)、ならびに、プラスミドのpCI(これはPromega(Madison、WI)から入手可能である)が含まれるが、これらに限定されない。一般に、非常に多数の形質転換細胞を、好適に高レベルの免疫グロブリンの重鎖および軽鎖を発現する形質転換細胞についてスクリーニングすることは、例えば、ロボットシステムによって行うことができる日常的な実験である。ベクター系はまた、米国特許第5,736,137号および第5,658,570号に教示される(これらのそれぞれがその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。この系は、例えば、30pg/細胞/日を超える高い発現レベルを提供する。他の例示的なベクター系が、例えば、米国特許第6,413,777号に開示される。
他の好ましい実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体が、多シストロン構築物、例えば、米国特許出願公開第2003−0157641号A1(その全体が本明細書中に組み込まれる)に開示される多シストロン構築物などを使用して発現させられる場合がある。これらの発現系において、目的とする多数の遺伝子産物(例えば、抗体の重鎖および軽鎖など)がただ1つの多シストロン構築物からもたらされる場合がある。これらの系では、配列内リボソーム進入部位(IRES)が、比較的高いレベルの抗体を提供するために都合よく使用される。適合し得るIRES配列が米国特許第6,193,980号(これもまた本明細書中に組み込まれる)に開示される。当業者は、そのような発現系が、本出願において開示される抗体の完全な範囲を効果的に産生するために使用されることがあることを理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、本発明は、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメインまたは可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含むベクターを提供する。
より一般的には、抗体のモノマーサブユニットをコードするベクターまたはDNA配列が調製されると、発現ベクターが、適切な宿主細胞に導入される場合がある。宿主細胞へのプラスミドの導入を、当業者にはよく知られている様々な技術によって達成することができる。これらには、例えば、Fugene(登録商標)またはリポフェクタミンを使用するリポトランスフェクションを含むトランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、包まれたDNAを用いた細胞融合、顕微注入、および、無傷のウイルスによる感染が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、宿主へのプラスミド導入が、標準的なリン酸カルシウム共沈殿法により行われる。発現構築物を有する宿主細胞が、軽鎖および重鎖を産生させるために適切である条件のもとで成長させられ、重鎖および/または軽鎖のタンパク質合成についてアッセイされる。例示的なアッセイ技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)または蛍光活性化細胞分取器分析(FACS)および免疫組織化学などが含まれる。
発現ベクターが従来からの技術によって宿主細胞に移され、トランスフェクションされた細胞がその後、抗体を本明細書中に記載される方法における使用のために産生させるため従来からの技術によって培養される。したがって、本発明には、好ましくは異種プロモーターに機能的に連結される、本発明の抗体またはその重鎖もしくは軽鎖、あるいは、少なくともその免疫グロブリンの結合ドメインまたは可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が含まれる。加えて、または、代替において、本発明にはまた、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメインまたは可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含む本明細書中上記で定義されるようなベクターを含む宿主細胞が含まれる。二重鎖抗体を発現させるための好ましい実施形態において、重鎖および軽鎖の両方をコードする単一のベクターまたは複数のベクターが、下記で詳述されるように、完全な免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞において共発現させられる場合がある。
宿主細胞が本発明の2つの発現ベクターにより共トランスフェクションされる場合があり、この場合、第1のベクターが重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2のベクターが軽鎖由来のポリペプチドをコードする。これら2つのベクターは、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含有する場合がある。代替では、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの両方をコードするただ1つのベクターが使用される場合がある。そのような状況では、軽鎖が好都合には、毒性のない重鎖の過剰を避けるために重鎖の前に置かれる(Proudfoot、Nature 322(1986)、52;Kohler、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、2197を参照のこと)。重鎖および軽鎖のためのコード配列がcDNAまたはゲノムDNAを含む場合がある。
本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」は、組換えDNA技術を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターを有する細胞を示す。抗体を組換え宿主から単離するためのプロセスの記載において、用語「細胞」および「細胞培養(物)」が、別途明確に指定される場合を除き、抗体の供給源を示すために交換可能に使用される。別の言い方をすれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、遠心分離された細胞全体から、または、培地および懸濁された細胞の両方を含有する細胞培養物からのどちらをも意味する場合がある。
様々な宿主−発現ベクター系が、本明細書中に記載される方法において使用されるための抗体分子を発現させるために利用される場合がある。そのような宿主−発現系は、目的とするコード配列が産生され、続いて精製されることがあるビヒクルを表し、しかし、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換またはトランスフェクションされたとき、本発明の抗体分子をその場で発現する細胞もまた表す。これらには、微生物、例えば、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクターまたはコスミドDNA発現ベクターにより形質転換される細菌(例えば、Escherichia coli、Bacillus subtilis);抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換される酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)が感染させられる昆虫細胞系;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV)が感染させられるか、または、抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換される植物細胞系;あるいは、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、NSO細胞、BLK細胞、293細胞、3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、完全な組換え抗体分子の発現のためにはとりわけ、細菌細胞(例えば、大腸菌など)、より好ましくは真核生物細胞が、組換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、ベクター(例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要前初期遺伝子プロモーターエレメントなど)と併せての哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などが、抗体のための効果的な発現系である(例えば、Foecking他、Gene 45(1986)、101;Cockett他、Bio/Technology 8(1990)、2を参照のこと)。
タンパク質発現のために使用される宿主細胞株は多くの場合、哺乳動物起源である;当業者には、宿主細胞株において発現させられる所望の遺伝子産物のために最もよく適する特定の宿主細胞株を優先的に決定する能力があると思われる。例示的な宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFR欠損)、HELA(ヒト子宮頸ガン)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40のT抗原を有するCVIの誘導体)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)および293(ヒト腎臓)が含まれるが、これらに限定されない。CHO細胞および293細胞が特に好ましい。宿主細胞株は典型的には、商用サービスから、すなわち、American Tissue Culture Collectionから入手可能であり、または、発表された文献から入手可能である。
加えて、挿入された配列の発現を調節するか、あるいは、遺伝子産物を所望される特定の様式で修飾し、また、プロセシングする宿主細胞系統が選ばれる場合がある。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)およびプロセシング(例えば、切断)が当該タンパク質の機能のために重要である場合がある。種々の宿主細胞が、タンパク質および遺伝子産物の翻訳後のプロセシングおよび修飾のための特徴的かつ特異的な機構を有する。適切な細胞株または宿主系を、発現される外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングを保証するために選ぶことができる。この目的を達成するために、一次転写物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化およびリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用される場合がある。
組換えタンパク質の長期間にわたる高収量の産生のためには、安定的発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株が操作される場合がある。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、むしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)および選択マーカーによって制御されるDNAにより形質転換することができる。外来DNAを導入した後、操作された細胞は富化培地において1日間〜2日間にわたって成長させられる場合があり、その後、選択培地に切り換えられる。組換えプラスミドにおける選択マーカーは選択に対する抵抗性を与え、また、細胞がプラスミドをその染色体に安定的に組み込み、成長して、結果としてクローン化され、かつ、細胞株に拡大することができる増殖巣を形成することを可能にする。この方法は、抗体分子を安定的に発現する細胞株を操作するために都合よく使用される場合がある。
数多くの選択システムが使用される場合があり、これらには、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler他、Cell 11(1977)、223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska&Szybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48(1992)、202)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy他、Cell 22(1980)、817)をtk−細胞、hgprt−細胞またはaprt−細胞においてそれぞれ用いることができる。また、代謝拮抗物質抵抗性を下記の遺伝子のための選択の基礎として使用することができる:dhfr、これはメトトレキサートに対する抵抗性を与える(Wigler他、Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、357;O’Hare他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、1527);gpt、これはミコフェノール酸に対する抵抗性を与える(Mulligan&Berg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、2072);neo、これはアミノグリコシドG−418に対する抵抗性を与える(Goldspiel他、Clinical Pharmacy 12(1993)、488〜505;Wu and Wu、Biotherapy 3(1991)、87〜95;Tolstoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32(1993)、573〜596;Mulligan、Science 260(1993)、926〜932;ならびに、Morgan and Anderson、Ann.Rev.Biochem.62(1993)、191〜217;TIB TECH 11(1993)、155〜215);および、hygro、これはヒグロマイシンに対する抵抗性を与える(Santerre他、Gene 30(1984)、147)。使用することができる、組換えDNA技術の技術分野において一般に知られている様々な方法が、Ausubel他(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1993);Kriegler、Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990)に記載さされ、また、第12章および第13章、Dracopoli他(編)、Current Protocols in Human Genetics、John Wiley&Sons、NY(1994);Colberre−Garapin他、J.Mol.Biol.150:1(1981)に記載される(これらはその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
抗体分子の発現レベルをベクター増幅によって増大させることができる(総説については、Bebbington and Hentschel、The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning、Academic Press、New York、第3巻(1987)を参照のこと)。抗体を発現させるベクター系におけるマーカーが増幅可能であるときには、宿主細胞の培養において存在する阻害剤のレベルにおける増大はマーカー遺伝子のコピー数を増大させるであろう。増幅された領域は抗体遺伝子に付随するので、抗体の産生もまた増大するであろう(Crouse他、Mol.Cell.Biol.3(1983)、257を参照のこと)。インビトロ産生では、スケールアップにより、多量の所望されるポリペプチドを与えることが可能である。組織培養条件のもとでの哺乳動物細胞培養のための様々な技術がこの技術分野において知られており、これらには、均一懸濁培養、例えば、エアーリフト型リアクターまたは連続撹拌槽リアクターにおける培養、あるいは、固定化細胞または包括化細胞の培養、例えば、中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズまたはセラミックカートリッジにおける培養が含まれる。必要および/または所望されるならば、ポリペプチドの溶液を、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的な生合成の後で、あるいは、本明細書中に記載されるHICクロマトグラフィー工程の前または後で、慣例的なクロマトグラフィー方法、例えば、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィー、または、(免疫)アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体をコードする遺伝子はまた、哺乳動物以外の細胞、例えば、細菌細胞または昆虫細胞または酵母細胞または植物細胞において発現させることができる。核酸を容易に取り込む細菌には、腸内細菌科のメンバー、例えば、大腸菌またはサルモネラ属の菌株など;バチルス科、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)など;肺炎球菌(Pneumococcus);連鎖球菌属(Streptococcus)およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が含まれる。細菌において発現させられるとき、異種ポリペプチドは典型的には封入体の一部となることがさらに理解されるであろう。異種ポリペプチドは単離され、精製され、その後、機能的な分子に組み立てられなければならない。四価形態の抗体が所望される場合、そのサブユニットは四価抗体に自己集合するであろう(例えば、国際特許出願公開WO02/096948を参照のこと)。
細菌系において、多数の発現ベクターが、抗体分子が発現されるための意図される使用に依存して、都合よく選択される場合がある。例えば、多量のそのようなタンパク質が抗体分子の医薬組成物の作製のために産生させられることになるときには、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を導くベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターには、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther他、EMBO J.2(1983)、1791)(この場合、抗体コード配列がlacZコード領域とインフレームでベクターに個々に連結され、その結果、融合タンパク質が産生されるようにされる場合がある);pINベクター(Inouye&Inouye、Nucleic Acids Res.13(1985)、3101〜3109;Van Heeke&Schuster、J.Biol.Chem.24(1989)、5503〜5509)などが含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクターもまた、外来ポリペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させるために使用される場合がある。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズのマトリックスへの吸着および結合、その後の遊離したグルタチオンの存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビンまたは第Xa因子のプロテアーゼ切断部位を含み、その結果、クローン化された標的遺伝子産物がGST成分から放出され得るように設計される。
原核生物に加えて、真核生物の微生物もまた使用される場合がある。サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、すなわち、普通のパン酵母が、真核生物の微生物の中で最も一般に使用されるが、多くの他の菌株が一般に利用可能である(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))。サッカロミセス属における発現のために、例えば、プラスミドYRp7(Stinchcomb他、Nature 282(1979)、39;Kingsman他、Gene 7(1979)、141;Tschemper他、Gene 10(1980)、157)が一般に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の変異菌株(例えば、ATCC第44076号またはPEP4−1(Jones、Genetics 85(1977)、12))のための選択マーカーを提供するTRP1遺伝子を既に含有する。その場合、酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1損傷の存在により、形質転換をトリプトファンの不在下での成長によって検出するための効果的な環境が提供される。
昆虫系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が典型的には、外来タンパク質を発現させるためのベクターとして使用される。このウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞において成長する。抗体コード配列がウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)の中に個々にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれる場合がある。
本発明の抗体分子が組換え発現させられると、本発明の完全な抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖および重鎖または他の免疫グロブリン形態を、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に、プロテインAの後での特異的抗原についてのアフィニティー、および、サイズ分画カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈澱)、または、タンパク質の精製のためのいずれかの他の標準的な技術によることを含めて、この技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(例えば、Scopes、「Protein Purification」、Springer Verlag、N.Y.(1982)を参照のこと)。代替では、本発明の抗体の親和性を増大させるための好ましい方法が米国特許出願公開第2002−0123057号A1に開示される。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、抗ポリオーマウイルス、抗ポリオーマウイルスVP1又は抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体、あるいはその免疫グロブリン鎖を調製するための方法であって、
(a)本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチドまたはベクターを含む本明細書中上記で定義されるような宿主細胞を培養すること、および
(b)前記抗体またはその免疫グロブリン鎖を培養物から単離すること
を含む方法を提供する。
さらには、1つの実施形態において、本発明はまた、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチドによってコードされる抗体またはその免疫グロブリン鎖、あるいは、抗ポリオーマウイルス、抗ポリオーマウイルスVP1又は抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体またはその免疫グロブリン鎖を調製するための前記方法によって得ることができる抗体またはその免疫グロブリン鎖に関連する。
V.融合タンパク質およびコンジュゲート
特定の実施形態において、抗体ポリペプチドは、通常の場合には抗体に付随しないアミノ酸配列あるいは1つまたは複数の成分を含む。例示的な改変が下記においてより詳細に記載される。例えば、本発明の単鎖Fv抗体フラグメントは柔軟なリンカー配列を含む場合があり、または、機能的成分(例えば、PEG、薬物、毒素または標識(例えば、蛍光性、放射性、酵素、核磁気性および重金属など))を付加するために改変される場合がある。
本発明の抗体ポリペプチドは融合タンパク質を含む場合があり、融合タンパク質から本質的になる場合があり、または、融合タンパク質からなる場合がある。融合タンパク質は、例えば、少なくとも1つの標的結合部位を伴う免疫グロブリンのポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP結合ドメインと、少なくとも1つの異種部分、すなわち、自然界では生来的に連結されない部分とを含むキメラ分子である。これらのアミノ酸配列は、融合ポリペプチドにおいて一緒にされる別個のタンパク質において正常に存在する場合があり、または、同じタンパク質において正常に存在する場合があるが、融合ポリペプチドにおいては新しい配置で置かれる。融合タンパク質が、例えば、化学合成によって、または、ペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作出し、翻訳することによって作出される場合がある。
用語「異種(の)」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに適用される場合、当該ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、比較されている実体の残部のものとは異なる実体に由来することを意味する。例えば、本明細書中で使用されるように、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体またはアナログに融合されるための“異種ポリペプチド”は、同じ種の非免疫グロブリンポリペプチド、あるいは、異なる種の免疫グロブリンポリペプチドまたは非免疫グロブリンポリペプチドに由来する。
本明細書中の他のところでより詳細に議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はさらに、N末端またはC末端において異種ポリペプチドに組換え融合される場合があり、あるいは、ポリペプチドまたは他の組成物に化学的にコンジュゲート化される場合がある(共有結合によるコンジュゲート化および非共有結合によるコンジュゲート化を含む)。例えば、抗体が、検出アッセイにおいて標識として有用である分子に、また、エフェクター分子(例えば、異種ポリペプチド、薬物、放射性核種または毒素など)に組換え融合されるか、またはコンジュゲート化される場合がある(例えば、国際特許出願公開WO92/08495、WO91/14438、WO89/12624、米国特許第5,314,995号および欧州特許出願EP0396387を参照のこと)。
本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、ペプチド結合または修飾型ペプチド結合(すなわち、ペプチドアイソスター)によって互いにつながれるアミノ酸から構成されることが可能であり、また、遺伝子によりコードされる20個のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含有する場合がある。抗体は、天然のプロセス(例えば、翻訳後プロセシングなど)によって、または、この技術分野ではよく知られている化学的修飾技術によって改変される場合がある。そのような修飾が、基礎的な教本において、また、より詳しいモノグラフにおいて、ならびに、膨大な数の研究文献において十分に記載されている。修飾を、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシル末端を含めて、抗体においてどこにでも、あるいは、炭水化物などの成分に対して行うことができる。同じタイプの修飾が、所与の抗体において、いくつかの部位において同じ程度または種々の程度で存在する場合があることが理解されるであろう。また、所与の抗体が多くのタイプの修飾を含有する場合がある。抗体は、例えば、ユビキチン化の結果として分岐する場合があり、また、分岐を伴って、または伴うことなく、環状である場合がある。環状の抗体、分岐した抗体、および、分岐した環状の抗体が、翻訳後の天然のプロセスから生じる場合があり、または、合成的方法によって作製される場合がある。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合連結、ヘム成分の共有結合連結、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合連結、脂質または脂質誘導体の共有結合連結、ホスファチジルイノシトールの共有結合連結、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加(例えば、アルギニル化など)、および、ユビキチン化が含まれる(例えば、Proteins−Structure And Molecular Properties、T.E.Creighton、W.H.Freeman and Company、New York、第2版(1993);Posttranslational Covalent Modification Of Proteins、B.C.Johnson編、Academic Press、New York、1頁〜12頁(1983);Seifter他、Meth.Enzymol.182(1990)、626〜646;Rattan他、Ann.NY Acad.Sci.663(1992)、48〜62を参照のこと)。
本発明はまた、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体と、異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。1つの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、本発明の抗体のVH領域のいずれか1つまたは複数のアミノ酸配列、あるいは、本発明の抗体のVL領域またはそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つまたは複数のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法および処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVH−CDRまたはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列、あるいは、抗体のVL−CDRまたはそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。1つの実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体のVH−CDR3またはそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含み、そのような融合タンパク質はポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLPに特異的に結合する。別の実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体の少なくとも1つのVH領域のアミノ酸配列と、本発明の抗体の少なくとも1つのVL領域またはそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、融合タンパク質のVH領域およびVL領域は、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLPと特異的に結合する単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメントまたはFabフラグメント)に対応する。さらに別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法および処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVHCDRのいずれか1つ、2つ、3つまたはそれ以上のアミノ酸配列と、抗体のVLCDRまたはそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つ、2つ、3つまたそれ以上のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、VH−CDRまたはVL−CDRの2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれ以上が、本発明の単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメントまたはFabフラグメント)に対応する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子もまた本発明によって包含される。
文献に報告される例示的な融合タンパク質には、下記の融合物が含まれる:T細胞受容体(Gascoigne他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84(1987)、2936〜2940);CD4(Capon他、Nature 337(1989)、525〜531;Traunecker他、Nature 339(1989)、68〜70;Zettmeissl他、DNA Cell Biol.USA 9(1990)、347〜353;およびByrn他、Nature 344(1990)、667〜670);L−セレクチン(ホーミング受容体)(Watson他、J.Cell.Biol.110(1990)、2221〜2229;およびWatson他、Nature 349(1991)、164〜167);CD44(Aruffo他、Cell 61(1990)、1303〜1313);CD28およびB7(Linsley他、J.Exp.Med.173(1991)、721〜730);CTLA−4(Lisley他、J.Exp.Med.174(1991)、561〜569);CD22(Stamenkovic他、Cell 66(1991)、1133〜1144);TNF受容体(Ashkenazi他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(1991)、10535〜10539;Lesslauer他、Eur.J.Immunol.27(1991)、2883〜2886;およびPeppel他、J.Exp.Med.174(1991)、1483〜1489(1991));ならびにIgE受容体a(Ridgway and Gorman、J.Cell.Biol.115(1991)、アブストラクト番号:1448)。
本明細書中の他のところで議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、ポリペプチドのインビボ半減期を増大させるために、または、この技術分野において知られている方法を使用する免疫アッセイにおける使用のために異種ポリペプチドに融合される場合がある。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の抗体に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる(例えば、Leong他、Cytokine、16(2001)、106〜119;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;またはWeir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512を参照のこと)。
そのうえ、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、マーカー配列(例えば、それらの精製または検出を容易にするためのペプチドなど)に融合することができる。好ましい実施形態において、マーカーのアミノ酸配列は、多くのものが市販されているが、とりわけ、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(HIS)であり、例えば、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)において提供されるタグなどである。例えば、Gentz他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)、821〜824に記載されるように、ヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製をもたらす。精製のために有用である他のペプチドタグには、「HA」タグ(これは、インフルエンザの赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する)(Wilson他、Cell 37(1984)、767)、GST、c−mycおよび「flag」タグが含まれるが、これらに限定されない(例えば、エピトープタグ化技術の総説については、Bill Brizzard、BioTechniques 44(2008)、693〜695を、また本発明において使用可能である最も一般的なエピトープタグを列挙するその694頁における表1を参照のこと。これらの主題は、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる)。
融合タンパク質を、この技術分野においてよく知られている方法を使用して調製することができる(例えば、米国特許第5,116,964号および第5,225,538号を参照のこと)。融合が行われるまさにその部位が、融合タンパク質の分泌または結合特性を最適化するために経験的に選択される場合がある。融合タンパク質をコードするDNAがその後、本明細書中上で記載されるように行われる発現のために宿主細胞にトランスフェクションされる。
本発明の抗体は非コンンジュゲート化形態で使用される場合があり、あるいは、例えば、分子の治療的性質を改善するために、標的検出を容易にするために、または、患者の画像化もしくは治療のために様々な分子の少なくとも1つにコンジュゲート化される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、精製が行われるときには精製前または精製後のどちらでも標識化またはコンジュゲート化することができる。特に、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節物質、医薬剤またはPEGにコンジュゲート化される場合がある。
従来の抗体を含む免疫毒素であるコンジュゲートがこの技術分野において幅広く記載されている。毒素が従来からのカップリング技術によって抗体にカップリングされる場合があり、または、タンパク質毒素部分を含有する免疫毒素を融合タンパク質として作製することができる。本発明の抗体は、そのような免疫毒素を得るための対応する方法で使用することができる。そのような免疫毒素を例示するものが、Byers、Seminars Cell.Biol.2(1991)、59〜70、および、Fanger、Immunol.Today 12(1991)、51〜54によって記載される免疫毒素である。
当業者は、コンジュゲートがまた、コンジュゲート化されるための選択された薬剤に依存して様々な技術を使用して組み立てられ得ることを理解するであろう。例えば、ビオチンとのコンジュゲートが、例えば、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP結合ペプチドをビオチンの活性化エステル(例えば、ビオチンN−ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)と反応することによって調製される。同様に、蛍光性マーカーとのコンジュゲートがカップリング剤(例えば、本明細書中に列挙されるカップリング剤)の存在下で調製される場合があり、または、イソチオシアン酸塩との反応によって、好ましくはイソチオシアン酸フルオレセインとの反応によって調製される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体のコンジュゲートが同様な様式で調製される。
本発明はさらに、診断剤または治療剤にコンジュゲート化される本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を包含する。抗体を、例えば、ポリオーマウイルスの存在を明らかにして、ポリオーマウイルス関連疾患(例えば、臨床検査手順の一部としてのポリオーマウイルスタンパク質、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLPの出現に関連づけられる疾患)の発症または進行をモニターして、例えば、所与の処置療法および/または防止療法の効力を明らかにするために、診断的に使用することができる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能に標識される抗体に関連する。さらには、1つの実施形態において、本発明は、薬物に結合させられる抗体に関連する。検出を、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を検出可能な物質にカップリングすることによって容易にすることができる。検出可能な物質または標識は一般に、酵素、重金属(好ましくは金)、色素(好ましくは蛍光性色素または発光性色素)または放射性標識である場合がある。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光性物質、発光性物質、生物発光性物質、放射性物質、様々な陽電子放出断層撮影法を使用する陽電子放出金属、および、非放射性常磁性金属イオンが含まれる(本発明に従って診断剤として使用されるために抗体にコンジュゲート化することができる金属イオンについては、例えば、米国特許第4,741,900号を参照のこと)。好適な酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;好適な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;好適な蛍光性物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられる;発光性物質の一例として、ルミノールが挙げられる;生物発光性物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられる;好適な放射性物質の例として、125I、131I、111Inまたは99Tcが挙げられる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能な標識が、酵素、放射性同位体、蛍光団、タンパク質、および重金属からなる群から選択される検出可能に標識された抗体を提供する。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識することができる。化学発光標識された抗体の存在がその後、化学反応の経過の期間中に生じる発光の存在を検出することによって求められる。特に有用な化学発光性の標識用化合物の例が、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体が検出可能に標識され得る方法の1つは、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を酵素に連結し、連結された生成物を酵素免疫アッセイ(EIA)において使用することによってである(Voller,A.、「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」、Microbiological Associates Quarterly Publication、Walkersville、Md.、Diagnostic Horizons 2(1978)、1〜7);Voller他、J.Clin.Pathol.31(1978)、507〜520;Butler、Meth.Enzymol.73(1981)、482〜523;Maggio,E.(編)、Enzyme Immunoassay、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1980);Ishikawa,E.他(編)、Enzyme Immunoassay、Kgaku Shoin、Tokyo(1981))。酵素は、抗体に結合しているので、例えば、分光光度法的手段、蛍光定量法的手段または目視的手段によって検出することができる化学的成分を生成するような様式で、適切な基質(好ましくは発色性基質)と反応するであろう。抗体を検出可能に標識するために使用することができる酵素には、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。加えて、検出を、酵素のための発色性基質を用いる比色法によって達成することができる。検出はまた、類似して調製された標準物との比較における基質の酵素反応の程度の目視比較によって達成される場合がある。
検出はまた、様々な他の免疫アッセイのいずれかを使用して達成される場合がある。例えば、抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体を放射能標識することによって、抗体を放射免疫アッセイ(RIA)の使用により検出することが可能である(例えば、Weintraub,B.、Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society(March、1986)を参照のこと。これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。放射性同位体を、ガンマカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィー(これらに限定されない)を含む手段によって検出することができる。
抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体はまた、蛍光放射金属(例えば、ランタニド系列の152Euなど)を使用して検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート化基を使用して抗体に結合させることができる。
様々な成分を抗体あるいはその抗原結合フラグメント、変異体または誘導体にコンジュゲート化するための技術がよく知られている;例えば、Arnon他、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeld他(編)、243頁〜56頁、Alan R.Liss,Inc.(1985);Hellstrom他、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinson他(編)、Marcel Dekker,Inc.、623頁〜53頁(1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies‘84:Biological And Clinical Applications、Pinchera他(編)、475頁〜506頁(1985);「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwin他(編)、Academic Press、303頁〜16頁(1985)、および、Thorpe他、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62(1982)、119〜158を参照のこと。
述べられたように、特定の実施形態において、結合性分子、例えば、結合性ポリペプチド、例えば、抗体またはその免疫特異性フラグメントの安定性または効力を高める成分をコンジュゲート化することができる。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の結合性分子に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる。Leong他、Cytokine、16(2001)、106;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;または、Weir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512。
VI.有用な組成物および方法
本発明は、本明細書中先に定義されるように、上記のポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子(例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合フラグメントまたは誘導体または変異体)、あるいは、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞を含む組成物に関連する。1つの実施形態において、本発明の組成物は医薬組成物であり、かつ、医薬的に許容されるキャリアをさらに含む。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、インターロイキンまたはインターフェロンなど)を含む場合がある。ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLPの出現を示すポリオーマウイルスの処置における使用のために、さらなる薬剤が、小さい有機分子、抗ポリオーマウイルス、抗ポリオーマウイルスVP1及び/又は抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体、ならびに、それらの組合せからなる群から選択される場合がある。したがって、特定の好ましい実施形態において、本発明は、代謝疾患の予防的処置および治療的処置、代謝疾患の進行または代謝疾患の処置に対する応答を対象においてモニターすること、あるいは、代謝疾患を発症することについての対象の危険性を明らかにすることのための医薬組成物または診断組成物を調製するための、ポリオーマウイルスタンパク質、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントまたは前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞の使用に関連する。
1つの実施形態において、本発明は、ポリオーマウイルスに伴う障害、好ましくは、JCVおよび/またはBKVのタイプのポリオーマウイルスに伴う障害を処置する方法であって、その必要性のある対象に、本発明の上記のポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子、抗体、ポリヌクレオチド、ベクターあるいは細胞のいずれか1つの治療効果的な量を投与することを含む方法に関連する。
本発明の治療的取り組みの具体的な利点が、本発明の抗体は、健康な高齢のヒト対象、また、多発性硬化症(MS)を処置するためにモノクローナル抗体治療を受け、かつ、PMLおよびPML−IRISの症状を発症し、PMLおよびPML−IRISから回復した患者から得られるB細胞またはメモリーB細胞に由来しており、したがって、ある程度の確率で、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLPに関連づけられる臨床的に明白な疾患を防止することができる、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患の出現の危険性を減らすことができる、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患の発症または進行を遅らせることができるという事実にある。典型的には、本発明の抗体はまた、体細胞成熟化、すなわち、抗体の可変領域の体細胞変化による、標的のポリオーマウイルス分子、ポリオーマウイルスVP1分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP分子に対する高親和性結合における選択性および有効性に関しての最適化を既に首尾良く経ている。
そのような細胞は生体内において、例えば、ヒト体内において、自己免疫学的反応またはアレルギー反応の意味で、関連した、または他の生理学的なタンパク質または細胞構造によって、活性化されていないという認識はまた、臨床試験段階を首尾よく生き残る可能性が相当に増大したことがこれにより意味されるので、非常に医学的に重要である。いわば、効率、許容性および耐容性が、少なくとも1名のヒト対象において予防的抗体または治療的抗体の前臨床開発または臨床開発の前に既に実証されている。したがって、本発明のヒト抗ポリオーマウイルス、抗ポリオーマウイルスVP1及び/又は抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体は、治療剤としてのその標的特異的効率と、副作用のその低下した可能性との両方により、その臨床的な成功の可能性を著しく増大させることが予想され得る。
本発明はまた、上で記載された成分(例えば、本発明の抗ポリオーマウイルス、抗ポリオーマウイルスVP1及び/又は抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体、その結合フラグメント、誘導体もしくは変異体、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞)の1つまたは複数により満たされる1つまたは複数の容器を含む医薬用および診断用のパックまたはキットをそれぞれ提供する。そのような容器には、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府当局によって定められる形式での通知が伴い得る(そのような通知は、製造、使用または販売の当局によるヒト投与のための承認を反映する)。加えて、または、代替において、キットは、適切な診断アッセイにおいて使用されるための試薬および/または説明書を含む。本発明の組成物、例えば、キットは、当然のことながら、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1及び/又はポリオーマウイルスVP1 VLPの存在を伴う、ポリオーマウイルス感染による障害のリスク管理、診断、防止および処置のために特に好適である。
本発明の医薬組成物はこの技術分野においてよく知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0−683−306472)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野ではよく知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、よく知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与が、種々の方法によって、例えば、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、局所的投与または皮内投与あるいは脊髄送達または脳送達によって行われる場合がある。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤および等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液または他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpHおよび等張性状態に調節される。直腸投与または膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある。
投薬計画が主治医および臨床上の要因によって決定されるであろう。医療技術分野ではよく知られているように、どのような患者であれ、患者のための投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与されるべき具体的な化合物、性別、投与時間および投与経路、全身の健康状態、ならびに、同時に投与されている他の薬物を含めて、多くの要因に依存する。典型的な用量が、例えば、0.001μg〜1000μgの範囲(あるいは、この範囲における発現または発現阻害のための核酸の範囲)であり得る;しかしながら、この例示的な範囲よりも少ない用量または大きい用量が、とりわけ上述の要因を考慮して想定される。一般に、投薬量は、例えば、宿主体重の約0.0001〜100mg/kgの範囲が可能であり、より通常的には0.01〜5mg/kg(例えば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)が可能である。例えば、投薬量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重、あるいは、1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであり得る。上記範囲において中間的である用量もまた、本発明の範囲内で意図される。対象には、そのような用量を毎日、1日おきに、毎週、または、経験的分析によって決定されるいずれかの他のスケジュールに従って投与することができる。例示的な処置は、例えば、少なくとも6ヶ月の長期間にわたる多数回の投薬での投与を伴う。さらなる例示的な処置計画は、2週間毎に1回、または、1ヶ月に1回、または、3ヶ月毎〜6ヶ月毎に1回での投与を伴う。例示的な投薬スケジュールには、連続した毎日での1〜10mg/kgまたは15mg/kg、1日おきでの30mg/kg、あるいは、毎週での60mg/kgが含まれる。一部の方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、そのような場合、投与されるそれぞれの抗体の投薬量が、示される範囲内である。進行を定期的な評価によってモニターすることができる。非経口投与のための調製物には、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁物およびエマルションが含まれる。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油など)、および、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)が挙げられる。水性キャリアには、生理的食塩水および緩衝媒体を含めて、水、アルコール性溶液/水溶液、エマルションまたは懸濁物が含まれる。非経口用ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは固定油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、流体および栄養補充液および電解質補充液(例えば、リンゲルブドウ糖に基づくものなど)などが含まれる。保存剤および他の添加剤もまた存在する場合がある(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤および不活性ガスなど)。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、ドーパミンまたは精神薬理学的薬物など)を含む場合がある。
さらには、本発明の好ましい実施形態において、例えば、本発明の医薬組成物が抗ポリオーマウイルス、抗ポリオーマウイルスVP1及び/又は抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体あるいはその結合フラグメント、誘導体または変異体を受動免疫化のために含むならば、医薬組成物はワクチンとして配合される場合がある。
1つの実施形態において、本発明の抗体の組換えの二重特異性構築物または多特異性構築物を使用することが有益である場合がある。参考については、FischerおよびLeger、Pathobiology、74(2007)、3〜14を参照のこと。そのような二重特異性分子は、異なる様々なポリオーマウイルスを標的化するために、または、様々なポリオーマウイルスの感染によって引き起こされる疾患を標的化するために設計されるかもしれない。二重特異性分子はまた、第2の結合アームにより、ポリオーマウイルスに伴う病理発生において知られている他の実体と結合するために設計されるかもしれない。
1つの実施形態において、本発明の抗体の組換えFabフラグメント(rFab)および単鎖フラグメント(scFv)を使用することが有益である場合がある。これは、それらがより容易に細胞膜に浸透するかもしれないからである。エフェクター機能を欠く小さいFabおよびscFvの操作された抗体様式を使用することの認識された利点には、血液脳関門をより効率的に通過すること、および、炎症性の副反応を誘発する危険性を最小限に抑えることが含まれる。さらには、scFVおよび単鎖ドメイン抗体は全長抗体の結合特異性を保持することのほかに、それらは単一遺伝子として発現させることができ、また、折り畳み、相互作用、修飾、または、それらの標的の細胞内局在化の変化についての潜在的可能性が伴うが、細胞内抗体として哺乳動物細胞において細胞内に発現させることができる(総説については、例えば、MillerおよびMesser、Molecular Therapy、12(2005)、394〜401を参照のこと)。
異なる取り組みにおいて、Muller他、Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237〜241は、抗体が、生細胞を傷つけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる技術基盤(いわゆる「SuperAntibody Technology」)を記載する。そのような細胞浸透抗体により、新しい診断範囲および治療範囲が開拓される。用語「TransMabs」がこれらの抗体のために案出されている。
1つの実施形態において、本発明の抗体、医薬組成物またはワクチンは、ポリオーマウイルスの(再)活性化に伴う疾患を処置することにおいて免疫調節剤との組合せで、または、免疫調節剤と同時に、または、免疫調節剤と連続して使用され、好ましくは、進行性多巣性白質脳症(PML)、顆粒ニューロンの感染、高色素性核、顆粒細胞神経症、脳オートトロフィー、脳症、髄膜炎、ポリオーマ誘発腫瘍、免疫再構築炎症反応症候群(IRIS)、出血性膀胱炎、肺炎、網膜炎、大腸炎、血管炎、間質性腎臓疾患、気道の感染症、JCV腎症、BKV腎症、髄膜炎、メルケル細胞ガン、トリコジスプラシア・スピヌローサまたは悪性胸膜中皮腫を処置するために、および/または、ナタリズマブ、エファリズマブ、リツキシマブ、インフリキシマブ、オクレリズマブ、アレムツズマブ、ベンツキシマブまたはベドチンの薬剤による同時投与において免疫調節剤との組合せで、または、免疫調節剤と同時に、または、免疫調節剤と連続して使用される。
治療効果的な用量または量とは、症状または状態を改善するために十分である有効成分のそのような量を示す。そのような化合物の治療効力および毒性を、細胞培養または実験動物における標準的な薬学手順によって、例えば、ED50(集団の50%において治療効果的な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)によって求めることができる。治療効果と毒性影響との間における用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50の比率として表すことができる。好ましくは、組成物における治療剤は、例えば、ポリオーマウイルス感染によって引き起こされる移植片拒絶、PMLおよび他の疾患を防止するために十分な量で存在する。
前記から、本発明は、上記抗体の少なくとも1つのCDRを含むポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子のどのような使用をも包含すること、特に、ポリオーマウイルス感染に関連づけられる疾患の診断および/または処置のためのそのような分子のどのような使用をも包含することが明らかである。好ましくは、前記結合性分子は本発明の抗体またはその免疫グロブリン鎖である。加えて、本発明は、本明細書中先に記載される述べられた抗体のいずれかの1つの抗イディオタイプ抗体に関連する。これらは、抗原結合部位の近くにおいて抗体の可変領域に位置する独特の抗原性ペプチド配列に結合する抗体または他の結合性分子であり、例えば、対象から得られるサンプルにおける抗ポリオーマウイルス抗体、抗ポリオーマウイルスVP1抗体および/または抗ポリオーマウイルスVP1 VLP抗体の検出のために有用である。したがって、1つの実施形態において、本発明は、ポリオーマウイルス感染に関連づけられる障害の予防的処置、治療的処置、および/または、そのような障害の進行もしくはそのような障害の処置に対する応答をモニターすることにおいて使用されるための本明細書中上記および下記で定義されるような抗体、あるいは、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子、本明細書中で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞、あるいは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物または診断組成物を提供し、ただし、この場合、好ましくは、前記障害が、PML、顆粒ニューロンの感染、高色素性核、顆粒細胞神経症、脳オートトロフィー、脳症、髄膜炎、ポリオーマウイルス誘発腫瘍、免疫再構築炎症反応症候群(IRIS)、出血性膀胱炎、肺炎、網膜炎、大腸炎、血管炎、間質性腎臓疾患、気道の感染症を含む群から選択される。上記の障害群は、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLPに関連づけられる障害の群と称されるであろう。
別の実施形態において、本発明は、上記のポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子、抗体、抗原結合フラグメント、ポリヌクレオチド、ベクターあるいは細胞のいずれか1つと、場合により、検出のための好適な手段(例えば、免疫または核酸に基づく診断方法において従来から使用される試薬など)とを含む診断組成物に関連する。本発明の抗体は、例えば、抗体を液相において利用することができるか、または、固相キャリアに結合させることができる免疫アッセイにおける使用のために適している。本発明の抗体を利用することができる免疫アッセイの例が、直接的様式または間接的様式でのどちらであれ、競合的免疫アッセイおよび非競合的免疫アッセイである。そのような免疫アッセイの例が、放射免疫アッセイ(RIA)、サンドイッチアッセイ(イムノメトリックアッセイ)、フローサイトメトリーアッセイおよびウエスタンブロットアッセイである。本発明の抗原および抗体は多くの異なるキャリアに結合させることができ、また、それらに特異的に結合する細胞を単離するために使用することができる。広く知られているキャリアの例には、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然セルロースおよび修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトが含まれる。キャリアの性質は本発明の目的のために可溶性または不溶性のどちらでも可能である。多くの異なる標識および標識化方法が当業者には知られている。本発明において使用することができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位体、コロイド状金属、蛍光性化合物、化学発光化合物および生物発光化合物が含まれる(本明細書中上記で議論された実施形態もまた参照のこと)。
さらなる実施形態によって、ポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子、特に、本発明の抗体はまた、血液サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、リンパサンプルまたはいずれかの他の体液サンプル(例えば、唾液サンプルまたは尿サンプルなど)である場合がある体液サンプルを検査された個体から得ること、および、体液サンプルを、抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件のもとで本発明の抗体と接触させることによって、障害を個体において診断するための方法において使用される場合がある。そのような複合体のレベルがその後、この技術分野で知られている方法によって求められ、コントロールサンプルにおいて形成されるレベルよりも有意に高いレベルにより、疾患が、検査された個体において示される。同じ様式で、本発明の抗体が結合する特異的抗原もまた使用される場合がある。したがって、本発明は、結合性分子、例えば、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントを含むインビトロ免疫アッセイに関連する。
この関連において、本発明はまた、この目的のためにとりわけ設計される手段に関連する。例えば、抗体に基づくアレイが使用される場合があり、この場合、アレイには、例えば、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLPを特異的に認識する本発明の抗体またはその同等な抗原結合性分子が負荷される。マイクロアレイでの免疫アッセイの設計が、Kusnezow他、Mol.Cell Proteomics、5(2006)、1681〜1696において要約される。したがって、本発明はまた、本発明に従って特定されるポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子が負荷されるマイクロアレイに関連する。
1つの実施形態において、本発明は、ポリオーマウイルス感染に関連づけられる疾患を対象において診断する方法であって、診断される前記対象から得られるサンプルにおけるポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLPの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体、その結合フラグメント、または、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子により決定することを含む方法に関連する。
ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLPのレベルが、どのような方法であれ、この技術分野で知られている好適な方法によって、例えば、ポリオーマウイルス、ポリオーマウイルスVP1および/またはポリオーマウイルスVP1 VLPを、ウエスタンブロット、免疫沈殿、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、二次元ゲル電気泳動、質量分析法(MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型MS(MALDI−TOF)、表面増強レーザー脱離イオン化−飛行時間(SELDIーTOF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、多次元液体クロマトグラフィー(LC)それに続くタンデム質量分析(MS/MS)、および、レーザーデンシトメトリーから選ばれる1つまたは複数の技術によって分析することを含むこの技術分野で知られている好適な方法によって評価される。好ましくは、VP1の前記インビボ画像化は、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法または磁気共鳴画像法(MRI)を含む。
したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体、あるいは、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞、あるいは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物または診断組成物が、ポリオーマウイルス感染に関連づけられる障害の予防的処置、治療的処置、および/または、そのような障害の進行もしくは処置に対する応答をモニターすることにおける使用のために提供される。したがって、一般には、本発明はまた、ポリオーマウイルス感染に関連づけられる障害を診断するか、または、そのような障害の進行をモニターする方法に関連する。
上記で示されるように、本発明の抗体、そのフラグメント、ならびに、本発明の抗体およびそのフラグメントと同じ結合特異性の分子は、インビトロだけでなく、インビボにおいても同様に使用される場合があり、ただし、この場合、診断的適用のほかに、治療的適用が同様に実行される場合がある。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、ヒトまたは動物の身体におけるポリオーマウイルスのインビボ検出のための組成物、あるいは、治療剤および/または診断剤をヒトまたは動物の身体においてポリオーマウイルスに対して標的化するための組成物を調製するための、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含むポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子に関連する。潜在的可能性のある治療剤および/または診断剤が、ポリオーマウイルスに伴う疾患の処置において有用である治療剤の非網羅的な列挙から選ばれる場合がある。インビボ画像化に関して、1つの好ましい実施形態において、本発明は、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記ポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子を提供し、ただし、この場合、前記インビボ画像化は、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法または磁気共鳴画像法(MRI)を含む。さらなる実施形態において、本発明はまた、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記ポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/またはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子、あるいは、上記で指定されるインビボ画像化方法のための組成物を調製するための前記分子を、本明細書中上記で定義されるように、ポリオーマウイルス感染に伴う障害を対象において診断するか、またはその進行を対象においてモニターする方法における使用のために提供する。
VII.ポリオーマウイルス特異的エピトープを有するペプチド
さらなる態様において、本発明は、本発明のいずれかの抗体によって特異的に認識されるポリオーマウイルスVP1のエピトープを有するペプチドに関連する。好ましくは、そのようなペプチドは、抗体によって認識される独特の線状エピトープとして配列番号85〜配列番号88に示されるアミノ酸配列、または、1つもしくは複数のアミノ酸が置換され、欠失され、および/または付加されるその改変された配列を含むか、あるいは、そのようなアミノ酸配列またはそのような改変された配列からなり、ただし、この場合、ペプチドは本発明のいずれかの抗体によって認識され、好ましくは、下記の抗体によって認識される:(A)NI−307.13G4、(B)NI−307.19F10、(C)NI−307.19F8、(D)NI−307.11G6、(E)NI−307.17F12、(F)NI−307.6A2、(G)NI−307.5H3、(H)NI−307.25G10、(I)NI−307.26E10、(J)NI−307.1E1、(K)NI−307.24C6、(L)NI−307.78C3、(M)NI−307.57D5、(N)NI−307.43A11、(O)NI−307.3G4、(P)NI−307.61D11、(Q)NI−307.24F3、(R)NI−307.18E12、(S)NI−307.20F5、(T)NI−307.58C7、(U)NI−307.105C7、(V)NI−307.98D3、(W)NI−307.72F7、(X)NI−307.45E10、(Y)NI−307.72F10、(Z)NI−307.56A8、(A2)NI−307.27C11、(B2)NI−307.47B11、(C2)NI−307.26A3、(D2)NI−307.27C2、(E2)NI−307.57D4、(F2)NI−307.50H4、(G2)NI−307.53B11、(H2)NI−307.7J3、(I2)NI−307.59A7、(J2)NI−307.105A6、(K2)NI−307.29B1、(L2)NI−307.44F6B、(M2)NI−307.98H1、(N2)NI−307.43E8および/または(O2)NI−307.18F4A。
本発明の1つの実施形態において、そのようなペプチドは、対象におけるポリオーマウイルス感染に関連づけられる疾患を診断するために、および/またはモニターするために使用される場合があり、前記対象の生物学的サンプルにおけるペプチドに結合する抗体の存在を明らかにする工程を含み、本発明の上記ペプチドを認識する抗体のレベルを測定すること、および、測定結果を、比較可能な年齢および性別の健康な対象において見出されるレベルに対して比較することによって前記対象におけるそのような疾患の診断のために使用される。したがって、1つの実施形態において、本発明は、PMLを診断するための方法に関連する。本発明のペプチドは、本明細書中の先に記載されるように、アレイ、キットおよび組成物においてそれぞれ配合される場合がある。この関連において、本発明はまた、ポリオーマウイルス感染症を診断するか、またはその進行をモニターすることにおいて有用なキットであって、本発明の少なくとも1つの抗体、または、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するポリオーマウイルス結合性分子、ポリオーマウイルスVP1結合性分子および/もしくはポリオーマウイルスVP1 VLP結合性分子、本明細書中上記でそれぞれ定義されるようなポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞および/またはペプチドを、必要な場合には試薬および/または使用のための説明書と一緒に含むキットに関連する。
これらの実施形態および他の実施形態が本発明の説明および実施例によって開示され、また、包含される。本発明に従って用いられるための材料、方法、使用法および化合物のいずれか1つに関するさらなる文献が、例えば、電子デバイスを使用して、公開されている図書館およびデータベースから検索される場合がある。例えば、公開されているデータベースの「Medline」が利用される場合がある(このデータベースは国立生物工学情報センターおよび/または国立衛生研究所の国立医学図書館によって提供される)。さらなるデータベースおよびウェブアドレスが、例えば、欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)(これは欧州分子生物学研究所(EMBL)の一部である)のデータベースなどが当業者には知られており、これらもまた、インターネット検索エンジンを使用して得ることができる。バイオテクノロジーにおける特許情報、ならびに、遡及的検索および現在の認識のために有用な特許情報の関連原典の調査の概略が、Berks、TIBTECH、12(1994)、352〜364に示される。
上記開示は本発明を一般的に記載する。別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂および2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。いくつかの文書が本明細書の本文を通して引用される。すべての引用された参考文献(本出願明細書を通して引用されるような文献参照物、発行された特許、公開された特許出願、および、製造者の仕様書、説明書などを含む)の内容が、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる;しかしながら、どのような文書であれ、引用される文書は実際に本発明に関して先行技術であることを何ら認めるものではない。
より完全な理解を、例示のみの目的のために本明細書中に提供され、かつ、本発明の範囲を限定するために意図されない下記の具体的な実施例を参照することによって得ることができる。
実施例1:血液ドナーの選択
臨床的に関心を引くドナーを募集し、末梢血を適切なインフォームドコンセントのもとで採血し、PBMCを調製し、液体窒素中で貯蔵した。
血液ドナーは、HLAタイピングおよび抗JCV力価が不明である健康な高齢患者、堅固なJCV特異的抗体産生を示したHLA−DRB1*04:01+の健康なドナー、および、多発性硬化症を処置するためにモノクローナル抗体治療を受け、かつ、PMLおよびPML−IRISの症状を発症し、PMLおよびPML−IRISから首尾良く回復した患者を含む3つのカテゴリーに分けることができる。後者のカテゴリーに由来する選択されたドナーは、大きい抗JCV抗体力価を伴う効率的な免疫応答をもたらした。
VP1を標的とするヒト由来抗体を、臨床的に選択されたドナーに由来するヒトメモリーB細胞レパートリーの補体のハイスループット分析によって特定した。VP1抗体スクリーニングのために、96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)を、VP1溶液、あるいは、炭酸塩緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)または再会合緩衝液のどちらかで1μg/mlの濃度に希釈されるBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)により4℃で一晩被覆した。プレートをPBS−T(pH7.6)で洗浄し、非特異的な結合部位を、室温で1時間、2%のBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)を含有するPBS/0.1%Tween−20によりブロッキング処理した。B細胞の馴化培地をメモリーB細胞培養プレートからELISAプレートに移し、室温で1時間インキュベーションした。ELISAプレートをPBS−Tで洗浄し、結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化抗ヒト免疫グロブリンポリクロナール抗体(Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)を使用して、その後、HRP活性を標準的な比色アッセイで測定して求めた。培地に含有される抗体の結合がBSAに対してではなく、VP1に対して示されているB細胞培養物のみを、抗体クローニングに供した。ハイスループット分析はまた、生来型抗体のサブクラスを特徴づけるためにも行った(表IVを参照のこと)。VP1反応性のメモリーB細胞に由来する抗体cDNAを、結合特性を明らかにするために発現させ、VP1反応性のIgGクローンをインビトロ特徴づけのためにCHOにおいて組換え産生させた。抗体をアフィニティークロマトグラフィーによってエンドトキシン非含有に精製した(例えば、SheehanおよびO’Sullivan、Methods Mol.Biol.、244(2004)、253〜258を参照のこと)。
JCV VP1およびBKV VP1の組換え全長体のためのVP1抗原をAbcam(Cambridge、英国)から購入した。代替では、JCV VP1の遺伝子を6×Hisタグに融合し、大腸菌において発現させ、ニッケルカラムを使用して精製した。さらには、抗原を、再会合緩衝液(TBSにおいて1mMのCaCl2)において振とうしながら24℃で48時間インキュベーションして、ウイルス様粒子(VLP)を形成させた。
使用したJCV VP1は、Mad−1株(UniProtKB/Swiss−Prot、NCBIアクセション番号P03089)に由来し、一方、BKV VP1は、AS株(UniProtKB/Swiss−Prot、NCBIアクセション番号P03088)に由来した。
実施例2:ウイルス様粒子へのVP1タンパク質の設定されたリフォールディング
ウイルスの表面に露出するVP1エピトープに対するヒット抗体の結合をスクリーニングし、試験するためには、ウイルス様粒子(VLP)へのVP1単量体のリフォールディングを設定しなければならなかった。VP1タンパク質(Abcam)をELISA被覆用の炭酸塩緩衝液で希釈したか、または、再会合緩衝液(1mMのCaCl2を含有するTBS)において24℃で48時間インキュベーションしたかのどちらかを行った。その後、調製物を抗VP1抗体により染色し、透過電子顕微鏡法によって調べた。図1Aに示されるように、被覆用炭酸塩緩衝液で希釈されるVP1タンパク質は構造体を何ら形成していない。これに反して、再会合緩衝液においてインキュベーションされるVP1タンパク質は、ウイルスの構造を模倣するVLPに再集合している(図1Bを参照のこと)。この手順はさらに、ELISAプレートに被覆されるための粒子(これは、VP1 VLPと呼ばれる)をリフォールディングするために使用された。
実施例3:VP1抗体の分子クローニング
選択されたメモリーB細胞培養物の生存B細胞を集め、mRNAを調製した。その後、免疫グロブリンの重鎖配列および軽鎖配列を、ネステッドPCR法を使用して得た。
ヒト免疫グロブリン生殖系列レパートリーのすべての配列ファミリーを表すプライマーの組合せを、リーダーペプチド、VセグメントおよびJセグメントの増幅のために使用した。1回目の増幅を、5’末端におけるリーダーペプチド特異的プライマーと、3’末端における定常領域特異的プライマーとを使用して行った(Smith他、Nat Protoc.、4(2009)、372〜384)。重鎖およびカッパ軽鎖のために、2回目の増幅を、5’末端におけるVセグメント特異的プライマーと、3’末端におけるJセグメント特異的プライマーとを使用して行った。ラムダ軽鎖のために、2回目の増幅を、5’末端におけるVセグメント特異的プライマーと、3’末端におけるC領域特異的プライマーとを使用して行った(Marks他、Mol.Biol.222(1991)、581〜597;de Haard他、J.Biol.Chem.26(1999)、18218〜18230)。
所望の特異性を有する抗体クローンの特定を、完全な抗体を組換え発現させたときにELISAでの再スクリーニングによって行った。完全なヒトIgG1抗体の組換え発現が、可変重鎖配列および可変軽鎖配列を、可変領域配列を5’末端において、リーダーペプチドをコードする配列により補い、かつ、3’末端において、適切な定常ドメインをコードする配列により補う発現ベクターに「正しい読み枠で」挿入したときに達成された。その目的を達成するために、プライマーは、抗体発現ベクターへの可変重鎖配列および可変軽鎖配列のクローニングを容易にするために設計される制限部位を含有した。重鎖免疫グロブリンを、免疫グロブリン重鎖のRT−PCR産物を、シグナルペプチドとヒト免疫グロブリンガンマ1の定常ドメインとを有する重鎖発現ベクターに読み枠を合わせて挿入することによって発現させた。カッパ軽鎖免疫グロブリンを、カッパ軽鎖のRT−PCR産物を、シグナルペプチドとヒトカッパ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを提供する軽鎖発現ベクターに読み枠を合わせて挿入することによって発現させた。ラムダ軽鎖免疫グロブリンを、ラムダ軽鎖のRT−PCR産物を、シグナルペプチドとヒトまたはマウスのラムダ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを提供するラムダ軽鎖発現ベクターに読み枠を合わせて挿入することによって発現させた。
機能的な組換えモノクローナル抗体を、Ig重鎖発現ベクターと、カッパIg軽鎖発現ベクターまたはラムダIg軽鎖発現ベクターとをHEK293細胞またはCHO細胞(あるいは、どのようなレシピエント細胞株であれ、ヒト起源またはマウス起源の他の適切なレシピエント細胞株)に共トランスフェクションしたときに得た。組換えヒトモノクローナル抗体を続いて、標準的なプロテインAカラム精製を使用して馴化培地から精製した。組換えヒトモノクローナル抗体を、一過性トランスフェクション細胞または安定的トランスフェクション細胞のどちらかを使用して無限の量で製造することができる。組換えヒトモノクローナル抗体を産生する細胞株を、Ig発現ベクターを使用することによって直接に、または、Ig可変領域を異なる発現ベクターに再クローニングすることによってそのどちらでも樹立することができる。誘導体、例えば、F(ab)、F(ab)2およびscFvなどもまた、これらのIg可変領域から作製することができる。
実験で使用される抗体、マウスのモノクローナルな抗VP1抗体2E4(sc−65930、Santa Cruz Biotechnology、California、米国)およびマウスのモノクローナルな抗VP1抗体(ab34756、Abcam、Cambridge、英国)を、製造者のプロトコルに従って使用した。組換えヒトVP1抗体の(A)NI−307.13G4、(B)NI−307.19F10、(C)NI−307.19F8、(D)NI−307.11G6、(E)NI−307.17F12、(F)NI−307.6A2、(G)NI−307.5H3、(H)NI−307.25G10、(I)NI−307.26E10、(J)NI−307.1E1、(K)NI−307.24C6、(L)NI−307.78C3、(M)NI−307.57D5、(N)NI−307.43A11、(O)NI−307.3G4、(P)NI−307.61D11、(Q)NI−307.24F3、(R)NI−307.18E12、(S)NI−307.20F5、(T)NI−307.58C7、(U)NI−307.105C7、(V)NI−307.98D3、(W)NI−307.72F7、(X)NI−307.45E10、(Y)NI−307.72F10、(Z)NI−307.56A8、(A2)NI−307.27C11、(B2)NI−307.47B11、(C2)NI−307.26A3、(D2)NI−307.27C2、(E2)NI−307.57D4、(F2)NI−307.50H4、(G2)NI−307.53B11、(H2)NI−307.7J3、(I2)NI−307.59A7、(J2)NI−307.105A6、(K2)NI−307.29B1、(L2)NI−307.44F6B、(M2)NI−307.98H1、(N2)NI−307.43E8および/または(O2)NI−307.18F4Aは、本発明の抗体である。別途言及される場合を除き、それらをHEK293細胞またはCHO細胞において発現させ、馴化培地から精製し、その後の適用においてそのまま使用した。
実施例4:JCV VP1抗体の結合特異性
直接的ELISAアッセイを、JCV VP1に対する上記抗体の結合を評価するために、また、それらの50%最大有効濃度(EC50)を決定することができるようにするために様々な抗体濃度を用いて行った。簡単に記載すると、直接的ELISAを、VP1溶液、あるいは、ELISA被覆用の炭酸塩緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)または再会合緩衝液のどちらかで1μg/mlの濃度に希釈されたBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)により4℃で一晩被覆された96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)で行った。炭酸塩緩衝液で希釈されるVP1抗原により被覆されたプレートを「VP1」と呼び、一方、再会合緩衝液において事前にインキュベーションされ、その後、さらに再会合緩衝液で希釈されたVP1により被覆されたプレートを「VP1 VLP」と呼んだ。非特異的な結合部位を、室温で2時間、2%のBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)および0.5%のTween20を含有するPBSTによりブロッキング処理した。本発明のヒト抗体の結合を、HRPとコンジュゲート化されるロバ抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch、Newmarket、英国)を使用して、その後、HRP活性を標準的な比色アッセイで測定して求めた。EC50値を、GraphPad Prismソフトウェア(San Diego、米国)を使用する非線形回帰によって推定した。
NI−307.13G4、NI−307.18E12、NI−307.18F4A、NI−307.19F8、NI−307.20F5およびNI−307.61D11の本発明の例示的な組換えヒト抗体、ならびに、市販の抗体Ab34756のために、96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)をVP1溶液により、あるいは、ELISA被覆用の炭酸塩緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.4)または再会合緩衝液のどちらかで5μg/mlの濃度に希釈されたBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)により被覆した。その後、抗体の結合効率を試験した。例示的抗体はJCV由来のVP1に特異的に結合し、BKV由来のVP1には結合しないか、または弱く結合する。市販の抗体Ab34756はJCウイルス由来のVP1に結合し、BKV由来のVP1には弱く結合する。しかし、市販の抗体Ab34756はまた、BSAに対して結合性であった。したがって、この抗体は、ELISAによって判断されるように特異的でない。NI−307.13G4抗体およびNI−307.20F5抗体は、JCV VP1(炭酸塩緩衝液により被覆する)に対して、JCV VP1 VLP(再会合緩衝液により被覆する)に対するよりもはるかに効率的に結合しており、これに対して、NI−307.18E12抗体、NI−307.19F8抗体およびNI−307.61D11抗体の結合は、JCV VP1 VLPと比較して、JCV VP1に対してわずかにより強かった。その一方で、結合が、これらの例示的抗体についてはBSAに対して何ら認められなかった(図2Aを参照のこと)。
EC50値を、GraphPad Prism(San Diego、米国)ソフトウェアを使用する非線形回帰によって推定した。組換えヒト由来抗体のNI−307.13G4、NI−307.18E12、NI−307.18F4A、NI−307.19F8、NI−307.20F5およびNI−307.61D11は、JCV VP1に対して大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、2.67nM、4.52nM、125nM、2.08nM、284pMおよび3.80nMであった。組換えヒト由来抗体のNI−307.13G4、NI−307.18E12、NI−307.19F8およびNI−307.61D11は、JCV VP1に対して大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、95.4nM、19.9nM、55nM、6.68nMおよび17.7nMである(図2Bを参照のこと)。
JCVを感染させたSVG−A細胞、または、JCV非感染のSVG−A細胞から得られる組換えVP1タンパク質および上清をSDS−PAGEゲル上で分離し、その後、ニトロセルロースメンブランに転写した。ウイルス上清を調製するために、SVG−A(ヒト星状膠細胞株)を、60%〜80%のコンフルエンシーになるまで成長させ、PBSにより洗浄し、その後、JCVを37℃で1時間感染させた。新鮮な培地をその後で加え、ウイルス上清を6日〜9日の産生の後で採取した。上清から、細胞片を、2,500rpmで10分間遠心分離することによって取り除いた。その後、ウイルス上清を−80℃で貯蔵した。必要ならば、ウイルスを、上清を20%スクロースのクッションに重層し、その後、100,000gで2時間、4℃で超遠心分離することによって濃縮した。
その後、メンブランを例示的抗体によりプローブ探査した。
実施例5:JCV/BKV VP1抗体の結合特異性
直接的ELISAアッセイを、JCV/BKV VP1に対する抗体の結合を評価するために、また、それらの50%最大有効濃度(EC50)を決定することができるようにするために様々な抗体濃度を用いて行った。NI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.24F3、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3の例示的な組換えヒト抗体のために、96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)をVP1溶液により、あるいは、ELISA被覆用の炭酸塩緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.4)または再会合緩衝液のどちらかで5μg/mlの濃度に希釈されたBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)により被覆した。その後、抗体の結合効率を試験した。NI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.24F3、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3の例示的抗体はJCV由来のVP1およびBKV由来のVP1の両方に特異的に結合する。NI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3の抗体は、ウイルスに関係なく、VP1(炭酸塩緩衝液により被覆する)およびVP1 VLP(再会合緩衝液により被覆する)に対して同じ効率で結合している。抗体NI−307.24F3は、VP1に対して、VP1 VLPよりも強く結合しており、また、BKVと比較して、JCV由来の抗原にはより良好に結合している。結合がBSAに対しては何ら認められない(図3Aを参照のこと)。
EC50値を、GraphPad Prism(San Diego、米国)ソフトウェアを使用する非線形回帰によって推定した。NI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.24F3、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3の組換えヒト由来抗体は、JCV VP1に対して大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、71.0nM、1.59nM、11.6pM、10.1nM、281pM、605pM、8.07nM、101pM、38.6nMおよび859pMである。NI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.24F3、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3の組換えヒト由来抗体は、JCV VP1 VLPに対して大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、28.2nM、1.39nM、11.8pM、3.41nM、6.95nM、509pM、6.15nM、83pM、57nMおよび932pMである。NI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.24F3、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3の組換えヒト由来抗体は、BKV VP1に対して大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、27.4nM、1.79nM、18.8pM、2.41nM、1.04nM、514pM、9.7nM、600pM、37.5nMおよび1.96nMである。NI−307.3G4、NI−307.6A2、NI−307.11G6、NI−307.19F10、NI−307.24F3、NI−307.25G10、NI−307.43A11、NI−307.44F6B、NI−307.57D5およびNI−307.78C3の組換えヒト由来抗体は、BKV VP1 VLPに対して大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、16.4nM、1.17nM、38.7pM、1.1nM、28.8nM、172pM、10nM、200pM、104nMおよび939pMである(図3Bを参照のこと)。
実施例6:BKV VP1抗体の結合特異性
直接的ELISAアッセイを、BKV VP1に対する本発明の例示的抗体の結合を評価するために、また、それらの50%最大有効濃度(EC50)を決定することができるようにするために様々な抗体濃度を用いて行った。NI−307.1E1、NI−307.5H3、NI−307.24C6およびNI−307.26E10の例示的な組換えヒト抗体のために、96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)をVP1溶液により、あるいは、ELISA被覆用の炭酸塩緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.4)または再会合緩衝液のどちらかで5μg/mlの濃度に希釈されたBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)により被覆した。その後、抗体の結合効率を試験した。NI−307.1E1、NI−307.5H3、NI−307.24C6およびNI−307.26E10の例示的抗体はBKV由来のVP1には特異的かつ強く結合し、かつ、JCV由来のVP1には弱く結合した。抗体NI−307.1E1は、VP1(炭酸塩緩衝液により被覆する)に対しては、VP1 VLP(再会合緩衝液により被覆する)に対するよりも効率的に結合している。NI−307.24C6およびNI−307.26E10の抗体は、VP1 VLPに対して、VP1に対するよりも効率的に結合した。抗体NI−307.5H3は、VP1タンパク質が単量体であるか、または、VLPに再会合させられるならば、同じように結合した。結合がBSAに対しては何ら認められなかった(図4Aを参照のこと)。
EC50値を、GraphPad Prism(San Diego、米国)ソフトウェアを使用する非線形回帰によって推定した。NI−307.1E1、NI−307.5H3、NI−307.24C6およびNI−307.26E10の組換えヒト由来抗体は、BKV VP1に対して大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、6.05nM、362pM、816pMおよび1.35nMであった。NI−307.1E1、NI−307.5H3、NI−307.24C6およびNI−307.26E10の組換えヒト由来抗体は、BKV VP1 VLPに対して大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、11nM、288pM、396pMおよび740pMであった。NI−307.1E1、NI−307.5H3、NI−307.24C6およびNI−307.26E10の組換えヒト由来抗体は、JCV VP1に対してより弱い親和性で結合し、EC50がそれぞれ、8.04nM、1.54nM、178nMおよび22.9nMであった。NI−307.1E1、NI−307.5H3、NI−307.24C6およびNI−307.26E10の組換えヒト由来抗体は、JCV VP1 VLPに対してより弱い親和性で結合し、EC50がそれぞれ、281nM、1.16nM、2.84nMおよび14.9nMであった(図4Bを参照のこと)。
実施例7:VP1特異的抗体の結合エピトープの評価
例示的なNI−307.11G6抗体の結合エピトープを決定するために、結合アッセイを、JCV VP1の配列全体にマッピングする重複するペプチドを用いて行った。抗体の結合能を、ニトロセルロースメンブラン(JPT Peptide Technologies、Berlin、ドイツ)にスポットされるこれらのペプチドに対して、かつ、HRPコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG二次抗体(Jackson immunoResearch、Newmarket、英国)を使用し、その後、HRP活性の検出を行って調べた(図5A)。簡単に記載すると、エピトープマッピングを、重複するペプチドのスキャンを使用して行った。JCV VP1およびBKV VP1の配列全体を、7個のアミノ酸の重なりが個々のペプチドの間に存在する合計でそれぞれ、86個および88個の線状10−merペプチドとして合成した。それらのペプチドをニトロセルロースメンブラン(JPT Peptide Technologies、Berlin、ドイツ)にスポットした。メンブランをメタノール中で5分間活性化し、その後、室温で10分間、TBSで洗浄した。非特異的な結合部位を、室温で2時間、Roti(登録商標)−Block(Carl Roth GmbH+Co.KG、Karlsruhe、ドイツ)によりブロッキング処理した。ヒト抗体(1μg/ml)を、室温で3時間、Roti(登録商標)−Blockにおいてインキュベーションした。一次抗体の結合を、HRPコンジュゲート化ロバ抗ヒトIgG二次抗体を使用して求めた。ブロットを、ECLおよびImageQuant350検出(GE Healthcare、Otelfingen、スイス)を使用して発色させ、評価した。
抗体NI−307.11G6は、JCV VP1における配列の333−LPGDPDM−339に対応するスポット82、スポット83およびスポット84(E列、2番目、3番目および4番目のスポット)を認識する。それらのアミノ酸は、BKV VP1の配列において100%保存されており、このことにより、この抗体が、JCVおよびBKVに由来するVP1に対して同じように結合性であることが説明される。抗体NI−307.13G4は、JCV VP1タンパク質の2つの領域、すなわち、124−GQATHDN−130および340−MRYVDKYGQLQT−351の配列を認識する。下線部のアミノ酸が、BKV VP1タンパク質において異なっており、そのことにより、抗体NI−307.13G4がJCウイルス(JCV)由来のVP1に特異的かつ排他的に結合するという事実が説明されると考えられる。マウス抗体Ab34756は、340−MRYVDKYGQLQT−351の配列を認識する(図5Aおよび図5B)。それら以外の抗体のエピトープ(1μg/mlおよび10μg/m)は特定することができなかった。このことは、それらの抗体が、この方法により特定することができない不連続なエピトープまたは立体配座的なエピトープを認識するという事実によって説明されるかもしれない。
実施例8:ウイルスに結合するVP1特異的抗体の特異的認識の、電子顕微鏡法による評価
ウイルスに対するVP1特異的抗体の特異的認識を明らかにするために、ウエスタンブロットおよび電子顕微鏡法が行われる。電子顕微鏡法が、等体積のパラホルムアルデヒド(4%)/PBSを加えることによって固定処理され、かつ、室温で20分間インキュベーションされたVP1調製物を使用して行われる。固定処理されたサンプルの7μlの液滴をパラフィルムの上に置き、グリッド(Formvar/炭素被覆されたもの、ニッケル製、300メッシュ)を液滴の上に20分間載せる。その後、グリッドを、PBSにより3分間、3回洗浄し、ブロッキング緩衝液(10%のBSAを含有するPBS)において1時間インキュベーションする。その後、グリッドを、ブロッキング緩衝液で希釈された抗体Ab34756と30分間インキュベーションする。結合していない抗体を、グリッドをPBSにより3分間、6回洗浄することによって除く。その後、グリッドを二次抗体(ヤギ抗マウスIgG、10nmの金)と30分間インキュベーションする。その後、サンプルを、1%のグルタルアルデヒドにより5分間、固定処理し、その後、水で2分間、4回洗浄する。グリッドを、ろ紙を用いて乾燥させ、2%のリンタングステン酸と2分間インキュベーションする。ろ紙を用いた最後の乾燥の後、グリッドを、Phillips EM400において、×25000の倍率で分析する。
実施例9:NI−307抗体の中和能の評価
ウイルスタンパク質を認識する抗体は、例えば、細胞へのウイルスの付着を阻止すること、ウイルスの内部移行を妨害すること、または、ウイルスを食作用もしくは補体媒介溶解のために標的化することによって感染を防止することができる。本発明の抗体がJCVによる感染を阻止する能力を試験するために、また、治療的可能性を有する抗体候補物を選択するために、ウイルス中和アッセイを下記で概略されるように行うことができる。
簡単に記載すると、ウイルスタンパク質を認識する抗体は、ウイルスをいくつかの方法で中和することによって、例えば、細胞へのその付着を阻止するか、または、脱外被および複製のための細胞内へのウイルスの取り込みを妨害することなどによって感染を防止することができる。抗VP1抗体がJCVによる感染を阻止する能力を試験するために、いくつかの細胞株、すなわち、SVG−A(ヒト星状膠細胞株)またはM03.13(ヒト乏突起膠細胞株)のJCV感染に対するそれらの影響が調べられる。20,000個の細胞を、24ウェル組織培養プレートのウェルに置かれるカバースリップに置床する。細胞が表面に接着することを可能にするための37℃での15時間〜24時間のインキュベーションの後、最大感染率を達成するために必要な最小濃度のMad−4ウイルス株をウェルに加える。ウイルスを細胞に1時間接着させ、その後、細胞を、感染が確立することを可能にするために37℃で、新鮮な培地において標準的な方法によって培養する。感染した細胞の割合を感染後72時間で求める。感染後72時間で、細胞を固定処理し、ウイルスタンパク質を認識する抗体(例えば、Ab34756)、ならびに、一般的なDNA染色により標識し、蛍光顕微鏡法によって分析して、細胞の総数をウイルス含有細胞の数と比較する。抗VP1特異的抗体をウイルス付着期間の期間中または感染後インキュベーションの期間中のどちらかで細胞に加える。感染細胞の百分率を上記のような抗VP1抗体の存在下および非存在下で求める。
本実施例において、ウイルスを、37℃で1時間、NI−307.98D3、NI−307.44F6B、NI−307.11G6またはイソタイプコントロール(JCV VP1に結合しないヒトIgG1抗体)を含有する緩衝液、あるいは、抗体を含有しない緩衝液のいずれかとインキュベーションした。その後、ウイルスをSVG−A細胞に1時間加え、SVG−A細胞をカバースリップの表面に接着させた。その後、細胞をPBSにより洗浄し、新鮮な培地を加えた。細胞の感染を上記のように72時間後に求めた。NI−307.98D3およびNI−307.44F6Bの例示的抗体はJCVによるSVG−A細胞の感染を完全に阻止することができ、一方、NI−307.11G6およびイソタイプコントロール抗体はJCVによるSVG−A細胞の感染を阻止することができなかった(図10Aを参照のこと)。
NI−307.7J3、NI−307.26A3、NI−307.27C2、NI−307.27C11、NI−307.29B1、NI−307.44F6B、NI−307.45E10、NI−307.47B11、NI−307.50H4、NI−307.53B11、NI−307.56A8、NI−307.57D4、NI−307.58C7、NI−307.59A7、NI−307.72F10、NI−307.98D3、NI−307.98H1、NI−307.105A6およびNI−307.105C7の例示的抗体は、上記の条件におけるJCVによるSVG−A細胞の感染を全面的に阻止することができた。
例示的なNI−307.98D3抗体がJCV感染を中和する効力を明らかにするために、ウイルスを低下する量の抗体とインキュベーションし、その後、ウイルスを上記で記載されるようにSVG−A細胞に加えた。IC50を、感染性が50%阻害された抗体濃度として求めた(感染細胞の最大数を抗体の非存在下で求めた)。例示的なNI−307.98D3抗体はSVG−A細胞の感染を低い濃度でさえ効率的に阻害することができ、IC50が0.8ng/mlであり、これに対して、イソタイプコントロール抗体は感染を阻止しなかった(図10Bを参照のこと)。
抗体が、グリア細胞に対するJCV付着またはグリア細胞内におけるウイルス複製をアッセイで阻止することにおいて効果的でないときには、細胞間におけるウイルスの伝播を阻止するその能力がまた試験される。このアッセイでは、抗体がSVG−A細胞からM03.13細胞へのウイルスの伝播を低下させる能力が評価される。SVG−A細胞に、基本的な感染プロトコルでのようにMad−4を感染させ、しかし、細胞は、JCVにさらされたことがなかった等しい数のM03.13細胞による感染の後で成長させられる。感染後のこの培養は中和試験のために抗体を含むか、または、コントロール反応のために抗体を含まないかのどちらかである。感染細胞および非感染細胞の百分率を、1週間または2週間の培養の後、上記で記載される免疫蛍光手法によって求め、ただし、この場合には、乏突起膠細胞に特異的な抗体(実施例)が、SVG−A星状膠細胞株の細胞をM03.13乏突起膠細胞株の細胞から区別するために免疫染色に加えられるという違いが伴う。細胞株アッセイにおいて特定されるJCV中和抗体はさらに、初代グリア細胞において確認することができる。
JCVの補体媒介中和を詳しく調べるために、補体因子の存在下または非存在下におけるMad−4ウイルス株に関するJCV許容細胞株(SVG−AおよびM03.13)の感染力比が分析される。これらの実験のために、遊離JCVビリオンが、感染の前に、種々の濃度の抗VP1抗体、および、熱不活化されたヒト血清または非処理のヒト血清のどちらかと30分間プレインキュベーションされる。ヒト血清の熱不活化(56℃で30分間)は補体因子の破壊を引き起こし、コントロールとして役立つ。プレインキュベーション後、上述の細胞株を、前処理されたウイルス上清とともに培養する。JCVの感染力比を、前記で説明されるように、抗VP1抗体による染色および蛍光顕微鏡法によるその後の分析によって感染後(p.i.)72時間でアッセイする。
JCVの抗体媒介食作用が、抗VP1抗体とプレインキュベーションされ、かつ、抗原提示細胞と共培養されたJCV Mad−4株を使用することによって検討される。詳細には、UV不活性化された(プロトコル)JCVの上清を種々の濃度の抗VP1抗体とプレインキュベーションし、PML患者由来の単球由来マクロファージ(これはM−SCFの添加によって生じる)またはEBV形質転換されたB細胞と共培養する。UV不活性化により、ウイルスの複製および伝播が阻止される。食作用を受けたウイルスが、抗原提示細胞をリソソーム内分解阻害剤(例えば、クロロキンなど)により処理し、続いて、抗VP1抗体による染色および蛍光顕微鏡法による分析を行うことによって分析される。食作用についてのさらなる読み取りとして、本発明者らは、抗原提示細胞を、抗VP1被覆JCVビリオン、および、抗原提示細胞と同じPML患者に由来する自己のJCV特異的T細胞と共培養した。これらのJCV特異的T細胞が、PML−IRIS患者およびJCV−顆粒細胞神経症患者の脳生検物から得られる。抗原提示細胞によるJCVビリオンの食作用は、HLA分子上でのJCV特異的ペプチドの高まった提示を引き起こすので、これらのT細胞は、自己状況におけるHLA一致のために反応することができる。T細胞の反応性が増殖(CFSEの取り込み)またはサイトカイン産生によって測定される。補体の添加が抗体媒介食作用を高めたかどうかを除外するために、アッセイはまた、ヒト血清の存在下で行われる。
JCV感染細胞の抗体媒介溶解(ADCCまたはCDC)が、種々の濃度の抗VP1抗体、および、ADCCの分析のためのナチュラルキラー細胞またはCDCの分析のためのヒト血清のどちらかとインキュベーションされたJCV感染細胞株を使用することによって試験される。JCV感染細胞の溶解が、ユウロピウム、クロムまたは蛍光色素に基づく細胞毒性アッセイを使用することによってモニターされる。
実施例10:VP1特異的抗体のPML−IRIS後の患者からの単離
PML−IRISを発症した後で回復した患者が、JCVに対する保護的な体液性免疫応答をもたらしているかどうかを分析するために、血液サンプルを、健康なドナーから、また、PMLおよびPML−IRISから首尾良く回復している患者から集めた。両方のドナー群から得られるメモリーB細胞が類似量の免疫グロブリンを産生していたが、VP1に対して強くかつ特異的に結合する抗体を産生する著しくより多い数のメモリーB細胞が、PMLおよびPML−IRISから回復した1名のドナーにおいて見出され、一方、第2のそのようなドナーは、増大した数のVP1反応性B細胞を示さなかった。興味深いことに、高頻度ドナーから得られるVP1特異的B細胞のほとんどが、VLPとして適正に組み立てられるときにはJCウイルス由来のVP1タンパク質を特異的に認識していた。いくつかの抗体が、おそらくはそれらの2つのウイルスの主要カプシドタンパク質の間における大きい相同性のために、JCVおよびBKVに由来するVP1タンパク質に対して結合性であった。
それらの抗体を先に記載されたようにクローン化し、発現させた。JCV由来のVP1タンパク質に特異的に結合し、BKV由来のVP1タンパク質には結合しない抗体を得ることができたことを確認することができた。例示的抗体のNI−307.58C7およびNI−307.105C7は、VLPが組み立てられたときには(JCV VP1 VLP)、JCV VP1を認識しただけであり、粒子が破壊されたときには(JCV VP1)、JCV VP1を認識しなかった(図7Aを参照のこと)。それらの抗体がVLPを認識するだけであるという事実は、それらの結合エピトープが立体配座的または不連続のどちらかであることを示唆している。このエピトープは、正しく組み立てられたVLPが形成される場合にもっぱら提示され、かつ認識可能であると考えられ、したがって、中和抗体のための好ましいエピトープであると考えられる。
高頻度ヒットドナーから得られる例示的抗体をクローン化し、組換え発現させた。直接的ELISAアッセイを、VLPを形成するか、または形成しないJCV/BKV VP1に対する様々な抗体の結合を評価するために、また、それらの50%最大有効濃度(EC50)を決定することができるようにするために様々な抗体濃度を用いて行った。NI−307.7J3、NI−307.26A3、NI−307.27C2、NI−307.27C11、NI−307.29B1、NI−307.43E8、NI−307.45E10、NI−307.47B11、NI−307.50H4、NI−307.53B11、NI−307.56A8、NI−307.57D4、NI−307.58C7、NI−307.59A7、NI−307.72F7、NI−307.72F10、NI−307.98D3、NI−307.98H1、NI−307.105A6およびNI−307.105C7の例示的な組換えヒト抗体のために、96ウェルマイクロプレート(Costar、Corning、米国)をVP1溶液により、あるいは、ELISA被覆用の炭酸塩緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.4)または再会合緩衝液のどちらかで5μg/mlの濃度に希釈されたBSA(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)により被覆した。その後、抗体の結合効率を試験した。NI−307.29B1、NI−307.43E8およびNI−307.72F7の例示的抗体は、JCV由来のVP1およびBKV由来のVP1の両方に特異的に結合する。NI−307.7J3、NI−307.26A3、NI−307.27C2、NI−307.27C11、NI−307.45E10、NI−307.47B11、NI−307.50H4、NI−307.53B11、NI−307.56A8、NI−307.57D4、NI−307.58C7、NI−307.59A7、NI−307.72F10、NI−307.98D3、NI−307.98H1、NI−307.105A6およびNI−307.105C7の抗体はJCV由来のVP1に特異的かつ排他的に結合しており、BKV由来のVP1には結合していない。NI−307.7J3、NI−307.26A3、NI−307.27C2、NI−307.27C11、NI−307.29B1、NI−307.43E8、NI−307.47B11、NI−307.50H4、NI−307.53B11、NI−307.56A8、NI−307.57D4、NI−307.58C7、NI−307.59A7、NI−307.72F10、NI−307.98D3、NI−307.98H1、NI−307.105A6およびNI−307.105C7の例示的抗体は、VLPが組み立てられたときにはJCV VP1に優先的に結合している(図7Bを参照のこと)。
実施例11:VLPおよびJCVに対する溶液中での結合の評価
NI−307.98D3、NI−307.44F6BおよびNI−307.11G6の例示的抗体が、VP1 VLPおよびJCウイルスに溶液中で結合する能力を明らかにするために、フローサイトメトリーアッセイを行った。簡単に記載すると、ラテックスビーズを、VP1 VLP(再会合緩衝液においてVLPに組み立てられた組換えVP1タンパク質)またはJCV(感染SVG−A細胞の上清から精製されたもの)のどちらかと室温で30分間インキュベーションして、それらが付着することを可能にした。その後、ビーズを洗浄し、例示的抗体とインキュベーションし、次いで二次抗体とインキュベーションした。VP1 VLPまたはJCVに対する例示的抗体の結合をフローサイトメトリーによって評価した。
NI−307.98D3、NI−307.44F6BおよびNI−307.11G6の例示的抗体は、ラテックスビーズに付着したVP1 VLPに対して溶液中で結合することができ、一方、イソタイプコントロール(VP1を認識していないヒトIgG1)はシグナルを何ら示さなかった(図9Aを参照のこと)。
NI−307.98D3、NI−307.44F6BおよびNI−307.11G6の例示的抗体はまた、ラテックスビーズに付着したJCVに対して溶液中で結合することができ、一方、イソタイプコントロールはシグナルを何ら示さなかった(図9Bを参照のこと)。
実施例12:PML随伴VP1変異体に対する例示的抗体の結合
NI−307.11G6、NI−307.98D3、NI−307.27C11およびNI−307.53B11の例示的抗体が最も一般的なJCV変化体を中和する能力を明らかにするために、VP1変異体に対する抗体の結合を試験した。
PML患者のCSFから単離されるJCウイルスは多くの場合、保存された変異をVP1配列に含有する。したがって、例示的抗体がそれらのVP1変異体に結合する能力を調べることは重要である。簡単に記載すると、点変異を、迅速変化変異誘発キットを用いてVP1配列に導入した。変異体を、PML患者のCSFに見出される最も高頻度のJCV変化体を包含するように選んだ。構築されたVP1変異体は、VP1 L55F S269F、VP1 L55F S267F、VP1 L55F N265D、および、VP1 GCN(N74S R75K T128A L158V K345R Q350欠失 T351欠失、すなわち、顆粒細胞神経症の患者に見出される変異体)であった。293TTをそのようなVP1変異体構築物によりトランスフェクションし、トランスフェクション後3日で固定処理および透過処理に供し、NI−307.11G6、NI−307.98D3、NI−307.27C11およびNI−307.53B11の例示的抗体により染色した。その後、細胞をフローサイトメトリーによって分析して、VP1変異体に対する例示的抗体の結合を求めた。
例示的なNI−307.11G6抗体は、VP1 L55F S269F、VP1 L55F S267F、VP1 L55F N265D、および、VP1 GCNの変異体、ならびに、WT型VP1に対して結合性である。NI−307.11G6は、それらの変異体において改変されていない、JCV VP1における領域333−LPGDPDM−339に結合することが知られている。
例示的なNI−307.98D3抗体は、VP1 GCN変異体およびWT型VP1に対して結合性であり、しかし、VP1 L55F S269F、VP1 L55F S267F、および、VP1 L55F N265Dの変異体には結合を示さなかった。NI−307.98D3の結合エピトープは知られておらず、他の変異が導入されたこの領域に存在し得るかもしれない。NI−307.98D3はまた、破壊されたVLPと比較して、VLPが適正に組み立てられたときにはVP1に強くかつ優先的に結合することが示された。そのことから、その結合エピトープは立体配座的または不連続のどちらかであること、および、そのようなエピトープは主に、正しく組み立てられたVLPにおいて提示され、かつ、認識可能であることが示唆された。したがって、導入された変異は、VLPの構造を脱安定化または変化させ得るものであり、したがって、NI−307.98D3がそのような変異体に結合することを阻止し得るか、あるいは、エピトープを覆い隠し得るか、または改変し得ると考えられる。
例示的なNI−307.27C11抗体は、VP1 GCN変異体およびWT型VP1に強く結合しており、VP1 L55F S269F、VP1 L55F S267F、および、VP1 L55F N265Dの変異体にはそれほど強く結合していない。例示的なNI−307.53B11抗体は、VP1 L55F S269F、VP1 GCN変異体およびWT型VP1に強く結合しており、VP1 L55F S267F、および、VP1 L55F N265Dの変異体にはそれほど強く結合していない。NI−307.27C11およびNI−307.53B11の例示的抗体の結合エピトープは知られておらず、他の変異が導入されたこの領域に存在し得るかもしれない。NI−307.27C11およびNI−307.53B11はまた、破壊されたVLPと比較して、VLPが適正に組み立てられたときにはVP1に強くかつ優先的に結合することが示された。そのことから、その結合エピトープは立体配座的または不連続のどちらかであること、および、そのようなエピトープは主に、正しく組み立てられたVLPにおいて提示され、かつ、認識可能であることが示唆された。したがって、導入された変異は、VLPの構造を脱安定化または変化させ得るものであり、したがって、NI−307.27C11およびNI−307.53B11がそのような変異体に結合することを減少させ得るか、あるいは、エピトープを覆い隠し得るか、または改変し得ると考えられる(図11を参照のこと)。
NI−307.72F7およびNI−307.72F10の例示的抗体は、VP1 L55F S269F、VP1 GCN変異体、および、WT型VP1に強く結合しており、VP1 L55F S267F、および、VP1 L55F N265Dの変異体にはそれほど強く結合していない。例示的なNI−307.29B1抗体は、VP1 L55F S269F変異体およびWT型VP1に強く結合しており、VP1 L55F S267F、VP1 L55F N265D、および、VP1 GCNの変異体にはそれほど強く結合していない。NI−307.56A8およびNI−307.27C2の例示的抗体は、VP1 L55F S269F、VP1 GCN変異体、および、WT型VP1に強く結合しており、VP1 L55F N265D変異体にはそれほど強く結合していない。例示的なNI−307.44F6B抗体は、VP1 L55F S269F、VP1 GCN変異体、および、WT型VP1に強く結合しており、VP1 L55F S267F変異体にはそれほど強く結合していない。NI−307.58C7およびNI−307.98H1の例示的抗体は、VP1 L55F S269F、VP1 GCN変異体、および、WT型VP1に強く結合している。NI−307.50H4およびNI−307.105A6の例示的抗体は、VP1 GCN変異体、および、WT型VP1に強く結合しており、VP1 L55F S269F、VP1 L55F S267F、および、VP1 L55F N265Dの変異体にはそれほど強く結合していない。NI−307.45E10、NI−307.105C7、NI−307.26A3、NI−307.7J3およびNI−307.59A7の例示的抗体は、VP1 GCN変異体、および、WT型VP1に強く結合している。例示的なNI−307.47B11抗体はWT型VP1に強く結合しており、VP1 L55F S267F、VP1 L55F S269F、および、VP1 GCNの変異体にはそれほど強く結合していない。