本発明は一般には、ハンチンチン(HTT)に関連するハンチントン病(HD)の、抗体に基づいた治療に関連する。具体的には、本発明は、そのような病原的HTTアイソフォームによって誘発される疾患及び状態を処置することにおいて有用である、ヒトHTT及び/又はその抗原に特異的に結合する新規な分子(特に、ヒト由来抗体、同様にまた、そのHTT結合性フラグメント、合成及び生物工学誘導体)に関連する。
加えて、本発明は、HTT凝集に伴う疾患及び/又は障害を特定するための診断ツールとして、また、HTTアミロイドーシスに伴う疾患に関連づけられる障害を処置するための受動的ワクチン接種戦略として両方で有益であるそのようなHTT結合性分子、抗体及びそれらの模倣体を含む医薬組成物及び診断組成物に関連する。
ハンチントン病(HD)は常染色体優性の神経学的なアミロイド形成性の疾患である。100,000人あたり5人〜10人がこの常染色体疾患に冒される。しかしながら、合衆国における有病率ははるかに大きく、様々な研究により、200,000人の米国人に基づいて、50%が、HDを発症する危険性を有し、具体的には、30,000人の患者が米国では登録され、その一方で、ほんの100,000人の患者が世界中では登録されているだけであることが示されている。
HDは、いくつかの研究において示されるように、ハンチンチン(HTT)遺伝子における、具体的には第4染色体に位置するHTT遺伝子のエクソン1におけるトリヌクレオチドCAG反復伸長(これはHTTタンパク質においてポリグルタミン(ポリQ)延伸領域に翻訳される)から生じている(非特許文献1)。このポリQ域が長さで35個〜40個のグルタミン残基の閾値を超えると、HDが生じており、この場合、反復長さと疾患発症年齢との間に強い逆相関がある。このポリQ延伸領域により、HTTの誤った折り畳み及び凝集がいくつかの領域において、例えば、ニューロン及びグリア細胞において引き起こされる。加齢とともに、HTT凝集物の蓄積が生じ、これにより、線条体のGABA作動性ニューロン及び皮質の錐体ニューロンの変性が引き起こされる。HTTの誤った折り畳み及び凝集の症状には、不随意運動、運動協調性の喪失、うつ病、認知低下(例えば、記憶喪失など)及び/又は認知症が含まれる。
HD変異が特定された1993年以降、この疾患の病態生理学及び分子生物学の理解が著しく改善されている。様々な医薬品、例えば、Xenazine(登録商標)(テトラベナジン、Lundbeck)、すなわち、ヘキサヒドロ−ジメトキシ−ベンゾキノリジン誘導体のVMAT2阻害剤などが、不随意筋運動を標的とする対症療法のために設計されていた。
加えて、RNA干渉(RNAi)などの様々な遺伝子サイレンシング取り組みが、可能性のある治療法として示唆されている。具体的には、HTT遺伝子に対するsiRNAがHDマウスモデル(R6/2)において使用された場合、変異HTT遺伝子の発現が阻害されることが示された;例えば、非特許文献2、及び、非特許文献3を参照のこと。しかしながら、この方法の1つの制限が、例えば、非特許文献4によって示されるように、十分な量のsiRNAを標的細胞又は標的組織に導入することが困難であることにある。そのうえ、この取り組みは安全性での責務に直面する場合がある。これは、ハンチンチンの発現のために継続して必要であることが動物モデル及び培養細胞における遺伝子欠失研究によって示唆されたからである(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7)。
したがって、変異HTTによるアミロイド形成を好ましくは直接的に妨げる、HTT凝集に伴う疾患の有効かつ安全な治療のための新規な治療戦略が求められている。
この技術的課題が、請求項において特徴づけられ、そして、さらには下記で記載され、また、実施例及び図面において例示される実施形態によって解決される。
MacDonald他、Cell 72(1993)、971〜983
Warby他、Am.J.Hum Genet.84(2009)、351〜366
Olshina他、Biological Chemistry 285(2010)、21807〜21816
Boudreau他、Brain Research 1338(2010)、112〜121
Dragatsis他、Nat.Genet.26(2000)、300〜306;
Gauthier他、Cell.118(2004)、127〜138
Zuccato他、Nat.Genet.35(2003)、76〜83
本発明は、HTTアミロイドーシスに伴う疾患及び状態の予防的処置又は治療的処置において使用されるための抗ハンチンチン(HTT)抗体及び同等なHTT結合性分子を提供する。より具体的には、HTTの変異した形態及び/又は凝集した形態を認識する治療的に有用なヒト由来抗体、同様にまた、そのHTT結合性フラグメント、合成及び生物工学誘導体が提供される。
具体的には、本発明に従って行われた実験は、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種並びに/或いはそれらのフラグメントについて特異的であるヒト由来のモノクローナルなHTT特異的抗体の組換えクローニング及び組換え産生に成功した。ヒト由来のモノクローナルな抗HTT抗体の可変ドメインをそれぞれコードするcDNAが単離されたB細胞の供給源であるヒト対象は健常者ドナーであった。しかしながら、本発明の別の実施形態において、ヒト由来のモノクローナルな抗HTT抗体と、それらの可変ドメインをコードするcDNAとがそれぞれ単離され得るB細胞の供給源は、トリヌクレオチドCAG反復伸長をHTT遺伝子において有し、かつ、症状を有しないHD患者、或いは、異常に遅い進行若しくは安定な疾患経過を示す、又は、代替では、ハンチントン病の典型的な臨床特徴を示すHD患者である。そのうえ、実施例において明らかにされるように、本発明の抗体は、HDのマウスモデルにおいて、樹状突起棘の喪失を弱めることができ、課題特異的訓練の期間中における行動成績を改善し、かつ、感覚運動能を高める。したがって、本発明のヒトモノクローナル抗HTT抗体及びその誘導体は、非免疫原性であることに加えて、ヒトにおける治療的に有益な効果もまた示すことを予想することは賢明なことである。
背景の節において記載されるように、従来、HDの病理発生は、細胞内アプローチによって、例えば、RNA干渉(RNAi)などによって阻止することが試みられてきた;例えば、変異ハンチンチンをアデノ関連ウイルス媒介のRNA干渉によってサイレンシングさせることについて、Stanek他、Human Gene Therapy 25(2014)、461〜474もまた参照のこと。免疫療法アプローチに関して、単鎖抗体フラグメント(scFv)の細胞内発現、すなわち、免疫グロブリン(例えば、IgGクラスの免疫グロブリンなど)の定常領域を欠く細胞内抗体の細胞内発現が、この10年の間に調べられている。例えば、変異ハンチンチン及び関連した毒性細胞内タンパク質を打ち消すための操作された細胞内scFv抗体療法及び単一ドメイン(dAb;ナノボディー)抗体療法については、上掲、及び、Butler他、Prog Neurobiol.97(2012)を参照のこと。
例えば、Lecerf他(Proc.Nat.Acad.Sci.98(2001)、4764〜4769)は、大きいヒトファージディスプレーから選択されるHDエクソン1内のポリグルタミンに隣接するハンチンチンの17個のN末端残基に対して特異的である単鎖可変領域フラグメント(scFv)抗体を記載する。対応するscFv抗体、すなわち、ラムダ可変軽鎖(VL)を含むscFv−C4(Kvam他、PLoS One 4(2009)、e5727;GenBankアクセション番号ACA53373)が、B6.CgHDR6/1遺伝子導入マウス(HDマウスモデル)においていくらかの神経保護効果を有すること、しかしながら、この神経保護効果が注入時における疾患の重篤度とともに弱まったことが記載される。この細胞内抗体の定常レベルを改善するために、また、scFv−C4が結合したN末端側のhttエクソン1(httex1)タンパク質フラグメントを、凝集しないようにするために分解のためのプロテアソームに導くために、マウスオルニチンデカルボキシラーゼ(mODC)mODCのPESTシグナル配列がscFv−C4抗体に融合された;Butler及びMesser、PLos One 6(2011)、e29199を参照のこと。インビボ実験は何ら未だ報告されていない。
同様に、Khoshnan他のグループが、細胞内抗体に基づく治療剤をHDのために開発することを目指していた。このグループはとりわけ、エピトープであるポリグルタミン(ポリQ)、ポリプロリン(ポリP)及び抗C末端と結合するマウスモノクローナル抗体に由来する抗ハンチンチンscFv抗体、並びに、変異ハンチンチンの凝集及び毒性に対する細胞内発現時のそれらの影響を記載する;例えば、Ko他、Brain Research 56(2001)、319〜329、Khoshnan他、Proc.Nat.Acad.Sci 99(2002)、1002〜1007、並びに、Legleiter他、J.Biol.Chem.284(2009)、21647〜21658、及び、Legleiter他の特許出願(米国特許出願公開第2003/0232052A1)を参照のこと。この米国特許出願ではまた、「hMW9」と称される「ヒト」scFv抗体が、組換えによる変異ハンチンチンタンパク質を使用してヒトscFvファージライブラリーから単離されたと記載される。しかしながら、モノクローナルなマウス由来のscFv MW1、MW2、MW7及びMW8とは対照的に、配列データがhMW9については何ら提供されておらず、hMW9もまた、繰り返しになるが、これまで報告されていない。
Colby他(Proc.Nat.Acad.Sci.342(2004)、901〜912)は、非免疫性ヒト抗体ライブラリーの酵母表面ディスプレイを介した、ハンチンチンのアミノ末端について特異的であるヒト軽鎖可変ドメイン(VL)細胞内抗体の開発を記載する。元のscFvのラムダ軽鎖ドメインのみからなるこの単一ドメイン細胞内抗体は、ハンチンチンの凝集を無細胞インビトロアッセイにおいて、同様にまた、HDの哺乳動物細胞培養モデルにおいて阻害することが記載された;対応する国際特許出願公開WO2005/052002もまた参照のこと。繰り返しになるが、インビボ実験は何ら未だ報告されていない。
したがって、明らかに、現在の細胞内抗体に基づく取り組みは、細胞に基づくアッセイを超えて広がっていなかったか、又は、HDの動物モデルにおいて成功していることを未だ証明していなかった(少なくとも長期実験において証明していなかった)かのどちらかである。具体的には、様々な細胞内抗体により、細胞内抗体−抗原複合体の細胞内/核内蓄積に起因するそれらの潜在的毒性、又は、例えば、ヒトにおける大きい脳体積へのウイルス送達の限定された分布などのインビボでのいくつかの制限が明らかにされる;例えば、Butler他、Prog.Neurobiol.97(2012)、190〜204、及び、Sothwell他、J.Neurosci.29(2009)、13589〜13602を参照のこと。そのうえ、細胞内アプローチの一般的な難点が、抗体及び抗体をコードするベクターDNAを所望の細胞にそれぞれ向けるという問題であり、そして、外部から適用されるならば、不便な投与法(例えば、線条体内注入)である;例えば、Snyder−Keller他、Neuropathol.Exp.Neurol.69(2010)、1078〜1085を参照のこと。加えて、遺伝子治療と、ウイルスベクターの使用とに関する一般的な懸念が残っている。
対照的に、本発明に従って行われた実験で初めて、HDマウスモデルにおいて、ハンチンチンの種々のエピトープに対する全長型IgG抗体が全身投与時には脳に首尾よく送達され得ることが明らかにされ(実施例24及び図18)、また、本発明の抗体は樹状突起棘の喪失を弱めることができ、課題特異的訓練の期間中における行動成績を改善し、かつ、感覚運動能を高めることが明らかにされる(実施例34及び図34)。
したがって、実施例において例示されるように、抗HTT抗体或いはそのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体は好ましくはIgGクラスのものであり、一般に知られているように、また、本明細書中に記載されるように、2つの同一の可変重鎖(VH)ポリペプチド及び2つの同一の可変軽鎖(VL)ポリペプチドと、定常領域及び定常ドメインとをそれぞれ含む(すなわち、軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2又はCH3)の少なくとも1つ又はすべてを含む)。言い換えれば、本発明の1つの態様において、ハンチンチンについて特異的である組換え発現された二価抗体並びにその凝集型形態、フラグメント、ペプチド及び誘導体であって、ハンチンチン及びハンチンチンに関連する障害の処置又はインビボ診断における使用のために好適であるもの(これは免疫グロブリンの定常領域の存在によって特徴づけられる)が提供される。本明細書中下記においてさらに記載されるように、免疫グロブリンは、どのようなクラスのものであってもよく(例えば、IgG、IgM、IgA、IgG又はIgEなど)、また、どのような対応する免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)のものであってもよい(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1)。しかしながら、好ましくは、抗体はヒトIgGサブタイプのものである。
加えて、同様に本明細書中においてさらに説明されるように、本発明のヒト由来抗体は、ヒト起源の少なくとも1つ又は複数のCDRを含むことによって、すなわち、ヒトメモリーB細胞に由来するcDNAによってコードされることによって特徴づけられ、そして、好ましくはこの場合、VH鎖及び/又はVL鎖もまた、ヒトメモリーB細胞起源のものである。定常領域又はそのドメインも、ヒト型であるならば、それぞれ、CDR並びにVH鎖及び/又はVL鎖と同じ起源であっても又は異なる起源のものであってもよい。
この関連において、別途言及される場合を除き、又は、文脈から明らかである場合を除き、本発明の抗体に対する本明細書中における言及には、実施例において例示されるヒト由来抗体、同様にまた、そのHTT結合性フラグメント、合成及び生物工学誘導体が含まれる。
ヒトscFvファージライブラリーに由来する細胞内抗体を提供するという先行技術の取り組みからさらに認められ得るように、ほとんど常に、Vラムダ起源の可変軽鎖を有するscFcvが得られた;Kvam他及びColby他(上掲)を参照のこと。対照的に、本発明のヒト由来抗体の90%超で、Vカッパ軽鎖が使用され、このことはまた、抗体NI−302.31F11及び抗体NI−302.35C1にもあてはまり、この場合、これらの抗体はHD動物モデルにおいて、全身投与時には脳に浸透することができることが実施例24において例示され、そして、行動成績及び運動関連課題に対する有益な影響を有することが実施例34において例示される(NI−302.35C1)。したがって、Vカッパ軽鎖を有する抗体は、Vラムダ起源の軽鎖を有する抗体を上回る優れた性質を有するかもしれないとの推測を促す。したがって、本発明の抗体の好ましい実施形態において、可変軽鎖はVカッパ起源のものである。
実施例及び図において例示されるように、抗HTT抗体、そのHTT結合性フラグメント、それらの合成及び生物工学変異体は、実施例において示されるように、上記のような「毒性」変化を示す、すなわち、伸長した不安定なトリヌクレオチド反復を示すHTTエクソン1タンパク質の種々の領域に結合する。具体的には、本発明の抗体は、HTTエクソン1タンパク質のポリP領域、ポリQ/P領域、Pリッチ領域、C末端領域又はN末端領域を認識する。実施例において例示される主題抗体のエピトープが図20にまとめられる。背景の節において述べられるように、ポリQ域が長さで35個〜40個のグルタミン残基の閾値を超えるとき、HTTの凝集に起因して、HDが生じる。したがって、実施例3で示されるように、21回、35回又は49回のポリQ反復を有する凝集型のHTTエクソン1タンパク質及び可溶性のHTTエクソン1タンパク質が作製され、特定された抗体の結合が調べられた。下記では、これらの構築物がHDX(ただし、XはQの数である)として示される。例えば、21回のポリQ反復を有するHTTエクソン1はHD21として示される。したがって、別途具体的に示されない限り、HTTという用語はHTTエクソン1を意味し、可溶性HTTは、その対応するGST融合タンパク質を示す。
本発明の好ましい実施形態において、抗HTT抗体或いはそのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体は、HTTの凝集した形態又はミスフォールドした形態と優先的に結合することができる。例えば、Legleiter他(JBC 285(19)(2010)、14777〜14790)に記載されるように、また、実施例において明らかにされるように、速度及びサイズに関してのHDXタンパク質の凝集がQの数とともに増大する。
本発明の特に好ましい実施形態において、抗HTT抗体或いはそのHTT結合性フラグメント、合成及び生物工学誘導体により、図1に示される可変領域VH及び/又は可変領域VLのいずれか1つによって特徴づけられる抗体の免疫学的な結合特性が明らかにされる。好ましくは、抗体の可変領域は、可変領域のVH及び/又はVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、すなわち、図1A〜図1AUに示される少なくとも1対のVH鎖及びVL鎖を含み、ただし、この場合、生じる抗体の結合特異性が、実施例において例示されるように、例えば、図20にまとめられるように図1A〜図1AUに示される対応する対のVH鎖及びVL鎖を含む主題抗体と比較して、本質的に影響されないままである限り、すなわち、エピトープ特異性及びEC50値が、示された抗原について同じ程度の大きさであり、好ましくは少なくとも50%の範囲で、より好ましくは25%の範囲で、最も好ましくは少なくとも10%の範囲で、同一の値である限り、1つ又は複数のアミノ酸置換が許される。好ましくは、VH鎖及びVL鎖の1つのCDR、2つのCDR又は3つすべてのCDRが、同じタイプのHTTエピトープ(すなわち、ポリP、Pリッチ、C末端又はN末端)を認識する主題抗体のVH鎖アミノ酸配列及びVL鎖アミノ酸配列におけるそれぞれ少なくとも約20%において、好ましくは約40%において、より好ましくは約50%において、最も好ましくは約75%において、対応する位置に、保存された少なくとも1つのアミノ酸(すなわち、同じアミノ酸又は保存的置換アミノ酸)を含む。例えば、主題抗体の配列アラインメントにより、1つ又は2つのチロシン(Y)がCDRH1において優勢に存在することが明らかにされる;図36を参照のこと。類似する保存されたアミノ酸を他のCDRにおいて同様に特定することができる。
本発明のさらなる実施形態において、抗HTT抗体或いはそのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体は二重特異性抗体である。したがって、本発明の抗体は、同じ抗原における、又は異なる抗原における、そのどちらかで少なくとも2つの異なったエピトープを認識することができる場合がある。例えば、第1の抗原結合部位(すなわち、可変ドメイン)がHTTについて特異的である場合があり、かつ、好ましくは、添付された実施例及び図において例示される主題抗体のいずれか1つの可変領域を含むが、第2の抗原結合部位が、異なるタンパク質について、好ましくは、神経毒性タンパク質についてもまた特異的である場合があり、かつ、対応する抗体の可変領域を含む場合がある。したがって、タンパク質の誤った折り畳み及び凝集が神経変性障害(例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)及びHDなど)の主要な特徴である。最近までは、一致した考えは、それぞれの凝集しやすいタンパク質がそれぞれの障害に特徴的であるというもの[α−シヌクレイン(α−syn)/PD、変異ハンチンチン(HTT)/HD、タウ及びアミロイドベータペプチド/AD]であったにもかかわらず、増大しつつある証拠は、凝集しやすいタンパク質は実際に共凝集して、互いの挙動及び毒性を変化させ得ることを示しており、このことは、このプロセスもまた、種々の疾患にわたる臨床症状における重複の一因であるかもしれないことを示唆している;例えば、α−synと変異HTTとの共凝集については、Pocas他、Hum.Mol.Genet.24(2015)、1898〜1907を参照のこと。
したがって、本発明の1つの実施形態において、抗HTT抗体或いはそのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体は、HTT及び神経変性障害に関連するタンパク質(特に脳における神経変性障害関連タンパク質、好ましくは、α−シヌクレイン、タウ、アミロイドベータペプチド、SOD1、C9orf72及びTDP−43からなる群から選択される神経変性障害関連タンパク質)と結合することができる二重特異性抗体である;例えば、Blokhuis他、Acta Neuropathol.125(2013)、777〜794を参照のこと。述べられたタンパク質に対する様々なヒト由来モノクローナル抗体がこの技術分野では知られている;例えば、抗abeta抗体については国際公開WO2008/081008を、抗α−シヌクレイン抗体については同WO2010/069603を、抗タウ抗体については同WO2012/049570を、抗SOD1抗体については同WO2012/080518を、抗アンキリン抗体については同WO2012/113775を、抗TDP−43抗体については同WO2013/061163を、C9orf72については欧州特許出願EP14187180.6及びそのその後の国際特許出願を参照のこと。二重特異性抗体及び多重特異性抗体をこの技術分野ではよく知られている方法によって作製することができ、例えば、モノクローナルな免疫グロブリンG1フラグメントの化学的組換えを、例えば、Brennan他(Science.229(1985)、81〜83によって記載されるように行うことによって、又は、適切な重鎖及び軽鎖を組換えにより同時共発現し、対応する対を形成することによって作製することができる;例えば、Lewis他、Nature Biotechnology 32(2014)、191〜198を参照のこと;総説については、例えば、Kontermann、mAbs 4(2012)、182〜197を、また、Kontermann及びBrinkmann、Drug Discovery Today 20(2015)、838〜847を参照のこと。
代替において、又は、加えて、二重特異性抗体又は多重特異性抗体は、少なくとも第1及び第2の抗原結合部位、すなわち、HTTの2つの異なったエピトープについて特異的である可変ドメインを含み、ただし、好ましくはこの場合、一方又は両方の可変領域が、添付された実施例及び図において例示される主題抗体のいずれか1つに由来し、さらには本明細書中に記載される通りである。したがって、好ましい実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、HTTエクソン1タンパク質のポリP領域、ポリQ/ポリP領域、Pリッチ領域、C末端領域、N末端領域又は立体配座エピトープを認識する抗体の2つの結合部位/ドメインを含む。実施例において例示される主題抗体のエピトープが図20にまとめられる。したがって、1つの実施形態において、本発明の二重特異性抗体は、図20に示される少なくとも2つの異なるエピトープを認識し、かつ、同族の主題抗体の組み合わされた結合特異性をそれぞれ有する。
本明細書中に開示される主題抗体のいずれか1つの抗原結合性フラグメントは、単鎖Fvフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント及びF(ab’)2フラグメント、又は、どのような他の抗原結合性フラグメントであることも可能である。しかしながら、特に好ましい実施形態において述べられるように、抗体或いはそのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体はヒトIgGアイソタイプの抗体であり、定常領域の少なくとも一部を含む。代替において、抗体は、ヒト−齧歯類のキメラ抗体、又は、齧歯類化された抗体、例えば、マウス抗体又はマウス化抗体、ラット抗体又はラット化抗体などであり、齧歯類型が動物における診断方法及び研究のために特に有用である。
さらには、本発明は、本発明の抗体或いはその抗原結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体を含む組成物、並びに、HTTに関連する疾患及び/又は障害の防止、診断又は処置においてそのような組成物を使用する免疫治療方法及び免疫診断方法であって、有効量の組成物がその必要性のある患者に投与される方法に関連する。
本発明はまた、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。好ましくは、前記可変領域は、図1に示される可変領域のVH及び/又はVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。好ましくは、ポリヌクレオチドはcDNAである。
したがって、本発明はまた、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、及び、該ベクターにより形質転換される宿主細胞、同様にまた、HTTに対して特異的であり、かつ、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種又はそれらのフラグメントと好ましくは結合することができる抗体及び同等な結合性分子を製造するためのそれらの使用を包含する。抗体及びその模倣体を組換え産生するための様々な手段及び方法、同様にまた、競合する結合性分子(これは抗体であってもよく、又は抗体でなくてもよい)についてスクリーニングする様々な方法がこの技術分野では知られている。しかしながら、特にヒトにおける治療的適用に関して本明細書中に記載されるように、本発明の抗体は、前記抗体の適用が、キメラ抗体について、また、それどころか、ヒト化抗体について他の場合には認められるそのような抗体に対する免疫応答を実質的に有していないという意味で、ヒト抗体である。したがって、本発明はまた、抗HTT抗体(具体的にはヒト由来抗HTT抗体)又はその生物工学誘導体を製造するための、本明細書中に記載される、また、実施例において例示されるcDNA、ベクター及び宿主細胞の使用に関連する。
さらに、本明細書中には、HTT(具体的には、変異した、及び/又は凝集したHTT種又はフラグメント)をインビトロにおいて、例えば、サンプルにおいて、及び/又はインビボにおいて特定するために使用することができる組成物及び方法が開示される。開示された抗HTT抗体及びその結合性フラグメントは、ヒトの血液、血漿、血清、唾液、腹腔液、脳脊髄液(「CSF」)及び尿を、例えば、ELISAに基づくアッセイ又は表面適合化アッセイを使用することによって、サンプル中のHTT及び/又は変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種或いはそれらのフラグメントの存在についてスクリーニングするために使用することができる。1つの実施形態において、本発明は、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種或いはそれらのフラグメントに関連づけられる疾患及び/又は障害を対象において診断する、又はその進行をモニターする方法であって、診断される対象から得られるサンプルにおける変異した、及び/又は凝集したHTT種又はフラグメントの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体又はHTT結合性分子、並びに/或いは、それらのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する、変異した、及び/又は凝集したHTT種又はフラグメントについての結合性分子を用いて明らかにすることを含み、ただし、この場合、変異した、及び/又は凝集したHTT種又はフラグメントの存在が、当該障害の指標となる方法に関連する。
したがって、本発明はまた、HTT凝集物に伴う、又はHTT凝集物によって引き起こされる障害の処置において使用するための医薬組成物を調製する方法であって、
(a)本発明のcDNAを発現させること、及び/又は、本発明の宿主細胞を、抗HTT抗体(具体的にはヒト由来抗HTT抗体)又はその生物工学誘導体の産生のために好適である適切な培養条件のもとで培養すること;
(b)前記抗体、その生物工学誘導体又は免疫グロブリン鎖を反応混合物及び前記培養物から医薬品グレードにまでそれぞれ精製すること;及び
(c)前記抗体又はその生物工学誘導体を薬学的に許容され得る担体と混合すること
を含む方法に関連する。
さらには、本発明の1つの実施形態において、抗HTT抗体、及び、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含むHTT結合性分子が、ヒト又は動物の身体におけるHTT(具体的には、変異した、及び/又は凝集したHTT種又はフラグメント)のインビボ検出(これはインビボ画像化とも呼ばれる)のための、或いは、治療剤及び/又は診断剤をヒト又は動物の身体においてHTT(具体的には、変異した、及び/又は凝集したHTT種又はフラグメント)に対して標的化するための組成物を調製するために提供される。本明細書中に開示される方法及び組成物は、HTTの凝集又はアミロイドーシスが伴い、かつ、例えば、HTTの凝集した形態の出現によって特徴づけられる疾患及び/又は障害において助けとなることができ、また、疾患の進行と、対象に施される治療の治療効力とを、例えば、インビボ画像化に関連づけられる診断方法でモニターするために使用することができる。1つの実施形態において、インビボ検出(画像化)は、シンチグラフィー、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法又は磁気共鳴画像法(MRI)を含む。
したがって、HTTアミロイドーシスに伴う疾患及び/又は障害を処置するための方法、診断するための方法、又は防止するための方法を提供することが、本発明の具体的な目的の1つである。これらの方法は、有効濃度の好ましくはヒト抗体又はヒト抗体誘導体を対象に投与することを含み、ただし、この場合、抗体はHTT又はそのフラグメントを標的とし、好ましくは、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種又はミスフォールドしたHTT種或いはそれらのフラグメントを標的とする。
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体によって特異的に認識されるHTTのエピトープ(好ましくは、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種或いはそのフラグメントのエピトープ)を有するペプチドを提供する。前記ペプチドは、詳細な説明において、また、実施例において下記で示されるアミノ酸配列、又は、1つ若しくは複数のアミノ酸が置換され、欠失され、かつ/又は付加されるその改変された配列を含むか、或いは、そのようなアミノ酸配列又はそのような改変された配列からなる。加えて、本発明は、HTTアミロイドーシスに伴う疾患及び/又は障害を対象において診断するための方法であって、前記ペプチドに結合する抗体の存在を前記対象の生物学的サンプルにおいて明らかにする工程を含む方法を提供する。
本発明のさらなる実施形態が下記の説明及び実施例から明らかであろう。
下記ヒト抗体の可変領域のアミノ酸配列:NI−302.33C11、NI−302.63F3、NI−302.35C1、NI−302.31F11、NI−302.2A2、NI−302.6N9、NI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.44D7、NI−302.37C12、NI−302.55D8、NI−302.7A8、NI−302.78H12、NI−302.71F6、NI−302.11H6、NI−302.3D8、NI−302.18A1、NI−302.8F1、NI−302.52C9、NI−302.46C9、NI−302.15E8、NI−302.15D3、NI−302.64E5、NI−302.7D8、NI−302.72F10、NI−302.12H2、NI−302.8M1及びNI−302.4A6。フレームワーク領域(FR)及び相補性決定領域(CDR)が示され、CDRには下線が引かれる。Kabat番号表記スキームが使用された(http://www.bioinf.org.uk/abs/を参照のこと)。
ハンチンチン(HTT)エクソン1タンパク質及び凝集物の特徴づけ。(A)GST−HttEx1Q21(GST−HD21)、GST−HttEx1Q35(GST−HD35)及びGST−HttEx1Q49(GST−HD49)の各発現構築物のクローニング;(B)良好な純度を示し、しかし、いくつかのさらなるバンドもまた示す、精製されたGSTタンパク質のみ(レーン1)、GST−HttExon1Q21タンパク質(GST−HD21、レーン2)、GST−HttExon1Q35タンパク質(GST−HD35、レーン3)タンパク質及びGST−HttExon1Q49タンパク質(GST−HD49、レーン4)のSDS−PAGE時のクーマシー色素染色;(C)ポリクローナルHD−1抗体を検出抗体として用いるドットブロット分析(左側)及びフィルター遅延分析(右側)による、HD21、HD35及びHD49のインビトロでの時間分解インビトロ凝集反応の特徴づけ。24時間でのHD35の凝集反応液、又は、3時間後でのHD49反応液は、HD−1によって検出可能な0.2μmの細孔サイズよりも大きい凝集物をフィルター遅延アッセイ分析において示す;(D)インビトロでのHD35調製物及びHD49調製物の電子顕微鏡法による特徴づけ。24時間後でのHD35の凝集反応液[A、E]、又は、HD49反応液で、1時間後[B、F]、3時間後[C、G]若しくは24時間後[D、H]。1000xの倍率による概観写真[A〜D]及び66000xの倍率による詳細構造[E〜H]。
抗ポリPドメイン結合抗体NI−302.33C11の結合親和性の特徴づけ。(A)直接ELISAによって決定される、種々のHTT種についてのNI−302.33C11結合親和性;(B)直接ELISAを使用する、凝集したHD49(●)、凝集したHD21(■)、可溶性GST−HD49(▲)及び可溶性GST−HD21(▼)のHttエクソン1タンパク質についてのNI−302.33C11のEC50決定。NI−302.33C11抗体は、4つすべての種に対して類似するEC50値で結合する;(C)ドットブロットアッセイ(左側)及びフィルター遅延アッセイ(右側)による、HD21、HD35及びHD49のインビトロでの時間分解インビトロ凝集反応物でのHTT凝集物に対するNI−302.33C11結合分析であり、優先的な結合が、ドットブロットアッセイではHD35及びHD49のより後期の(凝集した)反応物に対して認められ、フィルター遅延アッセイではHD35及びHD49の凝集物に対して認められる。
重複するペプチドのスキャンによるNI−302.33C11抗体結合エピトープの決定。上段:NI−302.33C11抗体とのハイブリダイゼーションの後におけるペプスキャン(pepscan)画像。下段:NI−302.33C11抗体が結合するペプチド配列のグラフィカル概観図。NI−302.33C11抗体によって認識されているペプチドとペプチドとの間での重複するアミノ酸(推定的な結合エピトープ)がコンセンサス配列において太字で強調される。HRPコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ検出抗体は単独では、どのような線状ハンチンチンペプチドとも結合しない。
NI−302.33C11はHTTのポリPドメインに結合する。直接ELISAを使用する、GST−HD49(●)、BSAカップリングされたPリッチドメインペプチド(◆)、BSAカップリングされたC末端ペプチド(■)又はBSAカップリングされたポリPペプチド(▲)についてのEC50決定。
NI−302.33C11抗体の純度及び完全性並びに結合特異性の特徴づけ。2μg及び10μgの組換えヒトNI−302.33C11抗ポリPドメイン抗体のSDS−PAGE分析、その後のクーマシー染色。
抗プロリンリッチドメイン抗体NI302.63F3の結合親和性の特徴づけ。(A)直接ELISAによって決定される、種々のHTT種についてのNI−302.63F3結合親和性。(B)直接ELISAを使用する、凝集したHD49(●)、凝集したHD21(■)、可溶性GST−HD49(▲)及び可溶性GST−HD21(▼)のHttエクソン1タンパク質についてのNI−302.63F3のEC50決定。NI−302.63F3抗体は、4つすべての種に対して類似するEC50値を有する;(C)ドットブロットアッセイ(左側)及びフィルター遅延アッセイ(右側)による、HD21、HD35及びHD49のインビトロでの時間分解インビトロ凝集反応物での抗体NI−302.63F3の特徴づけであり、優先的な結合が、ドットブロットアッセイでは、伸長ポリQ域を有するハンチンチンに対して認められ(HD49>HD35)、フィルター遅延アッセイではHD35及びHD49の凝集物に対して認められる。
重複するペプチドのスキャンによるNI−302.63F3抗体結合エピトープの決定。上段:NI−302.63F3抗体とのハイブリダイゼーションの後におけるペプスキャン画像。下段:NI−302.63F3抗体が結合するペプチド配列のグラフィカル概観図。NI−302.63F3抗体によって認識されているペプチドとペプチドとの間での重複するアミノ酸(推定的な結合エピトープ)がコンセンサス配列において太字で強調される。HRPコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ検出抗体は単独では、どのような線状ハンチンチンペプチドとも結合しない。
NI−302.63F3はHTTのPリッチドメインに結合する。直接ELISAを使用する、GST−HD49(●)、BSAカップリングされたPリッチドメインペプチド(◆)、BSAカップリングされたC末端ペプチド(■)又はBSAカップリングされたポリPペプチド(▲)についてのEC50決定。
NI−302.63F3抗体の純度及び完全性並びに結合特異性の特徴づけ。2μg及び10μgの組換えヒトNI−302.63F3抗プロリンリッチドメイン抗体のSDS−PAGE分析、その後のクーマシー染色。
抗C末端ドメイン結合抗体NI302.35C1の結合親和性の特徴づけ。(A)直接ELISAによって決定される、種々のHTT種についてのNI−302.35C1結合親和性;(B)直接ELISAを使用する、凝集したHD49(●)、凝集したHD21(■)、可溶性GST−HD49(▲)及び可溶性GST−HD21(▼)のHttエクソン1タンパク質についてのNI−302.35C1のEC50決定;(C)ドットブロットアッセイ(左側)及びフィルター遅延アッセイ(右側)による、HD21、HD35及びHD49のインビトロでの時間分解インビトロ凝集反応物での抗体NI−302.35C1の特徴づけであり、優先的な結合が、ドットブロットアッセイではHD35及びHD49のより後期の(凝集した)反応物に対して認められ、フィルター遅延アッセイではHD35及びHD49の凝集物に対して認められる。
NI−302.35C1はHTTのBSAカップリングされたC末端ドメインペプチドに結合する。直接ELISAを使用する、GST−HD49(●)、BSAカップリングされたPリッチドメインペプチド(◆)、BSAカップリングされたC末端ペプチド(◆)又はBSAカップリングされたポリPペプチド(▲)についてのEC50決定。
NI−302.35C1抗体の純度及び完全性並びに結合特異性の特徴づけ。2μg及び10μgの組換えヒトNI−302抗C末端ドメイン抗体のSDS−PAGE分析、その後のクーマシー染色。
抗N末端ドメイン抗体NI302.15E8の結合親和性の特徴づけ。(A)直接ELISAによって決定される、種々のHTT種についてのNI−302.15E8結合親和性;(B)直接ELISAを使用する、凝集したHD49(●)、凝集したHD21(■)、可溶性GST−HD49(▲)及び可溶性GST−HD21(▼)のHttエクソン1タンパク質についてのNI−302.15E8のEC50決定。NI−302.15E8抗体は、より大きい親和性結合EC50値を凝集しなかった種に対して有する。
NI−302.15E8はHTTのBSA結合N末端ドメインペプチドに結合する。直接ELISAを使用する、GST−HD49(●)、BSAカップリングされたN末端ペプチド(▼)、BSAカップリングされたPリッチドメインペプチド(◆)、BSAカップリングされたC末端ペプチド(■)又はBSAカップリングされたポリPペプチド(▲)についてのEC50決定。
直接ELISAによる標的特異性分析。NI−302抗体の(A)NI−302.33C11、(B)NI−302.63F3並びに(C)NI−302.35C1及び(D)NI−302.15E8は、直接ELISAによる結合特異性分析において示されるように、無関係な凝集性タンパク質標的とは結合しない。
棘密度が、遺伝子非導入の同腹子と比較して、Tg(HDexon1)62Gpb/1J遺伝子導入マウスの海馬薄片培養物において有意に低下する。(A〜D)Tg(HDexon1)62Gpb/1Jマウス(B、D)に対する遺伝子非導入同腹子のGFP陽性海馬ニューロン(A、C)の概観であり、1つだけの樹状突起が示され、個々の棘がより大きい倍率で示される(C、D)。(E)野生型動物に対する遺伝子導入動物における樹状突起棘密度の有意な低下(n=3個〜7個の薄片/群、2匹の野生型動物又は3匹の遺伝子導入動物に由来する)。(F)遺伝子導入マウスの薄片における抗体NI−302.11F11及び抗体NI−302.63F3による樹状突起棘密度喪失の減弱(n=8個〜13個の薄片/群、合計で12匹の遺伝子導入動物に由来する)。データは平均±SEMを表す。*p<0.05(MWU)、# p=0.05。
R6/1動物モデルの脳におけるNI−302抗体の浸透。(A)50mg/kgの単回腹腔内注入の後でのR6/1遺伝子導入動物における平均でのNI−302.31F11(●)及びNI−302.35C1(■)の血漿中薬物レベル及び脳内薬物レベル。データは平均±SEMを表す。n=3(それぞれの群について)。(B)50mg/kgの単回用量の後における個々のマウスの血漿中薬物レベル及び脳内薬物レベル。
直接ELISAを使用する、凝集したHD49(●)、凝集したHD21(■)、可溶性GST−HD49(▲)及び可溶性GST−HD21(▼)のHttエクソン1タンパク質についてのヒト由来HTT抗体のEC50決定。いくつかの抗体(例えば、NI−302.37C12(I)、NI−302.55D8(J)、NI−302.11A4(F)又はNI−302.22H9(G))は、切断されなかったGST−HTTタンパク質に対する優先した結合を有するようであり(このことは、これらの抗体が、切断されなかった可溶性GST−HD構築物を優先的に認識することを示唆する)、これに対して、いくつかの抗体(例えば、NI−302.74C11(C)又はNI−302.71F6(M))は、すべてのHTT調製物に対する類似したEC値による大きい親和性結合を示した(このことは、これらの抗体がELISAアッセイでは、凝集したHTTエクソン1構築物及び切断されなかったHTTエクソン1構築物において露出する類似しているエピトープに結合することを示唆する)。
直接ELISAによる結合親和性の特徴づけ。ヒト由来HTT特異的抗体の、種々のHTTタンパク質に対する結合親和性。
ドットブロットアッセイ(左側)及びフィルター遅延アッセイ(右側)による、HD21、HD35及びHD49のインビトロでの時間分解インビトロ凝集反応物での抗体NI−302.44D7、NI−302.37C12、NI−302.15F9及びNI−302.71F6の特徴づけであり、特にNI−302.15F9及びNI−302.71F6の優先的な結合が、ドットブロットアッセイではHD35及びHD49のより後期の(凝集した)反応物に対して認められ、フィルター遅延アッセイではHD35及びHD49のSDS安定な凝集物に対して認められる。
直接ELISAによる標的特異性分析。NI−302抗体の(A)NI−302.31F11、(B)NI−302.6N9、(C)NI−302.46C9、(D)NI−302.8F1、(E)NI−302.2A2、(F)NI−302.74C11、(G)NI−302.15F9、(H)NI−302.39G12、(I)NI−302.11A4、(J)NI−302.22H9、(K)NI−302.44D7、(L)NI−302.55D8、(M)NI−302.7A8、(N)NI−302.78H12、(O)NI−302.71F6、(P)NI−302.11H6及び(Q)NI−302.3D8は、直接ELISAによる結合特異性分析において示されるように、無関係な凝集性タンパク質標的とは結合しない。
重複するペプチドのスキャンによるNI−302抗体結合エピトープの決定。上段:NI−302抗体とのハイブリダイゼーションの後におけるペプスキャン画像。下段:ペプチド配列のグラフィカル概観図及びただ1つのペプチドに対するNI−302抗体結合スコアが示される。NI−302抗体によって認識されているペプチドとペプチドとの間での重複するアミノ酸(推定的な結合エピトープ)がコンセンサス配列において灰色で強調される。HRPコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ検出抗体は単独では、どのような線状ハンチンチンペプチドとも結合しない。(A)NI−302.31F11、21スポットメンブランで1μg/ml;(B)NI−302.74C11、16スポットメンブランで1μg/ml;(C)NI−302.15F9、16スポットメンブランで1μg/ml;(D)NI−302.39G12、16スポットメンブランで1μg/ml;(E)NI−302.11A4、16スポットメンブランで1μg/ml;(F)NI−302.22H9、16スポットメンブランで1μg/ml;(G)NI−302.44D7、16スポットメンブランで1μg/ml;(H)NI−302.37C12、16スポットメンブランで1μg/ml;(I)NI−302.55D8、16スポットメンブランで1μg/ml;(J)NI−302.7A8、21スポットメンブランで1μg/ml;(K)NI−302.78H12、16スポットメンブランで1μg/ml;(L)NI−302.71F6、16スポットメンブランで1μg/ml;(M)NI−302.11H6、21スポットメンブランで1μg/ml;(N)NI−302.18A1、21スポットメンブランで1μg/ml;(O)NI−302.3D8、21スポットメンブランで1μg/ml;(P)NI−302.46C9、21スポットメンブランで1μg/ml;及び(Q)NI−302.52C9、21スポットメンブランで1μg/ml;(R)NI−302.2A2、21スポットメンブランで1μg/ml;(S)NI−302.15E8、21スポットメンブランで1μg/ml;及び(T)NI−302.15D3、21スポットメンブランで1μg/ml。
NI−302抗体の免疫組織化学分析により、後期疾患段階のTg(HDexon1)62Gpb/1J遺伝子導入動物の線条体ニューロンにおけるニューロン核内封入体の顕著な染色が5nMの濃度で明らかにされ(74C11、39C12、11A4、22H9、78H12、37C12、7D8、72F10)、又は50nMの濃度で明らかにされる(15F9、71F6、55D8、44D7、7A8、64E5)。Mab5492は市販のN末端HTT抗体である。
R6/1遺伝子導入マウスモデルTg(HDexon1)61Gpb/Jの基本的特徴づけ。この動物モデルの(A)生存曲線、(B)疾患進行の期間中における体重曲線及び(C)総脳湿重量。(D〜H)NI−302.33C11のHTT抗体を用いた染色による、線条体における疾患進行に伴うニューロン核内封入体の出現の特徴づけ。
B6C3−Tg(HD82Gln)81Dbo/J(N171−82Q)遺伝子導入マウスモデルの基本的特徴づけ。この動物モデルの(A)生存曲線、(B)疾患進行の期間中における体重曲線、及び(C)末期における総脳湿重量。(D〜F)Mab5492 HTT抗体を用いた染色による、線条体における疾患進行に伴うニューロン核内封入体の出現の特徴づけ。
50nMのNI−302.33C11(ポリPエピトープ)を用いた免疫組織化学分析では、ニューロン核内封入体の染色が、1nMの濃度(E)及び5nMの濃度(F)で、4名の異なるハンチントン病患者(A〜D)の皮質ニューロンにおいて、また、270日齢の後期疾患段階のB6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J)遺伝子導入動物の線条体ニューロンにおいて示される。染色が遺伝子非導入の同腹子では検出されず(G)、また、一次抗体が染色時に省かれる場合(H)、又は、非ハンチントン病コントロールの組織が50nMのNI−302.33C11により染色される場合には検出されない。
50nMのNI−302.63F3(Pリッチドメインエピトープ)を用いた免疫組織化学分析では、ニューロン核内封入体の染色(A〜C)、並びに、4名の異なるハンチントン病患者(A〜D)の皮質ニューロンのいくつかの神経突起の染色(D)及び270日齢の後期疾患段階のB6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J)遺伝子導入動物の線条体ニューロンにおける染色が1nMの濃度(E)及び50nMの濃度(F)で示される。染色が遺伝子非導入の同腹子では検出されず(G)、また、一次抗体が染色時に省かれる場合(H)、又は、非ハンチントン病コントロールの組織が50nMのNI−302.63F3により染色される場合には検出されない。
100nMのNI−302.35C1(末端のエクソン1エピトープ)を用いた免疫組織化学分析では、ニューロン核内封入体の染色(A〜C)、並びに、4名の異なるハンチントン病患者(A〜D)の皮質ニューロンのいくつかの神経突起の染色(D)及び270日齢の後期疾患段階のB6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J)遺伝子導入動物の線条体ニューロンにおける染色が1nMの濃度(E)及び50nMの濃度(F)で示される。染色が遺伝子非導入の同腹子では検出されず(G)、また、一次抗体が染色時に省かれる場合(H)、又は、非ハンチントン病コントロールの組織が100nMのNI−302.35C1により染色される場合には検出されない。
市販の抗ポリQ抗体Mab1574(1:2000、Chemicon)を用いた免疫組織化学分析では、ニューロン核内封入体及び細胞質封入体の染色、並びに、4名の異なるハンチントン病患者(A〜D)の皮質ニューロンのいくつかの神経突起の染色(A、D)が示され、また、染色が、前駆症状状態の150日齢(E)及び270日齢(F)の後期疾患段階のB6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J)遺伝子導入動物の線条体ニューロンにおいて示される。染色が遺伝子非導入の同腹子では検出されず(G)、また、一次抗体が染色時に省かれる場合(H)、又は、非ハンチントン病コントロールの組織がMab1574により染色される場合には検出されない。
直接ELISAを使用する、凝集したHD49(●)、凝集したHD21(■)、可溶性GST−HD49(▲)及び可溶性GST−HD21(▲)のHttエクソン1タンパク質についてのヒト由来HTT抗体のEC50決定。いくつかの抗体(例えば、NI−302.64E5(A)又はNI−302.7D8(B))は、切断されなかったGST−HD49タンパク質に対する優先した結合を有するようであり、このことは、これらの抗体が、より長いポリQ反復を含有する切断されなかった可溶性GST−HD構築物を優先的に認識することを示唆する。抗体NI−302.72F10(C)は、HD21構築物に対して優先的であることを示し、いくつかの抗体(例えば、NI−302.4A6(D)、NI−302.12H2(E)又はNI−302.8M1(E))は、すべてのHTT調製物に対する類似したEC値による大きい親和性結合を示した(このことは、これらの抗体がELISAアッセイでは、凝集したHTTエクソン1構築物及び切断されなかったHTTエクソン1構築物において露出する類似しているエピトープに結合することを示唆する)。
ドットブロットアッセイ(左側)及びフィルター遅延アッセイ(右側)による、HD21、HD35及びHD49のインビトロでの時間分解インビトロ凝集反応物での抗体(A)NI−302.64E5、(B)NI−302.7D8、(C)NI−302.72F10、(D)NI−302.4A6、(E)NI−30212H2、(F)NI−302.8M1及び(G)NI−302.33C11(コントロールとして)の特徴づけであり、特にNI−302.64E5及びNI−302.72F10が、ドットブロットアッセイではHD35及び/又はHD49のより後期の(凝集した)反応物に対して優先的に結合することが認められ、フィルター遅延アッセイではHD35及びHD49のSDS安定な凝集物に対して優先的に結合することが認められる。
直接ELISAによる標的特異性分析。NI−302抗体の(A)NI−302.64E5、(B)NI−302.7D8、(C)NI−302.72F10、(E)NI−302.12H2及び(F)NI−302.8M1は、p53へのいくらかの結合を示す(D)NI−302.4A6を除いて、直接ELISAによる結合特異性分析において示されるように、無関係な凝集性タンパク質標的とは結合しない。
HDのマウスモデルにおける課題特異的訓練期間中の行動成績と、感覚運動能とに関するC末端ドメイン結合抗体NI−302.35C1の研究。(A)十字迷路分析を使用して、R6/1マウスにおける不安のレベルを調べた。6ヶ月の月齢で、NI−302.35C1処置のR6/1動物は、ビヒクル処置のR6/1動物と比較して、より少ない時間を無壁路で過ごし、より少ない頻度で無壁路に進入し、かつ、無壁路での無防備な覗き込みがより少なかった。したがって、NI−302.35C1処置のR6/1マウスは、遺伝子非導入の同腹子と比較して、より不安な表現型を示した。(B)NI−302.35C1処置のR6/1動物は、遺伝子非導入の動物と類似するレベルに達するビヒクル処置のR6/1動物と比較して、改善された成績をポール試験において示した。
重複するペプチドのスキャンによるNI−302抗体結合エピトープの決定。上段:NI−302抗体とのハイブリダイゼーションの後におけるペプスキャン画像。下段:ペプチド配列のグラフィカル概観図が示される。NI−302抗体によって認識されているペプチドとペプチドとの間での重複するアミノ酸(推定的な結合エピトープ)が下側のコンセンサス配列において示される。HRPコンジュゲート化されたロバ抗ヒトIgG Fcγ検出抗体は単独では、どのような線状ハンチンチンペプチドとも結合しない。(A)NI−302.64E5、(B)NI−302.7D8、(C)NI−302.72F10、(D)NI−302.4A6、(E)NI−302.12H2、(F)NI−302.8M1、すべての抗体が21スポットメンブランにおいて1μg/mlである。
様々なNI−302抗体のVH鎖及びVL鎖又はVκ鎖におけるCDRのアミノ酸配列アラインメント。それぞれの配列を、保存されたアミノ酸、セグメント又は他のモチーフに関して調べ、これにより、CDRにおけるチロシンの蓄積が明らかにされた。
発明の詳細な説明
本発明は一般には、ハンチンチン(HTT)の病原的形態(多くの場合には変異した形態及び/又は凝集した形態)の存在に伴う疾患及び/又は障害並びに状態を検出するための免疫療法方法及び非侵襲的方法に関連する。より具体的には、本発明は、選択されたヒトドナー集団から得られる配列情報に基づいて作製され、かつ、そのようなHTTアイソフォーム及びその抗原に結合することができる組換えヒト由来モノクローナル抗体並びにそのHTT結合性フラグメント、合成及び生物工学誘導体に関連する。本発明の組換えヒト由来モノクローナル抗体は好都合には、病理学的な変化したHTT種の処置及び/又は診断のための標的化を可能にする変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種並びに/或いはそれらのフラグメントに特異的に結合することによって特徴づけられる。ヒト由来であるために、本発明の得られた組換え抗体は、治療剤として有効かつ安全であり、かつ、病理学的HTTを、偽陽性を与えることなく検出するための診断試薬として非常に特異的であることが無理なく期待され得る。
加えて、本発明は、患者の処置において単独で、或いは、HTTアミロイドーシスに伴う症状のために利用される他の薬剤と一緒でのどちらでも使用されるための本明細書中に記載されるヒトモノクローナル抗体及びそのどのような誘導体にも関連し、ただし、この場合、本発明の抗体及びその様々な誘導体のどれもが、副作用を抑制する薬剤と同時に投与されるために、或いは、副作用を抑制する薬剤の投与の前又は後において連続して投与されるために設計される。これに関連して、本発明の抗HTT抗体及びHTT結合性フラグメントは好ましくは、ヒトにおいて実質的に非免疫原性である。本発明の1つの実施形態において、本発明のヒトモノクローナル抗体、又は、どのような誘導体であれ、その誘導体と、HTTアミロイドーシスに伴う症状のために利用される1つ又は複数の薬物との両方を含む医薬組成物が提供される。
I.定義
別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂及び2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。
用語「a」又は「an」を伴う実体はそのような実体の1つ又は複数を示すことに留意しなければならない;例えば、「an antibody」(抗体)は1つ又は複数の抗体を表すことが理解される。そのようなものとして、用語「a」(又は「an」)、 「one or more」(1つ又は複数)及び 「at least one」(少なくとも1つ)は、本明細書中では交換可能に使用され得る。
ハンチンチン(HTT)は、IT15としてもまた知られており、ハンチントン病(HD)、すなわち、線条体ニューロンの喪失によって特徴づけられる神経変性障害に結びつけられる疾患遺伝子である。HDは、タンパク質産物におけるポリグルタミン反復として翻訳されるHTT遺伝子内の伸長した不安定なトリヌクレオチド反復によって引き起こされると考えられている。トリヌクレオチド反復の数におけるかなり広い範囲が、正常なコントロールにおいて特定されており、35〜40を越える反復の数が病的であるとして記載されている。HTT遺伝子座(NG_009378.1;4830〜174286;NCBI RefSeqGene)は大きく、180kbに及んでおり、67個のエクソンからなる。
これに関連して、変異HTTのN末端フラグメント、すなわち、HTT遺伝子のエクソン1タンパク質が、伸長したCAG反復を伴う場合、凝集及び進行性の神経学的表現型を遺伝子導入マウスにおいて引き起こすために十分であるHTTの「毒性」種を表すことが明らかにされている;例えば、Mangiarini他、Cell 87(1996)、493〜506、及び、Ross他、Lancet Neurol.10(2011)、83〜98、DiFiglia他、Science 277(1997)、1990〜1993、Gutekunst他、J Neurosci 19(7)(1999)、2522〜2534を参照のこと。
別途言及される場合を除き、「HTTを特異的に認識する」、「HTTに対して/について特異的である抗体」、及び、「抗HTT抗体」によって、特異的にHTTに結合する抗体、広くHTTに結合する抗体、及び、集団的にHTTに結合する抗体が意味され、この場合、HTTは、HTTの生来型形態、同様にまた、HTTの他の形態、例えば、病理学的に変化したHTT(例えば、変異したHTT、ミスフォールドしたHTT及び/又は凝集したHTTなど)(これらに限定されない)を含めてHTTの種々の形態を示す。本明細書中には、HTTの全長型形態及び/又はフラグメント並びに/或いは変異した形態、ミスフォールドした形態及び/又は凝集した形態について選択的であるヒト由来抗体が提供される。
別途具体的に示されない場合、用語「HTT」は、ハンチンチン(HTT)の種々の形態を具体的に示すために交換可能に使用される。用語「HTT」はまた、HTTの他の配座異性体、例えば、HTTの病理学的に変化した形態(例えば、HTTのミスフォールドした形態及び/又は凝集した形態など)を一般に特定するために使用される。そのうえ、別途具体的に示される場合を除き、HTTという用語は特に、HTTエクソン1を意味し、可溶性HTTは、その対応するGST融合タンパク質を示す。用語「HTT」はまた、HTTのすべてのタイプ及び形態(例えば、変異したHTTなど)を総称的に示すために使用される。上記用語(例えば、HTT)の前における加えられた文字は、その具体的なオルソログが由来する生物を示すために使用され、例えば、hHTTがヒトHTTに代わって使用され、又は、mHTTがマウス起源に代わって使用される。
本明細書中に開示される抗HTT抗体はHTT及びそのエピトープと特異的に結合し、また、HTTの様々な立体配座体及びそれらのエピトープに特異的に結合する。例えば、本明細書中には、病理学的に変化したHTT種又はそのフラグメント(例えば、HTTの変異した形態、ミスフォールドした形態及び/又は凝集した形態或いはそれらのフラグメントなど)と特異的に結合する抗体が開示される。HTTの(病理学的な)変異した、ミスフォールドした、及び/又は凝集した/凝集物という用語は、上記形態を具体的に示すために交換可能に使用される。(病理学的に)「凝集した形態」又は「凝集物」という用語は、本明細書中で使用される場合、HTTの相互の誤った/病理学的な相互作用に起因する蓄積又はクラスター形成の産物を記述する。これらの凝集物、蓄積物又はクラスター形態は、HTT及び/又はHTTフラグメントと、それらの非原線維性オリゴマー及び/又は原線維性オリゴマー並びに原線維との両方である場合があり、或いは、それらの両方から実質的になる場合があり、或いは、それらの両方からなる場合がある。本明細書中で使用される場合、HTTと「特異的に結合する」、「選択的に結合する」、又は「優先的に結合する」抗体に対する言及は、無関係な他のタンパク質と結合しない抗体を示す。一例において、本明細書中に開示されるHTT抗体はHTT又はそのエピトープと結合することができ、かつ、他のタンパク質についてはバックグランドの約2倍を超える結合を示さない。好ましい実施形態において、本発明の抗体は、対らせん状細線維(PHF)−タウ、TAU、アルファ−シヌクレイン、トランス活性応答DNA結合タンパク質43(TDP43)、膵島アミロイドポリペプチド(IAPP)、トランスチレチン(TTR)、血清アミロイドA(SAA)からなる群から選択される無関係なアミロイド形成タンパク質を実質的に認識しない;実施例8、実施例13、実施例18及び実施例31を参照のこと。所与のHTT配座異性体と「特異的に結合する」又は「選択的に結合する」抗体は、HTTのすべての立体配座とは結合しない抗体、すなわち、少なくとも1つの他のHTT配座異性体とは結合しない抗体を示す。例えば、本明細書中には、HTTの変異した形態及び/又は凝集した形態にインビトロにおいて、また、HTTアミロイドーシスに伴う疾患及び/又は障害を有する患者、或いは、HTTアミロイドーシスに伴う疾患及び/又は障害を発症する危険性がある患者から得られる組織においてその両方で優先的に結合することができる抗体が開示される。本発明の別の実施形態において、本発明の抗体はHTTエクソン1の種々の領域を特異的に標的とする;例えば、図5、図9、図12、図14、図15を参照のこと。本発明の抗HTT抗体はヒト対象から単離されているので、そのような抗体が、実際に対象によって最初に発現されたものであって、例えば、ヒト免疫グロブリンを発現するファージライブラリーによって生じる合成構築物、又は、ヒト免疫グロブリンレパートリーの一部を発現する遺伝子導入動物において生じる異種抗体でないことを強調するために(なお、それらはこれまで、ヒト様抗体を提供しようと試みるための1つの一般的な方法を表していた)、本発明の抗HTT抗体はまた、「ヒト自己抗体」又は「ヒト由来抗体」と呼ばれる場合がある。他方で、本発明のヒト由来抗体は、プロテインAカラム又は親和性カラムによって精製されることがあるヒト血清抗体そのものから区別するために、合成(的)、組換え(型)及び/又は生物工学(的)であると示される場合がある。
しかしながら、本発明の治療的取り組みの特定の利点が、本発明の抗体は、ミスフォールドした/凝集したHTTの出現を示す疾患、又は、ミスフォールドした/凝集したHTTに関連づけられる疾患の徴候を何ら有しない健康なヒト対象から得られるB細胞又はBメモリー細胞に由来し、したがって、ある一定の確率で、ミスフォールドした/凝集したHTTに関連づけられる臨床的に明白な疾患を防止することができる、或いは、そのような臨床的に明白な疾患の出現の危険性を減らすことができる、或いは、そのような臨床的に明白な疾患の発症又は進行を遅らせることができるという事実にある。典型的には、本発明の抗体はまた、体細胞変異、すなわち、抗体の可変領域の体細胞変化による標的HTT分子に対する高親和性結合における選択性及び有効性に関しての最適化を既に首尾良く経ている。生体内におけるそのような細胞、例えば、ヒト体内におけるそのような細胞は、自己免疫学的反応又はアレルギー反応の意味において、関連した、又は他の生理学的なタンパク質又は細胞構造によって活性化されていないという認識もまた、非常に医学的に重要である。なぜならば、これにより、臨床試験段階を首尾よく生き残るという相当に増大した可能性が意味されるからである。いわば、効率、許容性及び耐容性が、少なくとも1名のヒト対象において予防的抗体又は治療的抗体の前臨床開発及び臨床開発の前に既に実証されている。したがって、本発明のヒト抗HTT抗体は、治療剤としてのその標的構造特異的な効率と、副作用のその低下した可能性との両方で、成功のその臨床的可能性を著しく増大させることが予想され得る。
対照的に、cDNAライブラリー又はファージディスプレーに由来する抗体は、人為的な分子であり、例えば、依然としてマウス起源であり、したがって、ヒト身体に対しては外来であるヒト化抗体などである。したがって、治療抗体の臨床上の有用性及び効力が、抗体の効力及び薬物動態学に影響を及ぼし得る、また、ときには重大な副作用を引き起こし得る抗薬物抗体(ADA)の産生によって制限される可能性がある;例えば、Igawa他、MAbs.3(2011)、243〜252を参照のこと。具体的には、ヒト化抗体、すなわち、近年のヒト抗体作製技術により作製される抗体は、ヒト由来抗体(例えば、本発明のヒト由来抗体など)とは対照的に、抗体応答を誘発しやすく、また、例えば、ファージディスプレーに由来するこれらのヒト様抗体、例えば、アダリムマブなどは、ADA産生を誘発することが報告されている;例えば、Mansour、Br.J.Ophthalmol 91(2007)、274〜276、及び、Igawa他、MAbs.3(2011)、243〜252を参照のこと。したがって、望まれない免疫応答を生じさせやすくないヒト由来抗体が、患者のためには、ライブラリー又はディスプレイに由来する人為的な分子よりも有益である。
用語「ペプチド」は、その意味の範囲内において、(時には本明細書中では交換可能に使用されることがある)用語「ポリペプチド」及び用語「タンパク質」を包含することが理解される。同様に、タンパク質及びポリペプチドのフラグメントもまた包含され、タンパク質及びポリペプチドのフラグメントは本明細書中では「ペプチド」と称される場合がある。それにもかかわらず、用語「ペプチド」は好ましくは、少なくとも5個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、好ましくは少なくとも10個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、より好ましくは少なくとも15個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、さらにより好ましくは少なくとも20個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味し、特に好ましくは少なくとも25個の連続するアミノ酸を含むアミノ酸ポリマーを意味する。加えて、本発明によるペプチドは典型的には、最大でも100個の連続するアミノ酸、好ましくは80個未満の連続するアミノ酸、より好ましくは50個未満の連続するアミノ酸を有する。
ポリペプチド:
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、1つだけの「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直鎖状に連結されるモノマー(アミノ酸)から構成される分子を示す。用語「ポリペプチド」は、2個以上のアミノ酸の任意の鎖(1つ又は複数)を示し、生成物の特定の長さを示さない。したがって、「ペプチド」、「ジペプチド」、「トリペプチド」、「オリゴペプチド」、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は、2個以上のアミノ酸の鎖(1つ又は複数)を示すために使用される任意の他の用語が、「ポリペプチド」の定義の範囲に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりに、又は、これらの用語のどれとも交換可能に使用される場合がある。
用語「ポリペプチド」はまた、限定されないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、及び、知られている保護基/ブロック基、タンパク質分解的切断による誘導体化、又は、天然に存在しないアミノ酸による修飾を含めて、当該ポリペプチドの発現後修飾の産物を示すことが意図される。ポリペプチドは天然の生物学的供給源に由来してもよく、又は、組換え技術によって産生されてもよいが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されない。ポリペプチドは、化学合成による様式を含めて、どのような様式において作製されてもよい。
本発明のポリペプチドは、約3個以上のアミノ酸のサイズ、5個以上のアミノ酸のサイズ、10個以上のアミノ酸のサイズ、20個以上のアミノ酸のサイズ、25個以上のアミノ酸のサイズ、50個以上のアミノ酸のサイズ、75個以上のアミノ酸のサイズ、100個以上のアミノ酸のサイズ、200個以上のアミノ酸のサイズ、500個以上のアミノ酸のサイズ、1,000個以上のアミノ酸、又は、2,000個以上のアミノ酸のサイズである場合がある。ポリペプチドは、規定された三次元構造を有する場合があるが、ポリペプチドはそのような構造を必ずしも有さない。規定された三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれたとして示される。規定された三次元構造を有するのではなく、むしろ、非常に多数の異なる立体配座を取ることができるポリペプチドは、折り畳まれていないとして示される。本明細書中で使用される場合、糖タンパク質という用語は、アミノ酸残基(例えば、セリン残基又はアスパラギン残基)の酸素含有側鎖又は窒素含有側鎖を介して当該タンパク質に結合する少なくとも1つの炭水化物成分に連結されるタンパク質を示す。
「単離された」ポリペプチドあるいはそのフラグメント、変異体又は誘導体によって、その天然の環境に存在していないポリペプチドが意図される。特定の精製レベルは何ら要求されない。例えば、単離されたポリペプチドはそのネイティブ環境又は天然の環境から取り出され得る。宿主細胞において発現される組換え産生されたポリペプチド及びタンパク質は、任意の好適な技術によって分離されているか、分画されているか、あるいは、部分的又は実質的に精製されているネイティブポリペプチド又は組換えポリペプチドのように、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。
「組換え(の)ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質」は、組換えDNA技術によって産生される、すなわち、所望されるペプチドを含む融合タンパク質をコードする外因性の組換えDNA発現構築物によって形質転換される細胞(微生物細胞又は哺乳動物細胞)から産生される、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を示す。ほとんどの細菌培養物において発現されるタンパク質又はペプチドは典型的にはグリカンを含まないであろう。酵母において発現されるタンパク質又はペプチドは、哺乳動物細胞において発現されるものとは異なるグリコシル化パターンを有する場合がある。
本発明のポリペプチドとして、前記ポリペプチドのフラグメント、誘導体、アナログ又は変異体、及び、それらの任意の組合せも含まれる。用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」及び「アナログ」には、天然ペプチドのアミノ酸配列に十分に類似するアミノ酸配列を有するペプチド及びポリペプチドが含まれる。用語「十分に類似する」は、第1のアミノ酸配列及び第2のアミノ酸配列が共通の構造的ドメイン及び/又は共通の機能的活性を有するように、第2のアミノ酸配列に対する十分な数又は最小数の同一アミノ酸残基又は等価なアミノ酸残基を含有する第1のアミノ酸配列を意味する。例えば、共通の構造的ドメインを含むアミノ酸配列で、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は少なくとも約100%が同一であるアミノ酸配列は、十分に類似するとして本明細書中では定義される。好ましくは、変異体は、本発明の好ましいペプチドのアミノ酸配列に、特に、HTT、あるいは、それらのどちらかの変異体、誘導体又はアナログのアミノ酸配列に十分に類似しているであろう。そのような変異体は一般に、本発明のペプチドの機能的活性を保持する。変異体には、1つ又は複数のアミノ酸欠失、アミノ酸付加及び/又はアミノ酸置換によって生来型ペプチド及びwt型ペプチドとはアミノ酸配列においてそれぞれ異なるペプチドが含まれる。これらは、天然に存在する変異体、ならびに、人為的に設計された変異体である場合がある。
さらに、用語「フラグメント」、「変異体」、「誘導体」及び「アナログ」は、本発明の抗体又は抗体ポリペプチドに言及するときには、対応する生来型の結合性分子、抗体又はポリペプチドの抗原結合特性の少なくとも一部を保持するどのようなポリペプチドも含まれる。本発明のポリペプチドのフラグメントには、本明細書中の他のところで議論される具体的な抗体フラグメントに加えて、タンパク質分解的フラグメント、ならびに、欠失フラグメントが含まれる。本発明の抗体及び抗体ポリペプチドの変異体には、上記で記載されるようなフラグメント、及び、アミノ酸の置換、欠失又は挿入に起因する変化したアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。変異体は天然に存在している場合があり、又は、天然に存在していない場合がある。天然に存在していない変異体は、この技術分野において知られている変異誘発技術を使用して作製される場合がある。変異体ポリペプチドは、保存的又は非保存的なアミノ酸置換、アミノ酸欠失又はアミノ酸付加を含む場合がある。HTT特異的な結合性分子の誘導体、例えば、本発明の抗体及び抗体ポリペプチドの誘導体は、生来型ポリペプチドに対して見出されないさらなる特徴を示すように変化させられているポリペプチドである。例には、融合タンパク質が挙げられる。変異体ポリペプチドは、本明細書中では「ポリペプチドアナログ」として示される場合もある。本明細書中で使用される場合、結合性分子もしくはそのフラグメント、抗体又は抗体ポリペプチドの「誘導体」は、官能側鎖基の反応によって化学的に誘導体化される1つ又は複数の残基を有する当該ポリペプチドを示す。また、「誘導体」として、20個の標準的アミノ酸の1つ又は複数の天然に存在するアミノ酸誘導体を含有するそのようなペプチドも含まれる。例えば、4−ヒドロキシproリンがproリンの代わりに使用されてもよい;5−ヒドロキシリシンがリシンの代わりに使用されてもよい;3−メチルヒスチジンがヒスチジンの代わりに使用されてもよい;ホモセリンがセリンの代わりに使用されてもよい;また、オルニチンがリシンの代わりに使用されてもよい。
分子の類似性及び/又は同一性の決定:
2つのペプチドの間における「類似性」が、一方のペプチドのアミノ酸配列を第2のペプチドの配列に対して比較することによって求められる。実施例35及び図36を参照のこと。一方のペプチドのアミノ酸が同一であるか、又は、保存的なアミノ酸置換であるならば、一方のペプチドのアミノ酸は第2のペプチドの対応するアミノ酸と類似している。保存的な置換には、Dayhoff,M.O.編、The Atlas of Protein Sequence and Structure 5(National Biomedical Research Foundation、Washington,D.C.(1978))に記載される置換、及び、Argos、EMBO J.8(1989)、779〜785に記載される置換が含まれる。例えば、下記の群の1つに属するアミノ酸は、保存的な変化又は置換を表す:−Ala、Pro、Gly、Gln、Asn、Ser、Thr;−Cys、Ser、Tyr、Thr;−Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;−Lys、Arg、His;−Phe、Tyr、Trp、His;及び、−Asp、Glu。
2つのポリヌクレオチドの間における「類似性」が、一方のポリヌクレオチドの核酸配列を所与のポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。一方の核酸が同一であるならば、又は、核酸がコード配列の一部である場合、当該核酸を含むそれぞれのトリプレットが、同じアミノ酸又は保存的なアミノ酸置換をコードするならば、一方のポリヌクレオチドの核酸は第2のポリヌクレオチドの対応する核酸と類似している。
2つの配列の間におけるパーセント同一性又はパーセント類似性の決定が好ましくは、Karlin及びAltschul(1993)(Proc.Natl.Acad.Sci USA 90:5873〜5877)の数学的アルゴリズムを使用して達成される。そのようなアルゴリズムが、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)において利用可能なAltschul他(1990)(J.Mol.Biol.215:403〜410)のBLASTnプログラム及びBLASTpプログラムに組み込まれる。
パーセント同一性又はパーセント類似性の決定が、NCBIのウエブページで推奨されるような、また、特定の長さ及び組成の配列に関しての「BLAST Program Selection Guide」に記載されるような、BLASTヌクレオチド検索についてはBLASTnプログラムの標準的なパラメーター、BLASTタンパク質検索についてはBLASTpプログラムの標準的なパラメーターを用いて行われる。
BLASTポリヌクレオチド検索が、BLASTnプログラムを用いて行われる。
一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが1000に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが7に設定される場合があり、これらはNCBIのウエブページにおいて短い配列(20塩基未満)について推奨される通りである。より長い配列については、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが11に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Match/mismatch Scores」が、1、−2に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが直線に設定される場合がある。フィルター及びマスキングパラメーターについては、「Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Species−specific repeats」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「DUST Filter Settings」にチェックが入れられる場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。一般に、「Search for short nearly exact matches」がこの点に関して使用される場合があり、これにより、上記で示された設定のほとんどが提供される。この点に関してのさらなる情報は、NCBIのウエブページで公開される「BLAST Program Selection Guide」に見出される場合がある。
BLASTタンパク質検索は、BLASTpプログラムを用いて行われる。一般的なパラメーターについては、「Max Target Sequences」ボックスが100に設定される場合があり、「Short queries」ボックスにチェックが入れられる場合があり、「Expect threshold」ボックスが10に設定される場合があり、「Word Size」ボックスが「3」に設定される場合がある。スコア化パラメーターについては、「Matrix」ボックスが「BLOSUM62」に設定される場合があり、「Gap Costs」ボックスが「Existence:11 Extension:1」に設定される場合があり、「Compositional adjustments”ボックスが“Conditional compositional score matrix adjustment”に設定される場合がある。フィルター及びマスキングパラメーターについては、“Low complexity regions」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask for lookup table only」ボックスにチェックが入れられない場合があり、「Mask lower case letters」ボックスにチェックが入れられない場合がある。
両方のプログラムの改変、例えば、検索された配列の長さに関しての改変は、NCBIのウエブページにおいてHTML版及びPDF版で公開される「BLAST Program Selection Guide」における推奨に従って行われる。
ポリヌクレオチド:
用語「ポリヌクレオチド」は、1つだけの核酸ならびに複数の核酸を包含することが意図され、単離された核酸分子又は核酸構築物、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)又はプラスミドDNA(pDNA)を示す。ポリヌクレオチドは、従来型のホスホジエステル結合又は非従来型の結合(例えば、アミド結合、例えば、ペプチド核酸(PNA)に見出されるアミド結合など)を含む場合がある。用語「核酸」は、ポリヌクレオチドに存在するいずれかの1つ又は複数の核酸セグメント(例えば、DNAフラグメント又はRNAフラグメント)を示す。「単離された」核酸又はポリヌクレオチドによって、そのネイティブ環境から取り出されている核酸分子(DNA又はRNA)が意図される。例えば、ベクターに含有される、抗体をコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の様々な目的のために単離されていると見なされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例には、異種の宿主細胞において維持される組換えポリヌクレオチド、又は、溶液における(部分的又は実質的に)精製されたポリペプチドが含まれる。単離されたRNA分子には、本発明のポリヌクレオチドのインビボRNA転写物又はインビトロRNA転写物が含まれる。本発明による単離されたポリヌクレオチド又は核酸にはさらに、合成的に作製されるそのような分子が含まれる。加えて、ポリヌクレオチド又は核酸は、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位又は転写ターミネーターなどである場合があり、あるいは、調節エレメント、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位又は転写ターミネーターなどを包含する場合がある。
本明細書中で使用される場合、「コード領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「終止コドン」(TAG、TGA又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないにもかかわらず、コード領域の一部であると見なされる場合があるが、近接配列はどれも、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなどはコード領域の一部ではない。本発明の2つ以上のコード領域を、1つのポリヌクレオチド構築物において、例えば、1つのベクターに存在させることができ、又は、別個のポリヌクレオチド構築物において、例えば、別個の(異なる)ベクターに存在させることができる。さらには、ベクターはどれも、1つだけのコード領域を含有する場合があり、又は、2つ以上のコード領域を含む場合があり、例えば、1つのベクターが免疫グロブリン重鎖可変領域及び免疫グロブリン軽鎖可変領域を別々にコードする場合がある。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチド又は核酸は、結合性分子、抗体、あるいは、そのフラグメント、変異体又は誘導体をコードする核酸に融合されて、又は融合されずに、異種のコード領域をコードする場合がある。異種のコード領域には、限定されないが、特殊化されたエレメント又はモチーフ、例えば、分泌シグナルペプチド又は異種の機能的ドメインなどが含まれる。
特定の実施形態において、ポリヌクレオチド又は核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードする核酸を含むポリヌクレオチドは通常、1つ又は複数のコード領域と操作可能に連係させられるプロモーターならびに/あるいは他の転写制御エレメント又は翻訳制御エレメントを含む場合がある。操作可能連係は、遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)のためのコード領域が、当該遺伝子産物の発現を当該調節配列の影響下又は制御下に置くような様式で1つ又は複数の調節配列と連係させられるときにおいてである。2つのDNAフラグメント(例えば、ポリペプチドコード領域及びそれと連係させられるプロモーターなど)は、プロモーター機能の誘導により、所望される遺伝子産物をコードするmRNAの転写が生じるならば、また、これら2つのDNAフラグメントの間における連結の性質が、遺伝子産物の発現を導く発現調節配列の能力を妨げないか、又は、転写されるDNAテンプレートの能力を妨げないならば、「操作可能に連係させられる」又は「操作可能に連結される」。したがって、プロモーター領域は、プロモーターがその核酸の転写を達成することができたならば、ポリペプチドをコードする核酸と操作可能に連係させられているであろう。プロモーターは、DNAの実質的な転写を所定の細胞においてのみ導く細胞特異的なプロモーターである場合がある。プロモーターのほかに、他の転写制御エレメントを、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー及び転写終結シグナルを、細胞特異的な転写を導くためにポリヌクレオチドと操作可能に連係させることができる。好適なプロモーター及び他の転写制御領域が本明細書中に開示される。
様々な転写制御領域が当業者に知られている。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、サイトメガロウイルス由来のプロモーターセグメント及びエンハンサーセグメント(前初期プロモーター、イントロンAとの併用で)、シミアンウイルス40由来のプロモーターセグメント及びエンハンサーセグメント(初期プロモーター)、ならびに、レトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーターセグメント及びエンハンサーセグメントなど(これらに限定されない)が含まれる。他の転写制御領域には、脊椎動物の遺伝子(例えば、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ−グロビンなど)に由来する転写制御領域ならびに遺伝子発現を真核生物細胞において制御することができる他の配列が含まれる。さらなる好適な転写制御領域には、組織特異的なプロモーター及びエンハンサー、ならびに、リンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロン又はインターロイキンによって誘導可能であるプロモーター)が含まれる。
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に知られている。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始コドン及び翻訳終結コドン、ならびに、ピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、配列内リボソーム進入部位、すなわち、IRES、これはまたCITE配列とも称する)が含まれるが、これらに限定されない。
他の実施形態において、本発明のポリヌクレオチドはRNAであり、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)の形態である。
本発明のポリヌクレオチド及び核酸コード領域は、分泌ペプチド又はシグナルペプチドをコードし、これにより、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの分泌を導くさらなるコード領域と連係させられる場合がある。シグナル仮説によれば、哺乳動物細胞によって分泌されるタンパク質は、粗面小胞体を横断する成長途中のタンパク質鎖の移行が開始されると、成熟型タンパク質から切断されるシグナルペプチド又は分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞によって分泌されるポリペプチドは一般に、当該ポリペプチドのN末端に融合されるシグナルペプチドで、当該ポリペプチドの分泌型形態又は「成熟型」形態をもたらすために、完全なポリペプチド又は「全長」のポリペプチドから切断されるシグナルペプチドを有することを承知している。特定の実施形態において、生来型のシグナルペプチド、例えば、免疫グロブリン重鎖又は免疫グロブリン軽鎖のシグナルペプチドが使用されるか、又は、操作可能に連係させられるポリペプチドの分泌を導く能力を保持するその配列の機能的誘導体が使用される。代替では、異種の哺乳動物シグナルペプチド又はその機能的誘導体が使用されてもよい。例えば、野生型のリーダー配列がヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)又はマウスβ−グルクロニダーゼのリーダー配列により置き換えられる場合がある。
「結合性分子」は、本発明に関連して使用される場合、主として抗体及びそのフラグメントに関し、しかし、HTTに結合する他の非抗体分子を示す場合もあり、これらには、ホルモン、受容体、リガンド、アンキリン、主要組織適合複合体(MHC)分子、シャペロン(例えば、熱ショックタンパク質(HSP)など)、ならびに、細胞・細胞接着分子(例えば、カドヘリンスーパーファミリー、インテグリンスーパーファミリー、C型レクチンスーパーファミリー及び免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーなど)が含まれるが、これらに限定されない。したがって、明瞭性だけのために、また、本発明の範囲を限定することなく、下記の実施形態のほとんどが、治療剤及び診断剤を開発するための好ましい結合性分子を代表する抗体及び抗体様分子に関して議論される。
抗体:
用語「抗体」及び用語「免疫グロブリン」は本明細書中では交換可能に使用される。抗体又は免疫グロブリンは、重鎖の可変ドメインを少なくとも含み、かつ、通常の場合には重鎖及び軽鎖の可変ドメインを少なくとも含む結合性分子である。脊椎動物系における基本的な免疫グロブリン構造は比較的よく理解されている(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)を参照のこと)。
より詳しく下記で議論されるように、用語「免疫グロブリン」は、生化学的に識別することができる様々な幅広いクラスのポリペプチドを含む。当業者は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、δ、ε)として、それらの中のいくつかのサブクラス(例えば、γ1〜γ4)を伴って分類されることを理解するであろう。抗体の「クラス」を、IgG、IgM、IgA、IgG又はIgEとしてそれぞれ決定するのが、この鎖の性質である。免疫グロブリンのサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1などが十分に特徴づけられており、また、機能的な特殊化を与えることが知られている。これらのクラス及びアイソタイプのそれぞれの改変された型が、本開示を考慮して当業者には容易に認識可能であり、従って、本発明の範囲内である。すべての免疫グロブリンクラスが明らかに本発明の範囲内であり、下記の議論は一般に、免疫グロブリン分子のIgGクラスに関する。IgGに関して、標準的な免疫グロブリン分子は、分子量がおよそ23,000ダルトンである2つの同一の軽鎖ポリペプチドと、分子量が53,000〜70,000である2つの同一の重鎖ポリペプチドとを含む。これら4つの鎖は典型的には、軽鎖が、「Y」字型の口部から始まり、可変領域の終わりまで続く腕木として重鎖を支える「Y」字型の立体配置でジスルフィド結合によって結合される。
軽鎖はカッパ又はラムダ(κ、λ)のどちらかとして分類される。それぞれの重鎖クラスがカッパ軽鎖又はラムダ軽鎖のどちらかと結合し得る。一般には、免疫グロブリンが、ハイブリドーマ、B細胞、又は、遺伝子操作された宿主細胞のどれかによって生じるとき、軽鎖及び重鎖は互いに共有結合により結合し、2つの重鎖の「テール」部分が共有結合性のジスルフィド連結又は非共有結合性の連結によって互いに結合する。重鎖において、アミノ酸配列が、Y字型の立体配置の二叉末端におけるN末端から、それぞれの鎖の底部におけるC末端にまで延びる。
軽鎖及び重鎖はともに、構造的及び機能的に相同的である領域に分けられる。用語「定常」及び「可変」が機能的に使用される。これに関連して、軽鎖部分及び重鎖部分の両方の可変ドメイン(VL及びVH)により、抗原認識及び特異性が決定されることが理解されるであろう。逆に、軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の定常ドメイン(CH1、CH2又はCH3)により、様々な重要な生物学的性質、例えば、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合及び補体結合などが与えられる。慣例によって、定常領域ドメインの番号づけは、これらのドメインが抗体の抗原結合部位又はアミノ末端からより遠位になるにつれて大きくなる。N末端部分が可変領域であり、C末端部分が定常領域である;CH3ドメイン及びCLドメインが実際に、重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端をそれぞれ含む。上記で示されるように、可変領域により、抗体は抗原上のエピトープを選択的に認識し、かつ、このエピトープと特異的に結合することができる。すなわち、抗体のVLドメイン及びVHドメイン、又は、抗体の相補性決定領域(CDR)のサブセットが組み合わさって、三次元の抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この四元抗体構造が、Y字型のそれぞれのアームの端部に存在する抗原結合部位を形成する。より具体的には、抗原結合部位がVH鎖及びVL鎖のそれぞれにおける3つのCDRによって規定される。HTTに特異的に結合するための十分な構造を含有する抗体又は免疫グロブリンフラグメントはどれも、本明細書中では交換可能に、「結合性フラグメント」又は「免疫特異性フラグメント」として示される。
天然に存在する抗体において、抗体は、抗体がその三次元立体配置を水性環境において取るような抗原結合ドメインを形成するために特異的に配置されるアミノ酸の短い不連続な配列である6つの超可変領域(これらは時には、それぞれの抗原結合ドメインに存在する「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる)を含む。「CDR」には、分子間の変動性をそれほど示さない4つの比較的保存された「フレームワーク」領域又は「FR」が近接する。これらのフレームワーク領域は主としてβ−シートの立体配座を取り、CDRにより、このβ−シート構造をつなぐ、また、時にはこのβ−シート構造の一部を形成するループが形成される。したがって、フレームワーク領域は、CDRを鎖間の非共有結合性の相互作用によって正しい配向で配置することを提供する足場を形成するように作用する。配置されたCDRによって形成される抗原結合ドメインにより、免疫反応性抗原におけるエピトープに対して相補的な表面が規定される。この相補的な表面は、抗体がその同種エピトープに非共有結合的に結合することを促進させる。CDR及びフレームワーク領域を構成するアミノ酸が、それらは正確に規定されているので、当業者によっていずれかの所与の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域についてそれぞれ容易に特定され得る;「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、Kabat,E.他編、U.S.Department of Health and Human Services(1983)、及び、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917を参照のこと。これらの全体が参照によって本願明細書に組み込まれる。
この技術分野において使用される、及び/又は受け入れられる用語の2つ以上の定義が存在する場合には、本明細書中で使用されるような当該用語の定義は、反するようなことが明示的に言及される場合を除き、すべてのそのような意味を包含することが意図される。具体的な一例が、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方の可変領域の中に見出される不連続な抗原結合部位を記述するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。この特定の領域が、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって、また、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917によって記載されており(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)、この場合、それらの定義は、互いに比較されたときにはアミノ酸残基の重複又はサブセットを包含する。それにもかかわらず、抗体又はその変異体のCDRを示すためのどちらかの定義の適用は、本明細書中で定義され、かつ使用されるようなこの用語の範囲内であることが意図される。上記で引用された参考文献のそれぞれによって定義されるようなCDRを包含する適切なアミノ酸残基が、比較として下記において表Iに示される。特定のCDRを包含する正確な残基番号は、CDRの配列及びサイズに依存して変わる。当業者は、どの残基が、抗体の可変領域アミノ酸配列が与えられる抗体のヒトIgGサブタイプの特定の超可変領域又はCDRを含むかを常法により決定することができる。
表I:CDRの定義
1
1表IにおけるすべてのCDR定義の番号表記は、Kabat他によって示される番号表記慣例に従う(下記を参照のこと)。
Kabat他はまた、どのような抗体に対しても適用可能である可変ドメイン配列のための番号表記システムを定義した。当業者は、「Kabat番号表記」のこのシステムを、配列そのものを超える実験的データに何ら頼ることなく、どのような可変ドメイン配列に対してでも一義的に割り当てることができる。本明細書中で使用される場合、「Kabat番号表記」は、Kabat他、U.S.Dept.of Health and Human Services、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」(1983)によって示される番号表記システムを示す。別途指定される場合を除き、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体における具体的なアミノ酸残基位置の番号表記に対する言及は、Kabat番号表記システムに従っており、しかしながら、Kabat番号表記システムは理論的であり、本発明のどの抗体にも等しく適用されない場合がある。例えば、最初のCDRの位置に依存して、その後のCDRはどちらかの方向でずれる場合がある。
本発明の特に好ましい態様として、ヒト由来モノクローナル抗体ならびにその結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体が言及されない限り、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、免疫特異性フラグメント、変異体又は誘導体には、ポリクローナル性、モノクローナル性、多特異性、ヒト型、ヒト化型、霊長類化型、マウス化型又はキメラ型の抗体、単鎖抗体、エピトープ結合性フラグメント(例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2)、Fd、Fv、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、VLドメイン又はVHドメインのどちらかを含むフラグメント、Fab発現ライブラリーによって作製されるフラグメント、ならびに、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本明細書中に開示される抗体に対する抗Id抗体を含む)が含まれるが、これらに限定されない。scFV分子がこの技術分野では知られており、例えば、米国特許第5,892,019号に記載される。本発明の免疫グロブリン分子又は抗体分子は、免疫グロブリン分子のどのようなタイプのものも(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、どのようなクラスのものも(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はどのようなサブクラスのものも可能である。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、五価構造を有するIgM又はその誘導体ではない。特に、本発明の具体的な適用において、とりわけ治療的使用において、IgMはIgG及び他の二価抗体又は対応する結合性分子よりも有用でない。これは、IgMは、その五価構造のために、また、親和性成熟化の欠如のために、非特異的な交差反応性及び非常に低い親和性を示すことが多いからである。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体はポリクローナル抗体でない。すなわち、本発明の抗体は、血漿の免疫グロブリンサンプルから得られる混合物ではなく、むしろ、1つの特定の抗体種から実質的になる。
単鎖抗体を含めて、抗体フラグメントは、可変領域(1つ又は複数)を単独で、あるいは、下記の全体又は一部分との組合せで含む場合がある:ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメイン。また、本発明には、可変領域(1つ又は複数)と、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインとのどのような組合せをも含むHTT結合性フラグメントが含まれる。本発明の抗体又はその免疫特異性フラグメントは、鳥類及び哺乳動物を含めて、どのような動物起源に由来してもよい。好ましくは、抗体は、ヒト、マウス、ロバ、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、ラマ、ウマ又はニワトリの抗体である。別の実施形態において、可変領域が起源において(例えば、サメからの)コンドリクトイド(condricthoid)である場合がある。
1つの態様において、本発明の抗体は、ヒトから単離されるヒトモノクローナル抗体である。ここで、前記抗体を発現するB細胞はヒトから単離され、次いで前記抗体又は、好ましくは可変ドメインをコードするcDNA(場合により、同起源の定常ドメインをコードするcDNAについても)が単離される。場合により、ヒト抗体のフレームワーク領域がデータベースにおける該当するヒト生殖系列可変領域配列に従ってアライメントされ、それらと一致させられる;例えば、MRC Centre for Protein Engineering(Cambridge、英国)によって提供されるVbase(http://vbase.mrc−cpe.cam.ac.uk/)(http://vbase2.org/)を参照のこと。例えば、真の生殖系列配列から潜在的に逸脱すると見なされるアミノ酸は、クローニング過程の期間中に組み込まれるPCRプライマー配列に起因し得ると思われる。人為的に作製されたヒト様抗体、例えば、ファージディスプレーされた抗体ライブラリー又は異種マウスに由来する単鎖抗体フラグメント(scFV)などと比較した場合、本発明のヒトモノクローナル抗体は、(i)代理動物の免疫応答ではなく、ヒトの免疫応答を使用して得られること、すなわち、抗体が、ヒト体内におけるその関連する立体配座における天然のHTTに対する応答で作製されていること、(ii)個体を保護しているか、あるいは、HTTの存在について少なくとも有意であること、そして、(iii)抗体がヒト起源であるので、自己抗原に対する交差反応性の危険性が最小限に抑えられることによって特徴づけられる。したがって、本発明によれば、用語「ヒトモノクローナル抗体」、「ヒトモノクローナル自己抗体」及び「ヒト抗体」などは、ヒト起源である、すなわち、ヒト細胞(例えば、B細胞又はそのハイブリドーマなど)から単離されているか、あるいは、cDNAがヒト細胞(例えば、ヒトメモリーB細胞)のmRNAから直接クローン化されているHTT結合性分子を示すために使用される。ヒト抗体は、アミノ酸置換が、例えば、結合特性を改善するために、当該抗体においてたとえ行われるにしても、依然として「ヒト」である。この点において、ヒト化抗体あるいはヒト様抗体と異なり(上記の説明も参照のこと)、本発明のヒト由来抗体はヒト体内でみられるCDR(s)を含むことによって特徴付けられ、それ故に免疫原性であるリスクを実質的に有しない。従って、本発明の抗体は、可変軽鎖及び重鎖の片方又は両方の少なくとも1つ、好ましくは2つ、最も好ましくは3つ全てのCDRが、ここで説明されるヒト抗体由来であれば、依然としてヒト由来であるとされる。
1つの実施形態において、本発明のヒト由来抗体は、天然の存在する抗体と比較して異種の領域を含み、例えば、フレームワーク領域におけるアミノ酸置換、可変領域に外因的に融合される定常領域、及び、C末端又はN末端における異なるアミノ酸などを含む。
ヒト免疫グロブリンライブラリーに由来する抗体、あるいは、1つ又は複数のヒト免疫グロブリンについて遺伝子組換えであり、かつ、内因性免疫グロブリンを発現しない動物に由来する抗体(下記において、また、例えば、米国特許第5,939,598号(Kucherlapati他)に記載されるような抗体)は、本発明の真のヒト抗体から区別するためにヒト様抗体として示される。
例えば、ヒト様抗体の重鎖及び軽鎖の対形成、例えば、ファージディスプレーから典型的には単離される合成抗体及び半合成抗体などは、その対形成が元々のヒトB細胞において生じていたような元の対形成を必ずしも反映していない。したがって、先行技術において一般に使用されるような組換え発現ライブラリーから得られるFabフラグメント及びscFvフラグメントは、免疫原性及び安定性に対するすべての可能な関連した影響に関して人為的であると見なされる。
対照的には、本発明は、その治療的有用性及びヒトにおけるその寛容性によって特徴づけられる、選択されたヒト対象から得られる単離された親和性成熟している抗体を提供する。
本明細書中で使用される場合、用語「齧歯類化(された)抗体」又は「齧歯類化(された)免疫グロブリン」は、本発明のヒト抗体に由来する1つ又は複数のCDRと、齧歯類抗体配列に基づくアミノ酸の置換及び/又は欠失及び/又は挿入を含有するヒトフレームワーク領域とを含む抗体を示す。齧歯類を示すとき、好ましくは、マウス及びラットに起源を有する配列が使用され、この場合、そのような配列を含む抗体は、「マウス化された」又は「ラット化された」としてそれぞれ示される。CDRを提供するヒト免疫グロブリンは「親」又は「アクセプター」と呼ばれ、フレームワークの変化を提供する齧歯類抗体は「ドナー」と呼ばれる。定常領域は存在している必要はないが、定常領域が存在するならば、定常領域は通常、齧歯類抗体の定常領域と実質的に同一であり、すなわち、少なくとも約85%〜90%が同一であり、好ましくは約95%以上が同一である。したがって、いくつかの実施形態において、全長のマウス化されたヒト重鎖免疫グロブリン又は軽鎖免疫グロブリンは、マウスの定常領域、ヒトのCDR、及び、いくつかの「マウス化する」アミノ酸置換を有する実質的にはヒトのフレームワークを含有する。典型的には、「マウス化抗体」は、マウス化された可変軽鎖及び/又はマウス化された可変重鎖を含む抗体である。例えば、マウス化抗体は、例えば、キメラ抗体の可変領域全体が非マウス性であるので、典型的なキメラ抗体を包含しないであろう。「マウス化」のプロセスによって「マウス化」されている改変された抗体は、CDRを提供する親抗体と同じ抗原に結合し、かつ、通常の場合、マウスにおける免疫原性が、親抗体と比較してより低い。「マウス化」抗体に関しての上記説明は、他の「齧歯類化」抗体について、例えば、ラットの配列がマウスの代わりに使用される「ラット化抗体」などについて同様に当てはまる。
本明細書中で使用される場合、用語「重鎖部分」には、免疫グロブリン重鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。重鎖部分を含むポリペプチドは、CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央及び/又は下部のヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメインあるいはそれらの変異体又はフラグメントのうちの少なくとも1つを含む。例えば、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH1ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、及び、CH2ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン及びCH3ドメインを含むポリペプチド鎖;CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、及び、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖;又は、CH1ドメイン、ヒンジドメインの少なくとも一部分、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む場合がある。別の実施形態において、本発明のポリペプチドは、CH3ドメインを含むポリペプチド鎖を含む。さらに、本発明において使用されるための結合性ポリペプチドは、CH2ドメインの少なくとも一部分(例えば、CH2ドメインのすべて又は一部)を欠く場合がある。上記で示されるように、これらのドメイン(例えば、重鎖部分)は、天然に存在する免疫グロブリン分子からアミノ酸配列において異なるように改変され得ることが、当業者によって理解されるであろう。
本明細書中に開示されるある特定の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体において、マルチマーの1つのポリペプチド鎖の重鎖部分が、当該マルチマーの第2のポリペプチド鎖における重鎖部分と同一である。代替では、本発明の重鎖部分を含有するモノマーは同一でない。例えば、それぞれのモノマーが、異なる標的結合部位を含む場合があり、これにより、例えば、二重特異性抗体又はディアボディを形成する。
本明細書中で使用される場合、用語「二重特異性(の)」抗体分子又は用語「二機能性(の)」抗体分子は、2つの異なるエピトープ/抗原結合部位を有する抗体分子であり、そのため、2つの異なる標的エピトープについての結合特異性を有する。これら2つのエピトープは、同じ抗原のエピトープであってもよく、又は、異なる抗原のエピトープであってもよい。それらとは対照的に、「二価抗体」は、同一の抗原特異性の結合部位を有する場合がある。二重特異性抗体を作製する様々な方法がこの技術分野では知られている;例えば、実施例36において例示されるような2つの異なるモノクローナル抗体を化学的に結合すること、又は、例えば、同様に、2つの抗体フラグメントを化学的に結合すること、例えば、2つのFabフラグメントを化学的に結合すること(Brennan他、Science 229(1985)、81〜83;Nitta他、Eur.J.Immunol.19(1989)、1437〜1441;Glennie他、J.Immunol.139(1987)、2367〜2375;Jung他、Eur.J.Immunol.21(1991)、2431〜2435)。代替において、二重特異性抗体が組換えにより作製される(Gruber他、J.Immunol.152(1994)、5368〜5374;Kurucz他、J.Immunol.154(1995)、4576〜4582;Mallender及びVoss、J.Biol.Chem.269(1994)、199〜206)。従来、二重特異性抗体の組換え製造は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対を共発現させることに基づいており、この場合、2つの重鎖は結合特異性が異なる。重鎖及び軽鎖がランダムに組み合わされるために、10種の異なる抗体構造の潜在的な混合物がもたらされ、しかし、それらのうちの1つのみが所望の結合特異性を有するだけである(Milstein及びCuello、Nature 305(1983)、537〜540;Lanzavecchia及びScheidegger、Eur.J.Immunol.17(1987)、105〜111)。代替となる取り組みでは、所望の結合特異性を有する可変ドメインを、ヒンジ領域、CH2領域及びCH3領域の少なくとも一部を含む重鎖定常領域に融合することが伴う。1つの実施形態において、軽鎖結合のために必要である部位を含有するCH1領域が融合体の少なくとも1つに存在する。これらの融合体をコードするDNA、及び、所望されるならば、軽鎖が、別個の発現ベクターに挿入され、その後、好適な宿主生物に共トランスフェクションされる。だが、2つ又は3つすべての鎖のためのコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
別の実施形態において、本明細書中に開示される抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、ただ1つのポリペプチド鎖から構成され(例えば、scFv)、潜在的なインビボ治療適用及び診断適用のために細胞内で発現させられることになる(細胞内抗体)。
本明細書中に開示される診断方法及び処置方法において使用されるための結合性ポリペプチドの重鎖部分が、異なる免疫グロブリン分子に由来してもよい。例えば、ポリペプチドの重鎖部分が、IgG1分子に由来するCH1ドメインと、IgG3分子に由来するヒンジ領域とを含む場合がある。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG3分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。別の例において、重鎖部分は、一部がIgG1分子に由来し、かつ、一部がIgG4分子に由来するキメラなヒンジを含むことができる。
本明細書中で使用される場合、用語「軽鎖部分」には、免疫グロブリン軽鎖に由来するアミノ酸配列が含まれる。好ましくは、軽鎖部分はVLドメイン又はCLドメインの少なくとも一方を含む。
抗体のためのペプチド又はポリペプチドのエピトープの最小サイズは約4個〜5個のアミノ酸であると考えられる。ペプチド又はポリペプチドのエピトープは好ましくは、少なくとも7個、より好ましくは少なくとも9個、最も好ましくは少なくとも約15個〜約30個のアミノ酸を含有する。CDRが抗原性のペプチド又はポリペプチドをその三次形態で認識できるので、エピトープを構成するアミノ酸は連続している必要はなく、場合によっては、同じペプチド鎖に存在していなくてもよい。本発明において、本発明の抗体によって認識されるペプチド又はポリペプチドのエピトープは、HTT、特にエクソン1のN末端、ポリP領域、Pリッチ領域又はC末端領域、の少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、より好ましくは少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、又は、約15個〜約30個の連続するアミノ酸又は非連続なアミノ酸の配列を含有する。
「特異的に結合する」又は「特異的に認識する」によって、これらは本明細書中では交換可能に使用されており、結合性分子、例えば、抗体が、その抗原結合ドメインを介してエピトープに結合すること、及び、この結合は、抗原結合ドメインとエピトープとの間における何らかの相補性を伴うことが一般に意味される。この定義によれば、抗体は、抗体がランダムな無関係なエピトープに結合するであろうよりも容易にその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合するとき、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。用語「特異性」は、ある特定の抗体がある特定のエピトープに結合する相対的な親和性を限定するために本明細書中では使用される。例えば、抗体「A」は、所与のエピトープについて、抗体「B」よりも大きい親和性を有すると見なされる場合があり、又は、抗体「A」は、関連したエピトープ「D」について有するよりも大きい特異性によりエピトープ「C」に結合すると言われる場合がある。
存在する場合、抗原との抗体の用語「免疫学的結合特性」又は他の結合特性はその文法的形態のすべてで、抗体の特異性、親和性、交差反応性及び他の結合特性を示す。
「優先的に結合する」によって、結合性分子、例えば、抗体が、関連したエピトープ、類似したエピトープ、相同的なエピトープ又は類似的なエピトープに結合するであろうよりも容易にエピトープに特異的に結合することが意味される。したがって、所与のエピトープに「優先的に結合する」抗体は、そのような抗体が関連のエピトープと交差反応することがあるとしても、関連のエピトープよりもそのエピトープに結合する可能性が大きいであろう。
非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも小さい解離定数(KD)により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1の抗原と優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のKDよりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
別の非限定的な例として、結合性分子、例えば、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも小さいオフ速度(k(off))により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも1桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。別の非限定的な例において、抗体は、この抗体が第2のエピトープについての抗体のk(off)よりも少なくとも2桁小さい親和性により第1のエピトープと結合するならば、この第1のエピトープと優先的に結合すると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、5×10−2sec−1以下、10−2sec−1以下、5×10−3sec−1以下又は10−3sec−1以下であるオフ速度(k(off))によりHTTあるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、5×10−4sec−1以下、10−4sec−1以下、5×10−5sec−1以下又は10−5sec−1以下、5×10−6sec−1以下、10−6sec−1以下、5×10−7sec−1以下又は10−7sec−1以下であるオフ速度(k(off))によりHTTあるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。
結合性分子、例えば、本明細書中に開示される抗体あるいは抗原結合フラグメント、変異体又は誘導体は、103M−1sec−1以上、5×103M−1sec−1以上、104M−1sec−1以上又は5×104M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりHTTあるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。より好ましくは、本発明の抗体は、105M−1sec−1以上、5×105M−1sec−1以上、106M−1sec−1以上又は5x106M−1sec−1以上又は107M−1sec−1以上であるオン速度(k(on))によりHTTあるいはそのフラグメント、変異体又は特異的な立体配座と結合すると言われる場合がある。
結合性分子、例えば、抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合をある程度阻止する程度にそのエピトープに優先的に結合するならば、そのエピトープに対する参照抗体の結合を競合的に阻害すると言われる。競合的阻害が、この技術分野において知られているいずれかの方法によって、例えば、競合的ELISAアッセイによって求められてもよい。抗体は、所与のエピトープに対する参照抗体の結合を、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%又は少なくとも50%競合的に阻害すると言われる場合がある。
本明細書中で使用される場合、用語「親和性」は、結合性分子(例えば、免疫グロブリン分子)のCDRとの個々のエピトープの結合の強さの尺度を示す(例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988)、27頁〜28頁を参照のこと)。本明細書中で使用される場合、用語「アビディティー」は、免疫グロブリンの集合と抗原との複合体の全般的な安定性、すなわち、抗原との免疫グロブリン混合物の機能的結合強度を示す(例えば、Harlow、29頁〜34頁を参照のこと)。アビディティーは、特異的なエピトープとの集団内の個々の免疫グロブリン分子の親和性に、及びまた、免疫グロブリン及び抗原の結合価の両方に関連づけられる。例えば、二価のモノクローナル抗体と、高度に反復するエピトープ構造を有する抗原(例えば、ポリマーなど)との間における相互作用が、高いアビディティーの1つであろう。抗原についての抗体の親和性又はアビディティーを、いずれかの好適な方法(例えば、Berzofsky他、「Antibody−Antigen Interactions」、Fundamental Immunology、Paul,W.E.編、Raven Press New York、NY(1984);Kuby,Janis Immunology、W.H.Freeman and Company、New York、NY(1992)を参照のこと)及び本明細書中に記載される方法を使用して実験的に求めることができる。抗原についての抗体の親和性を測定するための一般的な技術には、ELISA、RIA及び表面プラズモン共鳴が含まれる。特定の抗体−抗原相互作用の測定された親和性は、異なる条件(例えば、塩濃度、pH)のもとで測定されるならば異なる可能性がある。したがって、親和性及び他の抗原結合パラメーター(例えば、KD、IC50)の測定は好ましくは、抗体及び抗原の標準化された溶液ならびに標準化された緩衝液を用いて行われる。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体はまた、それらの交差反応性に関して記載又は指定される場合がある。本明細書中で使用される場合、用語「交差反応性」は、抗体(これは1つの抗原について特異的である)が第2の抗原と反応する能力、すなわち、2つの異なる抗原性物質の間における関連度の度合いを示す。したがって、抗体は、その形成を誘導したエピトープとは異なるエピトープに結合するならば、交差反応性である。交差反応性エピトープは一般に、誘導用エピトープと同じ相補的な構造的特徴の多くを含有しており、また、場合により、実際には元のエピトープよりも良好にはまる場合がある。
例えば、ある種の抗体は、関連しているが、同一でないエピトープと結合するという点で、例えば、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法及び本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも85%、少なくとも80%、少なくとも75%、少なくとも70%、少なくとも65%、少なくとも60%、少なくとも55%及び少なくとも50%の同一性を有するエピトープと結合するという点で、ある程度の交差反応性を有する。抗体は、参照エピトープに対して(この技術分野で知られている方法及び本明細書中に記載される方法を使用して計算されるように)95%未満、90%未満、85%未満、80%未満、75%未満、70%未満、65%未満、60%未満、55%未満及び50%未満の同一性を有するエピトープと結合しないならば、交差反応性をほとんど有していないか、又は全く有していないと言われる場合がある。抗体は、ある特定のエピトープのどのような他のアナログ、オルソログ又はホモログとも結合しないならば、そのエピトープについて「非常に特異的」であると見なされる場合がある。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体はまた、HTT及び/又は、変異した、ミスフォールドした、及び/又は凝集したHTT種及び/又はそのフラグメントに対するそれらの結合親和性に関して記載又は指定される場合がある。好ましい結合親和性には、解離定数つまりKdが5×10−2M未満、10−2M未満、5×10−3M未満、10−3M未満、5×10−4M未満、10−4M未満、5×10−5M未満、10−5M未満、5×10−6M未満、10−6M未満、5×10−7M未満、10−7M未満、5×10−8M未満、10−8M未満、5×10−9M未満、10−9M未満、5×10−10M未満、10−10M未満、5×10−11M未満、10−11M未満、5×10−12M未満、10−12M未満、5×10−13M未満、10−13M未満、5×10−14M未満、10−14M未満、5×10−15M未満又は10−15M未満である結合親和性が含まれる。
上記で示されたように、様々な免疫グロブリンクラスの定常領域のサブユニット構造及び三次元立体配置が広く知られている。本明細書中で使用される場合、用語「VHドメイン」には、免疫グロブリン重鎖のアミノ末端可変ドメインが含まれ、用語「CH1ドメイン」には、免疫グロブリン重鎖の第1の(最もアミノ末端側の)定常領域ドメインが含まれる。CH1ドメインはVHドメインに隣接しており、免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端側である。
本明細書中で使用される場合、用語「CH2ドメイン」には、従来の番号表記スキームを使用して、例えば、抗体のおよそ残基244から残基360にまで広がる重鎖分子の一部分が含まれる(残基244〜残基360、Kabat番号表記システム;残基231〜残基340、EU番号表記システム;Kabat EA他(前掲書中)を参照のこと)。CH2ドメインは、別のドメインと密に対形成しないという点で独特である。むしろ、2つのN−連結している分岐した炭水化物鎖が、無傷の生来型IgG分子の2つのCH2ドメインの間に置かれる。CH3ドメインがIgG分子のCH2ドメインからC末端にまで広がり、およそ108残基を含むこともまた広く記録されている。
本明細書中で使用される場合、用語「ヒンジ領域」には、CH1ドメインをCH2ドメインにつなぐ重鎖分子の一部分が含まれる。このヒンジ領域はおよそ25残基を含み、かつ、柔軟であり、したがって、2つのN末端の抗原結合領域が独立して動くことを可能にする。ヒンジ領域は3つの異なったドメイン(上部、中央及び下部のヒンジドメイン)に細分化することができる(Roux他、J.Immunol.161(1998)、4083〜4090を参照のこと)。
本明細書中で使用される場合、用語「ジスルフィド結合」には、2つのイオウ原子の間に形成される共有結合性の結合が含まれる。アミノ酸のシステインは、ジスルフィド結合を形成することができるか、又は、第2のチオール基と架橋することができるチオール基を含む。ほとんどの天然に存在するIgG分子において、CH1領域及びCL領域がジスルフィド結合によって連結され、2つの重鎖が、Kabat番号表記システムを使用して239位及び242位(226位又は229位、EU番号表記システム)に対応する位置での2つのスルフィド結合によって連結される。
本明細書中で使用される場合、用語「連結される」、「融合される」又は「融合」は交換可能に使用される。これらの用語は、化学的コンジュゲート化又は組換え手段を含むどのような手段によってでも、2つ以上の要素又は成分を一緒につなぐことを示す。「インフレーム融合」は、2つ以上のポリヌクレオチド・オープンリーディングフレーム(ORF)を、これらの元々のORFの正しい翻訳読み枠を維持する様式で、連続したより長いORFを形成するためにつなぐことを示す。したがって、組換え融合タンパク質は、元のORFによってコードされるポリペプチドに対応する2つ以上のセグメントを含有する単一タンパク質である(そのようなセグメントは通常、自然界ではそのようにつながれない)。したがって、読み枠が、融合されたセグメントの全体にわたって連続にされるにもかかわらず、これらのセグメントは、例えば、インフレームリンカー配列によって物理的又は空間的に隔てられる場合がある。例えば、免疫グロブリン可変領域のCDRをコードするポリヌクレオチドが、インフレーム融合される場合があり、しかし、「融合された」CDRが、連続したポリペプチドの一部として共翻訳される限り、少なくとも1つの免疫グロブリンフレームワーク領域又はさらなるCDR領域をコードするポリヌクレオチドによって隔てられる場合がある。
用語「発現」は、本明細書中で使用される場合、遺伝子が生化学物質(例えば、RNA又はポリペプチド)をもたらすプロセスを示す。このプロセスには、限定されないが、遺伝子ノックダウンならびに一過性発現及び安定的発現の両方を含めて、細胞内における遺伝子の機能的な存在のどのような顕在化も含まれる。このプロセスには、限定されないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、小さいヘアピンRNA(shRNA)、小さい干渉性RNA(siRNA)又は何らかの他のRNA産物への遺伝子の転写、及び、ポリペプチドへのmRNAの翻訳が含まれる。最終的な所望される産物が生化学物質であるならば、発現には、そのような生化学物質及び何らかの前駆体を生じさせることが含まれる。遺伝子の発現により、「遺伝子産物」がもたらされる。本明細書中で使用される場合、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写によって産生されるメッセンジャーRNA、又は、転写物から翻訳されるポリペプチドのどちらもが可能である。本明細書中に記載される遺伝子産物にはさらに、転写後修飾(例えば、ポリアデニル化)を伴う核酸、又は、翻訳後修飾(例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、及び、タンパク質分解的切断など)を伴うポリペプチドが含まれる。
本明細書中で使用される場合、用語「サンプル」は、対象又は患者から得られる任意の生物学的材料を示す。1つの態様において、サンプルは、血液、腹腔液、CSF、唾液又は尿を含むことができる。別の態様において、サンプルは、全血、血漿、血清、血液サンプルから富化されるB細胞、及び、培養された細胞(例えば、対象からのB細胞)を含むことができる。サンプルにはまた、神経組織を含む生検サンプル又は組織サンプルが含まれ得る。さらに他の態様において、サンプルは、細胞全体及び/又は細胞の溶解物を含むことができる。血液サンプルをこの技術分野において知られている方法によって集めることができる。1つの態様において、ペレットを、200μlの緩衝液(20mMのTris(pH.7.5)、0.5%のNonidet、1mMのEDTA、1mMのPMSF、0.1MのNaCl、IXのSigmaプロテアーゼ阻害剤、ならびに、IXのSigmaホスファターゼ阻害剤1及び2)において4℃でボルテックス処理することによって再懸濁することができる。懸濁物は、断続的なボルテックス処理を行いながら20分間、氷上に保つことができる。15,000×gにおいて5分間、約4℃で遠心分離した後、上清のアリコートを約−70℃で貯蔵することができる。
疾患:
別途言及される場合を除き、用語「障害」及び「疾患」は本明細書中では交換可能に使用され、対象、動物、単離された器官、組織又は細胞/細胞培養物における望まれない任意の生理学的変化を含む。
ハンチントン病(HD)は、ハンチンチン(HTT)遺伝子内のCAGトリヌクレオチド反復の伸長によって特徴づけられる常染色体優性かつ進行性の神経変性障害であり(ハンチントン病共同研究グループ、Cell 72(6)(1993)、971〜983)、この場合、この伸長の病原的な閾値がおよそ37回の反復であり、これに対して、この数未満のより少ない反復は病理発生をもたらさない;例えば、Trottier他、Nature 378(6555)(1995)、403〜406を参照のこと。CAGトリヌクレオチド反復の伸長により、ハンチンチンタンパク質(HTT)のアミノ末端における伸長したポリグルタミン(ポリGln、ポリQ)域が生じている(このことがHTTの凝集に関連する)。しかしながら、HTTの蓄積及びその関連した症状を引き起こす正確な機構は今までのところ解明されていない。
様々な研究により、ポリグルタミン(ポリQ)域の両方の隣接領域、すなわち、両親媒性のアルファ−らせん標的化ドメインからなるアミノ末端領域と、2つのプロリン域(ポリP領域)及びロイシン−プロリンリッチ域(Pリッチ領域)によって特徴づけられるカルボキシ末端領域とが、変異したHTTの毒性を媒介することにおいて非常に重要なようであることが示されている;例えば、Caron他、PNAS 110(2013)、14610〜14615を参照のこと。
HDの病理学的症状(例えば、運動亢進、運動低下、精神障害及び運動障害(情動障害及び衝動を含む)、運動持続性の欠如、無分別な行動及び衝動的な行動、あきらめ及びうつ病、視覚情報処理障害、皮質下認知症、認知能力の喪失、見当識障害及び会話の低下、妄想、腕、足、顔面、頭部及び体幹の不穏状態、舞踏病性運動亢進、構音障害、嚥下障害、構語障害、ジストニアなど)の一因となる機構は今までのところ解明されていない。可能性のある機構には、HTTの伸長したポリQ域に起因するヒンジ領域の低下した柔軟性、同様にまた、伸長したポリQ域に起因する種々のHTTフラグメントの形成を引き起こすプロテアーゼが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の抗体は、HDマウスモデルにおいて治療効果的であることが示されており(例えば、実施例24及び図17、同様にまた、実施例34及び図34を参照のこと)、加えて、HD患者から得られる組織切片においてHTTアミロイドに結合することができるので(例えば、実施例31及び図27〜図30を参照のこと)、本発明のヒト由来抗体及びその生物工学誘導体は、HD及び上記症状の処置及び診断の両方において有用である。したがって、本発明の1つの実施形態において、本発明の様々な抗体、これらの抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、HD(具体的にはHTTアミロイドーシスに伴う疾患及び/又は障害)の予防的処置及び/又は治療的処置のための医薬組成物又は診断組成物を調製するために、疾患の進行及び/又は処置応答をモニターするために、並びに、HTTアミロイドーシスに伴う疾患を診断するために使用される。
処置:
本明細書中で使用される場合、用語「処置する」又は「処置」は治療的処置及び予防的又は防止的な対策の両方を示し、この場合、その目的が、望まれない生理学的変化又は障害(例えば、糖尿病の発症など)を防止すること又は抑制すること(緩和すること)である。有益な臨床結果又は所望される臨床結果には、検出可能であるか、又は検出不能であるかにかかわりなく、症状の緩和、疾患の程度の減弱、疾患の安定化された(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は緩速化、疾患状態の改善又は緩和、及び、寛解(部分的又は全体的を問わず)が含まれるが、これに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合の予想された生存と比較して、生存を延ばすことを意味することができる。処置を必要としている人々には、状態又は障害を既に有する人々ならびに状態又は障害を有する傾向がある人々、あるいは、状態又は障害の発現が防止されなければならない人々が含まれる。
別途言及される場合を除き、用語「薬物」、「医薬」又は「医薬品」は本明細書中では交換可能に使用され、下記のすべてを包含するものとするが、それに限定されない:(A)体内使用又は体外使用のための物品、医薬及び調製物、ならびに、ヒト又は他の動物のどちらかの疾患の診断、治療、緩和、処置又は防止のために使用されることが意図されるあらゆる物質又は物質の混合物;ならびに、(B)ヒト又は他の動物の身体の構造又はどのような機能に対してでも影響を及ぼすことが意図される(食物以外)の物品、医薬及び調製物;ならびに(C)条項(A)及び条項(B)において指定されるあらゆる物品の成分としての使用のために意図される物品。用語「薬物」、「医薬」又は「医薬品」は、1つ又は複数の「薬剤」、「化合物」、「物質」又は「(化学的)組成物」をフィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして、また、何らかの他の関連では、他の医薬的に不活性な賦形剤もまた、フィラー、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、バインダーとして含有するか、あるいは、「薬物」、「医薬」又は「医薬品」の容易な輸送、崩壊、解離、溶解及び生物学的利用性を、ヒト又は他の動物の体内の意図された標的場所(例えば、皮膚、胃内又は腸内)において保証する、ヒト又は他の動物のどちらかでの使用のために意図される調製物の完全な処方を包含するものとする。用語「薬剤」、「化合物」又は「物質」は本明細書中では交換可能に使用され、より具体的な関連では、すべての薬理学的に活性な薬剤、すなわち、本発明の方法によって所望の生物学的又は薬理学的な効果を誘発するか、あるいは、そのような可能な薬理学的効果を誘発することができることについて研究又は試験される薬剤を包含するものとするが、これらに限定されない。
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」によって、診断、予後、防止又は治療が望まれるあらゆる対象、特に哺乳動物対象、例えば、ヒト患者が意味される。
医薬用キャリア:
医薬的に許容されるキャリア及び投与経路を、当業者に知られている対応する文献から選ぶことができる。本発明の医薬組成物は、この技術分野において広く知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0−683−306472);Vaccine Protocols、第2版(Robinson他、Humana Press、Totowa、New Jersey、米国、2003);Banga、Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems、第2版(Taylor and Francis(2006)、ISBN:0−8493−1630−8)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野では広く知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、広く知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与を種々の方式によって行うことができる。例には、医薬的に許容されるキャリアを含有する組成物を、経口方法、鼻腔内方法、直腸方法、局所的方法、腹腔内方法、静脈内方法、筋肉内方法、皮下方法、真皮下方法、経皮的方法、クモ膜下腔内方法及び頭蓋内方法を介して投与することが含まれる。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤及び等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液又は他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpH及び等張性状態に調節される。経口投与用の医薬組成物、例えば、単一ドメイン抗体分子(例えば、「ナノボディー(商標)」)などもまた、本発明において想定される。そのような経口配合物は、錠剤、カプセル、粉末、液体又は半固体の形態である場合がある。錠剤は、固体のキャリア、例えば、ゼラチン又はアジュバントなどを含む場合がある。直腸投与又は膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある(O’Hagan他、Nature Reviews,Drug Discovery 2(9)(2003)、727〜735もまた参照のこと)。様々なタイプの投与のために好適である配合物に関するさらなる指針を、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mace Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版(1985)及び対応する更新版)において見出すことができる。薬物送達のための方法の簡単な総説については、Langer、Science 249(1990)、1527〜1533を参照のこと。
II.本発明の抗体
本発明は一般には、ヒト由来抗HTT抗体及びHTT結合性フラグメントに関連し、この場合、これらは好ましくは、実施例において例示される抗体について概略されるような免疫学的結合特性及び/又は生物学的性質を明らかにする。本発明によれば、HTTについて特異的であるヒトモノクローナル抗体が、健康なヒト対象のプールのB細胞からクローン化された。しかしながら、本発明の別の態様では、ヒト抗HTTモノクローナル抗体はHTTアミロイドーシスに関連する疾患及び/又は障害の症状を示す患者からもクローン化され得る。
本発明に従って行われた実験の過程において、培養されたヒトメモリーB細胞の馴化培地に存在する様々な抗体が、HTTに対する、また、ウシ血清アルブミン(BSA)を含めて10を超える他のタンパク質に対するそれらの結合能について評価された。実施例8、13、18、31及び33を参照のこと。このスクリーニングにおいてHTTタンパク質に結合することができ、しかし、他のタンパク質のどれにも結合することができないB細胞上清のみが、抗体クラス及び軽鎖サブクラスの決定を含めて、さらなる分析のために選択された。選択されたB細胞はその後、抗体クローニングのために処理された。
簡単に記載すると、これは、選択されたB細胞からのメッセンジャーRNAの抽出、RT−PCRによる逆転写、PCRによる抗体コード領域の増幅、プラスミドベクターへのクローニング及び配列決定を行うことにある。選択されたヒト抗体がその後、HEK293細胞又はCHO細胞における組換え発現及び精製によって産生され、続いて、ヒトHTTタンパク質と結合するそれらの能力について特徴づけられた。様々な試験の組合せにより、例えば、HEK293細胞又はCHO細胞における抗体の組換え発現、そして、ヒトHTTタンパク質に対するそれらの結合特異性の引き続いた特徴づけ、ならびに、その病理学的に変異した形態、及び/又は凝集した形態に対するそれらの弁別的な結合により、HTTについて非常に特異的であり、かつ、HTTタンパク質の病理学的に凝集した形態を弁別的に認識し、それらと選択的に結合するヒト抗体が今回初めてクローン化されたことが確認された。場合により、マウスキメラ抗体もまた、本発明のヒト抗体の可変ドメインに基づいて作製された。
したがって、本発明は一般には、組換えのヒト由来モノクローナル抗HTT抗体ならびにHTT結合性フラグメント、合成及び生物工学誘導体及び変異体に関連する。本発明の1つの実施形態において、抗体はヒトHTTと結合することができる。
本発明の1つの実施形態において、抗体はHTTの下記のエピトープと特異的に結合する:アミノ酸配列PPPPPPPPを含むポリP領域内のエピトープ(NI−302.33C11;NI−302.44D7;NI−302.7A8;NI−302.3D8;NI−302.46C9)(配列番号139、配列番号151、配列番号154、配列番号158、配列番号161)、アミノ酸配列PPPPPPを含むポリP領域内のエピトープ(NI−302.11H6、NI−302.18A1、NI−302.52C9)(配列番号157、配列番号159、配列番号160)、アミノ酸配列PPPPPPPPPPPを含むポリP領域内のエピトープ(NI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.37C12、NI−302.55D8、NI−302.78H12、NI−302.71F6)(配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号155、配列番号156)、アミノ酸配列PQPPPQAQPLを含むPリッチ領域内のエピトープ(NI−302.63F3、配列番号140;NI−302.64E5、配列番号200)、アミノ酸配列PPPQLPQPPPを含むPリッチ領域内のエピトープ(NI−302.31F11、配列番号141)、アミノ酸配列QAQPLLPQPQPPPPPを含むPリッチ領域内のエピトープ(NI−302.2A2、配列番号142)、又は、アミノ酸配列PPPQLPQPPPQAQPLを含むPリッチ領域内のエピトープ(NI302.15D3、配列番号143)、アミノ酸配列PPGPAVAEEPLHRPを含むC末端領域内のエピトープ(NI−302.35C1、配列番号145)、又は、アミノ酸配列PPPGPAVAEEPLHを含むC末端領域内のエピトープ(NI−302.72F10、配列番号202)、アミノ酸配列KAFESLKSFQを含むN末端領域内のエピトープ(NI−NI−302.15E8、配列番号144)、又は、アミノ酸配列QQQQQQQQQPPPを含むP/Qリッチ領域内のエピトープ(NI−302.7D8、配列番号201)、或いは、立体配座エピトープ。
別の実施形態において、本発明は、下記のような抗HTT抗体、或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は生物工学誘導体に関し、この場合、抗体は、NI−302.33C11、NI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.44D7、NI−302.37C12、NI−302.55D8、NI−302.7A8、302.78H12、NI−302.71F6、NI−302.11H6、NI−302.3D8、NI−302.18A1、NI−302.8F1、NI−302.52C9、NI−302.46C9からなる群から選択される参照抗体と同じHTTのポリP領域内のエピトープに特異的に結合する。エピトープマッピングでは、アミノ酸PPPPPPPPPPP(配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号155、配列番号156)を含むヒトHTTのポリP領域内部の配列が、本発明の抗体であるNI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.37C12、NI−302.55D8、NI−302.78H12、NI−302.71F6によって認識される特有の線状エピトープとして特定された。加えて、エピトープマッピングでは、アミノ酸PPPPPPPP(配列番号139、配列番号151、配列番号154、配列番号158、配列番号161)を含むヒトHTTのポリP領域内部の配列が、本発明の抗体であるNI−302.33C11、NI−302.44D7、NI−302.7A8、NI−302.3D8、NI−302.46C9によって認識される特有の線状エピトープとして特定され、アミノ酸PPPPPP(配列番号157、配列番号159、配列番号160)を含むヒトHTTのポリP領域内部の配列が、本発明の抗体であるNI−302.11H6、NI−302.18A1、NI−302.52C9によって認識される特有の線状エピトープとして特定された。したがって、1つの実施形態において、HTTのポリP領域におけるエピトープで、アミノ酸配列PPPPPPPPPPP(配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号155、配列番号156)を含むエピトープ、アミノ酸配列PPPPPPPP(配列番号139、配列番号151、配列番号154、配列番号158、配列番号161)を含むエピトープ、又は、アミノ酸配列PPPPPP(配列番号157、配列番号159、配列番号160)を含むエピトープに特異的に結合する本発明の抗体が提供される。
1つの実施形態において、本発明は、下記のような抗HTT抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は生物工学誘導体に関し、この場合、抗体は、NI−302.63F3、NI−302.31F11、NI−302.2A2及びNI−302.15D3からなる群から選択される参照抗体と同じHTTのPリッチ領域内のエピトープに特異的に結合する。エピトープマッピングでは、アミノ酸PQPPPQAQPL(配列番号140)を含むヒトHTTのPリッチ領域内の配列が、本発明の抗体NI−302.63F3によって認識される特有な線状エピトープとして特定され、アミノ酸PPPQLPQPPP(配列番号141)を含むヒトHTTのPリッチ領域内の配列が、本発明の抗体NI−302.31F11によって認識される特有な線状エピトープとして特定され、アミノ酸PPPQLPQPPP(配列番号141)を含むヒトHTTのPリッチ領域内の配列が、本発明の抗体NI−302.31F11によって認識される特有な線状エピトープとして特定され、アミノ酸QAQPLLPQPQPPPPP(配列番号142)を含むヒトHTTのPリッチ領域内の配列が、本発明の抗体NI−302.2A2によって認識される特有な線状エピトープとして特定され、アミノ酸PPPQLPQPPPQAQPL(配列番号143)を含むヒトHTTのPリッチ領域内の配列が、本発明の抗体NI302.15D3によって認識される特有な線状エピトープとして特定され、アミノ酸PQPPPQAQPLを含むヒトHTTのPリッチ領域内の配列が、本発明の抗体NI302.64E5によって認識される特有な線状エピトープとして特定された。したがって、1つの実施形態において、HTTのPリッチ領域におけるエピトープで、アミノ酸配列PQPPPQAQPL(配列番号140)を含むエピトープ、アミノ酸配列PPPQLPQPPP(配列番号141)を含むエピトープ、アミノ酸配列QAQPLLPQPQPPPPP(配列番号142)を含むエピトープ、アミノ酸配列PPPQLPQPPPQAQPL(配列番号143)を含むエピトープに特異的に結合する本発明の抗体が提供される。
別の実施形態において、本発明は、下記のような抗HTT抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は生物工学誘導体に関し、この場合、抗体は、参照抗体NI−302.7D8と同じHTTのポリQ/ポリP領域内のエピトープに特異的に結合する。エピトープマッピングでは、アミノ酸QQQQQQQPPP(配列番号201)を含むヒトHTTのQ/Pリッチ領域内部の配列が、本発明の抗体NI−302.7D8によって認識される特有な線状エピトープとして特定された。したがって、1つの実施形態において、HTTのポリQ/ポリP領域におけるエピトープで、アミノ酸配列QQQQQQQPPP(配列番号201)を含むエピトープに特異的に結合する本発明の抗体が提供される。
1つの実施形態において、本発明は、下記のような抗HTT抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は生物工学誘導体に関し、この場合、抗体は、NI−302.35C1からなる群から選択される参照抗体と同じHTTのC末端領域内のエピトープに特異的に結合する。エピトープマッピングでは、アミノ酸PPGPAVAEEPLHRP(配列番号145)を含むヒトHTTのC末端領域内部の配列が、本発明の抗体NI−302.35C1によって認識される特有な線状エピトープとして特定された。したがって、1つの実施形態において、HTTのC末端領域におけるエピトープで、アミノ酸配列PPGPAVAEEPLHRP(配列番号145)を含むエピトープに特異的に結合する本発明の抗体が提供される。
さらなる実施形態において、本発明は、下記のような抗HTT抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は生物工学誘導体に関し、この場合、抗体は、参照抗体NI−302.72F10と同じHTTのC末端領域内のエピトープに特異的に結合する。エピトープマッピングでは、アミノ酸PPPGPAVAEEPLH(配列番号202)を含むヒトHTTのC末端領域内部の配列が、本発明の抗体NI−302.72F10によって認識される特有な線状エピトープとして特定された。したがって、1つの実施形態において、HTTのC末端領域におけるエピトープで、アミノ酸配列PPPGPAVAEEPLH(配列番号202)を含むエピトープに特異的に結合する本発明の抗体が提供される。
別の実施形態において、本発明は、下記のような抗HTT抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は生物工学誘導体に関し、この場合、抗体は、参照抗体NI−302.15E8と同じHTTのN末端領域内のエピトープに特異的に結合する。エピトープマッピングでは、アミノ酸KAFESLKSFQ(配列番号144)を含むヒトHTTのN末端領域内部の配列が、本発明の抗体NI−302.15E8によって認識される特有な線状エピトープとして特定された。したがって、1つの実施形態において、HTTのN末端領域におけるエピトープで、アミノ酸配列KAFESLKSFQ(配列番号144)を含むエピトープに特異的に結合する本発明の抗体が提供される。
1つの実施形態において、本発明は、下記のような抗HTT抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は生物工学誘導体に関し、この場合、抗体は、HTTエクソン1の線状エピトープに結合するのではなく、21個又は49個のポリQを有する凝集したHTTエクソン1タンパク質(HD21及びHD49)に大きい親和性及びサブナノモル濃度範囲でのEC50値により結合することが示されているNI−302.6N9、NI−302.4A6、NI−302.12H2又はNI−302.8M1からなる群から選択される参照抗体と同じHTTエクソン1のエピトープに特異的に結合する;例えば、概略については実施例25及び図20を参照のこと。したがって、1つの好ましい実施形態において、本発明の抗体は、HTTの凝集した形態(具体的にはHTTエクソン1に由来するタンパク質凝集物)と、1nM未満のEC50値で、好ましくは0.1nM未満のEC50値で、最も好ましくは0.01nM未満のEC50値で特異的に結合する。
そのうえ、実施例において明らかにされるような、また、図に示されるような初期の実験観測結果によってとらわれることが意図されないが、本発明のヒトモノクローナル抗HTT抗体であるNI−302.33C11、NI−302.63F3、NI−302.35C1、NI−302.31F11、NI−302.6N9、NI−302.46C9、NI−302.8F1、NI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.44D7、NI−302.55D8、NI−302.7A8、NI−302.78H12、NI−302.71F6、NI−302.11H6、NI−302.3D8並びにNI.302−64E5及びNI.302−72F10は好ましくは、病理学的な変異したHTT及び/又は凝集したHTTに特異的に結合し、かつ、実質的により小さい親和性にではあるが、生理学的形態でのHTTを認識することにおいて特徴づけられる;例えば、実施例7、実施例13、実施例18、及び、図3、図7、図11、図21、図32を参照のこと。したがって、本発明は、診断目的及び治療目的のために特に有用である結合特性を有する一組のヒト抗HTT抗体を提供する。したがって、1つの実施形態において、本発明は、HTTの病理学的に凝集した形態と特異的に結合することができる抗体を提供する。しかしながら、加えて、又は代替において、HTTエクソン1のポリP領域又はPリッチ領域に結合することができる本発明の抗体はまた、他の用途で利用される場合がある。具体的には、これらの抗体はHTTに限定されるのではなく、ポリP域又はPリッチ領域もまた示す他の標的にも結合することができる。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、実施例で記載されるような例示的抗体のNI−302.33C11、NI−302.63F3、NI−302.35C1、NI.302−7D8及びNI.302−72F10の結合特性を示す。本発明の抗HTT抗体は、生理学的なHTTではなく、むしろ、病理学的に変化したHTT(例えば、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種並びにそれらのフラグメントなど)を優先的に認識する。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、生理学的なHTT種を実質的に認識しない。
用語「実質的に認識しない」は、抗体、そのフラグメント、あるいは、特定の標的分子、特定の抗原、ならびに/又は、前記標的分子及び/もしくは抗原の特定の立体配座についての結合性分子を含む一群の分子の結合親和性を記述するために本出願において使用されるときには、前述の群の分子が、別の分子、抗原及び/又は立体配座と結合することについての前述の群の分子の結合親和性の2分の1未満である、3分の1未満である、4分の1未満である、5分の1未満である、6分の1未満である、7分の1未満である、8分の1未満である、又は9分の1未満である結合親和性により、前記の分子、抗原及び/又は立体配座と結合することを意味する。非常に多くの場合、解離定数(KD)が、結合親和性の尺度として使用される。ときには、結合親和性の尺度として使用されるのが、例えば、ELISAアッセイのような特異的アッセイでのEC50である。好ましくは、用語「実質的に認識しない」は、本出願において使用されるときには、前述の群の分子が、別の分子、抗原及び/又は立体配座に対する結合についての前述の群の前記分子の結合親和性の10分の1未満である、20分の1未満である、50分の1未満である、100分の1未満である、1000分の1未満である、又は10000分の1未満である結合親和性により、前記の分子、抗原及び/又は立体配座と結合することを意味する。
上記で記載されるように、HDにおけるHTTの凝集は、HTTエクソン1の内部におけるポリグルタミン域の伸長に起因して生じることが示唆される。具体的には、HDが、HTTにおける長さで35個〜40個のグルタミン残基を越える閾値を有する患者において主に生じることが示されている。したがって、実施例3において示されるように、21回、35回または49回のポリQ反復を有するHTTエクソン1の凝集型構築物および可溶性構築物が、病理学的な変化したHTTに特異的に結合する本発明の抗HTT抗体の有用性を確認するために作製された。
下記で使用されるような用語HDXにより、実施例3に従って作製されたHTT構築物が表される。具体的には、Xはグルタミン反復(Q)の数を示す;例えば、21回のポリQ反復を有するHTTエクソン1タンパク質がHD21として示されることになる。
実施例で記載されるような構築物を利用して、本発明の抗HTT抗体はさらに、又は代わりに、病理学的に疾患原因となる形態及び/又は変異した形態及び/又は凝集した形態のヒトHTTに結合することが示され得るかもしれない。この関連において、結合親和性が、例示的抗体のNI−302.33C11、NI−302.63F3、NI−302.35C1、NI−302.31F11、NI−302.6N9、NI−302.46C9、NI−302.8F1、NI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.44D7、NI−302.55D8、NI−302.7A8、NI−302.78H12、NI−302.71F6、NI−302.11H6及びNI−302.3D8について、図3(A)、図7(A)、図11(A)、図14(A)、それぞれの図19、図20及び図31に示されるような範囲、すなわち、ヒト凝集型HD49−HTT及び凝集型組換えHD49−HTTについては最大半有効濃度(EC50)が約1pM〜250nMであり、好ましくはEC50が約25pM〜50nMであり、最も好ましくはEC50が約0.05nM〜30nMであり、又は、ヒト凝集型HD21−HTT及び凝集型組換えHD21−HTTについてはEC50が約0.05pM〜5nMである範囲にある場合がある。
具体的には、抗HTT抗体、その結合性フラグメント又は生物工学誘導体は、凝集したHD49−HTTと結合することについては20nM以下(好ましくは10nM以下、最も好ましくは1nM以下)のEC50値に対応する結合親和性、及び/又は、HD21 HTTと結合することについては40nM以下(好ましくは10nM以下、最も好ましくは1nM以下)のEC50値に対応する結合親和性を有する;図3、図7、図11、図19及び図31を参照のこと。
HDの発症に伴うHTT凝集が最も頻繁には、35回の反復を越えるポリグルタミン(ポリQ)域と関連している。本発明において示されるように、本明細書中に記載される抗HTT抗体は、より多くの反復を有するHD域に対する大きい結合効率を示した;例えば、実施例7、実施例13、実施例18、実施例31及び実施例33を参照のこと。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗HTT抗体、そのHTT結合性の分子、フラグメント、合成又は生物工学変異体は、伸長したポリグルタミン(Q)域を有するHTTに結合する。好ましい実施形態において、抗HTT抗体、そのHTT結合性の分子、フラグメント、合成又は生物工学変異体は、35回を越える反復を有するHTTに結合する。本発明の特に好ましい実施形態において、抗体は、49(HD49)反復からなる伸長したポリグルタミン(Q)域を有するHTTに対して、35回の反復(HD35)の場合よりも結合し、21回の反復(HD21)の場合よりも一層結合する。
しかしながら、本発明によれば、35(HD35)未満のポリグルタミン(ポリQ)域に結合する抗HTT抗体、そのHTT結合性の分子、フラグメント、合成又は生物工学変異体もまた記載される。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗体、その結合性の分子又は変異体は、「正常な」ポリQ域を示すHTTに結合する。具体的には、抗体は、35(HD35)未満のポリQ域を有するHTTに結合することができる。
いくつかの抗体は広範囲の数々の生体分子(例えば、タンパク質)に結合することができる。当業者は理解するであろうように、特異的(な)という用語は、HTTタンパク質又はそのフラグメントでない他の生体分子が抗原結合性分子(例えば、本発明の抗体の1つ)に有意に結合しないことを示すために本明細書中では使用される。好ましくは、HTT以外の生体分子に対する結合のレベルにより、HTTに対する親和性の最大でもほんの20%以下、10%以下、ほんの5%以下、ほんの2%以下、又は、ほんの1%以下(すなわち、5分の1未満、10分の1未満、20分の1未満、50分の1未満又は100分の1未満、或いは、それよりも小さいどのような程度でも)である結合親和性がそれぞれもたらされる;例えば、図20を参照のこと。
1つの実施形態において、本発明の抗HTT抗体は、HTT並びに/或いはそのフラグメント、誘導体、原線維及び/又はオリゴマーの凝集した形態に優先的に結合する。別の実施形態において、本発明の抗HTT抗体は、生来型HTTと、HTTの病理学的に変異した形態及び/又は凝集した形態との両方に優先的に結合する。
本発明のさらなる実施形態において、抗HTT抗体或いはそのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体は二重特異性抗体である。したがって、本発明の抗体は、同じ抗原における、又は異なる抗原における、そのどちらであって少なくとも2つの異なったエピトープを認識することができる場合がある(上掲もまた参照のこと)。
1つの実施形態において、二重特異性抗体の少なくとも1つの結合部位/ドメインはHTTの下記のエピトープを特異的に認識する:アミノ酸配列PPPPPPPPを含むポリP領域内のエピトープ(NI−302.33C11;NI−302.44D7;NI−302.7A8;NI−302.3D8;NI−302.46C9)(配列番号139、配列番号151、配列番号154、配列番号158、配列番号161)、アミノ酸配列PPPPPPを含むポリP領域内のエピトープ(NI−302.11H6、NI−302.18A1、NI−302.52C9)(配列番号157、配列番号159、配列番号160)、アミノ酸配列PPPPPPPPPPPを含むポリP領域内のエピトープ(NI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.37C12、NI−302.55D8、NI−302.78H12、NI−302.71F6)(配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号155、配列番号156)、アミノ酸配列PQPPPQAQPLを含むPリッチ領域内のエピトープ(NI−302.63F3、配列番号140;NI−302.64E5、配列番号200)、アミノ酸配列PPPQLPQPPPを含むPリッチ領域内のエピトープ(NI−302.31F11、配列番号141)、アミノ酸配列QAQPLLPQPQPPPPPを含むPリッチ領域内のエピトープ(NI−302.2A2、配列番号142)、又は、アミノ酸配列PPPQLPQPPPQAQPLを含むPリッチ領域内のエピトープ(NI302.15D3、配列番号143)、アミノ酸配列PPGPAVAEEPLHRPを含むC末端領域内のエピトープ(NI−302.35C1、配列番号145)、又は、アミノ酸配列PPPGPAVAEEPLHを含むC末端領域内のエピトープ(NI−302.72F10、配列番号202)、アミノ酸配列KAFESLKSFQを含むN末端領域内のエピトープ(NI−302.15E8、配列番号144)、アミノ酸配列QQQQQQQQQPPPを含むP/Qリッチ領域内のエピトープ(NI−302.7D8、配列番号201)、或いは、下記抗体のいずれか1つによって認識される立体配座エピトープ:NI−302.6N9、NI−302.4A6、NI−302.12H2又はNI−302.8M1。
前記で述べられたように、ニューロン核内封入体におけるポリグルタミン(ポリGln、ポリQ)含有HTTタンパク質凝集物の蓄積が、進行性の神経変性障害であるハンチントン病(HD)の主要な特徴である。これらの凝集物の電子顕微鏡写真により、アルツハイマー病におけるB−アミロイド原線維の場合のような密接に関連した形態学を示す原線維構造物が明らかにされた;例えば、Caughey他、Trends Cell Biol.7(1997)、56〜62、及び、Caputo他、Arch.Biochem.Biophys.292(1992)、199〜205を参照のこと。このことは、HD(HDでは、変性プロセスには主として、機能不全及びその後にはニューロンの喪失に至る中間の棘状線条体ニューロン及び皮質ニューロンが伴う)、興奮毒性に起因する組織損傷、ミトコンドリア損傷、フリーラジカル、そして、おそらくは同様に、ミクログリア活性化を含む炎症性機構、及び、さらには症状の進行的性質が、毒性アミロイド原線維形成の結果であることを示唆している。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、ハンチントン病(HD)及びその症状を処置するために有用である。
今までのところ、様々な細胞内発現された抗体(細胞内抗体)が、HTTの機能を乱すHDにおける治療ツールとして記載されており、また、HTTの機能を乱すHDにおける治療ツールであると見なされている;例えば、Ali他、Neurobiology of Huntington’s Disease:Applications to Drug Discovery、Lo他、第10章、CRC Press(2011)を参照のこと。これらの細胞内抗体は、HTTによって誘発される凝集及び細胞死に対する明確な効果を細胞に基づくアッセイにおいて示した(例えば、Khoshnan他、Proc Natl Acad Sci USA.99(2002)、1002〜1007を参照のこと)にもかかわらず、それらの治療的有用性における1つの不都合な点が投与経路である。具体的には、治療用の細胞内抗体を脳に送達するための好ましい方法は、ウイルスベクターに基づく遺伝子治療である。しかしながら、この種の投与を使用することの大きな不都合がとりわけ、宿主免疫原性が大きいことである。したがって、他の投与経路を利用する非ウイルス法が、治療的又は診断的な取り組みにおいて好ましくは使用される。本発明の抗体は、培養培地に加えたとき、すなわち、細胞外に加えたとき、樹状突起棘密度喪失を弱めることが示されている。したがって、前記で記載された細胞内抗体とは対照的に、本発明の抗体は、治療的に好ましい投与経路に従って有効であると予想することができる。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗体が、皮下注入(s.c.)、静脈内注入(i.v.)、筋肉内注入(i.m.)、腹腔内(i.p.)、クモ膜下腔内、ジェット式注入によって投与され、ただし、この場合、作用半径は当該抗体の細胞内発現に限定されない。
前記で既に述べられたように、また、実施例24及び図17において示されるように、本発明の抗体の治療的有用性が示されている。具体的には、本発明の抗HTT抗体は樹状突起棘密度喪失を弱めることができることが示されている。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗HTT抗体、そのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体は、棘密度喪失を弱めることをもたらす。
そのうえ、本発明の抗体の治療的有用性が実施例34及び図34において明らかにされている。具体的には、本発明の抗HTT抗体は、課題特異的訓練の期間中における行動回復を改善し、かつ、運動能力を高めることが示されている。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗HTT抗体、そのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体は、課題特異的訓練の期間中における行動成績の改善と、感覚運動能の強化とをもたらす。
本発明はまた、下記のような抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に向けられ、この場合、抗体は、NI−302.33C11、NI−302.63F3、NI−302.35C1、NI−302.31F11、NI−302.2A2、NI−302.6N9、NI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.44D7、NI−302.37C12、NI−302.55D8、NI−302.7A8、NI−302.78H12、NI−302.71F6、NI−302.11H6、NI−302.3D8、NI−302.18A1、NI−302.8F1、NI−302.52C9、NI−302.46C9、NI−302.15E8、NI−302.15D3、NI−302.64E5、NI−302.7D8、NI−302.72F10、NI−302.12H2、NI−302.8M1及びNI−3024A6からなる群から選択される抗体の抗原結合ドメインと同一である抗原結合ドメインを含む。
本発明ではさらに、その可変領域において、例えば、結合ドメインにおいて、図1に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを含むVH可変領域及び/又はVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴づけられることがある、HTTのポリP領域を認識するいくつかの結合性分子(例えば、抗体及びその結合性フラグメント)が例示される。上で特定された可変領域をコードする対応するヌクレオチド配列が下記の表IIに示される。VH領域及び/又はVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例示的なセットが図1に示される。しかしながら、下記で議論されるように、当業者は、加えて、又は代替において、様々なCDRが使用されることがあり、この場合、これらのCDRは、それらのアミノ酸配列において、図1に示されるアミノ酸配列から、CDR2及びCDR3の場合には1つ、2つ、3つ、又は、それどころか、それ以上のアミノ酸によって異なるという事実を十分に承知している。したがって、1つの実施形態において、図1に示されるような少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、並びに/或いは、1つ又は複数のアミノ酸置換を含むその1つ又は複数のCDRをその可変領域に含む本発明の抗体又はそのHTT結合性フラグメントが提供される。
さらに、本発明では、その可変領域において、例えば、結合ドメインにおいて、図1に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを含むVH可変領域及び/又はVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴づけられることがある、HTTのPリッチ領域を認識するいくつかの結合性分子(例えば、抗体及びその結合性フラグメント)が例示される。上で特定された可変領域をコードする対応するヌクレオチド配列が下記の表IIIに示される。VH領域及び/又はVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例示的なセットが図1に示される。しかしながら、下記で議論されるように、当業者は、加えて、又は代替において、様々なCDRが使用されることがあり、この場合、これらのCDRは、それらのアミノ酸配列において、図1に示されるアミノ酸配列から、CDR2及びCDR3の場合には1つ、2つ、3つ、又は、それどころか、それ以上のアミノ酸によって異なるという事実を十分に承知している。したがって、1つの実施形態において、図1に示されるような少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、並びに/或いは、1つ又は複数のアミノ酸置換を含むその1つ又は複数のCDRをその可変領域に含む本発明の抗体又はそのHTT結合性フラグメントが提供される。
加えて、本発明では、その可変領域において、例えば、結合ドメインにおいて、図1に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを含むVH可変領域及び/又はVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴づけられることがある、HTTのC末端領域を認識するいくつかの結合性分子(例えば、抗体及びその結合性フラグメント)が例示される。上で特定された可変領域をコードする対応するヌクレオチド配列が下記の表IVに示される。VH領域及び/又はVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例示的なセットが図1に示される。しかしながら、下記で議論されるように、当業者は、加えて、又は代替において、様々なCDRが使用されることがあり、この場合、これらのCDRは、それらのアミノ酸配列において、図1に示されるアミノ酸配列から、CDR2及びCDR3の場合には1つ、2つ、3つ、又は、それどころか、それ以上のアミノ酸によって異なるという事実を十分に承知している。したがって、1つの実施形態において、図1に示されるような少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、並びに/或いは、1つ又は複数のアミノ酸置換を含むその1つ又は複数のCDRをその可変領域に含む本発明の抗体又はそのHTT結合性フラグメントが提供される。
本発明ではさらに、その可変領域において、例えば、結合ドメインにおいて、図1に示されるアミノ酸配列のいずれか1つを含むVH可変領域及び/又はVL可変領域の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むことによって特徴づけられることがある、いくつかのそのような結合性分子、例えば、HTTのN末端領域を認識する抗体及びその結合性フラグメントが例示される。上記の可変領域をコードする対応するヌクレオチド配列が、下記において表IVにそれぞれ示される。VH領域及び/又はVL領域の上記アミノ酸配列のCDRの例示的なセットが図1に示される。しかしながら、下記において議論されるように、当業者は、加えて、又は、代替において、様々なCDRが使用されてもよく、この場合、これらのCDRは、それらのアミノ酸配列において、図1にそれぞれ示されるアミノ酸配列から、CDR2及びCDR3の場合には1つ、2つ、3つ、又は、それ以上のアミノ酸が異なるという事実を十分に承知している。したがって、1つの実施形態において、図1に示される少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)、及び/又は、図1に示されるCDRに1つ又は複数のアミノ酸置換を含んでなるCDRの1つ又は複数をその可変領域に含む本発明の抗体あるいはHTT結合性フラグメントが提供される。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、図1に示されるVH領域及び/又はVL領域、あるいは、1つ又は複数のアミノ酸置換を含むそのVH領域及び/又はVL領域のアミノ酸配列を含む抗体のいずれか1つである。好ましくは、本発明の抗体は、ヒトB細胞に存在したような重鎖及び軽鎖の同族性の対形成の保存によって特徴づけられる。
本発明のさらなる実施形態において、抗HTT抗体、HTT結合性フラグメント、それらの合成又は生物工学変異体は、標的に対する適切な結合親和性、及び、適切な薬物動態学的特性を有するように最適化することができる。したがって、グリコシル化、酸化、脱アミノ化、ペプチド結合切断、イソアスパラギン酸形成及び/又は不対システインからなる群から選択される修飾を受けやすいCDR領域内又は可変領域内の少なくとも1つのアミノ酸が、そのような変化を欠く変異アミノ酸によって置換され、あるいは、少なくとも1つの炭水化物成分が化学的又は酵素的に除かれ、又は抗体に付加される。アミノ酸最適化のための様々な例を、例えば、国際特許出願公開WO2010/121140及び同WO2012/049570に見出すことができる。抗体特性を最適化するさらなる修飾が、Gavel他、Protein Engineering、3(1990)、433〜442、及び、Helenius他、Annu.Rev.Biochem.、73(2004)、1019〜1049に記載される。
代替では、本発明の抗体は、HTTに対する結合について、図1に示されるようなVH領域及び/又はVL領域を有する抗体の少なくとも1つと競合する抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、誘導体又は変異体である。
図1に示されるようなVH領域及び/又はVL領域を有する少なくとも1つの抗体がHTTへの結合について競合する抗体は、実施例6、実施例13、実施例18、実施例31及び/又は実施例32に記載されるように、ドットブロットアッセイ及び/又はフィルター遅延においてさらに特徴づけられる場合がある。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗体は、ドットブロットアッセイ及び/又はフィルター遅延においてHTTに対して、好ましくは、49(HD49)反復からなる伸長したポリQ域を有するHTTに対して結合する。
図3、図7、図11、図21、図22、同様にまた、図32及び図33、並びに、実施例6、実施例7、実施例13、実施例18、実施例26及び実施例32において提供される実験結果から、本発明の抗HTT抗体のいくつかは、疾患を引き起こす変異した形態及び/又は凝集した形態のヒトHTTに対して、他のアミロイド形成タンパク質よりも優先的に結合することが示唆される。したがって、1つの実施形態において、本発明の抗体は、変異したHTT及び/又は凝集したHTT並びに/或いはそれらのフラグメント及び/又は誘導体を他のアミロイド形成タンパク質よりも優先的に認識する。
本発明の1つの実施形態において、抗HTT抗体、そのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学誘導体はまさに、HTTの変異した形態、凝集した形態及び/又は可溶性の形態を生理学的なHTTよりも優先的に認識する。
本発明の抗体は、治療適用のためには特に、ヒトの抗体である場合がある。代替では、本発明の抗体は、動物における診断方法及び研究のために特に有用である齧歯類抗体、齧歯類化抗体又は齧歯類−ヒトのキメラ抗体、好ましくは、マウス抗体、マウス化抗体又はマウス−ヒトのキメラ抗体、あるいは、ラット抗体、ラット化抗体又はラット−ヒトのキメラ抗体である。1つの実施形態において、本発明の抗体は齧歯類−ヒトのキメラ抗体又は齧歯類化抗体である。さらには、1つの実施形態において、本発明のキメラ抗体、すなわち、ヒト抗体の可変ドメインと、マウスの一般的な軽鎖定常ドメイン及び重鎖定常ドメインとを含むキメラ抗体はヒトHTTに大きい親和性で結合する。好ましくは、キメラ抗体の結合親和性はそれらのヒト対応物と類似している。
1つの実施形態において、本発明の抗体は、培養される単一のB細胞又はオリゴクローナルなB細胞の培養物、及び、前記B細胞によって産生される抗体を含有する培養物の上清によって提供され、それらにおける抗HTT抗体の存在及び親和性についてスクリーニングされる。スクリーニングプロセスは、合成された全長型hHTTペプチドに由来する、或いは例えばヒト血漿又は組換え発現から精製されたhHTTのオリゴマーのような生来型モノマー凝集物、原線維性凝集物又は非原線維性凝集物に対する結合についてのスクリーニングを含む。
上記で述べられるように、ヒト免疫応答でのその生成のために、本発明のヒトモノクローナル抗体は、特定の病理学的関連性を有し、かつ、例えば、マウスモノクローナル抗体の作製のための免疫化プロセス、及び、ファージディスプレーライブラリーのインビトロスクリーニングの場合には接近可能でないかもしれないか、又はより低い免疫原性であるかもしれないエピトープをそれぞれ認識するであろう。したがって、本発明のヒト抗HTT抗体のエピトープは独特であること、及び、本発明のヒトモノクローナル抗体によって認識されるエピトープに結合することができる他の抗体が存在しないことを明記することは賢明である。本発明の抗体の独特さについてさらに示すものが、図19、20、24及び27〜29において示されるように、本発明の抗体は、HTTの変異した形態、及び/又は凝集した形態に特異的なエピトープ(これは上記で示されるように、特定の病理学的関連性を有し、かつ、抗体作製のための通常的なプロセス(例えば、免疫化又はインビトロライブラリースクリーニングなど)によって同様に得ることができないかもしれない)と結合するという事実である。
したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、一般には、HTTに対する特異的な結合について本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する抗HTT抗体及びHTT結合性分子にまで及ぶ。本発明はより具体的には、下記のような抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関しており、この場合、抗体は、NI−302.33C11、NI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.44D7、NI−302.37C12、NI−302.55D8、NI−302.7A8、NI−302.71F6、NI−302.11H6、NI−302.3D8、NI−302.18A1、NI−302.8F1、NI−302.52C9、NI−302.78H12及びNI−302.46C9からなる群から選択される参照抗体と同じHTTのポリP領域内のエピトープに特異的に結合する。さらに、1つの実施形態において、本発明はより具体的には、下記のような抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関しており、この場合、抗体は、NI−302.63F3、NI−302.31F11、NI−302.2A2、NI−302.15D3及び/又はNI−302.64E5からなる群から選択される参照抗体と同じHTTのPリッチ領域内のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、本発明は、NI−302.35C1及び/又はNI−302.72F10からなる群から選択される参照抗体と同じHTTのC末端領域内のエピトープに結合する抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関する。さらなる実施形態において、本発明は、NI−302.15E8からなる群から選択される参照抗体と同じHTTのN末端領域内のエピトープに結合する抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関する。別の実施形態において、本発明は、NI−302.6N9、NI−320.12H2、NI−302.8M1及び/又はNI−302.4A6からなる群から選択される参照抗体と同じHTTのエピトープに結合する抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関する。1つの実施形態において、本発明は、参照抗体NI−302.7D8と同じHTTのエピトープに結合する抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関する。
好ましい実施形態において、本発明はまた、一般には、実施例7、実施例13、実施例18、実施例31及び実施例33、同様にまた、図7、図13、図19及び図31において示されるように、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種或いはそれらのフラグメントに対する特異的な結合について本発明のヒトモノクローナル抗体と競合する抗HTT抗体及びHTT結合性分子にまで及ぶ。したがって、本発明はより具体的には、下記のような抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体にもまた関しており、この場合、抗体は、NI−302.74C11、NI−302.15F9、NI−302.39G12、NI−302.11A4、NI−302.22H9、NI−302.37C12、NI−302.55D8、NI−302.78H12、NI−302.71F6、NI−302.33C11、NI−302.44D7、NI−302.7A8、NI−302.3D8、NI−302.46C9、NI−302.11H6、NI−302.18A1、NI−302.52C9及び/又はNI−302.8F1からなる群から選択される参照抗体と同じ、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種或いはそのフラグメントのポリP領域内のエピトープに特異的に結合する。さらに、1つの実施形態において、本発明はより具体的には、下記のような抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関しており、この場合、抗体は、NI−302.63F3、NI−302.31F11、NI−302.2A2、NI−302.15D3及び/又はNI−302.64E5からなる群から選択される参照抗体と同じ、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種或いはそのフラグメントのPリッチ領域内のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、本発明は、NI−302.35C1及び/又はNI−302.72F10からなる群から選択される参照抗体と同じ、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種或いはそのフラグメントのC末端領域内のエピトープに結合する抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関する。さらなる実施形態において、本発明は、NI−302.15E8からなる群から選択される参照抗体と同じ、変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種或いはそのフラグメントのN末端領域内のエピトープに結合する抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関する。別の実施形態において、本発明は、NI−302.6N9、NI−320.12H2、NI−302.8M1及び/又はNI−302.4A6からなる群から選択される参照抗体と同じHTTのエピトープに結合する抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関する。1つの実施形態において、本発明は、参照抗体NI−302.7D8と同じHTTのエピトープに結合する抗体或いはその抗原結合性フラグメント、変異体又は生物工学誘導体に関する。
抗体間の競合が、試験下にある免疫グロブリンが共通の抗原(HTTなど)に対する参照抗体の特異的な結合を阻害するアッセイによって求められる。数多くのタイプの競合的結合アッセイが知られている:例えば、固相での直接的又は間接的な放射免疫アッセイ(RIA)、固相での直接的又は間接的な酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli他、Methods in Enzymology 9(1983)、242〜253を参照のこと)、固相での直接的なビオチン−アビジンEIA(Kirkland他、J.Immunol.137(1986)、3614〜3619、及び、Cheung他、Virology 176(1990)、546〜552を参照のこと)、固相での直接的な標識化アッセイ、固相での直接的な標識化サンドイッチアッセイ(Harlow and Lane、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press(1988)を参照のこと)、I125標識を使用する固相での直接的な標識RIA(Morel他、Molec.Immunol.25(1988)、7〜15、及び、Moldenhauer他、Scand.J.Immunol.32(1990)、77〜82を参照のこと)。典型的には、そのようなアッセイは、精製されたHTT又は変異した及び/又は凝集したHTT(例えば、固体表面、又は、これらのどちらかを有する細胞に結合させたオリゴマー及び/又はその原線維など)と、標識されていない試験用免疫グロブリン及び標識された参照用免疫グロブリン(すなわち、本発明のヒトモノクローナル抗体)とを使用することを伴う。競合的阻害が、試験用免疫グロブリンの存在下において固体表面又は細胞に結合する標識の量を求めることによって測定される。通常、試験用免疫グロブリンは過剰に存在する。好ましくは、競合的結合アッセイが、添付された実施例においてELISAアッセイについて記載されるような条件のもとで行われる。競合アッセイによって特定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、及び、立体的障害が生じるために、参照抗体が結合するエピトープに十分に近い隣接エピトープに結合する抗体が含まれる。通常の場合、競合抗体が過剰に存在するときには、競合抗体により、共通の抗原に対する参照抗体の特異的な結合が少なくとも50%又は75%阻害されるであろう。したがって、本発明はさらに、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関しており、この場合、当該抗体は、NI−302.33C11,NI−302.63F3,NI−302.35C1,NI−302.31F11,NI−302.2A2,NI−302.6N9,NI−302.74C11,NI−302.15F9,NI−302.39G12,NI−302.11A4,NI−302.22H9,NI−302.44D7,NI−302.37C12,NI−302.55D8,NI−302.7A8,NI−302.78H12,NI−302.71F6,NI−302.11H6,NI−302.3D8,NI−302.18A1,NI−302.8F1,NI−302.52C9,NI−302.46C9,NI−302.15E8,NI−302.64E5,NI−302.7D8,NI−302.72F10,NI−302.12H2,NI−302.8M1及び/又はNI−302.4A6からなる群から選択される参照抗体がHTTに結合することを競合的に阻害する。
本発明はさらに、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体に関しており、この場合、当該抗体は、NI−302.74C11, NI−302.15F9, NI−302.39G12, NI−302.11A4, NI−302.22H9, NI−302.37C12, NI−302.55D8, NI−302.78H12, NI−302.71F6, NI−302.33C11, NI−302.44D7, NI−302.7A8, NI−302.3D8, NI−302.46C9, NI−302.11H6, NI−302.18A1, NI−302.52C9, NI−302.8F1, NI−302.63F3, NI−302.31F11, NI−302.2A2, NI302.15D3, NI−302.35C1, NI−302.6N9, NI−302.7D8及び/又はNI−302.72F10からなる群から選択される参照抗体が、変異した、及び/又は凝集したHTT種又はそのフラグメントに結合することを競合的に阻害する。
好ましい実施形態において、抗体、その結合性フラグメント、合成又は生物工学変異体のHTTに対する結合、好ましくは、49(HD49)反復からなる伸長したポリQ域を有するHTTに対する結合を、実施例で記載されるような、具体的には、実施例7、実施例13、実施例18、実施例31及び/又は実施例33で記載されるようなドットブロットアッセイ及び/又はフィルター遅延において測定することができる。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも1つ、又は、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列又はVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VHのVH−CDR1領域、VH−CDR2領域及びVH−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列又はVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図1にそれぞれ示される群に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列及びVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。図1は、Kabatシステムによって定義されるVH−CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVH−CDRもまた本発明に含まれ、これらは、図1に示されるデータを使用して当業者によって容易に特定され得る。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域及びVH−CDR3領域が、図1にそれぞれ示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群及びVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)からなる単離されたポリペプチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域及びVH−CDR3領域が、いずれか1つのVH−CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのアミノ酸置換を除いて、図1にそれぞれ示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群及びVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも1つ、又は、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列又はVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である、そのような単離されたポリペプチドを提供する。代替において、VLのVL−CDR1領域、VL−CDR2領域及びVL−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列又はVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図1にそれぞれ示されるポリペプチドに関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列及びVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。図1は、Kabatシステムによって定義されるVL−CDRを示すが、他のCDR定義、例えば、Chothiaシステムによって定義されるVL−CDRもまた本発明に含まれる。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL−CDR1領域、VL−CDR2領域及びVL−CDR3領域が、図1にそれぞれ示されるVL−CDR1群、VL−CDR2群及びVL−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリペプチドを提供する。別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)を含む単離されたポリペプチド、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)から本質的になる単離されたポリペプチド、又は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VL)からなる単離されたポリペプチドであって、VL−CDR1領域、VL−CDR2領域及びVL−CDR3領域が、いずれか1つのVL−CDRにおける1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのアミノ酸置換を除いて、図1にそれぞれ示されるVL−CDR1群、VL−CDR2群及びVL−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、単離されたポリペプチドを提供する。特定の実施形態において、アミノ酸置換は保存的である。
免疫グロブリン又はそのコードcDNAがさらに改変される場合がある。したがって、さらなる実施形態において、本発明の方法は、キメラ抗体、マウス化抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、二重特異性抗体、融合抗体、標識化抗体、又は、それらのいずれか1つのアナログを製造する工程のいずれか1つを含む。対応する様々な方法が当業者には知られており、例えば、Harlow and Lane、「Antibodies,A Laboratory Manual」、CSH Press、Cold Spring Harbor(1988)に記載される。前記抗体の誘導体がファージディスプレー技術によって得られるとき、BIAcoreシステムにおいて用いられるような表面プラズモン共鳴を、本明細書中に記載される抗体のいずれか1つのエピトープと同じエピトープに結合するファージ抗体の効率を増大させるために使用することができる(Schier、Human Antibodies Hybridomas 7(1996)、97〜105;Malmborg、J.Immunol.Methods 183(1995)、7〜13)。キメラ抗体の製造が、例えば、国際特許出願公開WO89/09622に記載される。ヒト化抗体を製造するための方法が、例えば、欧州特許出願EP−A10239400及び国際特許出願公開WO90/07861に記載される。本発明に従って利用されるための抗体のさらなる供給源は、いわゆる異種抗体である。異種抗体(例えば、ヒト様抗体)をマウスにおいて製造するための一般的原理が、例えば、国際特許出願公開WO91/10741、WO94/02602、WO96/34096及びWO96/33735に記載される。上記で議論されたように、本発明の抗体は、例えば、Fv、Fab及びF(ab)2を含めて、完全な抗体のほかに様々な形態で、ならびに、単鎖で存在する場合がある(例えば、国際特許出願公開WO88/09344を参照のこと)。したがって、1つの実施形態において、単鎖Fvフラグメント(scFv)、F(ab’)フラグメント、F(ab)フラグメント及びF(ab’)2フラグメントからなる群から選択される本発明の抗体が提供される。
本発明の様々な抗体又はそれらの対応する免疫グロブリン鎖はさらに、この技術分野において知られている従来からの技術を使用して、例えば、この技術分野において知られているアミノ酸欠失、アミノ酸挿入、アミノ酸置換、アミノ酸付加及び/又は組換えならびに/あるいはいずれかの他の改変を単独又は組合せでのどちらかで使用することによって改変することができる。そのような改変を免疫グロブリン鎖のアミノ酸配列の根底にあるDNA配列に導入するための方法が、当業者には広く知られている;例えば、Sambrook、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)、N.Y.、及び、Ausubel、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1994)を参照のこと。本発明の抗体の修飾には、アセチル化、ヒドロキシル化、メチル化、アミド化、及び、炭水化物成分又は脂質成分及び補因子などの連結を含む側鎖修飾、骨格修飾、ならびに、N末端修飾及びC末端修飾を含めて、1つ又は複数の構成アミノ酸における化学的及び/又は酵素的な誘導体化が含まれる。同様に、本発明は、記載された抗体又はその何らかのフラグメントを異種分子(例えば、カルボキシル末端での免疫刺激リガンドなど)に融合されてアミノ末端において含むキメラなタンパク質の製造を包含する;対応する技術的詳細については、例えば、国際特許出願公開WO00/30680を参照のこと。
本発明の抗体はまた、その治療的可能性を最適化するさらなる改変を含む場合がある。これらの改変には、抗体(例えば、可変領域)のアミノ酸配列に対する改変、及び、翻訳後修飾が含まれるが、これらに限定されない。翻訳後修飾(PTM)は、これにより、活性、局在化、及び、他の細胞分子(例えば、タンパク質、核酸、脂質及び補因子など)との相互作用が調節されるので、重要な役割を機能的プロテオミクスにおいて果たす化学的修飾である。したがって、抗体を最適化することにより、いくつかの利点がもたらされる場合があり、例えば、Igawa他、MAbs 3(2011)、243〜52に示されるように、例えば、貯蔵期間中の改善された安定性、同様にまた、薬物動態学及び/又は薬力学での改善されたプロフィール、例えば、抗体のインビボ又はインビトロでの循環時間、増大した溶解性、安定性、標的に対する増大した親和性、低下したオフ速度、定常領域(Fc領域)の改善されたエフェクター機能及び抗体の安全性プロフィール(例えば、低下した免疫原性など)など、或いは、翻訳後修飾に対する低下した感受性がもたらされる場合がある。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗HTT抗体、そのHTT結合性フラグメント、合成又は生物工学変異体を最適化することができ、ただし、この場合、下記の修飾に限定されないが、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、脱アミノ化、フラビンの共有結合、ヘム成分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、異性化、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、加水分解、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アミノ酸のタンパク質への転移RNA媒介付加(例えば、アルギニル化など)及びユビキチン化を含む様々な修飾(例えば、Creighton、“Proteins:Structures and Molecular Properties”、第2版、Freeman and Co.、N.Y.、1992;“Postranslational Covalent Modification of Proteins”、Johnson編、Academic Press、New York、1983;Seifter他、Meth.Enzymol.182(1990)、626〜646;Rattan他、Ann.NY.Acad.Sei.663(1992)、48〜62を参照のこと)を受けやすい、CDR領域又は可変領域における少なくとも1つのアミノ酸が、そのような変化を欠く変異型アミノ酸によって置換され、或いは、少なくとも1つの炭水化物成分が化学的若しくは酵素的に欠失され、又は、抗体に化学的若しくは酵素的に付加される。好ましい実施形態において、修飾が、グリコシル化、酸化、脱アミノ化、ペプチド結合切断、イソアスパラギン酸形成及び/又は不対システインからなる群から選択される。治療剤としてのHTT抗体又はHTT結合性分子の有用性を最適化するさらなる改変がこの技術分野では広く知られており、例えば、Igawa他、MAbs 3(2011)、243〜52に記載される(その開示内容は本明細書中に組み込まれる)。炭水化物成分を付加する手段又は欠失する手段を化学的又は酵素的に達成することができ、そのような手段が、例えば、Berg他、“Biochemistry”、第5版、W H Freeman、New York、2002;国際公開WO87/05330;Aplin他、CRC Crit.Rev.Biochem.22(1981)、259〜306;Hakimuddin他、Arch.Biochem.Biophys.259(1987)、10〜52;Edge他、Anal.Biochem.118(1981)、131;Thotakura他、Meth.Enzymol.138(1987)、350において詳しく記載される。
加えて、重鎖CDR3(HCDR3)は、より大きい度合いの可変性と、抗原−抗体相互作用における支配的な関与とを有する領域であることがしばしば認められているので、本発明は、上記で記載されるような結合性分子を含有するペプチド、例えば、述べられた抗体のいずれか1つの可変領域のCDR3領域(特に、重鎖のCDR3)を含有するペプチドを含むペプチドを包含する。そのようなペプチドが、本発明に従って有用である結合剤を製造するために容易に合成される場合があり、又は、組換え手段によって製造される場合がある。そのような方法は当業者にはよく知られている。ペプチドを、例えば、市販されている自動化されたペプチド合成機を使用して合成することができる。ペプチドはまた、ペプチドを発現するDNAを発現ベクターに組み込むこと、及び、細胞を、ペプチドを産生させるために発現ベクターにより形質転換することによる組換え技術によって製造することができる。
したがって、本発明は、上記の抗HTT抗体及び/又は、変異した及び/又は凝集したHTT種及び/又はそのフラグメントに結合できる本発明の抗体に向けられ、かつ、述べられた性質を呈示する、すなわち、HTT及び/又は変異した及び/又は凝集したHTT種及び/又はそのフラグメントを特異的に認識するどのような結合性分子(例えば、抗体又はその結合性フラグメント)にも関連する。そのような抗体及び結合性分子は、本明細書中に記載されるようなELISA及び免疫組織化学によってそれらの結合特異性及び結合親和性について試験することができる(例えば、実施例を参照のこと)。抗体及び結合性分子のこれらの特性はウエスタンブロットによって同様に試験することができる。
免疫グロブリンをB細胞又はBメモリー細胞の培養から直接に得ることの代替として、これらの細胞を、その後の発現及び/又は遺伝子操作のための、再編成された重鎖遺伝子座及び軽鎖遺伝子座の供給源として使用することができる。再編成された抗体遺伝子を、cDNAを作製するために、適切なmRNAから逆転写することができる。所望されるならば、重鎖定常領域を異なるアイソタイプの重鎖定常領域に交換することができ、又は、完全に除くことができる。可変領域を、単鎖のFv領域をコードするために連結することができる。多数のFv領域を、2つ以上の標的に対する結合能を与えるために連結することができ、又は、重鎖及び軽鎖のキメラな組合せを用いることができる。遺伝物質が入手可能であると、所望の標的と結合するそれらの能力をともに保持する上記で記載されるようなアナログの設計は簡単である。抗体可変領域のクローニング及び組換え抗体の作製のための方法が当業者には知られており、例えば、Gilliland他、Tissue Antigens 47(1996)、1〜20;Doenecke他、Leukemia 11(1997)、1787〜1792に記載される。
適切な遺伝物質が得られ、かつ、所望されるならば、アナログをコードするために改変されると、コード配列(これは、最低でも重鎖及び軽鎖の可変領域をコードする配列を含む)を、標準的な組換え宿主細胞にトランスフェクションされ得るベクターにおいて含有される発現系に挿入することができる。様々なそのような宿主細胞が使用してよい;しかしながら、効率的なプロセシングのためには、哺乳動物細胞が好ましい。この目的のために有用である典型的な哺乳動物細胞株には、CHO細胞、HEK293細胞又はNSO細胞が含まれるが、これらに限定されない。
抗体又はアナログの製造はその後、改変された組換え宿主を、宿主細胞の成長及びコード配列の発現のために適切である培養条件のもとで培養することによって着手される。その後、抗体が、抗体を培養物から単離することによって回収される。発現系は好ましくは、シグナルペプチドを含み、その結果、生じた抗体が培地中に分泌されるように設計される。しかしながら、細胞内産生もまた可能である。
上記によれば、本発明はまた、本発明の抗体又は同等な結合性分子をコードするポリヌクレオチドに関連し、抗体の場合には、好ましくは、上で記載される抗体の免疫グロブリン鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。典型的には、ポリヌクレオチドによってコードされる前記可変領域は、前記抗体の可変領域のVH及び/又はVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
当業者は、上記の可変ドメインを有する抗体の可変ドメインが、所望される特異性及び生物学的機能の他のポリペプチド又は抗体を構築するために使用され得ることを容易に理解するであろう。したがって、本発明はまた、上で記載された可変ドメインの少なくとも1つのCDRを含み、かつ、添付された実施例において記載される抗体と実質的に同じ又は類似する結合性質を好都合には有するポリペプチド及び抗体を包含する。当業者は、結合親和性が、アミノ酸置換をCDR内において、又は、Kabatによって定義されるようなCDRと部分的に重なる超可変ループ(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(1987)、901〜917)の内部において行うことによって強化され得ることを理解している(例えば、Riechmann他、Nature 332(1988)、323〜327を参照のこと)。したがって、本発明はまた、述べられたCDRの1つ又は複数が1つ又は複数の、好ましくは2つ以下のアミノ酸置換を含む抗体に関連する。好ましくは、本発明の抗体は、その免疫グロブリン鎖の一方又は両方において、図1に示されるような可変領域の2つのCDR又は3つすべてのCDRを含む。
結合性分子、例えば、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、当業者によって知られているように、1つ又は複数のエフェクター機能を媒介する定常領域を含むことができる。例えば、補体のC1成分が抗体の定常領域に結合することにより、補体系が活性化される場合がある。補体の活性化は、細胞病原体のオプソニン化及び溶解において重要である。補体の活性化は炎症応答をも刺激し、自己免疫の過敏性に関与することもある。さらに、抗体は、Fc領域を介して、すなわち、抗体のFc領域におけるFc受容体結合部位が細胞上のFc受容体(FcR)に結合することにより様々な細胞における受容体に結合する。IgG(ガンマ受容体)、IgE(イプシロン受容体)、IgA(アルファ受容体)及びIgM(ミュー受容体)を含めて、異なるクラスの抗体について特異的であるいくつかのFc受容体が存在する。抗体が細胞表面のFc受容体に結合することにより、抗体被覆粒子の貪食及び破壊、免疫複合体の排除、キラー細胞による抗体被覆された標的細胞の溶解(これは抗体依存性細胞媒介性細胞傷害又はADCCと呼ばれる)、炎症性媒介因子の放出、胎盤移行及び免疫グロブリン産生の制御を含む多数の重要かつ多様な生物学的応答が誘発される。
したがって、本発明の特定の実施形態には、少なくとも定常領域ドメインの1つ又は複数の一部が欠失されているか、さもなければ変化させられており、その結果、所望される生化学的特性を提供するように、例えば、およそ同じ免疫原性の完全な未変化抗体と比較したとき、低下したエフェクター機能、ダイマーを非共有結合により形成することができること、HTTの凝集及び沈着の部位に局在化する増大した能力、低下した血清中半減期、あるいは、増大した血清中半減期などを提供するようにされている抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体が含まれる。例えば、本明細書中に記載される診断方法及び処置方法において使用されるためのある種の抗体は、免疫グロブリン重鎖に類似するポリペプチド鎖を含むが、1つ又は複数の重鎖ドメインの少なくとも一部を欠くドメイン欠失抗体である。例えば、ある種の抗体では、改変された抗体の定常領域の1つのドメイン全体が欠失されるであろう。例えば、CH2ドメインのすべて又は一部が欠失されるであろう。他の実施形態において、本明細書中に記載される診断方法及び処置方法において使用されるためのある種の抗体は、グリコシル化を排除するために変化させられる定常領域(例えば、IgG重鎖定常領域)を有しており、これは、本明細書中の他のところでは、非グルコシル化抗体又は「agly」抗体として示される。そのような「agly」抗体は、酵素学的に、ならびに、定常領域におけるコンセンサスなグリコシル化部位を操作することによって調製されてもよい。理論によって拘束されることはないが、「agly」抗体は生体内での安全性及び安定性の改善されたproフィルを有する場合があると考えられる。所望されるエフェクター機能を有する非グリコシル化抗体を製造する方法が、例えば、国際特許出願公開WO2005/018572に見出される(その全体が参照によって組み込まれる)。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体において、Fc部分が、この技術分野において知られている技術を使用して、エフェクター機能を低下させるために変異させられる場合がある。例えば、定常領域ドメインの(点変異又は他の手段による)欠失又は不活性化は、循環する改変された抗体のFc受容体結合を低下させ、それにより、HTTの局在化を増大させる場合がある。他の場合には、本発明と一致する定常領域改変が補体結合を和らげ、したがって、抱合された細胞毒素の血清半減期及び非特異的会合を低下させることがあるかもしれない。定常領域のさらに他の改変が、増大した抗原特異性又は抗体柔軟性に起因する高まった局在化を可能にするジスルフィド連結又はオリゴ糖成分を改変するために使用される場合がある。そのような改変の得られた生理学的プロフィール、生物学的利用能及び他の生化学的影響、例えば、HTTの局在化、生体分布及び血清半減期などが、過度な実験を行うことなく、広く知られている免疫学的技術を使用して容易に測定及び定量化され得る。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体において、Fc部分が、例として、Fcγ受容体、LRP又はThy1受容体を介する抗体の受容体媒介性エンドサイトーシスを高めることによって、あるいは、「SuperAntibody Technology」(これは、抗体が、生細胞を傷つけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる)(Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237〜241)によって抗体の細胞取り込みを増大させるために変異させられる場合があり、又は、代わりのタンパク質配列に交換される場合がある。例えば、抗体結合領域と、細胞表面受容体の同族タンパク質リガンドとの融合タンパク質、あるいは、HTTならびに細胞表面受容体に結合する特異的な配列を有する二重特異性抗体又は多特異性抗体の作製が、この技術分野において知られている技術を使用して設計される場合がある。
本明細書中に記載されるある種の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体において、Fc部分が、その血液脳関門透過を増大させるために変異させられる場合があり、又は、代わりのタンパク質配列に交換される場合があり、あるいは、抗体が化学的に改変される場合がある。
本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体の改変された形態を、この技術分野において知られている技術を使用して完全な前駆体又は親抗体から作製することができる。例示的な技術が本明細書中により詳しく議論される。本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、この技術分野において知られている技術を使用して作製又は製造することができる。特定の実施形態において、抗体分子又はそのフラグメントが「組換え製造され」、すなわち、組換えDNA技術を使用して製造される。抗体分子又はそのフラグメントを作製するための例示的な技術が本明細書中の他のところでより詳しく議論される。
本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体にはまた、例えば、共有結合による結合により、抗体がその同族エピトープに特異的に結合することが妨げられないように、どのようなタイプの分子でも抗体に共有結合により結合させることによって改変される誘導体が含まれる。例えば、しかし、限定としてではなく、抗体誘導体には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、知られている保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解的切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などによって改変されている抗体が含まれる。数多くの化学的修飾のどれもが、知られている技術によって行われる場合があり、これらには、特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝的合成などが含まれるが、これらに限定されない。加えて、誘導体は1つ又は複数の非古典的アミノ酸を含有する場合がある。
特に好ましい実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、有害な免疫応答を処置されるべき動物において、例えば、ヒトにおいて誘発しないであろう。特定の実施形態において、結合性分子、例えば、本発明の抗体又はその抗原結合性フラグメントは患者、例えば、ヒト患者に由来し、続いて、抗体又はその抗原結合性フラグメントが由来する同じ種、例えば、ヒトにおいて使用され、これにより、有害な免疫応答の出現を緩和するか、又は最小限に抑える。
脱免疫化もまた、抗体の免疫原性を低下させるために使用することができる。本明細書中で使用される場合、用語「脱免疫化」は、T細胞エピトープを改変するための抗体の変化を包含する(例えば、国際特許出願公開WO98/52976及び同WO00/34317を参照のこと)。例えば、出発抗体からのVH配列及びVL配列が分析され、そして、相補性決定領域(CDR)との関連でのエピトープの所在位置、及び、配列内の他の重要な残基を示すそれぞれのV領域からのヒトT細胞エピトープ「マップ」が分析される。T細胞エピトープマップからの個々のT細胞エピトープが、最終的な抗体の活性を変化させる危険性が低い代わりのアミノ酸置換を特定するために分析される。アミノ酸置換の組合せを含む様々な代替的なVH配列及びVL配列が設計され、これらの配列が続いて、本明細書中に開示される診断方法及び処置方法における使用のために様々な結合性ポリペプチド(例えば、HTT特異的抗体又はその免疫特異性フラグメント)に組み込まれ、その後、これらは機能について試験される。典型的には、12個〜24個の間の変化型抗体が作製され、試験される。改変されたV領域及びヒトC領域を含む完全な重鎖遺伝子及び軽鎖遺伝子がその後、発現ベクターにクローン化され、それに続くプラスミドが、完全な抗体の産生のために細胞株に導入される。その後、抗体が、適切な生化学的アッセイ及び生物学的アッセイにおいて比較され、最適な変異体が特定される。
モノクローナル抗体を、ハイブリドーマ技術、組換え技術及びファージディスプレー技術又はそれらの組合せの使用を含むこの技術分野において知られている広範囲の様々な技術を使用して調製することができる。例えば、モノクローナル抗体を、この技術分野において知られているハイブリドーマ技術、及び、例えば、Harlow他、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版(1988);Hammerling他、Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas、Elsevier、N.Y.、563〜681(1981)に教示されるハイブリドーマ技術を含む様々なハイブリドーマ技術を使用して製造することができる(前記参考文献はそれらの全体が参照によって組み込まれる)。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書中で使用される場合、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。用語「モノクローナル抗体」は、真核生物クローン、原核生物クローン又はファージクローンのどのようなものも含めて、ただ1つのクローンに由来する抗体を示し、モノクローナル抗体が製造される方法に由来する抗体を示さない。したがって、用語「モノクローナル抗体」は、ハイブリドーマ技術により製造される抗体に限定されない。特定の実施形態において、本発明の抗体は、本明細書中に記載されるように、エプスタイン・バールウイルスによる形質転換により不死化されているヒトB細胞に由来する。
広く知られているハイブリドーマプロセス(Kohler他、Nature 256(1975)、495)では、哺乳動物から得られる比較的短命の、すなわち、いつかは死滅するリンパ球、例えば、本明細書中に記載されるようなヒト対象に由来するB細胞が、不死性の腫瘍細胞株(例えば、骨髄腫細胞株)と融合され、このようにして、不死性であり、かつ、B細胞の遺伝子コードされた抗体を産生することができるハイブリッド細胞、すなわち、「ハイブリドーマ」がもたらされる。得られたハイブリッドは、選抜、希釈及び再成長によって単一の遺伝的形質に分離され、それぞれの個々の株が単一抗体の形成のための特定の遺伝子を含む。それらにより、所望の抗原に対して均質であり、そして、それらの純粋な遺伝的起源に関連して、「モノクローナル」と呼ばれる抗体が産生される。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、融合されていない元の骨髄腫細胞の成長又は生存を阻害する1つ又は複数の物質を好ましくは含有する好適な培養培地において播種され、成長させられる。当業者は、ハイブリドーマの形成、選抜及び成長のための試薬、細胞株及び培地がいくつかの供給源から市販されており、また、標準化されたプロトコルが十分に確立されていることを理解するであろう。一般に、ハイブリドーマ細胞が成長している培養培地が、所望の抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性が、インビトロアッセイによって、例えば、本明細書中に記載されるような免疫沈殿、放射免疫アッセイ(RIA)又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などによって求められる。所望される特異性、親和性及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が特定された後、当該クローンは限界希釈手法によってサブクローン化され、標準的な方法によって成長させられる場合がある(例えば、Goding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、59頁〜103頁(1986)を参照のこと)。サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体が、従来からの精製手段によって、例えば、プロテインA、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなどによって、培養培地、腹水又は血清から分離され得ることがさらに理解されるであろう。
別の実施形態において、リンパ球を顕微操作によって選択することができ、可変性遺伝子を単離することができる。例えば、末梢血単核細胞を、免疫化された哺乳動物又は生まれつき免疫性の哺乳動物(例えば、ヒト)から単離し、約7日間にわたってインビトロ培養することができる。培養物を、スクリーニング基準を満たす特異的なIgGについてスクリーニングすることができる。陽性のウェルからの細胞を単離することができる。個々のIg産生B細胞を、FACSによって、又は、Ig産生B細胞を補体媒介溶血プラークアッセイで特定することによって単離することができる。Ig産生B細胞をチューブの中に顕微操作することができ、VH遺伝子及びVL遺伝子を、例えば、RT−PCRを使用して増幅することができる。VH遺伝子及びVL遺伝子を抗体発現ベクターにクローン化し、発現のための細胞(例えば、真核生物細胞又は原核生物細胞)にトランスフェクションすることができる。
代替では、抗体産生の細胞株が、当業者に広く知られている技術を使用して選択及び培養される場合がある。そのような技術が様々な実験室マニュアル及び一次刊行物に記載されている。これに関連して、下で記載されるような本発明における使用のために好適である技術が、Current Protocols in Immunology、Coligan他編、Green Publishing Associates and Wiley−Interscience、John Wiley and Sons、New York(1991)に記載される(これは、増刊を含めて、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。
特異的なエピトープを認識する抗体フラグメントが、知られている技術によって作製され得る。例えば、Fabフラグメント及びF(ab’)2フラグメントが、組換えによって、あるいは、例えば、パパイン(Fabフラグメントを製造するために)又はペプシン(F(ab’)2フラグメントを製造するために)などの酵素を使用する免疫グロブリン分子のタンパク質分解的切断によって製造され得る。F(ab’)2フラグメントは、可変領域、軽鎖定常領域及び重鎖のCH1ドメインを含有する。そのようなフラグメントは、例えば、免疫グロブリンの免疫特異性部分を検出用試薬(例えば、放射性同位体など)に連結することを伴う免疫診断手順における使用のために十分である。
1つの実施形態において、本発明の抗体は抗体分子の少なくとも1つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも2つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも3つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも4つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも5つのCDRを含む。別の実施形態において、本発明の抗体は1つ又は複数の抗体分子からの少なくとも6つのCDRを含む。主題となるこれらの抗体に含まれ得る少なくとも1つのCDRを含む例示的な抗体分子が本明細書中に記載される。
本発明の抗体は、抗体を合成するためにこの技術分野において知られているいずれかの方法によって、特に、化学合成によって、又は、好ましくは、本明細書中に記載されるような組換え発現技術によって製造することができる。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、1つ又は複数のドメインが部分的又は完全に欠失される合成された定常領域を含む(「ドメイン欠失抗体」)。特定の実施形態において、適合し得る改変された抗体は、CH2ドメイン全体が除かれているドメイン欠失の構築物又は変異体(ΔCH2構築物)を含むであろう。他の実施形態については、短い連結ペプチドが、動きの柔軟性及び自由を可変領域に与えるために欠失ドメインの代わりに使用される場合がある。当業者は、そのような構築物が抗体の異化速度に対するCH2ドメインの調節的特性のために特に好ましいことを理解するであろう。ドメイン欠失された構築物を、IgG1ヒト定常ドメインをコードするベクターを使用して得ることができる(例えば、国際特許出願公開WO02/060955及び同WO02/096948A2を参照のこと)。このベクターは、CH2ドメインを欠失し、かつ、ドメイン欠失されたIgG1定常領域を発現する合成ベクターを提供するために操作される。
特定の実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体はミニボディ(minibody)である。ミニボディを、この技術分野において記載される方法を使用して作製することができる(例えば、米国特許第5,837,821号又は国際特許出願公開WO94/09817を参照のこと)。
1つの実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、モノマーサブユニット間の会合を可能にする限り、数個のアミノ酸の欠失もしくは置換、又は、1個だけのアミノ酸の欠失もしくは置換を有する免疫グロブリン重鎖を含む。例えば、CH2ドメインの選択された領域における1個だけのアミノ酸の変異が、Fc結合を実質的に低下させるために、そして、それにより、HTTの局在化を増大させるために十分である場合がある。同様に、調節されるべきエフェクター機能(例えば、補体結合)を制御する1つ又は複数の定常領域ドメインのその部分を単に欠失することが望ましい場合がある。定常領域のそのような部分的欠失は抗体の選択された特性(血清半減期)を改善し、一方で、当該定常領域ドメインに関連する他の望ましい機能を損なわないままにし得る。そのうえ、上記において暗に示されるように、開示された抗体の定常領域は、生じた構築物のプロフィールを高める1つ又は複数のアミノ酸の変異又は置換により合成物である場合がある。これに関連して、改変された抗体の立体配置及び免疫原性プロフィールを実質的に維持しながら、保存されている結合部位(例えば、Fc結合)によって提供される活性を妨げることが可能である場合がある。さらに他の実施形態は、1つ又は複数のアミノ酸を、望ましい特性(例えば、エフェクター機能など)を高めるために、あるいは、細胞毒素又は炭水化物のより多くの結合を提供するために定常領域に付加することを含む。そのような実施形態では、選択された定常領域ドメインに由来する特異的な配列を挿入すること、又は複製することが望ましい場合がある。
本発明はまた、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域及び/又はVL領域)の変異体(誘導体を含む)を含む抗体、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域及び/又はVL領域)の変異体(誘導体を含む)から本質的になる抗体、あるいは、本明細書中に記載される抗体分子(例えば、VH領域及び/又はVL領域)の変異体(誘導体を含む)からなる抗体を提供し、そのような抗体又はそのフラグメントはHTTに免疫特異的に結合する。当業者に知られている様々な標準的技術を、抗体をコードするヌクレオチド配列に変異を導入するために使用することができ、そのような技術には、アミノ酸置換をもたらす部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、変異体(誘導体を含む)は、基準となるVH領域、VH−CDR1、VH−CDR2、VH−CDR3、VL領域、VL−CDR1、VL−CDR2又はVL−CDR3に対して50未満のアミノ酸置換、40未満のアミノ酸置換、30未満のアミノ酸置換、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換又は2未満のアミノ酸置換をコードする。「保存的(な)アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換である。類似する電荷を伴う側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーがこの技術分野において定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ−分岐した側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。代替において、変異を、例えば、飽和変異誘発などによってコード配列の全体又は一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた変異体を、活性(例えば、HTT、及び/又は、変異した及び/又は凝集したHTTT種及び/又はそのフラグメントと結合する能力)を保持する変異体を特定するために生物学的活性についてスクリーニングすることができる。
例えば、変異を抗体分子のフレームワーク領域においてのみに、又は、抗体分子のCDR領域においてのみに導入することが可能である。導入された変異はサイレント変異又は中立のミスセンス変異である場合があり、例えば、抗体の抗原結合能に対する影響を全く有しないか、又はほとんど有しない場合があり、実際、いくつかのそのような変異はアミノ酸配列を全く変化させない。これらのタイプの変異は、コドン使用を最適化するために、又は、ハイブリドーマの抗体産生を改善するために有用である場合がある。本発明の抗体をコードするコドン最適化コード領域が本明細書中の他のところで開示される。代替において、非中立的なミスセンス変異により、抗体の抗原結合能が変化する場合がある。ほとんどのサイレント変異及び中立的ミスセンス変異の位置はフレームワーク領域内である可能性が高く、一方、ほとんどの非中立的ミスセンス変異の位置はCDR内である可能性が高く、だが、このことは絶対的要件でない。当業者であれば、所望される性質、例えば、抗原結合活性における変化がないこと又は結合活性における変化(例えば、抗原結合活性における改善又は抗体特異性における変化)などを有する変異体分子を設計し、試験することができるであろう。変異誘発後、コードされたタンパク質が常法により発現させられる場合があり、そして、コードされたタンパク質の機能的活性及び/又は生物学的活性(例えば、HTT、及び/又は、変異した及び/又は凝集したHTT種及び/又はそのフラグメントと免疫特異的に結合する能力)を、本明細書中に記載される技術を使用して、又は、この技術分野において知られている技術を常法により改変することによって求めることができる。
III.抗体をコードするポリヌクレオチド
抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドは、どのようなポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチド(これらは非修飾のRNA又はDNAあるいは修飾されたRNA又はDNAである場合がある)からでも構成され得る。例えば、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドは、一本鎖及び二本鎖のDNA、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖のRNA、ならびに、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖である場合がある、あるいは、より典型的には、二本鎖である場合があるか、又は、一本鎖領域及び二本鎖領域の混合物である場合があるDNA及びRNAを含むハイブリッド分子から構成され得る。加えて、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドは、RNA又はDNA、あるいは、RNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域から構成され得る。抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドはまた、安定性又は他の理由のために改変される1つ又は複数の修飾された塩基あるいはDNA骨格又はRNA骨格を含有してもよい。「修飾(改変)(された)」塩基には、例えば、トリチル化塩基及び非通常的塩基(例えば、イノシンなど)が含まれる。様々な修飾をDNA及びRNAに対して行うことができる;したがって、「ポリヌクレオチド」は、化学的、酵素的又は代謝的に改変された形態を包含する。
免疫グロブリン(例えば、免疫グロブリンの重鎖部分又は軽鎖部分)に由来するポリペプチドの非天然型変異体をコードする単離されたポリヌクレオチドを、1つ又は複数のアミノ酸置換、アミノ酸付加又はアミノ酸欠失が、コードされたタンパク質に導入されるように、1つ又は複数のヌクレオチド置換、ヌクレオチド付加又はヌクレオチド欠失を免疫グロブリンのヌクレオチド配列に導入することによって作出することができる。変異は、標準的な技術によって、例えば、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などによって導入される場合がある。好ましくは、保存的なアミノ酸置換が1つ又は複数の非必須アミノ酸残基において行われる。
よく知られているように、RNAが、標準的な技術、例えば、イソチオシアン酸グアニジウム抽出及び沈殿化、その後、遠心分離又はクロマトグラフィーなどによって、元のB細胞、ハイブリドーマ細胞又は他の形質転換細胞から単離される場合がある。望ましい場合、mRNAが、標準的な技術、例えば、オリゴdTセルロースでのクロマトグラフィーなどによって総RNAから単離される場合がある。好適な技術がこの技術分野では熟知されている。1つの実施形態において、抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAが、逆転写酵素及びDNAポリメラーゼをよく知られている方法に従って使用して、同時又は別個に作製される場合がある。PCRが、コンセンサスな定常領域プライマーによって、又は、公開された重鎖及び軽鎖のDNA配列及びアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって開始される場合がある。上記で議論されるように、PCRはまた、抗体の軽鎖及び重鎖をコードするDNAクローンを単離するために使用される場合がある。この場合、ライブラリーが、コンセンサスなプライマー又はより大きい相同的プローブ(例えば、ヒト定常領域プローブなど)によってスクリーニングされる場合がある。DNA、典型的にはプラスミドDNAが、この技術分野において知られている技術を使用して細胞から単離され、そして、例えば、組換えDNA技術に関連する前記の参考文献に詳しく示される標準的なよく知られている技術に従って制限酵素マッピング及び配列決定に供される場合がある。当然のことながら、DNAは、単離プロセス又はその後の分析の期間中のどの時点であっても、本発明に従う合成物である場合がある。
この関連において、本発明はまた、本発明の抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメイン又は可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドに関連する。1つの実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、又は、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、重鎖可変領域のCDRの少なくとも1つ、又は、重鎖可変領域のVH−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列又はVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VHのVH−CDR1領域、VH−CDR2領域又はVH−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用重鎖のVH−CDR1のアミノ酸配列、VH−CDR2のアミノ酸配列又はVH−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の重鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVH−CDR1ポリペプチド配列、VH−CDR2ポリペプチド配列又はVH−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、又は、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも1つ、又は、軽鎖可変領域のVL−CDRの少なくとも2つが、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列又はVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。代替において、VLのVL−CDR1領域、VL−CDR2領域又はVL−CDR3領域は、本明細書中に開示される抗体から得られる参照用軽鎖のVL−CDR1のアミノ酸配列、VL−CDR2のアミノ酸配列又はVL−CDR3のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%又は95%同一である。したがって、この実施形態によれば、本発明の軽鎖可変領域は、図1に示されるポリペプチド配列に関連づけられるVL−CDR1ポリペプチド配列、VL−CDR2ポリペプチド配列又はVL−CDR3ポリペプチド配列を有する。
別の実施形態において、本発明は、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチド、そのような核酸から本質的になる単離されたポリヌクレオチド、又は、そのような核酸からなる単離されたポリヌクレオチドであって、VH−CDR1領域、VH−CDR2領域及びVH−CDR3領域が、図1に示されるVH−CDR1群、VH−CDR2群及びVH−CDR3群と同一であるポリペプチド配列を有する、そのような単離されたポリヌクレオチドを提供する。
この技術分野において知られているように、2つのポリペプチド又は2つのポリヌクレオチドの間における「配列同一性」が、一方のポリペプチド又はポリヌクレオチドのアミノ酸配列又は核酸配列を第2のポリペプチド又はポリヌクレオチドの配列に対して比較することによって求められる。本明細書中で議論されるとき、任意の特定のポリペプチドが別のポリペプチドと少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%同一であるかどうかを、この技術分野において知られている方法及びコンピュータープログラム/ソフトウエア(例えば、BESTFITプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、575 Science Drive、Madison、WI、53711)(これに限定されない)など)を使用して決定することができる。BESTFITでは、Smith and Waterman(Advances in Applied Mathematics 2(1981)、482〜489)の局所的相同性アルゴリズムを、2つの配列の間における相同性の最も良いセグメントを見出すために使用する。BESTFIT又はいずれかの他の配列アライメントプログラムを使用して、特定の配列が、例えば、本発明による参照配列と95%同一であるかどうかを決定するときには、当然のことながら、同一性の百分率が参照ポリペプチド配列の全長にわたって計算され、かつ、参照配列におけるアミノ酸の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるように、パラメーターが設定される。
本発明の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、表IIに示されるような、HTT及び/又は変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種及び/又はそれらのフラグメントにおけるポリP領域を認識する抗HTT抗体及び/又は抗体のVH領域又はVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、或いは、そのような核酸から本質的になるか、或いは、そのような核酸からなる。加えて、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表IIIに示されるような、HTT及び/又は変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種及び/又はそれらのフラグメントにおけるPリッチ領域を認識し、かつ/或いは、表IVに示されるような、HTT及び/又は変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種及び/又はそれらのフラグメントにおけるC末端領域をさらに認識し、かつ/或いは、表VIIに示されるような、HTT及び/又は変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種及び/又はそれらのフラグメントにおけるQ/Pリッチ領域をさらに認識する抗HTT抗体及び/又は抗体のVH領域又はVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、或いは、そのような核酸から本質的になるか、或いは、そのような核酸からなる。加えて、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表Vに示されるような、HTT及び/又は変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種及び/又はそれらのフラグメントを認識する抗HTT抗体及び/又は抗体のVH領域又はVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、或いは、そのような核酸から本質的になるか、或いは、そのような核酸からなる。そのうえ、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表VIに示されるような、HTT及び/又は変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種及び/又はそれらのフラグメントにおけるN末端領域を認識する抗HTT抗体及び/又は抗体のVH領域又はVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、或いは、そのような核酸から本質的になるか、或いは、そのような核酸からなる。加えて、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表Vに示されるような、HTT及び/又は変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種及び/又はそれらのフラグメントを認識する抗HTT抗体及び/又は抗体のVH領域又はVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、或いは、そのような核酸から本質的になるか、或いは、そのような核酸からなる。加えて、又は、代替において、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表VIIIに示されるような抗HTT抗体及び/又は抗体のVH領域又はVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含み、或いは、そのような核酸から本質的になり、或いは、そのような核酸からなる。
これに関連して、当業者は、軽鎖及び/又は重鎖の可変ドメインを少なくともコードするポリヌクレオチドが両方の免疫グロブリン鎖又は一方の免疫グロブリン鎖のみの可変ドメインをコードし得ることを容易に理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表II、III、IV、V、VI、VII又はVIIIに示されるような、抗HTT抗体及び/又はそのフラグメントのVH領域及びVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、あるいは、そのような核酸から本質的になるか、あるいは、そのような核酸からなる。
表II:HTTのpolyP領域のエピトープ、即ち、凝集した形態のエクソン1、を認識する抗体のV
H領域及びV
L領域のヌクレオチド配列
表III:HTTのプロリンリッチ領域のエピトープ、即ち、凝集した形態のエクソン1、を認識する抗体のV
H領域及びV
L領域のヌクレオチド配列
表IV:HTTのC末端領域のエピトープ、即ち、凝集した形態のエクソン1、を認識する抗体のV
H領域及びV
L領域のヌクレオチド配列
表V:HTT種及び/又はそのフラグメントを認識する抗体のV
H領域及びV
L領域のヌクレオチド配列
表VI:HTTのN末端領域のエピトープ、即ち、凝集した形態のエクソン1、を認識する抗体のV
H領域及びV
L領域のヌクレオチド配列
表VII:HTTのQ/Pリッチ領域のエピトープ、即ち、凝集した形態のエクソン1、を認識する抗体のV
H領域及びV
L領域のヌクレオチド配列
クローニング戦略に起因して、重鎖及び軽鎖のN末端及びC末端におけるアミノ酸配列は潜在的にはプライマー誘発変化をFR1及びFR4に含有する場合があり、しかしながら、この変化は抗体の生物学的活性には実質的な影響を与えない。コンセンサスなヒト抗体を提供するために、最初のクローンのヌクレオチド配列及びアミノ酸配列をデータベースにおける該当するヒト生殖系列可変領域配列とアライメントし、それらと一致させることができる;例えば、上記で記載されるようなVbase2を参照のこと。ヒト抗体のアミノ酸配列は、N末端及びC末端のアミノ酸配列が、潜在的にはPCRプライマーに起因してコンセンサスな生殖系列配列から逸脱すると見なされるとき、したがって、プライマー誘発変異補正(PIMC)によって置き換えられているときには太字で示される(表VIを参照のこと)。したがって、本発明の1つの実施形態において、ポリヌクレオチドは、表VIに示されるような、抗HTT抗体及び/又はそのフラグメントのVH及びVL領域のポリヌクレオチド配列を有する核酸を含むか、又は、そのような核酸から本質的になるか、又は、そのような核酸からなる。
表VIII:PIMC(太字)による置換を示す、HTT種及び/又はそのフラグメントを認識する抗体のV
H領域及びV
L領域のヌクレオチド配列。
本発明にはまた、他のところで記載されるように、本発明のポリヌクレオチドのフラグメントが含まれる。加えて、本明細書中に記載されるように、融合ポリヌクレオチド、Fabフラグメント及び他の誘導体をコードするポリヌクレオチドも本発明によって包含される。ポリヌクレオチドは、この技術分野において知られているいずれかの方法によって作製又は製造される場合がある。例えば、抗体のヌクレオチド配列が知られているならば、当該抗体をコードするポリヌクレオチドが、例えば、Kutmeier他、BioTechniques 17(1994)、242に記載されるように、化学合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てられる場合があり、これには、簡単に記載すると、抗体をコードする配列の一部分を含有する重複するオリゴヌクレオチドの合成、それらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及び連結、ならびに、連結されたオリゴヌクレオチドのPCRによる増幅を伴う。
代替において、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体をコードするポリヌクレオチドが、好適な供給源から得られる核酸から作製される場合がある。特定の抗体をコードする核酸を含有するクローンが入手できず、しかし、抗体分子の配列が知られているならば、当該抗体をコードする核酸が化学合成される場合があるか、あるいは、好適な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリー、あるいは、HTT特異的抗体を発現するいずれかの組織もしくは細胞(例えば、抗体を発現させるために選択されるハイブリドーマ細胞など)から作製されるcDNAライブラリー、又は、そのようなものから単離される核酸、好ましくはポリA+RNA)から、配列の3’末端及び5’末端にハイブリダイゼーション可能である合成プライマーを使用するPCR増幅によって得られる場合があり、又は、例えば、抗体をコードするcDNAライブラリーからcDNAクローンを特定するために特定の遺伝子配列について特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するクローニングによって得られる場合がある。PCRによって生じる増幅された核酸がその後、この技術分野において広く知られているいずれかの方法を使用して、複製可能なクローニングベクターにクローン化される場合がある。
抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体のヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列が決定されると、そのヌクレオチド配列が、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製するために、例えば、アミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入をもたらすために、ヌクレオチド配列の操作についてこの技術分野においてよく知られている方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなどを使用して操作される場合がある(例えば、Sambrook他、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.(1990)、及び、Ausubel他編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1998)に記載される技術を参照のこと。これらはともに、それらの全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
IV.抗体ポリペプチドの発現
単離された遺伝物質が、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体を提供するために操作された後、抗体をコードするポリヌクレオチドは典型的には、所望される量の抗体を産生させるために使用されることがある宿主細胞への導入のために発現ベクターに挿入される。抗体あるいはそのフラグメント、誘導体又はアナログ(例えば、標的分子に結合する抗体の重鎖又は軽鎖)の組換え発現が本明細書中に記載される。本発明の抗体分子又は抗体の重鎖もしくは軽鎖あるいはその一部分(好ましくは重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインを含有するその一部分)をコードするポリヌクレオチドが得られると、抗体分子を産生させるためのベクターが、この技術分野においてよく知られている技術を使用する組換えDNA技術によって作製される場合がある。したがって、抗体をコードするヌクレオチド配列を含有するポリヌクレオチドを発現させることによってタンパク質を調製するための方法が本明細書中に記載される。当業者によく知られている方法を、抗体コード配列ならびに適切な転写制御シグナル及び翻訳制御シグナルを含有する発現ベクターを構築するために使用することができる。これらの方法には、例えば、インビトロ組換えDNA技術、合成技術及びインビボ遺伝子組換えが含まれる。したがって、本発明は、本発明の抗体分子あるいはその重鎖又は軽鎖あるいは重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインをコードするヌクレオチド配列をproモーターに機能的に連結されて含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含む場合があり(例えば、国際特許出願公開WO86/05807及びWO89/01036、ならびに、米国特許第5,122,464号を参照のこと)、また、抗体の可変ドメインが、重鎖全体又は軽鎖全体を発現させるためにそのようなベクターにクローン化される場合がある。
用語「ベクター」又は「発現ベクター」は、所望される遺伝子を宿主細胞に導入し、その遺伝子をその宿主細胞において発現させるためのビヒクルとして本発明に従って使用されるベクターを意味するために本明細書中では使用される。当業者には知られているように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス及びレトロウイルスからなる群から容易に選択される場合がある。一般に、本発明と適合し得るベクターは、選択マーカー、所望される遺伝子のクローニングを容易にするための適切な制限部位、ならびに、真核生物細胞又は原核生物細胞における進入能及び/又は複製能を含む。本発明の目的のために、数多くの発現ベクター系が用いられる場合がある。例えば、1つのクラスのベクターでは、動物ウイルス、例えば、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTV又はMOMLV)又はSV40ウイルスなどに由来するDNAエレメントが利用される。他では、内部リボソーム結合部位を伴う多シストロン系の使用を伴う。加えて、DNAをその染色体に組み込んでいる細胞が、トランスフェクションされた宿主細胞の選択を可能にする1つ又は複数のマーカーを導入することによって選択される場合がある。マーカーにより、栄養要求性宿主に対する原栄養性、殺生物剤抵抗性(例えば、抗生物質)、又は、重金属(例えば、銅など)に対する抵抗性が与えられる場合がある。選択マーカー遺伝子は、発現させられるDNA配列に直接に連結することができるか、又は、共形質転換によって同じ細胞に導入することができる。さらなるエレメントがまた、mRNAの最適な合成のために必要となる場合がある。これらのエレメントには、シグナル配列、スプライス信号ならびに転写プロモーター、エンハンサー及び終結シグナルが含まれる場合がある。
特に好ましい実施形態において、クローン化された可変領域遺伝子が、上記で議論されるような重鎖定常領域遺伝子及び軽鎖定常領域遺伝子(好ましくはヒトの遺伝子)と一緒に発現ベクターに挿入される。1つの実施形態では、これは、Biogen IDEC社所有の発現ベクターNEOSPLA(米国特許No.6,159,730に開示される)によって達成される。このベクターは、サイトメガロウイルスのプロモーター/エンハンサー、マウスのベータグロビン主要プロモーター、SV40の複製起点、ウシ成長ホルモンのポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼのエクソン1及びエクソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼの遺伝子及びリーダー配列を含有する。このベクターは、可変領域遺伝子及び定常領域遺伝子の取り込み、CHO細胞におけるトランスフェクション、それに続く、G418含有培地における選択、及び、メトトレキサート増幅を行ったとき、抗体の非常に高いレベルの発現をもたらすことが見出されている。当然のことながら、発現を真核生物細胞において誘発することができる発現ベクターはどれも、本発明において使用される場合がある。好適なベクターの例には、プラスミドのpcDNA3、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEF1/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAX1及びpZeoSV2(これらはInvitrogen(San Diego、CA)から入手可能である)、ならびに、プラスミドのpCI(これはPromega(Madison、WI)から入手可能である)が含まれるが、これらに限定されない。一般に、非常に多数の形質転換細胞を、好適に高レベルの免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖を発現する形質転換細胞についてスクリーニングすることは、例えば、ロボットシステムによって行うことができる日常的な実験である。ベクター系はまた、米国特許第5,736,137号及び第5,658,570号に教示される(これらのそれぞれがその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。この系は、例えば、30pg/細胞/日を超える高い発現レベルを提供する。他の例示的なベクター系が、例えば、米国特許第6,413,777号に開示される。
他の好ましい実施形態において、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体が、多シストロン構築物、例えば、米国特許出願公開第2003−0157641号A1(その全体が本明細書中に組み込まれる)に開示される多シストロン構築物などを使用して発現させられる場合がある。これらの発現系において、目的とする多数の遺伝子産物(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖など)がただ1つの多シストロン構築物からもたらされる場合がある。これらの系では、配列内リボソーム進入部位(IRES)が、比較的高いレベルの抗体を提供するために都合よく使用される。適合し得るIRES配列が米国特許第6,193,980号(これもまた本明細書中に組み込まれる)に開示される。当業者は、そのような発現系が、本出願において開示される抗体の完全な範囲を効果的に産生するために使用されることがあることを理解するであろう。したがって、1つの実施形態において、本発明は、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメイン又は可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含むベクターを提供する。
より一般的には、抗体のモノマーサブユニットをコードするベクター又はDNA配列が調製されると、発現ベクターが、適切な宿主細胞に導入される場合がある。宿主細胞へのプラスミドの導入を、当業者にはよく知られている様々な技術によって達成することができる。これらには、例えば、Fugene(登録商標)又はリポフェクタミンを使用するリポトランスフェクションを含むトランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、包まれたDNAを用いた細胞融合、顕微注入、及び、無傷のウイルスによる感染が含まれるが、これらに限定されない。典型的には、宿主へのプラスミド導入が、標準的なリン酸カルシウム共沈殿法により行われる。発現構築物を有する宿主細胞が、軽鎖及び重鎖を産生させるために適切である条件のもとで成長させられ、重鎖及び/又は軽鎖のタンパク質合成についてアッセイされる。例示的なアッセイ技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)又は蛍光活性化細胞分取器分析(FACS)及び免疫組織化学などが含まれる。
発現ベクターが従来からの技術によって宿主細胞に移され、トランスフェクションされた細胞がその後、抗体を本明細書中に記載される方法における使用のために産生させるため従来からの技術によって培養される。したがって、本発明には、好ましくは異種プロモーターに機能的に連結される、本発明の抗体又はその重鎖もしくは軽鎖、あるいは、少なくともその免疫グロブリンの結合ドメイン又は可変領域をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が含まれる。加えて、又は、代替において、本発明にはまた、抗体の免疫グロブリン鎖の結合ドメイン又は可変領域を少なくともコードするポリヌクレオチドを、場合により、前記結合性分子の他の免疫グロブリン鎖の可変領域をコードするポリヌクレオチドとの組合せで含む本明細書中上記で定義されるようなベクターを含む宿主細胞が含まれる。二重鎖抗体を発現させるための好ましい実施形態において、重鎖及び軽鎖の両方をコードする単一のベクター又は複数のベクターが、下記で詳述されるように、完全な免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞において共発現させられる場合がある。
宿主細胞が本発明の2つの発現ベクターにより共トランスフェクションされる場合があり、この場合、第1のベクターが重鎖由来のポリペプチドをコードし、第2のベクターが軽鎖由来のポリペプチドをコードする。これら2つのベクターは、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの等しい発現を可能にする同一の選択マーカーを含有する場合がある。代替では、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードするただ1つのベクターが使用される場合がある。そのような状況では、軽鎖が好都合には、毒性のない重鎖の過剰を避けるために重鎖の前に置かれる(Proudfoot、Nature 322(1986)、52;Kohler、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、2197を参照のこと)。重鎖及び軽鎖のためのコード配列がcDNA又はゲノムDNAを含む場合がある。
本明細書中で使用される場合、「宿主細胞」は、組換えDNA技術を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターを有する細胞を示す。抗体を組換え宿主から単離するためのプロセスの記載において、用語「細胞」及び「細胞培養(物)」が、別途明確に指定される場合を除き、抗体の供給源を示すために交換可能に使用される。別の言い方をすれば、「細胞」からのポリペプチドの回収は、遠心分離された細胞全体から、又は、培地及び懸濁された細胞の両方を含有する細胞培養物からのどちらをも意味する場合がある。
様々な宿主−発現ベクター系が、本明細書中に記載される方法において使用されるための抗体分子を発現させるために利用される場合がある。そのような宿主−発現系は、目的とするコード配列が産生され、続いて精製されることがあるビヒクルを表し、しかし、適切なヌクレオチドコード配列により形質転換又はトランスフェクションされたとき、本発明の抗体分子をその場で発現する細胞もまた表す。これらには、微生物、例えば、抗体コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA発現ベクター、プラスミドDNA発現ベクター又はコスミドDNA発現ベクターにより形質転換される細菌(例えば、E.coli、B.subtilis);抗体コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターにより形質転換される酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)が感染させられる昆虫細胞系;抗体コード配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV)が感染させられるか、又は、抗体コード配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)により形質転換される植物細胞系;あるいは、哺乳動物細胞のゲノムに由来するプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS細胞、CHO細胞、NSO細胞、BLK細胞、293細胞、3T3細胞)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、完全な組換え抗体分子の発現のためにはとりわけ、細菌細胞(例えば、大腸菌など)、より好ましくは真核生物細胞が、組換え抗体分子の発現のために使用される。例えば、ベクター(例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要前初期遺伝子プロモーターエレメントなど)と併せての哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などが、抗体のための効果的な発現系である(例えば、Foecking他、Gene 45(1986)、101;Cockett他、Bio/Technology 8(1990)、2を参照のこと)。
タンパク質発現のために使用される宿主細胞株は多くの場合、哺乳動物起源である;当業者には、宿主細胞株において発現させられる所望の遺伝子産物のために最もよく適する特定の宿主細胞株を優先的に決定する能力があると思われる。例示的な宿主細胞株には、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、DG44及びDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFR欠損)、HELA(ヒト子宮頸ガン)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40のT抗原を有するCVIの誘導体)、VERY、BHK(ベビーハムスター腎臓)、MDCK、WI38、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63−Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA−1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)及び293(ヒト腎臓)が含まれるが、これらに限定されない。CHO細胞及び293細胞が特に好ましい。宿主細胞株は典型的には、商用サービスから、すなわち、American Tissue Culture Collectionから入手可能であり、又は、発表された文献から入手可能である。
加えて、挿入された配列の発現を調節するか、あるいは、遺伝子産物を所望される特定の様式で修飾し、また、プロセシングする宿主細胞系統が選ばれる場合がある。タンパク質産物のそのような修飾(例えば、グリコシル化)及びプロセシング(例えば、切断)が当該タンパク質の機能のために重要である場合がある。種々の宿主細胞が、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後のプロセシング及び修飾のための特徴的かつ特異的な機構を有する。適切な細胞株又は宿主系を、発現される外来タンパク質の正しい修飾及びプロセシングを保証するために選ぶことができる。この目的を達成するために、一次転写物の適正なプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が使用される場合がある。
組換えタンパク質の長期間にわたる高収量の産生のためには、安定的発現が好ましい。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株が操作される場合がある。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用するのではなく、むしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)及び選択マーカーによって制御されるDNAにより形質転換することができる。外来DNAを導入した後、操作された細胞は富化培地において1日間〜2日間にわたって成長させられる場合があり、その後、選択培地に切り換えられる。組換えプラスミドにおける選択マーカーは選択に対する抵抗性を与え、また、細胞がプラスミドをその染色体に安定的に組み込み、成長して、結果としてクローン化され、かつ、細胞株に拡大することができる増殖巣を形成することを可能にする。この方法は、抗体分子を安定的に発現する細胞株を操作するために都合よく使用される場合がある。
数多くの選択システムが使用される場合があり、これらには、下記のものが含まれるが、それらに限定されない:単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler他、Cell 11(1977)、223)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska&Szybalski、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48(1992)、202)及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy他、Cell 22(1980)、817)をtk−細胞、hgprt−細胞又はaprt−細胞においてそれぞれ用いることができる。また、代謝拮抗物質抵抗性を下記の遺伝子のための選択の基礎として使用することができる:dhfr、これはメトトレキサートに対する抵抗性を与える(Wigler他、Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)、357;O’Hare他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、1527);gpt、これはミコフェノール酸に対する抵抗性を与える(Mulligan&Berg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1981)、2072);neo、これはアミノグリコシドG−418に対する抵抗性を与える(Goldspiel他、Clinical Pharmacy 12(1993)、488〜505;Wu and Wu、Biotherapy 3(1991)、87〜95;Tolstoshev、Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32(1993)、573〜596;Mulligan、Science 260(1993)、926〜932;ならびに、Morgan and Anderson、Ann.Rev.Biochem.62(1993)、191〜217;TIB TECH 11(1993)、155〜215);及び、hygro、これはヒグロマイシンに対する抵抗性を与える(Santerre他、Gene 30(1984)、147)。使用することができる、組換えDNA技術の技術分野において一般に知られている様々な方法が、Ausubel他(編)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、NY(1993);Kriegler、Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual、Stockton Press、NY(1990)に記載さされ、また、第12章及び第13章、Dracopoli他(編)、Current Protocols in Human Genetics、John Wiley&Sons、NY(1994);Colberre−Garapin他、J.Mol.Biol.150:1(1981)に記載される(これらはその全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
抗体分子の発現レベルをベクター増幅によって増大させることができる(総説については、Bebbington and Hentschel、The use of vectors based on gene amplification for the expression of cloned genes in mammalian cells in DNA cloning、Academic Press、New York、第3巻(1987)を参照のこと)。抗体を発現させるベクター系におけるマーカーが増幅可能であるときには、宿主細胞の培養において存在する阻害剤のレベルにおける増大はマーカー遺伝子のコピー数を増大させるであろう。増幅された領域は抗体遺伝子に付随するので、抗体の産生もまた増大するであろう(Crouse他、Mol.Cell.Biol.3(1983)、257を参照のこと)。
インビトロ産生では、スケールアップにより、多量の所望されるポリペプチドを与えることが可能である。組織培養条件のもとでの哺乳動物細胞培養のための様々な技術がこの技術分野において知られており、これらには、均一懸濁培養、例えば、エアーリフト型リアクター又は連続撹拌槽リアクターにおける培養、あるいは、固定化細胞又は包括化細胞の培養、例えば、中空繊維、マイクロカプセル、アガロースマイクロビーズ又はセラミックカートリッジにおける培養が含まれる。必要及び/又は所望されるならば、ポリペプチドの溶液を、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的な生合成の後で、あるいは、本明細書中に記載されるHICクロマトグラフィー工程の前又は後で、慣例的なクロマトグラフィー方法、例えば、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE−セルロースでのクロマトグラフィー、又は、(免疫)アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。
本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体をコードする遺伝子はまた、哺乳動物以外の細胞、例えば、細菌細胞又は昆虫細胞又は酵母細胞又は植物細胞において発現させることができる。核酸を容易に取り込む細菌には、腸内細菌科のメンバー、例えば、大腸菌又はサルモネラ属の菌株など;バチルス科、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)など;肺炎球菌(Pneumococcus);連鎖球菌属(Streptococcus)及びインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が含まれる。細菌において発現させられるとき、異種ポリペプチドは典型的には封入体の一部となることがさらに理解されるであろう。異種ポリペプチドは単離され、精製され、その後、機能的な分子に組み立てられなければならない。四価形態の抗体が所望される場合、そのサブユニットは四価抗体に自己集合するであろう(例えば、国際特許出願公開WO02/096948を参照のこと)。
細菌系において、多数の発現ベクターが、抗体分子が発現されるための意図される使用に依存して、都合よく選択される場合がある。例えば、多量のそのようなタンパク質が抗体分子の医薬組成物の作製のために産生させられることになるときには、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベルの発現を導くベクターが望ましい場合がある。そのようなベクターには、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther他、EMBO J.2(1983)、1791)(この場合、抗体コード配列がlacZコード領域とインフレームでベクターに個々に連結され、その結果、融合タンパク質が産生されるようにされる場合がある);pINベクター(Inouye&Inouye、Nucleic Acids Res.13(1985)、3101〜3109;Van Heeke&Schuster、J.Biol.Chem.24(1989)、5503〜5509)などが含まれるが、これらに限定されない。pGEXベクターもまた、外来ポリペプチドをグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させるために使用される場合がある。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズのマトリックスへの吸着及び結合、その後の遊離したグルタチオンの存在下での溶出によって溶解細胞から容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビン又は第Xa因子のプロテアーゼ切断部位を含み、その結果、クローン化された標的遺伝子産物がGST成分から放出され得るように設計される。
原核生物に加えて、真核生物の微生物もまた使用される場合がある。サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)、すなわち、普通のパン酵母が、真核生物の微生物の中で最も一般に使用されるが、多くの他の菌株が一般に利用可能である(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))。サッカロミセス属における発現のために、例えば、プラスミドYRp7(Stinchcomb他、Nature 282(1979)、39;Kingsman他、Gene 7(1979)、141;Tschemper他、Gene 10(1980)、157)が一般に使用される。このプラスミドは、トリプトファン中で成長する能力を欠く酵母の変異菌株(例えば、ATCC第44076号又はPEP4−1(Jones、Genetics 85(1977)、12))のための選択マーカーを提供するTRP1遺伝子を既に含有する。その場合、酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてのtrp1損傷の存在により、形質転換をトリプトファンの不在下での成長によって検出するための効果的な環境が提供される。
昆虫系において、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcNPV)が典型的には、外来タンパク質を発現させるためのベクターとして使用される。このウイルスはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞において成長する。抗体コード配列がウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)の中に個々にクローン化され、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれる場合がある。
本発明の抗体分子が組換え発現させられると、本発明の完全な抗体、それらのダイマー、個々の軽鎖及び重鎖又は他の免疫グロブリン形態を、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、特に、プロテインAの後での特異的抗原についてのアフィニティー、及び、サイズ分画カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差的溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈澱)、又は、タンパク質の精製のためのいずれかの他の標準的な技術によることを含めて、この技術分野の標準的な手順に従って精製することができる(例えば、Scopes、「Protein Purification」、Springer Verlag、N.Y.(1982)を参照のこと)。代替では、本発明の抗体の親和性を増大させるための好ましい方法が米国特許出願公開第2002−0123057号A1に開示される。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、抗HTT抗体、又は変異した、及び/又は凝集したHTT種及び/又はそのフラグメントを認識する抗体、或いはその免疫グロブリン鎖を調製するための方法であって、
(a)本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチド又はベクターを含む本明細書中上記で定義されるような宿主細胞を培養すること、及び
(b)前記抗体又はその免疫グロブリン鎖を培養物から単離すること
を含む方法を提供する。
さらには、1つの実施形態において、本発明はまた、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチドによってコードされる抗体又はその免疫グロブリン鎖、あるいは、抗HTT抗体、又は変異した及び/又は凝集したHTT種及び/又はそのフラグメント又はその免疫グロブリン鎖を調製するための前記方法によって得ることができる抗体又はその免疫グロブリン鎖に関連する。
V.融合タンパク質及びコンジュゲート
特定の実施形態において、抗体ポリペプチドは、通常の場合には抗体に付随しないアミノ酸配列あるいは1つ又は複数の成分を含む。例示的な改変が下記においてより詳細に記載される。例えば、本発明の単鎖Fv抗体フラグメントは柔軟なリンカー配列を含む場合があり、又は、機能的成分(例えば、PEG、薬物、毒素又は標識(例えば、蛍光性、放射性、酵素、核磁気性及び重金属など))を付加するために改変される場合がある。
本発明の抗体ポリペプチドは融合タンパク質を含む場合があり、融合タンパク質から本質的になる場合があり、又は、融合タンパク質からなる場合がある。融合タンパク質は、例えば、少なくとも1つの標的結合部位を伴う免疫グロブリンのHTT結合ドメインと、少なくとも1つの異種部分、すなわち、自然界では生来的に連結されない部分とを含むキメラ分子である。これらのアミノ酸配列は、融合ポリペプチドにおいて一緒にされる別個のタンパク質において正常に存在する場合があり、又は、同じタンパク質において正常に存在する場合があるが、融合ポリペプチドにおいては新しい配置で置かれる。融合タンパク質が、例えば、化学合成によって、又は、ペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作出し、翻訳することによって作出される場合がある。
用語「異種(の)」は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドに適用される場合、当該ポリヌクレオチド又はポリペプチドが、比較されている実体の残部のものとは異なる実体に由来することを意味する。例えば、本明細書中で使用されるように、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又はアナログに融合されるための“異種ポリペプチド”は、同じ種の非免疫グロブリンポリペプチド、あるいは、異なる種の免疫グロブリンポリペプチド又は非免疫グロブリンポリペプチドに由来する。
本明細書中の他のところでより詳細に議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体はさらに、N末端又はC末端において異種ポリペプチドに組換え融合される場合があり、あるいは、ポリペプチド又は他の組成物に化学的にコンジュゲート化される場合がある(共有結合によるコンジュゲート化及び非共有結合によるコンジュゲート化を含む)。例えば、抗体が、検出アッセイにおいて標識として有用である分子に、また、エフェクター分子(例えば、異種ポリペプチド、薬物、放射性核種又は毒素など)に組換え融合されるか、又はコンジュゲート化される場合がある(例えば、国際特許出願公開WO92/08495、WO91/14438、WO89/12624、米国特許第5,314,995号及び欧州特許出願EP0396387を参照のこと)。
本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、ペプチド結合又は修飾型ペプチド結合(すなわち、ペプチドアイソスター)によって互いにつながれるアミノ酸から構成されることが可能であり、また、遺伝子によりコードされる20個のアミノ酸とは異なるアミノ酸を含有する場合がある。抗体は、天然のプロセス(例えば、翻訳後プロセシングなど)によって、又は、この技術分野ではよく知られている化学的修飾技術によって改変される場合がある。そのような修飾が、基礎的な教本において、また、より詳しいモノグラフにおいて、ならびに、膨大な数の研究文献において十分に記載されている。修飾を、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ末端又はカルボキシル末端を含めて、抗体においてどこにでも、あるいは、炭水化物などの成分に対して行うことができる。同じタイプの修飾が、所与の抗体において、いくつかの部位において同じ程度又は種々の程度で存在する場合があることが理解されるであろう。また、所与の抗体が多くのタイプの修飾を含有する場合がある。抗体は、例えば、ユビキチン化の結果として分岐する場合があり、また、分岐を伴って、又は伴うことなく、環状である場合がある。環状の抗体、分岐した抗体、及び、分岐した環状の抗体が、翻訳後の天然のプロセスから生じる場合があり、又は、合成的方法によって作製される場合がある。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合連結、ヘム成分の共有結合連結、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合連結、脂質又は脂質誘導体の共有結合連結、ホスファチジルイノシトールの共有結合連結、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸塩の形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解的プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加(例えば、アルギニル化など)、及び、ユビキチン化が含まれる(例えば、Proteins−Structure And Molecular Properties、T.E.Creighton、W.H.Freeman and Company、New York、第2版(1993);Posttranslational Covalent Modification Of Proteins、B.C.Johnson編、Academic Press、New York、1頁〜12頁(1983);Seifter他、Meth.Enzymol.182(1990)、626〜646;Rattan他、Ann.NY Acad.Sci.663(1992)、48〜62を参照のこと)。
本発明はまた、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体と、異種ポリペプチドとを含む融合タンパク質を提供する。1つの実施形態において、本発明の融合タンパク質は、本発明の抗体のVH領域のいずれか1つ又は複数のアミノ酸配列、あるいは、本発明の抗体のVL領域又はそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つ又は複数のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法及び処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVH−CDR又はそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列、あるいは、抗体のVL−CDR又はそのフラグメント、変異体もしくは誘導体のいずれか1つ、2つ、3つのアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含むか、あるいは、そのようなポリペプチドから本質的になるか、あるいは、そのようなポリペプチドからなる。1つの実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体のVH−CDR3又はそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含み、そのような融合タンパク質はHTTに特異的に結合する。別の実施形態において、融合タンパク質は、本発明の抗体の少なくとも1つのVH領域のアミノ酸配列と、本発明の抗体の少なくとも1つのVL領域又はそのフラグメント、誘導体もしくは変異体のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、融合タンパク質のVH領域及びVL領域は、HTTと特異的に結合する単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメント又はFabフラグメント)に対応する。さらに別の実施形態において、本明細書中に開示される診断方法及び処置方法において使用されるための融合タンパク質は、抗体のVHCDRのいずれか1つ、2つ、3つ又はそれ以上のアミノ酸配列と、抗体のVLCDR又はそのフラグメントもしくは変異体のいずれか1つ、2つ、3つまたそれ以上のアミノ酸配列と、異種ポリペプチド配列とを有するポリペプチドを含む。好ましくは、VH−CDR又はVL−CDRの2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又はそれ以上が、本発明の単一供給源の抗体(あるいはscFvフラグメント又はFabフラグメント)に対応する。これらの融合タンパク質をコードする核酸分子もまた本発明によって包含される。
文献に報告される例示的な融合タンパク質には、下記の融合物が含まれる:T細胞受容体(Gascoigne他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84(1987)、2936〜2940);CD4(Capon他、Nature 337(1989)、525〜531;Traunecker他、Nature 339(1989)、68〜70;Zettmeissl他、DNA Cell Biol.USA 9(1990)、347〜353;及びByrn他、Nature 344(1990)、667〜670);L−セレクチン(ホーミング受容体)(Watson他、J.Cell.Biol.110(1990)、2221〜2229;及びWatson他、Nature 349(1991)、164〜167);CD44(Aruffo他、Cell 61(1990)、1303〜1313);CD28及びB7(Linsley他、J.Exp.Med.173(1991)、721〜730);CTLA−4(Lisley他、J.Exp.Med.174(1991)、561〜569);CD22(Stamenkovic他、Cell 66(1991)、1133〜1144);TNF受容体(Ashkenazi他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(1991)、10535〜10539;Lesslauer他、Eur.J.Immunol.27(1991)、2883〜2886;及びPeppel他、J.Exp.Med.174(1991)、1483〜1489(1991));ならびにIgE受容体a(Ridgway and Gorman、J.Cell.Biol.115(1991)、アブストラクト番号:1448)。
本明細書中の他のところで議論されるように、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、ポリペプチドのインビボ半減期を増大させるために、又は、この技術分野において知られている方法を使用する免疫アッセイにおける使用のために異種ポリペプチドに融合される場合がある。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の抗体に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる(例えば、Leong他、Cytokine、16(2001)、106〜119;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;又はWeir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512を参照のこと)。
そのうえ、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、マーカー配列(例えば、それらの精製又は検出を容易にするためのペプチドなど)に融合することができる。好ましい実施形態において、マーカーのアミノ酸配列は、多くのものが市販されているが、とりわけ、ヘキサ−ヒスチジンペプチド(HIS)であり、例えば、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、9259 Eton Avenue、Chatsworth、Calif.、91311)において提供されるタグなどである。例えば、Gentz他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)、821〜824に記載されるように、ヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製をもたらす。精製のために有用である他のペプチドタグには、「HA」タグ(これは、インフルエンザの赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する)(Wilson他、Cell 37(1984)、767)、GST、c−myc及び「flag」タグが含まれるが、これらに限定されない(例えば、エピトープタグ化技術の総説については、Bill Brizzard、BioTechniques 44(2008)、693〜695を、また本発明において使用可能である最も一般的なエピトープタグを列挙するその694頁における表1を参照のこと。これらの主題は、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる)。
融合タンパク質を、この技術分野においてよく知られている方法を使用して調製することができる(例えば、米国特許第5,116,964号及び第5,225,538号を参照のこと)。融合が行われるまさにその部位が、融合タンパク質の分泌又は結合特性を最適化するために経験的に選択される場合がある。融合タンパク質をコードするDNAがその後、本明細書中上で記載されるように行われる発現のために宿主細胞にトランスフェクションされる。
本発明の抗体は非コンンジュゲート化形態で使用される場合があり、あるいは、例えば、分子の治療的性質を改善するために、標的検出を容易にするために、又は、患者の画像化もしくは治療のために様々な分子の少なくとも1つにコンジュゲート化される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、精製が行われるときには精製前又は精製後のどちらでも標識化又はコンジュゲート化することができる。特に、本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体は、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、ウイルス、脂質、生物学的応答調節物質、医薬剤又はPEGにコンジュゲート化される場合がある。
従来の抗体を含む免疫毒素であるコンジュゲートがこの技術分野において幅広く記載されている。毒素が従来からのカップリング技術によって抗体にカップリングされる場合があり、又は、タンパク質毒素部分を含有する免疫毒素を融合タンパク質として作製することができる。本発明の抗体は、そのような免疫毒素を得るための対応する方法で使用することができる。そのような免疫毒素を例示するものが、Byers、Seminars Cell.Biol.2(1991)、59〜70、及び、Fanger、Immunol.Today 12(1991)、51〜54によって記載される免疫毒素である。
当業者は、コンジュゲートがまた、コンジュゲート化されるための選択された薬剤に依存して様々な技術を使用して組み立てられ得ることを理解するであろう。例えば、ビオチンとのコンジュゲートが、例えば、HTT結合ポリペプチドをビオチンの活性化エステル(例えば、ビオチンN−ヒドロキシスクシンイミドエステルなど)と反応することによって調製される。同様に、蛍光性マーカーとのコンジュゲートがカップリング剤(例えば、本明細書中に列挙されるカップリング剤)の存在下で調製される場合があり、又は、イソチオシアン酸塩との反応によって、好ましくはイソチオシアン酸フルオレセインとの反応によって調製される場合がある。本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体のコンジュゲートが同様な様式で調製される。
本発明はさらに、診断剤又は治療剤にコンジュゲート化される本発明の抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体を包含する。抗体を、例えば、HTTアミロイドーシスの存在を明らかにして、変異した、及び/又は凝集したHTTに関連付づけられる疾患に罹る危険性を示すために、そのような疾患(すなわち、凝集したHTTの出現を示す、あるいは、それらに関連づけられる疾患)の発症又は進行をモニターして、又は臨床検査手順の一部として、例えば、所与の処置療法及び/又は防止療法の効力を明らかにするために、診断的に使用することができる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能に標識される抗体に関連する。さらには、1つの実施形態において、本発明は、薬物に結合させられる抗体に関連する。検出を、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体を検出可能な物質にカップリングすることによって容易にすることができる。検出可能な物質又は標識は一般に、酵素、重金属(好ましくは金)、色素(好ましくは蛍光性色素又は発光性色素)又は放射性標識である場合がある。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子族、蛍光性物質、発光性物質、生物発光性物質、放射性物質、様々な陽電子放出断層撮影法を使用する陽電子放出金属、及び、非放射性常磁性金属イオンが含まれる(本発明に従って診断剤として使用されるために抗体にコンジュゲート化することができる金属イオンについては、例えば、米国特許第4,741,900号を参照のこと)。好適な酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;好適な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられる;好適な蛍光性物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド又はフィコエリトリンが挙げられる;発光性物質の一例として、ルミノールが挙げられる;生物発光性物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられる;好適な放射性物質の例として、125I、131I、111In又は99Tcが挙げられる。したがって、1つの実施形態において、本発明は、検出可能な標識が、酵素、放射性同位体、蛍光団及び重金属からなる群から選択される検出可能に標識された抗体を提供する。
抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体はまた、化学発光化合物にカップリングすることによって検出可能に標識することができる。化学発光標識された抗体の存在がその後、化学反応の経過の期間中に生じる発光の存在を検出することによって求められる。特に有用な化学発光性の標識用化合物の例が、ルミノール、イソルミノール、テロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩及びシュウ酸エステルである。
抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体が検出可能に標識され得る方法の1つは、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体を酵素に連結し、連結された生成物を酵素免疫アッセイ(EIA)において使用することによってである(Voller,A.、「The Enzyme Linked Immunosorbent Assay(ELISA)」、Microbiological Associates Quarterly Publication、Walkersville、Md.、Diagnostic Horizons 2(1978)、1〜7);Voller他、J.Clin.Pathol.31(1978)、507〜520;Butler、Meth.Enzymol.73(1981)、482〜523;Maggio,E.(編)、Enzyme Immunoassay、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1980);Ishikawa,E.他(編)、Enzyme Immunoassay、Kgaku Shoin、Tokyo(1981))。酵素は、抗体に結合しているので、例えば、分光光度法的手段、蛍光定量法的手段又は目視的手段によって検出することができる化学的成分を生成するような様式で、適切な基質(好ましくは発色性基質)と反応するであろう。抗体を検出可能に標識するために使用することができる酵素には、リンゴ酸脱水素酵素、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ−5−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ及びアセチルコリンエステラーゼが含まれるが、これらに限定されない。加えて、検出を、酵素のための発色性基質を用いる比色法によって達成することができる。検出はまた、類似して調製された標準物との比較における基質の酵素反応の程度の目視比較によって達成される場合がある。
検出はまた、様々な他の免疫アッセイのいずれかを使用して達成される場合がある。例えば、抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体を放射能標識することによって、抗体を放射免疫アッセイ(RIA)の使用により検出することが可能である(例えば、Weintraub,B.、Principles of Radioimmunoassays,Seventh Training Course on Radioligand Assay Techniques、The Endocrine Society(March、1986)を参照のこと。これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。放射性同位体を、ガンマカウンター、シンチレーションカウンター又はオートラジオグラフィー(これらに限定されない)を含む手段によって検出することができる。
抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体はまた、蛍光放射金属(例えば、ランタニド系列の152Euなど)を使用して検出可能に標識することができる。これらの金属は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート化基を使用して抗体に結合させることができる。
様々な成分を抗体あるいはその抗原結合性フラグメント、変異体又は誘導体にコンジュゲート化するための技術がよく知られている;例えば、Arnon他、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeld他(編)、243頁〜56頁、Alan R.Liss,Inc.(1985);Hellstrom他、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinson他(編)、Marcel Dekker,Inc.、623頁〜53頁(1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies‘84:Biological And Clinical Applications、Pinchera他(編)、475頁〜506頁(1985);「Analysis,Results,And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy、Baldwin他(編)、Academic Press、303頁〜16頁(1985)、及び、Thorpe他、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62(1982)、119〜158を参照のこと。
述べられたように、特定の実施形態において、結合性分子、例えば、結合性ポリペプチド、例えば、抗体又はその免疫特異性フラグメントの安定性又は効力を高める成分をコンジュゲート化することができる。例えば、1つの実施形態において、PEGを、本発明の結合性分子に、その半減期をインビボにおいて増大させるためにコンジュゲート化することができる。Leong他、Cytokine、16(2001)、106;Adv.in Drug Deliv.Rev.54(2002)、531;又は、Weir他、Biochem.Soc.Transactions 30(2002)、512。
VI.組成物及び使用方法
本発明は、本明細書中前記で定義されるように、上記で述べられたHTT結合性分子(例えば、本発明の抗体又はその抗原結合性フラグメントあるいはそれらの誘導体又は変異体)、あるいは、本発明のポリヌクレオチド、ベクター、又は細胞を含む組成物に関連する。1つの実施形態において、本発明の組成物は医薬組成物であり、かつ、医薬的に許容される担体をさらに含む。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、インターロイキン又はインターフェロンなど)を含む場合がある。変異した及び/又は凝集したHTTの出現を示すか、あるいは、関連づけられる疾患又は障害(例えば、HTTアミロイドーシスなど)を処置することにおける使用のために、さらなる薬剤が、小さい有機分子、抗HTT抗体及びそれらの組合せからなる群から選択される場合がある。したがって、特定の好ましい実施形態において、本発明は、ハンチントン病(HD)、及び/又はHTT及び/又はHTTアミロイドーシスに伴う疾患又は障害の予防的処置及び治療的処置、HD、及び/又はHTT及び/又はHTT及び/又はHTTアミロイドーシスに伴う疾患又は障害の進行又はHTTアミロイドーシスの処置に対する応答を対象においてモニターすること、あるいは、HTTアミロイドーシスに伴う疾患又は障害を発症することについての対象の危険性を明らかにすることのための医薬組成物又は診断組成物を調製するための、HTT結合性分子の使用、例えば、本発明の抗体又はその抗原結合性フラグメント、あるいは、それらのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有する結合性分子、本発明のポリヌクレオチド、ベクター又は細胞の使用に関連する。
したがって、1つの実施形態において、本発明は、HTT、及び/又は凝集したHTT及び/又は変異したHTTの、罹患した系及び器官における異常な蓄積及び/又は沈着によって特徴づけられる疾患又は障害を処置する方法であって、その必要性のある対象に、本発明の上記で記載されたHTT結合性分子、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞のいずれか1つの治療有効量を投与することを含む方法に関連する。
本発明の治療的取り組みの特定の利点が、本発明の組換え抗体は、例えば、無症候性の変異を有する、凝集したHTTの出現を示す、又は、凝集したHTTに関連づけられる疾患の徴候又は症状を何ら有しない健康なヒト対象から得られるB細胞又はメモリーB細胞に由来しており、したがって、変異したHTT、及び/又は凝集したHTTに関連づけられる臨床的に明白な疾患を防止することが、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患又は障害の出現の危険性を減らすことが、あるいは、そのような臨床的に明白な疾患又は障害の発症又は進行を遅らせることが、ある程度の確率で可能であるという事実にある。典型的には、本発明の抗体はまた、体細胞変異、すなわち、抗体の可変領域の体細胞変化による標的HTT分子に対する高親和性結合における選択性及び有効性に関しての最適化を既に首尾良く経ている。
そのような細胞は生体内において、例えば、ヒト体内において、自己免疫学的反応又はアレルギー反応の意味で、関連した、又は他の生理学的なタンパク質又は細胞構造によって活性化されていないという認識はまた、臨床試験段階を首尾よく生き残るという相当に増大した可能性がこれにより意味されるので、非常に医学的に重要である。いわば、効率、許容性及び耐容性が、少なくとも1名のヒト対象において予防的抗体又は治療的抗体の前臨床開発及び臨床開発の前に既に実証されている。したがって、本発明のヒト由来抗HTT抗体は、治療剤としてのその標的構造特異的効率と、副作用のその低下した可能性との両方により、成功のその臨床的可能性を著しく増大させることが予想され得る。
本発明はまた、上記で記載された成分(例えば、本発明の抗HTT抗体、その結合性フラグメント、誘導体もしくは変異体、ポリヌクレオチド、ベクター、又は細胞)の1つ又は複数により満たされる1つ又は複数の容器を含む医薬用及び診断用のパック又はキットをそれぞれ提供する。そのような容器には、医薬品又は生物学的製造物の製造、使用又は販売を規制する政府当局によって定められる形式での通知が伴い得る(ただし、そのような通知は、製造、使用又は販売の当局によるヒト投与のための承認を反映する)。加えて、又は、代替において、キットは、適切な診断アッセイにおいて使用されるための試薬及び/又は説明書を含む。本発明の組成物、例えば、キットは、当然のことながら、ハンチントン病、及び/又は変異した及び/又は凝集したHTTの存在が付随する疾患又は障害のリスク評価、診断、防止及び処置のために特に適しており、具体的には、HTTアミロイドーシスによって一般には特徴づけられる障害を処置するために適用可能である。
本発明の医薬組成物はこの技術分野においてよく知られている方法に従って配合することができる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)(University of Sciences in Philadelphia、ISBN0−683−306472)を参照のこと)。好適な医薬用キャリアの例がこの技術分野ではよく知られており、これらには、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルション(例えば、油/水エマルションなど)、様々なタイプの湿潤化剤、無菌溶液などが含まれる。そのようなキャリアを含む組成物を、よく知られている従来の方法によって配合することができる。これらの医薬組成物は好適な用量で対象に投与することができる。好適な組成物の投与が、種々の方法によって、例えば、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、局所的投与又は皮内投与あるいは脊髄送達又は脳送達によって行われる場合がある。エアロゾル配合物、例えば、鼻腔噴霧配合物などには、保存剤及び等張剤を伴う活性な薬剤の精製された水性溶液又は他の溶液が含まれる。そのような配合物は好ましくは、鼻腔粘膜と適合し得るpH及び等張性状態に調節される。直腸投与又は膣投与のための配合物が、好適なキャリアを伴う坐薬として提示される場合がある。
投薬計画が主治医及び臨床上の要因によって決定されるであろう。医療技術分野ではよく知られているように、どのような患者であれ、患者のための投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与されるべき具体的な化合物、性別、投与時間及び投与経路、全身の健康状態、ならびに、同時に投与されている他の薬物を含めて、多くの要因に依存する。典型的な用量が、例えば、0.001μg〜1000μgの範囲(あるいは、この範囲における発現又は発現阻害のための核酸の範囲)であり得る;しかしながら、この例示的な範囲よりも少ない用量又は大きい用量が、とりわけ上述の要因を考慮して想定される。一般に、投薬量は、例えば、宿主体重の約0.0001〜100mg/kgの範囲が可能であり、より通常的には0.01〜5mg/kg(例えば、0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)が可能である。例えば、投薬量は、1mg/kg体重又は10mg/kg体重、あるいは、1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgであり得る。上記範囲において中間的である用量もまた、本発明の範囲内で意図される。対象には、そのような用量を毎日、1日おきに、毎週、又は、経験的分析によって決定されるいずれかの他のスケジュールに従って投与することができる。例示的な処置は、例えば、少なくとも6ヶ月の長期間にわたる多数回の投薬での投与を伴う。さらなる例示的な処置計画は、2週間毎に1回、又は、1ヶ月に1回、又は、3ヶ月毎〜6ヶ月毎に1回での投与を伴う。例示的な投薬スケジュールには、連続した毎日での1〜10mg/kg又は15mg/kg、1日おきでの30mg/kg、あるいは、毎週での60mg/kgが含まれる。一部の方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上のモノクローナル抗体が同時に投与され、そのような場合、投与されるそれぞれの抗体の投薬量が、示される範囲内である。進行を定期的な評価によってモニターすることができる。非経口投与のための調製物には、無菌の水性又は非水性の溶液、懸濁物及びエマルションが含まれる。非水性溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油など)、及び、注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)が挙げられる。水性キャリアには、生理的食塩水及び緩衝媒体を含めて、水、アルコール性溶液/水溶液、エマルション又は懸濁物が含まれる。非経口用ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル又は固定油が含まれる。静脈内用ビヒクルには、流体及び栄養補充液及び電解質補充液(例えば、リンゲルブドウ糖に基づくものなど)などが含まれる。保存剤及び他の添加剤もまた存在する場合がある(例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤及び不活性ガスなど)。さらには、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に依存して、さらなる薬剤(例えば、ドーパミン又は精神薬理学的薬物など)を含む場合がある。
さらには、本発明の好ましい実施形態において、例えば、本発明の医薬組成物が抗HTT抗体あるいはHTT結合性フラグメント、誘導体又は合成若しくは生物工学変異体を受動免疫化のために含むならば、医薬組成物はワクチンとして配合される場合がある。背景の節で述べられたように、変異したHTT種、及び/又は凝集したHTT種ならび/あるいはそのフラグメント又は誘導体がHTTアミロイドーシスの主要な誘因である。したがって、本発明のヒト抗HTT抗体及び同等なHTT結合性分子による受動免疫化は、能動免疫化療法概念のいくつかの有害な影響を回避すること、そして、HTTの軽減された凝集をもたらすことを助けるであろうと予想することは賢明なことである。したがって、本発明の抗HTT抗体及びその同等物は、凝集したHTTの存在を示すか、又は、凝集したHTTによって引き起こされる疾患又は障害、例えばHDの防止又は緩和のためのワクチンとして特に有用であろう。
1つの実施形態において、本発明の抗体の組換えFabフラグメント(rFab)及び単鎖フラグメント(scFv)を使用することが有益である場合がある。これは、それらがより容易に細胞膜に浸透するかもしれないからである。例えば、Robert他、Protein Eng.Des.Sel.(2008)(Oct 16);S1741−0134(これはオンライで事前に発表された)は、AβのN末端領域におけるエピトープを認識するモノクローナル抗体WO−2のキメラな組換えFabフラグメント(rFab)及び単鎖フラグメント(scFv)の使用を記載する。操作されたフラグメントは、(i)アミロイド原線維化を防止することができ、(ii)事前に形成されたAβ1−42原線維を解凝集することができ、かつ、(iii)Aβ1−42オリゴマー媒介の神経毒性を完全なIgG分子と同じくらい効率的にインビトロで阻害することができた。エフェクター機能を欠く小さいFab及びscFvの操作された抗体様式を使用することの認識された利点には、血液脳関門をより効率的に通過すること、及び、炎症性の副反応を誘発する危険性を最小限に抑えることが含まれる。さらには、scFV及び単鎖ドメイン抗体は全長抗体の結合特異性を保持することのほかに、それらは単一遺伝子として発現させることができ、また、折り畳み、相互作用、修飾、又は、それらの標的の細胞内局在化の変化についての潜在的可能性が伴うが、細胞内抗体として哺乳動物細胞において細胞内に発現させることができる(総説については、例えば、Miller and Messer、Molecular Therapy、12(2005)、394〜401を参照のこと)。
異なる取り組みにおいて、Muller他、Expert Opin.Biol.Ther.(2005)、237〜241は、抗体が、生細胞を傷づけることなく生細胞内に往復させられることを可能にすると言われる技術基盤(いわゆる「SuperAntibody Technology」)を記載する。そのような細胞浸透抗体により、新しい診断範囲及び治療範囲が開拓される。用語「TransMabs」がこれらの抗体のために案出されている。
さらなる実施形態において、変異した、及び/又は凝集したHTTの出現に関連づけられる疾患、障害又は症状を処置するために有用である他の抗体の共投与又は逐次投与が望ましい場合がある。1つの実施形態において、そのようなさらなる抗体が本発明の医薬組成物において含まれる。対象を処置するために使用することができる抗体の例には、CD33、SGLT2、IL−6及びIL−1を標的化する抗体が含まれるが、これらに限定されない。
さらなる実施形態において、変異した及び/又は凝集したHTTに関連づけられる疾患、障害又は症状を処置するために有用である他の薬剤の共投与又は逐次投与が望ましい場合がある。1つの実施形態において、そのようなさらなる薬剤が本発明の医薬組成物において含まれる。対象を処置するために使用することができる薬剤の例には、下記の薬剤が含まれるが、それらに限定されない:不随意筋運動を標的とするVMAT2阻害剤、例えば、Xenazine(商標)など;抗炎症剤、例えば、ジフルシナール(diflusinal)、コルチコステロイド類、2−(2,6−ジクロルアニリノ)フェニル酢酸(ジクロフェナク)、イソ−ブチルプロパノイックフェノール酸(iso−butyl−propanoic−phenolic acid)(イブプロフェン)など;利尿剤、没食子酸エピガロカテキン、メルファラン塩酸塩、デキサメタゾン、ボルテゾミブ、ボルテゾミブ−メルファラン、ボルテゾミブ−デキサメタゾン、メルファラン−デキサメタゾン、ボルテゾミブ−メルファラン−デキサメタゾン;抗うつ剤、抗精神病薬、神経遮断剤、抗痴呆剤(例えば、NMDA受容体アンタゴニストのメマンチン)、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジルHCl、リバスチグミン、ガランタミン)、グルタミン酸アンタゴニスト及び他の向知性剤血圧薬剤(例えば、ジヒドララジン、メチルドパ)、細胞増殖抑制剤、グルココルチコイド類、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤;抗炎症剤、又は、どのような組合せであれ、それらの組合せ。
治療効果的な用量又は量は、症状又は状態を改善するために十分である有効成分のそのような量を示す。そのような化合物の治療効力及び毒性を、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学手順によって、例えば、ED50(集団の50%において治療効果的な用量)及びLD50(集団の50%に対して致死的な用量)によって求めることができる。治療効果と毒性影響との間における用量比が治療指数であり、これはLD50/ED50の比率として表すことができる。
前記から、本発明は、上記抗体の少なくとも1つのCDRを含むHTT結合性分子及び/又はそのフラグメントのどのような使用をも包含し、具体的には、上記で述べられるような、変異したHTT種、及び/又は凝集したHTT種ならびに/あるいはそのフラグメントに関連づけられる疾患又は障害(例えば、HD及び/又はHTTアミロイドーシスなど)の診断及び/又は処置のためのそのような分子のどのような使用をも包含することが明らかである。好ましくは、前記結合性分子は本発明の抗体又はその免疫グロブリン鎖である。加えて、本発明は、本明細書中前記で記載される述べられた抗体のいずれかの1つの様々な抗イディオタイプ抗体に関連する。これらは、抗原結合部位の近くにおいて抗体の可変領域に位置する特有の抗原性ペプチド配列に結合する抗体又は他の結合性分子であり、例えば、対象から得られるサンプルにおける抗HTT抗体を検出するために有用である。1つの実施形態において、本発明は、HTTに関連づけられる疾患又は障害の予防的処置、治療的処置、ならびに/あるいは、HTTに関連づけられる疾患又は障害の進行又は処置に対する応答をモニターすることにおいて使用されるための、本明細書中上記において、また下記で定義されるような抗体、又は、前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するHTT結合性分子、本明細書中で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクター又は細胞、あるいは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物又は診断組成物を提供し、好ましくは、この場合、前記障害は、ハンチントン病(HD)等の、HTTアミロイドーシスに関連する。
別の実施形態において、本発明は、本発明の上記で記載されたHTT結合性分子、抗体、抗原結合性フラグメント、ポリヌクレオチド、ベクターあるいは細胞のいずれか1つと、場合により、検出のための好適な手段(例えば、免疫又は核酸に基づく診断方法において従来から使用される試薬など)とを含む診断組成物に関連する。本発明の抗体は、例えば、抗体を液相において利用することができるか、又は、固相キャリアに結合させることができる免疫アッセイにおける使用のために適している。本発明の抗体を利用することができる免疫アッセイの例が、直接的様式又は間接的様式でのどちらであれ、競合的免疫アッセイ及び非競合的免疫アッセイである。そのような免疫アッセイの例が、放射免疫アッセイ(RIA)、サンドイッチアッセイ(イムノメトリックアッセイ)、フローサイトメトリーアッセイ及びウエスタンブロットアッセイである。本発明の抗原及び抗体は多くの異なるキャリアに結合させることができ、また、それらに特異的に結合する細胞を単離するために使用することができる。よく知られているキャリアの例には、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然セルロース及び修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース及びマグネタイトが含まれる。キャリアの性質は本発明の目的のために可溶性又は不溶性のどちらでも可能である。多くの異なる標識及び標識化方法が当業者には知られている。本発明において使用することができる標識のタイプの例には、酵素、放射性同位体、コロイド状金属、蛍光性化合物、化学発光化合物及び生物発光化合物が含まれる(本明細書中上記で議論された実施形態もまた参照のこと)。
さらなる実施形態によって、HTT結合性分子はまた、特に、本発明の抗体はまた、血液サンプル、血漿サンプル、血清サンプル、リンパサンプル又はいずれかの他の体液サンプル(例えば、唾液サンプル又は尿サンプルなど)である場合がある体液サンプルを検査された個体から得ること、及び、体液サンプルを、抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件のもとで本発明の抗体と接触させることによって、障害を個体において診断するための方法において使用される場合がある。そのような複合体のレベルがその後、この技術分野において知られている方法によって求められ、コントロールサンプルにおいて形成されるレベルよりも有意に大きいレベルにより、疾患が、検査された個体において示される。同じ様式で、本発明の抗体が結合する特異的抗原もまた使用される場合がある。したがって、本発明は、結合性分子、例えば、本発明の抗体又はその抗原結合性フラグメントを含むインビトロ免疫アッセイに関連する。
本発明のさらなる実施形態において、本発明のHTT結合性分子(具体的には抗体)はまた、個体における疾患又は障害の診断を、生検物を試験された個体から得ることによって行うための方法において使用される場合がある。
この関連において、本発明はまた、この目的のために具体的に設計される手段に関連する。例えば、抗体に基づくアレイが使用される場合があり、アレイには、例えば、HTTを特異的に認識する本発明の抗体又はその同等な抗原結合性分子が負荷される。マイクロアレイでの免疫アッセイの設計が、Kusnezow他、Mol.Cell Proteomics 5(2006)、1681〜1696において要約される。したがって、本発明はまた、本発明に従って特定されるHTT結合性分子が負荷されるマイクロアレイに関連する。
1つの実施形態において、本発明は、変異したHTT種、及び/又は凝集したHTT種ならびに/あるいはそのフラグメントに関連づけられる疾患又は障害を対象において診断する方法であって、診断される対象から得られるサンプルにおけるHTTならびに/あるいは変異したHTT、及び/又は凝集したHTTの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体、HTT結合性フラグメント、又は、それらのいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するHTT結合性分子を用いて明らかにすることを含み、この場合、病理学的に変異したHTT、及び/又は凝集したHTTの存在が、HD及び/又はHTTアミロイドーシスについて示すものであり、また、生理学的HTTのレベルとの比較において、病理学的に変異したHTT及び/又は凝集したHTTのレベルの増大が、前記対象のHD及び/又はHTTアミロイドーシスの進行について示すものである方法に関連する。
診断される対象は疾患について無症候性又は病状発現前である場合がある。好ましくは、コントロール対象が、変異したHTT、及び/又は凝集したHTTに伴う疾患(例えば、ハンチントン病(HD))を有しており、ただし、この場合、病理学的に変異したHTT、及び/又は凝集したHTTのレベルと、参照標準との間における類似性により、診断される対象はHTTアミロイドーシスを有するか、又は、HTTアミロイドーシスを発症する危険性があることが示される。代替において、又は、加えて、第2のコントロールとして、コントロール対象はHTTアミロイドーシスを有しておらず、ただし、この場合、生理学的HTTのレベルならびに/あるいは変異したHTT、及び/又は凝集したHTTのレベルと、参照標準との間における違いにより、診断される対象はHTTアミロイドーシスを有するか、又は、HTTアミロイドーシスを発症する危険性があることが示される。好ましくは、診断される対象と、コントロール対象とは、年齢が一致する。分析されるサンプルは、どのような体液であれ、病理学的に変異したHTT及び/又は凝集したHTTを含有することが疑われる体液である場合があり、例えば、血液、血漿、血清、尿、腹腔液、唾液又は脳脊髄液(CSF)である場合がある。本発明の別の局面では、本発明の抗体は、可溶性HTT及び凝集したHTTを、例えば、Baldoら(Chem.Biol.19(2)(2012),264−275 その開示内容、特に273頁〜274頁の実験手順は本願明細書に取り込まれる。)が記載したTR−FRETベースの二重免疫アッセイを利用して検出することに使用され得る。
そのうえ、哺乳動物細胞は線維性ポリグルタミンペプチド凝集物の内部移行を培養中に引き起こし、これにより、細胞質区画に近づけ、かつ、ユビキチン−プロテアソーム系の成分及び細胞質シャペロンと一緒にアグリソームに共隔離することができることが、例えば、Ren他、Nature Cell Biol.11(2)(2009)、219〜225に記載されている。これらの内部移行した線維性凝集物は可溶性の細胞質タンパク質を選択的に漸加させることができ、また、遺伝的な表現型を、相同的なアミロイド形成タンパク質を染色体遺伝子座から発現する細胞に与えることができた。したがって、本発明の1つの実施形態において、抗HTT抗体は、Pecho−Vriesling他、Nat.Neurosci.(2014)、doi:10.1038/nn.3761によってハンチンチン又は神経変性に関与する他のタンパク質(例えば、α−シヌクレインなど)について示されるように、「毒性」HTT種の細胞外拡大又は経ニューロン伝播を軽減させることができる;例えば、Guo他、Nat.Med.20(2)(2014)、130〜138を参照のこと。
生理学的HTTのレベルならびに/あるいは変異したHTT、及び/又は凝集したHTTのレベルが、例えば、ウエスタンブロット、免疫沈殿、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、二次元ゲル電気泳動、質量分析法(MS)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型MS(MALDI−TOF)、表面増強レーザー脱離イオン化−飛行時間(SELDIーTOF)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、多次元液体クロマトグラフィー(LC)それに続くタンデム質量分析(MS/MS)、及び、レーザーデンシトメトリーから選ばれる1つ又は複数の技術によってHTTを分析することを含む、この技術分野において知られているいずれかの好適な方法によって評価される場合がある。好ましくは、HTTの前記インビボ画像化は、シンチグラフィー、陽電子放射断層撮影法(PET)、単一光子放射型断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法又は磁気共鳴画像法(MRI)を含む。
本発明の1つの態様において、本発明の抗体又は前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するHTT結合性分子、本明細書中上記で定義されるようなポリヌクレオチド、ベクター又は細胞、あるいは、それらのいずれか1つを含む医薬組成物又は診断組成物が、HTTに関連づけられる疾患又は障害の予防的処置、治療的処置、ならびに/あるいは、そのような疾患又は障害の進行又は処置に対する応答をモニターすることにおける使用のために提供される。したがって、一般には、本発明はまた、対象におけるHTTに関連づけられる疾患又は障害(例えば、HTTアミロイドーシスなど)を診断する、又はその進行をモニターする方法であって、診断される前記対象からのサンプルにおけるHTTの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体又は前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するHTT結合性分子を用いて明らかにすることを含み、ただし、この場合、変異したHTT種、ミスフォールドしたHTT種、及び/又は凝集したHTT種あるいはそのフラグメントの存在が、前記疾患又は障害について示すものである方法に関連する。1つの実施形態において、対象におけるHTTアミロイドーシスを診断する、又はその進行をモニターする前記方法であって、診断される対象からのサンプルにおける変異したHTT種、及び/又は凝集したHTT種ならびに/あるいはそのフラグメントの存在を、本発明の少なくとも1つの抗体又は前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するHTT結合性分子を用いて明らかにすることを含み、ただし、この場合、変異したHTT種、及び/又は凝集したHTT種ならびに/あるいはそのフラグメントの存在が、前駆症状的、前駆的又は臨床的なHTTアミロイドーシスを示すものであり、また、生理学的HTTのレベルに対する比較において、あるいは、健康なコントロール対象に由来する参照サンプル、又は、同じ対象からのコントロールサンプルに対する比較において、HTT凝集物のレベルの増大が、症状発現前、前駆的又は立証されたHTTアミロイドーシスの進行について示すものである方法が提供される。1つの実施形態において、前記方法は、本明細書中上記で定義されるようなHTTに関連づけられる障害の一群からのいずれか他の疾患又は障害を診断するために、あるいはその進行をモニターするために同様にまた使用されることが、当業者によって理解されるであろう。
上記で示されるように、本発明の抗体、そのフラグメント、及び、本発明の抗体及びそのフラグメントと同じ結合特異性の分子は、インビトロだけでなく、インビボにおいても同様に使用される場合があり、診断的適用のほかに、治療的適用が同様に実行される場合がある。したがって、1つの実施形態において、本発明はまた、ヒト又は動物の身体におけるHTTのインビボ検出のための組成物、あるいは、治療剤及び/又は診断剤をヒト又は動物の身体においてHTTに対して標的化するための組成物を調製するための、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含むHTT結合性分子に関連する。潜在的可能性のある治療剤及び/又は診断剤が、本明細書中上記で示されるような、HTTアミロイドーシスの処置において有用である治療剤、及び、潜在的可能性のある標識の非網羅的な列挙から選ばれる場合がある。インビボ画像化に関して、1つの好ましい実施形態において、本発明は、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記HTT結合性分子を提供し、前記インビボ画像化が、陽電子放出断層撮影法(PET)、単一光子放射断層撮影法(SPECT)、近赤外(NIR)光学的画像法又は磁気共鳴画像法(MRI)を含む。さらなる実施形態において、本発明はまた、本明細書中上記で定義されるように、対象におけるHTTに関連づけられる疾患又は障害を診断するか、又はその進行をモニターする方法において使用するための、本発明の抗体の少なくとも1つのCDRを含む前記HTT結合性分子、あるいは、上記で指定されるインビボ画像化方法のための組成物を調製するための前記分子を提供する。
VII.凝集特異的なHTTエピトープを有するペプチド
さらなる態様において、本発明は、本発明のいずれかの抗体によって特異的に認識されるHTTのpolyP領域のエピトープを有するペプチドに関連する。好ましくは、そのようなペプチドは、抗体、あるいは、1つ又は複数のアミノ酸が置換され、欠失され、及び/又は付加されるその改変された配列によって認識される独特な直鎖状エピトープとして、配列番号146、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150、配列番号152、配列番号153、配列番号155、配列番号156、配列番号139、配列番号151、配列番号154、配列番号158、配列番号161、配列番号157、配列番号159、配列番号160に示されるようなアミノ酸配列を含むか、又は、そのようなアミノ酸配列からなり、ペプチドは本発明のいずれかの抗体によって認識され、好ましくは、抗体NI−302.74C11、抗体NI−302.15F9、抗体NI−302.39G12、抗体NI−302.11A4、抗体NI−302.22H9、抗体NI−302.37C12、抗体NI−302.55D8、抗体NI−302.78H12、抗体NI−302.71F6、抗体NI−302.33C11、抗体NI−302.44D7、抗体NI−302.7A8、抗体NI−302.3D8、抗体NI−302.46C9、抗体NI−302.11H6、抗体NI−302.18A1、抗体NI−302.52C9又は抗体NI−302.8F1によって認識される。
さらなる局面において、本発明は、本発明のいずれかの抗体によって特異的に認識されるHTTのプロリンリッチ領域のエピトープを有するペプチドに関連する。好ましくは、そのようなペプチドは、抗体、あるいは、1つ又は複数のアミノ酸が置換され、欠失され、及び/又は付加されるその改変された配列によって認識される独特な直鎖状エピトープとして、配列番号140、配列番号141、配列番号142、配列番号143、配列番号200に示されるようなアミノ酸配列を含むか、又は、そのようなアミノ酸配列からなり、ペプチドは本発明のいずれかの抗体によって認識され、好ましくは、抗体NI−302.63F3、抗体NI−302.31F11、抗体NI−302.2A2、抗体NI302.15D3又は抗体NI−302.64E5によって認識される。
さらに、本発明は、本発明のいずれかの抗体によって特異的に認識されるHTTのC末端領域のエピトープを有するペプチドに関連する。好ましくは、そのようなペプチドは、抗体、あるいは、1つ又は複数のアミノ酸が置換され、欠失され、及び/又は付加されるその改変された配列によって認識される独特な直鎖状エピトープとして、配列番号145又は配列番号202に示されるようなアミノ酸配列を含むか、又は、そのようなアミノ酸配列からなり、ペプチドは本発明のいずれかの抗体によって認識され、好ましくは、抗体NI−302.35C1又は抗体NI−302.72F10によって認識される。
さらなる態様において、本発明は、本発明のいずれかの抗体によって特異的に認識されるHTTのN末端領域のエピトープを有するペプチドに関連する。好ましくは、そのようなペプチドは、上記抗体によって認識される特有な線状エピトープとして配列番号144に示されるようなアミノ酸配列、或いは、1つ又は複数のアミノ酸が置換され、欠失され、及び/又は付加されるその改変された配列を含み、或いは、そのようなアミノ酸配列又はそのような改変された配列からなり、ただし、このペプチドは本発明のいずれかの抗体によって認識され、好ましくは抗体NI−302.15E8によって認識される。
そのうえ、1つの実施形態において、本発明は、本発明のいずれかの抗体によって特異的に認識されるHTTのQ/Pリッチ領域のエピトープを有するペプチドに関連する。好ましくは、そのようなペプチドは、上記抗体によって認識される特有な線状エピトープとして配列番号201に示されるようなアミノ酸配列、或いは、1つ又は複数のアミノ酸が置換され、欠失され、及び/又は付加されるその改変された配列を含み、或いは、そのようなアミノ酸配列又はそのような改変された配列からなり、ただし、このペプチドは本発明のいずれかの抗体によって認識され、好ましくは抗体NI−302.7D8によって認識される。
加えて、1つの実施形態において、本発明は、本発明のいずれかの抗体によって、好ましくは、抗体NI−302.6N9、抗体NI−302.12H2、抗体NI−302.8M1及び/又は抗体NI−302.4A6によって特異的に認識されるHTTのエピトープを有するペプチドで、1つ又は複数のアミノ酸が置換され、欠失され、及び/又は付加されるペプチドであって、本発明のいずれかの抗体によって認識されるペプチドに関連する。
本発明の1つの実施形態において、そのようなペプチドは、対象における変異したHTT種、ミスフォールドしたHTT種、及び/又は凝集したHTT種ならびに/あるいはそのフラグメントに関連づけられる疾患又は障害(例えば、HD及び/又はHTTアミロイドーシスなど)を診断するために、又はモニターするために使用される場合があり、ただし、この場合、これは、前記対象の生物学的サンプルにおいてペプチドに結合する抗体の存在を明らかにする工程を含み、本発明の上記ペプチドを認識する抗体のレベルを測定すること、及び、測定結果を、同等の年齢及び性別の健康な対象において見出されるレベルに対して比較することによって前記対象におけるそのような疾患の診断のために使用される。したがって、1つの実施形態において、本発明は、対象における前駆症状的又は臨床的なHDを暗示するHTTアミロイドーシスを診断するための方法であって、上記で定義されるようなペプチドに結合する抗体の存在を前記対象の生物学的サンプルにおいて明らかにすることを含む方法に関連する。この方法によれば、本発明の前記ペプチドについて特異的である測定された抗体の上昇したレベルが、前駆症状的又は臨床的なHDを前記対象において診断することについて、あるいは、本明細書中上記で定義されるようなHTTに関連づけられる障害の一群からのいずれか他の疾患又は症状を前記対象において診断することについて示すものである。本発明のペプチドは、本明細書中前記で記載されるように、アレイ、キット及び組成物においてそれぞれ配合される場合がある。これに関連して、本発明はまた、HD及び/又はHTTアミロイドーシスを診断すること、又はその進行をモニターすることにおいて有用なキットであって、本発明の少なくとも1つの抗体又は前記抗体のいずれか1つの実質的に同じ結合特異性を有するHTT結合性分子、本明細書中上記でそれぞれ定義されるようなポリヌクレオチド、ベクター又は細胞及び/又はペプチドを、必要な場合には使用のための試薬及び/又は説明書と一緒に含むキットに関連する。
上記開示は本発明を概して記載する。別途言及されない限り、本明細書中で使用されるような用語には、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(Oxford University Press、1997年、2000年改訂及び2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)において提供されるような定義が与えられる。いくつかの文書が本明細書の本文を通して引用される。完全な書誌的引用が請求項の直前において明細書の最後に見出される場合がある。すべての引用された参考文献(本出願明細書を通して引用されるような文献参照物、発行された特許、公開された特許出願、及び、製造者の仕様書、説明書などを含む)の内容が、本明細書により明示的に、参照によって組み込まれる;しかしながら、どのような文書であれ、引用される文書は実際に本発明に関して先行技術であることを何ら認めるものではない。
より完全な理解を、例示のみの目的のために本明細書中に提供され、かつ、本発明の範囲を限定するために意図されない下記の具体的な実施例を参照することによって得ることができる。
実施例1:抗HTT抗体の単離及び特定
HTT及び/又は変異したHTT種及び/又は凝集したHTT種並びに/或いはそれらのフラグメントを標的とする様々なヒト由来抗体を、国際特許出願公開WO2008/081008(その開示内容は参照によって本明細書中に組み込まれる)に記載される方法を改変して利用して特定した。具体的には、組換え発現によって得られる野生型HTTタンパク質及び変異HTTタンパク質を、HTT標的化抗体を特定するために生来型立体配座体及び変異型−凝集型の立体配座体の両方で使用した。変異型−凝集型の立体配座体を、実施例3で記載される手順に類似する手順を使用してインビトロで産生させた。
実施例2:抗体配列の決定
上記で特定された抗HTT抗体の可変領域のアミノ酸配列をそれらのmRNA配列に基づいて決定した(図1を参照のこと)。簡単に記載すると、選択された不死化されていないメモリーB細胞培養物の生存B細胞を集めた。続いて、選択された抗HTT抗体を産生する細胞からのmRNAを抽出し、cDNAに転換し、抗体の可変領域をコードする配列をPCRによって増幅し、プラスミドベクターにクローン化し、配列決定した。
簡単に記載すると、ヒト免疫グロブリン生殖系列レパートリーのすべての配列ファミリーを表すプライマーの組合せを、リーダーペプチド、Vセグメント及びJセグメントの増幅のために使用した。1回目の増幅を、5’末端におけるリーダーペプチド特異的プライマーと、3’末端における定常領域特異的プライマーとを使用して行った(Smith他、Nat Protoc.4(2009)、372〜384)。重鎖及びカッパ軽鎖のために、2回目の増幅を、5’末端におけるVセグメント特異的プライマーと、3’末端におけるJセグメント特異的プライマーとを使用して行った。ラムダ軽鎖のために、2回目の増幅を、5’末端におけるVセグメント特異的プライマーと、3’末端におけるC領域特異的プライマーとを使用して行った(Marks他、Mol.Biol.222(1991)、581〜597;de Haard他、J.Biol.Chem.26(1999)、18218〜18230)。
所望の特異性を有する抗体クローンの特定を、完全な抗体を組換え発現させたときにELISAでの再スクリーニングによって行った。完全なヒトIgG1抗体の組換え発現が、可変重鎖配列及び可変軽鎖配列を、可変領域配列を5’末端において、リーダーペプチドをコードする配列により補い、かつ、3’末端において、適切な定常ドメインをコードする配列により補う発現ベクターに「正しい読み枠で」挿入したときに達成された。その目的を達成するために、プライマーは、抗体発現ベクターへの可変重鎖配列及び可変軽鎖配列のクローニングを容易にするために設計される制限部位を含有した。重鎖免疫グロブリンを、シグナルペプチドとヒト又はマウスの免疫グロブリンガンマ1の定常ドメインとを有する重鎖発現ベクターに読み枠を合わせて免疫グロブリン重鎖のRT−PCR産物を挿入することによって発現させた。カッパ軽鎖免疫グロブリンを、シグナルペプチドとヒトカッパ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを提供する軽鎖発現ベクターに読み枠を合わせてカッパ軽鎖のRT−PCR産物を挿入することによって発現させた。ラムダ軽鎖免疫グロブリンを、シグナルペプチドとヒト又はマウスのラムダ軽鎖免疫グロブリンの定常ドメインとを提供するラムダ軽鎖発現ベクターに読み枠をラムダ軽鎖のRT−PCR産物を合わせて挿入することによって発現させた。
機能的な組換えモノクローナル抗体が、Ig重鎖発現ベクターと、カッパIg軽鎖発現ベクター又はラムダIg軽鎖発現ベクターとをHEK293細胞又はCHO細胞(或いはヒト起源又はマウス起源の他の適切なレシピエント細胞株のいずれか)に共トランスフェクションしたときに得られた。組換えヒトモノクローナル抗体を続いて、標準的なプロテインAカラム精製を使用して馴化培地から精製した。組換えヒトモノクローナル抗体を、一過性にトランスフェクションされた細胞又は安定的にトランスフェクションされた細胞をそのどちらであっても使用して無限の量で産生させることができる。組換えヒトモノクローナル抗体を産生する細胞株を、Ig発現ベクターをそのまま使用することによって、又は、Ig可変領域を異なる発現ベクターに再クローニングすることによってそのどちらでも樹立することができる。誘導体、例えば、F(ab)、F(ab)2及びscFvなどもまた、これらのIg可変領域から作製することができる。フレームワーク領域及び相補性決定領域をデータベース(例えば、Abysis(http://www.bioinf.org.uk/abysis/)及びhttp://www.imgt.org/など)において利用可能な参照抗体配列との比較によって決定し、これらの領域に、Kabat番号表記スキーム(http://www.bioinf.org.uk/abs/)を使用して注釈を付けた。
実施例3:HTTエクソン1タンパク質の発現
方法
組換えハンチンチンエクソン1タンパク質のGST−HttExon1Q21(GST−HD21)、GST−HttExon1Q35(GSTHD35)及びGST−HttExon1Q49(GST−HD49)の発現及び精製
21回、35回又は49回のCAG反復のポリQ長さを有するヒトハンチンチンのエクソン1を、N末端のグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)タグにPreScission切断部位とともにそれぞれ融合されてコードするpGEX−6P−1発現ベクター(GE Healthcare)(図2Aを比較のこと)を大腸菌株BL21において発現させた。一晩の細菌培養物(37℃、220rpm)を1:25で希釈し、発現を1mMのIPTG(Sigma、I1284)の添加によって0.5〜0.6の吸収600において4時間誘導し、さらなるインキュベーションを36℃で行った(220rpm)。培養物を、さらに1%のグルコースを伴う一晩培養物のために、100μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地において37℃で成長させた。組換えGST−HttExon1タンパク質を、グルタチオンアガロース(Sigma、G4510)への結合によって精製した。簡単に記載すると、細菌ペレットを、20ml〜40mlの冷たい緩衝液1(50mM NaH2PO4、5mM Tris、150mM NaCl、1mM EDTA、pH8、5mg/mlの最終的リゾチーム、プロテアーゼ阻害剤コンプリート(Roche))に再懸濁し、氷上で60分間インキュベーションし、超音波処理し、Triton−X100を加え(0.1%の最終濃度)、氷上での5分間のインキュベーションの後、14,000gでの90分間の遠心分離に供した。グルタチオンアガロースを上清に加え、4℃で2時間インキュベーションし、1000gで10分間遠心分離し、上清を除いた後で冷PBSにより2回洗浄した。溶出を、10mMの還元型グルタチオンを伴う1mlの緩衝液1(pH9)において5分間行った。この工程を、さらなるタンパク質が溶出されなくなるまで5回〜15回繰り返した。貯められた上清を緩衝液(50mM tris(pH7.4)、150mM NaCl、1mM EDTA、1%グリセロール)に対して一晩透析し(10kDのMWCO、Pierce)、小分け物を−80℃で貯蔵した。
SDS−PAGE分析
精製された組換えGST−HttEx1タンパク質をグラジエントSDS−PAGE(NuPAGE Bis−Tris 4〜12%;Invitrogen、Basel、スイス)によって分離し、その後、クーマシーブリリアントブルーによる染色又はニトロセルロースメンブランでのエレクトロブロッティングを行った。ブロットを一次抗体のMab5492(Chemicon N末端aa1−82エピトープ、Pリッチドメイン)又はNI−302.37C12とインキュベーションし、その後、HRPとコンジュゲート化されるヤギ抗マウスIgG二次抗体、又は、HRPとコンジュゲート化されるロバ抗ヒトIgG二次抗体とインキュベーションした。ブロットを、ECL及びImageQuant LAS4000検出(GE Healthcare、スイス)を使用して発色させた。
図2Bに示されるように、上記の種々の組換えGST−HttEx1タンパク質が、SDS−PAGE後のクーマシー染色によって明らかにされるように首尾よく発現し、精製された。
実施例4:ドットブロット及びフィルター遅延による凝集状態の特徴づけ
HD21、HD35及びHD49のタンパク質凝集速度論を特徴づけるために、フィルター遅延分析及びドットブロット分析を行った。
したがって、初めに、凝集反応を下記のように行った:組換えGST−HttExon1タンパク質を融合タンパク質として発現させ、精製することができる。GSTタグがPreScissionプロテアーゼ(PP)によって融合タンパク質から切断されるとすぐに、ハンチンチンエクソン1タンパク質の凝集反応が直ちに始まる。反応開始前に、GST−HttExon1タンパク質を100000gで30分間遠心分離した。清澄化されたタンパク質溶液を冷たい凝集緩衝液(0.05M Tris/HCL(pH7)、0.15M NaCl、1mM EDTA)で2μMのタンパク質濃度に希釈し、1mM DTTと、PreScissionプロテアーゼ(GE Healthcare)とを加えた。反応液は、300rpmでの回転を行いながら室温でインキュベーションされ、凝集反応が、示された時間間隔の後、−80℃での瞬間凍結によって停止させられた。続いて、HD21、HD35及びHD49の各凝集反応液の一部を、1時間、3時間、5時間、7時間及び24時間のインキュベーション時間の後でそれぞれ取り出し、ドライアイス上で瞬間凍結し、−80℃で貯蔵した。
ドットブロット分析のために、サンプルを氷上で解凍し、希釈し、真空をメンブランの下側のチャンバーにおいて加えるフィルターデバイスを用いてニトロセルロース転写メンブランに転写した。その目的を達成するために、メンブランをPBSにより平衡化し、チャンバーに取り付け、ウエルあたり100μlのPBSにより洗浄した。サンプルを負荷し、メンブランを通して完全に吸引し、その後、PBSによる3回の洗浄を行った。デバイスを解体し、メンブランを室温で15分間、簡単に風乾し、ブロッキング緩衝液(PBS緩衝液において3%のBSA、0.1%のTween20)により室温で1時間ブロッキング処理し、ポリクローナルなHD−1抗体(1:10,000、E.Wanker教授(MDC、Berlin)からの譲渡物)とインキュベーションした。洗浄後、メンブランを、HRPにカップリングされる抗ウサギIgG抗体とRTで1時間インキュベーションし、ブロットを、ECL及びImageQuant LAS4000検出(GE Healthcare、スイス)を使用して発色させた。
図2C(左側)に示されるドットブロットから明白であるように、ポリクローナルなHD−1抗体により、HD21、HD35及びHD49の各タンパク質が、それらの凝集状態にかかわらず検出された。
フィルター遅延アッセイのために、サンプルを氷上で解凍し、変性緩衝液(4% SDS、100mM DTT)に希釈し、真空チャンバーを使用して、細孔サイズが0.2umである酢酸セルロースメンブランを通して転写した:その目的を達成するために、メンブランをPBSにおける0.1%のSDSにおいて平衡化し、真空チャンバーに取り付け、ウエルを0.1%のSDSにより洗浄した。サンプルを加え、真空によってメンブランでろ過し、0.1%のSDSにより3回洗浄した。その後、メンブランをチャンバーから取り出し、簡単に風乾し、ブロッキング緩衝液(PBS緩衝液において5%のミルク、0.1%のTween20)によりRTで1時間ブロッキング処理し、ポリクローナルなHD−1抗体(1:5,000、Scherzinger他、Cell 90(1997)、549〜558)とインキュベーションし、さらには上記のように処理した。
フィルター遅延アッセイにおいて、メンブランによって保持される最初の凝集物が、24時間のインキュベーションの後、HD35について検出された。伸長したポリQ域を有するHD49タンパク質は、GSTタグ切断後3時間もの早期において不溶性の凝集物を形成する;図2Cの右側(FRA)を参照のこと。
実施例5:ハンチンチンエクソン1凝集物の特徴づけ
HD35及びHD49のエクソン1凝集物形成を確認し、特徴づけるために、電子顕微鏡法(EM)を行った。簡単に記載すると、1時間後、3時間後及び24時間後でそれぞれ得られるHD49凝集反応液、又は、24時間後にHD35から得られるサンプルを電子顕微鏡法によって分析した。サンプルをグロー放電により炭素被覆された銅グリッドに吸着させた。過剰なサンプルをろ紙でのブロッティングによって除いた。グリッドを2%(w/v)酢酸ウラニルにより1分間染色し、過剰な酢酸ウラニルを蒸留脱イオン水により洗浄した。グリッドを風乾し、100kVの加速電圧を用いるPhilips社のCM100透過型電子顕微鏡を使用して画像化した。
HD35凝集反応液のEM分析では、プロトフィブリル構造物に類似する、EMによって視認できるより大きい凝集物が24時間のインキュベーションの後で明らかにされた(図2D[E])。HD49では、より迅速な凝集速度論が示され、この場合、原線維が1時間のインキュベーションの後で既に検出可能であり(図2D[F])、原線維はサイズ及び数が凝集時間とともに増大した(図2D[C、D、G、H])。これらの観測結果は、0.2μmよりも大きい凝集物が酢酸セルロースメンブランに保持されるフィルター遅延アッセイで得られる結果と一致していたものであり、これらの観測結果から、ハンチンチンエクソン1凝集物が首尾よく調製されたことが確認される;実施例4もまた参照のこと。
実施例6:直接ELISAを利用する抗ポリPドメイン抗体NI−302.33C11の結合親和性及びEC50
21回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のハンチンチンエクソン1タンパク質に対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.33C11の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、直接ELISAを行った。簡単に記載すると、96ウエルマイクロプレート(Corning)を、GST−HD21、GST−HD49或いは凝集型HD21又は凝集型HD49のいずれかにより、被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において5μg/mlの濃度で被覆した。非特異的結合部位を、RTで1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。一次抗体を示された濃度に希釈し、RTで1時間インキュベーションした。結合を、HRPとコンジュゲート化されるロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体、又は、HRPとコンジュゲート化されるヤギ抗マウスIgG(H+L)特異的抗体のどちらかを使用して明らかにし、その後、HRP活性の測定を標準的な比色アッセイで行った。続いて、EC50値を、GraphPad Prismソフトウエア(San Diego、米国)を使用する非線形回帰によって推定した。
21回又は49回のポリQ反復を有する凝集型及び可溶性のHTTエクソン1タンパク質についてのヒト由来HTT抗体NI−302.33C11のEC50を、5μg/mlの濃度での上記異なる調製物の被覆を用いる直接ELISAによって求めた。図3A及び図3Bに示されるように、抗体NI−302.33C11は、病理学的に凝集したHTTエクソン1のHD49を含む4つすべての種に対して類似する大きい親和性で結合し、EC50がおよそ100pMであった。
実施例7:ドットブロット及びフィルター遅延アッセイを利用する抗HTT抗体の結合選択性
21回、35回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のハンチンチンエクソン1タンパク質に対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.33C11を特徴づけるために、フィルター遅延アッセイ及びドットブロットを行った。このため、実施例4で記載されるような、HD21、HD35及びHD49の凝集反応液の一部を、1時間、3時間、5時間、7時間及び24時間のインキュベーション時間の後で取り出し、ドライアイス上で急速凍結し、−80℃で貯蔵し、ドットブロットを実施例4で記載されるように行った。フィルター遅延アッセイもまた、実施例4で記載されるように行った。ただし、この場合には、メンブランをNI−302.33C11(1μg/mL)とインキュベーションした。
ドットブロット(図3C、左側)では、抗体NI−302.33C11により、伸長したポリQ域を有するハンチンチンの様々なタンパク質が優先的に検出されること(HD49>>HD35>HD21)が示され得る。そのうえ、シグナル強度が、HD35及びHD49の凝集反応液のインキュベーション時間の増大とともに増大した。
このことがまた、フィルター遅延分析で示される結果(図3C、右側)についても当てはまる。フィルター遅延分析では、NI−302.33C11により、0.2μmの細孔サイズのメンブランに保持されたHD35凝集物及びHD49凝集物が検出されることが示された。スポットされたタンパク質調製物に基づくこれらの知見により、抗体NI−302.33C11は、病原的なポリQ伸長を有する凝集型HTT立体配座体についての優先傾向を有することが示唆された。
実施例8:直接ELISAを利用する、無関係な凝集性タンパク質標的に対する抗HTT抗体の結合特異性及び結合選択性
HTTのポリP領域に結合し、無関係な凝集性タンパク質標的には結合しない抗体NI−302.33C11組換え抗体の結合特異性を明らかにするために、直接ELISAを、種々の標的タンパク質が被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において1μg/ml〜10μg/mlの濃度で被覆される96ウエルマイクロプレート(Corning)で行った。非特異的結合部位を、RTで1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。NI−302.33C11抗体を示された濃度に希釈し、RTで1時間インキュベーションした。結合を、HRPとコンジュゲート化されるロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体を使用して明らかにし、その後、HRP活性の測定を標準的な比色アッセイで行った。標的タンパク質についてのシグナルを、メジアンを超える増加倍数で計算した。
ヒト由来のNI−302.33C11は、HTTに対して、すなわち、凝集したHD49に対して特異的に結合し、顕著なアミロイド形成タンパク質を含む他の無関係なタンパク質標的に対する結合が認められないことが示され得る(図16Aを参照のこと)。
実施例9:HTT抗体NI−302.33C11の結合エピトープの評価
NI−302.33C11ヒト由来抗体によって認識されるハンチンチン(HTT)エピトープをマッピングするために、合成ペプチドを用いるペプチド走査分析によるエピトープマッピングを行った。
簡単に記載すると、重複するペプチドのスキャンをエピトープマッピングのために使用した。ヒトHTTエクソン1配列の配列を、10aaの重複が個々のペプチドの間にある合計で16個の線状の15量体ペプチドとして合成し(JPT Peptide Technologies、Berlin、ドイツ)、ニトロセルロースメンブランにスポットした。メンブランをメタノール中で5分間活性化し、その後、TBSにおいてRTで10分間洗浄した。非特異的結合部位を、室温で2時間、Roti(登録商標)−Block(Carl Roth GmbH+Co.KG、Karlsruhe、ドイツ)によりブロッキング処理した。ヒトNI−302.33C11抗体(1μg/ml)をRoti(登録商標)−BlockにおいてRTで3時間インキュベーションした。一次抗体の結合を、HRPコンジュゲート化ロバ抗ヒトIgGγ二次抗体を使用して明らかにした。ブロットを、ECL及びImageQuant LAS4000検出(GE Healthcare、スイス)を使用して発色させた。
図4に示されるように、NI−302.33C11の顕著な結合が、ペプチド番号7、8、9、13及び14に対して認められた。このことは、この抗体によって認識されるエピトープがハンチンチンのポリP反復ドメインに限定されることを示している。したがって、NI−302.33C11結合エピトープは、HTTのアミノ酸35−PPPPPPPP−42(配列番号139)及びアミノ酸63−PPPPPPPPPPP−72(配列番号162)の内部に限定されることが予想される。
実施例10:HTT抗体NI−302.33C11の、異なるエクソン1ペプチドに対する直接的ELISA結合によるエピトープマッピング
ハンチンチンエクソン1のBSAカップリングされたペプチドフラグメントに対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.33C11の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、BSAカップリングされたHttエクソン1ドメインペプチドを用いた直接ELISAを行った。
簡単に記載すると、96ウエルマイクロプレート(Corning)を、N末端アミノ酸1−19(MATLEKLMKAFESLKSFQQ、配列番号93)、Pリッチドメイン配列(PPQLPQPPPQAQPLLPQPQPP、配列番号94)、ポリP反復配列(PPPPPPPPPPP、配列番号95)又は14個のC末端アミノ酸(PPGPAVAEEPLHRP、配列番号96)のBSAカップリングされた合成ペプチド(Schafer−N、デンマーク)により、或いは全長型のGST−HD49エクソン1タンパク質により、被覆緩衝液(15mM Na2CO3、35mM NaHCO3、pH9.42)において5μg/mlで被覆した。非特異的結合部位を、RTで1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma−Aldrich、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。一次抗体を示された濃度に希釈し、RTで1時間インキュベーションした。結合を、HRPとコンジュゲート化されるロバ抗ヒトIgG Fcγ特異的抗体を使用して明らかにし、その後、HRP活性の測定を標準的な比色アッセイで行い、EC50値を、GraphPad Prismソフトウエア(San Diego、米国)を使用する非線形回帰によって推定した。
図5に示されるように、NI−302.33C11は、全長型のGST−HD49に対するのと同様に、BSAとカップリングされたポリPペプチドに対して大きい親和性で結合し、30pMの同等なEC50を有した。このことから、実施例9で示されるようなポリP配列に対するエピトープマッピングが確認される。
実施例11:組換えヒトNI−302.33C11抗ポリPドメイン抗体の純度及び完全性の評価
組換えヒトNI−302.33C11抗ポリPドメインリード抗体の純度及び完全性を評価するために、ヒトNI−302.33C11抗ポリPドメイン抗体をCHO−S細胞の一過性トランスフェクションによって発現させ、AktaシステムでのプロテインA親和性クロマトグラフィーによって精製した。PD−10カラムでの脱塩の後、抗体をPBSにおいて配合した。続いて、SDS−PAGE分析を下記のように行った。2μg及び10μgの精製された組換えヒトNI−302.33C11抗ポリPドメイン抗体をグラジエントSDS−PAGE(NuPAGE 4〜12% Bis−Trisゲル;Invitrogen)によって還元条件下で分離し、その後、クーマシー染色(SimplyBlue SafeStain、Invitrogen)を行った。
組換えヒトNI−302抗ポリPドメインリード抗体の還元条件下でのSDS−PAGE分析により、抗体の重鎖及び軽鎖に対応する2つの主要なバンドが、図6に示されるような予想されたサイズにおいて明らかにされ、その一方で、有意な混入物又はタンパク質分解生成物は何ら検出されなかった。
実施例12:ヒトHTT遺伝子導入マウスにおけるHTT抗体NI−302.33C11の特徴づけ
ヒトHTT遺伝子導入マウスの脳組織におけるハンチンチン病理に対するNI−302.33C11抗体の結合を評価するために、免疫組織化学を行った。B6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J遺伝子導入マウス系統(Mangiarini他、Cell 87(1996)、493〜506)は、ハンチントン病(HD)についての十分に特徴づけられたマウスモデルである。9週齢頃から始まるが、この動物モデルは、ヒトのハンチントン病を思わせるハンチンチンの核内封入体によって特徴づけられる進行性の病理を発症させる(Naver他、Neuroscience 122(2003)、1049〜1057)。進行した疾患段階(270日)にあるこれらのB6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J遺伝子導入マウスの脳半球をリン酸塩緩衝化の4%パラホルムアルデヒド溶液において固定処理し、パラフィン包埋し、5μmの切片を調製した。ギ酸及びクエン酸塩緩衝液による前処理の後、切片を、1nM、5nM又は50nMのヒトNI−302.33C11抗HTT抗体とインキュベーションし、その後、ビオチン化されたロバ抗ヒト二次抗体(Jackson Immunoresearch、1:250)とインキュベーションした。抗体シグナルを、Vectastain ABCキット(Vector Laboratories)により増幅し、ジアミノベンジジン(Pierce)により検出した。
図27に示されるように、ヒト由来のポリPドメイン抗体NI−302.33C11により、ニューロンの核内封入体病理の非常に顕著な染色が、ELISA分析及びドットブロット分析によって明らかにされるようなハンチンチン凝集物に対する大きい親和性結合と一致する最も低い1nMの濃度で既に明らかにされた(図27[E〜H])。5nM以上の濃度では、この抗体により、中間の棘状ニューロン全体がさらに染色され、そして、遺伝子非導入体の脳切片でもまた検出可能であった一層広まった広汎な染色がもたらされた。NI−302.33C11によって標的とされるポリpエピトープが無数の無関係なタンパク質にもまた存在したので、ある程度の交差反応性を除外することができない(図27[F〜H])。
実施例13:直接ELISAを利用する抗PリッチドメインNI−302.63F3抗体の結合親和性及び結合選択性の特徴づけ並びにEC50
21回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.63F3の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、直接ELISA及びEC50決定を実施例6(上掲)で記載されるように行った。
NI−302.63F3は、凝集型HTTエクソン1のHD49を含む4つすべての種に対して類似する大きい親和性で結合し、EC50がおよそ200pM〜400pMであることが示され得る(図7A及び図7B)。したがって、ヒト由来のHTT抗Pリッチドメイン抗体NI−302.63F3は、HTTエクソン1タンパク質の非切断のより線状の構造におけるのと同様に、HTTエクソン1タンパク質の凝集した構造において露出するエピトープをサブナノモル濃度範囲での大きい親和性により標的とする。
加えて、21回、35回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.63F3の結合を特徴づけることを、インキュベーションが1μg/mlのNI−302.63F3抗体により行われたという小さい改変とともに実施例7(上掲)で記載されるようなフィルター遅延アッセイ及びドットブロットを使用して行った。
ドットブロットでは、抗体NI−302.63F3により、伸長したポリQ域を有するHD49タンパク質が最も顕著に検出された(図7C、左側)。フィルター遅延分析では、NI−302.63F3により、0.2μmの細孔サイズのメンブランに保持されるHD35凝集物及びHD49凝集物が検出された(図7C、右側)。スポットされたタンパク質調製物に基づくこれらの知見により、抗体NI−302.63F3は、病原的なポリQ伸長を有する凝集型HTT立体配座体を認識することが明らかにされる。
そのうえ、無関係な凝集性タンパク質標的に対するNI−302.63F3組換え抗体の結合を明らかにするために、直接ELISAを実施例8(上掲)で記載されるように行った。図16Bに示されるように、ヒト由来NI−302.63F3はHTTに特異的に結合し、その一方で、無関係なタンパク質に対する結合は示すことができなかった。
実施例14:HTT抗体NI−302.63F3の結合エピトープの評価
NI−302.63F3ヒト由来抗体によって認識されるハンチンチンエピトープをマッピングするために、合成ペプチドを用いるエピトープマッピングを上記において実施例9で記載されるように行った。
図8に示されるように、NI−302.63F3の顕著な結合がペプチド番号10及び11に対して認められ、弱いシグナルがペプチド8及び9に関して認められた。このことは、この抗体によって認識されるエピトープがHTTの(ポリP反復領域間の)Pリッチドメインに限定されることを示している。したがって、NI−302.63F3結合エピトープは、HTTアミノ酸配列43−(PPPQL)PQPPPQAQPL−57(配列番号161及び配列番号140)の内部に限定されることが予測された。
実施例15:HTT抗体NI−302.63F3の、異なるエクソン1ペプチドに対する直接的ELISA結合によるエピトープマッピング
ハンチンチンエクソン1のBSAカップリングされたペプチドフラグメントに対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.63F3の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、BSAカップリングされたHttエクソン1ドメインペプチドを用いた直接ELISAと、EC50決定とを実施例10で記載されるように行った。
図9に示されるように、NI−302.63F3は、全長型のGST−HD49に対するのと同様に、BSAカップリングされたPリッチドメインペプチドに対して大きい親和性で結合し、200pM〜300pMの類似するEC50を有する。このことから、実施例14で示されるようなPリッチドメイン配列に対するエピトープマッピングが確認される。
実施例16:組換えヒトNI−302.63F3抗Pリッチドメイン抗体の純度及び完全性の評価
組換えヒトNI−302.63F3抗プロリンリッチドメイン抗体の純度及び完全性を評価するために、SDS−PAGE分析を、実施例11(上掲)で既に記載されるように行った。
組換えヒトNI−302.63F3抗Pリッチドメイン抗体の還元条件下でのSDS−PAGE分析により、抗体の重鎖及び軽鎖に対応する2つの主要なバンドが、予想されたサイズにおいて明らかにされた。有意な混入物又はタンパク質分解生成物は、図10に示されるように何ら検出されなかった。
実施例17:ヒトHTT遺伝子導入マウスにおけるHTT抗体NI−302.63F3の特徴づけ
ヒトHTT遺伝子導入マウスの脳組織におけるHTT病理に対するNI−302.63F3抗Pリッチドメイン抗体の結合の評価を、切片のインキュベーションが1nM又は50nMの抗Pリッチドメイン抗体により行われたという違いを伴って実施例12(上掲)で記載されるように評価した。
図28[E〜F]に示されるように、ヒト由来のNI−302.63F3抗Pリッチドメイン抗体により、ニューロンの核内封入体病理の顕著かつ非常に特異的な染色が、ELISA及びドットブロット分析によって明らかにされるようなHTT凝集物に対する高親和性の結合と一致してR6/1遺伝子導入動物の線条体及び皮質において1nM及び50nMの濃度で明らかにされた。しかしながら、図28[F]に示されるように、50nMの濃度で、抗体NI−302.63F3によりさらに、中間の棘状ニューロンの核全体が弱く染色された。
実施例18:直接ELISAを利用する抗C末端ドメイン抗体NI−302.35C1及びNI−302.72F10の結合親和性及び結合選択性の特徴づけ並びにEC50
21回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する組換えヒト由来HTT抗体のNI−302.35C1及びNI−302.72F10の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、直接ELISA及びEC50決定を実施例6(上掲)で記載されるように行った。
NI−302.35C1は、凝集型HTTエクソン1のHD49を含む4つすべての種に対して大きい親和性で結合し、EC50がおよそ2.7nMであることが示され得る(図11A及び図11Bを参照のこと)。
同様に、NI−302.72F10は4つすべての種に結合し、それにもかかわらず、NI−302.35C1とは異なる親和性を有する(凝集型HD21>>GST−HD21>>凝集型HD49>>GST−HD49)(図31C)。このことは、両方の抗体によって認識されるエピトープが異なることにより説明されるかもしれない(図20)。
したがって、ヒト由来のHTT抗C末端ドメイン抗体であるNI−302.35C1及びNI−302.72F10は、HTTの可溶性形態におけるのと同様に、HTTの凝集型形態において露出するエピトープを低いナノモル濃度の親和性により標的とする。
加えて、21回、35回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する組換えヒト由来HTT抗体のNI−302.35C1及びNI−302.72F10の結合を特徴づけるために、実施例7(上掲)で記載されるようなフィルター遅延アッセイ及びドットブロットを行った。
ドットブロットでは、抗体NI−302.35C1により、伸長したポリQ域を有するHTTの様々な構築物が優先的に検出された(HD49>HD35>>HD21;図11C、左側)。そのうえ、シグナル強度が、HD35及びHD49の凝集反応液のインキュベーション時間の増大とともに増大する。同様に、抗体NI−302.72F10により、伸長したポリQ域を有するHTTの様々な構築物が検出され、それにもかかわらず、異なる優先傾向を有していた(HD35>>HD49>HD21)。これに対して、シグナル強度が、HD35のみの凝集反応液のインキュベーション時間の増大とともに増大する(図32C)。
フィルター遅延分析では、NI−302.35C1により、0.2μmの細孔サイズのメンブランに保持されるHD35凝集物及びHD49凝集物が検出され(図11C、右側)、これに対して、NI−302.72F10により、HD35凝集物のみが検出された(図32C、右側)。メンブランに結合したタンパク質調製物に基づくこれらの知見により、抗体NI−302.35C1及び抗体NI−302.72F10は、病原的なポリQ伸長を有する凝集型HTT立体配座体を優先的に標的とすることが示唆された。
そのうえ、無関係な凝集性タンパク質標的に対するNI−302.35C1及びNI−302.72F10の組換え抗体の結合を明らかにするために、直接ELISAを実施例8(上掲)で記載されるように行った。図16Cに示されるように、ヒト由来NI−302.35C1と、図33Cに示されるように、ヒト由来NI−302.72F10とはHTTに特異的に結合し、その一方で、無関係なタンパク質に対する結合は示すことができなかった。
実施例19:HTT抗体NI−302.35C1の結合エピトープの評価
NI−302.35C1ヒト由来抗体によって認識されるハンチンチンエピトープをマッピングするために、合成ペプチドを用いるエピトープマッピングを上記において実施例9で記載されるように行った。
重複するペプチドのスキャンによるNI−302.35C1抗体結合エピトープの決定では、特異的なシグナルがもたらされなかった。したがって、この抗体を、他のHTT NI−302抗体について行われた方法で処理した場合、理由は不明であるが、個々のペプチドに対する特異的なシグナルが何らもたらされなかった。エピトープが、BSAにカップリングすることによってC末端ペプチドに首尾よくマッピングされた;実施例20もまた参照のこと。
実施例20:C末端ドメインHTT抗体NI−302.35C1の、異なるエクソン1ペプチドに対する直接的ELISA結合によるエピトープマッピング
HTTエクソン1のBSAカップリングされたペプチドフラグメントに対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.35C1の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、BSAカップリングされたHttエクソン1ドメインペプチドを用いた直接ELISAと、EC50決定とを実施例10で記載されるように行った。
図12に示されるように、NI−302.35C1は、BSAカップリングされたC末端ペプチドに対して、全長型のGST−HD49に対するのと同様に、大きい親和性で結合し、EC50値がそれぞれ、およそ0.7nM及び3.2nMである。このことから、エピトープがHTTエクソン1配列(71−PPGPAVAEEPLHRP−85、配列番号96)のC末端領域に位置付けられる。同じC末端ペプチドがプレートに直接被覆されたならば、弱い結合のみが認められた(EC50>100nM、データは示されず)。このことは、BSAにカップリングされたペプチドの提示がエピトープに対する結合を増大させ、そして、実施例20で示されるようなペプチド走査分析によるエピトープマッピングがなぜ機能しなかったかの説明であるかもしれないことを示唆する。
実施例21:組換えヒトNI−302.35C1抗Pリッチドメイン抗体の純度及び完全性の評価
組換えヒトNI−302.35C1抗C末端ドメイン抗体の純度及び完全性を評価するために、SDS−PAGE分析を、実施例11(上掲)で既に記載されるように行った。
組換えヒトNI−302.35C1抗C末端ドメイン抗体の還元条件下でのSDS−PAGE分析により、抗体の重鎖及び軽鎖に対応する2つの主要なバンドが、予想されたサイズにおいて明らかにされ、その一方で、有意な混入物又はタンパク質分解生成物は何ら検出されなかった(図13)。
実施例22:ヒトHTT遺伝子導入マウスにおけるHTT抗体NI−302.35C1の特徴づけ
ヒトHTT遺伝子導入マウスの脳組織におけるHTT病理に対するNI−302.35C1抗C末端ドメイン抗体の結合の評価を、切片のインキュベーションが5nM又は50nMの抗C末端ドメイン抗体により行われたという違いを伴って実施例12(上掲)で記載されるように評価した。
図29[E〜F]に示されるように、ヒト由来のNI−302.35C1抗C末端ドメイン抗体により、ニューロンの核内封入体病理の顕著な染色が、ELISA分析及びドットブロット分析によって明らかにされるようなHTT凝集物に対する高親和性の結合と一致してR6/1遺伝子導入動物の線条体において5nM及び50nMの濃度で明らかにされた。
実施例23:海馬薄片培養物における棘密度に対する、HTTを標的とするヒト由来抗体の影響の評価
抗体の発現及び精製
HTTエクソン1における異なったドメインを標的とするヒト由来抗体をCHO−S細胞の一過性トランスフェクションによって発現させ、AktaシステムでのプロテインA親和性精製によって精製した。PD−10カラムでの脱塩の後、抗体をPBSにおいて配合した。エンドトキシンレベルが10EU/ml未満であることが確認された。
海馬薄片培養
器官型海馬薄片培養物を、Stoppini他、J Neurosci Methods.(1991)、37(2):173〜82に従って調製し、培養した。要約すると、6日齢〜8日齢のB6CBA−Tg(HDexon1)62Gpb/1J遺伝子導入型及び遺伝子非導入型の同腹子を断頭し、脳を取り出し、両方の海馬を単離し、400μmの厚さの薄片に切断した。この方法により、1層〜4層の細胞層の厚さのままであり、かつ、十分に保存された器官型構成によって特徴づけられる薄い薄片が得られる。薄片を、1mlの培養培地(HEPES改変による46%最小必須培地Eagle、Earleの改変による25%基本培地、25%熱不活化ウマ血清、2mMグルタミン、0.6%グルコース、pH7.2)を含有する6ウエルプレートにおいてMillicell培養プレート挿入物(0.4μm、Millipore)の上で培養した。培養プレートを、5%CO2を含有する加湿雰囲気において37℃で保った。薄片を実験前の7日間培養で保った。培養培地を2日毎又は3日毎に交換した。7日目に、抗体を10μg/mlの濃度で加えた。10日目に、インビトロ薄片培養物に、液滴法(Shahani他、J Neurosci.31(2006)、6103〜6114)を使用してシンドビスウイルスを感染させた。棘分析のために、培養物を感染後4日目(インビトロでの14日)に固定処理した。薄片を、海馬の構造を保つために培養プレートメンブランに付着させたままにし、PBSによりすすいだ。その後、薄片を、4%スクロースを含有するPBSにおける4%パラホルムアルデヒドにより4℃で2時間、固定処理した。それぞれの樹状突起について、写真を撮影し、棘を30μm〜45μmの長さにわたって分析した。合計で12匹の遺伝子導入動物から得られる群あたり8個〜13個の薄片をそれぞれの抗体処理について定量化した。データは平均±SEMを表す。*p<0.05(MWU)、# p=0.05。
Tg(HDexon1)62Gpb/1J遺伝子導入マウスの海馬薄片培養物における樹状突起棘密度の定量化(図17B、図17D)により、53%の有意な低下が、生後6日の動物の海馬薄片を使用する遺伝子非導入の同腹子(図17A、図17C、図17E)と比較して、上記の実験設計によるインビトロでの14日後において明らかにされた。ヒト由来のNI−302抗体を7日間、10μg/mlの濃度で加えたとき、棘密度喪失の有意な減弱が抗体NI−302.31F11(図17F、p<0.05、t検定)及び抗体NI−302.63F3(p=0.05、t検定)については認められ、これに対して、抗体NI−302.33C11及び抗体NI−302.35C1は、試験された条件のもとでは明確な影響を示さなかった。
Tg(HDexon1)62Gpb/1J遺伝子導入マウスの海馬薄片培養物において示される、遺伝子非導入の同腹子と比較しての棘密度の有意な低下により、これは、HTT候補抗体を、HTT毒性を妨げることに対するその活性についてインビトロ試験するための好適なモデルであるという示唆がもたらされた。このモデルでは、HTTエクソン1の内部のPリッチドメインをともに標的とする抗体NI−302.63F3及び抗体NI−302.11F11は、アイソタイプコントロール抗体と比較して、棘密度を改善することができた。このことは、これらの抗体は、病理学的なポリQ伸長HTTの発現によってもたらされる棘密度に対する毒性影響を弱めることができることを示唆する。
実施例24:R6/1動物モデルの脳におけるNI−302抗体の浸透
本発明の抗HTT抗体の浸透を試験するために、遺伝子導入マウスモデルを利用した。具体的には、Tg(HDexon1)61Gpb/J遺伝子導入マウスは、ハンチントン病(HD)患者に由来するファージゲノムクローンから単離され、かつ、ヒトハンチンチン(HTT)遺伝子の5’末端を含有する1.9kbの導入遺伝子を有する。この導入遺伝子は、およそ1kbの5’UTR配列と、エクソン1(約130単位の伸長したCAG反復を有する)と、イントロン1の最初の262bpとから構成された。この構築物を単一細胞CBAxC57BL/6胚に顕微注入した。オスの創始体R6をCBAxC57BL/6のメスと交配し、これにより、いくつかの創始体系統を作製した。創始体系統R6/1に由来するマウスは、導入遺伝子が、遍在的に発現するただ1コピーの無傷なコピー体として組み込まれている。混合されたCBAxC57BL/6遺伝子背景での遺伝子導入マウスを、コンジェニック系統B6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/Jを作製するために12回を超えてC57BL/6Jと戻し交配した。
R6/1遺伝子導入マウスは、舞踏病様運動、不随意的な常同性運動、振戦及びてんかん発作、同様にまた、非運動障害成分(異常な発声を含む)を含めてHDの特徴の多くを模倣する進行性の神経学的表現型を示す。このマウスは疾患の経過を通して頻繁に排尿し、かつ、体重及び筋肉量の喪失を示す。神経学的には、このマウスは、HTTタンパク質及びユビキチンタンパク質の両方を含有するニューロンの核内封入体(NII)を発達させる。これらのNIIはまた、ヒトHD患者でも特定されている。HD症状の発症(週)齢が、この6/1系統については15週〜21週の間で生じることが報告される。
この研究動物は下記の性質を示し、古典的な耳標識法によって特定された:
系統:ヘミ接合性B6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J(Mangiarini他、Cell、87(1996)、493〜506)
供給元:Jackson Laboratory(Maine、米国)
性別:オス及びメス
日齢開始:230日〜260日
コホート:NI−302.31F11 合計:3匹のオス
NI−302.35C1 合計:3匹のオス
ビヒクル 合計:3匹のオス
脊髄のホモジネート化のために、B6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J遺伝子導入マウスを深く麻酔し、蠕動ポンプによって左心室から冷リン酸塩緩衝化生理的食塩水により経心的に灌流した。脳を切開し、ドライアイスで急速凍結した。組織サンプルを、ハンドソニケーター(Sartorius、Labsonic M)を用いて1:10(w/v)のDEA緩衝液(50mM NaCl、0.2% DEA、プロテアーゼ阻害剤コンプリート(Roche Diagnostics))においてホモジネートした。サンプルを4℃において100000xgで30分間遠心分離し、上清の小分け物を分析前に−80℃で貯蔵した。
下記のヒトIgG薬物レベルサンドイッチELISAでは、NI−302.35C1、NI−302.11F11のヒト抗体の血漿中レベルを、標準物としての既知濃度の対応する組換え抗体を使用して求めた。96ウエルマイクロプレート(Corning)を50mM炭酸塩被覆緩衝液(pH9.6)において1μg/mlでのロバ抗ヒトIgG(709−005−149、Jackson Immunoresearch)により被覆した。非特異的結合部位を、RTで1時間、2%のBSAを含有するPBS/0.1%Tween(登録商標)−20(Sigma、Buchs、スイス)によりブロッキング処理した。血漿サンプルを1:20,000及び1:100,000で希釈し、脳ホモジネートを1:5及び1:50で希釈し、両方を標準的な希釈曲線と一緒にRTで1時間インキュベーションした。結合を、検出抗体の抗ヒトHRP(709−036−098、Jackson Immunoresearch)を使用して明らかにし、その後、HRP活性の測定を標準的な比色アッセイで行った。血漿サンプル及び脊髄サンプルの濃度を個々の標準曲線に基づいて計算した。表6−1に示される値は2回の独立したELISA実験の平均値である。
血漿サンプル及び脳サンプルを、R6/1遺伝子導入マウスにおける50mg/kgの抗体NI−302.31F11、抗体NI−302.35C1の単回腹腔内注入の2日後に得た。血漿及び脳ホモジネートにおける抗体レベルを、ヒトサンドイッチIgG ELISAによって求めた(図18A及び図18B)。脳対血漿の薬物レベルの比が、ヒト由来抗体のNI−302.31F11及びNI−302.35C1について0.13±0.02%及び0.21±0.06%であるとそれぞれ求められた。これらの結果から、試験されたNI−302抗体の48時間脳浸透がHTT遺伝子導入マウスにおいて予想範囲にあることが示唆される。
実施例25:本発明に従って特定されるさらなる抗体の結合親和性及び結合特異性の特徴づけ
21回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対するさらなる特定された組換えヒト由来HTT抗体の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、種々の調製物が5μg/mlの濃度で被覆される直接ELISAと、EC50決定とを実施例6(上掲)で記載されるように行った。
異なるHTT種についての決定されたEC50が、図19、同様にまた、図31(A、D〜F)に示され、図20にまとめられる。ほとんどのヒト由来抗体が、サブナノモル濃度又は低ナノモル濃度のEC50で大きい親和性により結合した。いくつかの候補物(例えば、NI−302.37C12、NI−302.55D8、NI−302.11A4、NI−302.22H9又はNI−302.64E5など)は、切断されなかったGST−HTTタンパク質に対する優先した結合を有するようであり、他の抗体(例えば、NI−302.74C11、NI−302.71F6、NI−302.4A6、NI−302.12H2又はNI−302.8M1など)は、ELISAアッセイにおいて、すべてのHTT調製物に対する、類似するEC50値による大きい親和性結合を示した。NI−302.15F9はHD21に対するHD49の約5倍の優先を示し、EC50値が5nM〜35nMの範囲にあった。抗体33C11がこの実験ではコントロールとして役立った(図32G)。
したがって、一群の高親和性の組換えHTT特異的なヒト抗体が、健康な高齢者ヒトドナーコホートに由来するメモリーB細胞からクローン化され、組換え発現され、特徴づけられた。加えて、さらなる予備用抗体のためのスクリーニング活動が、異なる長さのCAG反復伸長を有するハンチントン病(HD)の選択された前駆症状患者のコホートにおいて開始された。
21回、35回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する、特定された組換えヒト由来HTT NI−302抗体の結合をさらに特徴づけるために、0.2μg/mlの一次抗体を利用するフィルター遅延アッセイと、1μg/mlの一次抗体を利用するドットブロット分析とを実施例7(上掲)で記載されるように行った。
図21及び図32(A、G)に示されるように、ドットブロット(図の左側、ドットブロット)では、特徴づけられた抗体のほとんどが、伸長したポリQ域を有するHTTタンパク質の検出についての優先傾向を示した(HD49>>HD35>HD21)。そのうえ、シグナル強度が、NI−302.15F9、NI−302.71F6(図21、ブロットの第1列)及びNI−302.64E5(図32A、左側)の抗体については特に、HD35及びHD49の凝集反応液のインキュベーション時間の増大とともに増大した。フィルター遅延分析において、NI−302.15F9、NI−302.71F6(図21、右側、FRA)及びNI−302.64E5(図32A、右側)により、0.2μmの細孔サイズのメンブランに保持されるSDS安定なHD35凝集物及びHD49凝集物が検出され、これに対して、他の抗体、例えば、NI−302.44D7及びNI−302.37C12(図21、ブロットの第2列)、又は、NI−302.4A6、NI−302.12H2及びNI−302.8M1(図32D、図32E、図32F)は、フィルター上の凝集物に結合しなかった。抗体33C11がこの実験ではコントロールとして役立った(図32G)。スポットされたタンパク質調製物に基づくこれらの知見により、クローン化されたNI−302抗体のいくつかは、病原的なポリQ伸長を有する凝集型HTT立体配座体についての優先傾向を示すことが示唆される。
加えて、特定された抗体の、無関係なタンパク質に対する結合特異性、具体的には凝集物を形成するタンパク質に対する結合特異性を、実施例8(上掲)で既に記載されるような直接ELISAによって評価した(図22及び図33A、図33D〜図33F)。結果は、試験されたヒト由来NI−302抗体のほとんどがHTTに特異的に結合し、試験された他の無関係なタンパク質に対する結合は認められないことを示した。
実施例26:ヒト由来HTT抗体の結合及びエピトープマッピングの評価
新たに特定されたヒト由来抗体によって認識されるHTTエピトープをマッピングするために、合成ペプチドを用いるエピトープマッピングを上記において実施例9で記載されるように行った(図23及び図35A、図35D〜図35F)。加えて、HTTエクソン1のBSAカップリングされたペプチドフラグメントに対するHTT抗体の、BSAカップリングされたHttエクソン1ドメインペプチドを用いた直接ELISAによる最大半有効濃度(EC50)を実施例10で記載されるように求め、同様にまた、EC50決定を行った。
実施例27:ヒトHTT遺伝子導入マウスにおけるHTT抗体の結合の評価
ヒトHTT遺伝子導入マウスの脳組織におけるHTT病理に対する、特定された抗体の結合の特徴づけを、切片のインキュベーションが抗HTT抗体の5nMのffig.3M(74C11、39C12、11A4、22H9、78H12、37C12、7D8、72F10)又は50nMの濃度(15F9、71F6、55D8、44D7、7A8、64E5)により行われたという違いを伴って実施例12(上掲)で記載されるように評価した。図24に示されるように、これらの特定されたヒト由来抗HTT抗体により、R6/1遺伝子導入動物の線条体及び皮質におけるニューロンの核内封入体病理の顕著かつ非常に特異的な染色が明らかにされ、このことは、上記で記載される抗体、すなわち、NI−302.33C11、NI−302.63F3及びNI−302.35C1についてもまた示される通りであった。これらの発見は、実施例26におけるELISA及びドットブロット分析によって明らかにされるようなHTT凝集物に対する高親和性の結合と一致している。
実施例28:ハンチントン病(HD)の遺伝子導入マウスモデルR6/1の基本的特徴づけ
Tg(HDexon1)61Gpb/J遺伝子導入マウスは、HD患者に由来するファージゲノムクローンから単離され、かつ、ヒトハンチンチン(HTT)遺伝子の5’末端を含有する1.9kbの導入遺伝子を有する。この導入遺伝子は、およそ1kbの5’UTR配列と、エクソン1(約130単位の伸長したCAG反復を有する)と、イントロン1の最初の262bpとから構成された。この構築物を単一細胞CBAxC57BL/6胚に顕微注入した。オスの創始体R6をCBAxC57BL/6のメスと交配し、これにより、いくつかの創始体系統を作製した(Mangiarini他、Cell 87(1996)、493〜506)。創始体系統R6/1に由来するマウスは、導入遺伝子が、遍在的に発現するただ1コピーの無傷なコピー体として組み込まれている。混合されたCBAxC57BL/6遺伝子背景での遺伝子導入マウスを、コンジェニック系統B6.Cg−TG(HDexon1)61Gpb/Jを作製するために12回を超えてC57BL/6Jと戻し交配した。R6/1遺伝子導入マウスは、舞踏病様運動、不随意的な常同性運動、振戦及びてんかん発作、同様にまた、非運動障害成分(異常な発声を含む)を含めてHDの特徴の多くを模倣する進行性の神経学的表現型を示す。このマウスは疾患の経過を通して頻繁に排尿し、かつ、体重及び筋肉量の喪失を示す。神経学的には、このマウスは、HTTタンパク質及びユビキチンタンパク質の両方を含有するニューロンの核内封入体(NII)を発達させる。これらのNIIはまた、ヒトHD患者でも特定されている。HD症状の発症(週)齢が、この6/1系統については15週〜21週の間で生じることが報告されている(Naver他、Neuroscience 122(2003)、1049〜1057;Hodges他、Genes Brain Behav.7(3)(2008)、288〜299)。
Jackson Laboratoriesから得られるR6/1遺伝子導入マウスを増やし、図25に示されるように、行動表現型、長期にわたる体重の発達、総脳重量、組織病理学分析及び生存に関して長期にわたって特徴づけした。得られた発見は全般的には、発表されたデータと一致しており、これらの発見により、このマウス系統が、凝集したHTTを標的とするヒト由来NI−302抗体を用いる効力研究のための好適な前臨床モデルとして確認された。
実施例29:HDの遺伝子導入マウスモデルN171−82Qの基本的特徴づけ
B6C3−Tg(HD82Gln)81Dbo/J(N171−82Q)遺伝子導入マウス系統(Schilling他、Hum Mol Genet.8(3)(1999)、397〜407)は、HDについての十分に特徴づけられているマウスモデルである。B6C3−Tg(HD82Gln)81Dbo/J(N171−82Q)遺伝子導入マウスは、82個のグルタミンをコードし、かつ、最初の171個のアミノ酸を含むN末端短縮型ヒトHTTのcDNAを発現する。この変化したHTTのcDNAはマウスプリオンタンパク質のプロモーターの制御下にある。発現が中枢神経系のニューロンにおいて認められる。この導入遺伝子を発現するマウスは、出生時から1〜2ヶ月までは正常であるようである。しかしながら、このマウスは体重を増やすことができず、振戦、運動低下及び協調不全を発症する。このマウスは、異常な歩行及び頻繁な後肢抱擁を示す。このマウスは平均余命が5〜6ヶ月である。HTT抗体を使用する研究では、広汎な核標識化及び無数の免疫反応性核封入体が多数のニューロン集団において示された。加えて、神経突起損傷が明白であった。
Jackson Laboratoriesから得られるN171−82Q遺伝子導入マウスを増やし、行動表現型、長期にわたる体重の発達、末期での総脳重量、組織病理学分析及び生存に関して長期にわたって特徴づけした(図26)。これらの発見は全般的には、発表されたデータと一致しており、これらの発見により、このマウス系統が、実施例29で記載されるマウス系統に加えて、凝集したHTTを標的とするヒト由来NI−302抗体を用いる効力研究のための好適な前臨床モデルとして確認された。
実施例30:ハンチントン病(HD)患者におけるニューロン封入体染色の評価
本発明の特定された抗体によるニューロン封入体の染色を患者において評価するために、免疫組織化学分析を行った。ヒトの脳組織におけるHTT病理に対する、特定された抗体の結合の評価を、切片のインキュベーションが50nMのNI−302.33C11抗体、50nMのNI−302.63F3抗体又は100nMのNI−302.35C1抗体により行われたという違いを伴って実施例12(上掲)で記載されるように評価した。
図27に示されるように、ポリP領域結合抗体NI−302.33C11を用いた免疫組織化学分析により、ハンチントン病患者の皮質ニューロンにおけるニューロン核内封入体の染色(図27A〜図27D)が50nMで示され、また、270日齢の後期疾患段階のB6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J遺伝子導入動物の線条体ニューロンにおける染色が1nMの濃度(E)及び5nMの濃度(F)で示され、その一方で、染色が遺伝子非導入の同腹子では検出されず(G)、また、一次抗体が染色時に省かれたとき(H)、又は、非ハンチントン病コントロールの組織が50nMのNI−302.33C11により染色された場合には検出されなかった。Pリッチドメイン抗体NI−302.63F3(図28)及び抗C末端ドメイン抗体NI−302.35C1(図29)は、50nMのNI−302.63F3又は100nMのNI−302.35C1による免疫組織化学分析の範囲内で、4名の異なるハンチントン病患者(A〜D)のニューロン核内封入体の染色(A〜C)及び皮質ニューロンのいくつかの神経突起の染色(D)を示した。染色はまた、270日齢の後期疾患段階のB6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J遺伝子導入動物の線条体ニューロンにおいて1nMの濃度(E)及び50nMの濃度(F)で認められ得る。染色は、遺伝子非導入の同腹子では検出されず(G)、また、一次抗体が染色時に省かれた場合(H)、或いは、非ハンチントン病コントロールの組織が50nMのNI−302.63F3又は100nMのNI−302.35C1によりそれぞれ染色される場合には検出されなかった。
本発明の特異的な抗HTT抗体とは対照的に、市販の抗ポリQ抗体Mab1574(1:2000、Chemicon)を用いた免疫組織化学分析では、組織のさらなる染色が示され、すなわち、4名の異なるハンチントン病患者のより全体的な核染色及び細胞質染色、並びに、皮質ニューロンのいくつかの神経突起の染色(図30A、図30D)、そして、前駆症状の150日齢(図30E)及び270日齢(図30F)の後期疾患段階のB6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J遺伝子導入動物の線条体ニューロンにおける染色が示された。
実施例31:直接ELISAを利用する抗ポリQ/PドメインNI−302.7D8抗体の結合親和性及び結合選択性の特徴づけ並びにEC50
21回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.7D8の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、直接ELISA及びEC50決定を実施例6(上掲)で記載されるように行った。
NI−302.7D8は、可溶性GST−HD21及び凝集型HD21に対して類似する大きい親和性で結合し、EC50がおよそ50nM〜100nMであり、それにもかかわらず、凝集型HD49及び可溶性GST−HD49の伸長したより病原的な形態に対する優先傾向を示し、EC50がそれぞれ、17nM及び6nMであることが示され得る(図31B)。
したがって、ヒト由来のHTT抗ポリQ/Pドメイン抗体NI−302.7D8は、HTTエクソン1タンパク質の非切断のより線状の構造におけるのと同様に、HTTエクソン1タンパク質の凝集した構造において露出するエピトープを低いナノモル濃度範囲での大きい親和性により標的とする。
加えて、21回、35回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.7D8の結合を特徴づけることを、実施例7(上掲)で記載されるように、1ug/mlの濃度でのフィルター遅延アッセイ及びドットブロットを使用して行った。
ドットブロット(図32B、左側)では、抗体NI−302.7D8により、伸長したポリQ域を有するハンチンチンの様々なタンパク質が同等に良好に検出されること(HD49=HD35=HD21)が示され得る。フィルター遅延分析(図32B、右側、FRA)では、NI−302.7D8は、フィルターメンブラン上のSDS安定なHD21凝集物、HD35凝集物又はHD49凝集物に結合しなかった。
そのうえ、無関係な凝集性タンパク質標的に対するNI−302.7D8組換え抗体の結合を明らかにするために、直接ELISAを実施例8(上掲)で記載されるように行った。図33Bに示されるように、ヒト由来NI−302.7D8はHTTに特異的に結合し、その一方で、無関係なタンパク質に対する結合は示すことができなかった。
実施例32:NI−302.64E5、NI−302.7D8及びNI−302.72F10の各HTT抗体の結合エピトープの評価
NI−302.64E5、NI−302.7D8及びNI−302.72F10の各ヒト由来抗体によって認識されるハンチンチンエピトープをマッピングするために、合成ペプチドを用いるエピトープマッピングを上記において実施例9で記載されるように行った。
図35Aは、ペプチド番号10〜12に対するNI−302−64E5の顕著な結合を示し、このことは、この抗体によって認識されるエピトープがハンチンチンのPリッチ反復ドメインに限定されることを示している。したがって、NI−302.64E5結合エピトープは、HTTアミノ酸48−PQPPPQAQPL−58(配列番号200)の内部に限定されることが予測される。図35Bに示されるように、NI−302.7D8の顕著な結合がペプチド番号6〜8に対して認められた。このことは、この抗体によって認識されるエピトープがハンチンチンのポリQ/ポリP反復ドメインに限定されることを示している。したがって、NI−302.7D8結合エピトープは、HTTアミノ酸28−QQQQQQQPPP−37(配列番号201)の内部に限定されることが予測される。対照的に、NI−302.72F10の顕著な結合がペプチド番号15及びペプチド番号16に対して認められた。このことは、この抗体によって認識されるエピトープがHTTのN末端ドメインに限定されることを示している(図35C)。したがって、NI−302.72F10結合エピトープは、HTTアミノ酸70−PPPGPAVAEEPLH−82(配列番号202)の内部に限定されることが予測された。
実施例32:直接ELISAを利用する抗N末端ドメイン抗体NI−302.15E8の結合親和性及び結合選択性の特徴づけ並びにEC50
21回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.15E8の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、直接ELISA及びEC50決定を実施例6(上掲)で記載されるように行った。
NI−302.15E8は、より大きい親和性で、非凝集型のGST−HD49及びGST−HD21に結合し、より小さい親和性で、凝集型のHD49及びHD21に結合することが示され得る(図14A及び図14Bを参照のこと)。したがって、ヒト由来のHTT抗N末端ドメイン抗体NI−302.15E8は、HTTの可溶性形態におけるのと同様に、HTTの両方の凝集型形態において露出するエピトープを標的とし、それにもかかわらず、より大きい親和性をHTTの可溶性形態に対して有する。
実施例33:HTT抗体NI−302.15E8の、異なるエクソン1ペプチドに対する直接的ELISA結合によるエピトープマッピング
ハンチンチンエクソン1のBSAカップリングされたペプチドフラグメントに対する組換えヒト由来HTT抗体NI−302.15E8の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、BSAカップリングされたHttエクソン1ドメインペプチドを用いた直接ELISAと、EC50決定とを実施例10で記載されるように行った。
図15に示されるように、NI−302.15E8は、N末端における最初の19個のBSAカップリングされたアミノ酸に対して、全長型のGST−HD49に対するのと同様に、大きい親和性で結合し、EC50がそれぞれ、およそ0.1又は15である。
実施例34:ヒトHTT遺伝子導入マウスにおける行動障害に対するHTT抗体NI−302.35C1の影響
不安様行動をヒトHTTマウスにおいて測定するための高架式十字迷路試験と、運動成績及び運動協調をヒトHTTマウスにおいて測定するためのポール試験とを、抗HTT抗体NI−302.35C1をインビボで調べるために行った。
群及び処置
行動分析のために、実施例12で記載されるような、n=24(12/12 オス/メス)のB6.Cg−Tg(HDexon1)61Gpb/J遺伝子導入(tg)マウスによる2群のマウスと、1群の野生型(wt)マウスとを使用した。遺伝子導入マウスの群は、30mg/kgのマウスキメラNI−302.35C1又はビヒクルのどちらかの腹腔内処置を6週齢〜7週齢から始まって、7月齢〜9月齢の間でのマウスの末期段階の表現型まで受け、野生型マウスには、同じ体積のビヒクルが注入された。高架式十字迷路試験及びポール試験での行動試験を16週齢及び18週齢でそれぞれ行った。
高架式十字迷路試験
高架式十字迷路試験を、Naver他、Neuroscience 122(2003)、1049〜1057に従って行った。迷路が床から50cm上げられた。4つの迷路アーム(30cm×5cm)が、十字路を形成する中央のプラットホームから生じていた。互いに向き合って位置するアームの2つが15cmの高さの壁によって囲まれ(有壁路)、一方、それら以外のアームはどのような種類の遮蔽もなかった(無壁路)。試験を動物の暗期の開始時に行い、無壁路での照度が40luxの範囲であった。それぞれのマウスを無壁路に向けて十字迷路の中心に置いた。実験を5分間にわたって継続し、ビデオ追跡システム(VideoMot Software、TSE Systems)により記録した。試験期間と試験期間との間で、迷路を水ですすぎ、ペーパータオルで乾燥させた。続いて、無壁路及び有壁路に進入した回数、同様にまた、無壁区画及び有壁区画で過ごした時間を評価した。進入を、4つの足のすべてが1つのアームにあるとして定義した。無壁路への進入回数及び無壁路で過ごした時間が、マウスにおける開放空間誘発不安の指標として使用される。
ポール試験
ポール試験が、脳幹神経節に関連した運動障害をマウスにおいて評価するために広く使用されている;例えば、Matsuura他、J.Neurosci.73(1997)、45〜48;Sedelis他、Behav Brain Res.125(2001)、109〜125;Fernagut他、Neuroscience 116(2003)、1123〜1130を参照のこと。簡単に記載すると、動物を、長さが50cmの(直径が1cmである)垂直な木製ポールの上部に頭を上向きにして置いた。ポールの基部がホームケージに置かれた。ポールに置かれたとき、動物は身体を下向きにし、ポールの長さを降りて、そのホームケージに戻る。試験当日に、動物は3回の試行を受け、降りるための総時間(t−合計)を測定した。試験日の3回目の試行の結果が図24Bに示される。
図34Aに示されるように、NI−302.35C1処置のR6/1動物は、ビヒクル処置のR6/1動物と比較して、より少ない時間を無壁路で過ごし、より少ない頻度で無壁路に進入し、かつ、無壁路での無防備な覗き込みがより少なかった。したがって、NI−302.35C1処置のR6/1マウスは、遺伝子非導入の同腹子と比較して、より不安な表現型を示した。そのうえ、図24Bに示されるように、NI−302.35C1処置のR6/1動物は、遺伝子非導入の動物と類似するレベルに達するビヒクル処置のR6/1動物と比較して、改善された成績をポール試験において示した。まとめると、本発明の抗体NI−302.35C1は、行動成績及び運動関連課題に対する有益な影響をヒトHTT遺伝子導入マウスにおいて有する。
実施例35:HTT抗体の配列アラインメント
パーセント同一性又はパーセント類似性の決定を、本発明の「定義」の節で記載されるようなBLASTnプログラムの標準的なパラメーターにより行った。図36に示されるように、本発明のすべての抗体がCDRにおいてチロシンに富む。
実施例36:二重特異性抗HTT抗体の作製
二重特異性抗体の作製をBrennan(上掲を参照のこと)における一般的な記載の通りに行うことができる。二重特異性抗体を製造するための出発材料が、実施例で記載されるような、また、図20にまとめられるようなHTTエクソン1タンパク質のポリP領域、ポリQ/ポリP領域、Pリッチ領域、C末端領域又はN末端領域のいずれかを認識する本発明の無傷なIgG抗HTT抗体である。これらの抗体が、抗体のFc部分を切断するために、酢酸塩緩衝液(pH4.0)において37℃で3時間、ペプシンで処理される。反応が、pHをTris緩衝液により8に上げることによって停止させられる。続いて、溶液が5,5’−ジチオビス−2−ニトロ安息香酸(DTNB)の混合物の等体積で増量され、チオニトロ安息香酸塩(TNB)と室温で20時間インキュベーションされる。DTNB−TNB混合物のモル比が、40mMのDTNB溶液を10mMのDTT溶液と数分間インキュベーションすることによって確立される20:30である。2つの改変されたF(ab’)フラグメントを0.1mMのDTTにより25℃で1時間さらに還元した後、このようにして得られたF(ab’)−TNBフラグメント及びF(ab’)−SHフラグメントが、二重特異性のF(ab’)2フラグメントに対して25℃で1時間ハイブリダイゼーションされる。二重特異性のF(ab’)2フラグメントをゲルろ過(Superdex200カラム)により精製した。
実施例37:直接ELISAを利用する二重特異性抗HTT抗体の結合親和性及び結合選択性の特徴づけ並びにEC50
21回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する二重特異性HTT抗体の最大半有効濃度(EC50)を決定するために、直接ELISA及びEC50決定が実施例6(上掲)で記載されるように行われる。二重特異性HTT抗体は、凝集型のHTTエクソン1 HD49を含む4つすべての種に対して大きい親和性で結合し、低いナノモル濃度の親和性により、HTTの可溶性形態におけるのと同様に、HTTの凝集型形態において露出するそれらのそれぞれのエピトープを等しく標的とした。加えて、21回、35回又は49回のポリQ反復を有する可溶性及び凝集型のHTTエクソン1タンパク質に対する二重特異性HTT抗体の結合を特徴づけるために、実施例7(上掲)で記載されるようなフィルター遅延アッセイ及びドットブロットが行われる。ドットブロットでは、二重特異性HTT抗体により、伸長したポリQ域を有するHTTの様々な構築物が優先的に検出される。そのうえ、シグナル強度が、HD35及びHD49の凝集反応液のインキュベーション時間の増大とともに増大する。フィルター遅延分析では、二重特異性HTT抗体により、0.2μmの細孔サイズのメンブランに保持されるHD35凝集物及びHD49凝集物が検出される。HTTに対するそれらの二重特異性と、メンブランに結合したタンパク質調製物に関する個々の抗体の結合についての以前の知見とに基づいて、二重特異性HTT抗体は、病原的なポリQ伸長を有する凝集型HTT立体配座体を優先的に標的とすることが予想される。そのうえ、無関係な凝集性タンパク質標的に対する二重特異性抗HTT抗体の結合を明らかにするために、直接ELISAが実施例8(上掲)で記載されるように行われる。この関連において、二重特異性抗HTT抗体はHTTに特異的に結合し、その一方で、無関係なタンパク質に対する結合は示されない場合がある。