上記の構成では、駆動軸の断面が六角形であることから、各ワンウェイクラッチは、駆動軸に外嵌するワンウェイクラッチの内輪に、駆動軸の断面形状と同じ六角形の嵌合孔を備えている。このような場合、駆動軸及びワンウェイクラッチは、それぞれの製造誤差による個体差を有しており、これらの個体差により、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に、農用供給装置ごとに異なるガタツキが生じる虞がある。そして、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間にガタツキが生じた場合には、そのガタツキが大きいほど、駆動軸とワンウェイクラッチとの間に生じる伝動ロスが大きくなる。そのため、このような駆動軸とワンウェイクラッチとを備える農用供給装置においては、農用供給装置ごとに異なる駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間のガタツキに起因して、走行車体からの動力が同じであっても、ワンウェイクラッチを介して得られる駆動軸の回転数に差が生じる虞がある。その結果、農用供給装置からの供給量が農用供給装置ごとに異なる不具合を招く虞がある。
本発明の目的は、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に生じるガタツキに起因して、農用供給装置からの供給量が農用供給装置ごとに異なる不具合が生じる虞を回避することにある。
本発明の課題解決手段では、
走行車体からの動力を駆動軸に伝達するワンウェイクラッチを備え、
前記駆動軸を断面多角形の角軸により構成し、
前記ワンウェイクラッチは、前記駆動軸に外嵌する内輪を備え、
前記内輪は、前記駆動軸の断面と同じ多角形の嵌合孔を有する小径部と、前記駆動軸の外接円よりも大径の丸孔を有する拡径部とを備え、
前記駆動軸と前記拡径部との間に樹脂製の筒状体を圧入している。
この手段によると、駆動軸と内輪の拡径部との間に樹脂製の筒状体を圧入することから、駆動軸及びワンウェイクラッチの個体差に起因して生じる虞のある駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間でのガタツキを解消することができ、このガタツキに起因して発生する駆動軸とワンウェイクラッチとの間での伝動ロスを無くすことができる。
これにより、走行車体からの動力が同じであるにもかかわらず、駆動軸とワンウェイクラッチとの間に生じる伝動ロスに起因して、農用供給装置ごとにワンウェイクラッチを介して得られる駆動軸の回転数に差が生じる虞を回避することができる。
その結果、農用供給装置からの供給量が農用供給装置ごとに異なる不具合が生じる虞を回避することができる。
又、ワンウェイクラッチの内輪に前述した小径部と拡径部とを備えることにより、例えば、内輪の全体を拡径して、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に、内輪の全体にわたる長さを有する筒状体を圧入する場合に比較して、ワンウェイクラッチの径方向での大型化を抑制することができる。
しかも、駆動軸と内輪の拡径部との間に筒状体を圧入することにより、ワンウェイクラッチの内輪と筒状体との接触面積を大きくすることができる。これにより、ワンウェイクラッチの内輪と筒状体との間での滑りの発生を効果的に抑制することができ、ワンウェイクラッチの内輪と筒状体との間での滑りに起因した伝動ロスの発生を効果的に抑制することができる。
本発明の別の課題解決手段では、
走行車体からの動力を駆動軸に伝達するワンウェイクラッチを備え、
前記駆動軸を断面多角形の角軸により構成し、
前記ワンウェイクラッチは、前記駆動軸に外嵌する内輪を備え、
前記内輪は、前記駆動軸の断面と同じ多角形の嵌合孔を有する小径部と、前記駆動軸の外接円よりも大径の丸孔を有する拡径部とを備え、
前記駆動軸と前記拡径部との間に樹脂製の筒状体を圧入し、
前記筒状体を、複数の湾曲部材により筒状に構成している。
この手段によると、駆動軸と内輪の拡径部との間に樹脂製の筒状体を圧入することから、駆動軸及びワンウェイクラッチの個体差に起因して生じる虞のある駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間でのガタツキを解消することができ、このガタツキに起因して発生する駆動軸とワンウェイクラッチとの間での伝動ロスを無くすことができる。
これにより、走行車体からの動力が同じであるにもかかわらず、駆動軸とワンウェイクラッチとの間に生じる伝動ロスに起因して、農用供給装置ごとにワンウェイクラッチを介して得られる駆動軸の回転数に差が生じる虞を回避することができる。
その結果、農用供給装置からの供給量が農用供給装置ごとに異なる不具合が生じる虞を回避することができる。
又、ワンウェイクラッチの内輪に前述した小径部と拡径部とを備えることにより、例えば、内輪の全体を拡径して、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に、内輪の全体にわたる長さを有する筒状体を圧入する場合に比較して、ワンウェイクラッチの径方向での大型化を抑制することができる。
しかも、駆動軸と内輪の拡径部との間に筒状体を圧入することにより、ワンウェイクラッチの内輪と筒状体との接触面積を大きくすることができる。これにより、ワンウェイクラッチの内輪と筒状体との間での滑りの発生を効果的に抑制することができ、ワンウェイクラッチの内輪と筒状体との間での滑りに起因した伝動ロスの発生を効果的に抑制することができる。
ところで、例えば筒状体を単一の筒状部材で構成すると、筒状体を駆動軸と内輪の拡径部との間に圧入する場合には、筒状体を駆動軸の一端部に外嵌した後、筒状体を駆動軸の一端部から圧入箇所まで摺動移動させる必要がある。そのため、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入に手間を要することになる。又、筒状体の摺動移動中に、筒状体の内周面が駆動軸の角部などに摺接することに起因して傷付く虞がある。
これに対し、この手段においては、筒状体を複数の湾曲部材により構成していることから、各湾曲部材を、駆動軸と内輪の拡径部との間に圧入することにより、筒状体を駆動軸の一端部に外嵌する手間や、駆動軸の一端部から圧入箇所まで筒状体を摺動移動させる手間を要することなく、筒状体を駆動軸と内輪の拡径部との間に圧入することができる。
又、筒状体を駆動軸に外嵌した状態で摺動移動させる必要がないことから、筒状体の摺動移動中に筒状体の内周面が駆動軸の角部などに摺接することに起因して傷付く虞を回避することができる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記筒状体の内周を、前記駆動軸の断面形状と同じ多角形で、前記駆動軸の外周面に面接触可能に形成し、
前記筒状体の外周面における前記駆動軸の角部との対向部位から外れた位置に、前記駆動軸の軸心方向に延びる複数の突条を備え、
前記筒状体の圧入状態では、前記突条のそれぞれが前記内輪の内周面に圧接し、かつ、前記筒状体の内周面が前記駆動軸の外周面に圧接している。
この手段によると、筒状体の外周面に、駆動軸の軸心方向に延びる複数の突条を備えることから、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入が行い易くなる。そして、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に筒状体を圧入すると、筒状体の各突条が内輪の内周面に圧接するのに伴って、筒状体の内周面を形成する複数の平面部が、駆動軸側に押し出されて、駆動軸の外周面を形成する複数の平面部に密接するようになる。
その結果、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入を行い易くしながら、駆動軸及びワンウェイクラッチの個体差に起因して生じる虞のある駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間でのガタツキをより確実に解消することができる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記筒状体の内周を、前記駆動軸の断面形状と同じ多角形で、前記駆動軸の外周面に面接触可能に形成し、
前記筒状体の外周面における前記駆動軸の角部との対向部位から外れた位置に、前記駆動軸の軸心方向に延びる複数の突条を備え、
前記筒状体の圧入状態では、前記突条のそれぞれが前記内輪の内周面に圧接し、かつ、前記筒状体の内周面が前記駆動軸の外周面に圧接し、
前記突条のそれぞれは、前記軸心方向での両端側ほど外方への突出量が少なくなる状態で両端部が傾斜している。
この手段によると、筒状体の外周面に、駆動軸の軸心方向に延びる複数の突条を備えることから、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入が行い易くなる。そして、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に筒状体を圧入すると、筒状体の各突条が内輪の内周面に圧接するのに伴って、筒状体の内周面を形成する複数の平面部が、駆動軸側に押し出されて、駆動軸の外周面を形成する複数の平面部に密接するようになる。
又、筒状体の各突条は、軸心方向での両端側ほど外方への突出量が少なくなる状態で両端部が傾斜していることから、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に筒状体を圧入するときには、筒状体の向きに関係なく、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入を更に行い易くすることができる。
その結果、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入を更に行い易くしながら、駆動軸及びワンウェイクラッチの個体差に起因して生じる虞のある駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間でのガタツキをより確実に解消することができる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記筒状体の内周面に前記駆動軸の軸心方向に延びる複数の突条を備え、
前記筒状体の外周を、前記内輪の内周と同じ形状で、前記内輪の内周面に面接触可能に形成し、
前記筒状体の圧入状態では、前記突条のそれぞれが前記駆動軸の外周面に圧接し、かつ、前記筒状体の外周面が前記内輪の内周面に圧接している。
この手段によると、筒状体の内周面に、駆動軸の軸心方向に延びる複数の突条を備えることから、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入が行い易くなる。そして、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に筒状体を圧入すると、筒状体の各突条が駆動軸の外周面に圧接するのに伴って、筒状体の外周面が、ワンウェイクラッチの内輪側に押し出されて、内輪の内周面に密接するようになる。
その結果、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入を行い易くしながら、駆動軸及びワンウェイクラッチの個体差に起因して生じる虞のある駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間でのガタツキをより確実に解消することができる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記筒状体の内周面に前記駆動軸の軸心方向に延びる複数の突条を備え、
前記筒状体の外周を、前記内輪の内周と同じ形状で、前記内輪の内周面に面接触可能に形成し、
前記筒状体の圧入状態では、前記突条のそれぞれが前記駆動軸の外周面に圧接し、かつ、前記筒状体の外周面が前記内輪の内周面に圧接し、
前記突条のそれぞれは、前記軸心方向での両端側ほど外方への突出量が少なくなる状態で両端部が傾斜している。
この手段によると、筒状体の内周面に、駆動軸の軸心方向に延びる複数の突条を備えることから、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入が行い易くなる。そして、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に筒状体を圧入すると、筒状体の各突条が駆動軸の外周面に圧接するのに伴って、筒状体の外周面が、ワンウェイクラッチの内輪側に押し出されて、内輪の内周面に密接するようになる。
又、筒状体の各突条は、駆動軸の軸心方向での両端側ほど外方への突出量が少なくなる状態で両端部が傾斜していることから、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間に筒状体を圧入するときには、筒状体の向きに関係なく、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入を更に行い易くすることができる。
その結果、駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間への筒状体の圧入を更に行い易くしながら、駆動軸及びワンウェイクラッチの個体差に起因して生じる虞のある駆動軸とワンウェイクラッチの内輪との間でのガタツキをより確実に解消することができる。
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記駆動軸は断面六角形の六角軸であり、
前記筒状体は、前記六角軸の対向する2つの角部を挟む状態で配置する2つの湾曲部材により筒状に構成し、
前記湾曲部材のそれぞれは、前記駆動軸の外周面に面接触する3面の平面部からなる内面を備えている。
この手段によると、各湾曲部材の内面を形成する3面の平面部が120度の挟角を有することから、各湾曲部材は、それらの内面に30度の抜き勾配を有することになる。これにより、各湾曲部材の内面に専用の抜き勾配を備えることなく、各湾曲部材を成型した後の型抜きを容易にすることができる。
そして、例えば、筒状体を3つの湾曲部材により構成する場合に比較して、部品点数の削減による組み付けの容易化などを図ることができる。
従って、各湾曲部材の成型を容易にしながら、筒状体の組み付け性などを向上させることができる。
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る農用供給装置の一例である施肥装置を、水田作業機の一例である乗用田植機に備えた実施形態を図面に基づいて説明する。
尚、図1に記載した符号Fの矢印が指し示す方向が乗用田植機の前側であり、符号Uの矢印が指し示す方向が乗用田植機の上側である。
又、図2に記載した符号Fの矢印が指し示す方向が乗用田植機の前側であり、符号Rの矢印が指し示す方向が乗用田植機の右側である。
図1及び図2に示すように、本実施形態で例示する乗用田植機は、乗用型の4輪駆動形式に構成した走行車体1を備えている。そして、走行車体1の後下部に、平行リンク形式のリンク機構2を上下揺動可能に連結している。又、リンク機構2の後下部に、4条植え用の苗植付装置3をローリング可能に連結している。一方、走行車体1の後上部に、農用供給装置Aの一例として、圃場に対する供給物の一例である粒状肥料を圃場に供給する4条施肥用の施肥装置4を配備している。これにより、乗用田植機を、最大4条の苗植えと施肥とが可能な4条植え用のミッドマウント施肥仕様に構成している。そして、走行車体1の後部に、リンク機構2を介して苗植付装置3を昇降駆動する昇降シリンダ5を備えている。昇降シリンダ5には、単動型の油圧シリンダを採用している。
図1〜3に示すように、走行車体1は、車体フレーム6の前部にエンジン7などを備えている。又、車体フレーム6の後部側に搭乗運転部8などを備えている。車体フレーム6は、エンジン搭載用の前部フレーム9、前部フレーム9の後端部に連結するトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)10、T/Mケース10の後端部に連結する後部フレーム11、及び、後部フレーム11の上端部に連結する座席フレーム12、などを備えている。搭乗運転部8は、前輪操舵用のステアリングホイール13、搭乗ステップ14、運転座席15、及び、後部ステップ16、などを備えている。
図1及び図3に示すように、T/Mケース10は、その前側の左右両側部から横外方に延出する左右の前車軸ケース17、及び、その後側の左右両側部から後下方に延出する左右のスイングケース18、などを備えている。そして、左右の前車軸ケース17の延出端に、左右の前輪19を操舵可能かつ駆動可能に装備している。又、左右のスイングケース18の延出端に、左右の後輪20を駆動可能に装備している。左右のスイングケース18は、T/Mケース10から左右のスイングケース18にわたる左右向きの伝動軸21を支点にして上下揺動する。そして、それらの遊端側を左右のサスペンション機構22を介して車体フレーム6に連結している。
図1〜7に示すように、後部フレーム11は、T/Mケース10の後端部に連結することにより、上方に延出する後部フレーム11の支持部11Aが、T/Mケース10の後方に位置するように構成している。そして、支持部11Aの上面により、走行車体1の後上部に配備した後部ステップ16を下方から支持している。後部ステップ16は、左右の後輪20の車輪間隔よりも長い横幅を有している。そして、その左右の前端から搭乗ステップ14に向けて延出する後輪フェンダ兼用のカバー部16Aを一体形成している。
座席フレーム12は、後部ステップ16とともに後部フレーム11の上端部に連結して、後部ステップ16の上方に配備している。そして、座席フレーム12は、左右のクッションゴム23、及び、運転座席15の機体前後方向での位置調節を可能にする位置調節機構24を介して、走行車体1の後上部に配備した運転座席15を支持している。位置調節機構24は、座席フレーム12の前端部に着脱可能に備えた左右向きの支軸25、及び、運転座席15に備えた左右のブラケット26、などから構成している。そして、左右の各ブラケット26に、支軸挿通用の3つの貫通孔26Aを前後方向に所定間隔をあけて形成することにより、運転座席15の機体前後方向での3段階の位置調節を可能にしている。又、支軸25を支点にした運転座席15の使用位置と前方の倒伏位置とにわたる揺動操作を可能にしている。
図1に示すように、エンジン7からの動力は、ベルトテンション式の主クラッチ27などを介して、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置28に伝達している。そして、静油圧式無段変速装置28による変速後の動力を、T/Mケース10の内部において第1動力と第2動力とに分岐している。第1動力は、T/Mケース10に内蔵したギア式の副変速装置(図示せず)に伝達している。そして、副変速装置による変速後の第1動力を、T/Mケース10の内部において走行用と施肥用とに分岐している。走行用の動力は、T/Mケース10の内部において前輪駆動用と後輪駆動用とに分岐している。そして、前輪駆動用の動力を、前輪伝動系(図示せず)を介して左右の前輪19に伝達している。又、後輪駆動用の動力を、後輪伝動系(図示せず)を介して左右の後輪20に伝達している。施肥用の動力は、T/Mケース10に内蔵した施肥クラッチ(図示せず)などを介して施肥装置4に伝達している。第2動力は、T/Mケース10に内蔵したギア式の株間変速装置(図示せず)及び植付クラッチ(図示せず)などを介して、苗植え用として苗植付装置3に伝達している。植付クラッチは、その断続操作に連動して施肥クラッチが同様に断続操作されるように施肥クラッチに操作連係している。
図1及び図2に示すように、苗植付装置3は、4条用の整地フロート30、4条用の苗載台31、動力分配機構32、横送り機構33、4基の植付機構34、及び、4条用の縦送り機構35、などを備えている。
整地フロート30は、作業走行時に走行車体1の走行に伴って圃場の泥面を整地しながら滑走する。苗載台31は、最大4条分のマット状苗を載置するように形成している。動力分配機構32は、走行車体1からの動力を、横送り機構33と各植付機構34と各縦送り機構35とに分配供給する。横送り機構33は、動力分配機構32からの動力により、苗載台31を左右方向に一定ストロークで往復移動させる。各植付機構34は、動力分配機構32からの動力により、苗載台31とともに左右方向に往復移動するマット状苗の下端から所定量ずつの植付苗を切り取って整地フロート30による整地後の圃場泥土部に植え付ける。各縦送り機構35は、苗載台31が左右のストローク端に達するごとに、動力分配機構32からの動力により、対応するマット状苗を苗載台31の下端に向けて所定ピッチで縦送りする。そして、これらの作動により、苗植付装置3を最大4条の苗植えが可能な4条用に構成している。
図1〜6に示すように、施肥装置4は、施肥フレーム36、肥料貯留用のホッパ37、左右の繰出機構38、4本の施肥ホース39、4つの作溝器40、及び、電動式のブロワ41、などを備えている。そして、走行車体1の後部における運転座席15の機体後側に配備している。
施肥フレーム36は、左右の繰出機構38を後方から支持する左右に長い主部材42に、左右の繰出機構38を前方から支持する左右に長い補助部材43、などをボルト連結して構成している。
ホッパ37は、6条分の粒状肥料を貯留する横長形状に形成している。そして、ホッパ37は、その左右中心が機体の左右中心と一致する配置で、各繰出機構38及びブロワ41とともに走行車体1の後上部に配備している。ホッパ37の下端部には、3つの排出部37Aを左右方向に所定間隔をあけて備えている。そして、ホッパ37の内部に、ホッパ37の左右中央側に位置する排出部37Aへの粒状肥料の流下を阻止するとともに、ホッパ37の左右両端側に位置する排出部37Aに粒状肥料を流下案内するガイド部材44を着脱可能に備えている。つまり、6条用のホッパ37にガイド部材44を装着することにより、6条用のホッパ37を4条用に仕様変更している。
左右の繰出機構38は、それらの上端部をホッパ37の左右両端側に位置する排出部37Aに連結している。そして、左右の繰出機構38は、施肥フレーム36により連結している。又、左右の繰出機構38は、それらの内部に、走行車体1からの施肥用の動力によって回転する繰出ロール45を備えている。そして、各繰出ロール45の左半部に備えた複数の凹部45Aと右半部に備えた複数の凹部45Aとから、各繰出ロール45の回転により、ホッパ37の内部から2条分の粒状肥料を所定量ずつ下方に繰り出す2条用に構成している。これにより、最大4条分の粒状肥料を繰り出すように構成にしている。
各施肥ホース39は、それらの一端部を対応する繰出機構38に接続している。又、各施肥ホース39の他端部に作溝器40を接続している。これにより、各施肥ホース39は、各繰出機構38が繰り出した粒状肥料を対応する作溝器40に案内する。
各作溝器40は、対応する植付機構34と機体横方向で隣接する位置に配置設定して整地フロート30に取り付けている。そして、各作溝器40は、作業走行時に、走行車体1の走行に伴って圃場の泥土部に施肥用の溝を形成し、その溝内に粒状肥料を埋没させる。
ブロワ41は、施肥フレーム36の左端部にボルト連結している。そして、ブロワ41は、走行車体1からの電力で作動することにより、各繰出機構38から各施肥ホース39の内部を通って各作溝器40に向かう搬送風を生起する。これにより、各繰出機構38が繰り出した粒状肥料の各施肥ホース内での流動を円滑にすることができる。
図1〜8に示すように、施肥装置4は、左右の繰出機構38にわたる左右向きの駆動軸48、走行車体1からの施肥用の動力を駆動軸48に伝達する繰出用伝動機構49、及び、各繰出機構38による肥料繰り出し量の一括した調節を可能にする繰出量調節機構50、などを備えている。
駆動軸48は、断面が正六角形の六角軸により構成している。そして、駆動軸48は、各繰出機構38に備えた入力ギア51と噛み合い連動する2つの出力ギア52を相対回転可能に外嵌装備している。又、駆動軸48は、駆動軸48から対応する出力ギア52への伝動を断続する2つの施肥条数切替クラッチ53を外嵌装備している。各施肥条数切替クラッチ53は、搭乗運転部8に備えた2本の条数切替レバー54に2系統の施肥条数切替操作系55を介して操作連係している。これにより、各施肥条数切替クラッチ53は、対応する条数切替レバー54による断続操作を可能にしている。
一方、苗植付装置3は、動力分配機構32から対応する2つの植付機構34への伝動を断続する2つの植付条数切替クラッチ56、及び、動力分配機構32から対応する2つの縦送り機構35への伝動を断続する2つの縦送り条数切替クラッチ57、を備えている。各植付条数切替クラッチ56は、対応する条数切替レバー54に2系統の植付条数切替操作系58を介して操作連係している。これにより、各植付条数切替クラッチ56は、対応する条数切替レバー54による断続操作を可能にしている。各縦送り条数切替クラッチ57は、対応する条数切替レバー54に2系統の縦送り条数切替操作系59を介して操作連係している。これにより、各縦送り条数切替クラッチ57は、対応する条数切替レバー54による断続操作を可能にしている。
上記の構成から、各条数切替レバー54の操作により、この乗用田植機の作業状態を、苗植付装置3における全ての植付機構34と縦送り機構35とを作動させ、かつ、施肥装置4における全ての繰出機構38を作動させる全条作業状態、苗植付装置3における左側2条分の植付機構34と縦送り機構35とを作動させ、かつ、施肥装置4における左側の繰出機構38を作動させる左側2条作業状態、苗植付装置3における右側2条分の植付機構34と縦送り機構35とを作動させ、かつ、施肥装置4における右側の繰出機構38を作動させる右側2条作業状態、又は、苗植付装置3における全ての植付機構34と縦送り機構35とを停止させ、かつ、施肥装置4における全ての繰出機構38を停止させる全条停止状態に、択一的に切り替えることができる。
図5、図6、図8及び図9に示すように、施肥装置4は、各繰出機構38を停止状態に一括して切り替える施肥停止用の切替レバー60を備えている。切替レバー60は、施肥フレーム36の右端部に、停止位置と停止解除位置とに揺動切り替え可能に配備している。そして、切替レバー60は、左右向きの連係部材61などを備える施肥状態切替操作系62を介して各施肥条数切替クラッチ53に操作連係している。これにより、切替レバー60の停止解除位置から停止位置への揺動操作に伴って、各繰出機構38が、各条数切替レバー54の操作位置にかかわらず停止状態に切り替わるように構成している。又、切替レバー60の停止位置から停止解除位置への揺動操作に伴って、各繰出機構38が、対応する条数切替レバー54の操作位置に応じた作動状態に切り替わるように構成している。
つまり、施肥停止用の切替レバー60を揺動操作することにより、この乗用田植機の作業状態を、苗植付装置3による苗植えと施肥装置4による施肥とを行う植え付け施肥状態と、施肥装置4による施肥を行わずに苗植付装置3による苗植えのみを行う植え付け状態とに切り替えることができる。
図1、図3〜5及び図9〜18に示すように、繰出用伝動機構49は、T/Mケース10の左側部に備えた左右向きの施肥動力取出軸63が施肥用の動力として出力する回転動力を往復揺動運動に変換する第1変換部64、及び、その往復揺動運動を駆動軸48の正回転運動に変換する第2変換部65、などを備えている。そして、前述した繰出量調節機構50に連係する第2変換部65を、繰出量調節機構50とともに機体の右端部に配備している。
第1変換部64は、施肥動力取出軸63と一体回転する回転アーム66に一端部をピン連結した連係ロッド67、連係ロッド67の他端部にピン連結した第1アーム68、第1アーム68を左端部に固着した左右向きの連係軸69、及び、第1アーム68と連係軸69を介して一体揺動するように連係軸69の右端部に固着した第2アーム70、などを備えている。そして、これらにより、第1変換部64は、施肥動力取出軸63からの回転動力を第1アーム68及び第2アーム70の往復揺動運動に変換している。
駆動軸48は、その最右端部に駆動軸48の逆回転を防止する逆転防止用のワンウェイクラッチ71を外嵌装備している。逆転防止用のワンウェイクラッチ71は、その外輪71Aを施肥フレーム36の主部材42にボルト連結して固定している。
第2変換部65は、駆動軸48の正回転操作を可能にする正回転操作用の第1ワンウェイクラッチ72と第2ワンウェイクラッチ73、第1変換部64における第2アーム70の往方向の揺動運動(機体後方への揺動運動)を左側の第1ワンウェイクラッチ72を介して駆動軸48の正回転動力として駆動軸48に伝える第1リンク機構74、及び、第1変換部64における第2アーム70の復方向の揺動運動(機体前方への揺動運動)を右側の第2ワンウェイクラッチ73を介して駆動軸48の正回転動力として駆動軸48に伝える第2リンク機構75、などを備えている。
第1ワンウェイクラッチ72及び第2ワンウェイクラッチ73は、駆動軸48の右端部における逆転防止用のワンウェイクラッチ71よりも機体内側の位置に、左右に並べた状態で外嵌装備している。
第1リンク機構74は、第2アーム70に一端部をピン連結したターンバックル式の連係ロッド76、連係ロッド76の他端部にピン連結した揺動部材77、揺動部材77に一端部をピン連結した第1連係部材78、及び、第1連係部材78の他端部にピン連結した第1揺動リンク79、などにより構成している。
第2リンク機構75は、第1リンク機構74と共用する連係ロッド76と揺動部材77、揺動部材77に一端部をピン連結した第2連係部材80、及び、第2連係部材80の他端部にピン連結した第2揺動リンク81、などにより構成している。
第1揺動リンク79は、その基端部を第1ワンウェイクラッチ72の外輪72Aに固着している。第2揺動リンク81は、その基端部を第2ワンウェイクラッチ73の外輪73Aに固着している。これにより、第2リンク機構75の第2連係部材80及び第2揺動リンク81が、第1リンク機構74の第1連係部材78及び第1揺動リンク79よりも機体の右外側に位置するように構成している。
第2リンク機構75は、駆動軸48に伝動する伝動状態と伝動を停止する伝動停止状態とに切り替え可能に構成している。この構成により、第2リンク機構75を伝動状態に切り替えると、第1変換部64における第2アーム70の往方向の揺動運動と復方向の揺動運動とを第2変換部65を介して駆動軸48の正回転動力として伝えることができる。これにより、第2アーム70の往復揺動から得られる各繰出機構38における繰出ロール45の回動角を大きくすることができ、第2アーム70の1往復揺動当たりでの各繰出機構38による肥料繰出量を多くすることができる。逆に、第2リンク機構75を伝動停止状態に切り替えると、第1変換部64における第2アーム70の往方向の揺動運動のみを第2変換部65を介して駆動軸48の正回転動力として伝えることができる。これにより、第2アーム70の往復揺動から得られる各繰出機構38における繰出ロール45の回動角を小さくすることができ、第2アーム70の1往復揺動当たりでの各繰出機構38による肥料繰出量を少なくすることができる。
つまり、第2リンク機構75を伝動状態と伝動停止状態とに切り替えることにより、各繰出機構38の肥料繰り出し状態を、第2アーム70の1往復揺動当たりの肥料繰り出し量を標準量とする第1繰り出し状態と、第2アーム70の1往復揺動当たりの肥料繰り出し量を標準量よりも少なくする第2繰り出し状態とに切り替えることができ、施肥装置4の作動状態を、標準量の施肥を行う標準施肥状態と、標準量よりも施肥量の少ない施肥を行う減量施肥状態とに切り替えることができる。
図2、図4〜6及び図9〜18に示すように、繰出量調節機構50は、上下揺動可能な前後向きのネジ軸82、ネジ軸82の前端に固定した人為操作用のハンドル83、及び、ネジ軸82を第2変換部65の揺動部材77に連係する連係アーム84、などを備えている。
そして、ハンドル83を減量方向に回転させると、ネジ軸82によるネジ送り作用により、連係アーム84が減量方向に揺動変位し、この揺動変位に伴って、第2変換部65の揺動部材77が減量方向に揺動変位する。これにより、揺動部材77と正回転操作用の各ワンウェイクラッチ72,73とを連係する連係部材78,80と揺動リンク79,81との屈曲が浅くなり、揺動部材77の揺動角に対する揺動リンク79,81の揺動角が小さくなる。その結果、施肥装置4の各繰出機構38による肥料繰り出し量を一括して減少させることができる。
逆に、ハンドル83を増量方向に回転させると、ネジ軸82によるネジ送り作用により、連係アーム84が増量方向に揺動変位し、この揺動変位に伴って、第2変換部65の揺動部材77が増量方向に揺動変位する。これにより、揺動部材77と正回転操作用の各ワンウェイクラッチ72,73とを連係する連係部材78,80と揺動リンク79,81との屈曲が深くなり、揺動部材77の揺動角に対する揺動リンク79,81の揺動角が大きくなる。その結果、施肥装置4の各繰出機構38による肥料繰り出し量を一括して増加させることができる。
つまり、繰出量調節機構50は、ネジ軸82のネジ送り作用により、各繰出機構38による肥料繰り出し量を一括して無段階に調節するネジ送り調節式に構成している。
第2変換部65は、施肥装置4の標準施肥状態での各繰出機構38の肥料繰り出し量を繰出量調節機構50にて最少に設定した場合と、施肥装置4の減量施肥状態での各繰出機構38の肥料繰り出し量を繰出量調節機構50にて最多に設定した場合とで、第1変換部64における第2アーム70の1回の往復揺動に対する駆動軸48の正回転方向での回転角が同じになって各繰出機構38の肥料繰り出し量が同じになるように、第1リンク機構74及び第2リンク機構75のリンク比を設定している。
これにより、施肥装置4の標準施肥状態での繰出量調節機構50による肥料繰り出し量の調節領域と、施肥装置4の減量施肥状態での繰出量調節機構50による肥料繰り出し量の調節領域とに、肥料繰り出し量が重複する無駄な調節領域が存在することを阻止している。その結果、施肥装置4の標準施肥状態と減量施肥状態との切り替えを利用した繰出量調節機構50による肥料繰り出し量の調節を、無駄なく連続する広範囲の調節領域によって良好に行うことができる。
図9及び図11〜13に示すように、逆転防止用のワンウェイクラッチ71は、その外輪71Aに施肥フレーム36の主部材42に対する連結部71Bを備えている。施肥フレーム36の主部材42は、ワンウェイクラッチ71の連結部71Bとのボルト連結を可能にする連結部42Aを備えている。主部材42の連結部42Aとワンウェイクラッチ71の連結部71Bとの連結には、2本の段付きボルト103と2つの座金104と2つのバネ座金105とを使用している。そして、ワンウェイクラッチ71の連結部71Bにおける穴径を、段付きボルト103の大径部103Aよりも大きくして、ワンウェイクラッチ71の連結部71Bを、主部材42の連結部42Aと段付きボルト103の頭部103Bとの間に、座金104とバネ座金105とを介して挟持保持するように構成している。
図1〜3、図5、図6及び図9〜19に示すように、この乗用田植機は、走行車体1からの施肥用の動力を、3つのワンウェイクラッチ71〜73などを備える繰出用伝動機構49を介して駆動軸48に伝達している。3つのワンウェイクラッチ71〜73は、駆動軸48の右端部に係合装備した左右のC形の止め輪100の間に、左右方向に並べた状態で外嵌装備している。そして、隣接するワンウェイクラッチ71〜73の間にスペーサ101を介装している。
図12、図13及び図19〜22に示すように、各ワンウェイクラッチ71〜73は、駆動軸48に外嵌する内輪71C〜73Cを備えている。各内輪71C〜73Cは、駆動軸48の断面と同じ正六角形の嵌合孔71Ca〜73Caを有する小径部71Cb〜73Cbと、駆動軸48の外接円よりも大径の丸孔71Cc〜73Ccを有する拡径部71Cd〜73Cdとを備えている。各ワンウェイクラッチ71〜73は、各内輪71C〜73Cの小径部71Cb〜73Cbが各外輪71A〜73Aに内嵌し、各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdが、各外輪71A〜73Aの横外側に食み出すように構成している。そして、各内輪71C〜73Cは、拡径部71Cd〜73Cdの外径が、各ワンウェイクラッチ71〜73の外輪71A〜73Aと内輪71C〜73Cとの間に介装するオイルシール102の外径と略同じ大きさになるように形成している。
繰出用伝動機構49は、各ワンウェイクラッチ71〜73に備えた内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdと駆動軸48との間に圧入する樹脂製の筒状体110を備えている。そして、各筒状体110を、駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間に圧入することにより、駆動軸48及び各ワンウェイクラッチ71〜73の個体差に起因して生じる虞のある駆動軸48と各内輪71C〜73Cとの間でのガタツキを解消することができ、このガタツキに起因して発生する駆動軸48と各ワンウェイクラッチ71〜73との間での伝動ロスを無くすことができる。
これにより、複数の乗用田植機を製造する場合に、走行車体1からの動力が同じであるにもかかわらず、駆動軸48と各ワンウェイクラッチ71〜73との間に生じる伝動ロスに起因して、各乗用田植機に備える施肥装置4ごとに、3つワンウェイクラッチ71〜73を介して得られる駆動軸48の回転数に差が生じる虞を回避することができる。
その結果、各乗用田植機に備える施肥装置4からの肥料繰り出し量が、各乗用田植機に備える施肥装置4ごとに異なる不具合が生じる虞を回避することができる。
又、各ワンウェイクラッチ71〜73の内輪71C〜73Cが、前述した小径部71Cb〜73Cbと拡径部71Cd〜73Cdとを備えることにより、例えば、各内輪71C〜73Cの全体を拡径して、駆動軸48と各内輪71C〜73Cとの間に、各内輪71C〜73Cの全体にわたる長さを有する筒状体110を圧入する場合に比較して、各ワンウェイクラッチ71〜73の径方向での大型化を抑制することができる。
しかも、駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間に各筒状体110を圧入することにより、各内輪71C〜73Cと各筒状体110との接触面積を大きくすることができる。これにより、各ワンウェイクラッチ71〜73の内輪71C〜73Cと各筒状体110との間での滑りの発生を効果的に抑制することができ、各ワンウェイクラッチ71〜73の内輪71C〜73Cと各筒状体110との間での滑りに起因した伝動ロスの発生を効果的に抑制することができる。
ところで、例えば筒状体110を単一の筒状部材で構成すると、筒状体110を駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間に圧入する場合には、筒状体110を駆動軸48の右端部に外嵌した後、筒状体110を駆動軸48の右端部から圧入箇所まで摺動移動させる必要がある。そのため、駆動軸48と各内輪71C〜73Cとの間への筒状体110の圧入に手間を要することになる。又、筒状体110の摺動移動中に、筒状体110の内周面が、駆動軸48の角部48A、又は、駆動軸48に形成した止め輪用の係合溝48C、などに摺接することにより傷付く虞がある。
そこで、図20〜22に示すように、各筒状体110を、断面が正六角形の駆動軸48に対して駆動軸48の対向する2つの角部48Aを挟む状態で配置する2つの湾曲部材111により筒状に構成している。
これにより、各湾曲部材111を、駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間に圧入することにより、筒状体110を駆動軸48の右端部に外嵌する手間や、駆動軸48の右端部から圧入箇所まで筒状体110を摺動移動させる手間を要することなく、筒状体110を駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間に圧入することができる。
又、筒状体110を駆動軸48に外嵌した状態で摺動移動させる必要がないことから、筒状体110の摺動移動中に、筒状体110の内周面110Aが、駆動軸48の角部48A、又は、駆動軸48に形成した止め輪用の係合溝48C、などに摺接することに起因して傷付く虞を回避することができる。
図20〜22に示すように、各湾曲部材111は、駆動軸48の外周面48Bに沿う内面111A、及び、各拡径部71Cd〜73Cdの内周面71Ce〜73Ceに沿って湾曲する外面111Bを備えている。そして、対になる2つの湾曲部材111の内面111Aにより、筒状体110の内周面110Aを形成している。又、対になる2つの湾曲部材111の外面111Bにより、筒状体110の外周面110Bを形成している。
各湾曲部材111は、それらの外面111Bにおける駆動軸48の角部48Aとの対向部位から外れた位置において、駆動軸48の軸心方向に延びる3本の突条111Cを備えている。又、各湾曲部材111の内面111Aを、駆動軸48の外周面48Bを形成する6面の平面部48Baのうちの3面に面接触する3面の平面部111Aaにより形成している。
つまり、各湾曲部材111の外面111Bに、駆動軸48の軸心方向に延びる3本の突条111Cを備えることにより、駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間への各湾曲部材111の圧入が行い易くなる。そして、駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間に各湾曲部材111を圧入すると、各湾曲部材111の外面111Bに備えた各突条111Cが各内輪71C〜73Cにおける拡径部71Cd〜73Cdの内周面71Ce〜73Ceに圧接するのに伴って、各湾曲部材111の内面111Aを形成する3面の平面部111Aaが、駆動軸側に押し出されて、駆動軸48の外周面48Bを形成する6面の平面部48Baに密接するようになる。
その結果、駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間への各湾曲部材111の圧入を行い易くしながら、駆動軸48及び各ワンウェイクラッチ71〜73の個体差に起因して生じる虞のある駆動軸48と各内輪71C〜73Cとの間でのガタツキをより確実に解消することができる。
又、各湾曲部材111の内面111Aを形成する3面の平面部111Aaが120度の挟角を有することから、各湾曲部材111が、それらの内面111Aに30度の抜き勾配を有することになる。これにより、各湾曲部材111の内面側に専用の抜き勾配を備えることなく、各湾曲部材111を成型した後の型抜きを容易にすることができる。
図22に示すように、各湾曲部材111の各突条111Cは、それらの駆動軸48の軸心方向での両端部111Caが、駆動軸48の軸心方向での両端側ほど外方への突出量が少なくなる状態で傾斜している。
これにより、駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間に各湾曲部材111を圧入するときには、各湾曲部材111の向きに関係なく、駆動軸48と各内輪71C〜73Cの拡径部71Cd〜73Cdとの間への各湾曲部材111の圧入を更に行い易くすることができる。
〔別実施形態〕
〔1〕農用供給装置Aは、例えば、走行車体1からの動力を苗縦送り用の駆動軸に伝達する苗縦送り用のワンウェイクラッチを備えた苗植付装置、走行車体1からの動力を種繰り出し用の駆動軸に伝達する種繰り出し用のワンウェイクラッチを備えた直播装置、又は、走行車体1からの動力を薬剤繰り出し用の駆動軸に伝達する薬剤繰り出し用のワンウェイクラッチを備えた薬剤散布装置、などであってもよい。
〔2〕農用供給装置Aの作業条数は、例えば5条以上であってもよい。又、農用供給装置Aに備えるワンウェイクラッチ71〜73の数量は、農用供給装置Aの種類又は構成などに応じて種々の変更が可能である。例えば、農用供給装置Aに単一のワンウェイクラッチ72を備えるようにしてもよい。
〔3〕走行車体1の構成は種々の変更が可能である。例えば、走行車体1を、左右のスイングケース18に代えて、固定式の後車軸ケースを備えるように構成してもよい。又、走行車体1を、運転座席15の下方にエンジン7を備えるように構成してもよい。
〔4〕駆動軸48に採用する角軸は種々の変更が可能である。例えば、断面形状が正方形、正五角形、又は、正八角形、などの角軸を駆動軸48に採用してもよい。
〔5〕ワンウェイクラッチ71〜73の内輪71C〜73Cを、駆動軸48の軸心方向での内輪71C〜73Cの全長にわたって、駆動軸48の外接円よりも大径の丸孔71Cc〜73Ccを有するように形成し、筒状体110を、駆動軸48と内輪71C〜73Cとの間に、駆動軸48の軸心方向での内輪71C〜73Cの全長にわたって圧入するように構成してもよい。
〔6〕ワンウェイクラッチ71〜73の内輪71C〜73Cを、内輪71C〜73Cの両端部に拡径部71Cd〜73Cdを有するように形成して、駆動軸48と内輪71C〜73Cの両端部(拡径部71Cd〜73Cd)との間に、筒状体110を圧入するように構成してもよい。
〔7〕図23〜25に示すように、筒状体110の内周面110A(湾曲部材111の内面111A)に駆動軸48の軸心方向に延びる3本の突条111Cを備え、筒状体110の外周(湾曲部材111の外面111B)を、ワンウェイクラッチ71〜73に備えた内輪71C〜73Cの内周と同じ形状で、内輪71C〜73Cの内周面71Ce〜73Ceに面接触可能に形成し、筒状体110(湾曲部材111)の圧入状態では、突条111Cのそれぞれが駆動軸48の外周面48Bに圧接し、かつ、筒状体110の外周面110B(湾曲部材111の外面111B)が内輪71C〜73Cの内周面71Ce〜73Ceに圧接するように構成してもよい。そして、筒状体110(湾曲部材111)の各突条111Cを、それらの駆動軸48の軸心方向での両端部111Caが、駆動軸48の軸心方向での両端側ほど外方への突出量が少なくなる状態で傾斜するように形成してもよい。
〔8〕図26及び図27に示すように、筒状体110の内周面110A(湾曲部材111の内面111A)に駆動軸48の軸心方向に延びる2本の突条111Cを備え、筒状体110の外周(湾曲部材111の外面111B)を、ワンウェイクラッチ71〜73に備えた内輪71C〜73Cの内周と同じ形状で、内輪71C〜73Cの内周面71Ce〜73Ceに面接触可能に形成し、筒状体110(湾曲部材111)の圧入状態では、突条111Cのそれぞれが駆動軸48の角部48Aに圧接し、かつ、筒状体110の外周面110Bが内輪71C〜73Cの内周面71Ce〜73Ceに圧接するように構成してもよい。そして、図示は省略するが、この構成においても、筒状体110(湾曲部材111)の各突条111Cを、それらの駆動軸48の軸心方向での両端部111Caが、駆動軸48の軸心方向での両端側ほど外方への突出量が少なくなる状態で傾斜するように形成してもよい。
〔9〕筒状体110(湾曲部材111)に備える各突条111Cを、それらの駆動軸48の軸心方向での一端部のみが、駆動軸48の軸心方向での一端側ほど外方への突出量が少なくなる状態で傾斜するように形成してもよい。又、各突条111Cを、それらの駆動軸48の軸心方向での両端にわたって、外方への突出量が一定になるように形成してもよい。
〔10〕筒状体110(湾曲部材111)に備える突条111Cの数量及び配置は、駆動軸48の断面形状などに応じて種々の変更が可能である。例えば、筒状体110の外周面110B(湾曲部材111の外面111B)における駆動軸48の角部48Aとの対向部位と、角部48Aとの対向部位から外れた位置とのそれぞれに、駆動軸48の軸心方向に延びる複数の突条111Cを備えるようにしてもよい。又、筒状体110の内周面110A(湾曲部材111の内面111A)における駆動軸48の角部48Aとの対向部位と、角部48Aとの対向部位から外れた位置とのそれぞれに、駆動軸48の軸心方向に延びる複数の突条111Cを備えるようにしてもよい。
〔11〕筒状体110(湾曲部材111)を、筒状体110の内周面110A(湾曲部材111の内面111A)と、筒状体110の外周面110B(湾曲部材111の外面111B)との双方に複数の突条111Cを有するように形成してもよい。又、筒状体110(湾曲部材111)を、筒状体110の内周面110A(湾曲部材111の内面111A)と、筒状体110の外周面110B(湾曲部材111の外面111B)とのいずれにも突条111Cを有しないように形成してもよい。
〔12〕筒状体110を、単一の筒状部材により構成してもよい。又、筒状体110を、3つ以上の湾曲部材111により筒状に構成してもよい。
〔13〕図28に示すように、駆動軸48に圧接状態で外嵌する小径部120Aと、ワンウェイクラッチ71〜73の内輪71C〜73Cに圧接状態で外嵌する大径部120Bとを有する樹脂製の筒状体120を備えて、駆動軸48及び各ワンウェイクラッチ71〜73の個体差に起因して発生する駆動軸48と各内輪71C〜73Cとの間でのガタツキを解消するように構成してもよい。