JP6406338B2 - エンジンの制御方法及び制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、可変容量型ターボ過給機を備えたエンジンの制御方法及び制御装置に関する。
過給機を備えたディーゼルエンジンにおいて、NO吸蔵触媒や尿素SCRシステム等の後処理装置を用いることなくNOの排出量を低減するため、大量のEGRガスを燃焼室に導入することが知られている。大量のEGRガスを導入することによって、燃焼室における酸素濃度を低減させると共に燃焼を緩慢にさせて、燃焼温度の低減を図り、燃焼室におけるNOの生成が抑制される。
この場合、大量のEGRガスは、過給機のタービン上流側の排気通路から該過給機のコンプレッサ下流側の吸気通路を連通する高圧EGR通路と、タービン下流側の排気通路からコンプレッサ上流側の吸気通路を連通する低圧EGR通路とを介して、供給されるようになっている。このようなディーゼルエンジンでは、一般に、低負荷時には高圧EGR通路を介してEGRガスが導入され、高負荷時には低圧EGR通路を介してEGRガスが導入される。
低圧EGR通路は燃焼室に至るまでの経路が長いため、低圧EGR通路を介してのEGRガス流量の調整には応答遅れが生じやすい。この応答遅れを補うため、可変容量型ターボ過給機(VGターボ:Variable Geometry Turbocharger)による過給圧制御によって、燃焼室における酸素濃度を管理することが知られている。
VGターボは、タービンホイールに供給される排気ガスの流路面積(ノズル面積)を拡縮可能なノズルベーンを有し、例えば低速時にノズル面積を縮小することにより排気ガスの流速を早めてタービンホイールの回転上昇を早め、高速時にノズル面積を拡大することによりタービンホイールの回転上昇を抑制することを可能にしている。すなわち、ノズルベーンを開閉することにより過給圧を応答性よく調整できるようになっている。
ノズルベーンは、アクチュエータによって所望の目標開度に開閉駆動されるようになっているが、開閉動作に異常が生じる場合がある。例えば、ノズルベーンには、排気ガスから受ける排気圧の影響により開閉動作に、目標開度に対する応答遅れ(渋りとも呼ぶ)が生じる場合がある。特に、ノズルベーンが閉側に位置する場合、排気圧が増大するため、ノズルベーンの応答遅れが発生しやすい。また、ノズルベーンの摺動部に燃焼生成物等の異物が噛み込んだ場合、ノズルベーンは開閉不能になり固着してしまう。
このように、ノズルベーンの開動動作に異常が生じた場合には、過給圧を応答性よく調整できなくなり、排気ガス性能が悪化することになる。特に、ノズルベーンが固着した場合、例えば、開側において固着すると低速時において過給圧を上昇させ難くなり、閉側において固着すると高速時において排気圧及び過給圧が異常に高くなると共にターボが過回転状態となってしまい、エンジン本体及び過給機が損傷してしまう虞がある。
特許文献1には、ターボ回転数が所定以上のときに燃料噴射量を制限することが開示されている。燃料噴射量を制限することによって、タービンホイールに供給される排気ガスエネルギを低減して、この結果、ターボ回転数が低減されるようになっている。また、特許文献2には、実過給圧が目標過給圧より大きい場合に、ノズルベーンが非固着状態であるか否か判定することが開示されている。
特開2016−65505号公報 特開2011−80433号公報
従来、VGターボは、中排気量(例えば2Lクラス)以上のディーゼルエンジンに主に採用されていたが、近年、小排気量ディーゼルエンジン(例えば1.5Lクラス)にも採用されている。小排気量ディーゼルエンジンの場合、特に低速時において、排気ガス流量の少なさに起因してVGターボであっても過給レスポンスの向上が十分でない場合がある。このため、タービン軸のイナーシャを低減させることによって、過給レスポンスを向上させることが行われている。
しかしながら、タービン軸のイナーシャを低減させることによって、ターボ回転数が過回転状態になりやすくなる。特に、ノズルベーンに応答遅れが生じ又は固着状態となっている場合には、ターボ回転数は短時間で過回転状態となってしまう虞がある。
ところで、ターボ回転数が所定以上のときに燃料噴射量を制限しても、ターボ回転数が低下しない場合がある。例えば、ブローバイガスに含まれるオイルの燃焼室への侵入や、シリンダから燃焼室へのオイル上がり等により何らかの理由により燃焼室にオイルが侵入した場合に、オイルを燃料として燃焼された排気ガスが過給機に供給される。この場合、燃料噴射量を低減したにもかかわらず、排気ガスエネルギが低減しないのでターボ回転数が低減しない。
また、特許文献2によれば、過給圧に基づいてノズルベーンが非固着状態であるか否かを判定するものであり、燃焼室に侵入した潤滑油の燃焼による排気ガスエネルギが過給機に供給されていることを判定できるものではない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、燃焼室にオイルが侵入した場合であっても、ターボ回転数を低減させて過給機の過回転を防止できる、エンジンの制御方法及び制御装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するため、本願発明は次のように構成したことを特徴とする。
本願の請求項1に記載の、本発明の一態様は、タービンに供給される排気ガスの流路面積を可変可能なノズルベーンを有する可変容量型過給機と吸気シャッター弁とを備えたエンジンの制御方法であって、前記エンジンの運転状態に応じて、前記ノズルベーンの目標ノズル開度と前記吸気シャッター弁の目標シャッター開度と前記エンジンに供給される燃料の目標噴射量とを設定する工程と、前記ノズルベーンの開度を前記目標ノズル開度に制御する工程と、前記過給機上流側の排気圧が排気圧第1閾値以上であるか否か判定する工程と、前記ノズルベーンの実開度と前記目標ノズル開度との差であるノズル偏差がノズル偏差閾値以上であるか否か判定する工程と、前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合、前記吸気シャッター弁の開度を前記目標シャッター開度よりも制限すると共に、前記エンジンへの燃料供給を前記目標噴射量より制限する工程と、を有する、ことを特徴としている。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載のエンジンの制御方法であって、前記制限する工程において、前記エンジンの回転数が回転数閾値以上である場合、前記吸気シャッター弁の開度を略全閉に制御する、ことを特徴としている。
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は2に記載のエンジンの制御方法であって、前記制限する工程において、前記エンジンの回転数が回転数閾値未満である場合、前記吸気シャッター弁の開度をアイドル相当の空気量を可能とする開度に制御する、ことを特徴としている。
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンの制御方法であって、前記吸気シャッター弁の開度を制限した後に、前記過給機上流側の排気温が排気温閾値を下回った場合に前記吸気シャッター弁の開度制限を解除する工程を更に有する、ことを特徴としている。
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1〜4のいずれか1つに記載のエンジンの制御方法であって、前記吸気シャッター弁の開度を制限した後に、前記排気圧が前記排気圧第1閾値より低い排気圧第2閾値を下回った場合に前記吸気シャッター弁の開度制限を解除する工程を更に有する、ことを特徴としている。
また、請求項6に記載の、本発明の更なる他の態様は、タービンに供給される排気ガスの流路面積を可変可能なノズルベーンを有する可変容量型過給機と吸気シャッター弁とを備えたエンジンの制御装置であって、前記エンジンの運転状態に応じて、前記ノズルベーンの目標ノズル開度と前記吸気シャッター弁の目標シャッター開度と前記エンジンに供給される燃料の目標噴射量とを設定する目標設定部と、前記ノズルベーンの開度を前記目標ノズル開度に制御するノズルベーン制御部と、前記過給機上流側の排気圧が排気圧第1閾値以上であるか否か判定する排気圧判定部と、前記ノズルベーンの実開度と前記目標ノズル開度との差であるノズル偏差がノズル偏差閾値以上であるか否か判定するノズル偏差判定部と、前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合、前記吸気シャッター弁の開度を前記目標シャッター開度よりも制限する吸気シャッター弁制御部と、前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合、前記エンジンへの燃料供給を前記目標噴射量よりも制限するように燃料噴射弁を制御する燃料噴射弁制御部と、を有する、ことを特徴としている。
また、請求項7に記載の発明は、前記請求項6に記載のエンジンの制御装置であって、前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合に前記エンジンの回転数が回転数閾値以上であるとき、前記吸気シャッター弁制御部は、前記吸気シャッター弁の開度を略全閉に制御する、ことを特徴としている。
また、請求項8に記載の発明は、前記請求項6又は7に記載のエンジンの制御装置であって、前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合に前記エンジンの回転数が回転数閾値未満であるとき、前記吸気シャッター弁制御部は、前記吸気シャッター弁の開度をアイドル相当の空気量を可能とする開度に制御する、ことを特徴としている。
また、請求項9に記載の発明は、前記請求項6〜8のいずれか1つに記載のエンジンの制御装置であって、前記吸気シャッター弁の開度を制限した後に前記過給機上流側の排気温が排気温閾値を下回った場合、前記吸気シャッター弁制御部は、前記吸気シャッター弁の開度制限を解除する、ことを特徴としている。
また、請求項10に記載の発明は、前記請求項6〜9のいずれか1つに記載のエンジンの制御装置であって、前記吸気シャッター弁の開度を制限した後に前記排気圧が前記排気圧第1閾値より低い排気圧第2閾値を下回った場合、前記吸気シャッター弁制御部は、前記吸気シャッター弁の開度制限を解除する、ことを特徴としている。
前記の構成により、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
まず、請求項1に記載の発明によれば、ノズル偏差がノズル偏差閾値以上であり且つ過給機上流側の排気圧が排気圧第1閾値以上である場合に、吸気シャッター弁の開度を制限することによって、エンジンに供給される吸気量を制限することができ、これによって、燃焼室に存在する燃料の有無によらずエンジンにおける燃焼を速やかに抑制できる。この結果、過給機に供給される排気ガスエネルギが減少し、これにより、過給機上流側の排気圧が低減されると共にノズル偏差が低減されるので、過給機の過回転が抑制される。
したがって、エンジンへの燃料の供給を制限(カット)したにもかかわらず、燃焼室内に燃料(例えば潤滑油の流入)が存在する場合であっても、吸気量を制限することによって燃焼室における酸素を減少させることで、燃焼を速やかに抑制できる。これによって、過給機に供給される排気ガスエネルギが低減されるので、排気圧及び過給圧が閾値未満に低減されると共に過給機の過回転が抑制される。
また、請求項2に記載の発明によれば、エンジンの回転数が回転数閾値以上である場合に、吸気シャッター弁を略全閉に制御することによって、燃焼室に供給される吸気が遮断されることになり、エンジンの回転数を可及的速やかに低減させることができる。これによって、過給機に供給される排気ガスエネルギが低減されるので、排気圧及び過給圧が低減されると共に、過給機の過回転が抑制される。
また、請求項3に記載の発明によれば、エンジンの回転数が回転数閾値未満である場合に、燃焼室に供給される吸気量を制限することによって、エンジンを、低速走行が可能な出力に維持できる。また、エンジンの回転数は回転数閾値未満であるので、過給機に供給される排気ガスエネルギの増大が抑制され、過給機の排気圧及び過給圧の増大を抑制できると共に過給機の過回転が抑制される。
また、請求項4に記載の発明によれば、過給機上流側の排気温が排気温閾値を下回った場合には、過給機に供給される排気ガスエネルギが低減されるので、過給機の、上流側の排気圧、過給圧及び回転数それぞれが低下することになる。したがって、この場合、エンジンに供給される吸気量を制限する必要がなく、吸気シャッター弁の開度制限を解除することによって、エンジンを速やかに通常運転に復帰させることができる。
また、請求項5に記載の発明によれば、過給機上流側の排気圧が排気圧第2閾値を下回った場合には、過給機に供給される排気ガスエネルギが低減されるので、過給機の、上流側の排気圧、過給圧及び回転数それぞれが低下することになる。したがって、この場合、エンジンに供給される吸気量を制限する必要がなく、吸気シャッター弁の開度制限を解除することによって、エンジンを速やかに通常運転に復帰させることができる。
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果が、エンジンの制御装置において実現される。
また、請求項7に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果が、エンジンの制御装置において実現される。
また、請求項8に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果が、エンジンの制御装置において実現される。
また、請求項9に記載の発明によれば、請求項4に記載の発明の効果が、エンジンの制御装置において実現される。
また、請求項10に記載の発明によれば、請求項5に記載の発明の効果が、エンジンの制御装置において実現される。
すなわち、本発明に係るエンジンの制御方法及び制御装置によれば、燃焼室にオイルが侵入した場合であっても、ターボ回転数を低減させて過給機の過回転を防止できる。
本発明の実施形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。 ターボ過給機のタービン室を拡大した縦断面図である。 EGRの作動領域の説明図である。 エンジンシステムの基本制御を示すフローチャートである。 ターボ過給機の制御システムの概略構成を示すブロック図である。 ターボ過給機のノズルベーンの故障判断制御を示すフローチャートである。 ガード燃料値を設定するサブルーチンを示すフローチャートである。 図6の故障判定の変形例を示すフローチャートである。 図6の故障判定の他の変形例を示すフローチャートである。 図6の故障判定の更なる変形例を示すフローチャートである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置について説明する。
<システム構成>
まず、図1を参照して、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置が適用されたエンジンシステムについて説明する。図1は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置が適用されたエンジンシステムの概略構成図である。
図1に示すように、エンジンシステム200は、主に、ディーゼルエンジンとしてのエンジンEと、エンジンEに吸気を供給する吸気系INと、エンジンEに燃料を供給するための燃料供給系FSと、エンジンEの排気ガスを排出する排気系EXと、エンジンシステム200に関する各種の状態を検出するセンサ99〜122と、エンジンシステム200の制御を行うECU(制御装置:Electronic Control Unit)60と、を有する。
まず、吸気系INは、吸気が通過する吸気通路1を有しており、この吸気通路1上には、上流側から順に、外部から導入された空気を浄化するエアクリーナ3と、通過する吸気を圧縮して吸気圧を上昇させる、ターボ過給機5のコンプレッサ5a(コンプレッサホイール)と、通過する吸気流量を調整する吸気シャッター弁7と、通水された冷却水を用いて吸気を冷却する水冷式のインタークーラ8と、インタークーラ8に通水する冷却水の流量を制御する電動ウォータポンプ9と、インタークーラ8と電動ウォータポンプ9とを接続し、これらの間で冷却水を循環させる通路である冷却水通路10と、エンジンEに供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク12と、が設けられている。
また、吸気系INにおいては、エアクリーナ3の直下流側の吸気通路1上には、吸入空気量を検出するエアフローセンサ101と吸気温度を検出する吸気温度センサ102とが設けられ、ターボ過給機5のコンプレッサ5aには、このコンプレッサ5aの回転数(ターボ回転数)を検出するターボ回転数センサ103が設けられ、吸気シャッター弁7には、この吸気シャッター弁7の開度を検出する吸気シャッター弁位置センサ105が設けられ、インタークーラ8の直下流側の吸気通路1上には、吸気温度を検出する吸気温度センサ106と吸気圧を検出する吸気圧センサ107とが設けられ、サージタンク12には、吸気マニホールド温度センサ108が設けられている。これらの、吸気系INに設けられた各センサ101〜108は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号D101〜D108をECU60に出力する。
次に、エンジンEは、吸気通路1(詳しくは吸気マニホールド)から供給された吸気を燃焼室17内に導入する吸気バルブ15と、燃焼室17に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁20と、始動時などでの着火を確保するための補助熱源としてのグロープラグ21と、燃焼室17内での混合気の燃焼により往復運動するピストン23と、ピストン23の往復運動により回転されるクランクシャフト25と、燃焼室17内での混合気の燃焼により発生した排気ガスを排気通路41へ排出する排気バルブ27と、を有する。更に、エンジンEには、このエンジンEの出力を利用して発電するオルタネータ26が設けられている。
また、エンジンEには、エンジンEなどを冷却する冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ109と、クランクシャフト25のクランク角度を検出するクランク角センサ110と、油圧及び/又は油温を検出する油圧/油温センサ111と、オイルレベルを検出する光学式オイルレベルセンサ112と、が設けられている。これらの、エンジンEに設けられた各センサ109〜112は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号D109〜D112をECU60に出力する。
次に、燃料供給系FSは、燃料を貯蔵する燃料タンク30と、燃料タンク30から燃料噴射弁20に燃料を供給するための燃料供給通路38とを有する。燃料供給通路38には、上流側から順に、低圧燃料ポンプ31と、高圧燃料ポンプ33と、コモンレール35とが設けられている。また、低圧燃料ポンプ31には燃料ウォーマー32が設けられ、高圧燃料ポンプ33には燃圧レギュレータ34が設けられ、コモンレール35にはコモンレール減圧弁36が設けられている。
また、燃料供給系FSにおいては、高圧燃料ポンプ33には、燃料温度を検出する燃料温度センサ114が設けられ、コモンレール35には、燃圧を検出する燃圧センサ115が設けられている。これらの、燃料供給系FSに設けられた各センサ114、115は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号D114、D115をECU60に出力する。
次に、排気系EXは、排気ガスが通過する排気通路41を有しており、この排気通路41上には、上流側から順に、通過する排気ガスによって回転され、この回転によって上記したようにコンプレッサ5aを駆動する、ターボ過給機5のタービン5b(タービンホイール)と、排気ガスの浄化機能を有するディーゼル酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)45及びディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel particulate filter)46と、通過する排気流量を調整する排気シャッター弁49と、が設けられている。DOC45は、排出ガス中の酸素を用いて炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)などを酸化して水と二酸化炭素に変化させる触媒であり、DPF46は、排気ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集するフィルタである。
また、排気系EXにおいては、ターボ過給機5のタービン5bの上流側の排気通路41上には、排気圧を検出する排気圧センサ116と排気温度を検出する排気温度センサ117とが設けられ、DOC45の直上流側及びDOC45とDPF46との間には、それぞれ、排気温度を検出する排気温度センサ118、119が設けられ、DPF46には、このDPF46の上流側と下流側との排気圧の差を検出するDPF差圧センサ120が設けられ、DPF46の直下流側の排気通路41上には、酸素濃度を検出するリニアO2センサ121と排気温度を検出する排気温度センサ122とが設けられている。これらの、排気系EXに設けられた各センサ116〜122は、それぞれ、検出したパラメータに対応する検出信号D116〜D122をECU60に出力する。
更に、本実施形態では、ターボ過給機5は、排気エネルギーが低い低速回転時でも効率良く過給を行えるように小型に構成されていると共に、タービン5bの全周を囲むように複数の可動式のノズルベーン5cが設けられ、これらのノズルベーン5cによりタービン5bへの排気の流通断面積(ノズル断面積)を変化させるようにした容量可変型ターボ過給機(VGターボ:Variable Geometry Turbocharger)として構成されている。例えば、ノズルベーン5cは、ダイヤフラムに作用する負圧の大きさが電磁弁により調節されるアクチュエータによって回動される。また、そのようなアクチュエータの位置により、ノズルベーン5cの開度を検出するノズルベーン開度センサ104が設けられている。このノズルベーン開度センサ104は、検出したノズルベーン開度に対応する検出信号D104をECU60に出力する。
ここで、図2を参照して、本発明の実施形態によるターボ過給機5のノズルベーン5cについて具体的に説明する。図2は、ターボ過給機5のタービン室を拡大した縦断面の構成を模式的に示す。
図2に示すように、タービンケーシング153内に形成されたタービン室153aには、そのほぼ中央部に配置されたタービン5bの周囲を取り囲むように複数の可動式のノズルベーン5c、5c、…が配設され、各ノズルベーン5cはタービン室153aの一方の側壁を貫通する支軸5dにより回動可能に支持されている。各ノズルベーン5cは、それぞれ支軸5dの回りに図2の時計回りに回動して、相互に近接するように傾斜すると、各ノズルベーン5cの相互間に形成されるノズル155、155、…の開度(ノズル断面積)が小さく絞られて、排気流量の少ないときでも高い過給効率を得ることができる。一方、各ノズルベーン5cを上記と反対側に回動させて、相互に離反するように傾斜させれば、ノズル断面積が大きくなるので、排気流量の多いときでも通気抵抗を低減して、過給効率を高めることができる。
また、リング部材157は、リンク機構158を介してアクチュエータのロッド163に駆動連結されており、該アクチュエータの作動によりリング部材157を介して各ノズルベーン5cが回動される。すなわち、リンク機構158は、一端部をリング部材157に回動可能に連結された連結ピン158aと、該連結ピン158aの他端部に一端部を回動可能に連結された連結板部材158bと、該連結板部材158bの他端部に連結されると共に、タービンケーシング153の外壁を貫通する柱状部材158cと、該柱状部材158cのタービンケーシング153外へ突出する突出端部に一端部を連結された連結板部材158dとからなり、該連結板部材158dの他端部が連結ピン(図示せず)によりアクチュエータのロッド163に回動可能に連結されている。
図1に戻ると、本実施形態によるエンジンシステム200は、更に、高圧EGR装置43及び低圧EGR装置48を有する。高圧EGR装置43は、ターボ過給機5のタービン5bの上流側の排気通路41とターボ過給機5のコンプレッサ5aの下流側(詳しくはインタークーラ8の下流側)の吸気通路1とを接続する高圧EGR通路43aと、高圧EGR通路43aを通過させる排気ガスの流量を調整する高圧EGRバルブ43bと、を有する。低圧EGR装置48は、ターボ過給機5のタービン5bの下流側(詳しくはDPF46の下流側で且つ排気シャッター弁49の上流側)の排気通路41とターボ過給機5のコンプレッサ5aの上流側の吸気通路1とを接続する低圧EGR通路48aと、低圧EGR通路48aを通過する排気ガスを冷却する低圧EGRクーラ48bと、低圧EGR通路48aを通過させる排気ガスの流量を調整する低圧EGRバルブ48cと、低圧EGRフィルタ48dと、を有する。
高圧EGR装置43によって吸気系INに還流される排気ガス量(以下「高圧EGRガス量」と呼ぶ。)は、ターボ過給機5のタービン5b上流側の排気圧と、吸気シャッター弁7の開度によって作り出される吸気圧と、高圧EGRバルブ43bの開度とによって概ね決定される。また、低圧EGR装置48によって吸気系INに還流される排気ガス量(以下「低圧EGRガス量」と呼ぶ。)は、ターボ過給機5のコンプレッサ5a上流側の吸気圧と、排気シャッター弁49の開度によって作り出される排気圧と、低圧EGRバルブ48cの開度とによって概ね決定される。
ここで、図3を参照して、本発明の実施形態において、高圧EGR装置43が作動されるエンジンEの運転領域(以下では「高圧EGR領域」と呼ぶ。)及び低圧EGR装置48が作動されるエンジンEの運転領域(以下では「低圧EGR領域」と呼ぶ。)について説明する。図3は、横軸にエンジン回転数を示し、縦軸に燃料噴射量(エンジン負荷に相当する)を示しており、高圧EGR領域及び低圧EGR領域を模式的に表している。
図3に示すように、低負荷・低回転数側に規定されたエンジンEの運転領域R1(第1運転領域に相当する)は、高圧EGR装置43が作動される高圧EGR領域であり、この高圧EGR領域R1よりも高負荷・高回転数側に規定されたエンジンEの運転領域R2(第2運転領域に相当する)は、低圧EGR装置48が作動される低圧EGR領域である。より詳しくは、低圧EGR領域R2内の一部の領域(高圧EGR領域R1との境界付近の領域)では、低圧EGR装置48だけでなく、高圧EGR装置43も作動される、つまり高圧EGR装置43及び低圧EGR装置48の併用領域となる。また、低圧EGR領域R2よりも更に高負荷・高回転数側に規定されたエンジンEの運転領域R3は、高圧EGR装置43及び低圧EGR装置48のいずれも作動されない領域(以下では適宜「非EGR領域」と呼ぶ。)である。
図1に戻ると、本実施形態によるECU60は、上述した各センサ101〜122の検出信号D101〜D122に加えて、外気温を検出する外気温センサ98、大気圧を検出する大気圧センサ99、及びアクセルペダル95の開度(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ100のそれぞれが出力した検出信号D98〜D100に基づいて、エンジンシステム200内の構成要素に対する制御を行う。具体的には、ECU60は、ターボ過給機5のタービン5bにおけるノズルベーン5cの開度を制御すべく、このノズルベーン5cを駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号C130を出力する。また、ECU60は、吸気シャッター弁7の開度を制御すべく、吸気シャッター弁7を駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号C131を出力する。また、ECU60は、インタークーラ8に供給する冷却水の流量を制御すべく、電動ウォータポンプ9に対して制御信号C132を出力する。また、ECU60は、エンジンEの燃料噴射量などを制御すべく、燃料噴射弁20に制御信号C133を出力する。また、ECU60は、オルタネータ26、燃料ウォーマー32、燃圧レギュレータ34及びコモンレール減圧弁36を制御すべく、これらのそれぞれに対して制御信号C134、C135、C136、C137を出力する。また、ECU60は、高圧EGRバルブ43bの開度を制御すべく、高圧EGRバルブ43bを駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号C138を出力する。また、ECU60は、低圧EGRバルブ48cの開度を制御すべく、低圧EGRバルブ48cを駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号C139を出力する。また、ECU60は、排気シャッター弁49の開度を制御すべく、排気シャッター弁49を駆動するアクチュエータ(不図示)に対して制御信号C140を出力する。
<基本制御>
次に、図4を参照して、本発明の実施形態によるエンジンシステム200において実施される基本制御について説明する。図4は、本発明の実施形態による基本制御を示すフローチャートである。このフローでは、要求噴射量などに応じた目標酸素濃度及び目標吸気温度を実現するための制御がなされる。また、このフローは、ECU60によって所定の周期で繰り返し実行される。
まず、ステップS11では、ECU60は、上述した各センサ98〜122が出力した検出信号D98〜D122のうちの少なくとも一以上を取得する。
次いで、ステップS12では、ECU60は、アクセル開度センサ100が検出したアクセル開度に基づいて、エンジンEから出力させるべき目標トルクを設定する。
次いで、ステップS13では、ECU60は、ステップS12で設定した目標トルクと、エンジン回転数とに基づいて、燃料噴射弁20から噴射させるべき要求噴射量(D要求Q)を設定する。
次いで、ステップS14では、ECU60は、ステップS13で設定した要求噴射量と、エンジン回転数とに基づいて、燃料の噴射パターンと、燃圧と、目標酸素濃度と、目標吸気温度と、EGR制御モード(高圧EGR装置43及び低圧EGR装置48の両方又は一方を作動させるモード、或いは高圧EGR装置43及び低圧EGR装置48のいずれも作動させないモード)とを設定する。
次いで、ステップS15では、ECU60は、ステップS14で設定した目標酸素濃度及び目標吸気温度を実現する状態量を設定する。例えば、この状態量には、高圧EGR装置43によって吸気系INに還流させる排気ガス量(高圧EGRガス量)や、低圧EGR装置48によって吸気系INに還流させる排気ガス量(低圧EGRガス量)や、ターボ過給機5による過給圧などが含まれる。
次いで、ステップS16では、ECU60は、ステップS15で設定した状態量に基づいて、エンジンシステム200の各構成要素のそれぞれを駆動する各アクチュエータを制御する。この場合、ECU60は、状態量に応じた制限値や制限範囲を設定し、状態値が制限値や制限範囲による制限を遵守するような各アクチュエータの制御量を設定して制御を実行する。
<ターボ過回転防止制御及びフェールセーフ制御>
以下では、本発明の実施形態による、ターボ過給機5のノズルベーン5cの一時的な応答遅れを抑制しつつノズルベーン5cの固着判定を適正に行い、ターボ回転数が過回転状態となることを防止するための制御(ターボ過回転防止制御)について説明する。また、併せて、ターボ過給機5又はエンジンEに異常が発生した場合に、エンジンE及びターボ過給機5をフェールセーフモードで運転させる制御(フェールセーフ制御)について説明する。
最初に、本発明の実施形態においてECU60が行う制御の概要について説明する。本実施形態では、ECU60は、エンジンEの運転状態(具体的には燃料噴射量及びエンジン回転数)に基づいて目標過給圧を設定し、実過給圧がこの目標過給圧に設定されるように、ターボ過給機5のノズルベーン5cの目標開度を設定し、ノズルベーン5cを目標開度に制御する。つまり、ECU60は、過給圧F/B制御を用いて、実過給圧を目標過給圧と比較しながら、目標過給圧が実現されるようにノズルベーン5cの目標開度を変化させる。典型的には、ECU60は、実過給圧が目標過給圧を下回っている場合には、ノズルベーン5cの目標開度を閉じ側に変化させる制御を行い、実過給圧が目標過給圧を上回っている場合には、ノズルベーン5cの目標開度を開き側に変化させる制御を行う。
ここで、本実施形態では、ECU60は、ノズルベーン5cの実開度と目標開度との差であるノズル偏差が所定値以上である場合に、燃料噴射量を減量する制御(以下では適宜「噴射量低減制御」と呼ぶ)を行うと共に、上記した過給圧F/B制御によるノズルベーン5cの目標開度の閉じ側への変化を制限する制御を行う。次いで、ECU60は、ノズル偏差が所定値以上である状態が所定時間継続していることを故障判定条件として、ノズルベーンが固着又は過度に応答遅れにより故障していると判定する。
更に、ECU60は、ターボ過給機5の上流側の排気圧が所定値以上である場合に、エンジンEをフェールセーフモードに移行させて、エンジンEに供給される新気量及び燃料噴射量を制限する。これにより、エンジンEの燃焼室17における燃焼を制限して、ターボ過給機5に供給される排気ガスエネルギを低減することによって排気圧の低減を図る。
図5は、ターボ過回転防止制御及びフェールセーフ制御を実行するための制御システムのブロック図である。図5に示されるように、ECU60は、アクセル開度センサ100、ノズルベーン開度センサ104、排気圧センサ116、排気温センサ117、吸気圧センサ107からの検出信号に基づいて、ノズルベーン5c、燃料噴射弁20、吸気シャッター弁7、及び警告灯表示部96を制御する。
ECU60は、ノズルベーン5c、燃料噴射弁20、及び吸気シャッター弁7の制御目標となる状態量を設定する目標設定部として、ノズルベーン目標開度設定部61、目標噴射量設定部62、及び吸気シャッター弁目標開度設定部63を有している。
ノズルベーン目標開度設定部61は、上述されたようにアクセル開度センサ100が検出したアクセル開度に基づいて設定された目標トルクを実現するのに必要な目標過給圧が得られるように、エンジンEの運転状態にしたがってノズルベーン5cの目標ノズル開度を設定する。目標噴射量設定部62は、目標トルクを実現するのに要する燃料噴射量を目標燃料噴射量(D要求Q)として設定する。吸気シャッター弁目標開度設定部63は、高圧EGR通路43aを介して供給されるEGRガス流量を調整するように、吸気通路1における吸気圧を調整するべく吸気シャッター弁7の目標開度を設定する。
また、ECU60は、ノズルベーン5c、燃料噴射弁20、及び吸気シャッター弁7をそれぞれ制御する制御部として、ノズルベーン制御部64、燃料噴射弁制御部65、及び吸気シャッター弁制御部66を有している。
ノズルベーン制御部64は、ノズルベーン目標開度設定部61によって設定された目標ノズル開度にノズルベーン5cを制御する。
燃料噴射弁制御部65は、燃料噴射弁20から噴射される燃料噴射量FPをD要求Qに制御する。また、後述するように、ノズル偏差判定部67によってノズル偏差が所定値以上であることが判定された場合、燃料噴射量FPをD要求Qよりも減少させ又は制限する。更に、フェールセーフモードにおいて、燃料噴射量FPを更に減少させ又は制限する。
吸気シャッター弁制御部66は、吸気シャッター弁7の開度を、吸気シャッター弁目標開度設定部63によって設定された目標開度に制御する。また、フェールセーフモードにおいて、吸気シャッター弁7の開度を目標開度よりも減少させ又は制限し、これによって燃焼室17に供給される吸気量を減少させる。
また、ECU60は、ターボ過給機5及びエンジンEの異常を判定する異常判定部として、ノズル偏差判定部67、排気圧判定部68、排気温判定部69、過給圧判定部70、及びノズルベーン故障判定部71を有している。
ノズル偏差判定部67は、ノズルベーン開度センサ104が検出したノズルベーン5cの実開度に基づいて、ノズルベーン5cの実開度と目標ノズル開度との差であるノズル偏差を算出し、該ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上であるか否かを判定する。ノズル偏差閾値DVGTは、目標ノズル開度に対するノズルベーン5cの応答遅れ及び固着を検出するための閾値であり、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上であることが判定された場合、フラグ1を「1」に設定すると共に、ECU60のメモリに記憶されたノズルベーン故障判定用の変数Cを1つ増加(カウントアップ)させる。
ノズル偏差閾値DVGTは、例えば、ノズルベーン5cの全閉から全開位置に至る全開閉ストローク量の略50%に設定されており、これにより、ノズルベーン5c応答遅れを精度よく検出できる。ノズル偏差閾値DVGTが、全開閉ストローク量の50%未満に設定されている場合、過度にノズルベーン5cの応答遅れを検出してしまうことになる一方で、50%より大きくすると、ノズルベーン5cの応答遅れの検出に漏れが生じやすい。
排気圧判定部68は、排気圧センサ116が検出した排気圧に基づいて、ターボ過給機5の上流側の排気通路41の排気圧であるTC排気圧が、TC排気圧第1閾値PEX1より低いか否かを判定する。TC排気圧第1閾値PEX1は、ノズルベーン5cの開側への応答遅れや、エンジンEから排出される排気ガス流量の増大等による、排気圧の異常増大を検出するための閾値である。排気圧判定部68は、TC排気圧がTC排気圧第1閾値PEX1以上であることを判定した場合、フラグ2を「1」に設定すると共に、エンジンEをフェールセーフモードに移行させる。
また、排気圧判定部68は、フラグ2が「1」に設定された後、TC排気圧がTC排気圧第2閾値PEX2より低いか否かを判定する。TC排気圧第2閾値PEX2は、排気圧の異常増大が解消されたことを検出するための閾値であり、TC排気圧第1閾値PEX1よりも低く設定されている。
排気温判定部69は、フラグ2が「1」に設定された後、ターボ過給機5の上流側の排気通路41の排気温であるTC排気温がTC排気温閾値TEXより低いか否かを判定する。TC排気温TEXは、排気圧の異常増大による排気温の増大を検出するためのものである。
フラグ2が「1」に設定された後、TC排気圧がTC排気圧第2閾値PEX2より低下し、且つ、TC排気温がTC排気温閾値TEXより低下したことが判定された場合、排気圧判定部68は、フラグ2を「1」から「0」に設定し、フェールセーフモードを解除する。
過給圧判定部70は、吸気通路1に設けられた吸気圧センサ107が検出した吸気圧に基づいて、コンプレッサ5aの下流側(より具体的にはインタークーラ8の下流側)の吸気通路1における吸気圧である過給圧が、過給圧第1閾値PBST1より高いか否かを判定する。過給圧第1閾値PBST1は、ノズルベーン5cの開側への応答遅れや、エンジンEから排出される排気ガス流量の異常増大等に起因した、ターボ過給機5のコンプレッサ5aから吐出される吸気圧の異常上昇を検出するための閾値である。
ノズルベーン故障判定部71は、変数Cが、ノズルベーン故障判定閾値CMILより小さいか否か判定し、変数Cがノズルベーン故障判定閾値CMIL以上である場合に、ノズルベーン5cが故障していると判定する。この場合、ECU60のメモリに故障記録をサービスコードとして記憶させて、後のサービス時に確認できるようにしてもよく、警告灯表示部96に故障表示灯(MIL:Malfunction Indicator Lamp)を点灯させて、運転者にターボ過給機5の故障を報知するようにしてもよい。
図6は、上述したターボ過回転防止制御及びフェールセーフ制御におけるECU60の処理サイクルの流れを示すフローチャートである。本処理サイクルは、ECU60により、所定の周期で繰り返し実行される。まず、ステップS110において、フラグ2が「0」であるか否か判定される。フラグ2は、上述したように、ターボ過給機5の上流側の排気圧がTC排気圧第1閾値PEX1以上である場合に「1」に設定されるものである。
フラグ2が「0」である場合、すなわちエンジンEがフェールセーフモードで運転されていない場合、ノズル偏差判定部67によって、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上であるか否か判定される(ステップS120)。この判定がYESの場合、フラグ1が「1」であるか否か判定される(ステップS130)。フラグ1が「1」でない場合、フラグ1は「1」に設定される(ステップS131)。ステップS130がYESの場合、又はステップS131の後、変数Cが1つ増加される(ステップS140)。
次に、ノズルベーン故障判定部71によって、変数Cがノズルベーン故障判定閾値CMILより小さいか否か判定される(ステップS150)。ここで、上述したように、本処理サイクルは所定の周期で繰り返し実行されるので、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上である場合、処理サイクルごとに変数Cは1つずつ増加されることになる。そして、ある処理サイクルにおいて、変数CがCMILになった場合、すなわちステップS150における判定がNOである場合、ノズルベーン故障判定部71は、ノズルベーン5cが固着していると判定する(ステップS151)。
一方、ある処理において、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGTを下回った場合、すなわち、ステップS120がNOである場合、フラグ1が「1」であるか否か判定され(ステップS121)、この判定がYESの場合、フラグ1が「1」から「0」に設定されて(ステップS122)、次いで変数Cが0にリセットされる(ステップS123)。
すなわち、ステップS150における、変数Cがノズルベーン故障判定閾値CMILより小さいか否かの判定は、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上である状態が継続している場合に実行され、ノズルベーン故障判定閾値CMILに対応する数の処理サイクルにわたって、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上である場合に、変数Cがノズルベーン故障判定閾値CMIL以上となり、この場合ステップS151において、ノズルベーン5cが故障していると判定なされる。換言すれば、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGTを超過している状態が、処理サイクルの数に対応する時間、継続している場合に、ノズルベーン故障判定部71は、ノズルベーン5cが故障(目標開度に対する過度の応答遅れ、固着等)していると判定する。
なお、ノズルベーン故障判定閾値CMILは、ノズルベーン5cが固着している場合に、ターボ回転数が過回転とならないような時間を確保可能な、処理サイクル数に対応する値に設定されている。
ステップS150がYESの場合、又はステップS151の後、排気圧判定部68は、ターボ過給機5の上流側の排気通路41の排気圧であるTC排気圧が、TC排気圧第1閾値PEX1より小さいか否か判定する(ステップS160)。この判定がYESの場合、燃料噴射弁制御部65は、運転状態に基づいて、D要求Qよりも減少され又は制限された燃料噴射量であるガードQを算出する(ステップS170)。
ガードQは、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上である場合に算出されるものである。燃料噴射量FPを、ガードQに設定することによって、ターボ過給機5に供給される排気ガスエネルギが低減され、これによってノズルベーン5cの応答遅れが抑制されるようになっている。
図7は、ガードQを算出するための処理(ステップS170)を示すサブルーチンである。この処理においては、ガードQは、ターボ回転数(TC回転数)に基づくガードQMAXNTと、TC排気圧に基づくガードQMAXPEXと、過給圧に基づくガードQMAXPBSTとを含む、複数のガードQが算出される。この他、燃焼室に供給される空気量に基づいて最低限必要な空気過剰率を確保できる上限燃料噴射量としてガードQも算出してもよい。
まず、TC回転数に基づくガードQMAXNTが算出される。ステップS170−1において、TC回転数がTC回転数閾値NTCより大きいか否か判定される。TC回転数閾値NTCは、ターボ過給機の物理的(強度上)な許容回転数に対して、制御上の余裕代を考慮して設定された閾値である。TC回転数がTC回転数閾値NTC以上である場合、ガードQMAXNTは、現在のエンジン回転数、TC回転数、及びノズルベーン5cの実開度を考慮して、TC回転数がターボ回転数閾値NTCを下回るように設定される(ステップS170−2)。具体的には、ガードQMAXNTは、現在のTC回転数とTC回転数閾値NTCとの差及び、該差の変化速度及び変化加速度に基づいてF/B制御により算出される。
ステップS170−1の判定がNOである場合、ガードQMAXNTは無限量であるQINFに設定される(ステップS170−3)。この場合、QMAXNTは実質的に制限されないことになる。
次いで、TC排気圧に基づくガードQMAXPEXが算出される。ステップS170−4において、TC排気圧がTC排気圧第2閾値PEX2より大きいか否か判定される。TC排気圧がTC排気圧第2閾値PEX2より大きい場合、ガードQMAXPEXは、現在のエンジン回転数、TC排気圧、及びノズルベーン5cの実開度を考慮して、TC排気圧がターボ排気圧第2閾値PEX2を下回るように設定される(ステップS170−5)。具体的には、ガードQMAXPEXは、現在のTC排気圧とTC排気圧第2閾値PEX2との差及び、該差の変化速度及び変化加速度に基づいてF/B制御により算出される。
ステップS170−4の判定がNOである場合、QMAXPEXは、無限量であるQINFに設定される(ステップS170−6)。この場合、QMAXPEXは実質的に制限されないことになる。
次いで、過給圧に基づくガードQMAXPBSTが算出される。ステップS170−7において、過給圧が過給圧第1閾値PBST1より大きいか否か判定される。過給圧が過給圧第1閾値PBST1より大きい場合、ガードQMAXPBSTは、現在のエンジン回転数、過給圧、及びノズルベーン5cの実開度を考慮して、過給圧が過給圧第1閾値PBST1を下回るように設定される(ステップS170−8)。具体的には、ガードQMAXPBSTは、現在の過給圧と過給圧第1閾値PBST1との差及び、該差の変化速度及び変化加速度に基づいて、F/B制御により算出される。
ステップS170−7の判定がNOである場合、QMAXPBSTは、無限量であるQINFに設定される(ステップS170−9)。この場合、QMAXPBSTは実質的に制限されないことになる。
次いで、ステップS170−10において、ガードQMAXNT、ガードQMAXPEX、及びガードQMAXPBSTのうち最小値のものが、ガードQとして選択される。
図6に戻って、ステップS180において、ガードQが、要求トルクに基づくD要求Qより小さいか否か判定される。この判定がYESである場合、燃料噴射量FPはガードQに設定される(ステップS190)。一方、この判定がNOである場合、燃料噴射量FPはD要求Qに設定される(ステップS124)。また、ステップS120において、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT未満であると判定された場合にも、最終的にステップS124に進み燃料噴射量FPがD要求Qに設定される。
この場合、D要求Qが直前の状態量を維持又は直前の状態量以上となる場合には、ガードQはD要求Qよりも小さくなるので、ステップS190において燃料噴射量FPとしてD要求Qが選択される。一方、アクセル開度の減少等によりD要求QがガードQを下回る場合には、燃料噴射量FPとしてD要求Qが選択される。したがって、ステップS124及びステップS190において、D要求Q又はガードQが選択される場合のいずれであっても、燃料噴射量FPは、ガードQ以下に制限されることになるので、燃料噴射量FPは減少する。
また、TC排気圧がTC排気圧第1閾値PEX1以上である場合(ステップS160の判定がNO)、フラグ2が「1」であるか否か判定されて(ステップS161)、エンジンEがフェールセーフモードに移行される。フラグ2が「1」でない場合、フラグ2は「1」に設定される(ステップS162)。ステップS161がYESの場合、又はステップS162の後、エンジン回転数NEが、エンジン回転数閾値NE1以上であるか否か判定される(ステップS163)。
この判定結果がNOである場合、すなわちエンジン回転数NEがエンジン回転数閾値NE1未満である場合、吸気シャッター弁制御部66は吸気シャッター弁7の開度を第1制限開度TP1に制する(ステップS164)。次いで、燃料噴射弁制御部65は、燃料噴射量FPをQIDLEに制限する(ステップS165)。ここで、第1制限開度TP1は、低速走行を可能とする程度に吸気量を制限するための開度である。同様に、QIDLEは、低速走行を可能とする程度に燃料噴射量を制限するものである。すなわち、エンジン回転数NEがエンジン回転数閾値NE1以下である場合には、エンジンEは低速走行が可能な出力に制限される。
例えば、エンジン回転数閾値NE1は1,500rpmであり、第1制限開度TP1及びQIDLEは、アイドル相当の空気量を可能とする吸気シャッター弁7の開度及び燃料噴射量である。
ステップS163の判定がYESである場合、すなわちエンジン回転数NEがエンジン回転数閾値NE1以上である場合、吸気シャッター弁制御部66は吸気シャッター弁7の開度を第1制限開度TP1よりも閉側に設定された第2制限開度TP2に制御する(ステップS166)。次いで、燃料噴射弁制御部65は、燃料噴射量FPをQIDLEよりも低減されたQ0に制限する(ステップS167)。ここで、第2制限開度TP2は、略全閉であり、エンジンEが停止しない程度に吸気量を制限するものである。同様に、Q0は、燃料噴射量を略ゼロに制限(燃料カット)するものである。
すなわち、エンジン回転数NEがエンジン回転数閾値NE1以上である場合には、エンジンEは燃焼室17における燃焼が行われないように、吸気量及び燃料噴射量が制限されるのでエンジン回転数を可及的速やかに低下させることができると共に、ターボ過給機5へ供給される排気ガスエネルギを限りなく低減させることができる。このようにして、フェールセーフモードにおいては、エンジン回転数NEをエンジン回転数閾値NE1以下に低減させつつ、低速走行が可能な程度の出力に制限されるようになっている。
フェールセーフモードの解除条件を説明すると、ステップS110においてNO判定、すなわちフラグ2が「1」でありフェールセーフモード中であると判定された場合、排気温判定部69は、TC排気温がTC排気温閾値TEXより低いか否か判定する(ステップS111)。この判定がYESである場合、排気圧判定部68は、TC排気圧がTC排気圧第2閾値PEX2より低いか否か判定する(ステップS112)。
この判定がYESである場合、排気圧判定部68は、フラグ2を「1」から「0」に設定し(ステップS113)、吸気シャッター弁制御部66は、吸気シャッター弁7の開度の制限を解除する(ステップS114)。これによって、フェールセーフモードが解除され、ステップS120に進む。一方、ステップS111又はステップS112において、TC排気温及びTC排気圧のいずれか一方が、それぞれの閾値TEX又はPEX2より高い場合、フェールセーフモードが継続され、ステップS161に進む。
すなわち、本処理サイクルにおいては、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGTより大きい場合に、燃料噴射量FPは、ガードQに制限されて、ターボ過給機5に供給される排気ガスエネルギが減少することになり、ノズルベーン5cに生じ得る応答遅れが解消され得る。また、TC排気圧がTC排気圧第1閾値PEX1以上である場合、フェールセーフモードに移行され、この場合、エンジン回転数NEをエンジン回転数閾値NE1以下に低下させるように、燃料噴射量及び吸気シャッター弁7の開度が制限され、エンジン回転数NEがエンジン回転数閾値NE1より低くなった場合には、低速走行可能な出力を確保するようになっている。
上記説明したECU60においてなされる処理サイクルによれば、次の効果が発揮される。
(1)ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上である場合に、まずは燃料噴射量FPをガードQ以下に制限することによってノズルベーン5cに作用する排気ガスの流量を制限し、これによってノズル偏差の解消を試みる。燃料噴射量FPの制限によってもノズル偏差が所定期間の間にノズル偏差閾値DVGTを下回らない場合に、ノズルベーン5cの固着又は過度な応答遅れが生じているとして、ターボ過給機5が故障していると判定する。
したがって、燃料噴射量FPの制限にもかかわらず、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上である状態が所定時間、継続している場合にノズルベーン5cが固着又は過度に応答遅れしているとしてターボ過給機5が故障していると判定する一方で、ノズル偏差が一時的にノズル偏差DVGT以上となる場合、すなわちノズルベーン5cに一時的な応答遅れが生じている場合には、燃料噴射量FPの制限によってノズルベーン5cの応答遅れの解消又は低減が期待できるので、この場合にターボ過給機5が故障していると誤判定されることが抑制される。すなわち、ノズルベーン5cの一時的な応答遅れを解消させつつも、ノズルベーン5cの固着又は過度な応答遅れを適切に検出することができるので、ターボ過給機5の故障判定を適切に行える。
(2)ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGT以上である場合においてTC排気圧がTC排気圧第1閾値PEX1以上であるとき、吸気シャッター弁7の開度を制限することによって、エンジンEに供給される吸気量を制限することができ、これによって、燃焼室17に存在する燃料の有無によらずエンジンEにおける燃焼を可及的速やかに抑制できる。この結果、ターボ過給機5に供給される排気ガスエネルギが減少し、これにより、TC排気圧が低減されると共にノズル偏差が低減されるので、ターボ過給機5の過回転が抑制される。
したがって、エンジンEへの燃料供給を制限(カット)したにもかかわらず、燃焼室17に燃料(例えば潤滑油の流入)が存在する場合であっても、吸気量を制限することによって燃焼室における酸素を減少させることで、燃焼を可及的速やかに抑制できる。これによって、ターボ過給機5に供給される排気ガスエネルギが低減されるので、排気圧及び過給圧が低減されると共にターボ過給機5の過回転が抑制される。
(3)エンジンEの回転数がエンジン回転数閾値NE1以上である場合に、吸気シャッター弁7を略全閉に制御することによって、燃焼室17に供給される吸気が遮断されることになり、エンジンEの回転数を可及的速やかに低減させることができる。これによって、ターボ過給機5に供給される排気ガスエネルギが低減されるので、排気圧及び過給圧が低減されると共にターボ過給機5の過回転が抑制される。
(4)エンジンEの回転数がエンジン回転数閾値NE1未満である場合には、燃焼室17に供給される吸気量を制限することによって、エンジンEを、低速走行が可能な出力に維持できる。また、エンジンEの回転数はエンジン回転数閾値NE1未満であるので、ターボ過給機5に供給される排気ガスエネルギの増大が抑制され、ターボ過給機5の排気圧及び過給圧の増大を抑制できると共にターボ過給機5の過回転が抑制される。
(5)TC排気温が排気温閾値TEXを下回った場合には、ターボ過給機5に供給される排気ガスエネルギが低減されるので、TC排気圧、過給圧及びターボ回転数それぞれが低下することになる。したがって、この場合、エンジンEに供給される吸気量を制限する必要がなく、吸気シャッター弁7の開度制限を解除することによって、エンジンEを速やかに通常運転に復帰させることができる。
(6)TC排気圧がTC排気圧第2閾値PEX2を下回った場合には、ターボ過給機5に供給される排気ガスエネルギが低減されるので、TC排気圧、過給圧及びターボ回転数それぞれが低下することになる。したがって、この場合、エンジンEに供給される吸気量を制限する必要がなく、吸気シャッター弁7の開度制限を解除することによって、エンジンEを速やかに通常運転に復帰させることができる。
上記実施形態では、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGTより大きい場合に、ノズルベーン5cに応答遅れが生じていると判定しているが(ステップS120)、これに加えて、図8Aにおいて抜粋したフローチャートに示されるように、TC排気圧がTC排気圧第2閾値PEX2より大きいか否か、及び/又は、過給圧が過給圧第1閾値PBST1より大きいか否か判定するようにしてもよい(ステップS201、S202)。
これによって、故障判定条件にTC排気圧及び/又は過給圧を加えることによって、ターボ過給機5が故障しているか否かをより適切に判定できる。
例えば、加速直後においてノズルベーン5cの目標開度を閉側から開側へ制御する場合にノズルベーン5cの一時的な応答遅れによりノズル偏差はノズル偏差閾値DVGTになりやすく、ノズルベーン5cが固着していない場合であってもターボ過給機5が故障していると誤判定される虞がある。一方、TC排気圧及び過給圧は加速直後には所定値以上になっていないので、排気圧及び/又は過給圧に基づいて判定することによって、加速直後においてターボ過給機5が故障していると誤判定されることを防止できる。
また、図8Bにおいて抜粋したフローチャートに示すように、ノズル偏差の判定に換えて、TC排気圧又は過給圧が所定より大きいか否か判定するようにしてもよい。すなわち、TC排気圧又は過給圧が所定値より大きいと判定された場合には、ノズルベーン5cが目標開度より閉側に位置していることが想定されるので、ノズル偏差の判定(ステップS120)に換えて、TC排気圧及び過給圧を判定するようにしてもよい(ステップS211、S212)。
これによって、TC排気圧がTC排気圧第2閾値PEX2以上である場合、又は過給圧が過給圧第1閾値PBST1以上である場合に、まずは燃料噴射量を制限することによってノズルベーン5cに作用する排気ガスの流量を制限し、これによってTC排気圧又は過給圧の低減を試みる。燃料噴射量の制限によってもTC排気圧又は過給圧が所定期間の間に前記閾値を下回らない場合に、初めてターボ過給機5が故障していると判定する。
したがって、燃料噴射量の制限にもかかわらず、TC排気圧又は過給圧がTC排気圧第2閾値PEX2以上である状態が所定時間、継続している場合にはターボ過給機5が故障していると判定できる一方で、TC排気圧又は過給圧が一時的に前記閾値以上なる場合にまでターボ過給機5が故障していると誤判定することを防止できる。すなわち、一時的なTC排気圧又は過給圧の増大と所定時間にわたるTC排気圧又は過給圧の増大とを区別することによって、ターボ過給機5が故障しているか否か適切に判定できる。
また、上記実施形態では、ノズル偏差がノズル偏差閾値DVGTより大きい状態が所定時間、継続している場合に、ノズルベーン5cが固着していると判定しているが、このほか、TC排気圧、過給圧が、所定値より大きい場合に、故障判定するようにしてもよい。図9に示されるように、まずステップS300において、排気圧判定部68はTC排気圧がTC排気圧第1閾値PEX1より高いか否か判定する。この判定がNOである場合、過給圧判定部70は過給圧が過給圧第2閾値PBST2より高いか否か判定する(ステップS310)。過給圧第2閾値PBST2は、過給圧の異常増大を検出するための閾値であり、過給圧第1閾値PBST1よりも高く設定されている。
ステップS300又はステップS310の何れかにおいて、YES判定された場合、ノズルベーン5cが固着又は過度に応答遅れが生じていると判定し、フラグ3を「1」に設定する(ステップS340)。更に、ECU60のメモリに故障記録をサービスコードとして記憶させて(ステップS350)、後のサービス時に確認できるようにしてもよく、警告灯表示部96を作動させて、ノズルベーン5cが故障していることを乗員に報知する(ステップS360)。この場合、フラグ3が「1」である場合に、フェールセーフモードに移行させるようにしてもよい。
フェールセーフモードからの復帰を説明すると、TC排気圧及び過給圧がそれぞれ、閾値より低くなった場合、すなわちステップS300及びS310においてNO判定された場合に、フラグ3が「1」であると判定された(ステップS320)後、排気温判定部69は、TC排気温がTC排気温閾値TEXより高いか否か判定する(ステップS330)。この判定がYESである場合、ステップS340に進みフェールセーフモードが継続される一方で、この判定がNOである場合、ステップS370に進み、フラグ3が「1」から「0」に設定され、フェールセーフモードが終了する。
以上説明したように、本発明に係るエンジンの制御方法及び制御装置によれば、燃焼室にオイルが侵入した場合であっても、ターボ回転数を低減させて過給機の過回転を防止できるので、この種の製造技術分野において好適に利用される可能性がある。
1 吸気通路
5 ターボ過給機
5a コンプレッサ
5b タービン
5c ノズルベーン
7 吸気シャッター弁
20 燃料噴射弁
41 排気通路
60 ECU
E エンジン
VGT ノズル偏差閾値
EX1 TC排気圧第1閾値
EX2 TC排気圧第2閾値
EX TC排気温閾値
BST1 過給圧第1閾値
BST2 過給圧第2閾値

Claims (10)

  1. タービンに供給される排気ガスの流路面積を可変可能なノズルベーンを有する可変容量型過給機と吸気シャッター弁とを備えたエンジンの制御方法であって、
    前記エンジンの運転状態に応じて、前記ノズルベーンの目標ノズル開度と前記吸気シャッター弁の目標シャッター開度と前記エンジンに供給される燃料の目標噴射量とを設定する工程と、
    前記ノズルベーンの開度を前記目標ノズル開度に制御する工程と、
    前記過給機上流側の排気圧が排気圧第1閾値以上であるか否か判定する工程と、
    前記ノズルベーンの実開度と前記目標ノズル開度との差であるノズル偏差がノズル偏差閾値以上であるか否か判定する工程と、
    前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合、前記吸気シャッター弁の開度を前記目標シャッター開度よりも制限すると共に、前記エンジンへの燃料供給を前記目標噴射量より制限する工程と、
    を有するエンジンの制御方法。
  2. 前記制限する工程において、前記エンジンの回転数が回転数閾値以上である場合、前記吸気シャッター弁の開度を略全閉に制御する、
    請求項1に記載のエンジンの制御方法。
  3. 前記制限する工程において、前記エンジンの回転数が回転数閾値未満である場合、前記吸気シャッター弁の開度をアイドル相当の空気量を可能とする開度に制御する、ことを特徴としている。
    請求項1又は2に記載のエンジンの制御方法。
  4. 前記吸気シャッター弁の開度を制限した後に、前記過給機上流側の排気温が排気温閾値を下回った場合に前記吸気シャッター弁の開度制限を解除する工程を更に有する、
    請求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジンの制御方法。
  5. 前記吸気シャッター弁の開度を制限した後に、前記排気圧が前記排気圧第1閾値より低い排気圧第2閾値を下回った場合に前記吸気シャッター弁の開度制限を解除する工程を更に有する、
    請求項1〜4のいずれか1つに記載のエンジンの制御方法。
  6. タービンに供給される排気ガスの流路面積を可変可能なノズルベーンを有する可変容量型過給機と吸気シャッター弁とを備えたエンジンの制御装置であって、
    前記エンジンの運転状態に応じて、前記ノズルベーンの目標ノズル開度と前記吸気シャッター弁の目標シャッター開度と前記エンジンに供給される燃料の目標噴射量とを設定する目標設定部と、
    前記ノズルベーンの開度を前記目標ノズル開度に制御するノズルベーン制御部と、
    前記過給機上流側の排気圧が排気圧第1閾値以上であるか否か判定する排気圧判定部と、
    前記ノズルベーンの実開度と前記目標ノズル開度との差であるノズル偏差がノズル偏差閾値以上であるか否か判定するノズル偏差判定部と、
    前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合、前記吸気シャッター弁の開度を前記目標シャッター開度よりも制限する吸気シャッター弁制御部と、
    前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合、前記エンジンへの燃料供給を前記目標噴射量よりも制限するように燃料噴射弁を制御する燃料噴射弁制御部と、を有するエンジンの制御装置。
  7. 前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合に前記エンジンの回転数が回転数閾値以上であるとき、前記吸気シャッター弁制御部は、前記吸気シャッター弁の開度を略全閉に制御する、
    請求項6に記載のエンジンの制御装置。
  8. 前記排気圧が前記排気圧第1閾値以上であり且つ前記ノズル偏差が前記ノズル偏差閾値以上である場合に前記エンジンの回転数が回転数閾値未満であるとき、前記吸気シャッター弁制御部は、前記吸気シャッター弁の開度をアイドル相当の空気量を可能とする開度に制御する、
    請求項6又は7に記載のエンジンの制御装置。
  9. 前記吸気シャッター弁の開度を制限した後に前記過給機上流側の排気温が排気温閾値を下回った場合、前記吸気シャッター弁制御部は、前記吸気シャッター弁の開度制限を解除する、
    請求項6〜8のいずれか1つに記載のエンジンの制御装置。
  10. 前記吸気シャッター弁の開度を制限した後に前記排気圧が前記排気圧第1閾値より低い排気圧第2閾値を下回った場合、前記吸気シャッター弁制御部は、前記吸気シャッター弁の開度制限を解除する、
    請求項6〜9のいずれか1つに記載のエンジンの制御装置。
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