<検査システム3の概略構造>
本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。図1〜図3を参照して、検査システム3の概略構造について説明する。検査システム3は、流体を収容可能な検査チップ2(図4等参照)と、検査チップ2を用いて検査を行う検査装置1とを含む。検査チップ2は、検査装置1のホルダ7(図2等参照)に着脱可能に装着される。検査装置1は、ホルダ7と検査チップ2とから離間した垂直軸線A1を中心として、ホルダ7及び検査チップ2を回転させる。この場合、ホルダ7及び検査チップ2に遠心力が作用する。又、検査装置1は、水平軸線A2を中心として、ホルダ7及び検査チップ2を回転させる。つまり、水平軸線A2は、垂直軸線A1を中心として回転する。この場合、ホルダ7及び検査チップ2に作用する遠心力の方向が、検査チップ2に対して切り替えられる。
<検査装置1の構造>
図1〜図3を参照して、検査装置1の構造について説明する。以下の説明では、図2の上側、下側、右側、左側、手前側、及び、奥側を、それぞれ、検査装置1の上側、下側、前側、後側、左側、及び、右側とする。本実施形態では、垂直軸線A1の方向は検査装置1の上下方向であり、水平軸線A2の方向は、ホルダ7及び検査チップ2が垂直軸線A1を中心として回転される際の速度の方向である。図3は、検査装置1の上部筐体4A(図1参照)及び一対の側部筐体4Cが取り除かれた状態を示す。図3では、後述の光学測定部67は省略されている。
図1に示すように、検査装置1は筐体4を備える。筐体4は箱状のフレーム構造を有する。筐体4は、上部筐体4A、下部筐体4B、及び、一対の側部筐体4Cを備える。一対の側部筐体4Cは、上下方向に長い長方形の板材である。一対の側部筐体4Cは左右方向に離隔する。下部筐体4Bは、一対の側部筐体4Cのそれぞれの下端、前端の下側、及び、後端の下側の間に架け渡された板材である。上部筐体4Aは、一対の側部筐体4Cのそれぞれの上端、前端の上側、及び、後端の上側の間に架け渡された板材である。上部筐体4Aには、前側部分と上側部分との間に亘って穴部6Aが形成されている。上部筐体4Aは、長方形の板材である蓋部材6Bの一端部を、回転可能に支持する。検査装置1は、蓋部材6Bによって穴部6Aを覆うことができる。上部筐体4Aの上側部分の右側に、電源スイッチ及び複数の操作スイッチを含む操作部64が設けられる。
図2及び図3に示すように、検査装置1は、ケース5、上板32、ターンテーブル33、角度変更機構34、ホルダ7、及び、制御装置60(図3参照)を、筐体4(図1参照)の内部に備える。上板32は、下部筐体4Bの前側の上端と後側の上端との間に架け渡された、長方形の板材である。ターンテーブル33は、上板32の上側に回転可能に設けられた円盤である。検査チップ2(図4等参照)は、ターンテーブル33の上方に配置されたホルダ7に支持される。検査チップ2は、厚み方向が前後方向、及び左右方向に延びる向きでホルダ7に装着される。検査チップ2の詳細は後述する。
角度変更機構34は、ターンテーブル33に設けられた駆動機構である。角度変更機構34は、水平軸線A2を中心にホルダ7を回転させることで検査チップ2を回転させる。ケース5は、上板32の上側に設けられ、ターンテーブル33、角度変更機構34、及び、ホルダ7を覆う。検査チップ2に対して光学測定を行う光学測定部67(図3参照)は、上板32の上側、且つ、ケース5の外部に設けられている。制御装置60は、検査装置1の各種処理を制御するコントローラである。図2に示すように、上板32の下部には、垂直軸線A1を中心にターンテーブル33を回転させる駆動機構が、次のように設けられている。
図2に示すように、筐体4内の中央部の下方寄りに、ターンテーブル33を回転させるための駆動力を供給する主軸モータ35、及び、下部筐体4Bの内部から上方に延びる主軸57が設置されている。主軸モータ35はDCモータである。主軸モータ35の軸36は、上方に突出し、主軸57に連結している。主軸57は、上板32を貫通して、上板32の上側に突出している。主軸57の上端部は、ターンテーブル33の中央部に接続されている。主軸57は、上板32の直下に設けられた支持部材53、及び、支持部材53の下側に設けられた支持部材54により、回転自在に保持されている。支持部材54の内部に設けられたボールベアリング54Aの内輪は、主軸57に接触し、主軸57の回転に応じて回転する。支持部材54は、ボールベアリング54Aの外輪を前端部で保持する。支持部材54の後端部は、後述のステッピングモータ51の右側に配置される。主軸モータ35が軸36を回転させると、駆動力が主軸57に伝達される。このとき、主軸57の回転に連動して、ターンテーブル33が主軸57を中心に回転する。
主軸57は、内部が中空の筒状体である。内軸40は、主軸57の内部において上下方向に移動可能な軸である。図3に示すように、内軸40は、上方から見て四角形である。内軸40の上端部は、主軸57内を貫通してターンテーブル33の上方に延び、後述の一対のラックギア45に接続されている。
図2に示すように、主軸57には、上下方向に延びるスリット57Aが設けられる。ボールベアリング54Aの内輪に、スリット57Aを介して主軸57の外側から内側に延びる図示外の連結部が設けられる。連結部の内側の端部は、内軸40に接続する。
筐体4の中央部の後方寄りには、内軸40を上下動させるためのステッピングモータ51が固定されている。ステッピングモータ51の軸58は右方に向けて突出している。軸58の先端には、図示外のピニオンギアが固定されている。ピニオンギアは、支持部材54に固定された図示外のラックギアに噛み合っている。ステッピングモータ51が軸58を回転させると、ピニオンギアの回転に連動して、支持部材54及びボールベアリング54Aが上下動する。このとき、ボールベアリング54Aに設けられた連結部は、スリット57Aに沿って上下動する。内軸40は、連結部に連動して上下動する。
角度変更機構34の詳細構造を説明する。角度変更機構34は、一対のラックギア45を備えている。一対のラックギア45は、金属製の板状部材である。図3に示すように、一対のラックギア45は、それぞれ、内軸40における互いに対向する面の上端に固定される。一方のラックギア45は、上側から見て内軸40から一方向側に延び、他方のラックギア45は、一方向側とは反対側に延びる。図2に示すように、一対のラックギア45における内軸40側とは反対側の端部には、ギア451が上下方向に形成されている。ラックギア45は、内軸40の上下動に伴って上下動する。
図3に示すように、上側から見て各ラックギア45の反時計回り方向側には、それぞれ、支持部47が設けられている。支持部47は、ホルダ7を回転可能に支持する。より詳細には、図2及び図3に示すように、支持部47は、2つの円柱部471、延伸部472、及び支軸473を備えている。2つの円柱部471は、ラックギア45に沿って並べて配置され、上下方向に延びる。延伸部472は、円柱部471の上端から、ラックギア45に沿って内軸40から離れる方向に延び、その先端が支軸473を固定する。支軸473は、上側から見て時計回り方向側に延び、その先端が、ホルダ7に形成されたギア部46の内側に配置されている。ギア部46は、ラックギア45のギア451と噛み合っている。ラックギア45の上下動に伴ってギア部46が支軸473を中心に回転することで、ホルダ7が回転する。故に、ホルダ7に装着された検査チップ2が支軸473を中心に回転する。
本実施形態では、主軸モータ35がターンテーブル33を回転駆動するのに伴って、ホルダ7及び検査チップ2が垂直軸である内軸40を中心に回転して、ホルダ7及び検査チップ2に遠心力が作用する。ホルダ7及び検査チップ2の垂直軸線A1を中心とした回転を、公転と呼ぶ。一方、ステッピングモータ51が内軸40を上下動させるのに伴って、ホルダ7及び検査チップ2が水平軸である支軸473を中心に回転して、ホルダ7及び検査チップ2に作用する遠心力の方向が相対変化する。ホルダ7及び検査チップ2の水平軸線A2を中心とした回転を、「自転」と呼ぶ。内軸40を下側に移動させたときのホルダ7及び検査チップ2の自転の方向を、「正方向」という。内軸40を上側に移動させたときのホルダ7及び検査チップ2の自転の方向を、「負方向」という。
支持部材54が可動範囲の最上端まで上昇した状態では、ラックギア45も可動範囲の最上端まで上昇する。このときのホルダ7及び検査チップ2の状態を、「定常状態」という。又、支持部材54が可動範囲の最下端まで下降した状態では、ラックギア45も可動範囲の最下端まで下降する。このとき、ホルダ7及び検査チップ2は、定常状態から水平軸線A2を中心として正方向に90度回転した状態になる。つまり、本実施形態ではホルダ7及び検査チップ2が自転可能な角度幅は、0度〜90度である。
図3に示すように、ケース5の側面の右斜め後側に、穴部5Aが形成される。ケース5の側面の左斜め後側に、穴部5Bが形成される。検査チップ2に対して光学測定を行う光学測定部67は、検査装置1の後側且つ上板32の上側に設けられている。光学測定部67は、測定光67A、67Bを射出する射出部671と、射出部671から発せられた測定光67A、67Bを検出する検出部672とを有する。射出部671は、穴部5Aの右側に配置されている。検出部672は、穴部5Bの左側に配置されている。
ホルダ7が定常状態で保持され、且つ、公転可能範囲のうち主軸57の後側位置にホルダ7が配置された状態で、ホルダ7に装着された検査チップ2に測定光67A、67Bが照射される。以下、検査チップ2が定常状態で保持され、且つ、公転可能範囲のうち主軸57の後側位置に配置された一方のホルダ7の位置を、測定位置という。ホルダ7が測定位置に配置された場合、射出部671と検出部672とを結ぶ測定光67A、67Bは、検査チップ2に対して略垂直に交差する。測定光67A、67Bは、右側から左側に向けて水平方向に延びる。測定光67A、67Bは前後方向に並ぶ。ホルダ7には、後述の検査チップ2(図4参照)の測定部94、95に近接する位置に、穴部7Aが形成されている。射出部671からから射出した測定光67A、67Bは、測定位置にあるホルダ7に装着された検査チップ2の測定部94、95を通過し、更に、ホルダ7の穴部7Aを通過して、検出部672によって検出される。以上のようにして、光学測定部67による光学測定が行われる。
<制御装置60の電気的構成>
図3を参照して、制御装置60の電気的構成について説明する。制御装置60は、検査装置1の主制御を司るCPU61と、各種データを一時的に記憶するRAM62と、制御プログラム及びパラメータを記憶したフラッシュメモリ63とを有する。CPU61には、操作部64、公転コントローラ65、自転コントローラ66、及び、光学測定部67が接続されている。公転コントローラ65は、主軸モータ35を回転駆動させる制御信号を主軸モータ35に送信することによって、ホルダ7及び検査チップ2の公転を制御する。自転コントローラ66は、ステッピングモータ51を回転駆動させる制御信号をステッピングモータ51に送信することによって、ホルダ7及び検査チップ2の自転を制御する。光学測定部67は、検査チップ2の光学測定を実行する。詳細には、光学測定部67は、射出部671の発光、及び、検出部672の光検出を実行する。CPU61が公転コントローラ65、自転コントローラ66、及び光学測定部67を制御する。
<検査チップ2の構造>
図4〜図14を参照して、検査チップ2の全体構造を説明する。以下の説明では、図5の上側、下側、左側、右側、手前側、及び奥側を、それぞれ、検査チップ2の上側、下側、左側、右側、前側、及び、後側とする。検査チップ2は、正面視で上辺部21、右辺部22、左辺部23、及び、下辺部24を有する正方形状である。図8に示すように、検査チップ2は、前後方向に所定の厚みを有する透明な合成樹脂の板材20を主体とする。板材20は弾性を有する。
図4に示すように、板材20の前面201は、透明の合成樹脂の薄板から構成されたフィルム291によって封止されている。前面201の反対側の後面202は、透明の合成樹脂の薄板から構成されたフィルム292によって封止されている。フィルム291、292は、一方の面に塗布された粘着剤によって板材20に貼付される。図4〜図6に示すように、板材20とフィルム291との間、及び、板材20とフィルム292との間には、検査チップ2に注入された流体が流動可能な流体流路25が形成されている。
流体流路25は、板材20の前面201及び後面202に形成された凹部、及び前面201及び後面202に亘って貫通する貫通部で構成される。図4〜図6に示すように、流体流路25は、注入部11、12、13、14(図4、図6参照)、定量部71、72、73、74、75、76(図4、図5参照)、廃液部81、82、82、83、84、85、86(図6参照)、定量穴811、821、831、841、851、861(図4〜図6参照)、混合保持部16、17(図4、図5参照)、撹拌部91、92(図4〜図6参照)、及び、測定部94、95(図4、図5参照)等を含む。以下、図4に示すように、注入部11〜14を総称して「注入部10」という。定量部71〜76を総称して「定量部70」という。廃液部81〜86を総称して「廃液部80」(図6参照)という。定量穴811、821、831、841、851、861を総称して「定量穴801」という。混合保持部16、17を総称して「混合保持部15」という。撹拌部91、92を総称して「撹拌部90」という。測定部94、95を総称して「測定部93」という。
<注入部10>
図6に示すように、注入部10は、板材20の後面202における上下方向中心よりも上側に設けられる。注入部11、12、13、14は、左側から右側に向けて順番に配列する。注入部11〜14は同一形状を有する。注入部11〜14は、検査チップ2の外部から注入される流体(第1流体〜第4流体)を保持する。以下では、注入部11について詳細に説明し、注入部12〜14の説明は簡略化する。
注入部11は、注入口110、流路111、保持部112、連通路113、及び、保持部114を有する。図4に示すように、注入口110は、上辺部21に形成される開口である。注入口110は、後述の流路111に流体を注入するための部位である。図6に示すように、流路111は、注入口110に注入された流体を後述の保持部112に流す。流路111の上端は注入口110に連通する。流路111の下端は保持部112に連通する。流路111は、上端から右斜め下側に向けて延びる。
保持部112は、流路111を介して流入する流体を一時的に保持する。保持部112は、上下方向に延びる。保持部112の下端は閉塞する。保持部112の上端の左側に流路111が連通する。保持部112の上端の右側に連通路113の左端が連通する。連通路113は、左端から右側に延びる。連通路113の右端は、後述の保持部114に連通する。連通路113は、保持部112に保持された流体を保持部114に流す。
保持部114は、連通路113を介して流入する流体を一時的に保持する。保持部114は、上下方向に延びる第1部分、及び、第1部分の下端から左側に延びる第2部分を有する。保持部114の第1部分は、保持部112の右側に配置される。保持部114の第2部分は、保持部112の下側に配置される。保持部114の第1部分の上端に連通路113が連通する。
注入部12は、注入口120、流路121、保持部122、連通路123、及び、保持部124を有する。注入部13は、注入口130、流路131、保持部132、連通路133、及び、保持部134を有する。注入部14は、注入口140、流路141、保持部142、連通路143、及び、保持部144を有する。注入口120、130、140は、注入部11の注入口110に対応する。図4、図7示すように、注入口110、120、130、140は、上辺部21に等間隔に配置される。流路121、131、141は、注入部11の流路111に対応する。保持部122、132、142は、注入部11の保持部112に対応する。連通路123、133、143は、注入部11の連通路113に対応する。保持部124、134、144は、注入部11の保持部114に対応する。以下、注入口110、120、130、140から注入される流体を、それぞれ、「第1流体」、「第2流体」、「第3流体」、「第4流体」という。
<定量部70>
図4、図5に示すように、定量部71、72、73は、板材20の前面201における上下方向略中心に設けられる。定量部71〜73は、左側から右側に向けて順番に配列する。定量部74、75、76は、前面201における上下方向中心よりも下側に設けられる。定量部74〜76は、左側から右側に向けて順番に配列する。定量部74〜76は、それぞれ、後述の混合保持部16を挟んで定量部71〜73と上下方向に対向する。定量部71、72、74、75は同一形状を有する。定量部73、76は同一形状を有する。定量部70は、注入部10から注入された流体を定量する。以下では、定量部71、73について詳細に説明し、定量部72、74〜76の説明は簡略化する。
図4、図10、図11に示すように、定量部71は、定量壁部711、712、713を有する。図10、図11に示すように、定量壁部711は、前後方向に延びる直線状の定量軸A71を中心として、定量軸A71から長さr71分離れた位置にある直線を回転させることによって得られる回転体、つまり、円筒体である。定量壁部712は、定量壁部711の後側を閉塞する。一方、定量壁部711の前側は、フィルム291によって閉塞される。つまり、フィルム291のうち定量壁部712と対向する部分が、定量壁部713に対応する。なお、定量壁部711、712は板材20によって構成され、定量壁部713はフィルム291によって構成される。このため、互いに対向する定量壁部712と定量壁部713とは、別材料によって構成される。定量部71は、定量壁部711〜713によって閉空間を形成する。定量壁部711と定量軸A71との間の距離、つまり、定量壁部711の半径は、定量軸A71のうち定量壁部712、713との間の部分において、前後方向の位置に依らず常に一定(r71)となる。
図4、図5、図11に示すように、定量壁部711の左斜め上側の部分に、流路116の下端が連通する。流路116は、下端から上側に延びる。以下、流路116のうち定量部71に連通する部分を、「連通口116A」(図11参照)という。流路116の上端は、貫通穴115の前端に連通する。貫通穴115は、前端から後側に延びる。貫通穴115の後端は、注入部11の保持部114の第2部分(図6参照)の左端に連通する。貫通穴115及び流路116は、注入部11の保持部114に保持された第1流体を、定量部71に向けて流す。
定量壁部711の右斜め上側の部分に、流路161の上端が連通する。流路161は、上端から下側に延びる。流路161は、定量部71の右側に配置される。以下、流路161のうち定量部71に連通する部分を、「連通口161A」(図11参照)という。流路161の下端は、後述の混合保持部16に連通する。流路161は、定量部71で定量された第1流体を、混合保持部16に向けて流す。
図4に示すように、定量部72は、定量壁部721、722、723を有する。定量部74は、定量壁部741、742、743を有する。定量部75は、定量壁部751、752、753を有する。定量壁部721、741、751は、定量部71の定量壁部711に対応する。定量壁部722、742、752は、定量部71の定量壁部712に対応する。定量壁部723、743、753は、定量部71の定量壁部713に対応する。
図5に示すように、定量部72に連通する流路126、162は、それぞれ、定量部71に連通する流路116、161に対応する。流路126の上端は、貫通穴125の前端に連通する。貫通穴125の後端は、注入部12の保持部124の第2部分(図6参照)の左端に連通する。貫通穴125及び流路126は、注入部12の保持部124に保持された第2流体を、定量部72に向けて流す。流路162の下端は、混合保持部16に連通する。流路162は、定量部72で定量された第2流体を、混合保持部16に向けて流す。
定量部74に連通する流路816、174は、それぞれ、定量部71に連通する流路116、161に対応する。流路816の上端は、貫通穴815の前端に連通する。貫通穴815の後端は、後述の廃液部81(図6参照)に連通する。流路174の下端は、後述の混合保持部17に連通する。流路816は、廃液部81に保持された第1流体を、定量部74に向けて流す。流路174は、定量部74で定量された第1流体を、混合保持部17に向けて流す。
定量部75に連通する流路826、175は、それぞれ、定量部71に連通する流路116、161に対応する。流路826の上端は、貫通穴825の前端に連通する。貫通穴825の後端は、後述の廃液部82(図6参照)に連通する。流路175の下端は、混合保持部17に連通する。流路826は、廃液部82に保持された第2流体を、定量部75に向けて流す。流路175は、定量部75で定量された第2流体を、混合保持部17に向けて流す。
図4に示すように、定量部73は、定量壁部731、732、733を有する。定量部73が定量部71、72、74、75と異なる点は、定量壁部731の半径がr71よりも小さく、且つ、定量壁部731の前後方向の長さが、定量壁部711、721、741、751のそれぞれの前後方向の長さと比べて小さい点である。
図5に示すように、定量部73の左斜め上側の部分に、流路136の下端が連通する。流路136は、下端から上側に延びる。流路136の上端は、貫通穴135の前端に連通する。貫通穴135は、前端から後側に延びる。貫通穴135の後端は、注入部13の保持部134の第2部分(図6参照)の左端に連通する。貫通穴135及び流路136は、注入部13の保持部134に保持された第3流体を、定量部73に向けて流す。
定量壁部731の右斜め上側の部分に、流路163の左端が連通する。流路163は、は、左端から右側に延びる。流路161の右端は、混合保持部16に連通する。流路163は、定量部73で定量された第3流体を、混合保持部16に向けて流す。
図4に示すように、定量部76は、定量壁部761、762、763を有する。定量壁部761、762、763は、定量部73の定量壁部731、732、733に対応する。図5に示すように、定量部76に連通する流路146、176は、それぞれ、定量部73に連通する流路136、163に対応する。流路146の上端は、貫通穴145の前端に連通する。貫通穴145の後端は、注入部14の保持部144の第2部分から下方に延びる流路147(図6参照)の下端に連通する。図6に示すように、流路147は、注入部14の保持部144に保持された第4流体を、貫通穴145を介して流路146に向けて流す。図5に示すように、流路146は、第4流体を定量部76に向けて流す。流路176の右端は、混合保持部17に連通する。流路176は、定量部74で定量された第4流体を、混合保持部17に向けて流す。
<定量穴801>
図4、図11に示すように、定量壁部712のうち定量軸A71と交差する位置に、定量穴811が形成される。定量穴811は、定量軸A71を中心とする円形の縁部によって形成される。図10、図11に示すように、定量穴811は、第1縁部811A及び第2縁部811Bを有する。
図10に示すように、第1縁部811Aは、定量軸A71を中心として前後方向に延びる円筒体である。第1縁部811Aの半径はr81である。第2縁部811Bは、第1縁部811Aの前側に接続する。第2縁部811Bは、定量軸A71を中心として前後方向に延びる円錐体である。第2縁部811Bの後端の半径はr81である。第2縁部811Bの前端の半径はr82である。r82は、r81よりも大きくr71よりも小さい。第2縁部811Bの半径は、後側から前側に向けて次第に大きくなる。
定量穴811は、第2縁部811Bの前端において、定量部71の定量壁部712と連通する。定量穴811は、第1縁部811Aの後端において、後述の廃液部81(図6参照)と連通する。定量部71及び廃液部81は、定量穴811を介して連結される。
図4、図5に示すように、定量穴821、831、841、851、861は、それぞれ、定量部72、73、74、75、76と連通する。定量穴821、831、841、851、861のそれぞれの後端は、それぞれ、後述の廃液部82、83、84、85、86と連通する。定量部72及び廃液部82は、定量穴821によって連結される。定量部73及び廃液部83は、定量穴831によって連結される。定量部74及び廃液部84は、定量穴841によって連結される。定量部75及び廃液部85は、定量穴851によって連結される。定量部76及び廃液部86は、定量穴861によって連結される。以下、定量穴811、821、831、841、851、861を総称して、「定量穴801」という。
<定量部70と定量穴801との関係>
図5に示すように、検査チップ2の水平軸線A2と直交し且つ水平軸線A2から延びる2つの方向(以下、「第1方向D1」「第2方向D2」という。)を定義する。第1方向D1は、下方向に対して右側に傾斜する。第2方向D2は、下方向に対して左側に傾斜する。又、水平軸線A2と直交し且つ水平軸線A2から延びる任意の方向であって、第1方向D1及び第2方向D2間に挟まれた鋭角を分割する方向、つまり、第1方向D1及び第2方向D2間の任意の方向を、「任意方向」という。
任意方向は、次に説明する方向を示す。検査チップ2が定常状態となるように角度変更機構34(図2等参照)が制御された場合、ホルダ7に装着された検査チップ2の上辺部21と下辺部24との対向方向は、理想的には上下方向を向く。しかし、検査装置1の装置誤差が原因で、検査チップ2の向きにばらつきが生じる場合がある。任意方向は、定常状態における検査チップ2に対する下向きの方向が、検査チップ2の向きにばらつきが生じたときに取り得る範囲の何れかの方向を示す。
図12に示すように、第1方向D1と直交し、且つ、定量穴811の第1縁部811Aのうち第1方向D1の下流側に接する仮想的な平面を、「第1仮想平面P1」と定義する。第2方向D2と直交し、且つ、定量穴811の第1縁部811Aのうち第2方向D2の下流側に接する仮想的な平面を、「第2仮想平面P2」と定義する。この場合、定量部71に対して流路116が連通する連通口116Aは、第1仮想平面P1に対して、第1方向D1の上流側(上側)に配置される。連通口116Aは、第2仮想平面P2に対して、第2方向D2の上流側(上側)に配置される。又、定量部71に対して流路161が連通する連通口161Aは、第1仮想平面P1に対して、第1方向D1の上流側に配置される。連通口161Aは、第2仮想平面P2に対して第2方向D2の上流側に配置される。
更に、任意方向と直交し、且つ、定量穴811の第2縁部811Bのうち任意方向の下流側に接する仮想的な平面を、「任意仮想平面」と定義する。任意仮想平面と、定量部71の定量壁部711、712、713とで囲まれる閉空間の容積を「第1定量容積V1」と定義する。この場合、第1定量容積V1は、第1仮想平面P1と第2仮想平面P2との間で任意仮想平面が変化した場合でも、常に同一となる。
なお、詳細な説明は省略するが、定量部72〜76についても、上記と同じ方法で任意仮想平面が定義される。又、定量部72、74、75のそれぞれの定量壁部と任意仮想平面とで囲まれる閉空間の容積は、第1定量容積V1とほぼ同一となる。一方、定量部73、76のそれぞれの定量壁部と任意仮想平面とで囲まれる閉空間の容積は、第1定量容積V1よりも小さい第2定量容積V2となる。
<廃液部80>
図6に示すように、廃液部81、82、83は、板材20の後面202における上下方向略中心に設けられる。廃液部84、85、86は、板材20の後面202における上下方向略中心よりも下側に配置される。廃液部81〜83は、左側から右側に向けて順番に配列する。廃液部81、82、83は、それぞれ、注入部11の保持部114、注入部12の保持部124、注入部13の保持部134のそれぞれの下側に配置される。又、廃液部81、82、83のそれぞれの一部は、定量部71、72、73の後側に配置される。廃液部84〜86は、左側から右側に向けて順番に配列する。廃液部84、85、86は、それぞれ、廃液部81、82、83の下側に配置される。又、廃液部84、85、86のそれぞれの一部は、定量部74、75、76の後側に配置される。
廃液部80は、上端、下端、左端、右端、及び、前端が板材20によって閉塞され、後端がフィルム292によって閉塞される。廃液部80は、箱状の閉空間を形成する。定量穴801は、廃液部80の前面に連通する。廃液部80は、定量穴801から流入する流体を、右端又は下端の近傍まで流し、且つ、右端又は下端の近傍で保持する。以下、廃液部80のうち、流体が保持される右端及び下端の近傍を、「廃液保持部」という。廃液部80のうち、定量穴801から流入する流体を廃液保持部に向けて流す部分、言い換えれば、廃液保持部を除く部分を、「廃液流路」という。
廃液部81において、定量穴811と連通する部分は、廃液流路81Aに含まれる。廃液部81は、廃液流路81Aにおいて定量部71と連結する。なお、廃液流路81Aは、定量穴811を周囲から囲むように形成される。このため、廃液流路81Aは、定量穴811に対して、第1方向D1及び第2方向D2間の任意方向における下流側に設けられた部分を少なくとも含む。従って、定量部71から定量穴811を介して廃液部81に流入した第1流体に対して、任意方向に力が用した場合、第1流体は、廃液流路81Aを伝って流れる。廃液流路81Aを伝って流れる第1流体は、廃液保持部81Bに保持される。ここで、廃液部81のうち貫通穴815と連通する部分は、廃液保持部81Bに含まれる。つまり、廃液部81は、廃液保持部81Bにおいて定量部74と連結する。従って、廃液保持部81Bに保持された第1流体は、貫通穴815を介して定量部74に向けて流れる。
廃液部82の廃液流路82A及び廃液保持部82Bは、廃液部81の廃液流路81A及び廃液保持部81Bに対応する。廃液部82において、定量部72から定量穴821を介して流入した第2流体は、廃液流路82Aを伝って流れ、廃液保持部82Bに保持される。廃液保持部82Bに保持された第2流体は、貫通穴825を介して定量部75に向けて流れる。
廃液部83の廃液流路83A及び廃液保持部83Bは、廃液部81の廃液流路81A及び廃液保持部81Bに対応する。廃液部83において、定量部73から定量穴831を介して流入した第3流体は、廃液流路83Aを伝って流れ、廃液保持部83Bに保持される。なお、廃液部83において、廃液保持部83Bに貫通穴は設けられない。このため、廃液保持部83Bに保持された第3流体は、廃液部83の外部に流出しない。
廃液部84の廃液流路84A及び廃液保持部84Bは、廃液部81の廃液流路81A及び廃液保持部81Bに対応する。廃液部84において、定量部74から定量穴841を介して流入した第1流体は、廃液流路84Aを伝って流れ、廃液保持部84Bに保持される。なお、廃液部84において、廃液保持部84Bに貫通穴は設けられない。このため、廃液保持部84Bに保持された第1流体は、廃液部84の外部に流出しない。
廃液部85の廃液流路85A及び廃液保持部85Bは、廃液部81の廃液流路81A及び廃液保持部81Bに対応する。廃液部85において、定量部75から定量穴851を介して流入した第2流体は、廃液流路85Aを伝って流れ、廃液保持部85Bに保持される。なお、廃液部85において、廃液保持部85Bに貫通穴は設けられない。このため、廃液保持部85Bに保持された第2流体は、廃液部85の外部に流出しない。
廃液部86の廃液流路86A及び廃液保持部86Bは、廃液部81の廃液流路81A及び廃液保持部81Bに対応する。廃液部86において、定量部76から定量穴861を介して流入した第4流体は、廃液流路86Aを伝って流れ、廃液保持部86Bに保持される。なお、廃液部86において、廃液保持部86Bに貫通穴は設けられない。このため、廃液保持部86Bに保持された第4流体は、廃液部86の外部に流出しない。
<混合保持部15>
図4、図5に示すように、混合保持部16、17は、板材20の前面201に設けられる。混合保持部16は、左右方向に延びる第1部分16A、及び、第1部分16Aの右端から上方に延びる第2部分16Bを有する。第1部分16Aは、定量部71〜73の下側、且つ、定量部74〜76の上側に配置される。流路161、162のそれぞれの下端は、第1部分16Aに連通する。第2部分16Bは、定量部73の右側に配置される。流路163の右端は、第2部分16Bに連通する。混合保持部16では、定量部71〜73のそれぞれで定量された第1流体〜第3流体が混合され、保持される。
混合保持部16の第2部分16Bの上端に、流路167の左端が連通する。流路167は、左端から右側に延びる。流路167の右端は、後述の撹拌部91に連通する。流路167は、混合保持部16に保持された第1流体〜第3流体の混合流体を、撹拌部91に向けて流す。
混合保持部17は、左右方向に延びる第1部分17A、及び、第1部分17Aの右端から上方に延びる第2部分17Bを有する。第1部分17Aは、定量部74〜76の下側に配置される。流路174、175のそれぞれの下端は、第1部分17Aに連通する。第2部分17Bは、定量部76の右側に配置される。流路176の右端は、第2部分17Bに連通する。混合保持部17では、定量部74〜76のそれぞれで定量された第1流体、第2流体、及び、第4流体が混合され、保持される。
混合保持部17の第2部分17Bの上端に、流路177の下端が連通する。流路177は、下端から上側に延びる。流路177の上端は、後述の撹拌部92に連通する。流路177は、混合保持部17に保持された第1流体、第2流体、及び、第4流体の混合流体を、撹拌部92に向けて流す。
<撹拌部90>
図9に示すように、撹拌部90は、板材20の内部に正四角柱状の空間を形成する。撹拌部91、92の形状は略同一である。以下では、撹拌部91について詳細に説明し、撹拌部92の説明は簡略化する。
撹拌部91は、板材20の上下方向略中央、且つ、右辺部22近傍に配置される。撹拌部91の右面913は平坦である。撹拌部91の左面は914は、上下方向の中央近傍で左側に湾曲する。図5に示すように、撹拌部91の上端は、流路167の右端に連通する。以下、撹拌部91のうち流路167が連通する部分を、「連通口167A」という。撹拌部91は、上端から左斜め下方向に延びる。撹拌部91の下端は、後述の流路910の上端に連通する。以下、撹拌部91のうち流路910が連通する部分を、「連通口910A」という。撹拌部91は、開口端部911を前面に有する。開口端部911は、上下方向に長い環状の端部である。開口端部911は、略長方形状の開口を前面201に形成する。なお、この開口は、フィルム291によって封止される。つまり、撹拌部91の前面の一部は、フィルム291のうち開口を封止する部分によって構成される。
図13に示すように、開口端部911の左右方向に対向する2つの端部911A、911Bのうち、左側の端部911Bは、上下方向の中央近傍911Cで左側に湾曲する。このため、端部911A、911B間の間隔は、中央近傍911Cで僅かに大きくなる。以下、端部911Aと、端部911Bのうち中央近傍911Cとの間の間隔、即ち、端部911A、911B間の最大距離を、距離L11という。
図6に示すように、撹拌部91は、開口端部912を後側に有する。開口端部912は、上下方向に長い環状の端部である。開口端部912は、略長方形状の開口を後面202に形成する。なお、この開口は、フィルム292によって封止される。つまり、撹拌部91の後面の一部は、フィルム292のうち開口を封止する部分によって構成される。開口端部912の左右方向に対向する2つの端部912A、912Bは、互いに平行に延びる。以下、端部912A、912B間の間隔を、距離L12という。
図14に示すように、開口端部911によって形成される開口は、開口端部912によって形成される開口よりも左側に配置される。撹拌部91の右面913は、前端部分、即ち、開口端部911の端部911A近傍の部分で、左側に突出する。以下、この突出部を、「規制部911R」という。撹拌部91の左面914は、後端部分、即ち、開口端部912の端部912B近傍の部分で、右側に突出する。以下、この突出部を、「規制部912R」という。
図9、図13に示すように、撹拌部91は、空間内に撹拌子91Aを収容する。撹拌子91Aは金属製の球体である。撹拌子91Aの比重は、第1流体〜第4流体よりも大きい。撹拌子91Aの直径は、距離L11(図13参照)、L12(図6参照)よりも大きい。図13に示すように、撹拌子91Aは、撹拌部91の上端近傍の第1位置91Uと、下端近傍の第2位置91Lとの間を、撹拌部91の延びる方向に沿って移動可能に保持される。
図13に示すように、撹拌子91Aの移動方向、言い換えれば、第1位置91Uと第2位置91Lとを結ぶ線分の方向を、「線分方向91M」と定義する。この場合、線分方向91Mは、水平軸線A2と交差する。又、水平軸線A2を通り、線分方向91Mと直交する線分を、「線分90M」と定義する。更に、第1位置91Uと第2位置91Lとを結ぶ線分と線分90Mとの交点を、「交点91P」と定義する。この場合、第1位置91Uは、交点91Pに対して、線分方向91Mの上側に配置される。一方、第2位置91Lは、交点91Pに対して、線分方向91Mの下側に配置される。つまり、線分方向91Mにおいて、第1位置91U及び第2位置91Lは、交点91Pに対して互いに反対方向に配置される。
撹拌子91Aは、撹拌部91内で線分方向91Mに沿って移動することによって、混合保持部16から流路167を介して流入した第1流体〜第3流体の混合流体を撹拌する。撹拌された混合流体は、流路910を介して後述の測定部94に流れる。
なお、図14に示すように、規制部911R、912Rは、撹拌子91Aの前後方向の移動を規制する。このため、開口端部911によって形成される開口を封止するフィルム291に対する撹拌子91Aの接触は、規制部911Rによって規制される。又、開口端部912によって形成される開口を封止するフィルム292に対する撹拌子92Aの接触は、規制部912Rによって規制される。
図9に示すように、撹拌部92は、撹拌部91の左側に配置される。撹拌部91、92は、左右方向に配列される。撹拌部92は、撹拌部91と平行に延びる。以下、図13に示すように、撹拌部91、92の延びる方向と上下方向とのなす角度を、θ1度と表記する。
図13に示すように、撹拌部92の上端は、流路177の右端に連通する。以下、撹拌部92のうち流路177が連通する部分を、「連通口177A」という。撹拌部91の下端は、後述の流路920の上端に連通する。以下、撹拌部92のうち流路920が連通する部分を、「連通口920A」という。撹拌部92の開口端部921、922(図6参照)は、撹拌部91の開口端部911、912に対応する。開口端部921の2つの端部921A、921B、中央近傍921C、開口端部922の2つの端部922A、922B(図6参照)、規制部921R、規制部922R(図14参照)は、それぞれ、開口端部911の2つの端部911A、911B、中央近傍911C、開口端部912の2つの端部912A、912B(図6参照)、規制部911R、規制部912R(図14参照)に対応する。端部921A、921B間の最大距離を、距離L21という。端部922A、922B間の距離を、距離L22(図6参照)という。距離L11、L21は同一である。距離L12、L22(図6参照)は同一である。
図9、図13に示すように、撹拌部92は、空間内に撹拌子92Aを収容する。撹拌子92Aは、撹拌子91Aと同一材料、及び、同一形状である。撹拌子92Aは、撹拌部92の上端近傍の第1位置92Uと、下端近傍の第2位置92Lとの間を、撹拌部92の延びる方向に沿って移動可能に保持される。
撹拌子92Aの移動方向、言い換えれば、第1位置92Uと第2位置92Lとを結ぶ線分の方向を、「線分方向92M」と定義する。この場合、線分方向92Mは、水平軸線A2と交差する。又、第1位置92Uと第2位置92Lとを結ぶ線分と線分90Mとの交点を、「交点92P」と定義する。この場合、第1位置92Uは、交点92Pに対して、線分方向92Mの上側に配置される。一方、第2位置92Lは、交点92Pに対して、線分方向92Mの下側に配置される。つまり、線分方向92Mにおいて、第1位置92U及び第2位置92Lは、交点91Pに対して互いに反対方向に配置される。
撹拌子92Aは、撹拌部92内で線分方向92Mに沿って移動することによって、混合保持部17から流路177を介して流入した第1流体、第2流体、第4流体の混合流体を撹拌する。撹拌された混合流体は、流路920を介して後述の測定部95に流れる。
なお、図14に示すように、規制部921R、922Rは、撹拌子92Aの前後方向の移動を規制する。このため、開口端部921によって形成される開口を封止するフィルム291に対する撹拌子92Aの接触は、規制部921Rによって規制される。又、開口端部922によって形成される開口を封止するフィルム292に対する撹拌子92Aの接触は、規制部922Rによって規制される。
<測定部93>
図4、図5に示すように、測定部93は、板材20の前面201における上下方向中心よりも下側、且つ、右辺部22近傍に配置される。測定部93は、上端、下端、右端、左端、及び、後端が板材20によって閉塞され、後端がフィルム291によって閉塞される。測定部93は、上下方向に延びる直方体状の閉空間を形成する。
測定部94は、撹拌部91の下側に配置される。測定部94の上端に、流路910の下端が連通する。測定部94は、流路910を介して流入する第1流体〜第3流体の混合流体を保持する。測定部95は、測定部94の左側、且つ、撹拌部92の下側に配置される。測定部95の上端に、流路920の下端が連通する。測定部95は、流路920を介して流入する第1流体、第2流体、第4流体の混合流体を保持する。
検査チップ2がホルダ7に装着された状態で、測定部94、95は、ホルダ7の穴部7A(図2等参照)に対向する。検査装置1の光学測定部67(図2等参照)による光学測定が実行される場合、測定部94に流入した混合流体に対して、光学測定部67の射出部671から射出された測定光67Aが照射される。このとき、測定光67Aは、測定部94の後面、及び、フィルム291を通過する。又、測定部95に流入した混合流体に対して、光学測定部67の射出部671から射出された測定光67Bが照射される。このとき、測定光67Bは、測定部95の後面、及び、フィルム291を通過する。ここで、測定部94、95の後面を構成する板材20、及び、フィルム291は、何れも透明の合成樹脂である。このため、測定部93は測定光67A、67Bの透過を妨げない。
<検査方法の一例>
検査装置1及び検査チップ2を用いた検査方法を説明する。図16(a)に示すように、注入部11、12、13、14のそれぞれの注入口110、120、130、140(図4参照)から、第1流体41、第2流体42、第3流体43、第4流体44がそれぞれ注入される。第1流体41、第2流体42、第3流体43、第4流体44は、それぞれ、保持部112、122、132、142に向けて流路111、121、131、141(図6参照)を流れ、保持部112、122、132、142に保持される。ユーザは、検査チップ2をホルダ7に取り付ける。このとき、ホルダ7は定常状態である。このため、検査チップ2には、上辺部21から下辺部24に向けて重力Gが作用する。ユーザは、操作部64を介して処理開始のコマンドを入力する。CPU61は、フラッシュメモリ63に記憶されている制御プログラムに基づいて、図15に示す遠心処理を実行する。
図15に示すように、CPU61は、フラッシュメモリ63に予め記憶されているモータの駆動情報を読み込み、公転コントローラ65に主軸モータ35の駆動情報をセットし、自転コントローラ66にステッピングモータ51の駆動情報をセットする(S1)CPU61は、検査チップ2の公転を開始する(S2)。CPU61は、公転する検査チップ2の移動速度である公転速度を、所定速度まで上昇させ、その後、所定速度で維持する。同時に、CPU61は、定常状態のホルダ7を正方向に90度自転させる(S3)。ホルダ7の回転に応じ、検査チップ2が定常状態から正方向に90度回転する。検査チップ2に対し、上辺部21から下辺部24に向かう方向の遠心力Cが作用する。この場合、重力Gよりも大きい遠心力Cが検査チップ2に作用することになるので、図16(b)に示すように、第1流体41、第2流体42、第3流体43、第4流体44が、保持部112、122、132、142に保持された状態は維持される。
以下、検査チップ2の上辺部21から下辺部24に向けて延びる直線を、「基準軸B」(図16(b)等参照)という。基準軸Bは水平軸線A2と直交する。遠心力Cの方向を示すベクトルを、「遠心力ベクトル」という。基準軸Bに対する遠心力ベクトルの角度を、「チップ角度」という。上辺部21から下辺部24に向かう方向の遠心力Cが検査チップ2に作用した図16(b)の場合、チップ角度は0度である。
CPU61は、ホルダ7を負方向に90度自転させ、チップ角度を0度から90度まで変化させる(S4)。図16(c)に示すように、チップ角度が0度(図16(b))から90度(図17(a))まで変化する過程で、第1流体41、第2流体42、第3流体43、第4流体44は、保持部112、122、132、142(図6参照)から連通路113、123、133、143(図6参照)を介して保持部114、124、134、144の第1部分に流れる。図17(a)に示すように、チップ角度が90度となった状態で、第1流体41、第2流体42、第3流体43、第4流体44は、保持部114、124、134、144の第1部分に保持される。
CPU61は、ホルダ7を正方向に90度自転させ、チップ角度を90度から0度まで変化せる(S5)。チップ角度が90度(図17(a))から0度(図17(c))まで変化する過程において、図17(b)に示すように、第1流体41、第2流体42、第3流体43、第4流体44は、保持部114、124、134、144の第1部分から第2部分に流れる。更に、第1流体41は、保持部114の第2部分から、貫通穴115及び流路116(図5参照)を介して定量部71に流入する。第2流体42は、保持部124の第2部分から、貫通穴125及び流路126(図5参照)を介して定量部72に流入する。第3流体43は、保持部134の第2部分から、貫通穴135及び流路136(図5参照)を介して定量部73に流入する。第4流体44は、保持部144の第2部分から、流路147(図6参照)、貫通穴145、及び、流路146(図5参照)を介して定量部76に流入する。
なお、上記の過程において、遠心力ベクトルは、第1方向D1と第2方向D2との間の任意方向と一致し、その後、チップ角度は0度となる。チップ角度が0度のときの遠心力ベクトルは、第1方向D1と第2方向D2との間の任意方向の何れかを向く(図17(c)参照)。つまり、検査装置1は、任意方向の何れかと遠心力ベクトルとが一致するようにホルダ7を回転させることによって、定量部71、72、73、76に流体を流入させる。
図17(c)に示すように、チップ角度が0度となった状態で、定量部71には、任意仮想平面(図12参照)よりも遠心力ベクトルの下流側の部分の閉空間の容積である第1定量容積V1分の第1流体41が残留する。なお、任意仮想平面よりも遠心力ベクトルの下流側は、任意仮想平面に対して垂直軸線A1側と反対側に対応する。つまり、定量部71では、チップ角度が0度の状態において、定量壁部711、712、713(図12参照)のうち任意仮想平面に対して垂直軸線A1と反対側の部分で、第1定量容積V1分の第1流体41が定量される。なお、定量部71から溢れた第1流体41は、定量穴811を介して廃液部81(図6参照)に向けて流れる。
廃液部81に流入した第1流体41は、廃液流路81A(図6参照)を伝って流れ、廃液保持部81B(図6参照)に保持される。廃液保持部81Bに保持された第1流体41は、貫通穴815及び流路816(図5参照)を介して定量部74に流入する。チップ角度は0度となっているので、定量部74では、定量部71の場合と同様、第1定量容積V1分の第1流体41が定量される。つまり、注入部11に注入された第1流体41は、定量部71、74のそれぞれで、第1定量容積部V1分ずつ定量される。定量部74から溢れた第1流体41は、定量穴841を介して廃液部84(図6参照)に流れる。
同様に、定量部72では、チップ角度が0度となった状態で、第1定量容積V1分の第2流体42が定量される。定量部72から溢れた第2流体42は、定量穴821を介して廃液部82(図6参照)に向けて流れる。廃液部82に流入した第2流体42は、廃液流路82Aを伝って流れ、廃液保持部82Bに保持される。廃液保持部82Bに保持された第2流体42は、貫通穴825及び流路826(図5参照)を介して定量部75に流入する。チップ角度は0度となっているので、定量部75では、第1定量容積V1分の第2流体42が定量される。つまり、注入部12に注入された第2流体42は、定量部72、75のそれぞれで、第1定量容積部V1分ずつ定量される。定量部75から溢れた第2流体42は、定量穴851を介して廃液部85(図6参照)に流れる。
一方、定量部73では、定量壁部731、732、733(図5参照)のうち任意仮想平面に対して垂直軸線A1と反対側の部分で、第1定量容積V1よりも小さい第2定量容積V2(V1>V2)の第3流体43が定量される。定量部73から溢れた第3流体43は、定量穴831を介して廃液部83(図6参照)に流れる。又、定量部76では、定量部73の場合と同様、第2定量容積V2分の第4流体44が定量される。定量部76から溢れた第4流体44は、定量穴861を介して廃液部86(図6参照)に流れる。
上記の過程において、廃液部84に流入した第1流体41は、廃液流路84Aを伝って流れ、廃液保持部84Bに保持される。廃液部85に流入した第2流体42は、廃液流路85Aを伝って流れ、廃液保持部85Bに保持される。廃液部83に流入した第3流体43は、廃液流路83Aを伝って流れ、廃液保持部83Bに保持される。廃液部86に流入した第4流体44は、廃液流路86Aを伝って流れ、廃液保持部86Bに保持される。
図15に示すように、CPU61は、ホルダ7を負方向に90度回転させ、チップ角度を0度から90度に変化させる(S6)。チップ角度が0度(図17(c))から90度(図18(b))に変化する過程において、図18(a)に示すように、定量部71に残留する第1流体41は、流路161(図5参照)を介して混合保持部16に流れる。定量部72に残留する第2流体42は、流路162(図5参照)を介して混合保持部16に流れる。定量部73に残留する第3流体43は、流路163(図5参照)を介して混合保持部16に流れる。第1流体41、第2流体42、第3流体43は、混合保持部16で混合される。混合流体は、混合保持部16に保持される。以下、第1流体41、第2流体42、第3流体43の混合流体を、「混合流体40A」という。
又、定量部74に残留する第1流体41は、流路174(図5参照)を介して混合保持部17に流れる。定量部75に残留する第2流体42は、流路175(図5参照)を介して混合保持部17に流れる。定量部76に残留する第4流体44は、流路176(図5参照)を介して混合保持部17に流れる。第1流体41、第2流体42、第4流体44は、混合保持部17で混合される。混合流体は、混合保持部17に保持される。第1流体41、第2流体42、第4流体44の混合流体を、「混合流体40B」という。
更に、混合保持部16に保持された混合流体40Aは、図18(b)に示すように、流路167(図5参照)を介して撹拌部91に流れる。チップ角度が90度となった状態で、混合流体40Aは、撹拌部91の右面913(図9参照)の近傍で保持される。又、混合保持部17に保持された混合流体40Bは、流路177(図5参照)を介して撹拌部92に流れる。混合流体40Bは、撹拌部92の右面923(図9参照)の近傍で保持される。
なお、上記の過程において、チップ角度が90度となった場合、遠心力ベクトルは、第1方向D1と第2方向D2との間を除く方向を示す。つまり、検査装置1は、任意方向を除く方向に遠心力ベクトルが向くようにホルダ7を回転させることによって、定量部70によって定量された流体を、定量部70から混合保持部15を介して撹拌部90に向けて流す。
図18(b)に示すように、チップ角度を90度とした状態で、撹拌部91の第1位置91U(図13参照)は第2位置91L(図13参照)よりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。このため、撹拌部91の撹拌子91Aは、遠心力によって第1位置91Uに移動する。同様に、撹拌部92の第1位置92U(図13参照)は、第2位置92L(図13参照)よりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。このため、撹拌部92の撹拌子92Aは、遠心力によって第1位置92Uに移動する。
CPU61は、ホルダ7を正方向にθ2度回転させ、チップ角度を90度から(90−θ2)度に変化させる(S7)。なお、θ2度は、撹拌部91、92の延びる方向と上下方向とのなす角度であるθ1度(図13参照)よりも大きい(θ2>θ1)。このため、図19(a)に示すように、チップ角度が(90−θ2)度の状態で、撹拌部91の第2位置91L(図13参照)は第1位置91U(図13参照)よりも、遠心力ベクトルの下流側に配置される。このため、撹拌部91の撹拌子91Aは、チップ角度が90度から(90−θ2)度に変化する過程で、遠心力によって第1位置91Uから第2位置91Lに移動する。同様に、撹拌部92の第2位置92L(図13参照)は第1位置92U(図13参照)よりも、遠心力ベクトルの下流側に配置される。このため、撹拌部92の撹拌子92Aは、チップ角度が90度から(90−θ2)度に変化する過程で、遠心力によって第1位置92Uから第2位置92Lに移動する。
CPU61は、ホルダ7を負方向にθ2度回転させ、チップ角度を(90−θ2)度から90度に変化させる(S8)。図19(b)に示すように、チップ角度が(90−θ2)度から90度に変化する過程で、撹拌部91の撹拌子91Aは、遠心力によって第2位置91Lから第1位置91Uに移動する。同様に、撹拌部92の撹拌子92Aは、遠心力によって第2位置92Lから第1位置92Uに移動する。
以上のように、撹拌子91Aは、S7及びS8の過程で、撹拌部91内を第1位置91Uと第2位置91Lとの間で往復移動する。これによって、撹拌部91内の混合流体40Aは、撹拌子91Aによって撹拌される。又、撹拌子92Aは、撹拌部92内を第1位置92Uと第2位置92Lとの間で往復移動する。これによって、撹拌部92内の混合流体40Bは、撹拌子92Aによって撹拌される。以下、S7及びS8の過程において変化するチップ角度の範囲を、「相対移動範囲」という。
CPU61は、S7及びS8の処理を所定回数繰り返したか判定する(S9)。CPU61は、S7及びS8の処理が所定回数繰り返されていないと判定された場合(S9:NO)、処理をS7に戻す。これによって、S7及びS8の処理が繰り返される。撹拌子91A、92Aは往復移動を繰り返す。CPU61は、S7及びS8の処理が所定回数繰り返されたと判定された場合(S9:YES)、処理をS10に進める。これによって、チップ角度は、90度と(90−θ)度の間で所定回数変化する。以下、S7及びS8の処理が所定回数繰り返される制御を、「撹拌制御」という。
なお、図9に示すように、撹拌部91の右面913、即ち、撹拌部91のうち遠心力ベクトルの下流側の部分は平坦であり、凹凸は形成されない。撹拌部92の右面923についても同様である。このため、図19(b)に示すように、チップ角度が90度のとき、右面913と水平軸線A2との間の距離は、第1位置91Uから第2位置91Lに向けて単調減少する。同様に、右面923と水平軸線A2との間の距離は、第1位置92Uから第2位置92Lに向けて単調減少する。一方、図19(a)に示すように、チップ角度が(90−θ2)度のとき、右面913と水平軸線A2との間の距離は、第1位置91Uから第2位置91Lに向けて単調増加する。同様に、右面923と水平軸線A2との間の距離は、第1位置92Uから第2位置92Lに向けて単調増加する。
図20に示すように、遠心力ベクトルと直交し、且つ、流路167が撹拌部91に連通する連通口167Aを通過する任意の第3仮想平面を定義する。第3仮想平面P311は、任意の第3仮想平面のうちチップ角度が90度の場合の遠心力ベクトルに直交する。第3仮想平面P312は、任意の第3仮想平面のうちチップ角度が(90−θ2)度の場合の遠心力ベクトルに直交する。つまり、撹拌制御の実行中にチップ角度が相対移動範囲内で変化する場合において、第3仮想平面は、第3仮想平面P311から第3仮想平面P312までの間を移動する。この場合、撹拌部91の右面913の少なくとも一部は、常に、第3仮想平面よりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。つまり、撹拌部91の右面913の少なくとも一部は、常に、連通口167Aよりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。
図21に示すように、遠心力ベクトルと直交し、且つ、流路910が撹拌部91に連通する連通口910Aを通過する任意の第4仮想平面を定義する。第4仮想平面P313は、任意の第4仮想平面のうちチップ角度が90度の場合の遠心力ベクトルに直交する。第4仮想平面P314は、任意の第4仮想平面のうちチップ角度が(90−θ2)度の場合の遠心力ベクトルに直交する。つまり、撹拌制御の実行中にチップ角度が相対移動範囲内で変化する場合において、第4仮想平面は、第4仮想平面P313から第4仮想平面P314までの間を移動する。この場合、撹拌部91の右面913の少なくとも一部は、常に、第4仮想平面よりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。つまり、撹拌部91の右面913の少なくとも一部は、常に、連通口910Aよりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。
図20に示すように、流路177が撹拌部92に連通する連通口177Aを通過する任意の第5仮想平面であって、第3仮想平面P311、P312に対応する第5仮想平面P321、P322を定義する。撹拌制御の実行中にチップ角度が相対移動範囲内で変化する場合において、第5仮想平面は、第5仮想平面P321から第5仮想平面P322までの間を移動する。この場合、撹拌部92の右面923の少なくとも一部は、常に、第5仮想平面よりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。つまり、撹拌部92の右面923の少なくとも一部は、常に、連通口177Aよりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。
図21に示すように、流路920が撹拌部92に連通する連通口920Aを通過する任意の第6仮想平面であって、第4仮想平面P313、P314に対応する第6仮想平面P323、P324を定義する。撹拌制御の実行中にチップ角度が相対移動範囲内で変化する場合において、第6仮想平面は、第6仮想平面P323から第6仮想平面P324までの間を移動する。この場合、撹拌部92の右面923の少なくとも一部は、常に、第6仮想平面よりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。つまり、撹拌部92の右面923の少なくとも一部は、常に、連通口920Aよりも遠心力ベクトルの下流側に配置される。
撹拌部91に移動する混合流体40Aの体積は、V1(第1流体41)+V1(第2流体42)+V2(第3流体43)である。以下、混合流体40Aの体積を、「総量体積Vsum」という。これに対し、図20に示すように、撹拌部91のうち、第3仮想平面に対して遠心力ベクトルの下流側の部分の容積のとり得る最小値を、「最小容積V11」と定義する。撹拌部91の場合、第3仮想平面P311に対して遠心力ベクトルの下流側の部分の容積が、最小容積V11に対応する。撹拌部91において、総量体積Vsumは最小容積V11よりも常に小さくなる。つまり、以下の式の関係が成立する。
Vsum(=V1+V1+V2)<V11
同様に、撹拌部92に移動する混合流体40Bの体積は、V1(第1流体41)+V1(第2流体42)+V2(第4流体44)である。混合流体40Bの総量体積は、混合流体40Aの総量体積Vsumと等しい。これに対し、図20に示すように、撹拌部92のうち、第5仮想平面に対して遠心力ベクトルの下流側の部分の容積のとり得る最小値を、「最小容積V12」と定義する。撹拌部92の場合、第5仮想平面P321に対して遠心力ベクトルの下流側の部分の容積が、最小容積V12に対応する。撹拌部92において、総量体積Vsumは最小容積V12よりも常に小さくなる。つまり、以下の式の関係が成立する。
Vsum(=V1+V1+V2)<V12
図21に示すように、撹拌部91のうち、第4仮想平面に対して遠心力ベクトルの下流側の部分の容積のとり得る最小値を、「最小容積V13」と定義する。撹拌部91の場合、第4仮想平面P314に対して遠心力ベクトルの下流側の部分の容積が、最小容積V13に対応する。撹拌部91において、総量体積Vsumが最小容積V13よりも常に小さくなる。つまり、以下の式の関係が成立する。
Vsum(=V1+V1+V2)<V13
同様に、撹拌部92のうち、第6仮想平面に対して遠心力ベクトルの下流側の部分の容積のとり得る最小値を、「最小容積V14」と定義する。撹拌部92の場合、第6仮想平面P324に対して遠心力ベクトルの下流側の部分の容積が、最小容積V14に対応する。撹拌部92において、総量体積Vsumが最小容積V14よりも常に小さくなる。つまり、以下の式の関係が成立する。
Vsum(=V1+V1+V2)<V14
図15に示すように、CPU61は、撹拌制御の終了後、ホルダ7を正方向に90度自転させ、チップ角度を90度から0度に変化させる(S10)。なお、チップ角度が90度から0度に変化する過程において、チップ角度は、撹拌制御の実行中における相対移動範囲(90度〜(90−θ2)度)の外側まで変化する。図22(a)に示すように、撹拌部91で撹拌された混合流体40Aは、流路910を介して測定部94に流れる。撹拌部92で撹拌された混合流体40Bは、流路920を介して測定部95に流れる。チップ角度が0度の状態で、図22(b)に示すように、混合流体40Aは、測定部94の下辺部24近傍に保持される。混合流体40Bは、測定部95の下辺部24近傍に保持される。
CPU61は、検査チップ2の公転を停止させ、同時に、チップ角度を負方向に90度回転させてホルダ7を定常状態に戻す(S11)。このとき、検査チップ2には、上辺部21から下辺部24に向けて重力Gが作用する。このため、図22(c)に示すように、測定部94に混合流体40Aが保持され、且つ、測定部95に混合流体40Bが保持された状態は維持される。
CPU61は、ホルダ7を公転させて測定位置まで移動させる(S12)。CPU61は、射出部671を発光させる。射出部671から射出された測定光67Aは、検査チップ2の測定部94を透過する。射出部671から射出された測定光67Bは、検査チップ2の測定部95を透過する。CPU61は、検出部672が受光した測定光67A、67Bの変化量に基づいて、混合流体40A、40B液の光学測定を行い、測定データを取得する。CPU61は、取得された測定データに基づいて、混合流体の測定結果を算出する(S13)。CPU61は、遠心処理を終了させる。
<本実施形態の主たる作用、効果>
以上説明したように、検査装置1は、チップ角度を90度と(90−θ2)度との間の相対移動範囲内で繰り返し変化させる撹拌制御を実行する(S7,S8)。これによって、検査装置1は、撹拌部91内の撹拌子91A、及び、撹拌部92内の撹拌子92Aに対する遠心力ベクトルを変化させる。チップ角度が90度のとき(S8)、第1位置91Uは第2位置91Lよりも遠心力ベクトルの下流側に配置され、第1位置92Uは第2位置92Lよりも遠心力ベクトルの下流側に配置される(図19(b))。このため、撹拌子91Aは第1位置91Uに移動し、撹拌子92Aは第1位置92Uに移動する。一方、チップ角度が(90−θ2)度のとき(S7)、第2位置91Lは第1位置91Uよりも遠心力ベクトルの下流側に配置され、第2位置92Lは第1位置92Uよりも遠心力ベクトルの下流側に配置される(図19(a))。このため、撹拌子91Aは第2位置91Lに移動し、撹拌子92Aは第2位置92Lに移動する。このように、検査装置1は、撹拌制御を実行することによって、撹拌子91Aを第1位置91Uと第2位置91Lとの間で繰り返し往復動作させ、且つ、撹拌子92Aを第1位置92Uと第2位置92Lとの間で繰り返し往復動作させることができる。従って、検査装置1は、検査チップ2の撹拌部90内の混合流体40A、40Bを、撹拌子91A、92Aによって撹拌できる。
上記の撹拌制御の実行中において、撹拌部91の右面913の少なくとも一部は、常に、流路167が撹拌部91に連通する連通口167Aよりも、遠心力ベクトルの下流側に配置される。又、撹拌部92の右面923の少なくとも一部は、常に、流路177が撹拌部92に連通する連通口177Aよりも、遠心力ベクトルの下流側に配置される。このため、撹拌部91、92の少なくとも一部に収容された混合流体40A、40Bは、撹拌制御が実行されている間、撹拌部91、92内に保持される。従って、検査装置1は、撹拌制御の実行中において、撹拌部91から混合保持部16を介して定量部71〜73に混合流体40Aが逆流することを抑制できる。又、検査装置1は、撹拌部92から混合保持部17を介して定量部74〜76に混合流体40Bが逆流することを抑制できる。
検査装置1は、垂直軸線A1を中心としてホルダ7を公転させることによって、検査チップ2に遠心力を作用させる。検査装置1は、検査チップ2に作用する遠心力によって、撹拌子91Aを、撹拌部91の第1位置91Uと第2位置91Lとの間で往復動作させ、且つ、撹拌子92Aを、撹拌部92の第1位置92Uと第2位置92Lとの間で往復動作させる。このため、検査装置1は、遠心力の強さを制御することによって、流体の撹拌条件を変更できる。例えば、検査装置1は、撹拌制御の実行中における公転速度を自在に制御することによって、撹拌子91A、92Aの往復移動時における速度を変化させることができる。この場合、検査装置1は、撹拌子91A、92Aによる混合流体40A、40Bの撹拌の程度を調節できる。
検査装置1は、チップ角度を0度から90度に変化させる過程(S6)で、定量部71〜73で定量された流体を、混合保持部16を介して撹拌部91に流入させる。又、定量部74〜76で定量された流体を、混合保持部17を介して撹拌部92に流入させる(図18(a)(b))。又、検査装置1は、チップ角度を90度から0度に変化させる過程(S10)で、撹拌部91の混合流体40Aを測定部94に向けて流し、撹拌部92の混合流体40Bを測定部95に向けて流す(図22(a)(b))。
ここで、混合流体40A、40Bを撹拌部91、92に流入させるためにチップ角度を90度とした場合(図18(b))における、遠心力ベクトルと反対方向のベクトルを、反対ベクトルと定義する。この場合、反対ベクトルは、撹拌制御の実行中における遠心力ベクトルの移動範囲である相対移動範囲外となる。つまり、撹拌制御の実行中においてチップ角度が相対移動範囲内で変化するとき、撹拌部91内の混合流体40Aに対して、混合保持部16側に逆流する向きの力は作用しない。同様に、撹拌部92内の混合流体40Bに対して、混合保持部17側に逆流する向きの力は作用しない。このため、検査装置1は、撹拌制御の実行中において撹拌部90から混合保持部15を介して定量部70側に混合流体40A、40Bが逆流することを抑制できる。
又、撹拌部91、92から混合流体40A、40Bを流出させるときにチップ角度を0度とした場合(図22(b))における遠心力ベクトルは、相対移動範囲外となる。つまり、撹拌制御の実行中においてチップ角度が相対移動範囲内で変化するとき、撹拌部91内の混合流体40Aに対して、測定部94に流出する向きの力は作用しない。同様に、撹拌部92内の混合流体40Bに対して、測定部95に流出する向きの力は作用しない。このため、撹拌制御の実行中において撹拌部90から測定部93に混合流体40A、40Bが流出することを抑制できる。
検査装置1は、撹拌制御の実行中において、ホルダ7を公転させて検査チップ2を回転させる。これによって発生する遠心力Cと、重力Gとの合力は、重力Gよりも大きくなる。つまり、検査装置1は、重力Gの加速度よりも大きな加速度を、検査チップ2の撹拌部91、92に発生させる。この場合、撹拌子91A、92Aには、重力Gよりも大きい遠心力Cが作用する。従って、検査装置1は、撹拌部91における第1位置91Uと第2位置91Lとの垂直軸線A1からの距離の差、及び、撹拌部92における第1位置92Uと第2位置92Lとの垂直軸線A1からの距離の差を小さくしても、遠心力Cによって撹拌子91A、92Aを強い力で往復動作させることができる。従って、検査装置1は、撹拌制御の実行中における相対移動範囲を小さくした場合でも、撹拌子91A、92Aを強い力で且つ高速に往復動作させることができる。
検査装置1は、撹拌制御の実行中において、S7及びS8の処理を所定回数繰り返し実行する。これによって、チップ角度は、90度と(90−θ)度の間で所定回数変化する。この場合、検査装置1は、撹拌子91A、92Aを所定回数往復動作させることができる。このため、検査装置1は、撹拌部91、92内の混合流体を良好に撹拌できる。
検査装置1は、光学測定部67の射出部671を発光させて測定部94に測定光67Aを透過させ、且つ、測定部95に測定光67Bを透過させる。検査装置1は、光学測定部67の検出部672が受光した測定光67A、67Bの変化量に基づいて、混合流体40A、40B液の光学測定を行うことができる。これによって、検査装置1は、検査チップ2の撹拌部91、92において撹拌された混合流体40A、40Bに生じる化学反応によって光学特性が変化する場合、この変化を検出することで、化学反応の度合いを推定できる。
チップ角度が90度のとき、撹拌部91の右面913と水平軸線A2との間の距離、及び、撹拌部92の右面923と水平軸線A2との間の距離は、何れも、第1位置91U、92Uから第2位置91L、92Lに向けて単調減少する(図19(b))。一方、チップ角度が(90−θ2)度のとき、撹拌部91の右面913と水平軸線A2との間の距離、及び、撹拌部92の右面923と水平軸線A2との間の距離は、第1位置91U、92Uから第2位置91L、92Lに向けて単調増加する(図19(a))。この場合、撹拌部91の右面913に沿って撹拌子91Aが移動する場合の動きは、常に単調移動となる。同様に、撹拌部92の右面923に沿って撹拌子92Aが移動する場合の動きは、常に単調移動となる。このため、検査チップ2は、第1位置91Uと第2位置91Lとの間での撹拌子91Aの移動、及び、第1位置92Uと第2位置92Lとの間での撹拌子92Aの移動が、右面913、923の凹凸等によって阻害されることを抑制できる。従って、検査チップ2は、撹拌部91、92内で撹拌子91A、92Aをスムーズに往復動作させることができる。
検査チップ2において、撹拌子91A、92Aは、何れも金属製である。この場合、通常使用される流体よりも、撹拌子91A、92Aの比重を大きくできる。ここで、流体に対して撹拌子91A、92Aの比重の差が大きい程、撹拌子91A、92Aに作用する加速度は、流体に作用する加速度に対して相対的に大きくなる。このため、検査チップ2は、撹拌子91A、92Aを金属製とすることによって、より強力な力で撹拌子91A、92Aを往復動作させることができる。又、検査チップ2は、安価で且つ丈夫な撹拌子91A、92Aを実現できる。
検査チップ2において、撹拌子91A、92Aは球体である。この場合、往復動作する撹拌子91A、92Aは転がり移動可能であるため、撹拌部91、92から受ける摩擦力を小さくできる。従って、検査チップ2は、チップ角度の相対移動範囲が小さい場合でも、撹拌子91A、92Bを強い力で且つ高速に往復動作させることができる。
検査チップ2のフィルム291、292のうち、板材20と近接する側の面には、粘着剤が塗布されている。又、検査チップ2の規制部911R、912Rは、撹拌子91Aの前後方向の移動を規制する。このため、フィルム291、292に対する撹拌子91Aの接触は、規制部911R、912Rによって規制される。又、検査チップ2の規制部921R、922Rは、撹拌子92Aの前後方向の移動を規制する。このため、フィルム291、292に対する撹拌子92Aの接触は、規制部921R、922Rによって規制される。このため、検査チップ2は、粘着剤に撹拌子91A、92Aが吸着して撹拌子91A、92Aの往復動作が阻害されることを、規制部911R、912R、921R、922Rによって抑制できる。
検査チップ2は、定量部71〜73のそれぞれによって定量された流体を、混合保持部16にて混合し、流路167を介して撹拌部91に向けて流す。又、検査チップ2は、定量部74〜76のそれぞれによって定量された流体を、混合保持部17にて混合し、流路177を介して撹拌部92に向けて流す。このため、検査チップ2は、複数の流体(例えば、試薬と検体)を定量部70にて定量した後、混合保持部15で混合し、撹拌部90で撹拌できる。このため、検査チップ2は、定量された複数の流体を撹拌して化学反応を発生させることができる。このため、検査チップ2は、複数の流体の化学反応の度合いを測定する用途に用いられる場合でも、複数の流体を短時間で良好に撹拌できる。
検査チップ2の測定部94、95の後面を構成する板材20、及び、フィルム291は、何れも透明の合成樹脂である。このため、検査装置1は、測定部94、95に外部から測定光67A、67Bを照射することによって、測定部94、95に保持された混合流体の光学測定を精度良く実行できる。
検査チップ2の撹拌部91、92の延びる方向は、互いに平行に配列される。この場合、撹拌部90が1つの場合と比べて、撹拌部90に保持可能な混合流体の量や、同時に撹拌処理可能な混合流体の種類を多くできる。又、撹拌部91、92を平行に配列することによって、検査チップ2のうち撹拌部91、92によって占有されるスペースを小さくできる。
撹拌部91の第1位置91Uは、第1位置91Uと第2位置91Lとを結ぶ線分方向91Mにおいて、水平軸線A2よりも上側に配置され、第2位置91Lは下流側に配置される(図13参照)。撹拌部92の第1位置92Uは、第1位置92Uと第2位置92Lとを結ぶ線分方向92Mにおいて、水平軸線A2よりも上側に配置され、第2位置92Lは下流側に配置される(図13参照)。この場合、検査装置1が水平軸線A2を中心として検査チップ2を回転させた場合において、遠心力ベクトルの方向における第1位置91Uと第2位置91Lとのそれぞれの離隔の程度を、より大きくできる。従って、検査チップ2は、撹拌子91A、92Aに対してより大きな加速度を作用させることができるので、撹拌部91、92内の混合流体を撹拌子91A、92Aによって良好に撹拌できる。
撹拌部91は、開口端部911を前面に有する。このため、開口端部911の対向する2つの端部911A、911Bが広がるように弾性変形させることによって、開口端部911によって形成される開口のうち中央近傍911Cの部分を介して、撹拌子91Aを撹拌部91内に導入できる。又、撹拌部92は、開口端部921を前面に有する。このため、開口端部921の対向する2つの端部921A、921Bが広がるように弾性変形させることによって、開口端部921によって形成される開口のうち中央近傍921Cの部分を介して、撹拌子92Aを撹拌部92内に導入できる。
なお、開口端部911の対向する2つの端部911A、911B間の距離L11、及び、開口端部921の対向する2つの端部921A、921B間の距離L21は、何れも、撹拌子91A、92Aの直径よりも小さい。更に、2つの端部911A、911Bのうち中央近傍911Cを除く部分の間隔は更に小さく、2つの端部921A、921Bのうち中央近傍921Cを除く部分の間隔は更に小さい。このため、検査チップ2は、撹拌部90内において撹拌子91A、92Aが移動する場合において、撹拌子91A、92Aが撹拌部90から外れることを抑制できる。
撹拌部91において、総量体積Vsumは最小容積V11、V13よりも常に小さくなる(図20、図21参照)。又、撹拌部92において、総量体積Vsumは最小容積V12、V14よりも常に小さくなる(図20、図21参照)。この場合、定量部70から混合保持部15を介して混合流体が撹拌部90に流入したときに、撹拌部90から混合流体は溢れない。このため、検査装置1による撹拌制御の実行中において、混合流体40A、40Bが撹拌部90から混合保持部15を介して定量部70側に流出することを抑制できる。又、検査装置1は、撹拌制御の実行中において、混合流体40A、40Bが撹拌部91から流路910、920を介して測定部93側に流出することを抑制できる。
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。検査チップ2において注入部10、定量部70、撹拌部90、及び、測定部93のそれぞれの数は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、検査チップ2は、注入部10、定量部70、撹拌部90、及び、測定部93をそれぞれ1つずつ有してもよい。又、検査チップ2は、流体の定量、混合、及び、撹拌の用途で使用されてもよい。この場合、検査チップ2は、測定部93を備えていなくてもよい。更に、検査チップ2は、流体を撹拌する用途でのみ使用されてもよい。この場合、検査チップ2は、撹拌部90、撹拌部90に流体を流入させるための流路、及び、撹拌部90から流体を流出させるための流路のみを備えていてもよい。このため、検査チップ2は、定量部70及び測定部93を備えていなくてもよい。
検査装置1は、重力Gよりも大きい遠心力Cを検査チップ2に作用させることによって、検査チップ2内で流体を移動させ、且つ、撹拌子91A、92Aを往復移動させた。これに対し、検査装置1は、遠心力Cが重力Gと同程度となるように公転速度を制御してもよい。そして、検査装置1は、遠心力Cと重力Gとの合力に基づいて、検査チップ2内で流体を移動させ、且つ、撹拌子91A、92Aを往復移動させてもよい。又、検査装置1は、検査チップ2に作用する重力のみによって、検査チップ2内で流体を移動させてもよい。又、検査装置1は、検査チップ2に作用する重力のみによって、撹拌部91、92内で撹拌子91A、92Aを往復移動させてもよい。この場合、検査装置1は、角度変更機構34のみ備えていればよく、垂直軸線A1を中心として検査チップ2を公転させる機構(主軸モータ35等)を備えていなくてもよい。
撹拌部91の右面913、及び、撹拌部92の右面923は、平坦でなくてもよい。例えば、右面913、923に凸部が設けられていてもよい。この場合、右面913、923に設けられた凸部に沿って撹拌子91A、92Aを移動させることによって、撹拌子91A、92Aの移動方向に変化を与えることができる。この場合、撹拌子91A、92Aは、撹拌部90内の混合流体40A、40Bを更に良好に撹拌できる。
撹拌子91A、92Bは金属に限定されず、流体の比重よりも大きい他の材質であってもよい。又、撹拌子91A、92Bの形状は球状に限定されず、撹拌部90内を転がって移動することが可能な他の形状であってもよい。例えば、撹拌子91A、92Aは円筒状であってもよい。この場合、撹拌子91A、92Aを球状とした場合と同様、往復動作する撹拌子91A、92Aが撹拌部91、92から受ける摩擦力を小さくできる。従って、検査チップ2は、チップ角度の相対移動範囲が小さい場合でも、撹拌子91A、92Aを強い力で且つ高速に往復動作させることができる。なお、撹拌子91A、92Aを円筒状とした場合、中心軸は、水平軸線A2と平行に配置されることが好ましい。
撹拌子91Aの前後方向の移動は、規制部911R、912Rによって規制された。撹拌子92Aの前後方向の移動は、規制部921R、922Rによって規制された。これに対し、撹拌子91A、92Aの前後方向への移動を規制する別部材が、撹拌部91、92に設けられてもよい。例えば規制部は、開口端部911の端部911B側、開口端部921の端部912A側、開口端部921の端部921B側、開口端部922の端部922A側に設けられてもよい。又、例えば、撹拌部91の開口端部911の端部911A、911Bの間隔が、外側に向けて次第に小さくなる形状を有してもよい。開口端部912の端部912A、912Bの間隔が、外側に向けて次第に小さくなる形状を有してもよい。
検査装置1は、検査チップ2の撹拌部90によって混合流体が撹拌された後、撹拌部90に測定光を照射することによって光学測定を行ってもよい。この場合、検査チップ2に測定部93は設けられていなくてもよい。
上記において、定量部71〜73は、流路161〜163を介して混合保持部16に通流した。定量部71〜73のそれぞれで定量された流体は、混合保持部16で混合され、流路167を介して撹拌部91に流入した。同様に、定量部74〜76は、流路174〜176を介して混合保持部17に通流した。定量部74〜76のそれぞれで定量された流体は、混合保持部17で混合され、流路177を介して撹拌部92に流入した。これに対し、図23に示すように、流路161〜163は、撹拌部91に直接連通してもよい。即ち、定量部71〜73のそれぞれで定量された流体は、撹拌部91において混合され、同時に撹拌されてもよい。又、流路174〜176は、撹拌部92に直接連通してもよい。即ち、定量部74〜76のそれぞれで定量された流体は、撹拌部92において混合され、同時に撹拌されてもよい。これらの場合、検査チップ2における混合保持部15が不要となるので、検査チップ2を小型化できる。又、定量された流体が混合されてから撹拌するまでの時間を短縮できる。
検査チップ2において、撹拌部91、92の延びる方向は交差していてもよい。この場合、例えば、チップ角度が90度のとき(S8)、第1位置91Uが第2位置91Lよりも遠心力ベクトルの下流側に配置され、第2位置92Lが第1位置92Uよりも遠心力ベクトルの下流側に配置されてもよい。この場合、撹拌子91Aは第1位置91Uに移動し、撹拌子92Aは第2位置92Lに移動する。一方、チップ角度が(90−θ2)度のとき(S7)、第2位置91Lは第1位置91Uよりも遠心力ベクトルの下流側に配置され、第1位置92Uは第2位置92Lよりも遠心力ベクトルの下流側に配置されてもよい。この場合、撹拌子91Aは第2位置91Lに移動し、撹拌子92Aは第1位置92Uに移動する。又、上記の場合、撹拌部91、92のそれぞれの延びる方向のなす角度を、(2×θ2)度としてもよい。
撹拌部91の開口端部911によって形成される開口、及び、撹拌部92の開口端部921によって形成される開口は、撹拌子91A、92Aの導入後、蓋部材によって閉塞されてもよい。
測定部93において混合流体を保持することによって、混合流体を成分毎に分離させてもよい。この場合、検査チップ2は、撹拌部90による撹拌によって混合流体に化学反応を発生させた後、この混合流体を、測定部93において成分毎に分離できる。従って、検査装置1は、分離された成分毎に測定光を透過させることによって、光学測定を成分毎に実行できる。なお、上記において、撹拌部90の下流側、且つ、測定部93の上流側に、混合流体を成分毎に分離するための分離部が設けられてもよい。撹拌部90において撹拌された混合流体は、分離部によって成分毎に分離されてもよい。
撹拌部91において、総量体積Vsumと最小容積V11、V13とは略同一であってもよい。同様に、撹拌部92において、総量体積Vsumと最小容積V12、V14とは略同一であってもよい。更に、総量体積Vsumが最小容積V11、V13より僅かに大きくてもよい。この場合、定量部70から混合保持部15を介して混合流体が撹拌部90に流入したときに、撹拌部90から混合流体が僅かに溢れることになる。しかし、定量部70に逆流しない範囲で混合流体が溢れるのであれば問題ない。同様に、総量体積Vsumが最小容積V12、V14より僅かに大きくてもよい。この場合、撹拌制御の実行中において、混合流体40A、40Bが撹拌部91から測定部93側に僅かに流出することになる。しかし、光学測定に影響を及ぼさない範囲であれば問題ない。
<その他>
検査システム3は、本発明の「撹拌システム」の一例である。検査装置1は、本発明の「撹拌装置」の一例である。水平軸線A2は、本発明の「第1軸」の一例である。角度変更機構34は、本発明の「第1回転機構」の一例である。定量部70は、本発明の「第1流体保持部」の一例である。混合保持部15、流路167、177は、本発明の「第1流路」の一例である。90度は、本発明の「第1角度」「第3角度」の一例である。(90−θ2)度は、本発明の「第2角度」の一例である。垂直軸線A1は、本発明の「第2軸」の一例である。主軸モータ35は、本発明の「第2回転機構」の一例である。流路910、920は、本発明の「第2流路」の一例である。測定部94、95は、本発明の「第2流体保持部」の一例である。0度は、本発明の「第4角度」の一例である。最小容積V11、V13は本発明の「第1体積」の一例である。最小容積V12、V14は本発明の「第2体積」の一例である。