以下に添付図面を参照して、この発明にかかる検査対象受体、検査装置および検査方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
(実施形態)
(検査装置の構成)
図1〜図3を用いて、本発明にかかる検査対象受体としての検査チップ内部に収容される検査対象となる検査液体に対して、所定の検査をおこなうために遠心力を印加する検査装置の概要について説明する。なお、本発明の実施形態では、検査液体として、血液など検査・分析の対象となる検体あるいは検体中の特定成分や液体試薬などを用いる場合について説明する。
図1は、本発明の実施形態の検査チップが定常状態にある検査装置の一例を示す側面図である。図2は、本発明の実施形態の検査チップが変位状態にある検査装置の一例を示す側面図である。図3は、本発明の実施形態の検査装置の一例を示す平面図である。なお、説明を簡略とするため、図1および図2に示す上部筐体300は仮想線で示し、図3では上部筐体300の天板が取り除かれた状態を示す。
検査装置100は、上部筐体300と、検査装置100の駆動を制御する駆動機構を備える下部筐体101と、駆動機構の制御によって垂直軸Lを中心として回転可能なターンテーブル102と、検査チップ400を内部に保持する箱状のホルダ103と、検査チップ400の保持角度を変更させる角度変更機構150と、検査装置100における遠心処理や計測処理などを制御する制御装置180とを備える。なお、図示の例は、検査装置100の説明のための概略を示すものであり、同等の機能を備える構成であれば各部位の寸法比率や詳細形状などはこれに限ることはない。
検査装置100は、ホルダ103に保持される検査チップ400から離間した垂直軸Lを中心とした回転によって、検査チップ400に遠心力を付与する。また、検査装置100は、検査チップ400を水平軸Tまわりに回転させることによって、検査チップ400に付与する遠心力の方向である遠心方向を切り替えることができる。
ホルダ103は、たとえば、底板と上板と側壁とで外形が形成された箱状体である。具体的には、ホルダ103は、平面視長方形に形成された検査チップ400を内部に収納および保持できるように、検査チップ400より一回り大きい平面視長方形に形成された箱状の部材である。
検査装置100は、床面に設置され、下部筐体101内部にターンテーブル102を垂直軸Lまわりに回転させる駆動機構を備える。ターンテーブル102は、下部筐体101の上面側に設けられ、L型プレート151によってホルダ103を保持する円盤状の回転体である。具体的には、ターンテーブル102は、制御装置180から入力される制御信号にしたがって制御される駆動機構によって、垂直軸Lまわりに回転する。
角度変更機構150は、ターンテーブル102に設けられたホルダ103を、水平軸Tまわりに回転させる駆動機構である。具体的には、角度変更機構150は、ターンテーブル102の上面に固定された一対のL字型板状の連結金具であるL型プレート151を有する。L型プレート151は、ターンテーブル102の中心近傍に固定された基部から上方に延設され、上端部がターンテーブル102の径方向外側に延設されている。
L型プレート151の間には、内軸104に固定されたラックギア152が設けられている。ラックギア152は、縦長の金属製の板状部材であり、両端面にギアが各々刻まれている。なお、L型プレート151を一対設けることとして説明したが、これに限ることはない。具体的には、1つ以上であればよく、複数対であってもよい。対とすることで、回転時にバランスをとることができる。
L型プレート151の延設方向の先端側では、ギア153によって水平軸Tを中心にホルダ103を回転自在に保持している。ギア153と、ラックギア152との間には、L型プレート151によって支持されたピニオンギア154が介在している。ピニオンギア154は、ギア153およびラックギア152にそれぞれ噛合している。
ラックギア152の上端部には、柱状のガイド部材155が設けられている。ガイド部材155は、上下方向に摺動可能に保持されている。ラックギア152の上下動に連動して、ピニオンギア154、ギア153がそれぞれ従動回転することで、ホルダ103が水平軸Tを中心に回転する。
本発明の実施形態では、制御装置180による制御にしたがって、駆動機構によってターンテーブル102を回転駆動するのに伴い、検査チップ400を保持したホルダ103が垂直軸Lを中心とした回転である公転をする。検査チップ400には、公転によって遠心力が付与される。
制御装置180による制御にしたがって、角度変更機構150によってガイド部材155を摺動するのに伴い、ラックギア152、ピニオンギア154、ギア153が従動回転し、検査チップ400を保持したホルダ400が水平軸Tを中心とした回転である自転をする。自転によって、検査チップ400に作用する遠心方向が相対変化する。
検査装置100は、ターンテーブル102および角度回転機構150による検査チップ400の公転および自転によって印加される遠心力によって、検査チップ400内部の流体回路に収容された検査液体に対して、各部への移動、複数の相に分離する遠心分離、薬剤との混合、希釈、定量、保持、各種測定などがおこなわれる。
本発明の実施形態において、ホルダ103の状態を説明するため、図示の下方向である重力方向となす角度である自転角度として説明する。図1に示すように、ラックギア152が可動範囲の最下端まで下降した状態であるとき、ホルダ103は、自転角度が0度である定常状態となる。なお、本発明の実施形態では、水平軸Tまわりに自転する構成としたが、これに限ることはない。具体的には、各ホルダ103について垂直軸Lと平行な軸まわりに自転して遠心方向を変更させる構成としてもよい。
図2に示すように、ラックギア152が可動範囲の最上端まで上昇した状態であるとき、ホルダ103は、自転角度が90度である変位状態となる。具体的には、変位状態では、ホルダ103は、定常状態から水平軸Tまわりに90度回転した状態である。
すなわち、ホルダ103が自転可能な角度幅である自転可能範囲は、定常状態の0度から、変位状態の90度までとなる。なお、本発明の実施形態では、自転可能範囲を0度から90度として説明するが、これに限ることはなく、検査内容に応じた検査チップ400内での検査液体の移動方向に基づいて定められることとしてもよい。なお、本発英の実施形態では、図1および図2で示したホルダ103のうち、紙面右側のホルダ103について説明する。具体的には、自転角度が0度から90度方向に回転する場合は、反時計回りとし、90度から0度方向に回転する場合は時計回りとして説明する。
上部筐体300は、下部筐体101の上側に固定されており、検査チップ400に収容された検査液体を光学的に計測する計測部310が内部に設けられている。計測部310は、制御装置180から入力される制御信号にしたがって、検査液体に対して光学的計測をおこなう。
詳細には、上部筐体300は、ターンテーブル102の回転中心である垂直軸Lに対して、ホルダ103が回転される範囲の外側に設けられている。上部筐体300は、ターンテーブル102の外周側において平面視で円弧上に延びる対向壁321を有する。
上部筐体300に設けられた計測部310は、計測位置となる所定位置でホルダ103交差する方向に延びる光を、計測対象となる検査チップ400に透過させることで、検査チップ400内の検査液体を計測する。
計測部310は、発光部313によって計測光を発する光源311と、受光部314によって光源311から発せられた計測光を検出する光センサ312とを有する。なお、本発明の実施形態では、検査チップ400を透過した計測光を計測することとして説明するが、これに限ることはなく、反射する計測光を計測することとしてもよい。
光源311および光センサ312は、ホルダ103の回転範囲の外側に配置されている。光源311と、光センサ312とを結ぶ光路の高さ位置は、定常状態であるホルダ103を基準として、ホルダ103に保持される検査チップ400における計測対象となる検査液体が収容される部位の高さ位置に応じて設定される。
検査装置100の外部に接続された制御装置180は、計測部310によって計測された計測光に基づいて各種測定をおこなう。すなわち、制御装置180は、図示しないCPU、RAM、ROMなどを内蔵して、検査チップ400が保持された検査装置100における公転や自転を制御して、各種測定をおこなう。
制御装置180は、利用者が検査装置100の各種動作を指示するための操作部を備えている。本発明の実施形態では、制御装置180を外部接続することとしたが、これに限ることはなく、制御装置180の機能を検査装置100内部に備えることとしてもよい。
なお、図1〜図3を用いて説明した本発明の実施形態では、下部筐体101の上面側に円盤状のターンテーブル102を備えることとして説明したが、これに限ることはない。すなわち、検査チップ400に遠心力を印加できる構成であればよく、筐体やターンテーブル102の形状は限定することはない。また、ホルダ103は、ターンテーブル102の円周近傍に一対設けることとしたが、これに限ることはない。すなわち、一つであったり複数であったりしてもよく、検査チップ400に所望の遠心力を印加できる配置であればよい。
(検査チップ400の構成)
図4を参照して、本発明の実施形態の検査チップ400の構成について説明する。図4は、本発明の実施形態の検査チップの内部構造の一例を示す説明図である。図4では、図1〜3に示した検査装置100に検査チップ400を設置する場合における検査チップ400の平面視について説明する。
図4において、検査チップ400は、平面視長方形で所定の厚みを有する板部材から構成されており、所定の検査の対象となる検査液体について収容、移動、測定などを実行するための流体回路を備えている。板部材の材質は、たとえば、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの有機材料や、シリコン、ガラス、石英などの無機材料など特に制限されない。
また、検査チップ400は、図4における紙面手前側である検査チップ400の表面側は、内部に検査液体を保持するために上カバー401で流体回路を覆う構成となっている。なお、検査チップ400の流体回路は、説明のための概略を示すものであり、特に記載のない限り各部位の寸法比率や容量などはこれに限ることはない。
検査チップ400は、板部材の厚み方向における所定深さの凹部からなる検査チップ400内部の流体回路として、図示しない注入口から注入される検査液体を一時保持する供給部410,420,430と、供給部410,420,430の各供給口413,423,433から供給される検査液体を定量する複数の各定量部411,421,431と、定量部411,421,431に供給される検査液体のうち余剰分を貯留可能な貯留部418,428,438と、定量部411,421,431で定量された検査液体に対して、次工程として所定の計測を実施するために収容可能な収容部450と、定量部411,421,431から収容部450への検査液体の移動経路となる第一案内経路416,426,436と、定量部411,421,431から貯留部418,428,438への検査液体の移動経路となる第二案内経路417,427,437とを備えている。
なお、本発明の実施形態では、収容部450で、各定量部411,421,431から流入される検査液体の混合や分析のための計測などをおこなうこととして説明するが、これに限ることはない。具体的には、たとえば、収容部450までの経路に、混合、分析、遠心分離、希釈、保持などの各種工程を実施するため部位があってもよいし、収容部450で混合や計測以外の各種工程を実施することとしてもよい。また、収容部450は複数であってもよい。
定量部411,421,431は、それぞれ異なる容量である。具体的には、たとえば、定量部411は、定量部421よりも容量が大きく、定量部421は、定量部431よりも容量が大きい構成である。各定量部411,421,431は、供給部410,420,430から供給される検査液体の定量をおこなう。詳細は図5〜図10を用いて説明するが、定量部411,421,431は、それぞれが互いに平行な定量液面412,422,432を有し、異なる容量の検査液体を同一の定量工程で定量する構成である。
定量液面412,422,432は、第一案内経路416,426,436とそれぞれ第一経路角θ11,θ21,θ31を構成する。具体的には、第一経路角θ11,θ21,θ31は、定量液面412,422,432と、第一案内経路416,426,436を区画形成する、図4における下側の経路面となす角である。第一経路角θ11,θ21,θ31は、それぞれ異なる角度で構成される。具体的には、容量の大きい定量部の定量液面と、容量の大きい定量部に接続される第一案内経路となす第一経路角より、容量の小さい定量部の定量液面と、容量の小さい定量部に接続される第一案内経路となす第一経路角の方が大きく構成されている。図示の例では、第一経路角θ31は、第一経路角θ21よりも大きく、第一経路角θ21は、第一経路角θ11よりも大きい構成である。
供給部410,420,430は、区画面によって区画され、それぞれ定量部411,421,431に対して検査液体を供給するための供給口413,423,433を備える。区画面のうち、供給口413,423,433側である供給底面414,424,434は、定量液面412,422,432と平行な平行線415,425,435とそれぞれ供給底面角θ1,θ2,θ3を構成する。図示の例では、供給底面414,424,434は、区画面のうち、ホルダ103にセットされた状態において、供給部410,420,430から定量部411,421,431へ検査液体を供給する前におけるターンテーブル102の外周側に位置する底面である。
供給底面角θ1,θ2,θ3は、それぞれ異なる角度で構成される。具体的には、容量の大きい定量部に対する供給部の供給底面角より、容量の小さい定量部に対する供給部の供給底面角の方が大きく構成される。具体的には、供給底面角θ3は、供給底面角θ2よりも大きく、供給底面角θ2は、供給底面角θ1よりも大きい構成である。
なお、本発明の実施形態では、検査液体は、血液などの検体や、薬剤などの試料や、混合液体などであってもよく、所望の検査に応じて利用者によって適宜選択可能である。また、検査チップ400は、供給部410,420,430や、定量部411,421,431や、貯留部418,428,438や、収容部450など、各部位の数量や経由する経路の数量なども所望の検査に応じて適宜設定可能としてもよい。また、検査チップ400は、所望の検査に応じて、他の液体との混合、分析、遠心分離、希釈、保持などの各種工程を実施する部位を有する構成としてもよい。
なお、各構成要素と、各機能を対応付けて説明すると、図4に示した定量部411,421,431によって、本発明の定量部の機能を実現する。供給部410,420,430によって、本発明の供給部の機能を実現する。第一案内経路416,426,436によって、本発明の第一案内経路の機能を実現する。第二案内経路417,427,437によって、本発明の第二案内経路の機能を実現する。
(検査装置100の処理の内容)
図5〜図10を用いて、本発明の実施形態の検査装置の処理の内容について説明する。図5は、本発明の処理の内容を示すフローチャートである。図5のフローチャートにおいて、まず、検査装置100での処理前に、利用者は、注入口から検査チップ400内部の供給部410,420,430へ検査液体を注入する(ステップS501)。ステップS501において、検査液体の注入が完了すると、利用者は、ホルダ103に検査チップ400をセットする(ステップS502)。
ステップS502において、検査チップ400のセットが完了すると、検査装置100の処理を実行するため、利用者は、制御装置180の操作部を操作して、検査装置100の電源をONする(ステップS503)。そして、利用者は、制御装置180の操作部を操作する。制御装置180のCPUは、ROMに記憶されている制御プログラムの制御にしたがって検査装置100を制御して、検査チップ400に所定の遠心力の印加を開始する(ステップS504)。
ここで、図6〜図10を用いて、本発明の実施形態の検査装置100による遠心力の印加(図5に示したステップS504)によって実施される検査液体に対する各工程について説明する。具体的には、図6〜図10では、供給部410,420,430に注入された検査液体について、各定量部411,421,431への供給前である供給前工程、供給部410,420,430から各定量部411,421,431へ供給される供給工程、供給工程の後に各定量部411,421,431において定量される定量工程について説明する。
図6は、本発明の実施形態の検査装置による遠心力の印加における供給前工程の検査チップおよび検査液体の一例を示す説明図である。図7〜図9は、本発明の実施形態の検査装置による遠心力の印加における供給工程の検査チップおよび検査液体の一例(その1〜3)を示す説明図である。図10は、本発明の実施形態の検査装置による遠心力の印加における定量工程の検査チップおよび検査液体の一例を示す説明図である。なお、図6〜図10は、説明のために概略を示すものであり、特に記載のない限り検査チップ400の各部位および検査液体の寸法比率や容量などはこれに限ることはない。
図6における供給前工程において、供給部410,420,430に注入された検査液体610,620,630は、遠心方向601に付与される遠心力によって、供給部410,420,430に保持される。具体的には、検査装置100は、駆動機構および角度変更機構150の制御によって、定常状態で保持された検査チップ300に対してターンテーブル102を回転させて遠心方向601の遠心力を付与する。検査液体610,620,630は、遠心力によって供給部410,420,430の遠心方向601側の壁部に保持され、供給口413,423,433から定量部411,421,431へ供給されない。
図7〜9における供給工程において、検査装置100は、定常状態から変位状態の間で検査チップ400の自転角度を変化させるよう制御して、検査液体610,620,630に付与する遠心力の方向を制御する。
具体的には、検査装置100は、駆動機構および角度変更機構150の制御によって、反時計回りに検査チップ400を自転させて、遠心方向701、遠心方向801、遠心方向901の順に検査液体610,620,630に付与する遠心力の方向を制御する。検査液体610,620,630は、供給工程で付与される遠心力によって、供給部410,420,430から定量部411,421,431へ移動する。すなわち、異なる角度である供給底面角θ1,θ2,θ3によって、供給部410,420,430から定量部411,421,431へ検査液体610,620,630が供給開始される際の遠心力の方向は異なり、容量の小さな定量部の方が容量の大きな定量部よりも早い段階で供給開始される。
図7に示す供給工程において、検査装置100は、検査液体610,620,630に付与する遠心力の方向を、定常状態の自転角度による遠心方向601から遠心方向701に変化させる。遠心方向701の遠心力によって、各検査液体610,620,630は、供給部410,420,430内において遠心方向701と垂直な液面711,721,731を有する。
供給部410,420,430の供給底面414,424,434は、容量の大きい定量部に対する供給部の供給底面角より、容量の小さい定量部に対する供給部の供給底面角の方が大きい構成である。したがって、遠心方向701は、供給底面434となす角は垂直となり、供給底面414,424となす角は鋭角となって、定量部431に対してのみ検査液体630の供給が開始される。具体的には、検査液体630は、供給口433から延びる遠心方向701と平行な破線732に沿って、定量部431へ供給される。検査液体610,620は、供給口413,423に達することなく、供給底面414,424によって供給部410,420内に保持される。
破線732は、定量部431の内部の壁面と交差しており、検査液体630を確実に定量部431へ供給する。換言すれば、供給部410,420,430から定量部411,421,431へ検査液体610,620,630を供給する供給工程において、収容部450への流出を防止することができる。また、破線732と、定量部431の内部の壁面とが交差する交点は、定量部431における紙面下方の底面から離れているため、供給中に気泡を発生させることを防ぐことができる。
図8に示す供給工程において、検査装置100は、検査液体610,620,630に付与する遠心力の方向を、図7に示した遠心方向701から遠心方向801に変化させる。遠心方向801の遠心力によって、各検査液体610,620,630は、遠心方向801と垂直な液面811,821,831を有する。
遠心力の方向を遠心方向701から遠心方向801に変化させることにより、供給底面434となす角は鈍角となり、供給底面424となす角は垂直となり、供給底面414となす角は鋭角となる。
したがって、定量部431に対する検査液体630の供給は終了する。なお、特に図示はしないが、定量部431に供給された検査液体630のうち、液面831より余剰となる分があった場合は、第二案内経路437を介して貯留部438へと移動することとなる。遠心力の遠心方向701から遠心方向801への変化は、所定タイミングで実行され、たとえば、供給部430から定量部431への検査液体630の供給が終了した段階でおこなわれることとしてもよい。
遠心方向801と、供給底面424となす角が垂直となると、定量部421に対して検査液体620の供給が開始される。具体的には、検査液体620は、供給口423から延びる遠心方向801と平行な破線822に沿って、定量部421へ供給される。検査液体610は、供給口413に達することなく、供給底面414によって供給部410内に保持される。
すなわち、破線822は、定量部421の内部の壁面と交差しており、検査液体620を確実に定量部421へ供給する。定量部411に対しては、検査液体610は供給されず、供給部410に保持される。
図9に示す供給工程において、検査装置100は、検査液体610,620,630に付与する遠心力の方向を、図8に示した遠心方向801から遠心方向901に変化させる。遠心方向901の遠心力によって、各検査液体610,620,630は、遠心方向901と垂直な液面911,921,931を有する。
遠心力の方向を遠心方向801から遠心方向901に変化させることにより、供給底面424,434となす角は鈍角となり、供給底面414となす角は垂直となる。
したがって、定量部431のおける液面831と、液面931との間に存在した分の検査液体630は、第二案内経路437を介して貯留部438へ移動する。
また、定量部421に対する検査液体620の供給は終了する。なお、特に図示はいないが、定量部421に供給された検査液体620のうち、液面921より余剰となる分があった場合は、第二案内経路427を介して貯留部428へと移動することとなる。遠心力の遠心方向801から遠心方向901への変化は、所定タイミングで実行され、たとえば、供給部420から定量部421への検査液体620の供給が終了した段階でおこなわれることとしてもよい。
遠心方向901と、供給底面414となす角が垂直となると、定量部411に対して検査液体610の供給が開始される。具体的には、検査液体610は、供給口413から延びる遠心方向901と平行な線912に沿って、定量部411へ供給される。
すなわち、破線912は、定量部411の内部の壁面と交差しており、検査液体610を確実に定量部411へ供給する。遠心方向901の遠心力によって、供給部410内の検査液体610は、定量部411へ供給される。
このように、図7〜図9に示した供給工程によって、供給部410,420,430に保持されていた検査液体610,620,630は、定量部411,421,431または貯留部418,428,438へと移動する。
供給工程では、容量の小さい定量部から順に検査液体を供給する構成である。すなわち、検査液体の注入開始の方向と、定量液面とのなす角は、容量の小さい定量部の方が容量の大きい定量部よりも小さく、容量の小さい定量部であっても気泡を発生させることなく検査液体を注入することができる。具体的には、図7に示した破線732と、定量液面432とのなす角を小さくすることで、容量の小さな定量部431であっても、検査液体630に気泡を発生させることなく確実に供給をおこなうことができる。すなわち、容量の大きい定量部よりも脱気しにくく、気泡の発生が問題となるような容量の小さい定量部であっても気泡を発生させずに、正確な定量をおこなうことができる。
供給工程では、定量部内部に検査液体の供給が開始される点は、容量の小さい定量部の方が容量の大きい定量部より第一案内経路に近い構成である。換言すれば、容量の小さい定量部の方が容量の大きい定量部と比較して、定量部の底面から離れた壁面で検査液体の供給を開始することとなる。具体的には、図7〜図9に示した破線732,832,932のうち、破線732と、定量部431の壁面との交点と、第一案内経路436との距離が最も小さい構成となる。このような構成により、容量の小さな定量部431であっても、検査液体630に気泡を発生させることなく確実に供給をおこなうことができる。
また、定量液面412,422,432と、第一案内経路416,426,436となす角である第一経路角θ11,θ21,θ31は、容量の小さい定量部431の定量液面432と、第一案内経路436との角である第一経路角θ31が最も大きい構成となる。このような構成によって、気泡を発生させないために、第一案内経路436に近い位置で検査液体630の供給が開始された場合であっても、収容部450への意図しない検査液体630の流出を防ぐことができる。
つぎに、図10に示す定量工程によって、検査装置100は、遠心力の方向が定量液面412,422,432と垂直となる遠心方向1001となるよう制御する。具体的には、駆動機構および角度変更機構150の制御によって、反時計回りに検査チップ400を自転させて、を遠心方向1001とする遠心力を付与させることによって、各定量部411,421,431の定量液面412,422,432より上方に存在した分の検査液体610,620,630が貯留部418,428,438へ移動して、定量が実施される。
図10に示すように、供給部410,420,430の供給口413,423,433から遠心方向1001へ延びる破線1010,1020,1030と、定量液面412,422,432との公転は、第一案内経路416,426,436よりも第二案内経路417,427,437の方になるよう構成されている。すなわち、供給工程、定量工程の最終段階に、収容部450への検査液体610,620,630が流出することを確実に防ぐことができる構成である。
つぎに、特に図示はしないが、検査装置100は、定常状態と変位状態の間で自転角度を調整して遠心力の方向を制御し、図10に示した定量工程によって定量された検査液体610,620,630を収容部450へと移動させる。
図5に戻って、ステップS504における遠心力の印加の後、所定の処理を経て遠心力の印加を終了する(ステップS505)。遠心力の印加終了は、たとえば、検査液体610,620,630に対して所定のプログラムに基づいた必要な処理を経て終了することとなる。
ステップS505において、遠心力の印加が終了すると、検査装置100は、検査液体610,620,630のうち計測部310による計測の対象となる検査液体610,620,630の保持された収容部450が、光源311と、光センサ312とを結ぶ光路上となるように検査チップ400を移動する(ステップS506)。
ステップS506において、検査チップ400を移動すると、検査装置100は、制御装置180の制御にしたがって、計測部310によって検査液体610,620,630の測定をおこなう(ステップS507)。検査液体610,620,630の測定は、たとえば、光源311から検査チップ400内部の検査液体610,620,630に対して光を照射する。そして、検査液体610,620,630によって透過された光を光センサ312によって検出することによっておこなわれる。
ステップS507において、計測部310によって測定された情報は制御装置180に出力される。制御装置180は、測定された情報に基づいて、検査液体610,620,630の検査結果を出力し(ステップS508)、一連の処理を終了する。検査結果は、たとえば、測定された情報を所定のプログラムによって解析することによって取得し、図示しない表示部に表示することとしてもよい。
なお、本発明の各構成要素における処理と、本発明の実施形態の各処理または各機能とを関連付けて説明すると、ステップS504、ステップS505、ステップS506およびステップS507における制御装置180のCPUによる検査装置100の駆動機構および角度変更機構150の制御によって、本発明の自転手段による自転工程、公転手段による公転工程、回動制御手段による回動制御工程の処理が実行される。
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、容量の異なる複数の定量部411,421,431で検査液体610,620,630を定量する場合であっても、気泡の発生を抑制して、正確な定量をおこなうことができる。特に、容量の小さな定量部430の定量液面432と、検査液体630の供給方向とのなす角を小さくすることで、確実に気泡の発生を抑制する。また、気泡の影響を受けやすい容量の小さな定量部430ほど、第一案内経路436に近い位置で供給を開始して、気泡の発生を抑える。また、気泡の影響を受けにくい容量の大きな定量部410に対しては、定量液面412と、検査液体610とのなす角を垂直に近づけることで、確実に検査液体610を供給することができる。
また、各定量部411,421,431に対して、検査液体610,620,630の供給が開始される位置は、各定量部411,421,431内部であることから、確実な定量をおこなうことができる。
また、定量工程における各定量液面412,422,432と、各供給口413,423,433からの垂線1010,1020,1030との交点は、第二案内経路417,427,437に近い構成であるため、収容部450への意図しない流出の防止を確実におこなって、検査精度の向上を図ることができる。
なお、上述で説明した方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することにより実現することができる。このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。またこのプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することが可能な伝送媒体であってもよい。