以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去剤、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る炭素/ポリマー複合体、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去シート部材及び本発明の第1の態様〜第15の態様に係る濾材、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去剤、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る炭素/ポリマー複合体、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去シート部材及び本発明の第1の態様〜第4の態様に係る濾材)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.実施例3(実施例1の別の変形)
5.実施例4(実施例1の更に別の変形)
6.実施例5(実施例1の更に別の変形)
7.実施例6(本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材)
8.実施例7(本発明の第9の態様〜第15の態様に係る濾材)
9.実施例8(実施例1〜実施例7の変形)、その他
[本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去剤、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る炭素/ポリマー複合体、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去シート部材及び本発明の第1の態様〜第15の態様に係る濾材、全般に関する説明]
以下の説明において、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去剤を総称して、単に、『本発明の汚染物質除去剤』と呼ぶ場合があるし、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る炭素/ポリマー複合体を総称して、単に、『本発明の炭素/ポリマー複合体』と呼ぶ場合があるし、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去シート部材を総称して、単に、『本発明の汚染物質除去シート部材』と呼ぶ場合があるし、本発明の第1の態様〜第15の態様に係る濾材を総称して、単に、『本発明の濾材』と呼ぶ場合がある。また、本発明の汚染物質除去剤、本発明の炭素/ポリマー複合体、本発明の汚染物質除去シート部材及び本発明の濾材を総称して、単に、『本発明』と呼ぶ場合があるし、本発明の汚染物質除去剤、本発明の炭素/ポリマー複合体、本発明の汚染物質除去シート部材及び本発明の第1の態様〜第4の態様、第9の態様〜第15の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料を総称して、『本発明における多孔質炭素材料』と呼ぶ場合がある。
本発明の第1の態様に係る汚染物質除去剤、本発明の第1の態様に係る炭素/ポリマー複合体、本発明の第1の態様に係る汚染物質除去シート部材あるいは本発明の第1の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料にあっては、限定するものではないが、水銀圧入法による細孔の容積が1.5cm3/グラム以上であることが好ましい。また、MP法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であることが好ましい。
上記の好ましい形態を含む本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去剤あるいは本発明の第1の態様〜第4の態様、第9の態様〜第15の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料にあっては、限定するものではないが、多孔質炭素材料の嵩密度は0.1グラム/cm3乃至0.8グラム/cm3であることが好ましい。多孔質炭素材料の嵩密度を上記の範囲のとおりに規定することで、多孔質炭素材料によって流体の流れが阻害される虞が無くなる。即ち、多孔質炭素材料に起因した流体の圧力損失を抑制することができる。
以上に説明した好ましい形態を含む本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材において、多孔質炭素材料は、上述したとおり、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)から成る群から選択された少なくとも1種類の成分を含む植物を原料としており、このような植物原料を用いることで、濾材として用いる場合、多孔質炭素材料から濾過水にミネラル成分が多く溶出する結果、濾過水の硬度の制御を行うことができる。そして、この場合、硬度0.1以下の水(試験用水)50ミリリットルに濾材を1グラム添加し、6時間、経過した後の硬度が5以上となる形態とすることができる。尚、多孔質炭素材料には、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)が、合計で0.4質量%以上を含まれることが好ましい。ここで、具体的には、植物原料として、ミカンの皮、オレンジの皮、グレープフルーツの皮といった柑橘類の皮、バナナの皮を挙げることができる。
また、このような本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料から、ミネラル補充を目的としたミネラル調整材としての機能性食品を含む各種の機能性食品、ミネラル補充を目的としたミネラル調整材としての化粧品を含む化粧品、化粧料等を構成することができる。尚、機能性食品においては、その他、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤、矯味剤、保存剤、安定化剤、着色剤、香料、ビタミン類、発色剤、光沢剤、甘味料、苦味料、酸味料、うまみ調味料、発酵調味料、酸化防止剤、酵素、酵母エキス、栄養強化剤が含まれていてもよい。機能性食品の形態として、粉末状、固形状、錠剤状、粒状、顆粒状、カプセル状、クリーム状、ゾル状、ゲル状、コロイド状を挙げることができる。化粧品として、例えば、化粧水や化粧水含浸パック、汗や油脂、口紅等の汚れ成分を除去するクレンジング剤を例示することができるし、化粧料におけるその他の成分として、疎水性の美容成分を有する物質(例えばダイゼイン、ゲニステイン)を挙げることができるし、保湿効果及び/又は抗酸化効果を有する成分として、ヒアルロン酸、アスタキサンチン、トコフェロール、トロロックス、コエンザイムQ10等の化粧水中に含まれる有効成分を挙げることができる。
本発明における多孔質炭素材料は、粒径が75μm以上であると規定されているが、係る規定は、JIS Z8801−1:2006 「試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい」に基づく。即ち、公称目開き75μmの金網(所謂200メッシュの金網)を使用して試験を行い、この金網を通過しない多孔質炭素材料が90質量%以上であるとき、粒径が75μm以上であると規定する。また、以下の説明において、このような多孔質炭素材料を、『200メッシュオン品』と呼び、200メッシュの金網を通過した多孔質炭素材料を、『200メッシュパス品』と呼ぶ。粒径測定に際しては、本発明における多孔質炭素材料が使用されている状態、即ち、1次粒子、及び、1次粒子が複数集合した2次粒子を含めての測定とする。
また、水銀圧入法による細孔の測定は、JIS R1655:2003「ファインセラミックスの水銀圧入法による成形体気孔径分布試験方法」に準拠する。具体的には、水銀ポロシメーター(PASCAL440:Thermo Electron社製)を用いて、水銀圧入法測定を行った。細孔測定領域を15μm〜2nmとした。
本発明の汚染物質除去剤は、例えば、水の浄化あるいは空気の浄化、広くは流体の浄化のために用いることができる。あるいは又、本発明の汚染物質除去剤は、例えば、有害物質や老廃物を除去することを目的とした除去剤として用いることができる。本発明の汚染物質除去剤の使用形態として、シート状での使用、カラムやカートリッジに充填された状態での使用、透水性を有する袋に納められた状態での使用、バインダー(結着剤)等を用いて所望の形状に賦形した状態での使用、粉状での使用を例示することができる。溶液中に分散させた汚染物質除去剤として用いる場合、表面を親水処理又は疎水処理して使用することができる。本発明の炭素/ポリマー複合体や汚染物質除去シート部材から、例えば、空気浄化装置のフィルター、マスク、防護手袋や防護靴を構成することができる。
以上の好ましい形態を含む本発明の汚染物質除去シート部材において、支持部材として織布や不織布を挙げることができ、支持部材を構成する材料として、セルロースやポリプロピレン、ポリエステルを挙げることができる。そして、汚染物質除去シート部材の形態として、本発明における多孔質炭素材料が支持部材と支持部材との間に挟まれた形態、多孔質炭素材料が支持部材に練り込まれた形態を挙げることができる。あるいは又、汚染物質除去シート部材の形態として、本発明の炭素/ポリマー複合体が支持部材と支持部材との間に挟まれた形態、本発明の炭素/ポリマー複合体が支持部材に練り込まれた形態を挙げることができる。炭素/ポリマー複合体を構成するバインダーとして、例えば、カルボキシニトロセルロースを挙げることができる。
上記の好ましい形態を含む本発明の濾材を組み込むのに適した浄化装置、具体的には、浄水器(以下、『本発明における浄水器』と呼ぶ場合がある)にあっては、濾過膜(例えば、0.4μm〜0.01μmの穴の開いた中空糸膜や平膜)を更に有する構成(本発明の濾材と濾過膜の併用)とすることができるし、逆浸透膜(RO)を更に有する構成(本発明の濾材と逆浸透膜の併用)とすることができるし、セラミックス製の濾材(微細な穴を有するセラミックス製の濾材)を更に有する構成(本発明の濾材とセラミックス製の濾材の併用)とすることができるし、イオン交換樹脂を更に有する構成(本発明の濾材とイオン交換樹脂の併用)とすることもできる。尚、一般に、逆浸透膜(RO)を通過した濾過水にはミネラル成分が殆ど含まれないが、逆浸透膜(RO)を通過させた後、本発明の濾材を通過させることで、濾過水にミネラル成分を含ませることができる。
本発明における浄水器の種類として、連続式浄水器、回分式浄水器、逆浸透膜浄水器を挙げることができるし、あるいは又、水道の蛇口の先端部に浄水器本体を直接取り付ける蛇口直結型、据え置き型(トップシンク型あるいは卓上型とも呼ばれる)、水栓に浄水器が組み込まれた水栓一体化型、キッチンのシンク内に設置するアンダーシンク型(ビルトイン型)、ポットや水差し等の容器内に浄水器を組み込んだポット型(ピッチャー型)、水道メーター以降の水道配管に直接取り付けるセントラル型、携帯型、ストロー型を挙げることができる。本発明における浄水器の構成、構造は、従来の浄水器と同じ構成、構造とすることができる。本発明における浄水器において、本発明の濾材(多孔質炭素材料)は、例えば、カートリッジに納めて使用することができ、カートリッジには水流入部及び水排出部を設ければよい。本発明における浄水器において浄化の対象とすべき「水」は、JIS S3201:2010「家庭用浄水器試験方法」の「3.用語及び定義」に規定された「水」に限定するものではない。
あるいは又、本発明の濾材を組み込むのに適した部材として、キャップあるいは蓋付き、ストロー部材付き、スプレー部材付きのボトル(所謂ペットボトル)やラミネート容器、プラスチック容器、ガラス容器、ガラス瓶等におけるキャップあるいは蓋を挙げることができる。ここで、キャップや蓋の内部に本発明の濾材を配し、ボトルやラミネート容器、プラスチック容器、ガラス容器、ガラス瓶等の内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)を、キャップや蓋の内部に配された本発明の濾材を通過させて飲むことで、あるいは、使用することで、濾過水にミネラル成分を含ませることができる。あるいは又、透水性を有する袋の中に本発明の濾材を格納し、ボトル(所謂ペットボトル)やラミネート容器、プラスチック容器、ガラス容器、ガラス瓶、ポット水差し等の各種の容器内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)の中に、この袋を投入する形態を採用することもできる。
本発明における多孔質炭素材料の原料を、ケイ素(Si)を含有する植物由来の材料とする場合、具体的には、限定するものではないが、多孔質炭素材料における強熱残分(残留灰分)の含有率は15質量%以下であることが望ましい。また、次に述べる多孔質炭素材料前駆体あるいは炭素質物質における強熱残分(残留灰分)の含有率は20質量%以上であることが望ましい。ここで、強熱残分(残留灰分)は、120゜Cで12時間、乾燥させた試料を空気(ドライエアー)中で800゜Cまで加熱したときに残される物質の質量%を指し、具体的には、熱重量測定法(TG)法に基づき測定することができる。
本発明における多孔質炭素材料、あるいは、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料は、例えば、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって得ることができる。このような多孔質炭素材料の製造方法(以下、単に、『多孔質炭素材料の製造方法』と呼ぶ場合がある)において、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化することにより得られた材料であって、酸又はアルカリでの処理を行う前の材料を、『多孔質炭素材料前駆体』あるいは『炭素質物質』と呼ぶ。
多孔質炭素材料の製造方法において、酸又はアルカリでの処理の後、賦活処理を施す工程を含めることができるし、賦活処理を施した後、酸又はアルカリでの処理を行ってもよい。また、このような好ましい形態を含む多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料を炭素化する前に、炭素化のための温度よりも低い温度(例えば、400゜C〜700゜C)にて、酸素を遮断した状態で植物由来の材料に加熱処理(予備炭素化処理)を施してもよい。これによって、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を抽出することが出来る結果、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。尚、酸素を遮断した状態は、例えば、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気とすることで、あるいは又、真空雰囲気とすることで、あるいは又、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とすることで達成することができる。また、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、場合によっては、植物由来の材料中に含まれるミネラル成分や水分を減少させるために、また、炭素化の過程での異臭の発生を防止するために、植物由来の材料を酸又はアルカリに浸漬してもよいし、アルコール(例えば、メチルアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコール)に浸漬してもよい。尚、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、その後、予備炭素化処理を実行してもよい。不活性ガス中で加熱処理を施すことが好ましい材料として、例えば、木酢液(タールや軽質油分)を多く発生する植物を挙げることができる。また、アルコールによる前処理を施すことが好ましい材料として、例えば、ヨウ素や各種ミネラルを多く含む海藻類を挙げることができる。
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化するが、ここで、炭素化とは、一般に、有機物質(本発明における多孔質炭素材料、あるいは、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料にあっては、植物由来の材料)を熱処理して炭素質物質に変換することを意味する(例えば、JIS M0104−1984参照)。尚、炭素化のための雰囲気として、酸素を遮断した雰囲気を挙げることができ、具体的には、真空雰囲気、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とする雰囲気を挙げることができる。炭素化温度に至るまでの昇温速度として、限定するものではないが、係る雰囲気下、1゜C/分以上、好ましくは3゜C/分以上、より好ましくは5゜C/分以上を挙げることができる。また、炭素化時間の上限として、10時間、好ましくは7時間、より好ましくは5時間を挙げることができるが、これに限定するものではない。炭素化時間の下限は、植物由来の材料が確実に炭素化される時間とすればよい。また、植物由来の材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。植物由来の材料を予め洗浄してもよい。あるいは又、得られた多孔質炭素材料前駆体や多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。あるいは又、賦活処理後の多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。更には、最終的に得られた多孔質炭素材料に殺菌処理を施してもよい。炭素化のために使用する炉の形式、構成、構造に制限はなく、連続炉とすることもできるし、回分炉(バッチ炉)とすることもできる。
多孔質炭素材料の製造方法において、上述したとおり、賦活処理を施せば、孔径が2nmよりも小さいマイクロ細孔(後述する)を増加させることができる。賦活処理の方法として、ガス賦活法、薬品賦活法を挙げることができる。ここで、ガス賦活法とは、賦活剤として酸素や水蒸気、炭酸ガス、空気等を用い、係るガス雰囲気下、700゜C乃至1400゜Cにて、好ましくは700゜C乃至1000゜Cにて、より好ましくは800゜C乃至950゜Cにて、数十分から数時間、多孔質炭素材料を加熱することにより、多孔質炭素材料中の揮発成分や炭素分子により微細構造を発達させる方法である。尚、より具体的には、加熱温度は、植物由来の材料の種類、ガスの種類や濃度等に基づき、適宜、選択すればよい。薬品賦活法とは、ガス賦活法で用いられる酸素や水蒸気の替わりに、塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸等を用いて賦活させ、塩酸で洗浄、アルカリ性水溶液でpHを調整し、乾燥させる方法である。
本発明における多孔質炭素材料の表面、あるいは、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料の表面に対して、化学処理又は分子修飾を行ってもよい。化学処理として、例えば、硝酸処理により表面にカルボキシ基を生成させる処理を挙げることができる。また、水蒸気、酸素、アルカリ等による賦活処理と同様の処理を行うことにより、多孔質炭素材料の表面に水酸基、カルボキシ基、ケトン基、エステル基等、種々の官能基を生成させることもできる。更には、多孔質炭素材料と反応可能な水酸基、カルボキシ基、アミノ基等を有する化学種又は蛋白質とを化学反応させることでも、分子修飾が可能である。
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、酸又はアルカリでの処理によって、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去する。ここで、ケイ素成分として、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素酸化物を挙げることができる。このように、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去することで、高い比表面積を有する多孔質炭素材料を得ることができる。場合によっては、ドライエッチング法に基づき、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去してもよい。また、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸に浸漬することで、炭素化後の植物由来の材料中に含まれるミネラル成分を除去することが可能である。
本発明における多孔質炭素材料は、植物由来の材料を原料とすることができる。ここで、植物由来の材料として、米(稲)、大麦、小麦、ライ麦、稗(ヒエ)、粟(アワ)等の籾殻や藁、珈琲豆、茶葉(例えば、緑茶や紅茶等の葉)、サトウキビ類(より具体的には、サトウキビ類の絞り滓)、トウモロコシ類(より具体的には、トウモロコシ類の芯)、上述した果実の皮(例えば、ミカン等の柑橘類の皮やバナナの皮等)、あるいは又、葦、茎ワカメを挙げることができるが、これらに限定するものではなく、その他、例えば、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類、海草を挙げることができる。尚、これらの材料を、原料として、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、植物由来の材料の形状や形態も特に限定はなく、例えば、籾殻や藁そのものでもよいし、あるいは乾燥処理品でもよい。更には、ビールや洋酒等の飲食品加工において、発酵処理、焙煎処理、抽出処理等の種々の処理を施されたものを使用することもできる。特に、産業廃棄物の資源化を図るという観点から、脱穀等の加工後の藁や籾殻を使用することが好ましい。これらの加工後の藁や籾殻は、例えば、農業協同組合や酒類製造会社、食品会社、食品加工会社から、大量、且つ、容易に入手することができる。
本発明における多孔質炭素材料には、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)や、リン(P)、硫黄(S)等の非金属元素や、遷移元素等の金属元素が含まれていてもよい。マグネシウム(Mg)の含有率として0.01質量%以上3質量%以下、カリウム(K)の含有率として0.01質量%以上3質量%以下、カルシウム(Ca)の含有率として0.05質量%以上3質量%以下、リン(P)の含有率として0.01質量%以上3質量%以下、硫黄(S)の含有率として0.01質量%以上3質量%以下を挙げることができる。尚、これらの元素の含有率は、比表面積の値の増加といった観点からは、少ない方が好ましい。多孔質炭素材料には、上記した元素以外の元素を含んでいてもよく、上記した各種元素の含有率の範囲も、変更し得ることは云うまでもない。
本発明における多孔質炭素材料、あるいは、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料にあっては、各種元素の分析を、例えば、エネルギー分散型X線分析装置(例えば、日本電子株式会社製のJED−2200F)を用い、エネルギー分散法(EDS)により行うことができる。ここで、測定条件を、例えば、走査電圧15kV、照射電流10μAとすればよい。
本発明における多孔質炭素材料、あるいは、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料は、細孔(ポア)を多く有している。細孔として、孔径が2nm乃至50nmの『メソ細孔』、孔径が2nmよりも小さい『マイクロ細孔』、及び、孔径が50nmを超える『マクロ細孔』が含まれる。また、本発明における多孔質炭素材料にあっては、MP法による細孔の容積は、上述したとおり、0.1cm3/グラム以上であることが好ましい。
本発明における多孔質炭素材料、あるいは、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料において、窒素BET法による比表面積の値(以下、単に、『比表面積の値』と呼ぶ場合がある)は、より一層優れた機能性を得るために、好ましくは4×102m2/グラム以上であることが望ましい。
窒素BET法とは、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。具体的には、窒素BET法により比表面積の値を算出する場合、先ず、多孔質炭素材料に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、式(1)あるいは式(1)を変形した式(1’)に基づき[p/{Va(p0−p)}]を算出し、平衡相対圧(p/p0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C−1)/(C・Vm)])及び切片i(=[1/(C・Vm)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから式(2−1)、式(2−2)に基づき、Vm及びCを算出する。更には、Vmから、式(3)に基づき比表面積asBETを算出する(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第66頁参照)。尚、この窒素BET法は、JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じた測定方法である。
Va=(Vm・C・p)/[(p0−p){1+(C−1)(p/p0)}] (1)
[p/{Va(p0−p)}]
=[(C−1)/(C・Vm)](p/p0)+[1/(C・Vm)] (1’)
Vm=1/(s+i) (2−1)
C =(s/i)+1 (2−2)
asBET=(Vm・L・σ)/22414 (3)
但し、
Va:吸着量
Vm:単分子層の吸着量
p :窒素の平衡時の圧力
p0:窒素の飽和蒸気圧
L :アボガドロ数
σ :窒素の吸着断面積
である。
窒素BET法により細孔容積Vpを算出する場合、例えば、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量Vを求める。この吸着量Vから式(4)に基づき細孔容積Vpを算出することができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第65頁参照)。尚、窒素BET法に基づく細孔容積を、以下、単に『細孔容積』と呼ぶ場合がある。
Vp=(V/22414)×(Mg/ρg) (4)
但し、
V :相対圧での吸着量
Mg:窒素の分子量
ρg:窒素の密度
である。
メソ細孔の孔径は、例えば、BJH法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。BJH法は、細孔分布解析法として広く用いられている方法である。BJH法に基づき細孔分布解析をする場合、先ず、多孔質炭素材料に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、脱着等温線を求める。そして、求められた脱着等温線に基づき、細孔が吸着分子(例えば窒素)によって満たされた状態から吸着分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さ、及び、その際に生じた孔の内径(コア半径の2倍)を求め、式(5)に基づき細孔半径rpを算出し、式(6)に基づき細孔容積を算出する。そして、細孔半径及び細孔容積から細孔径(2rp)に対する細孔容積変化率(dVp/drp)をプロットすることにより細孔分布曲線が得られる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第85頁〜第88頁参照)。
rp=t+rk (5)
Vpn=Rn・dVn−Rn・dtn・c・ΣApj (6)
但し、
Rn=rpn 2/(rkn−1+dtn)2 (7)
ここで、
rp:細孔半径
rk:細孔半径rpの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)
Vpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積
dVn:そのときの変化量
dtn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さtnの変化量
rkn:その時のコア半径
c:固定値
rpn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径
である。また、ΣApjは、j=1からj=n−1までの細孔の壁面の面積の積算値を表す。
マイクロ細孔の孔径は、例えば、MP法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。MP法により細孔分布解析を行う場合、先ず、多孔質炭素材料に窒素を吸着させることにより、吸着等温線を求める。そして、この吸着等温線を吸着層の厚さtに対する細孔容積に変換する(tプロットする)。そして、このプロットの曲率(吸着層の厚さtの変化量に対する細孔容積の変化量)に基づき細孔分布曲線を得ることができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第72頁〜第73頁、第82頁参照)。
JIS Z8831−2:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法」、及び、JIS Z8831−3:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法」に規定された非局在化密度汎関数法(NLDFT法)にあっては、解析ソフトウェアとして、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」に付属するソフトウェアを用いる。前提条件としてモデルをシリンダ形状としてカーボンブラック(CB)を仮定し、細孔分布パラメータの分布関数を「no−assumption」とし、得られた分布データにはスムージングを10回施す。
多孔質炭素材料前駆体を酸又はアルカリで処理するが、具体的な処理方法として、例えば、酸あるいはアルカリの水溶液に多孔質炭素材料前駆体を浸漬する方法や、多孔質炭素材料前駆体と酸又はアルカリとを気相で反応させる方法を挙げることができる。より具体的には、酸によって処理する場合、酸として、例えば、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等の酸性を示すフッ素化合物を挙げることができる。フッ素化合物を用いる場合、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分におけるケイ素元素に対してフッ素元素が4倍量となればよく、フッ素化合物水溶液の濃度は10質量%以上であることが好ましい。フッ化水素酸によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、二酸化ケイ素は、化学式(A)又は化学式(B)に示すようにフッ化水素酸と反応し、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)あるいは四フッ化ケイ素(SiF4)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。酸によって処理する場合、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸で処理することで、多孔質炭素材料前駆体中に含まれるミネラル成分を除去することが可能である。
SiO2+6HF → H2SiF6+2H2O (A)
SiO2+4HF → SiF4+2H2O (B)
また、アルカリ(塩基)によって処理する場合、アルカリとして、例えば、水酸化ナトリウムを挙げることができる。アルカリの水溶液を用いる場合、水溶液のpHは11以上であればよい。水酸化ナトリウム水溶液によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、水酸化ナトリウム水溶液を熱することにより、二酸化ケイ素は、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。また、水酸化ナトリウムを気相で反応させて処理する場合、水酸化ナトリウムの固体を熱することにより、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
SiO2+2NaOH → Na2SiO3+H2O (C)
あるいは又、本発明における多孔質炭素材料、あるいは、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材を構成する多孔質炭素材料として、例えば、特開2010−106007に開示された空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料(所謂、逆オパール構造を有する多孔質炭素材料)、具体的には、1×10-9m乃至1×10-5mの平均直径を有する3次元的に配列された球状の空孔を備え、表面積が3×102m2/グラム以上の多孔質炭素材料、好ましくは、巨視的に、結晶構造に相当する配置状態にて空孔が配列されており、あるいは又、巨視的に、面心立方構造における(111)面配向に相当する配置状態にて、その表面に空孔が配列されている多孔質炭素材料を用いることもできる。
実施例1は、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去剤、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る炭素/ポリマー複合体、本発明の第1の態様〜第4の態様に係る汚染物質除去シート部材及び本発明の第1の態様〜第4の態様に係る濾材に関する。
実施例1の汚染物質除去剤あるいは濾材は、本発明の第1の態様に係る汚染物質除去剤あるいは濾材に則って表現すると、窒素BET法による比表面積の値が1×102m2/グラム以上、BJH法による細孔の容積が0.3cm3/グラム以上、好ましくは0.4cm3/グラム以上、より好ましくは0.5cm3/グラム以上、粒径が75μm以上である多孔質炭素材料から成る。また、本発明の第2の態様に係る汚染物質除去剤あるいは濾材に則って表現すると、窒素BET法による比表面積の値が1×102m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法(NLDFT法,Non Localized Density Functional Theory 法)によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計(便宜上、『容積A』と呼ぶ)が1.0cm3/グラム以上、粒径が75μm以上である多孔質炭素材料から成る。更には、本発明の第3の態様に係る汚染物質除去剤あるいは濾材に則って表現すると、窒素BET法による比表面積の値が1×102m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合が全細孔の容積総計の0.2以上であり、粒径が75μm以上である多孔質炭素材料から成る。また、本発明の第4の態様に係る汚染物質除去剤あるいは濾材に則って表現すると、窒素BET法による比表面積の値が1×102m2/グラム以上、水銀圧入法による細孔の容積が1.0cm3/グラム以上、粒径が75μm以上である多孔質炭素材料から成る。
尚、BJH法による細孔(メソ細孔)、MP法による細孔(マイクロ細孔)、及び、水銀圧入法による細孔は、少なくとも、ケイ素を含有する植物由来の材料からのケイ素の除去によって得られる。多孔質炭素材料の水銀圧入法による細孔の容積は2.0cm3/グラム以上であることがより好ましく、MP法による細孔の容積は0.1cm3/グラム以上であることが好ましい。また、多孔質炭素材料の嵩密度は、0.1グラム/cm3乃至0.8グラム/cm3であることが好ましい。
実施例1にあっては、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を米(稲)の籾殻とした。そして、実施例1における多孔質炭素材料は、原料としての籾殻を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得られる。以下、実施例1における多孔質炭素材料の製造方法を説明する。
実施例1における多孔質炭素材料の製造においては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た。即ち、先ず、籾殻に対して、不活性ガス中で加熱処理(予備炭素化処理)を施す。具体的には、籾殻を、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得た。尚、このような処理を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で800゜Cまで昇温させた。そして、800゜Cで1時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却した。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続けた。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄した。次いで、120°Cにて乾燥させた後、900゜Cで水蒸気気流中(5リットル/分)にて3時間加熱させることで賦活処理を行うことで、実施例1の多孔質炭素材料を得ることができた。そして、実施例1の多孔質炭素材料を粉砕し、篩にかけ、60メッシュパス・200メッシュオンの部分を採取することで、実施例1Aを得ることができた。
市販の浄水器に使用されている濾材を、篩にかけることで、60メッシュパス・200メッシュオンの部分を採取し、比較例1A及び比較例1Bとした。尚、比較例1Aにおける濾材はシリカから成り、比較例1Bにおける濾材は竹炭から成る。
比表面積及び細孔容積を求めるための測定機器として、BELSORP−mini(日本ベル株式会社製)を用い、窒素吸脱着試験を行った。測定条件として、測定平衡相対圧(p/p0)を0.01〜0.99とした。そして、BELSORP解析ソフトウェアに基づき、比表面積及び細孔容積を算出した。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布は、上述した測定機器を用いた窒素吸脱着試験を行い、BELSORP解析ソフトウェアによりBJH法及びMP法に基づき算出した。更には、非局在化密度汎関数法(NLDFT法)に基づく測定にあっては、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」を使用した。尚、測定に際しては、試料の前処理として、200゜Cで3時間の乾燥を行った。
実施例1A、比較例1A及び比較例1Bの濾材について、比表面積及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。尚、表1中、「比表面積」は窒素BET法による比表面積の値を指し、単位はm2/グラムである。また、「MP法」、「BJH法」は、MP法による細孔(マイクロ細孔)の容積測定結果、BJH法による細孔(メソ細孔〜マクロ細孔)の容積測定結果を示し、単位はcm3/グラムである。また、表1中、「全細孔容積」は、窒素BET法による全細孔容積の値を指し、単位はcm3/グラムである。更には、非局在化密度汎関数法(NLDFT法)に基づく、直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計(容積A、全細孔の容積総計)に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合(容積割合)を表2に示す。尚、比較例1AにおけるBJH法に基づく細孔容積測定結果、及び、NLDFT法に基づく全細孔の容積総計(容積A)測定結果が大きい値を示しているが、これは、比較例1Aにおける濾材が、多孔質炭素材料から成るのではなく、シリカから成るためである。
吸着量測定のため、0.03モル/リットルのメチレンブルー及び0.5ミリモル/リットルのブラック5の水溶液を調製し、各40ミリリットルの水溶液に対して試料を10ミリグラム投入した。そして、ミックスローター(攪拌機)を用いて100rpmで攪拌し、攪拌時間を、0.5分、1分、3分、5分、15分、30分、60分、180分として攪拌後、濾過し、得られた濾液の吸光度変化を測定する試験法に基づき、攪拌時間と濾材1グラム当たりのメチレンブルー及びブラック5の吸着量との関係を、単位質量当たりの吸光度から得られた検量線の値から算出した。
その結果を図1の(A)及び(B)に示すが、実施例1Aの濾材のメチレンブルー及びブラック5の吸着量は、比較例1A及び比較例1Bの濾材の吸着量よりも格段に大きく、これは、比較例では観察されない大容積のメソ細孔及びマクロ細孔の影響であると考えられる。尚、図1の縦軸は吸着量(単位:ミリグラム/グラム)であり、横軸は試験時間(濾材を試験液に浸漬した時間であり、単位は分)である。また、三角印は実施例1Aのデータを示し、四角印は比較例1Aのデータを示し、丸印は比較例1Bのデータを示す。
また、別の製造ロットにおける実施例1の濾材を、乳鉢を用いて人手で粉砕して、実施例1Bの濾材としたが、実施例1Bの濾材は、200メッシュオン品であり、粒径は0.50mm乃至0.85mmである。また、同時に得られた200メッシュパス品の濾材を参考例1とした。比表面積及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。更には、市販の浄水器から活性炭を取り出し、これらの活性炭から粒径が0.50mm乃至0.85mmのものを採取し、比較例1C及び比較例1Dとして評価した。
更には、実施例1B、参考例1、比較例1C及び比較例1Dの試料を、それぞれ、200ミリグラム、カートリッジに充填し、メチレンブルー水溶液を50ミリリットル/分の流速でカートリッジに流し、カートリッジから流出した水のメチレンブルー濃度を測定した。その結果を図2に示す。尚、図2の縦軸はメチレンブルー吸着率(除去率)であり、参考例1の濾材の吸着量(除去率)を100%として規格化した値である。また、横軸は、メチレンブルー水溶液の流量である。図2からも、実施例1B(四角印で示す)、参考例1(菱形印で示す)の濾材のメチレンブルー吸着量は、比較例1C(三角印で示す)あるいは比較例1D(丸印で示す)と比較して、格段に高いことが判る。
実施例1の浄水器の断面図を図3に示す。実施例1の浄水器は、連続式浄水器であり、水道の蛇口の先端部に浄水器本体を直接取り付ける蛇口直結型の浄水器である。実施例1の浄水器は、浄水器本体10、浄水器本体10の内部に配置され、実施例1Aあるいは実施例1B、参考例1の多孔質炭素材料11が充填された第1充填部12、綿13が充填された第2充填部14を備えている。水道の蛇口から排出された水道水は、浄水器本体10に設けられた流入口15から、多孔質炭素材料11、綿13を通過して、浄水器本体10に設けられた流出口16から排出される。
実施例1の汚染物質除去シート部材の断面構造を示す模式的な図を図4に示す。実施例1の汚染物質除去シート部材は、実施例1Aあるいは実施例1B、参考例1の多孔質炭素材料、及び、支持部材を備えている。具体的には、実施例1の汚染物質除去シート部材は、セルロースから成る支持部材(不織布2)と支持部材(不織布2)との間に、シート状にした多孔質炭素材料、即ち、炭素/ポリマー複合体1が挟み込まれた構造を有する。炭素/ポリマー複合体1は、実施例1Aあるいは実施例1B、参考例1の多孔質炭素材料、及び、バインダーから成り、バインダーは、例えば、カルボキシニトロセルロースから成る。尚、汚染物質除去シート部材を、実施例1Aあるいは実施例1B、参考例1の多孔質炭素材料が支持部材に塗布され、あるいは又、実施例1の多孔質炭素材料が支持部材に練り込まれた形態とすることもできる。
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、塩素の除去率に関する評価試験を行った。
実施例2における多孔質炭素材料の製造においては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸又はアルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た。即ち、先ず、籾殻に対して、不活性ガス中で加熱処理(予備炭素化処理)を施す。具体的には、籾殻を、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得た。尚、このような処理を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で800゜Cまで昇温させた。そして、800゜Cで1時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却した。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続けた。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄した。次いで、120°Cにて乾燥させた後、900゜Cで水蒸気気流中(3.5リットル/分)にて3時間加熱させることで賦活処理を行うことで、実施例2の多孔質炭素材料を得ることができた。
実施例2における濾材の比表面積及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。実施例2の濾材を粉砕して粒度調整を行い、200メッシュオン品とした。尚、2種類の粒度分布を有する実施例2A及び実施例2Bの試料を調製した。篩を用いた粒度分布測定結果を表3に示す。更には、市販の浄水器から活性炭を取り出し、これらの活性炭を、比較例2A、比較例2B及び比較例2Cとして評価した。また、同じ容積(2.0cm3)の第1充填部12に各試料を充填したときの質量(単位:グラム)を表1に示すが、第1充填部12に各試料を充填したときの充填割合を『充填率』と呼ぶ場合がある。更には、NLDFT法に基づく、直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計(全細孔の容積総計)に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める容積割合を、表2に示す。また、水銀圧入法の測定結果を、以下に示す。更には、120゜Cで12時間、乾燥させた試料を、熱重量測定法(TG)法に基づき、ドライエアー300ミリリットル/分で800゜Cまで加熱したときに残された強熱残分(残留灰分)の測定結果を以下に示す。尚、実施例1、実施例7の多孔質炭素材料における強熱残分(残留灰分)の測定結果、酸処理を行う前の多孔質炭素材料前駆体における強熱残分(残留灰分)の測定結果も併せて示す。
[水銀圧入法の測定結果]
実施例2 4.12cm3/グラム
比較例2A 0.26cm3/グラム
比較例2B 0.35cm3/グラム
比較例2C 0.24cm3/グラム
[強熱残分]
実施例1 5.83%
実施例2 3.49%
実施例7 7.29%
多孔質炭素材料前駆体 43.27%
試験においては、内径7.0mmのガラス管を容積2ミリリットルの各試料で充填し、2.0ミリグラム/リットルの濃度の塩素水を400ミリリットル/分の流速でガラス管内を流した。そして、
DPD吸光光度法に基づく除去率(%)
=(原水測定値−通過水測定値)/原水測定値×100
といった方法に基づき得られた塩素の除去率測定結果を図5に示す。尚、400ミリリットル/分の流量を空間速度(SV)に換算すると以下のとおりである。
SV=400×60(ミリリットル/時)/2cm3 =12000時-1
図5から、実施例2A及び実施例2Bの多孔質炭素材料から成る濾材は、比較例2A、比較例2B、比較例2Cと比較して、格段に高い塩素除去率を有している。
実施例3も、実施例1の変形である。実施例3にあっては、塩素の除去率、1,1,1−トリクロロエタンの除去率、2−クロロ−4,6ビスエチルアミノ−1,3,5−トリアジン(CAT)の除去率に関する評価試験を行った。除去率は、ガスクロマトグラフ分析法により、以下の式から算出した。実施例3の濾材を構成する多孔質炭素材料として、実施例2Aの多孔質炭素材料(200メッシュオン品)を使用した。尚、比較例3として、比較例2Cと同じ濾材を使用した。
除去率(%)=(原水測定値−通過水測定値)/原水測定値×100
実施例3及び比較例3の濾材を用いて、内径10.0mmのガラス管を容積10ミリリットルの各試料で充填し、2.0ミリグラム/リットルの濃度の塩素水、0.3ミリグラム/リットルの濃度の1,1,1−トリクロロエタン水溶液、0.003ミリグラム/リットルの濃度のCAT水溶液を400ミリリットル/分の流速でガラス管内を流した。塩素、1,1,1−トリクロロエタン、CATの除去率を図6の(A)、(B)及び(C)に示す。図6の(A)、(B)及び(C)から、実施例3の多孔質炭素材料から成る濾材は、比較例3と比較して、格段に高い除去率を有していることが判った。尚、400ミリリットル/分の流量を空間速度(SV)に換算すると以下のとおりである。
SV=400×60(ミリリットル/時)/10cm3 =2400時-1
富栄養化した湖沼や池では、夏期を中心に、藍藻類(ミクロキスティス等)が異常増殖して、水の表面が緑色の粉をふいたような厚い層が形成されることがあり、これはアオコと呼ばれている。この藍藻類は人体に有害な毒素を発生することが知られているが、多くの毒素の中でミクロシスチンLRという毒素が特に警戒されている。ミクロシスチンLRが生体内に入ると肝臓が大きな損傷を受け、その毒性はマウスによる実験でも報告されている。ミクロシスチンLRを出す有毒アオコは、オーストラリアやヨーロッパ、アメリカの湖、アジア各地で発生している。被害の大きい中国の湖では、一年中、大発生したアオコが消えることはない。そして、湖水は飲料水や農業用水に利用されているため、湖沼において藍藻類が生み出す毒素が人間の飲料水の確保において問題になっており、その解決が強く望まれている。
実施例4においては、ミクロシスチンLR(数平均分子量:994)の吸着を評価した。実施例4の濾材を構成する多孔質炭素材料を、実施例1にて説明した方法と概ね同様の方法で得た。具体的には、実施例4においては、賦活処理を、900゜Cで水蒸気気流中(2.5リットル/分)にて3時間加熱させる処理とした。この点を除き、実施例1にて説明した方法と同様の方法で得た。実施例4における濾材の比表面積及び細孔容積を測定したところ、表1に示す結果が得られた。また、NLDFT法に基づく、直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計(容積A、全細孔の容積総計)に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める容積割合を表2に示す。尚、実施例4における濾材は60メッシュパス・200メッシュオン品である。また、比較例4として、和光純薬工業株式会社製の粒状活性炭(60メッシュパス・200メッシュオン品)を使用した。
実施例4及び比較例4の濾材を用いて、紫外・可視分光光度計を用いた比色法にて反応前後の溶液のミクロシスチン濃度を求め、除去率を算出した。その結果を図7に示すが、実施例4の多孔質炭素材料から成る濾材は、比較例4と比較して、格段に高い除去率を有していることが判った。
実施例5においては、粒径依存性の評価を行った。実施例5の濾材を構成する多孔質炭素材料として、実施例1における多孔質炭素材料(60メッシュパス・200メッシュオン品)を用いた。また、実施例1における多孔質炭素材料ではあるが、200メッシュパス品を参考例5とした。更には、比較例5Aとして、比較例4の粒状活性炭(60メッシュパス・200メッシュオン品)を使用し、比較例5Bとして、比較例4の粒状活性炭を粉砕した200メッシュパス品を使用した。
実施例5、参考例5、比較例5A及び比較例5Bの濾材を試料として用いて、50ミリリットルのスクリュー管に10ミリグラムの試料及び50ミリリットルのインドール溶液(3×10-4モル/リットル)を入れ、1時間後のインドール吸着量を定量する方法に基づき、粒径依存性を評価した。その結果を図8に示すが、実施例5、参考例5の多孔質炭素材料から成る濾材は、比較例5A、比較例5Bと比較して、粒径依存性の無いことが判った。
従来のヤシガラや石油ピッチを原料とした活性炭は、浄水用等のフィルター部材を始め、機能性食品、化粧品等に用いられているが、これらの活性炭はミネラル含有量が少なく、水等へのミネラルの放出量を調整する目的には適していない。
実施例6は、本発明の第5の態様〜第8の態様に係る濾材に関する。実施例6の濾材は、窒素BET法による比表面積の値が1×102m2/グラム以上、BJH法による細孔の容積が0.1cm3/グラム以上であり、ナトリウム、マグネシウム、カリウム及びカルシウムから成る群から選択された少なくとも1種類の成分を含む植物を原料とした多孔質炭素材料から成る。あるいは又、実施例6の濾材は、窒素BET法による比表面積の値が1×102m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計が0.1cm3/グラム以上、好ましくは0.2cm3/グラム以上であり、ナトリウム、マグネシウム、カリウム及びカルシウムから成る群から選択された少なくとも1種類の成分を含む植物を原料とした多孔質炭素材料から成る。あるいは又、実施例6の濾材は、窒素BET法による比表面積の値が1×102m2/グラム以上、非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布において、3nm乃至20nmの範囲内に少なくとも1つピークを有し、3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合が全細孔の容積総計の0.1以上であり、ナトリウム、マグネシウム、カリウム及びカルシウムから成る群から選択された少なくとも1種類の成分を含む植物を原料とした多孔質炭素材料から成る。あるいは又、実施例6の濾材は、窒素BET法による比表面積の値が1×102m2/グラム以上、水銀圧入法による細孔の容積が1.0cm3/グラム以上であり、ナトリウム、マグネシウム、カリウム及びカルシウムから成る群から選択された少なくとも1種類の成分を含む植物を原料とした多孔質炭素材料から成る。
実施例6において、多孔質炭素材料は、ナトリウム(Na)、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)及びカルシウム(Ca)から成る群から選択された少なくとも1種類の成分を含む植物を原料としている。このような植物原料を用いることで、濾材として用いたとき、多孔質炭素材料から濾過水にミネラル成分が多く溶出する結果、水の硬度の制御を行うことができる。そして、この場合、硬度0.1以下の水(試験用水)50ミリリットルに濾材を1グラム添加し、6時間、経過した後の硬度が5以上となる。
より具体的には、実施例6にあっては、ミカンの皮(実施例6A)、オレンジの皮(実施例6B)、グレープフルーツの皮(実施例6C)といった柑橘類の皮、バナナの皮(実施例6D)を原料として用いた。また、 比較例6としてクラレケミカル株式会社製クラレコールGWを使用した。
実施例6の濾材を構成する多孔質炭素材料の製造にあっては、上記の各種植物原料を120゜Cにて24時間乾燥処理した。その後、500゜Cの窒素気流中にて3時間、予備炭素化処理を施した。次いで、800゜Cにて1時間焼成処理した後、室温まで冷却し、乳鉢を用いて粉砕処理した。こうして得られた試料(炭素質物質、多孔質炭素材料前駆体)を、便宜上、実施例6a、実施例6b、実施例6c及び実施例6dの試料と呼ぶ。その後、各試料を濃塩酸に24時間浸漬させて後に、洗浄液が中性になるまで洗浄することで、実施例6a’、実施例6b’、実施例6c’及び実施例6d’の試料を得た。次に、実施例6a’、実施例6b’、実施例6c’及び実施例6d’の試料を、900゜C、水蒸気気流中で1時間、賦活処理することによって、実施例6A、実施例6B、実施例6C及び実施例6Dの多孔質炭素材料から成る濾材を得ることができた。
実施例6A、実施例6B、実施例6C及び実施例6Dの試料、並びに、比較例6の試料の組成分析結果を以下の表4に示す。また、実施例6a、実施例6b、実施例6c及び実施例6dの試料、並びに、実施例6a’、実施例6b’、実施例6c’及び実施例6d’の多孔質炭素材料のX線回折結果を図9の(A)〜(D)に示す。尚、実施例6A、実施例6B、実施例6C及び実施例6Dの濾材は、全て、200メッシュパス品とした。また、比表面積及び細孔容積を測定したところ、表1及び図10の(A)、(B)に示す結果が得られた。また、NLDFT法に基づく、直径1×10-9m乃至5×10-7mの細孔の容積の合計(容積A、全細孔の容積総計)に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める容積割合を、表2に示す。更には、実施例6A、実施例6B、実施例6C及び実施例6Dの濾材、並びに、比較例6の非局在化密度汎関数法によって求められた細孔径分布の測定結果を示すグラフを図11に示す。
表4より、実施例6A、実施例6B、実施例6C及び実施例6Dの試料は、比較例6の試料と比べて、多くのミネラル成分が含有されていることが判った。また、X線回折結果から、実施例6a’、実施例6b’、実施例6c’及び実施例6d’の濾材からは、実施例6a、実施例6b、実施例6c及び実施例6dの試料に見られたミネラル成分由来の結晶性ピークは観測されなかった。このことから、ミネラル分は、濃塩酸による酸処理によって、部分的に、一旦は除去されるが、賦活処理によって濾材内部のミネラル分が再び顕在化すると考えられる。
実施例6A、実施例6B、実施例6C及び実施例6Dの試料、並びに、比較例6の試料を用いて、各試料を純水である試験用水(硬度:<0.066)へ1グラム/50ミリリットルの割合で添加し、6時間撹拌した後、濾過し、濾液中に含まれる各種ミネラル量をICP−AESにより定量した。表5に各試料から得られた濾液中のミネラル量及び濾液の硬度を示す。尚、硬度(ミリグラム/リットル)は、
カルシウム濃度(ミリグラム/リットル)×2.5
+マグネシウム濃度(ミリグラム/リットル)×4.1
として算出した。参考までに世界保健機関(WHO)の基準(軟水:0以上、60未満、中程度の軟水(中硬水):60以上、120未満、硬水:120以上、180未満、非常な硬水:180以上)に従った水の分類も示した。
表5より、実施例6の各試料にあっては、比較例6よりも高いミネラル溶出特性が確認でき、濾液の硬度の調整に実施例6の多孔質炭素材料から成る濾材が適していることが示された。また、用いる植物原料によって、得られる濾液の硬度を軟水〜中硬水〜硬水〜非常な硬水と調整できることが判った。
[表1]
比表面積 全細孔容積 MP法 BJH法 質量
実施例1A 1753 1.65 0.66 1.19
実施例1B 2056 1.83 0.73 1.37
参考例1 1804 1.64 0.67 1.27
比較例1A 1015 1.04 0.80 1.12
比較例1B 375 0.21 0.16 0.07
比較例1C 848 0.43 0.40 0.08
比較例1D 1109 0.62 0.49 0.21
実施例2 1612 1.51 0.51 1.13 0.16
比較例2A 1099 0.57 0.50 0.14 1.00
比較例2B 908 0.48 0.42 0.12 0.85
比較例2C 1090 0.54 0.50 0.18 1.00
実施例4 1321 1.13 0.70 0.56
実施例6A 802 0.434 0.40 0.15
実施例6B 372 0.223 0.20 0.096
実施例6C 605 0.402 0.33 0.21
実施例6D 843 0.396 0.33 0.080
比較例6 929 0.414 0.40 0.061
[表2]
容積割合 全細孔の容積総計(容積A)
実施例1A 0.5354 2.0168cm3/グラム
実施例1B 0.4820 2.2389cm3/グラム
参考例1 0.4774 2.0595cm3/グラム
比較例1A 0.2755 1.8993cm3/グラム
比較例1B 0.0951 0.3228cm3/グラム
比較例1C 0.0526 0.7105cm3/グラム
比較例1D 0.1125 0.8427cm3/グラム
実施例2 0.5036 1.8934cm3/グラム
比較例2A 0.1170 0.8836cm3/グラム
比較例2B 0.0818 0.7869cm3/グラム
比較例2C 0.0300 0.8765cm3/グラム
実施例4 0.4661 1.4396cm3/グラム
比較例4 0.1340 0.7557cm3/グラム
実施例6A 0.4006 0.5567cm3/グラム
実施例6B 0.0553 0.3038cm3/グラム
実施例6C 0.1566 0.7171cm3/グラム
実施例6D 0.2597 0.5044cm3/グラム
比較例6 0.0216 0.6935cm3/グラム
[表3]
[表4]
[表5]
実施例7は、本開示の第9の態様〜第15の態様に係る濾材に関する。実施例7にあっては、水環境中に多量に排出されている合成洗剤成分のドデシルベンゼンスルホン酸塩(具体的には、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、大量に使用されている農薬の殺菌剤クロロタロニル(TPN,C8Cl4N)と殺虫剤ジクロロボス(DDVP,C4H7Cl2O4P)、水道管等から溶出する可溶性鉛、水道水中の典型的な汚染物質である遊離残留塩素、塩素消毒で副生する多様な有機ハロゲン化合物類(フミン質から生じた有機ハロゲン化合物を含む)の除去を目的としている。
実施例7にあっては、以下の方法で多孔質炭素材料を製造した。また、比較例7として、クラレコールGWを使用した。
実施例7における多孔質炭素材料の製造においては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、アルカリで処理することによって、多孔質炭素材料を得た。即ち、先ず、籾殻に対して、不活性ガス中で加熱処理(予備炭素化処理)を施す。具体的には、籾殻を、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得た。尚、このような処理を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で800゜Cまで昇温させた。そして、800゜Cで1時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却した。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続けた。次に、この多孔質炭素材料前駆体を80゜C、10質量%の水酸化ナトリウム水溶液に一晩浸漬することでアルカリ処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄した。次いで、120°Cにて乾燥させた後、900゜Cで水蒸気気流中(2.5リットル/分)にて3時間加熱させることで賦活処理を行うことで、実施例7の多孔質炭素材料を得ることができた。
実施例7及び比較例7の試料の粒度分布測定結果を表3に示す。また、実施例7及び比較例7の試料の比表面積及び細孔容積の測定結果を以下の表6及び表7に示す。表6及び表7の測定項目、単位は表1及び表2と同じである。更には、水銀圧入法の測定結果を表8に示す。
[表6]
比表面積 全細孔容積 MP法 BJH法 質量
実施例7 1280 0.93 0.44 0.52 0.30
比較例7 820 0.41 0.39 0.08 1.15
[表7]
容積割合 全細孔の容積総計(容積A)
実施例7 0.3723 1.2534cm3/グラム
比較例7 0.0219 0.6935cm3/グラム
[表8]
実施例7 1.94cm3/グラム
比較例7 0.26cm3/グラム
実施例7及び比較例7の試料2cm3をサンプリングし、ステンレスネット付きカラムに格納した。そして、水1リットル当たり、
(A)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.9ミリグラム
(B)クロロタロニル6.0マイクログラム
(C)ジクロロボス6.0マイクログラム
(D)溶解性鉛(具体的には酢酸鉛)6マイクログラム(鉛換算)
(E)遊離塩素として次亜塩素酸ナトリウム0.2ミリグラム(塩素換算)
(F)全有機ハロゲンとしてTOX濃度130±20マイクログラム(塩素換算)
をそれぞれ溶解した溶液を調製し、流量40ミリリットル/分にて、2cm3の各試料を通過させた。そして、通水前後の濃度を測定し、除去率を算出した。尚、流量40ミリリットル/分は、以下の空間速度(SV)に対応する。
また、水1リットル当たり、
(A)ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.9ミリグラム
(B)クロロタロニル6マイクログラム
(E)遊離塩素として次亜塩素酸ナトリウム2.0ミリグラム(塩素換算)
をそれぞれ溶解した溶液を調製し、流量240ミリリットル/分にて、2cm3の各試料を通過させた。そして、通水前後の濃度を測定し、除去率を算出した。尚、流量240ミリリットル/分は、以下の空間速度(SV)に対応する。
流量40ミリリットル/分:
SV=40×60(ミリリットル/時)/2cm3 =1200時-1
流量240ミリリットル/分:
SV=240×60(ミリリットル/時)/2cm3=7200時-1
そして、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの除去率測定をセル吸光度法に基づき行い、クロロタロニル及びジクロロボスの除去率測定を電子捕獲検出器付きガスクロマトグラフ(ECO−GC)法に基づき行い、溶解性鉛の除去率測定を誘導結合プラズマ−質量分析(IPC/MS)法に基づき行い、遊離塩素の除去率測定をセル吸光度法に基づき行い、全有機ハロゲンの除去率測定をイオンクロマトグラフ法に基づき行った。
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)の除去率測定結果を図12の(A)及び(B)に示し、クロロタロニル(TPN)の除去率測定結果を図13の(A)及び(B)に示し、ジクロロボス(DDVP)の除去率測定結果を図14に示し、溶解性鉛の除去率測定結果を図15に示し、遊離塩素の除去率測定結果を図16の(A)及び(B)に示し、全有機ハロゲンの除去率測定結果を図17に示す。全てにおいて、実施例7の方が、比較例7よりも除去率が高いことが示された。
即ち、実施例7の濾材にあっては、分子量1×102乃至1×105の物質を1マイクログラム/リットル含む水を、空間速度1200時-1において48時間、連続して通液を行ったとき、該物質の除去率が80%に達する迄の時間が、ヤシガラ活性炭を用いたときの該物質の除去率が80%に達する迄の時間の2倍以上である。
また、実施例7の濾材にあっては、ドデシルベンゼンスルホン酸塩を0.9ミリグラム/リットル含む水を、空間速度1200時-1において25時間、連続して通液を行ったとき、ドデシルベンゼンスルホン酸塩の除去率は10%以上である。
また、実施例7の濾材にあっては、クロロタロニルを6マイクログラム/リットル含む水を、空間速度1200時-1において50時間、連続して通液を行ったとき、クロロタロニルの除去率は60%以上である。
また、実施例7の濾材にあっては、ジクロロボスを6マイクログラム/リットル含む水を、空間速度1200時-1において25時間、連続して通液を行ったとき、ジクロロボスの除去率は60%以上である。
また、実施例7の濾材にあっては、溶解性鉛を6マイクログラム/リットル含む水を、空間速度1200時-1において25時間、連続して通液を行ったとき、溶解性鉛の除去率は30%以上である。
また、実施例7の濾材にあっては、遊離塩素を0.2ミリグラム/リットル含む水を、空間速度1200時-1において50時間、連続して通液を行ったとき、遊離塩素の除去率は70%以上である。
また、実施例7の濾材にあっては、全有機ハロゲンを塩素換算で130マイクログラム/リットル含む水を、空間速度1200時-1において5時間、連続して通液を行ったとき、全有機ハロゲンの除去率は45%以上である。
尚、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)の除去率測定結果から、SV=1200時-1では、実施例7の濾材は、充填率が比較例7の活性炭の約27%しかないにも拘わらず、比較例7の活性炭より高い除去率が維持され、通水約5時間では100%、通水約27時間では50%以上の除去率を示した。これに対して、比較例7の活性炭は、通水後、まもなく除去率が急速に低下している。これは、小さな細孔しか有さない比較例7の活性炭では、分子量の大きなDBSの吸着速度が遅いためと考えられる。そして、試験の結果から、実施例7にあっては、実施例7の濾材を150ミリリットル含む据え置き型浄水器(以下、便宜上、『据え置き型浄水器−A』と呼ぶ)を用いて、0.2ミリグラム/リットルのDBSを含む水とした場合、3.0リットル/分の流速で、1日25リットル、濾過すると仮定した場合、約18ヶ月、DBSを100%除去できると推定された。また、SV=7200時-1でも、比較例7の活性炭より高い除去率が維持された。そして、0.2ミリグラム/リットルのDBSを含む水を、1.8リットル/分の流速で、1日15リットル、濾過すると仮定した場合、実施例7の濾材を15ミリリットル含む据え置き型浄水器(以下、便宜上、『据え置き型浄水器−B』と呼ぶ)を用いて、約4ヶ月、DBSを50%以上除去できると推定された。
また、クロロタロニル(TPN)の除去率測定結果から、SV=1200時-1では、実施例7の濾材は、比較例7の活性炭よりTPNの除去率が高く維持され、比較例7の活性炭の通水20時間といった値の2.05倍の約50時間まで除去率80%以上となっていた。これは、TPNの分子量が265.9と大きいため、吸着速度が速い実施例7の濾材の方が比較例7の活性炭より有利になり、また、TPNは水に対する溶解度が小さいために吸着性が高いので、高い除去率が長時間維持されたものと考えられる。そして、試験の結果から、実施例7にあっては、据え置き型浄水器−Aを用いて、6.0マイクログラム/リットルのTPNを含む水を、3.0リットル/分の流速で、1日25リットル、濾過すると仮定した場合、約1年、TNPを80%以上除去できると推定された。一方、SV=7200時-1では、SV=1200時-1の場合より除去率が低いものの、6.0マイクログラム/リットルのTPNを含む水を、1.8リットル/分の流速で、1日15リットル、濾過すると仮定した場合、据え置き型浄水器−Bを用いて、約7ヶ月、TNPを50%以上除去できると推定された。
また、ジクロロボス(DDVP)の除去率測定結果から、SV=1200時-1では、実施例7の濾材は、比較例7の活性炭より除去率が高く維持され、通水約32時間まで除去率80%以上となっている。これは、DDVPの分子量221とやや大きいため、吸着速度が速い実施例7の濾材の方が比較例7の活性炭より有利になったと考えられる。尚、DDVPは、水に対する溶解度が10グラム/リットルと非常に大きいので、平衡吸着量が小さいため、通水約32時間までは除去率80%以上であったが、それ以降は除去率が低下し、通水約43時間で除去率50%となった。尚、通水約32時間は、据え置き型浄水器−Aを用いて、6.0マイクログラム/リットルのDDVPを含む水を、3.0リットル/分の流速で、1日25リットル、濾過すると仮定した場合、約8ヶ月使用したことに相当し、通水約43時間は、約10ヶ月使用したことに相当する。
また、溶解性鉛の除去率測定結果から、SV=1200時-1では、実施例7の濾材は、比較例7の活性炭より高い除去率が維持され、通水約22時間で除去率50%以上であった。尚、比較例7の活性炭では、通水約8時間で除去率が50%以下になってしまっている。このことは、実施例7の濾材には鉛を吸着しやすい活性点が多く存在することを示していると考えられる。そして、試験の結果から、据え置き型浄水器−Aを用いて、6マイクログラム/リットル(鉛換算)の溶解性鉛を含む水を、3.0リットル/分の流速で、1日25リットル、濾過すると仮定した場合、約5ヶ月間、鉛を50%以上除去できると推定された。
また、遊離塩素の除去率測定結果から、SV=1200時-1では、実施例7の濾材は、比較例7より除去率が高く維持され、通水48時間後も約80%となっている。遊離塩素は濾材表面での還元反応によって除去されることから、実施例7の濾材は、粒内拡散速度が速いだけでなく、表面に遊離塩素を還元し易い活性点が多いと推定される。そして、試験の結果から、据え置き型浄水器−Aを用いて、0.2ミリグラム/リットル(塩素換算)の遊離塩素を含む水を、3.0リットル/分の流速で、1日25リットル、濾過すると仮定した場合、約1年間、遊離塩素を80%以上除去できると推定された。一方、SV=7200時-1でも、通水48時間後も約60%の除去率となっている。そして、試験の結果から、据え置き型浄水器−Bを用いて、2.0ミリグラム/リットル(塩素換算)の遊離塩素を含む水を、1.8リットル/分の流速で、1日15リットル、濾過すると仮定した場合、約1年間、遊離塩素を60%以上除去できると推定された。
また、全有機ハロゲン(フミン質から生じた有機ハロゲン化合物を含む)の除去率測定結果から、SV=1200時-1では、実施例7の濾材は、通水48時間まで、比較例7の活性炭より除去率が高くなった。尚、TOX成分の中には分子量の大きめな物質が含まれているため、吸着速度が速い実施例7の濾材の方が比較例7の活性炭よりも大きな除去率となると考えられる。そして、試験の結果から、据え置き型浄水器−Aを用いて、TOX濃度130マイクログラム(塩素換算)/リットルの全有機ハロゲンを含む水を、3.0リットル/分の流速で、1日25リットル、濾過すると仮定した場合、約4ヶ月間、50%以上除去できると推定された。
実施例8は、実施例1〜実施例7の変形である。実施例8にあっては、模式的な一部断面図を図18の(A)に示すように、実施例1〜実施例7において説明した濾材を、キャップ部材30の付いたボトル(所謂ペットボトル)20に組み込んだ。具体的には、キャップ部材30の内部に実施例1〜実施例7の濾材40を配し、濾材40が流出しないように、フィルター31,32をキャップ部材30の液体流入側及び液体排出側に配置した。そして、ボトル20の内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)21を、キャップ部材30の内部に配された濾材40を通過させて飲むことで、あるいは、使用することで、例えば、液体(水)の中のミネラル成分を増加させることができる。尚、キャップ部材30は、通常、図示しない蓋を用いて閉じておく。
あるいは又、模式的な断面図を図18の(B)に示すように、透水性を有する袋50の中に実施例1〜実施例7の濾材40を格納し、ボトル20内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)21の中に、この袋50を投入する形態を採用することもできる。尚、参照番号22は、ボトル20の口部を閉鎖するためのキャップである。あるいは又、模式的な断面図を図19の(A)に示すように、ストロー部材60の内部に実施例1〜実施例7の濾材40を配し、濾材40が流出しないように、図示しないフィルターをストロー部材の液体流入側及び液体排出側に配置する。そして、ボトル20の内の液体あるいは水(飲料水)21を、ストロー部材60の内部に配された実施例1〜実施例7の濾材40を通過させて飲むことで、液体(水)の中のミネラル成分を増加させることができる。あるいは又、一部を切り欠いた模式面を図19の(B)に示すように、スプレー部材70の内部に実施例1〜実施例7の濾材40を配し、濾材40が流出しないように、図示しないフィルターをスプレー部材70の液体流入側及び液体排出側に配置する。そして、スプレー部材70に設けられた押しボタン71を押すことで、ボトル20の内の液体あるいは水(飲料水や化粧水等)21を、スプレー部材70の内部に配された実施例1〜実施例7の濾材40を通過させて、スプレー穴72から噴霧することで、液体(水)の中のミネラル成分を増加させることができる。
以上、好ましい実施例に基づき本発明を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。濾材として、実施例1にて説明した濾材とセラミックス製の濾材(微細な穴を有するセラミックス製の濾材)とを組み合わせた浄水器、実施例1にて説明した濾材とイオン交換樹脂とを組み合わせた浄水器とすることもできる。また、本発明の濾材を構成する多孔質炭素材料を造粒して使用してもよい。
実施例にあっては、多孔質炭素材料の原料として、籾殻を用いる場合について説明したが、他の植物を原料として用いてもよい。ここで、他の植物として、例えば、藁、葦あるいは茎ワカメ、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類及び海草等を挙げることができ、これらを、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。具体的には、例えば、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲の藁(例えば、鹿児島産;イセヒカリ)とし、多孔質炭素材料を、原料としての藁を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲科の葦とし、多孔質炭素材料を、原料としての稲科の葦を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。また、フッ化水素酸水溶液の代わりに、水酸化ナトリウム水溶液といったアルカリ(塩基)にて処理して得られた多孔質炭素材料においても、同様の結果が得られた。
あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を茎ワカメ(岩手県三陸産)とし、多孔質炭素材料を、原料としての茎ワカメを炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理を施すことで得ることができる。具体的には、先ず、例えば、茎ワカメを500゜C程度の温度で加熱し、炭化する。尚、加熱前に、例えば、原料となる茎ワカメをアルコールで処理してもよい。具体的な処理方法として、エチルアルコール等に浸漬する方法が挙げられ、これによって、原料に含まれる水分を減少させると共に、最終的に得られる多孔質炭素材料に含まれる炭素以外の他の元素や、ミネラル成分を溶出させることができる。また、このアルコールでの処理により、炭素化時のガスの発生を抑制することができる。より具体的には、茎ワカメをエチルアルコールに48時間浸漬する。尚、エチルアルコール中では超音波処理を施すことが好ましい。次いで、この茎ワカメを、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得る。尚、このような処理(予備炭素化処理)を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で1000゜Cまで昇温する。そして、1000゜Cで5時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却する。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続ける。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄する。そして、最後に乾燥させることにより、多孔質炭素材料を得ることができる。