本発明に用いられるインプリント成形モールド11としては、公知のものを適用できる。例えば石英、合成石英やソーダガラスなどの透明ガラス板を基板として、該基板の片方の主面上にフォトリソグラフィ又は電子線リソグラフィによって凸凹パターンが形成されたインプリント成形モールド11である。他に、シリコン、ニッケル又は硬質樹脂板を基板として、該基板の片方の主面上に凹凸部が形成されてなるものや、これらの基板の片方の主面をエッチング等により賦型したものや、レジスト材料等による凸部を形成したものも使用できる。これらの中で厚み分布や固定のし易さ、さらに描画精度及び熱膨張性の観点から、石英や合成石英を基板とするインプリント成形モールドが望ましい。基板の厚みは1〜5mmが好ましく、3〜5mmがより好ましい。厚みが1mm以上であれば基板がたわみにくい。また厚みが5mm以下であれば光の透過性にすぐれる。
インプリント成形モールド11のメインパターン領域1011における凹凸パターンの形状は、特に限定されず、インプリントの用途に応じて適宜選択される。例えば典型的なパターンとしてライン&スペースからなるパターンである。そして、ライン&スペースの凸部の長さ、凸部の幅、凸部同士の間隔及び凹部底面からの凸部の高さ(凹部の深さ)は適宜設定される。
一例として、例えば、凸部の幅は1〜50μm、より好ましくは5〜30μmであり、凸部同士の間隔は5〜1000μm、より好ましくは5〜50μmであり、凸部の高さは1〜50μm、より好ましくは1〜30μmである。さらに好ましくは、1〜15μmである。又、凹凸パターンを構成する凸部の形状は、矩形、円及び楕円等の断面を有するドットが配列したような形状でもよい。
インプリントによって精密にパターンを形成し、印刷用版胴21にパターンを高精度で転写するためには、インプリント成形モールド11のパターンを正確に形成することの他に、インプリント成形モールド11と印刷用版胴21との位置合わせが重要である。そこで、インプリント成形モールド11には、メインパターン領域1011(モールド上のパターンであって、被加工物がその機能を発現するために本来転写されるべき対象となるパターンを有する領域)の他に、アライメントパターン領域1012(モールド上のパターンであって、位置合わせに使用されるアライメントマークを設けるために被加工物に転写されるパターンを有する領域)が形成される。
アライメントパターン領域は、アライメントマークが平面視したときに凹部を有さない形状、例えば円や凸多角形の場合は、アライメントマークそのものが占める領域を意味する。また、アライメントマークが平面視したときに凹部を有する形状、例えば十字型や凹多角形の場合は、該凹部がなくなるように隣接する端点をつなぐ線分とで構成した三角形により補完して凸多角形とした領域を意味する。
インプリント成形モールド11内のアライメントマーク12は、マーク検出時のコントラスト向上のために、インプリント成形モールド11の凸部又は凹部に金属材料並びに金属材料の酸化物、窒化物、酸窒化物、ケイ素化合物、炭化物及びホウ化物の少なくとも1種(以下、上記の金属化合物も含めて「金属」という。)を含むことが好ましい。該金属の例としては、視認性、及び膜応力の観点からアルミニウム、金、クロム、スズ、Si02、ZrO2、Al2O3及びTiO2等が好ましい。具体的には、凸部又は凹部に該金属を含む含金属膜12を設けることがあげられる。なお、後述するアライメントカメラで検出可能であれば、このような含金属膜を設けない態様、凸部及び凹部に含金属膜を設けた態様であってもよい。
アライメントマーク12は光の透過性を高めるため、又は、膜応力による歪を軽減するために、アライメントパターン領域1012のみ含金属膜が存在するようにして、マークの視認性に影響の少ない領域、例えばメインパターン領域1011には、含金属膜が存在しないことが好ましい。含金属膜の厚みはコントラストを得る観点から10nm以上であることが好ましく、30nm以上であることがより好ましく、50nm以上であることが特に好ましい。また、膜応力による歪の発生を軽減する観点から、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、100nm以下が特に好ましい。
凹部にアライメントマークを設ける方法として、例えば凹部にクロム膜を設ける場合には、インプリント成形モールド11としてガラス平板を用い、モールド11の片面にレジスト膜を形成する。レジスト膜をパターン露光して現像し、残されたレジストパターンをマスクとして反応性エッチングガスを用いて、ガラス部をエッチングする。モールド11のアライメントパターン領域1012の全面にクロム膜を形成した後で、レジスト膜を除去することにより、凹部にクロム膜からなるアライメントマーク12が設けられた凸凹構造のインプリント成形モールド11を形成することができる。
ここで、モールドのアライメントパターン領域1012に含金属膜を積層する方法としては、真空蒸着法もしくはスパッタリング法などのPVD法、またはCVD法が使用できる。メインパターン領域1011に含金属膜が形成されないようにするためには、製膜時にマスク等の遮蔽板を使用すればよい。
レジストとしてはクロム膜との関係でエッチング選択比を担保しやすい材料を選択することが好ましい。具体的には、ポジ型またはネガ型のフォトレジストや電子線レジストが挙げられる。ポジ型レジスト、例えばノボラック樹脂と光酸発生剤を含む組成物、を使用した場合は、露光された部分が現像で除去される。また、ネガ型レジスト、例えばアクリレート系紫外線硬化型樹脂と光ラジカル発生剤とを含む組成物、またはエポキシ樹脂と光酸発生剤とを含む組成物、を使用した場合は、露光されていない部分が現像で除去される。現像液は使用するフォトレジストに対応するものを使用すればよい。例えば、ノボラック樹脂と光酸発生剤を含むポジ型レジストの場合は、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド(TMAH)の水溶液が例示される。
又、本実施形態では、レジスト膜をマスクにしてクロム膜エッチング液(例えば、硝酸セリウムアンモニウムと硝酸または過塩素酸を含むエッチング液)によりクロム膜を除去することができるが、含金属膜の除去はその金属に応じた公知の除去法が使用可能であり、必ずしもこの方法に限られるものではない。
又、ガラス部のエッチングには、湿式エッチング、または乾式エッチングが使用可能である。湿式エッチング用のエッチング液としてはフッ化水素酸が挙げられる。乾式エッチング(反応性イオンエッチング)用のガスとしては、六フッ化硫黄、四フッ化炭素、トリフルオロメタンが挙げられる。
2つのアライメントマーク12と、メインパターン内のパターンライン36とを平行にすることは、例えば上記で示したように、モールド11にパターンを形成する際に用いたレジストマスクの形状を設計段階において2つのアライメントマークの中心点を結ぶ線分とメインパターンのパターンラインとを平行になるようにすることによってなされる。
アライメントマーク12の形状は特に限定されるものではないが、マーク12の中心位置が視認し易い形状、たとえば円形や十文字状の形態などが視認しやすいので好ましい。
アライメントマーク12の大きさは、マーク12が円形の場合には、その直径が10〜1500μmで、十字状の場合には縦横の長さが各々10〜1000μmであると、マーク12が認識しやすくかつアライメント精度が向上するので好ましい。それぞれ30〜500μmであるとさらに精度が向上する。又マーク12の凹部の深さは、0.1〜10μmであると同様に精度が向上して好ましい。
アライメントパターン領域1012は、通常、メインパターンに対応したメインパターン領域1011とは別に、図2のモールド積層体10においてはインプリント成形モールド11の主面の右上と左上の隅に各々、一つずつ設けられることが好ましい。
上記の方法により、インプリント成形モールド11のアライメント領域1012に、2つのアライメントマーク12の前記中心点を結ぶ線分が、メインパターン領域1011のパターンラインに平行になるようにアライメントマーク12を設けることができる。
まず感光性樹脂組成物としては、一般的には、例えば、ラジカル重合系、光カチオン重合系、光アニオン重合系、光二量化反応系等の重合性樹脂組成物が適用可能である。以下、汎用的な例であるラジカル重合性樹脂組成物について説明する。ラジカル重合性樹脂組成物の多くが本発明に適用され得るが、その中で代表的なものとしてプレポリマー、モノマー、開始剤及び熱重合禁止剤を配合した組成物が使用可能である。この場合、プレポリマーとモノマーとの配合比率やこれらの種類、プレポリマーの分子量等によって、感光性樹脂組成物の粘度が決定される。
プレポリマーは重合性二重結合を分子中に1個以上有し、例えば不飽和ポリエステル、不飽和ポリウレタン、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリレート樹脂、不飽和ポリメタクリレート樹脂、シリコーンゴム及びこれらの各種変性物等のうち少なくとも1種類を用いたものを挙げることができる。
モノマーは重合性二重結合を有するエチレン性不飽和単量体であり、例えば、スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメタクリルアミド、α−アセトアミド、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、パラカルボキシスチレン、2,5−ジヒドロキシスチレン、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及び非特許文献1に記載の材料等を用いることができる。
開始剤としては、公知の光重合開始剤又は熱重合開始剤を用いることができる。例えば、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、キサントン、チオキサントン、クロロキサントン、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、(2−アクリロイルオキシエチル)(4−ベンゾイルベンジル)ジメチル臭化アンモニウム、チオフェノール、2−ベンゾチアゾールチオール、2−ベンゾオキサゾールチオール、2−ベンズイミダゾールチオール、ジフェニルスルフィド、デシルフェニルスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジベンジルスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジアセチルジスルフィド、ジボニルジスルフィド、ジメトキシキサントゲンジスルフィド、1,3−ジオキソラン、N−ラウリルピリジニウム等が例示できる。
又、少なくとも未加硫ゴム、重合性二重結合を有する単量体、重合開始剤からなる光重合性ゴム組成物、いわゆる感光性エラストマーといわれているもの(例えば特許文献4及び特許文献5)や、ジアルキルシリコン系樹脂等の使用も可能である。
熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、モノ第三ブチルハイドロキノン、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、ピクリン酸、ジ−p−フルオロフェニルアミン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾールなどを挙げることができる。
モールド積層体を形成する積層工程において、本発明に使用できる感光性樹脂組成物を使用する場合、次の工程である搬送ステージ22の面内角度制御工程において、モールド積層体10内の硬化樹脂層13の上から第一のアライメントカメラ23により下層にあるインプリント成形モールド11内に設けられた2つのアライメントマーク12を検知するため、硬化樹脂層13は可視光を透過する必要がある。又、最後の工程である貼合・離間工程において、硬化樹脂層13は円筒状の印刷用版胴21に貼合されるので、可撓性があり寸法安定性の優れたものが好ましい。
これに適した該感光性樹脂組成物の具体例としては、これに適した該感光性樹脂組成物の具体例としては、APR(登録商標;旭化成イーマテリアルズ(株)製)、AFP(登録商標;旭化成イーマテリアルズ(株)製)、サイレル(デュポン(株)製)、紫外線硬化型液状シリコーンゴム(PDMS)(信越化学(株)製)等がある。常温で粘度が高いものを加温し、粘度を調整して使用することもできるし、モノマー成分を添加して粘度を調整して使用することもできる。
本発明で使用される熱硬化性樹脂としては、ケイ素樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アリルエステル、アクリル樹脂、ポリイミド、ウレタン樹脂、ノルボルネン系のような環状脂環式樹脂等が挙げられるが、上記同様に可視光透過する必要があるので、これらの中でもケイ素樹脂、アクリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ウレタン樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は感光性樹脂組成物と同様に硬化後に可視光透過する必要がある。又、可撓性があり寸法安定性の優れたものが好ましい。これに適した該熱硬化性樹脂組成物の具体例としては、ポリジメチルシロキサン(信越化学(株)製)等が特に好ましい。又、必要に応じて、公知の架橋剤、熱硬化剤又は前記の熱開始剤などを添加してもよいし、モノマー成分を添加して粘度を調整して使用することもできる。
本発明におけるモールド積層体10は以下に示す方法により積層するのが好ましい。まずインプリント成形モールド11を略水平に固定した状態で、スリットダイなどを使って感光性又は熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂組成物を塗布する。スリットダイの代わりにドクターブレードなどによる塗布機構を別途用いても良いし、カーテンコーターやスプレイコーター、バーコーター、グラビアコーターなどの公知の塗布機構を設置することももちろん可能である。モールドが略水平でない場合には、該樹脂組成物の流動や塗工むらが発生し、本発明の効果が良好には得られない。なお本明細書における略水平とは、厚みむらの観点から許容される程度に水平であることを意味し、積層工程における設置時のモールド積層体10の上面端部の高低差が10μm以下であることが好ましい。尚、インプリント成形モールド11自体が、厚みむらが大きい場合や水平な固定自体が困難な場合には使用に適さない。
該樹脂組成物の粘度は、1〜50Pa・sであり、好ましくは2〜20Pa・sであり、さらに好ましくは3〜15Pa・sである。粘度がこの範囲内にあると、樹脂層の塗布後の平坦性が保たれるし、又、硬化後の硬化樹脂層13の厚みも所望の厚みになるので好ましい。
尚、本発明では、必要に応じて硬化樹脂層13の層形成側の表面に離型層を有するインプリント成形モールド11であってもよい。すなわち、インプリント成形モールド11の表面に離型処理を行ない、硬化樹脂層13との剥離を容易にし、メインパターンやアライメントパターンの欠損を低減することが可能である。離型処理としては市販のシリコン系、テフロン(登録商標)系に代表される離型剤のコーティングや、パーフルオロ基を有するシランカップリング剤等による表面処理が挙げられる。
必要に応じて、インプリント成形モールド11上に塗工された該樹脂組成物からなる層の上に基材を積層することも可能である。基材としては、硬化樹脂層13の場合と同様に、紫外線及び可視光透過する材質である必要があり、又、樹脂硬化前後の寸法安定性の高いものが好ましく使用される。例えば、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどのポリオレフィンシートなどが好適に用いられる。又、ポリエステル(例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート(PEN))、PAN(ポリアクリロニトリル)やポリ塩化ビニルなどのプラスチック樹脂、スチレン−ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ガラスファイバーで補強されたプラスチック樹脂(エポキシ樹脂やフェノール樹脂など)製のシートが挙げられる。これらの中でも、透明支持体であり、硬化前後の寸法安定性に優れるPENシートであることがより好ましい。
この場合、所望する硬化樹脂層13の厚みを確保する目的で、スペーサーをインプリント成形モールド11と基材の間に挟むことも好適に行われる。好適なスペーサーとしてシクネスゲージ(隙間ゲージ)を挙げることができる。又、さらに硬化樹脂層13と基材との密着力を高めるためや平坦性を向上させるために、基材の上部にガラス板を積層することも好適に用いられる。
引き続き、このように積層されてなるモールド積層体10の樹脂組成物側(基材を用いた場合には基材面側)から光照射又は加熱により該樹脂組成物を硬化させる。当該感光性樹脂組成物の場合は、紫外線の照度は特に限定されず、該感光性樹脂組成物の感光特性や厚みから適宜決定すればよい。一般的には、波長が365nmのメタルハライドランプや高圧水銀灯を用いて500〜3000mJ/cm2の条件のもとで行なわれる。特に、より高精細なパターン解像性が求められる場合には、平行光の紫外線で露光することが好ましい。又、基材は、表面にハレーション防止層(紫外線吸収層)が設けられたものであってもよい。
上部に基材やガラス板を積層した場合や、さらに基材とモールドの間に設けたスペーサーは、樹脂組成物を硬化させた後に適宜除去されて、インプリント成形モールド11に形成されたパターンが硬化樹脂層13に転写されてなる、モールド積層体10が得られる。
得られたモールド積層体10中の硬化樹脂層13の厚みは0.1〜3mmが好適である。3mmよりも厚くなると印刷用版胴21に貼合し難くなるし、硬化樹脂層13の材質にもよるが、貼合時にクラックが入ったり割れたりしやすくなるので好ましくない。又、0.1mmよりも薄くなると、ハンドリングが難しく、貼合し難くなり好ましくない。尚、硬化樹脂層13の厚みは、モールド積層体10の厚みからインプリント成形モールド11の凸部の厚みを除して求める。インプリント成形モールド11の凸部及び凹部の厚み測定は、微細形状測定機(株式会社 小坂研究所製 サーフコーダ ET400L)で測定し、10箇所の平均値として求めた。モールド積層体10の厚みはデジタルシクネスゲージ(株式会社ミスミ製 DES−3010)により測定した。
以下に一例として、本発明で使用されるインプリント成形モールド11上に熱硬化性樹脂であるジメチルシロキサン樹脂及び基材としてPENシートを積層し、樹脂を硬化させた後に基材を剥離して、モールド積層体10が得られる例を示す。
(実施例1)
基板として、厚さが3.0mmのソーダライムガラス板(210mm×297mm)を用意し、前述の方法により、表面にラインアンドスペースの凸凹部を有するメインパターン領域1011を設けたインプリント成形モールド11を得た。微細形状測定機で測定した凸部と凹部の高さの差は3μmで、ラインアンドスペース幅は最小10μm/10μmであった。
2つのアライメントマーク12の中心位置を結ぶ線分は、このインプリント成形モールド上にメインパターン領域1011内のパターンラインに平行になるように設けた。
前述したように、基板のアライメントマーク12を付与する領域全面にクロム膜を形成した後で、レジスト膜を形成し、パターン露光、現像後、残されたレジスト膜をマスクとして、後で凹部となる箇所のクロム膜を除去した。そのうえでクロムに対してガラスのエッチング選択性の高い反応性エッチングガスにより、ガラス部をエッチングし、残されたレジスト膜を除去することにより、メインパターン領域1011にはクロム膜がなく、アライメントパターン領域1012の凸部にクロム膜が設けられた凸凹構造のインプリント成形モールド11を形成した。形成されたアライメントマーク12は直径が150μmの円形であった。アライメントマーク12の中心の位置は、2つのアライメントマーク12が図3で右上隅と左上隅となるように置いたときに、角から23.5mm、23.5mm離れた位置であった。
ガラス板上に、基材として使用する、インプリント成形モールド11よりも大きいポリエチレンナフタレート(PEN)シート(帝人株式会社製 商品名 Q65HA)を固定し、フィルム上のモールドの四隅に相当する位置に厚み1.0mmのシクネスゲージ(隙間ゲージ)を設置する。
熱硬化性のジメチルシロキサン樹脂溶液(信越化学工業社製 商品名 X−32−3279A/B)をPENシート上に滴下し、上からアライメントマーク12が設けられたインプリント成形モールド11を凹凸を形成した面を下に向けて気泡が入らないようにして押し付けた。モールド11全体に適度な荷重をかけて、該樹脂が流動し、該樹脂の厚みが全体に均一になるようにした。面内の厚み均一性は、デジタルシクネスゲージを使って測定箇所の最大膜厚と最小膜厚との差で評価し、10箇所の測定におけるその差が0.1mm以下になるまで全体を均一にした。その後、樹脂溶液を150℃で1時間加熱硬化させたうえで、シクネスゲージ(隙間ゲージ)を外し、PENシートをインプリント成形モールドと同じ大きさになるようにカッテイングし、硬化樹脂層13の上にPENシートが基材として積層されたモールド積層体10を得た。
PENシートを剥離し、モールド積層体10の厚みを測定したところ、4.0mmであり、インプリント成形モールドの厚みが3.0mmであるから、これより硬化樹脂層13の厚みは1.0mmで、最大膜厚と最小膜厚の差は0.1mmと優れたものであった。
以上、本発明のモールド積層体10の積層工程について説明したが、次に搬送ステージ22の面内角度制御工程について説明する。
(印刷用版胴の製造装置)
図2は、本発明に係る印刷用版胴21の製造装置の概略平面図である。
本発明の製造装置は、図2に示すように、設置台20、印刷用版胴21、印刷用版胴駆動部211、搬送ステージ22、ステージ搬送用の一対のガイド27、搬送ステージ22上に固定されるモールド積層体10、2台の第一のアライメントカメラ23及び2台の第二のアライメントカメラ24、カメラ用のガイドレール28及び281、カメラ支持柱29及び291並びにコンピューター25等を有する。以下、これらについて詳細に説明する。
設置台20の上面には、長手方向に沿って設置台20に支持された一対のガイド27が延在されており、これら一対のガイド27には、たとえば石定盤のような平坦で硬い搬送ステージ22が摺動自在に設けられている。搬送ステージ22は、長手方向がガイド27の延在方向に向くように配置され、ガイド27により設置台20上を往復運動できるよう支持されており、図示しない駆動装置により駆動されてガイド27に沿って往復運動する(図2の矢印X方向でガイド27と平行)。又、搬送ステージ22の中心部には面内回転軸38が設けられており、駆動装置(図示しない)により駆動され、搬送ステージ22自身が面内回転する。
搬送ステージ22には、該駆動装置とともに、搬送ステージ22をガイド27に沿って±1μmの精度で移動可能な制御装置、面内角度制御装置及び各々の検知装置(該制御装置及び検知装置は図示しない)が設けられている。さらに後述する印刷用版胴21の回転速度に同期搬送させる機能も設けられており、コンピューター25のコントローラー(図示しない)により動作制御される。
又、搬送ステージ22には、搬送対象であるモールド積層体10を固定するための吸着機構(図示しない)が設けられている。具体的には搬送ステージ22の中心部に吸着用のスリット(図示しない)があり、ステージ22は真空ポンプ(図示しない)と接続されている。該スリットが埋まるようにモールド積層体10を配置し、真空ポンプを稼働することで該スリットを通じて、モールド積層体10が真空吸着され、搬送ステージ22に固定される。
モールド積層体10は、2台の第一のアライメントカメラ23の視野内にモールド積層体10が入るように搬送ステージ22の上面に真空吸着され、固定される。具体的固定方法については後述する。
設置台20の中央部には、印刷用版胴21が設けられ、その機械軸方向(MD;版胴21の長軸方向(TD)に垂直で版胴中心を通る線31の方向)が搬送ステージ22の移動方向(矢印X方向)と平行になるように配置されていて、印刷用版胴21のMD線31の延長線上に搬送ステージ22の面内回転軸38が重なるように配置される。印刷用版胴21は駆動軸212により駆動装置211と連結され、駆動装置211は設置台20に固定されている。又、印刷用版胴21は搬送ステージ22の移動方向に鉛直な方向(図2の紙面に垂直又は図4(A)の矢印Z方向)に昇降運動することもできる。駆動装置211には印刷用版胴21を版胴21の外周長さとして±1μmの精度で回転可能な機能、及び昇降方向で±1μmの精度で昇降可能な機能が備わるとともに、版胴21の回転角度及び昇降位置の検知装置も設けられており、後述されるコンピューター25のコントローラー(図示しない)により動作制御される。
第一のアライメントカメラ23及び第二のアライメントカメラ24並びに搬送ステージ22及び印刷用版胴21の駆動制御装置は、コンピューター25内のコントローラー(図示しない)と接続されている。コンピューター25は、所謂パーソナルコンピューターで構成されており、CPUを制御主体として、メモリ、入力部、出力部を備え、各アライメントカメラ23及び24に対応する画像入力部及び画像メモリを備え、カメラ23及び24で撮影された撮像図を画像処理する機能が備わる。
2台の第一のアライメントカメラ23(CCD撮像素子またはCMOS撮像素子を使用したカメラ)は、モールド積層体10内のアライメントマーク12に向かうように配置される。各々のカメラ23は、印刷用版胴21の長軸方向(TD)に沿うように設けられたガイドレール28に移動可能に案内される。ガイドレール28の両端は2本の支持柱29で支持されており、ガイドレール28と一体となって搬送ステージ22を跨ぐように設置台20に固定される。
各々の第一のアライメントカメラ23には、予めカメラの視野内に十字状のカメラマーク33が設けられており、カメラ23をガイドレール28に沿って移動させると、カメラマーク33もガイドレール28に沿って、すなわち印刷用版胴21のTDに平行に移動する。カメラ23は、カメラの視野内にアライメントマーク12が入るまで平行移動させたのちに固定される。カメラ23のストロボ光源を発光させ、モールド積層体10に照射したストロボ光の反射光を、カメラ23本体に入力させることにより、モールド積層体10中のアライメントマーク12と共にカメラマーク33も撮影され、得られた撮像図情報は後述するコンピューター25へ送られる。
又、第一のアライメントカメラ1台につき、1つのアライメントマーク12が撮影される。図2には、モールド積層体10が搬送ステージ22に固定された状態が示されているが、たとえばこのマーク12が、モールド積層体10の左上方の隅近傍に配置されている場合には、2台の第一のアライメントカメラの内、左側のカメラにより撮影され、右上方の隅近傍に配置された2つ目のマークは右側のカメラで撮影される。
2台の第一のアライメントカメラ23により別々に撮影された2枚の撮像図は画像処理され、2つのアライメントマーク12と2つのカメラマーク33の合計4つのマークが同時に撮影された1枚の合成撮像図として得られる。この撮像図における4つのマークの相対位置関係は実際の相対位置関係と同じに維持されている。このような合成撮像図は、例えば以下の操作によって得られる。
まず、第一のアライメントカメラ23により、1つのアライメントマーク12と1つのカメラマーク33を撮影し、得られた撮像図を画像処理して、アライメントマーク12とカメラマーク33との距離及び印刷用版胴のTDに対する角度を算出する。前者のアライメントマーク12とカメラマーク33との距離は、カメラ視野内にスケールバーを設け、被撮影物と共に撮影された撮像図を画像処理により撮像図中のアライメントマーク12の中心点とカメラマーク33の中心点との距離を実長に変換することによって得られる。
又、後者の印刷用版胴21のTDとの相対角度については、これも画像処理操作の一つとして、撮像図中のカメラマーク33を起点とする印刷用版胴21のTDに平行な線を撮像図中で引いたうえで、アライメントマーク12の中心点とカメラマーク33の中心点とを結ぶ線分も引き、両線のなす角度を求めることによってなされる。
もう一台の第一のアライメントカメラ23により、上記と同様に、もう1つのアライメントマーク12ともう1つのカメラマーク33との距離及び印刷用版胴のTDに対する角度が算出される。
2台の第一のカメラ23間の距離は各々のカメラがガイドレール28上で固定されており計測可能で、これより2台のカメラの中のカメラマーク33の中心点間の距離を求めることができる。そして、このカメラマーク間の距離と、上記の操作で算出されたそれぞれのアライメントマーク12の中心点とアライメントカメラ33の中心点との距離及び印刷用版胴のTDに対する角度から、実際と同じ位置関係にある2つのアライメントマーク12と2つのカメラマーク33とが撮影された1枚の撮像図として得ることができる。
撮像図の画像処理の方法は公知の方法により処理される。例えば、上記で得られた撮像図はコンピューター25のコントローラー内に送られ、前処理として、図2で示されるようなX方向とY方向のそれぞれの方向に微小画素として分解された上で、2値化、フィルター処理及びグレー処理などが行われ、さらに計測処理として、パターンマッチングにより画像データから寸法などが計測されて、その処理結果はコントローラーを介して制御装置に信号として送られる。
以上のような操作により得られた典型的な撮像図が図3に示されている。この撮像図から、2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35と、2つのカメラマーク33の中心点を結ぶ線分34との方向角37(Θ)をコンピューター25内で演算した上で、コンピューター25内のメモリーに記憶される。より詳細については、後述される搬送ステージ22の角度制御工程のところで説明する。
2台の第二のアライメントカメラ(CCD撮像素子またはCMOS撮像素子を使用したカメラ)24は、印刷用版胴21上に設けられた2つのアライメントマーク71(図7)に向かうように配置される(図2)。この2つのアライメントマークは、印刷用版胴21の特定位置26における印刷用版胴のTDと平行な線上に設けられる。
当該マーク71は、インプリント成形モールド11上に形成されたマークの場合と違って、上に樹脂や基材等の視認性を損なうものがないため、アライメントカメラ24によってマーク71は容易に認識できるので、マークとして視認できるものであれば特に限定されない。例えば、色付きフィルムをアライメントマーク12のような十文字状又は円形状にしたものをマーク71として使っても良い。
各々の第二のアライメントカメラ24の視野内には十字状のカメラマーク72が設けられており(図7)、印刷用版胴21のTDに沿うようにガイドレール281が設けられており、各々のカメラ24はこのガイドレール281に移動可能に案内される(図2)。第二のアライメントカメラ24は視野内にアライメントマーク71が入るまで、ガイドレール281に沿って平行移動したのちに固定される。ガイドレール281の両端は2本の支持柱291で支持されており、ガイドレール281と一体となって搬送ステージ22を跨ぐように設置台20に固定される(図2)。第二のアライメントカメラ24にも上記の第一のアライメントカメラ23の場合と同様に、得られた撮像図情報は後述するコンピューター25へ送られる。
第二のアライメントカメラ24の場合についても、カメラ1台につき、1つのアライメントマーク71が撮影される。図2に印刷用版胴21及びアライメントカメラ24の平面図が示されているが、たとえば1つ目のアライメントマーク71が印刷用版胴21の右隅近傍に配置されている場合には、2台のアライメントカメラの内、右側のカメラにより撮影され、左隅近傍に配置された2つ目のマークは左側のカメラで撮影される。
又、第二のアライメントカメラ24により別々に撮影された2枚の撮像図は画像処理され、2つのアライメントマーク71と2つのカメラマーク72の合計4つのマークが同時に撮影された1枚の合成撮像図として得られる。この撮像図における4つのマークの相対位置関係は実際の相対位置関係と同じに維持されている。このような合成撮像図を得る操作方法については、第一のアライメントカメラ23によって得られる合成撮像図の場合と同様である。
コンピュター25に内蔵される図示しないコントローラーにより、得られた画像処理後の情報を下に、印刷用版胴21の昇降位置、回転角度及び回転数は制御され、搬送ステージ22は所定の面内角度だけ回転するように制御され、さらに所定量及び所定速度で印刷用版胴21側へ移動するように制御される。
以上、本発明の製造装置の概要及びその機能について説明した。次に搬送ステージ22の面内角度制御工程について説明する。
(面内角度制御工程)
本工程においては、最初にモールド積層体10を搬送ステージ22上に、この積層体10内の2つのアライメントマーク12のそれぞれが2台の第一のアライメントカメラ23の視野に入るように固定される。ここでは、モールド積層体10を固定する前に、まずモールド積層体の中の1つ目のアライメントマーク12が1台目のカメラ23の視野内に入るように、モールド積層体10を搬送ステージ22上に仮置きしてから、2つ目のマーク12が2台目のカメラ23の視野内に入るように、カメラ23をガイドレール28上で移動させつつモールド積層体10の配置位置も調整しながら、視野に入るのを確認する。
そして、カメラ23を固定すると共にモールド積層体10を、搬送ステージ22に設けられた吸着機構を用いて調整後の配置位置に吸着固定する。モールド積層体10の配置位置の調整は搬送ステージ22をガイド27に沿って前後搬送させることによって調整される。図2には同じく、モールド積層体10が搬送ステージ22上に固定された状態にあるその概略平面図を示した。
モールド積層体10を搬送ステージ22上に固定する方法としては、本実施形態の方法
に限定されず、たとえば一例として、モールド積層体10のおよその固定位置を決めてか
ら、搬送ステージ22上に粘着シートを貼りつけて、その上にモールド積層体10を固定
するといったような方法でもよい。
接着処理する場合や粘着シートを貼りつける場合には、接着層又は粘着シートの厚みはできるだけ薄くなるようにして固定するのが好ましい。好ましい厚みとしては、100μm以下である。
このようにモールド積層体10を固定した上で、モールド積層体10中に設けられたアライメントマーク12を、アライメントマーク12に向かって設置された第一のアライメントカメラ23によって検知し、2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35(図3にて示した)の方向が、印刷用版胴21のTD(軸方向)線32の方向と平行になるように搬送ステージ22の面内角度を制御する。
2つのアライメントマーク12を結ぶ線分を版胴21のTDに平行にすることによって、モールド積層体10内のインプリント成形モールド11に形成されたパターンライン36と版胴21のTDとを平行にすることができ、後述するモールド積層体10の貼合・離間工程において、版胴21上に版胴21のTDと平行なパターンラインが転写される。
図3(A)に、典型例として、第一のアライメントカメラ23により撮影された2つのアライメントマーク12の撮像図を2つのカメラマーク33と共に示す。尚、この図の上部には、本工程が容易に理解されるために、印刷用版胴21の機械軸方向(MD)線31及び長軸方向線(TD線)32とを併記し、これらの線分(31及び32)の方向と、2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35との角度関係が明瞭になるようにした。又、全体の態様が理解されやすいように、モールド積層体10及び搬送ステージ22も併記した。
図3(A)では、2台の第一のカメラ23の視野内に2つのアライメントマーク12が入るように、モールド積層体10の搬送ステージ上への固定位置を調整したものの、目的とする2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35の方向が、2つのカメラマーク33の中心点を結ぶ線分34の方向、すなわち印刷用版胴21のTD線32の方向に対してずれていることが示されている。このずれ角を方向角37(Θ)とする。
図3(B)に、搬送ステージ22を回転軸38中心に時計回りに、2本の線分34と35が回転により、そのずれが補正されるように回転させた場合の撮像図を示した。このように搬送ステージ22を所定の角度(この場合は方向角37(Θ))面内回転させることによって、モールド積層体10内の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35を、2つのカメラマークの中心点を結ぶ線分34に対して、すなわち印刷用版胴21のTD線32に対して平行に制御することができる。平行の程度は目的とするインプリント対象によって異なるが、方向角37が0.1°以下となるように回転させることが好ましく、0.01°以下がより好ましく、0.005°以下がさらに好ましい。
図中には2つのアライメントマーク12に平行なパターンライン36も示してあるが、以上の角度制御により、すなわち目標であるモールド積層体10中に設けられたパターンライン36の方向と印刷用版胴21のTDとを平行にすることができる。
(昇降位置の位置決め工程)
次に印刷用版胴21の昇降位置の位置決め工程について説明する。
この工程では、まず印刷用版胴21の昇降位置を、モールド積層体10が印刷用版胴21側に水平移動(ガイド27が延在する方向に沿って)して、両者が貼合されるように制御する。
この印刷版胴21の昇降位置の制御方法についての理解をより容易にするために、この次の工程であるモールド積層体10の貼合・離間工程の概要について説明しておく。
図4(A)には、この次の貼合・離間工程で実施される、モールド積層体10と印刷用版胴21との貼合状態が示されている。この図では、印刷用版胴21の上に設けられた特定位置26と、モールド積層体10中に設けられた2つのアライメントマーク12(一つは図示されず)とが、印刷用版胴21の最下点41で重なり合わされて貼合される状態が示されている。図8(A)、(B)に示されるが、特定位置26に設けられた2つのアライメントマーク71(図示されない)は、印刷用版胴21の最下点で版胴21の長軸方向(TD)に沿った線上、すなわちニップライン上にて、重ね合わされて貼合されることになる。又、図4(B)には、さらに工程が進み、インプリント成形モールド10が離間される状態も示されている。
このように、モールド積層体10の貼合・離間工程の概要から分かるように、印刷用版胴21とモールド積層体10との貼合をなすためには、印刷用版胴21の昇降位置を、モールド積層体10が搬送ステージ22により印刷用版胴21側へ水平移動して、印刷用版胴21のニップライン上にて貼合されるような位置に制御する必要がある。
このことは、印刷用版胴21の最下点41の昇降位置を、搬送ステージ22の高さ42(図5)に、モールド積層体10の厚み43を加えてなる昇降位置に制御することによってなされる。
搬送ステージ22の高さ42は、図5に示されているように、搬送ステージ22の左端部を印刷用版胴21の真下近傍まで移動させ、印刷用版胴21を降下させながら搬送ステージと接触させた場合のステージ22の高さを表す。この値は、設置台20の上にガード27を介して載置された搬送ステージ22の高さを、例えば高精度高さ測定器等を使って実測することによって求められる。高さはこのときの印刷用版胴21の昇降位置を搬送ステージ22の高さ42として、一旦コンピューターのメモリに記憶させておき、これにモールド積層体10の厚みを加えた値を再度メモリにインプットする。
実際に、印刷用版胴21がモールド積層体10と貼合される場合、印刷用版胴21をモールド積層体10の深さ方向に圧接されるようにして貼合される。圧接される程度は、モールド積層体10中の硬化樹脂層13の厚みに対して、0.1〜10%であることが好ましい。この圧接の程度は、硬化樹脂層13の厚みや材質によっても変わり、より好ましくは0.5〜5%である。
前述のモールド積層体10の積層工程における実施例で得られた硬化樹脂層13の厚みは1.0mmであったから、圧接の程度は1〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましい。
このようにして求めたモールド積層体10の圧接分を上記のメモリに記憶された昇降位置に反映させて、印刷用版胴21の昇降位置を決める。
尚、前記したように、モールド積層体10を搬送ステージ22に固定するために接着剤等を用いる場合もあるが、昇降位置には影響されない程度に薄い場合は、考慮しなくてもよい。
(特定位置の位置決め工程)
次に、印刷用版胴21上に設けられた特定位置26と、モールド積層体10内の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35とを重ね合わせて貼合するための、印刷用版胴21及び搬送ステージ22の位置合わせ工程について説明する。
図4(A)は同じく、搬送ステージ22上に固定されたモールド積層体10の貼合・離間工程を示す概略側面図である。この図は、上記のごとく、印刷用版胴21の上に設けられた特定位置26(TD方向の線分)と、モールド積層体10中の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分とを重ね合わされて貼合されている態様である。この態様にするためには、上記のような印刷用版胴21の昇降位置の調節に加えて、モールド積層体10内の2つのアライメントマーク12と印刷用版胴21上の特定位置26とが、印刷用版胴21のニップライン上で貼合されるように制御する必要がある。
最初に搬送ステージ22の貼合前の初期位置を決め、その位置から貼合するまでの搬送ステージ22の必要移動量を求める。次に同様にして、印刷用版胴21の特定位置26の初期角度を決め、その角度から貼合されるまでの必要回転角度を求める。求められた搬送ステージ22の必要移動量と印刷用版胴21の必要回転角度とをコンピューター25のメモリに記憶させた後で、コントローラーにより、貼合離間時に、印刷用版胴21を回転させつつ、搬送ステージ22を印刷用版胴21の回転速度に同期移動させながら所定量移動させて、モールド積層体10の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分と印刷用版胴の特定位置26とを貼合させる。
搬送ステージ22の貼合前の初期位置は、モールド積層体10内の2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35を2つのカメラマーク33の中心点を結ぶ線分34に重ねあわせることによって決めることができる。これについては、前記図3(B)の搬送ステージ22の面内角度制御工程の場合を用いて説明する。図3(B)で示されたように、2つのカメラマーク33の中心点を結ぶ線分34と、モールド積層体10中に設けられた2つのアライメントマーク12の中心点を結ぶ線分35とが、お互いが平行になるように、すでに搬送ステージ22の面内角度は制御されているが、2本の線分同士が重なり合っていない、すなわち搬送ステージ22のX方向(図2及び図3(B)の上下方向)の位置がずれている(位置ずれ39(α))ことが示唆される。
面内角度制御工程の場合と同様、この2本の線分(34と35)の位置ずれ39(α)をコンピューター内で位置ずれ量として演算することができる。そして位置ずれ量を補正するように搬送ステージ22を搬送させる(この場合には図3(B)の矢印方向に搬送される)。上記2本の線分が重なり合って、搬送ステージが初期位置に配置された場合の状態を図6に示した。重なり合った時の搬送ステージ22の位置を初期位置としてコンピューターのメモリ内にインプットしておく。
この搬送ステージ22の初期位置から搬送ステージ22を印刷用版胴側21へ水平搬送させ、モールド積層体10のアライメントマーク12が印刷用版胴21の特定位置26と、印刷用版胴21の最下点、すなわちニップライン上で重なり合うまでの搬送ステージの移動量が、搬送ステージ22の必要移動量となる。ここで、この初期位置から印刷用版胴21のニップラインまでの必要移動量は、コンピューター内で演算される。
この移動量は、図4(A)に示されるように、ステージ22を版胴21とモールド積層体10とが重なり合う位置まで初期位置から搬送させた場合の移動量であり、搬送後のステージ22の位置を、初期位置を決めたのと同様にして、ガード27上の位置として検知し、このガード27上の位置から、先で求めたステージ22の初期位置との差から求めることができる。この移動量はコンピューター内に記憶される。尚、搬送後のステージ22のガード27上の位置は、印刷用版胴の最下点41直下(図4(A)のZ方向と逆方向)のガード27上の位置でとして求めることができる。
一方、図7(A)にて示されるように、前述の角度制御工程の場合と同様に、印刷用版胴21上の特定位置26に、中心点を結ぶ線分が印刷用版胴のTD線32と平行になるように2つのアライメントマーク71を設ける。
当該マーク71は、前述したインプリント成形モールド上に形成されたマークの場合と違って、上に樹脂や基材等の視認性を損なうものがないため、第二のアライメントカメラ24によって容易に認識できるので、マークとして視認できるものであれば特に限定されない。例えば、色付きフィルムでアライメントマーク12のような十文字状又は円形状にしたものをマーク71として使っても良い。
アライメントマーク71の印刷用版胴21上の初期角度は以下のようにして求められる。図7に示されたように、アライメントカメラ24は、搬送ステージ22の面内角度制御工程の場合と同様、2つのアライメントマーク71の中心点を結ぶ線分73とカメラマーク72の中心点を結ぶ線分74の2本の線分との位置ずれ75(β)を、コンピューター内で印刷用版胴21の回転角度として演算する。
そして、印刷用版胴21をこのずれ角度を補正するように回転させて、図7(B)に示されるように、2本の線分(73と74)とを重ねあわせる。この場合のアライメントマーク71の位置を初期角度81(ω)として得た(図8(A))。ここで、初期角度81(ω)とは、印刷用版胴21の最下点41から初期角度の位置におけるアライメントマーク71の角度とした(図8(A)には印刷用版胴21の初期位置を表す概略側面図を載せた)。
すなわち、この初期角度81(ω)が貼合するのに必要な回転角度となる。尚、図8Aでは、貼合されるまでの角度がωの場合を示したが、印刷用版胴21の初期位置がこの場合よりも高い位置にあり、貼合までに一回転以上要する場合には、ωにその回転数分の角度(360°×回転数)が加えられたものが初期角度となる。
(貼合・離間工程)
以上、印刷用版胴21及び搬送ステージ22の位置決めについて説明したが、前記されたように、印刷用版胴21及び搬送ステージ22はコンピューター25のコントローラーにより、印刷用版胴21の回転角度及び回転数に同期させて搬送ステージ22を所定の速度で所定量水平移動することができる。
したがって、前述の工程にて算出された、搬送ステージ22がモールド積層体10のアライメントマーク12と印刷用版胴21の特定位置26とが重なり合うまでに搬送される搬送量の情報と、印刷用版胴21のニップライン上でモールド積層体10のアライメントマーク12と重なり合うまでの回転角度81(ω)の情報とをコンピューター25のメモリーにインプットし、コントローラーにより、印刷用版胴21を回転させながら、搬送ステージ22の移動速度を印刷用版胴21の回転速度に同期させつつ所定量移動させることによって、モールド積層体10のアライメントマーク12と印刷用版胴の特定位置26とを貼合させることができる(図4(A))。
モールド積層体10を印刷用版胴21に貼合する方法としては、特に限定されるものではないが、印刷用版胴21の円筒面を予めシランカップリング剤(信越化学工業社製)による接着処理しておいたり、予め粘着シートを貼りつけておいて、その上にモールド積層体10を貼合するといったような方法でもよい。
尚、粘着テープの場合には、それ自体の厚みが厚すぎたり、厚み斑があったりする場合には使用に適さない。
以上のような方法によってモールド積層体10を印刷用版胴21に貼合する場合の接着力は、貼合・離間工程において、モールド積層体10から硬化樹脂層13とインプリント成形モールド11とが離間される、所謂剥離力よりも大きくなるように調整される。
引き続き、印刷用版胴21を回転させながら搬送ステージ22を水平搬送することにより、パターン転写された硬化樹脂層13は印刷用版胴21上に貼合されると同時に、インプリント成形モールド11が搬送ステージ22上に固定されたままの状態で、モールド積層体10から離間される(図4(B))。すなわち、硬化樹脂層13は、インプリント成形モールド11から剥離するのと同時に版胴21の円筒面に貼合される。このため、インプリント成形モールドから薄い硬化樹脂層13を剥離させ、該硬化樹脂層を印刷用版胴に貼合する方法と比較して硬化樹脂層における変形や歪の発生が少ないという特徴を有する。
印刷用版胴21及び搬送ステージ22の動作速度については、上述したモールド積層体10と成形モールド11との剥離力、硬化樹脂層13の性状などにより適宜調整される。
以上説明したように、本発明の印刷用版胴の製造法及び製造装置によれば、手作業を大幅に減らし、短時間で簡便にかつ高精度で、印刷用版胴の所望する位置に、微細転写パターンを貼合することができる。
本発明では、上記の製造方法及び製造装置の機能を用いることにより、印刷用版胴21上に形成された転写パターンの貼合前後のパターン歪を測定することが可能である。ここでパターン歪とは、インプリント成形モールド11のメインパターン領域1011またはアライメントパターン領域1012内の2点間の搬送ステージ22搬送方向の長さ1に、印刷用版胴の円筒面に貼合することによりパターンが伸長する分の補正を加えた長さ2と、印刷用版胴21に貼合された硬化樹脂層13内の転写後の該2点間の搬送ステージ22搬送方向の長さ3との差を意味する。
<実施例2>
以下に、その測定方法については説明する。
<貼合・離間前のパターン歪測定例>
図9(A)に示されているように、4つのアライメントマーク領域が右上隅と左上隅と右下隅と左下隅となるように配置し、左上隅と右上隅の2つのアライメントマーク12の中心位置を結ぶ線分35、及び右下隅と左下隅の2つのアライメントマーク12の中心位置を結ぶ線分935は、このインプリント成形モールド上で、メインパターン領域1011のパターンラインに平行になるように設けた以外は実施例1と同じ、インプリント成形モールドを作製した。ここで、線分35と線分935間の長さ(距離)を凸凹パターン領域間の長さとよぶ。
形成された各アライメントマークは、直径が150μmの円形であった。4つのアライメントマークの中心の位置は、角から23.5mm、23.5mm離れた位置であった。
アライメントマークを設ける方法は、前記のモールド積層体10の積層工程の実施例1に従って、モールド積層体10を得た。
ここで得られたモールド積層体10を上記の角度制御工程に行ったのと同様にして、図9(A)に示されるように、第一のアライメントカメラ23の視野の中に、モールド積層体10内のインプリント成形モールド11に設けられた2つのアライメントマーク12が観察できるように、モールド積層体10を搬送ステージ22上に固定する。
図9(A)では、隣の凸凹パターン領域内に設けられた2つのアライメントマーク912も撮影されているが、前述した4点を一枚の撮像図とした場合と同様の方法にて、6点(2つのアライメントマーク12及び2つのマーク912並び2つのカメラマーク33)が一枚の撮像図として得られるように画像処理した。
次に前述の面内角度制御工程及び位置決め工程の場合と同様にして、搬送ステージ22の面内方向の角度制御及び位置決め制御を行った。図9(A)には、両工程後の撮像図が示されている。まず角度制御工程については、図9(A)に示されているように、パターン中に設けられたアライメントマーク12の線分35とカメラマーク線分34との方向調整が実施され、マーク12の線分35と印刷用版胴21のTD線32の方向とが平行であることが示されている(すなわちカメラマーク線分34とも平行)。
引き続いて、2本の線分の重ね合わせによる位置決めを実施した場合も、同じく図9(A)に示される。アライメントマーク線分35とカメラマーク線分34とが重なり合っているときの、搬送ステージ22のその位置を初期位置とした。それから、第一のアライメントカメラ23の視野内で、今度はカメラマーク線分34と隣の凸凹パターン領域に設けられたアライメントマーク912の線分935とが重なり合うまで、搬送ステージ22を上方搬送(図2及び図9(A))させて、搬送ステージ22の初期位置からの水平移動量を求める。図9(B)には、カメラマーク線分34と隣の凸凹パターン領域に設けられたマーク912の線分935とが重なり合っている状態の撮像図が示されている。このようにして求められた搬送ステージ22の水平距移動量が、すなわちインプリント成形モールドの凸凹パターン領域間の長さとなる。
以上のような工程を経て測定されたインプリント成形モールドの凸凹パターン領域間の長さ1は250.00mmであった。
(貼合・離間後の歪測定)
次に、貼合・離間後のパターン歪を測定する。
上記の2つの凸凹パターン領域を有するモールド積層体10を用い、本発明の貼合・離間工程に従って、硬化樹脂層13からなる転写パターン層が貼合された印刷用版胴40を得た。
印刷用版胴21の位置決め工程の場合と同様に、印刷用版胴21に向かって設置された第二のアライメントカメラ24を用いて、アライメントカメラ24の視野内に、1つ目の凸凹パターン領域内に設けられた2つのアライメントマーク1012が入るように、印刷用版胴21を相当分回転させた。
ここで、2つのアライメントマーク1012とは、上記の貼合・離間前のモールド積層体10内のインプリント成形モールド11に設けられた2つのアライメントマーク12が、メインパターンと共に、印刷用版胴21上の硬化樹脂層13に転写されたもので、アライメントマーク12が凸状の円形なのに対して、アライメントマーク1012は転写されて凹形状の円形になる。貼合後はマーク上に樹脂や基材などが無いため、貼合前のように視認性の良い含金属膜120なしでも、第二のアライメントカメラ24によるマークの視認が可能であった。アライメントマーク10912の形状もマーク1012と同様で凹状の円形であった。
図10(A)にその場合の第二のアライメントカメラ24による撮像図を示す。図中、アライメントマーク1012、これらのマーク1012の中心点を結ぶ線分103、隣の凸凹パターン領域内のアライメントマーク10912、これらのマーク10912の中心点を結ぶ線分104、2つのカメラマーク72及びカメラマーク線分74が示されている。
同じく、印刷用版胴21の位置決め工程の場合と同様に、第二のアライメントカメラ24に設けられ印刷用版胴21のTD線32に平行なカメラマーク線分74に、印刷用版胴21上のアライメントマーク線分103が重なるように、版胴21の角度を制御した。図10(A)には版胴21の角度制御後の撮像図が示されている。この場合の版胴21の角度を初期角度とした。尚、この初期角度とは、版胴21の最下点41からアライメンマーク線分103までの角度とした。
同様に、第二のアライメントカメラ24の視野内に隣のパターン内に設けられた2つのアライメントマーク10912が入るように版胴21を回転させて、2つのアライメントマークの中心点を結ぶ線分104とカメラマーク線分74とが重なるように版胴21を回転させた。回転後の角度を2番目の角度とした。2番目の角度も印刷用版胴21の最下点からアライメントマーク線分104までの角度である。図10(B)に2本の線分が重なり合った場合の撮像図を示した。このようにして求められた初期角度と2番目の角度との差を印刷用版胴21の外周長さに換算して、これを印刷用版胴21上に転写されている各々の凸凹パターン領域間の長さとして求めた。
以上のような測定方法によって求められた印刷用版胴21上に転写されたパターンの凸凹パターン領域間の長さ3(105)は250.89mmであった。
貼合前のインプリント成形モールドの凸凹パターン領域間の長さ1は250.00mmであったが、印刷用版胴21に貼合することで硬化樹脂層13の厚みと印刷用版胴21の曲率に応じて、樹脂層が湾曲し、パターンがわずかに伸長する。硬化樹脂層13の厚みと版胴21の半径から算出される補正を加えた凸凹パターン領域間の長さ2は250.94mmとなるから、印刷用版胴21上の凸凹パターン領域間の長さ3(250.89mm)との差であるパターン歪はわずかに0.05mm(50μm)と極めて優れたものであった。
尚、上記の凸凹間パターン間の長さ2は、以下の計算式により補正計算した。
印刷用版胴21の半径をr、硬化樹脂層13の厚み(印刷用版胴に硬化樹脂層13を貼合するのに粘着シートなどを用いた場合にはその厚みとの総和)をt、さらに印刷用版胴21の断面図において、印刷用版胴21上に貼合された硬化樹脂層13の両端部と印刷用版胴21の中心とのなす角度をΘとして、凸凹パターン間の長さ(L’)を下記式により補正する。
L’=2×π×(r+t)×Θ/360
実施例2では、r = 175mm、t = 2.505mm、及びθ = 81°であったので、L’ = 250.94mmとなる。
以上のように、本実施形態によれば、位置合わせに要する手作業を大幅に減らし、短時間で簡便にかつ高精度で、印刷用版胴の所望する位置に歪の小さい微細パターンを形成することができる。