JP6401713B2 - ラパマイシン誘導体の低温合成 - Google Patents

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Description

本出願は、2013年1月22日に出願された米国特許仮出願第61/755,388号の優先権を主張するものであり、この出願の全体を参照によって本明細書に組み込む。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発のもとで行われた発明に対する権利に関する声明
適用なし
コンパクトディスクにより提出される「配列表」、表又はコンピュータプログラムリストの付属の参照
適用なし
バイオリムスA9(登録商標)(BA9としても知られている)は、平滑筋細胞の増殖及び再狭窄を予防するために冠動脈ステントの薬物コーティングとして開発された活性医薬成分である。BA9は、ストレプトミセス・ヒグロスコピクス(Streptomyces hygroscopicus)によって合成される市販のマクロライド天然物であるラパマイシン(シロリムスとしても知られている、CAS[53123−88−9])に構造的に関連する。「リムス」ファミリーのその他のメンバーとしては、エベロリムス(CAS[159351−69−6])、ゾタロリムス(CAS[221877−54−9])及びテムシロリムス(CAS[162635−04−03])が挙げられる。このファミリーのメンバーは、インビボにおいて免疫抑制、抗真菌、抗腫瘍及び/又は抗炎症作用があることが知られおり、移植拒絶反応、感染症、自己免疫疾患及び過度の細胞増殖によって特徴づけられる症状の治療に有用である。BA9の化学構造は、31員環トリエンマクロライドラクトンからなり、これは、根幹を成すラパマイシン環状構造を保ち、ラパマイシンのヒドロキシル基がエトキシエチル基によりアルキル化された40位の側鎖の付加物のみが異なる。
シロリムス及びその他のシロリムス誘導体と比較したBA9の化学構造を図1に提供する。この構造は、40位がエトキシエチル化されたラパマイシンの31員環マクロライドトリエンラクトン環からなる。BA9は、シロリムスのように、細胞内のイムノフィリンタンパク質FKBP12と結合する。結果として生じたマクロライド/FKBP−12複合体は、その後、シロリムスと同様の様式で細胞周期の進行に重要なタンパク質であるmTORと結合すると考えられている。mTORの不活性化により、いくつかの特定のシグナル伝達経路が抑制され、細胞周期がG1からS期で停止させられる。
BA9及びその他のラパマイシン誘導体の治療上の価値を考慮すると、このファミリーの活性剤を調製するための改善された方法が必要とされている。本発明は、この需要及びその他の需要に対処するものである。
本発明は、式I

の構造を有する化合物を得るための方法を提供する。
本方法は、
a)有機溶媒、窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物、式II

の構造を有する化合物及び式III

の構造を有する化合物を反応混合物として混ぜ合わせるステップと、
b)反応混合物を約25℃から約55℃の温度に維持するステップと、
c)反応混合物から式Iの構造を有する化合物を分離するステップと、
を含み、それにより式Iの構造を有する化合物を得る、方法であって、
式中、
は、R−(O)−Rからなる群から選択され、
は、C1〜5アルキレンであり、Rは、C1〜5アルキル;C1〜5アルキレン−OH;C6〜10アリールC1〜5アルキル;C6〜10アリールC1〜5アルコキシ;C1〜5アルコキシC1〜5アルキル;アシル;アシルC1〜5アルキル;アミノC1〜5アルキル;C1〜5アルキルアミノC1〜5アルキル;アシルアミノC1〜5アルキル;C1〜5アルコキシカルボニルアミノC1〜5アルキル;及びC6〜10アリール;
であり、
は水素であり、
下付文字dは、0〜1から選択される整数である。
シロリムス、バイオリムスA9及び関連する誘導体の化学構造を示す図である。
本発明の方法によるラパマイシン誘導体の調製のための合成スキームを示す図である。
図3Aは、50〜55℃で合成された粗製BA9のHPLC分析を示すグラフである。 図3Bは、40℃で合成された粗製BA9のHPLC分析を示すグラフである。
I.全般
本発明は、バイオリムスA9(BA9)を含むラパマイシン誘導体を得るための改善された方法を提供する。式Iの化合物を得るためのラパマイシンの誘導体化についての一般スキームを図2に示す。本方法は、制御された温度における適したトリフラートとのラパマイシンの反応、それに続く後処理及び生成物の単離を含む。方法の各種ステップは、本明細書に記載されている。
ラパマイシンの40−O−誘導体を合成する前述の方法は、反応性のヒドロキシル基に修飾を有する望ましくない副生成物を生成することが確認された。所望の誘導体と同様に非極性の特性をもつこれらの副生成物は、収率を著しく低下させ、精製を複雑にする。驚くべきことに、合成の温度を制御することによって、副生成物の生成を劇的に減少させることができることがわかった。反応条件の小さな変更が、生成物の収率及び純度の驚くほど大きな改善につながる。これらの予想外の利点については、下に詳細に記載する。
II.定義
「反応混合物として混ぜ合わせること」とは、少なくとも2つの別個の化学種が一緒に混ざり、最初の反応体のうちの1種を修飾するか又は第3の別個の化学種である生成物を形成するかのいずれかの反応をすることができるように、少なくとも2つの別個の化学種を接触させるプロセスを指す。しかしながら、得られる反応生成物は、添加された試薬間の反応或いは1種又は複数の添加された試薬から反応混合物中に生成され得る中間体から直接生成することができることが認識されるべきである。
「有機溶媒」とは、周囲温度及び圧力において液体であり、実質的に水を含まない炭素含有物質を指す。有機溶媒の例としては、これらに限定されるものではないが、トルエン、塩化メチレン、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及び石油エーテルが挙げられる。
「有機塩基化合物」とは、プロトン(すなわち、水素陽イオン)を受け取ることができ、塩基の共役酸を形成する炭素ベースの分子を指す。一般に、本発明の方法に使用される有機塩基化合物は、少なくとも1つの窒素ヘテロ原子を含む。有機塩基化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、ヒューニッヒ塩基(すなわち、N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、2,6−ルチジン(すなわち、2,6−ジメチルピリジン)などのルチジン、トリエチルアミン及びピリジンが挙げられる。
「分離すること」とは、化合物及び少なくとも1種の他の物質を含む混合物から化合物の少なくとも一部を単離するプロセスを指す。単離された化合物は、混合物中に存在する少なくとも1種の他の物質を実質的に含まない。
「アルキル」とは、示された数の炭素原子を有する直鎖又は分岐の飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキルは、C1〜2、C1〜3、C1〜4、C1〜5、C1〜6、C1〜7、C1〜8、C1〜9、C1〜10、C2〜3、C2〜4、C2〜5、C2〜6、C3〜4、C3〜5、C3〜6、C4〜5、C4〜6及びC5〜6などの任意の数の炭素を含んでもよい。例えば、C1〜6アルキルとしては、以下に限定されるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどが挙げられる。アルキルは、以下に限定されるものではないが、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの最大20個の炭素原子を有するアルキル基を指す場合もある。
「アルキレン」とは、示された数の炭素原子を有し、少なくとも2つの他の基と結合している直鎖又は分岐の飽和脂肪族ラジカル、すなわち、二価の炭化水素ラジカルを指す。アルキレンと結合する2つの部分は、アルキレン基の同じ原子又は異なる原子と結合してもよい。例えば、直鎖アルキレンは、−(CH−の2価のラジカルであってもよいこの場合、nは1、2、3、4、5又は6である。代表的なアルキレン基としては、これらに限定されるものではないが、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、sec−ブチレン、ペンチレン及びヘキシレンが挙げられる。
「アルケニル」とは、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を有する直鎖又は分岐の炭化水素を指す。アルケニルは、C、C2〜3、C2〜4、C2〜5、C2〜6、C2〜7、C2〜8、C2〜9、C2〜10、C、C3〜4、C3〜5、C3〜6、C、C4〜5、C4〜6、C、C5〜6及びCなどの任意の数の炭素を含んでもよい。アルケニル基は、以下に限定されるものではないが、1、2、3、4、5個以上を含む任意の適した数の二重結合を有してもよい。アルケニル基の例としては、これらに限定されるものではないが、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、イソペンテニル、1,3−ペンタジエニル、1,4−ペンタジエニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、1,3−ヘキサジエニル、1,4−ヘキサジエニル、1,5−ヘキサジエニル、2,4−ヘキサジエニル、及び1,3,5−ヘキサトリエニルが挙げられる。
「アルキニル」とは、少なくとも2個の炭素原子及び少なくとも1つの三重結合を有する直鎖又は分岐のいずれかの炭化水素を指す。アルキニルは、C、C2〜3、C2〜4、C2〜5、C2〜6、C2〜7、C2〜8、C2〜9、C2〜10、C、C3〜4、C3〜5、C3〜6、C、C4〜5、C4〜6、C、C5〜6及びCなどの任意の数の炭素を含んでもよい。アルキニル基の例としては、これらに限定されるものではないが、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、イソブチニル、sec−ブチニル、ブタジイニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、イソペンチニル、1,3−ペンタジイニル、1,4−ペンタジイニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、1,3−ヘキサジイニル、1,4−ヘキサジイニル、1,5−ヘキサジイニル、2,4−ヘキサジイニル、及び1,3,5−ヘキサトリイニルが挙げられる。
「アリール」とは、任意の適した数の環原子及び任意の適した数の環を有する芳香族環系を指す。アリール基は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16環原子などの任意の適した数の環原子、並びに6から10、6から12又は6から14環員を含んでもよい。アリール基は、単環式でもよく、融合されて二環式若しくは三環式基を形成してもよく、又は結合によって連結されてビアリール基を形成してもよい。代表的なアリール基としては、フェニル、ナフチル及びビフェニルが挙げられる。その他のアリール基としては、メチレン連結基を有するベンジルが挙げられる。一部のアリール基は、6から12環員を有し、例えば、フェニル、ナフチル又はビフェニルである。
「アルコキシ」とは、アルキル基を結合点とつなぐ酸素原子を有するアルキル基:アルキル−O−を指す。アルキル基に関しては、アルコキシ基は、C1〜6などの任意の適した数の炭素原子を有してもよい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、2−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどが挙げられる。
「カルボニル」とは、炭素−酸素二重結合(すなわち、−C(O)−)からなる部分を指す。
「アシル」とは、本明細書に記載されるとおりのアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基に結合された本明細書に記載されるとおりのカルボニル基を含む部分を指す。
「モル比」とは、第2の化学種又はあらゆる他の追加の化学種のモル数に対する第1の化学種のモル数の比を指す。
「クロマトグラフィー」とは、混合物を固定相に接触させ、移動相を使用して固定相から化合物を溶出することによって、混合物中の1種又は複数の他の化合物からある化合物を分離するプロセスを指す。クロマトグラフィーの例としては、ガスクロマトグラフィー、シリカゲルクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー及びアフィニティークロマトグラフィーが挙げられる。クロマトグラフィーは、例えば、化学反応の進行を分析するため又は化学合成後の物質を純化するために行われてもよい。マイクログラムからキログラムにおよぶ材料の量がクロマトグラフィー分離に一般に使用されるが、その他の量が使用されてもよい。
「固体化すること」とは、溶液中の化合物を合体させて固形物の物質にさせるプロセスを指す。溶液中の化合物の全体又はその任意の部分を固体化してもよい。固形物は、アモルファス又は結晶の物質であってもよい。「析出させること」とは、物質をアモルファスの形態に固体化することを指す。
「可溶化すること」とは、固形物の物質を溶媒に溶解させて溶液を形成するプロセスを指す。固形物質の全体又はその任意の部分を溶解させてもよい。溶けていない材料が、溶媒中に懸濁の形態で存在してもよい。
「約」という用語は、本明細書中で数値を修飾するために使用される場合、その明確な値の前後の近い範囲を意味する。「X」が値である場合、「約X」は、0.9Xから1.1Xの値、より好ましくは、0.95Xから1.05Xの値を意味するであろう。「約X」のいかなる言及も、少なくとも値X、0.95X、0.96X、0.97X、0.98X、0.99X、1.01X、1.02X、1.03X、1.04X及び1.05Xを具体的に示す。それにより、「約X」は、例えば、「0.98X」の請求項の限定に明細書の裏付けを教示及び提供することが意図される。
III.本発明の実施形態
本発明の方法は、多数のマクロライド誘導体を調製するために使用することができる。式I及びIIに従った構造を有するものを含むマクロライドは、大環状ラクトン環によって特徴づけられるポリケチド天然物及び合成類似体である。本発明の方法は、ラパマイシン誘導体であるバイオリムスA9(BA9)、エベロリムス、ゾタロリムス及びテムシロリムスの調製に特に有用である。その他のマクロライド誘導体も、本発明の方法を使用して調製することができる。
したがって、本発明の一部の実施形態は、式I

の構造を有する化合物を得るための方法を提供する。
本方法は、
a)有機溶媒、窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物、式II

の構造を有する化合物及び式III

の構造を有する化合物を反応混合物として混ぜ合わせるステップと、
b)反応混合物を約25℃から約55℃の温度に維持するステップと、
c)反応混合物から式Iの構造を有する化合物を分離するステップと、
を含み、それにより、式Iの構造を有する化合物を得る、方法であって、
式中、
は、R−(O)−Rからなる群から選択され、
は、C1〜5アルキレンであり、Rは、C1〜5アルキル;C1〜5アルキレン−OH;C6〜10アリールC1〜5アルキル;C6〜10アリールC1〜5アルコキシ;C1〜5アルコキシC1〜5アルキル;アシル;アシルC1〜5アルキル;アミノC1〜5アルキル;C1〜5アルキルアミノC1〜5アルキル;アシルアミノC1〜5アルキル;C1〜5アルコキシカルボニルアミノC1〜5アルキル;及びC6〜10アリール;
であり、
は水素であり、
下付文字dは、0〜1から選択される整数である。
一部の実施形態において、反応混合物は無色である。一部の実施形態において、反応の生成物は無色である。一部の実施形態において、本発明は、式I

の構造を有する化合物を得るための方法であって、
a)有機溶媒、窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物、式II

の構造を有する化合物及び式III

の構造を有する化合物を反応混合物として混ぜ合わせるステップと、
b)無色の反応混合物を得るために反応混合物を約25℃から約55℃の温度に維持するステップと、
c)無色の反応混合物から式Iの構造を有する化合物を分離するステップと、
を含み、これにより、式Iの構造を有する化合物を得る方法であり、
式中、
が、R−(O)−Rからなる群から選択され、
が、C1〜5アルキレンであり、Rは、C1〜5アルキル、C1〜5アルキレン−OH、
6〜10アリールC1〜5アルキル;C6〜10アリールC1〜5アルコキシ;C1〜5アルコキシC1〜5アルキル;アシル;アシルC1〜5アルキル;アミノC1〜5アルキル;C1〜5アルキルアミノC1〜5アルキル;アシルアミノC1〜5アルキル;C1〜5アルコキシカルボニルアミノC1〜5アルキル;及びC6〜10アリール;
であり、
が水素であり、
下付文字dが、0〜1から選択される整数である、方法を提供する。
一部の実施形態において、式Iの構造を有する化合物は、以下のものである。
一部の実施形態において、式IIの構造を有する化合物はラパマイシンである。一部の実施形態において、RはCH−CH−OHである。一部の実施形態において、Rは(CH−O−(CH−Hであり、eは1〜5から選択される整数であり、fは1〜5から選択される整数である。一部の実施形態において、RはCH−CH−O−CH−CH(すなわち、2−エトキシエチル)である。一部の実施形態において、eとfの合計が7を超えない。
一部の実施形態において、式Iの化合物は、BA9、A9としても知られているバイオリムスA9;40−O−(2−エトキシエチル)−ラパマイシン;42−O−(2−エトキシエチル)−ラパマイシン;ウミロリムス;(3S,6R,7E,9R,10R,12R,14S,15E,17E,19E,21S、23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−4−(2−エトキシエトキシ)−3−メトキシシクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3Hピリド[2,1−c][1,4]オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペンタオン;及び(1R,9S,12S,15R、16E,18R,19R,21R,23S,24E,26E,28E,30S,32S,35R)−1,18−ジヒドロキシ−12−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−4−(2−エトキシエトキシ)−3−メトキシシクロヘキシル]−1−メチルエチル]−19,30−ジメトキシ−15,17,21,23,29,35−ヘキサメチル−11,36−ジオキサ−4−アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ−16,24,26,28−テトラエン−2,3,10,14,20−ペンタオンである。バイオリムスA9は、CAS番号851536−75−9によっても知られている。
式Iの化合物を形成するのに適した任意のトリフラート化合物が本発明の方法に使用されてもよい。一般に、本発明の方法に使用されるトリフラートは、式IIIに従った構造を有する。構造ROSOCF(すなわち、式III)を有するトリフラートは、対応するアルコール(ROH)とトリフルオロメタンスルホン酸、塩化トリフルオロメタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物及び同種のものとの反応により調製されてもよい。トリフラートは、式Iの化合物を調製するのに特に有用であるが、アルコールROHのその他の誘導体(トシラート、メシラート、及びブロシラートを含む)も、本発明の方法に使用することができる。
任意の適した有機塩基が本発明の方法に使用されてもよい。一般に、窒素ヘテロ原子を有する塩基が使用される。適した塩基の例としては、ヒューニッヒ塩基(すなわち、N,N−ジイソプロピルエチルアミン)、2,6−ルチジン(すなわち、2,6−ジメチルピリジン)を含むルチジン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、1,8−ジアザビシクロウンデカ−7−エン(DBU)、1,5,7−トリアザビシクロ(4.4.0)デカ−5−エン(TBD)、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ(4.4.0)デカ−5−エン(MTBD)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(TMG)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(TMP)、ペンピジン(PMP)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(TED)、キヌクリジン及びコリジンが挙げられる。2種の以上の塩基の組合せが使用されてもよい。その他の塩基も、本発明の方法に適している場合がある。
一部の実施形態において、窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物は、式IV

(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立してH、C1〜5アルキル、OH及びNHからなる群から選択される)
に従った構造を有する。一部の実施形態において、窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物は、2,6−ルチジン及びヒューニッヒ塩基から選択される。一部の実施形態において、窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物は2,6−ルチジンである。
式IIの化合物、式IIIの化合物及び有機塩基を含む反応混合物は、約25℃から約55℃の温度に式Iの化合物を形成するために十分な任意の長さの時間維持されてもよい。一般に、反応混合物は、約25℃から約55℃の温度に数分から24時間の間のいずれかの時間維持される。反応混合物を維持するステップは、例えば、約1分から約24時間又は約30分から約18時間又は約1時間から約12時間又は約2時間から約10時間又は約4時間から約6時間であってもよい。反応混合物を維持するステップは、約2、3、4、5、6、7、8、9又は10時間であってもよい。一部の実施形態において、本発明は、ステップ(b)の維持するステップが約2〜10時間である、上記のとおりの式Iの構造を有する化合物を得るための方法を提供する。
式IIの化合物、式IIIの化合物及び有機塩基を含む反応混合物は、式Iの化合物を形成するのに十分な任意の温度に維持されてもよい。一般に、反応混合物は、約25℃から約55℃の温度に維持される。反応混合物は、約25℃から約55℃の温度、又は約30℃から約55℃、約35℃から約55℃、又は約40℃から約55℃、又は約45℃から約55℃、又は約50℃から約55℃、又は約30℃から約50℃、又は約35℃から約45℃に維持されてもよい。反応混合物は、約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54又は55℃に維持されてもよい。一部の実施形態において、本発明は、ステップ(b)の維持温度が約25から約40℃である、上記のとおりの式Iの構造を有する化合物を得るための方法を提供する。後ろに詳細を記載するとおり、反応温度の小さな変更が、望ましくない副生成物の形成の驚くべき減少につながることを発見した。
一部の実施形態において、本発明の反応混合物は無色である。一部の実施形態において、反応の生成物は無色である。「無色の反応混合物」とは、560〜600nmの間の波長における反応混合物の光学濃度が0.5未満であることを意味する。光学濃度は、例えば、0.5未満又は0.4未満又は0.3未満又は0.2未満又は0.1未満又は0.05未満であってもよい。光学濃度は、以下の式
λ=log10(I/I)、
(式中、Aλは、光の特定の波長(λ)における吸光度であり、Iは、材料を通過した照射線(光)(透過線)の強度であり、Iは、材料を通過する前の照射線(入射線)の強度である)
によって定義される。光学濃度は、希釈されていない反応混合物又はトルエン及び同種のものなどの適した溶媒により希釈された反応混合物のサンプルを使用して測定されてもよい。「無色の生成物」は、生成物のトルエン及び同種のものなどの適した溶媒の溶液の560〜600nmの間の波長における光学濃度が0.5未満であること意味する。
任意の適した有機溶媒が、本発明の方法に使用されてもよい。適した溶媒としては、これらに限定されるものではないが、トルエン、塩化メチレン、酢酸エチル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、石油エーテル及びそれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態において、有機溶媒は、トルエン又は塩化メチレンである。式IIの化合物を式Iの化合物に変換するために十分であれば、溶媒の量は重要ではない。一般に、溶媒と式IIの化合物の比は、重量に基づいて約1:1から約1000:1である。溶媒と式IIについての化合物の比は、例えば、重量に基づいて約100:1又は約10:1であってもよい。
式Iの化合物を形成するために十分な式IIIの化合物の任意の量が本発明の方法に使用されてもよい。一般に、本発明の方法において形成される反応混合物は、式IIの化合物の1当量に対して最大約60モル当量の式IIIの化合物を含む。式IIIの構造を有する化合物対式IIの構造を有する化合物のモル比は、例えば、約30対1から約60対1であってもよい。式IIIの構造を有する化合物対式IIの構造を有する化合物のモル比は、約30対1、又は約35対1、又は約40対1、又は約45対1、又は約50対1、又は約55対1、又は約60対1であってもよい。一部の実施形態において、式IIIの構造を有する化合物対式IIの構造を有する化合物のモル比は、約30対1から約60対1である。その他のモル比が本発明の方法に適している場合もある。
式Iの化合物を形成するのに十分な有機塩基の任意の量が、本発明の方法に使用されてもよい。一般に、本発明の方法において形成される反応混合物は、式IIの化合物の1当量に対して最大約120モル当量の有機塩基を含む。窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物対式IIの構造を有する化合物のモル比は、例えば、約80対1から約120対1であってもよい。窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物対式IIの構造を有する化合物のモル比は、約80対1、又は約85対1、又は約90対1、又は約95対1、又は約100対1、又は約105対1、又は約110対1、又は約115対1、又は約120対1であってもよい。一部の実施形態において、窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物対式IIの構造を有する化合物のモル比は約80〜120対1である。一部の実施形態において、比は、104対1である。その他のモル比が本発明の方法に適している場合もある。窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物は、1回の部分又は2回以上の別々の部分で添加されてもよい。一部の実施形態において、窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物は、2回の別々の部分で添加される。
本発明の方法は、一般に式Iの化合物を反応混合物から分離するステップを含む。式Iの化合物は、溶媒などの1種又は複数の化合物、有機塩基化合物、式IIの化合物又は式IIIの化合物から分離されてもよい。式Iの化合物を分離するために、任意の適した分離技術が使用されてもよい。適した分離技術としては、これらに限定されるものではないが、式Iの固形化合物の濾過、式Iの固形化合物の遠心分離、蒸留、液体抽出、昇華及びクロマトグラフィー技術が挙げられる。クロマトグラフィー技術の例としては、これらに限定されるものではないが、順相カラムクロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー及び薄層クロマトグラフィーが挙げられる。式Iの化合物を分離させるために、2つの以上の分離技術を組み合わせて実施してもよい。一部の実施形態において、式Iの構造を有する化合物を分離するステップは、式Iの構造を有する化合物を分離させるためにクロマトグラフィーを使用することを含む。一部の実施形態において、クロマトグラフィーは、カラムクロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー及び薄層クロマトグラフィーからなる群から選択される。一部の実施形態において、クロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィーであり、クロマトグラフィーは、酢酸エチル、ヘキサン及びヘプタンからなる群から選択される1種又は複数の溶媒を含む移動相を使用して行われる。一部の実施形態において、クロマトグラフィーは、ヘキサン及び酢酸エチルを用いたシリカゲルクロマトグラフィーである。
一部の実施形態において、本方法は、任意に式Iの構造を有する化合物を固体化するステップを含む。一部の実施形態において、式Iの構造を有する化合物を固体化するステップは、a)式Iの構造を有する化合物をメタノール中で可溶化するサブステップと、b)式Iの構造を有する化合物を水から析出させるサブステップとを含み、これにより、式Iの構造を有する化合物を固体化する。水からの析出に先立って式Iの構造を有する化合物を可溶化するためにその他の溶媒が使用されてもよい。
例1:2−エトキシエチルトリフラートの調製
米国特許第7,812,155号の方法に従って、2−エトキシエチルトリフラートを合成した。塩化メチレン(558g)を、予め窒素パージした乾燥した丸底フラスコに移した。これに続いて、2−エトキシエタノール(75.0g)及び2,6−ルチジン(89.9g)を添加した。その反応混合物を、0〜−10℃の間に冷却しながら20分間撹拌した。トリフルオロメタンスルホン酸無水物(282.4g)を滴下ロートにより反応混合物に滴加した。その後、撹拌した反応混合物に水を添加し、得られた二相の混合物をさらに5分間撹拌した。ジクロロメタン層を洗浄し、分離し、回収した。塩化メチレン溶液を硫酸ナトリウムにより乾燥し、硫酸ナトリウムを濾過によって除去し、溶媒を減圧下、30℃で除去した。
出発2−エトキシエタノールの505gスケールでも合成を行った。合成に続くこのバッチの減圧蒸留による精製により、1060g(収率86%)の2−エトキシエチルトリフラートが生成された。トリフラートは、米国特許第7,220,755号及び米国特許第7,193,078号に記載されている方法により調製してもよい。
例2:55℃におけるバイオリムスA9の調製。
2,6−ルチジン(49.1当量)を含むトルエン中で2−エトキシエチルトリフラート(44.3当量)とラパマイシン(1.0当量)のカップリングを、55℃(水浴の外部温度)で90分間行った。このプロセスでは(ラパマイシンの2.0gスケール)、2−エトキシエチルトリフラートを、予め加熱した反応混合物(55℃)に1回の部分を添加した。90分間の加熱後、外部加熱のスイッチを切り、続いて第2の部分の2,6−ルチジン(54.9当量)を添加した。第2のルチジン部分の添加後、反応混合物を周囲温度でさらに90分間撹拌し、その後、粗製BA9を単離するための後処理をした。後処理は、以下を含むものとした:1.酢酸エチルによる反応混合物の希釈;2.冷えた1NのHClによる反応混合物の急冷;及び3.3回分の20%の塩化ナトリウム水溶液による有機層の洗浄。塩化ナトリウムによる最後の洗浄後の水層のpHは約6であった。その粗製材料を、その後、1つの溶媒混合物(比が4:6(体積/体積)のn−ヘキサン/酢酸エチル)のみを使用したアイソクラティックシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。
このプロセスを2.0gスケールで行った。反応混合物の内部温度が50℃に達した後(tbath=51〜52℃)、2−エトキシエチルトリフラートを反応混合物に複数の部分で添加した。添加の際、58℃までの内部温度の上昇が観察された。反応の進行をHPLCによって観察した。HPLC分析によって得られたラパマイシン、BA9及びRRT=1.2の主な副生成物の相対量の概要を表1に示す。表の相対量は、AUC%(曲線下面積)、すなわち、得られたクロマトグラムの1つのピーク(ひいては、1つの化学種又は類似/同一の保持時間を有する2つの以上の化学種に対応する)に対応する合計シグナルのうちの割合として表わされている。RRTは、所与の化学種の保持時間対BA9の保持時間の比を指す(例えば、化学種Xなら、RRT=RT/RTBA9)。反応混合物は、トルエン及びルチジンを含むため、AUC%値は概算である。
表1に示されるデータにより明らかにされるとおり、BA9のAUC%は、加熱の45分の時点でその最大に達した。この時間の後も、ラパマイシンは依然として消費されるが、RRTが1.2の副生成物の増加も伴う。第2の部分の2,6−ルチジンの添加に続く周囲温度における90分間の撹拌は、反応混合物の組成に有意な影響を与えなかった。
HPLC分析は、本プロセスが粗製BA9をもたらすことを示した(58.6%AUC含有率)。未反応のラパマイシンに加えて(RRT約0.52〜0.58)、粗製生成物は、HPLC保持時間=11.0分(RRT=1.2)に9.6%AUCの主要な不純物/副生成物を含み、13.2分(RRT=1.42)及び13.6分(RRT=1.47)の間に最大1.8%AUCの1組の不純物を含んでいた。
例3:低温におけるバイオリムスA9の調製。
本プロセスを室温に近い温度で、以下の手順によって行った。2−エトキシエチルトリフラートの添加(1時間以内で少しずつ行った)が最初の反応混合物の内部温度を22.6℃から26.3℃に上昇させた。トリフラートの添加の完了後、反応混合物を約26℃において40分間撹拌し、その後、HPLCによって分析した(表2の0時間についての項目を参照)。反応混合物の内部温度を、その後、2、3分以内に30℃まで上昇させ、その混合物を、次に、この温度において最大19.5時間撹拌した。19.5時間撹拌すると、反応は平衡点に達した。
表2のデータに関して、「BA9 AUC%」とは、BA9、ラパマイシン及びRRT=1.2のピークの合計と比較した積分されたBA9のピークを指す。「絶対AUC%」とは、HPLCクロマトグラムのすべての積分されたピークと比較した積分されたBA9のピークを指す。表2のデータは、以下ことを明らかにしている:a)2−エトキシエチルトリフラートの添加の間、バッチの温度を30℃以下に制御することが、RRT=1.2の副生成物の形成を著しく減少させる;b)30℃での5時間後でも、反応混合物中に依然として32%の未反応のラパマイシンが存在する;c)ラパマイシンの量を27AUC%に低下させるためには合計で最大20時間の加熱が必要であろう;及びd)長時間の加熱は、RRT=1.2の副生成物を3.2%AUCに増加させている。
本プロセスを、40℃の最高温度で行った。この試験では、2−エトキシエチルトリフラートの添加(1時間以内で少しずつ行った)が、内部温度を24.2℃から27.6まで上昇させた。トリフラートの添加の完了後、反応混合物を約27℃で30分間撹拌した、その後、HPLCによって分析した(表3の0時間についての項目を参照)。反応混合物の内部温度を、その後、40℃まで上昇させ、この温度で最大4時間撹拌した。表3から明白なとおり、40℃における3〜4時間の撹拌後に反応混合物のBA9の収率が最大に達した。
異なる反応温度に関するデータを比較すると、40℃におけるHPLC/RRT=1.2の副生成物の形成が30℃における類似の項目(1〜2%AUC)よりも高いレベル(7〜10%AUC)であったことが示されている。また、2−エトキシエチルトリフラートの添加の間、バッチ温度を30℃以下に制御することが、RRT=1.2の副生成物の形成を著しく減少させることも確認された(約1AUC%含有率)。
粗製BA9を生成する反応混合物の完全なワークアップを含む、40℃以下の温度における粗製BA9の合成を、ラパマイシンの2.0gスケールで試験した。少しずつ30分以内で2−エトキシエチルトリフラートを添加すると、内部温度が20.0℃から24.0℃に上昇し、さらに撹拌すると(依然として外部加熱なし)、25.5℃に上昇した(トリフラートの添加開始から1時間後)。反応混合物を、その後、40℃に外部から加熱し(25分以内)、この温度で3時間撹拌した。最初の反応の後、12.9gの2,6−ルチジンを反応混合物に添加した。新しい反応混合物を、30℃で90分間撹拌した。
生成物の後処理は、以下を含むものとした:1.160mLの酢酸エチルによる反応混合物の希釈;2.160mLの冷えた1NのHClによる3℃から9℃の間の温度範囲への反応混合物の急冷;及び3.3回分の20%の塩化ナトリウム水溶液(それぞれ、320mL、200mL及び200mL)による有機層の洗浄。塩化ナトリウムによる最後の洗浄後の水層のpHは6であった。粗製生成物の油状生成物のHPLCの記録は、さらに高いBA9の含有率を明らかにした(66.3AUC%)。HPLC分析は、50〜55℃で生成された類似の粗製生成物中のBA9の含有率が58.6%だけであったことを示した。さらに、(40℃及び50〜55℃で生成された)粗製BA9の2つのロットの比較により、低い温度で生成されたロットの方が副生成物の量が少ないことが明らかになった。最も顕著なのは、2つのロットのHPLC/RRT=1.2の副生成物の含有率の差である。高い温度で合成されたロットの不純物の含有率は9.6AUC%であるが(図3A参照)、40℃で生成された粗製生成物の含有率は3.6AUC%だけである(図3B参照)。
例4:反応スケールアップ。
生成物及び副生成物の分布が反応混合物の温度に依存することがわかったため、ラパマイシンの誘導体化プロセスの温度プロフィールをさまざまなスケールについて調査した。本プロセスを、開始ラパマイシンに関して30.0gスケールで行った。少しずつ30分以内で2−エトキシエチルトリフラートを添加すると、内部温度が20℃から27℃に上昇し、さらに撹拌すると(依然として外部加熱なし)32℃に上昇した(トリフラートの添加開始から1時間後)。反応混合物を、その後、外部から40℃に加熱し、この温度で3時間撹拌した。最初の反応の後、2,6−ルチジンを、反応混合物に添加し、30℃で90分間撹拌した。反応混合物の後処理により、油状生成物がもたらされた。HPLC分析に基づいて、大きなスケールでの合成によって最初に生成された粗製生成物は、64.2AUC%のBA9及び4.9%のRRT=1.2の副生成物を含んでいた。
上の段落に記載されているプロセスによるスケールアップしたBA9の合成を、ともに開始ラパマイシン52.0gスケールでさらに2回繰り返した。合成スケールをさらに拡大すると、2−エトキシエチルトリフラートの添加の際に、バッチのさらに大きな発熱が起こった(第1の場合20から36℃及び第2の場合18から33℃)。52gスケールで合成された粗製バイオリムスA9のHPLCから明白なとおり、粗製生成物は、62.9及び65.0AUC%のバイオリムスA9並びに10.2及び8.5AUC%のRRTが1.20の副生成物を含んでいる。
異なるスケールの合成における2−エトキシエチルトリフラートの反応混合物への添加の間に観察された最初の発熱の比較は、この発熱の影響の程度が合成スケールに比例することを示している(前述の合成の発熱プロセスによる温度上昇の表4の比較を参照)。
2gスケールの第1の例における粗製バイオリムスA9と30〜52gスケールで合成された粗製バイオリムスA9のロットとの不純物プロフィールの比較により、合成手順をスケールアップすると、多量のRRT=1.2の副生成物が形成されることが明らかにされている。この不純物の量は、2gの合成の生成物については3.6%に過ぎなかったが、大きなスケールで合成した生成物については4.9〜10.2AUC%であったことがわかった。いかなる特定の理論に縛れることを望むものではないが、この差異は、熱的に制御されていない2−エトキシエチルトリフラートの添加の間に起こるバッチ温度の上昇が、小さなスケールの方が小さいことによるものと考えられる(25.5℃まで温度が引き上げられたが、大きなスケールの合成では最大36℃まで温度が引き上げられた;表4を参照)。そのようなものとして、反応温度を制御するための対策は、反応のスケールに応じて調整されるべきである。
例5:バイオリムスA9の後処理。
35℃の最大反応温度のみを用いてラパマイシンの2.0gスケールの合成を繰り返した。この差は、反応混合物の25℃から35℃への温度上昇の上昇が遅いことだけであった(約5分間のかわりに30分以内、副生成物の量をさらに最小限にする)。この合成により、再び高いHPLC/AUC含有率(66.8%)のAPI及び低い含有率のRRT=1.2の副生成物(RT=10.7分、2.7%)を含む粗製バイオリムスA9が生成された。
粗製生成物を、濃度勾配のあるn−ヘキサン及び酢酸エチルの溶媒混合物を用いたシリカゲルクロマトグラフィーを使用して精製した。クロマトグラフィー画分を、HPLCによって分析した。BA9のHPLC/AUC%が95.0%以下である画分と既知及び不明の不純物の有無の同時に通過する基準を組み合わせた。これにより、HPLC/AUC純度=96.2%の精製されたBA9の40%の収率がもたらされた。
精製されたBA9の主要な部分の他に、その他の有意な2つの部分の精製されたBA9を、シリカゲルクロマトグラフィー精製から得た:a)収率12%のHPLC/AUC純度が91.8%の部分及びb)収率8%のHPLC/AUC純度が91.8%の部分。
ヘキサン/酢酸エチルによる緩い濃度勾配及び長時間の溶出を使用すると、大きなスケール(ラパマイシンの52gスケール)ではカラムクロマトグラフィーの間の不純物の分離が不十分になる。n−ヘキサン/酢酸エチルの混合物を用いた急勾配のグラジエント法を使用した。52gのラパマイシンから開始した急勾配のグラジエントシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる未処理のバイオリムスA9の精製により、23.5gの精製された生成物がもたらされた(HPLC/AUC%純度が96.0%)。さらに10.0gの生成物(HPLC/AUC純度が94.9%)を得た。
例6:反応温度の小さな変更が生成物分布の驚くべき増加につながる。
小さな温度の変更が生成物/副生成物分布に驚くべき変化をもたらすことがわかった。表5及び表6に示したとおり、60℃と55℃における合成についての反応混合物のサンプリングの比較により、反応温度のわずかな低下が副生成物の形成を劇的に減少させることが示されている。これは、二置換不純物である保持時間11.5分間で溶出する化合物について最も明らかであった(60℃で反応したRT11.5が12.5%に対して55℃で反応したRT11.5が5.9%)。
同様に、5℃だけ低い温度で同じ時間、反応を行うことにより、ラパマイシン出発材料のBA9への変換が改善されている(60℃で反応したBA9が39.8%に対して55℃で反応したBA9が70.2%)。副生成物は、生成混合物から除去するのが特に難しいため、副生成物の形成を抑制すること特に有利である。対照的に、未反応の出発材料は、除去するのが容易である。そのように、本明細書に記載される方法は、精製された生成物の収率を著しく増加させ、コストを節減し、以前より知られている方法に関連する厄介な問題を低減する。
前述の記載は、わかりやすく、理解しやすくするために、説明及び例によってある程度詳細に行ったが、当業者は、添付の特許請求の範囲内で特定の変更及び修正を実施できることを理解するであろう。さらに、本明細書中に示した各文献は、各文献が個々に参照により組み込まれたように、その全体を同程度まで参照により組み込む。

Claims (20)

  1. 式I

    の構造を有する化合物を得るための方法であって、
    a)有機溶媒、窒素ヘテロ原子を有する有機塩基化合物、式II

    の構造を有する化合物及び式III

    の構造を有する化合物を反応混合物として混ぜ合わせるステップと、
    b)前記反応混合物を25℃から55℃の温度に維持するステップと、
    c)前記反応混合物から式Iの構造を有する化合物を分離するステップと
    を含み、それにより、式Iの構造を有する化合物を得る方法であり、
    式中、
    (CH −O−(CH −Hであり、eが1〜5から選択される整数であり、fが1〜5から選択される整数であり、及び
    が水素であ、上記方法。
  2. 式Iの構造を有する前記化合物が、

    である、請求項1に記載の方法。
  3. 式IIの構造を有する前記化合物がラパマイシンである、請求項1に記載の方法。
  4. がCH−CH−O−CH−CHである、請求項に記載の方法。
  5. eとfの合計が7以下である、請求項に記載の方法。
  6. 窒素ヘテロ原子を有する前記有機塩基化合物が、式IV

    (式中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立してH、C1〜5アルキル、OH及びNHからなる群から選択される)
    の構造を有する、請求項1に記載の方法。
  7. 窒素ヘテロ原子を有する前記有機塩基化合物が、2,6−ルチジン及びN,N−ジイソプロピルエチルアミンから選択される、請求項1に記載の方法。
  8. 窒素ヘテロ原子を有する前記有機塩基化合物が、2,6−ルチジンである、請求項1に記載の方法。
  9. ステップ(b)の前記維持するステップが、2〜10時間である、請求項1に記載の方法。
  10. ステップ(b)の維持温度が25から40℃である、請求項に記載の方法。
  11. 前記有機溶媒が、トルエン又は塩化メチレンである、請求項1に記載の方法。
  12. 式IIIの構造を有する前記化合物対式IIの構造を有する前記化合物のモル比が、30対1から60対1である、請求項1に記載の方法。
  13. 窒素ヘテロ原子を有する前記有機塩基化合物対式IIの構造を有する前記化合物のモル比が、80対1から120対1である、請求項1に記載の方法。
  14. 前記比が104対1である、請求項13に記載の方法。
  15. 窒素ヘテロ原子を有する前記有機塩基化合物が、2回の別々の部分で添加される、請求項1に記載の方法。
  16. 式Iの構造を有する前記化合物を分離するステップが、クロマトグラフィーを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
  17. 前記クロマトグラフィーが、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、高圧液体クロマトグラフィー及び薄層クロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記クロマトグラフィーが、シリカゲルカラムクロマトグラフィーであり、前記クロマトグラフィーが、酢酸エチル、ヘキサン及びヘプタンからなる群から選択される1種又は複数の溶媒を含む移動相を使用して行われる、請求項17に記載の方法。
  19. 式Iの構造を有する前記化合物を固体化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  20. 式Iの構造を有する前記化合物を固体化するステップが、
    a)式Iの構造を有する前記化合物をメタノール中で可溶化するサブステップと
    b)式Iの構造を有する前記化合物を水から析出させるサブステップと
    を含み、それにより、式Iの構造を有する前記化合物を固体化する、請求項19に記載の方法。
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