JP6401506B2 - 車両のリヤサスペンション構造 - Google Patents

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本発明は、トラニオン式サスペンション等を有する車両において、簡単な構造で板ばねの寿命を向上し得る車両のリヤサスペンション構造に関する。
従来、大型トラックのリヤアクスルでは、一軸あたりの軸重の軽減を図るため、車軸を後前軸と後後軸の二軸としたものが知られており、このような後二軸車における後前軸と後後軸を懸架するサスペンションとして、トラニオン式サスペンションが広く用いられている。
図3、図4はこのようなトラニオン式サスペンションの一例を示すもので、トラニオンブラケット1によってフレーム2に固定されたトラニオンシャフト3と、該トラニオンシャフト3上にUボルト4,4とスプリングパッド4aによって束ねられた複数枚の板ばね5a〜5eからなるリーフスプリング5とを備えており、該リーフスプリング5の長手方向両端には、後前軸と後後軸をなすアクスル6,6がゴム板と金属板を交互に積層してなる積層体7,7を介して懸架支持される。
リーフスプリング5に積層体7,7を取り付けるために、リーフスプリング5の両端には、リーフスプリング5を構成する板ばね5a〜5eのうち、最も下側の板ばね5aと、該板ばね5aの上の板ばね5bとの間に、パッド部材8,8が挟み込まれ、板ばね5aと5bの間の長手方向中間部には、パッド部材8,8を挟み込む隙間を確保するためのスペーサ9が挟み込まれる。
パッド部材8は、図5に示す如く、板ばね5a、5bの幅方向(左右方向)外側に張り出した張出部8aを有しており、この張出部8aには、ボルト10が貫通する貫通孔8bが形成されている。この貫通孔8bにボルト10を貫通させ、該ボルト10にナット11を取り付けて締め付けることにより、パッド部材8が積層体7の取付板7aに取り付けられ、パッド部材8と積層体7の取付板7aとの間に板ばね5aが挟持される。このとき、積層体7の取付板7aとパッド部材8の張出部8aとの間には、前記ボルト10に嵌合するカラー12を設けており、このカラー12によって、板ばね5aが締め付けられることなくパッド部材8を積層体7の取付板7aに固定できるようになっている。
また、リーフスプリング5の両端部には、図5に破線で示す如く、板ばね5a、5bの幅方向両端を切り欠いて板幅を小さくした幅落とし部51が形成されており、該幅落とし部51が積層体7の取付板7aの上に載置される。
このようにして、車両の荷重がリーフスプリング5によって支えられ、リーフスプリング5を構成する板ばね5a〜5eが撓むことにより路面の凹凸に起因する路面とフレーム2の間隔の変化が吸収されるようになっている。
しかしながら、こうした構造のトラニオン式サスペンションにおいては、リーフスプリング5を構成する板ばね5a〜5eのうち最も下側の板ばね5aと、その上の板ばね5bとの間に隙間があるため、板ばね5aが他の板ばね5b〜5eと重なり合わず一枚の板ばねとして独立して作用することになり、結果として板ばね5aに発生する応力に偏りが生じ、板ばね5aの寿命が短くなってしまう問題があった。
すなわち、リーフスプリング5を構成する板ばね5a〜5eには、すべて板厚および断面積がほぼ一定な平板状の板ばねが用いられているが、これら板ばね5a〜5eのうち、板ばね5a以外の板ばね5b〜5eは、互いに密着するように束ねられ、且つ板ばね5b、5c、5d、5eの順にばね全長が小さくなるように重ねられている。このため、板ばね5b〜5eは、互いに重なり合った部分においては、各板ばね5b〜5e同士の間で荷重を分担しあうようにして協働する。言い換えると、板ばね5b〜5e全体として、長手方向中間部から両端に向かって断面積が段階的に小さくなる一つのマルチリーフスプリングとして機能する。このため、リーフスプリング5に荷重がかかった場合、各板ばね5b、5c、5d、5eに発生する応力は、例えば、図6のグラフに破線で示すような形で分布する。
また同時に、マルチリーフスプリングとして協働する板ばね5b〜5eは、板ばね5b〜5eが撓む際、密着した状態で束ねられた板ばね5b〜5e同士の間に板間摩擦が発生することにより、サスペンションに入力される衝撃力を減衰させる機能も果たしている。
一方、板ばね5aは、他の板ばね5b〜5eと密着していないため、断面積がほぼ均一な一枚の板ばねとして、他の板ばね5b〜5eとは独立して作用することになる。すなわち、リーフスプリング5に荷重がかかった場合、板ばね5aには、長手方向中間部を支点とし、両端部を力点とする一種の片持ち梁の形で曲げモーメントが作用するが、板ばね5aは断面積がほぼ均一な板ばねであるため、板ばね5aには、例えば図6のグラフに実線で示すような形で応力が発生する。したがって、板ばね5aの長手方向中間部に応力が集中し、結果として板ばね5aの寿命が短くなる虞がある。特に、荷重が過積載の状態で使用されることが多い条件下では、このような問題が顕在化しやすい。
また、リーフスプリング5を構成する板ばね5a〜5eのうちでも最も下側にある板ばね5aは通常、板厚が大きく設計されるため、リーフスプリング5の両端に幅落とし部51(図5参照)を形成するにあたり、通常のプレス加工で板ばね5aを切り抜くことは困難である。このため、リーフスプリング5の両端に幅落とし部51を設けるためには板ばね5aの切削加工を行う必要があるが、この切削加工にかかるコストが非常に高いという問題も有していた。
尚、この種のトラニオン式サスペンションの技術的水準を示す文献としては、例えば、特許文献1がある。
特開2010−173528号公報
上記した応力の偏りの問題は、例えば、図7に示す如く、リーフスプリング5'を構成する各板ばね5a'〜5e 'を、長手方向中間部から両端に向かって断面積が連続的に小さくなるテーパばねとし、リーフスプリング5'をテーパリーフスプリングとして構成することで回避できる。このようにすれば、板ばね5a'の両端における板厚が薄くなるため、プレス加工によって幅落とし部を形成することが可能であり、切削加工にかかるコストの問題もあわせて解決できる。ただし、このようにした場合には、各板ばね5a'〜5e '同士が密着せず、板ばね5a'〜5e '同士の間に板間摩擦が発生しないので、リーフスプリング5'自体に衝撃力を減衰させる機能を持たせることができない。このため、サスペンション装置にリーフスプリング5'とは別に図示しないショックアブソーバを設置する必要があるが、油圧ダンパ機構を用いるショックアブソーバは高価であるため、コストが嵩んでしまう問題がある。
上記問題に対処する別の方法としては、例えば、図8に示す如く、リーフスプリング5"にスペーサを用いず、最も下側の板ばね5a"の端部を折り曲げることによって、パッド部材8を取り付ける隙間を確保する方法がある。このようにすれば、板ばね5a"を板ばね5b"と密着させることができ、板ばね5a"〜5e"が一つのマルチリーフスプリングとして協働することになるため、応力の偏りの問題は発生しない。しかしながら、板ばね5a"の端部に曲げ加工を施すための設備が別途必要となるほか、板ばね5a"端部の板厚は大きいままであるため、リーフスプリング5"に幅落とし部を形成するにあたってはやはり切削加工に依らざるを得ないなど、コスト面で問題を有していた。
本発明は、斯かる実情に鑑み、簡単な構造で板ばねの寿命を向上し、且つ加工にかかるコストも削減し得る車両のリヤサスペンション構造を提供しようとするものである。
本発明は、複数の板ばねを備えたリーフスプリングと、ゴム板と金属板が交互に積層され上側に取付板を備えた積層体と、前記リーフスプリングを構成する複数の板ばねのうち、最も下側の板ばねとその上の板ばねとの間に配置され、前記最も下側の板ばねを前記積層体の取付板との間に挟持して前記リーフスプリングと前記積層体とを連結するパッド部材とを有し、前記最も下側の板ばねは、長手方向中間部から両端に向かって断面が小さくなるテーパばねとして構成されており、前記リーフスプリングを構成する板ばねのうち、前記最も下側の板ばね以外の板ばねは、各々が板厚および断面積がほぼ一定な平板状の板ばねであり、且つ互いに密着するように束ねられ、上側の板ばねほどばね全長が小さくなるように重ねられていることを特徴とする車両のリヤサスペンション構造にかかるものである。
本発明の車両のリヤサスペンション構造において、前記最も下側の板ばねであるテーパばねは、前記リーフスプリングに荷重が加わった際に前記最も下側の板ばねに発生する応力が均一に分布するよう構成されていることが好ましい。
而して、このようにすれば、前記リーフスプリングの下側の板ばねの長手方向中間部に応力が集中することがなく、応力の集中により前記リーフスプリングの下側の板ばねが短寿命化する虞はなくなる。且つ、前記リーフスプリングの下側の板ばねの両端に幅落とし部を形成するにあたっては該板ばねを通常のプレス加工によって切り抜けば良く、切削加工に伴うコストを削減することができる。また、板ばね同士の間に発生する板間摩擦によって衝撃力を減衰させることができるため、ショックアブソーバを取り付ける必要がなく、ショックアブソーバを採用することによるコストの上昇を抑えることができる。
本発明の車両のリヤサスペンション構造によれば、簡単な構造で板ばねの寿命を向上し、且つ加工にかかるコストも削減し得るという種々の優れた効果を奏し得る。
本発明の実施による車両のリヤサスペンション構造の形態を示す側面図である。 本発明の実施による車両のリヤサスペンション構造の作用を示す概念図である。 従来の車両のリヤサスペンション構造の一例を示す側面図である。 トラニオン式サスペンション装置におけるリーフスプリングの端部支持構造を示す拡大図である。 パッド部材の平面図である。 従来の車両のリヤサスペンション構造の作用を示す概念図である。 従来の車両のリヤサスペンション構造の別の例を示す概念図である。 従来の車両のリヤサスペンション構造の更に別の例を示す概念図である。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1、図2は本発明の実施による車両のリヤサスペンション構造の形態の一例を示すものであり、図中、図3〜図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わす。本実施態例の基本的な構成は図3に示す従来のリヤサスペンション構造と同様で、トラニオンブラケット1によってフレーム2に固定されたトラニオンシャフト3と、該トラニオンシャフト3上にUボルト4,4とスプリングパッド4aによって束ねられた複数枚の板ばね13a〜13eからなるリーフスプリング13とを備えている。尚、リーフスプリング13を構成する板ばねは、説明の便宜上、本実施例では13a〜13eの5枚としているが、板ばねの枚数は実際にはこれより多くても少なくても良いことは勿論である。
本実施例の特徴とするところは、リーフスプリング13を構成する板ばね13a〜13eのうち、最も下側の板ばね13aを、長手方向中間部において最も厚い板厚を有し、そこから両端に向かって板厚が連続的に薄くなるテーパばねとして構成した点にある。
従来のものと同様、リーフスプリング13の両端には、後前軸と後後軸をなすアクスル6,6がゴム板と金属板を交互に積層してなる積層体7,7を介して懸架支持される。リーフスプリング13の両端には、最も下側の板ばね13aと、該板ばね13aの上の板ばね13bとの間にパッド部材8,8が配置されるが、本実施例においては、パッド部材8,8を挟み込むための隙間は上記した板ばね13aのテーパ構造によって確保されるため、従来例のような、最も下側の板ばねとその上の板ばねの間の長手方向中間部に挟み込むスペーサは不要である。
パッド部材8は、図5に示す如く、従来例と同様、板ばね13a、13bの幅方向(左右方向)外側に張り出した張出部8aを有し、張出部8aには、ボルト10が貫通する貫通孔8bが形成されている。この貫通孔8bにボルト10を貫通させ、該ボルト10にナット11を取り付けて締め付けることにより、パッド部材8が積層体7の取付板7aに取り付けられ、パッド部材8と積層体7の取付板7aとの間に板ばね13aが挟持され、これにより、リーフスプリング13と積層体7が連結される。積層体7の取付板7aとパッド部材8の張出部8aとの間には、前記ボルト10に嵌合するカラー12を設けられている。
リーフスプリング13の両端には、図5に破線で示す如く、板ばね13a、13bの幅方向両端を切り欠いて板幅を小さくした幅落とし部131が形成されており、該幅落とし部131が積層体7の取付板7aの上に載置される。
次に、上記した実施例の作動を説明する。
リーフスプリング13を構成する板ばね13a〜13eのうち、板ばね13a以外の板ばね13b〜13eについては、図3や図6に示した従来例の板ばね5b〜5eと同様、すべて板厚および断面積がほぼ一定な平板状の板ばねが用いられている。これらの板ばね13b〜13eは互いに密着するように束ねられ、且つ板ばね13b、13c、13d、13eの順に上側の板ばねほどばね全長が小さくなるように重ねられているため、板ばね13b〜13e全体として、長手方向中間部から両端に向かって断面積が段階的に小さくなる一つのマルチリーフスプリングとして機能する。すなわち、板ばね13b〜13eは、互いに重なり合った部分においては、各板ばね13b〜13e同士の間で荷重を分担するようにして協働するため、リーフスプリング13に荷重がかかった場合、各板ばね13b、13c、13d、13eに発生する応力は、図2のグラフに破線で示すような形で分布する。
一方、板ばね13aについては、上記した通り、長手方向中間部において最も厚い板厚(最も大きい断面積)を有し、そこから両端に向かって板厚が連続的に薄くなる(断面積が小さくなる)テーパばねとして構成されている。リーフスプリング13への荷重により板ばね13aにかかる曲げモーメントは、板ばね13aの長手方向中間部において最も大きく、前後両端において最も小さくなるように作用するが、本実施例の板ばね13aにおいては、上記テーパ構造をとっているために、板ばね13aに発生する応力は、図2のグラフに実線で示す如く、板ばね13aの各部に均一に分布する。したがって、長手方向中間部に応力が集中することがなく、応力の集中により板ばね13aが短寿命化する虞はなくなる。
しかも、板ばね13aの板厚は両端において薄くなっているため、幅落とし部131を形成するにあたっては通常のプレス加工によって板ばね13aを切り抜くことができ、切削加工を行う必要はない。このため、切削加工に伴うコストも削減することができる。
尚、本実施例においては、リーフスプリング13を構成する板ばね13a〜13eのうち、板ばね13a以外の板ばね13b〜13eは従来例と同様、互いに密着して束ねられているため、板ばね13b〜13e同士の間に板間摩擦が発生し、これによってサスペンション装置に入力される衝撃力を減衰させることができる。したがって、高価なショックアブソーバを取り付ける必要がなく、ショックアブソーバを採用することによるコストの上昇を抑えることができる。
また、本実施例において使用しているテーパばねである板ばね13aには、例えば図7に示すような既存のテーパリーフスプリングに用いられているものを流用することができるため、新たに専用のテーパばねを製造する必要はない。且つ、図3に示すような従来のトラニオン式サスペンションから、リーフスプリング5の最も下側の板ばね5aとともにスペーサ9を取り外し、代わりにテーパばねである板ばね13aを取り付けることにより、本発明によるトラニオン式サスペンションとすることも可能である。このように、従来の板ばね等の材料をそのまま利用して、コストをかけず簡単に本発明の車両のリヤサスペンション構造を実施することができる。
而して、上記した本実施例によれば、簡単な構造で板ばねの寿命を向上し、且つ加工にかかるコストも削減し得る。
尚、本発明の車両のリヤサスペンション構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
7 積層体
7a 取付板
8 パッド部材
13 リーフスプリング
13a〜13e 板ばね

Claims (2)

  1. 複数の板ばねを備えたリーフスプリングと、
    ゴム板と金属板が交互に積層され上側に取付板を備えた積層体と、
    前記リーフスプリングを構成する複数の板ばねのうち、最も下側の板ばねとその上の板ばねとの間に配置され、前記最も下側の板ばねを前記積層体の取付板との間に挟持して前記リーフスプリングと前記積層体とを連結するパッド部材とを有し、
    前記最も下側の板ばねは、長手方向中間部から両端に向かって断面が小さくなるテーパばねとして構成されており、
    前記リーフスプリングを構成する板ばねのうち、前記最も下側の板ばね以外の板ばねは、各々が板厚および断面積がほぼ一定な平板状の板ばねであり、且つ互いに密着するように束ねられ、上側の板ばねほどばね全長が小さくなるように重ねられていることを特徴とする車両のリヤサスペンション構造。
  2. 前記最も下側の板ばねであるテーパばねは、前記リーフスプリングに荷重が加わった際に前記最も下側の板ばねに発生する応力が均一に分布するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のリヤサスペンション構造。
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