以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一の部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
また、以下の説明において、n+、n、n−および、p+、p、p−の表記は、各導電型における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわちn+はnよりもn型の不純物濃度が相対的に高く、n−はnよりもn型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p+はpよりもp型の不純物濃度が相対的に高く、p−はpよりもp型の不純物濃度が相対的に低いことを示す。なお、n+型、n−型を単にn型、p+型、p−型を単にp型と記載する場合もある。
(第1の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1と第2の面を有し、p型不純物とn型不純物を含有し、p型不純物を元素A、n型不純物を元素Dとする場合に、元素Aと元素Dとの組み合わせが、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)とN(窒素)、B(ボロン)とP(リン)の少なくとも一方の組み合わせであり、組み合わせを構成する元素Aの濃度の元素Dの濃度に対する比が0.40より大きく0.95より小さく、組み合わせを構成する元素Dの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるn型SiC基板と、第1の面上に設けられたSiC層と、第1の面側に設けられた第1の電極と、第2の面上に設けられた第2の電極と、を備える。
例えば、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)とN(窒素)の第1の組み合わせの場合、元素Aが、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)から選ばれる1種の元素であってもかまわない。また、Al(元素A1)とGa(元素A2)等の2種の元素、あるいは、Al(元素A1)、Ga(元素A2)、In(元素A3)の3種の元素で構成されていてもかまわない。複数の元素の場合、2種または3種の元素をあわせて組み合わせを構成する元素Aと考え、上記元素Aの濃度の元素Dの濃度に対する比、元素Dの濃度の条件が充足されれば良い。
また、第1の組み合わせと第2の組み合わせの両者が共存することも可能である。しかし、上記元素Aの濃度の元素Dの濃度に対する比、元素Dの濃度の条件は、すくなくとも、第1の組み合わせ、第2の組み合わせのいずれか一方を構成する元素で充足されなければならない。いいかえれば、第1の組み合わせと第2の組み合わせは、個別に元素比、元素濃度を満たさなければならない。これは、第1の組み合わせの不純物と第2の組み合わせの不純物の間では、後に詳述する3量体が形成されないためである。
例えば、Alが1×1018cm−3、Gaが1×1018cm−3、Nが4×1018cm−3の場合、(Al+Ga)/N=0.5で、Nが4×1018cm−3であるので元素比、濃度ともに実施形態の範囲内である。
また、例えば、Bが1×1018cm−3、Pが1×1018cm−3、Nが1×1018cm−3の場合、第2の組み合わせであるBとPのみに着目する。すると、B/P=1.0となり元素比を充足せず、実施形態の範囲外である。
また、例えば、Alが2.5×1017cm−3、Bが2.5×1017cm−3、Nが5×1017cm−3、Pが5×1017cm−3の場合、第1の組み合わせで見ると、Al/N=0.5で比の条件は満たすが、Nの濃度が1×1018cm−3未満である。また、第2の組み合わせで見ると、B/P=0.5で比の条件は満たすが、Pの濃度が1×1018cm−3未満である。したがって、第1および第2の組み合わせがいずれも個別に元素比、元素濃度を充足しないので、実施形態の範囲外である。
なお、本実施形態は、p型不純物やn型不純物として上記例示した以外の元素が含有されることを排除するものではない。以下、元素AがAl、元素DがNである場合を例に説明する。
図1は、本実施形態の半導体装置を示す模式断面図である。本実施形態の半導体装置はPiNダイオードである。
このPiNダイオード100は、第1と第2の面を有するn型SiC基板(炭化珪素基板)12を備えている。図1においては、第1の面とは図の上側の面であり、第2の面とは図の下側の面である。
n型SiC基板12は、例えば、4H−SiCの基板である。そして、p型不純物であるAl(アルミニウム)とn型不純物であるN(窒素)を含有している。
n型SiC基板12中のAlの濃度のNの濃度に対する比(Al濃度/N濃度)は、0.40より大きく0.95より小さい。そして、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下である。Nの濃度は、上記範囲内で一定値でもよいし、上記範囲内で濃度勾配があってもよい。n型SiC基板12の膜厚は、例えば、300μm〜700μmである。
このSiC基板12の第1の面上には、n型のSiC層(n−SiC層)14が形成されている。n−SiC層14のn型不純物の不純物濃度はn型SiC基板12よりも低く、例えば、5×1015〜2×1016cm−3程度である。n型不純物は、例えば、Nである。n−SiC層14の膜厚は、例えば、5〜50μm程度である。
n−SiC層14上には、p型のSiC層(p+型SiC層)16が形成されている。p+型SiC層16のp型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1018〜5×1021cm−3程度である。p型不純物は、例えば、Alである。p+型SiC層16の膜厚は、例えば、1〜5μm程度である。
p+型SiC層16上に、p+型SiC層16と電気的に接続される導電性の第1の電極(アノード電極)44を備えている。第1の電極44は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第1の電極44はp+型SiC層16にオーミック接触している。
また、n型SiC基板12の第2の面上には、導電性の第2の電極(カソード電極)46が形成されている。第2の電極46は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第2の電極46はn型SiC基板12にオーミック接触している。
以下、本実施形態の作用および効果について詳述する。
発明者らによる検討の結果、SiCに対し、p型不純物(p型ドーパント)のAlと、n型不純物(n型ドーパント)のNとを共ドープすることにより、AlとNのペアリングをおこさせることができることがわかった。このペアリング状態では、キャリアが補償され、キャリアがゼロの状態になる。
図2および図3は、共ドープの作用を説明する図である。図2がn型SiCの場合、図3がp型SiCの場合である。発明者らが行なった第一原理計算によれば、SiC中で、AlはSi(シリコン)サイトに、NはC(炭素)サイトに、AlとNが隣接するように入ることで、より系として安定化することが明らかになった。
すなわち、図2および図3に示すように、AlとNとが未結合でばらばらになっている状態に比べ、AlとNが結合し、Al−Nペア構造を形成することで、エネルギー的に2.9eV安定になる。Al量とN量とが一致した場合には、両者の全てがペア構造になった状態が最も安定である。
ここで、第一原理計算は、超ソフト擬ポテンシャルを用いた計算である。超ソフト擬ポテンシャルは、バンダービルトらによって開発された、擬ポテンシャルの一種である。例えば、格子定数は、1%以下の誤差で実験値を実現できる高い精度を備える。不純物(ドーパント)を導入して、構造緩和を行い、安定状態の全エネルギーを計算する。系の全エネルギーを、変化の前後で比較することで、いずれの構造が安定状態か、否かを判定する。安定状態では、バンドギャップ中で不純物の準位が、どのエネルギー位置にあるかを示すことが出来る。
図2に示すように、NがAlよりも多く存在する場合、すなわち、n型SiCの場合、余分にあるNが、Al−Nペア構造の近傍のCサイトに入り、N−Al−Nの3量体となることで更に系が安定化することが明らかになった。第一原理計算からは、3量体となることで、ペア構造とNとが別々に存在する場合に比べ、系が0.3eV安定になる。
同様に、図3に示すように、AlがNよりも多く存在する場合、すなわちp型SiCの場合、余分にあるAlが、Al−Nペア構造の近傍のSiサイトに入り、Al−N−Alの3量体となることで更に安定化することが明らかになった。第一原理計算からは、3量体となることで、Al−Nペア構造とAlとが別々に存在する場合に比べ、系が0.4eV安定になる。
次に、AlとN以外のドーパントの組み合せについて、考察する。B(ボロン)とN(窒素)の場合について計算を行った場合を例に、計算結果を説明する。
BはSiサイトに、NはCサイトに入る。第一原理計算によると、B−N−B、あるいは、N−B−Nという3量体構造は形成できないことがわかった。つまり、B−Nのペア構造は形成されるが、近傍にBやNが来ると系のエネルギーが高くなる。したがって、余分なBやNは、ペア構造から離れた位置に独立に存在する方が、系がエネルギー的に安定であった。
第一原理計算によると、余分なBが3量体を形成すると、B−NペアとBが独立に存在する場合に比べて、系のエネルギーが0.5eV高かった。また、余分なNが3量体を形成すると、B−NペアとNが独立に存在する場合に比べて、系のエネルギーが0.3eV高かった。このため、いずれの場合も、3量体が出来ると系がエネルギー的に不安定になる。
図4は、共ドープの作用を説明する図である。図4では、各元素の共有結合半径を示す。図の右手上方に向かうほど共有結合半径が小さくなり、左手下方に向かうほど共有結合半径が大きくなる。
BとNの場合に、3量体が出来ると不安定になることは、共有結合半径の大きさにより理解できる。Bの共有結合半径はSiの共有結合半径より小さく、かつ、Nの共有結合半径はCの共有結合半径より小さい。このため、BがSiサイトに、NがCサイトに入ると、歪が溜まり3量体が形成できない。
ドーパントとなるp型不純物とn型不純物の組み合わせとして、「共有結合半径がSiより大きな元素(Al、Ga、In)」と「共有結合半径がCより小さい元素(N)」の組み合わせ、あるいは、その逆の、「共有結合半径がCより大きな元素(B)」と「共有結合半径がSiより小さい元素(P)」の組み合わせの場合以外は、3量体が形成出来ないことが判明した。
B、Pの共有結合半径はSiの共有結合半径とCの共有結合半径の中間にあることから、B、およびPは、Siサイト、Cサイトのどちらにも入りえる。しかし、他の不純物(Al、Ga、In、N、As)は、基本的に片方のサイトに偏る。Al、Ga、In、AsはSiサイトに入り、NはCサイトに入ると考えて良い。
さらに、両不純物が共にSiサイト、あるいは共にCサイトに入る場合は、考える必要がない。それは、p型不純物とn型不純物が最近接に来ないと歪が緩和し難いためである。よって、p型不純物を元素A、n型不純物を元素Dとする場合に、元素Aと元素Dとの組み合わせ(元素Aと元素D)が、(AlとN)、(GaとN)、(InとN)、(BとP)という4つの組み合わせ以外では、3量体を形成することは困難である。
このペア構造、あるいは3量体構造は、原子間に相互作用が無ければ形成できない。第一原理計算による4H−SiC構造中の不純物準位(ドーパント準位)は、c軸方向にユニットセルが10個程度あると、相互作用が見えなくなり、不純物準位が平らな状態となる。すなわち、分散が十分に抑制され、10meVオーダー程度になる。
つまり、不純物間の距離が10nm以上では相互作用が殆どないと考えられる。よって、不純物同士の相互作用があるためには、不純物濃度が1×1018cm−3以上であることが望ましい。
この値は、SiC材料が既に形成されている場合に、イオン注入などによって局所的な不純物の分布を形成する場合に望まれる不純物濃度の下限となる。
なお、半導体SiCに、共ドープによる効果が発現されるためには、n型不純物濃度とp型不純物濃度の比率を特定の範囲の比率にする必要がある。後に記述する製造方法において、イオン打ち込みによって導入するn型、p型のそれぞれの不純物の比率を上記特定の範囲の比率になるように、初めから導入することが重要である。相互作用が届く範囲が10nm未満と小さいが、その範囲にあれば、互いの引力により3量体が形成可能となる。しかも、引力が働くので、不純物の活性化アニールの温度が、共ドープしない場合の1700℃―1900℃から、1500℃−1800℃に低温化できると考えられる。
ただし、この3量体形成に望ましい不純物濃度は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによる気相からの結晶成長などでは、低減させることが可能である。これは、原料を表面にてフローさせることが出来るため、不純物同士の相互作用が低濃度でも生じやすくなるためである。
気相成長では、三量体を形成可能な不純物濃度の領域が、1×1015cm−3以上1×1022cm−3以下と、イオン注入に比較して拡大する。気相成長ではSiCの不純物濃度を、例えば、1×1016cm−3程度と薄くすることも、例えば、1×1021cm−3程度と濃くすることも可能である。特に、濃度の薄い領域は、イオン注入による形成が困難である。したがって、特に濃度の薄い領域では、気相成長による不純物領域の形成が有効である。さらに、気相成長では、共ドープされた、例えば、5nm程度の極薄膜を形成することも可能である。
また、気相成長では不純物の濃度の濃い領域で、結晶中の欠陥が生じにくいという利点もある。すなわち、イオン注入では、導入する不純物量が大きくなるにつれ結晶中の欠陥量が増大し、熱処理等による回復も困難となる。気相成長では成長中に3量体が形成され、不純物導入による欠陥も生じにくい。この観点から、例えば、不純物濃度が1×1019cm−3以上、さらには1×1020cm−3以上の領域で、気相成長による不純物領域の形成が有効である。
このように、気相成長では、イオン注入では得られない効果がある。もっとも、イオン注入では、局所的に共ドープされた不純物領域を形成することが可能である。また、低コストで共ドープされた不純物領域を形成することが可能である。よって、必要性に応じて、気相成長とイオン注入とを使い分ければ良い。
気相からの結晶成長時において、3量体形成を形成する場合、p型およびn型の不純物濃度は1×1015cm−3以上であることが望ましい。さらに、3量体形成を容易にする観点からは、不純物濃度は1×1016cm−3以上あることがより望ましい。
次に不純物濃度の上限であるが、3量体を形成した場合には、3量体を形成しない場合の固溶限を超えることも可能である。3量体を作ると、結晶中の歪が緩和され不純物が固溶されやすくなるためである。
3量体を形成しない場合の不純物の固溶限は、Nの場合は1019cm−3オーダー、Alの場合でも1021cm−3オーダーである。他の不純物は、およそ1021cm−3オーダー程度である。
不純物が一種類の場合、不純物の大きさが小さい側、あるいは大きい側に偏る。このため、歪が蓄積されて、不純物が格子点に入り難くなり、活性化できないためである。特にイオン注入では欠陥を多く形成するので、余計に固溶限が低くなる。
しかし、3量体を形成すれば、Al、Nのどちらも1022cm−3オーダー程度まで、導入が可能となる。(AlとN)、(GaとN)、(InとN)、(BとP)という4つの組み合わせにおいて、3量体を形成することで、歪を緩和することが出来るため、固溶限の拡大が可能となる。その結果、1022cm−3オーダーまで不純物の固溶限の拡張が可能である。
不純物がB、Al、Ga、In、Pである場合は、1×1020cm−3以上、特に、6×1020cm−3以上では、歪が多く、欠陥が多量に入っている状態となる。その結果、シート抵抗または比抵抗は非常に大きな値となる。
しかし、p型不純物とn型不純物との共ドープによれば、このような不純物濃度の高い領域でも、欠陥が抑制できる。
不純物がNである場合は、さらに固溶限が一桁小さく2×1019cm−3程度である。第一原理計算によれば、不活性な格子間Nの欠陥が発生するためと考えられる。
N濃度の上限が、1019cm−3オーダーだったものが、3量体を形成することにより、1022cm−3オーダーに大幅に拡大する。従来、高濃度にドープされたn型領域を形成する場合、窒素を使うことが出来ず、例えばPを1020cm−3程度、イオン注入することにより形成している。しかし、本実施形態を用いれば、例えば、Nを2×1020cm−3、Alを1×1020cm−3導入するというように、窒素を用いて高濃度にドープされたn型領域を形成できる。つまり、従来は窒素を使うこと自体が困難だったが、それが可能になる。
以上、p型不純物とn型不純物を両方とも導入し、かつ、共有結合半径の組み合わせを適切に選ぶことにより、上記の3量体を形成することが可能となる。そして、構造が安定化して、歪を低減することが出来る。
その結果、(1)各不純物が格子点に入りやすくなる。(2)プロセスの低温化が可能となる。少なくとも100℃程度の低温化は期待できる。(3)活性化可能な不純物量(上限の拡大)が増加する。(4)3量体、あるいはペア構造のような安定構造が出来る。この構造でエントロピーを稼ぎ、結晶欠陥量が低減する。(5)3量体が安定なので、p型不純物とn型不純物を結ぶボンドの周りに回転することが難しくなり、構造が固定化する。したがって、通電破壊耐性が大幅にアップする。例えば、pnジャンクションのp型不純物領域、n型不純物領域の少なくとも一部に3量体構造を導入すれば、通電破壊が抑制され、高抵抗化が避けられる。その結果、電流を一定量だけ流すときに必要な印加電圧(Vf)が増加してしまう劣化現象(Vf劣化)を抑制可能となる。
以上、p型不純物のAlとn型不純物のNを共ドープすることにより、AlとNのペアリングをおこさせることが出来ることを示した。さらに、この際、アクセプタ準位およびドナー準位を、ともに浅く出来ることが、第一原理計算により明らかになっている。
図5、図6は、共ドープの作用の説明図である。図5はn型SiCの場合、図6はp型SiCの場合である。白丸は準位が電子で埋まっていない空の準位、黒丸は準位が電子で埋まっている状態を示す。
ドナー準位が浅くなる理由は、図5に示すように、アクセプタであるAlの伝導帯の内側にある空の準位と、Nのドナー準位とが相互作用したことにより、ドナー準位が引き上げられたためである。同様に、アクセプタ準位が浅くなる理由は、図6に示すように、ドナーであるNの価電子帯の内側にある電子が埋った準位と、Alのアクセプタ準位とが相互作用したことにより、アクセプタ準位が引き下げられたためである。
一般に、n型不純物のNやP(リン)は42meV〜95meVの深いドナー準位を形成する。p型不純物のB、Al、Ga、Inは160meV〜300meVの非常に深いアクセプタ準位を形成する。それに対し、3量体を形成すると、n型不純物では35meV以下のドナー準位を形成し、p型不純物では、100meV以下のアクセプタ準位を形成することが可能となる。
3量体が完全に形成された最良の状態では、n型のNやPでは、およそ20meV程度となり、p型のB、Al、Ga、Inでは40meV程度となる。このように浅い準位を形成するので、活性化した不純物の多くがキャリア(自由電子、自由正孔)となる。したがって、バルク抵抗が共ドープを行わない場合に比べ、桁違いに低抵抗化する。
n型SiCの場合、キャリア発生に寄与するドナー準位が40meV以下となることで、共ドープしない場合と比較して、抵抗が低減する。また、35meV以下となることで抵抗が約一桁、20meV以下とすることにより抵抗が約二桁低減する。但し、歪緩和効果、ドープ上限拡大効果なども含む。
p型SiCの場合、キャリア発生に寄与するアクセプタ準位が150meV以下となることで、共ドープしない場合と比較して、抵抗が低減する。また、100meV以下となることで抵抗が約一桁、40meV以下とすることにより抵抗が約二桁低減する。但し、歪緩和効果、ドープ上限拡大効果なども含む。
Al濃度とN濃度とが一致した場合(N:Al=1:1)には、浅い準位はあっても、キャリアが無いため、絶縁体になってしまう。Al濃度とN濃度の差分だけキャリアが存在することになる。低抵抗の半導体になるには、濃度差が必要となる。
N濃度がAl濃度よりも多い場合(N濃度>Al濃度)、相互作用によりAl−Nペアが出来た余りのNもまた、Al−Nペアの近傍のCを置換することで安定化する。このため、浅いドナー準位が形成される。また、歪も緩和するので、3量体を形成しない場合よりもNの濃度を増やすことが出来る。
図7は、n型SiCの場合のAlとNの濃度とシート抵抗の関係を示す図である。N濃度は、2×1020cm−3としている。単体でNを導入した場合は、1×1019cm−3以上いれても、シート抵抗は低減できない。その値がおよそ300Ω/□である。
N濃度:Al濃度が1:1から2:1になるまでは、歪が入らずに3量体ができ、浅いドナー準位に入っているキャリア電子数が増加する。したがって、シート抵抗が急激に低下する。
そして、2:1に達したとき、最大量のキャリアが使えるので、最もシート抵抗が低い状態となる。シート抵抗は、図7に示すように、1.5Ω/□程度まで低減できる。n型SiCへのコンタクト抵抗も、N濃度:Al濃度=2:1になるようにし、N濃度とAl濃度の差分を1020cm−3から1022cm−3と増やすことで、10−5Ωcm3程度から、10−7Ωcm3程度まで低減可能である。
さらに、2:1よりN濃度の割合が上がると、N濃度:Al濃度=2:1より過剰なNにより、元の深いドナー準位が形成されることになる。そして、このドナー準位がキャリア電子を受け取ることになり、3量体によって形成された浅いドナー準位が空となってしまう。N濃度:Al濃度=2:1よりずれた分のNは、単体で導入された場合に近いので、歪の緩和が困難である。したがって、図7に示すように、シート抵抗が急激に増加していくことになる。
図7では、n型不純物のN(窒素)を、Alを共ドープしない場合に固溶限近傍まで入れた場合のシート抵抗(この場合は約300Ω/□)を比較対象とし、N濃度:Al濃度=2:1からずらした場合にどのようにシート抵抗の値が変化するかを示している。
3量体構造が出来たAl濃度/N濃度=0.5を中心に考えることにする。Al濃度/N濃度を0.47以上、0.60(8×1019cm−3以上のキャリアが100%自由キャリアとなる)以下とした場合、つまり、n型不純物に対し、p型不純物を47%〜60%入れた場合、Alを共ドープしない場合のシート抵抗に比較して2桁落ちのシート抵抗となり、非常に有効である。0.5未満では、浅い準位が減少し、かつ、歪が入るので、自由キャリア数が減り、0.47程度で、8×1019cm−3相当のキャリアとなる。
そこから幅を両側に広げて、Al濃度/N濃度を0.45以上、0.75(5×1019cm−3以上のキャリアが100%自由キャリアとなる)以下とした場合、すなわち、AlをNに対し45%〜75%入れた場合、2桁落ちからその3倍程度の大きさとなる。0.5未満では、浅い準位が減少し、かつ、歪が入るので、自由キャリア数が減り、0.45程度で、5×1019cm−3相当のキャリアとなる。さらに幅を両側に広げて、Al濃度/N濃度を0.40より大きく0.95(1×1019cm−3以上のキャリアが100%自由キャリアとなる)より小さくした場合、すなわち、AlをNに対し40%〜95%入れた場合、1桁落ちのシート抵抗となる。0.5未満では、浅い準位が減少し、かつ、歪が入るので、自由キャリア数が減り、0.40程度で、1×1019cm−3相当のキャリアとなる。
AlをNに対し50%以上入れた側の方が特性がよいのは、歪が十分に緩和するためである。1つのAlに対し2つのNがクラスター化して3量体が形成された状態が50%の状態である。50%未満の場合、3量体が出来た状態に加え、更に余分なNが存在することになる。つまり、3量体になれないNがあるので、その分だけ歪が溜まることになる。3量体になれないNは、単体で入ったのも同然であり、直ぐに歪の限界に達してしまう。こうして、Alの量が50%を割った場合は、歪が急激に発生して、格子欠陥が増加することになる。このため、歪が緩和できる50%以上の場合に比較して、50%未満の方が、シート抵抗が急激に悪化する。
なお、Al濃度/N濃度=0.995で、キャリア数が共ドープしない場合とほぼ同等になる。2×1020cm−3の0.5%分の1×1018cm−3以上のキャリアが100%自由キャリアとなるので、従来の窒素ドープのシート抵抗が実現可能となる。このため、シート抵抗が共ドープしない場合と、およそ一致することになる。また、Al濃度/N濃度=0.33、すなわち、N濃度:Al濃度=3:1の場合、キャリア電子がすべて、3量体によって形成される浅いドナー準位ではなく、余剰のNで形成される深いドナー準位に受け取られことになる。このため、シート抵抗が共ドープしない場合と、およそ一致することになる。したがって、共ドープの抵抗低減効果が得られるのは、Al濃度/N濃度を0.33より大きく0.995より小さくした場合、すなわち、AlをNに対し33%〜99.5%入れた場合となる。誤差も考えると、33%より大きく、100%未満と考えればよい。
Al濃度がN濃度よりも多い場合(Al濃度>N濃度)、相互作用によりAl−Nペアが出来た余りのAlもまた、Al−Nペアの近傍のSiを置換することで安定化する。このため、浅いアクセプタ準位が形成される。また、歪も緩和するので、3量体を形成しない場合よりもAlの濃度を増やすことが出来る。この場合も、N濃度>Al濃度の場合と同様に考えればよい。
図8は、p型SiCの場合のNとAlの濃度とシート抵抗の関係を示す図である。Al濃度は、2×1020cm−3としている。
Al濃度:N濃度が1:1から2:1になるまでは、歪が入らずに3量体ができ、浅いアクセプタ準位に入っているキャリア正孔数が増加する。したがって、シート抵抗が低下する。
そして、2:1に達したとき、最大量のキャリアが使えるので、最もシート抵抗が低い状態となる。シート抵抗としては、図8に示すように、40Ω/□程度まで低減できる。p型SiCへのコンタクト抵抗も、Al濃度:N濃度=2:1になるようにし、Al濃度とN濃度の差分を1020cm−3から1022cm−3と増やすことで10−5Ωcm3程度から、10−7Ωcm3程度まで低減可能である。
さらに、2:1よりAl濃度の割合が上がると、Al濃度:N濃度=2:1より過剰なAlにより、元の深いアクセプタ準位が形成されることになる。そして、このアクセプタ準位がキャリア正孔を受け取ることになり、3量体によって形成された浅いアクセプタ準位が電子で埋まってしまう。Al濃度:N濃度=2:1よりずれた分のAlは、単体で導入された場合に近いので、歪の緩和が困難である。したがって、図8に示すように、シート抵抗が急激に増加していくことになる。
図8では、p型不純物のAl(アルミニウム)を、Nを共ドープしない場合に固溶限近傍まで入れた場合のシート抵抗(この場合は約10KΩ/□)を比較対象とし、Al濃度:N濃度=2:1からずらした場合にどのようにシート抵抗の値が変化するかを示している。
3量体構造が出来たN濃度/Al濃度=0.5を中心に考えることにする。N濃度/Al濃度を0.47以上、0.60(8×1019cm−3以上のキャリアが100%自由キャリアとなる)以下とした場合、つまり、p型不純物に対し、n型不純物を47%〜60%入れた場合、Nを共ドープしない場合のシート抵抗に比較して2桁落ちのシート抵抗となり、非常に有効である。0.5未満では、浅い準位が減少し、かつ、歪が入るので、自由キャリア数が減り、0.47程度で、8×1019cm−3相当のキャリアとなる。
そこから幅を両側に広げて、N濃度/Al濃度を0.45以上、0.75(5×1019cm−3以上のキャリアが100%自由キャリアとなる)以下とした場合、すなわち、NをAlに対し45%〜75%入れた場合、2桁落ちからその3倍程度の大きさとなる。0.5未満では、浅い準位が減少し、かつ、歪が入るので、自由キャリア数が減り、0.45程度で、5×1019cm−3相当のキャリアとなる。さらに幅を広げて、N濃度/Al濃度を0.40より大きく0.95(1×1019cm−3以上のキャリアが100%自由キャリアとなる)より小さくした場合、すなわち、NをAlに対し40%〜95%入れた場合、1桁落ちのシート抵抗となる。0.5未満では、浅い準位が減少し、かつ、歪が入るので、自由キャリア数が減り、0.40程度で、1×1019cm−3相当のキャリアとなる。
NをAlに対して50%以上入れた側の方が特性がよいのは、歪が緩和するためである。それに対し、Nが50%未満の場合、1つのNに対し2つのAlがクラスター化して3量体が形成された状態が50%の状態であり、そこに更にAlが存在することになる。つまり、3量体になれないAlがあるので、その分だけ歪が溜まることになる。こうして、50%を割った場合は、歪が急激に発生して、格子欠陥が増加することになる。このため、歪が緩和できる50%以上の場合に比較して、50%未満の場合の方が、シート抵抗が急激に悪化する。
なお、N濃度/Al濃度=0.995で、キャリア数が共ドープしない場合とほぼ同等になる。2×1020cm−3の0.5%分の1×1018cm−3以上のキャリアが100%自由キャリアとなるので、従来のAlドープのシート抵抗が実現可能となる。このため、シート抵抗が共ドープしない場合と、およそ一致することになる。また、N濃度/Al濃度=0.33、すなわちAl濃度:N濃度=3:1の場合、キャリア正孔がすべて、3量体によって形成される浅いアクセプタ準位ではなく、余剰のAlで形成される深いアクセプタ準位に受け取られことになる。このため、シート抵抗が共ドープしない場合と、およそ一致することになる。したがって、共ドープにより抵抗が低減するのは、N濃度/Al濃度を0.33より大きく0.995より小さくした場合、すなわち、NをAlに対し33%〜99.5%入れた場合となる。誤差も考えると、33%より大きく、100%未満と考えればよい。
共ドープしない場合には、1×1018cm−3以下の低濃度の不純物を使った低抵抗SiC半導体材料は存在し難い。しかし、共ドープによれば、3量体を形成することで、浅い準位が形成され、キャリア数が増加する。したがって、少量の不純物でも低抵抗化が可能である。
以上のように、p型不純物とn型不純物を適切な割合で共ドープすることにより、少なくとも2つの顕著な効果が得られることになる。
第一に、歪が緩和して、歪の少ないSiCを形成可能である。共ドープしない場合に比べて、歪が少なくなり、欠陥が少なく、多くの不純物を導入することが可能になる。すなわち、不純物の固溶限を高くすることができる。したがって、シート抵抗が低減し、比抵抗が低減し、コンタクト抵抗が低減する。イオン注入法であれ、エピタキシャル成長法であれ、欠陥が少なくなるので、不純物の高ドーズ化が可能となる。
第二に、浅い準位を形成することが可能となる。共ドープしない場合と比較して、少ない不純物を用いるだけで、低抵抗な材料を作成することが可能になる。あるいは、同じ不純物量の場合に、桁違いに小さいシート抵抗が得られることになる。エピタキシャル成長にて形成可能な低ドーズの領域を考えた時、共ドープを用いない場合、高抵抗になってしまう。しかし、共ドープを使えば、低抵抗なSiCを形成することが可能となる。これにより、より低オン抵抗のSiC半導体装置を製造することも可能となる。
本実施形態のPiNダイオード100では、n型SiC基板12に、p型不純物であるAlと、n型不純物であるNが所望の割合で共ドープされている。これにより、n型SiC基板12の比抵抗が、共ドープされない場合に比較して低減される。また、第2の電極46とn型SiC基板12間のコンタクト抵抗も、共ドープされない場合に比較して低減される。したがって、オン抵抗が小さくなり、順方向電流の大きなPiNダイオード100が実現される。
さらに、共ドープにより3量体が形成され、n型SiC基板12中の歪が、高不純物濃度の場合でも緩和される。例えば、1×1019cm−3以上、あるいは、1×1020cm−3以上の高不純物濃度でも、n型SiC基板12中の結晶欠陥発生が抑制される。n型SiC基板12中の結晶欠陥が少ないため、結晶欠陥起因の特性劣化が生じにくい。
よって、例えば、逆バイアス時のリーク電流が低減されたPiNダイオード100が実現される。あるいは、通電破壊耐性に優れ、Vf劣化の少ない高耐圧のPiNダイオード100が実現される。
n型SiC基板12に含有されるn型不純物であるNの濃度は、1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下である。この範囲を下回ると、n型SiC基板12の比抵抗および第2の電極46とn型SiC基板12間のコンタクト抵抗が上昇し、オン抵抗が大きくなりすぎる恐れがあるからである。また、この範囲を超えてn型不純物を固溶させることは困難だからである。Nの濃度は、上記範囲内で一定値でもよいし、上記範囲内で濃度勾配があってもよい。
n型SiC基板12の比抵抗と、第2の電極46とn型SiC基板12間のコンタクト抵抗とを十分低減させる観点から、n型SiC基板12に含有されるn型不純物の濃度は、1×1019cm−3以上であることが望ましく、1×1020cm−3以上であることがより望ましい。
そして、n型SiC基板12の比抵抗と、第2の電極46とn型SiC基板12間のコンタクト抵抗とを十分低減させる観点から、n型SiC基板12のAl濃度のNの濃度に対する比(Al濃度/N濃度)は、0.40より大きく0.95より小さい。また、Al濃度のNの濃度に対する比が、0.45以上0.75以下であることが望ましい。さらに、0.47以上0.60以下であることがより望ましい。
Al濃度のNの濃度に対する比は、例えば、SIMS(Secondary Ion Microprobe Spectrometry)により、Al、Nそれぞれの濃度を求めることで算出可能である。
n型SiC基板12の比抵抗と、第2の電極46とn型SiC基板12間のコンタクト抵抗とを十分低減させる観点から、Nのキャリア発生に寄与するドナー準位が40meV以下であることが望ましい。また、35meV以下であることがより望ましく、20meV以下であることが一層望ましい。
Nのドナー準位は、例えば、n型SiC基板12のシート抵抗または比抵抗、あるいは第2の電極46とn型SiC基板12間のコンタクト抵抗の活性化エネルギーを測定することで求めることが可能である。
n型SiC基板12の比抵抗と、第2の電極46とn型SiC基板12間のコンタクト抵抗とを十分低減し、低いオン抵抗を実現させる観点から、p型不純物とn型不純物の大部分が3量体を形成することが望ましい。したがって、Alの90%以上がNの最近接の格子位置にあることが望ましい。Alの90%以上がNの最近接の格子位置にあれば、AlとNの大部分(90%以上)が3量体を形成しているとみなすことができる。
Alのうち、Nの最近接の格子位置にある元素の割合は、例えば、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)で、AlとNとの結合状態を分析することにより求めることが可能である。
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例について、図1を参照しつつ説明する。
本実施形態の半導体装置の製造方法は、第1と第2の面を有し、p型不純物とn型不純物を含有し、p型不純物を元素A、n型不純物を元素Dとする場合に、元素Aと元素Dとの組み合わせが、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)とN(窒素)、B(ボロン)とP(リン)の少なくとも一方の組み合わせであり、組み合わせを構成する元素Aの濃度の元素Dの濃度に対する比が0.40より大きく0.95より小さく、組み合わせを構成する元素Dの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるn型SiC基板を準備する。そして、第1の面上にSiC層を形成し、第1の面側に第1の電極を形成し、第2の面上に第2の電極を形成する。
以下、元素AがAl、元素DがNである場合を例に説明する。
まず、第1と第2の面を有し、Al(アルミニウム)とN(窒素)を含有し、Alの濃度のNの濃度に対する比が0.40より大きく0.95より小さく、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるn型SiC基板12を準備する。n型SiC基板12は、例えば、高温CVD(HTCVD)法により製造された基板である。Nの濃度は、上記範囲内で一定値でもよいし、上記範囲内で濃度勾配があってもよい。
次に、n型SiC基板12の第1の面上にn型のSiC層(n−SiC層)14を形成する。n型のSiC層(n−SiC層)14の形成は、例えば、CVD法を用いたエピタキシャル成長による。
次に、n−SiC層14上に、p型のSiC層(p+型SiC層)16を形成する。p型のSiC層(p+型SiC層)16形成は、例えば、CVD法を用いたエピタキシャル成長による。
次に、p+型SiC層16上に第1の電極(アノード電極)44を形成する。第1の電極44の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
次に、n型SiC基板12の第2の面上に第2の電極(カソード電極)46を形成する。第2の電極46の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
その後、例えば、第1の電極44と第2の電極46のコンタクト抵抗を低減するために、アニールが行われる。アニールは、例えば、アルゴンガス雰囲気で、800℃〜1000℃で行われる。
以上の製造方法で、図1に示すPiNダイオード100が形成される。
本実施形態の製造方法によれば、AlとNの共ドープがされていることにより結晶欠陥の少ないn型SiC基板12上にデバイスが形成される。したがって、デバイス領域への結晶欠陥の伝搬も抑制され、高性能なPiNダイオード100が製造できる。
また、AlとNの共ドープにより低抵抗化されたn型SiC基板12にデバイスが形成される。したがって、オン抵抗の小さい高性能なPiNダイオード100が製造できる。
また、AlとNの共ドープにより低抵抗化されたn型SiC基板12にデバイスが形成される。したがって、膜厚の厚い基板であっても共ドープを行わない場合に比較して抵抗が低い。一般に、オン抵抗を低減するために、ウェハ膜厚を薄くする対策をとることが考えられる。もっとも、その場合ウェハ膜厚が薄くなることにより、ウェハハンドリングを犠牲にすることになる。本実施形態によれば、ウェハハンドリングを犠牲にすることなく、PiNダイオード100が製造できる。
(第2の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、ショットキーバリアダイオード(SBD)である。なお、p型不純物とn型不純物との共ドープによる作用等は、第1の実施形態と同様であるので、以下、記述を省略する。
図9は、本実施形態の半導体装置を示す模式断面図である。
ショットキーバリアダイオード200は、第1と第2の面を有するn型SiC基板(炭化珪素基板)12を備えている。
このn型SiC基板12は、例えば、4H−SiCの基板である。そして、p型不純物であるAl(アルミニウム)とn型不純物であるN(窒素)を含有している。
n型SiC基板12中のAlの濃度のNの濃度に対する比(Al濃度/N濃度)は、0.40より大きく0.95より小さい。そして、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下である。Nの濃度は、上記範囲内で一定値でもよいし、上記範囲内で濃度勾配があってもよい。n型SiC基板12の膜厚は、例えば、300μm〜700μmである。
このSiC基板12の第1の面上には、n型のSiC層(n−SiC層)14が形成されている。n−SiC層14のn型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1015〜2×1016cm−3程度である。n型不純物は、例えば、Nである。n−SiC層14の膜厚は、例えば、5〜50μm程度である。
n−SiC層14上には、n−SiC層14と電気的に接続される導電性の第1の電極(アノード電極)44を備えている。第1の電極44は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第1の電極44はn−SiC層14にショットキー接触している。
また、n型SiC基板12の第2の面上には、導電性の第2の電極(カソード電極)46が形成されている。第2の電極46は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第2の電極46はn型SiC基板12にオーミック接触している。
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例について、図9を参照しつつ説明する。
まず、第1と第2の面を有し、Al(アルミニウム)とN(窒素)を含有し、Alの濃度のNの濃度に対する比が0.40より大きく0.95より小さく、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるn型SiC基板12を準備する。n型SiC基板12は、例えば、高温CVD(HTCVD)法により製造された基板である。
次に、n型SiC基板12の第1の面上にn型のSiC層(n−SiC層)14を形成する。n型のSiC層(n−SiC層)14の形成は、例えば、CVD法を用いたエピタキシャル成長による。
次に、n−SiC層14上に第1の電極(アノード電極)44を形成する。第1の電極44の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
次に、n型SiC基板12の第2の面上に第2の電極(カソード電極)46を形成する。第2の電極46の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
その後、アニールが行われる。アニールは、例えば、アルゴンガス雰囲気で、800℃〜1000℃で行われる。
以上の製造方法で、図9に示すショットキーバリアダイオード200が形成される。
本実施形態おいても、第1の実施形態同様、n型SiC基板12に、p型不純物であるAlと、n型不純物であるNが所望の割合で共ドープされている。したがって、第1の実施形態同様の作用、効果により、高性能なショットキーバリアダイオード200が実現可能となる。
なお、望ましいn型SiC基板12の不純物濃度の範囲、濃度比の範囲、ドナー準位の範囲、Alの格子位置等についても第1の実施形態と同様である。
(第3の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、PiN/ショットキー混合ダイオード(MPS:Merged Pin Schottky diode)である。なお、p型不純物とn型不純物との共ドープによる作用等は、第1の実施形態と同様であるので、以下、記述を省略する。
図10は、本実施形態の半導体装置を示す模式断面図である。
MPS300は、第1と第2の面を有するn型SiC基板(炭化珪素基板)12を備えている。
このn型SiC基板12は、例えば、4H−SiCの基板である。そして、p型不純物であるAl(アルミニウム)とn型不純物であるN(窒素)を含有している。
n型SiC基板12中のAlの濃度のNの濃度に対する比(Al濃度/N濃度)は、0.40より大きく0.95より小さい。そして、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下である。Nの濃度は、上記範囲内で一定値でもよいし、上記範囲内で濃度勾配があってもよい。n型SiC基板12の膜厚は、例えば、300μm〜700μmである。
このSiC基板12の第1の面上には、n型のSiC層(n−SiC層)14が形成されている。n−SiC層14のn型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1015〜2×1016cm−3程度である。n型不純物は、例えば、Nである。n−SiC層14の膜厚は、例えば、5〜50μm程度である。
そして、n−SiC層14の表面に、複数のp型のSiC領域(p+型SiC領域)40が形成されている。p+型SiC領域40は、MPS300のオフ時にn−SiC層14に空乏層を形成することで、リーク電流を抑制する機能を備える。p+型SiC領域40の不純物濃度は、例えば、5×1018〜5×1021cm−3程度である。p型不純物は、例えば、Alである。p+型SiC領域40の深さは、例えば、0.5〜1μm程度である。
n−SiC層14上およびp+型SiC領域40上には、n−SiC層14およびp+型SiC領域40と電気的に接続される導電性の第1の電極(アノード電極)44を備えている。第1の電極44は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第1の電極44はn−SiC層14にショットキー接触している。また、第1の電極44はp+型SiC領域40にオーミック接触している。
また、n型SiC基板12の第2の面上には、導電性の第2の電極(カソード電極)46が形成されている。第2の電極46は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第2の電極46はn型SiC基板12にオーミック接触している。
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例について、図10を参照しつつ説明する。
まず、第1と第2の面を有し、Al(アルミニウム)とN(窒素)を含有し、Alの濃度のNの濃度に対する比が0.40より大きく0.95より小さく、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるn型SiC基板12を準備する。n型SiC基板12は、例えば、高温CVD(HTCVD)法により製造された基板である。
次に、n型SiC基板12の第1の面上にn型のSiC層(n−SiC層)14を形成する。n型のSiC層(n−SiC層)14の形成は、例えば、CVD法を用いたエピタキシャル成長による。
次に、n−SiC層14表面に、p+型SiC領域40を形成する。p+型SiC領域40は、例えば、Alのイオン注入により形成される。
次に、n−SiC層14、p+型SiC領域40上に第1の電極(アノード電極)44を形成する。第1の電極44の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
次に、n型SiC基板12の第2の面上に第2の電極(カソード電極)46を形成する。第2の電極46の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
その後、アニールが行われる。アニールは、例えば、アルゴンガス雰囲気で、800℃〜1000℃で行われる。
以上の製造方法で、図10に示すMPS300が形成される。
本実施形態おいても、第1の実施形態同様、n型SiC基板12に、p型不純物であるAlと、n型不純物であるNが所望の割合で共ドープされている。したがって、第1の実施形態同様の作用、効果により、高性能なMPS300が実現可能となる。
なお、望ましいn型SiC基板12の不純物濃度の範囲、濃度比の範囲、ドナー準位の範囲、Alの格子位置等についても第1の実施形態と同様である。
(第4の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、縦型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。なお、p型不純物とn型不純物との共ドープによる作用等は、第1の実施形態と同様であるので、以下、記述を省略する。
図11は、本実施形態の半導体装置を示す模式断面図である。このMOSFET400は、例えば、pウェルとソース領域をイオン注入で形成する、Double Implantation MOSFET(DIMOSFET)である。
このMOSFET400は、第1と第2の面を有するn型SiC基板(炭化珪素基板)12を備えている。図11においては、第1の面とは図の上側の面であり、第2の面とは図の下側の面である。
このn型SiC基板12は、例えば、4H−SiCの基板である。そして、p型不純物であるAl(アルミニウム)とn型不純物であるN(窒素)を含有している。
n型SiC基板12中のAlの濃度のNの濃度に対する比(Al濃度/N濃度)は、0.40より大きく0.95より小さい。そして、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下である。Nの濃度は、上記範囲内で一定値でもよいし、上記範囲内で濃度勾配があってもよい。n型SiC基板12の膜厚は、例えば、300μm〜700μmである。
このSiC基板12の第1の面上には、n型のSiC層(n−SiC層)14が形成されている。n−SiC層14のn型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1015〜2×1016cm−3程度である。n型不純物は、例えば、Nである。n−SiC層12の膜厚は、例えば、5〜50μm程度である。
n−SiC層14の一部表面には、p型のSiC領域(pウェル領域)16が形成されている。pウェル領域16のp型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1015〜1×1017cm−3程度である。p型不純物は、例えばAlである。pウェル領域16の深さは、例えば0.6μm程度である。pウェル領域16は、MOSFET400のチャネル領域として機能する。
pウェル領域16の一部表面には、n+型のSiC領域(ソース領域)18が形成されている。ソース領域18のn型不純物濃度は、例えば、5×1019〜1×1021cm−3程度である。n型不純物は、例えば、Nである。ソース領域18の深さは、pウェル領域16の深さよりも浅く、例えば0.3μm程度である。
また、pウェル領域16の一部表面であって、ソース領域18の側方に、p+型のSiC領域(pウェルコンタクト領域)20が形成されている。pウェルコンタクト領域20のp型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1019〜1×1021cm−3程度である。p型不純物は、例えばAlである。pウェルコンタクト領域20の深さは、pウェル領域16の深さよりも浅く、例えば0.3μm程度である。
n−SiC層14およびpウェル領域16の表面に連続的に、これらの領域および層を跨ぐように形成されたゲート絶縁膜28を有している。ゲート絶縁膜28には、例えばSiO2膜やhigh−k絶縁膜が適用可能である。
そして、ゲート絶縁膜28上には、ゲート電極30が形成されている。ゲート電極30には、例えばポリシリコン等が適用可能である。ゲート電極30上には、例えば、SiO2膜で形成される層間絶縁膜32が形成されている。
ゲート電極下のソース領域18とn−SiC層14とに挟まれるpウェル領域16がMOSFET400のチャネル領域として機能する。
そして、ソース領域18およびpウェルコンタクト領域20と電気的に接続される導電性の第1の電極(ソース・pウェル共通電極)24を備えている。第1の電極(ソース・pウェル共通電極)24は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第1の電極24はソース領域18、pウェルコンタクト領域20にオーミック接触している。
また、n型SiC基板12の第2の面上には、導電性の第2の電極(ドレイン電極)36が形成されている。第2の電極(ドレイン電極)36は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第2の電極36はn型SiC基板12にオーミック接触している。
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例について、図11を参照しつつ説明する。
まず、第1と第2の面を有し、Al(アルミニウム)とN(窒素)を含有し、Alの濃度のNの濃度に対する比が0.40より大きく0.95より小さく、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるn型SiC基板12を準備する。n型SiC基板12は、例えば、高温CVD(HTCVD)法により製造された基板である。
次に、n型SiC基板12の第1の面上にn型のSiC層(n−SiC層)14を形成する。n型のSiC層(n−SiC層)14の形成は、例えば、CVD法によるエピタキシャル成長による。
次に、n−SiC層14の表面に、p型のSiC領域(pウェル領域)16を形成する。pウェル領域16は、例えば、Alのイオン注入により形成される。
次に、pウェル領域16の一部表面に、ソース領域18を形成する。n+型のソース領域18は、例えば、Nのイオン注入により形成される。
次に、pウェル領域16の一部表面のソース領域18の側方に、p+型のpウェルコンタクト領域20を形成する。pウェルコンタクト領域20は、例えば、Alのイオン注入により形成される。
次に、n−SiC層14およびpウェル領域16の表面に連続的に、ゲート絶縁膜28を形成する。ゲート絶縁膜28は、例えば、CVD法により形成される。
次に、ゲート絶縁膜28上に公知のプロセスを用いて、ゲート電極30および層間絶縁膜32を形成する。
次に、ソース領域18、pウェルコンタクト領域20上に第1の電極(ソース・pウェル共通電極)24を形成する。第1の電極24の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
次に、n型SiC基板12の第2の面上に第2の電極(ドレイン電極)36を形成する。第2の電極36の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
その後、アニールが行われる。アニールは、例えば、アルゴンガス雰囲気で、800℃〜1000℃で行われる。
以上の製造方法で、図11に示すMOSFET400が形成される。
本実施形態おいても、第1の実施形態同様、n型SiC基板12に、p型不純物であるAlと、n型不純物であるNが所望の割合で共ドープされている。したがって、第1の実施形態同様の作用、効果により、高性能なMOSFET400が実現可能となる。
なお、望ましいn型SiC基板12の不純物濃度の範囲、濃度比の範囲、ドナー準位の範囲、Alの格子位置等についても第1の実施形態と同様である。
(第5の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、第1と第2の面を有し、p型不純物とn型不純物を含有し、p型不純物を元素A、n型不純物を元素Dとする場合に、元素Aと元素Dとの組み合わせが、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)とN(窒素)、B(ボロン)とP(リン)の少なくとも一方の組み合わせであり、組み合わせを構成する元素Dの濃度の元素Aの濃度に対する比が0.33より大きく1.0より小さく、組み合わせを構成する元素Aの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるp型SiC基板と、第1の面上に設けられたSiC層と、第1の面側に設けられた第1の電極と、第2の面上に設けられた第2の電極と、を備える。
例えば、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)とN(窒素)の第1の組み合わせの場合、元素Aが、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)から選ばれる1種の元素であってもかまわない。また、Al(元素A1)とGa(元素A2)等の2種の元素、あるいは、Al(元素A1)、Ga(元素A2)、In(元素A3)の3種の元素で構成されていてもかまわない。複数の元素の場合、2種または3種の元素をあわせて組み合わせを構成する元素Aと考え、上記元素Dの濃度の元素Aの濃度に対する比、元素Aの濃度の条件が充足されれば良い。
また、第1の組み合わせと第2の組み合わせの両者が共存することも可能である。しかし、上記元素Dの濃度の元素Aの濃度に対する比、元素Aの濃度の条件は、すくなくとも、第1の組み合わせ、第2の組み合わせのいずれか一方を構成する元素で充足されなければならない。いいかえれば、第1の組み合わせと第2の組み合わせは、個別に元素比、元素濃度を満たさなければならない。これは、第1の組み合わせの不純物と第2の組み合わせの不純物の間では、後に詳述する3量体が形成されないためである。
例えば、Alが1×1018cm−3、Gaが1×1018cm−3、Nが1×1018cm−3の場合、N/(Al+Ga)=0.5で、Al+Gaが2×1018cm−3であるので元素比、濃度ともに実施形態の範囲内である。
また、例えば、Bが4×1018cm−3、Pが1×1018cm−3、Nが1×1018cm−3の場合、第2の組み合わせであるBとPのみに着目する。すると、P/B=0.25となり元素比を充足せず、実施形態の範囲外である。
また、例えば、Alが5×1017cm−3、Bが5×1017cm−3、Nが2.5×1017cm−3、Pが2.5×1017cm−3の場合、第1の組み合わせで見ると、N/Al=0.5で比の条件は満たすが、Alの濃度が1×1018cm−3未満である。第2の組み合わせで見ると、P/B=0.5で比の条件は満たすが、Bの濃度が1×1018cm−3未満である。したがって、第1および第2の組み合わせがいずれも個別に元素比、元素濃度を充足しないので、実施形態の範囲外である。
なお、本実施形態は、p型不純物やn型不純物として上記例示した以外の元素が含有されることを排除するものではない。以下、元素AがAl(アルミニウム)、元素DがN(窒素)である場合を例に説明する。
本実施形態の半導体装置は、縦型のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。なお、p型不純物とn型不純物との共ドープによる作用等は、第1の実施形態と同様であるので、以下、記述を省略する。
図12は、本実施形態の半導体装置を示す模式断面図である。
このIGBT500は、第1と第2の面を有するp型SiC基板(炭化珪素基板)10を備えている。図12においては、第1の面とは図の上側の面であり、第2の面とは図の下側の面である。
このp型SiC基板52は、例えば、4H−SiCの基板である。そして、p型不純物であるAl(アルミニウム)とn型不純物であるN(窒素)を含有している。
p型SiC基板52中のNの濃度のAlの濃度に対する比(N濃度/Al濃度)は、0.33より大きく1.0より小さい。そして、Alの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下である。Alの濃度は、上記範囲内で一定値でもよいし、上記範囲内で濃度勾配があってもよい。p型SiC基板52の膜厚は、例えば、300μm〜700μmである。
このp型SiC基板52の第1の面上には、n型のSiC層(n−SiC層)14が形成されている。n−SiC層14のn型不純物の不純物濃度はp型SiC基板52のp型不純物濃度より低く、例えば、5×1015〜2×1016cm−3程度である。n型不純物は、例えば、Nである。n−SiC層12の膜厚は、例えば、5〜50μm程度である。
n−SiC層14の一部表面には、p型のSiC領域(第1のエミッタ領域)16が形成されている。第1のエミッタ領域16のp型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1015〜1×1017cm−3程度である。p型不純物は、例えばAlである。第1のエミッタ領域16の深さは、例えば0.6μm程度である。第1のエミッタ領域16は、IGBT500のチャネル領域として機能する。
第1のエミッタ領域16の一部表面には、n+型のSiC領域(第2のエミッタ領域)18が形成されている。第2のエミッタ領域18のn型不純物濃度は、例えば、5×1019〜1×1021cm−3程度である。n型不純物は、例えば、Nである。第2のエミッタ領域18の深さは、第1のエミッタ領域16の深さよりも浅く、例えば0.3μm程度である。
また、第1のエミッタ領域16の一部表面であって、第2のエミッタ領域18の側方に、p+型のSiC領域(エミッタコンタクト領域)20が形成されている。エミッタコンタクト領域20のp型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1019〜1×1021cm−3程度である。p型不純物は、例えばAlである。エミッタコンタクト領域20の深さは、第1のエミッタ領域16の深さよりも浅く、例えば0.3μm程度である。
n−SiC層14および第1のエミッタ領域16の表面に連続的に、これらの領域および層を跨ぐように形成されたゲート絶縁膜28を有している。ゲート絶縁膜28には、例えばSiO2膜やhigh−k絶縁膜が適用可能である。
そして、ゲート絶縁膜28上には、ゲート電極30が形成されている。ゲート電極30には、例えばポリシリコン等が適用可能である。ゲート電極30上には、例えば、SiO2膜で形成される層間絶縁膜32が形成されている。
ゲート電極下の第2のエミッタ領域18とn−SiC層14とに挟まれる第1のエミッタ領域16がIGBT500のチャネル領域として機能する。
そして、第2のエミッタ領域18と、エミッタコンタクト領域20とに電気的に接続される導電性の第1の電極(エミッタ電極)24を備えている。第1の電極(エミッタ電極)24は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第1の電極24は第2のエミッタ領域18と、エミッタコンタクト領域20にオーミック接触している。
また、p型SiC基板52の第2の面上には、導電性の第2の電極(コレクタ電極)36が形成されている。第2の電極(コレクタ電極)36は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第2の電極36はp型SiC基板52にオーミック接触している。
本実施形態のIGBT500では、p型SiC基板52に、p型不純物であるAlと、n型不純物であるNが所望の割合で共ドープされている。これにより、p型SiC基板52の比抵抗が、共ドープされない場合に比較して低減される。また、第2の電極36とp型SiC基板52間のコンタクト抵抗も、共ドープされない場合に比較して低減される。したがって、オン抵抗が小さくなり、オン電流の大きなIGBT500が実現される。
さらに、共ドープにより3量体が形成され、p型SiC基板52中の歪が、高不純物濃度の場合でも緩和される。例えば、1×1019cm−3以上、あるいは、1×1020cm−3以上の高不純物濃度でも、p型SiC基板52中の結晶欠陥発生が抑制される。p型SiC基板52中の結晶欠陥が少ないため、結晶欠陥起因の特性劣化が生じにくい。
よって、例えば、オフ時のリーク電流が低減されたIGBT500が実現される。あるいは、通電破壊耐性に優れ、高耐圧のIGBT500が実現される。
p型SiC基板52に含有されるn型不純物であるAlの濃度は、1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下である。この範囲を下回ると、p型SiC基板52の比抵抗および第2の電極36とp型SiC基板52間のコンタクト抵抗が上昇し、オン抵抗が大きくなりすぎる恐れがあるからである。また、この範囲を超えてp型不純物を固溶させることは困難だからである。
p型SiC基板52の比抵抗と、第2の電極36とp型SiC基板52間のコンタクト抵抗とを十分低減させる観点から、p型SiC基板52に含有されるp型不純物の濃度は、1×1019cm−3以上であることが望ましく、1×1020cm−3以上であることがより望ましい。
p型SiC基板52の比抵抗と、第2の電極36とp型SiC基板52間のコンタクト抵抗とを十分低減させる観点から、p型SiC基板52のN濃度のAlの濃度に対する比(N濃度/Al濃度)は、0.33より大きく1.0より小さい。また、N濃度のAlの濃度に対する比が、0.40より大きく0.95より小さいことが望ましい。そして、0.45以上0.75以下であるがより望ましい。さらに、0.47以上0.60以下であることが一層望ましい。
N濃度のAlの濃度に対する比に対する比は、例えば、SIMS(Secondary Ion Microprobe Spectrometry)により、N、Alそれぞれの濃度を求めることで算出可能である。
p型SiC基板52の比抵抗と、第2の電極36とp型SiC基板52間のコンタクト抵抗とを十分低減させる観点から、Alのキャリア発生に寄与するドナー準位が150meV以下であることが望ましい。また、100meV以下であることがより望ましく、40meV以下であることが一層望ましい。
Alのアクセプタ準位は、例えば、p型SiC基板52のシート抵抗または比抵抗、あるいは第2の電極36とp型SiC基板52間のコンタクト抵抗の活性化エネルギーを測定することで求めることが可能である。
p型SiC基板52の比抵抗と、第2の電極36とp型SiC基板52間のコンタクト抵抗とを十分低減し、低いオン抵抗を実現させる観点から、p型不純物とn型不純物の大部分が3量体を形成することが望ましい。したがって、Nの90%以上がAlの最近接の格子位置にあることが望ましい。Nの90%以上がAlの最近接の格子位置にあれば、NとAlの大部分(90%以上)が3量体を形成しているとみなすことができる。
Nのうち、Alの最近接の格子位置にある元素の割合は、例えば、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)で、NとAlとの結合状態を分析することにより求めることが可能である。
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例について、図12を参照しつつ説明する。
本実施形態の半導体装置の製造方法は、第1と第2の面を有し、p型不純物とn型不純物を含有し、p型不純物を元素A、n型不純物を元素Dとする場合に、元素Aと元素Dとの組み合わせが、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)とN(窒素)、B(ボロン)とP(リン)の少なくとも一方の組み合わせであり、組み合わせを構成する元素Dの濃度の元素Aの濃度に対する比が0.33より大きく1.0より小さく、組み合わせを構成する元素Aの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるp型SiC基板を準備する。そして、第1の面上にSiC層を形成し、第1の面側に第1の電極を形成し、第2の面上に第2の電極を形成する。
以下、元素AがAl、元素DがNである場合を例に説明する。
まず、第1と第2の面を有し、N(窒素)とAl(アルミニウム)を含有し、Nの濃度のAlの濃度に対する比が0.33より大きく1.0より小さく、Alの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるp型SiC基板52を準備する。p型SiC基板52は、例えば、高温CVD(HTCVD)法により製造された基板である。
次に、p型SiC基板52の第1の面上にn型のSiC層(n−SiC層)14を形成する。n型のSiC層(n−SiC層)14の形成は、例えば、CVD法によるエピタキシャル成長による。
次に、n−SiC層14の表面に、p型のSiC領域(第1のエミッタ領域)16を形成する。第1のエミッタ領域16は、例えば、Alのイオン注入により形成される。
次に、第1のエミッタ領域16の一部表面に、第2のエミッタ領域18を形成する。n+型の第2のエミッタ領域18は、例えば、Nのイオン注入により形成される。
次に、第1のエミッタ領域16の一部表面の第2のエミッタ領域18の側方に、p+型のエミッタコンタクト領域20を形成する。エミッタコンタクト領域20は、例えば、Alのイオン注入により形成される。
次に、n−SiC層14および第1のエミッタ領域16の表面に連続的に、ゲート絶縁膜28を形成する。ゲート絶縁膜28は、例えば、CVD法により形成される。
次に、ゲート絶縁膜28上に公知のプロセスを用いて、ゲート電極30および層間絶縁膜32を形成する。
次に、第2のエミッタ領域18、エミッタコンタクト領域20上に第1の電極(エミッタ電極)24を形成する。第1の電極24の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
次に、p型SiC基板52の第2の面上に第2の電極(コレクタ電極)36を形成する。第2の電極36の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
その後、アニールが行われる。アニールは、例えば、アルゴンガス雰囲気で、800℃〜1000℃で行われる。
以上の製造方法で、図12に示すIGBT500が形成される。
本実施形態の製造方法によれば、AlとNの共ドープにより結晶欠陥の少ないp型SiC基板52上にデバイスが形成される。したがって、素子領域への結晶欠陥の伝搬も抑制され、高性能なIGBT500が製造できる。
また、AlとNの共ドープにより低抵抗化されたp型SiC基板52にデバイスが形成される。したがって、オン抵抗の小さい高性能なIGBT500が製造できる。
また、AlとNの共ドープにより低抵抗化されたp型SiC基板52にデバイスが形成される。したがって、膜厚の厚い基板であっても共ドープを行わない場合に比較して抵抗が低い。一般に、オン抵抗を低減するために、ウェハ膜厚を薄くする対策をとることが考えらえる。もっとも、その場合ウェハ膜厚が薄くなることによりウェハハンドリングを犠牲にすることになる。本実施形態によれば、ウェハハンドリングを犠牲にすることなく、IGBT500が製造できる。
(第6の実施形態)
本実施形態の半導体装置は、縦型のJFET(Junction Field Effect Transistor)である。なお、p型不純物とn型不純物との共ドープによる作用等は、第1の実施形態と同様であるので、以下、記述を省略する。
図13は、本実施形態の半導体装置を示す模式断面図である。
このJFET600は、第1と第2の面を有するn型SiC基板(炭化珪素基板)12を備えている。図13においては、第1の面とは図の上側の面であり、第2の面とは図の下側の面である。
このn型SiC基板12は、例えば、4H−SiCの基板である。そして、p型不純物であるAl(アルミニウム)とn型不純物であるN(窒素)を含有している。
n型SiC基板12中のAlの濃度のNの濃度に対する比(Al濃度/N濃度)は、0.40より大きく0.95より小さい。そして、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下である。Nの濃度は、上記範囲内で一定値でもよいし、上記範囲内で濃度勾配があってもよい。n型SiC基板12の膜厚は、例えば、300μm〜700μmである。
このSiC基板12の第1の面上には、n型のSiC層(n−SiC層)14が形成されている。n−SiC層14のn型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1015〜2×1016cm−3程度である。n型不純物は、例えば、Nである。n−SiC層12の膜厚は、例えば、5〜50μm程度である。
n−SiC層14の一部表面には、p型のSiC領域(ゲート領域)16が形成されている。ゲート領域16のp型不純物の不純物濃度は、例えば、5×1015〜1×1017cm−3程度である。p型不純物は、例えばAlである。ゲート領域16の深さは、例えば0.6μm程度である。ゲート領域16は、印加電圧が変化することによりn−SiC層14に伸びる空乏層を制御し、JFET600の電流を制御する領域として機能する。
n−SiC層14の表面には、ゲート領域16に挟まれてn+型のSiC領域(ソース領域)18が形成されている。ソース領域18のn型不純物濃度は、例えば、5×1019〜1×1021cm−3程度である。n型不純物は、例えば、Nである。ソース領域18の深さは、ゲート領域16の深さよりも浅く、例えば0.3μm程度である。
そして、ソース領域18と電気的に接続される導電性の第1の電極(ソース電極)24を備えている。第1の電極(ソース電極)24は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第1の電極24はソース領域18にオーミック接触している。
また、n型SiC基板12の第2の面上には、導電性の第2の電極(ドレイン電極)36が形成されている。第2の電極(ドレイン電極)36は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第2の電極36はn型SiC基板12にオーミック接触している。
そして、ゲート領域16と電気的に接続される導電性の第3の電極(ゲート電極)66を備えている。第3の電極(ゲート電極)66は、例えば、Ti(チタン)、ニッケル(Ni)、Al(アルミニウム)等の金属または金属化合物で形成される。第3の電極64はゲート領域64にオーミック接触している。
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法の一例について、図13を参照しつつ説明する。
まず、第1と第2の面を有し、Al(アルミニウム)とN(窒素)を含有し、Alの濃度のNの濃度に対する比が0.40より大きく0.95より小さく、Nの濃度が1×1018cm−3以上1×1022cm−3以下であるn型SiC基板12を準備する。n型SiC基板12は、例えば、高温CVD(HTCVD)法により製造された基板である。
次に、n型SiC基板12の第1の面上にn型のSiC層(n−SiC層)14を形成する。n型のSiC層(n−SiC層)14の形成は、例えば、CVD法によるエピタキシャル成長による。
次に、n−SiC層14の表面に、p型のSiC領域(ゲート領域)16を形成する。ゲート領域16は、例えば、Alのイオン注入により形成される。
次に、n−SiC層14の一部表面に、ソース領域18を形成する。n+型のソース領域18は、例えば、Nのイオン注入により形成される。
次に、ソース領域18上に第1の電極(ソース電極)24を形成する。第1の電極24の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
次に、n型SiC基板12の第2の面上に第2の電極(ドレイン電極)36を形成する。第2の電極36の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
さらに、ゲート領域16上に第3の電極(ゲート電極)66を形成する。第3の電極64の形成は、例えば、金属膜をスパッタすることにより行う。
その後、アニールが行われる。アニールは、例えば、アルゴンガス雰囲気で、800℃〜1000℃で行われる。
以上の製造方法で、図13に示すJFET600が形成される。
本実施形態おいても、第1の実施形態同様、n型SiC基板12に、p型不純物であるAlと、n型不純物であるNが所望の割合で共ドープされている。したがって、第1の実施形態同様の作用、効果により、高性能なJFET600が実現可能となる。
なお、望ましいn型SiC基板12の不純物濃度の範囲、濃度比の範囲、ドナー準位の範囲、Alの格子位置等についても第1の実施形態と同様である。
以上、実施形態では、SiC(炭化珪素)の結晶構造として4H−SiCの場合を例に説明したが、本発明は6H−SiC、3C−SiC等、その他の結晶構造のSiCに適用することも可能である。
また、実施形態では、p型不純物とn型不純物の組み合わせとして、Al(アルミニウム)とN(窒素)の組み合わせの場合を例に説明したが、この組み合わせに限らず、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)またはIn(インジウム)とN(窒素)、B(ボロン)とP(リン)の組み合わせであれば、同様の効果を得ることが可能である。
また、実施形態において、n型不純物は、例えば、N(窒素)やP(リン)が好ましいが、As(ヒ素)等を適用することも可能である。また、p型不純物は例えば、Al(アルミニウム)が好ましいが、B(ボロン)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)等を適用することも可能である。
また、第1ないし第6の実施形態において、SiC基板、SiC層、SiC領域等の導電型を逆にした構造の半導体装置も、本発明の範囲に含まれる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換えまたは変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。