特開2012−170785号公報にあるように、複数台のボイラと、ボイラの燃焼台数を制御する台数制御装置からなり、台数制御装置によって個々のボイラの燃焼状態を調節する多缶設置ボイラが広く使用されている。多缶設置ボイラの場合、各ボイラで発生した蒸気をスチームヘッダに集合させてから蒸気使用部へ供給しており、蒸気集合部での蒸気圧力を検出する圧力検出装置によって検出した蒸気圧力値に基づいてボイラの運転を制御する。台数制御装置は、ボイラが供給している蒸気の圧力値を圧力調節範囲内に維持するように、ボイラ全体での燃焼量を制御するものであり、蒸気圧力値が低くなるとボイラ全体での燃焼量を大きくし、蒸気圧力値が高くなるとボイラ全体での燃焼量を小さくする。そして台数制御装置では、ボイラ全体での燃焼量から個々のボイラでの燃焼値を決定し、各ボイラに対して決定した燃焼値の燃焼指令を出力する。
台数制御では、蒸気圧力調節範囲内を複数の圧力区分に分割し、圧力区分ごとにボイラの燃焼状態を定めた燃焼パターンを設定しておき、スチームヘッダで検出した蒸気圧力値がどの圧力区分に該当するかによって各ボイラの燃焼状態を定め、ボイラの燃焼量を制御する。蒸気圧力値が高圧側の圧力区分に移るほどボイラの燃焼量を少なくし、逆に低圧側の圧力区分に移るほどボイラの燃焼量を多くすることで、蒸気圧力値が圧力調節範囲内を維持するように制御する。
図4は、高燃焼・中燃焼・低燃焼・燃焼停止の4位置で燃焼制御するボイラ4台で台数制御を行う場合の台数制御パターンを示している。図では4台のボイラを4個の長方形で表しており、各長方形にボイラの燃焼状態を記載している。ボイラの燃焼状態は、高燃焼の場合を「高」、中燃焼の場合を「中」、低燃焼の場合を「低」、燃焼停止の場合を「停」で示している。図ではある蒸気圧力値によって定まる各ボイラの燃焼パターンを、蒸気圧力の区分ごとに示している。
この例でのボイラ1台当たりの蒸気発生量は、低燃焼の場合には0.5t、中燃焼の場合には1.5t、高燃焼の場合には3.0tであるとしている。ボイラには稼働優先順位を設定しており、稼働優先順位の高いボイラから順に燃焼量を増加し、稼働優先順位の低いボイラから順に燃焼量を減少する。稼働優先順位は図の左側のボイラから順に第1位から第4位と設定している。全てのボイラで燃焼停止となっている「停停停停」の状態から、全てのボイラで高燃焼となる「高高高高」まで13の圧力区分があり、区分1から区分13の13段階分の燃焼パターンを設定している。この燃焼量は、各ボイラからの蒸気を集合させた部分での蒸気圧力値に対応させて設定しており、蒸気圧力値が高いほどボイラの燃焼量は小さくなるようにし、蒸気圧力値が低いほどボイラの燃焼量が大きくなっていくようにしておく。
蒸気圧力値が最も高い圧力区分である区分1の場合、全てのボイラで燃焼を停止しているために燃焼パターンは「停停停停」となり、蒸気発生量は0tとなる。蒸気圧力値が区分1から1段階低くなって区分2の圧力値になった場合、台数制御装置は稼働優先順位が1位のボイラに対しては低燃焼の燃焼指令を出力し、他のボイラは燃焼停止とする。この場合の燃焼パターンは「低停停停」となり、燃焼を行っているボイラは低燃焼の1台だけであるために蒸気発生量は0.5tとなる。さらに蒸気圧力値がもう一段階低い区分3の圧力区分内となると、稼働優先順位が第1位のボイラを中燃焼とし、その他のボイラは燃焼停止で燃焼パターンは「中停停停」となり、蒸気発生量は1.5tとなる。このように蒸気圧力値に基づいた燃焼パターンをボイラの全てが高燃焼となるまでは設定しておき、蒸気圧力値が低圧の区分に移るごとに燃焼量が1段階増加するようにしている。
また、台数制御での燃焼パターンの設定は、蒸気圧力が低下していく場合と上昇していく場合で別のルートをとることもある。蒸気圧力区分の区分3から区分5の部分では、二つの燃焼パターンを並列に設定している。区分2から区分3→区分4→区分5へと燃焼量が増加していく場合の燃焼パターンは、「中停停停」→「中低停停」→「中低低停」となるが、区分6から区分5→区分4→区分3へと燃焼量が減少していく場合の燃焼パターンは、「低低低低」→「低低低停」→「低低停停」としている。これは燃焼を行っているボイラは可能な限り燃焼を停止しないようにし、燃焼の発停が少なくなるように制御する方が負荷に対する追従性が良いためである。ボイラでは燃焼を停止していた状態から燃焼を開始する場合には、炉内に可燃性ガスが残留している状態で点火を行うことがないように、炉内を換気するプレパージを行っており、燃焼開始の指令を出力してもすぐには燃焼できない。この燃焼準備に要する時間が必要であるため、燃焼の発停が多くなると負荷追従性が悪くなる。
例えば、「中低低低」の燃焼状態から蒸気圧力値の上昇によって燃焼量を減少する場合、もし燃焼状態を「中低低停」とした場合、ボイラの燃焼台数が1台減少することになる。この直後に蒸気圧力値の低下で蒸気発生量の増加が必要となって「中低低低」に戻す場合、直前で燃焼を停止したボイラの燃焼を開始することになり、燃焼準備の時間が必要であるために追従性は悪くなる。これに対して、一段階燃焼量を減少する場合「中低低低」から「中低低停」とする替わりに「低低低低」としておいた場合、その直後に蒸気圧力値の低下で蒸気発生量の増加が必要となっても、低燃焼の1台を中燃焼に増加して「中低低低」とすることで燃焼量を一段階増加することができる。低燃焼で燃焼を行っているボイラの燃焼量を中燃焼に変更するのは短時間で行うことができるために追従性は良いものとなる。
また、多缶設置ボイラの台数制御では、複数台のボイラが燃焼と燃焼停止を短時間で繰り返すハンチングの発生を防止することも重要である。先にも記載した通り、燃焼を停止していたボイラが燃焼を開始して蒸気の供給を行うまでには一定の時間が必要となる。そのため、全てのボイラで燃焼を停止しておいた状態で蒸気圧力値が低下した場合、蒸気発生の準備を行っている間に蒸気圧力値が低下してさらに低圧側の圧力区分となり、本来なら燃焼を行う必要のないボイラに対しても燃焼を開始させることがある。
この場合の例を、蒸気圧力値と燃焼状態の変化状況を図5に基づいて説明する。図5では、蒸気圧力値の上昇によってボイラは全缶停止となっている状態から始めている。蒸気圧力値が低下した1段階下の圧力区分となった場合、稼働優先順位第1位のボイラに対して燃焼指令の出力を行う。しかし燃焼準備の工程が必要であってすぐの蒸気供給は行われないため、蒸気圧力値の低下は続く。燃焼準備を行っている間に蒸気圧力値はさらに下の圧力区分になると、第1位ボイラへの燃焼指令は中燃焼に引き上げているが、第1位ボイラはまだ燃焼を開始していないために蒸気の供給は行えない。さらに蒸気圧力が低下すると、稼働優先順位が次位の第2位ボイラにも燃焼指令を出力する。この時点でもボイラの燃焼は始まっていないために蒸気圧力の低下は続く。このことを繰り返すと、ボイラへの燃焼指令は、蒸気の使用量よりも大幅に大きな量の蒸気を供給することのできる燃焼量とすることになる。この場合、ボイラで燃焼準備の工程が終了すると、多数のボイラで次々と蒸気供給を開始することになり、蒸気の発生量は蒸気使用量よりも大幅に多いものとなる。すると、蒸気圧力値は急上昇し、制御範囲の上限に達すると、全てのボイラに対して燃焼停止の指令が出力され、ボイラは全缶燃焼停止の状態に戻る。すると、最初の状態に戻ったため、再びボイラからの蒸気供給が開始されるまでにボイラの燃焼量が必要以上に多くなるように燃焼指令の出力が行われる。このサイクルを繰り返すことになると、蒸気圧力値を安定させることができないというだけでなく、ボイラの燃焼発停回数が急増するためにボイラの寿命に悪影響を与え、さらには燃料や電力の使用量も増大することになる。そのためにハンチングの発生を抑えることが必要である。
ハンチングの発生を抑制する方法としては、蒸気発生量が急激に増加することを防止することが考えられる。ハンチングの発生は、前記の要因が連続してする起きることが原因であるため、連続した要因をどこかで断ち切ることでハンチングを抑制することができる。
特開2007−120785に記載の発明では、蒸気圧力値から定まる必要燃焼量が現在燃焼量より大きい場合であっても、蒸気圧力値が上昇している場合には燃焼量を増加しないとしている。蒸気圧力値から定まる必要燃焼量が現在燃焼量より大きい場合、通常であればボイラの燃焼量を増加するが、すでに蒸気圧力値は上昇を開始している場合には、燃焼量を増加すると後で蒸気圧力値の急上昇に繋がる。そのため、蒸気圧力値が上昇している場合には燃焼量を増加しないとすることで、蒸気発生量が急増することを防止するようにしている。このようにすることで、ボイラ全缶での燃焼と燃焼停止を短期間に繰り返すハンチングに発生を防止することができるというものである。
しかしこの制御は、蒸気圧力値の変化方向がそれまでとは逆方向に反転した後に開始するものであるが、この状態では既に手遅れになることがあり、上記の方法だけではハンチングの発生を防止できないことがあった。
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を行っている多缶設置ボイラのフロー図、図2はオーバーシュート検知時における台数制御パターン説明図、図3はオーバーシュート検知時の台数制御を行っている場合での運転状況説明図、図4は通常の台数制御を行っている場合での台数制御パターン説明図、図5は図3との比較のため、通常の台数制御を行っている場合での運転状況説明図である。
図1では1号缶から4号缶のボイラ1を並列に設置しており、各ボイラ1で発生させた蒸気を集合させるスチームヘッダ4を設けている。各ボイラ1とスチームヘッダ4の間を蒸気配管5で結んでおき、各ボイラ1で発生させた蒸気はスチームヘッダ4に集合させた後で蒸気使用部(図示せず)へ送る。スチームヘッダ4には、蒸気圧力値を検出する圧力検出装置6を設け、圧力検出装置6で検出した蒸気圧力値は台数制御装置3へ送る。台数制御装置3には、蒸気圧力値に応じてボイラの燃焼台数を定めている台数制御パターンを設定しておき、台数制御装置3が各ボイラにおける燃焼の有無及び燃焼値を決定する。各ボイラには、それぞれに運転制御装置2を設けており、運転制御装置2は台数制御装置3からの燃焼要求信号を受けてボイラの燃焼を行う。
各ボイラは、高燃焼、中燃焼、低燃焼、燃焼停止の四位置燃焼制御を行う。各ボイラでの1時間当たりの蒸気発生量は、高燃焼の場合には3.0t、中燃焼では1.5t、低燃焼では0.5tであるとしている。
台数制御装置3には、各ボイラ1に対して優先順位を設定しておき、台数制御装置3は優先順位の高いものから何番目のボイラをどの燃焼値とするかということを決定する。台数制御装置に設定しておく台数制御パターンは、図2と図4に記載しているものとなる。
台数制御装置にて行う台数制御は、オーバーシュート発生時に行う台数制御であるオーバーシュート検知制御と、それ以外の場合に行う通常台数制御がある。台数制御装置3にて行うボイラの台数制御は、台数制御装置3に設定している台数制御パターンに基づいて行い、圧力検出装置6で検出した蒸気圧力値が低いほどボイラの燃焼量を多くし、蒸気圧力値が高いほど燃焼量を少なくする。蒸気の発生量が蒸気の使用量より大きい場合には蒸気圧力値は上昇し、蒸気の発生量が蒸気の使用量より小さい場合には蒸気圧力値は低下することとなる。そのため、台数制御装置3は蒸気圧力値を制御圧力幅内に保つように、蒸気圧力値が高くなればボイラの燃焼量を少なくし、蒸気圧力値が低くなればボイラの燃焼量を多くする台数制御を実施する。
オーバーシュート検知制御は、蒸気圧力値が台数制御の圧力上限に達した場合であるオーバーシュート発生時に行うものであり、オーバーシュートの検出から設定時間の間は、ボイラの燃焼量増加を制限する。オーバーシュート検知制御では、例えばオーバーシュートを検知した時より1分間は、稼働優先順位が第2位以下のボイラでは中燃焼以上に燃焼しないとすることで燃焼量の増加を制限する。燃焼量の制限を行う前記の設定時間は、プレパージに要する時間の2倍から3倍の値に設定することが好ましい。ボイラでは燃焼を開始する前に25秒程度のプレパージを行う必要があり、燃焼指令の出力から実際に燃焼が始まるまでにはタイムラグが発生する。このタイムラグがあるために多缶設置ボイラでは燃焼の発停が短時間で繰り返されるハンチングを発生することがある。燃焼量制限の設定時間は、短すぎるとハンチングの発生を抑制する効果が弱まり、長くしすぎると蒸気の供給が足りなくなるおそれが高まるため、プレパージ時間の2倍から3倍が適当である。
オーバーシュート検知制御中は図2に記載している台数制御パターンで台数制御を行い、オーバーシュート発生から1分を経過した以降は図4に記載の台数制御パターンで台数制御を行う。
図2及び図4でボイラの燃焼状態は、高燃焼の場合を「高」、中燃焼の場合を「中」、低燃焼の場合を「低」、燃焼停止の場合を「停」で示している。台数制御対象ボイラの台数は4台であって、4つ並べた長方形で各ボイラを表現している。各ボイラには稼働優先順位を設定しており、稼働優先順位は左端が第1位、その右側が第2位、さらに右側が第3位であり、右端のボイラを第4位としている。台数制御での燃焼パターンは蒸気圧力値に対応させて設定しており、図では上段ほど蒸気圧力値が高いものとなる。最上段の圧力区分を区分1、最下段の圧力区分を区分13とし、区分1から区分13まで設定している。
まず、オーバーシュート検知制御ではない通常の台数制御を図4に記載の台数制御パターンに基づいて、燃焼状態の説明をする。各ボイラに対してどの燃焼指令を出力するかの決定は、その時点における蒸気圧力値から定まる。ここでの台数制御のパターンの設定は、全缶停止状態からの燃焼開始時は、稼働優先順位が第1位のボイラに対して中燃焼の燃焼指令を出力するまでは、他のボイラに対する燃焼指令は行わず、中燃焼のボイラを確保した後に燃焼台数の増加を行うようにしている。
具体的な台数制御パターンは次のとおりとなる。蒸気圧力値が台数制御範囲の上限よりも高い場合は区分1となり、この場合は4台のボイラ全てが燃焼停止となり、燃焼を行っているボイラがないために蒸気発生量は0t/hとなる。区分1から蒸気圧力値が1段階下がって区分2の圧力になると、稼働優先順位第1位のボイラを低燃焼、第2から第4位のボイラは燃焼停止とする。燃焼を停止していたボイラでは燃焼を開始する際にプレパージなど燃焼準備の工程が必要であり、蒸気はすぐには発生しないが、蒸気の発生が始まると低燃焼1台と燃焼停止3台になるために、ボイラ全体での蒸気発生量は0.5t/hとなる。各燃焼パターンにおける蒸気発生量は、図中の燃焼パターン表示右側に記載している。区分2の場合、蒸気圧力値が増加する方向への変化と、蒸気圧力値が減少する方向への変化の2通りがあるため、区分2から出ている矢印は区分1と区分3の2方向になっている。燃焼パターンの変更は、この矢印の向きに行われる。
区分3での燃焼パターンは、稼働優先順位第1位のボイラを中燃焼として第2位から第4位は燃焼停止とするパターンと、稼働優先順位第1位と第2位のボイラで低燃焼とし第3位と第4位は燃焼停止とする2通りの燃焼パターンを設定している。区分2から蒸気圧力値の低下で区分3に移ってきた場合には、第1位ボイラを中燃焼とする燃焼パターンとする。第1位と第2位を低燃焼とする燃焼パターンとするのは、区分4から蒸気圧力値の上昇で区分3に移ってきた場合であり、どちらの燃焼パターンとするかは一つ前の燃焼パターンによって定まる。
同様に区分4での燃焼パターンも、稼働優先順位第1位のボイラを中燃焼、第2位のボイラを低燃焼、第3位と第4位は燃焼停止としたパターンと、稼働優先順位第1位から第3位のボイラで低燃焼とし第4位は燃焼停止とする2通りの燃焼パターンを設定している。
そして区分5でも、稼働優先順位第1位のボイラを中燃焼、第2位と第3位のボイラを低燃焼とし、第4位は燃焼停止としたパターンと、稼働優先順位第1位から第4位のボイラで低燃焼とした2通りの燃焼パターンを設定している。
同一区分で2つの燃焼パターンを設定しているのは区分3から区分5の間であり、区分6からは以降は再び一つの燃焼パターンとなる。区分6では、稼働優先順位第1位のボイラを中燃焼、第2位から第4位のボイラを低燃焼としている。この場合の蒸気発生量は3.0t/hとなる。区分6から低圧側の区分では、ボイラの燃焼台数は最大になっているために燃焼を行っているボイラで燃焼量を増加していく。蒸気圧力の値が区分6から区分7に移ると、それまで低燃焼であった稼働優先順位第2位のボイラで燃焼量を低燃焼から中燃焼に変更し、燃焼パターンは稼働優先順位第1位と第2位で中燃焼、第3位と第4位で低燃焼となる。
同様に区分8になると稼働優先順位第3位のボイラで燃焼量を低燃焼から中燃焼に変更し、燃焼パターンは稼働優先順位第1位から第3位で中燃焼、第4位で低燃焼となり、
区分9になると稼働優先順位第4位のボイラで燃焼量を低燃焼から中燃焼に変更し、燃焼パターンは4台の全てが中燃焼となる。
さらに蒸気圧力値が低下して蒸気圧力値が区分9から区分10に移ると、稼働優先順位第1位のボイラを高燃焼、第2位から第4位のボイラを中燃焼としている。区分10以降は中燃焼のボイラを高燃焼に変更することで燃焼量を増加していく。区分11では稼働優先順位第2位のボイラを高燃焼とすることで、稼働優先順位第1位と第2位で高燃焼、第3位と第4位で中燃焼とする。同様に、区分12では稼働優先順位第3位のボイラを高燃焼とすることで、稼働優先順位第1位から第3位で高燃焼、第4位で中燃焼とし、区分13では稼働優先順位第4位のボイラを高燃焼とすることで、台数制御対象ボイラの全てを高燃焼とする。
区分13から蒸気圧力値が上昇していく場合、蒸気圧力値の上昇によって区分12になると、稼働優先順位第4位のボイラで燃焼量を高燃焼から中燃焼に変更することで高燃焼3台と中燃焼1台とし、さらに蒸気圧力値が上昇して区分11になると稼働優先順位第3位のボイラで燃焼量を高燃焼から中燃焼に変更して高燃焼2台と中燃焼2台とするように、蒸気圧力が上昇するとボイラでの燃焼量を減少していく。区分6までは蒸気圧力低下時に辿ってきたのとは逆に辿っていく。
区分5の範囲に蒸気圧力値が入った場合には、図の右側欄に記載している燃焼台数を多くする燃焼パターンを採る。区分6では、稼働優先順位第1位のボイラで中燃焼、第2位から第4位は低燃焼となっていたものが、区分5になると稼働優先順位第1位のボイラで低燃焼への変更が行われ、台数制御対象ボイラの全てが低燃焼となっている。燃焼量増加時には使用したが、燃焼量減少時には使用しないとした区分5のもう一方の燃焼パターンでは、稼働優先順位第4位のボイラは燃焼を停止して燃焼台数は3台となっている。そのため、もしも燃焼台数が4台の区分6から区分5に移る際に図左側の燃焼台数3台の燃焼パターンに移った場合にはここで燃焼台数の減少が行われる。その後に蒸気圧力値が低下して区分6の燃焼パターンに戻ることになると、直前で燃焼を停止したボイラで燃焼を再開させなければならない。しかし燃焼を再開する場合には燃焼準備の工程が必要であるために一定の時間が必要となる。これに対して区分5では図右側の4台のボイラを低燃焼にするとしておいた場合、その後に蒸気圧力値が低下して区分6の燃焼パターンに戻ることになると、稼働優先順位第1位のボイラを低燃焼から中燃焼へ変更することで蒸気発生量を増加することができ、この場合は短時間で蒸気発生量を増加することができるため、負荷に対する追従性を高くすることができる。
区分5からさらに蒸気圧力値が上昇して区分4になると、ここでは燃焼台数を減少しなければボイラの燃焼量を減少できないため、稼働優先順位第4位のボイラに燃焼停止の指令を出力し、燃焼を停止させる。この場合も燃焼量の増加が必要になった場合は、そのまま低燃焼4台の燃焼パターンに戻るのではなく、図左側の中燃焼1台と低燃焼2台の燃焼パターンに移る。ここでは、稼働優先順位第1位のボイラで燃焼量を低燃焼から中燃焼に変更することによって燃焼量の増加を短時間で行うことができる。
区分4から蒸気圧力値が上昇して区分3になった場合も同様であり、ここでは稼働優先順位第3位のボイラに燃焼停止の指令を出力し、燃焼を停止させる。この場合も燃焼量の増加が必要になった場合は、稼働優先順位第1位のボイラで燃焼量を低燃焼から中燃焼に変更することによって燃焼量の増加を短時間で行うことができる。区分3から区分2になると、区分2では燃焼パターンは一つだけとなっている。区分2となれば稼働優先順位第2位のボイラで燃焼を停止して稼働優先順位第1位のボイラによる低燃焼1台のみとする。
区分1になれば、稼働優先順位第1位のボイラも燃焼を停止し、全てのボイラが燃焼停止の状態となる。
続いてオーバーシュート検知制御を行う場合の台数制御パターンを図2と図3に基づいて説明をする。オーバーシュート検知制御は、台数制御の圧力上限である区分1の圧力まで蒸気圧力値が上昇した時点より設定時間が経過するまでは図2に記載している台数制御パターンによって台数制御を行う。この設定時間は任意の値を設定することができ、例えば1分間と設定しておけば蒸気圧力値が圧力上限に達したときより1分間はオーバーシュート検知制御での台数制御を行う。オーバーシュート検知制御を行うのは設定時間の間だけであり、設定時間が経過すると図4に記載している通常の台数制御に戻ることになる。そのため、オーバーシュート検知制御を開始しても、蒸気圧力値の低下速度が緩やかであって、設定時間内に区分6よりも蒸気圧力値の高い区分に入らなかったという場合は、設定時間が経過した時点でそのまま通常の台数制御に戻るため、その場合には通常の台数制御と同じになる。
オーバーシュート検知制御の台数制御は、区分1でボイラを全缶停止している状態より始まる。この状態から蒸気圧力値が低下すると、台数制御装置3はボイラの燃焼量を増加する指令の出力を行う。燃焼量の増加は区分6までは図4に記載している通常の台数制御パターンと同じである。図3では、時刻Aで蒸気圧力値が区分1の圧力に入り、燃焼を行っているボイラは0となった状態から開始している。時刻Aからオーバーシュート検知制御を開始し、オーバーシュート検知制御での経過時間を計測しておく。時刻Bで蒸気圧力値が区分2になると、台数制御装置3は稼働優先順位が第1位のボイラに対して低燃焼の燃焼指令を出力する。燃焼指令を受けたボイラでは燃焼準備の工程を開始するが、この時点ではまだ燃焼は行えず、蒸気の供給はないために蒸気圧力値の低下は続く。
蒸気圧力値の低下速度が大きく、燃焼準備の工程中に蒸気圧力値が大きく低下していった場合には、蒸気供給を開始する前に台数制御装置3が出力する燃焼指令は増えていく。設定時間内に蒸気圧力値が区分7の圧力以下になった場合には、オーバーシュート検知制御特有の台数制御が行われる。
時刻Cの時点では蒸気圧力値は区分6から区分7に変化しているのであるが、オーバーシュート検知制御での台数制御では、区分7も区分6と同じ燃焼パターンとなっている。そのため台数制御装置3の出力する燃焼指令は、稼働優先順位第1位のボイラは中燃焼とし、第2位から第4位のボイラは低燃焼となる。図4での通常の台数制御パターンでは、区分6から区分7に移ると、稼働優先順位第2位のボイラで燃焼量を低燃焼から中燃焼に変更することで、稼働優先順位第1位と第2位のボイラで中燃焼とし、第3位と第4位は低燃焼としていた。しかし、オーバーシュート検知制御の図2では、区分7から区分9での燃焼パターンは区分6の燃焼パターンと同じとしており、稼働優先順位第1位のボイラで中燃焼とし、第2位から第4位は低燃焼としたままで変更していない。
そのため、図3では時刻Cで蒸気圧力値が区分6から区分7に移っても、設定しているボイラの燃焼パターンは同じであるため燃焼指令の増加は行われていない。さらに、蒸気圧力値が低下し、蒸気圧力値が区分8や区分9になっても燃焼パターンは区分6と同じであるためにボイラの燃焼量は変更しない。
そして図4の通常の台数制御パターンでは、区分9から区分10に移行する際に稼働優先順位第1位のボイラを中燃焼から高燃焼に変更している。図2のオーバーシュート検知制御での台数制御パターンでも、区分10の燃焼パターンでは稼働優先順位第1位のボイラを高燃焼としている。そのため、オーバーシュート検知制御の図3でも、時刻Dで区分9から区分10に移行する際には、稼働優先順位第1位のボイラを中燃焼から高燃焼に変更しており、ここからの燃焼指令は、稼働優先順位第1位のボイラは高燃焼、第2位から第4位のボイラは低燃焼とする。
その後も設定時間内に蒸気圧力の低下が発生することで蒸気圧力値が低圧側の区分に移動していっても、オーバーシュート検出制御での台数制御パターンでは区分10以降の燃焼量は区分10と同じであって、その間の台数制御装置3からの燃焼指令は一定となる。その後、時刻Eの以降にボイラの燃焼が始まっている。最初に燃焼を開始するのは稼働優先順位第1位のボイラである。第1位ボイラはこの時点では高燃焼の燃焼指令が出力されているため、燃焼開始後は短時間で高燃焼まで燃焼量を増加する。さらに時間が経過し、稼働優先順位が第2位のボイラから第4位のボイラでも順次燃焼を開始していく。ただし、第2位から第4位のボイラでは、低燃焼までしか燃焼しない。そのため、この時の蒸気発生量は最大時で4.5t/hとなる。通常の台数制御を行っていた図5での最大蒸気発生量は11.0t/hであったため、これに比べると蒸気発生量は大幅に少なくなっている。その後は、蒸気の供給を行っているために蒸気圧力値は上昇している。蒸気圧力値の上昇速度は蒸気発生量に左右され、蒸気発生量が多いと蒸気圧力値の上昇は急角度となる。図5では蒸気発生量が多いため、蒸気圧力値は急上昇しており、それに伴ってボイラの燃焼停止を連続して行っている。
これに対し、オーバーシュート検出制御での台数制御では、燃焼量の急激な増加が発生しないようにしているため、蒸気圧力値の上昇は緩やかになっている。そのためにボイラの燃焼停止を連続的に行うことはなく、蒸気使用量と蒸気供給量の差が少なくなると、蒸気圧力値はほぼ一定となり、燃焼量の変更頻度も少なくなっている。
時刻Fでオーバーシュート検出制御の設定時間は終了し、オーバーシュート検出制御での台数制御は終了している。区分7から区分13にある状態で通常の台数制御に戻った場合には、同じ区分であっても燃焼パターンが異なるために燃焼量を変更する制御が行われる。図3の場合は、時刻Fの時点では区分5であってオーバーシュート検出制御での台数制御と通常の台数制御では同一の燃焼パターンとなっているため、燃焼量の変更は行われていない。
また、オーバーシュート検出制御では、設定時間の間は蒸気供給量が制限されることになるため、蒸気量が足りなくなる可能性もある。そのためにオーバーシュート検知制御で燃焼量を制限する場合であっても、1台は燃焼量を中燃焼以上に増加することができるようにしておくことと、それ以外のボイラでも低燃焼までは行うようにしておくことで、蒸気必要量が急増した場合にも対応することができるようにしている。燃焼停止状態から蒸気供給を開始する場合には燃焼準備のための時間が必要であるが、低燃焼又は中燃焼の状態から燃焼量を増加する場合は短時間で行うことができ、すぐに蒸気供給量を増加することができる。
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。