第1の発明は、圧縮機、水冷媒熱交換器、減圧手段、蒸発器を冷媒配管で環状に接続したヒートポンプサイクルと、前記ヒートポンプサイクルにて加熱した湯を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンクに貯湯された湯水の温度を検知する貯湯温度検知手段と、前記ヒートポンプサイクルに前記貯湯タンクの湯水を送る沸き上げポンプと、複数の運転モードを実行する制御手段と、を備え、前記複数の運転モードは、前記ヒートポンプサイクルによって加熱生成した湯を前記貯湯タンクに貯湯する貯湯運転モードと、前記貯湯温度検知手段の検知値が所定値以下の場合に、前記ヒートポンプサイクルによって前記貯湯運転モードと同一、または、前記貯湯運転モードよりも低い温度の湯を加熱生成し、前記ヒートポンプサイクルによって加熱生成された湯を浴槽への注湯に使用する湯はり運転モードと、前記貯湯温度検知手段の検知値が所定値より高い場合に、前記ヒートポンプサイクルの前記圧縮機は運転せず、前記貯湯タンクからのお湯のみを浴槽への注湯に使用する通常湯はり運転モードと、を含み、前記制御手段は、前記湯はり運転モードの開始から所定時間が経過したときに、前記沸き上げポンプの回転数を増大させることを特徴とするヒートポンプ給湯機である。
これによって、湯はり運転モードにおいて、沸き上げポンプの回転数が相対的に低い状態でヒートポンプサイクルにより湯水を加熱するので、所定温度の湯水をより早く生成することができる。すなわち、目標とする沸き上げ温度に到達するまでの時間が短縮されるため、加熱効率が良い運転条件で生成される湯水を、より多く湯はりに使用することができる。以上のように、湯はり運転モードにおいて、ヒートポンプサイクルによって加熱生成される湯水の温度を適切に調整し、湯はりをするために貯湯タンク内の湯水とヒートポンプサイクルで加熱された湯水とを併用して成績係数に優れたヒートポンプ給湯装置を実現できる。
第2の発明は、特に第1の発明において、前記ヒートポンプサイクルから流出した湯水を、前記貯湯タンクの下方側へ戻すか、または、上方側へ戻すかを切り替える流路切替弁を備え、前記制御手段は、前記湯はり運転モードにおいて、前記ヒートポンプサイクルから流出した湯水が前記貯湯タンクの上方側へと流れるように前記流路切替弁を制御することを特徴とするものである。
これにより、ヒートポンプサイクルで加熱生成された湯水が貯湯タンクの下部に流入することを抑制する。その結果、貯湯タンクの下部の湯水の温度が上昇することを防止して、ヒートポンプサイクル(水冷媒熱交換器)に流入する湯水の温度を低く維持することができる。その結果、ヒートポンプサイクルの加熱効率を向上させることができる。
第3の発明は、特に、第2の発明において、前記制御手段は、前記湯はり運転モードにおいて、前記浴槽への注湯を行う注湯弁を閉状態として、前記浴槽の水位を検出する水位検知を実行し、前記制御手段は、前記水位検知の終了以後に、前記沸き上げポンプの回転数を増大させることを特徴とするものである。
水位判定の実行中は、注湯弁が閉状態となるので、ヒートポンプサイクルによって加熱生成された湯水が貯湯タンク内に流入することになる。本発明によれば、水位判定の実行中における沸き上げポンプの回転数が相対的に低くなる。これにより、水冷媒熱交換器を流れる湯水の流量が減少して単位流量あたりの湯水の高温冷媒からの受熱量が増大するから、沸き上げ温度を相対的に高くすることができる。その結果、貯湯タンク内の温度成層の崩壊を抑制することができ、給湯装置としての成績係数を向上させることができる。
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるヒートポンプ給湯機の構成を示す図である。前記ヒートポンプ給湯機は、ヒートポンプユニット2aと貯湯ユニット2bとから構成されている。
ヒートポンプユニット2aには、圧縮機4、水冷媒熱交換器5、膨張弁等の減圧手段6、空気熱交換器である蒸発器7を冷媒配管で環状に接続したヒートポンプサイクル1が設けられており、冷媒配管内部には冷媒が封入されている。8は、蒸発器7に空気を供給するファンである。
貯湯ユニット2bには、貯湯タンク3の底部、沸き上げ往き配管32、水冷媒熱交換器5、沸き上げ戻り配管33、四方切替弁(流路切替弁)18a、貯湯タンク3を環状に接続して沸き上げ回路が設けられている。
沸き上げ往き配管32の途中には、貯湯タンク3の底部の水を水冷媒熱交換器5に搬送する沸き上げポンプ21が接続されている。
四方切替弁18aの入口側には沸き上げ戻り配管33が接続されている。四方切替弁18aの出口側は沸き上げバイパス管34により貯湯タンク3の底部と接続されており、四方切替弁18aの他の出口側は沸き上げ管35、第1出湯管9を介して貯湯タンク3の上部に接続されており、四方切替弁18aの他のもう1つの出口側は湯はり戻し管36を介して貯湯タンク3の上部に接続されている。
すなわち、沸き上げポンプ21により搬送された沸き上げ戻り配管33内の温水は、四方切替弁18aにより、貯湯タンク3の底部に戻る場合と、貯湯タンク3の上部(第1出湯管9または、湯はり戻し管36)に戻る場合とを切り替えることができるようになっている。
また、水冷媒熱交換器5の出口の水温を検知する出湯温度センサである出湯温度検知手段42が備えられている。
貯湯タンク3の壁面には貯湯温度検知手段としての複数の残湯サーミスタ(温度センサ)40a〜40eが設置されており、残湯サーミスタ40a〜40eの温度により、貯湯タンク3内の蓄熱熱量を把握することができる。
水道からの水は、減圧弁20が途中に接続された給水管11を経由して、貯湯タンク3や後述する第3混合弁14、第1混合弁15へと供給される。給水管11は、給水分岐部12で第2給水分岐管12a、第3給水分岐管12b、第1給水分岐管12cに分岐しており、第2給水分岐管12aは、貯湯タンク3の底部に、第3給水分岐管12bは第3混合弁14に、第1給水分岐管12cは第1混合弁15にそれぞれ接続されている。
貯湯タンク3の上部には第1出湯管9が、貯湯タンク3の上下方向において第1出湯管9が接続された位置と貯湯タンク3の底部との間には中温出湯管10がそれぞれ接続されている。第1出湯管9の他端は、出湯分岐管16と追いだき配管25とに分岐しており、出湯分岐管16は第2混合弁13に、追いだき配管25は風呂熱交換器24に接続されている。
給湯回路は、貯湯タンク3内の温水と水道から供給される水とを、第2混合弁13、第3混合弁14、第1混合弁15で混合して所定温度の温水にして、カランやシャワーなどの給湯端末(図示していない)や浴槽に給湯する回路である。
第2混合弁13は、第1出湯管9から供給される温水と中温出湯管10から供給される温水とを混合して出湯合流管17から流出させる。出湯合流管17は第1出湯合流管分岐管17aと第2出湯合流管分岐管17bとに分岐しており、第1出湯合流管分岐管17aは第3混合弁14に、第2出湯合流管分岐管17bは第1混合弁15にそれぞれ接続されている。
第3混合弁14は、第1出湯合流管分岐管17aから供給される温水と第3給水分岐管12bから供給される水とを混合して給湯管28から流出させ、カランやシャワーなどの給湯端末(図示していない)から所定温度の温水を給湯させる。
第3混合弁14の出口側に接続された給湯管28には第1給湯温度検知手段としての給湯温度センサ43aが設置されており、給湯端末から給湯する際には、給湯温度センサ43aの検知温度が目標設定温度(使用者がリモコン50より設定する)になるように、制御手段51により第3混合弁14の混合比を制御する。
第1混合弁15は、第2出湯合流管分岐管17bから供給される温水と第1給水分岐管12cから供給される水とを混合して風呂注湯管27から流出させ、注湯弁19、風呂往き配管29、風呂戻り配管30を介して所定温度の温水を浴槽31に注湯させる。
第1混合弁15の出口側に接続された風呂注湯管27には第2給湯温度検知手段としての風呂給湯温度センサ43bが設置されており、浴槽31に給湯する際には、風呂給湯温度センサ43bの検知温度が目標設定温度(使用者がリモコン50より設定する)になるように、制御手段51により第3混合弁14の混合比を制御する。
風呂追いだき回路は、貯湯タンク3の温水と浴槽31の温水とを風呂熱交換器24で熱交換することにより、浴槽31の温水を所定温度に加熱することができる。
風呂追いだき回路は、貯湯タンク3、第1出湯管9、追いだき配管25、風呂熱交換器24、追いだきポンプ22、追いだき戻り管26、貯湯タンク3を環状に接続するとともに、浴槽31、風呂戻り配管30、風呂循環ポンプ23、風呂熱交換器24、風呂往き配管29、浴槽31を環状に接続して構成されているまた、風呂戻り配管30の途中には、浴槽31内の温水温度を検出する浴槽温度検知手段としての風呂温度センサ45、及び浴槽水位検知手段としての水位センサ46が設置されている。
また、本発明のヒートポンプ給湯機は、ヒートポンプサイクル1で加熱(沸き上げる)した温水を貯湯タンク3に蓄える貯湯運転モードと、浴槽31に所定温度の湯を所定量だけ湯はりする風呂自動湯はりを開始する場合に、ヒートポンプサイクル1を起動するとともに、注湯弁19を開き、水冷媒熱交換器5から供給された温水と第1出湯管9から供給された温水とを混合した後に、第2混合弁13、第1混合弁15、風呂注湯管27を経由して浴槽31に注湯する湯はり運転モードとを備えている。湯はり運転モードにおいてヒートポンプサイクル1で加熱生成される温水の温度は、貯湯運転モードにおいてヒートポンプサイクル1で加熱生成される温水の温度よりも低いことが好ましい。これにより、ヒートポンプサイクル1の沸き上げ効率を向上させることができる。
湯はり運転モードは設定操作手段としてのリモコン50を操作する(例えば、風呂自動湯はりボタンを押す)ことで運転を開始させることができる。
貯湯運転モードや湯はり運転モードにおける各機器の運転制御は、制御手段によって行われる。
以上のように構成されたヒートポンプ給湯機について、ヒートポンプ給湯機の運転モードの動作を説明する。
貯湯運転モードは、貯湯タンク3の底部の水をヒートポンプサイクル1で加熱した後に、貯湯タンク3の上部に貯湯するモードである。安価な電力を利用して深夜(23時〜翌朝7時)に運転するのが通常であるが、貯湯タンク3内の湯量が減少して湯切れのリスクが生じた場合には、昼間時間帯(7時〜23時)に運転することもある。
貯湯運転時、ヒートポンプユニット2aのヒートポンプサイクル1内に封入された冷媒は低圧のガス状態で圧縮機4に吸入され、高温高圧状態に圧縮された後に、水冷媒熱交換器5に搬送されて、貯湯タンク3から搬送された水と熱交換して、自身は低温高圧状態となる。
その後、冷媒は膨張弁等の減圧手段6で低温低圧状態に膨張した気液二相冷媒となり、蒸発器7で、ファン8により送風された外気から吸熱して低圧のガス冷媒となり、圧縮機4に吸入されるという動作を繰り返す。
一方、貯湯タンク3の底部の水は、沸き上げポンプ21により沸き上げ往き配管32を介して水冷媒熱交換器5に搬送され、前記ヒートポンプサイクル1の冷媒と熱交換して自身は加熱されて温水となる。その後、加熱された温水は、沸き上げ戻り配管33、四方切替弁18aを介し貯湯タンク3の上部または底部に戻される。
水冷媒熱交換器5出口温水の温度は、ヒートポンプサイクル1起動してすぐに目標出湯温度に到達する訳ではなく、しばらく時間を要する。出湯温度検知手段42で検出した温度(以下、検出温度と呼ぶ)が目標出湯温度に対して低い間(例えば、目標出湯温度と検出温度との温度差が所定値以上の場合)は、沸き上げ戻り配管33の温水は、四方切替弁18aにより、沸き上げバイパス管34を介して貯湯タンク3の底部に戻される。
その後、検出温度が目標出湯温度に近づいた場合(例えば、目標出湯温度と検出温度との温度差が所定値未満になった場合)に、四方切替弁18aを切り替えて沸き上げ戻り配管33の温水を沸き上げ管35、第1出湯管9を介して貯湯タンク3の上部に戻す。以上の動作により、ヒートポンプサイクル1で加熱された高温の温が貯湯タンク3内に貯湯される。
次に、給湯回路における第2混合弁13による中温出湯の動作について説明する。図2は、貯湯タンク3内を全量沸き上げた状態から所定湯量を給湯した後の貯湯タンク3内温度分布の一例を示したものである。図2中の実線が中温出湯を行った場合、破線が中温出湯を行わなかった場合を示している。
給湯端末、または浴槽31に、使用者が設定した目標給湯温度T1(℃)で給湯する場合、貯湯タンク3上部から第1出湯管9、出湯分岐管16を経由して供給される温水と、貯湯タンク3の略中央部から中温出湯管10を経由して供給される温水とを第2混合弁13で混合して、目標給湯温度T1よりも所定温度差δT(K)だけ高い温度の温水として出湯合流管17に流出させる。
給湯端末に目標給湯温度T1(℃)で給湯する場合は、第2混合弁13から出湯合流管17、第1出湯合流管分岐管17aを経由して供給されるT1+δT(℃)の温水と、給水管11から第2給水分岐管12bを経由して供給される水とを第3混合弁14で混合して、給湯温度センサ43aの検知温度が目標給湯温度T1になるように第3混合弁14の混合比を制御手段51により制御する。
また、貯湯タンク3からのお湯のみで浴槽31に風呂湯はりをするいわゆる通常の湯はり運転モードの場合で、目標給湯温度T1(℃)で給湯する場合は、第2混合弁13から出湯合流管17、第2出湯合流管分岐管17bを経由して供給されるT1+δT(℃)の温水と、給水管11から第1給水分岐管12cを経由して供給される水とを第1混合弁15で混合して、風呂給湯温度センサ43bの検知温度が目標給湯温度T1になるように第1混合弁15の混合比を制御手段51により制御する。
なお、本実施の形態では、第2混合弁13出口側に温度センサを設置せずに、第1出湯管9から供給される温水温度と中温出湯管10から供給される温水温度とを残湯サーミスタ40a〜40eで検出して、出口温度がT1+δT(℃)になるように制御しているが、第2混合弁13出口に第2混合弁出口温度センサを追加して、この第2混合弁出口温度センサで検出した温度が、T1+δT(K)になるように第2混合弁13を制御してもよい。
以上の動作により、貯湯タンク3内上部の高温の湯と貯湯タンク3内底部の低温の水との境界層(以下、中温層と呼び、中温層に存在する温水を中温と呼ぶ)の中温が中温出湯管10から貯湯タンク3外に排出されるため、図2に示すように、貯湯タンク3底部の水温上昇(ΔT)を抑制することができる。ヒートポンプサイクル1の特性として、沸き上げ運転時の入水温度、即ち、水冷媒熱交換器5の入口水温が高くなるほど成績係数(COP)が低下することが知られている。従って、中温出湯により貯湯タンク3底部の水温上昇を抑制することにより、沸き上げ運転時のヒートポンプサイクル1のCOPを向上させることができ、省エネルギーを図ることができる。入水温度は入水温度検知手段41で検出される。
次に、ヒートポンプサイクル1の圧縮機4を運転し、貯湯タンク3からのお湯とヒートポンプで沸き上げたお湯の両方を使って風呂湯はりをする湯はり運転モードの場合の動作について説明する。目標給湯温度T1(℃)で給湯する場合は、貯湯タンク3上部から第1出湯管9、出湯分岐管16、第2混合弁13、出湯合流管17、第2出湯合流管分岐管17bを経由して供給される温水と、給水管11から第1給水分岐管12cを経由して供給される水とを第1混合弁15で混合して、風呂給湯温度センサ43bの検知温度が目標給湯温度T1になるように第1混合弁15の混合比を制御手段51により制御する。この時、第2混合弁13は、中温出湯管10からの湯水の供給を停止し、出湯分岐管16からのみ湯水を供給できるようにしておく。
次に、浴槽31に湯はりされた湯を再加熱する追い焚きの動作について説明する。制御手段51から追いだきの指示があれば、風呂循環ポンプ23と追い焚きポンプ22を動作させる。風呂循環ポンプ23が動作すると、浴槽31の湯水が風呂戻り配管30から風呂熱交換器24に搬送されて加熱された後、風呂往き配管29を経由して再び浴槽31に戻る。追いだきポンプ22が動作すると、貯湯タンク3上部の高温の湯が、第1出湯管9から追いだき配管25を経由して風呂熱交換器24に搬送され、浴槽31の湯水と交換を行って中温水となり、追いだき戻り管26から貯湯タンク3内に搬送される。これらの動作は、浴槽31の温度が目標温度に達するまで継続する。従って、貯湯タンク3の上部の温度が高ければ熱交換に要する時間が短く、低ければ長くかかることになり、貯湯タンク3に流入する中温水の量も、貯湯タンク3の上部の温度が高ければ少なく低ければ多くなる。
次に、湯はり運転モードについて説明する。図3は、湯はり開始時における制御フローチャートを示している。図3において、使用者による風呂湯はり指令がリモコン50を介して入力される(step1)と、残湯量を把握するために貯湯タンク3の壁面に設置している残湯サーミスタ40a〜40eの温度が検出される(step2)。次に、残湯量が多いか、少ないかの判断するために、残湯サーミスタ40dの温度が予め決定しておいた温度より高いか、低いかが比較される(step3)。
例えば、step3で、残湯サーミスタ40dの温度(T40d)が60℃以下の場合、残湯量が少ないと判断され、ヒートポンプサイクル1の圧縮機4を運転(step4)し、貯湯タンク3からのお湯とヒートポンプで沸き上げたお湯の両方を使って風呂湯はりをするいわゆる湯はり運転モードで風呂湯はりを開始する(step6)。
一方、step3で、残湯サーミスタ40dの温度(T40d)が60℃より高い場合、残湯量が多いと判断され、ヒートポンプサイクル1の圧縮機4は運転せず(step5)、貯湯タンク3からのお湯のみで風呂湯はりをするいわゆる通常湯はり運転モードを開始する(step6)。
図4は、湯はり運転モードにおける制御シーケンスを示している。図4において、湯はり運転モードが開始されると、ヒートポンプユニット2が起動して圧縮機4や沸き上げポンプ21が起動する。また、四方切替弁18aは、貯湯タンク3の上方側に湯水が流れるように切替えられる。本実施の形態においては、四方切替弁18aを、沸き上げ戻り配管33と湯はり戻し管36とが連通するように切り替える。また、注湯弁19が開かれる。
この動作により、貯湯タンク3の底部の水は、沸き上げポンプ21で水冷媒熱交換器5に搬送される。水冷媒熱交換器5にて、水は、高温の冷媒と熱交換して加熱される。水冷媒熱交換器5から流出した水は、沸き上げ戻り配管33、四方切替弁18a、湯はり戻し管36、第1出湯管9、第2混合弁13、第1混合弁15、風呂注湯管27、注湯弁19、風呂往き配管29および/または風呂戻り配管30を経由して浴槽31に注湯される。
制御手段51は、ヒートポンプユニット2の起動からの所定時間において、沸き上げポンプ21の回転数を、例えば最大出力の20%といった数値にして運転する。これにより、水冷媒熱交換器5を流れる湯水の流量が相対的に少なくなる。よって、単位流量あたりの水の高温冷媒からの受熱量が増大する。その結果、水冷媒熱交換器5の出口の温度(沸き上げ温度)の上昇が促進される。
制御手段51は、初期湯はりモードとして、湯はり運転モードの開始から所定期間において、浴槽31に所定量の湯水(例えば、10L)の注湯を行う。これは、貯湯タンク3から浴槽31に至る配管内を湯水で満たし、水位センサ(水位検知手段)46が正しく動作するようにすることを目的として行う。水位センサ46としては、例えば、圧力センサが用いられるので、水位センサ46の周囲を湯水で満たすことで、水位検知を行うことができる。
制御手段51は、所定量の湯水を浴槽31に注湯した後(初期湯はりモードの完了後)、一旦、注湯弁19を閉状態として、水位検知を行う。水位検知は、圧力センサとして機能する水位センサ46から圧力値を検出し、この圧力値から、現在の浴槽31内の湯量を推定する。制御手段51は、推定された現在の湯量と、使用者がリモコン50等で設定する所定湯はり量との差(注湯量)を算出する。制御手段51は、以上の動作を水位検知モードとして実行する。
制御手段51は、注湯量の算出が終了した後(水位検知モードの完了後)、注湯弁19を開き、浴槽31への注湯を再開する。また、制御手段51は、沸き上げポンプ21の回転数を、例えば最大出力の80%へと増大させる。これにより、ヒートポンプサイクルで加熱された湯水を、より多くの湯はりに使用できるようにする。制御手段51は、以上の動作を本湯はりモードとして実行する。
なお、浴槽31の容量によっては、湯はり運転モード終了前に、再度、水位検知を行う場合があるが、その場合も、沸き上げポンプ21の回転数を相対的に小さくするようにしてもよい。沸き上げポンプ21の回転数を小さくすることにより、沸き上げ温度を上昇させることができる。注湯弁19を閉状態として行う水位検知では、浴槽31への注湯が停止され、ヒートポンプサイクルで加熱された湯水が、上部から貯湯タンク3に流入する。ここで、沸き上げポンプ21の回転数が相対的に小さく、沸き上げ温度が高くなるため、貯湯タンク3内の温度成層の崩壊を抑制できる。また、貯湯タンク3の蓄熱密度が高くなり、蓄えられる熱量を増加させることができる。
なお、例えば、湯はりにかかる所要時間を短縮するために、水位検知を行わない場合でも、ヒートポンプサイクル1の起動からの所定時間において、沸き上げポンプ21の回転数を小さくすることで、沸き上げ温度の上昇時間を短縮させる効果がある。
図5は、ヒートポンプサイクルの成績係数(COP)と出湯温度との関係を示したものである。ここで、貯湯運転モードにおけるヒートポンプサイクルの成績係数(COP)をCOPAで、湯はり運転モードにおけるヒートポンプサイクルの成績係数(COP)をCOPBで表すこととする。
貯湯運転モードにおける出湯温度(出湯温度検知手段42の検知温度)は、通常65℃〜90℃が一般的であるが、湯はり運転モードにおける出湯温度を貯湯運転モードにおける出湯温度よりも低く(例えば、35℃)なるように運転させることにより、COPBをCOPAよりも向上させることができ、省エネルギーを図ることができる。
湯はり運転モードにおける出湯温度を貯湯運転モードにおける出湯温度よりも低くするための具体的手段としては、沸き上げポンプ21の回転数を貯湯運転モード時よりも大きくすることで、流量を増大させることにより、水冷媒熱交換器5の出口温度を貯湯運転モード時の出湯温度よりも低下させることができる。
なお、第2混合弁13の出口側に温度センサを設けない場合で、ヒートポンプサイクル1の起動時に水冷媒熱交換器5の出口の湯水の温度が上昇している場合には、第2混合弁13を介して、第1混合弁15に流入する湯水の温度の推定値と、実際の温度との誤差が大きくなる可能性がある。したがって、湯はり運転モードの実行中には、制御手段51は、第1出湯管9と第1混合弁15とが連通するように、第2混合弁13の流路を設定しておいてもよい。
以上のように、湯はり運転モードの起動直後に沸き上げポンプ21の回転数を相対的に低くして、ヒートポンプサイクル1を動作させるので、目標とする沸き上げ温度に到達するまでの時間が短縮され、COPが相対的に低い(効率が良い)運転条件で生成される湯水を、より多く湯はりに使用することができる。また、貯湯タンク3の底部の湯水の温度を上昇させることを防止するので、ヒートポンプサイクルのCOPを悪化させることがない。これにより、効率のよい湯はり運転を行うことができ、給湯機のシステム効率の向上を図ることができる。
図6は、湯はり運転モード時におけるヒートポンプサイクル1の加熱能力と圧縮比の関係を示したものである。圧縮機4の回転数が同じ場合、圧縮比が大きくなるほど吐出圧力が高くなるとともに、吐出温度も高くなり加熱能力は高くなるので、若干ではあるが右上がりの特性となる(実線)。
さらに、出湯温度が同じ場合、加熱能力に関係なく吐出圧力はほぼ同じであるが、加熱能力が高くなるほど、圧縮機4の回転数が高くなり吸入圧力は低くなるため、圧縮比は大きくなり、右上がりの特性となる(一点鎖線)。
例えば、圧縮機4の信頼性を確保できる圧縮比をd(破線)とすると、加熱能力が低いほど、圧縮機4の回転数は低くできるが、出湯温度は高くする必要があることがわかる。
図7は、湯はり運転モード時におけるヒートポンプサイクル1の加熱能力と湯はり運転モードにおけるヒートポンプサイクルの成績係数(COP)であるCOPBの関係を示したものである。図6における圧縮比dにおいて、COPBは、貯湯運転モード時における加熱能力が、4.5(kW)の場合、その加熱能力より低いe1(kW)がピークとなる。
しかしながら、湯はり運転モード時は、貯湯タンク3からのお湯とヒートポンプサイクル1からのお湯を併用するため、ヒートポンプサイクル1の加熱能力が低い場合、貯湯タンク3からのお湯を多く必要とすることとなる。
図8は、湯はり運転モード時におけるヒートポンプサイクル1の加熱能力と風呂注湯COPの関係を示したものである。ここで、風呂注湯COPは、(数1)で示される。
風呂注湯COPは、貯湯運転モードにおけるCOPA(例えば、加熱能力が4.5kW)、湯はり時に貯湯タンク3から使用した熱量、湯はり運転モードにおけるCOPB(例えば、加熱能力を3.0kW、3.5kW、4.0kW、4.5kW、5.0kW)と湯はり時にヒートポンプサイクル1で沸き上げた熱量および湯はり熱量で表される。
ここで、湯はり熱量は、浴槽31にはったお湯の熱量であり、貯湯タンク3から使用した熱量とヒートポンプサイクル1で沸き上げた熱量の合計で表される。また、ヒートポンプサイクル1で沸き上げた熱量は、ヒートポンプサイクル1の加熱能力と運転時間の積で算出する。したがって、貯湯タンク3から使用した熱量は、浴槽31にはったお湯の熱量とヒートポンプサイクル1で沸き上げた熱量の差として算出する。
図8をみるとわかるように、風呂注湯COPは、貯湯運転モード時における加熱能力が、4.5(kW)の場合、その加熱能力より大きいe2(kW)がピークとなる。
図9は、湯はり運転モード時における圧縮機4の回転数と風呂注湯COPの関係を示したものである。これは、図8と同様に例えば、圧縮機回転数を30Hz、35Hz、40Hz、45Hz、50Hzに変化させ、それぞれの回転数に対する加熱能力から風呂注湯COPを算出したものである。
図9をみるとわかるように、風呂注湯COPは、貯湯運転モード時における圧縮機4の回転数が、例えば、45(Hz)の場合、その回転数より高いe3(Hz)がピークとなる。
次に、湯はり運転モードの停止時について説明する。図10は、湯はり運転モードの停止時における制御フローチャートを示している。図10において、湯はり運転モードで風呂湯はり中(step1)において、水位センサ46などにおいて、所定の湯量がはられた場合、風呂湯はり完了を検出する(step2)と、残湯量を把握するために貯湯タンク3の壁面に設置している残湯サーミスタ40a〜40eの温度が検出される(step3)。
次に、残湯量が多いか、少ないかの判断するために、残湯サーミスタ40bの温度が予め決定しておいた温度より高いか、低いかが比較される(step4)。例えば、step4で、残湯サーミスタ40bの温度(T40b)が60℃未満の場合、残湯量が少ないと判断され、ヒートポンプの運転を停止せずに、湯はり運転モードから貯湯運転モードに移行される(step5)。貯湯運転モードにおいて、所定の条件を満たした場合、貯湯運転が完了し(step6)、ヒートポンプサイクル1の圧縮機4の運転を停止する(step7)。
一方、step4で、残湯サーミスタ40bの温度(T40b)が60℃以上の場合、残湯量が多いと判断され、ヒートポンプサイクル1の圧縮機4の運転を停止する(step7)。したがって、残湯量が少ない場合、湯はり運転モードから貯湯運転モードへ圧縮機を停止させることなく移行させるので、その後、新たに貯湯運転モードで運転させる場合に比べ、起動ロスを低減できる。また、残湯量が多い場合、湯はり運転モードが完了するとともに圧縮機の運転を停止するため、湯余りによるエネルギーロスを低減できる。
次に、湯はり運転モード時の第2混合弁13の開度の状態による動作、作用の違いについて説明する。図11(a)は、湯はり運転モード時に、第2混合弁13の開度を、中温出湯管10からの湯水の供給を停止し、出湯分岐管16からのみ湯水を供給できるようにした場合の湯はり前後の温度分布の変化を示した図である。71は湯はり前の温度分布を、72は湯はり後の温度分布を示す。貯湯タンク3上部にヒートポンプユニット2から低温で沸き上げられた湯が流入する場合、貯湯タンク3上部の第1出湯管9のみから湯水が出湯されるため、第1出湯管9への流速が早くなり、流入した湯水を出湯する流れが大きくなる。その結果、残留する低温の湯水が少なくなり、貯湯タンク3上部の温度は、湯はり前の温度T0から湯はり後の温度T1となり、最小限の低下温度に留めることができる。
図11(b)は、湯はり運転モード時に、第2混合弁13の開度を調整し、中温出湯管10からも湯水が供給できるようにした場合の湯はり前後の温度分布の変化を示した図である。73は湯はり後の温度分布を示す。貯湯タンク3上部に低温で沸き上げられた湯水が流入する場合、貯湯タンク3上部に接続されている第1出湯管9から出湯する湯水は、中温出湯管10から出湯される湯水の分だけ減少する。すると、第1出湯管9への流速が遅くなり、低温で沸き上げられた湯水は大部分が出湯されず、貯湯タンク3内に残留することになる。湯はり前の温度がT0から湯はり後の温度T2となり、温度低下が激しい。また、運転モードの最中に中温出湯管10から出湯される湯は既に低下してしまった温度でしかないため、中温水を取り除く効果は限定的で、貯湯タンク3上部の温度が低下する悪条件の方が影響が大きい。
加えて、追い焚きの際には貯湯タンク3上部の湯水が使われるが、T2よりも高いT1の温度で浴槽31の再加熱がされるため、追い焚き開始から終了までの時間を短縮することができる。また、貯湯タンク3に風呂熱交換器24から戻ってくる中温水の量も少なくすることができる。
次に、中温出湯回路の有無による夜間沸き上げ運転の動作、作用の違いについて説明する。図12(a)は、中温出湯回路がある場合の貯湯タンク内の温度分布の変化を示した図である。61は湯はり運転モードで湯はりを行う前の温度分布、62は湯はり運転モードで湯はりを行った後の温度分布、63はその後、給湯と沸き上げ運転を行った後の温度分布を示す。
湯はり運転モードで湯はりを行うことにより貯湯タンク3の上部は温度が低下する(61→62)。その後、中温出湯を行いながら給湯、沸き上げ運転を行うことにより、温度分布の角度はα→β(β>α)へと変化する(62→63)。これは、湯はり運転モードで湯はりを行うことにより若干悪くなった温度分布を中温出湯により改善できたことを意味しており、その後に行われる夜間沸き上げ運転の運転効率の低下を回避でき、省エネルギー性が損なわれることはない。
図12(b)は、中温出湯回路がない場合の貯湯タンク内の温度分布の変化を示した図である。61は湯はり運転モードで湯はりを行う前の温度分布、64は湯はり運転モードで湯はりを行った後の温度分布、65はその後、給湯と沸き上げ運転を行った後の温度分布を示す。
湯はり運転モードで湯はりを行うことにより貯湯タンク3の上部は温度が低下する(61→64)。その後、給湯、沸き上げ運転を行っても、温度分布の角度はγ(β>α>γ)は変化しない(64→65)。これは、中温出湯回路がないため、湯はり運転モードで湯はりを行うことにより若干悪くなった温度分布が改善できなかったことを意味しており、その後に行われる夜間沸き上げ運転の運転効率の低下を招き、省エネルギー性が損なわれることとなる。
したがって、中温出湯回路を備えているため、湯はり運転モードで湯はりを行い、若干崩れた貯湯タンク3の温度分布を改善することができ、ヒートポンプユニット2の運転効率の低下を回避でき、省エネルギー性が損なわれることはない。
(実施の形態2)
図13は、本発明の第2の実施の形態におけるヒートポンプ給湯機の構成図である。第2の実施の形態が、第1の実施の形態と異なる点は、湯はり戻し管36を沸き上げ管35と共用することにより削減、それに伴い四方切替弁18aを三方切替弁18bに置き替えたところである。
このように、本発明の第2の実施の形態によれば、湯はり戻し管36を削減することができ、低コストで同じ効果を得ることができる。