JP6397228B2 - 歯科用アバットメント及び製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、歯科インプラント治療に用いられる歯科用アバットメントに関し、特に、歯肉との結合強度を高めることにより、骨吸収やダウングロースを起こり難くした歯科用アバットメント及びこれらの製造方法に関する。
失われた天然歯、及び口腔機能を回復するための治療として、歯科インプラント治療が普及している。歯科インプラント治療は、歯科用インプラントフィクスチャ(以下、単に「フィクスチャ」という)を歯槽骨内に埋め込み、口腔内側に歯科用アバットメント(以下、単に「アバットメント」という)を介して歯科用補綴物としての人工歯を配置するものである。
歯槽骨内に埋め込まれたフィクスチャは骨組織と直接に結合し、その状態を半永久的に維持できるとされている。しかし、歯科用インプラント(以下、単に「インプラント」という)を長期的に維持していくためには、インプラント周囲炎の予防が不可欠である。インプラント周囲炎はインプラント周囲組織が細菌感染することにより発症し、最悪の場合は骨吸収に伴ってインプラントが脱落する事態を招来する。
天然歯と歯肉とは歯肉線維を介して結合している。歯肉線維は天然歯の表面に対して直交する方向に伸びるため、天然歯と歯肉上皮界面の封鎖性が高く、細菌感染が起こりにくいと考えられている。一方、インプラント周囲の歯肉線維は、インプラントの表面に対して平行となるように再生するため、インプラントと歯肉上皮との封鎖性が天然歯に比べて明らかに低く、細菌感染が起こりやすい状況にある。
上記問題を解決するため、歯肉組織との密着性を高め、インプラント周囲炎を予防しうるインプラントに関する種々の発明がなされている。例えば特許文献1には、歯肉に当接する外周面に、その円周方向に沿って幅1〜500μm、高さ1〜500μmの突条部を螺旋状又はリング状に複数突設させたアバットメントが記載されている。このアバットメントは、歯肉線維を突条部間に入り込ませることにより、歯肉組織とアバットメントとの密着性を高めるものである。
特開2010−194118公報
しかし、特許文献1に記載のアバットメントでは、アバットメントの表面に対する歯肉組織との密着性が向上しうるとしても、歯肉組織とアバットメントとの結合強度が十分に確保されるとは言いがたい。歯科用インプラントと歯肉組織との機械的結合を強固にするためには、さらなる改良が必要である。
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、アバットメントと歯肉組織とを強固に結合し、骨吸収やダウングロースをより起こり難くした新規な歯科用アバットメントを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、歯科用補綴物の土台となる歯科用アバットメントであって、外周面に凹所を有するアバットメント本体と、複数の穴を有し、前記凹所に配置された多穴部材と、を備え、前記多穴部材と前記凹所の内奥面との間に間隙が形成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記凹所は、前記アバットメント本体の外周面に形成された第一凹所と、前記第一凹所の内奥面中間部に形成された第二凹所とを備え、前記多穴部材は、前記第一凹所内に配置されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記多穴部材は、前記アバットメント本体の外周面と同一曲面上に存在するように配置されるか、又は、前記外周面よりも外方に突出しないように前記凹所内に配置されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記多穴部材は、圧延により表面が平滑化されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記アバットメント本体及び前記多穴部材には生体親和性を向上させる物質がコーティングされていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、前記アバットメント本体及び前記多穴部材には抗菌性物質又は抗バイオフィルム物質がコーティングされていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6の何れか一項に記載の歯科用アバットメントの製造方法であって、前記アバットメント本体を準備する本体準備工程と、前記多穴部材を準備する多穴部材準備工程と、前記アバットメント本体に対して前記多穴部材を一体化させる一体化工程と、を有し、前記多穴部材準備工程は、前記多穴部材の元となる多穴材料を圧延して表面を平滑化させる圧延工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、複数の穴を有する多穴部材を、凹所の内奥面との間に間隙を有した状態にて凹所に配置したので、多穴部材の各穴から間隙内に歯肉線維が入り込んで、歯肉組織とアバットメントとの結合強度を高めることができる。

本発明の第一の実施形態に係る歯科用アバットメントを示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は上面図であり、(c)は(b)のA−A断面図である。 アバットメント本体を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は図1(b)のA−A断面に相当する断面図である。 (a)〜(d)は、図1(c)のB−B断面図である。 実際に作製された多穴部材の表面の拡大写真で示した図ある。 (a)〜(f)は、多穴部材を構成する多穴材料の例を示す図である。 本発明の第一の実施形態に係る歯科用アバットメントの変形例を示す側面図である。 本発明の第二の実施形態に係る歯科用アバットメントを示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は上面図であり、(c)は(b)のC−C断面に相当する図である。 (a)、(b)は、本発明の各実施形態に係るアバットメントを含んで構成された歯科用インプラントの例を示す断面図であり、(c)、(d)は、本発明の各実施形態に係るアバットメントに対応する部分を含んで構成された歯科用インプラントの例を示す断面図である。
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第一の実施形態〕
本発明の第一の実施形態に係る歯科用アバットメントについて図1乃至図3に基づいて説明する。図1は、本発明の第一の実施形態に係る歯科用アバットメントを示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は上面図であり、(c)は(b)のA−A断面図である。図2は、アバットメント本体を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は図1(b)のA−A断面に相当する断面図である。図3(a)、(b)図1(c)のB−B断面図である。
本実施形態に係る歯科用アバットメントは、アバットメント本体の外周面に複数の穴を有する多穴部材を配置したものであり、特に以下の点に特徴がある。即ち、人工歯(歯科用補綴物)の土台となる歯科用アバットメント(以下、単に「アバットメント」という)1は、外周面に凹所20を有するアバットメント本体10と、複数の穴31を有し、凹所の内奥面27よりも外側に配置された多穴部材30と、を備え、多穴部材30は凹所の内奥面(第二内奥面27)との間に間隙を有している。
<アバットメント本体>
アバットメント本体10(本体部材:以下、単に「本体10」という)は、生体親和性の高い材料、具体的には純チタン、チタン合金等の金属材料から形成される。
本体10は、概略柱形状である。特に本実施形態において本体10は、概略円柱形状である。なお、本体10は、多角柱状、楕円柱状など、その他の柱形状としてもよい。ここで、本体10の軸方向(図中上下方向)は、咬合圧が加わる方向である。
本体10の軸方向一端部(図中下部)は、歯槽骨内に埋め込まれたフィクスチャ101(図8(a)、(b)参照)と一体化される。特に本実施形態において、本体10の軸方向他端部には、フィクスチャ101が着脱自在に装着されるフィクスチャ装着部11が設けられている。図示するフィクスチャ装着部11は、本体10の軸方向他端部に突出形成されている。
本体10の軸方向一端部(図中上部)には、人工歯105(図5参照)が着脱自在に装着される人工歯装着部13が設けられている。なお、図示する人工歯装着部13の形態は一例であり、人工歯の固定方式(セメント固定やスクリュ固定等)に対応した構成を有する。
本体10は、フィクスチャ装着部11及び人工歯装着部13を軸方向に貫通したスクリュ挿通孔12を有する。スクリュ挿通孔12の内径は軸方向一端部よりも軸方向他端部の方が大きく、中間部には段差部12aが形成されている。スクリュ挿通孔12には、アバットメント1をフィクスチャ101に固定する際に、アバットメントスクリュ103が挿入される(図8(a)、(b)参照)。なお、図示するフィクスチャ装着部11及びスクリュ挿通孔12の形態は一例であり、フィクスチャ101にアバットメント1を一体化するために図示以外の構成を備えてもよい。
<<凹所>>
本体10は、その外周面に形成された凹所20を有する略円柱体である。図示する凹所20は、本体10の周方向に沿って形成されている。
凹所20内には、多穴部材30が配置される。本実施形態においては、本体10の外周面に凹所20を備え、多穴部材30を凹所20内に配置することにより、本体10の最外周面(外周面)15よりも外方(外径方向)に多穴部材30の外周部、その他の部位を突出させないようにすることが可能となる。多穴部材30が本体10の最外周面15よりも外方に突出しない構成であれば、多穴部材30は凹所20内においてどのような形状又は姿勢を取っていてもよいし、本体10のどの部分に固定されてもよいし、本体10に対してどのような方法により一体化されてもよい。
なお、多穴部材30は、その少なくとも一部が本体10の最外周面15(非凹所部)よりも外方に突出しても構わない。或いは、多穴部材30を凹所20の外側に配置、言い換えれば、本体10の外周面(最外周面15)に配置して、その全部を本体10の最外周面15(非凹所部)よりも外方に突出させる構成としてもよい。しかし、多穴部材30は最外周面15よりも外方に突出させない方が望ましい。ここで、上皮組織を健全に保つためには、その直下に結合組織が存在していることが必要である。多穴部材30を本体10の最外周面15よりも内方に配置することで、上皮組織の直下に必要な厚さの結合組織が存在できるようになる。従って、上皮組織を健全に保つことができ、多穴部材30の表面と接触する歯肉の炎症を防止できる。
ここで、多穴部材30は、凹所20の内奥面(図中、第二内奥面27)との間に間隙(所定の空間)を形成するように、即ち内奥面よりも外側に配置される。
<<2つの凹所>>
凹所20は、本体10の外周面に形成された表層側に位置する第一凹所21と、第一凹所21の内奥面中央部(第一内奥面23の軸方向中央部)に形成された第二凹所25とを有する。第一凹所21と第二凹所25は本体10の周方向に沿って形成されている。特に図示する第一凹所21と第二凹所25は本体10の周方向全長に亘って連続的に形成されている。
多穴部材30は、第二凹所25の外側、即ち第二凹所25よりも表層側にある第一凹所21内に配置され、第一凹所21内の適所に着座した状態で本体10に対して固定される。具体的には、例えば多穴部材30の周方向と直交する軸方向両端部が、第一凹所21内の数カ所においてスポット溶接、或いは接着剤等により固定される(図3(a)、(b)、スポット溶接用電極40の位置参照)。
なお、第一凹所と第二凹所からなる凹所は、本体10の外周面に、その周方向に沿って不連続に複数個、形成されたものであってもよい。この場合には多穴部材30も凹所毎に個別に配置されることとなる。
<<段差>>
第二凹所25は、第一凹所21の内奥部中間部(中央部)に対して段差状に形成されている。また、第二凹所25は、第一凹所21に対して本体10の軸方向の中間部に配置されていることから、第一凹所21内には、軸方向一端部側(図中下側)と軸方向他端部側(図中上側)に夫々第一内奥面23、23が形成される。なお、第一内奥面23は、所定の軸方向長及び所定の周方向長を有する曲面である。多穴部材30はその軸方向両端部を、第二凹所25の軸方向両側に段差状に位置する第一凹所21の第一内奥面23、23に固定されている。
第一凹所21の深さd(本体10の径方向に沿った長さ)は、多穴部材30の厚さtと略同一か、多穴部材30の厚さtよりも深く設定される。図3(a)、(c)には、第一凹所21の深さdを多穴部材30の厚さtと略同一にした例を示している。第一凹所21の深さdを多穴部材30の厚さtと略同一に設定することで、多穴部材30の外周部は、本体10の最外周面15との間で連続的な面を形成するか、或いは少なくとも最外周面15と同一曲面上に存在するように配置される。
図3(b)、(d)には、第一凹所21の深さdを多穴部材30の厚さtよりも大きく、約2倍とした例を示している。このように構成することにより、第一内奥面23,23に巻き付けられるように着座する多穴部材30の端部同士をオーバーラップさせた状態にて、多穴部材30を第一凹所21に固定することができ、オーバーラップした端部同士を最外周面15よりも外方に突出させないようにすることができる。
また、第一凹所21の深さdを多穴部材30の厚さtよりも大きく、厚さtよりも少なくとも約2倍以上とした場合には、多穴部材30の周方向寸法を、第一内奥面23の周方向寸法に正確に適合させる必要がなくなり、製造手数、組み付け手数を低減させることができる。その結果、多穴部材30の周方向寸法を第一内奥面23の周方向寸法よりも若干長めに構成して多穴部材30の寸法精度を若干緩和させたとしても、組み付け上の問題が生じることがなくなる。例えば、第一凹所21の深さdを多穴部材30の厚さtと略同一とした場合、多穴部材30を最外周面15よりも外方に突出させないためには、多穴部材30の周方向寸法を第一内奥面23の周方向寸法よりも長くすることができない。仮に、多穴部材30の周方向寸法が第一内奥面23の周方向寸法よりも過小である場合には多穴部材30の端部間が離間して隙間が形成されるが、本構成によればそのような不具合を確実に防止できる。
第二凹所25内の第二内奥面27は、第一内奥面23よりも深い位置、即ち第一内奥面23よりもアバットメント本体10の径方向中心寄りにある。第二内奥面27が第一内奥面23に対して径方向に離間した位置にあるので、第一内奥面23、23に固定された多穴部材30と第二内奥面27との間には間隙(所定の空間)が形成される。
第二凹所25は、多穴部材30を介して歯肉線維が入り込む空間である。
<<溝>>
凹所20の内奥面、具体的には第二凹所25の第二内奥面27には、その周方向に沿って幅1〜500μmの溝29が螺旋状又はリング状に形成されている。溝29は1〜500μm間隔にて形成されている。溝29は、レーザーによって第二内奥面27に微細な凹凸を形成することにより作製される。
溝29は、多穴部材30を介して第二凹所25内に入り込んだ歯肉組織と、第二内奥面27との密着性を高め、本体10と歯肉組織との機械的な結合強度を高めることに寄与する。
<多穴部材>
多穴部材30について説明する。多穴部材30は、アバットメント本体10と同様に、生体親和性の高い材料、具体的には純チタン、チタン合金等の金属材料から構成される。
多穴部材30は、例えば貫通している複数の穴31を有したメッシュ状の部材である。穴31は、歯肉線維を多穴部材30の外部から第二凹所25内に入り込ませるために適した形状、寸法、個数、配置、ピッチとなるように形成する。穴31を介して第二凹所25内に進入した歯肉線維同士が第二凹所25内にて絡み合うことで、歯肉組織とアバットメント1との強固な機械的結合を実現する。
多穴部材30の穴31の開口径は歯肉線維と血管の通過を許容するサイズに設定する。具体的には、多穴部材30の穴31の開口径は100〜500μm程度とすることが望ましい。ここで、穴31の大きさは、穴31の最小部分の長さが100μmよりも大きくなるように設定する。100μmよりも小さくすると、血管が穴31を通過することができず、歯肉線維が穴31内に入り込んだとしても死滅してしまい、アバットメントと歯肉組織との機械的な結合を確保できなくなるためである。
図4は、実際に作製された多穴部材の表面の拡大写真である。図示する穴31の開口径(目開き)は210μmである。
<<多穴部材の種類>>
図5(a)〜(f)は、多穴部材を構成する多穴材料の例を示す図である。多穴部材30の元となる多穴材料には、種々のものを用いることができる。
例えば、図5(a)、(b)に示すように、複数の金属線材(金属細線)を織り上げてメッシュ状としたものを多穴部材として用いることができる。図5(a)は平織りの例であり、(b)は綾織りの例である。この例において穴は矩形状である。もちろん、その他の態様にて織り上げられた金網を使用することもできる。
また、例えば図5(c)、(d)に示すように、単数又は複数の金属線材(金属細線)を編み上げてメッシュ状としたものを多穴部材として用いることができる。図5(c)は金属線材をメリヤス状に絡ませて編んだからみ織りの例であり、図5(d)は金属線材を三本以上ねじりあわせて穴を六角形状にした亀甲織の例である。もちろん、その他の態様にて編み上げられた金網を使用することもできる。
また、例えば図5(e)に示すように、金属平板に対して千鳥状に切れ目を入れて引き伸ばすことにより、複数の菱形又は亀甲形の穴を形成したエキスパンドメタルを多穴部材として用いることができる。
また、例えば図5(f)に示すように、金属平板に複数の穴をプレス加工により形成したパンチングメタルを多穴部材として用いることができる。この場合、穴の形状は自由に設定することができる。
更に多穴部材は、1つ(1枚)の多穴材料から構成されてもよいし、複数の同一種、又は異種の多穴材料を重ね合わせて多層状に構成されてもよい。
金属線材を用いた多穴材料を多穴部材として用いる場合(或いはこれに類似する形態を有する多穴材料を用いる場合)は、歯肉線維が金属線材(或いはこれに類似する細幅の金属部分)に対してループ状にアンカリングすることで、アバットメント1と歯肉組織との機械的な結合強度を高めることができる。また、多穴部材30が、3以上の異なる方向に傾斜した金属線材(或いはこれに類似する細幅の金属部分)を有する場合は、歯肉線維が様々な角度或いは向きにて多穴部材30にループ状にアンカリングすることが可能となり、アバットメント1と歯肉組織との機械的な結合強度をより高めることができる。
この場合、金属線材(或いはこれに類似する細幅の金属部分)の幅(又は線径)は、多穴部材の強度を確保するべく50μm〜200μm程度とすることが望ましい。図4に示す多穴部材の金属線材(純チタン)は線径φ100μmである。
<<穴の形状、及び向き>>
図5に示したように、多穴部材30の穴の形状は、矩形状、多角形状、円形状等、種々の形状とすることができる。また、多穴部材30の穴の配置や角度、或いは穴同士の間隔等も適宜設定することができる。
図1(a)及び図6は、図5(a)に示す平織の多穴材料を多穴部材として使用した例である。図6は、本発明の第一の実施形態に係る歯科用アバットメントの変形例を示す側面図である。
図1(a)のアバットメント1Aは、各金属線材32が夫々アバットメント本体10の周方向と軸方向に沿って伸びるように、多穴部材30Aをアバットメント本体10に対して固定したものである。或いは、図6のアバットメント1Bは、各金属線材32がアバットメント本体10の周方向と軸方向に対してそれぞれ傾斜するように多穴部材30Bをアバットメント本体10に対して固定したものであり、菱形状の穴が千鳥状に配置されている。
<<平滑性>>
一般的にアバットメントの表面については平滑性が要求される。多穴部材30は、少なくともアバットメント1の外側に位置する表面が平滑化されている。本実施形態における多穴部材30は、多穴部材30の元となる多穴材料を2つのローラ間に通す圧延処理を経ることによって、表面の凹凸が押し潰されて平滑化されている。
さらに、平滑化後の多穴部材30の厚さtは第一凹所21の深さdと略同一となっており、多穴部材30の表面は、少なくとも最外周面15が形成する曲面と略同一の曲面上に位置する。特に本実施形態において、多穴部材30がアバットメント本体10の最外周面15の間で形成する面(最外周面、非凹所部)が、段差を有さない連続的な曲面となっている。
多穴部材30の表面を平滑化し、アバットメント本体10の最外周面15と多穴部材30とで一つの曲面を形成するようにしたことで、上皮組織を健全に保つことができ、多穴部材30の表面と接触する歯肉の炎症を防止できる。
なお、多穴部材30となる多穴材料が金属線材からなるメッシュ状の部材である場合は、圧延処理を経ることによって金属線材同士の接点部の密着性を向上させることができる。また、多穴部材30となる多穴材料としてエキスパンドメタルを用いる場合は、表面が平滑ではないので、圧延処理が必要である。また、多穴部材30となる多穴材料としてパンチングメタルを用いる場合、パンチングメタルが所定の穴径、厚さ、及び平滑性を満足していれば、圧延処理を省略することができる。
<<焼結処理>>
多穴材料に対しては、アバットメント本体10に一体化する前に、焼結処理が行われる。即ち、金属が未結合状態にある多穴材料を、金属の融点前後の温度下に一定時間置き、金属組織内で各接点間に原子拡散現象が起こるようにして、接点間をまたいで結晶を形成し、完全に一体化させる。焼結処理を経ることにより、多穴材料の強度、及び耐食性を向上させることができる。また、多穴材料を構成する金属の一体化、目開き防止、及びコンタミネーションの低減を図ることができる。なお、ここでいうコンタミネーションとは、多穴材料の作製時に多穴材料に付着した金属粉や機械油等による異物汚染であり、焼結処理によりコンタミネーションを低減させることができる。更に、アバットメントの使用中に万が一、多穴材料の一部が切断されるようなことがあったとしても、焼結処理により多穴材料同士を一体化しているため、多穴材料の一部が生体組織の内部に入り込むリスクを低減できる。この問題は、特に多穴材料として金属線材を用いたときに効果的に解決される。
なお、多穴材料としてパンチングメタルやエキスパンドメタルを用いる場合であって、特に多穴材料が複数重ねあわされていない場合(単層の場合)には、焼結処理を省略しても構わない。
<<多穴部材と本体との関係>>
アバットメント1は、多穴部材30をアバットメント本体10に巻き付けて固定することにより得られる。アバットメント本体10への一体化前における多穴部材30(多穴材料)は、切断により第一凹所21に適合するサイズに調整されている。図1(a)及び(c)に示すように、多穴部材30の一辺の長さは第一凹所21の軸方向長と略同一となるように調整される。また、多穴部材30の一辺と直交する他辺の長さは、図3に示すように、第一凹所21の第一内奥面23の周方向長(展開長)と同一か、これよりも長くなるように調整される。このようにすることで、第一凹所21の軸方向に無用な隙間が形成されなくなる。また、多穴部材30が凹所20を周方向に切れ目なく包囲する。
多穴部材30のアバットメント本体10への固定には、例えば抵抗溶接のひとつであるスポット溶接を用いることができる。スポット溶接は、周方向の数カ所に施される。
図3(a)に示す多穴部材30の他辺の長さは、第一内奥面23の周方向長と略同一である。このため、多穴部材30の対向する平行な2つの端縁同士が付き合わされた状態となっている。また、多穴部材30の厚さtは、第一凹所21の深さdと略同一であり、多穴部材30の一面がアバットメント本体10の最外周面15と略同一曲面を形成する。符号40はスポット溶接用電極であり、スポット溶接箇所を示している。この例では、多穴部材30の対向する端縁部分を含む数カ所にスポット溶接を施す。
図3(b)に示す多穴部材30の他辺の長さは、第一内奥面23の周方向長よりも長くなるように調整されている。多穴部材30は、多穴部材30の対向する2つの端部をオーバーラップさせた状態にて、第一凹所21に固定される。この場合は、第一凹所21の深さdを、多穴部材30の厚さtの約2倍か、それよりも大きくなるように設定し、多穴部材30がアバットメント本体10の最外周面15よりも外方に突出しないようにする。この例では、オーバーラップによって外周側に位置した多穴部材30の端縁部分を含む数カ所にスポット溶接を施す。この例では、上述したように、多穴部材30の周方向寸法精度を緩和できると共に、多穴部材30の端部間が離間して隙間が形成されるという不具合を防止できる。
図3(c)、(d)は、多穴部材30のアバットメント本体10への固定に抵抗溶接のひとつであるシーム溶接を用いる例である。(c)は、多穴部材30の他辺の長さを第一内奥面23の周方向長と略同一とした例、(d)は多穴部材30の他辺の長さを第一内奥面23の周方向長よりも長くした例を示している。シーム溶接を用いる場合は、多穴部材30をアバットメント本体10の第一凹所21部分に巻き付けた後、ローラ電極41を自転させながらアバットメント本体10周りに回転させて、第一内奥面23と多穴部材30の全周を溶接する。シーム溶接の場合、多穴部材30はアバットメント本体10の全周に連続的に溶接、一体化される。多穴部材30の対向する(又は重なる)周方向端部同士は、シーム溶接時に互いに一体化されると共に、アバットメント本体10とも一体化される。
なお、両者の一体化に接着剤を用いることもできるが、長期に渡って両者を一体化させた状態を維持し、アバットメント1としての耐久性を高めるには、接着剤よりも溶接を用いる方がよい。
<コーティング>
アバットメント1を構成するアバットメント本体10及び多穴部材30には、歯科インプラントによる治療効果を高める上で有効な所定の機能を発揮する物質がコーティングされてもよい。
アバットメント1の表面をコーティングする物質としては、抗バイオフィルム物質であるMPCポリマーやポリエチレングリコール、生体親和性を高める物質であるハイドロキシアパタイト、或いは、細菌による汚染を防止するための抗菌性物質等が挙げられる。なお、ここで用いる抗菌性物質は徐放性製剤としたほうが、長期的に抗菌効果を得られるので好ましい。
コーティングは、コーティングしようとする物質を含む溶液中にアバットメント1を浸した後、溶液からアバットメント1を取り出して乾燥させることにより行う。
なお、ハイドロキシアパタイトは耐熱性が高いので、アバットメント本体10、及びアバットメント本体10に固定される前の多穴部材30に対してハイドロキシアパタイトをコーティングし、その後に、焼結処理やスポット溶接を行っても構わない。
このように、アバットメント1に対して所定の物質をコーティングすることで、生体親和性の向上や抗菌性の向上など、コーティングした物質が有する所定の機能をアバットメント1に付与することができる。
<アバットメントの製造方法>
以下、本発明の実施形態に係るアバットメントの製造方法について説明する。以下、図1に示したアバットメントの例により説明する。なお、以下に説明するアバットメントの製造方法は一例であって、他の方法により製造してもよい。
<<本体準備工程>>
まず、アバットメント本体10を準備する。
アバットメント本体10を機械加工により作製する場合、材料として、チタン材からなる丸棒を用意し、丸棒から第一凹所となる部分と第二凹所となる部分を機械加工によって除去する。また、フィクスチャ装着部11と人工歯装着部13とスクリュ挿通孔12を夫々機械加工によって形成し、最後に所定の軸方向長となるように切断して、アバットメント本体10とする。
なお、アバットメント本体10は、転造により作製されてもよい。また、アバットメント本体10は、鋳物であってもよい。鋳物の場合は、加熱して溶融したチタンを所定の型に流し込んで冷却、固化させることにより、アバットメント本体10を作製する。
<<多穴部材準備工程>>
続いて矩形状の多穴部材30を準備する。
多穴部材30が平織りのメッシュ状部材からなる場合は、例えば断面が円形状のチタン線材を織り上げて金網状に成形した多穴材料を用意する。
用意された多穴材料に対して、所定の温度及び圧力下にて圧延処理を行う。対向する2つのローラ間に多穴材料を挿入して大きな圧力を加えることにより、多穴材料の表面を平滑化する。なお、圧延時の温度と圧力は、多穴部材30に要求される条件等に応じて適宜選択する。また圧延は冷間圧延とすることができるが、必要に応じて熱間圧延としてもよい。
図4に示す作製例では、金属線材として線径φ100μmの純チタンを用いている。メッシュは80meshの平織り金網であり、圧延前の厚みは約230μmであった。圧延処理によって多穴部材の表面は平滑状になり、その厚みは約90μmとなっている。なお、編目のサイズ(目開き)は約210μmである。
圧延処理された多穴材料を、所定の温度及び圧力下にて焼結処理する。なお、焼結時の温度と圧力は、多穴部材30に要求される条件等に応じて適宜選択する。
多穴材料を第一凹所21に適合するサイズに切断する。具体的には、アバットメント本体10の第一凹所21の軸方向長と周方向長に合わせて多穴材料を矩形状に切断し、多穴部材30とする。切断には、例えばワイヤーカット(放電加工)を用いることができる。ワイヤーカットを利用することにより、多穴材料を高精度に切断できる。
<<一体化工程>>
最後に、多穴部材30をアバットメント本体10に一体化する。
多穴部材30をアバットメント本体10の第一凹所21部分に巻き付けた後、第一内奥面23と多穴部材30とを周方向に数カ所(4〜5箇所)程度、スポット溶接用電極40によりスポット溶接して、多穴部材30をアバットメント本体10に対して固定する(図3(a)、(b)参照)。なお、溶接箇所は、アバットメント本体10と多穴部材30との間に要求される結合強度等に応じて適宜増減させる。
また、多穴部材30の対向する(又は重なる)周方向端部同士は、一度のスポット溶接にて互いに一体化されると共に、アバットメント本体10とも一体化される。
〔第二の実施形態〕
本発明の第二の実施形態に係るアバットメントについて図7に基づいて説明する。図7は、本発明の第二の実施形態に係る歯科用アバットメントを示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は上面図であり、(c)は(b)のC−C断面に相当する図である。なお、(c)の図中右側部分においては多穴部材30の記載を省略している。以下、第一の実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施形態に係るアバットメント2においては、本体10が、外周面に凹所20が形成された中空の外周部材51と、外周部材51の中空部内に着脱自在に挿入される内周部材55とを備える点に特徴がある。
外周部材51は軸方向に貫通した概略中空筒状(又はリング状)であり、外周面に多穴部材30が配置される凹所20を備えている。外周部材51の内周面(中空部内側面)には内周部材55を装着するための内周部材装着部52が形成されている。内周部材装着部52は、本実施形態においては、雌ネジから構成されている。
内周部材55は概略柱状であり、軸方向一端部(図中下部)にはフィクスチャ装着部11が設けられ、軸方向他端部(図中上部)には人工歯装着部13が設けられている。また、内周部材55の軸方向中間部には、外周部材51に対して着脱自在に装着するための外周部材装着部56が形成されている。外周部材装着部56は、本実施形態においては、雄ネジから構成されており、内周部材装着部52に対して着脱自在に螺着される。
本実施形態に係るアバットメント2は、第一の実施形態と同様の方法にて作製することができる。第一の実施形態と異なる点は、本体10を準備する工程において、外周部材51と内周部材55を用意する点である。即ち、外周部材51については、原料となるチタン棒材を機械加工して、軸方向に貫通したリング状に形成すると共に、内周面に雌ネジからなる内周部材装着部52を形成し、外周面には凹所20を形成する。また、内周部材55については、原料となるチタン棒材を機械加工してフィクスチャ装着部11、外周部材装着部56、人工歯装着部13、及びスクリュ挿通孔12を夫々形成すればよい。
このように本実施形態に係る本体10は、多穴部材30が配置されて歯肉組織と接触する外周部材51と、フィクスチャ及び人工歯に一体化する装着部を有した内周部材55とに分割された構成を有している。このため、歯肉組織と直接的に接触するアバットメント2の外周部分に何らかの問題が発生した場合や、細菌感染が起こった場合等には、多穴部材30が一体化された外周部材51のみを交換すればよいので、患者の負担を減らすことができる。
〔歯科用インプラントへの適用例〕
本発明の各実施形態に係るアバットメント、及びその側面構造の歯科用インプラントへの適用例について図8に基づいて説明する。図8(a)、(b)は、本発明の各実施形態に係るアバットメントを含んで構成された歯科用インプラントの例を示す断面図であり、(c)、(d)は、本発明の各実施形態に係るアバットメントに対応する部分を含んで構成された歯科用インプラントの例を示す断面図である。なお、以下の説明においては、すでに説明された部分と同一の部分には同一の符号を付して適宜その説明を省略する。
図8(a)に示す歯科用インプラント100Aは、軸方向一端部側(図中下側)から歯槽骨に固定、一体化されるネジ状のフィクスチャ101(人工歯根)、フィクスチャ101に対して着脱自在に装着されるアバットメント1、及びアバットメント1に対して着脱自在に装着される人工歯105(歯科用補綴物)と、を備えている。フィクスチャ101は、アバットメント1のフィクスチャ装着部11を着脱自在に装着するアバットメント装着部102を備え、人工歯105は、アバットメント1の人工歯装着部13に着脱自在に装着されるアバットメント装着部106を備えている。
フィクスチャ101は、歯槽骨に形成された埋め込み穴内に埋設されることにより、歯槽骨に固定、一体化される部位である。図示するアバットメント装着部102は、フィクスチャ101の軸方向に形成された凹状の穴であり、奥部にアバットメントスクリュ103の雄ネジ部103aと螺着する雌ネジ部102aが形成されている。フィクスチャ101に対してアバットメント1を一体化するには、アバットメント装着部102内にフィクスチャ装着部11を挿入し、スクリュ挿通孔12にアバットメントスクリュ103を挿入して、雄ネジ部103aと雌ネジ部102aとを螺着すればよい。このとき、アバットメントスクリュ103の頭部103bは、スクリュ挿通孔12の段差部12aに係止される。
図8(b)に示す歯科用インプラント100Bは、歯科用インプラント100Aのアバットメント1に代わってアバットメント2を配置した構成を有している。アバットメント2以外の構成は、歯科用インプラント100Aと同様であるため、同一構成の部分についての説明は省略する。
このように、本発明の第一の実施形態に係るアバットメント1、及び第二の実施形態に係るアバットメント2は、夫々一般的にツーピース型と呼ばれる歯科用インプラント100(100A、100B)として実施することができる。
図8(a)、(b)に示す歯科用インプラントは、第一及び第二の実施形態に係るアバットメント1、2が夫々奏する効果と同様の効果を奏する他、一般的なツーピース型の歯科用インプラントと同様に、手術後の食事制限が少ない等の効果を奏する。
図8(c)に示す歯科用インプラント110は、ワンピース型インプラント111と、ワンピース型インプラント111に対して着脱自在に装着される人工歯105とを備えている。ワンピース型インプラント111は、軸方向一端側に歯槽骨に一体化されるフィクスチャ部112を備え、軸方向他端側に人工歯105が着脱自在に装着されるアバットメント部113を備えている。
ワンピース型インプラント111は、多穴部材30を除く部分が一体的に形成された本体部材114と、多穴部材30とから構成されている。アバットメント部113は第一の実施形態に係るアバットメント1に相当する部分である。即ち、ワンピース型インプラント111は、その上部側面に、第一の実施形態に記載したアバットメント1が有する側面構造と同様の構造を有する。言い換えれば、本体部材114は第一の実施形態に係るアバットメント本体10にフィクスチャ部112を分離不能に一体化した構成を有する。
本体部材114及び多穴部材30には、歯科インプラントによる治療効果を高める上で有効な所定の機能を発揮する物質として抗バイオフィルム物質やハイドロキシアパタイト、或いは、抗菌性物質等がコーティングされてもよい。
なお、ワンピース型インプラント111は第一の実施形態と略同様の方法にて作製することができる。即ち、第一の実施形態に示した製造方法においてアバットメント本体10を用意する代わりに、本体部材114を用意する。本体部材114は、原料となるチタン棒材を機械加工して、軸方向一端部にフィクスチャ部を形成し、軸方向他端部に人工歯装着部及び凹所を形成することにより作製できる。そして、本体部材114の凹所20内に多穴部材30を固定すればよい。
図8(c)に示す歯科用インプラント110は、第一の実施形態に係るアバットメント1が奏する効果と同様の効果を奏する他、一般的なワンピース型インプラントと同様に、手術費用や部品代等を低廉にすることができるという効果を有する。
図8(d)に示す歯科用インプラント120は、ワンピース型インプラント121と、ワンピース型インプラント121に対して着脱自在に装着される人工歯105とを備えている。ワンピース型インプラント121は、軸方向一端側に歯槽骨に一体化されるフィクスチャ部122を備え、軸方向他端側に人工歯105が着脱自在に装着されるアバットメント部123を備えている。
ワンピース型インプラント121は、本体部材124と、第二の実施形態に示した外周部材51と、外周部材51に一体化される多穴部材30とから構成されている。ワンピース型インプラント121のアバットメント部123は第二の実施形態に係るアバットメント2に相当する部分である。即ち、ワンピース型インプラント121は、その上部に、第二の実施形態に記載したアバットメント2と同様の構造を有する。言い換えれば、本体部材124は、フィクスチャ部122に対して第二の実施形態に示した内周部材55を分離不能に一体化した構成を有する。本体部材124は、軸方向他端部に人工歯装着部13と、外周部材51を着脱自在に装着する外周部材装着部56とを備えている。外周部材装着部56は、本実施形態においては、雄ネジから構成されており、雌ネジから構成された内周部材装着部52に対して着脱自在に螺着される。
本体部材124及び多穴部材30には、歯科インプラントによる治療効果を高める上で有効な所定の機能を発揮する物質として抗バイオフィルム物質やハイドロキシアパタイト、或いは、抗菌性物質等がコーティングされてもよい。
なお、ワンピース型インプラント121は第二の実施形態と略同様の方法にて作製することができる。即ち、第二の実施形態に示した製造方法においてアバットメント本体10を構成する内周部材55用意する代わりに、本体部材124を用意する。本体部材124は、原料となるチタン棒材を機械加工して、軸方向一端部にフィクスチャ部122を形成し、軸方向他端部に人工歯装着部13及び外周部材装着部56を形成することにより作製できる。そして、本体部材124の外周部材装着部56に、別途作製した外周部材51を装着すればよい。
図8(d)に示す歯科用インプラント120は、第二の実施形態に係るアバットメント2が奏する効果と同様の効果を奏する他、一般的なワンピース型インプラントと同様に、手術費用や部品代等を低廉にすることができるという効果を有する。
〔実施態様例とその効果〕
本発明は、以下の実施態様にて実施することができる。
<第1実施態様>
本態様は、歯科用補綴物の土台となる歯科用アバットメント1、2であって、外周面に凹所を有するアバットメント本体10と、複数の穴31を有し、凹所の内奥面27よりも外側に配置された多穴部材30と、を備え、多穴部材30と凹所の内奥面27との間に間隙が形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、複数の穴を有する多穴部材を、凹所の内奥面との間に間隙を有した状態にて凹所の内奥面27よりも外側に配置したので、多穴部材の各穴から間隙内に歯肉線維が入り込んで、歯肉組織とアバットメントとの結合強度を高めることができる。
なお本態様では、多穴部材を内奥面27よりも外側に配置することで、歯肉線維を入り込ませる間隙が形成されればよい。従って本態様は、多穴部材30を凹所内に配置する場合の他、多穴部材30を本体10の外周面に配置することで多穴部材30と内奥面27との間に間隙を形成する態様も含む。
<第2実施態様>
凹所20は、アバットメント本体10の外周面に形成された第一凹所21と、第一凹所21の内奥面中間部に形成された第二凹所25とを備え、多穴部材30は、第一凹所21内に配置されていることを特徴とする。
第一凹所21内に第二凹所25を形成し、多穴部材30を第一凹所21内に配置することで、第二凹所25は、多穴部材30を介して歯肉線維が入り込む空間となる。
<第3実施態様>
多穴部材30は、第二凹所25の両側に段差状に位置する第一凹所(第一内奥面23)に固定されていることを特徴とする。
第一凹所21内に第二凹所25を形成し、多穴部材30を第一凹所21内に配置することで、第二凹所25は、多穴部材30を介して歯肉線維が入り込む空間となる。
<第4実施態様>
多穴部材30は、アバットメント本体10の外周面(15)と同一曲面上に存在するように配置されるか、又は、外周面(15)よりも外方に突出しないように凹所20内に配置されていることを特徴とする。
多穴部材30は、アバットメント1の表面に無用な突出物を形成しないように、アバットメント本体10に対して固定される。
<第5実施態様>
多穴部材30は、圧延により表面が平滑化されていることを特徴とする。
一般的に、アバットメントの表面については平滑性が要求される。多穴部材30を圧延処理することで、多穴部材30を含むアバットメント1の表面の平滑性を確保する。
<第6実施態様>
多穴部材30は、焼結により形成されていることを特徴とする。
多穴部材の元となる多穴材料を焼結することで、強度、及び耐食性を向上させることができる。また、多穴材料を構成する金属の一体化、目開き防止、及びコンタミネーションの低減を図ることができる。
<第7実施態様>
アバットメント本体10は、外周面に凹所20が形成された中空の外周部材51と、外周部材51の中空部内に着脱自在に挿入される内周部材55とから構成されていることを特徴とする。
歯肉組織と直接的に接触するアバットメント2の外周部分に何らかの問題が発生した場合や、細菌感染が起こった場合等には、多穴部材30が一体化された外周部材51のみを交換すればよいので、患者の負担を減らすことができる。
<第8実施態様>
アバットメント本体10及び多穴部材30には生体親和性を向上させる物質がコーティングされていることを特徴とする。
本態様によれば、アバットメント1と生体との親和性を高めることができる。
<第9実施態様>
アバットメント本体10及び多穴部材30には抗菌性物質又は抗バイオフィルム物質がコーティングされていることを特徴とする。
本態様によれば、細菌による汚染を防止することができる。
<第10実施態様>
アバットメント本体10は、歯槽骨内に配置されるフィクスチャ101に対して着脱自在に装着可能なフィクスチャ装着部11を備えていることを特徴とする。
本発明に係るアバットメント1、2は、いわゆるツーピース型の歯科用インプラントとして実施することができる。
<第11実施態様>
ワンピース型インプラント111、121は、軸方向一端部に歯槽骨内に配置されるフィクスチャ部112、122を、他端部に歯科用補綴物が装着されると共に外周面に凹所(第二凹所25)を有するアバットメント部113、123と、複数の穴31を有し、凹所の外側に配置された多穴部材30と、を備え、多穴部材30と凹所の内奥面27との間に間隙が形成されていることを特徴とする。
ワンピース型インプラント111、121は、上部側面にアバットメント1、2が有する構造と同様の構造を有するため、アバットメント1、2と同様の効果を奏する。
<第12実施態様>
歯科用アバットメント1、2の製造方法であって、アバットメント本体10を準備する本体準備工程と、多穴部材30を準備する多穴部材30準備工程と、アバットメント本体10に対して多穴部材30を一体化させる一体化工程と、を有し、多穴部材30準備工程は、多穴部材30の元となる多穴材料を圧延して表面を平滑化させる圧延工程を含むことを特徴とする。
一般的に、アバットメントの表面については平滑性が要求される。多穴部材30を圧延処理することで、多穴部材30を含むアバットメント1の表面の平滑性を確保する。
なお、ワンピース型インプラント111、121も同様に製造することができる。
<第13実施態様>
歯科用アバットメント1、2の製造方法であって、アバットメント本体10を準備する本体準備工程と、多穴部材30を準備する多穴部材30準備工程と、アバットメント本体10に対して多穴部材30を一体化させる一体化工程と、を有し、多穴部材30準備工程は、多穴部材30の元となる未結合状態の多穴材料を焼結により一体化させる焼結工程を含むことを特徴とする。
多穴部材の元となる多穴材料を焼結することで、強度、及び耐食性を向上させることができる。また、多穴材料を構成する金属の一体化、目開き防止、及びコンタミネーションの低減を図ることができる。
なお、ワンピース型インプラント111、121も同様に製造することができる。
<第14実施態様>
一体化工程は、凹所20内の適所に多穴部材30を抵抗溶接する工程であることを特徴とする。
抵抗溶接としては、スポット溶接又はシーム溶接等を採用することができる。本態様によれば、長期に渡って両者を多穴部材30がアバットメント本体10に一体化された状態を維持し、アバットメント1としての耐久性を高めることができる。
1、1A、1B、2…(歯科用)アバットメント、10…アバットメント本体(本体部材)、11…フィクスチャ装着部、12…スクリュ挿通孔、12a…段差部、13…人工歯装着部、15…最外周面、20…凹所、21…第一凹所、23…第一内奥面、25…第二凹所、27…第二内奥面、29…溝、30、30A、30B…多穴部材、31…穴、32…金属線材、40…スポット溶接用電極、51…外周部材、52…内周部材装着部、55…内周部材、56…外周部材装着部、100(100A、100B)…歯科用インプラント、101…フィクスチャ、102…アバットメント装着部、102a…雌ネジ部、103…アバットメントスクリュ、103a…雄ネジ部、103b…頭部、105…人工歯(歯科用補綴物)、106…アバットメント装着部、110…歯科用インプラント、111…ワンピース型インプラント、112…フィクスチャ部、113…アバットメント部、114…ユニット本体(本体部材)、120…歯科用インプラント、121…ワンピース型インプラント、122…フィクスチャ部、123…アバットメント部、124…ユニット本体(本体部材)

Claims (7)

  1. 歯科用補綴物の土台となる歯科用アバットメントであって、
    外周面に凹所を有するアバットメント本体と、
    複数の穴を有し、前記凹所に配置された多穴部材と、を備え、
    前記多穴部材と前記凹所の内奥面との間に間隙が形成されていることを特徴とする歯科用アバットメント。
  2. 前記凹所は、前記アバットメント本体の外周面に形成された第一凹所と、前記第一凹所の内奥面中間部に形成された第二凹所とを備え、
    前記多穴部材は、前記第一凹所内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の歯科用アバットメント。
  3. 前記多穴部材は、前記アバットメント本体の外周面と同一曲面上に存在するように配置されるか、又は、前記外周面よりも外方に突出しないように前記凹所内に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用アバットメント。
  4. 前記多穴部材は、圧延により表面が平滑化されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の歯科用アバットメント。
  5. 前記アバットメント本体及び前記多穴部材には生体親和性を向上させる物質がコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の歯科用アバットメント。
  6. 前記アバットメント本体及び前記多穴部材には抗菌性物質又は抗バイオフィルム物質がコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の歯科用アバットメント。
  7. 請求項1乃至6の何れか一項に記載の歯科用アバットメントの製造方法であって、
    前記アバットメント本体を準備する本体準備工程と、
    前記多穴部材を準備する多穴部材準備工程と、
    前記アバットメント本体に対して前記多穴部材を一体化させる一体化工程と、を有し、
    前記多穴部材準備工程は、前記多穴部材の元となる多穴材料を圧延して表面を平滑化させる圧延工程を含むことを特徴とする製造方法。
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