JP6395249B2 - 多層多孔質陽極酸化皮膜の製造方法及び多孔質陽極酸化皮膜並びにそれを用いた電極及び電池 - Google Patents

多層多孔質陽極酸化皮膜の製造方法及び多孔質陽極酸化皮膜並びにそれを用いた電極及び電池 Download PDF

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Description

本発明は、多孔質陽極酸化皮膜の製造方法及び多孔質陽極酸化皮膜に関する。
電気エネルギーの貯蔵・放出が繰り返し可能であるという点から、2次電池は用途に応じた様々な大きさ・形状で、種々の電子デバイスに利用されてきた。近年の著しい携帯電子機器の発展や電気エネルギーの有効利用の必要性などから、リチウムイオン2次電池の大容量化とハイパワー化が求められている。
現状で最も高いエネルギー密度を有するリチウムイオン2次電池は、他の2次電池と比較して次の特徴を有している。
(1)エネルギー密度が高い(電池そのものの小型化・軽量化が可能)
(2)動作電圧が高い(少ない本数で大きな出力が得られ、機器の小型化・軽量化が可能)
(3)メモリ効果がない(継ぎ足し充電が可能)
(4)安全性が高い(過充電に強い、熱的安定性が高い)
(5)寿命が長い
これらの特徴より、リチウムイオン2次電池は注目を浴びている。このため、リチウムイオン2次電池の更なる高性能化により市場のニーズが満たされる可能性は非常に高く、現在まで世界各国の企業や大学レベルでその開発研究が進められてきた。
そこで要求されている電池の高性能化は、従来型材料技術では実現困難であるため、蓄電技術における革新が期待されているところである。特に近年のナノサイエンス、ナノテクノロジーの進展を背景として、電気化学的活物質の精密なナノ構造制御に基づく大容量・高出力型電極材料の開発に関心が持たれている。 一例として、アノード酸化によりナノポーラスチタニア(TiO)皮膜を形成し、光触媒材料、太陽電池やLi電池などの電極材料として応用する研究が行われている。
このように、アノード酸化によりナノポーラスチタニア(TiO)皮膜を形成し、光触媒材料、太陽電池やLi電池などの電極材料として応用する研究が行われている(特許文献1−4、非特許文献1)。
特許第5197766号公報 特開2010−108904号公報 特開2006−89842号公報 特開2005−272885号公報
S. Z. Chu*(呉 松竹), S. Inoue, K. Wada, S. Hishida, K. Kurashima, "Self-OrganizedNanoporous Anodic Titania Films and Ordered Quantum Titania Nanodots/Nanorodson Glass", Advanced Functional Materials, 15 (8): 1343-1349, 2005.
従来の技術において、ナノポーラスまたはナノチューブ状のTiO皮膜の作成には、主に腐食性の強いフッ化物イオンを含む有機系電解液が用いられているため、環境に悪影響を与えるほか、半導体であるTiO皮膜の導電性(10−11−10−12Ω−1−1)が低いという解題がある。一方、窒化チタン(TiN)は、優れた導電性(2.5×10Ω−1−1)を有するため、各種電極において導電助剤としてよく利用されているが、その合成は900℃程度の高温焼結が必要のため、製造コストが高い。
また、緻密な膜は得られていない。すなわち、表面は粉状であり、触媒としては用いることはできても電池の電極として使用できる緻密な膜は得られていない。
さらに、結晶質の膜も得られていない。
そこで本発明では、新規のリチウムイオン2次電池の電極材料を目指し、チタニアアノード酸化皮膜の導電性を改善するために、硝酸系電解液を用いてTi板のアノード酸化を行い、窒素を皮膜内に導入させることによりTiO−TiN複合皮膜を創製することを目的とした。
緻密で結晶質であり電極(特にリチウムイオン2次電池の電極)として好適に用いることができる多孔質陽極酸化皮膜の製造方法及び多孔質陽極酸化皮膜を提供することを目的とする。
請求項に係る発明は、硫酸系電解液による第1の陽極酸化工程の後に、硝酸系電解液による第2の陽極酸化工程を行う多層多孔質陽極酸化皮膜の製造方法において、
前記第1の陽極酸化工程において硫酸アンモニウム溶液を用い、前記第2の陽極酸化工程では硝酸アンモニウムを用いることを特徴とする多層多孔質陽極酸化皮膜の製造方法。
請求項2に係る発明は、多孔質陽極酸化皮膜は、Ti基体上に、平均細孔径が10−30nm、細孔間距離80nm以上で形成されている多孔質陽極酸化皮膜である。
請求項3に係る発明は、多孔質陽極酸化皮膜は、Ti基体上に、平均細孔径が約10−30nm、細孔間距離80nm以上の膜と、平均細孔径50−150nm、細孔間距離250nm以上の膜とが形成されていることを特徴とする多孔質陽極酸化皮膜である。
請求項に係る発明は、前記多孔質陽極酸化皮膜はTiO −TiNの複合酸化膜であることを特徴とする請求項2又は3記載の多孔質陽極酸化皮膜である。
請求項に係る発明は、前記多孔質陽極酸化皮膜は結晶質であることを特徴とする請求項ないしのいずれか1項記載の多孔質陽極酸化皮膜である。
請求項に係る発明は、請求項ないしのいずれか1項記載の多孔質陽極酸化皮膜を有することを特徴とする電極である。
請求項に係る発明は、前記電極はリチウムイオン2次電池用の電極である請求項記載の電極である。
請求項に係る発明は、請求項又は記載の電極を有する電池である。
a.従来技術は、硝酸イオンを含む電解液を用いていた。本発明は、アンモニアイオンを含む酸性溶液を電解液とする。また、pHの調整を行っている。
b.従来技術は、粒子状酸化チタンまたはスポンジ状の皮膜である。本発明は、ナノサイズのシリンダー状の細孔セルの集合体からなる多孔質構造を持つ陽極酸化皮膜である。細孔のサイズは、直径5nm−500nmであり、電解液および陽極酸化条件により制御できる。
c.従来技術は、10V以上、100V以下、30秒以上、60分間以内に酸化チタン粒子を形成する技術である。本発明は、陽極酸化電圧は、5Vから600V(直流電源の最高電圧)まで、10秒以上処理すれば、酸化チタンと窒化チタンの複合皮膜を作製できる。また、10V以上であれば、ナノ細孔を有する多孔質複合皮膜が得られる。さらに、多孔質皮膜の厚さは陽極酸化処理時間または電流密度・電圧に比例するので、膜厚の限界はない。
d.従来技術は、陽極酸化後に200℃から750℃の温度域で1分以上24時間以下の熱処理によって結晶化させることが必要であった。本発明は、電圧が5V以上(好ましくは15V以上、さらに好ましくは20V以上)であれば、(アナターゼ型)酸化チタンからなる結晶性陽極酸化皮膜が得られるため、加熱処理が不要である。なお、上限は35Vとしてもよい。
e.従来技術は、pH12以上15以下である。本発明は、電解液のpHは0から11までに広い範囲で処理可能である。
f.硝酸イオンとアンモニアイオンを共存する場合、二段階陽極酸化により、硝酸イオンだけを含む場合よりも、密着性と均一性の良い複合酸化皮膜を形成することができる。
g.1段階目は、硫酸、シュウ酸、リン酸、各有機酸とそれらの混合液中での陽極酸化により、薄い多孔質酸化チタン皮膜を作り、その皮膜が次の陽極酸化の際に、電場フィルダーとして、細孔の開始点を誘導できる。
また、本発明においては、以下の効果も奏する。
・ナノ細孔を有する多孔質酸化チタン皮膜を作製する。
・基板との密着性のよい、厚い多孔質チタン酸化物皮膜を作製することができる。
・高導電性の窒化チタンを半導体のチタン酸化物に導入することによりチタン酸化物皮膜の導電性を改善する。
・陽極酸化法により、チタン酸化物皮膜を生成するとともに、窒化チタンも形成させて皮膜全体に分散し、酸化チタンと窒化チタンの複合多孔質皮膜を形成、製造できる。
・陽極酸化の条件により、直接結晶性酸化チタン皮膜を形成できる。(加熱処理は不要)
・湿式法かつ低温で窒化処理が可能になる。電解液の組成と濃度、液温、操作条件などにより、窒化チタンの含有量(または窒化率)を制御できる。(過去にアンモニア塩浴中で700〜900℃の高温処理が一般的である。)
なお、窒化チタンの含有量は、一般的に電解液の濃度(硝酸アンモニウム)が高いほど、高くなり、また、結晶性については、印加電圧が高いほど、結晶性が高くなる。また、多孔質皮膜の細孔サイズ(直径)は、電解液の温度と電圧、電流密度に比例するためこれらは用途に応じで適宜制御すればよい。
典型的な多孔質陽極酸化皮膜の構造 実験装置の模式図 二極式ポーチセルの作製方法を示す図 0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い各定電圧で1h,5℃のアノード酸化後の試験片を示す図である。 0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い各定電圧で1h,5℃のアノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像(a),(b)15V, (c),(d)20V, (e),(f)25V 0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い各定電圧で1h,5℃のアノード酸化後に生成した皮膜のXPSスペクトル(a),(b)15V, (c),(d)20V, (e),(f)25V 0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い各温度で定電流密度3.0mAcm-2, 1hのアノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像(a),(b)1℃, (c),(d)5℃ 0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い10℃,定電流密度3.0mAcm−2, 1hのアノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像 0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い各温度で定電流密度5.0mAcm-2, 1 hのアノード酸化後に生成した皮膜の表面・断面FE−SEM画像(a),(b)1℃, (c),(d)5℃, (e),(f),(c)の皮膜断面 0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い5.0mAcm-2, 1h,5℃のアノード酸化後に生成した皮膜のXPSスペクトル 0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い5.0mAcm−2, 1h,5℃のアノード酸化後に生成した皮膜断面(a) ,(b)TEM画像 (c),(d)電子線回折斑点図 0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い5.0mAcm-2, 1h,5℃のアノード酸化後に生成した皮膜のEDSスペクトル(a) 全体 (b) 酸化皮膜 (c) 基板 10vol%硫酸溶液を用い各電圧,室温で20minのアノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像(a),(b)40V, (c),(d)50V, (e),(f)60V 10vol%硫酸溶液を用い各電圧,室温で20minのアノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像(a),(b)70V, (c),(d)80V 10vol%硫酸溶液を用い各電圧,室温で20minのアノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像(a),(b)90V, (c),(d)100V 10vol%硫酸溶液を用い各電圧 室温で20minのアノード酸化後の試験片 10vol%硫酸溶液を用い各電圧,室温で20minのアノード酸化後に生成した皮膜のXPSスペクトル 0.5M硫酸アンモニウム溶液を用い各電圧,室温で1hのアノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像(a),(b)15V, (c),(d)20V, (e),(f)25V 硫酸アンモニウム溶液を用い100 V, 室温で1 hのアノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像(a),(b)0.5M, (c),(d)2M 2M硫酸アンモニウム溶液を用い100V,室温で1hのアノード酸化後に生成した皮膜のXPSスペクトル 2M硫酸アンモニウム溶液を用い100V,室温で1hのアノード酸化後に生成した皮膜断面(a),(b)TEM画像 (c),(d)電子線回折斑点図 2 M硫酸アンモニウム溶液を用い100V, 室温で1hのアノード酸化後に生成した皮膜断面のEDSスペクトル(a)全体 (b)酸化皮膜 (c)基板 10vol%アンモニア水を用い各電圧,5℃で1hのアノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像(a),(b)15V, (c),(d)20V, (e),(f)25V 10vol%アンモニア水を用い各電圧,5℃で1hのアノード酸化後に生成した皮膜のXPSスペクトル 電流密度−時間曲線 (a)一段階目 (b)二段階目 一段階目に硫酸溶液,二段階目に硝酸アンモニウム溶液を用いたアノード酸化後に生成した皮膜の外観図 二段階アノード酸化後に生成した皮膜の表面FE−SEM画像一段階目:10vol%硫酸溶液, 20min, 室温(a),(b)20V, (c),(d)50V, (e),(f)100V 二段階目:0.05M硝酸アンモニウム溶液, 25V, 1h, 5℃ 一段階目に硫酸100V,20min, 二段階目に硝酸アンモニウム25V, 1hのアノード酸化後に生成した皮膜断面 一段階目に硫酸100V,20min,二段階目に硝酸アンモニウム25V, 1hアノード酸化後に生成した皮膜のEDSスペクトル。(a)全体 (b)一段階目に生成した皮膜 一段階目に硫酸100V,20min, 二段階目に硝酸アンモニウム25V, 1hのアノード酸化後に生成した皮膜のEDSスペクトル(a)二段階目に生成した皮膜 (b)基板 一段階目に硫酸100V,20min, 二段階目に硝酸アンモニウム25V,1hのアノード酸化後に生成した皮膜のXPSスペクトル 一段階目に硫酸アンモニウム100V,1h, 二段階目に硝酸アンモニウム25V,1hのアノード酸化後に生成した皮膜(a),(b)表面, (c)断面 二段階アノード酸化により生成した皮膜のXRDパターン(a)一段階目:硫酸溶液、二段階目:硝酸アンモニウム溶液(b)一段階目:硫酸アンモニウム溶液、二段階目:硝酸アンモニウム溶液 一段階目に硫酸溶液、二段階目に硝酸アンモニウム溶液を用いた二段階アノード酸化により生成したTiO−TiN複合皮膜(450nm)の電池特性(a)充放電曲線 (b)サイクル特性 一段階目に硫酸アンモニウム、二段階目に硝酸アンモニウムを用いた二段階アノード酸化により生成したTiO−TiN複合皮膜(500nm)の電池特性(a)充放電曲線 (b)サイクル特性 硫酸溶液を用いたアノード酸化により生成したTiO皮膜の電池特性(a)充放電曲線 (b)サイクル特性
以下に本発明を実施するための形態を説明する。
1−2 アノード酸化
1−2−1 第一種バルブメタルのアノード酸化
金属には遷移金属、非遷移金属という分類があるが、一方では金属の誘電特性から見ると、バルブメタルという分類がある。バルブとは弁作用のある金属という意味で、正確にはその金属表面に生成する酸化皮膜が、電流を一方向にのみ流し、反対方向には非常に流しにくいというような特性のものをいう。つまり整流作用を持つ酸化皮膜のことである。
長い間アルミニウムは、バルブメタルの代表とされていたが、そのほかにニオブ、タンタル、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、希土類元素などがバルブメタルに分類されていた(第一種)。時には亜鉛、銅、コバルト、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、タングステンなどもバルブメタルに分類されることがある(第二種)。しかし、金属の表面に生成する酸化皮膜が整流作用をするには、その酸化皮膜を化成する電解液の種類に強く依存する。液性が酸性化、アルカリ性か、または水溶液か非水溶液か、あるいは溶融塩であるかで、その特性は著しく異なる。
アノード酸化できる金属は、酸化の初期に、電気的には絶縁性のバリヤー皮膜を形成するような酸化物である。すなわち酸化物の電子伝導性が非常に低く、高い電場のもとで、わずかなイオン電導性を示すような酸化物を形成する場合に限り酸化皮膜は成長する。
ここで取り扱うアノード酸化皮膜には、構造的に見てバリヤー皮膜とポーラス皮膜とがある。バリヤー皮膜とは酸化物皮膜が緻密で孔がなく、電流は高い電場のもとで、絶縁性の酸化物皮膜中を流れて厚く成長する。ポーラス皮膜は、最初にできたバリヤー皮膜が高い電場の動きと、電解液の溶解作用を受けて局部的に孔を形成し、多孔質となったものである。したがってこのタイプの皮膜は、バリヤー型の部分とポーラス型の部分の二重構造をとる(図1)。
1−2−2 チタンのアノード酸化
チタンアノード酸化皮膜の成長過程においては、チタンイオンと酸素の両方の移動が皮膜の形成に寄与しているものと考えられている。しかし、皮膜を通ってチタンイオンの移動が起こり、酸化物/溶液界面で皮膜が成長するか、酸素の移動によって金属/酸化物界面で皮膜が成長するか、あるいは電解条件によって同時に進行するかという機構について、十分に説明できる理論は確立されていない。
チタンアノード酸化の電解液の種類や、電解条件によって皮膜の組成に変化はあるが、アナタ−ゼ型とルチル型の混在した二酸化チタン(TiO)がその主成分である。また、皮膜の成長過程においては、無定形皮膜とアナタ−ゼおよびルチルの微結晶の生成が並行して起こっているため、皮膜はこれらの混合物から成り立っている。
電解液としては、溶融塩、非水溶液、水溶液を用いた開発が行われてきたが、最近の実生産においては、酸あるいはアルカリ水溶液が使用されるのが一般的である。
電解は通常は直流電解で行うが、交流電解でもアノード酸化することが出来る。チタンのアノード酸化皮膜は、皮膜が厚くなるにつれ抵抗が増加するので、一定速度で電圧を上昇させる方法、あるいは定電流密度により所定の電圧に到達後定電圧電解に切り替える方法で行われている。チタンのアノード酸化においては、電解液の種類により電解挙動と皮膜生成率が異なる。皮膜の厚さは同一の電解浴を用いる限りにおいては、電流密度や昇圧速度、電解時間などにほとんど関係なく、最高電圧によって決定される。
1−3 ナノ構造を利用したリチウムイオン2次電池
物質のサイズがナノオーダーまで小さくなると、バルク金属とは異なる物性が現れる。リチウムイオン2次電池用電極材料についても同様である。例えば、アナタ−ゼ型TiO2へのリチウムイオン脱挿入は可能だが、ルチル型TiOでもサイズが15nmまで小さくなると、リチウムイオンの脱挿入が可能となり、かつ放電容量は365mAhgにまで達する。さらに、アナタ−ゼ型TiOについても、バルクの理論容量は約167mAhgだが、6nmのナノ粒子では、放電容量が360mAhgに増加する。このように、従来の活物質でもナノサイズまで小さくなると放電容量が著しく増加する。これは、表面積の増加による効果である。表面積の増加による性能向上は、出力特性にも現れる。これは、ナノ細孔内へのリチウムイオンと電解液の移動が容易に出来たことによるものである。このようにナノポーラス電極では表面積が大きいため、表面化学液反応性に起因するリチウム貯蔵などナノ物質特有のエネルギー物性にも興味が持たれる。表面を利用すれば化学量論組成以上のリチウムを貯蔵する可能性もある。このナノ結晶特有のエネルギー貯蔵物性を用いれば、大容量・高出力な革新的なリチウムイオン2次電池電極材料の実現が期待できる。
1−4 目的
現在、リチウムイオン2次電池の大容量化・ハイパワー化のため電極にナノポーラスTiOを用いる研究が行われている。従来のナノポーラスTiO電極の作製方法として、フッ化物イオンを含む電解液を用いたアノード酸化が一般的である。前述したように、電極をナノポーラス構造にすることにより表面積が増大し、リチウムの脱挿入特性の向上が期待される。
しかし、TiOのみで形成されるナノポーラス皮膜は導電性が低く、加えて電解液に含まれるフッ化物イオンは環境に悪影響を及ぼすことが課題である。
そこで、導電性を改善するために、アノード酸化の際に電解液から皮膜内に窒素を取り入れ、TiOとTiNの複合皮膜(導電率TiO:10−11〜10−12Ω−1m−1、TiN:2.5×10Ω−1−1)を生成させようと考えた。本研究では、リチウムイオン2次電池の電極材料を目指し、硝酸アンモニウム溶液を用いてTi板へアノード酸化を施すことによりTiO−TiN複合皮膜を創製することを目的する。
2−1 試験片
純Ti板 (20×40×0.1mm 99.5%)を出発材料として用いた。
2−2 脱脂処理
2−1に示した試験片をアセトン、エタノール中で各10分間の超音波洗浄後、蒸留水で洗浄した。その後Arガスで乾燥した。
2−3 アノード酸化
2−3−1 電圧・電流密度・温度による影響
実験装置の模式図を図2に示す。アノード酸化はアノードに2−2に示した試験片、対極にグラファイト(30×100×8.0mm)、電解液として0.05M硝酸アンモニウム溶液を用いた。溶液は、硝酸アンモニウム4.04gにイオン交換水を加え1.0Lに調整し作製した。アノード酸化により発生する熱を効率的に取り除くために、氷浴で冷却して低温を保ち、撹拌をしながら行った。アノード酸化条件は、電圧の影響を調べるために15−25V、電流密度の影響を調べるために3.0×10−3−5.0×10−3Acm−2、温度の影響を調べるために1−10℃、それぞれ1h行った。
2−3−2 電解液による影響
硝酸イオン(NO )の腐食性が、基板と酸化皮膜の密着性に影響を及ぼしているのではないかと考え、NO を含まない溶液を用いて検証を行った。アノード酸化に使用した溶液およびアノード酸化条件を表1に示した。
Figure 0006395249
2−3−3 二段階アノード酸化
一段階目は密着性改善のために緻密膜を形成させ表面にふたをすること、二段階目は酸化皮膜内に窒化物を生成させることを目的とし、二段階アノード酸化を行った。一段階目に硫酸系の溶液、二段階目に硝酸アンモニウム溶液を用いてアノード酸化を行った。アノード酸化には図2に示した装置を用い、一段階目に10vol%硫酸(100V,20min,室温)または、2M硫酸アンモニウム(100V,1h,5℃)、二段階目に0.05M硝酸アンモニウム(25V,1h,5℃)を用い、二段階のアノード酸化を行った。溶液の調整は2−3−1または2−3−2に示した方法と同様である。
2−4 アノード酸化皮膜の特性評価
各条件で得たアノード酸化皮膜に対する特性評価の方法を以降に示す。
酸化皮膜をオスミウムで10s蒸着を行った後、FE−SEM(JEOEL−JSM7001)を用いて、酸化皮膜表面・断面形態の観察およびEDSによる化学組成の分析を行った。XPS(PHI−5600)(CuKα線)を用いて、皮膜表面・内部の化学組成の分析を行った。皮膜内部の分析の際はArスパッタを行った。XRD(RINT2000)(40kV/30mA)を用いて結晶構造の分析を行った。酸化皮膜をFIBで加工をした後、TEM (JEOEL−JSM2100)を用いて、皮膜の微細構造の観察と結晶構造の分析を電子線回折により行った。
2−5 アノード酸化皮膜のリチウムイオン2次電池電極としての特性評価
2−5−1 電極の作製
2−3−3で作製した二つの試料を10×40×0.1mm(電極面積:1.0×1.0cm)に切り取り、電気炉で400℃・2hの加熱処理を行ったものを電極とした。
2−5−2 電池の作製
図3の様式でポーチセルを作製した。手順(1)は空気中で行い、2−5−1に示した試料の中央部分にシーラントを熱圧着したものを作用極とした。3cmのニッケル線の中央部も同様の操作をし、金属リチウムに接続するリード線とした。またセパレータを作用極が包まれる大きさの袋状にし、手順(1)に示すようにそれぞれのパーツを配置した後、A辺とB辺を熱圧着した。手順(1)で作製したポーチとリード線をAr置換したグローブボックス内に入れ手順(2)の工程を行った。金属リチウム(本城金属製)を5.0×3.0cmに切り取り、それにニッケル線を挟み半分に折りたたみ圧着したものを対極として用い、セパレータを挟んで作用極と対置させた。次いで、電解液として1.0mLの1M LiPF/EC+EMC+DMC(1:1:1vol.)をセル内部に注ぎ、C辺を熱圧着し二極式ポーチセルとした。
2−5−3 定電流放電試験
2−5−2で作製した二極式ポーチセルを用いて、電流密度50mAcm−2、電圧範囲1.0−3.0V、測定温度30℃の条件で50サイクルの定電流放電試験を行った。測定には北斗電工製のHJ1010mSM8A充放電装置を使用した。
2−6 試薬
実験に用いた試薬は、以下の通りである。
硝酸アンモニウム 和光純薬工業株式会社 和光一級
硫酸アンモニウム 和光純薬工業株式会社 試薬特級
硫酸 和光純薬工業株式会社 試薬特級
アンモニア水 関東化学株式会社 鹿一級
3−1 硝酸アンモニウム溶液を用いたアノード酸化
3−1−1 電圧の影響
電圧による影響を検証した結果を以降に示す。
図4に、0.05 M硝酸アンモニウム溶液を用い各定電圧で1h,5℃のアノード酸化後の試験片を示す。
図5のSEM画像から確認できるように、それぞれの電圧で不均一な皮膜が形成し、電圧の上昇に伴いより不均一な皮膜が形成した。皮膜内部(図5(f))には、ナノチューブのような層が形成していることから、硝酸アンモニウム溶液を用いたアノード酸化によりナノポーラス皮膜が生成する可能性があることがわかった。
図5に示した皮膜の化学組成の分析をXPSにより行った結果を図6に示す。まずチタン領域のスペクトルを見ると、Ti4+のピークが現れたためTiOの生成が確認出来た。スパッタ後のスペクトルを見ると、Ti3+の部分がブロードしたため、皮膜内部にはTiNが生成したことが確認出来た。さらに窒素領域のスペクトルから、皮膜表面は硝酸イオン(NO )とアンモニウムイオン(NH4+)の吸着のみだが、皮膜内部には窒化物のピークが現れたため、TiNの生成が示唆される。これらの結果から、硝酸アンモニウム溶液によってアノード酸化を行うことによりTiOとTiNの複合皮膜の生成が示唆される。
3−1−2 電流密度・温度の影響
電流密度3.0mAcm−2の定電流で1hのアノード酸化を行った際の、温度による影響を検証した結果を図7、図8に示す。SEM画像から、1℃と5℃の場合ではポーラスが形成していないことが確認出来た。この一因として、電圧が十分に上昇しなかったことが考えられる。一方10℃の場合は、皮膜表面は不均一であるが部分的にポーラスが形成した。
次に、電流密度を5.0mAcm−2に上げ温度による影響を検証した結果を図9に示す。1℃の場合は、3.0mAcm−2で5℃の場合に形成した皮膜と類似した表面となった。この一因として、アノード酸化の際に流れた電圧がほとんど同じであったためと考えられる。5℃の場合に、皮膜表面が均一で且つポーラス構造を有する皮膜の形成に成功した。この皮膜の膜厚は約6.5μmである。しかし、断面は層状で、皮膜が非常にはがれやすかったため基板との密着性は悪いと言える。
電流密度5.0mAcm−2,1h,5℃の条件でアノード酸化を行った試料の化学組成をXPSにより分析した結果を図10に示す。まずチタン領域のスペクトルを見ると、Ti4+のピークが現れたためTiOの生成が確認出来た。スパッタ後のスペクトルを見ると、Ti3+とTi2+の部分がブロードとなったため、皮膜内部にはTiNとTiOが生成していることが確認出来た。さらに窒素領域のスペクトルから、皮膜表面はNO とNH4+の吸着のみだが、皮膜内部には窒化物が生成していることがわかった。
前述の試料をTEMにより観察した結果を図11に示す。図12には、そのEDSスペクトル図を示す。電子線回折により結晶構造の違いを確認したところ異なる結果となっため、上層がアノード酸化により形成した酸化皮膜、下層がTi板であることがわかった。
3−2 硝酸イオンを含まない溶液を用いたアノード酸化
3−2−1 硫酸を用いた系
10vol%硫酸溶液を用いて電圧による影響を検証した結果を図13,14,15に示す。図16には試験片を示す。
SEM画像からわかるように、20−60Vでは不均一な皮膜、70−90Vではナノポーラスは形成してないが均一な皮膜、100Vで細孔径φ50−150nmのナノポーラスが形成し且つ均一な皮膜の生成に成功した。この一因として、低い電圧では十分な電流が流れなかったため不均一な表面となったと考えられる。
100Vの際に生成した皮膜の化学組成をXPSにより分析した結果を図17に示す。チタン領域のスペクトルを見ると、Ti4+のピークが現れたためTiOの生成が確認出来た。スパッタ後のスペクトルを見ると、Ti2+の部分にピークが現れたため皮膜内部にはTiOが生成していることがわかった。
3−2−2 硫酸アンモニウムを用いた系
0.5M硫酸アンモニウム溶液を用いて電圧による影響を検証した結果を図18に示す。15−25Vで比較を行った結果、いずれも表面が不均一な皮膜が生成した。これらの皮膜が、硫酸溶液を用いた場合に生成した皮膜と類似していたため、次に100Vでアノード酸化を行った際の溶液の濃度による影響を検証した結果を図19に示す。0.5Mと2Mの溶液で比較を行った結果、2Mの際に細孔径φ50〜200nmのナノポーラスが形成し且つ均一な皮膜の生成に成功した。
2Mで生成した皮膜の化学組成をXPSにより分析した結果を図20に示す。まずチタン領域のスペクトルを見ると、Ti4+のピークが現れたためTiOの生成が確認出来た。スパッタ後のスペクトルを見ると、Ti3+とTi2+の部分がブロードとなったため、皮膜内部にはTiNとTiOが生成していることが確認出来た。さらに窒素領域のスペクトルから、皮膜表面はNH4−の吸着のみだが、皮膜内部には窒化物が生成していることがわかった。この結果から、NO を含まない溶液を用いた場合でも、TiOとTiNの複合皮膜は生成することがわかった。しかし、窒化物のピークの強度を比較すると硝酸アンモニウム溶液を用いたほうが強いため、TiNを生成させる際にNO も関与しているとわかった。
前述の試料をTEMで観察した結果を図21に示す。また、EDSスペクトルを図22に示す。電子線回折により結晶構造の違いを確認したところ異なる結果となったため、上層がアノード酸化により形成した酸化皮膜、下層がTi板であると言える。
3−2−3 アンモニア水を用いた系
10vol%アンモニア水を用いて電圧による影響を検証した結果を図23に示す。15−25Vで比較を行った結果、いずれも不均一な皮膜が生成しポーラスは形成しなかった。
生成した皮膜の化学組成をXPSにより分析した結果を図24に示す。まずチタン領域のスペクトルを見ると、Ti4+のピークが現れたためTiOの生成が確認出来た。さらに窒素領域のスペクトルから、皮膜表面にはNH4+とNO の吸着が確認された。
3−3 二段階アノード酸化
3−3−1 一段階目:硫酸, 二段階目:硝酸アンモニウム
一段階目は密着性改善のために緻密膜を形成させ表面にふたをすること、二段階目は酸化皮膜内に窒化物を生成させることを目的とし、二段階アノード酸化を行った。
まず、一段階目に10vol%硫酸溶液を用い20V(図13),50V(図14),100V(図15)それぞれ室温で20min、二段階目に0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い5℃で1hのアノード酸化を行った際の電流密度−時間曲線を図25に示す。始めの電流密度が安定しない部分でバリヤー層が、電流密度が安定している時にポーラス層の形成が起こっているとわかる。
なお、図26には、試験片の外観図を示す。図27のSEM画像からわかるように一段階目に表面が不均一であった(a),(c)は、二段階目のアノード酸化後にはさらに不均一な皮膜となった。一方で、一段階目に非常に均一な皮膜が生成した(e)は二段階目のアノード酸化後でも均一に保たれていた。硝酸アンモニウム溶液を用いたアノード酸化により形成した皮膜と比較すると、皮膜が基板からはがれにくくなっていたため、基板と酸化皮膜の密着性が改善されたと言える。
二段階アノード酸化により均一な皮膜が生成した試料の断面形態の観察と、電子線回折により結晶構造を分析した結果を図28に示す。SEM画像から膜厚は約450nmであることがわかった。さらに、結晶構造の違いから上層の一段階目にすp生成した層と下層の二段階目に生成した層の二層構造の皮膜が生成していることがわかった。
なお、図29、30はEDSスペクトル図である。
試料の化学組成をXPSにより分析した結果を図31に示す。まずチタン領域のスペクトルを見ると、Ti4+のピークが現れたためTiOの生成が確認出来た。スパッタ後のスペクトルを見ると、Ti3+とTi2+の部分がブロードとなったため、皮膜内部にはTiNとTiOが生成していることが確認出来た。さらに窒素領域のスペクトルから、皮膜表面はNO とNH4+の吸着のみだが、皮膜内部には窒化物が生成していることがわかった。
3−3−2 一段階目:硫酸アンモニウム, 二段階目:硝酸アンモニウム
一段階目に2M硫酸アンモニウム溶液を用い100V,5℃,1h(図19)、二段階目に0.05M硝酸アンモニウム溶液を用い25V,5℃,1hのアノード酸化を行った結果を図32に示す。皮膜表面は均一であり、先ほどと同様に基板と酸化皮膜の密着性が改善されたと言える。断面のSEM画像から、膜厚約500nmの二層構造の皮膜が生成したことがわかった。
3−4 アノード酸化皮膜のリチウムイオン2次電池の電極としての特性評価
二段階アノード酸化により作製した試料を400℃、2hの加熱処理を施した後、電池としての特性評価を行った結果を以降に示す。
まず使用した試料の加熱処理前後のXRDパターンを図33に示す。純TiのXRDパターンと比較して、アノード酸化を行うことでアナタ−ゼ型のTiOが生成したことがわかる。加熱処理前後には大きなピークの変化は見られなかった。
一段階目に硫酸溶液、二段階目に硝酸アンモニウム溶液を用いて二段階アノード酸化を行った試料の充放電曲線とサイクル特性を図34に示す。最大放電容量17.3mAhcm−2(3.8mAhnm−3)、50サイクル後の放電容量15.4mA hcm−2(3.4mAhnm−3)となり50サイクル後の容量維持率は89.2%となった。ナノ構造を有するTiO皮膜の電池特性に関する既往の研究として、膜厚1μm(ナノチューブ)の皮膜で放電容量0.150mAhcm−2(15.0mAhμm−3)、膜厚9μm(ナノポーラス)の皮膜で放電容量0.240mAhcm−2(2.7mAhμm−3)の結果が報告されている。既往の研究結果と比較すると、膜厚が薄いにも関わらず放電容量が大きくなったため、放電容量は改善されたと言える。一因として、皮膜内にTiNが含まれていることにより導電性が改善され、TiOが効率的に利用されたためと考えられる。
次に一段階目に硫酸アンモニウム溶液、二段階目に硝酸アンモニウム溶液を用いて二段階アノード酸化を行った試料の充放電曲線とサイクル特性を図34に示す。最大放電容量60.0mAhcm−2(12.0mAhnm−3)、50サイクル後の放電容量51.7mAhcm−2(10.3mAhnm−3)となり、50サイクル後の容量維持率は86.6%となった。上述の試料と比較して、放電容量がさらに改善された。この一因として、一段階目にもNH4+を含む溶液を用いたことにより、皮膜内のTiN生成量が増加したためと考えられる。
なお、硫酸溶液を用いたアノード酸化により生成したTiO皮膜の電池特性((a) 充放電曲線 (b) サイクル特性)を図36に示す。
様々な条件でアノード酸化を行い、ナノポーラスTiO−TiN複合皮膜の創製を試み、リチウムイオン2次電池としての特性評価を行った。そこで得られた結果は以下の通りである。
(1) 硝酸アンモニウム溶液を用いて電圧・電流密度・温度による影響を検証した結果、5−35(好ましくは20−25V)または3.0−5.0mAcm−2でアノード酸化することにより細孔径約φ25nm、細孔間距離約80nmのナノポーラス皮膜が形成した。
(2) XPSの分析結果から、硝酸アンモニウム溶液を用いたアノード酸化により生成した皮膜内にTiOのほかにTiNの生成を確認できたためTiO−TiN複合皮膜が生成した。
(3) 硫酸溶液または硫酸アンモニウム溶液を用いてアノード酸化を行った結果、100 Vの際に細孔径φ50−150nm、細孔間距離約250nm、膜厚450−500 nmのナノポーラス皮膜が形成した。
(4) 一段階目に硫酸溶液または硫酸アンモニウム溶液、二段階目に硝酸アンモニウム溶液を用いて二段階アノード酸化を行った結果、密着性の良いナノポーラスTiO−TiN複合皮膜が形成した。
(5) 二段階アノード酸化により作製した試料を用いて電池としての特性評価を行った結果、最大放電容量60.0mAhcm−2(12.0mAhnm−3),容量維持率86.6%の結果が得られた。
以上のことから、バインダーフリーのリチウムイオン2次電池電極としてナノポーラスTiO−TiN複合皮膜の応用が期待できる。

Claims (8)

  1. 硫酸系電解液による第1の陽極酸化工程の後に、硝酸系電解液による第2の陽極酸化工程を行う多層多孔質陽極酸化皮膜の製造方法において、
    前記第1の陽極酸化工程において硫酸アンモニウム溶液を用い、前記第2の陽極酸化工程では硝酸アンモニウムを用いることを特徴とする多層多孔質陽極酸化皮膜の製造方法。
  2. 孔質陽極酸化皮膜は、Ti基体上に、平均細孔径が10−30nm、細孔間距離80nm以上で形成されている多孔質陽極酸化皮膜。
  3. 孔質陽極酸化皮膜は、Ti基体上に、平均細孔径が10−30nm、細孔間距離80nm以上の膜と、平均細孔径50−150nm、細孔間距離250nm以上の膜とが形成されていることを特徴とする多孔質陽極酸化皮膜。
  4. 前記多孔質陽極酸化皮膜はTiO−TiNの複合酸化膜であることを特徴とする請求項2又は3記載の多孔質陽極酸化皮膜。
  5. 前記多孔質陽極酸化皮膜は結晶質であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項記載の多孔質陽極酸化皮膜。
  6. 請求項2ないし5のいずれか1項記載の多孔質陽極酸化皮膜を有することを特徴とする電極。
  7. 前記電極はリチウムイオン2次電池用の電極である請求項6記載の電極。
  8. 請求項6又は7記載の電極を有する電池。
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