JP6394437B2 - スパッタリングターゲット - Google Patents

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本発明は、金属薄膜に積層されて、金属の反射を低減する光学機能膜をスパッタリング成膜するためのスパッタリングターゲットに関する。
近年、携帯端末装置などの入力手段として、投影型静電容量方式のタッチパネルが利用されている。このタッチパネルでは、タッチパネルの基板上に配置されたセンシング用の電極に指が近づくと、指先と電極との間に静電容量が形成される。この方式のタッチパネルでは、この容量の変化に基づいて、制御回路等によりタッチ位置を検出している。タッチ位置検出のためには、センシング用の電極が必要であり、この電極をパターニングで形成するが、透明基板の一方の面に、X方向に伸びたX電極とY方向に伸びたY電極とを設け、それらを格子状に配置する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
また、液晶表示装置やプラズマディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイでは、カラー表示を目的としたカラーフィルターが採用されている。このカラーフィルターには、赤(R)、緑(G)、青(B)のマイクロカラーフィルターが各画素に対応してマトリクス状に形成されており、これらマイクロカラーフィルター相互間に、コントラストや色純度を良くし、視野性を向上させることを目的として、ブラックマトリクス(以下、BMという)と呼ばれる黒色の部材が形成されている。
このBMには、クロム(Cr)又はクロム化合物が使用され、金属クロム単層膜からなる遮光膜や、金属クロムと酸化クロムとの積層膜、又は、Cr金属、Cr酸化物及びCr窒化物の積層膜などの低反射膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。さらには、ニッケル(Ni)とバナジウム(V)との合金、又は、NiとVとの酸化物、窒化物若しくは酸窒化物からなる遮光膜を形成すること(例えば、特許文献3を参照)、窒化タングステン(W)膜を遮光膜として形成すること(例えば、特許文献4を参照)も提案されている。
一方、太陽電池パネルにおいて、ガラス基板等を介して太陽光が入射される場合、その反対側には、太陽電池の裏面電極が形成されている。この裏面電極として、モリブデン(Mo)、銀(Ag)などによる金属膜が用いられる。この様な太陽電池パネルを裏面側から見たとき、その裏面電極である金属膜がそのまま見えてしまうと、金属光沢を呈しているため、製品として見栄えが悪い。そこで、通常、この裏面電極の保護も兼ねて、黒色のバックシートを貼り付けるなどして、その金属光沢を隠している。
特開2013−235354号公報 特開2002−182190号公報 特開2001−234267号公報 特開2013−079432号公報
従来のタッチパネルにおけるタッチ位置を検出するための電極には、ITO薄膜が用いられていたが、タッチパネルの大面積化に伴って、ITO薄膜を用いたのでは、抵抗が高くなり、また、検出精度も低下するという問題があった。そこで、近年では、ITO薄膜の代わりに、低抵抗の金属薄膜をメタル配線として用いることが提案されている。しかしながら、この金属薄膜を用いたメタル配線は、外部光を反射するため、配線パターンの金属光沢がパネル外部から見えてしまい、タッチパネルを使いづらくしているという問題がある。
そこで、本発明は、タッチパネルにおける金属膜の配線に隣接するよう成膜して、タッチパネル画面の配線パターンの金属光沢を低減する膜(以下、光学機能膜と称する)、及び、この光学機能膜をスパッタリング成膜するためのスパッタリングターゲットを提供することを目的とする。
本発明者らは、Cu酸化物膜や、Fe酸化物膜などは、可視光領域の外部光に対する光吸収特性を有し、言い換えれば、外観が黒色を呈することに着目した。即ち、Cu又はFeの酸化物膜を金属膜の配線に隣接して成膜することにより、タッチパネル画面の配線パターンの金属光沢を低減できることが分かった。
ところで、この酸化物膜をタッチパネルの配線上に形成する以上、生産性を考慮するならば、タッチパネル基板上に成膜された金属膜の表面に、この酸化物膜を成膜した後に、配線パターンを形成すると効率がよい。この配線パターン化では、通常、エッチング液により、パターンマスクを介して、金属膜と酸化物膜とがエッチングされる。ここで、Cu又はFeの酸化物膜は、エッチング液に対するエッチング性に優れており、さらに、信頼性(耐薬品性、耐候性)にも優れている。なお、上記のエッチング性とは、金属膜と酸化物膜とが整合してエッチングされることであり、エッチング速度、オーバーエッチングなど、パターン化において支障がないことが好ましい
しかしながら、単純なCu又はFeの酸化物膜を用いた場合、それ自体の表面で、外部光に対する反射がおこることが判明した。これは、配線パターンの金属光沢を低減する上で、好ましいことではない。
そこで、Cu又はFeの酸化物膜の反射特性を低減するには、Ni、Mnを添加すると有効であるという知見が得られたので、この光学機能膜のスパッタリング成膜に用いるスパッタリングターゲットの合金成分として、Cu及びFeのいずれか1種又は2種に、Ni及びMnのいずれか1種又は2種を加えておき、この光学機能膜をスパッタリング成膜すると、Cu及びFeのいずれか1種又は2種と、Ni及びMnのいずれか1種又は2種とを含む酸化物による光学機能膜が得られ、この光学機能膜によれば、エッチング性、信頼性、反射特性のすべての条件を満たしており、タッチパネル画面の配線パターンの金属光沢を低減するのに、好適である。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
(1)本発明のスパッタリングターゲットは、Ni及びMnのいずれか1種又は2種の合計で5.0〜14.3質量%を含有し、残部がFeである金属合金からなることを特徴とする。
(2)前記(1)のスパッタリングターゲットは、残部がさらにCuを含み、Cu及びFeの合計で85.7〜95.0質量%を含有した金属合金からなることを特徴とする。
(3)前記(2)のスパッタリングターゲットは、Feが1.8〜2.3質量%含有することを特徴とする。
以上の様に、本発明のスパッタリングターゲットでは、Cu及びFeのいずれか1種又は2種の合計で85〜95質量%を含有し、Ni及びMnのいずれか1種又は2種の合計で5〜15質量%を含有した金属合金からなることを特徴として、エッチング性、反射特性、信頼性に優れた光学機能膜をスパッタリング成膜できるようにした。
上述した本発明のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング成膜された光学機能膜は、Cu及びFeのいずれか1種又は2種の合計で85〜95質量%を含有し、Ni及びMnのいずれか1種又は2種の合計で5〜15質量%を含有した酸化物からなる。ここで、スパッタリングにより成膜する場合、光学機能膜の金属成分の組成比は、スパッタリングターゲットの金属成分の組成比とほぼ同様の構成になる。本発明のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング成膜するときには、アルゴン等の希ガスに酸素を加えてスパッタリングが行われる。
次に、本発明の光学機能膜の適用例について説明する。上述した太陽電池パネルの場合には、太陽電池における裏面電極を保護し、その金属光沢を隠すために、本発明の光学機能膜を適用することになるので、ガラス基板/裏面電極(金属膜)/光学機能膜の積層構造となり、光学機能膜は、金属膜に隣接して配置される。また、上述したタッチパネルの場合には、センシング用電極は、透明基板上にパターニング形成され、透明基板の一方の面に、格子状に配置される。このタッチパネルに、本発明の光学機能膜を適用すると、透明基板/光学機能膜/電極(金属膜)の積層構造となり、光学機能膜は、金属膜に隣接して配置される。さらに、配線付フィルムなどの場合には、透明基板(フィルム)/光学機能膜/配線(金属膜)/光学機能膜の積層構造となり、光学機能膜は、金属膜を挟むように隣接して設けられる。
なお、本発明の光学機能膜形成用スパッタリングターゲットは、溶解鋳造による金属合金で構成されたが、ホットプレスによる金属合金のターゲットとしてもよく、また、本発明の光学機能膜における各金属元素を含有したこの酸化物スパッタリングターゲットを用いて、本発明の光学機能膜をスパッタリング成膜するときには、アルゴン等の希ガスによりスパッタリングを行うとよい。
以上の様に、本発明によるスパッタリングターゲットは、Cu及びFeのいずれか1種又は2種:85〜95質量%と、Ni及びMnのいずれか1種又は2種:5〜15質量%とを含有した金属からなるので、このスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング成膜すると、エッチング性、隠ぺい性(配線パターンの金属光沢低減)、信頼性のいずれも満足した光学機能膜が得られる。そのため、タッチパネルに装着されるタッチ画面の見栄えも良くなり、しかも、タッチパネルの生産性向上に寄与する。さらに、本発明の光学機能膜は、フラットパネルディスプレイにおけるブラックマトリクス(BM)の黒色の部材としても利用でき、太陽電池パネルの裏面電極の保護も兼ねた黒色バックシートの代わりに設けることも可能であり、それらの金属光沢を隠ぺいするのに好適である。
つぎに、この発明の光学機能膜形成用スパッタリングターゲット及びその成膜された光学機能膜について、以下に、実施例により具体的に説明する。
〔実施例〕
先ず、光学機能膜形成用スパッタリングターゲットを製造するため、粒状のCu、Fe、Ni、及び、Mnを、表1及び表2に示されたターゲット組成比になるように秤量し、秤量された各原料を黒鉛るつぼの中に投入、高周波加熱炉で1300℃まで真空中で加熱溶解させ、所定サイズの黒鉛型に投入した。その後放冷し室温まで冷却し、参考例1〜15及び実施例16〜48の金属合金鋳造体を作製した。この参考例1〜15及び実施例16〜48の金属合金鋳造体を、所定形状に機械加工し、バッキングプレートを貼着して、参考例1〜15及び実施例16〜48のスパッタリングターゲットを作製した。
〔比較例〕
上記実施例と比較するため、実施例の場合と同様にして、表3に示されるターゲット組成比を有する比較例1〜19のスパッタリングターゲットを作製した。比較例1〜19の場合には、金属元素のいずれかの含有量が、実施例の場合の範囲外となっている。
次に、上記で製造された実施例及び比較例のスパッタリングターゲットについて、ICPにより金属成分組成の分析を行った結果を表1〜3に示した。
参考例1〜15、実施例16〜48及び比較例1〜19のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング成膜した光学機能膜について、ICPにより金属成分組成の分析を行った結果を表4〜6に示した。なお、膜が酸化物であることを電子線マイクロアナライザー(EPMA)で確認した。
<成膜>
上記実施例及び比較例のスパッタリングターゲットを用いて、以下の成膜条件で、スパッタリング成膜を行った。
・電源:直流電源
・電力:600W(Ag膜のみ、200W)
・ガス圧:0.2Pa
・ガス流量:光学機能膜の場合 Ar:34sccm O:16sccm
Cu、Al、Ag、Mo膜の場合 Ar:50sccm
・TS距離:70mm
・基板:ガラス基板(Eagle XG)
・基板温度:室温
・基板サイズ:20mm角
・厚さ:50nm
さらに、参考例1〜15、実施例16〜48及び比較例1〜19のスパッタリングターゲットを用いて金属膜上にスパッタリング成膜で積層した光学機能膜(積層膜)について、平均反射率と、恒温恒湿試験の前後における反射率変化の最大値を計測した。
<反射率の測定>
上述と同様の成膜条件で、スパッタリング成膜を行った。なお、ガラス基板(Eagle XG)上に、厚さ:50nmの酸化物膜(光学機能膜)、厚さ:200nmの銅、アルミニウム、銀又はモリブデンのいずれかの膜の順に、積層成膜した。なお、実施例46には、Alを、実施例47には、Agを、実施例48には、Moを、それ以外の実施例及び比較例には、Cuをそれぞれ用いて、金属膜とした。金属膜は、メタル配線用であり、その成膜には、それぞれの金属スパッタリングターゲットを用いた。なお、この金属膜に用いた金属を、表4〜6の「使用金属膜」欄に示した。
次に、上記のようにガラス基板上に形成された積層膜について、反射率を測定した。この測定では、分光光度計(日立製U4100)を用い、ガラス基板側から400〜800nmの波長において測定した。そして、同様に作製した4サンプルで測定し、得られた測定値を平均して、平均反射率を求めた。その測定結果が、表4〜6の「平均反射率(%)」欄に示されている。
<試験前後の反射率変化の測定>
さらに、上記のようにガラス基板上に形成された積層膜について、以下に示す試験条件で、恒温恒湿試験を行った。
・温度:85℃
・湿度:85%
・保持時間:250時間
この恒温恒湿試験後に、上述した手法で、上記波長範囲内の反射率を測定した。そこで、試験前後における400、500、600、700、800nmの各波長における反射率の差を求め、その絶対値を反射率変化とした。上記5波長のうち反射率変化の最大値について、表4〜6の「反射率変化最大値(%)」欄に示した。
<エッチング速度の測定>
反射率測定時と同様の手法で、ガラス基板上に形成された50nmの光学機能膜について、以下に示すエッチング条件で、エッチング試験を行った。エッチング試験は光学機能膜が溶けきるまでの時間を計測し、エッチング速度を算出した。その結果が、表4〜6の「エッチング速度(nm/sec)」欄に示されている。
・方法:ディップ法
・エッチング液:SEA2(関東化学社製)
・液温:40℃






以上の結果によれば、実施例16〜48のスパッタリングターゲットのいずれにおいても、Cu及びFeのいずれか1種又は2種:85〜95質量%と、Ni及びMnのいずれか1種又は2種:5〜15質量%とを含有しており、これらのスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング成膜された積層膜は、いずれも、平均反射率が30%以下を示しており、膜自体による外部光の反射に起因する配線パターンの金属光沢を低減できることが分かった。また、恒温恒湿試験の前後における反射率変化も小さく、信頼性があることが確認された。さらに、上記光学機能膜に対するエッチング速度は、積層成膜された金属膜と同程度の速さであることが確認され、積層成膜された光学機能膜と金属膜とを同時にパターニングするうえで、エッチングに何ら支障がないことが分かった。
従って、実施例16〜48のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング成膜された光学機能膜は、隠ぺい性(配線パターンの金属光沢低減)、信頼性のいずれもの特性を備えていることが確認された。

一方、比較例1〜3、8〜10、14〜16のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング成膜された光学機能膜は、いずれも、Ni,Mnの含有量が5質量%より低く、平均反射率が30%を超えているため、膜自体による光沢があり、隠ぺい性の点で劣っている。比較例4〜7、11〜13、17〜19のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング成膜された光学機能膜は、いずれも、Ni,Mnの含有量が15質量%を超えるため、エッチング速度が極めて遅く、エッチング性の点で劣っている。
以上の様に、Cu及びFeのいずれか1種又は2種の合計で85〜95質量%を含有し、Ni及びMnのいずれか1種又は2種の合計で5〜15質量%を含有した金属合金からなるスパッタリングターゲットを用いてアルゴンに酸素を加えてスパッタリング成膜された金属合金酸化物の光学機能膜は、エッチング性、隠ぺい性(配線パターンの金属光沢低減)、信頼性のいずれも満足していることが確認された。
なお、本発明を、スパッタリングターゲットとして利用するためには、面粗さ:5.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下、粒径:20μm以下より好ましくは10μm以下、金属系不純物濃度:0.1原子%以下、より好ましくは0.05原子%以下、抗折強度:50MPa以上、より好ましくは100MPa以上であることが好ましい。
また、本発明の技術範囲は上記実施形態および上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記実施形態および上記実施例では、ターゲットの作製を溶解鋳造によって行っているが、他の方法としてホットプレス法やHIP法(熱間等方加圧式焼結法)等を採用しても構わない。
また、基材はガラス以外の金属やフィルム等を採用しても構わない。



Claims (3)

  1. Ni及びMnのいずれか1種又は2種の合計で5.0〜14.3質量%を含有し、残部がFeである金属合金からなることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  2. 残部がさらにCuを含み、Cu及びFeの合計で85.7〜95.0質量%を含有した金属合金からなることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット
  3. Feが1.8〜2.3質量%含有することを特徴とする請求項2に記載のスパッタリングターゲット
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