JP6394333B2 - 潤滑油組成物及び冷凍機システム - Google Patents
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潤滑油組成物の粘度指数を向上させるため、粘度指数向上剤と呼ばれる添加剤が潤滑油組成物に配合されることがある。
式(2)中、n及びpは、それぞれ1以上の整数である。
式(3)中、qは、1以上の整数である。
したがって、絶縁性の高い合成油系基油を含有する潤滑油組成物においては、その使用しやすさを高めるため、粘度指数の向上が望まれている。
非特許文献1の粘度指数向上剤は、炭化水素系化合物の含有量が高い鉱物油系基油を含有する潤滑油組成物には溶解しやすいが、高い絶縁性が求められる潤滑油組成物に用いられる、酸素原子の含有量が高い合成油系基油を含有する潤滑油組成物には溶解しにくい。そのため、合成油系基油を含有する潤滑油組成物に非特許文献1の粘度指数向上剤を用いても、粘度指数の向上は望めない。
また、カーエアコン等の基油として用いられるポリプロピレングリコールを含有する潤滑油組成物は、粘度指数は高いものの、絶縁性が低い。そのため、高い絶縁性が求められる、冷凍機やルームエアコン等の電化製品中の冷媒に混合される潤滑油組成物としては使用しにくい。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[7]の態様を有する。
前記酸素含有合成油系基油(A)がポリビニルエーテル及びポリオールエステルのいずれか一方又は両方であって、
前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の質量平均分子量が20,000以上32,000以下であり、
前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)がグリセリンのプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコール、又はペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物である、潤滑油組成物。
[2]前記酸素含有合成油系基油(A)の酸素原子含有量が15〜30質量%である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[4]冷凍機用である、[1]〜[3]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[5][4]に記載の潤滑油組成物を用いた冷凍機システム。
「単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体に基づく単位を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
本発明の潤滑油組成物は、酸素含有合成油系基油(A)と水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)とを含有する。
酸素含有合成油系基油(A)は、分子中に酸素原子を有する合成油系基油である。
酸素含有合成油系基油(A)中の酸素原子含有量は、15〜30質量%であることが好ましく、18〜22質量%がより好ましい。
酸素含有合成油系基油(A)中の酸素原子含有量が前記下限値以上であれば、基油と冷媒との相溶性が良好であり、一方、前記上限値以下であれば、基油の安定性、絶縁性が良好である。
本明細書において、酸素含有合成油系基油(A)の酸素原子含有量は、NMRにより推定される化学構造から算出して求められる。
酸素含有合成油系基油(A)の具体的な化合物としては、例えば、エーテル系潤滑油基油、エステル系潤滑油基油等が挙げられる。
エーテル系潤滑油基油としては、ポリビニルエーテル、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等)等が挙げられる。
エステル系潤滑油基油としては、ポリオールエステル、ヒンダードエステル、トリグリセライド等が挙げられる。
中でも、低温特性、絶縁性、相溶性の点から、ポリビニルエーテル及びポリオールエステルのいずれか一方又は両方が好ましい。
ポリビニルエーテルとしては、例えば、下式(4)で表される単位を有する化合物が挙げられる。
R5は、炭素数2から4までの二価の炭化水素基が好ましく、炭素数2から3までの二価の炭化水素基がより好ましく、炭素数2の二価の炭化水素基が最も好ましい。
R6は、炭素数1から6までの炭化水素基が好ましく、炭素数1から4までの炭化水素基がより好ましく、炭素数1の炭化水素基が最も好ましい。
rは、同一分子内の平均値が、0から4が好ましく、0から2がより好ましく、0が最も好ましい。
ビニルエーテル単量体に基づく単位は、1種を単独で有していてもよく、2種以上を組合せて有していてもよい。
他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α−メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。
ビニルエーテル単量体/他の単量体の共重合組成(モル比)が前記下限値以上であれば、冷媒との相溶性に優れ、一方、前記上限値以下であれば、潤滑性に優れる。
ポリビニルエーテルの質量平均分子量が前記下限値以上であれば、基油の粘度が保持されやすくなり、一方、前記上限値以下であれば、低温流動性が保持されやすくなる。
多価アルコールの水酸基数は、2以上であり、2〜6が好ましく、3〜4がより好ましく、4が最も好ましい。
有機酸は、潤滑性の点からは、炭素数1以上が好ましく、炭素数3以上がより好ましく、炭素数4以上がさらに好ましく、炭素数5以上が最も好ましい。また、冷媒との相溶性の点からは、炭素数24以下が好ましく、炭素数18以下がより好ましく、炭素数12以下さらに好ましく、炭素数9以下が最も好ましい。
有機酸中の炭素鎖における炭素間の結合は、不飽和結合を有していてもよい。
また、炭素数が3以上である場合、有機酸中の炭素鎖は直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。潤滑性の点からは直鎖状が好ましく、低温流動性の点からは分岐状が好ましい。
ポリオールエステルの好適例としては、下式(5)で表される、ペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸とのエステルが挙げられる。
酸素含有合成油系基油(A)の含有量が前記下限値以上であれば、潤滑性や絶縁性に優れ、一方、前記上限値以下であれば、粘度指数や安定性に優れる。
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)は、水酸基含有化合物にアルキレンオキサイドを付加した化合物である。
アルコールの水酸基数は、1から8が好ましく、1から4がより好ましく、1から2が最も好ましい。
水酸基含有化合物の中でも、水、プロピレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが好ましい。
アルキレンオキサイドは、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)中に1種が単独で付加されていてもよく、2種以上が組合せられて付加されていてもよい。
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の質量平均分子量が前記下限値以上であれば、潤滑油組成物の粘度指数がより高くなり、一方、前記上限値以下であれば、潤滑油組成物製造時の混合性が容易となる。
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)は、潤滑油組成物中に1種が単独で含有されていてもよく、2種以上が組合せて含有されていてもよい。
塩基性触媒としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム等のアルカリ金属触媒やアミン化合物やフォスファゼン等の有機塩基性触媒が挙げられる。酸触媒としては、三フッ化ホウ素やトリス( ペンタフルオロフェニル)ボラン等のルイス酸触媒が挙げられる。金属触媒としては、チタン系や複合金属シアン化物錯体触媒等が挙げられる。
中でも、他の触媒では製造困難である質量平均分子量10,000以上のアルキレンオキサイド付加物(B)が製造可能な点から、複合金属シアン化物錯体触媒が好ましい。
アルキレンオキサイド付加物(B)の含有量が前記下限値以上であれば、粘度指数の向上が図れ、一方、前記上限値以下であれば、絶縁性の低下が抑えられる。
本発明の潤滑油組成物は、特に冷凍機システムを適正に作動させ、かつ高い効率を確保するため、40℃における動粘度が5〜300mm2/秒が好ましく、7〜250mm2/秒がより好ましく、32〜200mm2/秒が最も好ましい。
潤滑油組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)以外に、酸化防止剤、極圧剤、摩耗防止剤、脱水剤、極圧剤、防錆剤、消泡剤、分散剤、難燃剤、熱安定剤等のその他の添加剤を含有していてもよい。
これらの中でも、冷凍機システム用の潤滑油組成物に含有させる添加剤としては、酸化防止剤、脱水剤、極圧剤、消泡剤、熱安定剤が好ましい。
脱水剤の具体例としては、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類や、アジピン酸グリシジルエステル、2−エチルヘキサン酸グリシジルエステル、イソノナン酸グリシジルエステル、ネオデカン酸グリシジルエステル等のグリシジルエステル類や、エポキシ化ステアリン酸メチル等のエポキシ化脂肪酸モノエステル類や、エポキシ化大豆油等のエポキシ化植物油が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤が挙げられる。
熱安定剤としては、ジメチルホスファイト、ジイソプロピルフォスファイト、ジフェニルフォスファイト等のホスファイト化合物、トリフェノキシホスフィンサルファイド、トリメチルホスフィンサルファイド等のホスフィンサルファイド系化合物が挙げられる。
その他の添加剤の合計含有量が前記下限値以上であれば、各添加剤による効果が得られやすくなり、一方、前記上限値以下であれば、潤滑性能や粘度指数の低下を防止できる。
潤滑油組成物の用途は、特に限定されない。具体的には、冷凍機油、切削油、研削油、圧延油、絞り加工油、打ち抜き油、引き抜き油、プレス油、鍛造油、摺動面油、作動油、水−グリコール系作動液、電気絶縁油、ガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油、エアーコンプレッサー油、タービン油、ギヤー油、圧縮機油、真空ポンプ油、軸受け油、熱媒体油、ミスト油、ロックドリル油、ブレーキ油、トルクコンバーター油等の様々な用途に用いることができる。
中でも、潤滑油組成物は冷凍システムに用いる冷媒との相溶性が良好な点で、点冷凍機油として用いられるのが好ましい。具体的な冷凍機システムとしては、カーエアコン、ガスヒートポンプ、住宅用及び業務用エアコン、冷蔵庫、冷凍倉庫、自動販売機、ショーケース等が挙げられる。
潤滑油組成物は、酸素含有合成油系基油(A)に、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)、及び必要によりその他の添加剤を、所望の混合比となるように混合して得られる。
酸素含有合成油系基油(A)と水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の質量混合比は99:1〜65:35が好ましく、97:3〜75:25がより好ましく、95:5〜85:15が最も好ましい。酸素含有合成油系基油(A)に対する水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の混合量が前記質量混合比における下限値以上であれば、粘度指数の向上が図れ、一方、上限値以下であれば、絶縁性の低下が抑えられる。
冷凍機システムは、上述の潤滑油組成物を用いたものである。
冷凍機システムにおいて、潤滑油組成物は冷媒に混合されて用いられる。
ハイドロフルオロオレフィン系化合物としては、炭素数2〜3のハイドロフルオロオレフィン系化合物が好ましく、トリフルオロエチレン等のエチレンのフッ化物及び各種プロペンのフッ化物が挙げられるが、プロペンのフッ化物がより好ましい。このプロペンのフッ化物としては、例えば、3,3,3−トリフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペン等を挙げることができるが、特に、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)が好ましい。
ハイドロフルオロカーボン系化合物は、上記アルカンのフッ化物を、さらにフッ素以外のハロゲン原子でハロゲン化したものであってもよく、例えば、トリフルオロヨードメタン(CF3I)等が挙げられる。
基油A−1:ポリビニルエーテル共重合体(出光興産製「ダフニーハーメチックオイル(登録商標)FV68S」、エチルビニルエーテル/イソブチルビニルエーテル(9/1(モル比))、酸素原子含有量21.6%、質量平均分子量720)。
基油A−2:ポリオールエスエル(JX日鉱日石エネルギー株式会社製「Ze−GLESRB68」、ペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸1/1(モル比)のエステル、酸素原子含有量19.2%)。
ポリオールB−2:グリセリンのプロピレンオキサイド付加物(質量平均分子量25,000)。
ポリオールB−3:ポリプロピレングリコール(質量平均分子量20,000)。
ポリオールB−4:メタノールの、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの付加物であり、末端の水酸基がメチルエーテル化されたもの(質量平均分子量1,200)。
ポリオールB−6:グリセリンの、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの付加物(平均分子量3,800)。
ポリオールB−7:ポリプロピレングリコール(質量平均分子量1,000)。
メタクリレートコポリマーB’:三洋化成工業社製「アクルーブ(登録商標)504」。
(溶解性評価)
酸素含有合成油系基油(A)に水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)又はメタクリレートコポリマーB’が溶解しているか否かを、目視により確認した。
水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)又はメタクリレートコポリマーB’が均一に溶解している場合は「溶解」とした。均一に溶解していない場合は「不溶」とした。
ウベローデ型動粘度計(柴田科学社製)を用いて、40℃又は100℃における動粘度(mm2/秒)を測定した。
測定方法はJIS K 2283に準じた。
粘度指数は、JIS K 2283 6.粘度指数算出方法に記載の方法より計算した。
ハイレスタUP(三菱化学アナリテック社製)を用いて、体積抵抗率(TΩ・cm)を測定した。
測定方法はJIS C2101に準じた。
酸素含有合成油系基油(A)に対して水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を表1に示す質量比で添加、混合して、例1〜14の潤滑油組成物を得た。例2、3、5、8、9、11及び13は実施例であり、例1、4、6、7、10、12及び14は比較例である。
ポリオールB−7のみを含有する潤滑油組成物を比較例1とした。
ポリオールB−4のみを含有する潤滑油組成物を比較例2とした。
酸素含有合成油系基油(A)に対してメタクリレートコポリマーB’を表1に示す質量比で添加、混合して、比較例3、4の潤滑油組成物を得た。
基油A−1のみを含有する潤滑油組成物を比較例5とした。
基油A−2のみを含有する潤滑油組成物を比較例6とした。
また、比較例3、4では、メタクリレートコポリマーB’が酸素含有合成油系基油(A)に均一に溶解しなかった。そのため、動粘度測定および体積抵抗率の評価を行わなかった。
また、酸素含有合成油系基油(A)のみを含有する比較例5、6の潤滑油組成物は、体積抵抗率が高いものの、粘度指数が低かった。
一方、水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)を用いた例2、3、5、8、9、11及び13の潤滑油組成物は、粘度指数が高く、さらに、体積抵抗率が高かった。
Claims (5)
- 酸素含有合成油系基油(A)と水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)とを含有し、
前記酸素含有合成油系基油(A)がポリビニルエーテル及びポリオールエステルのいずれか一方又は両方であって、
前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)の質量平均分子量が20,000以上32,000以下であり、
前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)がグリセリンのプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコール、又はペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド付加物である、潤滑油組成物。 - 前記酸素含有合成油系基油(A)の酸素原子含有量が15〜30質量%である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
- 前記水酸基含有化合物のアルキレンオキサイド付加物(B)が水酸基含有化合物のプロピレンオキサイド付加物である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
- 冷凍機用である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
- 請求項4に記載の潤滑油組成物を用いた冷凍機システム。
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