[画像形成装置の全体構成]
図1(a)は、実施例1で用いる画像形成装置の全体構成を示す概略構成図である。図1(a)に示す画像形成装置は、画像形成装置に着脱可能な複数のカートリッジ6Y、6M、6C、6Kを備えており、図中、左側から順に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナーを有するカートリッジである。更に、画像形成装置は、スキャナ部8Y、8M、8C、8K、中間転写ベルト9、一次転写ローラ7Y、7M、7C、7K、二次転写ローラ12、定着器14、給紙ローラ10、レジストレーションローラ11、残トナー帯電ローラ13を備えている。なお、図中の符号末尾の添え字Y、M、C、Kは、トナーの色を表し、レジストレーションローラ11は、以下、レジストローラ11という。また、画像形成部である各カートリッジ6Y、6M、6C、6Kの構成は同一であり、以下の説明では、特定のカートリッジを指す場合を除き、Y、M、C、Kの添え字は付さないこととする。以下、画像形成動作に従って、各部の構成について説明する。
各カートリッジ6は、それぞれ感光ドラム1、帯電ローラ2、現像ローラ3、トナーを収容する現像器4、感光ドラム1上に残ったトナーを除去し回収するクリーニング手段であるクリーナブレード26、残トナー容器5を有している。像担持体である感光ドラム1は、不図示の駆動モータにより、画像形成動作に応じて図中、矢印方向(反時計回り方向)に回転される。感光ドラム1への露光光は、各カートリッジ6に対応して設けられたスキャナ部8から出射され、感光ドラム1の表面を選択的に露光することにより、感光ドラム1上に静電潜像が形成される。帯電ローラ2は、静電潜像の形成に先立ち、直流電圧が印加されることにより、各ステーションの感光ドラム1表面を均一な電位に帯電する。現像ローラ3は、感光ドラム1の回転に伴って従動回転しながら、直流電圧が印加されることにより、感光ドラム1上に形成された静電潜像を、現像器4に収容されたトナーにより現像し、トナー像を形成する。
一次転写ローラ7は、各カートリッジ6の感光ドラム1に対向して設けられ、直流電圧が印加されることにより、各カートリッジ6の感光ドラム1上に形成されたトナー像が中間転写ベルト9上に多重転写される。中間転写体である中間転写ベルト9は、感光ドラム1に当接しており、カラー画像形成時に感光ドラム1の回転に伴って図中、矢印方向(時計回り方向)に回転し、感光ドラム1上に形成されたトナー像が転写(一次転写)される。そして、中間転写ベルト9は、後述する転写材19を転写部である二次転写ローラ12と共に挟持搬送することにより、転写材19に中間転写ベルト9上のトナー像を転写(二次転写)する。二次転写ローラ12は、中間転写ベルト9の回転に伴って図中、矢印方向(反時計回り方向)に回転する。そして、二次転写ローラ12に直流電圧が印加されることにより、給紙カセット18から給紙され、レジストローラ11から搬送された転写材19に対して、中間転写ベルト9上のトナー像が転写される。
クリーナブレード26は、中間転写ベルト9に転写されずに感光ドラム1上に残ったトナーを掻きとることで、感光ドラム1をクリーニングし、残トナー容器5は、クリーナブレード26によって掻きとられたトナーを蓄える。また、転写材19に転写されずに中間転写ベルト9上に残留したトナーは、残トナー帯電ローラ13により帯電され、感光ドラム1と中間転写ベルト9が当接する一次転写部で、感光ドラム1に静電的に逆転写され、残トナー容器5の何れかに回収される。一次転写部では、残留トナーを何れかの感光ドラム1に逆転写すると共に、感光ドラム1上のトナー像は中間転写ベルト9へ一次転写される。
レジストレーションセンサ20(以下、レジセンサ20という)は、感光ドラム1から中間転写ベルト9上に転写されたトナー画像と、給紙カセット18から給紙された転写材19との同期を取るために設けられている。検知手段であるレジセンサ20は、二次転写ローラ12の転写材19の搬送方向の上流側に配置されている。給紙カセット18から給紙された転写材19の先端がレジセンサ20で検知されると、転写材19の搬送は一時停止される。そして、二次転写ローラ12において、中間転写ベルト9上に転写されたトナー画像が転写材19の所定の位置に転写されるタイミングになると、転写材19の搬送が再開される。定着器14は、加圧ローラ15及び定着ローラ16を有し、定着ローラ16内には不図示のヒータと不図示のサーミスタが設けられている。不図示のサーミスタは、定着ローラ16の表面温度を検知し、検知結果に基づいてヒータへの電力供給制御が行われる。中間転写ベルト9からトナー像が転写された転写材19は、定着器14に導入され、未定着のトナー像が加熱・加圧され、転写材19に定着される。
定着排紙センサ21は、転写材19が定着器14から搬送されるのを検知する。反転フラッパ22は、転写材19の搬送方向を変更する。反転フラッパ22の位置が、図1(a)の実線で示す位置にある場合には、反転部である排紙ローラ対17により、転写材19は不図示の排紙トレイに排紙する方向に搬送される。一方、反転フラッパ22の位置が、図1の点線で示す位置にある場合には、排紙ローラ対17に挟持された転写材19が、搬送ローラ対23、24が設けられた反転経路25に搬送される。従って、転写材19の両面に画像形成する場合には、1面目の画像形成が終了した転写材19は排紙ローラ対17に搬送され、転写材19の搬送方向の後端が反転フラッパ22を通過すると、転写材19の搬送が停止される。そして、転写材19の2面目の画像形成を行うために、反転フラッパ22の向きを図1の点線で示す向きに変更した後、排紙ローラ対17を逆回転させることにより、転写材19は反転経路25に搬送される。なお、排紙ローラ対17、搬送ローラ対23、24、反転経路25は、1面目に画像が形成された転写材を反転させ、再度、二次転写ローラ12に搬送する搬送部を構成する。
[画像形成装置のシステム構成]
次に、画像形成装置のシステム構成について説明する。図1(b)は、画像形成装置のシステム構成を説明するためのブロック図である。図1(b)において、画像形成装置は、コントローラ部201及びエンジン制御部202を備えている。コントローラ部201は、外部装置であるホストコンピュータ200、及びエンジン制御部202と相互に通信が可能となっている。エンジン制御部202は、ビデオインタフェース部203、CPU205、露光制御部208、駆動制御部209、高圧制御部210、定着制御部211、センサ入力部212から構成されている。CPU205は、エンジン制御部202を制御するためにCPU205が実行するプログラムやデータを記憶したROM206、及び一時的なデータの記憶に用いるRAM207を備えている。また、CPU205は、時間を測定するタイマ機能を有している。
外部装置であるホストコンピュータ200は、画像形成装置のコントローラ部201に印字条件、印字画像の画像データ、印字指令を送信する。コントローラ部201は、ホストコンピュータ200から受信した画像データを画像形成装置に必要な露光データに変換すると共に、受信した印字条件を基に転写材毎の印字予約情報を作成する。そして、コントローラ部201は、ビデオインタフェース部203を介して、CPU205へ印字予約指示を送信する。印字予約情報とは、例えば転写材19の供給元を示す給紙口(給紙カセット)、転写材サイズ、印字モード等のことである。更に、コントローラ部201は、画像データから露光データへの変換が完了すると、印字開始指示をCPU205へ送信する。CPU205は、コントローラ部201から印字開始指示を受信すると、コントローラ部201に、露光データ出力の基準タイミングとなる/TOP信号を出力し、印字予約情報に従って、印字動作を開始する。
エンジン制御部202の駆動制御部209は、感光ドラム1、一次転写ローラ7、中間転写ベルト9、給紙ローラ10、レジストローラ11、定着器14、排紙ローラ対17などの駆動を制御する。駆動制御部209により制御されるメインモータ204は、感光ドラム1、一次転写ローラ7、中間転写ベルト9を駆動するモータであり、DCブラシレスモータを使用している。CPU205は、駆動制御部209を介して、メインモータ204の駆動制御と目標回転速度の設定を行う。駆動制御部209は、CPU205から駆動指示を受けると、メインモータ204が駆動を開始するように、モータコイルに電流を流してメインモータ204を回転させると共に、メインモータ204の回転速度を監視し、目標回転速度となるように速度調整する。
露光制御部208は、CPU205からの指示に応じて、スキャナ部8の不図示のスキャナモータの回転や、光量の補正を行い、コントローラ部201から受信する露光データに基づいて感光ドラム1への光の照射を行う。高圧制御部210は、画像形成装置内の各部材、例えば帯電ローラ2、現像ローラ3、一次転写ローラ7、二次転写ローラ12へ直流電圧を印加する電源の制御を行う。定着制御部211は、不図示のサーミスタによって定着ローラ16の表面温度を検知し、検知結果に基づいて、不図示のヒータへの電力供給の制御を行う。センサ入力部212は、レジセンサ20及び定着排紙センサ21の検知情報を取得し、CPU205に出力する。
[両面プリント動作]
図2(A)は、両面プリントを行ったときの転写材19の挙動や、中間転写ベルト9の動作を示した図である。図2(A)の上側の図2(A)(i)〜(vi)は、両面プリント動作中の転写材19の搬送状態を示した図であり、一方、図2(A)の下側の図2(A)(I)〜(IV)は、中間転写ベルト9上のトナー像が移動する様子を示した図である。
まず、図2(A)(i)〜(vi)について説明する。両面プリント時には、給紙カセット18から給紙された転写材19は、レジストローラ11へと搬送され(図2(A)(i))、転写材19の1面目の画像形成(中間転写ベルト9上のトナー像の転写材19への転写)が行われる(図2(A)(ii))。そして、転写材19の搬送方向の後端がレジセンサ20を通過する(図2(A)(iii))。その後、転写材19の搬送方向の後端が排紙ローラ対17に到達すると、反転フラッパ22は転写材19を反転経路25に搬送するため、反転フラッパ22の向きを変更する(図2(A)(iv))。排紙ローラ対17を逆回転させることにより、転写材19は反転されて、反転経路25へ搬送され(図2(A)(v))、転写材19の搬送方向の先端が、再度レジセンサ20に到達する(図2(A)(vi))。図中の時間T1は、転写材19の搬送方向の後端がレジセンサ20を通過してから(図2(A)(iii))、反転された転写材19の搬送方向の先端がレジセンサ20に到達する(図2(A)(vi))までの時間を示している。時間T1は、転写材19が搬送される両面搬送パス(レジセンサ20〜排紙ローラ対17〜搬送ローラ対23〜搬送ローラ対24〜レジセンサ20の搬送路を指す)の長さによって決まる。時間T1は、転写材19の搬送方向の長さ(以下、転写材サイズともいう)によらず、一定である。
続いて、図2(A)(I)〜(IV)について説明する。図2(A)(I)は、転写材19の1面目に対する/TOP信号が出力されたタイミングを示し、スキャナ部8Yから1面目画像に応じて感光ドラム1Yへの露光が開始される。図2(A)(II)は、転写材19の2面目に対する/TOP信号が出力されたタイミングを示し、スキャナ部8Yから2面目画像に応じて感光ドラム1Yへの露光が開始される。このとき、転写材19の1面目に対し、中間転写ベルト9上のトナー像の転写も行われている。図2(A)(III)は、感光ドラム1Y上に形成された転写材19の2面目のトナー像が、中間転写ベルト9上に転写されているタイミングを示している。このとき、転写材19の1面目に対する中間転写ベルト9上のトナー像の転写は完了し、転写材19は排紙ローラ対17へ搬送されている。図2(A)(IV)は、反転された転写材19の搬送方向先端がレジセンサ20に到達したタイミング(図2(A)(vi))における中間転写ベルト9上のトナー像の移動状態を示した図である。図中の時間T2は、転写材19の2面目に対する/TOP信号が出力されたタイミング(図2(A)(II))から、反転された転写材19の搬送方向先端がレジセンサ20に到達したタイミング(図2(A)(IV))までの時間を示している。時間T2は、中間転写ベルト9の長さによって決まり、転写材19の転写材サイズによらず一定である。
転写材19の2面目の/TOP信号出力タイミング(図2(A)(II))は、1面目の/TOP信号の出力タイミング(図2(A)(I))を基点とし、反転された転写材19がレジセンサ20に到達するまでの時間を考慮して決定される。転写材19の2面目の/TOP信号出力タイミングは、中間転写ベルト9の長さ、及び上述した両面搬送パスの長さに依存する。図2(A)(vi)の状態から搬送が再開されて、転写材19が二次転写ローラ12に到達するまでの時間と、図2(A)(IV)の状態から中間転写ベルト9上のトナー像の先端が二次転写ローラ12に到達するまでの時間は、等しい。本実施例の画像形成装置では、画像形成を開始し、中間転写ベルト9上のトナー像の先端が二次転写ローラ12に到達するまでの時間が、後端がレジセンサ20を通過した転写材19の先端が二次転写ローラ12に到達するまでの時間よりも長い。従って、このような構成の画像形成装置では、上述した時間T1、T2の関係は、T1<T2となる。そのため、転写材19の搬送方向の後端がレジセンサ20を通過した(図2(A)(iii))後に、転写材19の2面目に対する/TOP信号を出力すると(図2(A)(II))、転写材19がレジセンサ20で一時停止する時間が長くなってしまう。そのため、コントローラ部201から予め指定された転写材サイズを元に転写材19の反転時間を予測する。そして、予測された反転時間に基づいて、転写材19の搬送方向の後端がレジセンサ20を通過する(図2(A)(iii))前に、転写材19の2面目に対する/TOP信号を出力する(図2(A)(II))。これにより、最大のスループット(単位時間当たりの印刷枚数)を実現している。
[両面連続プリント動作のタイミングチャート]
図2(B)は、本実施例の両面連続プリント動作のタイミングチャートである。図2(B)は、上から順に、(a)は/TOP信号の出力タイミング、(b)はカートリッジ6Y、6M、6C、6Kにおける露光動作を示し、ハッチング部分はスキャナ部8による感光ドラム1の露光期間を示している。(c)はレジストローラ11の駆動状態(図中、レジローラ駆動と表示)を示し、オンはレジストローラ11が回転し、転写材19が搬送されている状態を示し、オフはレジストローラ11が停止している状態を示している。(d)は給紙カセット18の転写材19のピックアップ動作(給紙動作)を示し、オン状態のパルス毎に給紙カセット18から1枚の転写材がレジセンサ20に搬送される。(e)はレジセンサ20による検知状態を示し、オンはレジセンサ20が転写材19を検知している状態を示し、オフはレジセンサ20が転写材19を検知していない状態を示している。(f)は転写材19の反転動作区間を示し、オン状態は、転写材19が反転してから、転写材の搬送方向の先端がレジセンサ20に到達するまでの反転動作区間を示している。(g)は定着排紙センサ21による検知状態を示し、オンは定着排紙センサ21が転写材19を検知している状態を示し、オフは定着排紙センサ21が転写材19を検知していない状態を示している。なお、図2(B)の横軸は時間を示し、図中のt311〜t321はタイミング(時間)を示す。また、図中のT1、T2は、上述した時間T1、T2を指している。
図2(B)において、CPU205は、コントローラ部201から印字開始コマンドを受信すると、プリント動作の準備を行う。CPU205は、準備が完了すると、転写材19の1面目に対する/TOP信号を出力し(t311)、給紙カセット18から転写材19の給紙動作が開始される(t312)。CPU205は、給紙された転写材19の搬送方向の先端が、レジストローラ11の近傍に配置されたレジセンサ20に到達した時点(t313)で、レジストローラ11の駆動を停止し、転写材19の搬送を一時停止する(t314)。そして、CPU205は、中間転写ベルト9上に転写されたトナー像の先端が二次転写ローラ12に到達するタイミングに合わせて、転写材19の搬送を再開する(t315)。そして、中間転写ベルト9上のトナー像は、二次転写ローラ12により転写材19に転写され、定着器14によって未定着のトナー像は転写材19に加熱定着される。
その後、転写材19の搬送方向の後端が定着排紙センサ21を通過し(t316)、転写材19は反転可能な位置まで搬送される。転写材19が反転可能な位置まで搬送されたタイミングで、CPU205は、反転フラッパ22及び不図示の反転ソレノイドをオンすることで、転写材の搬送方向を逆方向にして搬送する反転動作を開始する(t317)。そして、反転フラッパ22により、転写材19の搬送路は反転経路25側に切り替えられ、転写材19は反転経路25に搬送される。
CPU205は、最大のスループットで両面プリントを行うために、転写材19がレジセンサ20を通過する(t323)前に、転写材19の2面目に対する/TOP信号を出力する(t318)。そして、CPU205は、反転経路25を搬送された転写材19がレジセンサ20に到達した時点(t319)で、レジストローラ11の駆動を停止し、転写材19の搬送を一時停止させる(t320)。CPU205は、中間転写ベルト9上に形成された転写材19の2面目のトナー像が二次転写ローラ12に到達するタイミングに合わせてレジストローラ11を駆動して、転写材19の搬送を再開し(t321)、トナー像を転写材19に転写する。連続プリントを行うときには、先行する1枚目の転写材19の搬送方向の後端がレジセンサ20を通過する前に、後続の2枚目の転写材19の1面目に対する/TOP信号を出力し(t322)、上述した転写材19の1枚目と同じ両面プリント動作を繰り返す。
以上説明した図2(B)のタイミングチャートでは、転写材19がレジセンサ20を通過する前に、2面目に対する/TOP信号が出力される。2面目に対する/TOP信号は、1面目に対する/TOP信号が出力されたタイミングから、予め指定された転写材サイズに基づいた時間(間隔)が経過したタイミングで出力される。そのため、実際の転写材サイズが、予め指定された転写材サイズよりも大きい場合には、/TOP信号が出力されてから転写材19が反転動作を開始するまでの時間が長くなってしまう。その結果、転写材19が二次転写ローラ12に到達する前に、中間転写ベルト9上に形成された2面目のトナー像の先端が二次転写ローラ12に到達してしまい、プリントエラーとなってしまう。
そこで、本実施例では、このような場合には、以下に説明する中間転写ベルト9の速度制御を行う。即ち、2面目のブラックの感光ドラム1Kに形成されたトナー像が中間転写ベルト9へ転写された時点で、中間転写ベルト9の回転速度を一旦落とし、転写材19が二次転写ローラ12に到達するタイミングに合わせて、減速前の元の速度に戻す制御を行う。なお、ブラックの感光ドラム1Kは、中間転写ベルト9の回転方向の最も下流に配置されたカートリッジ6の感光ドラムである。
[転写材サイズが指定サイズよりも大きい場合の両面プリント動作]
図3は、給紙カセット18に載置されている転写材19の搬送方向の長さAが、コントローラ部201から予め指定された転写材の搬送方向の長さBよりも大きい(A>B)場合に、本実施例を適用した連続両面プリント動作を示すタイミングチャートである。以下では、実際の転写材19の搬送方向の長さAを転写材長A、コントローラ部201から指定された転写材の長さBを転写材長Bともいう。
図3の縦軸方向の(a)〜(g)は、上述した図2(B)と同様であり、図の見方の説明は省略する。図3(h)は、駆動制御部209により制御されるメインモータ204の回転速度を示している。速度Vpは通常状態におけるメインモータ204の回転速度であり、速度Vlは、転写材19の長さAが指定された転写材の長さBよりも長い場合に、中間転写ベルト9の速度調整を行うときのメインモータ204の減速速度を示している。図3の横軸は時間を示し、図中、t511〜t522はタイミング(時間)を示す。また、図中のT1、T3は、上述した時間T1、後述する時間T3を指している。
CPU205は、転写材19の1面目に対する/TOP信号を出力し(t511)、給紙動作を開始する(t512)。CPU205は、給紙された転写材19の搬送方向の先端がレジセンサ20に到達した時点で(t513)、転写材19の搬送を一時停止する(t514)。そして、CPU205は、中間転写ベルト9上に感光ドラム1から転写されたトナー像の先端が二次転写ローラ12に到達するタイミングに合わせて、転写材19の搬送を再開すると共に、転写材19の転写材長の測定を開始する(t515)。その後、CPU205は、コントローラ部201から指定された転写材の転写材長Bを元に算出したタイミングで、転写材19の2面目に対する/TOP信号を出力する(t516)。即ち、CPU205は、レジセンサ20が転写材19の搬送方向の後端を検知する前に、/TOP信号を出力する。CPU205は、転写材19の搬送方向の後端がレジセンサ20を通過したタイミング(t517)で転写材長の測定を終了する。そして、CPU205は、測定された転写材19の転写材長Aとコントローラ部201から指定された転写材長Bを比較し、転写材長Aが転写材長Bよりも長い場合には、中間転写ベルト9の速度制御を実施するための速度及び制御時間を決定する。一方、転写材長Aが転写材長Bと等しい場合、又は転写材長Aが転写材長Bよりも短いと判定した場合には、中間転写ベルト9の速度は後述するプリント速度である速度Vpのままで、速度制御は行わない。なお、転写材長Aは、転写材19の搬送速度と、転写材19の搬送が再開されて(t515)から、転写材19の搬送方向の後端がレジセンサ20を通過する(t517)までの時間を乗ずることにより算出することができる。
ここで、本実施例の中間転写ベルト9の速度制御方法について説明する。まず、図2(B)と比べて、図3で新たに追加した記号について説明する。時間T3は、ブラックの感光ドラム1Kに形成されたトナー像の中間転写ベルト9への転写が完了するタイミング(t518)から、反転された転写材19の搬送方向の先端がレジセンサ20に到達するタイミング(t520)までの時間を示す。また、時間Tdは、メインモータ204の速度を速度Vp(プリント速度)から速度Vl(減速速度)に低下させるのに要する時間を指す。一方、時間Tuは、メインモータ204の速度を速度Vlから速度Vpに上昇させるのに要する時間を指す。時間Tcは、メインモータ204の速度を速度Vlに維持している速度制限時間を指す。速度Vpは、メインモータ204のプリント時の定常速度を指す。速度Vlは、メインモータ204の減速制御時の定常速度を指し、本実施例では、速度制限時間の時間Tcが最小時間となるように、回転可能な最小速度が設定される。
従って、速度Vp、Vlは、予め決められた固定値であり、時間Td、Tuも、速度Vp、Vlに応じて決定されるので、固定値である。一方、時間T3は、転写材長A、Bの差分により変動する変動値であり、速度制限時間である時間Tcも、転写材長A、Bの差分により変動する変動値である。
本実施例では、次のような中間転写ベルト9の速度制御を行うことにより、上述したプリントエラーの発生を防止する。即ち、転写材長Bの転写材がレジセンサ20に到達したときの中間転写ベルト9上のトナー像の先端の位置が、転写材長Aの転写材がレジセンサ20に到達したときに中間転写ベルト9上のトナー像が到達している位置と同じになるように、速度制御を行う。図3を用いて説明すると、トナー像の中間転写ベルト9への転写が完了するタイミング(t518)から転写材19がレジセンサ20に到達するタイミング(t520)の間に、中間転写ベルト9が移動する距離を転写材長の差だけ減少させればよい。そのためには、以下の式(1)〜(3)を満足する速度制限時間Tcを算出し、算出された速度制限時間Tcに応じて、メインモータ204による中間転写ベルト9の速度制御を行えばよい。なお、式(1)、(2)で用いる距離Duは、中間転写ベルト9が時間Tuで進む距離を指し、距離Ddは、中間転写ベルト9が時間Tdで進む距離を指している。距離Du、Ddは、上述した固有値である時間Tu、Tdに応じて決定される固有値である。
実際に搬送される転写材19と指定された転写材の転写材長の差である(転写材長A−転写材長B)(以下、(A−B)と略記する)は、以下のように算出することができる。
(A−B)=(Vp×(Td+Tc+Tu))−(Dd+Vl×Tc+Du)
=(Vp−Vl)×Tc+Vp×(Td+Tu)−(Dd+Du) (1)
なお、(Vp×(Td+Tc+Tu))は、速度制御を行わなかった場合に中間転写ベルト9が移動する距離を示し、(Dd+Vl×Tc+Du)は、速度制御を行った場合に中間転写ベルト9が移動する距離を示す。
更に、式(1)を速度制限時間Tcを求める式に変形すると、以下の式(2)となる。
速度制限時間Tc=[(A−B)−Vp×(Td+Tu)+(Dd+Du)]/(Vp−Vl) (2)
また、中間転写ベルト9の速度制御は、時間T3の間、即ち感光ドラム1上のトナー像の中間転写ベルト9への転写が完了してから、反転された転写材19の搬送方向の先端がレジセンサ20に到達するまでの間に完了しなければならない。そのため、速度制限時間Tcは、以下に示す式(3)の条件式を満足する時間でなければならない。
(Td+Tc+Tu)<T3 (3)
ここで、中間転写ベルト9の速度制御を実行している区間(図3の(Td+Tc+Tu))で、2枚目の転写材19の1面目に対する/TOP信号が出力される(t521)と、形成されるトナー像が乱れる。そのため、両面連続プリントの場合には、中間転写ベルト9の速度制御を完了させた後に、/TOP信号を出力する必要がある。そこで、2枚目の転写材19の1面目の/TOP信号の出力タイミングをできるだけ早くするためには、メインモータ204の速度を、速度制限時間Tcが最小となる、回転可能な最小速度である速度Vlに設定して、速度制限時間Tcを算出する。そして、CPU205は、メインモータ204の回転速度を、算出された速度制限時間Tcだけ、速度Vlに設定することにより、中間転写ベルト9の速度制御を行う。その結果、転写材19の2面目の/TOP信号出力タイミング(t516)を基点としたレジストローラ11の駆動指示タイミング(t522)は、転写材長A、Bが同じで速度制御が不要な場合に比べて、中間転写ベルト9の速度制御に要した時間だけ遅くなる。これにより、転写材19が二次転写ローラ12に到達する前に、中間転写ベルト9上に形成された2面目のトナー像の先端が二次転写ローラ12に到達してしまうプリントエラーの発生を防止することができる。
続いて、CPU205は、転写材19の2面目の画像形成が完了したタイミング、即ち感光ドラム1上のトナー像の中間転写ベルト9への転写が完了したタイミング(t518)で、メインモータ204の速度を速度Vpから速度Vlに変更する。そして、CPU205は、減速速度である速度Vlを維持した状態で上述した速度制限時間Tcが経過した後に、再度、メインモータ204の速度を速度Vpに変更する。CPU205は、メインモータ204の速度が速度Vpに戻ったタイミングで、2枚目の転写材19の1面目に対する/TOP信号を出力する(t521)。CPU205は、1枚目の転写材19の搬送方向の先端がレジセンサ20に到達した(t520)後に、レジストローラ11の駆動を開始して(t522)、転写材19を二次転写ローラ12へ搬送し、中間転写ベルト9上のトナー像を転写材19に転写する。
[両面プリント動作の制御シーケンス]
図4(a)は、本実施例の両面プリント動作時の制御シーケンスを示すフローチャートである。図4(a)のフローチャートは、コントローラ部201から印字開始コマンドを受信したCPU205が、プリント動作の準備を完了すると起動される。なお、前述した時間Td、Tu、距離Dd、Du、及びメインモータ204のプリント速度Vp、減速速度Vlは、ROM206に記憶されているものとする。また、/TOP信号が出力されてから、感光ドラム1上のトナー像の中間転写ベルト9への転写が完了するまでの時間(図3のt516〜t518間の時間)は、設計上で予め決められている時間(固定値)であり、ROM206に記憶されているものとする。前述した時間T1も転写材長によらず、所定の固定値であり、ROM206に記憶されているものとする。
ステップ(以下、Sとする)600では、CPU205は、1枚目の転写材19の1面目に対する/TOP信号をコントローラ部201に出力し(図3のt511)、1面目のプリント動作を開始する。S601では、CPU205は、転写材19の2面目に対する/TOP信号を出力するタイミングを計測するためのタイマ1をリセットし、スタートさせる。S602では、CPU205は、転写材19の搬送を再開するための再搬送タイミングを計測するためのタイマ2をリセットし、スタートさせる。S603では、CPU205は、タイマ2を参照して、転写材19の搬送を再開する転写材再搬送タイミング(図3のt515)に到達したかどうか判断する。CPU205は、転写材再搬送タイミングに到達したと判断した場合にはS604に進み、転写材再搬送タイミングに到達していないと判断した場合には、S603の処理を繰り返す。なお、転写材再搬送タイミングの時間(タイマ値)は予めROM206に記憶され、CPU205が随時読み出すものとする。
S604では、CPU205は、転写材19の転写材長を計測するためのタイマ3をリセットし、スタートさせる。S605では、CPU205は、タイマ1を参照し、2面目に対する/TOP信号を出力するタイミング(図5のt516)に到達したかどうか判断する。CPU205は、2面目に対する/TOP信号出力タイミングに到達したと判断した場合にはS606に進み、/TOP信号出力タイミングに到達していないと判断した場合には、S605の処理を繰り返す。なお、2面目に対する/TOP信号出力タイミングは、転写材の搬送方向の長さ、即ち、転写材のサイズに基づいて決定される。CPU205は、コントローラ部201からプリント開始に先立って受信し、RAM207に記憶されている印字予約情報より、転写材19のサイズを取得する。ROM206には、転写材のサイズに応じた/TOP信号を出力するタイミングに対応する時間(タイマ値)が格納されている。CPU205は、タイマ1が該当するタイマ値に到達したことにより、2面目に対する/TOP信号出力タイミングに到達したと判断する。S606では、CPU205は、1枚目の転写材19の2面目に対する/TOP信号をコントローラ部201に出力する(図3のt516)。また、CPU205は、/TOP信号出力(図3のt516)からの時間経過を計測するために、タイマ4をリセットし、スタートさせる。
S607では、CPU205は、センサ入力部212を介して、レジセンサ20の検知結果を取得し、レジセンサ20の立ち下がり(レジセンサ20のオン状態(転写材を検知)からオフ状態(転写材を未検知)の変化を指す)を検知したかどうか判断する。CPU205は、レジセンサ20の立ち下がりを検知したと判断した場合には、S608に進み、立ち下がりを検知していないと判断した場合にはS607の処理を繰り返す。S608では、CPU205は、レジセンサ20の立ち下りを検知したことにより、転写材19の搬送方向の後端がレジセンサ20を通過したと判断し、転写材19の転写材長を計測するためのタイマ3を停止し、転写材長の計測を完了する。CPU205は、タイマ3よりタイマ値(図3のt515〜t517の時間に相当)を読み出し、転写材19の搬送速度を乗ずることにより、転写材19の転写材長を算出する。なお、転写材19の搬送速度は、予めROM206に記憶されているものとする。また、CPU205は、タイマ4よりタイマ値を読み出し、RAM207に記憶する。このとき読み出したタイマ4のタイマ値は、/TOP信号出力から転写材19の搬送方向の後端がレジセンサ20を通過するまでの時間を指している。CPU205は、次のようにして、時間T3(図3)の算出を行う。/TOP信号の出力から反転された転写材19の先端がレジセンサ20に到達するまでの時間(図3のt516〜t520)は、RAM207に記憶されたタイマ4のタイマ値とROM206に記憶された時間T1を加算することにより求められる。そして、求められた時間から、ROM206に記憶された、/TOP信号の出力からトナー像の中間転写ベルト9への転写完了までの時間(図3のt516〜t518の時間)を減算することにより、時間T3を算出することができる。
S609では、CPU205は、S608で算出した転写材19の転写材長、時間T3に基づいて、中間転写ベルトの速度制御を実施する。S610では、CPU205は、コントローラ部201からプリント開始に先立って受信し、RAM207に記憶されている印字予約情報より、次のプリント予約があるかどうかを判断する。CPU205は、次のプリント予約があると判断した場合にはS600に戻り、プリント予約がないと判断した場合には、処理を終了する。なお、上述した時間計測にはタイマを4つ用いたが、例えばタイマ2とタイマ3を同じタイマとし、タイマ1とタイマ4を同じタイマにすることにより、時間計測を2つのタイマで行うことができる。
図4(b)は、中間転写ベルト9の速度制御を行う図4(a)のS609の制御シーケンスを示すフローチャートである。図4(b)のフローチャートは、図4(a)のS609の実行時に起動される。S620では、CPU205は、S608(図4(a))にて算出された転写材19の転写材長が、コントローラ部201から受信した印字予約情報に設定されている転写材の転写材長(指定サイズ)より長いかどうかを判断する。CPU205は、転写材19の転写材長が指定サイズより長い(転写材長>指定サイズ)と判断した場合にはS621に進む。一方、CPU205は、転写材19の転写材長が指定サイズより長くない(転写材長≦指定サイズ)と判断した場合には処理を終了し、図4(a)の処理に戻る。
S621では、CPU205は、転写材の指定サイズ(前述した転写材長Bに対応)とS608で算出された転写材の転写材長(前述した転写材長Aに対応)の差分から、前述した速度制限時間Tcを、前述した式(2)を用いて算出する。このとき、CPU205は、式(2)で用いる時間Td、Tu、距離Dd、Du、メインモータ204の速度Vp、Vlの値を、ROM206から読み出す。更に、CPU205は、算出された速度制限時間Tcが前述した式(3)を満足すること、即ち時間Tu、速度制限時間Tc、時間Tdを合計した時間が時間T3より短いことを確認する。このとき、CPU205は、式(3)で用いる時間Td、TuはROM206から読み出し、時間T3は図4(a)のS608で算出した時間T3を用いる。
S622では、CPU205は、タイマ4を参照して、転写材19の2面目の画像形成が終了したかどうか、即ち、2面目のブラックの感光ドラム1Kに形成されたトナー像が中間転写ベルト9へ転写されたかどうか判断する。CPU205は、2面目の画像形成が終了したと判断した場合にはS623に進み、終了していないと判断した場合にはS622の処理を繰り返す。なお、上述したように、/TOP信号が出力されてから、感光ドラム1上のトナー像の中間転写ベルト9への転写が完了するまでの時間(図3のt516〜t518間の時間)は予めROM206に記憶され、CPU205が随時読み出すものとする。S623では、CPU205は、中間転写ベルト9の速度制御を実行する。即ち、CPU205は、駆動制御部209を介して、メインモータ204の回転速度をプリント時の速度である速度Vpから速度Vl(減速速度)に減速する制御を行う。CPU205は、時間Tdが経過し、メインモータ204の回転速度が速度Vlになっていることを確認し、速度Vlに減速されたメインモータ204の状態を速度制限時間Tcの間、維持する。そして、CPU205は、時間Tcが経過した後、駆動制御部209を介して、メインモータ204の回転速度を速度Vl(減速速度)からプリント時の速度である速度Vpに戻す制御を行う。CPU205は、時間Tuが経過した後、メインモータ204の回転速度が速度Vpになっていることを確認し、処理を終了し、図4(a)の処理に戻る。
以上、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長よりも長い場合の中間転写ベルト9の速度制御について説明した。一方、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長よりも短い場合には、CPU205は、反転経路25を搬送された転写材19がレジセンサ20に到達した時点で、レジストローラ11の駆動を停止し、転写材19の搬送を一時停止させる。そして、CPU205は、中間転写ベルト9上に形成された転写材19の2面目のトナー像が二次転写ローラ12に到達するタイミングに合わせてレジストローラ11を駆動して、転写材19の搬送を再開し、トナー像を転写材19に転写する。このように、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長よりも短い場合には、中間転写ベルト9の速度制御は行わないと説明したが、中間転写ベルト9の速度制御を行うことにより対応することもできる。この場合には、トナー像の中間転写ベルト9への転写が完了するタイミングから転写材19がレジセンサ20に到達するタイミングの間に、中間転写ベルト9が移動する距離を転写材長の差だけ増加させればよい。即ち、2面目のブラックの感光ドラム1Kに形成されたトナー像が中間転写ベルト9へ転写された時点で、中間転写ベルト9の回転速度を一旦上げて、転写材19が二次転写ローラ12に到達するタイミングに合わせて、加速前の元の速度に戻す制御を行えばよい。
そこで、給紙された転写材の長さが短い場合には、前述した転写材長が長い場合の最小速度Vlとは逆に、メインモータ204の速度を、速度制限時間Tcが最小となる、回転可能な最大速度である速度Vhに設定して、速度制限時間Tcを算出する。そして、CPU205は、メインモータ204の回転速度を、算出された速度制限時間Tcだけ、速度Vhに設定することにより、中間転写ベルト9の速度制御を行う。
具体的には、CPU205は、転写材19の2面目の画像形成が完了したタイミング、即ち感光ドラム1上のトナー像の中間転写ベルト9への転写が完了したタイミングで、メインモータ204の速度を速度Vpから速度Vhに変更する。そして、CPU205は、加速速度である速度Vhを維持した状態で上述した速度制限時間Tcが経過した後に、再度、メインモータ204の速度を速度Vpに変更する。CPU205は、メインモータ204の速度が速度Vpに戻ったタイミングで、2枚目の転写材19の1面目に対する/TOP信号を出力する。CPU205は、1枚目の転写材19の搬送方向の先端がレジセンサ20に到達した後に、レジストローラ11の駆動を開始して、転写材19を二次転写ローラ12へ搬送し、中間転写ベルト9上のトナー像を転写材19に転写する。これにより、中間転写ベルト9上に形成された2面目のトナー像の先端が二次転写ローラ12に到達する前に、転写材19が二次転写ローラ12に到達してしまうプリントエラーの発生を防止することができる。
また、本実施例では、レジセンサ20は、転写材の先端及び後端を検知し、転写材長を測定するための検知手段としているが、転写材長を測定するための専用の検知手段を設けてもよい。そして、この場合の検知手段の設置場所は、レジセンサ20のように、必ずしも二次転写ローラ12の転写材19の搬送方向の上流側に配置されている必要はなく、下流側でもよい。
以上説明したように、本実施例によれば、両面プリント時に、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長と異なる場合のプリントエラーの発生を防止することができる。本実施例では、指定の転写材長を元に2面目のトナー像の形成を開始し、実際の転写材長が指定と同じ場合には最適な生産性を実現する。また、実際の転写材長が指定された転写材長よりも長かった場合には、2面目の画像形成が終了したタイミングで、中間転写ベルト9の速度を減速し、再度、定常速度に戻す速度調整を行う。逆に、実際の転写材長が指定された転写材長よりも短かった場合には、2面目の画像形成が終了したタイミングで、中間転写ベルト9の速度を加速し、再度、定常速度に戻す速度調整を行う。これにより、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長と異なっている場合であっても、プリントエラーを発生させることなく、両面プリント動作を行うことが可能となる。
実施例1では、給紙された転写材の搬送方向の長さ(転写材長)が指定された転写材の転写材長よりも長い場合には、中間転写ベルト上のトナー像が転写材に転写されるタイミングを調整するための中間転写ベルトの速度調整について説明した。実施例1では、後続の転写材に対する/TOP信号の出力タイミングを極力早めるため、速度制限時間が最小となるように、中間転写ベルトを駆動するメインモータの減速時の速度を回転可能な最小速度に設定していた。しかしながら、減速時の速度を低くするほどメインモータの速度変化が大きくなり、メインモータの回転駆動に伴う音の周波数が変調するため、人間の可聴帯域に属する周波数となるおそれがある。そこで、実施例2では、速度制限時間を許容限度まで延長して、減速時の速度変化を抑えることで、可聴帯域のモータ音を軽減する例について説明する。なお、本実施例の画像形成装置の構成は実施例1と同様であるため、同一の符号を使用することとし、本実施例での詳しい説明は省略する。
[転写材サイズが指定よりも大きい場合の両面プリント動作のタイミングチャート]
図5は、給紙カセット18に載置されている転写材19の転写材長Aが、コントローラ部201から指定された転写材の転写材長Bよりも大きい(A>B)場合に、本実施例を適用した連続両面プリント動作を示すタイミングチャートである。図5の縦軸方向の(a)〜(h)は、前述した実施例1の図3と同様であり、図の見方の説明は省略する。また、図5の横軸は時間を示し、図中、t811〜t822はタイミング(時間)を示す。なお、図5のタイミングt811〜t822は、それぞれ実施例1の図3のt511〜t522に対応しており、図5に示す両面プリント動作と実施例1の図3に示す両面プリント動作は、中間転写ベルトの速度制御を除き、同様なので、ここでの説明を省略する。
次に、本実施例の中間転写ベルト9の速度制御方法について説明する。まず、実施例1の図3と比べて、本実施例の図5で新たに追加した記号について説明する。時間Td’は、メインモータ204の速度を速度Vp(プリント速度)から速度Vl’(減速速度)に低下させるのに要する時間を指す。一方、時間Tu’は、メインモータ204の速度を速度Vl’から速度Vpに上昇させるのに要する時間を指す。時間Tc’は、メインモータ204の速度を速度Vl’に維持している速度制限時間を指す。速度Vpは、メインモータ204のプリント時の定常速度を指す。速度Vl’は、メインモータ204の減速制御時の定常速度を指し、本実施例では、後述する時間(Tc’+Td’+Tu’)=時間T3を満足するような速度が設定される。従って、本実施例では速度Vpは、予め決められた固定値であるが、速度Vl’は変動値となり、時間Td’、Tu’も、速度Vp、Vl’に応じて決定される変動値となる。一方、時間T3は、転写材長A、Bの差分により変動する変動値であり、速度制限時間である時間Tc’も、転写材長A、Bの差分により変動する変動値である。
本実施例では、次のような中間転写ベルト9の速度制御を行うことにより、上述したプリントエラーの発生を防止する。即ち、転写材長Bの転写材がレジセンサ20に到達したときの中間転写ベルト9上のトナー像の先端の位置が、転写材長Aの転写材がレジセンサ20に到達したときに中間転写ベルト9上のトナー像が到達している位置と同じになるように、速度制御を行う。図5を用いて説明すると、トナー像の中間転写ベルト9への転写が完了するタイミング(t818)から転写材19がレジセンサ20に到達するタイミング(t820)の全期間で、中間転写ベルト9が移動する距離を転写材長の差だけ減少させればよい。即ち、実施例1では、時間T3の期間において、最小時間で2つの転写材の転写材長の差を減少させる制御を行った。一方、本実施例では、時間T3全体を使用して、2つの転写材の転写材長の差を減少させる制御を行うことにより、メインモータ204の速度Vpと速度Vl’との速度差を小さくし、周波数の変調を小さくし、可聴帯域のモータ音を軽減する。そのためには、以下の式(4)、(5)を満足する速度Vl’、速度制限時間Tc’を算出し、算出された速度Vl’、速度制限時間Tc’に応じて、メインモータ204による中間転写ベルト9の速度制御を行えばよい。なお、式(4)等で用いる距離Du’は、中間転写ベルト9が時間Tu’で進む距離を指し、距離Dd’は、中間転写ベルト9が時間Td’で進む距離を指している。距離Du’、Dd’は、上述した時間Tu’、Td’に応じて決定される。
実際に搬送される転写材19と指定された転写材の転写材長の差である(転写材長A−転写材長B)(以下、(A−B)と略記する)は、以下のように算出することができる。
(A−B)
=(Vp×(Td’+Tc’+Tu’))−(Dd’+Vl’×Tc’+Du’)
=(Vp−Vl’)×Tc’+Vp×(Td’+Tu’)−(Dd’+Du’) (4)
なお、(Vp×(Td’+Tc’+Tu’))は、速度制御を行わなかった場合に中間転写ベルト9が移動する距離を示し、(Dd’+Vl’×Tc’+Du’)は、速度制御を行った場合に中間転写ベルト9が移動する距離を示す。
また、中間転写ベルト9の速度制御は、時間T3、即ち感光ドラム1上のトナー像の中間転写ベルト9への転写が完了した時点で開始され、反転された転写材19の搬送方向の先端がレジセンサ20に到達した時点で終了する。そのため、速度制限時間Tc’は、以下に示す式(5)の条件式を満足する時間でなければならない。
(Td’+Tc’+Tu’)=T3 (5)
また、例えば、本実施例の時間Tu’と実施例1の時間Tuの比例関係は、メインモータ204の速度Vp、Vl、Vl’を用いて、時間Tu’:時間Tu=(Vp−Vl’):(Vp−Vl)と表すことができる。従って、時間Tu’、Td’、及び距離Du’、Dd’は、実施例1で説明した時間Tu、Td、速度Vp、Vl、距離Du、Ddを用いて、次のように表現することができる。
Tu’=Tu×(Vp−Vl’)/(Vp−Vl) (6)
Td’=Td×(Vp−Vl’)/(Vp−Vl) (7)
Du’=Du×(Vp−Vl’)/(Vp−Vl) (8)
Dd’=Dd×(Vp−Vl’)/(Vp−Vl) (9)
実施例1で説明したように、時間Tu、Td、速度Vp、Vl、距離Du、Ddは固定値(所定の値)なので、上記の式(6)〜(9)より、時間Tu’、Td’、及び距離Du’、Dd’は速度Vl’に応じて決定される。また、前述したように、時間T3も算出することができるので、式(5)、(6)、(7)より、時間Tc’も、速度Vl’に応じて決定される。従って、式(4)、(5)を満足する速度Vl’、時間Tc’を求め、求められた速度Vl’、時間Tc’に応じた中間転写ベルト9の速度制御を行うことにより、可聴帯域のモータ音を軽減させることができる。
[転写材サイズが指定よりも大きい場合の両面プリント動作のフローチャート]
上述したように、本実施例では、中間転写ベルト9の速度制御方法が実施例1とは異なるが、転写材の連続両面プリント動作時の制御シーケンスは実施例1と同様である。そのため、本実施例での両面プリント動作時の制御シーケンスを示すフローチャートは、実施例1の図4(a)を使用し、図4(a)のS609にて起動される中間転写ベルト9の速度制御については、図6に示すフローチャートを使用する。なお、ここでは、実施例1の図4(a)のフローチャートの説明は省略する。
S700では、CPU205は、S608(図4(a))にて算出された転写材19の転写材長が、コントローラ部201から受信した印字予約情報に設定されている転写材の転写材長(指定サイズ)より長いかどうかを判断する。CPU205は、転写材19の転写材長が指定サイズより長い(転写材長>指定サイズ)と判断した場合にはS701に進む。一方、CPU205は、転写材19の転写材長が指定サイズより長くない(転写材長≦指定サイズ)と判断した場合には処理を終了し、図4(a)の処理に戻る。
S701では、CPU205は、転写材の指定サイズ(前述した転写材長Bに対応)とS608(図4(a))で算出された転写材の転写材長(前述した転写材長Aに対応)の差分から、前述した制御速度Vl’を算出する。算出された制御速度Vl’をメインモータ204が維持する速度制限時間Tc’は、上述した式(5)を満足しなければならない。
そこで、本実施例では、以下に説明する方法により、制御速度Vl’、速度制限時間Tc’を決定する。即ち、制御速度Vl’を離散的に選択し、選択された制御速度Vl’を上述した式(6)、(7)に代入することにより、時間Tu’、Td’を算出し、算出された時間Tu’、Td’を上述した式(5)に代入することにより、速度制限時間Tc’を算出する。続いて、選択された制御速度Vl’を上述した式(8)、(9)に代入することにより、距離Du’、Dd’を算出する。そして、選択された制御速度Vl’、及び算出された速度制限時間Tc’、距離Du’、Dd’を上述した式(4)に代入し、左辺と右辺の値が等しいかどうかを判断する。CPU205は、左辺と右辺の値が等しいと判断した場合には、そのときの速度Vl’、及び時間Tc’を、後述するS703の速度制御で使用する制御速度Vl’、速度制限時間Tc’に決定し、処理を終了する。一方、CPU205は、左辺と右辺の値が等しくないと判断した場合には、次の制御速度Vl’を選択し、上述した処理を繰り返す。
なお、本実施例では、上述した制御速度Vl’は次のように選択する。即ち、制御速度Vl’は、プリント時の速度である速度Vpと実施例1で説明した、メインモータ204が回転可能な最小速度である速度Vlとの間の速度である。そこで、制御速度Vl’を、Vl’=Vl+(Vp−Vl)×INDEX値と定義し、INDEX値に0〜1までの値を適用することにより、制御速度Vl’を離散的に選択(決定)する。本実施例では、INDEX値として、0、0.1、0.2、・・・0.9、1の0.1刻みで適用し、上述した方法により、制御速度Vl’、速度制限時間Tc’に決定する。なお、INDEX値の刻みが大きい場合には、例えば、0.05や0.01等、更に小さな刻みにしても良い。また、制御速度Vl’は離散的に選択されるため、上述した式(4)、(5)の両方を満足する制御速度Vl’、速度制限時間Tc’を決定することができない場合もある。そのため、例えば、式(4)を満足する制御速度Vl’、速度制限時間Tc’のうち、式(5)を変形させた次の式を満足する制御速度Vl’、速度制限時間Tc’を選択すればよい。即ち、時間(Td’+Tc’+Tu’)<時間T3を満足し、かつ、時間(Td’+Tc’+Tu’)と時間T3とが略等しい、即ち、2つの時間差が最も小さい制御速度Vl’、速度制限時間Tc’を選択すればよい。
S702では、CPU205は、タイマ4を参照して、転写材19の2面目の画像形成が終了したかどうか、即ち、2面目のブラックの感光ドラム1Kに形成されたトナー像が中間転写ベルト9へ転写されたかどうか判断する。CPU205は、2面目の画像形成が終了したと判断した場合にはS703に進み、終了していないと判断した場合にはS702の処理を繰り返す。なお、実施例1と同様に、/TOP信号が出力されてから、感光ドラム1上のトナー像の中間転写ベルト9への転写が完了するまでの時間(図3のt816〜t818間の時間)は予めROM206に記憶され、CPU205が随時読み出すものとする。S703では、CPU205は、中間転写ベルト9の速度制御を実行する。即ち、CPU205は、駆動制御部209を介して、メインモータ204の回転速度をプリント時の速度である速度Vpから速度Vl’(減速速度)に減速する制御を行う。CPU205は、時間Td’が経過し、メインモータ204の回転速度が速度Vl’になっていることを確認し、速度Vl’に減速されたメインモータ204の状態を速度制限時間Tc’の間、維持する。そして、CPU205は、時間Tc’が経過した後、駆動制御部209を介して、メインモータ204の回転速度を速度Vl’(減速速度)からプリント時の速度である速度Vpに戻す制御を行う。CPU205は、時間Tu’が経過した後、メインモータ204の回転速度が速度Vpになっていることを確認し、処理を終了し、図4(a)の処理に戻る。
以上、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長よりも長い場合の中間転写ベルト9の速度制御について説明した。一方、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長よりも短い場合にも、中間転写ベルト9の速度制御を行うことにより対応することもできる。この場合には、中間転写ベルト9が移動する距離を転写材長の差だけ増加させる中間転写ベルトの速度制御が、トナー像の中間転写ベルト9への転写が完了するタイミングから開始され、転写材19がレジセンサ20に到達するタイミングで終了させればよい。即ち、2面目のブラックの感光ドラム1Kに形成されたトナー像が中間転写ベルト9へ転写された時点で、中間転写ベルト9の回転速度を一旦上げて、転写材19が二次転写ローラ12に到達するタイミングに合わせて、加速前の元の速度に戻す制御を行えばよい。
そこで、給紙された転写材の長さが短い場合には、前述した転写材長が長い場合の減速速度Vl’と同様に、メインモータ204の加速速度Vh’と、その速度を維持している速度制限時間Tc’を算出する。なお、速度制限時間Tc’、メインモータ204の速度を速度Vpから速度Vh’に加速する加速時の時間、及びメインモータ204の速度を速度Vh’から速度Vpに減速する減速時の時間の合計は、時間T3とほぼ等しい時間でなければならない。そして、CPU205は、算出された加速速度Vh’と速度制限時間Tc’に従ってメインモータ204の回転速度を調整することにより、中間転写ベルト9の速度制御を行う。
以上説明したように、本実施例によれば、両面プリント時に、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長と異なる場合のプリントエラーの発生を防止することができる。本実施例では、指定の転写材長を元に2面目のトナー像の形成を開始し、実際の転写材長が指定と同じ場合には最適な生産性を実現する。また、実際の転写材長が指定された転写材長よりも長かった場合には、2面目の画像形成が終了したタイミングで、中間転写ベルト9の速度を減速し、再度、定常速度に戻す速度調整を行う。これにより、これにより、プリントエラーを発生させることなく、両面プリント動作を行うことが可能となる。更に、中間転写ベルトを駆動するモータの回転速度を、プリント速度との速度差がなるべく小さい速度に設定することにより、人間の可聴帯域に属するモータの回転音を軽減させることができる。逆に、実際の転写材長が指定された転写材長よりも短かった場合には、2面目の画像形成が終了したタイミングで、中間転写ベルト9の速度を加速し、再度、定常速度に戻す速度調整を行う。これにより、プリントエラーを発生させることなく、両面プリント動作を行うことが可能となる。更に、中間転写ベルトを駆動するモータの回転速度を、プリント速度との速度差がなるべく小さい速度に設定することにより、急激な中間転写ベルトの速度変化によるモータ等の駆動部や中間転写ベルトへの負荷を軽減させることができる。
[その他の実施例]
上述した実施例の画像形成装置は、画像形成を開始し、中間転写ベルト上のトナー像の先端が二次転写ローラに到達するまでの時間が、後端がレジセンサを通過した転写材の先端が二次転写ローラに到達するまでの時間よりも長い構成を有していた。上述した中間転写ベルトの速度制御は、上述した実施例の構成とは異なる構成を有する画像形成装置についても適用することができる。即ち、画像形成を開始し、中間転写ベルト上のトナー像の先端が二次転写ローラに到達するまでの時間が、転写材の後端がレジセンサを通過してから、転写材の先端が二次転写ローラに到達するまでの時間よりも短い構成の画像形成装置にも適用することができる。このような構成を有する画像形成装置においても、実際の転写材長が指定された転写材長よりも長かった場合には、2面目の画像形成が終了したタイミングで、中間転写ベルト9の速度を減速し、再度、定常速度に戻す速度調整を行う。逆に、実際の転写材長が指定された転写材長よりも短かった場合には、2面目の画像形成が終了したタイミングで、中間転写ベルト9の速度を加速し、再度、定常速度に戻す速度調整を行う。これにより、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長と異なっている場合であっても、プリントエラーを発生させることなく、両面プリント動作を行うことが可能となる。
また、中間転写ベルトを備えておらず、1つの感光ドラムから画像形成部が構成される、両面印刷が可能な画像形成装置についても、上述した給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長と異なる場合の速度制御の手法を適用することができる。この構成の画像形成装置の場合には、まず、画像形成が開始される前に転写材長の差を算出する。そして、画像形成開始から感光ドラム上に形成されたトナー像が転写部にて転写材に転写されるまでの期間全体を使って転写材長の差が調整されるように、感光ドラムを同じ回転速度で駆動する速度制御が行われる。本構成の画像形成装置では、感光ドラム上のトナー像が転写部にて転写材に転写される処理と、感光ドラム上の静電潜像は現像器のトナーにより可視像化される処理が並行して行われる。従って、画像形成部が感光ドラムだけから構成されている場合には、上述した中間転写ベルトを備えた場合のように、感光ドラム上の静電潜像をトナーにより現像した後に、感光ドラムの回転速度を調整する速度制御を行うことができない。
以上説明したように、本実施例によれば、両面プリント時に、給紙された転写材の転写材長が指定された転写材長と異なる場合のプリントエラーの発生を防止することができる。