JP6389679B2 - 金属溶解方法 - Google Patents
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図5に、特許文献1に開示される水冷ハースの斜視図を示す。また、図6(a)に、図5の水冷ハースのA矢視断面、図6(b)に、図5の水冷ハースのB矢視断面、図6(c)に、図6(b)の水冷ハースにおいて溶解される金属材料の状態を時系列に示す断面図を示す。
この水冷ハース50を用いる金属溶解装置においては、図6(b)に示すように水冷ハース50の溝状凹部51において高所側となる一端に金属材料Mを配置し、金属材料Mにアーク電極棒60からの放電によるアーク熱を加えて溶解が行われる。
ここで、前記のように溝状凹部51の底部は傾斜しているため、金属材料Mは溶融部M1を下にして凹部51の他端(低所側)に向かって転がるように移動する。尚、図6(c)には、1つの金属材料M(M1、M2)が矢印の方向に移動する様子を時系列に示している。
前記のように金属材料Mが溝状凹部51の中を移動する際、未溶融部M2が上部に位置するため、未溶融部M2に対しアーク熱が加えられる。即ち、水冷ハース50の溝状凹部51内で、金属材料Mを転がすようにしながら、アーク加熱が行われ、金属材料Mの全体が溶解されて溶融された金属が生成される。
前記特許文献1には、溝状凹部51の底部の傾斜方向を反転させることが開示され、それによれば、金属材料を凹部51の長手方向に沿って転がしながら往復移動させることができる。そのため、より攪拌効果を得ることができ、前記のような軽金属と重金属の合金を形成する場合であっても時間短縮を期待することができる。
図7(a)に、特許文献2に開示されるアーク溶解装置の模式的な断面図を示し、図7(b)に平面図を示す。図7(a)に示すように、このアーク溶解装置70は、アーク溶解炉(図示せず)内に配置され、水冷ハース71と、その上方に配置されたアーク電極棒72とを有している。さらに水冷ハース71において金属材料Mが配置される窪み(凹部)71aの下方には、リング状の永久磁石73がハース裏面側から埋め込まれた状態で配置されている。これにより、永久磁石73は、水冷ハース71の窪み71aにおいて上向きの磁場を印加可能となされている。
このとき、永久磁石73により、窪み71a内の金属材料Mに対して、上方向の磁場が印加されるため、溶湯となった金属材料Mに対し、アークの電流方向と磁界方向とに直交する方向にローレンツ力が働き、金属材料Mの底部に横回転の流れが発生する。この横回転の流れが発生することによって、溶湯状の金属材料Mの底部が攪拌されるようになっている。
即ち、この特許文献2に開示のアーク溶解装置70によれば、軽金属と重金属の合金を形成する場合であっても、比較的簡単な装置構造において、攪拌効果が得られ、溶解時間を特許文献1に開示の金属溶解方法に比べて短縮することができる。
このため、金属材料の溶解量や合金の種類が異なる場合であっても、アーク電流値が一定の場合は同じ方向に同じ大きさのローレンツ力が働くこととなり、例えば溶解量が異なる場合には回転速度などが異なり、その攪拌効果に差異が生じるものとなっていた。
即ち、溶解量や合金の種類の異なる金属材料を溶解する場合に、磁場の大きさや方向を変えることができず、その金属材料に応じた攪拌の調整ができないという課題があった。
また、金属材料Mに対し永久磁石73により強力な磁場が印加されるが、磁場が強すぎると、金属材料Mの回転運動において偏心が生じたり、溶湯形状が瓢箪型になりハースの窪みから飛び出すといった現象が発生する。弱い永久磁石を用いた場合は回転力が不十分であり十分な攪拌ができない。すなわち、一定の磁場を印加し続ける方式では安定した攪拌効果が得られないという課題があった。
尚、前記金属材料を加熱し形成した溶湯金属に対し、所定周波数の交流電流が供給される前記電磁石によって形成される交流磁場により、前記ハース部材上の溶湯金属がローレンツ力によって回転させられ、かつ、前記交流磁場が磁場方向の反転を生じることにより所定の周期で溶湯金属の回転方向の切り換えが繰り返されるステップの前に、少なくとも所定時間の間、磁場を印加せずに前記金属材料を加熱し、ボタン状の溶湯金属を形成するステップを含むことが望ましい。
また、前記金属材料を加熱し形成した溶湯金属に対し、所定周波数の交流電流が供給される前記電磁石によって形成される交流磁場により、前記ハース部材上の溶湯金属がローレンツ力によって回転させられ、かつ、前記交流磁場が磁場方向の反転を生じることにより所定の周期で溶湯金属の回転方向の切り換えが繰り返されるステップにおいて、前記ハース部材上の溶湯金属の下方に配置された電磁石に対し、所定周波数の交流電流を印加するとともに、印加電圧の強弱を変化させることが望ましい。
これにより、金属材料が軽金属と重金属の場合のように充分な攪拌が必要であっても、溶湯金属を比較的短時間で充分に攪拌し、溶解時間を短縮することができる。
また、本発明に係る金属溶解方法が適用される溶解装置にあっては、従来の水冷ハースを用いた一般的なアーク溶解装置の構成に加え、ハース部材に配置される金属材料の下方に交流電流の印加によって磁場を形成する電磁石を配置すればよいため、装置構成が複雑ではなく、かかるコストを抑えることができる。
図1に示すアーク溶解装置1は、所定の不活性ガス(例えばアルゴンガス)が充填されるチャンバ(図示せず)内に配置され使用される。このチャンバは例えば−30kPa以下の真空に耐える真空チャンバである事が望ましい。このような真空チャンバにおいては酸素を除去するために高真空に排気した後に不活性ガスが所定圧力まで充填される。このアーク溶解装置1は、例えば直径L1が30〜50mm、質量が30〜100g程度の金属材料Mを溶解するためのハース部材2を備えている。
また、前記アーク溶解用電極15は、窪み3内の金属材料(溶湯金属)Mとの距離(放電距離)を調節し、かつ、万遍に加熱できるように、例えばステッピングモータを用いた移動機構(図示せず)により上下移動及び前後左右に首振り可能となされている。
また、ハース部材2と水冷板5との間には、リング状の電磁石10が配置されている。この電磁石10は、ハース部材2の裏面側に形成された凹部内に、ハース部材2とは電気的に絶縁された状態で収容されており、ハース部材2と水冷板5との接触面積が充分に確保されている。また、電磁石10とハース部材2の窪み3の表面との距離L2は、例えば5mmに設定されている。
尚、金属材料Mに対しアーク放電による加熱がなされると、金属材料Mは溶融しボタン状の溶湯金属Mとなる。但し、ここで金属材料Mが軽金属と重金属(単体金属(又は半金属)の比重が1.2倍以上離れた2つの元素の一方と他方)の場合、攪拌前の状態であるため、未だ均一な組成にはなっていないと考えてよい。
この交流磁場の印加により溶湯金属Mに対しローレンツ力が働き、溶湯金属Mはハース部材2の上で所定方向に回転する。ここで、前記ローレンツ力が働く向きは、コイル12を流れる交流電流の向きによって切り替わるため、交流電流の周波数(0.1Hz)に応じた時間間隔(例えば5秒ごと)で切り替わる。
即ち、溶湯金属Mは、所定の時間間隔ごとに図2の矢印に示すように回転方向が切り替わり、それにより溶湯金属Mが効果的に攪拌される。
これにより、金属材料が軽金属と重金属の場合のように充分な攪拌が必要であっても、溶湯金属Mを比較的短時間で充分に攪拌し、溶解時間を短縮することができる。
また、本発明に係る金属溶解方法が適用される溶解装置にあっては、従来の水冷ハースを用いた一般的なアーク溶解装置の構成に加え、ハース部材2に配置される金属材料Mの下方に交流電流の印加によって磁場を形成する電磁石10を配置すればよいため、装置構成が複雑ではなく、かかるコストを抑えることができる。
また、本発明に係る金属溶解方法にあっては、アーク熱により金属材料Mを溶解する構成に限らず、その他の手段(例えば電子ビーム)により金属材料Mを加熱し、溶融する構成にも適用することができる。
また、前記実施の形態においては、交流磁場を印加する際、一定の交流電流(例えば最大値2A)を印加するものとしたが、交流磁場を印加する間に、印加する交流電流の値(最大値の値)を変えて磁場の大きさに強弱をつけ、溶湯金属Mの回転速度等を変化させる制御を行ってもよい。
実験1では、溶湯金属に対する磁場印加を本発明のように交流電流を電磁石に印加することにより発生する磁場(交流磁場)とする場合と、直流電流を印加することにより発生する磁場(直流磁場)とする場合とにおいて、生成された金属の溶解度(溶け残りがあるか)について検証した。なお、溶け残りとは、組成、組織に斑がある場合を言い、特に合金にあっては、混じり合わないで略単体金属が残存した状態を言う。
いずれの場合においても、金属材料はCu:86at%とAl:14at%とを溶解し合金とするものとした。
また、電磁石への印加電流は1.5A(材料30g)、2A(材料50g)、2.5A(材料100g)とし、アーク電極棒に供給する直流電流は300Aとした。
また、磁場を印加する前の初期溶解(無磁場での溶解)を少なくとも80sec実施後に所定時間(90,120,150,180sec)の磁場印加を加えた溶解を行った。
また、表1、2の結果から、交流磁場印加の場合(条件1〜12)には、直流磁場印加の場合(条件13〜24)よりも全体的に攪拌効果が得られ、大幅に溶解時間を短縮できることを確認した。
実験2では、無磁場での溶解後に溶湯金属に交流磁場を印加する場合に、印加する交流電流の周波数によって結果に差が生じるかを検証した。
金属材料はCu:86at%、Al:14at%の素材、計50gを溶解し合金とするものとした。また、印加する電流は2A、周波数は0.1Hz(条件25)、1Hz(条件26)、5Hz(条件27)、10Hz(条件28)、15Hz(条件29)を設定した。
また、アーク電極棒に供給する直流電流は300Aとした。
また、磁場を印加する前の初期溶解(無磁場での溶解)を50sec実施後に150secの磁場印加を加えた溶解を行った。
表3に条件25、26、27、28、29の結果を示す。尚、表3において、○は溶け残り無し又は微小、×は両素材とも溶け残り有りを示す。
一方、印加する交流電流の周波数が15Hzの場合(条件29)には、溶湯の回転の切り替わる時間が短く、微振動に近いものとなり、充分な攪拌ができなかった。そのため、表3の結果に示されるように溶け残りが生じた。よって、印加する交流電流の周波数は、一方向の回転時間がある程度確保できるように高すぎないもの(即ち0.1Hzなど)が好ましいことを確認した。なお、0.1Hzより低い周波数では、所望の溶解時間内での溶湯回転切り替わり回数が少なく、溶解時間を延長する必要があり好ましくなかった。
実験3では、実験2の条件に対する比較例として、最後まで磁場を印加しない場合(条件30)と、直流磁場を印加する場合(条件31)についても検証した。その他条件は実験2と同じである。なお、条件31(直流磁場)は、実験1の条件19と略同条件であり、再現性の確認目的の条件となっている。
表4に条件30、31の結果を示す。尚、表4において、△は素材のどちらかが溶け残り有り、×は両素材とも溶け残り有りを示す。
2 ハース部材(ハース)
3 窪み
4 アーク電源
5 水冷板
10 電磁石
11 芯部材
12 コイル
14 交流電圧供給部
15 アーク電極棒
M 金属材料、溶湯金属
Claims (3)
- 金属材料が配置されるハース部材と、
前記ハース部材の上方に配置されたアーク溶解用電極と、
前記アーク溶解用電極に直流電流を供給するアーク電源と、
リング状の芯部材と前記芯部材の外周面に周方向に沿って線材が多重に巻回されてなるコイルとを有し、前記ハース部材の裏面側に設けられた、交流磁場を形成する電磁石と、
前記電磁石に交流電流を供給する交流電圧供給部と、を備えたアーク溶解装置を用いて、
前記アーク溶解用電極から前記ハース部材上に配置された金属材料に対して、アーク放電による加熱を行い、前記金属材料を溶解する金属溶解方法であって、
前記金属材料を加熱し形成した溶湯金属に対し、所定周波数の交流電流が供給される前記電磁石によって形成される交流磁場により、前記ハース部材上の溶湯金属がローレンツ力によって回転させられ、かつ、前記交流磁場が磁場方向の反転を生じることにより所定の周期で溶湯金属の回転方向の切り換えが繰り返されるステップを実施し、
かつ、前記ステップにおける前記電磁石に供給される交流電流の周波数が0.1Hz以上10Hz以下の範囲であることを特徴とする金属溶解方法。 - 前記金属材料を加熱し形成した溶湯金属に対し、所定周波数の交流電流が供給される前記電磁石によって形成される交流磁場により、前記ハース部材上の溶湯金属がローレンツ力によって回転させられ、かつ、前記交流磁場が磁場方向の反転を生じることにより所定の周期で溶湯金属の回転方向の切り換えが繰り返されるステップの前に、
少なくとも所定時間の間、磁場を印加せずに前記金属材料を加熱し、ボタン状の溶湯金属を形成するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載された金属溶解方法。 - 前記金属材料を加熱し形成した溶湯金属に対し、所定周波数の交流電流が供給される前記電磁石によって形成される交流磁場により、前記ハース部材上の溶湯金属がローレンツ力によって回転させられ、かつ、前記交流磁場が磁場方向の反転を生じることにより所定の周期で溶湯金属の回転方向の切り換えが繰り返されるステップにおいて、
前記ハース部材上の溶湯金属の下方に配置された電磁石に対し、所定周波数の交流電流を印加するとともに、印加電圧の強弱を変化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された金属溶解方法。
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