JP7339098B2 - アーク溶解炉装置及び被溶解物のアーク溶解方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、このアーク溶解法では溶融した被溶解物が攪拌され難いため、特に、被溶解物が均一に混ざりにくい複数の元素から成る合金では、均一な品質の金属塊が得られないという問題があった。
図6および図7に示すように、溶解装置のハース50が水冷銅炉床から成り、そのハース50に磁石がサマリウムコバルト(SmCo)などから成るリング状の永久磁石(Magnet ring)51が設けられている。
図6(a)および図7に示すように、ハース50に金属材料Mを入れて、ハースの上方に配置されたアーク電極からアークを発生させると、アークの熱により、上部から下部に向かって金属材料Mが溶解していく。このとき、溶融金属(Molten alloy)の電気抵抗は高温ほど高くなるため、アーク電流(Arc DC current)は、まず電気抵抗の小さい未溶解領域(Insufficient melted region)の見られる溶融金属の底部に向かい、さらにそこで溶融金属Mの底部の縁とハース50との間で生成されている凝着部に向かう。すなわち、溶融金属Mの底部では、中心から周縁に向かってほぼ水平方向に流れていくと考えられる。
この力は、溶融金属Mの底部で、溶融金属Mの中心から周縁に向かってほぼ水平方向に流れるアーク電流、および上向きの磁場のそれぞれに対して垂直な方向を有し、水平面内で溶融金属を回転させるように作用する。
尚、この力は、アーク電流が強ければ強いほど、また磁石が強ければ強いほど、強くなる。
そして、その力の方向に沿って、アーク放電で溶解した金属材料に流れが発生するため、金属材料を攪拌することができる。このように、この溶解装置は、アーク放電とともに磁場を印加するだけの比較的簡単な構造で、金属材料を攪拌することができる。
しかしながら、このローレンツ力は、アーク電流が強ければ強いほど、また磁石が強ければ強いほど、強くなる。
そのため、アーク電極に対して、溶解に必要な電流を印加した際、前記磁石の磁束密度と相俟って、過度なローレンツ力が溶融金属に作用する虞があった。そのため、溶融した被溶解物の湯面から溶融物が飛沫となり飛散し、所定の量、また目的とする混合比の合金(被溶解物)が得られないという技術的課題があった。
しかしながら、溶融した被溶解物に作用するローレンツ力が小さくした場合、溶融した被溶解物を十分に攪拌することができず、均一な被溶解物を得ることができないという技術的課題があった。
即ち、磁石による磁場強度を大きくすることにより、溶融した被溶解物に作用するローレンツ力を大きくし、溶融した被溶解物を十分に攪拌する。
一方、磁石による磁場強度を小さくすることにより、溶融した被溶解物に作用するローレンツ力を小さくし、溶融した被溶解物の湯面から溶解物が飛沫となり飛散するのを抑制する。また、溶融した被溶解物に作用するローレンツ力を小さくし、溶融した被溶解物を凝固するにより、被溶解物を楕円体形状とすることができる。
その結果、大きなローレンツ力を作用させることにより、被溶解物をより攪拌することができ、一方、小さなローレンツ力を作用させることにより、被溶解物の湯面からの飛散を抑制することができる。また、ローレンツ力の作用をより小さくして、溶融した被溶解物を凝固するにより、被溶解物を楕円体形状とすることができる。
凹部最低底面の磁束密度の絶対値が5mT未満の場合には、磁場強度が小さく、溶融した被溶解物の十分な攪拌を行うことができず、好ましくない。
また、前記凹部最低底面の磁束密度の絶対値が200mTを超える場合には、溶融した被溶解物の飛散を抑制できないため、好ましくない。
前記凹部最低底面の磁束密度の絶対値が5mT未満にすることにより、溶融した被溶解物が凝固する際、被溶解物を楕円体形状とすることができる。
このように、永久磁石が鋳型の下側に最も接近した状態と、永久磁石が鋳型の下方から最も離れた状態とになされることにより、被溶解物をより攪拌することができ、また被溶解物の湯面から溶解物が飛沫となり飛散するのを抑制できる。また、永久磁石が鋳型の下側に最も接近した状態と、永久磁石が鋳型の下方から最も離れた状態に、繰り返しなされることにより、被溶解物をより攪拌することができる。
その結果、ローレンツ力を大きくすることにより、被溶解物をより攪拌することができ、一方、被溶解物に作用するローレンツ力を小さくすることにより、溶融した被溶解物の湯面から、溶融した被溶解物が飛散するのを抑制することができる。そして、最後は、永久磁石が鋳型の下方から最も離れた状態とされ、被溶解物に作用するローレンツ力を小さくして、被溶解物の凝固がなされるため、被溶解物の形状を整えることができ、被溶解物を楕円体形状とすることができる。
先ず、本発明の実施形態のアーク溶解炉装置1の全体構成を、図1を用いて説明する。
図1に示すように、アーク溶解炉装置1は、溶解室2の下面に銅鋳型3が密着し、溶解室2は密閉容器となされている。
また、銅鋳型3の下方には、冷却水が循環する水流路4aを有する冷却体4が設けられ、冷却体4上に銅鋳型3が配置されることで、銅鋳型3は水冷鋳型となされている。
この水冷電極(アーク電極)5のタングステン製の先端部は、銅鋳型3の上面(凹部3a)と相対向する位置に配置されている。また、この水冷電極(アーク電極)5の先端は、ハンドル部(図示しない)の操作によって溶解室2を上下、前後、左右に移動できるようになされている。
また、前記水冷電極5は、電源部10の陰極に電気的に接続され、前記水冷電極5に電力を供給するようになされている。また前記電源部10の陽極側は溶解室2、銅鋳型3と共に、接地(アース)されている。
尚、不活性ガス供給部(図示せず)が設けられ、溶解室2を真空に排気した後に、この不活性ガス供給部から溶解室2の内部に不活性ガスが供給、封入され、溶解室2内は不活性ガス雰囲気となされている。
また、この永久磁石20は、円板形状に限定されるものではなく、リング状の磁石であっても良い。一例を挙げれば、外径が30mm、内径が6mm、厚みが10mmのリング状の磁石であっても良い。
この永久磁石進退機構21は、永久磁石20が先端に取り付けられたピストンロッド21aと、ピストンロッド21aの後端に取り付けられたピストン21bと、前記ピストン21bが摺動するシリンダ21cとを備えている。
この室21d、室21eには、エアー導入排出口21f、21gが設けられている。このエアー導入排出口21f、21gは,コンプレッサ21hと接続されている。また、コンプレッサ21hは、図示しない切換え弁等を制御する進退機構制御部22に接続されている。
同様に、そして、エアー導入排出口21gから室21e内にエアー導入され、ピストン21bが摺動すると、室21d内のエアーは、エアー導入排出口21fから排出されるように構成されている。即ち、図示しない切換え弁を動作させることにより、コンプレッサ21hからのエアーが、エアー導入排出口21fとエアー導入排出口21gのいずれかの導入排出口に導入されるように構成されている。
そして、永久磁石20を鋳型3に対して進退させることにより、鋳型凹部3aにおける磁束密度(磁場強度)が変化する。
したがって、永久磁石20を鋳型3に対して進退させることにより、鋳型凹部3aにおける磁束密度(磁場強度)が変化する。被溶解物に作用するローレンツ力は、鋳型凹部3aにおける磁束密度(磁場強度)が強ければ強いほど、強くなる。
更に、被溶解物に作用するローレンツ力を小さくして、溶融した被溶解物を凝固させることにより、被溶解物を楕円体形状とすることができる。
前記凹部3aの最低底面の磁束密度の絶対値が5mT未満の場合には、磁場強度が小さく、被溶解物Mの十分な攪拌ができず、好ましくない。
また、前記凹部3aの最低底面の磁束密度の絶対値が200mTを超える場合には、溶融した被溶解物Mの飛散を抑制できないため、好ましくない。
前記凹部3aの最低底面の磁束密度の絶対値が5mT未満にして、溶融した被溶解物を凝固するにより、被溶解物を楕円体形状とすることができる。
即ち、永久磁石20が図3に示す状態と、図4に示す状態とに制御され、または、永久磁石20が図3に示す状態と図4に示す状態に繰り返しなされる。
このように、永久磁石20が鋳型3の下方に最も接近した状態と、磁場源20が鋳型3の下方から最も離れた状態とが制御され、または、必要に応じて繰り返しなされることにより、被溶解物Mをより攪拌することができる。
被溶解物Mに作用するローレンツ力を小さくして、溶融した被溶解物Mが凝固することにより、被溶解物の表面張力によって、被溶解物を楕円体形状とすることができる。
具体的には、CCDカメラ等によって、溶湯の形状を画像解析し、その画像変化(形状変化)に応じた検出信号を、制御装置に送出する。そして前記制御装置11によって電源部10からの出力電流(電流の強度)と該電流周波数を制御し、前記水冷電極5からのアーク放電の出力強度に強弱を加えるように構成されている。
このように、アーク放電の出力強度に強弱を加えることによっても、被溶解物Mに作用するローレンツ力に強弱を加えることができる。
尚、永久磁石進退機構21には、ピストンロッド21aの位置を検出するセンサ(図示せず)が設けられ、センサからの信号が進退機構制御部22に送出され、コンプレッサ21hからのエアーが導入されるエアー導入排出口が選択される。またセンサからの信号によって、ピストンロッド21aの移動が停止されるように構成されている。
尚、前記永久磁石進退機構21の進退動作に加えて、前記したように、前記制御装置11によって、アーク放電の出力強度に強弱を加えて、被溶解物Mに作用するローレンツ力を制御しても良い。
尚、図1中、符号7は、溶解室2の下面部分を操作するレバーであって、このレバー7を操作することにより、溶解室2から下面部の銅鋳型3を取外すことができ、前記銅鋳型3上(凹部3a内)に被溶解物を収容し、また凹部3a内から被溶解物を取出すことができる。
まず、秤量した被溶解物を銅鋳型3上に載置(凹部3aに収容)する。そして、溶解室2内を不活性ガス、通常はアルゴンガス雰囲気とした後に、水冷電極5のタングステン電極(陰極)と銅鋳型3上の被溶解物M(陽極)との間でアーク放電を発生させ、被溶解物Mを溶解する。
合金の作製においては、複数の金属材料を秤量し銅鋳型3上に載置(凹部3aに収容)する。そして、上記場合と同様に、溶解室2内を不活性ガス、通常はアルゴンガス雰囲気とした後に、水冷電極5のタングステン電極(陰極)と銅鋳型3上の合金材料M(陽極)との間でアーク放電を発生させ、その熱エネルギーにより複数の異なる合金材料Mが溶解し、合金化される。
ところで、実際は水冷銅鋳型に接する被溶解物の底面の液化は遅く、上部から溶解が始まり、融けた部分から図3(a)に示すように回転が始まる。そして、溶解が進むに従い溶湯の回転も激しくなり図3(b)に示すように遠心力により溶湯は凹部の斜面に沿って盛り上がり、盛り上がった溶湯は中心部に向かって落下する。このような動きにより効果的な攪拌が行われる。
即ち、永久磁石20が鋳型3の下側に最も接近した位置にある場合には、被溶解物Mに作用するローレンツ力は最も強くなり、図3(a)に示すように、溶融した被溶解物Mが回転する。このとき、前記回転によって図3(b)に示すように、溶融した被溶解物は凹部3aの径方向外側に拡がる。
このような被溶解物Mの回転動作、拡り動作によって、被溶解物Mは攪拌される。
即ち、永久磁石20が鋳型3の下方に最も離れた位置にある場合には、被溶解物Mに作用するローレンツ力が小さくなり、溶融した被溶解物Mの回転は遅くなり、又は、回転することはなく、図4(a)(b)に示すように、溶融した被溶解物の自重と表面張力により、被溶解物は、楕円体形状となる。
尚、既に述べたように、永久磁石進退機構21によって永久磁石20が鋳型3の下側に最も接近した際、凹部3aの最低底面の磁束密度の絶対値が5mT以上200mT以下の範囲内にあることが望ましい。また永久磁石進退機構21によって、永久磁石20が鋳型3の下方から最も離れた際、凹部3aの最低底面の磁束密度の絶対値が5mT未満であることが望ましい。
被溶解物Mに作用するローレンツ力を小さくして、凝固することにより、被溶解物Mの形状を整えることができ、溶融した被溶解物Mを楕円体形状とすることができる。
2 溶解室
3 銅鋳型
3a 凹部
4 冷却体
4a 水流路
5 水冷電極(アーク電極)
6 反転棒
7 下面部操作レバー
10 電源部
11 制御装置
12 溶湯計測手段
20 永久磁石
21 永久磁石進退機構
21a ピストンロッド
21b ピストン
21c シリンダ
21d 室
21e 室
21f エアー導入排出口
21g エアー導入排出口
21h コンプレッサ
22 進退機構制御部
Claims (6)
- 溶解室の内部に設置された凹部を有する鋳型と、前記凹部に収容された被溶解物を加熱溶解するアーク電極とを備えたアーク溶解炉装置であって、
前記アーク電極からのアーク放電により前記被溶解物中を流れる電流の方向に対して、交差する方向に磁場を印加するために、鋳型の下方に配置された永久磁石と、
前記永久磁石による鋳型凹部における磁束密度を変化させるため、前記永久磁石を鋳型に対して進退させる永久磁石進退機構と、
を備えることを特徴とするアーク溶解炉装置。 - 前記永久磁石進退機構によって永久磁石が鋳型の下側に最も接近した際、前記凹部最低底面の磁束密度の絶対値が5mT以上200mT以下の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載のアーク溶解炉装置。
- 前記永久磁石進退機構によって永久磁石が鋳型の下方から最も離れた際、前記凹部最低底面の磁束密度の絶対値が5mT未満であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のアーク溶解炉装置。
- 前記永久磁石進退機構により、前記永久磁石が、鋳型の下側に最も接近した状態と、永久磁石が鋳型の下方から最も離れた状態とに制御され、
または、前記永久磁石が、最も接近した状態と最も離れた状態とに繰り返しなされることを特徴とする請求項1記載のアーク溶解炉装置。 - 融けた被溶解物が凝固する際は、前記永久磁石進退機構は、永久磁石が鋳型の下方から最も離れた状態となされることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアーク溶解炉装置。
- 溶解室の内部に設置された凹部を有する鋳型と、前記凹部に収容された被溶解物を加熱溶解するアーク電極とを備えたアーク溶解炉装置を用いた被溶解物の溶解方法であって、
前記アーク溶解炉装置は、前記アーク電極からのアーク放電により前記被溶解物中を流れる電流の方向に対して、交差する方向に磁場を印加するために、鋳型の下方に配置された永久磁石と、
前記永久磁石による、鋳型凹部における磁束密度を変化させるため、前記永久磁石を鋳型に対して進退させる永久磁石進退機構と、
を備え、
前記永久磁石が、永久磁石進退機構によって鋳型の下側に最も接近した位置と、鋳型の下方から最も離れた位置とに制御され、
または、前記永久磁石が、最も接近した状態と最も離れた状態とに繰り返しなされ、
永久磁石が鋳型の下方から最も離れた状態で、溶融した被溶解物の凝固がなされることを特徴とする被溶解物の溶解方法。
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