以下、回転電機制御装置の一実施形態を説明する。
図1に示すように、車両1は、該車両1の駆動源たる内燃機関2を備える。内燃機関2には、その動力を伝達可能にドライブシャフト3が機械的に連結されるとともに、該ドライブシャフト3を介して車両前方側の左右一対のフロントタイヤ4がそれぞれ連結される。
内燃機関2には、その動力により回転して発電する発電機(本実施形態では、三相ブラシレスモータ)5が機械的に連結される。そして、車両1は、発電機5の発電により充電される電源により動作し、車両1の運転手の運転を支援する車両用制御装置10を備える。車両用制御装置10は、運転を支援する機能として後述する操舵機構9にアシスト力を付与する第1の回転電機ユニットとしてのEPSユニット20と、運転を支援する機能として車両1の後述するリヤタイヤ7に駆動力を付与する第2の回転電機ユニットとしての駆動ユニット30とから構成される。
発電機5には、その発電により充電され、EPSユニット20の電源となるEPS用バッテリ21が電気的に接続される。また、発電機5には、その発電により充電され、駆動ユニット30の電源となる駆動用バッテリ31が電気的に接続される。各バッテリ21,31は、例えば、リチウムイオン電池からなる。EPS用バッテリ21は、供給可能な電力に基づく電源電圧が駆動用バッテリ31に比べて低電圧(本実施形態では、12[V])とされる。駆動用バッテリ31は、比較的に高い電源電圧(本実施形態では、200[V])とされる。
EPS用バッテリ21には、この電力により動作し、EPSユニット20を制御するEPS制御装置22が電気的に接続される。EPS用バッテリ21には、EPS制御装置22を介して第1の回転電機としてのEPSモータ(本実施形態では、三相ブラシレスモータ)23が電気的に接続される。駆動用バッテリ31には、この電力により動作し、駆動ユニット30を制御する駆動制御装置32が電気的に接続される。駆動用バッテリ31には、駆動制御装置32を介して第2の回転電機としての駆動モータ(本実施形態では、EPSモータ23と同じく三相ブラシレスモータ)33が電気的に接続される。
EPSモータ23には、運転者によるステアリングホイール8の操作に基づいて各フロントタイヤ4を転舵させる操舵機構9が連結される。操舵機構9は、ステアリングホイール8が固定されるステアリングシャフト11と、ステアリングシャフト11の回転に応じて軸方向に往復動するラック軸12とを備える。ステアリングシャフト11は、ステアリングホイール8側から順にコラム軸11a、中間軸11b、及びピニオン軸11cを連結して構成される。
ラック軸12とピニオン軸11cとは、所定の交差角をもって配置され、ラック軸12に形成されたラック歯12aとピニオン軸11cに形成されたピニオン歯11dとが噛合されることによりラックアンドピニオン機構13が構成される。また、ラック軸12の両端には、タイロッド14がそれぞれ連結され、タイロッド14を介してフロントタイヤ4がそれぞれ連結される。
したがって、操舵機構9では、運転者のステアリング操作に伴うステアリングシャフト11の回転がラックアンドピニオン機構13によりラック軸12の軸方向移動に変換され、この軸方向移動がタイロッド14を介して左右のフロントタイヤ4にそれぞれ伝達されることによりこれらフロントタイヤ4の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
そして、EPSモータ23とコラム軸11aに連結されるウォームアンドホイール等の減速機24が連結され、EPSモータ23の動力が減速機24により減速されてアシスト力としてコラム軸11a、すなわち操舵機構9(負荷)にトルク伝達される。
駆動モータ33には、その動力を調整してドライブシャフト6に伝達する減速機34及びディファレンシャルギア(以下、「デフ」という)35が連結されるとともに、これら減速機34及びデフ35、さらにドライブシャフト6を介して車両後方側の左右一対のリヤタイヤ7がそれぞれ連結される。
車両1は、車両1の前方(フロント)側に装備される内燃機関2の動力により各フロントタイヤ4に車両1の駆動力を発生させる、所謂、FF方式の自動車である。また、車両1は、内燃機関2の動力により発電機5が発電して駆動用バッテリ31を充電し、この駆動用バッテリ31から電力を供給することによって、駆動モータ33が車両1(本実施形態では、各リヤタイヤ12)の駆動力を発生させる、所謂、ハイブリッド自動車である。
こういった車両1の駆動力は、駆動モータ33の動力がドライブシャフト6を回転させるトルク力として各リヤタイヤ7(負荷)にトルク伝達されることにより発生する。
車両用制御装置10には、車両1の走行状態等を検出するブレーキセンサ15A、アクセルセンサ16A、車速センサ17A、及びトルクセンサ18Aの各種センサが電気的に接続される。このうち、ブレーキセンサ15Aは、ブレーキペダル15のブレーキ操作量BRKを検出するセンサであり、アクセルセンサ16Aは、アクセルペダル16のアクセル操作量AQを検出するセンサである。車速センサ17Aは、車両1の車速SPを検出するセンサであり、トルクセンサ18Aは、ステアリングシャフト11に付与された操舵トルクTを検出するセンサである。
そして、図2に示すように、車両用制御装置10(EPS制御装置22及び駆動制御装置32)は、これらセンサからの検出信号に基づいて車両1の走行状態を把握し、その把握した走行状態に応じて各種車載装置を制御する。本実施形態では、こういった車載装置として例示するEPSモータ23及び駆動モータ33の駆動を制御する。
次に、車両用制御装置10、特に各制御装置22,32の構成について説明する。
図2に示すように、EPS制御装置22は、EPSモータ制御信号Smeを出力する第1の制御部としてのEPSマイクロプロセッサ(以下、「EPSMPU」という)51と、EPSモータ制御信号Smeに基づいてEPSモータ23に三相(U相、V相、W相)の駆動電力を供給する第1の駆動回路としてのEPSインバータ52とを備える。また、駆動制御装置32は、駆動モータ制御信号Smvを出力する第2の制御部としての駆動マイクロプロセッサ(以下、「駆動MPU」という)53と、駆動モータ制御信号Smvに基づいて駆動モータ33に三相の駆動電力を供給する第2の駆動回路としての駆動インバータ54とを備える。また、駆動制御装置32は、電圧制御信号Scvに基づいて駆動用バッテリ31の直流電力に基づく電源電圧を電源電圧以上又は電源電圧未満に昇圧、非昇圧、又は降圧する電源電圧制御部としてのDCDCコンバータ36を備える。
ここで、EPS制御装置22について説明する。
EPSインバータ52は、複数のトランジスタに分類されるスイッチング素子(本実施形態では、IGBT)としてのスイッチ61a〜61fを有する。具体的に、EPSインバータ52は、スイッチ61a,61d、スイッチ61b,61e、及びスイッチ61c,61fの各組の直列回路を基本単位(スイッチングアーム)とし、各スイッチングアームを並列に接続してなる周知の三相インバータとして構成される。そして、スイッチ61a,61d、スイッチ61b,61e、スイッチ61c,61fの各接続点は、EPS給電線62u,62v,62wを介してそれぞれEPSモータ23の各相のモータコイル63u,63v,63wに接続される。なお、EPSモータ制御信号Smeは、スイッチ61a〜61fのオンオフを規定するゲートオンオフ信号となる。そして、EPSモータ制御信号Smeに応答してスイッチ61a〜61fがオンオフし、各相のモータコイル63u,63v,63wへの通電パターンが切り替わることにより、三相の駆動電力がEPSモータ23へと出力される。
EPSインバータ52は、EPS給電線64を介してEPS用バッテリ21に接続される。EPS給電線64の途中であって、EPSインバータ52とEPS用バッテリ21との間には、EPS給電線64に通電される電流を平滑化する平滑コンデンサ64aが接続され、平滑コンデンサ64aよりもEPS用バッテリ21側には電源開放リレー65aを有するEPSリレー回路65が設けられる。なお、本実施形態の電源開放リレー65aには、図示しないコイルへの通電により開閉する機械式のリレーが採用される。EPSリレー回路65の電源開放リレー65aは、EPSMPU51に接続され、EPSMPU51から出力されるEPSリレー制御信号Sleによりオンオフする。そして、EPS制御装置22は、電源開放リレー65aがオンでEPS給電線64が導通することによりEPSインバータ52からEPSモータ23への駆動電力の供給が可能となる。一方、電源開放リレー65aがオフでEPS給電線64が遮断(開放)することによりEPSインバータ52からEPSモータ23への駆動電力の供給が不能となる。電源開放リレー65aは、後述する通常時は、オンする。
EPSMPU51には、車速センサ17Aにより検出される車速SP、及びトルクセンサ18Aにより検出される操舵トルクTがそれぞれ入力される。EPSMPU51には、EPSモータ23に設けられた回転角センサ66から該EPSモータ23の回転角θmeが入力される。EPSMPU51には、スイッチ61a〜61fの基準電位点側に設けられた相電流センサ67u,67v,67wからEPSモータ23の各相電流値Iue,Ive,Iweが入力される。そして、EPSMPU51は、各センサにより検出される状態量に基づいてEPSモータ23で発生させる目標トルクを演算し、該目標トルクが発生するようにEPSモータ23を制御するためのEPSモータ制御信号Smeを出力する。
次に、駆動制御装置32について説明する。
駆動インバータ54は、複数のトランジスタに分類されるスイッチング素子(本実施形態では、EPSインバータ52と同じくIGBT)としてのスイッチ71a〜71fを有する。駆動インバータ54は、EPSインバータ52と同じく周知の三相インバータとして構成される。そして、スイッチ71a,71d、スイッチ71b,71e、スイッチ71c,71fの各接続点は、駆動給電線72u,72v,72wを介してそれぞれ駆動モータ33の各相のモータコイル73u,73v,73wに接続される。
駆動インバータ54は、駆動給電線74を介して駆動用バッテリ31に接続される。駆動給電線74の途中であって、駆動インバータ54と駆動用バッテリ31との間には、駆動給電線74に通電される電流を平滑化する平滑コンデンサ74aが接続され、平滑コンデンサ74aよりも駆動用バッテリ31側にはDCDCコンバータ36が接続される。DCDCコンバータ36は、駆動用バッテリ31の直流電力に基づく電源電圧を電源電圧以上又は電源電圧未満で駆動インバータ54に印加可能にする。また、DCDCコンバータ36は、駆動インバータ54に印加可能な電圧として、電源電圧以上の範囲で電源電圧よりも所定の高電圧を印加するように昇圧制御する場合と、電源電圧相当を印加するように非昇圧制御する場合とがある。また、DCDCコンバータ36は、駆動インバータ54に印加可能な電圧として、電源電圧未満の範囲で電源電圧よりも所定の低電圧を印加するように降圧制御する場合がある。
駆動インバータ54と駆動モータ33との間には、駆動給電線72u,72vの途中にそれぞれ設けられた相開放リレー75u,75vを有する駆動リレー回路75が設けられる。なお、本実施形態の相開放リレー75u,75vには、機械式のリレーが採用される。駆動リレー回路75の相開放リレー75u,75vは、駆動MPU53に接続され、駆動MPU53から出力される駆動リレー制御信号Slvによりオンオフする。そして、駆動制御装置32は、相開放リレー75u,75vがオンで駆動給電線72u,72vが導通することにより駆動インバータ54から駆動モータ33への駆動電力の供給が可能となる。一方、相開放リレー75u,75vがオフで駆動給電線72u,72vが遮断することにより駆動インバータ54から駆動モータ33への駆動電力の供給が不能となる。相開放リレー75u,75vは、後述する通常時は、オンする。
駆動MPU53には、ブレーキセンサ15Aにより検出されるブレーキ操作量BRK、アクセルセンサ16Aにより検出されるアクセル操作量AQ、及び車速センサ17Aにより検出される車速SPがそれぞれ入力される。駆動MPU53には、駆動モータ33に設けられた回転角センサ76から該駆動モータ33の回転角θmvが入力される。駆動MPU53には、スイッチ71a〜71fの基準電位点側に設けられた相電流センサ77u,77v,77wから駆動モータ33の各相電流値Iuv,Ivv,Iwvが入力される。そして、駆動MPU53は、各センサにより検出される状態量に基づいて駆動モータ33で発生させる目標トルクを演算し、該目標トルクが発生するように駆動モータ33を制御するための駆動モータ制御信号Smvを出力する。
また、駆動MPU53には、DCDCコンバータ36の駆動用バッテリ31側に設けられた電圧センサ78から駆動用バッテリ31の電源電圧V1が入力される。駆動MPU53には、DCDCコンバータ36の駆動インバータ54側に設けられた電圧センサ79から駆動インバータ54に印加される印加電圧V2が入力される。そして、駆動MPU53は、各センサにより検出される電圧に基づいて駆動インバータ54に印加可能にする印加電圧を演算し、該印加電圧となるようにDCDCコンバータ36を制御するための電圧制御信号Scvを出力する。
駆動MPU53は、DCDCコンバータ36を逐一制御して印加電圧を調整することにより比較的に高電圧で動作する駆動インバータ54(駆動モータ33)の高効率化を図る。このため、駆動MPU53には、高い応答性が要求されるので、駆動モータ33の駆動に関わる以外の処理として、例えば、異常検出に関わる処理を並列処理することで異常検出信号Serを出力する第3の制御部としてのロジックIC55を備える。ロジックIC55には、相電流センサ77u,77v,77wから駆動モータ33の各相電流値Iuv,Ivv,Iwvが入力される。
そして、ロジックIC55は、相電流センサ77u,77v,77wにより検出される相電流値に基づいて駆動ユニット30の異常状態の検出を行う。この異常状態として、駆動用バッテリ31、駆動MPU53、駆動インバータ54、及びこれらを結ぶ給電線74のショート等の異常が検出される。
一方、EPSユニット20については、EPSMPU51が相電流センサ67u,67v,67wにより検出される相電流値に基づいてEPSユニット20の異常状態の検出を行う。この異常状態として、EPS用バッテリ21、EPSMPU51、EPSインバータ52、及びこれらを結ぶ給電線64のショート等の異常が検出される。
そして、EPSMPU51は、EPSユニット20の異常状態を検出すると、その旨をロジックIC55に指示するためのEPS異常検出信号Seeを出力し、電源開放リレー65aをオフにするEPSリレー制御信号Sleを出力する。なお、EPSMPU51は、EPS異常検出信号Seeの出力に合わせてEPSインバータ52のスイッチ61a〜61fをオフにするEPSモータ制御信号Smeを出力する。ロジックIC55は、EPS異常検出信号Seeを入力する場合、EPSユニット20の異常状態を検出したこととして、駆動ユニット30の正常状態の検出を条件に、駆動MPU53に対して異常検出信号Serを出力する。なお、ロジックIC55には、トルクセンサ18Aにより検出される操舵トルクT、及び回転角センサ66からEPSモータ23の回転角θmeも入力される。
例えば、EPSユニット20に異常が発生した場合には、EPSモータ23に駆動電力を供給できなくなり、駆動ユニット30に異常が発生した場合には、駆動モータ33に駆動電力を供給できなくなる。ここで、EPSユニット20の操舵機構9にアシスト力を付与する(運転を支援する)機能と、駆動ユニット30の車両1のリヤタイヤ7に駆動力を付与する(運転を支援する)機能とを比較すると、運転者に与える影響等から、操舵機構9にアシスト力を付与する機能の方が運転を支援する観点で重要度が高い。つまり、機能上の重要度の観点から、EPSユニット20の方が駆動ユニット30に比べて、冗長化させる(継続して駆動させる)優先順位が高い。この点を踏まえ、本実施形態の車両用制御装置10では、EPSユニット20に異常が発生しても、駆動ユニット30からEPSモータ23に駆動電力を供給可能に構成している。
具体的に、車両用制御装置10、すなわちEPSユニット20及び駆動ユニット30の間には、EPS給電線62u,62v,62wと駆動給電線72u,72v,72wとを接続する接続線81u,81v,81wを備える。
接続線81u,81v,81wの一端は、EPS給電線62u,62v,62wの接続点82u,82v,82wにそれぞれ接続される。接続点82u,82v,82wには、電源開放リレー65aがオフの場合にスイッチ61a〜61fのオンオフに応じた電圧が発生しなくなる、すなわちEPSインバータ52から駆動電力が供給されなくなる。
接続線81u,81vの他端は、駆動給電線72u,72vにおける相開放リレー75u,75vよりも駆動インバータ54側の接続点83u,83vにそれぞれ接続される。接続線81wの他端は、駆動給電線72wの接続点83wに接続される。接続点83u,83v,83wには、相開放リレー75u,75vがオフの場合にもスイッチ71a〜71fのオンオフに応じた電圧が発生する、すなわち駆動インバータ54から駆動電力が供給される。
各接続線81u,81v,81wには、接続点82u,82v,82wと接続点83u,83v,83wとの間の通電及び遮断を切替可能な切替リレー84u,84v,84wを有する機械式のリレーからなる切替回路84が設けられる。切替回路84の各切替リレー84u,84v,84wは、駆動MPU53に接続され、駆動MPU53から出力される切替信号Sswによりオンオフする。ただし、各ユニット20,30の異常状態の検出に基づいてEPSユニット20の異常状態が検出され、且つ駆動ユニット30の正常状態が検出される異常時以外の通常時は、切替リレー84u,84v,84wは、オフする。
具体的に、図3に示す供給切替処理を駆動ユニット30が主体となって行い、EPSユニット20の冗長化を図る。供給切替処理は、駆動ユニット30の駆動MPU53とロジックIC55とがそれぞれ処理を分担して行う。すなわち、ロジックIC55は、EPSユニット20が異常状態(EPS:異常)、且つ駆動ユニット30が正常状態(駆動:正常)であるか否か判断する(ステップS100)。ステップS100の判断は、EPS異常検出信号Seeの入力と、相電流センサ77u,77v,77wにより検出される相電流値とに基づいて行われる。なお、駆動MPU53は、ステップS100の処理時、駆動モータ33に関わる処理を並列処理可能である。
ステップS100にて、EPSユニット20が異常状態、且つ駆動ユニット30が正常状態を検出しないとき(S100:NO)、ロジックIC55は、ステップS100の処理を繰り返し行う。一方、ステップS100にて、EPSユニット20が異常状態、且つ駆動ユニット30が正常状態を検出するとき(S100:YES)、ロジックIC55は、異常検出信号Serを出力し、供給切替処理の主体を駆動MPU53に引き渡す。ロジックIC55は、その後も引き続き駆動ユニット30の異常状態の検出に従事し、異常状態の検出時にはその旨を駆動MPU53に指示して所定の処理(例えば、相開放リレー75u,75vをオフする)を行う。
駆動MPU53は、異常検出信号Serを入力すると、供給切替処理を割り込み処理として割り込ませ、供給切替処理のステップS101以後の処理を引き継いで行う。すなわち、駆動MPU53は、相開放リレー75u,75vをオフする駆動リレー制御信号Slvを出力する(ステップS101)。続いて、駆動MPU53は、EPS用バッテリ21の電源電圧相当の印加電圧となるように駆動用バッテリ31の電源電圧を降圧制御する電圧制御信号Scvを出力する(ステップS102)。
そして、駆動MPU53は、切替リレー84u,84v,84wをオンする切替信号Sswを出力し(ステップ103)、EPSユニット20に代わって駆動ユニット30によるEPSモータ23の制御を開始する(ステップS104)。駆動MPU53は、EPSMPU51がEPSモータ23を制御するために必要なプログラム等の各種情報を有し、各種情報を用いてEPSモータ23で発生させる目標トルクを演算し、該目標トルクが発生するようにEPSモータ23を制御するためのEPSモータ制御信号Smeに相当する駆動モータ制御信号Smvを出力する。駆動MPU53は、各センサにより検出される状態量として、操舵トルクT及びEPSモータ23の回転角θmeについてはロジックIC55を介して取り込む。
このため、EPSユニット20に異常が発生していない場合、電源開放リレー65a及び相開放リレー75u,75vがオン、切替リレー84u,84v,84wがオフになっている。
すなわち、図4(a)に示すように、EPSユニット20では、EPS用バッテリ21とEPSインバータ52とが導通することで、EPSインバータ52からEPSモータ23への駆動電力の供給が可能になっている。また、駆動ユニット30では、駆動インバータ54と駆動モータ33とが導通することで、駆動インバータ54から駆動モータ33への駆動電力の供給が可能になっている。また、各ユニット20,30の間では、EPSモータ23と駆動インバータ54とが遮断され、各ユニット20,30が遮断されている。
一方、EPSユニット20に異常が発生する場合、まずEPSMPU51により電源開放リレー65aがオフされる。本実施形態では、EPSユニット20の異常を検出するEPSMPU51が検出部として機能する。
すなわち、図4(b)に示すように、EPSユニット20では、EPS用バッテリ21とEPSインバータ52とが遮断されることで、EPSインバータ52からEPSモータ23への駆動電力の供給が遮断される。本実施形態では、電源開放リレー65aとこれのオンオフを制御するEPSMPU51が遮断部として機能する。この場合、EPSユニット20では、EPSMPU51によりスイッチ61a〜61fも合わせてオフされることで、EPS給電線62u,62v,62wが実質的に遮断される。また、各ユニット20,30の間では、EPSモータ23と駆動インバータ54とが遮断され、各ユニット20,30が遮断されている。
続いて、供給切替処理のステップS100にて、ロジックIC55によりEPSユニット20の異常状態、且つ駆動ユニット30の正常状態が検出されると、供給切替処理のステップS101を経て、駆動MPU53により駆動ユニット30における相開放リレー75u,75vがオフされる。続いて、ステップS102を経て、駆動MPU53により駆動用バッテリ31の電源電圧がEPS用バッテリ21の電源電圧相当まで降圧制御される。本実施形態では、ステップS100の処理に関わるロジックIC55が検出部として機能し、ステップS101の処理に関わる駆動MPU53と相開放リレー75u,75vが切替部として機能し、ステップS102の処理に関わる駆動MPU53とDCDCコンバータ36が降圧制御部として機能する。
すなわち、図4(b)に示すように、駆動ユニット30では、駆動インバータ54と駆動モータ33とが遮断されることで、駆動インバータ54から駆動モータ33への駆動電力の供給が遮断されるようになる。また、駆動用バッテリ31の電源電圧がDCDCコンバータ36を経て降圧されることで、EPSモータ23へ駆動電力を供給可能になる。各ユニット20,30の間では、EPSモータ23と駆動インバータ54とが遮断され、各ユニット20,30が遮断されている。
続いて、供給切替処理のステップS103を経て、駆動MPU53により各ユニット20,30の間における切替リレー84u,84v,84wがオンされ、ステップS104を経て、駆動MPU53によりEPSモータ23の駆動が継続されることでEPSユニット20の機能維持がなされる。本実施形態では、ステップS103の処理に関わる切替リレー84u,84v,84wが切替部として機能する。
すなわち、図4(b)に示すように、各ユニット20,30の間では、EPSモータ23と駆動インバータ54とが導通されることで、駆動インバータ54からEPSモータ23へ駆動電力を供給可能に各ユニット20,30が接続される。そして、駆動ユニット30によるEPSモータ23の駆動が開始され、EPSユニットの冗長化がなされる。
以上に説明した車両用制御装置10、すなわち各制御装置22,23によれば、以下の(1)〜(5)に示す作用及び効果を奏する。
(1)本実施形態では、まず駆動ユニット30を用いてEPSユニット20の冗長化を目的とする。そのためにはEPSユニット20の異常状態の検出が必要で、EPSMPU51と協働したロジックIC55の制御により異常状態の検出を可能にする。また、各ユニット20,30では、そもそも各バッテリ21,31に基づく電源電圧の違いがあるので、DCDCコンバータ36を用いた駆動MPU53の降圧制御により、電源電圧の違いの問題を解決する。また、各ユニット20,30では、そもそも各モータ23,33を個々に制御することが前提なので、電源開放リレー65aを用いたEPSMPU51の制御によりEPSモータ23へのEPSインバータ52の駆動電力の供給を不能にする。さらに、各ユニット20,30では、相開放リレー75u,75v、及び切替リレー84u,84v,84wを用いた駆動MPU53の制御によりEPSモータ23への駆動インバータ54の駆動電力の供給を可能にする。
上記構成よれば、EPSユニット20の異常状態では、駆動モータ33による機能を喪失するが、EPSモータ23による機能が維持される。しかも、EPSユニット20が異常状態でなければ、駆動ユニット30では駆動モータ33による機能が発揮されるので、EPSユニット20の冗長化のための構成が余分であったり、部品点数の著しい増加が抑えられたりし、簡素な構成で冗長性を高めることができる。
(2)駆動ユニット30には、駆動MPU53とロジックIC55とを備えている。これにより、駆動MPU53による駆動ユニット30に係る処理、すなわち駆動モータ33の駆動に係る処理と、ロジックIC55によるEPSユニット20の異常状態の検出に係る処理との並列処理を可能にしている。このため、EPSユニット20の冗長化のために、駆動ユニット30に係る処理への処理負担の増加を抑えることができる。
(3)例えば、EPSユニット20による機能を喪失して駆動ユニット30による機能を維持しても運転者の安全性の観点では、無意味となる。そこで、本実施形態では、駆動ユニット30による機能を喪失してでも、駆動ユニット30に比べて車両の運転を支援する機能として運転者の安全性の観点で機能維持の優先度(重要度)が高いと言えるEPSユニット20の機能維持を可能にした。これにより、EPSユニット20について簡素な構成で冗長性を高めたとしても、運転者の安全性も確保することができる。
(4)車両1の操舵機構9へのアシスト力の付与に異常があると、車両1の走行に支障をきたすので優先的な機能維持が必要である他、車両1を走行させないようにすることも運転者の安全性の確保に寄与する。車両1の操舵機構9へのアシスト力の付与に異常がある場合、車両1のリヤタイヤ7に駆動力を付与する機能を喪失させることはむしろ運転者の安全性の確保の上で有効と考えることもできる。そこで、本実施形態のように、機能を維持させるユニットとしてEPSユニット20を対応付け、機能を喪失させるユニットとして駆動ユニット30を対応付けることで、運転者の安全性を効果的に確保することができる。
(5)EPSユニット20に異常が発生する場合、EPSモータ23の機能を停止するように電源開放リレー65aがオフされることは至極当然と言える。これに対し、EPSユニット20の冗長化のために駆動ユニット30が正常でなければDCDCコンバータ36及び切替リレー84u,84v,84wが機能したとしても、その後にEPSユニット20による機能維持が果たされる可能性は低い。そこで、本実施形態によれば、EPSユニット20の冗長化のためには駆動ユニット30が正常状態であることを条件にすることで、EPSユニット20の冗長化の意味をより強めることができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・電源開放リレー65aのオフは、駆動ユニット30が正常状態であることを条件に行うようにしてもよい。また、供給切替処理のステップS100は、EPSユニット20が異常状態であればステップS101へと移行するようにしてもよい。
・EPSユニット20に代えては、車両の運転を支援するオートブレーキ機能を有するユニットの適用も可能である。オートブレーキ機能は、モータを駆動源としてブレーキペダル15にアシスト力を付与する機能であって、駆動ユニット30に比べて低電圧、且つ運転者の安全性の観点で機能維持の優先度が高いと言える。また、EPSユニット20とオートブレーキ機能を有するユニットとを同時搭載することもでき、これら複数ユニットを対象にした駆動ユニット30を用いた冗長化を実現してもよい。この場合には、EPSユニット20とオートブレーキ機能を有するユニットとの間で運転者の安全性の観点で機能維持の優先度を定めて、優先度が高いユニットを優先して冗長化する等してもよい。
・駆動ユニット30に代えては、車両の運転を支援するVGR機能を有するユニットの適用も可能である。VGR機能は、モータを駆動源としてステアリングホイール8の操舵角に対するフロントタイヤ4の転舵角の比率、すなわち入力側から出力側への回転伝達比(ステアリングギヤ比)を可変させる機能であって、EPSユニット20に比べては高電圧、且つ運転者の安全性の観点で機能維持の優先度が低いと言える。また、駆動ユニット30とVGR機能を有するユニットとを同時搭載することもでき、これら複数ユニットを用いてEPSユニット20の冗長化を実現してもよい。この場合には、駆動ユニット30とVGR機能を有するユニットとの間で運転者の安全性の観点で機能維持の優先度を定めて、優先度が低いユニットを用いて冗長化する等してもよい。
・ロジックIC55は、駆動制御装置32の構成要素としたが、EPS制御装置22の構成要素とすることもできる。また、ロジックIC55が行う処理を駆動MPU53が代替することでロジックIC55を構成から削除することもできる。
・供給切替処理のステップS101,S103については、駆動MPU53の代わりにロジックIC55が行うようにしてもよい。この場合には、ロジックIC55が状況に応じて、各リレーのオンオフに応じた電気信号(電圧)を出力可能であればよい。また、供給切替処理のステップS102については、ロジックIC55が降圧制御を駆動MPU53に指示することで、ロジックIC55の処理として位置付けることもできる。
・供給切替処理のステップS104については、EPSMPU51が駆動MPU53を介してEPSモータ23の駆動を制御することもできるし、EPSMPU51が駆動インバータ54を直接制御してEPSモータ23の駆動を制御することもできる。
・電源開放リレー65aのオンオフを駆動MPU53が行ったり、相開放リレー75u,75vや切替リレー84u,84v,84wのオンオフをEPSMPU51が行ったりしてもよい。
・駆動リレー回路75が駆動給電線72u,72v,72wのそれぞれに設けられる3つの相開放リレーを有する構成としてもよい。また、電源開放リレー65a、相開放リレー75u,75v、及び切替リレー84u,84v,84wに機械式のリレーを用いたが、これに限らず、トランジスタに分類されるスイッチング素子や他のスイッチを用いてもよい。
・ユニットの冗長化については運転者の安全性の観点で機能維持の優先度を考慮していなくてもよく、ユニットとしてDCDCコンバータを含むユニットとの間での冗長化が少なくとも実現可能であればよい。
・EPSユニット20の異常時における降圧制御では、EPSモータ23の駆動に支障がない程度まで駆動用バッテリ31の電源電圧を降圧できればよく、モータやユニットの仕様に応じては降圧制御の内容を変更すればよい。
・EPSユニット20では、EPSインバータ52とEPSモータ23との間に相開放リレーを設けることで、EPSリレー回路65を代替してもよい。
・EPSユニット20及び駆動ユニット30を合わせて制御する各MPU51,53を統合した統合MPUを設けてもよい。
・各モータ23,33の両方、又は何れかにブラシ付きモータを用いることもできる。この場合には、各インバータ52,54についてもモータに応じて単相インバータ等に変更すればよい。
・上記実施形態のEPSユニット20は、コラム軸11aにアシスト力を付与するコラムアシスト型としたが、例えば、デュアルピニオン型等の他のモデルへも適用可能である。
・上記実施形態の駆動ユニット30は、車両1のリヤタイヤ7に駆動力を付与するモデルとしたが、例えば、車両1のフロントタイヤ4に駆動力を付与するモデルへも適用可能である。
・車両1は、駆動方式の異なるハイブリッド自動車や、所謂、電気自動車であってもよい。その他、車両1は、電源として燃料電池を用いる燃料電池自動車であってもよい。
次に、上記実施形態及び別例(変形例)から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記遮断部は、前記異常状態が検出される場合に動作を開始する一方、前記降圧制御部、及び前記切替部は、前記異常状態が検出され、且つ前記第2の回転電機ユニットが正常状態であることを条件に各種動作を開始する。第1の回転電機ユニットに異常がある場合、第1の回転電機の機能を停止するように遮断部が動作開始することは至極当然と言える。これに対し、第1の回転電機ユニットの冗長化のために第2の回転電機ユニットが正常でなければ降圧制御部及び切替部が機能したとしても、その後に第1の回転電機ユニットによる機能維持が果たされる可能性は低い。そこで、上記構成によれば、第1の回転電機ユニットの冗長化のためには第2の回転電機ユニットが正常状態であることを条件にすることで、第1の回転電機ユニットの冗長化の意味をより強めることができる。