以下、本発明に係るクラッチシステムの実施の形態について、図1から図8を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るクラッチシステムが適用される車両の一例を示す左側面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る鞍乗型の車両は、例えば、両方の足を揃えて乗車できる空間をシート2の前方に有するスクータ型の自動二輪車1である。
自動二輪車1は、車両の前後に延びる車体フレーム5と、車体フレーム5に支持されて車両の上下方向へ揺動自在なパワーユニット6と、車体フレーム5に支持されて車両の左右方向へ操舵自在なステアリング機構7と、ステアリング機構7に支持される回転自在な前輪8と、パワーユニット6に支持される回転自在な後輪9と、車体フレーム5を覆う車体カバー11と、を備えている。
車体フレーム5は所謂アンダーボーン形式であり、一体に組み合わされる複数の鋼鉄製中空管を備えている。具体的には、車体フレーム5は、前部に配置されるヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12の下端後部に接続されるダウンチューブ13と、ダウンチューブ13の後端部に接続される左右一対のリヤフレーム15と、を備えている。
ヘッドパイプ12は、ステアリング機構7を車両の左右方向へ操舵自在に支持している。
ダウンチューブ13は、側面視において略L字形状に曲がる鋼管である。ダウンチューブ13の前半部は、ヘッドパイプ12に接続される上端部から下端部に渡って後ろ斜め下方に向かって直線状に延びている。ダウンチューブ13の中間部は、前半部の下端から連続して後方へ向かって屈曲している。ダウンチューブ13の後半部は、中間部の後端から連続して略水平方向へ直線状に延びている。
ダウンチューブ13の後端部には、自動二輪車1を起立状態(図1の状態)で支えるスタンド16が設けられている。スタンド16は、自動二輪車1を自立させる展開状態と、自動二輪車1の走行の妨げにならない収納状態との間で揺動する。
リヤフレーム15は、ダウンチューブ13に接続される前端部から後端部へ渡って後ろ斜め上方へ傾斜して延びている。リヤフレーム15は、ライダーやパッセンジャーが着座するシート2を支えている。またリヤフレーム15は、ヘルメットを収納可能な収納箱(図示省略)をシート2の下方に支えている。シート2は、収納箱の蓋を兼ねている。
パワーユニット6は、ダウンチューブ13の後方、かつリヤフレーム15の下方に配置されている。パワーユニット6は、原動機としてのエンジン17および動力伝達装置18を一体に備えている。つまり、パワーユニット6は、エンジン17、動力伝達装置18、および後輪9を一体で揺動させるユニットスイング式である。パワーユニット6は、スイングブラケット21を介してダウンチューブ13に支持されて、スイングブラケット21のピボット軸22まわりに揺動する。
また、パワーユニット6は、リヤクッションユニット23を介してリヤフレーム15に弾性的に支持されている。リヤクッションユニット23は、後輪9から車体フレーム5に伝わる力を緩衝する。
ステアリング機構7は、内装されるサスペンション機構(図示省略)と、前輪8を回転可能に支持する左右一対のフロントフォーク25と、前輪8の上方に覆い被さるフロントフェンダ26と、フロントフォーク25の頂部に設けられるハンドルバー27と、を備えている。
前輪8は、左右一対のフロントフォーク25に挟まれて、左右のフロントフォーク25の下端部に架かる前輪軸(図示省略)によって回転自在に支持されている。
ハンドルバー27は、左右それぞれの端部にグリップ28を備えている。車両の右側にあるグリップ28は、エンジン17のスロットルの機能を果たす。また、左右それぞれのグリップの前方には、ブレーキレバー29が設けられている。右側のブレーキレバー29は、前輪8のブレーキ31に繋がっている。左側のブレーキレバー29は、後輪9のブレーキ(図示省略)に繋がっている。
車体カバー11は、自動二輪車1の外観を整え、内部機器の保護を図っている。
図2は、本発明の実施形態に係るクラッチシステムの一例を示す平断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係るクラッチシステム33は、自動二輪車1のパワーユニット6に収容されるデュアルクラッチ35を備えている。
デュアルクラッチ35は、Vベルト36を用いる無段変速機構37を介して後輪9へエンジン17の動力を伝達する。無段変速機構37は、パワーユニット6の動力伝達装置18の一部である。
ここでまず、無段変速機構37は、エンジン17のクランクシャフト(図示省略)に回転一体に設けられる駆動側プーリ(図示省略)と、出力軸38に回転自在に支持される従動側プーリ39と、駆動側プーリおよび従動側プーリ39に巻き掛けられてエンジン17の動力を伝えるVベルト36と、を備えている。無段変速機構37は、クランクシャフトの回転による遠心力を利用して駆動側プーリの巻き掛け径を変化させ、Vベルト36を介して駆動側プーリの巻き掛け径の変化に追従させて従動側プーリ39の巻き掛け径を変化させてクランクシャフトと出力軸38との間の変速比を無段階に変化させる。
従動側プーリ39は、ボス41を介して出力軸38に回転自在に支えられている。
出力軸38は、減速機構(図示省略)を介して後輪9に接続されている。
次いで、デュアルクラッチ35は、出力軸38に回転自在に支持される従動側プーリ39を出力軸38に対して回転一体にしたり、回転自在にしたりしてエンジン17から伝達される動力を出力軸38へ接続したり、遮断したりする。デュアルクラッチ35は、エンジン17から伝達される動力、より詳しくは従動側プーリ39から伝達される動力を中間回転体42へ接続または遮断する第一クラッチ45と、中間回転体42から伝達される動力を出力軸38へ接続または遮断する第二クラッチ46と、を備えている。
第一クラッチ45は、エンジン17の回転数の上昇によって自動的に動力伝達を接続する一方、エンジン17の回転数の下降によって自動的に動力伝達を遮断する遠心クラッチである。第一クラッチ45は、入力側、すなわち従動側プーリ39の回転にともなう遠心力によって回転半径を拡大させる摺接部材としてのクラッチシュー47と、回転半径の拡大したクラッチシュー47に接することで回転一体化して入力側の回転を出力軸38へ伝えるクラッチアウタ48と、入力側の回転にともなう遠心力に抗してクラッチシュー47の回転半径を縮小させるクラッチバネ49と、を備えている。
クラッチシュー47は、従動側プーリ39のボス41に回転一体に設けられている。クラッチシュー47は、出力軸38の径方向外側を望む円弧状の摩擦面51を有し、出力軸38に対する摩擦面51の回転半径を拡大および縮小自在な態様でボス41に揺動自在に支持されている。
クラッチアウタ48は、クラッチシュー47の外側を囲む有底円筒形状のハウジングであって、中間回転体42を兼務している。クラッチアウタ48は、クラッチシュー47の回転半径が縮径している状態では、クラッチシュー47の摩擦面51から離れる被摩擦面52を有している。被摩擦面52は、円筒形状のハウジングの内周面に相当する。
クラッチアウタ48の外周面には、クラッチセンサ53用のピックアップ55が設けられている。クラッチセンサ53は、パワーユニット6の非回転部、例えばケーシング56に設けられている。クラッチセンサ53は、ピックアップ55を基準にしてクラッチアウタ48、すなわち中間回転体42の回転数を検知する。
第二クラッチ46は、第一クラッチ45とは別個独立に機能して、エンジン17の回転数に関わらず、動力伝達を任意に接続または遮断できる。
具体的には、第二クラッチ46は、中間回転体42、より詳しくはクラッチアウタ48の底板部分に接することで中間回転体42から伝達される動力を出力軸38へ接続する一方で中間回転体42から遠ざけられて中間回転体42から伝達される動力から出力軸38を遮断する摩擦面57を有するクラッチプレート58と、クラッチプレート58を移動させて中間回転体42に摩擦面57を接触させたり離間させたりするクラッチレリーズ59と、を備えている。
クラッチプレート58は、出力軸38の端部に設けられるスプライン61によって支持され、出力軸38の回転中心線方向へ移動自在、かつ出力軸38に回転一体に支持されている。クラッチプレート58は、出力軸38の回転中心線に沿って中間回転体42へ押し付けられて第二クラッチ46を接続する一方、出力軸38の回転中心線に沿って中間回転体42から引き離されて第二クラッチ46を遮断する。
クラッチプレート58の摩擦面57は、クラッチプレート58の端部に平面状に広がっている。
クラッチレリーズ59は、軸受62を介してクラッチプレート58に接続されるプルロッド63と、プルロッド63を引っ張ってクラッチプレート58を中間回転体42から引き離すアクチュエータ65と、を備えている。アクチュエータ65には、電動機や油圧機械が適用される。また、クラッチレリーズ59は、プルロッド63の位置を検知するクラッチレリーズセンサ(図示省略)を備えている。
なお、クラッチレリーズ59は、中空の出力軸(図示省略)の中空部にプッシュロッド(図示省略)を配置して、出力軸の一方側に配置されるアクチュエータ65からプルロッドを介して出力軸の他方側の端部に配置されるプルロッド63を押し上げる態様であっても良い。
また、第二クラッチ46は、クラッチプレート58を中間回転体42へ向かって押し付ける押付部材としての皿バネ66と、中間回転体42に固定されて皿バネ66およびクラッチプレート58を覆うクラッチカバー67と、を備えている。
つまり、第二クラッチ46は、クラッチレリーズ59の非作動状態では皿バネ66によってクラッチプレート58を中間回転体42へ向かって押し付けて動力伝達を接続する一方、クラッチレリーズ59の作動状態では皿バネ66に抗してクラッチプレート58を中間回転体42から引き離して動力伝達を遮断する。第二クラッチ46は、クラッチレリーズ59によってクラッチレリーズ59を引っ張る力と皿バネ66のバネ力とをほぼ均衡させることによって、クラッチプレート58と中間回転体42とを滑らせて動力の半伝達状態、所謂半クラッチにすることもできる。
第二クラッチ46は、第一クラッチ45と協働してエンジン17から出力軸38へ動力を伝達するため、第一クラッチ45よりも低容量でよく、クラッチプレート58と中間回転体42との摩擦だけで動力を伝達できる簡単な構造を採用して出力軸38の軸方向寸法を短く抑えることができる。また、第二クラッチ46は、クラッチプレート58を中間回転体42へ向かって押し付ける力を皿バネ66から得ることによっても、コイルスプリングを採用する場合に比べて出力軸38の軸方向寸法を短く抑えて、パワーユニット6の小型化に寄与している。
なお、第二クラッチ46は、摩擦板および非摩擦板を複数有する多板式のクラッチであっても良い。
図3は、本発明の実施形態に係るクラッチシステムを示すブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係るクラッチシステム33は、クラッチレリーズ59を制御して第一クラッチ45とは別個独立に第二クラッチ46を接続または遮断する制御部68と、エンジン17の回転数Nを検知する回転数センサ69と、エンジン17を搭載する自動二輪車1の走行速度を検知する車速センサ71と、自動二輪車1を起立状態で支えるスタンド16が展開されているか収納されているかを検知するスタンドスイッチ72と、エンジン17の吸気量を操作するグリップ28の操作量を検知するスロットルポジションセンサ73と、中間回転体42の回転数Ncを検知するクラッチセンサ53と、自動二輪車1のブレーキが操作されていることを検知するブレーキスイッチ75と、を備えている。
制御部68は、エンジンコントロールユニット76で実行されるプログラムである。制御部68は、回転数センサ69、車速センサ71、スタンドスイッチ72、スロットルポジションセンサ73、クラッチセンサ53、およびブレーキスイッチ75のいずれかの検知結果または検知結果の組合せに基づいて自動二輪車1の走行または停車の状態に応じて第二クラッチ46の接続または遮断を自動制御する。
なお、制御部68は、エンジンモード切替スイッチ(図示省略)からの操作に基づいてエンジン17を低燃費モードで運転したり、通常モードで運転したりするなど、エンジン17の運転モードを切り替えることができる。
回転数センサ69は、エンジン17のクランクシャフトの回転数Nを検知してエンジンコントロールユニット76へ送信する。
車速センサ71は、後輪9の回転数を検知してエンジンコントロールユニット76へ送信する。エンジンコントロールユニット76は、後輪9の回転数から車速を演算する。
ブレーキスイッチ75は、前輪8および後輪9の少なくともいずれかに係るブレーキの操作を検知する。
次いで、本実施形態に係るクラッチシステム33による自動二輪車1のクラッチ制御について詳しく説明する。
先ず、エンジン17の始動から自動二輪車1の発進前までのクラッチ制御について説明する。
図4は、本発明の実施形態に係るクラッチシステムによるクラッチ制御の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態に係るクラッチシステム33の制御部68は、スタンドスイッチ72の検知結果からスタンド16が展開されている状態であって、回転数センサ69の検知結果が予め定める回転数Nth1以上の場合、または車速センサ71の検知結果が予め定める走行速度Vth1以上の場合には、第二クラッチ46による動力伝達を遮断する。
具体的には、クラッチシステム33は、自動二輪車1のメインスイッチ(図示省略)が入れられると(ステップS1)、クラッチレリーズ59を一旦作動させて位置学習を行う(ステップS2)。なお、クラッチレリーズ59の位置学習の後、クラッチレリーズ59は、非作動状態になり、すなわち第二クラッチ46は、接続状態となる。
次いで、スタンドスイッチ72の検知結果からスタンド16が展開されているか否かを判断する(ステップS3)。クラッチシステム33は、スタンド16が収納されていれば(ステップS3 No)判断を繰り返す一方、スタンド16が展開されていれば(ステップS3 Yes)、回転数センサ69の検知結果からエンジン17の回転数Nを取得し(ステップS4)、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1の走行速度Vを演算する(ステップS5)。
そして、クラッチシステム33は、エンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth1以上か否か、または走行速度Vが予め定める走行速度Vth1以上か否かを判断する(ステップS6)。クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS6 No)には、ステップS4に戻る。
他方、クラッチシステム33は、判断条件が成立する場合(ステップS6 Yes)には、クラッチレリーズセンサが測定するクラッチレリーズ59の位置情報から第二クラッチ46が接続されているか遮断されているかを判断する(ステップS7)。
なお、予め定める回転数Nth1はアイドリング回転数よりも例えば、約500rpm高く設定する。予め定める走行速度Vth1は、乗員の歩行速度(例えば、毎時約5km)と略同等であることが好ましい。これらの設定によって通常の停車状態において想定される状態(アイドリング待機、押し歩きなど)を逸脱した場合に第二クラッチを切断して加速を抑制する。
クラッチシステム33は、第二クラッチ46が遮断されている場合には(ステップS7 No)、ステップS4に戻る一方、第二クラッチ46が接続されている場合には(ステップS7 Yes)、クラッチレリーズ59を作動させて第二クラッチ46を遮断して動力伝達を遮断し(ステップS8)、ひいてはデュアルクラッチ35による動力伝達を遮断する。
このように、クラッチシステム33は、スタンド16が展開された状態であってエンジン17が始動してアイドリングしている際に、デュアルクラッチ35による動力伝達が行われているか遮断されているかを判断することによって、第一クラッチ45が半接続状態または接続状態になっても、第二クラッチ46を遮断し、動力伝達を遮断して後輪9の空転を回避する。
次に、スタンド16が収納され、かつエンジン17がアイドリングしている状態から走行するまでのクラッチ制御について説明する。
図5および図6は、本発明の実施形態に係るクラッチシステムによるクラッチ制御の一例を示すフローチャートである。
図5および図6に示すように、本実施形態に係るクラッチシステム33の制御部68は、回転数センサ69の検知結果が予め定める回転数Nth2以上、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1が予め定める走行速度Vth2以上の速さで走行し、かつスロットルポジションセンサ73の検知結果からグリップ28の開速度Vopを演算し、この開速度Vopが予め定める開速度Vopth2以上の場合には、第二クラッチ46を半接続状態として動力伝達を半伝達状態にする一方、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1が予め定める走行速度Vth2aよりも速く走行し、かつ回転数センサ69の検知結果が予め定める回転数Nth2a以上の場合には、第二クラッチ46を接続状態へと制御し、動力伝達を完全伝達状態とする。
また、制御部68は、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1が走行し、かつ第一クラッチ45の接続状態を仮定して回転数センサ69の検知結果から演算されるクラッチシュー47の回転数Ncpとクラッチセンサ53が検知する中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲より大きい場合には、第二クラッチ46を半接続状態として動力伝達を半伝達状態にする一方、予測回転数Ncpと実回転数Ncとの差が予め定める範囲以内に納まる場合には、第二クラッチ46を半接続状態から接続状態へと制御し、動力伝達を完全伝達状態とする。
さらに、制御部68は、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1が停止し、かつ回転数センサ69の検知結果が予め定める回転数Nth3以上の場合には、第二クラッチ46を遮断状態とし、動力伝達を遮断する。
さらにまた、制御部68は、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1が停止し、かつスロットルポジションセンサ73の検知結果からグリップ28の開速度Vopおよび開度Thを演算し、この開速度Vopが予め定める開速度Vopth1以上かつこの開度Thが予め定める開度Th1以上の場合には、第二クラッチ46を遮断状態とし、動力伝達を遮断する。
具体的には、クラッチシステム33は、スタンド16が収納され、かつエンジン17がアイドリングしている場合には、クラッチレリーズ59を非作動状態にして第二クラッチ46を接続する(ステップS11)。
そして、クラッチシステム33は、スロットルポジションセンサ73の検知結果からグリップ28の開速度Vopを演算し(ステップS12)、回転数センサ69の検知結果からエンジン17の回転数Nを取得し(ステップS13)、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1の走行速度Vを演算する(ステップS14)。
クラッチシステム33は、走行速度Vから自動二輪車1が停止し、かつエンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth3以上か否か、または走行速度Vから自動二輪車1が停止し、かつグリップ28の開速度Vopが予め定める開速度Vopth1以上かつ開度Thが予め定める開度Th1以上か否かを判断する(ステップS15)。クラッチシステム33は、少なくともいずれか一方の条件が満足される場合、すなわち走行速度Vから自動二輪車1が停止し、かつエンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth3以上の場合、または走行速度Vから自動二輪車1が停止し、かつグリップ28の開速度Vopが予め定める開速度Vopth1以上かつ開度Thが予め定める開度Th1以上の場合には(ステップS15 Yes)、第二クラッチ46による動力伝達を遮断して(ステップS16)ステップS12へ戻る。
他方、クラッチシステム33は、いずれの判断条件も不成立の場合(ステップS15 No)には、再びスロットルポジションセンサ73の検知結果からグリップ28の開速度Vopを演算し(ステップS17)、回転数センサ69の検知結果からエンジン17の回転数Nを取得し(ステップS18)、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1の走行速度Vを演算する(ステップS19)。
エンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth2以上、かつ走行速度Vが予め定める走行速度Vth2以上、かつグリップ28の開速度Vopが予め定める開速度Vopth2以上か否かを判断する(ステップS19a)。クラッチシステム33は、判断条件が成立する場合、すなわちエンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth2以上、走行速度Vが予め定める走行速度Vth2以上、かつグリップ28の開速度Vopが予め定める開速度Vopth2以上の場合には(ステップS19a Yes)、第二クラッチ46による動力伝達を半伝達状態にする(ステップS19b)。他方、クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS19a No)には、ステップS17へ戻る。
そして、クラッチシステム33は、走行速度Vが予め定める走行速度Vth2aよりも速く、かつエンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth2a以上か否かを判断する(ステップS20)。クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS20 No)には、ステップS17に戻る。
他方、クラッチシステム33は、判断条件が成立の場合(ステップS20 Yes)には、回転数センサ69の検知結果から演算される第一クラッチ45のクラッチシュー47の回転数Ncpとクラッチセンサ53が検知する中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R1以下か否かを判断する(ステップS21)。クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS21 No)、つまり第一クラッチ45のクラッチシュー47の回転数Ncpと中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R1より大きく、第一クラッチ45が未だ半接続状態であることが推測される場合には、ステップS17に戻る(第二クラッチの半伝達状態を持続させる)。
クラッチシステム33は、判断条件が成立する場合(ステップS21 Yes)、つまり第一クラッチ45のクラッチシュー47の回転数Ncpと中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R1以下であって、第一クラッチ45が略完全に接続された状態であることが推測される場合には、車速センサ71の検知結果から演算される出力軸38の回転数Ncp2とクラッチセンサ53が検知する中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R2以下か否かを判断する(ステップS21a)。クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS21a No)、つまり出力軸38の回転数Ncpと中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R2より大きく、第二クラッチ46が半接続状態であることが推測される場合には、第二クラッチ46のクラッチレリーズ59の操作量を調整し(ステップS21b)、第二クラッチの半伝達状態を持続させたままステップS17に戻る。
クラッチシステム33は、判断条件が成立する場合(ステップS21a Yes)、つまり出力軸38の回転数Ncp2と中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R2以下であって、第二クラッチ46のすべりが少ない状態であることが推測される場合には、第二クラッチ46を完全に接続して、デュアルクラッチ35を接続する(ステップS22)。
ここで、第二クラッチ46の半接続状態は、回転数の変化に応じて自動的に調節される。具体的には、予め設定されたマップによって、車速変化量もしくは出力軸38の回転数Ncp2と中間回転体42の実回転数Ncとの差に基づいてクラッチレリーズ59の操作量が求められて、クラッチレリーズ59が操作される。また、出力軸38の回転数Ncp2と中間回転体42の実回転数Ncとの差が大きくなるほど第二クラッチ46が強く圧着される様に操作される。その後、出力軸38の回転数Ncp2と中間回転体42の実回転数Ncの差が予め定める範囲R2以下になった時に第二クラッチ46を完全接続状態とする様に、クラッチレリーズ59が操作される。
なお、予め定める回転数Nth3は、通常発進時に対して十分高く設定(例えば、約6000rpm程度)する。予め定める開速度Vopth1は、乗員が操作し得る最大の速度(例えば、毎秒約80°程度)と略同等とする。予め定める開度Th1は、通常発進時に必要な操作角度に対して高く設定(例えば、約40°)する。これらの設定によって、通常の発進状態に対してエンジンが高回転の状態、または乗員が極端なスロットル操作を行った時などにおいて、第二クラッチを切断して急発進を抑制する。
さらに、予め定める回転数Nth2は、アイドリング回転数よりも所定数(例えば、約300rpm)高く設定する。予め定める走行速度Vth2は、乗員の歩行速度(例えば、毎時約5km)と略同等とする。予め定める開速度Vopth2は、乗員の通常操作よりも若干速い開速度(例えば、毎秒約60°)とする。これらの設定によって、通常の走行状態において乗員が素早いスロットル操作を行った時に、第二クラッチを半接続状態としてエンジン回転数を上昇させ、より鋭い加速を行える。
また、中間回転体42の予測回転数Ncpと実回転数Ncとの差は、第一クラッチ45のクラッチシュー47の実回転数を直接的に検知して算出しても良い。
このように、クラッチシステム33は、スタンド16が収納されてグリップ28が操作され、エンジン17の回転数Nが上昇し、自動二輪車1の走行速度Vが増す過程において、エンジン17の回転数Nに依存して接続したり遮断したりする第一クラッチ45を、適宜に接続したり遮断したりできる第二クラッチ46により補助する。例えば、クラッチシステム33は、発進時に急激なグリップ28操作が行われた場合には、第二クラッチ46を遮断することによって、自動二輪車1の急発進を抑制する。また、クラッチシステム33は、自動二輪車1の走行速度Vが増して第一クラッチ45が接続されると、半クラッチ状態の第二クラッチ46を完全に接続する。
次に、自動二輪車1が走行中に急加速する場合のクラッチ制御について説明する。
図7は、本発明の実施形態に係るクラッチシステムによるクラッチ制御の一例を示すフローチャートである。
図7に示すように、本実施形態に係るクラッチシステム33の制御部68は、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1が走行し、回転数センサ69の検知結果が予め定める回転数Nth4以下、かつスロットルポジションセンサ73の検知結果から演算されるスロットル開速度Vopが予め定める開速度Vopth3以上の場合には、第二クラッチ46による動力伝達を半伝達状態にする。
具体的には、クラッチシステム33は、エンジン17の回転数Nおよび自動二輪車1の走行速度Vが上昇して安定走行している場合には、クラッチレリーズ59を非作動状態にして第二クラッチ46を接続し(ステップS31)、ひいてはデュアルクラッチ35による動力伝達を接続する。
そして、クラッチシステム33は、スロットルポジションセンサ73の検知結果からグリップ28の開速度Vopを演算し(ステップS32)、回転数センサ69の検知結果からエンジン17の回転数Nを取得し(ステップS33)、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1の走行速度Vを演算する(ステップS34)。
クラッチシステム33は、エンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth4以下、走行速度Vが予め定める走行速度Vth3以下、かつグリップ28の開速度Vopが予め定める開速度Vopth3以上か否かを判断する(ステップS35)。クラッチシステム33は、判断条件が成立する場合、すなわちエンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth4以下、走行速度Vが予め定める走行速度Vth3以下、かつグリップ28の開速度Vopが予め定める開速度Vopth3以上の場合には(ステップS35 Yes)、第二クラッチ46による動力伝達を半伝達状態にする(ステップS36)。他方、クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS35 No)には、ステップS32へ戻る。
なお、予め定める回転数Nth4は、常用回転数の上限値よりも所定数(例えば、1000rpm)低く設定する。予め定める走行速度Vth3は、高速走行時の速度(例えば、毎時約80km)と略同等とする。予め定める開速度Vopth3は、乗員の通常操作よりも若干速い開速度(例えば、毎秒約30°)とする。これらの設定によって、通常の走行状態において乗員が素早いスロットル操作を行った時に、第二クラッチ46を半接続状態としてエンジン回転数を上昇させ、より鋭い加速を行える。
このように、クラッチシステム33は、自動二輪車1の走行中、グリップ28の開速度Vop、自動二輪車1の走行速度V、およびエンジン17の回転数Nから、第二クラッチ46を半クラッチ状態にしてエンジン17の回転数Nを上昇させやすくして急激な加速を得る。
そして、クラッチシステム33は、再度、回転数センサ69の検知結果からエンジン17の回転数Nを取得し(ステップS37)、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1の走行速度Vを演算する(ステップS38)。
クラッチシステム33は、走行速度Vが予め定める走行速度Vth3aよりも速く、かつエンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth3a以上か否かを判断する(ステップS39)。クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS39 No)には、ステップS32に戻る。
他方、クラッチシステム33は、判断条件が成立の場合(ステップS39 Yes)には、回転数センサ69の検知結果から演算される第一クラッチ45のクラッチシュー47の回転数Ncpとクラッチセンサ53が検知する中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R1a以下か否かを判断する(ステップS39a)。クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS39a No)、つまり第一クラッチ45のクラッチシュー47の回転数Ncpと中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲より大きく、第一クラッチ45が未だ半接続状態であることが推測される場合には、ステップS32に戻る(第二クラッチの半伝達状態を持続させる)。
クラッチシステム33は、判断条件が成立する場合(ステップS39a Yes)、つまり第一クラッチ45のクラッチシュー47の回転数Ncpと中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R1a以下であって、第一クラッチ45が略完全に接続された状態であることが推測される場合には、車速センサ71の検知結果から演算される出力軸38の回転数Ncp2とクラッチセンサ53が検知する中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R2a以下か否かを判断する(ステップS39b)。クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS39b No)、つまり出力軸38の回転数Ncpと中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲より大きく、第二クラッチ46が半接続状態であることが推測される場合には、第二クラッチ46のクラッチレリーズ59の操作量を調整し(ステップS39c)、第二クラッチの半伝達状態を持続させたままステップS32に戻る。
クラッチシステム33は、判断条件が成立する場合(ステップS39b Yes)、つまり出力軸38の回転数Ncp2と中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲R2a以下であって、第二クラッチ46のすべりが少ない状態であることが推測される場合には、第二クラッチ46を完全に接続して、デュアルクラッチ35を接続する(ステップS40)。
ここで、第二クラッチ46の半接続状態は、回転数の変化に応じて自動的に調節される。具体的には、予め設定されたマップによって、車速変化量もしくは出力軸38の回転数Ncp2と中間回転体42の実回転数Ncとの差に基づいてクラッチレリーズ59の操作量が求められて、クラッチレリーズ59が操作される。また、出力軸38の回転数Ncp2と中間回転体42の実回転数Ncとの差が大きくなるほど第二クラッチ46が強く圧着される様に操作される。その後、出力軸38の回転数Ncp2と中間回転体42の実回転数Ncの差が予め定める範囲R2以下になった時に第二クラッチ46を完全接続状態とする様に、クラッチレリーズ59が操作される。
次に、自動二輪車1が減速、停止する場合のクラッチ制御について説明する。
図8は、本発明の実施形態に係るクラッチシステムによるクラッチ制御の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、本実施形態に係るクラッチシステム33の制御部68は、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1が走行し、ブレーキスイッチ75の検知結果から自動二輪車1が制動され、回転数センサ69の検知結果が予め定める回転数Nth5以下および車速センサ71の検知結果が予め定める走行速度Vth4以下の少なくともいずれかの場合には、第二クラッチ46による動力伝達を遮断する。
具体的には、クラッチシステム33は、エンジン17の回転数Nおよび自動二輪車1の走行速度Vが上昇して安定走行している場合には、クラッチレリーズ59を非作動状態にして第二クラッチ46を接続する(ステップS51)。
そして、クラッチシステム33は、スロットルポジションセンサ73の検知結果からグリップ28の開度Oを取得し(ステップS52)、回転数センサ69の検知結果からエンジン17の回転数Nを取得し(ステップS53)、車速センサ71の検知結果から自動二輪車1の走行速度Vを演算し(ステップS54)、ブレーキスイッチ75の検知結果からブレーキが操作されている状態か否かを取得する(ステップS55)。
次いで、クラッチシステム33は、エンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth5以下、走行速度Vが予め定める走行速度Vth4以下、グリップ28の開度Oが予め定める開度Oth以下、かつブレーキ操作がされているか否かを判断する(ステップS56)。クラッチシステム33は、判断条件が成立する場合、すなわちエンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth5以下、走行速度Vが予め定める走行速度Vth4以下、グリップ28の開度Oが予め定める開度Oth以下、かつブレーキ操作がされている(自動二輪車1に制動が掛けられている)場合には(ステップS56 Yes)、第二クラッチ46による動力伝達を遮断する(ステップS57)。他方、クラッチシステム33は、判断条件が不成立の場合(ステップS56 No)には、ステップS52へ戻る。
なお、予め定める回転数Nth5は、アイドリング回転数よりも所定数(例えば、約300rpm)高く設定する。予め定める走行速度Vth4は、通常走行速度より低く設定(例えば、毎時約20km)する。予め定める開度Othは、乗員が加速操作をしない、すなわち略全閉状態とする。これにより停車寸前の低速状態でクラッチが切断され、それ以前でのブレーキへの負担や操縦安定性への影響を抑えることができる。
このように、クラッチシステム33は、自動二輪車1の走行中、グリップ28の開度O、自動二輪車1の走行速度V、エンジン17の回転数N、およびブレーキの操作状態から、自動二輪車1が停止する以前であって第一クラッチ45による動力伝達が遮断される前に、第二クラッチ46によって先行して動力伝達を遮断する。
本実施形態に係るクラッチシステム33は、第一クラッチ45とは別個独立に第二クラッチ46を接続または遮断することによって、従来のクラッチシステムよりも繊細なクラッチコントロールを実現し、第一クラッチ45の機構や制御を複雑化することなくデュアルクラッチ35全体でエンジン17から出力軸38への動力伝達を最適化して車両の利便性を高めることができる。
また、本実施形態に係るクラッチシステム33は、第二クラッチ46を備えることによって、デュアルクラッチ35全体の摩擦面の総面積を増加させ、従来のクラッチシステムよりも耐久性を高めることができる。
さらに、本実施形態に係るクラッチシステム33は、自動二輪車1の走行または停車の状態に応じて第二クラッチ46の接続または遮断を自動制御することによって、乗員の別段の配慮を要することなく、デュアルクラッチ35の機能を最適化して発進加速、急加速、および停止などの効率を高め、車両の利便性を高めることができる。
さらにまた、本実施形態に係るクラッチシステム33は、スタンド16が展開されている状態であって、エンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth1以上の場合、または走行速度Vが予め定める走行速度Vth1以上の場合には、第二クラッチ46による動力伝達を遮断することによって、例えば、第一クラッチ45の接続または遮断の状態に係わらず駆動輪としての後輪9の回転を回避できる。
また、本実施形態に係るクラッチシステム33は、エンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth2以上、走行速度Vが予め定める走行速度Vth2以上、かつグリップ28の開速度Vopが予め定める開速度Vopth2以上の場合には、第二クラッチ46による動力伝達を半伝達状態にすることによって、例えば発進時や追い越し時における、車両の急加速を意図するグリップ28の急速な開操作に応じて、エンジン17の負荷を低減し回転数の上昇を容易化し、ひいては車両の加速を得やすくする。
さらに、本実施形態に係るクラッチシステム33は、車両が走行し、かつ第一クラッチ45のクラッチシュー47の回転数Ncpと中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲より大きい場合には、第二クラッチ46による動力伝達を半伝達状態にする一方、第一クラッチ45のクラッチシュー47の回転数Ncpと中間回転体42の実回転数Ncとの差が予め定める範囲以内に納まる場合には、第二クラッチ46による動力伝達を完全に接続することによって、第一クラッチ45が加速中に半クラッチ状態から接続状態へ移行する過渡期に第一クラッチ45の接続を容易化して負荷を軽減し、第一クラッチ45の滑りや発熱を緩和する。
さらにまた、本実施形態に係るクラッチシステム33は、車両が停止し、かつエンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth3以上の場合には、第二クラッチ46による動力伝達を遮断することによって、意図しない急発進を防止しつつ第一クラッチ接続時のエンジン回転数を低く設定することができる。
また、本実施形態に係るクラッチシステム33は、車両が停止し、かつグリップ28の開速度Vopが予め定める開速度Vopth1以上の場合には、第二クラッチ46による動力伝達を遮断することによって、グリップ28の誤操作などによる急激な開操作が行われても、意図しない急発進を防止しつつ第一クラッチ接続時のエンジン回転数を低く設定できる。
さらにまた、本実施形態に係るクラッチシステム33は、制動させてエンジン17の回転数Nが予め定める回転数Nth5以下および走行速度Vが予め定める走行速度Vth4以下の少なくともいずれかの場合には、第二クラッチ46による動力伝達を遮断することによって、第一クラッチ45の接続状態にかかわらず慣性走行時の機械的損失を低減させて燃費を向上させる。
また、本実施形態に係るクラッチシステム33は、第一クラッチ45として遠心クラッチを採用しても、第二クラッチ46との組合せによる繊細なクラッチコントロールで操作性や燃費を向上できる。
さらに、本実施形態に係るクラッチシステム33は、第一クラッチ45として遠心クラッチを採用しても、第二クラッチ46との組合せによって、第一クラッチ45の動力伝達を接続する回転数を従来のクラッチシステムよりも低回転に設定することが可能になる。ひいては、クラッチシステム33は、高回転時の第一クラッチ45の圧着力を増して摩擦面51の滑りを抑えて動力の伝達効率を向上させ、発熱および摩耗を低減し、振動騒音の抑止にも寄与する。
さらにまた、本実施形態に係るクラッチシステム33は、クラッチプレート58の端部に平面状に広がる摩擦面57を備えることによって、クラッチプレート58全体を平板状にして第二クラッチ46の小型化に寄与できる。
また、本実施形態に係るクラッチシステム33は、クラッチプレート58を中間回転体42へ向かって押し付ける押付部材を備えることによって、仮にクラッチレリーズ59が故障などによって作動しなくなったとしても、デュアルクラッチ35による動力伝達を可能にし、ひいては車両の走行を確保できる。
さらに、本実施形態に係るクラッチシステム33は、第一クラッチ45のクラッチアウタ48を中間回転体42として兼務させることで、部品点数の増加を抑えつつデュアルクラッチ35の小型化に寄与する。
したがって、本発明に係るクラッチシステム33によれば、入力側の回転数に対する動力伝達の接続または遮断の自由度を高め、ひいてはドライバビリティや安全性を向上できる。
なお、本実施形態に係る鞍乗型の車両は、スクータ型の自動二輪車1であるが、デュアルクラッチを備える車両であれば、自動二輪車に限定されない。