JP6383714B2 - リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法および評価用セル - Google Patents
リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法および評価用セル Download PDFInfo
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Description
反応分布が顕著である場合、電極内では局所的に過充電・過放電の状態となり、電池性能や安全性が低下する。そのため、充放電中に生じる電極内の反応分布を知ることができれば、電池性能劣化のメカニズムの解明等に繋がる新たな情報を取得できるようになる。
すなわち本発明の目的は、TEM(透過型電子顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)、XPS(X線光電子分光法)、XRD(X線回折法)、ICP−AES(高周波誘導結合プラズマ−発光分光分析法)、GD−OES(グロー放電発光分析法)等、多種多様な分析手法に適用可能な、リチウムイオン二次電池の電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法を提供することである。
[1] 電極及び電解質を含むリチウムイオン二次電池を充放電する工程と、
前記充放電する工程の任意の時点で充電又は放電を停止する工程と、
前記充電又は放電を停止してから1分以内に、前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程と、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持した後の前記電極を取り出して分析に供する工程と、
を含む、リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[2] 前記リチウムイオン二次電池が単層ラミネートセルであり、
前記充放電する工程の前に露点−50℃以下のドライ環境下で、前記単層ラミネートセルの外装を除去する工程と、前記外装を除去した単層ラミネートセルの正極、セパレータ及び負極の対を電解液に浸漬する工程と、を行い、
前記充放電する工程が、前記浸漬する工程で前記対が電解液に浸漬された状態で行われ、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、電極中の電解液を溶媒に置換することで行われる、前記[1]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[3] 前記リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルであり、
前記セルの外装には溶液のin−out端子が設けられ、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記in−out端子を通じて電解液を溶媒に置換されることで行われる、前記[1]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[4] 前記リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルであり、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルを液体窒素に浸漬する工程、その後前記冷却状態を保ったまま前記セルを露点−50℃以下のドライ環境下で解体する工程、及び、次いで露点−50℃以下のドライ環境下で前記解体したセルを常温に戻すと同時に、少なくとも前記電極を溶媒に浸漬することにより電解液を溶媒に置換する工程を含む、前記[1]又は[3]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[5] 前記リチウムイオン二次電池が全固体型のセルであり、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルを加熱して前記電解質をイオン伝導性が10−4S・cm−1以下の相に変態させることで行われる、前記[1]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
[6] 前記リチウムイオン二次電池が全固体型のセルであり、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルに外力を加えることで前記電解質にクラックを生じさせ、前記電解質のイオン伝導性を10−4S・cm−1以下にすることで行われる、前記[1]に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
(b)電極及び電解質を含むリチウムイオン二次電池を充放電する工程、
(c)前記充放電する工程の任意の時点で充電又は放電を停止する工程、
(d)前記充電又は放電を停止してから1分以内に、前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程、
(e)前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持した後の前記電極を取り出して分析に供する工程。
上記工程(b)の前に(a)前準備を行う工程、が設けられていてもよい。
例えば、正極には正極活物質、導電助剤、バインダー等を含むことができる。正極活物質にはリチウム金属酸化物が挙げられ、リチウム以外に含まれていてもよい金属としては、Ni、Mn、Co、Fe、Al等が挙げられる。導電助剤やバインダーにも一般的に用いられるものを用いることができる。
さらに、電解質の種類によっては、セパレータを用いることが好ましい。また、集電体やガスケット、電極タブ(電極リード、電極端子)、絶縁材等、適宜公知の物を使用することができる。
例えば電解質のイオン伝導性が10−4S・cm−1オーダーである場合には、工程(d)から12時間以内に工程(e)を行うことが好ましい。
リチウムイオン二次電池が単層ラミネートセルの場合には、工程(b)の前に前準備を行う工程(a)を含むことが好ましい。
工程(a)として、露点−50℃以下のドライ環境下で、前記単層ラミネートセルの外装を除去する工程(a1−1)と、前記外装を除去した単層ラミネートセルの正極、セパレータ及び負極の対を電解液に浸漬する工程(a1−2)とを含む工程(a1)が好ましい。
また、リチウムは窒素とも反応することから、該ドライ環境はAr雰囲気のグローブボックス内等で行うことが好ましい。以下、本明細書においてドライ環境とは、上記と同じ意味を表す。
工程(d1)は電極のみを溶媒に浸漬してもよく、正極、セパレータ及び負極の対を溶媒に浸漬してもよく、図1における電解液4全体を溶媒に入れ替えてもよい。
電極中の電解液を置換する溶媒は、イオン伝導性が無いものが好ましく、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルエーテル(DME)等が好ましく挙げられる。
リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルの場合には、工程(b)の前に前準備を行う工程(a2)を含むことが好ましい。
工程(a2)として、セルの外装に溶液のin−out端子を設けることが好ましい。該in−out端子のin端子から所望の液体(溶媒)を流入し、セル内の電解液をout端子から排出することにより、電解液を該溶媒に置換することができる。
すなわち、前記工程(a2)を行うことにより、工程(d)である電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程を、電解液を溶媒に置換する(工程(d2))ことで行うことができるようになる。
in端子からの溶媒の流入量やout端子からの排出量は特に限定されない。工程(d2)において電解液を置換する溶媒は、イオン伝導性が無いものが好ましく、先の<単層ラミネートセル>における工程(d1)と同様の溶媒を用いることができる。
該工程(d3)は、上記工程(a2)及び工程(d2)と共に行ってもよく、独立して行ってもよい。
電解液の種類によって低温時のイオン伝導性が大きく異なることから、セル全体の好ましい温度は一義に定義できない。例えば、電解液として1M LiPF6/EC:DEC=1:1(vol.)を用いる場合にはセルの温度を−20℃以下とすると電解液が凝固するため好ましく、−50℃以下とするとイオン伝導性がより低下するためにより好ましい。
セルの冷却は、液体窒素と同程度かそれ以上の冷却能があれば可能であり、液体窒素に代えて、例えば液体ヘリウム等を用いてもよい。
その後工程(d3−3)で、解体したセルを常温に戻すと同時に、前記解体したセルのうち、少なくとも前記電極を溶媒に浸漬することにより、電極内の電解液を溶媒に置換する。工程(d3−3)において電解液を置換する溶媒は、イオン伝導性が無いものが好ましく、先の<単層ラミネートセル>における工程(d1)と同様の溶媒を用いることができる。
リチウムイオン二次電池が全固体型のセルの場合、電解質も固体であることから、工程(d)として、電解質を溶媒で置換することが難しい。そこで、工程(d)である電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程を、セルを加熱して前記電解質をイオン伝導性が好ましくは10−4S・cm−1以下の相に変態させる(工程(d4))ことにより、リチウムイオン濃度分布を保持することが好ましい。なお、加熱はセルごと行われるので、加熱雰囲気は密閉雰囲気となる。また、加熱温度は電解質の種類によって適宜設定する。
電解質が固体であることから、外力を加えてクラックが発生すると、その部分のイオン伝導のパスが失われる。具体的には、電解質のイオン伝導性が10−4S・cm−1以下となるほどにイオン伝導のパスを減少させることが好ましい。
[単層ラミネートセルの作製]
活物質(LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(NMC))、導電助剤(アセチレンブラック)及びバインダー(ポリフッ化ビニリデン(PVDF))を重量比86:7:7で混練し、溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を用い、集電体である45×45mmのAl箔上に塗布、80℃で12時間真空乾燥させて正極を作製した。ロールプレスにて2.5g/ccの密度とした。
活物質(グラファイト)、導電助剤(アセチレンブラック)及びバインダー(PVDF)を重量比86:7:7で混練し、溶媒としてNMPを用い、集電体である50×50mmのCu箔上に塗布、80℃で12時間真空乾燥させて負極を作製した。ロールプレスにて1.3g/ccの密度とした。
電解液は1M LiPF6/EC:DEC=1:1(vol.)を用いた。
得られた電極、電解液及びポリエチレン製の多孔質セパレータを用いて露点−50℃以下のドライベンチ中で単層ラミネートセルを作製した。
得られた単層ラミネートセルを下記条件で3サイクル充放電するコンディショニングを行った後、ドライ環境下(露点−50℃以下)で外装を解体した。負極、セパレータ、正極が接したまま短絡しないように取り出し、バット中の電解液(1M LiPF6/EC:DEC=1:1(vol.))に浸漬させ、さらに正極と負極の外側をそれぞれセラミック板で押さえつけることにより拘束した。
(条件)
上限電圧 4.2V
下限電圧 2.7V
充放電レート 0.2C
測定温度 25℃
休止時間 10分
放電停止直後、1分以内に正極を取り出し、溶媒(DEC)に浸漬することにより、正極中の電解液を除去し、リチウムイオン濃度分布の保持を行った。
その後正極を取り出してグロー放電発光分析法(GD−OES、(株)堀場製作所製 GD−Profiler2)を用い、正極中の深さ方向リチウムイオン濃度分布を測定した。結果を図2の「Before」に示す。(実施例1)
その後、正極を溶媒(DEC)に浸漬することにより、正極中の電解液を除去し、実施例1と同様にグロー放電発光分析法による深さ方向リチウムイオン濃度分布を測定した。結果を図2の「After」に示す。(比較例1)
すなわち、充電又は放電を停止してから1分以内に電極内の電解液を除去することにより、電極内のリチウムイオン濃度分布を保持(リチウムイオン濃度分布の緩和を抑制)することにより、充放電時の電極内のリチウムイオン濃度分布状態を維持できていると判断できる。
一方で、電解液除去に時間がかかる従来の調査方法では濃度分布の緩和が起こり、ほとんど充放電時の状態が考察できない状態になっていることが確認された。
2 セパレータ
3 負極
4 電解液
5 電極タブ
6 セラミック板
Claims (8)
- 電極及び電解質を含むリチウムイオン二次電池を充放電する工程と、
前記充放電する工程の任意の時点で充電又は放電を停止する工程と、
前記充電又は放電を停止してから1分以内に、前記電解質のイオン伝導性を低下させて前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程と、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持した後の前記電極を取り出して分析に供する工程と、
を含む、リチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。 - 前記リチウムイオン二次電池が単層ラミネートセルであり、
前記充放電する工程の前に露点−50℃以下のドライ環境下で、前記単層ラミネートセルの外装を除去する工程と、前記外装を除去した単層ラミネートセルの正極、セパレータ及び負極の対を電解液に浸漬する工程と、を行い、
前記充放電する工程が、前記浸漬する工程で前記対が電解液に浸漬された状態で行われ、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、電極中の電解液をイオン伝導性が無い溶媒に置換することで行われる、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。 - 前記リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルであり、
前記セルの外装には溶液のin−out端子が設けられ、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記in−out端子を通じて電解液をイオン伝導性が無い溶媒に置換されることで行われる、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。 - 前記リチウムイオン二次電池が積層型構造又は巻回型構造のセルであり、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルを液体窒素に浸漬する工程、その後電解液のイオン伝導度が低い温度、又は電解液が凝固している状態を保ったまま前記セルを露点−50℃以下のドライ環境下で解体する工程、及び、次いで露点−50℃以下のドライ環境下で前記解体したセルを常温に戻すと同時に、少なくとも前記電極をイオン伝導性が無い溶媒に浸漬することにより電解液を溶媒に置換する工程を含む、請求項1又は3に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。 - 前記溶媒が、リチウム塩を溶解可能な溶媒である、請求項2〜4の何れか1項に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
- 前記溶媒が、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートまたはジメチルエーテルである、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
- 前記リチウムイオン二次電池が全固体型のセルであり、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルを加熱して前記電解質をイオン伝導性が10−4S・cm−1以下の相に変態させることで行われる、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。 - 前記リチウムイオン二次電池が全固体型のセルであり、
前記電極におけるリチウムイオン濃度分布を保持する工程が、前記セルに外力を加えることで前記電解質にクラックを生じさせ、前記電解質のイオン伝導性を10−4S・cm−1以下にすることで行われる、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池電極内のリチウムイオン濃度分布を分析する方法。
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