以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、「上」「下」の語は、図示する状態に基づくものであり、便宜的なものである。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るプラズマ処理装置の構成を示す概略断面図である。プラズマ処理装置は、気密に構成され、電気的に接地電位とされた処理容器1を有している。この処理容器1は、円筒状とされ、例えばアルミニウム等から構成されている。処理容器1は、プラズマが生成される処理空間を画成する。処理容器1内には、被処理体(work-piece)である半導体ウェハ(以下、単に「ウェハ」という。)Wを水平に支持する載置台2が設けられている。載置台2は、基材(ベース)2a及び静電チャック6を含んで構成されている。基材2aは、導電性の金属、例えばアルミニウム等で構成されており、下部電極としての機能を有する。静電チャック6は、ウェハWを静電吸着するための機能を有する。載置台2は、絶縁板3を介して導体の支持台4に支持されている。また、載置台2の上方の外周には、例えば単結晶シリコンで形成されたフォーカスリング5が設けられている。さらに、載置台2及び支持台4の周囲を囲むように、例えば石英等からなる円筒状の内壁部材3aが設けられている。
基材2aには、第1の整合器11aを介して第1のRF電源10aが接続され、また、第2の整合器11bを介して第2のRF電源10bが接続されている。第1のRF電源10aは、プラズマ発生用のものであり、この第1のRF電源10aからは所定の周波数の高周波電力が載置台2の基材2aに供給されるように構成されている。また、第2のRF電源10bは、イオン引き込み用(バイアス用)のものであり、この第2のRF電源10bからは第1のRF電源10aより低い所定周波数の高周波電力が載置台2の基材2aに供給されるように構成されている。このように、載置台2は電圧印加可能に構成されている。一方、載置台2の上方には、載置台2と平行に対向するように、上部電極としての機能を有するシャワーヘッド16が設けられており、シャワーヘッド16と載置台2は、一対の電極(上部電極と下部電極)として機能する。
静電チャック6は、該絶縁体6bの間に電極6aを介在させて構成されており、電極6aには直流電源12が接続されている。そして電極6aに直流電源12から直流電圧が印加されることにより、クーロン力によってウェハWが吸着されるよう構成されている。
載置台2の内部には、冷媒流路2dが形成されており、冷媒流路2dには、冷媒入口配管2b、冷媒出口配管2cが接続されている。そして、冷媒流路2dの中に適宜の冷媒、例えば冷却水等を循環させることによって、載置台2を所定の温度に制御可能に構成されている。また、載置台2等を貫通するように、ウェハWの裏面にヘリウムガス等の冷熱伝達用ガス(バックサイドガス)を供給するためのガス供給管30が設けられており、ガス供給管30は、図示しないガス供給源に接続されている。これらの構成によって、載置台2の上面に静電チャック6によって吸着保持されたウェハWを、所定の温度に制御する。ガス供給管30の構造については、後述する。
載置台2には、複数、例えば3つのピン用貫通孔200が設けられており(図1には1つのみ示す。)、これらのピン用貫通孔200の内部には、夫々リフターピン61が配設されている。リフターピン61は、駆動機構62に接続されており、駆動機構62により上下動される。ピン用貫通孔200及びリフターピン61の構造については、後述する。
上記したシャワーヘッド16は、処理容器1の天壁部分に設けられている。シャワーヘッド16は、本体部16aと電極板をなす上部天板16bとを備えており、絶縁性部材95を介して処理容器1の上部に支持される。本体部16aは、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなり、その下部に上部天板16bを着脱自在に支持できるように構成されている。
本体部16aの内部には、ガス拡散室16cが設けられ、このガス拡散室16cの下部に位置するように、本体部16aの底部には、多数のガス通流孔16dが形成されている。また、上部天板16bには、当該上部天板16bを厚さ方向に貫通するようにガス導入孔16eが、上記したガス通流孔16dと重なるように設けられている。このような構成により、ガス拡散室16cに供給された処理ガスは、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを介して処理容器1内にシャワー状に分散されて供給される。
本体部16aには、ガス拡散室16cへ処理ガスを導入するためのガス導入口16gが形成されている。このガス導入口16gにはガス供給配管15aが接続されており、このガス供給配管15aの他端には、処理ガスを供給する処理ガス供給源(ガス供給部)15が接続される。ガス供給配管15aには、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)15b、及び開閉弁V2が設けられている。そして、処理ガス供給源15からプラズマエッチングのための処理ガスが、ガス供給配管15aを介してガス拡散室16cに供給され、このガス拡散室16cから、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを介して処理容器1内にシャワー状に分散されて供給される。
上記した上部電極としてのシャワーヘッド16には、ローパスフィルタ(LPF)71を介して可変直流電源72が電気的に接続されている。この可変直流電源72は、オン・オフスイッチ73により給電のオン・オフが可能に構成されている。可変直流電源72の電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ73のオン・オフは、後述する制御部90によって制御される。なお、後述のように、第1のRF電源10a、第2のRF電源10bから高周波が載置台2に印加されて処理空間にプラズマが発生する際には、必要に応じて制御部90によりオン・オフスイッチ73がオンとされ、上部電極としてのシャワーヘッド16に所定の直流電圧が印加される。
処理容器1の側壁からシャワーヘッド16の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体1aが設けられている。この円筒状の接地導体1aは、その上部に天壁を有している。
処理容器1の底部には、排気口81が形成されており、この排気口81には、排気管82を介して第1排気装置83が接続されている。第1排気装置83は、真空ポンプを有しており、この真空ポンプを作動させることにより処理容器1内を所定の真空度まで減圧することができるように構成されている。一方、処理容器1内の側壁には、ウェハWの搬入出口84が設けられており、この搬入出口84には、当該搬入出口84を開閉するゲートバルブ85が設けられている。
処理容器1の側部内側には、内壁面に沿ってデポシールド86が設けられている。デポシールド86は、処理容器1にエッチング副生成物(デポ)が付着することを防止する。このデポシールド86のウェハWと略同じ高さ位置には、グランドに対する電位が制御可能に接続された導電性部材(GNDブロック)89が設けられており、これにより異常放電が防止される。また、デポシールド86の下端部には、内壁部材3aに沿って延在するデポシールド87が設けられている。デポシールド86,87は、着脱自在とされている。
上記構成のプラズマ処理装置は、制御部90によって、その動作が統括的に制御される。この制御部90には、CPUを備えプラズマ処理装置の各部を制御するプロセスコントローラ91と、ユーザインターフェース92と、記憶部93とが設けられている。
ユーザインターフェース92は、工程管理者がプラズマ処理装置を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
記憶部93には、プラズマ処理装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ91の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウェア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース92からの指示等にて任意のレシピを記憶部93から呼び出してプロセスコントローラ91に実行させることで、プロセスコントローラ91の制御下で、プラズマ処理装置での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、又は、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで使用したりすることも可能である。
次に、図2及び図3を参照して、載置台2の要部構成について説明する。図2及び図3は、図1のプラズマ処理装置における載置台2を示す概略断面図である。図2は、リフターピン61を上昇させてウェハWを支持した場合を示し、図3は、リフターピン61を下降させてウェハWを静電チャック6上に支持した場合を示している。上述のとおり、載置台2は、基材2aと、静電チャック6とにより構成されており、基材2aの下方から静電チャック6の上方へリフターピン61が挿通可能に構成されている。
静電チャック6は、円板状を呈し、ウェハWを載置するための載置面21と、当該載置面に対向する裏面22とを有している。載置面21は、円形を呈し、ウェハWの裏面と接触して円板状のウェハを支持する。基材2aは、静電チャック6の裏面22に接合されている。
載置面21には、ガス供給管30の端部(ガス孔)が形成されている。ガス供給管30は、冷却用のヘリウムガス等を供給している。ガス供給管30の端部は、第1貫通孔17及び第2貫通孔18によって形成されている。第1貫通孔17は、静電チャック6の裏面22から載置面21までを貫通するように設けられている。すなわち、第1貫通孔17の内壁は、静電チャック6によって形成されている。一方、第2貫通孔18は、基材2aの裏面から静電チャック6との接合面までを貫通するように設けられている。すなわち、第2貫通孔18の内壁は、基材2aによって形成されている。第2貫通孔の孔径は、例えば第1貫通孔の孔径よりも大きい。そして、第1貫通孔17及び第2貫通孔が連通するように、静電チャック6及び基材2aが配置されている。ガス供給管30には、ガス用スリーブ204及びガス用スペーサ202が配置されている。ガス用スリーブ204及びガス用スペーサ202の詳細は、後述する。
また、載置面21には、リフターピン61を収容するピン用貫通孔200が形成されている。ピン用貫通孔200は、第1貫通孔17及び第2貫通孔18によって形成されている。上述のとおり、第1貫通孔17は静電チャック6に形成され、第2貫通孔18は基材2aに形成されている。ピン用貫通孔200を形成する第1貫通孔17は、リフターピン61の外径に合わせた孔径、すなわち、リフターピン61の外径より僅かに大きい(例えば、0.1〜0.5mm程度大きい)孔径とされ、内部にリフターピン61を収容可能とされている。第2貫通孔の孔径は、例えば第1貫通孔の孔径よりも大きい。そして、第1貫通孔17の内壁及び第2貫通孔18の内壁と、リフターピン61との間には、ピン用スリーブ203及びピン用スペーサ201が配置されている。ピン用スリーブ203及びピン用スペーサ201の詳細は、後述する。
リフターピン61は、絶縁性のセラミックス又は樹脂等からピン形状に形成されたピン本体部61a及びピン上端部61bを具備している。このピン本体部61aは、円筒形状を呈し、外径が例えば数mm程度を有している。ピン上端部61bは、ピン本体部61aが面取りされることにより形成され、球状の面を有している。この球状の面は、例えば曲率を非常に大きくし、リフターピン61のピン上端部61b全体をウェハW裏面に近づけている。リフターピン61は、図1に示す駆動機構62によりピン用貫通孔200内を上下動し、載置台2の載置面21から出没自在に動作する。なお、駆動機構62は、リフターピン61が収容された際に、リフターピン61のピン上端部61bがウェハW裏面直下に位置するように、リフターピン61の停止位置の高さ調整を行う。
図2に示すように、リフターピン61を上昇させた状態では、ピン本体部61aの一部及びピン上端部61bが載置台2の載置面21から突出した状態となり、載置台2の上部にウェハWを支持した状態となる。一方、図3に示すように、リフターピン61を下降させた状態では、ピン本体部61aがピン用貫通孔200内に収容された状態となり、ウェハWは載置面21に載置される。このように、リフターピン61はウェハWを上下方向に搬送する。
次に、図4及び図5を用いて、ガス供給管30内に配置されたガス用スリーブ204及びガス用スペーサ202の詳細な構成を説明する。図4は、載置台2におけるガス孔の構成を模式的に示す概略断面図である。図5は、ガス用スペーサ202の構成を模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、ガス用スリーブ204は、ガス供給管30を形成する第2貫通孔18内に配設されている。ガス用スリーブ204は、例えば、セラミックス等の絶縁体からなり、円筒形状を呈する。そして、ガス用スリーブ204は、第2貫通孔18内において基材2aと接するように、第2貫通孔18の孔径とほぼ同一の外径を有し、基材2aの下面側から上面側に向かって、第2貫通孔18内に嵌め込まれるように取り付けられている。ガス用スリーブ204は、第2貫通孔18の孔径よりも小さい内径(例えば数mm程度)を有している。
ガス用スリーブ204には、樹脂(例えばポリイミド)等の絶縁体からなるガス用スペーサ202が挿入されている。ガス用スペーサ202は、基材2aの下面側から上面側に向かって、第2貫通孔18に取り付けられたガス用スリーブ204に挿通されるとともに、第1貫通孔17に挿通され、第1貫通孔17及びガス用スリーブ204内に嵌め込まれるように取り付けられている。
図4及び図5に示すように、ガス用スペーサ202は、スペーサ本体部202a及びスペーサ端部202bを有している。スペーサ本体部202aは、円筒形状を呈している。スペーサ端部202bは、円筒形状を呈し、スペーサ本体部202aよりも小さい内径を有している。また、スペーサ端部202bは、例えば外径がスペーサ本体部202aの外径とほぼ同じである本体延長部205と、外径がスペーサ本体部202aの外径よりも小さい差し込み部206とを含んでいる。
図4に示すように、本体延長部205がスペーサ本体部202aに接続されることにより、スペーサ端部202bがスペーサ本体部202aと一体となった状態で、ガス用スリーブ204内に挿入されている。本体延長部205及びスペーサ本体部202aは、ガス用スリーブ204内に収容されて配置されている。差し込み部206は、静電チャック6の裏面22から載置面21まで延在するように、第1貫通孔17内に配置されている。このように、ガス用スペーサ202が、ガス用スリーブ204の内壁及び第1貫通孔17の内壁を覆うように延在している。ガス用スペーサ202を挿入することにより、ガス供給管30内の径方向空間は、ガス用スペーサ202挿入前よりも小さくなる。
次に、図6及び図7を用いて、ピン用貫通孔200内に配置されたピン用スリーブ203及びピン用スペーサ201の詳細な構成を説明する。図6は、載置台2におけるピン用貫通孔200の構成を模式的に示す概略断面図である。図7は、ピン用スペーサ201の構成を模式的に示す斜視図である。
図6に示すように、ピン用スリーブ203は、ピン用貫通孔200を形成する第2貫通孔18内に配設されている。ピン用スリーブ203は、例えば、セラミックス等の絶縁体からなり、円筒形状を呈する。そして、ピン用スリーブ203は、第2貫通孔18内において基材2aと接するように、第2貫通孔18の孔径とほぼ同一の外径を有し、基材2aの下面側から上面側に向かって、第2貫通孔18内に嵌め込まれるように取り付けられている。ピン用スリーブ203は、第2貫通孔18の孔径よりも小さく、リフターピン61の外径よりも大きい内径(例えば数mm程度)を有している。
ピン用スリーブ203には、樹脂(例えばポリイミド)等の絶縁体からなるピン用スペーサ201が挿入されている。ピン用スペーサ201は、基材2aの下面側から上面側に向かって、第2貫通孔18に取り付けられたピン用スリーブ203に挿通されるとともに、第1貫通孔17に挿通され、第1貫通孔17及びピン用スリーブ203内に嵌め込まれるように取り付けられている。
図6及び図7に示すように、ピン用スペーサ201は、円筒形状の収容部201aと、収容部201aの一端に形成され、径方向外側に突出する鍔部201bとを有する。収容部201aは、例えば数百μm以下の厚みを持った円筒形状を呈している。収容部201aは、ピン本体部61aの外径よりも大きな内径を有している。一方、鍔部201bは、収容部201aの径方向外側に突出する鍔形状を呈し、基材2aに固定するに足る面積を有している。
図6に示すように、鍔部201bの上面が、基材2aの下面に固定された状態で、ピン用スペーサ201はピン用スリーブ203に挿入されている。また、ピン用スペーサ201の収容部201aは、基材2aの裏面から静電チャック6の載置面21まで延在するように配置されている。このように、ピン用スペーサ201が、ピン用スリーブ203の内壁及び第1貫通孔17の内壁を覆うように延在している。ピン用スペーサ201を挿入することにより、ピン用貫通孔200内におけるリフターピン61が存在しない空間、すなわちリフターピン61と第1貫通孔17の内壁との間、及び、リフターピン61とピン用スリーブ203の内壁との間が、より小さくなる。すなわち、ピン用スペーサ201を挿入することにより、ピン用貫通孔200における径方向の空間は、ピン用スペーサ201挿入前よりも小さくなる。このため、図3に示すように、リフターピン61を下降させてピン用貫通孔200内に収容させた際には、ピン用貫通孔200内に空間がほぼ無い状態となる。
ここで、図8を参照して、パッシェンの法則による放電開始電圧について説明する。図8は、パッシェンの法則による放電開始電圧の曲線を示す図である。その横軸はヘリウムガスの圧力Pと電極間距離Tとの積、縦軸は放電開始電圧である。横軸及び縦軸は、対数目盛で表示している。例えば図8の点Peに示すように、圧力Pと電極間距離Tとの積が2.0[cm・Torr]であった場合には、放電開始電圧は略200[V]となる。このときの圧力P及び電極間距離Tの条件下において、電圧が例えば54[V]となった場合には、電圧の値が放電開始電圧である略200[V]に比して小さく、さらに4倍程度のマージンがあるので、放電は発生しない。一方、同条件下において電圧が例えば300[V]となった場合には、電圧の値が放電開始電圧である略200[V]に比して大きいため、放電が発生する。
図8に示すように、放電開始電圧は圧力Pと電極間距離Tとの積に対して極小値P1を有している。この極小値P1において、最も放電しやすい圧力P及び電極間距離Tとなる。そして、この極小値P1を境にして右側にいくほど、すなわち圧力Pと電極間距離Tとの積が大きくなるほど、放電開始電圧が高くなる。例えば、電極間距離Tを極小値P1における電極間距離Tとし、圧力Pを極小値P1における圧力Pから上昇させた場合には、放電開始電圧が高くなる。これは、圧力Pが上昇すると電極間に存在するHeが増え、平均自由行程が小さい状態となるので、電界により電子が加速されても十分な運動エネルギーを得る前にHeに衝突するためである。同様に、例えば圧力Pを極小値P1における圧力Pとし、電極間距離Tを極小値P1における電極間距離Tから長くした場合も、放電開始電圧が高くなる。これは、電極間距離Tが長くなると電界による加速力が減少することから十分な運動エネルギーが得られないためである。このように、極小値P1を境に右側にいくほど、すなわち圧力Pと電極間距離Tとの積が大きくなるほど、放電開始電圧が高くなる。
一方、この極小値P1を境にして左側にいくほど、すなわち圧力Pと電極間距離Tとの積が小さくなるほど、放電開始電圧が高くなる。例えば、電極間距離Tを極小値P1における電極間距離Tとし、圧力Pを極小値P1における圧力Pから減少させた場合には、放電開始電圧が高くなる。これは、電極間に存在するHeが少なくなり加速した電子と衝突しにくくなるためである。同様に、圧力Pを極小値P1における圧力Pとし、電極間距離Tを極小値P1における電極間距離Tから減少させた場合には、放電開始電圧が高くなる。これは、電子が加速するための空間が不足するためである。このように、極小値P1を境に左側にいくほど、すなわち圧力Pと電極間距離Tとの積が小さくなるほど、放電開始電圧が高くなる。
よって、放電開始電圧を高めるためには、極小値P1の右側又は左側となる装置又はプロセス条件とすることが考えられる。すなわち、圧力Pと電極間距離Tとの積を極小値P1に比べてより大きく、又はより小さくすれば、ウェハWの裏面において、放電しにくい状態とすることができる。ところで、放電開始電圧の曲線は、極小値の右側では、緩やかに上昇している。このため、圧力Pと電極間距離Tとの積を極小値P1より大きくするように装置又はプロセス条件を変更したとしても、放電開始電圧が劇的に増加するわけではないため、電極間の電圧を上げていけば放電開始電圧に何れ到達してしまう。このため、圧力Pと電極間距離Tとの積を極小値P1から大きくするように装置又はプロセス条件を変更してもウェハWの裏面における放電を適切に防ぐことはできないおそれがある。一方、極小値P1の左側では、圧力Pと電極間距離Tとの積PT=1の漸近線に沿って曲線が急激に立ち上がっている。このため、圧力Pと電極間距離Tとの積を極小値P1より小さくするように装置又はプロセス条件を変更した場合には、放電開始電圧が劇的に増加する。また、漸近線が存在することから、電極間距離Tが小さくなれば、電子の加速に必要な距離を確保できない状況、すなわち、電極間の電圧をいくら上昇させても物理的に放電することができない状況とすることができる。よって、圧力Pと電極間距離Tとの積を極小値P1より小さくするように装置又はプロセス条件を変更する方が、圧力Pと電極間距離Tとの積を極小値P1に比べてより大きくするように装置又はプロセス条件を変更するよりも、効率良く放電を防止することができる。このため、放電開始電圧を高めるためには、極小値P1の右側よりも、極小値P1の左側にあるような装置又はプロセス条件にすることがより効率的かつ効果的である。以上より、パッシェンの法則によれば、電極間距離T、すなわち電界が生じる空間を小さくすることで、より放電しにくくなると考えられる。なお、ウェハW裏面に局所的に存在する空間の大きさを小さくした方が、すなわち電極間距離Tを小さくした方が温度均一性の観点からも優位である。
図9は、第1実施形態に係るピン用スペーサ201の作用を示す模式図であり、電位の等高線を点線で示している。図9(a)は従来の載置台2を示す図であり、図9(b)は第1実施形態に係る載置台2を示す図である。図9(a)に示す従来の載置台2では、リフターピン61がプラズマに晒されるのを回避すべく、ピン用貫通孔200内部の深い位置にリフターピン61を停止させて収容している。また、ピン上端部の曲率は小さい。そうすると、図9(a)のように、ピン用スペーサ201を設けない載置台2においては、ピン用貫通孔200内で電子が加速することができる程度の空間Zが存在することになる。さらに、空間Zは、電界の歪みが生じている部分も含んでいる。電界の歪み部分は、電子が同一箇所に進行するため、放電を誘発させやすい。このように、従来のリフターピン61の形状や配置では、リフターピン61とウェハWとが近接していないため、リフターピン61の上部とウェハWとの間において、電子が加速可能な空間部分が存在している。また、リフターピン61が収容されている部分においても、径方向における空間が存在している。このため、これらの空間部分において電子が加速してHeと衝突し、放電が発生する可能性がある。
これに対し、図9(b)のように、ピン用スペーサ201を設けた第1実施形態に係る載置台2においては、リフターピン61をウェハWに近接させることにより、空間Zを狭くすることができるとともに、ピン用貫通孔200内で電界の歪みが生じている部分にリフターピン61が存在するように配置することができる。さらに、ピン上端部61bの曲率を大きくすることによって、空間Zをより狭くすることができる。すなわち、ピン上端部61bがウェハWと近接するため、ピン上端部61bとウェハWとの間における空間部分を従来よりも狭くすることができる。ピン本体部61aの収容部においても、ピン用スペーサ201が設けられている分、径方向における空間部分を従来よりも狭くすることができる。このように、電子が加速するための空間を設けないようにすることができるので、ピン用貫通孔200における放電を防止することが可能となる。
以上、第1実施形態に係る載置台2によれば、ピン用貫通孔200に挿入されたピン用スリーブ203と、ピン用スリーブ203に挿入されたピン用スペーサ201と、を備えることにより、ピン用貫通孔200における径方向の空間を狭くすることができる。ピン用貫通孔200内にリフターピン61が収容された状態において、ピン本体部61aとピン用スペーサ201との間、及びピン上端部61bとウェハW裏面との間における空間は、従来よりも狭くなる。よって、当該空間における異常放電を防止することが可能となる。
また、上述したように、第1実施形態に係る載置台2は、ガス孔であるガス供給管30に挿入されたガス用スリーブ204と、ガス用スリーブ204に挿入されたガス用スペーサ202と、を備えることにより、ガス供給管30における径方向の空間を狭くすることができる。ガス供給管30における径方向の空間が狭くなることにより、電子が加速できず、放電しにくい状態となる。よって、ガス供給管30における放電を防止することができる。
図10は、第1実施形態の載置台2における、Heの圧力とウェハW裏面の異常放電痕との関係を示す実験結果の表である。プロセス1では、第1のRF電源10aの電力を2000[W]、第2のRF電源10bの電力を4000Wとしてプラズマを発生させ、He圧力を0[Torr]、載置台2の制御温度を80[℃]とした。プロセス2では、プロセス1の条件のうち、He圧力を10[Torr]とした。プロセス3では、プロセス1の条件のうち、He圧力を25[Torr]とした。図10における斜線の欄は、Heの圧力を示している。上記プロセス1〜3に関して、載置台2に設けられた3つのピン用貫通孔200(Pin−1,Pin−2,Pin−3)及びガス供給管30(ガス孔)において、ウェハW裏面の異常放電痕を目視にて確認した。結果の欄における○△×の印は、ウェハW裏面の放電痕について表現するものであり、○印は放電痕が無く正常箇所と差異が無い状態、△印は白くもやっとした放電痕が目視で注視すればやっと分かる状態、×印は目視で明らかに放電痕と分かる状態を示している。図10に示すように、第1実施形態に係る載置台2を備えたプラズマ処理装置は、Heの圧力が25[Torr]より低い条件下において、異常放電を防止することができることが確認された。
(第2実施形態)
ところで、上述した第1実施形態に係る載置台2においては、以下説明するように、更なる改善の余地がある。図11は、図1の載置台におけるリフターピン61の駆動機構62の概要を示す模式図である。なお、図11では、リフターピン61が2つ確認できる断面の場合を図示している。図11に示すように、駆動機構62は、駆動源54及び駆動源54に接続された駆動部材55を備えている。駆動部材55は、例えば円盤状を呈し、その外縁の所定の一箇所が駆動源54と接続されている。このため、駆動源54との接続点において上下方向の駆動力が作用する。また、駆動部材55は、駆動源54との接続点に対向する駆動部材55の外縁の一箇所が固定されている。駆動部材55の上面には、リフターピン61の下端部が接続されている。なお、図11では省略しているが、3以上のリフターピン61が駆動部材55の上面に等配置されている。駆動部材55の駆動源54との接続点に駆動力が作用した場合、駆動部材55は固定された箇所を中心に傾斜し、リフターピン61が上昇する。このように、リフターピン61を支える駆動部材55は片持ち構造である場合には、リフターピン61の荷重により駆動部材55が撓む可能性がある。また、駆動部材55の外縁の一箇所が固定されておらず、替わりに他の駆動源54が接続されたいわゆる両持ち構造であっても、複数の駆動源54の駆動シーケンスがズレた場合には、駆動部材55が撓む可能性がある。駆動部材55が撓むと、リフターピン61はピン用貫通孔200内を垂直方向に正確に上下動することができない。よって、リフターピン61とピン用貫通孔200の内壁との間には、隙間空間(いわゆるあそび)が必要である。しかしながら、ピン用スペーサ201を挿入したことに伴い、径方向の空間が減るため、リフターピン61が上下動するために十分な隙間空間が存在しなくなる可能性がある。また、基材2aは導電性の金属で構成されていることから熱膨張する。このため、ピン用貫通孔200の位置がずれたり、口径が小さくなる場合がある。そうすると、ピン用スペーサ201を挿入した場合には、当該位置ずれや縮径が許容できないおそれがある。また、ピン用スペーサ201の挿入に伴い、リフターピン61が上下動する際の摺動抵抗が増加するおそれがある。以上より、ピン用スペーサ201の挿入によって空間を縮小することにより異常放電を防止するという対策では、リフターピンの機能と異常放電の防止とを適切に両立できない場合があると考えられる。
また、異常放電は、特に、RF周波数がより低く、RF電力がより高い条件下において、容易に発生する。これは、RF周波数をより低く、かつ、RF電力をより高くすると、自己バイアスが増加するためである。
まず、自己バイアスについて説明する。図12は、自己バイアスを説明するための概要図である。図12に示すように、載置台2に相当する電極にRF電源がコンデンサCBを介して接続され、処理容器1に相当する壁がグランドに接続されているとする。また、壁の面積がRF電極の面積よりも十分に大きいものとする。この場合には、壁に流入する電子はグランドへ放出されるものの、電極に流入した電子はコンデンサCBによって蓄積される。コンデンサCBに電荷が蓄積されることによって、電極に負の直流電圧である自己バイアスVDCが自然に発生する。そして、RF電源のRF波形をVRFとし、その振幅をVPPとすると、プラズマからの電荷を蓄積したコンデンサCBの影響により、電極に伝わるRF波形Veleは、自己バイアスVDCの分だけ全体的に負の方向へ移動する。なお、プラズマが発生した際には、プラズマ中の電子とガスイオンとの質量の違いにより、プラズマが正に帯電するとともに、プラズマと壁及び電極との間に負のバイアス領域であるシースが発生する。このシースを安定的に維持するためには、プラズマから電極へ流入する電子の電荷量(流入電流)の時間平均と、プラズマから電極へ流入するイオンの電荷量(イオン電流)の時間平均とを等しくする必要がある。上記説明したように、自己バイアスVDCが発生すると、電極に伝わるRF波形Veleを負の方向へ押し下げて電子が電極へ流入する時間を短くするように作用するため、流入電流とイオン電流との時間平均が等しくなり、結果として安定的にプラズマを維持することができる。
図13の(A)は、RF周波数及びRF電力が所定の値とした際の電極のRF波形であり、図13の(B)は、図13の(A)で示すRF波形の条件よりも、より低周波かつ高電力とした場合のRF波形である。例えば、RF電力を高くすると、RF電力によって形成される電界が高くなり、電界によって加速される電子の運動エネルギーが大きくなるため、電極に飛び込む電子の量が多くなり、自己バイアスVDCが増加する。すなわち、図13の(A)及び(B)に示すように、RF印加条件を低周波かつ高電力とした場合には、振幅VPPの増大とともに自己バイアスVDCも増大する。
図14は、パッシェンの法則のグラフを用いて、自己バイアスVDCが増大した場合に、異常放電が発生しやすいことを説明するグラフである。ここでは、所定のプロセス条件A1における放電開始電圧がV1であるとする。このとき、載置台2に発生した自己バイアスが放電開始電圧V1よりも小さいVDC1であった場合には、異常放電は発生しない。しかし、載置台2に発生した自己バイアスが増大した場合には、放電開始電圧V1を超える場合がある。例えば、放電開始電圧V1よりも大きいVDC2が発生した場合には、プロセス条件A1においても異常放電が発生する。すなわち、RF印加条件を低周波かつ高電力とした場合には、自己バイアスVDCが増大することで、放電開始電圧V1を超える可能性が大きくなることから、異常放電発生のリスクが高まる。
そこで、要求される広範囲のエッチング条件(例えば、周波数500kHz以下かつRF電力が3000W以上)においても異常放電を防止するためには、ウェハW裏面と静電チャック6との間における異常放電を発生させる空間を狭くするだけでは足りず、更にマージンを持った対策、すなわち異常放電を発生させる空間そのものを無くすことが、より有効である。
以上の考察を踏まえ、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の説明では、第1実施形態と同一の部分については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
図15は、第2実施形態に係る載置台におけるリフターピン及びピン用貫通孔の構成を示す概略断面図である。本実施形態におけるピン用貫通孔200は、第1貫通孔17及び第2貫通孔18によって形成されている。なお、ここではピン用貫通孔200の上端部は第1貫通孔17によって形成され、ピン用貫通孔200の下端部は第2貫通孔18によって形成されている。第1貫通孔17は、ピン用貫通孔200の下端部側に向かって徐々に縮径された形状を呈している。すなわち、第1貫通孔17は、載置台2の下側に向かうほど小さい孔径を有するテーパー形状を有している。
リフターピン61のピン上端部61bは、ピン本体部61a(下端部側)側に向かって徐々に縮径された形状を呈している。すなわち、ピン上端部61bは、第1貫通孔17の形状と対応するように、載置台2の上側に向かうほど大きい断面(外径)を有する逆テーパー形状を有している。リフターピン61がピン用貫通孔200に収容されたとき、ピン上端部61bの外面は、第1貫通孔17の内壁と面接触する。このため、第1貫通孔17において、ピン上端部61bと第1貫通孔17の内壁との間における距離、すなわち径方向の空間が完全に無くなる。
図16は、第2実施形態に係る載置台を示す概略断面図である。図16に示すように、載置台2におけるピン用貫通孔200は、排気用通孔19に連通されている。排気用通孔19は、載置台2の側壁において開口されている。これにより、ピン用貫通孔200は、載置台2を備えるプラズマ処理装置の処理容器1内に連通されている。リフターピン61のピン本体部61aと第2貫通孔18の内壁との間における空間に存在しているガスは、この排気用通孔19を通して処理容器1内に排気される。なお、排気用通孔19は、載置台2の側壁において開口されているものに限られず、支持台4の側壁において開口されているものであってもよい。
以上、第2実施形態に係る載置台2によれば、ピン用貫通孔200が下端部に向かって徐々に縮径された形状を呈し、リフターピン61のピン上端部61bがピン用貫通孔200の上端部の形状と対応するように下端部側に向かって徐々に縮径された形状を呈している。リフターピン61は、ピン用貫通孔200に収容されたときに、ピン用貫通孔200の上端部の内壁と面接触する。このため、ピン用貫通孔200の上端部において、径方向の空間を完全に無くすことができる。このように異常放電を発生させる空間そのものを無くすことで、RF印加条件を低周波かつ高電力とした場合においても、異常放電を防止することができる。さらに、リフターピン61のウェハ支持機能と異常放電の防止とを両立させることが可能となる。
また、ピン用貫通孔200は、排気用通孔19を介して処理容器1内に連通している。当該排気用通孔19を通して随時ガス排気を行うことができる。よって、排気用通孔19という簡易な構成のみで、リフターピン61のピン本体部61aと第2貫通孔18の内壁との間における空間に存在しているガスを排気することができる。このため、ピン用貫通孔200内が減圧されることから、異常放電しにくい状態を実現することが可能となる。
以上、一実施形態について記述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
例えば、ピン用貫通孔200内を減圧するための排気装置を別途設けてもよい。図17は、第2実施形態に係る載置台の変形例を示す概略断面図である。この載置台2を備えるプラズマ処理装置は、処理容器1を排気する第1排気装置83とは異なる位置に設けられた第2排気装置94を有している。複数のピン用貫通孔200は、第2排気装置94へ接続されている。すなわち、ピン用貫通孔200それぞれが、処理容器1の内部と第2排気装置94とを接続する排気流路の一部として構成されている。この変形例に係る載置台2を備えるプラズマ処理装置によれば、ピン用貫通孔200内部を、第2排気装置94によって所望のタイミングで排気することができる。よって、処理容器1の排気制御とは独立した構成でピン用貫通孔200内部のガス排気の制御を行うことができるとともに、ピン用貫通孔200内が減圧され、図16に係る載置台2を備えるプラズマ処理装置同様、異常放電しにくい状態を実現することが可能となる。なお、上述した第2排気装置94は、ピン用貫通孔200それぞれに対応させて複数備えていてもよい。
また、第2実施形態においては第1貫通孔17をテーパー形状、ピン上端部61bを逆テーパー形状としたが、リフターピン61がピン用貫通孔200に収容されたときにピン上端部61bが第1貫通孔17の内壁と面接触するような形状を呈している限り、この形状に限られない。例えば、すり鉢形状等、種々の形状を呈してもよい。また、第1貫通孔17の全体がテーパー形状となっている必要はなく、第1貫通孔17の上端部のみがテーパー形状とされてもよいし、第1貫通孔17の下端部のみがテーパー形状とされてもよい。
また、第2実施形態においては、ピン用貫通孔200の上端部が第1貫通孔17である場合を説明したが、ピン用貫通孔200の上端部が第1貫通孔17及び第2貫通孔18の一部であってもよい。すなわち、テーパー形状となる部分が、第1貫通孔17と第2貫通孔18の一部とによって形成されていてもよい。あるいは、ピン用貫通孔200の上端部が第1貫通孔17及びピン用スリーブ203の一部であってもよい。すなわち、テーパー形状となる部分が、第1貫通孔17とピン用スリーブ203の一部とによって形成されていてもよい。
また、第2実施形態のピン用貫通孔200において、第1実施形態で説明したピン用スペーサ201を用いて異常放電を防止する構成としてもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態において、プラズマ処理装置は、ラジアルラインスロットアンテナ(Radical line slotantenna)で発生させたプラズマを用いていてもよい。