JP6379793B2 - バルーンカテーテル - Google Patents

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本発明は、血管の狭窄部分を拡張する治療に用いられるバルーンカテーテルに関する。
従来より、カテーテルによって狭窄した血管を拡張する治療が行われている。例えば、バルーン拡張術において動脈の狭窄部分をバルーンカテーテルで拡張するには、ガイドワイヤをガイディングカテーテルに挿入して、その先端を狭窄部分付近に到達させる。このガイドワイヤに導かれるようにして、バルーンカテーテルをガイディングカテーテルに挿入して、そのバルーン部分を動脈の狭窄部分に到達させる。そして、バルーン部分を膨らませて動脈の狭窄部分を拡張させる(特許文献1〜3参照)。
バルーン拡張術においては、術後の再狭窄の発生頻度が高いという問題がある。再狭窄が生じるメカニズムには様々な説があるが、主として二つの現象が寄与している。第一に、バルーンによる加圧によって血管壁が機械的障害(乖離、亀裂)を受けることに起因して慢性期に血管細胞が遊走・過増殖し、血管内腔を閉塞する。第二に、血管の収縮性リモデリングにより血管自体が狭小化する。これに対して、バルーンカテーテルによる狭窄部分への加圧と加熱とを同時に行う手法、すなわち加熱型バルーン拡張術が考案されている(特許文献4,5参照)。加熱型バルーン拡張術は、バルーン加圧中に血管壁を加熱することにより血管壁中のコラーゲン繊維を熱変性(軟化)させ、低い拡張圧力で血管壁の乖離を起こさずに拡張治療を行う手法である。これによって、バルーン拡張術の問題点である血管の機械的損傷を抑制することができる。
特開2006−326226号公報 特開2007−20737号公報 特開2009−536546号公報 特開平07−213621号公報 特開平05−212118号公報
上述の加熱型バルーン拡張術では、バルーン内に設けられた発熱部材を加熱することによって、バルーンを拡張させるための流体(例えば、生理食塩水、水)を通じて当該熱が血管壁に伝達される。しかしながら、発熱部材の加熱量が不足すると、血管を目標温度まで上昇させるために長時間に亘って血管を加熱し続けることになる。その結果、血管を構成するタンパク質を熱変性させるという課題を生じ得る。また、この課題は、バルーンの内部空間の容積が大きくなることによってさらに顕著になる。
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱型バルーン拡張術において、発熱部材を効率よく加熱することによって、バルーンに接する血管を短時間で目標温度まで上昇させることのできるバルーンカテーテルを提供することにある。
(1) 本発明に係るバルーンカテーテルは、先端側に弾性的に膨張可能なバルーンが設けられており、当該バルーンへ流体を流入させ且つ当該バルーンから流体を流出させる空間が内部に設けられたシャフトと、上記バルーンの内部空間に設けられた発熱部材と、上記シャフトに沿って上記バルーンの内部空間にまで延出されており、先端から上記発熱部材に光を照射する第1導光部材及び第2導光部材とを備える。
上記構成によれば、第1導光部材及び第2導光部材それぞれから照射された光によって発熱部材が加熱されるので、バルーン内の温度を短時間で上昇させることができる。その結果、長時間に亘って血管を加熱し続けることによるタンパク質の熱変性を抑制することができる。
(2) 好ましくは、上記第1導光部材及び上記第2導光部材の先端位置は、延出方向において互いにずれている。
上記構成によれば、第1導光部材及び第2導光部材それぞれから照射された光が発熱部材に最初に当たる位置をずらすことができる。これにより、発熱部材の温度を均一に上昇させることができると共に、過熱による発熱部材のダメージを抑制することができる。
(3) 好ましくは、上記第1導光部材及び上記第2導光部材は、互いに固定されている。
上記構成によれば、バルーンカテーテルが血管内で湾曲されたとしても、第1導光部材及び第2導光部材の先端位置のズレ量が変動するのを抑制することができる。
(4) 例えば、上記第1導光部材及び上記第2導光部材は、筒形状の上記発熱部材の内側において拡散光を照射するものである。そして、延出方向における上記第2導光部材の先端位置は、上記第1導光部材から照射された光が上記発熱部材に最初に到達する位置より上記発熱部材の先端側に位置している。
(5) 例えば、上記発熱部材は、金属線がコイル形状に巻回されたものである。
本発明によれば、第1導光部材及び第2導光部材それぞれから照射された光によって発熱部材が効率よく加熱されるので、バルーンに接する血管を短時間で目標温度まで上昇させることができる。
図1は、バルーン11が収縮姿勢である状態のバルーンカテーテル装置100の外観構成を示す図である。 図2は、バルーン11の断面図である。 図3は、(A)は図2のA−Aにおける断面図、(B)は図2のB−Bにおける断面図である。 図4は、光ファイバ20A、20Bから照射されたレーザ光の軌跡を示す図である。 図5は、先端位置がずらされた光ファイバ20A、20Bによって発熱部材22を加熱した時のバルーン11内の温度変化(太線)と、先端位置が揃えられた光ファイバ20A、20Bによって発熱部材22を加熱した時のバルーン11内の温度変化(細線)とを示す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。
本実施形態におけるバルーンカテーテル装置100は、図1に示されるように、バルーンカテーテル10と、複数のレーザ発生装置25A、25Bと、複数の集光光学系ユニット26A、26Bと、制御装置30と、ポンプ31とを備える。なお、本実施形態では、バルーンカテーテル装置100が備えるレーザ発生装置25A、25B及び集光光学系ユニット26A、26Bが2系統であるが、3系統以上であってもよい。
バルーンカテーテル10は、図1及び図2に示されるように、先端側にバルーン11が設けられたシャフト12を有する。シャフト12は、軸線方向101に長尺な部材である。シャフト12は、軸線方向101に対して湾曲するように弾性的に撓み得る管体である。湾曲していない状態のシャフト12が延びる方向を、本明細書における軸線方向101と定義する。また、図1に示されるバルーンカテーテル10において、血管に挿入される向きに対して後ろ側(図1における右側)を「基端側」と定義し、血管に挿入される向きに対して前側(図1における左側)を「先端側」と定義する。
シャフト12には、図2に示されるように、ガイドワイヤ用チューブ14、イン側チューブ17、アウト側チューブ18、ケーブル19、及び光ファイバ20A、20Bが挿通されている。シャフト12の外径及び内径は、軸線方向101に対して必ずしも一定である必要はないが、操作性の観点からは先端側より基端側の剛性が高いことが好ましい。シャフト12は、合成樹脂やステンレスなど、バルーンカテーテルに用いられている公知の材質が使用できる。また、シャフト12は、必ずしも1種類の素材のみから構成される必要はなく、他素材からなる複数の部品が組み付けられて構成されていてもよい。
シャフト12の先端側に設けられたバルーン11は、イン側チューブ17を通じて内部空間に流体(液体、気体)が流入することにより弾性的に膨張し、アウト側チューブ18を通じて内部空間から流体が流出することにより収縮する。すなわち、バルーン11の内部空間は、シャフト12に挿通されたイン側チューブ17及びアウト側チューブ18の各内部空間と連通している。バルーン11の大きさは、例えば、軸線方向101の長さが20mm〜40mm程度であり、膨張時の直径が6mm〜8mm程度である。図1及び図2には、収縮した状態のバルーン11が示されている。バルーン11の材質及びバルーン11とシャフト12との固定方法は、バルーンカテーテルにおいて用いられる公知の材質及び方法を使用することができる。
シャフト12の基端にはハブ13が設けられている。ガイドワイヤ用チューブ14、イン側チューブ17、アウト側チューブ18、ケーブル19、及び光ファイバ20A、20Bは、ハブ13を通じてシャフト12に挿通されており、軸線方向101に延出されている。すなわち、シャフト12内におけるガイドワイヤ用チューブ14、イン側チューブ17、アウト側チューブ18、ケーブル19、及び光ファイバ20A、20Bの延出方向は、軸線方向101に概ね一致する。なお、ガイドワイヤ用チューブ14及びイン側チューブ17は、図3(A)及び図3(B)に示されるように、アウト側チューブ18の内部において互いに隣接している。光ファイバ20A、20Bは、図3(A)に示されるように、イン側チューブ17の内部において互いに隣接している。また、ガイドワイヤ用チューブ14、イン側チューブ17、及びアウト側チューブ18を構成する材料は特に限定されないが、例えば、Pebax(登録商標)等の可撓性を有する熱可塑性エラストマーで形成することができる。
ハブ13を通じてシャフト12の内部に挿通されたガイドワイヤ用チューブ14の先端は、図1及び図2に示されるように、バルーン11の先端側から外部に露出され且つ開口している。バルーン11内におけるガイドワイヤ用チューブ14には、造影剤を素材としたマーカが設けられている。造影剤としては、例えば、硫酸バリウム、酸化ビスマス、次炭酸ビスマスなどが挙げられる。
図2に示されるように、ハブ13を通じてシャフト12の内部に挿通されたイン側チューブ17の先端位置は位置P1であり、ハブ13を通じてシャフト12の内部に挿通されたアウト側チューブ18の先端位置は位置P2である。すなわち、イン側チューブ17の先端は、アウト側チューブ18の先端よりバルーン11の先端側に位置している。換言すれば、イン側チューブ17の先端側の一部は、アウト側チューブ18から露出している。但し、イン側チューブ17及びアウト側チューブ18の先端の位置関係はこれに限定されない。
イン側チューブ17及びアウト側チューブ18の基端側の端部は、図1に示されるように、ポンプ31に接続されている。ポンプ31が駆動されることによって、イン側チューブ17を通じてバルーン11の内部空間に流体が流入し、アウト側チューブ18を通じてバルーン11から流出した流体がポンプ31に環流する。そして、バルーン11が膨張を維持するのに必要な圧力で流体がバルーン11へ流入し続けることによって、バルーン11は、軸線方向101の中央が最大径となるように軸線方向101と直交する径方向へ膨張する。イン側チューブ17の内部空間は、バルーン11へ流体を流入させるための空間に相当する。アウト側チューブ18の内部空間は、バルーン11から流体を流出させるための空間に相当する。
イン側チューブ17の先端側の内側には、図2〜図4に示されるように、発熱部材22が設けられている。本実施形態において、発熱部材22の先端位置は位置P3であり、発熱部材22の基端位置は位置P4である。すなわち、発熱部材22は、イン側チューブ17のうちのアウト側チューブ18から露出された部分の内壁面に沿って設けられている。軸線方向101における発熱部材22の長さは、例えば、17mm〜35mm程度であって、軸線方向101におけるバルーン11の長さに応じて適宜選択される。
発熱部材22は、イン側チューブ17の内壁面を覆う円筒形状の部材であって、例えば、金属線がコイル形状に巻回されたものである。但し、発熱部材22の具体的な構成はこれに限定されず、例えば、金属線が格子状に編まれたものであってもよいし、イン側チューブ17の内壁面にスパッタリングされた膜或いは点状のディポジッドなどであってもよい。これにより、発熱部材22は、バルーンカテーテル10が挿入された血管の形状に沿って湾曲することができる。また、発熱部材22は、例えば、ステンレスによって形成される。
バルーン11の内部空間には、図2に示されるように、温度センサ23が設けられている。温度センサ23の設置位置は、イン側チューブ17から流出した流体に接する位置であれば特に限定されないが、本実施形態では、イン側チューブ17のうちのアウト側チューブ18から露出した部分の外壁面である。温度センサ23の具体例は特に限定されないが、例えば、熱電対などの公知のものを用いることができる。ケーブル19は、イン側チューブ17の外壁面に沿って軸線方向101に延出されており、温度センサ23と制御装置30とを電気的に接続している。すなわち、温度センサ23からの出力信号は、ケーブル19を通じて制御装置30に伝達される。
レーザ発生装置25A、25Bは、制御装置30による制御の下で発生させたレーザ光を出力する公知の装置である。発生させるレーザ光の波長及び出力は特に限定されないが、本実施形態におけるレーザ発生装置25A、25Bは、例えば、最大25Wの近赤外レーザ光を出力することができる。集光光学系ユニット26A、26Bは、集光レンズ等の光学要素と、光学要素を通過する光の光路の両端に設けられたコネクタ27A、27B、28A、28Bとを備える。コネクタ27A、27Bはレーザ発生装置25A、25Bに接続され、コネクタ28A、28Bは光ファイバ20A、20Bに接続される。この集光光学系ユニット26A、26Bは、コネクタ27A、27Bを通じてレーザ発生装置25A、25Bから入力されたレーザ光を一旦拡散させ且つ再び集光させて、コネクタ28A、28Bを通じて光ファイバ20A、20Bに出力する。
ハブ13を通じてシャフト12の内部に挿通された光ファイバ20A、20Bは、シャフト12の途中においてイン側チューブ17の内部空間へ挿入されている。そして、光ファイバ20A、20Bは、シャフト12に沿って発熱部材22の内側にまで延出されている。光ファイバ20A、20Bは、互いに固定された状態でイン側チューブ17に挿通されている。光ファイバ20A、20Bを固定する具体的な方法は特に限定されないが、例えば、紫外線硬化性の接着剤で接着することができる。光ファイバ20Aは第1導光部材に相当し、光ファイバ20Bは第2導光部材に相当する。
光ファイバ20A、20Bは、集光光学系ユニット26A、26Bを通じて基端側に入力されたレーザ光を先端21A、21Bから発熱部材22へ向けて照射する。具体的には、レーザ発生装置25A、25Bによって発生されたレーザ光は、集光光学系ユニット26A、26Bを介して光ファイバ20A、20Bの基端に入力され、光ファイバ20A、20B内で全反射を繰り返しながら先端側に伝送され、先端21A、21Bから拡散光として発熱部材22に照射される。
光ファイバ20A、20Bの先端21A、21Bから出力されたレーザ光は、図4に示されるように、発熱部材22の内壁面で反射を繰り返しながら先端側に進行する。光ファイバ20A、20Bから照射されたレーザ光は、発熱部材22を加熱する。なお、図4では、光ファイバ20Aから照射された最も拡散角の大きいレーザ光の軌跡を破線で示し、光ファイバ20Bから照射された最も拡散角の大きいレーザ光の軌跡を一点鎖線で示している。また、レーザ光の最大拡散角は、光ファイバ20A、20Bの直径及びレーザ光の周波数等によって変動する。
軸線方向101における光ファイバ20A、20Bの先端21A、21Bは、図2に示されるように、発熱部材22の内側に位置している。より詳細には、先端21A、21Bは、軸線方向101における発熱部材22の中央より基端側に位置している。また、光ファイバ20A、20Bの先端21A、21Bは、軸線方向101において互いにずれている。本実施形態では、光ファイバ20Bの先端21Bは、光ファイバ20Aの先端21Aより発熱部材22の先端側に位置している。軸線方向101における先端21A、21Bのズレ量は、光ファイバ20A、20Bと発熱部材22との距離及びレーザ光の拡散角などによって変動する。
例えば図4に示されるように、光ファイバ20Bの先端21Bは、光ファイバ20Aから照射されたレーザ光が発熱部材22に最初に到達する位置Pより発熱部材22の先端側に位置しているのが望ましい。位置Pは、破線で示されるレーザ光の拡散角(軸線方向101とレーザ光とのなす角)をα、光ファイバ20Aにおけるレーザ光の出力位置と発熱部材22との距離をLとして、三角関数を用いて特定することができる。この場合における先端21A、21Bのズレ量は、例えば3mm〜7mm程度に設定され、好ましくは5mm程度に設定される。光ファイバ20A、20Bは、先端21A、21Bをずらした状態で互いに固定されてイン側チューブ17に挿入される。
制御装置30は、バルーンカテーテル装置100の全体を制御する演算装置を備えている。具体的には、制御装置30は、ケーブル19を通じて温度センサ23から取得した出力信号に基づいて、バルーン11内の温度を計測する。また、制御装置30は、所定の出力のレーザ光をレーザ発生装置25A、25Bに出力させる。レーザ光の出力及び照射時間は、例えば、温度センサ23からの出力信号によって特定されるバルーン11内の温度に基づいて制御される。さらに、制御装置30は、イン側チューブ17及びアウト側チューブ18に接続されたポンプ31に所定の圧力及び流量の流体を出力させる。ポンプ31から出力された流体は、イン側チューブ17を通じてバルーン11の内部空間に流入し、アウト側チューブ18を通じてポンプ31に環流する。
[バルーンカテーテル装置100の使用方法]
以下に、バルーンカテーテル装置100の使用方法が説明される。
バルーンカテーテル10は、狭窄部分を拡張するために血管に挿入される。予め血管に挿通されたガイドワイヤ(不図示)は、狭窄部分に到達している。このようなガイドワイヤの挿通は、例えば、特開2006−326226号公報や特開2006−230442号公報に開示された公知の手法によりなされる。
バルーンカテーテル10が血管へ挿入されるときには、バルーン11には流体が圧入されておらず、バルーン11は収縮した状態である。この状態のバルーンカテーテル10は、ガイドワイヤ用チューブ14の先端の開口から挿入されたガイドワイヤに沿って血管に挿入される。血管におけるバルーンカテーテル10の挿入位置は、例えば、ガイドワイヤ用チューブ14に設置されたマーカを放射線により確認することによって把握される。
バルーン11が血管内の所望の位置に到達した後、制御装置30の制御の下でポンプ31が駆動されることにより、イン側チューブ17に流体が流入する。また、制御装置30の制御の下でレーザ発生装置25A、25Bがレーザ光を発生させる。光ファイバ20A、20Bから照射されて発熱部材22に到達したレーザ光は、一部が吸収されて発熱部材22の温度を上昇させ、その他が反射されて発熱部材22の先端側へ進行する。すなわち、レーザ光は、発熱部材22の先端側へ進行する過程で徐々に減衰する。イン側チューブ17内を流通する流体は、発熱部材22によって加熱されてバルーン11の内部空間に流入し、アウト側チューブ18を通じてバルーン11から流出する。バルーン11の内部空間に流入する流体は、バルーン11を膨張させると共に、バルーン11を加熱する。このようにして、バルーン11の拡張による加圧と、発熱部材22の発熱による加熱とを血管の狭窄部分に作用させることができる。
なお、本実施形態における加熱型バルーン拡張術では、血管の内腔からの深さが0.7mmの位置を55℃(目標温度)まで上昇させるために、バルーン11を70±5℃まで上昇させる必要がある。また、加熱時間(バルーン11が所定の温度に達してからの経過時間)は、例えば、バルーン11内の温度を65℃にした場合は約17.0秒、70℃にした場合は約5.6秒、75℃にした場合は約2.8秒である。レーザ光の出力及び照射時間は、レーザ光の照射時間に対するバルーン11の温度変化を示すモデル関数及び温度センサ23からの出力信号等に基づいて、制御装置30によって制御される。
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、光ファイバ20A、20Bそれぞれから照射されたレーザ光によって発熱部材22が加熱される。これにより、光ファイバが1本の場合と比較して、バルーン11内の温度を短時間で上昇させることができる。その結果、長時間に亘って血管を加熱し続けることによるタンパク質の熱変性を抑制することができる。
図5は、先端位置が5mmずらされた光ファイバ20A、20Bによって発熱部材22を加熱した時のバルーン11内の温度の時間変化を太線で示し、先端位置が揃えられた光ファイバ20A、20Bによって発熱部材22を加熱した時のバルーン11内の温度の時間変化を細線で示している。なお、図5の実験では、イン側チューブ17を通じて供給される流体の流量を0.20mL/sとし、内径7mm、厚さ1mmのシリコンチューブに挿入したバルーン11を37℃の恒温槽に沈めた状態で、レーザ発生装置25A、25Bに25秒間レーザを発生させた。
図5を参照すれば明らかなように、光ファイバ20A、20Bの先端位置をずらすことによって、光ファイバ20A、20Bの先端位置を揃えた場合と比較して、バルーン11内の温度が70℃に達するまでの時間が短縮されると共に、レーザ光の照射中(図5の30秒〜55秒の期間)における温度変化が滑らかになる。その結果、発熱部材22の温度を均一に上昇させることができると共に、過熱による発熱部材22のダメージを抑制することができる。
さらに、本実施形態によれば、先端21A、21Bがずらされた光ファイバ20A、20Bが互いに固定された状態でシャフト12に挿通されている。これにより、バルーンカテーテル10が血管内で湾曲されたとしても、光ファイバ20A、20Bの先端位置のズレ量が変動するのを有効に抑制することができる。
なお、光ファイバ20A、20Bの先端21A、21Bが発熱部材22の先端に近い位置に配置されている場合、照射されたレーザ光の大部分が熱に変換されないまま発熱部材22を通過してしまう。そこで、光ファイバ20A、20Bの先端21A、21Bは、軸線方向101に3mm〜7mm(好ましくは、5mm)程度ずらされた状態で、発熱部材22の基端側(すなわち、軸線方向101における発熱部材22の中央部より基端側)に配置されるのが望ましい。
なお、本実施形態では、イン側チューブ17の内壁面に沿って発熱部材22を配置し、且つイン側チューブ17に光ファイバ20A、20Bを挿通した例を説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、発熱部材22は、バルーン11に流入する流体に熱を伝達し得る位置に配置されていればよい。また、光ファイバ20A、20Bは、発熱部材22にレーザ光を照射可能な位置に配置されていればよい。
また、本実施形態では、2本の光ファイバ20A、20Bを備えたバルーンカテーテル10の例を説明したが、本発明のバルーンカテーテルはこれに限定されず、3本以上の光ファイバを備えていてもよい。この場合において、レーザ発生装置及び集光光学系は、光ファイバと同数設けられる。また、光ファイバ20A、20Bを伝送される光は指向性の高いレーザ光に限定されず、拡散光であってもよい。
さらに、本実施形態では、イン側チューブ17を通じてバルーン11に流体を流入させ、アウト側チューブ18を通じてバルーン11から流体を流出させる(すなわち、流体を環流させる)例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、イン側チューブ17を通じてバルーン11に流体を流入させ、バルーン拡張術の終了後にイン側チューブ17を通じてバルーン11から流体を流出させてもよい。
10・・・バルーンカテーテル
11・・・バルーン
17・・・イン側チューブ
18・・・アウト側チューブ
20A,20B・・・光ファイバ
22・・・発熱部材

Claims (4)

  1. 先端側に弾性的に膨張可能なバルーンが設けられており、当該バルーンへ流体を流入させ且つ当該バルーンから流体を流出させる空間が内部に設けられたシャフトと、
    上記バルーンの内部空間に設けられた発熱部材と、
    上記シャフトに沿って上記バルーンの内部空間にまで延出されており、基端に入力された光を先端から上記発熱部材に照射する第1導光部材及び第2導光部材と、を備えており、
    上記第1導光部材及び上記第2導光部材の先端位置は、延出方向において互いにずれているバルーンカテーテル。
  2. 上記第1導光部材及び上記第2導光部材は、互いに固定されている請求項1に記載のバルーンカテーテル。
  3. 上記第1導光部材及び上記第2導光部材は、筒形状の上記発熱部材の内側において拡散光を照射するものであり、
    延出方向における上記第2導光部材の先端位置は、上記第1導光部材から照射された光が上記発熱部材に最初に到達する位置より上記発熱部材の先端側に位置している請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。
  4. 上記発熱部材は、金属線がコイル形状に巻回されたものである請求項1から3のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
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