JP6378656B2 - 二酸化塩素を検出又は定量するための方法及び試薬 - Google Patents
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Description
又は式(II):
で表される化合物を添加し、生じた化学発光を測定することを特徴とする検体中の二酸化塩素を検出又は定量する方法を提供する。
更に、本発明は、上記式(I)又は(II)で表される化合物の、二酸化塩素を検出又は定量するための使用を提供する。
Rのアルキル基は、好ましくはC1〜C4直鎖若しくは分枝鎖アルキル基であり、より好ましくはC1〜C4直鎖アルキル基である。Rのアルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基及びn-ブチル基が挙げられる。
Rのアリール基の好ましい例としては、フェニル基、ベンジル基が挙げられる。
Xn+は、水素イオン、第4級アンモニウムイオン又は金属イオンである。
n=1のとき、X+は、水素イオン、式(NR1R2R3R4)+で表されるアンモニウムイオン(式中、R1、R2、R3及びR4は各々独立して水素又はC1〜C4アルキル基である)、ヒドラジニウムイオン(N2H5 +)又はアルカリ金属イオンである。
n=2のとき、X2+は、アルカリ土類金属イオン又は二価遷移金属イオンである。
n=3のとき、X3+は、三価遷移金属イオンである。
アルカリ土類金属イオンは、好ましくはマグネシウムイオン又はカルシウムイオンであり、より好ましくはカルシウムイオンである。
本発明において、「遷移金属」とは、元素周期表において3〜12族(又は、3A〜7A、8、1B及び2B族)に属するものをいう。遷移金属イオンは、例えば銅イオン(II)、ニッケルイオン(II)、亜鉛イオン(II)、鉄イオン(II又はIII)、カドミウムイオン(II)、コバルトイオン(II又はIII)であり、好ましくは銅イオン(II)、ニッケルイオン(II)、亜鉛イオン(II)又は鉄イオン(II又はIII)であり、より好ましくは銅イオン、亜鉛イオン(II)又は鉄イオン(II)である。
R'及びR''のアルキル基は、好ましくはC1〜C4直鎖若しくは分枝鎖アルキル基であり、より好ましくはC1〜C4直鎖アルキル基である。R'及びR''のアルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基及びn-ブチル基が挙げられる。
R'及びR''のアリール基の好ましい例としては、フェニル基が挙げられる。
R'及びR''は互いに異なってもよいし、又は同じであってもよいが、同じであることが好ましい。
式(I)又は(II)の化合物は、溶液形態で添加してもよいし、固体形態で添加してもよい。添加量制御の容易性の観点から、特に常時監視に際しては、溶液形態で添加することが好ましい。
或いは、式(I)又は(II)の化合物は、例えば、検体中での濃度が1.0×10-8 mol/L以上となるように添加される。
或いは、検体を反応槽に導入し、ここで式(I)又は(II)の化合物を添加してもよい。反応槽は、例えば、単位時間あたりの流量(ml/秒;導入される検体の流量+導入される試薬の流量)の20倍以下の体積、例えば0.1〜20倍の体積、好ましくは0.1〜12倍、より好ましくは0.1〜4倍の体積(例えば、検体の流量がX ml/秒であり、試薬の流量がY ml/秒である場合、≦20(X+Y) ml、好ましくは0.1(X+Y)〜20(X+Y) ml、好ましくは0.1(X+Y)〜12(X+Y) ml、より好ましくは0.1(X+Y)〜4(X+Y) ml)を有し得る。
発光強度の測定は、当該分野において公知の方法により行うことができる。例えば、測定は光電変換素子(例えば、光電子増倍管、フォトダイオード)を用いて行うことができる。
光電変換素子からの電気信号は、必要に応じて増幅してもよい。
発光強度は全波長域について測定することも、特定波長域について測定することもできる。特定波長域は、例えばキサントゲン酸塩は650〜770 nmに含まれる波長域であり得、具体例としては670〜750 nmが挙げられる。
二酸化塩素を定量する場合、測定値又は増幅後の値を予め作成しておいた検量線に内挿することによって濃度を決定することができる。
閾値との比較若しくは検量線への内挿の前に、式(I)又は(II)の化合物を添加しない検体から得られた測定値をバックグランドノイズとして、式(I)又は(II)の化合物を添加した検体から得られた測定値から補正してもよい。
本発明の方法により検体中の二酸化塩素濃度を常時(ほぼリアルタイムで)監視すれば、濃度が(例えば、環境衛生上定められた)許容値を超える前又は下回る前に、適切な対応が可能となる。例えば、本発明の方法により、検体中の二酸化塩素濃度が所定値を超えたことを検知した場合、上流での二酸化塩素(自体)の投入量を減らすか若しくは投入を中止する指示又は二酸化塩素処理剤(中和剤)の投入量を増やす指示或いは下流で該処理剤を追加投入する指示を迅速に発すれば、許容値(上限)を超える二酸化塩素濃度の上昇を予防することができる。また、例えば、本発明の方法により、検体中の二酸化塩素濃度が所定値を下回ったことを検知した場合、上流での二酸化塩素の投入量を増やす指示又は下流で二酸化塩素を追加投入する指示を迅速に発すれば、許容値(下限)を下回る二酸化塩素濃度の低下を予防できる。
本発明の方法は、二酸化塩素を原料とする諸種の製品の製造装置等に付設される濃度測定器にも適用できる。
本発明の二酸化塩素の検出又は定量用試薬は、上記式(I)又は(II)で表される化合物を含んでなることを特徴とする。
上記式(I)又は(II)で表される化合物は、下記実施例で示すように、二酸化塩素と迅速かつ濃度依存的に発光反応するので、二酸化塩素の容易で迅速な検出又は定量に適切である。
本発明の試薬は、更に水を含んでなる溶液の形態(水溶液)であり得る。水溶液中での式(I)又は(II)の化合物の濃度は、特に限定されないが、例えば1.0×10-8 mol/L以上であり得る。
添加量制御の容易性の観点から、検体への添加の前に水性媒体に溶解されることが好ましい。
よって、本発明の試薬は、過酸化水素と組み合わせてなる二酸化塩素の検出又は定量用試薬キットとして提供することもできる。
<化学発光反応の確認>
1.0 mg/Lの二酸化塩素水溶液を含む反応槽に、1.5×10-4 mol/Lのエチルキサントゲン酸ナトリウム溶液又は1.5×10-4 mol/Lのジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム溶液を滴下して、フォトダイオードで測光した。滴下直前から滴下の60秒後までに観察された発光強度を図1及び図2に示す。
図から明らかなように、二酸化塩素水溶液とエチルキサントゲン酸ナトリウム溶液又はジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムとの接触により、発光が観察された。同様に、二酸化塩素水溶液とブチルキサントゲン酸カリウム溶液、イソプロピルサントゲン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム溶液又はジブチルジチオカルバミン酸亜鉛との混合でも発光が観察された。
よって、上記式(I)及び(II)で表される化合物は二酸化塩素と化学発光反応することが理解される。
二酸化塩素とエチルキサントゲン酸ナトリウムとの化学発光波長の確認を実施した。
100 mg/Lの二酸化塩素水溶液と、1.5×10-2 mol/Lのエチルキサントゲン酸ナトリウム水溶液をポンプ3を介して30 ml/分の流量で反応槽内にて連続的に反応させた。反応漕内における発光を分光器を介して光電子倍増管にて測定し電気信号として出力し記録計にて記録した。結果を図3に示す。
図2の結果から明らかなように、二酸化塩素とエチルキサントゲン酸ナトリウムの反応による化学発光では、640〜780nmに発光波長が見られ、最大発光強度の波長は705 nmであった。
本実験には図4に模式的に示す装置を用いた。簡潔には、装置は、反応槽4と、反応槽に検体1及び式(I)の化合物(下記実施例2では、式(II)の化合物)を含有する試薬2をそれぞれ供給するポンプ3、3'と、反応槽における発光を検知する光センサ5と、光センサからの電気信号を増幅させる増幅器6と、増幅器からの出力を記録する記録計7を含んでなる。
図から明らかなように、エチルキサントゲン酸イオン又はジエチルジチオカルバミン酸イオンと二酸化塩素との間の化学発光反応による発光強度と、二酸化塩素濃度との間に線形関係が観察される。
検体を、二酸化塩素水溶液に代えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、亜塩素酸ナトリウム水溶液又は塩化ナトリウム水溶液を用いて上記と同様な実験を行った。得られた発光強度と次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム及び塩化ナトリウムの濃度との関係をそれぞれ図7〜9に示す。
図7〜9から、エチルキサントゲン酸イオンは、次亜塩素酸、亜塩素酸又は塩化ナトリウムとは化学発光反応しないことが理解できる。
1.5×10-4 mol/Lのエチルキサントゲン酸ナトリウム溶液又は1.5×10-4 mol/Lのジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムに1.5×10-4 mol/Lの過酸化水素を混合し、1時間撹拌した。この溶液をポンプ3を介して20 ml/分の流量で反応槽4内に供給し、一方、0、0.1、0.2、0.4 mg/Lの二酸化塩素水溶液(検体1)を20 ml/分の流量でポンプ3'を介して反応槽4に導入した。この反応槽4内での反応条件は、常温、常圧とした。得られた発光強度と二酸化塩素濃度をグラフにプロットした。結果を図10及び11に示す。
図から明らかなように、エチルキサントゲン酸イオン又はジエチルジチオカルバミン酸イオンと過酸化水素を混合した試薬は混合しない試薬よりも発光強度は高くなっている。よって、エチルキサントゲン酸イオン又はジエチルジチオカルバミン酸イオンと二酸化塩素との化学発光反応において、過酸化水素は化学発光増感剤の役割を果たしていることが理解できる。
2 試薬
3,3' ポンプ
4 反応槽
5 光センサ
6 増幅器
7 記録計
8 廃液
Claims (14)
- 検体に、式(I):
又は式(II):
で表される化合物を添加し、生じた化学発光を測定することを特徴とする検体中の二酸化塩素を検出又は定量する方法。 - 前記式(I)及び(II)の化合物において、nが1又は2であり、Xn+が水素イオン、式(NR1R2R3R4)+で表されるアンモニウムイオン、ヒドラジニウムイオン、アルカリ金属イオン又は鉄、銅、亜鉛、カドミウム及びコバルトからなる群より選択される遷移金属イオンである請求項1に記載の方法。
- 式(I)で表される化合物が、メチルキサントゲン酸、エチルキサントゲン酸、プロピルキサントゲン酸、ブチルキサントゲン酸、アミルキサントゲン酸、ヘキシルキサントゲン酸、へプチルキサントゲン酸、オクチルキサントゲン酸、デシルキサントゲン酸、イソプロピルキサントゲン酸、イソブチルキサントゲン酸、イソヘプチルキサントゲン酸、フェニルキサントゲン酸、ベンジルキサントゲン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、カドミウム塩、コバルト塩、ヒドラジニウム塩、アンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩からなる群より選択される請求項1又は2に記載の方法。
- 式(II)で表される化合物が、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジプロピルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、ヒドラジニウム塩、アンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩からなる群より選択される請求項1又は2に記載の方法。
- 前記式(I)又は(II)の化合物を、検体中での濃度が1.0×10-8 mol/L以上となるように添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記式(I)又は(II)の化合物を、検出すべき二酸化塩素濃度に対するモル比(ClO2:式(I)又は(II)の化合物)が1:0.01以上となるように添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記式(I)又は(II)の化合物を添加して20秒以内での発光強度を測定する請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記検体と前記式(I)又は(II)の化合物を含有する試薬とを反応槽に導入し、該反応槽で発光強度を測定し、該反応槽が(導入される検体の流量[ml/秒]+導入される試薬の流量[ml/秒])の20倍以下の体積を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 連続的に流動している検体中の二酸化塩素を検出又は定量する請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 検体に前記式(I)又は(II)の化合物を添加する前に、該式(I)又は(II)の化合物を過酸化水素と混合することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 式(I)又は(II)の化合物と過酸化水素とを、1:0.01以上のモル比(式(I)又は(II)の化合物:過酸化水素)で混合する請求項10に記載の方法。
- 式(I):
又は式(II):
で表される化合物を含んでなることを特徴とする二酸化塩素の検出又は定量用試薬。 - 式(I):
又は式(II):
で表される化合物と、過酸化水素とを組み合わせてなることを特徴とする二酸化塩素の検出又は定量用試薬キット。 - 式(I):
又は(II):
で表される化合物の二酸化塩素を検出又は定量するための使用。
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