JP2017044602A - 二酸化塩素を検出又は定量するための方法及び試薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】二酸化塩素を容易に迅速に測定すること。
【解決手段】本発明は、検体に、式(I)又は又は式(II)で表される化合物を添加し、生じた化学発光を測定することを特徴とする検体中の二酸化塩素を検出又は定量する方法並びに該方法に使用する試薬を提供する。
Figure 2017044602

【選択図】なし

Description

本発明は、二酸化塩素を検出又は定量するための方法及び試薬に関する。より詳細には、本発明は、化学発光を利用する二酸化塩素の検出又は定量方法及び該方法に用いる二酸化塩素の検出用又は定量用試薬に関する。
二酸化塩素は、一般に、酸化剤、殺菌剤、漂白剤その他の有機塩素化合物または無機塩素化合物の製造原料等として広い用途がある。
二酸化塩素は体内に入ると極めて有害であり、環境に及ぼす影響も無視することはできない。このため、二酸化塩素で処理した淡水または海水を廃棄し又は外部環境に放出する際には、水中に残留する濃度を環境衛生上定められた許容値以下にすることが義務付けられており、よって残留濃度を常時定量的に測定する必要がある。
このように、二酸化塩素の使用に際しては、その利用時に所望の効果が得られるように必要かつ十分量が供給される一方、処理後の製品(気体又は液体の形態を含む)又は排気若しくは廃液中に二酸化塩素が許容値以上に残留しないように充分に管理して、安全を図る必要がある。
従来、二酸化塩素の測定法としては、吸光光度法や滴定法が採用されていた。
しかし、吸光光度法や滴定法は、操作が煩雑で高い精度が得られず、測定に時間を要するという問題点がある。
本発明者らは、キサントゲン酸イオン及びジチオカルバミン酸イオンが二酸化塩素と発光反応し、この発光反応を利用することで二酸化塩素を容易に迅速に測定できることを見い出した。
したがって、本発明は、検体に、式(I):
Figure 2017044602
(式中、Rは置換基を有してもよいC1〜C10直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、nは1〜3の整数であり、Xn+は、水素イオン、式(NR1234)+で表されるアンモニウムイオン(式中、R1、R2、R3及びR4は各々独立して水素又はC1〜C4アルキル基である)、ヒドラジニウムイオン又は金属イオンである)
又は式(II):
Figure 2017044602
(式中、R'及びR''は各々独立して、水素、置換基を有していてもよいC1〜C6直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、n及びXn+は式(I)についてのものと同義である)
で表される化合物を添加し、生じた化学発光を測定することを特徴とする検体中の二酸化塩素を検出又は定量する方法を提供する。
本発明はまた、上記式(I)又は(II)で表される化合物を含んでなることを特徴とする二酸化塩素の検出又は定量用試薬を提供する。
更に、本発明は、上記式(I)又は(II)で表される化合物の、二酸化塩素を検出又は定量するための使用を提供する。
本発明によれば、検体中の二酸化塩素の検出又は定量を容易に高感度/高精度で迅速に行なうことができる。
エチルキサントゲン酸塩と二酸化塩素との発光反応における発光強度−時間の関係を示す。 ジエチルジチオカルバミン酸塩と二酸化塩素との発光反応における発光強度−時間の関係を示す。 エチルキサントゲン酸塩と二酸化塩素との発光反応における発光波長を示す。間の関係を示す。 実施例で用いた二酸化塩素定量装置を模式化して示す。 エチルキサントゲン酸塩と二酸化塩素との発光反応による発光強度の二酸化塩素濃度依存性を示す。 ジエチルジチオカルバミン酸塩と二酸化塩素との発光反応による発光強度の二酸化塩素濃度依存性を示す。 エチルキサントゲン酸塩もジエチルジチオカルバミン酸塩も次亜塩素酸ナトリウムと発光反応をしないことを示す。 エチルキサントゲン酸塩もジエチルジチオカルバミン酸塩も亜塩素酸ナトリウムと発光反応をしないことを示す。 エチルキサントゲン酸塩もジエチルジチオカルバミン酸塩も塩化ナトリウムと発光反応をしないことを示す。 エチルキサントゲン酸塩と二酸化塩素との発光反応における過酸化水素の増光作用を示す。 ジエチルジチオカルバミン酸塩と二酸化塩素との発光反応における過酸化水素の増光作用を示す。
<二酸化塩素の検出又は定量法>
本発明の二酸化塩素の検出又は定量法は、検体に、式(I):
Figure 2017044602
又は式(II):
Figure 2017044602
で表される化合物を添加し、生じる化学発光を測定することを特徴とする。
上記式(I)で表されるキサントゲン酸化合物及び式(II)で表されるジチオカルバミン酸化合物は、下記実施例で示すように、二酸化塩素と迅速に発光反応する一方、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン及び塩化物イオンとは発光反応しない。よって、本発明の方法は、この発光反応を利用して、二酸化塩素を容易に迅速に検出又は定量できる。
上記式(I)において、Rは、置換基を有してもよいC1〜C10直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基である。
Rのアルキル基は、好ましくはC1〜C4直鎖若しくは分枝鎖アルキル基であり、より好ましくはC1〜C4直鎖アルキル基である。Rのアルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基及びn-ブチル基が挙げられる。
Rのアリール基の好ましい例としては、フェニル基、ベンジル基が挙げられる。
Rのアルキル基及びアリール基は、任意に1又はそれ以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばC1〜C4直鎖又は分枝鎖アルキル基、C1〜C4直鎖又は分枝鎖アルコキシ基、フェニル基及びフェノキシ基が挙げられるがこれらに限定されない。アリール基に関して好ましい置換基は、C1〜C4直鎖又は分枝鎖アルキル基及びC1〜C4直鎖又は分枝鎖アルコキシ基である。
アニオン(キサントゲン酸イオン)部分は、好ましくは、メチルキサントゲン酸イオン、エチルキサントゲン酸イオン、プロピルキサントゲン酸イオン、ブチルキサントゲン酸イオン、アミルキサントゲン酸イオン、ヘキシルキサントゲン酸イオン、へプチルキサントゲン酸イオン、オクチルキサントゲン酸イオン、デシルキサントゲン酸イオン、イソプロピルキサントゲン酸イオン、イソブチルキサントゲン酸イオン、イソヘプチルキサントゲン酸イオン、フェニルキサントゲン酸イオン及びベンジルキサントゲン酸イオンからなる群より選択され、より好ましくは、メチルキサントゲン酸イオン、エチルキサントゲン酸イオン、プロピルキサントゲン酸イオン、ブチルキサントゲン酸イオン、フェニルキサントゲン酸イオン及びベンジルキサントゲン酸イオンからなる群より選択される。
nは1〜3の整数であり、好ましくは1又は2である。
n+は、水素イオン、第4級アンモニウムイオン又は金属イオンである。
n=1のとき、X+は、水素イオン、式(NR1234)+で表されるアンモニウムイオン(式中、R1、R2、R3及びR4は各々独立して水素又はC1〜C4アルキル基である)、ヒドラジニウムイオン(N25 +)又はアルカリ金属イオンである。
n=2のとき、X2+は、アルカリ土類金属イオン又は二価遷移金属イオンである。
n=3のとき、X3+は、三価遷移金属イオンである。
アルカリ金属イオンは、好ましくはナトリウムイオン又はカリウムイオンであり、より好ましくはナトリウムイオンである。
アルカリ土類金属イオンは、好ましくはマグネシウムイオン又はカルシウムイオンであり、より好ましくはカルシウムイオンである。
本発明において、「遷移金属」とは、元素周期表において3〜12族(又は、3A〜7A、8、1B及び2B族)に属するものをいう。遷移金属イオンは、例えば銅イオン(II)、ニッケルイオン(II)、亜鉛イオン(II)、鉄イオン(II又はIII)、カドミウムイオン(II)、コバルトイオン(II又はIII)であり、好ましくは銅イオン(II)、ニッケルイオン(II)、亜鉛イオン(II)又は鉄イオン(II又はIII)であり、より好ましくは銅イオン、亜鉛イオン(II)又は鉄イオン(II)である。
式(NR1234)+において、R1、R2、R3及びR4は互いに異なってもよいし、R1、R2、R3及びR4の任意の2つ若しくは3つ又は全てが同じであってもよい。2つが同じである場合、残る2つは互いに異なってもよいし、又は同じであってもよい。式(NR1234)+で表されるアンモニウムイオンは、好ましくはアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン又はジエチルアンモニウムイオンであり、より好ましくはジエチルアンモニウムイオンである。
式(I)で表される化合物は、好ましくはメチルキサントゲン酸、エチルキサントゲン酸、プロピルキサントゲン酸、ブチルキサントゲン酸、アミルキサントゲン酸、ヘキシルキサントゲン酸、へプチルキサントゲン酸、オクチルキサントゲン酸、デシルキサントゲン酸、イソプロピルキサントゲン酸、イソブチルキサントゲン酸、イソヘプチルキサントゲン酸、フェニルキサントゲン酸、ベンジルキサントゲン酸並びにそれらのアルカリ金属塩(より好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(より好ましくはマグネシウム塩及びカルシウム塩)、遷移金属塩(より好ましくは鉄塩、銅塩及び亜鉛塩)、式(NR1234)+で表されるアンモニウムとの塩(より好ましくはアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩)、ヒドラジニウム塩からなる群より選択される。
更により好ましくは、式(I)化合物は、メチルキサントゲン酸、エチルキサントゲン酸、プロピルキサントゲン酸、ブチルキサントゲン酸、フェニルキサントゲン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、ヒドラジニウム塩、アンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩からなる群より選択される。
上記式(II)において、R'及びR''は各々独立して、水素、置換基を有していてもよいC1〜C6直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基である。
R'及びR''のアルキル基は、好ましくはC1〜C4直鎖若しくは分枝鎖アルキル基であり、より好ましくはC1〜C4直鎖アルキル基である。R'及びR''のアルキル基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基及びn-ブチル基が挙げられる。
R'及びR''のアリール基の好ましい例としては、フェニル基が挙げられる。
R'及びR''のアルキル基及びアリール基は、任意に1又はそれ以上の置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばC1〜C4直鎖又は分枝鎖アルキル基、C1〜C4直鎖又は分枝鎖アルコキシ基、フェニル基及びフェノキシ基が挙げられるがこれらに限定されない。アリール基に関して好ましい置換基は、C1〜C4直鎖又は分枝鎖アルキル基及びC1〜C4直鎖又は分枝鎖アルコキシ基である。
R'及びR''は互いに異なってもよいし、又は同じであってもよいが、同じであることが好ましい。
アニオン(ジチオカルバミン酸イオン)部分は、好ましくは、メチルジチオカルバミン酸イオン、ジメチルジチオカルバミン酸イオン、メチルエチルジチオカルバミン酸イオン、メチルプロピルジチオカルバミン酸イオン、メチルブチルジチオカルバミン酸イオン、エチルジチオカルバミン酸イオン、ジエチルジチオカルバミン酸イオン、エチルプロピルジチオカルバミン酸イオン、エチルブチルジチオカルバミン酸イオン、プロピルジチオカルバミン酸イオン、ジプロピルジチオカルバミン酸イオン、プロピルブチルジチオカルバミン酸イオン、ブチルジチオカルバミン酸イオン、ジブチルジチオカルバミン酸イオン、フェニルジチオカルバミン酸イオン、ジフェニルジチオカルバミン酸イオン及びベンジルジチオカルバミン酸イオンからなる群より選択される。
式(II)において、n及びXn+は式(I)について上記で定義したとおりである。
式(II)で表される化合物は、好ましくはメチルジチオカルバミン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、メチルエチルジチオカルバミン酸、メチルプロピルジチオカルバミン酸、メチルブチルジチオカルバミン酸、エチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、エチルプロピルジチオカルバミン酸、エチルブチルジチオカルバミン酸、プロピルジチオカルバミン酸、ジプロピルジチオカルバミン酸、プロピルブチルジチオカルバミン酸、ブチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、フェニルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ベンジルジチオカルバミン酸並びにそれらのアルカリ金属塩(より好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(より好ましくはマグネシウム塩及びカルシウム塩)、遷移金属塩(より好ましくは鉄塩、銅塩及び亜鉛塩)、式(NR1234)+で表されるアンモニウムとの塩(より好ましくはアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩)、ヒドラジニウム塩からなる群より選択される。
更により好ましくは、式(II)化合物は、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジプロピルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、ヒドラジニウム塩、アンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩からなる群より選択される。
検体には、二酸化塩素を含有するか若しくは含有を疑われるか、二酸化塩素を含有するか否か不明の液体が含まれる。検体は、法律等により残留二酸化塩素濃度が規制されているものからの検体であり得る。例えば、検体は、消毒液等として使用するために規定の濃度で供給する必要がある二酸化塩素水、或いは二酸化塩素を(例えば、原料として又は酸化剤若しくは漂白剤のような処理剤として)使用する系及び使用後に排出される廃液、或いは二酸化塩素を殺菌剤等として使用する系及び使用した後の淡水(例えばプール水や浴場水、冷却水、上下水道水)又は海水(例えば冷却水として使用するもの)からの検体であり得る。
検体は、定期的に採取されたものであってもよいし、連続採取されたものであってもよい。本発明の方法は、滞留中の二酸化塩素濃度測定にも利用できるが、式(I)又は(II)の化合物と二酸化塩素との間の迅速な発光反応を利用するので、連続採取した検体(又は連続的に流動している検体)中の二酸化塩素濃度を連続的に測定することができる。すなわち、本発明の方法は、二酸化塩素濃度の連続監視に、特に連続流れ系又は循環系における二酸化塩素濃度の連続監視に適する。例えば、連続採取した検体中に式(I)又は(II)の化合物を(該検体中での濃度が一定となるように)連続的に添加して発光強度を常時測定することで、二酸化塩素濃度をほぼリアルタイムで検知することができる。
式(I)又は(II)の化合物は、1種類を単独で添加してもよいし、2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
式(I)又は(II)の化合物は、溶液形態で添加してもよいし、固体形態で添加してもよい。添加量制御の容易性の観点から、特に常時監視に際しては、溶液形態で添加することが好ましい。
或いは、式(I)又は(II)の化合物は、例えば、検体中での濃度が1.0×10-8 mol/L以上となるように添加される。
検体中の二酸化塩素濃度が予め推定できる場合又は許容濃度(上限又は下限)が設定されている場合、当該検体への式(I)又は(II)の化合物の添加濃度は、該二酸化塩素濃度に対するモル比(ClO2:式(I)又は(II)の化合物)で1:0.01又はそれ以上(すなわち、該化合物がより多い方向)であることが好ましい。
検体中の二酸化塩素濃度が微量である場合には、化学発光増感剤として過酸化水素を用いることができる。過酸化水素を、検体に添加する前の前記式(I)又は(II)の化合物と混合する。過酸化水素は、式(I)又は(II)の化合物とそのモル比(式(I)又は(II)の化合物:過酸化水素)が1:0.01又はそれ以上(すなわち、過酸化水素がより多い方向)となるように混合することが好ましい。
式(I)又は(II)の化合物の添加後、必要な場合には、該イオンと検体とが十分に混合されるよう撹拌してもよい。例えば、流路中を流動している検体に式(I)又は(II)の化合物を添加する場合、該イオンの添加位置より上流又は(好ましくは)下流に邪魔板又は撹拌プロペラ等の混合促進部材を用いて混合を促進してもよい。
或いは、検体を反応槽に導入し、ここで式(I)又は(II)の化合物を添加してもよい。反応槽は、例えば、単位時間あたりの流量(ml/秒;導入される検体の流量+導入される試薬の流量)の20倍以下の体積、例えば0.1〜20倍の体積、好ましくは0.1〜12倍、より好ましくは0.1〜4倍の体積(例えば、検体の流量がX ml/秒であり、試薬の流量がY ml/秒である場合、≦20(X+Y) ml、好ましくは0.1(X+Y)〜20(X+Y) ml、好ましくは0.1(X+Y)〜12(X+Y) ml、より好ましくは0.1(X+Y)〜4(X+Y) ml)を有し得る。
化学発光の測定は、例えば、式(I)又は(II)の化合物を添加した後20秒以内、例えば添加の0.15〜20秒後の発光、好ましくは0.15〜10秒後、より好ましくは0.15〜5秒後の発光強度を測定するように行う。よって、例えば、流路中をZ cm/秒で流動している検体を測定する場合、式(I)又は(II)の化合物の添加地点から20Z cm以内、例えば0.15Z〜20Z cm(好ましくは0.15Z〜10Z cm、より好ましくは0.15Z〜5Z cm)の位置で化学発光を測定することができる。また、例えば、検体を反応槽に導入する場合には、反応槽内で化学発光を測定することができる。
発光強度の測定は、当該分野において公知の方法により行うことができる。例えば、測定は光電変換素子(例えば、光電子増倍管、フォトダイオード)を用いて行うことができる。
光電変換素子からの電気信号は、必要に応じて増幅してもよい。
発光強度は全波長域について測定することも、特定波長域について測定することもできる。特定波長域は、例えばキサントゲン酸塩は650〜770 nmに含まれる波長域であり得、具体例としては670〜750 nmが挙げられる。
二酸化塩素を検出する場合、測定値又は増幅後の値を所定の閾値と比較し、該閾値を超えたときに(所定濃度の)二酸化塩素が存在すると判断できる。
二酸化塩素を定量する場合、測定値又は増幅後の値を予め作成しておいた検量線に内挿することによって濃度を決定することができる。
閾値との比較若しくは検量線への内挿の前に、式(I)又は(II)の化合物を添加しない検体から得られた測定値をバックグランドノイズとして、式(I)又は(II)の化合物を添加した検体から得られた測定値から補正してもよい。
上記のように、本発明の方法は、連続流動している検体中の二酸化塩素濃度の測定に適用可能であるので、従来法では不可能であった、二酸化塩素濃度の連続測定(すなわち、常時監視)を可能とする。
本発明の方法により検体中の二酸化塩素濃度を常時(ほぼリアルタイムで)監視すれば、濃度が(例えば、環境衛生上定められた)許容値を超える前又は下回る前に、適切な対応が可能となる。例えば、本発明の方法により、検体中の二酸化塩素濃度が所定値を超えたことを検知した場合、上流での二酸化塩素(自体)の投入量を減らすか若しくは投入を中止する指示又は二酸化塩素処理剤(中和剤)の投入量を増やす指示或いは下流で該処理剤を追加投入する指示を迅速に発すれば、許容値(上限)を超える二酸化塩素濃度の上昇を予防することができる。また、例えば、本発明の方法により、検体中の二酸化塩素濃度が所定値を下回ったことを検知した場合、上流での二酸化塩素の投入量を増やす指示又は下流で二酸化塩素を追加投入する指示を迅速に発すれば、許容値(下限)を下回る二酸化塩素濃度の低下を予防できる。
或いは、本発明の方法により定量した二酸化塩素濃度に応じて薬剤(例えば、二酸化塩素処理剤(中和剤)又は二酸化塩素)を適切な量で投入できるので、薬剤の消費量を低減できる。
本発明の方法は、二酸化塩素を原料とする諸種の製品の製造装置等に付設される濃度測定器にも適用できる。
<二酸化塩素の検出又は定量用試薬又は試薬キット>
本発明の二酸化塩素の検出又は定量用試薬は、上記式(I)又は(II)で表される化合物を含んでなることを特徴とする。
上記式(I)又は(II)で表される化合物は、下記実施例で示すように、二酸化塩素と迅速かつ濃度依存的に発光反応するので、二酸化塩素の容易で迅速な検出又は定量に適切である。
本発明の試薬において好ましい式(I)化合物は、メチルキサントゲン酸、エチルキサントゲン酸、プロピルキサントゲン酸、ブチルキサントゲン酸、アミルキサントゲン酸、ヘキシルキサントゲン酸、へプチルキサントゲン酸、オクチルキサントゲン酸、デシルキサントゲン酸、イソプロピルキサントゲン酸、イソブチルキサントゲン酸、イソヘプチルキサントゲン酸、フェニルキサントゲン酸、ベンジルキサントゲン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、カドミウム塩、コバルト塩、ヒドラジニウム塩、アンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩からなる群より選択される。このうち、特に好ましい式(I)化合物は、メチルキサントゲン酸、エチルキサントゲン酸、プロピルキサントゲン酸、ブチルキサントゲン酸、フェニルキサントゲン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩からなる群より選択される。
本発明の試薬において特に好ましい式(II)化合物は、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジプロピルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩からなる群より選択される。
本発明の試薬は、式(I)又は(II)の化合物の1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
本発明の試薬は、更に水を含んでなる溶液の形態(水溶液)であり得る。水溶液中での式(I)又は(II)の化合物の濃度は、特に限定されないが、例えば1.0×10-8 mol/L以上であり得る。
添加量制御の容易性の観点から、検体への添加の前に水性媒体に溶解されることが好ましい。
上記式(I)又は(II)で表される化合物と二酸化塩素との発光反応は、下記実施例で示すように、過酸化酸素の存在下で増光される。したがって、本発明の試薬は、検体への添加前に過酸化水素と混合されることにより、二酸化塩素をより高感度で検出又は定量できる。
よって、本発明の試薬は、過酸化水素と組み合わせてなる二酸化塩素の検出又は定量用試薬キットとして提供することもできる。
以下、理解を容易にするため、本発明の内容を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
実施例:式(I)又は(II)の化合物を使用する二酸化塩素の検出・定量
<化学発光反応の確認>
1.0 mg/Lの二酸化塩素水溶液を含む反応槽に、1.5×10-4 mol/Lのエチルキサントゲン酸ナトリウム溶液又は1.5×10-4 mol/Lのジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム溶液を滴下して、フォトダイオードで測光した。滴下直前から滴下の60秒後までに観察された発光強度を図1及び図2に示す。
図から明らかなように、二酸化塩素水溶液とエチルキサントゲン酸ナトリウム溶液又はジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムとの接触により、発光が観察された。同様に、二酸化塩素水溶液とブチルキサントゲン酸カリウム溶液、イソプロピルサントゲン酸カリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム溶液又はジブチルジチオカルバミン酸亜鉛との混合でも発光が観察された。
よって、上記式(I)及び(II)で表される化合物は二酸化塩素と化学発光反応することが理解される。
また、図1から明らかなように、二酸化塩素にエチルキサントゲン酸ナトリウムを滴下してから約2秒後に最大発光強度に達し、更に約4.0秒後(滴下からは約6.0秒後)に最大発光強度の50%に減少した。滴下の10秒後の発光強度は、最大発光強度の75%以下にまで減衰した。図2から明らかなように、二酸化塩素にジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムを滴下してから約2秒後に最大発光強度に達し、更に約3秒後(滴下からは約5秒後)に最大発光強度の50%に減少した。滴下の10秒後の発光強度は、最大発光強度の90%以下にまで減衰した。
<化学発光波長の確認>
二酸化塩素とエチルキサントゲン酸ナトリウムとの化学発光波長の確認を実施した。
100 mg/Lの二酸化塩素水溶液と、1.5×10-2 mol/Lのエチルキサントゲン酸ナトリウム水溶液をポンプ3を介して30 ml/分の流量で反応槽内にて連続的に反応させた。反応漕内における発光を分光器を介して光電子倍増管にて測定し電気信号として出力し記録計にて記録した。結果を図3に示す。
図2の結果から明らかなように、二酸化塩素とエチルキサントゲン酸ナトリウムの反応による化学発光では、640〜780nmに発光波長が見られ、最大発光強度の波長は705 nmであった。
<化学発光反応の濃度依存性の確認>
本実験には図4に模式的に示す装置を用いた。簡潔には、装置は、反応槽4と、反応槽に検体1及び式(I)の化合物(下記実施例2では、式(II)の化合物)を含有する試薬2をそれぞれ供給するポンプ3、3'と、反応槽における発光を検知する光センサ5と、光センサからの電気信号を増幅させる増幅器6と、増幅器からの出力を記録する記録計7を含んでなる。
この装置を用いて、二酸化塩素濃度と発光強度との関係を次のとおり調べた。すなわち、1.5×10-4 mol/Lのエチルキサントゲン酸ナトリウム溶液又は1.5×10-4 mol/L のジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム溶液(試薬2)をポンプ3を介して20 ml/分の流量で反応槽4内に供給し、一方、0、0.1、0.2、0.4 mg/Lの二酸化塩素水溶液(検体1)を20 ml/分の流量でポンプ3'を介して反応槽4に導入した。この反応槽4内での反応条件は、常温、常圧とした。
反応槽内で発生した化学発光の強度を光センサ(フォトダイオード)5で測定して電気信号として出力し、増幅器6を介して記録計7で記録した。得られた発光強度と二酸化塩素濃度をグラフにプロットした。結果を図5及び6に示す。
図から明らかなように、エチルキサントゲン酸イオン又はジエチルジチオカルバミン酸イオンと二酸化塩素との間の化学発光反応による発光強度と、二酸化塩素濃度との間に線形関係が観察される。
<化学発光反応の特異性の確認>
検体を、二酸化塩素水溶液に代えて、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、亜塩素酸ナトリウム水溶液又は塩化ナトリウム水溶液を用いて上記と同様な実験を行った。得られた発光強度と次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸ナトリウム及び塩化ナトリウムの濃度との関係をそれぞれ図7〜9に示す。
図7〜9から、エチルキサントゲン酸イオンは、次亜塩素酸、亜塩素酸又は塩化ナトリウムとは化学発光反応しないことが理解できる。
<化学発光増感剤としての過酸化水素水の使用>
1.5×10-4 mol/Lのエチルキサントゲン酸ナトリウム溶液又は1.5×10-4 mol/Lのジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムに1.5×10-4 mol/Lの過酸化水素を混合し、1時間撹拌した。この溶液をポンプ3を介して20 ml/分の流量で反応槽4内に供給し、一方、0、0.1、0.2、0.4 mg/Lの二酸化塩素水溶液(検体1)を20 ml/分の流量でポンプ3'を介して反応槽4に導入した。この反応槽4内での反応条件は、常温、常圧とした。得られた発光強度と二酸化塩素濃度をグラフにプロットした。結果を図10及び11に示す。
図から明らかなように、エチルキサントゲン酸イオン又はジエチルジチオカルバミン酸イオンと過酸化水素を混合した試薬は混合しない試薬よりも発光強度は高くなっている。よって、エチルキサントゲン酸イオン又はジエチルジチオカルバミン酸イオンと二酸化塩素との化学発光反応において、過酸化水素は化学発光増感剤の役割を果たしていることが理解できる。
1 検体
2 試薬
3,3' ポンプ
4 反応槽
5 光センサ
6 増幅器
7 記録計
8 廃液

Claims (14)

  1. 検体に、式(I):
    Figure 2017044602
    (式中、Rは置換基を有してもよいC1〜C10直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、nは1〜3の整数であり、Xn+は、水素イオン、式(NR1234)+で表されるアンモニウムイオン(式中、R1、R2、R3及びR4は各々独立して水素又はC1〜C4アルキル基である)、ヒドラジニウムイオン又は金属イオンである)
    又は式(II):
    Figure 2017044602
    (式中、R'及びR''は各々独立して、水素、置換基を有していてもよいC1〜C6直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、n及びXn+は式(I)についてのものと同義である)
    で表される化合物を添加し、生じた化学発光を測定することを特徴とする検体中の二酸化塩素を検出又は定量する方法。
  2. 前記式(I)及び(II)の化合物において、nが1又は2であり、Xn+が水素イオン、式(NR1234)+で表されるアンモニウムイオン、ヒドラジニウムイオン、アルカリ金属イオン又は鉄、銅、亜鉛、カドミウム及びコバルトからなる群より選択される遷移金属イオンである請求項1に記載の方法。
  3. 式(I)で表される化合物が、メチルキサントゲン酸、エチルキサントゲン酸、プロピルキサントゲン酸、ブチルキサントゲン酸、アミルキサントゲン酸、ヘキシルキサントゲン酸、へプチルキサントゲン酸、オクチルキサントゲン酸、デシルキサントゲン酸、イソプロピルキサントゲン酸、イソブチルキサントゲン酸、イソヘプチルキサントゲン酸、フェニルキサントゲン酸、ベンジルキサントゲン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、カドミウム塩、コバルト塩、ヒドラジニウム塩、アンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩からなる群より選択される請求項1又は2に記載の方法。
  4. 式(II)で表される化合物が、ジメチルジチオカルバミン酸、ジエチルジチオカルバミン酸、ジプロピルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸並びにそれらのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、ヒドラジニウム塩、アンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩及びジエチルアンモニウム塩からなる群より選択される請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記式(I)又は(II)の化合物を、検体中での濃度が1.0×10-8 mol/L以上となるように添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記式(I)又は(II)の化合物を、検出すべき二酸化塩素濃度に対するモル比(ClO2:式(I)又は(II)の化合物)が1:0.01以上となるように添加する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記式(I)又は(II)の化合物を添加して20秒以内での発光強度を測定する請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記検体と前記式(I)又は(II)の化合物を含有する試薬とを反応槽に導入し、該反応槽で発光強度を測定し、該反応槽が(導入される検体の流量[ml/秒]+導入される試薬の流量[ml/秒])の20倍以下の体積を有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 連続的に流動している検体中の二酸化塩素を検出又は定量する請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 検体に前記式(I)又は(II)の化合物を添加する前に、該式(I)又は(II)の化合物を過酸化水素と混合することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 式(I)又は(II)の化合物と過酸化水素とを、1:0.01以上のモル比(式(I)又は(II)の化合物:過酸化水素)で混合する請求項10に記載の方法。
  12. 式(I):
    Figure 2017044602
    (式中、Rは置換基を有してもよいC1〜C10直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、nは1〜3の整数であり、Xn+は、水素イオン、式(NR1234)+で表されるアンモニウムイオン(式中、R1、R2、R3及びR4は各々独立して水素又はC1〜C4アルキル基である)、ヒドラジニウムイオン又は金属イオンである)
    又は式(II):
    Figure 2017044602
    (式中、R'及びR''は各々独立して、水素、置換基を有していてもよいC1〜C6直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、n及びXn+は式(I)についてのものと同義である)
    で表される化合物を含んでなることを特徴とする二酸化塩素の検出又は定量用試薬。
  13. 式(I):
    Figure 2017044602
    (式中、Rは置換基を有してもよいC1〜C10直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、nは1〜3の整数であり、Xn+は、水素イオン、式(NR1234)+で表されるアンモニウムイオン(式中、R1、R2、R3及びR4は各々独立して水素又はC1〜C4アルキル基である)、ヒドラジニウムイオン又は金属イオンである)
    又は式(II):
    Figure 2017044602
    (式中、R'及びR''は各々独立して、水素、置換基を有していてもよいC1〜C6直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、n及びXn+は式(I)についてのものと同義である)
    で表される化合物と、過酸化水素とを組み合わせてなることを特徴とする二酸化塩素の検出又は定量用試薬キット。
  14. 式(I):
    Figure 2017044602
    (式中、Rは置換基を有してもよいC1〜C10直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、nは1〜3の整数であり、Xn+は、水素イオン、式(NR1234)+で表されるアンモニウムイオン(式中、R1、R2、R3及びR4は各々独立して水素又はC1〜C4アルキル基である)、ヒドラジニウムイオン又は金属イオンである)
    又は(II):
    Figure 2017044602
    (式中、R'及びR''は各々独立して、水素、置換基を有していてもよいC1〜C6直鎖若しくは分枝鎖アルキル基又は置換基を有してもよいC6〜C10アリール基であり、n及びXn+は式(I)についてのものと同義である)
    で表される化合物の二酸化塩素を検出又は定量するための使用。
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