JP2005274564A - 発色試薬および濃度測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】保存性が高く、特に残留塩素濃度の測定に適する発色試薬および該発色試薬を用いた濃度測定方法を提供する。
【解決手段】N,N,N’,N’−テトラエチル−p−フェニレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミンを含有する発色試薬であって、この発色試薬を検水に添加し、検水の発色強度を基に例えば残留塩素の濃度を測定する。
【効果】保存性が高く、常温でも長期間劣化なく保存でき、特に残留塩素濃度の測定に適する。
【選択図】図8

Description

本発明は、発色試薬および濃度測定方法に関し、さらに詳しくは、保存性が高く、特に残留塩素濃度の測定に適する発色試薬および濃度測定方法に関する。
従来、残留塩素、溶存二酸化塩素、溶存オゾン等の酸化剤の濃度測定に用いられる発色試薬として、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(以下、DPDという)を含有する発色試薬(以下、DPD試薬という)が知られている(例えば特許文献1,2,3参照)。
特開2004−3880号公報 特開2000−111541号公報 特開平7−333153号公報
DPD試薬には、次の問題点がある。
(1)DPDが酸化されやすいため、保存性が低い。特に液体DPD試薬は、粉末DPD試薬に比べ、保存性が低い。特許文献1に記載されているように、DPDを高い酸濃度の液体に溶解すれば保存性が改善される。しかし、高い酸濃度により安全性が低下したり、使用時のpH調整が難しくなる。
(2)DPD試薬を用いた遊離残留塩素濃度測定方法においては、検水にDPDを添加して遊離残留塩素を測定した後、ヨウ化カリウムを添加して結合塩素を発色させることで全残留塩素濃度を測定する。そして、測定した全残留塩素濃度から測定した遊離残留塩素濃度を減じて、結合残留塩素濃度を求めている。しかし、検水の結合塩素濃度が高い場合、DPDのみで結合塩素による発色が起こり、結合塩素が遊離残留塩素として測定されてしまう。
そこで、本発明の目的は、保存性が高く、特に残留塩素濃度の測定に適する(結合塩素による発色の妨害が少ない)発色試薬および濃度測定方法を提供することにある。
第1の観点では、本発明は、
Figure 2005274564
(R1,R2,R3,R4は、アルキル基)
または前記化合物のベンゼン環の3−または3,5−位置をメチル基に置換した化合物を発色成分として含有することを特徴とする発色試薬を提供する。
上記構成において、アルキル基は、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基などが挙げられる。R1,R2,R3,R4が、これらの1種のみであってもよいし、これらの2種以上を混合して含んでもよい。
上記第1の観点による発色試薬は、DPD試薬に比較して、劣化しにくく、長期間保存できる。なお、発色試薬は、粉末や錠剤のような固体の状態でもよいし、溶液の状態でもよい。溶液の状態とする場合は、酸により液体のpHを低くするほど、保存性が高くなる。
第2の観点では、本発明は、上記第1の観点による発色試薬において、R1,R2,R3,R4が、エチル基であることを特徴とする発色試薬を提供する。
上記第2の観点による発色試薬は、N,N,N’,N’−テトラエチル−p−フェニレンジアミン(以下、TEPDという)を含有する発色試薬(以下、TEPD試薬という)であるが、DPD試薬に比較して、劣化しにくく、長期間保存でき、結合塩素によって発色しにくい。
第3の観点では、本発明は、上記第1の観点による発色試薬において、R1,R2,R3,R4が、メチル基であることを特徴とする発色試薬を提供する。
上記第3の観点による発色試薬は、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン(以下、TMPDという)を含有する発色試薬(以下、TMPD試薬という)であるが、DPD試薬に比較して、劣化しにくく、長期間保存できる。
第4の観点では、本発明は、上記第2による観点による発色試薬において、所定量の検水に単独で又はpH調整剤と共に添加した後のpHが2.8から6.2になるように調製したことを特徴とする発色試薬を提供する。
上記第4の観点による発色試薬は、pHが2.8以上6.2以下で好適に発色し、かつ発色後の発色強度が変化しにくくなる。なお、pH調整剤は、測定対象物質と反応しないものを選択する。
第5の観点では、本発明は、上記第3の観点による発色試薬において、所定量の検水に単独で又はpH調整剤と共に添加した後のpHが2.1から5.9になるように調製したことを特徴とする発色試薬を提供する。
上記第5の観点による発色試薬は、pHが2.1以上5.9以下で好適に発色し、かつ発色後の発色強度が変化しにくくなる。なお、pH調整剤は、測定対象物質と反応しないものを選択する。
第6の観点では、本発明は、上記構成の発色試薬を検水に添加し、検水の発色強度を基に測定対象物質の濃度を測定することを特徴とする濃度測定方法を提供する。
上記第6の観点による濃度測定方法では、測定対象物質である酸化剤(塩素,オゾン,二酸化塩素など)の濃度に応じた強度で呈色するので、発色強度を光度計で測定または肉眼で比色して、測定対象の濃度を測定できる。そして、発色試薬の保存性がよいため、継続的かつ定期的に濃度を測定するのに好適である。
第7の観点では、本発明は、上記構成の濃度測定方法において、前記測定対象物質が残留塩素、溶存二酸化塩素、溶存オゾンであることを特徴とする濃度測定方法を提供する。
上記第7の観点による濃度測定方法では、発色試薬が検水中の残留塩素、溶存二酸化塩素、溶存オゾンと反応し、青色を呈色する。この青色の濃さが残留塩素、溶存二酸化塩素、溶存オゾンの濃度と一定の関係を持つため、青色の濃さを光度計で測定または肉眼で比色して残留塩素、溶存二酸化塩素、溶存オゾンの濃度を知ることが出来る。そして、発色試薬の保存性がよいため、継続的かつ定期的に残留塩素、溶存二酸化塩素、溶存オゾンの濃度を測定するのに好適である。
本発明の発色試薬は、保存性が高く、特に残留塩素濃度の測定に適する。また、本発明の濃度測定方法は、発色試薬の保存性がよいため、継続的かつ定期的に測定対象物質の濃度を測定するのに好適である。
以下、図に示す実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
[TEPD試薬の調製]
約80mLの蒸留水に、硫酸を0.42mL、TEPD硫酸塩を0.62g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物(EDTA2Na)を0.038g添加して溶解し、蒸留水を加えて全量を100mLとし、TEPD試薬を調製した。
なお、TEPD硫酸塩およびキレート剤の濃度は検水量に対するTEPD試薬や緩衝液の添加量に応じて適宜設定してもよい。
[TMPD試薬の調製]
約80mLの蒸留水に、硫酸を0.42mL、TMPD硫酸塩を0.46g、EDTA2Naを0.038g添加して溶解し、蒸留水を加えて全量を100mLとし、TMPD試薬を調製した。
なお、TMPD硫酸塩およびキレート剤の濃度は検水量に対するTMPD試薬や緩衝液の添加量に応じて適宜設定してもよい。
[DPD試薬の調製]
比較のため、約80mLの蒸留水に、硫酸を0.42mL、DPD硫酸塩を0.50g、EDTA2Naを0.038g添加して溶解し、蒸留水を加えて全量を100mLとし、DPD試薬を調製した。
[DMPD試薬の調製]
比較のため、約80mLの蒸留水に、硫酸を0.42mL、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン(DMPDという)硫酸塩を0.45g、EDTA2Naを0.038g添加して溶解し、蒸留水を加えて全量を100mLとし、DMPD試薬を調製した。
上記発色試薬は、発色成分が同じモル濃度となるように調整した。
[第1pH調整液の調製]
約150mLの蒸留水に、KH2PO4を29.0g、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸一水和物(CyDTA)を0.41g添加して溶解し、蒸留水を加えて全量を200mLとし、第1pH調整液を調製した。
[第2pH調整液の調製]
約150mLの蒸留水に、Na2HPO4を30.2g、CyDTAを0.41g添加して溶解し、蒸留水を加えて全量を200mLとし、第2pH調整液を調製した。
[検水の調製]
蒸留水に次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加し、遊離残留塩素濃度約0mg/L〜約2.8mg/Lの検水を調製した。
[第1の測定:波長と吸光度]
ガラス容器にTEPD試薬を1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を1mL入れ(発色後の検水のpHが約5.2になるようにpH調整液を加えた)、次に遊離残留塩素濃度約1mg/Lの検水40mLを添加して攪拌し、10mmセル(吸光度の測定はすべての実施例において10mmセルを使用した)を用いて1分経過後に分光光度計で吸光度を測定した。
また、ガラス容器にTMPD試薬を1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を1mL入れ(発色後の検水のpHが約4.2になるようにpH調整液を加えた)、次に遊離残留塩素濃度約0.94mg/Lの検水40mLを添加して攪拌し、10mmセルを用いて1分経過後に分光光度計で吸光度を測定した。
さらに、比較のために、TEPD試薬またはTMPD試薬の代わりにDPD試薬を用いて同様に吸光度を測定した(但し、発色後の検水のpHが6.2になるようにpH調整液を加えた)。
図1に、第1の測定の結果を示す。
TEPD試薬およびTMPD試薬の吸収曲線は、560nm付近と610nm付近に極大を持つている。一方、DPD試薬の吸収曲線は、510nm付近と550nm付近に極大を持つている。
[第2の測定:濃度と吸光度]
ガラス容器にTEPD試薬を1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を1mL入れ(発色後の検水のpHが約5.2になるようにpH調整液を加えた)、次に遊離残留塩素濃度約0mg/L〜約2.8mg/Lの検水40mLを添加して攪拌し、10mmセルを用いて1分経過後に分光光度計で530nm,560nm,585nm,610nmでの吸光度を測定した。検水の残留塩素濃度の測定は、DPD法によって行った。なお、検水の残留塩素濃度の測定は、すべての実施例において、DPD法によって確認した。
また、ガラス容器にTMPD試薬を0.1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を0.1mL入れ(発色後の検水のpHが約4.2になるようにpH調整液を加えた)、次に遊離残留塩素濃度約0mg/L〜約2.8mg/Lの検水4mLを添加して攪拌し、10mmセルを用いて1分経過後に分光光度計で565nmでの吸光度を測定した。
図2に、TEPD試薬を用いた第2の測定の結果を示す。
TEPD試薬による発色強度が、各波長において残留塩素濃度と比例している。吸光度の勾配は、図1で吸光度が高かった560nm,610nmが大きく、これらの波長で測定することが好ましい。
また、図3に、TMPD試薬を用いた第2の測定の結果を示す。
TMPD試薬による発色強度が、残留塩素濃度と比例している。
[第3の測定:pHと吸光度]
ガラス容器にTEPD試薬を1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を1mL入れ(発色後の検水のpHが約1.7〜約7.6になるようにpH調整液を加えた。pHを3未満にする場合はpH調整液の他に1mol/Lの硫酸を添加してpHを調整した)、次に遊離残留塩素濃度約0.94mg/Lの検水40mLを添加して攪拌し、10mmセルを用いて1分経過後に分光光度計で560nmでの吸光度を測定した。
また、ガラス容器にTMPD試薬を1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を1mL入れ(発色後の検水のpHが約1.7〜約7.6になるようにpH調整液を加えた。pHを3未満にする場合はpH調整液の他に1mol/Lの硫酸を添加してpHを調整した)、次に遊離残留塩素濃度約1mg/Lの検水40mLを添加して攪拌し、10mmセルを用いて1分経過後に分光光度計で560nmでの吸光度を測定した。
図4に、第3の測定の結果を示す。
TEPD試薬の場合、pHが約3以上で吸光度はほぼ一定となった。
TMPD試薬の場合、pHが約2以上で吸光度はほぼ一定となった。
また、TEPD試薬でもTMPD試薬でも、pHが約6以上で吸光度が徐々に高くなる傾向があった。
[第4の測定:経過時間と吸光度]
ガラス容器にTEPD試薬を1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を1mL入れ(発色後の検水のpHが約1.7〜約7.6になるようにpH調整液を加えた。pHを3未満にする場合はpH調整液の他に1mol/Lの硫酸を添加してpHを調整した)、次に遊離残留塩素濃度約0.94mg/Lの検水40mLを添加して攪拌し、10mmセルを用いて1分おきに分光光度計で560nmでの吸光度を測定した。
また、ガラス容器にTMPD試薬を1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を1mL入れ(発色後の検水のpHが約1.7〜約7.6になるようにpH調整液を加えた。pHを3未満にする場合はpH調整液の他に1mol/Lの硫酸を添加してpHを調整した)、次に遊離残留塩素濃度約0.94mg/Lの検水40mLを添加して攪拌し、10mmセルを用いて1分おきに分光光度計で560nmでの吸光度を測定した。
図5に、TEPD試薬を用いた第4の測定の結果を示す。
TEPD試薬の場合、吸光度の経時的変化は、pHが2.83から6.18の範囲で少なかった。
図6に、TMPD試薬を用いた第4の測定の結果を示す。
TMPD試薬の場合、吸光度の経時的変化は、pHが2.06から5.91の範囲で少なかった。
[第5の測定:結合塩素による発色]
遊離残留塩素濃度が約0.94mg/Lの検水に塩化アンモニウム水溶液を添加し(アンモニア性窒素濃度が約0.9mg/Lになるように添加した)、遊離残留塩素を結合残留塩素クロラミンに転換した検水を調製した。
ガラス容器にTEPD試薬を1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を1mL入れ(発色後の検水のpHが約3から約6になるようにpH調整液を加えた)、次に遊離残留塩素を結合残留塩素クロラミンに転換した検水を40mLを添加して攪拌し、10mmセルを用いて1分おきに分光光度計で560nmでの吸光度を測定し、5分経過後にヨウ化カリウムの粉末を発色後の検水10mLに対して0.1gの割合で添加して全残留塩素を発色させ、さらに吸光度の変化を測定した。そして、測定した吸光度の値から換算によって残留塩素濃度を求めた。
また、ガラス容器にTMPD試薬を1mL、第1pH調整液および第2pH調整液を所定の割合で混合したpH調整液を1mL入れ(発色後の検水のpHが約3から約6になるようにpH調整液を加えた)、次に遊離残留塩素を結合残留塩素クロラミンに転換した検水を40mL添加して攪拌し、10mmセルを用いて1分おきに分光光度計で560nmでの吸光度を測定し、5分経過後にヨウ化カリウムの粉末を発色後の検水10mLに対して0.1gの割合で添加して全残留塩素を発色させ、さらに吸光度の変化を測定した。そして、測定した吸光度の値から換算によって残留塩素濃度を求めた。
さらに、比較のために、TEPD試薬またはTMPD試薬の代わりにDPD試薬を用いて同様に吸光度を測定した(但し、発色後の検水のpHが約6.2になるようにpH調整液を加え、550nmでの吸光度を測定した)。
図7に、第5の測定の結果を示す。
TEDP試薬を用いた場合は、DPD試薬を用いた場合に比べて、結合塩素による発色の速度が小さく、結合塩素による影響が小さいことが判る。
TMPD試薬を用いた場合は、DPD試薬を用いた場合に比べて、結合塩素による発色の速度が大きく、結合塩素による影響が大きい。また、発色後の検水のpHが高いほど、結合塩素の影響が小さい。結合塩素の影響を小さくするためには、検水を添加してからなるべく早く測定すればよい。例えば、溶液の状態とした発色試薬は、固体の状態とした発色試薬のように溶解する必要が無く、早く測定できるので、結合塩素の影響を小さくすることが出来る。
[第6の測定:保存性]
TEPD試薬をプラスチック製の容器に入れ密閉し、40℃の恒温室で暗所に保存し、適宜取り出して、残留塩素濃度が約0.94mg/Lの検水および蒸留水を発色させ、分光光度計で吸光度を測定した(但し、発色後の検水のpHが約5.2になるようにpH調整液を加え、560nmでの吸光度を測定した)。
また、TMPD試薬をプラスチック製の容器に入れ密閉し、40℃の恒温室で暗所に保存し、適宜取り出して、残留塩素濃度が約0.94mg/Lの検水および蒸留水を発色させ、分光光度計で吸光度を測定した(但し、発色後の検水のpHが約4.2になるようにpH調整液を加え、560nmでの吸光度を測定した)。
さらに、比較のために、TEPD試薬またはTMPD試薬の代わりにDPD試薬またはDMPD試薬を用いて同様に吸光度を測定した(但し、発色後の検水のpHが約6.2になるようにpH調整液を加え、550nmでの吸光度を測定した)。
図8に、第6の測定の結果を示す。
測定した検水の吸光度から測定した蒸留水の吸光度を減じた値を検水の残留塩素濃度で除したものを発色強度とし、保存開始時の発色強度を100%として保存後の測定結果を表した。また、保存時間の経過とともに発色試薬が着色するかどうかを目視により確認した。着色した発色試薬を使用すると、検水の残留塩素濃度が実際の濃度よりも高く測定される。長期間保存しても発色強度が100%付近で安定しており、着色しない発色試薬が測定に適した発色試薬である。
TEPD試薬およびTMPD試薬は、DPD試薬に比べ、発色強度が長期間低下しないことが判る。一方、DMPD試薬は、DPD試薬よりも、発色強度が速く低下してしまうことが判る。
[保存性に対する酸添加の効果]
異なる酸濃度のTEPD試薬(硫酸酸濃度以外は実施例1と同様の濃度とした)を調製し、プラスチック製の容器に入れ密閉し、40℃の恒温室で暗所に保存し、経時的に残留塩素濃度約0.94mg/Lの検水を測定し発色強度の変化を調べた。
また、異なる酸濃度のTMPD試薬(硫酸酸濃度以外は実施例1と同様の濃度とした)を調製し、プラスチック製の容器に入れ密閉し、40℃の恒温室で暗所に保存し、経時的に残留塩素濃度約0.94mg/Lの検水を測定し発色強度の変化を調べた。
図9に、TEPD試薬の酸濃度及びpHと保存期間との関係を示す。
測定した検水の吸光度から測定した蒸留水の吸光度を減じた値を検水の残留塩素濃度で除したものを発色強度とし、保存開始時の発色強度を100%として保存後の測定結果を表した。
酸濃度に関わらず、14週間内にTEPD試薬の発色強度の低下は認められなかった。但し、硫酸濃度0.0Nの発色試薬では12週間保存後に着色が認められた。
図10に、TMPD試薬の酸濃度及びpHと保存期間との関係を示す。
酸濃度0.05N以下では、発色強度の低下が速かった。発色強度が低下した発色試薬は青く着色していた。
なお、検水の発色強度を測定する際に用いる緩衝液として、発色試薬とともに検水に添加した時にpH3からpH6となるような濃度のクエン酸三カリウム水溶液またはクエン酸三カリウムとクエン酸の混合水溶液に、キレート剤としてCyDTAを実施例1と同濃度となるように添加した水溶液を使用した。詳しくは、硫酸濃度が0.15Nの発色試薬の場合、0.105mol/Lのクエン酸三カリウム水溶液を緩衝液調製に使用した。また、硫酸濃度が0.15Nより低い発色試薬の場合、0.105mol/Lのクエン酸三カリウム溶液に、発色試薬とともに検水に添加した時にpH3からpH6となるようにクエン酸を添加した混合水溶液を緩衝液調製に使用した。さらに、硫酸濃度が0.15Nより高い発色試薬の場合、硫酸のモル濃度の約1.4倍のモル濃度としたクエン酸三カリウム水溶液を緩衝液調製に使用した。
上記のような緩衝液の外に、クエン酸/NaOH緩衝液、D(+)酒石酸/NaOH緩衝液、コハク酸/NaOH緩衝液、酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液などを用いてもよい。一般に、TEPDまたはTMPDの適性pH域で高い緩衝性を有し、残留塩素と反応しない緩衝液を使用することが望ましい。
実施例1で用いたリン酸緩衝液は中性付近で緩衝性が高いが、TEPDまたはTMPDの適性pH域は酸性側にあるため、上記の緩衝液を用いることが出来る。そして、上記の緩衝液は、リン酸を含まないため、排水した際のリンによる環境負荷を減らすことが出来る。
なお、緩衝液の濃度を適宜高めて緩衝性を高めることにより、広いpH範囲の検水および緩衝性の高い検水に対応できる。
[発色試薬のみの使用による測定]
DPDを含む液体試薬の保存性を高めるためには、酸を添加してpHを下げればよいことが判っているが、DPD法の適正pHは6.5付近であるため、酸濃度の高いDPD試薬を用いて残留塩素を測定する場合、pHを調整するための緩衝液を添加する必要がある。
TEPD試薬およびTMPD試薬は、DPD試薬より低い酸濃度で、DPD試薬より長く保存することが出来る。TEPD試薬では、発色の適正pHが2.8から6.2である。TMPD試薬では、発色の適正pHが2.1から5.9である。このようにTEPD試薬およびTMPD試薬では、発色の適正pHがDPD試薬より低いため、検水に添加したときに適正pH範囲となるような酸濃度に予めしておくか、検水に添加したときに適正pH範囲となるようにpH緩衝剤を予め加えておけば、発色試薬と緩衝液とを分けること無く、1液で測定できる。蒸留水に次亜塩素酸ナトリウムを添加した検水の残留塩素濃度の測定をTEPD試薬およびTMPD試薬を用いて行ったところ、緩衝液を加えた場合と加えない場合とで同じ測定結果となった。
[溶存二酸化塩素濃度の測定]
蒸留水に二酸化塩素ガスを溶解させて調整した検水の溶存二酸化塩素濃度をヨウ素滴定法(上水試験方法2001年版)で測定するとともに、同じ検水4mLに実施例1と同じTEPD試薬またはTMPD試薬を0.1mLとクエン酸緩衝液(クエン酸三カリウム0.105mol/L)0.1mLとを加えて565nmの吸光度を測定した。
図11に示すように、溶存二酸化塩素濃度と吸光度とは比例しており、TEPD試薬またはTMPD試薬によって溶存二酸化塩素濃度を測定することが出来る。
[オゾン濃度の測定]
蒸留水にオゾンガスを溶解させて調整した検水の溶存オゾン濃度をヨウ素滴定法(上水試験方法2001年版)で測定するとともに、同じ検水4mLに実施例1と同じTEPD試薬またはTMPD試薬を0.1mLとクエン酸緩衝液(クエン酸三カリウム0.105mol/L)0.1mLとを加えて565nmの吸光度を測定した。
図12に示すように、溶存オゾン濃度と吸光度とは比例しており、TEPD試薬またはTMPD試薬によって溶存オゾン濃度を測定することが出来る。
先述の実施例では、R1,R2,R3,R4が、エチル基のみ(TEPD試薬)又はメチル基のみ(TMPD試薬)としたが、R1,R2がエチル基で、R3,R4がメチル基としてもよい。
TEPD試薬は、TMPD試薬よりも結合塩素による影響が小さく、遊離残留塩素のみを測定するのにTMPD試薬よりも適している。一方、残留塩素を含む検水にTMPD試薬を緩衝液とともに添加すると1秒程度で発色強度が安定になるが、TMPD試薬を使用するとTEPD試薬よりも約2秒から10数秒長くかかり、それだけ長く測定者が測定値を読むのを待たなくてはならず、不便である。これに対して、R1,R2がエチル基でR3,R4がメチル基のものを使用すれば、結合塩素による影響が小さく且つ検水に添加した後の発色強度の安定が速くなる。
先述の実施例では、R1,R2,R3,R4が、エチル基のみ(TEPD試薬)又はメチル基のみ(TMPD試薬)又はエチル基とメチル基の混合としたが、エチル基やメチル基以外の1種のアルキル基のみとしてもよいし、複数種のアルキル基を混合して含んでもよい。
先述の実施例の発色成分におけるベンゼン環の3−または3,5−位置をメチル基に置換してもよい。
本発明の発色試薬および濃度測定方法は、水道水やプール水等の残留塩素濃度等の測定に利用できる。
TEPD試薬で発色させた検水とTMPD試薬で発色させた検水とDPD試薬で発色させた検水の吸収曲線を示した図である。 TEPD試薬で発色させた検水の残留塩素濃度と吸光度の関係を示した図である。 TMPD試薬で発色させた検水の残留塩素濃度と吸光度の関係を示した図である。 TEPD試薬で発色させた検水とTMPD試薬で発色させた検水のpHと吸光度の関係を示した図である。 検水をTEPD試薬で発色させた後の経過時間(発色時間)と吸光度の関係を示した図である。 検水をTMPD試薬で発色させた後の経過時間(発色時間)と吸光度の関係を示した図である。 結合塩素を含む検水をTEPD試薬またはTMPD試薬またはDPD試薬で発色させた後の経過時間(発色時間)と残留塩素濃度の関係を示した図である。 TEPD試薬とTMPD試薬とDPD試薬とDMPD試薬の保存性を比較した図である。 TEPD試薬の酸濃度と保存性の関係を示した図である。 TMPD試薬の酸濃度と保存性の関係を示した図である。 溶存二酸化塩素を含む検水にTEPD試薬を添加した時の溶存二酸化塩素濃度と吸光度の関係および溶存二酸化塩素を含む検水にTMPD試薬を添加した時の溶存二酸化塩素濃度と吸光度の関係を示す図である。 溶存オゾンを含む検水にTEPD試薬を添加した時の溶存オゾン濃度と吸光度の関係および溶存オゾンを含む検水にTMPD試薬を添加した時の溶存オゾン濃度と吸光度の関係を示す図である。

Claims (7)

  1. Figure 2005274564
    (R1,R2,R3,R4は、アルキル基)
    または前記化合物のベンゼン環の3−または3,5−位置をメチル基に置換した化合物を発色成分として含有することを特徴とする発色試薬。
  2. 請求項1に記載の発色試薬において、R1,R2,R3,R4が、エチル基であることを特徴とする発色試薬。
  3. 請求項1に記載の発色試薬において、R1,R2,R3,R4が、メチル基であることを特徴とする発色試薬。
  4. 請求項2に記載の発色試薬において、所定量の検水に単独で又はpH調整剤と共に添加した後のpHが2.8から6.2になるように調製したことを特徴とする発色試薬。
  5. 請求項3に記載の発色試薬において、所定量の検水に単独で又はpH調整剤と共に添加した後のpHが2.1から5.9になるように調製したことを特徴とする発色試薬。
  6. 請求項1から請求項5のいずれかに記載の発色試薬を検水に添加し、検水の発色強度を基に測定対象物質の濃度を測定することを特徴とする濃度測定方法。
  7. 請求項6に記載の濃度測定方法において、前記測定対象物質が残留塩素、溶存二酸化塩素、溶存オゾンであることを特徴とする濃度測定方法。
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