JP6377379B2 - リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池 - Google Patents

リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン電池用正極活物質、リチウムイオン電池用正極、及び、リチウムイオン電池に関する。
リチウムイオン電池の正極活物質には、一般にリチウム含有遷移金属酸化物が用いられている。具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)等であり、特性改善(高容量化、サイクル特性、保存特性、内部抵抗低減、レート特性)や安全性を高めるためにこれらを複合化することが進められている。車載用やロードレベリング用といった大型用途におけるリチウムイオン電池には、これまでの携帯電話用やパソコン用とは異なった特性が求められている。
このようなリチウムイオン電池において求められる電池特性の向上について、従来、種々の研究・開発が行われている。例えば、特許文献1は、正極活物質の粒子の短径と長径との関係が電池特性に影響を与えることについて開示している。
特開2002−208401号公報
特許文献1では、c軸に平行な(003)ベクトルの配向を示す指標を、正極活物質の粒子の短軸と長軸とのアスペクト比で示している。このアスペクト比が小さいと粒子形状が球形に保たれず偏平状となりレート特性が落ちる。そして、具体的には、正極活物質粒子の長軸径に対する短軸径の比(アスペクト比)の平均値が0.5以上であることが望ましいと記載している。
しかしながら、電池特性の向上の点から従来の正極活物質では未だ改良の余地がある。本発明は、電池特性が良好なリチウムイオン電池用正極活物質及びリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、このような問題を解決するため種々の検討を行った結果、リチウムイオン電池の充放電サイクル中の正極活物質の粒界での割れの発生が、抵抗増加を引き起こし、サイクル特性に悪影響を及ぼしていることに着目した。そこで、正極活物質の製造工程において焼成温度と解砕条件との関係に着目し、これを制御することで、内面的な粉末の性状としての結晶構造に係る粒子の選択配向性と、外面的な粉末の性状としての比表面積とを互いに密接に関連して制御することで、リチウムイオン電池の充放電サイクル中の正極活物質の粒界での割れの発生を抑制し、これにより良好なサイクル特性が得られることを見出した。
上記知見を基礎にして完成した本発明は一側面において、
組成式:LixNi1-yy2+α
(前記式において、0.9≦x≦1.2であり、MはMn及びCoであり、0<y≦0.5であり、−0.1≦α≦0.1である。)で表され、
選択配向パラメータが0.97以上0.999以下であり、比表面積が0.50m2/g以下であるリチウムイオン電池用正極活物質である。
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は一実施形態において、粒子径が3μm以下である粒子が、全体の粒子数の5%以上10%以下である。
本発明に係るリチウムイオン電池用正極活物質は別の実施形態において、1次粒子と2次粒子との粒子数の比率が、1次粒子数/2次粒子数で5%以上20%以下である。
本発明は別の一側面において、本発明のリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極である。
本発明は更に別の一側面において、本発明のリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池である。
本発明によれば、電池特性が良好なリチウムイオン電池用正極活物質及びリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法を提供することができる。
実施例及び比較例の配向パラメータ(配向係数)−10サイクル容量維持率のグラフである。
(リチウムイオン電池用正極活物質の構成)
本発明のリチウムイオン電池用正極活物質は、
組成式:LixNi1-yy2+α
(前記式において、0.9≦x≦1.2であり、MはMn及びCoであり、0<y≦0.5であり、−0.1≦α≦0.1である。)で表される。
リチウムイオン電池用正極活物質における全金属に対するリチウムの比率が0.9〜1.2であるが、これは、0.9未満では、安定した結晶構造を保持し難く、1.2超では電池の高容量が確保できなくなるためである。
また、リチウムイオン電池用正極活物質におけるニッケルの組成が0.5以上1.0未満であるため、当該リチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池の容量、出力、安全性の三つがバランスよく向上する。
本発明の正極活物質は、選択配向パラメータが0.97以上0.999以下となるように、且つ、比表面積が0.50m2/g以下に制御されている。本発明の正極活物質は、後述のように、製造工程において、焼成温度と解砕条件との関係に着目し、これを制御することで、内面的な粉末の性状としての結晶構造に係る粒子の選択配向性と、外面的な粉末の性状としての比表面積とを互いに密接に関連させて制御され、これによってリチウムイオン電池の良好なサイクル特性が得られる。正極活物質の選択配向性は、次の選択配向関数における選択配向パラメータpk(r)により示すことができる:
pk(r)=(r2×cos2θα+1/rsin2θα-3/2
ここで、θαは選択配向ベクトルと反射の逆格子ベクトルとがなす角度である。選択配向パラメータ(r)はリートベルト解析における選択配向補正により求められ、r=1の場合が無配向であり、rが1より小さくなればなるほど配向が強いことを示す。本発明において、選択配向補正はc軸に垂直な面である(003)面に関して行う。
上述のように、本発明において、選択配向性と比表面積とは、リチウムイオン電池の良好なサイクル特性を得るために密接な関連を有しており、選択配向パラメータが0.97未満又は0.999超であれば、比表面積が0.50m2/g以下に制御されていたとしても、1次粒子に近い状態の粒子の存在割合が少なくなってしまい、リチウムイオン電池の充放電サイクル中の正極活物質の粒界での割れが発生しやすくなり、良好なサイクル特性が得られなくなってしまう。
一方、比表面積が0.50m2/g超であれば、選択配向パラメータが0.97以上0.999以下となるように制御されていたとしても、サイクル時の抵抗増大要因となる表面の被膜形成が増加し、サイクル特性が劣化してしまう。
本発明の正極活物質の選択配向パラメータは、好ましくは0.97以上0.995以下であり、より好ましくは0.97以上0.990以下である。また、本発明の正極活物質の比表面積は、好ましくは0.35〜0.50m2/gであり、より好ましくは0.35〜0.45m2/gである。
本発明の正極活物質は、粒子径が3μm以下である粒子が、全体の粒子数の5%以上10%以下であるのが好ましい。粒子径が3μm以下である粒子は1次粒子に近い状態の粒子であり、当該粒子が、全体の粒子数の5%以上であるとサイクル時の粒界割れが減少しサイクル特性がより向上する効果が得られる。一方、粒子径が3μm以下である粒子が10%を超えると比表面積が大きくなりすぎて表面の抵抗が増加しサイクル特性が悪くなる場合がある。当該粒子径が3μm以下である粒子は、全体の粒子数の8%以上10%以下であるのが更により好ましい。
本発明の正極活物質は、1次粒子と2次粒子との粒子数の比率が、1次粒子数/2次粒子数で5%以上20%以下であるのが好ましい。このような構成によれば、1次粒子比率が5%以上の割合で存在することでサイクル時の粒界割れが減少しサイクル特性がより向上し、また比表面積の増大を抑制する効果が得られる。1次粒子比率が20%を超えると、比表面積が大きくなるという問題が生じる場合がある。正極活物質は1次粒子と2次粒子との粒子数の比率が、1次粒子数/2次粒子数で、8%以上17%以下であるのがより好ましく、13%以上17%以下であるのが更により好ましい。
(リチウムイオン電池用正極及びそれを用いたリチウムイオン電池の構成)
本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極は、例えば、上述の構成のリチウムイオン電池用正極活物質と、導電助剤と、バインダーとを混合して調製した正極合剤をアルミニウム箔等からなる集電体の片面または両面に設けた構造を有している。また、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池は、このような構成のリチウムイオン電池用正極を備えている。
(リチウムイオン電池用正極活物質の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るリチウムイオン電池用正極活物質の製造方法について詳細に説明する。
まず、金属塩溶液を作製する。当該金属は、Ni、及び、Mn及びCoである。また、金属塩は硫酸塩、塩化物、硝酸塩、酢酸塩等であり、特に硝酸塩が好ましい。これは、焼成原料中に不純物として混入してもそのまま焼成できるため洗浄工程が省けることと、硝酸塩が酸化剤として機能し、焼成原料中の金属の酸化を促進する働きがあるためである。金属塩に含まれる各金属を所望のモル比率となるように調整しておく。これにより、正極活物質中の各金属のモル比率が決定する。
次に、炭酸リチウムを純水に懸濁させ、その後、上記金属の金属塩溶液を投入して金属炭酸塩溶液スラリーを作製する。このとき、スラリー中に微小粒のリチウム含有炭酸塩が析出する。なお、金属塩として硫酸塩や塩化物等熱処理時にそのリチウム化合物が反応しない場合は飽和炭酸リチウム溶液で洗浄した後、濾別する。硝酸塩や酢酸塩のように、そのリチウム化合物が熱処理中にリチウム原料として反応する場合は洗浄せず、そのまま濾別し、乾燥することにより焼成前駆体として用いることができる。
次に、濾別したリチウム含有炭酸塩を乾燥することにより、リチウム塩の複合体(リチウムイオン電池正極材用前駆体)の粉末を得る。
次に、所定の大きさの容量を有する焼成容器を準備し、この焼成容器にリチウムイオン電池正極材用前駆体の粉末を充填する。次に、リチウムイオン電池正極材用前駆体の粉末が充填された焼成容器を、焼成炉へ移設し、焼成を行うことで、正極活物質の表面構造を制御する。焼成工程では、焼成温度として室温から970℃まで、12〜18時間の焼成を行う。その後、焼成容器から粉末を取り出し、市販の解砕装置を用いて解砕を行うことにより正極活物質の粉体を得る。ここで、上記焼成の際の焼成温度及び焼成後の粉末に対して行う解砕の解砕装置の解砕回転数は、正極活物質の組成に応じて制御する必要がある。正極活物質の組成に応じて、所望の選択配向及び比表面積となるように、焼成温度と焼成後の粉末に対して行う解砕の解砕装置の解砕回転数を適宜調整する。
本発明の正極活物質を作製するためには、上述のように、製造工程において、焼成温度と解砕条件との密接な関係を維持することが必要である。また、上記焼成温度及び解砕条件は、当然に正極活物質の組成によっても異なる。正極活物質の前駆体に対して焼成温度が低い場合には、その後の解砕工程の解砕が容易に進行し、所望の比表面積は得られるものの、選択配向が不十分となってしまう。所望の選択配向を得るために解砕を強くすると、所望の比表面積が得られなくなる。一方、焼成温度が高ければ、所望の比表面積が得られるとともに所望の選択配向が得られやすくなるが、解砕条件を強くしすぎると配向が強くなり過ぎ、また解砕が不十分であれば選択配向が得られない。このように、本発明の正極活物質を得るためには、焼成温度は、解砕条件と密接に関連させることが必要である。
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を提供するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
(実施例1〜10)
まず、金属塩に含まれる各金属が表1、2のモル比率となるように調整した硝酸塩を準備した。次に、炭酸リチウムを純水に懸濁させた後、この金属塩溶液を投入した。
この処理により溶液中に微小粒のリチウム含有炭酸塩が析出したが、この析出物を、フィルタープレスを使用して濾別した。
続いて、析出物を乾燥してリチウム含有炭酸塩(リチウムイオン電池正極材用前駆体)を得た。
次に、焼成容器を準備し、この焼成容器内にリチウム含有炭酸塩を充填した。次に、焼成容器を、大気圧下で、表1、2に記載の焼成温度で2時間加熱保持した後冷却して酸化物を得た。
次に、得られた酸化物を表1、2に記載の解砕回転数にて解砕することで、リチウムイオン二次電池正極材の粉末を得た。
(比較例1〜16)
比較例1〜16として、金属塩に含まれる各金属を表1、2に示すような組成とし、焼成温度以外は、実施例1〜10と同様の処理を行った。
(評価)
−正極材組成の評価−
各正極材中の金属含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−OES)で測定し、各金属の組成比(モル比)を算出した。各金属の組成比は、表1、2に記載の通りであることを確認した。また、酸素含有量はLECO法で測定しαを算出した。
−配向パラメータの評価−
配向パラメータの評価は、粉末X線回折装置「(株)リガク、SmartLab」により、Cuターゲットを線源に用いて、2θ=10〜80°の範囲で測定したXRD測定データを、解析ソフト「(株)リガク、PDXL」を用い、リートベルト解析の配向関数補正により行った。選択配向関数は以下の関係式:
pk(r)=(r2×cos2θα+1/rsin2θα-3/2
として、αは選択配向ベクトルと反射の逆格子ベクトルとがなす角度となりこの式中のrが選択配向きパラメータとなる。選択配向パラメータはリートベルト解析における選択配向補正により求めた。選択配向補正はc軸に垂直な面である(003)面に関して行った。
−粒子径が3μm以下である粒子の、全体の粒子数における比率の評価−
子径が3μm以下である粒子の、全体の粒子数における比率の評価は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置「(株)日機装 マイクロトラックMT3000」を用いて行った。具体的な粒子比率に前記測定装置の測定で、ある一定粒径の粒子の頻度データの情報が得られ、これにより比率について算出して割合を求めた。
−1次粒子と2次粒子との粒子数の比率の評価−
1次粒子と2次粒子との粒子数の比率の評価は、まず粒子の断面SEM像から1次粒子の大きさを求めた(切断法)。続いてレーザー回折による粒度分布測定(日機装、マイクロトラック)から全体の粒度分布を確認し、その分布における1次粒子サイズの割合を1次粒子比率とした。
−比表面積の評価−
比表面積の評価は、比表面測定器(Quantachrome社、Monosorb)を使用し、ガラス管に充填・脱気したサンプルを液体窒素下(−196℃)で窒素ガス吸着させ(相対分圧P/P0=0.3)BET法により求めた。
−電池特性(サイクル特性)の評価−
正極活物質と、導電材と、バインダーを90:5:5の割合で秤量し、バインダーを有機溶媒(N−メチルピロリドン)に溶解したものに、正極活物質と導電材とを混合してスラリー化し、Al箔上に塗布して乾燥後にプレスして正極とした。続いて、対極をLiとした評価用の2032型コインセルを作製し、電解液に1M−LiPF6をEC−DMC(1:1)に溶解したものを用いて、室温で1Cの放電電流で得られた初期放電容量と10サイクル後の放電容量とを比較することによってサイクル特性(容量維持率)を測定した。
これらの結果を表1、2に示す。
Figure 0006377379
Figure 0006377379
(評価結果)
表1、2に示すように、Ni:Co:Mnの組成比が同様である実施例及び比較例を対比すると、それぞれ実施例のサイクル特性が比較例のサイクル特性をいずれも上回り、良好であったことがわかる。
具体的には、比較例1〜5は、所定の組成において、解砕条件は適切であったものの、焼成温度が低く、比表面積が0.50m2/gを超えてしまい、サイクル特性が不良であった。
比較例6、7は、所定の組成において、焼成温度は適切であったものの、解砕が弱く、選択配向性が不良であり、サイクル特性が不良であった。
比較例8は、所定の組成において、焼成温度は適切であったものの、解砕が強く、選択配向し過ぎてしまい、サイクル特性が不良であった。
比較例9、10、11、13は、所定の組成において、焼成温度が低く、さらに解砕が弱く、選択配向性が不良であり、且つ、比表面積が0.50m2/gを超えてしまい、サイクル特性が不良であった。
比較例12は、所定の組成において、解砕条件は適切であったものの、焼成温度が低く、選択配向性が不良であり、且つ、比表面積が0.50m2/gを超えてしまい、サイクル特性が不良であった。
比較例14、15は、所定の組成において、焼成温度は適切であったものの、解砕が弱く、選択配向性が不良であり、サイクル特性が不良であった。
比較例16は、所定の組成において、焼成温度は適切であったものの、解砕が強く、選択配向し過ぎてしまい、サイクル特性が不良であった。
図1に、実施例1〜10及び比較例1〜10の配向パラメータ(配向係数)−10サイクル容量維持率のグラフを示す。

Claims (5)

  1. 組成式:LixNi1-yy2+α
    (前記式において、0.9≦x≦1.2であり、MはMn及びCoであり、0<y≦0.5であり、−0.1≦α≦0.1である。)
    で表され、
    選択配向パラメータが0.97以上0.999以下であり、比表面積が0.50m2/g以下であり、粒子径が3μm以下である粒子が、全体の粒子数の5%以上10%以下であるリチウムイオン電池用正極活物質。
  2. 1次粒子と2次粒子との粒子数の比率が、1次粒子数/2次粒子数で5%以上20%以下である請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極活物質。
  3. 組成式:LixNi1-yy2+α
    (前記式において、0.9≦x≦1.2であり、MはMn及びCoであり、0<y≦0.5であり、−0.1≦α≦0.1である。)
    で表され、
    選択配向パラメータが0.97以上0.999以下であり、比表面積が0.50m2/g以下であり、1次粒子と2次粒子との粒子数の比率が、1次粒子数/2次粒子数で5%以上20%以下であるリチウムイオン電池用正極活物質。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池用正極活物質を用いたリチウムイオン電池用正極。
  5. 請求項4に記載のリチウムイオン電池用正極を用いたリチウムイオン電池。
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