JP6373850B2 - 電気化学還元装置および、芳香族化合物の水素化体の製造方法 - Google Patents

電気化学還元装置および、芳香族化合物の水素化体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、芳香族炭化水素化合物または含窒素複素環式芳香族化合物を電気化学的に水素化する技術に関する。
シクロヘキサンやデカリンといった環状有機化合物は、水素ガスを用いて対応する芳香族炭化水素化合物(ベンゼン、ナフタレン)を核水素化することで効率的に得られることが知られている。この反応には、高温かつ高圧の反応条件が必要なため、小〜中規模での環状有機化合物の製造には不向きである。これに対して、電解セルを用いる電気化学反応は、水を水素源として用いることができるためガス状の水素を扱う必要がない。また、反応条件も比較的温和(常温〜200℃程度、常圧)で進行することが知られている。
特開2003−045449号公報 特開2005−126288号公報 特開2005−239479号公報
市川勝,J.Jpn.Inst.Energy,85巻,517(2006)
トルエン等の芳香族炭化水素化合物を電気化学的に核水素化する例として、ガス状に気化させたトルエンを還元電極側に送り込み、水電解に類似の構成で、水素ガスの状態を経由せずに核水素化体であるメチルシクロヘキサンを得る手法も報告されている(非特許文献1参照)。しかしながら、この手法では、電極面積あたり、あるいは時間あたりに転化できる物質量(電流密度)は大きくなく、工業的に芳香族炭化水素化合物を核水素化することが困難であった。
本発明者らは、これに対する改善策として芳香族炭化水素化合物を電解セルの還元極側に直接液体で導入する手法を検討した。この場合、気化させた芳香族炭化水素化合物を導入する方法に比べて、高い電流密度で電解水素化反応を進行させることができる。しかしながら、この手法では、電流密度がある値を超えると、電解水素化反応と水素発生反応が競争となり、流れた電気量当たりの電解水素化体の収率であるファラデー効率が低下する問題があった。また、電解水素化反応の進行に伴い、還元極の劣化や温度変化などの反応環境変化が生じると、反応環境変化の前後では、ファラデー効率を一定値以上に保つための条件が変化する。このような条件変化に応じてファラデー効率を精度よく一定値以上に保つための技術が必要となっている。
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、反応環境変化に応じて適切に芳香族炭化水素化合物または含窒素複素環式芳香族化合物を高効率で電気化学反応により高選択的に核水素化することができる技術の提供にある。
本発明のある態様は、電気化学還元装置である。当該電気化学還元装置は、イオン伝導性を有する電解質膜と、前記電解質膜の一方の側に設けられ、芳香族化合物を核水素化するための還元触媒を含む還元電極と、前記電解質膜の他方の側に設けられた酸素発生用電極と、を含んで構成される電極ユニットと、前記還元電極と前記酸素発生用電極との間に電圧Vaを印加する電力制御部と、前記還元電極と酸素発生用電極との間に流れる電流値I(実測値)を検出する電流検出部と、前記電解質膜に接し、かつ、前記還元電極および前記酸素発生用電極と電気的に隔離して配置され、参照電極電位VRefに保持される参照電極と、前記参照電極と前記還元電極との電位差ΔVを検出する電圧検出部と、前記電位差ΔVに基づいて定められる前記還元電極の電位ECAと前記還元電極と酸素発生用電極との間に流れる電流値Iの絶対値の対数値log|I|との関係において略直線関係が得られる領域(ターフェル領域)における直線を外挿した基準線からの、座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))のかい離Δが許容上限値Δmaxを超えないように前記電力制御部を制御する制御部と、を備える。
上記態様の電気化学還元装置において、前記制御部は、前記基準線と座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))との最短距離Sが所定の許容値Smaxを超えないように前記電力制御部を制御してもよい。
上記態様の電気化学還元装置において、前記制御部は、前記基準線と座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))との水平方向の距離に相当する差分Δlog|I(実測値)|が許容値Δlog|I|maxを超えないように前記電力制御部を制御してもよい。
上記態様の電気化学還元装置において、前記制御部は、前記基準線と座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))との垂直方向の距離に相当する差分ΔECA(実測値)が許容上限値ΔECA_maxを超えないように前記電力制御部を制御してもよい。
上記態様の電気化学還元装置において、前記制御部は、前記ターフェル領域において1点以上の座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))を取得し、前記基準線を補正する基準線補正機能を有してもよい。
上記態様の電気化学還元装置において、前記制御部は、前記基準線の補正を所定の時間経過毎に実施してもよい。また、前記制御部は、前記電流値Iの変動により、前記座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))が前記ターフェル領域内にあるときに、前記基準線の補正を随時実施してもよい。
本発明の他の態様は、芳香族化合物の水素化体の製造方法である。当該芳香族化合物の水素化体の製造方法は、上述したいずれかの態様の電気化学還元装置を用い、前記電極ユニットの前記還元電極側に芳香族化合物を導入し、前記酸素発生用電極側に水または加湿したガスを流通させ、前記還元電極側に導入された芳香族化合物を核水素化することを特徴とする。
上記態様の製造方法において、前記還元電極側へ導入する芳香族化合物を、反応温度において液体の状態で前記還元電極側へ導入してもよい。
本発明のある態様によれば、芳香族化合物を電気化学反応により高選択的に核水素化することができる。また、本発明の他の態様によれば、反応環境変化に応じて適切に芳香族化合物を高効率で電気化学的に核水素化することができる。
実施の形態に係る電気化学還元装置の概略構成を示す模式図である。 実施の形態に係る電気化学還元装置が有する電極ユニットの概略構成を示す図である。 異なるトルエン濃度の条件下でそれぞれ測定された電流値Iの絶対値の対数値log|I(実測値)|と、電位ECA(実測値)との関係を示すグラフである。 基準線からのかい離Δの態様を示す図である。 基準線の補正方法を模式的に示す図である。 制御部による制御の一例を示すフローチャートである。 制御部が有する基準線補正機能の一例を示すフローチャートである。 制御部が有する基準線補正機能の他の例を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。以下に記載する開示内容において、「電極の電位」とは、RHE(可逆水素電極)基準の電位を意味する。
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る電気化学還元装置10の概略構成を示す模式図である。図2は、実施の形態に係る電気化学還元装置10が有する電極ユニットの概略構成を示す図である。図1に示すように、電気化学還元装置10は、電極ユニット100、電力制御部20、有機物貯蔵槽30、水貯蔵槽40、気水分離部50および制御部60を備える。図2に示すように、電極ユニット100は、電解質膜110、還元電極120、酸素発生用電極130、液体拡散層140a、140b、およびセパレータ150a、150bを有する。以下、電解質膜110、還元電極120、酸素発生用電極130、液体拡散層140a,140b、およびセパレータ150a,150bを組み合わせたものを「セル」と称する。
電力制御部20は、例えば、電力源の出力電圧を所定の電圧に変換するDC/DCコンバータである。電力制御部20の正極出力端子は、電極ユニット100の酸素発生用電極(正極)130に接続されている。電力制御部20の負極出力端子は、電極ユニット100の還元電極(負極)120に接続されている。これにより、電極ユニット100の酸素発生用電極(正極)130と還元電極(負極)120との間に所定の電圧が印加される。なお、電力制御部20には、正および負極の電位検知の目的で参照極を設けてもよい。この場合、参照極入力端子は、後述する電解質膜110に設けられた参照電極112と接続されている。電力制御部20の正極出力端子および負極出力端子の出力は、参照電極112の電位を基準としたときの酸素発生用電極130および還元電極120の電位が所望の電位になるように、制御部60によって制御される。なお、電力源としては、特に限定されないが、通常の系統電力を用いてもよく、太陽光や風力などの自然エネルギー由来の電力も好ましく用いることができる。制御部60による酸素発生用電極130および還元電極120間に流れる電流制御の態様については後述する。
有機物貯蔵槽30には、芳香族化合物が貯蔵されている。本実施の形態で用いられる芳香族化合物は、少なくとも1つの芳香環を含む芳香族炭化水素化合物、または含窒素複素環式芳香族化合物である。例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ジフェニルエタン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、N−アルキルピロール、N−アルキルインドール、N−アルキルジベンゾピロールなどが挙げられる。また、上述の芳香族炭化水素および含窒素複素環式芳香族化合物の芳香環の1乃至4の水素原子がアルキル基で置換されていてもよい。ただし、上記芳香族化合物中の「アルキル」は、炭素数1〜6の直鎖アルキル基または分岐アルキル基である。例えばアルキルベンゼンとしては、トルエン、エチルベンゼンなど,ジアルキルベンゼンとしてキシレン,ジエチルベンゼンなど,トリアルキルベンゼンとしてメシチレンなどが挙げられる。アルキルナフタレンとしては、メチルナフタレンが挙げられる。また、上述の芳香族炭化水素および含窒素複素環式芳香族化合物の芳香環は1乃至3の置換基を有してもよい。なお、以下の説明で、本発明で用いられる芳香族炭化水素化合物および含窒素複素環式芳香族化合物を「芳香族化合物」と呼ぶ場合がある。芳香族化合物は、常温で液体であることが好ましい。また、上述の芳香族化合物のうち複数を混合したものを用いる場合は、混合物として液体であればよい。これによれば、加熱や加圧などの処理を行うことなく、液体の状態で芳香族化合物を電極ユニット100に供給することができるため、電気化学還元装置10の構成の簡便化を図ることができる。液体の状態の芳香族炭化水素化合物の濃度は、0.1%以上、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.5%以上である。
有機物貯蔵槽30に貯蔵された芳香族化合物は、第1液体供給装置32によって電極ユニット100の還元電極120に供給される。第1液体供給装置32は、例えば、ギアポンプあるいはシリンダーポンプ等の各種ポンプ、または自然流下式装置等を用いることができる。なお、芳香族化合物に代えて、上述した芳香族化合物のN−置換体を用いてもよい。有機物貯蔵槽30と電極ユニット100の還元電極120との間に循環経路が設けられている。そして、電極ユニット100によって核水素化された芳香族化合物および未反応の芳香族化合物は、循環経路を経て有機物貯蔵槽30に貯蔵される。電極ユニット100の還元電極120で進行する主反応ではガスは発生しないが、ガスが副生する場合には循環経路の途中に気液分離手段を設けてもよい。
水貯蔵槽40には、イオン交換水、純水、あるいはこれらに硫酸等の酸を加えた水溶液等(以下、単に「水」という)が貯蔵されている。水貯蔵槽40に貯蔵された水は、第2液体供給装置42によって電極ユニット100の酸素発生用電極130に供給される。第2液体供給装置42は、第1液体供給装置32と同様に、例えば、ギアポンプあるいはシリンダーポンプ等の各種ポンプ、または自然流下式装置等を用いることができる。水貯蔵槽40と電極ユニット100の酸素発生用電極130との間に循環経路が設けられており、電極ユニット100において未反応の水は、循環経路を経て水貯蔵槽40に貯蔵される。なお、未反応の水を電極ユニット100から水貯蔵槽40へ送り返す経路の途中に気水分離部50が設けられている。気水分離部50によって、電極ユニット100における水の電気分解によって生じた酸素が水から分離されて系外に排出される。
電極ユニット100を構成するセルは、単数または複数であってもよい。電極ユニット100が複数のセルによって構成される場合は、各セルに所望の電圧Vaが印加されるように電力制御部20の負極出力端子および正極出力端子の間に印加する電圧を決定すればよい。なお、図1では、電極ユニット100が簡略化されて図示されており、液体拡散層140a、140b、およびセパレータ150a、150bが省略されている。
電解質膜110は、プロトン伝導性を有する材料(イオノマー)で形成されており、プロトンを選択的に伝導する一方で、還元電極120と酸素発生用電極130との間で物質が混合したり拡散することを抑制する。電解質膜110の厚さは、5〜300μmが好ましく、10〜150μmがより好ましく、20〜100μmが最も好ましい。電解質膜110の厚さが5μm未満であると、電解質膜110のバリア性が低下し、クロスリークが生じやすくなる。また、電解質膜110の厚さが300μmより厚くなると、イオン移動抵抗が過大になるため好ましくない。
電解質膜110の面積抵抗、即ち幾何面積当たりのイオン移動抵抗は、2000mΩ・cm以下が好ましく、1000mΩ・cm以下がより好ましく、500mΩ・cm以下が最も好ましい。電解質膜110の面積抵抗が2000mΩ・cmより高いと、プロトン伝導性が不足する。プロトン伝導性を有する材料(カチオン交換型のイオノマー)としては、ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)などのパーフルオロスルホン酸ポリマーが挙げられる。カチオン交換型のイオノマーのイオン交換容量(IEC)は、0.7〜2meq/gが好ましく、1〜1.2meq/gがより好ましい。カチオン交換型のイオノマーのイオン交換容量が0.7meq/g未満の場合には、イオン伝導性が不十分となる。一方、カチオン交換型のイオノマーのイオン交換容量が2meq/gより高い場合には、イオノマーの水への溶解度が増大するため、電解質膜110の強度が不十分になる。
なお、電解質膜110には、還元電極120および酸素発生用電極130から離間した領域において、電解質膜110に接するように参照電極112を設けてもよい。すなわち、参照電極112は、還元電極120および酸素発生用電極130から電気的に隔離されている。参照電極112は、参照電極電位VRefに保持される。参照電極112としては、標準水素還元電極(参照電極電位VRef=0V)、Ag/AgCl電極(参照電極電位VRef=0.199V)が挙げられるが、参照電極112はこれらに限られない。なお、参照電極112を設置する場合、参照電極112は還元電極120側の電解質膜110の表面に設置されることが好ましい。
還元電極120と酸素発生用電極130との間を流れる電流値Iは、図1に示す電流検出部113によって検出される。電流検出部113で検出された電流値Iの値は制御部60に入力される。
参照電極112と還元電極120との間の電位差ΔVは、図1に示す電圧検出部114によって検出される。電圧検出部114で検出された電位差ΔVの値は制御部60に入力され、当該電位差ΔVに基づいて還元電極120の電位ECAが定められ、後述する制御に用いられる。参照電極112として標準水素電極を用いる場合には、その電位を0V vs. RHEとして用いることができる。標準水素電極以外の参照電極、例えばAg/AgCl電極を用いる場合には、SHE基準電位(0.199V)から、さらにNernst式に従い温度と水素イオン濃度(pH)による補正を行い、RHE基準の電位を算出することができる。このようにして定めた参照電極電位(0V vs. RHE)を基準に、還元電極120の電位ECAを取得する。電位ECAはRHEに対して負の値を取る場合もあり得る。
電位ECAの範囲は、下式で定められる。
任意に定められる電位<ECA<芳香族化合物の酸化還元電位
任意に定められる電位は、芳香族化合物の核水素化反応におけるファラデー効率を所定の値以上に保つための基準値であり、芳香族化合物としてトルエンを用いた場合には、例えば、−20mVである。また、芳香族化合物としてトルエンを用いた場合には、芳香族化合物の酸化還元電位は153mVである。
還元電極120は、電解質膜110の一方の側に設けられている。還元電極120は、芳香族化合物を核水素化するための還元触媒を含む還元極触媒層である。還元電極120に用いられる還元触媒は、特に限定されないが、例えば、Pt、Pdの少なくとも一方を含む。なお、還元触媒は、Pt、Pdの少なくとも一方からなる第1の触媒金属(貴金属)と、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Ru、Sn、W、Re、Pb、Biから選択される1種または2種以上の第2の触媒金属とを含む金属組成物で構成されてもよい。この場合、当該金属組成物の形態は、第1の触媒金属と第2の触媒金属との合金、あるいは、第1の触媒金属と第2の触媒金属からなる金属間化合物である。第1の触媒金属と第2の触媒金属の総質量に対する第1の触媒金属の割合は、10〜95wt%が好ましく、20〜90wt%がより好ましく、25〜80wt%が最も好ましい。第1の触媒金属の割合が10wt%より低いと、耐溶解性などの点から耐久性の低下を招くおそれがある。一方、第1の触媒金属の割合が95wt%より高いと、還元触媒の性質が貴金属単独の性質に近づくため、電極活性が不十分となる。以下の説明で、第1の触媒金属と第2の触媒金属とをまとめて「触媒金属」と呼ぶ場合がある。
上述した触媒金属は導電性材料(担体)に担持されていてもよい。導電性材料の電気伝導度は、1.0×10−2S/cm以上が好ましく、3.0×10−2S/cm以上がより好ましく、1.0×10−1S/cm以上が最も好ましい。導電性材料の電気伝導度が1.0×10−2S/cm未満の場合には、十分な導電性を付与することができない。当該導電性材料として多孔性カーボン、多孔性金属、多孔性金属酸化物のいずれかを主成分として含有する導電性材料が挙げられる。多孔性カーボンとしては、ケッチェンブラック(登録商標)、アセチレンブラック、バルカン(登録商標)などのカーボンブラックが挙げられる。窒素吸着法で測定した多孔性カーボンのBET比表面積は、100m/g以上が好ましく、150m/g以上がより好ましく、200m/g以上が最も好ましい。多孔性カーボンのBET比表面積が100m/gより小さいと、触媒金属を均一に担持させることが難しくなる。このため、触媒金属表面の利用率が低下し、触媒性能の低下を招く。多孔性金属としては、例えば、Ptブラック、Pdブラック、フラクタル状に析出させたPt金属などが挙げられる。多孔性金属酸化物としては、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wの酸化物が挙げられる。この他、触媒金属を担持するための多孔性の導電性材料として、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wなどの金属の窒化物、炭化物、酸窒化物、炭窒化物、部分酸化した炭窒化物(以下、これらをまとめて多孔性金属炭窒化物等と呼ぶ)が挙げられる。窒素吸着法で測定した多孔性金属、多孔性金属酸化物および多孔性金属炭窒化物等のBET比表面積は、1m/g以上が好ましく、3m/g以上がより好ましく、10m/g以上が最も好ましい。多孔性金属、多孔性金属酸化物および多孔性金属炭窒化物等のBET比表面積が1m/gより小さいと、触媒金属を均一に担持させることが難しくなる。このため、触媒金属表面の利用率が低下し、触媒性能の低下を招く。
還元電極120には、前述の導電性酸化物やカーボンブラックなどの導電性を有する材料を、触媒金属を担持した導電性化合物とは別に添加してもよい。これによって、還元触媒粒子間の電子伝導経路を増やすことができ、還元触媒層の幾何面積当たりの抵抗を下げることができる場合もある。
還元電極120は、添加剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂を含んでもよい。
還元電極120は、プロトン伝導性を有するイオノマーを含んでもよい。還元電極120には、上述の電解質膜110と同一または類似の構造を有するイオン伝導性物質(イオノマー)を所定の質量比で含んでいることが好ましい。これによれば、還元電極120におけるイオン伝導性を向上させることができる。特に、触媒担体が多孔性の場合において還元電極120がプロトン伝導性を有するイオノマーを含有することにより、イオン伝導性の向上に大きく寄与する。プロトン伝導性を有するイオノマー(カチオン交換型のイオノマー)としては、ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)などのパーフルオロスルホン酸ポリマーが挙げられる。カチオン交換型のイオノマーのイオン交換容量(IEC)は、0.7〜3meq/gが好ましく、1〜2.5meq/gがより好ましく、1.2〜2meq/gが最も好ましい。触媒金属が多孔性カーボン(カーボン担体)に担持されている場合には、カチオン交換型のイオノマー(I)/カーボン担体(C)の質量比I/Cは、0.1〜2が好ましく、0.2〜1.5がより好ましく、0.3〜1.1が最も好ましい。質量比I/Cが0.1より低いと、十分なイオン伝導性を得ることが困難になる。一方、質量比I/Cが2より大きいと、触媒金属に対するイオノマーの被覆厚みが増えることにより、反応物質である芳香族化合物が触媒活性点に接触することが阻害されたり、電子伝導性が低下することにより電極活性が低下する。
また、還元電極120に含まれるイオノマーは、還元触媒を部分的に被覆していることが好ましい。これによれば、還元電極120における電気化学反応に必要な3要素(芳香族化合物、プロトン、電子)を効率的に反応場に供給することができる。
液体拡散層140aは、電解質膜110と反対側の還元電極120の面に積層されている。液体拡散層140aは、後述するセパレータ150aから供給された液状の芳香族化合物を還元電極120に均一に拡散させる機能を担う。液体拡散層140aとして、例えば、カーボンペーパ、カーボンクロスが用いられる。
セパレータ150aは、電解質膜110と反対側の液体拡散層140aの面に積層されている。セパレータ150aは、カーボン樹脂、Cr−Ni−Fe系、Cr−Ni−Mo−Fe系、Cr−Mo−Nb−Ni系、Cr−Mo−Fe−W−Ni系などの耐食性合金で形成される。セパレータ150aの液体拡散層140a側の面には、単数または複数の溝状の流路152aが併設されている。流路152aには、有機物貯蔵槽30から供給された液状の芳香族化合物が流通しており、液状の芳香族化合物は流路152aから液体拡散層140aに染み込む。流路152aの形態は、特に限定されないが、例えば、直線状流路、サーペンタイン流路を採用しうる。また、金属材料をセパレータ150aに用いる場合には、セパレータ150aは球状やペレット状の金属微粉末を焼結した構造体であってもよい。
酸素発生用電極130は、電解質膜110の他方の側に設けられている。酸素発生用電極130は、RuO、IrOなどの貴金属酸化物系の触媒を含むものが好ましく用いられる。これらの触媒は、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ta、Wなどの金属あるいはそれらを主成分とする合金などの金属ワイヤ、メッシュなどの金属基材に分散担持またはコーティングされていてもよい。特に、IrOは高価であるため、IrOを触媒として用いる場合には、金属基材に薄膜コーティングすることにより、製造コストを低減することができる。
液体拡散層140bは、電解質膜110と反対側の酸素発生用電極130の面に積層されている。液体拡散層140bは、後述するセパレータ150bから供給された水を酸素発生用電極130に均一に拡散させる機能を担う。液体拡散層140bとして、例えば、カーボンペーパ、カーボンクロスが用いられる。
セパレータ150bは、電解質膜110と反対側の液体拡散層140bの面に積層されている。セパレータ150bは、Cr/Ni/Fe系,Cr/Ni/Mo/Fe系、Cr/Mo/Nb/Ni系、Cr/Mo/Fe/W/Ni系などの耐食性合金、または、これらの金属表面が酸化物皮層で被覆された材料で形成される。セパレータ150bの液体拡散層140b側の面には、単数または複数の溝状の流路152bが併設されている。流路152bには、水貯蔵槽40から供給された水が流通しており、水は流路152bから液体拡散層140bに染み込む。流路152bの形態は、特に限定されないが、例えば、直線状流路、サーペンタイン流路を採用しうる。また、金属材料をセパレータ150bに用いる場合には、セパレータ150bは球状やペレット状の金属微粉末を焼結した構造体であってもよい。
本実施の形態では、酸素発生用電極130に液体の水が供給されるが、液体の水に代えて、加湿されたガス(例えば、空気)を用いてもよい。この場合、加湿ガスの露点温度は、室温〜100℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
芳香族化合物としてトルエンを用いた場合の電極ユニット100における反応は以下のとおりである。
<酸素発生用電極での電極反応>
3HO→1.5O+6H+6e:E=1.23V
<還元電極での電極反応>
トルエン+6H+6e→メチルシクロヘキサン:E=0.153V(vs RHE)
すなわち、酸素発生用電極130での電極反応と、還元電極120での電極反応とが並行して進行する。酸素発生用電極130での電極反応によって、水の電気分解により生じたプロトンが電解質膜110を介して還元電極120に供給され、還元電極120での電極反応において、芳香族化合物の核水素化に利用される。
ここで、制御部60による制御の根底にある考え方について実験データを参照しながら説明する。
実験に用いた電極ユニットのセル構成は以下のとおりである。
還元電極:30重量%Pt−23.3重量%Ru/カーボンブラック電極、0.5mg−Pt/cm、イオノマー(Nafion2020CS)/カーボン比0.8
電解質膜:Nafion NR212CS(厚さ50μm)
酸素発生用電極:IrO表面形成TiO繊維電極(厚さ約300μm)
還元電極に供給されるトルエンの濃度を一定とした条件(100%、10%、5%、1%の4条件)で、還元電極と酸素発生用電極との間に流れる電流値Iおよび電解質膜に設置された参照電極と還元電極との電位差ΔVを測定し、電位ECAを得た。
図3は、異なるトルエン濃度の条件下でそれぞれ測定された電流値Iの絶対値の対数値log|I(実測値)|と、電位ECAとの関係を示すグラフである。図3に示すように、トルエン濃度が異なる条件下でのlog|I(実測値)|と電位ECAのプロット(以下、I−Vカーブという場合がある)は原則的に交わらないため、座標(log|I|、ECA)が定まれば、この座標を通るI−Vカーブを一義的に定めることができる。
I−Vカーブの略直線関係が得られる領域(ターフェル領域)における直線を外挿した基準線(図3で点線で示した線)からの、ある座標(log|I|、ECA)のかい離が少ないほど、トルエンを電気化学反応により核水素化する際のファラデー効率は高くなるという関係になる。したがって、電気化学反応を進行させる際に、座標(log|I|、ECA)とこの座標に対応して定められる基準線とのかい離を一定範囲に入るように制御すれば、ファラデー効率を所望の値以上に維持することができる。
以上のような知見に基づいて、制御部60は、電位ECAと、還元電極120と酸素発生用電極130との間に流れる電流値Iの絶対値の対数値log|I|との関係において、略直線関係が得られる領域(ターフェル領域)における直線を外挿した基準線からの、座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))のかい離Δが許容上限値Δmaxを超えないように電力制御部20を制御する。
具体的には、図4に示すように、制御部60は、上記かい離Δを制御する一態様として、基準線と座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))との最短距離Sが所定の許容上限値Smaxを超えないように電力制御部20を制御してもよい。
座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))における最短距離Sは、予めメモリ等の記憶手段に格納されていてもよい。具体的には、芳香族化合物の所定濃度に応じて定まるI−Vカーブを異なる濃度毎に記憶しておき、さらに、所定のI−Vカーブと当該I−Vカーブのターフェル領域の直線から外挿される上記基準線との関係から、座標(log|I|、ECA)に最短距離Sが関連付けられて記憶されていてよい。この場合、実測I−V座標に最も近似する座標(log|I|、ECA)に関連付けられた最短距離Sを実測I−V座標における最短距離Sとしてよい。
また、最短距離Sは、実測I−V座標と基準線とを用いて幾何学的に算出されてもよい。この場合には、具体的には、芳香族化合物の所定濃度に応じて定まるI−Vカーブを異なる濃度毎に記憶しておき、さらに、所定のI−Vカーブと当該I−Vカーブのターフェル領域の直線から外挿される上記基準線を記憶しておく。そして、測定により得られた実測I−V座標を通るI−Vカーブに対応付けられた基準線を取得し、実測I−V座標と当該基準線から最短距離Sが算出される。
また、図4に示すように、制御部60は、上記かい離Δを制御する一態様として、検出された実測I−V座標と基準線との水平方向の距離(log|I(実測値)|と、電位ECAを電位ECA(実測値)としたときの基準線上の座標より求まるlog|I’|との差)に相当する差分Δlog|I(実測値)|が許容上限値Δlog|I|maxを超えないように電力制御部20を制御してもよい。
実測I−V座標における差分Δlog|I(実測値)|は、予めメモリ等の記憶手段に格納されていてもよい。具体的には、芳香族化合物の所定濃度に応じて定まるI−Vカーブを異なる濃度毎に記憶しておき、さらに、所定のI−Vカーブと当該I−Vカーブのターフェル領域の直線から外挿される上記基準線との関係から、座標(log|I|、ECA)に差分Δlog|I|が関連付けられて記憶されていてよい。この場合、実測I−V座標に最も近似する座標(log|I|、ECA)に関連付けられた差分Δlog|I|を実測I−V座標における差分Δlog|I(実測値)|としてよい。
また、差分Δlog|I(実測値)|は、実測I−V座標と基準線とを用いて幾何学的に算出されてもよい。この場合には、具体的には、芳香族化合物の所定濃度に応じて定まるI−Vカーブを異なる濃度毎に記憶しておき、さらに、所定のI−Vカーブと当該I−Vカーブのターフェル領域の直線から外挿される上記基準線を記憶しておく。そして、測定により得られた実測I−V座標を通るI−Vカーブに対応付けられた基準線を取得し、実測I−V座標と当該基準線から差分Δlog|I(実測値)|が算出される。
また、図4に示すように、制御部60は、上記かい離Δを制御する一態様として、検出された実測I−V座標と基準線との垂直方向の距離(電位ECA(実測値)と、Δlog|I|をΔlog|I(実測値)|としたときの基準線上の座標より求まる電位ECA’との差)に相当する差分ΔECA(実測値)が許容上限値ΔECA_maxを超えないように電力制御部20を制御してもよい。
実測I−V座標における差分ΔECA(実測値)は、予めメモリ等の記憶手段に格納されていてもよい。具体的には、芳香族化合物の所定濃度に応じて定まるI−Vカーブを異なる濃度毎に記憶しておき、さらに、所定のI−Vカーブと当該I−Vカーブのターフェル領域の直線から外挿される上記基準線との関係から、座標(log|I|、ECA)に差分ΔECAが関連付けられて記憶されていてよい。この場合、実測I−V座標に最も近似する座標(log|I|、ECA)に関連付けられた差分Δlog|I|を実測I−V座標における差分ΔECA(実測値)としてよい。
また、差分ΔECA(実測値)は、実測I−V座標と基準線とを用いて幾何学的に算出されてもよい。この場合には、具体的には、芳香族化合物の所定濃度に応じて定まるI−Vカーブを異なる濃度毎に記憶しておき、さらに、所定のI−Vカーブと当該I−Vカーブのターフェル領域の直線から外挿される上記基準線を記憶しておく。そして、測定により得られた実測I−V座標を通るI−Vカーブに対応付けられた基準線を取得し、実測I−V座標と当該基準線から差分ΔECA(実測値)が算出される。
許容上限値Smax、許容上限値Δlog|I|max、および許容上限値ΔECA_maxは、ファラデー効率が所定の値、例えば、80%、95%以上になる限界値として定められる。したがって、本実施の形態の制御部60による制御を実施することにより、芳香族化合物の濃度を取得することなく、より簡便かつ高精度にファラデー効率を所定の値以上に維持しつつ、芳香族化合物の核水素化反応を進めることができる。
この他、電気化学還元装置10を用いて芳香族化合物を核水素化する場合の反応条件として、以下が挙げられる。電極ユニット100の温度は、室温〜100℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。電極ユニット100の温度が室温より低いと、電解反応の進行が遅くなる虞れ、あるいは本反応の進行に伴い発生する熱の除去に多大なエネルギーを要するため好ましくない。一方、電極ユニット100の温度が100℃より高いと、酸素発生用電極130においては水の沸騰が生じ、還元電極120においては有機物の蒸気圧が高くなるため、両極とも液相で反応を行う電気化学還元装置10としては好ましくない。
以上説明した通常時の制御の他に、制御部60は、上述した基準線を補正する機能(自己診断機能ともいう)を有する。以下、制御部60が有する自己診断機能について説明する。
<基準線を1点で補正する場合>
図5は、基準線の補正方法を模式的に示す図である。触媒の有効面積の減少や芳香族化合物の濃度の変化のような頻度因子に起因して基準線が変化する場合には、補正前(初期状態)の基準線をECA=a×log|I|+bのように一次関数で表したとき、所定時間経過後の基準線は、ECA=a×log|I|+b’と表すことができる。すなわち、基準線の勾配は変化せず、一次関数の切片に相当するbが変化する。通常はb(初期状態)>b’(所定時間経過後)である。
したがって、補正前の座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))によりaが1点定まっていれば、ターフェル領域に相当する低電流密度領域(例えば、例えば10mA/cm以下)において、座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))を取得することにより、b’を決定することができる。
つまり、制御部60は、電流密度を意図的にまたは意図せず低電流密度領域内の値にした状態で、座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))を取得し、この座標に基づいて、基準線を補正する。
<基準線を2点以上で補正する場合>
基準線の勾配は、電極反応における活性化エネルギー、反応電子数、温度等に依存する。このうち、活性化エネルギーや反応電子数は、反応機構や律速段階の変化が伴う劇的な反応環境変化が起きない限り大きく変化しない。ただし、温度については電極反応に伴い変化しうる。補正前の状態(初期状態)と所定時間経過後の状態とで温度が異なる場合には、基準線の切片に加えて勾配の補正も必要となる。具体的には、制御部60は、所定時間経過後に低電流密度領域において、2点以上の所定時間経過後の座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))を取得する。制御部60は、得られた複数の座標をフィッティングすることにより)、ターフェル領域の直線、すなわち、基準線を取得する。なお、得られた座標が2つの場合には、2つの座標を結んで得られる線を基準線としてよい。
この他、所定時間経過後に低電流密度領域において、座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))を1点取得し、上記のように、切片b’を決定するとともに、初期状態および所定時間経過後の還元電極120の温度を測定し、予め定められた温度係数を用いて勾配aを補正してもよい。
なお、基準線の補正を行うタイミングとしては、以下の場合が挙げられる。
(a)電極反応開始後、所定時間経過する毎に電流密度を低電流密度領域内に強制的に変化させて基準線を補正する。これによれば、基準線が所定時間毎に補正されるため、基準線の精度を高めた状態に維持しつつ、ファラデー効率を所定値以上に保つ制御を行うことができる。
(b)負荷変動により、電流密度が低電流密度領域に意図せず入ったときに基準線を随時補正する。これによれば、電流密度を強制的に低電流密度領域内に変化させることを要しないため、芳香族化合物の核水素化体の生成量を低下させることなく、電極反応を進行させることができ、芳香族化合物の核水素化の効率を高めることができる。
(c)上記(b)の手法のように基準線の補正を随時実施しつつ、基準線の補正が所定時間経過しても実施されない場合に電流密度を低電流密度領域内に強制的に変化させて基準線を補正する。これによれば、(b)の手法で得られる芳香族化合物の核水素化の効率向上と、(a)の手法で得られる基準線の精度向上との両立を図ることができる。
図6は、制御部60による制御の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、制御部60は、電力制御部20に還元電極120と酸素発生用電極との間にVaを印加する(S10)。このときの印加電圧は、ファラデー効率を所定の値以上に制御するために変化させるべきものであり、特に制限されないが、1.4V〜2.2Vとすることが好ましい。
次に、電流検出部113によって、還元電極120と酸素発生用電極130との間を流れる電流値I(実測値)が測定される(S20)。
また、電圧検出部114によって、参照電極112と還元電極120との電位差ΔVが測定され、当該ΔVに基づいて電位ECA(実測値)が取得される(S30)。
次に、実測I−V座標と基準線との最短距離Sを取得する。最短距離Sは、上述したように、I−Vカーブに対応して記憶された最短距離Sを読み出すことや、実測I−V座標と基準線を用いた計算により取得される(S40)。
次に、取得された最短距離SがS≦Smaxという関係を満たすかどうかが判定される(S50)。S≦Smaxという関係が満たされている場合には、S50のyesに進み、S20以下の処理に戻る。一方、S≦Smaxという関係が満たされていない場合には、S50のnoに進み、電圧Vaを調節する(S60)。ここでは、電圧Vaを一定量上げる(下げる)ことで最短距離Sの低下が図られる。電圧Vaの上げ幅(下げ幅)は、特に限定されないが、例えば、10mVである。電圧Vaを増加(低下)させた後、S20以下の処理に戻り、電流値Iが再検出される。
図7は、制御部60が有する基準線補正機能の一例を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、基準線を1点で補正する場合の例示である。
図7に示すように、制御部60は、電流密度が低電流密度領域内の値になるように電圧Vaを制御する(S100)。この場合、電流密度が低電流密度領域内の値になるような電圧を予めメモリ等に記憶しておき、電圧Vaを予め設定された電圧にしてもよい。また、電流値Iを検出しながら、電流値Iが低電流密度内の値になるまで電圧Vaを適宜増加させてもよい。
次に、電流密度が低電流密度領域内の値になっている状態で、電流値Iの測定(S110)、および電位ECAの取得(S120)を行う。なお、電流値Iの測定、電位ECAの取得は順不同であり、図7の順番に限定されない。
次に、上記で得られた座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))から基準線の切片b’を算出し、基準線を補正する(S130)。
図8は、制御部60が有する基準線補正機能の一例を示すフローチャートである。図6のフローチャートは、基準線を2点以上で補正する場合の例示である。
図8に示すように、制御部60は、電流密度が低電流密度領域内の値になるように電圧Vaを制御する(S200)。この場合、電流密度が低電流密度領域内の値になるような電圧を予めメモリ等に記憶しておき、電圧Vaを予め設定された電圧にしてもよい。また、電流値Iを検出しながら、電流値Iが低電流密度内の値になるまで電圧Vaを適宜増加させてもよい。
次に、電流密度が低電流密度領域内の値になっている状態で、電流値Iの測定(S210)、および電位ECAの取得(S220)を行う。なお、電流値Iの測定、電位ECAの取得は順不同であり、図8の順番に限定されない。
次に、上記で取得された座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))の数が予め決められた数に達したかどうかが判断される(S230)。座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))の数が所定数に満たない場合には、S230のnoに進み、S200以下の処理を再度行う。この際に、印加する電圧Vaが既に取得した座標における電圧と異なるように制御を行う。一方、座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))の数が所定数に達した場合には、S230のyesに進み、取得された複数の座標(log|I(実測値)|、ECA(実測値))をフィッティングすることにより基準線を補正する(S240)。
以上説明した電気化学還元装置10によれば、芳香族化合物の濃度を測定することなく、基準線からの実測I−V座標のかい離Δが許容値Δmaxを超えないように制御することにより、ファラデー効率が所定の値以上に維持しながら芳香族化合物の核水素化反応が優位となる範囲で電極反応を進行させることができる。さらに、ファラデー効率を所定の値以上に維持するための基準線を反応条件に合わせて補正することにより、反応環境に変化が生じた場合であっても、ファラデー効率を所定の値以上に精度よく維持することができる。なお、反応環境とは、反応を取り巻く周囲の環境と捉えることができる。例えば、電極の劣化や温度変化、芳香族化合物の温度や濃度変化、といった電解反応に影響を及ぼす環境の変化が挙げられる。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
上述した各実施の形態では、還元電極120は、プロトン伝導性を有するイオノマーを含んでいるが、還元電極120は、ヒドロキシイオン伝導性を有するイオノマーを含んでもよい。
10 電気化学還元装置、20 電力制御部、30 有機物貯蔵槽、40 水貯蔵槽、50 気水分離部、60 制御部、100 電極ユニット、110 電解質膜、112 参照電極、113 電流検出部、114 電圧検出部、120 還元電極、130 酸素発生用電極、140a,140b 液体拡散層、150a,150b セパレータ
本発明は、芳香族炭化水素化合物または含窒素複素環式芳香族化合物を電気化学的に水素化する技術に関する。

Claims (9)

  1. イオン伝導性を有する電解質膜と、前記電解質膜の一方の側に設けられ、芳香族化合物を核水素化するための還元触媒を含む還元電極と、前記電解質膜の他方の側に設けられた酸素発生用電極と、を含んで構成される電極ユニットと、
    前記還元電極と前記酸素発生用電極との間に電圧Vaを印加する電力制御部と、
    前記還元電極と酸素発生用電極との間に流れる電流値I(実測値)を検出する電流検出部と、
    前記電解質膜に接し、かつ、前記還元電極および前記酸素発生用電極と電気的に隔離して配置され、参照電極電位VRefに保持される参照電極と、
    前記参照電極と前記還元電極との電位差ΔVを検出する電圧検出部と、
    前記電位差ΔVに基づいて定められる前記還元電極の電位ECAと前記還元電極と酸素発生用電極との間に流れる電流値Iの絶対値の対数値log|I|との関係において、略直線関係が得られる領域(ターフェル領域)における直線を外挿した基準線からの、座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))のかい離Δが、ファラデー効率が80%以上になる限界値として定められる許容上限値Δmaxを超えないように前記電力制御部を制御する制御部と、
    を備えることを特徴とする電気化学還元装置。
  2. 前記制御部は、前記基準線と座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))との最短距離Sが、ファラデー効率が80%以上になる限界値として定められる許上限値Smaxを超えないように前記電力制御部を制御する請求項1に記載の電気化学還元装置。
  3. 前記制御部は、前記基準線と座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))との水平方向の距離に相当する差分Δlog|I(実測値)|が、ファラデー効率が80%以上になる限界値として定められる許容上限値Δlog|I|maxを超えないように前記電力制御部を制御する請求項1に記載の電気化学還元装置。
  4. 前記制御部は、前記基準線と座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))との垂直方向の距離に相当する差分ΔECA(実測値)が、ファラデー効率が80%以上になる限界値として定められる許容上限値ΔECA_maxを超えないように前記電力制御部を制御する請求項1に記載の電気化学還元装置。
  5. 前記制御部は、前記ターフェル領域において1点以上の座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))を取得し、前記基準線を補正する基準線補正機能を有することを特徴とする請求項1に記載の電気化学還元装置。
  6. 前記制御部は、前記基準線の補正を所定の時間経過毎に実施する請求項5に記載の電気化学還元装置。
  7. 前記制御部は、前記電流値Iの変動により、前記座標(log|I(実測値)|、電位ECA(実測値))が前記ターフェル領域内にあるときに、前記基準線の補正を随時実施する請求項5に記載の電気化学還元装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電気化学還元装置を用い、
    前記電極ユニットの前記還元電極側に芳香族化合物を導入し、前記酸素発生用電極側に水または加湿したガスを流通させ、前記還元電極側に導入された芳香族化合物を核水素化することを特徴とする芳香族化合物の水素化体の製造方法。
  9. 前記還元電極側へ導入する芳香族化合物を、反応温度において液体の状態で前記還元電極側へ導入する、請求項8に記載の芳香族化合物の水素化体の製造方法。
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