以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当する部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態に係る電力変換装置の全体構成図である。図1を参照して、この発明の実施の形態に係る電力変換装置は、代表的には、非同期交流系統や異周波交流系統の電力授受に用いられるBTB(Back to Back)システムに適用される。具体例では、50−60Hz周波数変換装置などがある。
電力変換装置1は、交流周波数が互いに異なる電力系統2および電力系統3の間に接続される。電力変換装置1は、交流電圧検出器12,52と、電流検出器13,53と、直流電圧検出器14と、第1開閉器SW1と、第3開閉器SW3と、電力変換部10と、変換器制御部11,51と、冗長制御部80とを備える。
交流電圧検出器12は、電力系統2の交流電圧を検出し、検出結果を変換器制御部11へ出力する。電流検出器13は、電力系統2を流れる電流を検出し、検出結果を変換器制御部11へ出力する。第1開閉器SW1は、電力系統2と電力変換部10とを繋ぐ接続線上に設けられる。第1開閉器SW1は、冗長制御部80からの制御信号SE1に応答して導通/非導通(オン/オフ)されることにより、電力変換部10と電力系統2との間の電力供給経路を導通/遮断する。
交流電圧検出器52は、電力系統3の交流電圧を検出し、検出結果を変換器制御部51へ出力する。電流検出器53は、電力系統3を流れる電流を検出し、検出結果を変換器制御部51へ出力する。第3開閉器SW3は、電力系統3と電力変換部10とを繋ぐ接続線上に設けられる。第3開閉器SW3は、冗長制御部80からの制御信号SE3に応答してオン/オフされることにより、電力変換部10と電力系統3との間の電力供給経路を導通/遮断する。
電力変換部10は、複数の相(たとえば三相とする)を有する電力系統2と、複数の相(三相)を有する電力系統3との間に接続される。電力変換部10は、電力系統2に第1変圧器21〜24を介して連系され、もう一方の電力系統3に第2変圧器61〜64を介して連系されている。電力変換部10は、第1変圧器21〜24と、第1変換器25〜28と、平滑コンデンサ29〜32と、第2変換器65〜68と、第2変圧器61〜64と、第2開閉器SW2a〜SW2dと、第4開閉器SW4a〜SW4dとを含む。
第1変圧器21〜24の一次巻線は電力系統2に接続されている。各第1変圧器21〜24の一次巻線は、各相直列接続されて星型結線されており、各第1変換器25〜28の交流電圧を各相直列合成した電圧が電力系統2に出力される。第1変圧器21〜24の二次巻線の各相の一端33には、第1変換器25〜28の各相電力変換回路交流出力端子がそれぞれ接続される。第1変圧器21〜24の二次巻線の各相のもう一端34には、平滑コンデンサ29〜32に接続された別の電力変換回路の各相交流出力端子が接続されて、多相フルブリッジ回路を構成している。
たとえば後に説明するように、第1変圧器21の二次巻線各相の一端33には、平滑コンデンサ29の直流電圧を交流に変換する第1変換器25の電力変換回路が接続される。第1変圧器21の二次巻線各相のもう一端34には、平滑コンデンサ29の直流電圧を交流に変換する電力変換回路が接続される。第1変圧器21の二次巻線に接続される2つの電力変換回路の直流回路は共通である。
第1変換器25〜28の各々は、GCT(Gate Commutated Turn-Off thyristor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの自己消弧型素子を用いた電力変換器で構成されている。第1変換器25〜28の直流電圧端子には、平滑コンデンサ29〜32がそれぞれ接続されている。平滑コンデンサ29〜32は相互に接続されておらず、互いに独立している。直流電圧検出器14は、第1変換器25〜28の直流電圧端子の直流電圧を検出し、検出結果を変換器制御部11,51へ出力する。
第2変換器65〜68の各々は、第1変換器25〜28と同様に、GCTやIGBT等の自己消弧型素子を用いた電力変換器で構成されている。第2変換器65〜68の直流電圧端子には、平滑コンデンサ29〜32にそれぞれ接続されている。第2変換器65〜68の交流電圧端子は第2変圧器61〜64の二次巻線にそれぞれ接続されている。第2変圧器61〜64の一次巻線は電力系統3に接続されている。
このように、電力変換部10は、第1変換器25〜28の直流電圧端子と第2変換器65〜68の直流電圧端子とを接続した構成となっている。電力変換部10は、一方の電力系統2(または電力系統3)から他方の電力系統3(または電力系統2)へ電力を融通する。具体的には、電力系統2から電力系統3へ電力を融通する場合、第1変換器25〜28は、第1変圧器21〜24からそれぞれ供給される交流電圧を所望の直流電圧に変換し、変換した直流電圧を平滑コンデンサ29〜32にそれぞれ供給する。第2変換器65〜68は、平滑コンデンサ29〜32が保持する直流電圧を所望の交流電圧にそれぞれ変換する。第2変圧器61〜64は、変換された交流電圧を電力系統3に供給する。一方、電力系統3から電力系統2へ電力を融通する場合、第2変換器65〜68は、第2変圧器61〜64からそれぞれ供給される交流電圧を所望の直流電圧に変換し、変換した直流電圧を平滑コンデンサ29〜32にそれぞれ供給する。第1変換器25〜28は、平滑コンデンサ29〜32が保持する直流電圧を所望の交流電圧にそれぞれ変換する。第1変圧器21〜24は、変換された交流電圧を電力系統2に供給する。なお、いずれの場合においても、直流回路には融通電力による大きな直流電流が流れる。
第2開閉器SW2a〜SW2dは、第1変圧器21〜24の二次巻線と第1変換器25〜28の交流電圧端子との間にそれぞれ接続される。第2開閉器SW2a〜SW2dの各々は、冗長制御部80から与えられる制御信号SE2に応答してオン/オフされることにより、対応する第1変換器の交流電圧端子と対応する第1変圧器の二次巻線とを電気的に接続/遮断する。
第4開閉器SW4a〜SW4dは、第2変換器65〜68の交流電圧端子と第2変圧器61〜64の二次巻線との間にそれぞれ接続される。第4開閉器SW4a〜SW4dの各々は、冗長制御部80から与えられる制御信号SE4に応答してオン/オフされることにより、対応する第2変換器の交流電圧端子と対応する第2変圧器の二次巻線とを電気的に接続/遮断する。
図2は、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68の具体的な回路構成を示す図である。第1変換器25〜28および第2変換器65〜68は回路構成が同じであるため、図2では代表的に第1変換器25の回路構成を説明する。
図2を参照して、第1変換器25は、スイッチング素子S11〜S22と、ダイオードD11〜D22とを含む。スイッチング素子S11〜S22は、たとえばGCTであるが、自己消弧型のスイッチング素子であればこれに限定されるものではない。ダイオードD11〜D22は、スイッチング素子S11〜S22にそれぞれ逆並列接続される。
平滑コンデンサ29は、直流回路にコンデンサC1を1個接続した構成となっており、直流電圧を平滑化する。直列接続された2個のスイッチング素子(たとえばS11,S12)と当該2個のスイッチング素子にそれぞれ逆並列接続される2個のダイオードS11,D12とは、1つの電力変換回路を構成する。三相の場合、平滑コンデンサ29には6つの電力変換回路が並列に接続される。このうちの3つの電力変換回路の交流電圧端子は第1変圧器21の各相二次巻線の一方端33に接続され、残りの電力変換回路の交流電圧端子は第1変圧器21の各相二次巻線の他方端34に接続される。すなわち、各相二次巻線の両端には電力変換回路の交流出力端子がそれぞれ接続されており、2つの電力変換回路によって二次巻線から供給される交流電圧が直流電圧に変換される。
第1変換器25〜28はそれぞれ、第1変圧器21〜24の二次巻線から供給された交流電圧を所望の直流電圧に変換する。この変換過程において、第1変圧器21〜24の二次巻線に流れる交流電流が直流電流に変換されて平滑コンデンサ29〜32にそれぞれ流れる。このとき、第1変換器25の直流電流は、対応する平滑コンデンサ29にのみ流れ、他の平滑コンデンサ30〜32に直接流れ込む横流は発生しない。残りの第1変換器26〜28においても同様に、各々の直流電流は対応する平滑コンデンサ30〜32にのみ流れる。
第2変換器65〜68においても同様に、各々が対応する平滑コンデンサ29〜32の直流電圧を所望の交流電圧に変換する過程において、各々の直流電流は対抗する平滑コンデンサ29〜32にのみ流れる。
図1に戻って、変換器制御部11は、第1変換器25〜28における電力変換を制御する。本実施の形態では、変換器制御部11は、第1変換器25〜28の各々を構成するスイッチング素子の制御方式として、PWM(Pulse Width Modulation)制御を適用する。変換器制御部11は、電流検出器13から電力系統2を流れる電流の検出値を受け、直流電圧検出器14から第1変換器25〜28の直流電圧端子の直流電圧の検出値を受ける。変換器制御部11は、これらの検出値に基づいて、PWM制御によって、第1変換器25〜28を制御するためのゲートパルス信号GC11〜GC14を生成する。変換器制御部11は、生成したゲートパルス信号GC11〜GC14を第1変換器25〜28にそれぞれ出力する。なお、図1では、ゲートパルス信号GC11〜GC14をまとめてゲートパルス信号GC1と表記している。
変換器制御部51は、第2変換器65〜68における電力変換を制御する。変換器制御部51は、電流検出器53から電力系統3を流れる電流の検出値を受け、直流電圧検出器14から第2変換器65〜68の直流電圧端子の直流電圧の検出値を受ける。変換器制御部51は、これらの検出値に基づいて、PWM制御によって、第2変換器65〜68を制御するためのゲートパルス信号GC21〜GC24を生成する。変換器制御部51は、生成したゲートパルス信号GC21〜GC24を第2変換器65〜68にそれぞれ出力する。なお、図1では、ゲートパルス信号GC21〜GC24をまとめてゲートパルス信号GC2と表記している。
図3は、図1における変換器制御部11の制御構造を示すブロック図である。変換器制御部11および変換器制御部51は制御構造が基本的に同じであるため、図3では代表的に変換器制御部11の制御構造を説明する。
図3を参照して、変換器制御部11は、電圧位相検出部91と、有効無効電流検出部92と、直流電圧制御部93と、個別直流電圧制御部94と、無効電流制御部95と、有効電流制御部96と、電圧基準値生成部97と、ゲートパルス信号生成部98〜101と、キャリア信号生成部102とを含む。
変換器制御部11は、交流電圧検出器12によって検出された交流電圧、電流検出器13によって検出された電流、および直流電圧検出器14によって検出された直流電圧に基づいて、各第1変換器25〜28のスイッチング素子をスイッチングさせることにより、第1変換器25〜28の直流電圧が同一になるように制御する。
具体的には、電圧位相検出部91は、交流電圧検出器12により検出された電圧Vu,Vv,Vwから電圧位相θを検出する。検出した電圧位相θは電圧位相基準とされる。有効無効電流検出部92は、電流検出器13により検出された電流Iu,Iv,Iwと、電圧位相検出部91から出力される電圧位相基準とに基づいて、電力変換部10から電力系統2へ出力される有効無効電流Iq,Idを検出する。
直流電圧制御部93は、直流電圧検出器14により検出された第1変換器25〜28の直流電圧Vdcと直流電圧指令値Vdc*とから、直流電圧代表値Vdc_sおよび有効電流指令値Iq*を演算する。
個別直流電圧制御部94は、直流電圧検出器14により検出された第1変換器25〜28の直流電圧Vdcと、有効無効電流検出部92で検出される有効電流Iqおよび無効電流Idと、直流電圧制御部93で演算された直流電圧代表値Vdc_sとから、第1変換器25〜28の直流電圧が互いに等しくなるように、第1変換器25〜28の電圧補正値ΔVdc1d〜ΔVdc4d,ΔVdc1q〜ΔVdc4qをそれぞれ求める。
無効電流制御部95は、有効無効電流検出部92により検出される無効電流Idが指令値Id*と一致するように、電力変換部10から出力される電圧のうち無効電流と同位相成分である無効電圧基準値Vd*を演算する。つまり無効電流制御部95では、電力変換部10から出力される交流電圧のうち無効電流に関わる成分を制御する。
有効電流制御部96は、有効無効電流検出部92により検出される有効電流Iqが指令値Iq*と一致するように、電力変換部10から出力される電圧のうち有効電流と同位相成分である有効電圧基準値Vq*を演算する。つまり有効電流制御部96は、電力変換部10から出力される交流電圧のうち有効電流に関わる成分を制御する。
電圧基準値生成部97は、無効電流制御部95にて算出される無効電圧基準値Vd*と、有効電流制御部96にて算出される有効電圧基準値Vq*と、個別直流電圧制御部94にて算出される電圧補正値ΔVdc1d〜ΔVdc4d,ΔVdc1q〜ΔVdc4qと、電圧位相検出部91から出力される電圧位相基準とから、第1変換器25〜28からそれぞれ出力される電圧である出力交流電圧基準値V1u*〜V4u*,V1v*〜V4v*,V1w*〜V4w*を演算する。
第1変換器25への出力を例として、電圧基準値生成部97の機能をさらに説明する。電圧基準値生成部97は、無効電流制御部95で算出された無効電圧基準値Vd*と、有効電流制御部96で算出された有効電圧基準値Vq*とに、個別直流電圧制御部94で算出された第1変換器25の電圧補正値ΔVdc1d,ΔVdc1qをそれぞれ加算することにより、系統電圧と同位相であるV1d*と、V1d*とは位相が90度異なるV1q*とを算出する。そして、V1d*およびV1q*を、静止座標系の三相に変換することにより、出力交流電圧基準値V1u*,V1v*,V1w*を演算する。
キャリア信号生成部102は、電圧位相検出部91から出力される電圧位相基準に基づいて、電力系統2の周波数を算出する。キャリア信号生成部102は、算出された電力系統2の周波数に基づいて、PWM制御で用いられるキャリア信号の周波数を演算し、その演算した周波数のキャリア信号を発生する。なお、キャリア信号は、三角波やのこぎり波によって構成することができる。電力系統2の周波数に対するキャリア信号の周波数の比をn倍(nは2以上の整数)とした場合、PWM制御において、電圧指令の1周期に含まれるキャリア信号のパルス数はn個となる。
詳細には、キャリア信号生成部102は、第1変換器25のためのゲートパルス信号GC11の生成に用いるキャリア信号セットCS1と、第1変換器26のためのゲートパルス信号GC12の生成に用いるキャリア信号セットCS2と、第1変換器27のためのゲートパルス信号GC13の生成に用いるキャリア信号セットCS3と、第1変換器28のためのゲートパルス信号GC14の生成に用いるキャリア信号セットCS4とを生成する。図3では、キャリア信号セットCS1〜CS4をまとめてキャリア信号セットCSと表記している。
たとえば三相の場合、図2に示したように、第1変換器25〜28の各々は6つの電力変換回路で構成される。よって、1つのキャリア信号セットCSは6個のキャリア信号からなる。キャリア信号数は(1つのキャリア信号セット当たりのキャリア信号数×多重数)である。本実施の形態のように4段直列多重の電力変換装置の場合、キャリア信号数は6×4=24個となる。
キャリア信号生成部102は、複数のキャリア信号に位相差を設ける。これにより、第1変換器25〜28の出力電圧に含まれる高調波成分を低減することができる。位相差は(360°/キャリア信号数)で決定される。4段直列多重の電力変換装置の場合、位相差は360°/24=15°に決定される。キャリア信号生成部102は、各キャリア信号セットCS1〜CS4について、6つのキャリア信号を15°の位相差で配置する。
ゲートパルス信号生成部98〜101は、キャリア信号生成部102により生成されたキャリア信号セットCS1〜CS4を用いたPWM制御によって、電力変換部10が出力交流電圧基準値V1u*〜V4u*,V1v*〜V4v*,V1w*〜V4w*に相当する電圧を出力するために、ゲートパルス信号GC11〜GC14を生成する。ゲートパルス信号生成部98〜101は、生成したゲートパルス信号GC11〜GC14を第1変換器25〜28の電力変換回路を構成するスイッチング素子にそれぞれ出力する。
上述したように、電力変換部10は、同じ構成である第1変換器25〜28を第1変圧器21〜24を通じて直列多重接続して、電力系統2に連系している。これによれば、直列接続であるため、第1変換器25〜28の出力電流が共通となる。さらに、すべての第1変換器25〜28は同じ構成であり、かつ、第1変圧器21〜24の変圧比は同じである。このため、第1変換器25〜28の出力電流はほぼ同じ値となる。さらに、第1変換器25〜28の出力電圧に関して、第1変換器25〜28の電圧基準値(Vd*,Vq*)は共通であるため、第1変換器25〜28の出力電圧もほぼ同じ値となる。この結果、第1変換器25〜28の出力有効電力は略同じ値となる。
次に、直流電圧制御部93および個別直流電圧制御部94について、さらに説明する。
(直流電圧制御部93)
平滑コンデンサ29〜32の充放電により直流電圧を制御するためには、平滑コンデンサ29〜32に入出力する直流電流を変化させる。直流電流が変化することは有効電力が変化することになるので、変換器制御部11は有効電流指令値Iq*を変化させる。具体的には、直流電圧制御部93は、直流電圧指令値Vdc*と、第1変換器25〜28の直流電圧Vdcから算出される直流電圧代表値Vdc_sとの偏差を小さくするような有効電流指令値Iq*を求める。
上述したように、第1変換器25〜28の出力電力が略同じ値であるので、第1変換器25〜28の直流電圧も略同じ値となる。したがって、直流電圧制御部93において直流電圧指令値Vdc*と比較される直流電圧代表値Vdc_sは、第1変換器25〜28の直流電圧の合計値でもよいし、直流電圧の平均値でもよい。または、第1変換器25〜28のうちから選択した任意の変換器の直流電圧でもよい。
(個別直流電圧制御部94)
第1変換器25〜28にそれぞれ接続されている平滑コンデンサ29〜32の電圧は略同じ値であるが、変換器の損失や電圧検出器、電流検出器の検出誤差、およびPWMによるスイッチングタイミングのばらつき等の要因により、実際には同じ値ではない可能性がある。したがって、個別直流電圧制御部94は、第1変換器25〜28の各々の直流電圧と直流電圧代表値Vdc_sとの偏差を補正する。
上述したように、直流電圧の制御を行なうには、有効電力を変化させる。有効電力を変化させるには、電圧を変化させる方法と、電流を変化させる方法とがある。本実施の形態では、電力変換部10は直列多重構成であるため、第1変換器25〜28の出力電流を個別に変化させることができない。そのため、第1変換器25〜28の出力電圧を変化させる。つまり、第1変換器25〜29に共通の出力電圧(電圧基準値Vd*,Vq*)に対して、第1変換器ごとに個別に算出された電圧補正値ΔVdc1d〜ΔVdc4d,ΔVdc1q〜ΔVdc4qを加算することによって出力交流電圧基準値V1u*〜V4u*,V1v*〜V4v*,V1w*〜V4w*を調整することにより、出力電圧を変化させる。
以上に説明したように、本実施の形態において、電力変換部10は、直列多重接続された複数の変換器の各々に直流回路(平滑コンデンサ)を設けるとともに、変換器ごとの直流電圧を制御する構成となっている。このような構成とすることにより、第1変換器25〜28の直流電圧端子にそれぞれ接続された平滑コンデンサ29〜32の電圧ばらつきを抑えつつ、所望の交流電流を出力することができる。さらに、第1変換器25〜28の各々の直流電流は自らが接続されている平滑コンデンサにのみ流れるため、他の変換器への横流がない。これにより、直流回路を簡素にすることができ、多重数を変えても直流回路設計への影響がなく、容易に容量を増やすことができる。すなわち、直流回路の小型化および簡素化を図りつつ、装置容量を増加させることができる。
また、本実施の形態によれば、多重化する変換器ごとに直流回路を設けて分離するとともに、各変換器の直流電圧を制御する構成としたことにより、直流回路の配線インダクタンスと各変換器が持つ平滑コンデンサとの間に生じる共振によって系統に流出する高調波を抑制することができる。
さらに、本実施の形態に係る電力変換装置1によれば、直列多重接続される複数の変換器のうちの少なくとも1つが故障した場合において、健全な変換器の動作に悪影響を及ぼすことなく、故障した変換器を電力変換部10から切り離すことができる。これにより、残りの変換器を用いて電力変換装置1の冗長救済を実現できる。
詳細には、直列多重接続される複数の変換器の直流回路を共通化した、従来の電力変換装置においては、当該複数の変換器のうちのいずれかが故障した場合、直流回路を介して故障した変換器へ電流が流れ込むのを防止するために、残りの健全な変換器すべての運転を停止させる。これにより、電力変換装置は運転を継続できなくなってしまう。
そこで、従来では、故障した電力変換装置を救済する冗長救済を行なうために、上記の複数の変換器の直流回路を共通化した電力変換装置を複数個用意し、複数個の電力変換装置を電力系統に対して互いに並列に接続させる構成が採用されていた。この構成では、複数個の電力変換装置のうちの第1の電力変換装置から電力系統に電力を供給している場合に当該第1の電力変換装置の内部の変換器に故障が生じたときには、第2の電力変換装置から電力系統に電力を供給する。すなわち、従来は、電力変換装置単位で冗長救済を行なっているため、いずれかの電力変換装置が故障したときの冗長性を形成できるように複数個の電力変換装置を用意しなければならず、装置の大型化およびコスト上昇が問題となっていた。
これに対して、本実施の形態に係る電力変換装置1では、直列多重接続された複数の変換器の各々に直流回路を設けることにより、当該複数の変換器のうちのいずれかが故障した場合であっても、直流回路を介して故障した変換器へ電流が流れ込むことがない。そのため、以下に説明するように、故障した変換器を電力変換部10から切り離すことで、健全な変換器を駆動させて電力変換装置の運転を継続することができる。すなわち、変換器単位で冗長救済を行なうことができる。よって、いずれかの変換器が故障したときの冗長性を形成するためには電力変換装置の多重数を増やすだけでよいことから、従来の電力変換装置と比較して、よりコンパクトおよび低コストに、電力変換装置の信頼性を確保することができる。
[電力変換装置の冗長救済]
以下、変換器の故障時における電力変換装置1の冗長救済について詳細に説明する。電力変換装置の冗長救済は冗長制御部80によって行なわれる。
図4は、冗長制御部80による電力変換装置の冗長救済を説明する図である。
図4を参照して、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68の各々は、内部に異常の発生を検出するための監視回路を有している。この監視回路は、たとえば変換器を構成するスイッチング素子に過電流または過熱が検出されたとき、変換器の故障を示す故障信号BDを生成し、その生成した故障信号BDを冗長制御部80へ出力する。以下の説明では、第1変換器25内部の監視回路から故障信号BDが出力された場合を想定する。
冗長制御部80は、第1変換器25から故障信号BDを受けると、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68の各々を構成するスイッチング素子(図2のスイッチング素子S11〜S22)がスイッチング動作を停止(すべてオフ)するように、ゲート遮断信号GBを生成する。これにより、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68の各々は、スイッチング素子がオフ状態に固定された状態(停止状態)となる。
冗長制御部80は、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68を停止状態とすると、故障が発生した第1変換器25と、平滑コンデンサ29を介して第1変換器25に接続される第2変換器65とを電力変換部10から切り離す。具体的には、冗長制御部80は、最初に、第1開閉器SW1および第3開閉器SW3をオフするための制御信号SE1,SE3を生成し、生成した制御信号SE1,SE3を第1開閉器SW1および第3開閉器SW3へそれぞれ出力する。これにより、電力変換部10と電力系統2,3との間の電力供給経路が遮断される。次に、冗長制御部80は、故障が生じた第1変換器25の交流電圧端子と第1変圧器21の二次巻線の間に接続される第2開閉器SW2aをオフするための制御信号SE2を生成し、生成した制御信号SE2を第2開閉器SW2aへ出力する。また、冗長制御部80は、第2変換器65の交流電圧端子と第2変圧器61の二次巻線との間に接続される第4開閉器SW4aとをオフするための制御信号SE4を生成し、生成した制御信号SE4を第4開閉器SW4aへ出力する。これにより、故障が生じた第1変換器25と、第1変換器25に接続される平滑コンデンサ29および第2変換器65とが電力変換部10から切り離される。
図5は、第1変換器25、平滑コンデンサ29および第2変換器65の切り離しをさらに説明するための図である。
図5を参照して、第1変圧器21の各相二次巻線の一方端33と、第1変圧器21の各相二次巻線の他方端34との間には、短絡スイッチSH1が設けられている。短絡スイッチSH1は、冗長制御部80からの制御信号に応じて導通/非導通(オン/オフ)されることにより、第1変圧器21の各相二次巻線の一方端33と他方端34との間を電気的に結合または切り離す。
第2変圧器61の各相二次巻線の一方端69と、第2変圧器61の各相二次巻線の他方端70との間には、短絡スイッチSH2が設けられている。短絡スイッチSH2は、冗長制御部80からの制御信号に応じてオン/オフされることにより、第2変圧器61の各相二次巻線の一方端69と他方端70との間を電気的に結合または切り離す。
上述したように、第1変換器25から故障信号BDを受けた場合には、冗長制御部80は、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68をゲート遮断した状態で第2開閉器SW2aおよび第4開閉器SW4aをオフすることにより、第1変換器25、平滑コンデンサ29および第2変換器65を電力変換部10から切り離す。その後、冗長制御部80は、短絡スイッチSH1をオンすることにより、第1変圧器21の各相二次巻線の両端を短絡させる。これにより、故障が生じた第1変換器25を電力系統2に接続するための第1変圧器21は動作不能となる。冗長制御部80はさらに、短絡スイッチSH2をオンすることにより、第2変圧器61の各相二次巻線の両端を短絡させる。これにより、故障が生じた第1変換器25に接続される第2変換器65を電力系統3に接続するための第2変圧器61は動作不能となる。
第1変圧器21および第2変圧器61を動作不能とした後、冗長制御部80は、第1開閉器SW1および第3開閉器SW3を再びオン状態とする。これにより、電力変換装置1は再び電力系統2および電力系統3の間に接続される。上述した故障した変換器(第1変換器25)の切り離し動作によって、電力変換装置1は4段直列多重から3段直列多重に切り替わっている。電力変換装置1は、残りの健全な第1変換器26〜28および第2変換器66〜68を用いて電力変換を継続する。具体的には、冗長制御部80は、変換器制御部11,51に対して第1変換器25の故障信号BDを送信する。変換器制御部11,51は、第1変換器25の故障信号BDを受けると、第1変換器25および第2変換器65を除いた残りの第1変換器26〜28および第2変換器66〜68における電力変換を制御する。
図6は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置における冗長救済の処理手順を説明するフローチャートである。
図6を参照して、まず、ステップS01では、冗長制御部80は、電力変換部10を構成する複数の変換器(第1変換器25〜28および第2変換器65〜68)のいずれかの故障が検出されているか否かを判断する。具体的には、冗長制御部80は、各変換器における故障信号BDの出力の有無を検出する。複数の変換器のいずれにも故障が検出されない場合(ステップS01においてNO)、冗長救済のための処理は終了する。
これに対して、複数の変換器のいずれかに故障が検出された場合(ステップS01においてYES)、冗長制御部80は、故障が検出された変換器と、当該変換器に接続される平滑コンデンサおよび変換器とを電力変換部10から切り離す。
具体的には、ステップS02では、冗長制御部80は、ゲート遮断信号GBを生成して第1変換器25〜28および第2変換器65〜68に対して出力する。これにより、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68はすべて停止状態となる。
次に、冗長制御部80は、ステップS03により、第1開閉器SW1および第3開閉器SW3をオフするための制御信号SE1,SE3を生成し、生成した制御信号SE1,SE3を第1開閉器SW1および第3開閉器SW3へ出力する。これにより、電力変換部10と電力系統2,3との間の電力供給経路が遮断される。
ステップS04では、冗長制御部80は、故障が生じた第1変換器(もしくは、故障した第2変換器に接続される第1変換器)の交流電圧端子と、当該第1変換器に対応する第1変圧器の二次巻線との間に接続される第2開閉器(SW2a〜SW2dのいずれか)をオフするための制御信号SE2を生成し、生成した制御信号SE2を当該第2開閉器へ出力する。また、冗長制御部80は、故障が生じた第2変換器(もしくは、故障した第1変換器に接続される第2変換器)の交流電圧端子と、当該第2変換器に対応する第2変圧器61の二次巻線との間に接続される第4開閉器(SW4a〜SW4dのいずれか)をオフするための制御信号SE4を生成し、生成した制御信号SE4を当該第4開閉器へ出力する。これにより、故障が生じた第1変換器(または第2変換器)と、当該変換器に接続される平滑コンデンサおよび第2変換器(または第1変換器)とが電力変換部10から切り離される。
次に、冗長制御部80は、ステップS05に進み、故障が生じた第1変換器(もしくは、故障した第2変換器に接続される第1変換器)に対応する第1変圧器に設けられた短絡スイッチSH1(図5)をオンするための制御信号を生成する。冗長制御部80はさらに、故障が生じた第2変換器(もしくは故障した第1変換器に接続される第2変換器)に対応する第2変圧器に設けられた短絡スイッチSH2(図5)をオンするための制御信号を生成する。これにより、故障が生じた変換器およびこれに接続される変換器に対応する第1変圧器および第2変圧器は動作不能となる。
ステップS06では、変換器制御部11,51は、電力変換装置1の多重数が切替えられたことに対応して、残りの健全な第1変換器および第2変換器の制御を変更する。具体的には、変換器制御部11,51において、キャリア信号生成部102は、切り替え後の電力変換装置1の多重数に応じて、キャリア信号の位相差を変更する。たとえば、電力変換装置1が4段直列多重から3段直列多重に切替えられた場合、使用するキャリア信号数は24個から18個に変更される。したがって、キャリア信号生成部102は、位相差を15°から20°に変更させる。これにより、多重数の切り替え後においても、多重数の切り替え前と同等に、健全な第1変換器および第2変換器の出力電圧に含まれる高調波成分を低減することができる。
ステップS07では、変換器制御部11,51は、変更後の多重数に応じて第1変圧器21〜24および第2変圧器61〜64における変圧比を変更する。本実施の形態において、第1変圧器21〜24の各々の電力系統2側の一次巻線は、各相直列接続されて星型結線され、第1変換器25〜28の各々の交流電圧を各相直列合成した電圧が電力系統2に出力される。具体的には、第1変圧器21〜24の各々は、一次巻線から段階的に引き出された接続点(タップ)のうちのいずれか1つを選択することにより、各第1変圧器の巻線比、すなわち変圧比を変更可能に構成される。これにより、対応する第1変換器から受けた電力がその変更された変圧比に応じた電圧に変換される。本実施の形態では、多重数に応じて第1変圧器21〜24の各々のタップを切り替えることにより、電力変換装置1は多重数の切り替え後においても、多重数の切り替え前と同等の電力を融通することができる。
ステップS08では、冗長制御部80は、第1開閉器SW1および第3開閉器SW3をオンするための制御信号SE1,SE3を生成し、生成した制御信号SE1,SE3を第1開閉器SW1および第3開閉器SW3へそれぞれ出力する。第1開閉器SW1および第3開閉器SW3が再びオン状態となることにより、電力変換装置1は再び電力系統2および電力系統3の間に接続される。
ステップS09では、変換器制御部11,51は、残りの健全な第1変換器および第2変換器における電力変換をそれぞれ制御する。具体的には、直流電圧制御部93(図3)は、健全な第1変換器の直流電圧Vdcから直流電圧代表値Vdc_sを算出する。直流電圧代表値Vdc_sは、健全な第1変換器の直流電圧の合計値でもよいし、直流電圧の平均値でもよい。または、健全な第1変換器のうちから選択した任意の変換器の直流電圧でもよい。直流電圧制御部93は、直流電圧指令値Vdc*と、健全な第1変換器の直流電圧Vdcから算出される直流電圧代表値Vdc_sとの偏差を小さくするような有効電流指令値Iq*を求める。個別直流電圧制御部94(図3)は、健全な第1変換器の各々の直流電圧と直流電圧代表値Vdc_sとの偏差を補正する。個別直流電圧制御部94は、健全な第1変換器に共通の出力電圧(電圧基準値Vd*,Vq*)に対して、第1変換器ごとに個別に算出された電圧補正値ΔVdcd,ΔVdcqを加算することによって出力交流電圧基準値を調整する。これにより、変換器の故障が生じた場合であっても、健全な変換器を駆動させて電力変換装置1の運転を継続することができる。
なお、上述の実施の形態では、ステップS06において、変更後の多重数に応じて複数のキャリア信号の位相差を変更するとともに、ステップS07において、変更後の多重数に応じて第1変圧器21〜24および第2変圧器61〜64における変圧比を変更する構成を示したが、ステップS06およびステップS07のいずれか一方のみを実行する構成としてもよい。
[電力変換装置の冗長救済からの復旧]
上述した冗長救済の実行中、故障した変換器の修理が並行して行なわれる。そして、故障した変換器の修理が完了すると、電力変換装置1においては、冗長救済から元の通常動作に復旧するための処理が行なわれる。以下、電力変換装置1の冗長救済からの復旧について詳細に説明する。冗長救済からの復旧は冗長制御部80によって行なわれる。
図7は、冗長制御部80による電力変換装置の冗長救済からの復旧処理を説明する図である。図7では、図4および図5で説明したように、第1変換器25に故障が発生したことにより、第1変換器25、平滑コンデンサ29および第2変換器65が電力変換部10から切り離されている場合を想定している。したがって、図7の例では、第2開閉器SW2aおよび第4開閉器SW4aがオフ状態とされている。さらに、短絡スイッチSH1,SH2がオン状態とされることにより、第1変圧器21および第2変圧器61が動作不能となっている。この結果、電力変換装置1は、4段直列多重から3段直列多重に切り替えられており、残りの健全な第1変換器26〜28および第2変換器66〜68を用いて電力変換を継続している。
図7を参照して、冗長制御部80は、第1変換器25の修理が完了すると、最初に、第1変換器25に接続される平滑コンデンサ29の直流電圧が、残りの平滑コンデンサ30〜32の直流電圧と等しくなるように、平滑コンデンサ29の充電動作を実行する。これにより、第1変換器25、平滑コンデンサ29および第2変換器65を電力変換部10に再び接続したときに、平滑コンデンサ29〜32の直流電圧にばらつきが発生することを抑制する。
具体的には、電力変換部10には、平滑コンデンサ29〜32の直流電圧を制御するための電源装置が設けられている。電源装置は、たとえば、図7に示されるように、電圧変換器110および交流電源115を含んで構成される。
なお、平滑コンデンサ29〜32は、相互に接続されておらず、互いに独立しているため、電源装置は平滑コンデンサごとに設けられている。電源装置は、第1変換器25および第2変換器65のいずれかの内部に備える構成としてもよい。
電圧変換器110は、たとえば、全波整流型のダイオード整流器として構成される。ダイオード整流器は、6つのダイオードD1〜D6をブリッジ接続したブリッジ整流器である。ダイオード整流器は、交流電源115から受けた三相交流電圧を整流して平滑コンデンサ29へ出力する。
平滑コンデンサ29の直流電圧が、残りの平滑コンデンサ30〜32の直流電圧と等しくなることによって平滑コンデンサ29の充電動作が終了すると、冗長制御部80は、残りの健全な第1変換器26〜28および第2変換器66〜68の各々を構成するスイッチング素子(図2のスイッチング素子S11〜S22)がスイッチング動作を停止(すべてオフ)するように、ゲート遮断信号GBを生成する。これにより、第1変換器26〜28および第2変換器66〜68の各々は、スイッチング素子がオフ状態に固定された状態(停止状態)となる。
冗長制御部80は、第1変換器26〜28および第2変換器66〜68を停止状態とすると、修理が完了した第1変換器25と、平滑コンデンサ29を介して第1変換器25に接続される第2変換器65とを電力変換部10に接続する。
具体的には、冗長制御部80は、最初に、第1開閉器SW1および第3開閉器SW3をオフするための制御信号SE1,SE3を生成し、生成した制御信号SE1,SE3を第1開閉器SW1および第3開閉器SW3へそれぞれ出力する。これにより、電力変換部10と電力系統2,3との間の電力供給経路が遮断される。次に、冗長制御部80は、短絡スイッチSH1をオフすることにより、第1変圧器21の各相二次巻線の両端を電気的に切り離す。これにより、修理が完了した第1変換器25を電力系統2に接続するための第1変圧器21は動作可能となる。冗長制御部80はさらに、短絡スイッチSH2をオフすることにより、第2変圧器61の各相二次巻線の両端を電気的に切り離す。これにより、修理が完了した第1変換器25に接続される第2変換器65を電力系統3に接続するための第2変圧器61は動作可能となる。
次に、冗長制御部80は、修理が完了した第1変換器25の交流電圧端子と第1変圧器21の二次巻線の間に接続される第2開閉器SW2aをオンするための制御信号SE2を生成し、生成した制御信号SE2を第2開閉器SW2aへ出力する。また、冗長制御部80は、第2変換器65の交流電圧端子と第2変圧器61の二次巻線との間に接続される第4開閉器SW4aをオンするための制御信号SE4を生成し、生成した制御信号SE4を第4開閉器SW4aへ出力する。これにより、修理が完了した第1変換器25と、第1変換器25に接続される平滑コンデンサ29および第2変換器65とが電力変換部10に再び接続される。
第1変換器25、平滑コンデンサ29および第2変換器65を電力変換部10に接続した後、冗長制御部80は、第1開閉器SW1および第3開閉器SW3を再びオン状態とする。これにより、電力変換装置1は再び電力系統2および電力系統3の間に接続される。
上述した修理が完了した変換器(第1変換器25)の接続動作によって、電力変換装置1は3段直列多重から元の4段直列多重に戻っている。電力変換装置1は、健全な第1変換器25〜28および第2変換器65〜68を用いて電力変換を実行する。具体的には、冗長制御部80は、変換器制御部11,51に対して第1変換器25の故障信号BDを送信を停止する。変換器制御部11,51は、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68における電力変換を制御する。
図8は、本発明の実施の形態に係る電力変換装置における冗長救済からの復旧の処理手順を説明するフローチャートである。図8に示すフローチャートは、図6に示す冗長救済のための処理が実行された後、冗長制御部80および変換器制御部11,51によって行なわれる。
図8を参照して、まず、ステップS11では、冗長制御部80は、故障が検出された変換器の修理が完了したか否かを判断する。具体的には、故障が検出された変換器は修理が完了した後に初期化されるため、当該変換器からの故障信号BDの出力が停止する。冗長制御部80は、故障が検出された変換器からの故障信号BDの出力の有無に基づいて、当該変換器の修理が完了したか否かを判断する。故障が検出された変換器から故障信号BDが継続して出力されている場合(ステップS11においてNO)、冗長制御部80は、当該変換器の修理が完了していないと判断し、冗長救済からの復旧のための処理を終了する。
これに対して、修理が完了した変換器が初期化されたことに応じて、当該変換器からの故障信号BDの出力が停止した場合(ステップS11においてYES)、冗長制御部80は、修理が完了した変換器と、当該変換器に接続される平滑コンデンサおよび変換器とを電力変換部10に再び接続する。
具体的には、ステップS12では、冗長制御部80は、故障が検出された変換器に接続される平滑コンデンサの直流電圧が、残りの平滑コンデンサの直流電圧と等しくなるように、電源装置(図7)を用いて平滑コンデンサの充電動作を実行する。
次に、冗長制御部80は、ステップS13により、ゲート遮断信号GBを生成して、健全な第1変換器および第2変換器に対して出力する。これにより、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68はすべて停止状態となる。
ステップS14では、冗長制御部80は、第1開閉器SW1および第3開閉器SW3をオフするための制御信号SE1,SE3を生成し、生成した制御信号SE1,SE3を第1開閉器SW1および第3開閉器SW3へ出力する。これにより、電力変換部10と電力系統2,3との間の電力供給経路が遮断される。
次に、冗長制御部80は、ステップS15により、修理が完了した第1変換器(もしくは、故障した第2変換器に接続される第1変換器)に対応する第1変圧器に設けられた短絡スイッチSH1(図7)をオフするための制御信号を生成する。冗長制御部80はさらに、故障が生じた第2変換器(もしくは故障した第1変換器に接続される第2変換器)に対応する第2変圧器に設けられた短絡スイッチSH2(図7)をオフするための制御信号を生成する。これにより、故障が生じた変換器およびこれに接続される変換器に対応する第1変圧器および第2変圧器は動作可能となる。
ステップS16では、変換器制御部11,51は、電力変換装置1の多重数が元の値に戻されたことに対応して、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68の制御を変更する。具体的には、変換器制御部11,51において、キャリア信号生成部102は、復旧後の電力変換装置1の多重数に応じて、キャリア信号の位相差を変更する。たとえば、電力変換装置1が3段直列多重から4段直列多重に戻された場合、使用するキャリア信号数は18個から24個に変更される。したがって、キャリア信号生成部102は、位相差を20°から15°に変更させる。これにより、多重数の復旧後においても、多重数の復旧前と同等に、健全な第1変換器および第2変換器の出力電圧に含まれる高調波成分を低減することができる。
ステップS17では、変換器制御部11,51は、変更後の多重数に応じて第1変圧器21〜24および第2変圧器61〜64における変圧比を変更する。上述のように、本実施の形態では、多重数に応じて第1変圧器21〜24および第2変圧器61〜64の各々のタップを切り替えることにより、電力変換装置1は多重数の切り替え後においても、多重数の切り替え前と同等の電力を融通することができる。
ステップS18では、冗長制御部80は、修理が完了した第1変換器(もしくは、修理が完了した第2変換器に接続される第1変換器)の交流電圧端子と、当該第1変換器に対応する第1変圧器の二次巻線との間に接続される第2開閉器(SW2a〜SW2dのいずれか)をオンするための制御信号SE2を生成し、生成した制御信号SE2を当該第2開閉器へ出力する。また、冗長制御部80は、修理が完了した第2変換器(もしくは、修理が完了した第1変換器に接続される第2変換器)の交流電圧端子と、当該第2変換器に対応する第2変圧器61の二次巻線との間に接続される第4開閉器(SW4a〜SW4dのいずれか)をオンするための制御信号SE4を生成し、生成した制御信号SE4を当該第4開閉器へ出力する。これにより、修理が完了した第1変換器(または第2変換器)と、当該変換器に接続される平滑コンデンサおよび第2変換器(または第1変換器)とが電力変換部10に再び接続される。
ステップS19では、冗長制御部80は、第1開閉器SW1および第3開閉器SW3をオンするための制御信号SE1,SE3を生成し、生成した制御信号SE1,SE3を第1開閉器SW1および第3開閉器SW3へそれぞれ出力する。第1開閉器SW1および第3開閉器SW3が再びオン状態となることにより、電力変換装置1は再び電力系統2および電力系統3の間に接続される。
ステップS20では、変換器制御部11,51は、第1変換器25〜28および第2変換器65〜68における電力変換をそれぞれ制御する。具体的には、直流電圧制御部93(図3)は、第1変換器25〜28の直流電圧Vdcから直流電圧代表値Vdc_sを算出すると、直流電圧指令値Vdc*と直流電圧代表値Vdc_sとの偏差を小さくするような有効電流指令値Iq*を求める。個別直流電圧制御部94(図3)は、第1変換器25〜28の各々の直流電圧と直流電圧代表値Vdc_sとの偏差を補正する。個別直流電圧制御部94は、第1変換器25〜28に共通の出力電圧(電圧基準値Vd*,Vq*)に対して、第1変換器ごとに個別に算出された電圧補正値ΔVdcd,ΔVdcqを加算することによって出力交流電圧基準値を調整する。これにより、修理が完了した変換器を復帰させた場合には、全ての変換器を駆動させて電力変換装置1の運転を継続することができる。
なお、上述の実施の形態では、ステップS16において、変更後の多重数に応じて複数のキャリア信号の位相差を変更するとともに、ステップS17において、変更後の多重数に応じて第1変圧器21〜24および第2変圧器61〜64における変圧比を変更する構成を示したが、ステップS16およびステップS17のいずれか一方のみを実行する構成としてもよい。
この発明の実施の形態によれば、電力変換部は、直列多重接続された複数の変換器の各々に直流回路を設けるとともに、変換器ごとの直流電圧を制御する。このような構成とすることにより、直列多重接続される複数の変換器のうちの少なくとも1つが故障した場合においても、健全な変換器の動作に悪影響を及ぼすことなく、故障した変換器を電力変換部から切り離すことができる。これにより、残りの変換器を用いて電力変換装置の冗長救済を実現できる。
さらに、故障した変換器の修理が完了した場合には、健全な変換器の動作に悪影響を及ぼすことなく、修理が完了した変換器を電力変換部に再び接続することができる。これにより、電力変換装置の運転状態を変換器の故障発生前に復旧させることができる。
このように、本実施の形態によれば、変換器単位で冗長救済を行なうため、いずれかの変換器が故障したときの冗長性を形成するためには電力変換装置の多重数を増やすだけでよいことから、従来の電力変換装置と比較して、よりコンパクトおよび低コストに、電力変換装置の信頼性を確保することができる。
[変更例]
なお、上述した実施の形態では、複数の変換器の交流側が変圧器で多重接続された電力換装置として、BTBシステムについて例示したが、この構成に限られることはない。
図9は、この発明の実施の形態の変更例に係る電力変換装置1Aの全体構成図である。図9を参照して、本変更例に係る電力変換部10Aの構成は、図1の電力変換部10において、第1変換器25〜28の直流電圧端子に、第2変換器65〜68の直流電圧端子に代えて、電源または負荷を接続する構成としたものである。本変更例に係る電力変換装置1Aは、たとえば自励式SVC(静止形無効電力補償装置)に適用される。なお、電力変換装置1Aの構成は、電力変換部10Aの構成および冗長制御部80Aの制御構造を除いて、図1と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
図10は、本発明の実施の形態の変更例に係る電力変換装置1Aにおける冗長救済の処理手順を説明するフローチャートである。
図10を参照して、まず、ステップS21では、冗長制御部80Aは、電力変換部10を構成する複数の第1変換器25〜28のいずれかの故障が検出されているか否かを判断する。具体的には、冗長制御部80Aは、各第1変換器25〜28における故障信号BDの出力の有無を検出する。第1変換器25〜28のいずれにも故障が検出されない場合(ステップS21においてNO)、冗長救済のための処理は終了する。
これに対して、第1変換器25〜28のいずれかに故障が検出された場合(ステップS21においてYES)、冗長制御部80Aは、故障が検出された第1変換器を電力変換部10から切り離す。
具体的には、最初に、冗長制御部80Aは、ステップS22により、ゲート遮断信号GBを生成して第1変換器25〜28に対して出力する。これにより、第1変換器25〜28はすべて停止状態となる。
次に、冗長制御部80Aは、ステップS23により、第1開閉器SW1をオフするための制御信号SE1を生成し、生成した制御信号SE1を第1開閉器SW1へ出力する。これにより、電力変換部10と電力系統2との間の電力供給経路が遮断される。
ステップS24では、冗長制御部80Aは、故障が生じた第1変換器の交流電圧端子と、当該第1変換器に対応する第1変圧器の二次巻線との間に接続される第2開閉器(SW2a〜SW2dのいずれか)をオフするための制御信号SE2を生成し、生成した制御信号SE2を当該第2開閉器へ出力する。これにより、故障が生じた第1変換器が電力変換部10から切り離される。
次に、冗長制御部80Aは、ステップS25に進み、故障が生じた第1変換器に対応する第1変圧器に設けられた短絡スイッチSH1(図5)をオンするための制御信号を生成する。これにより、故障が生じた第1変換器に接続される第1変圧器は動作不能となる。
ステップS26では、変換器制御部11は、電力変換装置1Aの多重数が切替えられたことに対応して、残りの健全な第1変換器の制御を変更する。具体的には、変換器制御部11において、キャリア信号生成部102は、切り替え後の電力変換装置1Aの多重数に応じて、キャリア信号の位相差を変更する。
ステップS27では、変換器制御部11は、変更後の多重数に応じて第1変圧器21〜24における変圧比を変更する。変換器制御部11は、多重数に応じて第1変圧器21〜24の各々のタップを切り替えることにより、電力変換装置1は多重数の切り替え後においても、多重数の切り替え前と同等の電力を融通することができる。
ステップS28では、冗長制御部80Aは、第1開閉器SW1をオンするための制御信号SE1を生成し、生成した制御信号SE1を第1開閉器SW1へ出力する。第1開閉器SW1が再びオン状態となることにより、電力変換装置1Aは再び電力系統2に連系される。
ステップS29では、変換器制御部11は、残りの健全な第1変換器における電力変換をそれぞれ制御する。これにより、変換器の故障が生じた場合であっても、健全な変換器を駆動させて電力変換装置1Aの運転を継続することができる。
図11は、本発明の実施の形態の変更例に係る電力変換装置1Aにおける冗長救済からの復旧の処理手順を説明するフローチャートである。図11に示すフローチャートは、図10に示す冗長救済のための処理が実行された後、冗長制御部80Aおよび変換器制御部11によって行なわれる。
図11を参照して、まず、ステップS31では、冗長制御部80Aは、故障が検出された第1変換器の修理が完了したか否かを判断する。具体的には、冗長制御部80Aは、故障が検出された第1変換器からの故障信号BDの出力の有無に基づいて、当該第1変換器の修理が完了したか否かを判断する。故障が検出された第1変換器から故障信号BDが継続して出力されている場合(ステップS31においてNO)、冗長制御部80Aは、当該変換器の修理が完了していないと判断し、冗長救済からの復旧のための処理を終了する。
これに対して、修理が完了した第1変換器が初期化されたことに応じて、当該第1変換器からの故障信号BDの出力が停止した場合(ステップS31においてYES)、冗長制御部80Aは、修理が完了した第1変換器と、当該第1変換器に接続される平滑コンデンサとを電力変換部10Aに再び接続する。
具体的には、ステップS32では、冗長制御部80Aは、故障が検出された第1変換器に接続される平滑コンデンサの直流電圧が、残りの平滑コンデンサの直流電圧と等しくなるように、電源装置(図7)を用いて平滑コンデンサの充電動作を実行する。
次に、冗長制御部80Aは、ステップS33により、ゲート遮断信号GBを生成して、健全な第1変換器に対して出力する。これにより、第1変換器25〜28はすべて停止状態となる。
ステップS34では、冗長制御部80Aは、第1開閉器SW1をオフするための制御信号SE1を生成し、生成した制御信号SE1を第1開閉器SW1へ出力する。これにより、電力変換部10と電力系統2との間の電力供給経路が遮断される。
次に、冗長制御部80Aは、ステップS35により、修理が完了した第1変換器に対応する第1変圧器に設けられた短絡スイッチSH1(図7)をオフするための制御信号を生成する。これにより、故障が生じた第1変換器に対応する第1変圧器は動作可能となる。
ステップS36では、変換器制御部11は、電力変換装置1Aの多重数が元の値に戻されたことに対応して、第1変換器25〜28の制御を変更する。具体的には、変換器制御部11において、キャリア信号生成部102は、復旧後の電力変換装置1Aの多重数に応じて、キャリア信号の位相差を変更する。これにより、多重数の復旧後においても、多重数の復旧前と同等に、健全な第1変換器の出力電圧に含まれる高調波成分を低減することができる。
ステップS37では、変換器制御部11は、変更後の多重数に応じて第1変圧器21〜24における変圧比を変更する。上述のように、本実施の形態では、多重数に応じて第1変圧器21〜24の各々のタップを切り替えることにより、電力変換装置1は多重数の切り替え後においても、多重数の切り替え前と同等の電力を融通することができる。
ステップS38では、冗長制御部80Aは、修理が完了した第1変換器の交流電圧端子と、当該第1変換器に対応する第1変圧器の二次巻線との間に接続される第2開閉器(SW2a〜SW2dのいずれか)をオンするための制御信号SE2を生成し、生成した制御信号SE2を当該第2開閉器へ出力する。これにより、修理が完了した第1変換器および当該第1変換器に接続される平滑コンデンサが電力変換部10Aに再び接続される。
ステップS39では、冗長制御部80Aは、第1開閉器SW1をオンするための制御信号SE1を生成し、生成した制御信号SE1を第1開閉器SW1へ出力する。第1開閉器SW1が再びオン状態となることにより、電力変換装置1Aは再び電力系統2に接続される。
ステップS40では、変換器制御部11は、第1変換器25〜28における電力変換を制御する。これにより、修理が完了した第1変換器を復帰させた場合には、全ての第1変換器を駆動させて電力変換装置1Aの運転を継続することができる。
なお、上述の実施の形態では、ステップS36において、変更後の多重数に応じて複数のキャリア信号の位相差を変更するとともに、ステップS37において、変更後の多重数に応じて第1変圧器21〜24における変圧比を変更する構成を示したが、ステップS36およびステップS37のいずれか一方のみを実行する構成としてもよい。
このように、本変更例に係る電力変換装置1Aにおいても、多重化する複数の変換器のそれぞれ直流回路を設け、各変換器の直流電圧を制御する構成となっていることから、少なくとも1つの変換器が故障した場合においても、健全な変換器の動作に悪影響を及ぼすことなく、故障した変換器を電力変換部から切り離すことができる。これにより、残りの変換器を用いて電力変換装置の冗長救済を実現できる。
さらに、故障した変換器の修理が完了した場合には、健全な変換器の動作に悪影響を及ぼすことなく、修理が完了した変換器を電力変換部に再び接続することができる。これにより、電力変換装置の運転状態を変換器の故障発生前に復旧させることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。