図1、図2、図3は、本発明の一実施例である空調機ネットワークとコンバータの役割を示すための図である。
図1は空調機ネットワークシステムを建屋に配置した例を表し、建屋内1F天井に空調室内機1が5機、建屋内2Fに空調室内機1が6機、各々の室内機には手元リモコン3が接続している。そしてこれらの空調室内機に冷媒を送る複数室内機を接続できるマルチ型の空調室外機2が屋外に3機設置されている。
また、2Fには、他に2Fの6台の室内機全てをON/OFF出来るマルチリモコン4が設置されており、1Fには、更に、建屋内の全て空調機の状態監視や自動運転を行なえる空調コントローラ5が接続している。なお、図には示していないが、建屋3F以上にも同様に空調機器が設置されているものとする。
図2は、図1では壁内に埋め込まれて見えない冷媒配管や通信網と設置機器との接続状態を示す空調機ネットワークの例である。室外機と室内機は冷媒配管6によって冷媒を循環し、また、室内機と室外機は、ユーザの設定情報や圧縮機の状態、センサの測定値などの情報を、通信網7を使って送受信している。ここで、通信網7は例えばRS485やRS422に代表される、送信と受信の信号ラインを共有する半二重方式の通信網である。空調機の通信は、本来、冷媒配管で結ばれた室外機(冷媒系統)と室内機が、互いにユーザの設定情報や動作状態情報をやりとりするために使用するものである。
ただし、送信と受信の信号ラインを共有する通信網であることから、配線順序や分岐点の制約なしに近隣の機器同士を繋いでゆき、図2のような建屋の空調関連機器全てを接続した空調機ネットワークを形成して、マルチリモコン4や空調コントローラ5のようなフロア全体や建屋全体の集中監視制御を実施する大規模な空調機ネットワークシステムに拡張することが容易である。
なお、図2の半二重通信網7で接続される機器は、各々送受信相手を区別するためのアドレスを、各々の機器に接続のディップスイッチにて、他の機器と重ならないID番号として設定している。例えば、室外機の場合一つの半二重通信網に最大128台接続可能であり、1〜128までの数値を他の室外機と重複しないよう各々ID番号として設定し、また、一つの室外機(冷媒系統)に最大256台の室内機が接続可能であり、同じ室外機に接続している室内機同士で番号が重ならないように1〜256の値を設定し、冷媒供給元の室外機のID番号と合わせてディップスイッチで設定する。また、室内・室外機以外の集中管理機器は256以上の数値を使用する。
このように、ID番号は単純な数値番号だが、本実施例では、以後の説明の便宜上、1Fの冷媒系統について、5台の室内機アドレスはi1〜i5、室外機はo1、2Fの2セットの冷媒系統について、室内機アドレスi6〜i8と室外機アドレスo2、室内機アドレスi9〜i11と室外機アドレスo3と表記し、また、1Fの空調コントローラのアドレスはc1、2Fの集中リモコンアドレスはc2と表記することにする。
図3は、本発明の空調機ネットワークコンバータの役割と半二重・全二重のネットワーク混在の例を示す空調機ネットワークの構成例である。元々図2のように半二重通信網7で接続していた空調機器のうち、2Fのo2室外機とi6、i7、i8室内機の冷媒系統の空調セットと2Fの6台の空調機をON/OFFできる集中リモコンを、例えば、空調網にEthernet(登録商標)通信ラインと全二重IP通信方式を使用する新型機種にリニューアルした様子を示す。
リニューアルした機器はIP通信を実施するため、室外機と室内機はIPアドレス(ここでは以降の説明のため192.168.10.11〜192.168.10.14とする)を使用して室外機・室内機通信を行なう。
このように、空調機の通信方式がバージョンアップにより変更した場合、建屋全体の空調機を一度にリニューアルしない限り、一時的に新旧方式のネットワークが入り混じることになる。そして、建屋全体で新型機器が少数の間は、集中リモコンや空調コントローラを全て新型にリニューアルするのではなく、旧新の集中リモコンや空調コントローラを新旧方式のネットワークが入り混じった状態で、今まで通り階全体または建屋全体を集中管理したい場合がある。
本発明の空調機ネットワークコンバータ10は、この旧型の半二重通信網と新型の全二重IP通信網とを共存させ、また旧型の機器を使った新型機器の集中管理、新型の機器を使った旧型の機器の集中管理双方を可能にする装置である。
図4は、空調機ネットワークコンバータ10の機能構成図である。空調機ネットワークコンバータ10は、半二重通信網7の通信メッセージを送受信し処理する半二重通信部21、全二重IP/Ethernet通信網8の通信パケットを送受信し処理する全二重通信部22、空調機ネットワークコンバータのアドレスや通信制御情報を設定するためのコンバータ設定部23、半二重通信網に傍受機器が接続しているか否かを常時監視する傍受機器認識部24、半二重通信網7に接続する全機器に全二重通信で使用するIPアドレスを仮想的に割り振る仮アドレス設定部25、全二重IP/Ethernet通信網8に接続する全機器に半二重通信でアドレスとして使用するID番号を仮想的に割り振る仮ID設定部26、半二重通信のメッセージを全二重IP/Ethernet通信のパケットに変換する半二重全二重変換部27、全二重IP/Ethernet通信のパケットを半二重通信のメッセージに変換する全二重半二重変換部28、半二重通信網に傍受機器が接続している場合に転送する通信パケットを選択する転送選択部29、及び、これらの各機能を連動させコンバータとしての一連の動作を制御する制御部20からなる。
なお、仮アドレス設定部25には半二重通信網7に接続する全機器のIDと設定した仮IPアドレスとの対比一覧である仮IPアドレステーブル(図6参照)が構築され、仮ID設定部26には、全二重IP/Ethernet通信網8に接続する全機器のIPアドレスと設定した仮IDとの対比一覧である仮IDテーブル(図7参照)が構築される。転送選択部には、傍受機器への転送対象となるメッセージが分類コード及びオペレーションコードの一覧で格納されている。
空調機ネットワークコンバータ10の各機能の説明の前に、半二重通信網7と全二重IP通信網8の機器の通信プロトコルの違いについて述べる。
半二重通信網7の特徴として、送信と受信の信号ラインを共有するが故に、当該機器以外の機器間で送受信している情報を傍受可能なことが挙げられる。
具体的には、図2のマルチリモコン4や空調コントローラ5のような集中管理用の機器は、室外機・室内機間の通信情報を通信ラインから拾って傍受することにより、空調機の状態を取得している。
図5は、半二重通信網7の通信で使用されるメッセージパケットと全二重IP/Ethernet通信で使用される通信パケットのフォーマットである。半二重通信網7で送受信されるメッセージパケットは、送信元系統ID200、送信元機器ID201、送信先系統ID202、送信先機器ID203、該パケットがどの機器間で使用されるメッセージなのかの種別を示す分類コード204と分類コード毎に定義されるメッセージの内容を示すオペレーションコード205、情報データ長206と情報データ207、最後にチェックコードであるBCC208が付加されている形態である。
半二重通信網7では、送信先/送信元の機器を指定する空調通信網のアドレスとして、系統IDと機器IDのセットを使用している。具体的には、送信先/送信元が室内機の場合、系統ID200,202には、該室内機に冷媒を提供している室外機のID(図2のシステムならo1〜o3のいずれかとなる)を、機器ID201、203には室内機のID(図2のシステムならi1〜i11のいずれかとなる)を入れる。
送信先/送信元が室外機の場合、系統ID欄に室外機ID、機器ID欄は0固定である。送信先/送信元が集中制御機器の場合、系統ID欄は「202」固定で機器ID欄に管理機器のID番号(図2の例ではc1かc2)が入る。また、送信先の系統IDと機器IDが「255」の場合は一斉同報(ブロードキャスト)を意味する。半二重通信網7に接続する全ての機器は、上記存在証明メッセージパケットを10秒毎にブロードキャスト送信している。
分類コードは、メッセージの送信元と送信先の機器の種別を示すコードである。本システムでは、例えば室外機から室内機へのメッセージなら「23」、室内機から室外機へのメッセージなら「32」、集中リモコンなど集中管理機器から室内機へのメッセージなら「19」、室内機から集中管理機器へのメッセージなら「91」などとなっている。
オペレーションコードは、各分類コード毎に定義され、具体的な指令や通知の内容を示すコードである。分類コードとオペレーションコードの組み合わせにより、情報データ長と情報データの内容が定まる。
例えば、室内機から室外機へのメッセージ(分類コードは32)で、オペレーションコード「01」はON/OFF設定変更の指令で情報データはONまたはOFFの指令内容が入っており、オペレーションコード「02」なら温度設定変更指令で情報データには設定すべき温度が入っている、などとなっている。
また、オペレーションコード「00」は、各機器が、ネットワーク接続していることを示す存在証明メッセージである。本例では、室外機の存在証明メッセージ(分類コード「23」、オペレーションコード「00」)は、情報データに室外機内の全センサーの現在値が格納されており、室内機の存在証明メッセージ(分類コード「32」、オペレーションコード「00」)は、情報データに現在のユーザ設定値が全て格納されたメッセージとなっている。
半二重通信網7に接続する室内機と室外機は、通信ライン上に流れるメッセージパケットを全て受信して取り込み、分類コードと送信元系統ID・機器ID、送信先系統ID・機器IDの整合性をチェックして、送信先系統ID・機器IDが自分のアドレスでは無いパケットは捨てる。メッセージが自分宛のパケットだった場合のみ6ms以内にack返信し、オペレーションコードに応じて何らかの処理を実施する。なお、送信元の機器は、送信後6ms以内にackが受信出来無ければ、該メッセージパケットを再送することになる。
一方で、前述したように、半二重通信網7に接続する集中リモコン4や空調コントローラ5は、通信ライン上に流れるメッセージパケットを全て受信して取り込み、自分宛のメッセージパケットだった場合にackを返信して処理を実施することは室内機・室外機と同様だが、自分宛でないパケットでも、捨てずに内容に応じた処理を実施する場合がある。
例えば、集中リモコン4は、2Fの6台の室内機の運転ON/OFF状態を、常時LEDの点灯ON/OFFにてユーザに示しているが、その運転ON/OFF状態の情報は、集中リモコン4は2Fのi6〜i11室内機からo2またはo3室外機に宛てたメッセージから読み取ったもの、すなわち、自分宛ではないメッセージパケットを傍受して得た情報である。1Fの空調コントローラ5は建屋内全ての空調機の消費電力を表示しているが、これも同様に建屋内全ての空調室外機がセンサ情報を室内機に送るメッセージを傍受して得た値である。
このように、半二重通信網7の室内機・室外機以外の機器は、通常室内機・室外機間で送受信されている情報については、特に機器に対して取得のための通信を行なわずに傍受により取得する。この傍受の仕組みにより、室内機と室外機は互いの通信に加えて、他の機器に重複する情報を送る負担が無くなり、また、一般的に通信速度の遅い半二重通信ネットワーク全体としての通信負荷も軽減している。本明細書では、これらの傍受を行なう集中リモコン4や空調コントローラ5のような機器を傍受機器と称する。
一方、高速で十分に通信負荷に余裕のある全二重IP/Ethernet通信網8では、傍受等の仕組みは必要なく、また汎用プロトコル規格を採用した全二重IP/Ethernet通信網8の各機器は、アドレスが自分宛ではないデータパケットは基本的に受信することが出来ないため、傍受の仕組みを設けることの方が困難である。そのため、集中リモコン4や空調コントローラ5は、必要に応じて各室内機・室外機に情報を収集する通信を実施する。
全二重IP/Ethernet通信網に接続する新型空調機は、IPプロトコルを使用するため、通信パケットは、図5に示すようにIPヘッダ部209とデータ部210の構成になる。半二重通信の送信元・送信先IDの代わりに、設置時に設定されたIPアドレスを使ってIPヘッダを構成し、データ部には上記半二重通信のメッセージの204〜208欄がそのまま入るパケットフォーマットである。また、存在証明のためのオペレーションコード「00」のデータパケットを、10秒毎に送信する処理も同じである。ただし、上述したように半二重通信で傍受により取得していた情報は別途取得する。
従って、全二重通信パケットと半二重通信パケットの変換は、送信元・送信先IDとIPアドレスを変換しヘッダ部分を作り直す処理となる。
なお、全二重通信網8は、本例ではIPプロトコルとEthernet通信ラインとしているが、これ限定するものではなく、通常、他機器宛の通信情報を宛先ではない機器が受信不可な形態の通信であれば何でも構わない。
以下、図6〜8を使用し空調機ネットワークコンバータ10の各機能を説明する。半二重通信部21は、半二重通信網7に接続する空調機や集中制御機器のメッセージを受信解析し、また、コンバータ内で作成された転送メッセージを送信する処理を実施する。同様に全二重通信部22は、全二重IP/Ethernet通信網8で結ばれた全ての機器の通信パケットを受信し解析すると共にコンバータ内で作成された通信データを送信する処理を実施する。双方の通信で使用するネットワーク設定情報や、コンバータ自身のID番号、IPアドレス等は、コンバータ設定部23によりユーザが入力指定する。例えば、図3の例の空調機ネットワークコンバータ10は、コンバータ設定部23によりIPアドレスとして192.168.10.1、半二重通信のためのIDはc10が指定されている。
半二重通信部21は、半二重通信のメッセージパケットを受信する度に、その送信元系統IDと送信元機器IDと分類コードを制御部20に通知する。そして制御部20は、傍受機器認識部24と仮アドレス設定部25に該送信元系統IDと送信元機器IDと分類コードを送る。
傍受機器認識部24は、該送信元系統IDと送信元機器IDと分類コードから、該当メッセージを送った機器が傍受機器か否かを判定し、傍受機器であった場合に制御部に傍受機器認識の通知を送る。本例では分類コードが室内機・室外機間の通信で無い場合、すなわち上記の例で分類コードが「23」または「32」でない場合、傍受機器から送られたメッセージと判断し、該当の該送信元系統IDと送信元機器IDとを傍受機器IDとして登録する。図3のシステム例であれば、傍受機器認識部24には傍受機器として「c1」が登録される。
仮アドレス設定部25は、半二重通信網7に接続する全機器に全二重通信で使用するIPアドレスを割り振る処理を実施する。仮IPアドレスは、上記ユーザが設定した全二重ネットワークに接続している機器のIPアドレス範囲を避けて設定され、半二重通信のIDとセットで仮想IPアドレス割当てテーブルとして保存される。割当てるIPアドレスは、コンバータ設定部23にて、予め接続機器の使用しているIPアドレスと重ならない割当て範囲を設定しておく。例えば、図3のシステムの場合は、192.168.10.50〜192.168.10.250に設定されていたとする。
図6は図3のネットワークシステム例で構築される仮IPアドレステーブルの例である。仮アドレス設定部25は、制御部から送られた送信元系統IDと送信元機器IDが、該仮アドレステーブルに存在しないと、仮IPアドレスを割り当ててテーブルに追加登録していく処理を繰り返し、最終的に半二重通信網の全機器をテーブルに登録することになる。例えば、何も仮IPアドレステーブルに登録されていない状態で、空調コントローラc1が存在確認メッセージをブロードキャストしたとする。空調コントローラの場合、前述したように元系統IDは「202」固定なので、送信元系統ID「202」と送信元機器ID「c1」が仮アドレス設定部25に通知される。仮アドレス設定部25は、仮IPアドレステーブルに、c1のIDが存在しないことから、割当て範囲のIPアドレスから192.168.10.250を割当てて、ID「c1」とセットでテーブルに登録する。
次に、室外機o1が存在確認メッセージをブロードキャストしたとすると、送信元系統ID「o1」と送信元機器ID「0」が制御部20を経由して仮アドレス設定部25に送られ、まだ仮IPアドレステーブルに当該o1のIDが登録されていないことから、前記割当範囲のアドレスのうち割当済みの192.168.10.250を避けてIPアドレス192.168.10.249を割り当てる。
一方、全二重通信部22は、IPパケットを受信する度に、その送信元と送信先IPアドレスと分類コードとオペレーションコードを制御部20に通知する。そして制御部20は、仮ID設定部26に該送信元IPアドレスと分類コードを、転送選択部29に分類コードとオペレーションコードを送る。
仮ID設定部26は、仮アドレス設定部25と同様に、全二重IP/Ethernet通信網8に接続する全機器に半二重通信でアドレスとして使用するID番号を割り振り、仮IDテーブルとして構築保存する。割り振るべきID番号は、コンバータ設定部23にて、予め接続機器の使用しているIDと重ならない範囲で割り振るよう範囲を設定しておく。例えば、図3のシステムの場合は、系統IDはo63〜o127、機器IDはi165〜i255、コントローラの機器IDはc15〜c32で割り振るように指定しているとする。
図7は図3のネットワークシステム例で構築される仮IDテーブルの例である。仮ID設定部26は、制御部から送られたIPアドレスが該仮IDテーブルに存在しないと、仮IDを割り当ててテーブルに追加登録していく処理を繰り返し、最終的に全二重通信網に接続する全機器をテーブルに登録することになる。例えば、何も仮IDテーブルに登録されていない状態で、IPアドレス192.168.10.11の室内機が存在確認メッセージを冷媒系統元のIPアドレス192.168.10.10室外機に送信したとする。上述したように室内機から室外機への通信であるため、このメッセージの分類コードは「32」である。そして、送信元と送信先IPアドレス192.168.10.11と192.168.10.10、分類コード「32」が制御部20を経由して仮ID設定部26に送られる。仮ID設定部26は、分類コードからIPアドレス192.168.10.10の機器は室外機、IPアドレス192.168.10.11の機器は室内機と判定し、各々割り当ててよい範囲でまだ使用していないID、すなわち、室外機192.168.10.10 の系統IDとしてo63、室外機192.168.10.11の機器IDとしてi165 を設定し、仮IDテーブルに登録する。次に、まだ登録していないIPアドレス192.168.10.12室内機を登録する際は当然i165を避けてi166を割り当てて登録する。
なお、前述したように、全二重半二重双方の通信とも本システムの機器は、10秒毎にネットワークに接続中であることを示す現在情報を送信しているため、空調機ネットワークコンバータは、10秒間で両ネットワークに接続している機器全てから最低一回は存在確認メッセージを受信することになる。従って起動後10秒で、仮IDテーブルと仮IPアドレステーブルが構築され、傍受機器の存在認識の処理が一通り完了する。
転送選択部29は、制御部から送られた分類コードとオペレーションコードを、内部の傍受対象のメッセージの一覧テーブルと引き合わせる。傍受メッセージテーブルは、半二重ネットワークにおいて傍受機器が傍受により取得していた室内機・室外機間の情報を保有する全二重IP/Ethernet通信メッセージの一覧であり、予めコンバータ設定部24によりコンバータに入力設定されている。
図8は、傍受メッセージテーブルの例である。本例では、メッセージは上述したように分類コードとオペレーションコードの組み合わせで特定されるため、傍受メッセージテーブルは、傍受対象であるメッセージの分類コードとオペレーションコードの組み合わせを組み合わせたテーブルとなる。該制御部から送られた分類コードとオペレーションコードの組み合わせがテーブルに存在すれば、該メッセージは傍受対象のメッセージであるため、転送選択部29は制御部に該メッセージの転送指示を通知する。
制御部20は、傍受機器認識部24に一つ以上傍受機器IDが登録されている状態で、転送選択部29から転送指示が通知されると、全二重通信部22の該IPパケットを全二重半二重変換部28に送る。
全二重半二重変換部28は、前記仮IDテーブルを参照し、該IPパケットのIPヘッダに含まれる送信元IPアドレスと送信先IPアドレスに割り当てられている仮IDを読み出し、半二重通信パケットの送信元系統ID200〜送信先機器ID203を作成する。
そしてデータ部210から分類コード204〜情報データ207へコピーし、BCC208を計算しなおして付加し、半二重通信用のメッセージに変換する。制御部20は変換作成した半二重通信用のメッセージを、半二重通信部21に送って送信させる。例えば、送信元IPアドレスが192.168.10.10、送信先IPアドレスが192.168.10.12ならば、図7の仮IDテーブルから、送信元系統ID200はo63、送信元機器ID201は0、送信先系統ID202はo63、送信先機器ID203はi166になる。なお傍受機器認識部24に一つも機器が登録されていない場合は、傍受のための転送の必要が無いため、制御部20はIPパケット破棄を全二重通信部22に指示する。
以上の処理により、図3の例の半二重通信網に接続された空調コントローラ5は、全二重通信網の機器間の情報を傍受できる。
また、半二重通信網に接続された空調コントローラ5が傍受により得た情報から全二重通信網の機器に対して制御するメッセージパケットを送る場合がある。例えば、送信元系統ID200が202、送信元機器ID201がc1、送信先系統ID202がo63、送信先機器ID203がi166のメッセージを半二重通信部21が受信した場合、半二重通信部21は、仮IPアドレステーブルを参照し、送信先系統ID202と送信先機器ID203に対応する仮IPアドレステーブルのIDを得る。仮IPアドレステーブルに存在しないIDである場合、送信先が全二重ネットワークに接続する機器と判定し、本物の宛先機器の代理でackを返信し、制御部20に全二重転送メッセージ受信を通知する。
制御部20は、該全二重転送のメッセージを半二重全二重変換部27に転送する。
送信元機器ID201がc1, 送信先系統ID202がo63、送信先機器ID203がi166なので、半二重全二重変換部27は、仮アドレス設定部25の仮IPアドレステーブルからIDがc1に対応する送信元IPアドレス192.168.10.250を、仮ID設定部26の仮IDテーブルから仮設定IDがo63-i166に対応する送信先IPアドレス192.168.10.12を得ることが出来るため、該2つのアドレスを使ってIPヘッダを作成し、データ部に分類コード204〜情報データ207をコピーしてBCC208を計算しなおして付加し、IPはペットデータを変換作成する。
制御部20が変換作成されたIPパケットを全二重通信部22に送って送信させることにより、半二重通信網上の空調コントローラ5の指令が全二重通信網上の室内機192.168.10.12に送信することができる。
以上の処理により、図3の例のc3空調コントローラ5は、全二重通信網の機器に制御指示を送って管理できることになる。
図9と図10は、図4で示した空調機ネットワークコンバータ10の機能をPCや汎用マイコンシステムでプログラムにて実現する際のハードウェア構成図およびソフトウェアフローチャートの例である。
この場合の空調機ネットワークコンバータ10のハードウェア構成は、例えば図9に示すように、ワンチップマイコンであるCPU100、半二重通信網7で結ばれた空調機や集中制御機器のメッセージ通信を処理する半二重モデム101、全二重IP/Ethernet通信網8で結ばれた空調機との通信を処理するEthernet通信IF102とEthernetの全通信パケットを収集するHUB103、OSや制御プログラム及び各種データを保持するメモリディスク部104、CPU100が制御プログラムを実行するためのワークメモリ領域であるRAM部105、ユーザが設定や指示を行ったり現在の室内機の運転状態を参照したりするための表示パネルと入力ボタンなどからなる設定表示部106、電源部107などから成る。
メモリディスク部104には、OSや通信ドライバソフトウェアの他、該ユーザ入出力部106を通じて得た設定情報や上述した仮IDテーブル、仮IPアドレステーブル、傍受メッセージテーブル、そして以降に説明する図10の制御プログラムが全て格納される。以下図11〜図13を使って図10の制御プログラムの処理を示すフローチャートを説明する。
電源がONされると、CPU100は、空調機ネットワークコンバータ制御プログラムをメモリディスク104から読み出してRAM105に展開して実行開始する。まず、ステップ1000で、使用者の設定した通信条件で半二重通信と全二重IP/Ethernet通信のポートを初期化しドライバを起動して通信を開始する。
なお空調機ネットワークシステムの設置者は、上記空調機器リニューアル時に、新たに設置した空調機にIPアドレスを設定すると同様に、通信アダプタも、設定表示部106にて、図11のように、アダプタ自身のIPアドレス(192.168.10.1)と機器ID(c10)、半二重ネットワークで使用している機器ID範囲(i1〜i11) と冷媒系統ID範囲(o1〜o3)、全二重ネットワークに接続している機器のIPアドレス範囲(192.168.10.10〜192.168.10.14)を設定するものとする。
これらのユーザ設定情報もメモリディスク104に保存される。そして、ステップ1000では、該設定されたIPアドレスと機器IDをメモリディスク104から読み出して、全二重IP通信および半二重通信の送受信ポートを開き通信を開始する。
ステップ1001では、半二重通信ポートからの受信をチェックする。ステップ1001で半二重通信機器からのメッセージ受信があればステップ1010に進み、分類コード204を見て傍受を行なう機器からの通信であるか否かを判定する。本空調機ネットワークシステムでは、室内機と室外機以外の機器であれば傍受を行なうため、分類コードが室内機または室外機からの通信でない場合、傍受機器とみなしてステップ1011に進み、傍受機器が半二重ネットワークに接続していること示す傍受中フラグをONにセットし、傍受機器存在確認タイマーを60秒にセットする。
傍受機器でなければステップ1011は飛ばしステップ2012に進む。ステップ2012では、送信元系統ID200と機器ID201をチェックし、既に仮IPアドレスを割り当てた機器であるか否かを判定する。仮IPアドレスを割り当てていない場合、これは、空調機ネットワークコンバータ10が起動後初めて該機器から通信メッセージを受信した場合に相当するが、その場合はステップ2013に進み、該機器に対し仮IPアドレスを割り当てる。また、OSやドライバによっては、IP/Ether通信ポートに複数IPアドレスを設定する処理(例えば、Linux(登録商標)のIPエイリアス機能による仮想IP設定など)を必要に応じて実施し、コンバータが実際の空調機に代わって仮IPアドレスによる送受信を実行可能にする。
仮IPアドレスは、ユーザが設定表示部106にて仮設定のIPアドレス範囲を指定することが可能なため、その指定範囲で設定する。また、ユーザは設定表示部106の表示機能を使って、現在の仮IPアドレステーブルの状況を図12に示すような一覧として見る事が可能である。
仮IPアドレス設定済みならば、ステップ1014に進み、送信先系統ID202と機器ID203がブロードキャストだった場合、または仮IDテーブルに存在する仮冷媒系統ID-機器IDであった場合、すなわち全二重IP/Ethernet通信ネットワークに接続している機器であった場合は、該メッセージをステップ1015で全二重ネットワークへ転送する。
ステップ1015では、該半二重通信のメッセージを全二重IP/Ethernet通信用のメッセージに変換し転送する。
メッセージ変換は、図5の半二重通信パケットの分類コード204〜BCC208部分をIP通信パケットのデータ部210として、IPヘッダ209を付け足したIP通信パケットを作成する変換である。IPヘッダの送信先IPアドレスは、全二重IP/Ethernet通信ネットワーク接続機器のIPアドレスまたはブロードキャストアドレスになる。送信元IPアドレスは、上記で割り当てた仮IPアドレスが設定される。なお、情報データ長206や情報データ内容207も必要に応じて変更される。
そして、前記仮想IPアドレスを送信元に使ってIP/Ethernet通信IF部102によりリピータHUB103を通じて送信するよう送信バッファに書き込み、半二重通信ネットワーク接続機器のメッセージを全二重ネットワーク接続機器に転送する。
ステップ1001で半二重通信メッセージが無い場合、またはメッセージ受信の一連の処理が済んだ場合は、ステップ1002に進む。ステップ1002では、前記ステップ1012で設定した傍受機器存在確認タイマーがタイムオフすなわち最後にタイマーをセットしてから60秒以上経過していないかチェックする。
そしてタイムオフしていた場合はステップ1003で傍受中フラグをOFFにセットする。これは、半二重通信網に傍受機器が1台でもあれば、最低10秒毎に傍受機器存在確認タイマーが60セットを繰り返すことから、60秒間セットされない状態は傍受機器がネットワークに元々存在しないか、または一時的に接続していたものが接続切断してしまったことを意味する。
そのため、タイマータイムオフの場合は、傍受中フラグを傍受機器なし状態を示すOFFにセットし、カウント中であればステップ1011で設定したONセットを維持する。
ステップ1004では、全二重IP/Ethernet通信ネットワークからのデータ受信チェックを行い、受信メッセージがあればステップ1005に進む。本発明の空調機ネットワークコンバータは、HUB部103を有しており、IP/Ether全二重IP/Ethernet通信ネットワークに接続する機器の全送受信データを取得することが可能である。
ただし、HUB部103を有せず、別機器として汎用リピータHUBを用意し、IP/Ethernet通信部102が該汎用リピータHUBを介して全ての全二重IP/Ethernet通信機器の送受信データを取得する構成でも差し支えない。
ステップ1005では、送信元IPアドレスから、既に仮冷媒系統ID・機器IDを割り当てた機器であるか否かを判定する。仮冷媒系統ID・機器IDを割り当てていない場合は、ステップ1006に進み、該機器に対し室外機の場合は仮冷媒系統IDを室内機の場合は仮想機器IDを割り当て、テーブルとして保存する。
なお、機器の種別は分類コードから判定可能である。例えば上述したように、室外機から室内機へのメッセージなら分類コードが「23」なので、送信元IPアドレスの機器は室外機、送信先IPアドレスの機器は室内機である。
仮冷媒系統ID・機器IDは、ユーザが設定表示部106にて設定した半二重ネットワークに接続している機器の各IDの設定範囲を避けて設定され、IPアドレスとセットで仮IDテーブルとしてメモリディスク104に保存される。ユーザは設定表示部106の表示機能を使って、現在の仮IDテーブルの状況を図13に示すような一覧として見る事が可能である。
仮冷媒系統ID・機器IDが設定済みならば、ステップ1007に進み、送信先IPアドレスがブロードキャスト、または前記仮IPアドレステーブルに存在するIPアドレスであった場合は、ステップ1009に進み該メッセージデータを半二重ネットワークへ転送する。
また、ステップ1007で宛先が半二重ネットワークの機器ではなかった場合でも、ステップ1008で、傍受中フラグがON、かつ分類コード204とオぺレーションコード205がメモリディスク104の傍受メッセージテーブルに存在するコードであった場合は、半二重ネットワークの傍受機器に傍受させる必要があるため、ステップ1009に進み該メッセージデータを半二重ネットワークへ転送する。
半二重通信ネットワークに傍受機器が在る場合、該傍受対象データテーブルのメッセージは(受信する相手機器は半二重ネットワークには無いが)、全て半二重通信ネットワークに転送し、傍受機器が情報を取得できるようにして、リニューアル前と同様の集中管理を実施可能にする。
ステップ1009では、該全二重IP/Ethernet通信のメッセージを半二重通信用のメッセージに変換し転送送信する。メッセージフォーマット変換は、IPヘッダの送信元IPアドレスを前記仮設定した冷媒系統ID・機器IDに変換する。送信先IPアドレスについては、IPパケットの宛先がコンバータの設定した仮IPアドレスのどれかである場合は、半二重ネットワーク上に宛先機器が接続していることを意味するため、該当実機器の冷媒系統ID・機器IDを設定する。送信先のIPアドレスが仮ではなく受信する相手機器が半二重ネットワークには無い場合、すなわち傍受対象データの場合は、前記仮冷媒系統ID・機器IDを使用して変換する。そしてIPパケットデータ部から204〜208欄を作成する。パケットデータ長206や情報データ内容207は必要に応じて変更する。
そして、該変換したメッセージを半二重通信IF部101より送信することにより、全二重IP/Ethernet通信ネットワーク接続機器のメッセージを半二重ネットワーク接続機器に転送する。
以上により、リニューアル以前も以後も、マルチリモコン4は、2Fの6台の室内機全てをON/OFFでき、またや空調コントローラ5も建屋内全ての空調機を監視制御できるようになる。