本明細書が開示するMEMS装置は、第1電極構造の一部を押圧することで、スライド方向に関して、第1スライド電極を第1対向電極対に対してオフセットさせる押圧部材をさらに備えるように構成することができる。
上記のMEMS装置では、第1スライド電極を第1対向電極対に対してオフセットしない形状に形成した後に、押圧部材によって第1スライド電極を第1対向電極対に対してオフセットして配置することができる。
本明細書が開示するMEMS装置は、基板が積層基板であり、第1電極構造と第2電極構造が同一の層に形成されているように構成することができる。
上記のMEMS装置は、第1電極構造と第2電極構造を同一の層にそれぞれ形成した後に、押圧部材によって第1スライド電極を第1対向電極対に対してオフセットさせることで、製造することができる。製造プロセスを簡素化することができる。
本明細書が開示するMEMS装置は、基板に対して弾性的に支持されている第2可動部をさらに備えており、第2対向電極対および第2スライド電極の他方が、第2可動部に対してスライド方向に移動不能であるように構成することができる。
上記のMEMS装置では、第1電極構造に起動電圧を印加することで、第1可動部がスライド方向に振動を開始する。その後、第2電極構造に励振電圧を印加すると、第1可動部と第2可動部がスライド方向に逆相でそれぞれ励振される。このような構成とすることによって、外部への振動漏れを抑制することができる。励振のQ値が向上し、小さい励振電圧で大きな振動を励振することができる。
(実施例1)
図1−図3に示す本実施例のMEMS装置2は、第1基板4と、第2基板6が積層された積層基板8に形成されている。第1基板4は、単結晶シリコンからなるシリコン層10と、酸化シリコンからなる酸化シリコン層12と、導電性を付与された単結晶シリコンからなる導電シリコン層14が順に積層された、SOI(Silicon on Insulator)基板である。第2基板6は、単結晶シリコンからなるシリコン基板である。以下の説明では、積層基板8の積層方向をZ方向とし、積層基板8の面内方向をX方向およびY方向とする。また、以下の説明では、Z方向の正方向を上方向といい、Z方向の負方向を下方向という。本実施例のMEMS装置2では、第1基板4の上方に第2基板6が積層されている。また、本実施例のMEMS装置2では、シリコン層10の上方に酸化シリコン層12が積層されており、酸化シリコン層12の上方に導電シリコン層14が積層されている。
図1に示すように、導電シリコン層14には、エッチングによって、枠部16と、マス支持部18と、直線梁部20と、マス部22と、第1可動電極部24と、第2可動電極部26と、第1固定電極部28と、第1固定電極支持部30と、第2固定電極部32と、第2固定電極支持部34が形成されている。マス支持部18と、直線梁部20と、マス部22と、第1可動電極部24と、第2可動電極部26は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。第1固定電極部28と、第1固定電極支持部30は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。第2固定電極部32と、第2固定電極支持部34は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。
マス部22は、導電シリコン層14を上方から平面視したときに、長方形状に形成されている。図2、図3に示すように、マス部22の下方の酸化シリコン層12は、エッチングにより除去されている。図1に示すように、マス部22のX方向負方向の端部であって、Y方向の両端部には、2つの直線梁部20が接続されている。2つの直線梁部20は、それぞれX方向に沿って延びており、マス部22とマス支持部18の間を接続している。2つの直線梁部20は、それぞれX方向およびY方向の剛性が高く、Z方向の剛性が低い形状に形成されている。2つの直線梁部20の下方の酸化シリコン層12は、エッチングにより除去されている。マス支持部18は、導電シリコン層14を上方から平面視したときに、長方形状に形成されている。図2、図3に示すように、マス支持部18は、下方の酸化シリコン層12を介して、シリコン層10に固定されている。
図1に示すように、マス部22のX方向正方向の端部には、第1可動電極部24と第2可動電極部26が設けられている。第1可動電極部24は、マス部22からX方向に沿って延びる支持片24aと、支持片24aからY方向に沿って延びる電極片24bを備えている。第1可動電極部24の下方の酸化シリコン層12は、エッチングにより除去されている。第2可動電極部26は、マス部22からX方向に沿って延びる支持片26aと、支持片26aからY方向に沿って延びる電極片26bを備えている。第2可動電極部26の下方の酸化シリコン層12は、エッチングにより除去されている。
第1固定電極部28は、第1固定電極支持部30からX方向に沿って延びる支持板28aと、支持板28aからX方向に沿って延びる支持片28bと、支持片28bからY方向に沿って延びる電極片28cを備えている。電極片28cは、第1可動電極部24の電極片24bとマス部22の間に配置されている。第1固定電極部28の下方の酸化シリコン層12は、エッチングにより除去されている。図2に示すように、第1固定電極支持部30は、下方の酸化シリコン層12を介して、シリコン層10に固定されている。
第1可動電極部24の電極片24bとマス部22は、互いに同電位であり、対向して配置される、対向電極対を構成している。また、第1固定電極部28の電極片28cは、Z方向をスライド方向として、第1可動電極部24の電極片24bとマス部22に対してスライド方向に移動可能であって、第1可動電極部24の電極片24bとマス部22の間に配置されるスライド電極を構成している。第1可動電極部24の電極片24bとマス部22と第1固定電極部28の電極片28cは、対向電極対とスライド電極を備える電極構造を構成している。
図1に示すように、第2固定電極部32は、第2固定電極支持部34からX方向に沿って延びる支持板32aと、支持板32aからX方向に沿って延びる支持片32bと、支持片32bからY方向に沿って延びる電極片32cを備えている。電極片32cは、対向電極である第2可動電極部26の電極片26bとマス部22の間に配置されている、スライド電極である。第2固定電極部32の下方の酸化シリコン層12は、エッチングにより除去されている。図3に示すように、第2固定電極支持部34は、下方の酸化シリコン層12を介して、シリコン層10に固定されている。
第2可動電極部26の電極片26bとマス部22は、互いに同電位であり、対向して配置される、対向電極対を構成している。また、第2固定電極部32の電極片32cは、Z方向をスライド方向として、第2可動電極部26の電極片26bとマス部22に対してスライド方向に移動可能であって、第2可動電極部26の電極片26bとマス部22の間に配置されるスライド電極を構成している。第2可動電極部26の電極片26bとマス部22と第2固定電極部32の電極片32cは、対向電極対とスライド電極を備える電極構造を構成している。
図1に示すように、枠部16は、導電シリコン層14を上方から平面視したときに、マス支持部18と、直線梁部20と、マス部22と、第1可動電極部24と、第2可動電極部26と、第1固定電極部28と、第1固定電極支持部30と、第2固定電極部32と、第2固定電極支持部34の周囲を覆う、長方形の枠形状に形成されている。図2、図3に示すように、枠部16は、下方の酸化シリコン層12を介して、シリコン層10に固定されている。
図2、図3に示すように、第2基板6は、下面に凹部36を備えている。凹部36は、MEMS装置2を上方から平面視したときに、導電シリコン層14の、マス支持部18、直線梁部20、マス部22、第1可動電極部24、第2可動電極部26、第1固定電極部28の支持片28bおよび電極片28c、第2固定電極部32の支持片32bおよび電極片32cを包含する範囲で形成されている。第2基板6は、導電シリコン層14の枠部16に接合されている。
第2基板6の下面において、導電シリコン層14の第1固定電極部28の支持板28aに対応する箇所には、押圧部材38が形成されている。押圧部材38は、第2基板6の下面に、例えばポリシリコンや金属等を積層することで形成されている。第2基板6を第1基板4に接合する際には、押圧部材38が第1固定電極部28の支持板28aを下方に押し下げるので、第1固定電極部28の電極片28cも下方に変位する。これによって、第1固定電極部28の電極片28cは、マス部22および第1可動電極部24の電極片24bに対して、Z方向にオフセットして配置される。なお、第2固定電極部32の電極片32cについては、マス部22および第2可動電極部26の電極片26bに対して、Z方向にオフセットせずに配置される。
図2、図3に示すように、シリコン層10の下面にはバンプ40、42および44が設けられている。バンプ40は、シリコン層10および酸化シリコン層12を貫通する貫通電極46を介して、導電シリコン層14のマス支持部18と導通している。図2に示すように、バンプ42は、シリコン層10および酸化シリコン層12を貫通する貫通電極48を介して、導電シリコン層14の第1固定電極支持部30と導通している。図3に示すように、バンプ44は、シリコン層10および酸化シリコン層12を貫通する貫通電極50を介して、導電シリコン層14の第2固定電極支持部34と導通している。
図1に示すように、MEMS装置2は、起動回路52と交流電圧源54に接続されて使用される。起動回路52は、図2に示すバンプ40とバンプ42を介して、マス支持部18と第1固定電極支持部30の間に起動電圧を印加する。起動電圧は、例えば所定の大きさのパルス状の電圧である。交流電圧源54は、図3に示すバンプ40とバンプ44を介して、マス支持部18と第2固定電極支持部34の間に励振電圧を印加する。励振電圧は、例えば所定の振幅の正弦波状の電圧である。
MEMS装置2の動作を説明する。図4はマス部22がマス支持部18に対して相対的に変位していない状態を示しており、図4の(a)はマス部22と第1可動電極部24の電極片24bと第1固定電極部28の電極片28cの位置関係を示しており、図4の(b)は、マス部22と第2可動電極部26の電極片26bと第2固定電極部32の電極片32cの位置関係を示している。この状態から、起動回路52がMEMS装置2に起動電圧を印加すると、図4の(a)に示すマス部22と第1可動電極部24の電極片24bと第1固定電極部28の電極片28cの間で静電引力が作用し、マス部22と第1可動電極部24に下向きの力が作用する。これによって、マス部22がマス支持部18に対して下方向に変位する。マス部22は、Z方向に弾性を有する直線梁部20を介してマス支持部18に支持されているので、その後はマス支持部18に対してZ方向に振動する。
マス部22がマス支持部18に対して下方向に変位すると、図5の(a)に示すように、マス部22と第1可動電極部24の電極片24bが、第1固定電極部28の電極片28cに対して下方向に変位するとともに、図5の(b)に示すように、マス部22と第2可動電極部26の電極片26bが、第2固定電極部32の電極片32cに対して下方向に変位する。このタイミングで、交流電圧源54がMEMS装置2に励振電圧を印加すると、マス部22と第2可動電極部26の電極片26bと第2固定電極部32の電極片32cの間で静電引力が作用し、マス部22と第2可動電極部26に上向きの力が作用する。これによって、マス部22のマス支持部18に対するZ方向の振動が加振される。
マス部22がマス支持部18に対して上方向に変位すると、図6の(a)に示すように、マス部22と第1可動電極部24の電極片24bが、第1固定電極部28の電極片28cに対して上方向に変位するとともに、図6の(b)に示すように、マス部22と第2可動電極部26の電極片26bが、第2固定電極部32の電極片32cに対して上方向に変位する。このタイミングで、交流電圧源54がMEMS装置2に励振電圧を印加すると、マス部22と第2可動電極部26の電極片26bと第2固定電極部32の電極片32cの間で静電引力が作用し、マス部22と第2可動電極部26に下向きの力が作用する。これによって、マス部22のマス支持部18に対するZ方向の振動が加振される。
上記のように、起動回路52からの起動電圧の印加により開始されるマス部22のZ方向の振動を、交流電圧源54からの励振電圧の印加により加振することで、マス部22はマス支持部18に対して大きく振動し続ける。交流電圧源54の周波数を、マス部22の共振周波数に近づけることによって、マス部22を大きく振動させることができる。
図4(a)、図5(a)、図6(a)に示すように、第1固定電極部28の電極片28cは、マス部22および第1可動電極部24の電極片24bに対して、わずかに傾斜している。このため、マス部22と第1可動電極部24と第1固定電極部28に励振電圧を印加してマス部22を励振する場合、マス部22はZ方向に励振されるだけでなく、X方向にも励振される。これに対して、図4(b)、図5(b)、図6(b)に示すように、第2固定電極部32の電極片32cは、マス部22および第2可動電極部26の電極片26bに対して、傾斜していない。このため、マス部22と第2可動電極部26と第2固定電極部32に励振電圧を印加してマス部22を励振する場合、マス部22はZ方向のみに励振される。そこで、本実施例のMEMS装置2では、マス部22と第1可動電極部24と第1固定電極部28への起動電圧の印加によってマス部22の振動を開始させ、その後はマス部22と第2可動電極部26と第2固定電極部32への励振電圧の印加によってマス部22を励振する。これによって、マス部22をZ方向にのみ励振することができる。なお、本実施例のMEMS装置2でも、マス部22と第1可動電極部24と第1固定電極部28への起動電圧の印加によって、マス部22はX方向にもわずかに振動する。しかしながら、マス部22のX方向の振動は速やかに減衰し、その後は励振されることがないので、マス部22の動作に大きな影響を及ぼすことはない。
(実施例2)
図7、図8に示す本実施例のMEMS装置102は、第1基板104と、第2基板106と、第3基板108が積層された積層基板110に形成されている。第1基板104は、単結晶シリコンからなるシリコン基板である。第2基板106は、酸化シリコンからなる酸化シリコン層112と、導電性を付与された単結晶シリコンからなる導電シリコン層114を備えている。第3基板108は、酸化シリコンからなる酸化シリコン層116と、単結晶シリコンからなるシリコン層118を備えている。以下の説明では、積層基板110の積層方向をZ方向とし、積層基板110の面内方向をX方向およびY方向とする。また、以下の説明では、Z方向の正方向を上方向といい、Z方向の負方向を下方向という。本実施例のMEMS装置102では、第1基板104の上方に第2基板106が積層されており、第2基板106の上方に第3基板108が積層されている。また、本実施例のMEMS装置102では、第1基板104の上方に酸化シリコン層112が積層されており、酸化シリコン層112の上方に導電シリコン層114が積層されており、導電シリコン層114の上方に酸化シリコン層116が積層されており、酸化シリコン層116の上方にシリコン層118が積層されている。
図7に示すように、導電シリコン層114には、エッチングによって、枠部120と、マス支持部122、124、126、128と、折返し梁部130、132、134、136と、マス部138と、第1可動電極部140、142、144、146と、第2可動電極部148、150、152、154と、第3可動電極部156、158と、第1固定電極部160、162、164、166と、第1固定電極支持部168、170、172、174と、第2固定電極部176、178、180、182と、第2固定電極支持部184、186、188、190と、第3固定電極部192、194と、第3固定電極支持部196、198が形成されている。マス支持部122、124、126、128と、折返し梁部130、132、134、136と、マス部138と、第1可動電極部140、142、144、146と、第2可動電極部148、150、152、154と、第3可動電極部156、158は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。第1固定電極部160と、対応する第1固定電極支持部168は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。第1固定電極部162、164、166と、対応する第1固定電極支持部170、172、174についても同様である。第2固定電極部176と、対応する第2固定電極支持部184は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。第2固定電極部178、180、182と、対応する第2固定電極支持部186、188、190についても同様である。第3固定電極部192と、対応する第3固定電極支持部196は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。第3固定電極部194と、対応する第3固定電極支持部198についても同様である。
マス部138は、導電シリコン層114を上方から平面視したときに、長方形状に形成されている。図8に示すように、マス部138の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。図7に示すように、マス部138の四角には、折返し梁部130、132、134、136が接続されている。折返し梁部130、132、134、136はそれぞれ、マス部138からX方向に沿って延びる第1直線部と、第1直線部の端部からY方向に沿って延びる折返し部と、折返し部の端部からX方向に沿って延びてマス支持部122、124、126、128に接続する第2直線部を備えている。折返し梁部130、132、134、136はそれぞれ、X方向の剛性が高く、Y方向およびZ方向の剛性が低い形状に形成されている。折返し梁部130、132、134、136の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。マス支持部122、124、126、128はそれぞれ、導電シリコン層114を上方から平面視したときに、長方形状に形成されている。マス支持部122、124、126、128はそれぞれ、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
図7に示すように、折返し梁部130、132、134、136の折返し部には、第1可動電極部140、142、144、146がそれぞれ設けられている。第1可動電極部140、142、144、146は、折返し梁部130、132、134、136からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。図8に示すように、第1可動電極部140、142、144、146の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。
図7に示すように、マス部138のX方向の端部には、第2可動電極部148、150、152、154が設けられている。第2可動電極部148、150、152、154は、マス部138からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。図8に示すように、第2可動電極部148、150、152、154の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。
図7に示すように、マス部138のY方向の端部には、第3可動電極部156、158が設けられている。第3可動電極部156、158は、マス部138からY方向に沿って延びる支持片と、支持片からX方向に沿って延びる電極片を備えている。第3可動電極部156、158の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。
図7に示すように、第1固定電極部160、162、164、166は、第1固定電極支持部168、170、172、174からX方向に沿って延びる支持板と、支持板からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。第1固定電極部160、162、164、166の電極片と支持板はそれぞれ、互いに同電位であり、対向して配置されている。第1固定電極部160、162、164、166の電極片と支持板の間に、対応する第1可動電極部140、142、144、146の電極片が配置されている。図8に示すように、第1固定電極部160、162、164、166の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。また、第1固定電極支持部168、170、172、174は、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
第1固定電極部160の電極片と支持板は、互いに同電位であり、対向して配置される、対向電極対を構成している。また、第1可動電極部140の電極片は、Z方向をスライド方向として、第1固定電極部160の電極片と支持板に対してスライド方向に移動可能であって、第1固定電極部160の電極片と支持板の間に配置されるスライド電極を構成している。第1固定電極部160の電極片と支持板と第1可動電極部140の電極片は、対向電極対とスライド電極を備える電極構造を構成している。第1固定電極部162、164、166と、対応する第1可動電極部142、144、146についても同様である。
図7に示すように、第2固定電極部176、178、180、182は、第2固定電極支持部184、186、188、190からX方向に沿って延びる支持板と、支持板からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。第2固定電極部176、178、180、182の電極片と支持板はそれぞれ、互いに同電位であり、対向して配置されている。第2固定電極部176、178、180、182の電極片と支持板の間に、対応する第2可動電極部148、150、152、154の電極片が配置されている。図8に示すように、第2固定電極部176、178、180、182の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。また、第2固定電極支持部184、186、188、190は、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
第2固定電極部176の電極片と支持板は、互いに同電位であり、対向して配置される、対向電極対を構成している。また、第2可動電極部148の電極片は、Z方向をスライド方向として、第2固定電極部176の電極片と支持板に対してスライド方向に移動可能であって、第2固定電極部176の電極片と支持板の間に配置されるスライド電極を構成している。第2固定電極部176の電極片と支持板と第2可動電極部148の電極片は、対向電極対とスライド電極を備える電極構造を構成している。第2固定電極部178、180、182と、対応する第2可動電極部150、152、154についても同様である。
図7に示すように、第3固定電極部192、194は、第3固定電極支持部196、198からY方向に沿って延びる支持片と、支持片からX方向に沿って延びる電極片を備えている。第3固定電極部192、194の電極片は、対応する第3可動電極部156、158の電極片とY方向に対向するように、それぞれ配置されている。第3固定電極部192、194の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。また、第3固定電極支持部196、198は、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
図7に示すように、枠部120は、マス支持部122、124、126、128と、折返し梁部130、132、134、136と、マス部138と、第1可動電極部140、142、144、146と、第2可動電極部148、150、152、154と、第3可動電極部156、158と、第1固定電極部160、162、164、166と、第1固定電極支持部168、170、172、174と、第2固定電極部176、178、180、182と、第2固定電極支持部184、186、188、190と、第3固定電極部192、194と、第3固定電極支持部196、198の周囲を覆う、長方形の枠形状に形成されている。図8に示すように、枠部120は、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
図8に示すように、第1基板104は、上面に凹部200を備えている。凹部200は、MEMS装置102を上方から平面視したときに、導電シリコン層114の、折返し梁部130、132、134、136と、マス部138と、第1可動電極部140、142、144、146と、第2可動電極部148、150、152、154と、第3可動電極部156、158と、第1固定電極部160、162、164、166の支持片および電極片と、第2固定電極部176、178、180、182の支持片および電極片と、第3固定電極部192、194の支持片および電極片を包含する範囲で形成されている。
図8に示すように、第3基板108のシリコン層118は、下面に凹部202を備えている。凹部202は、MEMS装置102を上方から平面視したときに、第1基板104の凹部200と略同様の形状となる範囲で形成されている。第3基板108の酸化シリコン層116は、導電シリコン層114の、折返し梁部130、132、134、136と、マス部138と、第1可動電極部140、142、144、146と、第2可動電極部148、150、152、154と、第3可動電極部156、158と、第1固定電極部160、162、164、166の支持片および電極片と、第2固定電極部176、178、180、182と、第3固定電極部192、194に対応する範囲が、エッチングにより除去されている。第3基板108は、第2基板106の導電シリコン層114の枠部120に、酸化シリコン層116を接合することによって、第2基板106に接合されている。
第3基板108の酸化シリコン層116の下面において、導電シリコン層114の第1固定電極部160、162、164、166の支持板に対応する箇所には、押圧部材204、206、208、210が形成されている。押圧部材204、206、208、210は、酸化シリコン層116の下面に、例えばポリシリコンや金属等を積層することで形成されている。第3基板108を第2基板106に接合する際には、押圧部材204、206、208、210が第1固定電極部160、162、164、166の支持板を下方に押し下げるので、第1固定電極部160、162、164、166の電極片も下方に変位する。これによって、第1可動電極部140、142、144、146の電極片は、第1固定電極部160、162、164、166の電極片と支持板に対して、Z方向にオフセットして配置される。なお、第2可動電極部148、150、152、154の電極片は、第2固定電極部176、178、180、182の電極片と支持板に対して、Z方向にオフセットせずに配置される。
図8に示すように、第1固定電極支持部168、170、172、174は、第1基板104および酸化シリコン層112を貫通する貫通電極212、214、216、218を介して、第1基板104の下面に形成されたバンプ220、222、224、226と導通している。第2固定電極支持部184、186、188、190は、第1基板104および酸化シリコン層112を貫通する貫通電極228、230、232、234を介して、第1基板104の下面に形成されたバンプ236、238、240、242と導通している。図示はしていないが、第3固定電極支持部196、198は、第1基板104および酸化シリコン層112を貫通する貫通電極を介して、第1基板104の下面に形成されたバンプと導通している。図示はしていないが、マス支持部122は、第1基板104および酸化シリコン層112を貫通する貫通電極を介して、第1基板104の下面に形成されたバンプと導通している。
図示はしていないが、MEMS装置102は、起動回路と、交流電圧源と、容量検出回路に接続されて使用される。起動回路は、マス支持部122と第1固定電極支持部168、170、172、174の間に起動電圧を印加する。起動電圧は、例えば所定の大きさのパルス状の電圧である。交流電圧源は、マス支持部122と第2固定電極支持部184、186、188、190の間に励振電圧を印加する。励振電圧は、例えば所定の振幅の正弦波状の電圧である。容量検出回路は、マス支持部122と第3固定電極支持部196の間の静電容量と、マス支持部122と第3固定電極支持部198の間の静電容量の差を検出する。
MEMS装置102の動作を説明する。実施例1のMEMS装置2と同様に、起動回路がMEMS装置102に起動電圧を印加すると、第1固定電極部160、162、164、166の電極片と、第1可動電極部140、142、144、146の電極片と、第1固定電極部160、162、164、166の支持板の間で静電引力が作用し、第1可動電極部140、142、144、146に下向きの力が作用する。これによって、マス部138がZ方向の振動を開始する。そして、交流電圧源がMEMS装置102に励振電圧を印加することで、第2固定電極部176、178、180、182の電極片と、第2可動電極部148、150、152、154の電極片と、第2固定電極部176、178、180、182の支持板の間に静電引力が作用し、第2可動電極部148、150、152、154に上向きおよび下向きに力が周期的に作用し、マス部138のZ方向の振動が加振される。これによって、マス部138がZ方向に励振される。
マス部138がZ方向に振動している状態で、MEMS装置102にX軸周りの角速度が作用すると、マス部138にはY方向のコリオリ力が作用し、マス部138はY方向にも振動する。この際のマス部138のY方向の振動の振幅は、MEMS装置102に作用するX軸周りの角速度が大きいほど、大きなものとなる。マス部138がY方向に振動することで、第3可動電極部156、158と第3固定電極部192、194の間の静電容量がそれぞれ変化する。この際の静電容量の変化量は、マス部138のY方向の振動の振幅が大きいほど大きなものとなる。従って、マス支持部122と第3固定電極支持部196の間の静電容量の変化量や、マス支持部122と第3固定電極支持部198の間の静電容量の変化量を検出することによって、MEMS装置102に作用するX軸周りの角速度を検出することができる。なお、MEMS装置102では、マス支持部122と第3固定電極支持部196の間の静電容量と、マス支持部122と第3固定電極支持部198の間の静電容量の差を検出することによって、MEMS装置102に作用するX軸周りの角速度を精度よく検出することができる。
以下ではMEMS装置102の製造方法について説明する。まず、図9に示すように、導電性を付与された単結晶シリコンからなる導電シリコン層114を備える第2基板106を用意する。そして、第2基板106を熱酸化処理して、上面と下面にそれぞれ酸化シリコン層302、112を形成する。
次いで、図10に示すように、第2基板106の上面の酸化シリコン層302と、下面の酸化シリコン層112の一部を、エッチングにより除去する。
次いで、図11に示すように、単結晶シリコンからなる第1基板104を用意する。
次いで、図12に示すように、第1基板104の上面の一部を、エッチングにより除去する。これによって、凹部200が形成される。
次いで、図13に示すように、第1基板104の上面に、第2基板106の下面の酸化シリコン層112を接合する。
次いで、図14に示すように、第2基板106の導電シリコン層114をエッチングによって選択的に除去する。これによって、枠部120と、マス支持部122、124、126、128と、折返し梁部130、132、134、136と、マス部138と、第1可動電極部140、142、144、146と、第2可動電極部148、150、152、154と、第3可動電極部156、158と、第1固定電極部160、162、164、166と、第1固定電極支持部168、170、172、174と、第2固定電極部176、178、180、182と、第2固定電極支持部184、186、188、190と、第3固定電極部192、194と、第3固定電極支持部196、198が形成される。
次いで、図15に示すように、貫通電極212、214、216、218、228、230、232、234等と、バンプ220、222、224、226、236、238、240、242等を形成する。
次いで、図16に示すように、単結晶シリコンからなるシリコン層118を備える第3基板108を用意する。そして、シリコン層118の下面に酸化シリコン層116を形成する。そして、酸化シリコン層116の下面にポリシリコンからなるポリシリコン層304を形成する。
次いで、図17に示すように、ポリシリコン層304をエッチングによって選択的に除去する。これによって、押圧部材204、206、208、210が形成される。
次いで、図18に示すように、酸化シリコン層116をエッチングによって選択的に除去する。
次いで、図19に示すように、シリコン層118の下面をエッチングによって選択的に除去する。これによって、凹部202が形成される。
次いで、図8に示すように、第2基板106の導電シリコン層114の上面に第3基板108の酸化シリコン層116の下面を接合する。この際に、押圧部材204、206、208、210によって第1固定電極部160、162、164、166が下方に押し下げられて、第1可動電極部140、142、144、146の電極片が、第1固定電極部160、162、164、166の電極片と支持板に対して、Z方向にオフセットして配置される。以上の製造プロセスにより、MEMS装置102が製造される。
(実施例3)
本実施例のMEMS装置402は、実施例2のMEMS装置102と同様に、第1基板104と、第2基板106と、第3基板108が積層された積層基板110に形成されている。第1基板104は、単結晶シリコンからなるシリコン基板である。第2基板106は、酸化シリコンからなる酸化シリコン層112と、導電性を付与された単結晶シリコンからなる導電シリコン層114を備えている。第3基板108は、酸化シリコンからなる酸化シリコン層116と、単結晶シリコンからなるシリコン層118を備えている。以下では、本実施例のMEMS装置402における第2基板106の構成について、詳細に説明する。
図20に示すように、本実施例のMEMS装置402では、導電シリコン層114に、エッチングによって、内側マス支持部404、406、408、410と、内側折返し梁部412、414、416、418と、内側マス部420と、内側励振電極部422、424と、第1可動検出電極部426、428と、外側マス支持部430、432、434、436と、外側折返し梁部438、440、442、444と、外側マス部446と、外側励振電極部448、450と、可動起動電極部452、454と、第2可動検出電極部456、458と、第3可動検出電極部460、462と、第1固定検出電極部464、466と、第1固定検出電極支持部468、470と、固定起動電極部472、474と、固定起動電極支持部476、478と、第2固定検出電極部480、482と、第2固定検出電極支持部484、486と、第3固定検出電極部488、490と、第3固定検出電極支持部492、494と、枠部496が形成されている。内側マス支持部404、406、408、410と、内側折返し梁部412、414、416、418と、内側マス部420と、内側励振電極部422、424と、第1可動検出電極部426、428は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。外側マス支持部430、432、434、436と、外側折返し梁部438、440、442、444と、外側マス部446と、外側励振電極部448、450と、可動起動電極部452、454と、第2可動検出電極部456、458と、第3可動検出電極部460、462は、継ぎ目なく一体的に形成されており、これらは同電位に維持されている。第1固定検出電極部464、466と、対応する第1固定検出電極支持部468、470は、それぞれ継ぎ目なく一体的に形成されており、それぞれ同電位に維持されている。固定起動電極部472、474と、対応する固定起動電極支持部476、478は、それぞれ継ぎ目なく一体的に形成されており、それぞれ同電位に維持されている。第2固定検出電極部480、482と、対応する第2固定検出電極支持部484、486は、それぞれ継ぎ目なく一体的に形成されており、それぞれ同電位に維持されている。第3固定検出電極部488、490と、対応する第3固定検出電極支持部492、494は、それぞれ継ぎ目なく一体的に形成されており、それぞれ同電位に維持されている。
内側マス部420は、導電シリコン層114を上方から平面視したときに、長方形状に形成されている。内側マス部420の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。内側マス部420の四角には、内側折返し梁部412、414、416、418が接続されている。内側折返し梁部412、414、416、418はそれぞれ、内側マス部420からY方向に沿って延びる第1直線部と、第1直線部の端部からXY方向に沿って延びる折返し部と、折返し部の端部からY方向に沿って延びて内側マス支持部404、406、408、410に接続する第2直線部を備えている。内側折返し梁部412、414、416、418はそれぞれ、X方向の剛性が高く、Y方向およびZ方向の剛性が低い形状に形成されている。内側折返し梁部412、414、416、418の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。内側マス支持部404、406、408、410はそれぞれ、導電シリコン層114を上方から平面視したときに、正方形状に形成されている。内側マス支持部404、406、408、410はそれぞれ、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
内側マス部420のX方向の端部には、内側励振電極部422、424が設けられている。内側励振電極部422、424は、内側マス部420からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。内側励振電極部422、424の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。
内側マス部420のY方向の端部には、第1可動検出電極部426、428が設けられている。第1可動検出電極部426、428は、内側マス部420からY方向に沿って延びる支持片と、支持片からX方向に沿って延びる電極片を備えている。第1可動検出電極部426、428の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。
第1固定検出電極部464、466は、第1固定検出電極支持部468、470からY方向に沿って延びる支持片と、支持片からX方向に沿って延びる電極片を備えている。第1固定検出電極部464、466の電極片は、対応する第1可動検出電極部426、428の電極片と、Y方向に対向するように配置されている。第1固定検出電極部464、466の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。また、第1固定検出電極支持部468、470は、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
外側マス部446は、導電シリコン層114を上方から平面視したときに、内側マス支持部404、406、408、410と、内側折返し梁部412、414、416、418と、内側マス部420と、内側励振電極部422、424と、第1可動検出電極部426、428の周囲を囲う、長方形の枠形状に形成されている。外側マス部446の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。外側マス部446の外側の四角には、外側折返し梁部438、440、442、444が接続されている。外側折返し梁部438、440、442、444はそれぞれ、外側マス部446からY方向に沿って延びる第1直線部と、第1直線部の端部からX方向に沿って延びる折返し部と、折返し部の端部からY方向に沿って延びて外側マス支持部430、432、434、436に接続する第2直線部を備えている。外側折返し梁部438、440、442、444はそれぞれ、Y方向の剛性が高く、X方向およびZ方向の剛性が低い形状に形成されている。外側折返し梁部438、440、442、444の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。外側マス支持部430、432、434、436はそれぞれ、導電シリコン層114を上方から平面視したときに、正方形状に形成されている。外側マス支持部430、432、434、436はそれぞれ、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
外側マス部446の内側には、外側励振電極部448、450が設けられている。外側励振電極部448、450は、外側マス部446からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。外側マス部446と外側励振電極部448の電極片は、互いに同電位であり、対向して配置されている。外側マス部446と外側励振電極部448の電極片の間に、内側励振電極部422の電極片が配置されている。外側マス部446と外側励振電極部450の電極片は、互いに同電位であり、対向して配置されている。外側マス部446と外側励振電極部450の電極片の間に、内側励振電極部424の電極片が配置されている。外側励振電極部448、450の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。
外側マス部446と外側励振電極部448の電極片は、互いに同電位であり、対向して配置される、対向電極対を構成している。また、内側励振電極部422の電極片は、Z方向をスライド方向として、外側マス部446と外側励振電極部448の電極片に対してスライド方向に移動可能であって、外側マス部446と外側励振電極部448の電極片の間に配置されるスライド電極を構成している。外側マス部446と外側励振電極部448の電極片と内側励振電極部422の電極片は、対向電極対とスライド電極を備える電極構造を構成している。外側マス部446と外側励振電極部450と内側励振電極部424についても同様である。
外側マス部446の外側のX方向の端部には、可動起動電極部452、454が設けられている。可動起動電極部452、454は、外側マス部446からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。可動起動電極部452、454の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。
外側マス部446の外側のX方向の端部には、第2可動検出電極部456、458が設けられている。第2可動検出電極部456、458は、外側マス部446からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。第2可動検出電極部456、458の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。
外側マス部446の外側のY方向の端部には、第3可動検出電極部460、462が設けられている。第3可動検出電極部460、462は、外側マス部446からY方向に沿って延びる支持片と、支持片からX方向に沿って延びる電極片を備えている。第3可動検出電極部460、462の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。
固定起動電極部472、474は、固定起動電極支持部476、478からX方向に沿って延びる支持板と、支持板からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。固定起動電極部472、474の電極片と支持板は、互いに同電位であり、対向して配置されている。固定起動電極部472、474の電極片と支持板の間に、対応する可動起動電極部452、454の電極片が配置されている。固定起動電極部472、474の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。また、固定起動電極支持部476、478は、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。固定起動電極部472、474の支持板は、それぞれ、押圧部材498、500によって下方に押し下げられている。
固定起動電極部472の電極片と支持板は、互いに同電位であり、対向して配置される、対向電極対を構成している。また、可動起動電極部452の電極片は、Z方向をスライド方向として、固定起動電極部472の電極片と支持板に対してスライド方向に移動可能であって、固定起動電極部472の電極片と支持板の間に配置されるスライド電極を構成している。固定起動電極部472の電極片と支持板と可動起動電極部452の電極片は、対向電極対とスライド電極を備える電極構造を構成している。固定起動電極部474と可動起動電極部454についても同様である。
第2固定検出電極部480、482は、第2固定検出電極支持部484、486からX方向に沿って延びる支持片と、支持片からY方向に沿って延びる電極片を備えている。第2固定検出電極部480、482の電極片は、第2可動検出電極部456、458の電極片とX方向に対向するように配置されている。第2固定検出電極部480、482の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。また、第2固定検出電極支持部484、486は、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
第3固定検出電極部488、490は、第3固定検出電極支持部492、494からY方向に沿って延びる支持片と、支持片からX方向に沿って延びる電極片を備えている。第3固定検出電極部488、490の電極片は、第3可動検出電極部460、462の電極片とY方向に対向するように配置されている。第3固定検出電極部488、490の下方の酸化シリコン層112は、エッチングにより除去されている。また、第3固定検出電極支持部492、494は、下方の酸化シリコン層112を介して、第1基板104に固定されている。
MEMS装置402は、内側マス部420の質量と外側マス部446の質量が略等しくなるように形成されている。また、MEMS装置402は、内側折返し梁部412、414、416、418のZ方向のバネ定数と外側折返し梁部438、440、442、444のZ方向のバネ定数が略等しくなるように形成されている。さらに、MEMS装置402は、内側折返し梁部412、414、416、418のY方向のバネ定数と外側折返し梁部438、440、442、444のX方向のバネ定数が略等しくなるように形成されている。従って、内側マス部420のZ方向の振動の共振周波数は、外側マス部446のZ方向の共振周波数に略等しい。また、内側マス部420のY方向の振動の共振周波数は、外側マス部446のX方向の振動の共振周波数に略等しい。
図示はしていないが、第1固定検出電極支持部468、470、固定起動電極支持部476、478、第2固定検出電極支持部484、486、第3固定検出電極部488、490、内側マス支持部404、外側マス支持部430はそれぞれ、第1基板104および酸化シリコン層112を貫通する貫通電極を介して、第1基板104の下面に形成されたバンプと導通している。
図示はしていないが、MEMS装置402は、起動回路と、交流電圧源と、第1容量検出回路と、第2容量検出回路と、第3容量検出回路に接続されて使用される。起動回路は、外側マス支持部430と固定起動電極支持部476、478の間に起動電圧を印加する。起動電圧は、例えば所定の大きさのパルス状の電圧である。交流電圧源は、内側マス支持部404と外側マス支持部430の間に励振電圧を印加する。励振電圧は、例えば所定の振幅の正弦波状の電圧である。第1容量検出回路は、内側マス支持部404と第1固定検出電極支持部468の間の静電容量と、内側マス支持部404と第1固定検出電極支持部470の間の静電容量の差を検出する。第2容量検出回路は、外側マス支持部430と第2固定検出電極支持部484の間の静電容量と、外側マス支持部430と第2固定検出電極支持部486の間の静電容量の差を検出する。第3容量検出回路は、外側マス支持部430と第3固定検出電極支持部492の間の静電容量と、外側マス支持部430と第3固定検出電極支持部494の間の静電容量をそれぞれ検出する。
MEMS装置402の動作を説明する。実施例1のMEMS装置2や実施例2のMEMS装置102と同様に、起動回路がMEMS装置402に起動電圧を印加すると、固定起動電極部472、474の電極片と、可動起動電極部452、454の電極片と、固定起動電極部472、474の支持板の間に静電引力が作用し、可動起動電極部452、454に下向きの力が作用して、外側マス部446がZ方向の振動を開始する。この際に、内側マス部420に対して外側マス部446が相対的にZ方向に変位するので、外側マス部446および外側励振電極部448の電極片が内側励振電極部422の電極片に対して相対的に変位する。このタイミングに合わせて、交流電圧源がMEMS装置402に励振電圧を印加することで、外側マス部446および外側励振電極部448の電極片にZ方向の力が作用するとともに、内側励振電極部422の電極片にZ方向の反力が作用することで、内側マス部420と外側マス部446は逆相でZ方向に振動する。この際に、内側マス部420の質量と外側マス部446の質量が略等しいので、互いの振動が相殺されて外部に振動漏れを生じることがない。従って、振動Q値を極めて高くすることができ、小さな励振電圧で大きなZ方向の振動を励振することができる。なお、この際の外側マス部446のZ方向の振動の様子は、第3容量検出回路が、外側マス支持部430と第3固定検出電極支持部492の間の静電容量と、外側マス支持部430と第3固定検出電極支持部494の間の静電容量をそれぞれ検出することによって、モニタすることができる。
内側マス部420と外側マス部446が逆相でZ方向に振動している状態で、MEMS装置402にX軸周りの角速度が作用すると、内側マス部420と外側マス部446のそれぞれにY方向のコリオリ力が作用する。この際に、外側マス部446は、Y方向の剛性が高い外側折返し梁部438、440、442、444によって支持されているので、Y方向に振動しない。これに対して、内側マス部420は、Y方向の剛性が低い内側折返し梁部412、414、416、418によって支持されているので、Y方向に振動する。この際の、内側マス部420のY方向の振動の振幅は、MEMS装置402に作用するX軸周りの角速度が大きいほど、大きなものとなる。内側マス部420がY方向に振動することで、第1可動検出電極部426、428と、対応する第1固定検出電極部464、466の間の静電容量が変化する。この際の静電容量の変化量は、内側マス部420のY方向の振動の振幅が大きいほど大きなものとなる。従って、内側マス支持部404と第1固定検出電極支持部468の間の静電容量の変化量や、内側マス支持部404と第1固定検出電極支持部470の間の静電容量の変化量を検出することによって、MEMS装置402に作用するX軸周りの角速度を検出することができる。なお、MEMS装置402では、内側マス支持部404と第1固定検出電極支持部468の間の静電容量と、内側マス支持部404と第1固定検出電極支持部470の間の静電容量の差を検出することによって、MEMS装置402に作用するX軸周りの角速度を精度よく検出することができる。
内側マス部420と外側マス部446が逆相でZ方向に振動している状態で、MEMS装置402にY軸周りの角速度が作用すると、内側マス部420と外側マス部446のそれぞれにX方向のコリオリ力が作用する。この際に、内側マス部420は、X方向の剛性が高い内側折返し梁部412、414、416、418によって支持されているので、Y方向に振動しない。これに対して、外側マス部446は、X方向の剛性が低い外側折返し梁部438、440、442、444によって支持されているので、X方向に振動する。この際の、外側マス部446のX方向の振動の振幅は、MEMS装置402に作用するY軸周りの角速度が大きいほど、大きなものとなる。外側マス部446がX方向に振動することで、第2可動検出電極部456、458と、対応する第2固定検出電極部480、482の間の静電容量が変化する。この際の静電容量の変化量は、外側マス部446のX方向の振動の振幅が大きいほど大きなものとなる。従って、外側マス支持部430と第2固定検出電極支持部484の間の静電容量の変化量や、外側マス支持部430と第2固定検出電極支持部486の間の静電容量の変化量を検出することによって、MEMS装置402に作用するY軸周りの角速度を検出することができる。なお、MEMS装置402では、外側マス支持部430と第2固定検出電極支持部484の間の静電容量と、外側マス支持部430と第2固定検出電極支持部486の間の静電容量の差を検出することによって、MEMS装置402に作用するY軸周りの角速度を精度よく検出することができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。